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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】半導体レーザモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/227 20060101AFI20220425BHJP
   H01S 5/02253 20210101ALI20220425BHJP
   H01S 5/026 20060101ALI20220425BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20220425BHJP
   H01S 5/50 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
H01S5/227
H01S5/02253
H01S5/026 618
H01S5/40
H01S5/50 610
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2016252953
(22)【出願日】2016-12-27
(65)【公開番号】P2018107310
(43)【公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 俊介
(72)【発明者】
【氏名】清田 和明
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 悠介
(72)【発明者】
【氏名】有賀 麻衣子
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/129664(WO,A1)
【文献】特開平08-211342(JP,A)
【文献】特開平05-027130(JP,A)
【文献】特開2013-118315(JP,A)
【文献】特開平09-023036(JP,A)
【文献】特開2014-187299(JP,A)
【文献】国際公開第2013/180291(WO,A1)
【文献】特開2012-248745(JP,A)
【文献】特開2001-111177(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1423163(CN,A)
【文献】Toshihito Suzuki, et al.,“Tunable DFB Laser Array Combined by Monolithically Integrated AWG Coupler”,2016 International Semiconductor Laser Conference (ISLC),2016年09月12日,TuC3
【文献】Yasumasa Suzaki, et al.,“High-Gain Array of Semiconductor Optical Amplifier Integrated with Bent Spot-Size Converter (BEND SS-SOA)”,Journal of Lightwave Technology,2001年11月,Vol.19,No.11,p.1745-1750
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力する半導体レーザ素子と、
前記レーザ光が入力側から入力され、該レーザ光を増幅して出力側から出力する半導体光増幅器と、
前記半導体レーザ素子から出力された前記レーザ光を前記半導体光増幅器に光学的に結合させる光学結合器と、
を備え、
前記半導体光増幅器は、半導体の再成長界面を備えず、
前記半導体光増幅器の活性コア層は、
積層方向において2つの半導体層の間に介在し、
前記半導体光増幅器の前記入力側から前記出力側に延伸し、前記入力側から等幅部、テーパ部、主導波部を有しており、
前記積層方向の厚さであるコア厚さが均一なコア厚さを有するとともに、前記積層方向から見て前記延伸の方向と直交する方向の幅であるコア幅は、前記主導波部より前記入力側のコア幅が、前記主導波部にあって前記延伸の方向である長手方向における少なくとも中央を含む中央部でのコア幅とは異なり、前記中央部でのコア幅よりも広く、前記入力側から前記中央部に向かってコア幅が狭くなる領域を、前記中央部を含む前記主導波部よりも前記入力側に近い位置に前記テーパ部として備え、前記等幅部は、前記テーパ部よりも前記入力側にあって前記コア幅が一定であり、
前記領域の長手方向における長さが10μm以上200μm以下であり、
前記光学結合器は、レンズであり、
前記光学結合器により前記半導体光増幅器に結合される前記レーザ光は、前記半導体層の面方向に長軸を有する楕円形状のモードフィールドであることを特徴とする半導体レーザモジュール。
【請求項2】
前記半導体レーザ素子は、前記レーザ光の出力側にパッシブ導波路部が集積された構成を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項3】
前記パッシブ導波路部は、曲げ導波路を含むことを特徴とする請求項2に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項4】
前記パッシブ導波路部は、スラブ出射型アレイ導波路回折格子を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体レーザモジュール。
【請求項5】
前記半導体レーザ素子は、複数のレーザ発振部が集積された構成を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の半導体レーザモジュール。
【請求項6】
前記半導体光増幅器をジャンクションダウンの状態で搭載する基台を備えることを特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の半導体レーザモジュール。
【請求項7】
前記半導体光増幅器の活性コア層は、前記半導体光増幅器の入力側において、前記入力側の端面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の半導体レーザモジュール。
【請求項8】
前記半導体光増幅器の活性コア層は、前記半導体光増幅器の出力側において、前記出力側の端面に対して傾斜していることを特徴とする請求項1~6のいずれか一つに記載の半導体レーザモジュール。
【請求項9】
前記半導体光増幅器の活性コア層は、前記出力側のコア幅が、光導波方向における少なくとも中央部でのコア幅とは異なることを特徴とする請求項1~8のいずれか一つに記載の半導体レーザモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザモジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信では通信速度を上げるために多値変調方式が検討されている。多値変調方式としては、位相シフトキーイング(PSK)を主としたコヒーレント通信方式が用いられる。このようなコヒーレント通信では、送信側の信号光源、及び局所発振光源に波長可変半導体レーザモジュール(例えば、μTOSA(Transmitter Optical Sub-Assembly)/μITLA(Integrable Tunable Laser Assembly)等)が必要である。
【0003】
コヒーレント通信では光の位相に情報を載せるため、信号光源及び局所発振光源には位相揺らぎが小さい(すなわち、スペクトル線幅が小さい)ことが求められる。また、通信システムの構成が複雑になるにつれて半導体レーザモジュールにも高出力・低消費電力化がよりいっそう求められる。
【0004】
このように低スペクトル線幅のレーザ光を出力する半導体レーザモジュールを得る方法として、半導体レーザ素子のチップと半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)のチップとを別々のチップとして作製し、半導体レーザモジュール内において、レンズ等を用いて2つのチップを光学的に結合させる方法が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5567226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体レーザ素子と半導体光増幅器とは互いに異なるモードフィールドを有している場合が多いので、単にレンズで光学結合させるだけでは半導体レーザ素子と半導体光増幅器との結合効率が高くない場合がある。結合効率を高める方法として、半導体レーザ素子や半導体光増幅器にモードフィールドを変換する要素であるSSC(Spot Size Converter)などを設ける構造が検討されている。しかしながら、SSCは、それ自体の光学的な損失が大きい場合があり、結合効率を高められない場合がある。そのため、波長可変レーザモジュールの重要な特性である高出力化・低消費電力化が困難であった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、半導体レーザ素子と半導体光増幅器との結合効率が高い半導体レーザモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、レーザ光を出力する半導体レーザ素子と、前記レーザ光が入力側から入力され、該レーザ光を増幅して出力側から出力する半導体光増幅器と、前記半導体レーザ素子から出力された前記レーザ光を前記半導体光増幅器に光学的に結合させる光学結合器と、を備え、前記半導体光増幅器の活性コア層は、均一なコア厚さを有するとともに、前記入力側のコア幅が、長手方向における少なくとも中央部でのコア幅とは異なることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記半導体光増幅器の活性コア層は、前記入力側のコア幅が、前記中央部でのコア幅よりも広く、前記入力側から前記中央部に向かってコア幅が狭くなる領域を、前記中央部よりも前記入力側に近い位置に備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記領域の長手方向における長さが10μm以上200μm以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記半導体レーザ素子は、前記レーザ光の出力側にパッシブ導波路部が集積された構成を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記パッシブ導波路部は、曲げ導波路を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記パッシブ導波路部は、スラブ出射型アレイ導波路回折格子を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記半導体レーザ素子は、複数のレーザ発振部が集積された構成を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記半導体光増幅器をジャンクションダウンの状態で搭載する基台を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記半導体光増幅器の活性コア層は、前記半導体光増幅器の入力側において、前記入力側の端面に対して傾斜していることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記半導体光増幅器の活性コア層は、前記半導体光増幅器の出力側において、前記出力側の端面に対して傾斜していることを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る半導体レーザモジュールは、前記半導体光増幅器の活性コア層は、前記出力側のコア幅が、光導波方向における少なくとも中央部でのコア幅とは異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、半導体レーザ素子と半導体光増幅器との結合効率が高い半導体レーザモジュールを実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態1に係る半導体レーザモジュールの構成を示す模式図である。
図2図2は、図1に示す半導体光増幅器の構成を示す模式図である。
図3図3は、図2のA-A線断面図である。
図4図4は、図1に示す半導体光増幅器の活性コア層の長手方向に垂直な断面における模式的断面図である。
図5図5は、比較例1-1~1-3のSSC構造を備える半導体光増幅器の構成を示す模式図である。
図6図6は、比較例1-1~1-3、2-1~2-3、実施例1~3の特性を説明する図である。
図7図7は、半導体レーザ素子の構成例1を示す模式図である。
図8図8は、図7のE-E線断面、F-F線断面、G-G線断面を示す図である。
図9図9は、実施形態2に係る半導体レーザモジュールの構成を示す模式図である。
図10図10は、図9に示す半導体光増幅器の構成を示す模式図である。
図11図11は、半導体光増幅器のその他の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0022】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る半導体レーザモジュールの構成を示す模式図である。図1に示すように、半導体レーザモジュール1000は、筐体1001、基台1002、1003、半導体レーザ素子100、コリメータレンズ1004、ビームスプリッタ1005、1007、集光レンズ1006、1011、フォトダイオード(PD)1008、1010、エタロンフィルタ1009、光ファイバ1012、及び半導体光増幅器200を備えている。また、半導体レーザモジュール1000は制御器に接続している。
【0023】
基台1002、1003は、それぞれ、筐体1001内で不図示の温度調節素子に載置されている。基台1002は、半導体レーザ素子100を搭載している。基台1003は、半導体光増幅器200を搭載している。集光レンズ1011、光ファイバ1012は筐体1001の取付部1001aに取り付けられている。
【0024】
温度調節素子は、例えばペルチェ素子である。各温度調節素子は、駆動電流が供給されることによって半導体レーザ素子100及び半導体光増幅器200のそれぞれを冷却、場合によっては加熱してその温度を調節することができる。
【0025】
基台1002、1003は、例えば熱伝導率が170W/m・Kと高い窒化アルミニウム(AlN)からなるが、AlNに限らず、CuW、炭化ケイ素(SiC)、ダイヤモンドなどの熱伝導率が高い材料でもよい。
【0026】
半導体レーザ素子100は、制御器から駆動電流を供給されて、レーザ光L1を出力する。レーザ光L1の波長は光通信用に用いられる波長帯(例えば1520nm~1620nm)内の波長である。
【0027】
コリメータレンズ1004は、半導体レーザ素子100のレーザ光L1を出力する側である前方側に配置されている。コリメータレンズ1004は、半導体レーザ素子100から出力されたレーザ光L1を平行光に変換する。
【0028】
ビームスプリッタ1005は、レーザ光L1の大部分を透過して集光レンズ1006に出力するとともに、レーザ光L1の一部(レーザ光L3)を分岐し、ビームスプリッタ1007に向けて反射させる。
【0029】
集光レンズ1006は、ビームスプリッタ1005から出力されたレーザ光L1を集光して半導体光増幅器200に入力させる。すなわち、集光レンズ1006は、半導体レーザ素子100から出力されたレーザ光L1を半導体光増幅器200に光学的に結合させる光学結合器である。
【0030】
半導体光増幅器200は、その入力側から入力されたレーザ光L1を増幅して、レーザ光L2として出力側から出力する。集光レンズ1011は、レーザ光L2を集光して光ファイバ1012に入力させる。光ファイバ1012はレーザ光L2を所定の装置等まで伝送する。
【0031】
一方、ビームスプリッタ1007は、レーザ光L3を二分岐し、一方を透過してPD1008に出力するとともに、他方をエタロンフィルタ1009に向けて反射させる。PD1008は、ビームスプリッタ1007から入力されたレーザ光の強度を検出し、検出された強度に応じた電流を制御器に出力する。
【0032】
エタロンフィルタ1009は、光の周波数的に周期的な透過特性を有し、その透過特性に応じた透過率で、ビームスプリッタ1007が反射したレーザ光を選択的に透過して波長モニタ用のPD1010に入力する。PD1010は、エタロンフィルタ1009を透過したレーザ光の強度を検出し、検出された強度に応じた値の電流を制御器に出力する。
【0033】
PD1008、1010によって検出されたレーザ光の強度は、制御器による波長ロック制御(レーザ光L1を所望の波長及び強度にするための制御)に用いられる。
【0034】
つぎに、半導体光増幅器200について具体的に説明する。図2は、半導体光増幅器200の構成を示す模式図である。図3は、図2のA-A線断面図である。
【0035】
半導体光増幅器200は、幅が約0.4mm、長さが約2mmであり、活性コア層201を備えている。活性コア層201は、半導体光増幅器200の入力側202から出力側203まで延伸しており、その長さは半導体光増幅器200と同じ約2mmである。活性コア層201は、入力側202から入力されたレーザ光L1を長手方向(光導波方向)に導波しながら増幅して、レーザ光L2として出力側203から出力する。なお、入力側202及び出力側203の両端面には、無反射膜がコーティングされている。
【0036】
また、図3に示すように、半導体光増幅器200は、活性コア層201に沿った断面において、例えばAuGeNiを含んで構成されるn側電極200aと、n型InPからなり、基板を含むn型半導体層200bと、活性コア層201と、p型InPからなるp型半導体層200cと、コンタクト層200dと、例えばAuZnを含んで構成されるp側電極200eとがこの順番で積層した構造を有している。活性コア層201は、交互に積層された複数の井戸層と複数のバリア層を含んで構成された多重量子井戸構造と、多重量子井戸構造を上下から挟む下部及び上部光閉じ込め層とを有している。活性コア層201の多重量子井戸構造を構成する井戸層及びバリア層は各々組成が異なるInGaAsPからなり、井戸層の発光波長帯は、本実施形態1では1.55μm帯である。下部光閉じ込め層はn型InGaAsPからなる。上部光閉じ込め層はp型InGaAsPからなる。コンタクト層200dはp型InGaAsからなる。
【0037】
なお、半導体光増幅器200は、基台1003に、p型半導体層200cが基台1003側に位置し、成長基板を含むn型半導体層200bが基台1003とは反対側に位置する状態、すなわちジャンクションダウンの状態で搭載されていてもよい。これにより、半導体光増幅器200の活性コア層201で発生する熱が基台1003を通じて放熱しやすくなる。
【0038】
ここで、図3に示すように、半導体光増幅器200の活性コア層201は、半導体光増幅器200内において、均一なコア厚さ160nmを有する。また、図2に示すように、活性コア層201は、主導波部201a、入力側等幅部201b、及びテーパ部201cを備えている。これらの部分は、入力側202から出力側203にかけて、入力側等幅部201b、テーパ部201c、主導波部201aの順で配置されている。
【0039】
主導波部201aは、活性コア層201の長手方向における中央部201aaを含み、コア幅が一定の部分である。中央部201aaは、入力側202及び出力側203のそれぞれから約1mmの位置にある領域である。主導波部201aのコア幅W1は、1.55μm帯の光をシングルモードで導波できる値であり、本実施形態1では2μmである。
【0040】
入力側等幅部201bは、入力側202に位置し、光導波方向における長さが約20μmであり、コア幅が一定の部分である。入力側等幅部201bのコア幅W2は本実施形態1では3μmであり、主導波部201aのコア幅W1よりも1μmだけ広い。すなわち、活性コア層201の入力側202でのコア幅W2は、中央部201aaでのコア幅W1とは異なり、広くなっている。また、入力側等幅部201bの長さが約20μmとある程度長いため、半導体光増幅器200を半導体ウエハに形成して個々のチップにカッティングするときに、カッティング精度に依存した位置ずれが長手方向において発生したとしても、入力側等幅部201bが全てカットされてしまうことを防止できる。
【0041】
テーパ部201cは、入力側202から中央部201aaに向かってコア幅が徐々に狭くなる領域であり、その長さは約100μmである。テーパ部201cは、中央部201aaよりも入力側202に近い位置にある。テーパ部201cは、光導波方向における長さが10μm以上200μm以下であることが好ましい。テーパ部201cの長さが10μm以上であれば、テーパ角が過度に大きくならないので、コア幅の急激な変化による損失の増加を抑制することができる。また、テーパ部201cではコア幅が大きいために注入電流量に対する発光効率が低くなるが、その長さが200μm以下であれば、テーパ部201cにおける発光効率の低下が、半導体光増幅器200全体での発光効率に対して問題にならない程度となる。
【0042】
また、図1に示す半導体光増幅器200は、活性コア層201の長手方向に垂直な断面においては、図4に示す構造を有する。すなわち、半導体光増幅器200において、ストライプメサ構造の活性コア層201の両脇(紙面左右方向)は、p型InP埋め込み層200f及びn型InP電流ブロッキング層200gからなる電流ブロッキング構造を有した埋込み構造となっている。さらに、コンタクト層200d上にはSiNx保護膜200hが形成されている。p側電極200eはSiNx保護膜200hの開口部200haを介してコンタクト層200dとオーミック接触している。
【0043】
半導体レーザモジュール1000では、半導体光増幅器200の活性コア層201が、半導体光増幅器200内において均一なコア厚さを有するとともに、入力側202でのコア幅W2が中央部201aaでのコア幅W1よりも広くなっていることにより、半導体レーザ素子100と半導体光増幅器200との結合効率が高くなっている。
【0044】
以下、具体的に説明する。半導体レーザモジュール内で半導体レーザ素子からのレーザ光を半導体光増幅器に光学的に結合させる際、レンズを介して結合させる場合、レンズの像倍率を変えることで半導体光増幅器への結合効率を高めることは一般的な手法である。
【0045】
しかしながら、レンズで像倍率変換を行うだけでは、半導体レーザ素子からのレーザ光のモードフィールドの縦横比(アスペクト比)を変えることができない。そのため、半導体レーザ素子と半導体光増幅器とでモードフィールドが異なる場合、レーザ光を半導体光増幅器に十分に結合させることができない場合がある。特に、半導体レーザ素子がアクティブ領域とパッシブ導波路部を有しており、レーザ光がパッシブ導波路部を通じて出力されるような場合は、パッシブ導波路部において縦方向(半導体層の積層方向)の光閉じ込めが横方向(半導体層の面方向)の光閉じ込めと比較して強いため、半導体レーザ素子から出力されたレーザ光は、縦方向に長軸を有する扁平率が高い楕円形状のモードフィールドになる。この場合、レンズで半導体光増幅器に結像されるレーザ光は、横方向に長軸を有する扁平率が高い楕円形状のモードフィールドになりやすい。このようなレーザ光をレンズの像倍率変更だけで半導体光増幅器に十分に結合させることは難しい。また、モードフィールド変換素子やモードフィールド変換部品をレンズと合わせて使用することなども考えられるが、組立性の悪化や、変換素子・変換部品での光損失などが問題となる。
【0046】
一方、半導体レーザ素子の出力側や半導体光増幅器の入力側に、コア層の幅と厚さの両方を変えることでモードフィールドを変える、公知のSSC構造を用いて半導体光増幅器への結合を高めることが考えられる。しかしながら、SSC構造を作製するには、MOCVD(Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)装置などの結晶成長装置を用いた半導体の再成長工程が必要であり、作製に要する時間が長くなることで歩留などの面で不利である。またさらに、SSC構造の作製に際しては、上記のように再成長を実施するため、少なからず再成長界面での光損失が発生する。そのため、レーザ光のモードフィールドのアスペクト比をSSC構造によって変更して半導体光増幅器のモードフィールドと同様にしても、再成長界面での光損失によってアスペクト比の変更による結合効率の向上の効果が減殺されてしまう場合がある。
【0047】
これに対して、半導体レーザモジュール1000では、半導体光増幅器200の活性コア層201が、半導体光増幅器200内において均一なコア厚さを有するとともに、入力側202でのコア幅W2が中央部201aaでのコア幅W1よりも広くなっている。これにより、レンズ1004、1006により結像したレーザ光L1のモードフィールドのアスペクト比にモードフィールドを近づけた半導体光増幅器200を実現できる。しかも、半導体光増幅器200の作製時に、光損失を発生させるような再成長界面を形成する必要が無い。これらの結果として、半導体レーザ素子100と半導体光増幅器200との結合効率を高めることができるのである。
【0048】
なお、本実施形態1では、入力側等幅部201bのコア幅W2は3μmであるが、コア幅W2は、半導体レーザ素子100の特性、レーザ光L1の特性、コリメータレンズ1004及び集光レンズ1006の特性に応じて、半導体レーザ素子100と半導体光増幅器200との結合効率が高くなるように適宜設定すればよい。
【0049】
半導体光増幅器200の製造方法の一例を説明する。まず、n型InP基板上に、MOCVD結晶成長装置等の結晶成長装置を用いて、n型InP-クラッド層を成長してn型半導体層200bを形成し、さらに活性コア層201となる半導体層、p型半導体層200cの一部、コンタクト層200dを成長する。つづいて、CVD法によってp型半導体層200c上にSiNxからなるマスクを形成する。つづいて、レジストとフォトマスクを用いて、活性コア層201のパターンをレジスト転写する。このとき、活性コア層201のパターンにしたフォトマスクを用いる。これにより、簡便に半導体光増幅器200の活性コア層201の形状を実現することができる。つづいて、レジスト転写したウエハに対して、反応イオンエッチングによりSiNxのエッチングを実施する。つづいて、SiNxをエッチングマスクとしてウェットエッチングでメサストライプ形状を作製する。つづいて、MOCVD装置を用いて電流ブロッキング構造を形成し、埋め込み構造とする。さらに、MOCVD装置を用いてp型半導体層200cの残りの部分と、コンタクト層200dを形成する。つづいて、SiNx保護膜200h、p側電極200eを形成し、ウエハの裏面を研磨し、n側電極200aを形成する。これにより、ウエハが完成する。さらに、完成したウエハを適切な長さのバー素子にカッティングし、バー素子の両端面に無反射膜をコーティングし、さらにバー素子を半導体光増幅器200にカッティングする。これにより、半導体光増幅器200を作製することができる。
【0050】
(実施例1~3、比較例1-1~1-3、2-1~2-3)
実施例1~3、比較例1-1~1-3、2-1~2-3の半導体レーザモジュールを作製した。実施例1~3の半導体レーザモジュールは、実施形態1と同様の構成を有する。半導体レーザ素子としては、後に述べる半導体レーザ素子の構成例1のものを用いた。なお、半導体レーザ素子と半導体光増幅器との間に配置されたコリメータレンズ(焦点距離f1)及び集光レンズ(焦点距離f2)によるレーザ光の像倍率mは、実施例1、2、3に対して、それぞれ1、1.4、2に設定した。
【0051】
また、比較例1-1~1-3の半導体レーザモジュールは、半導体光増幅器の入力側等幅部及びテーパ部が形成された部分をSSC構造に置き換えた構造とした以外は、実施例1~3の半導体レーザモジュールとそれぞれ同じ構成とした。図5は、比較例1-1~1-3のSSC構造を備える半導体光増幅器の構成を示す模式図である。この半導体光増幅器1200は、半導体光増幅部1200Aと、SSC構造部1200Bとが集積した構造を有する。半導体光増幅部1200Aは、活性コア層1201Aに沿った断面において、n側電極1200aと、n型InPからなるn型半導体層1200bと、活性コア層1201Aと、p型InPからなるp型半導体層1200cと、コンタクト層1200dと、p側電極1200eとがこの順番で積層した構造を有している。SSC構造部1200Bも同様の積層構造を有するが、活性コア層1201Aは導波路コア層1201Bに置き換えられ、p型コンタクト層1200d及びp側電極1200eは備えていない積層構造になっている。
【0052】
半導体光増幅部1200Aの活性コア層1201Aは、コア幅が一定で2μmであり、コア厚さも一定である。SSC構造部1200Bの導波路コア層1201Bは、コア幅とコア厚さとの両方が長手方向で変化している。具体的には、入力側(紙面左側)から半導体光増幅部1200A側に向かって、そのコア厚さが90nmから160nmまで、そのコア幅が3μmから2μmまで、それぞれテーパ状に変化している。導波路コア層1201Bはバンドギャップ波長が1.2μmのInGaAsPからなる。
【0053】
また、比較例2-1~2-3の半導体レーザモジュールは、半導体光増幅器の入力側等幅部及びテーパ部を主導波部と同じ一定のコア幅とした以外は、実施例1~3の半導体レーザモジュールとそれぞれ同じ構成とした。
【0054】
そして、各実施例、比較例の半導体レーザモジュールの半導体レーザ素子からレーザ光を出力させながら、半導体光増幅器に逆バイアス電圧を印加し、半導体光増幅器に流れる電流を測定した。
【0055】
図6は、比較例1-1~1-3、2-1~2-3、実施例1~3の特性を説明する図である。横軸は像倍率mを示し、縦軸は半導体光増幅器に流れる電流Isoaを示している。電流Isoaは半導体光増幅器に結合されたレーザ光のパワーに比例するので、Isoaの値が大きい程、半導体レーザ素子と半導体光増幅器との結合効率が高いことを意味している。
【0056】
図6に示すように、実施例1~3のいずれの場合も、比較例1-1~1-3、2-1~2-3のいずれよりもIsoaが大きく、比較例2-1~2-3に対して同じ像倍率で約20%程度結合効率を高くできることが確認された。
【0057】
(実施例4、5、比較例3、4)
実施例4、比較例3として、それぞれ実施例1、比較例1-1と同様の構成であるが、半導体光増幅器の素子長を1400μmとした半導体レーザモジュールを作製し、光ファイバから出力されるレーザ光のパワーを100mWにするための半導体光増幅器の動作電流を比較したところ、実施例4の場合は比較例3の場合よりも動作電流を約4%低減することができた。また、実施例5、比較例4として、それぞれ実施例4、比較例3と同様の構成であるが、半導体光増幅器の素子長を1700μmとした半導体レーザモジュールを作製し、光ファイバから出力されるレーザ光のパワーを100mWにするための半導体光増幅器の動作電流を比較したところ、実施例5の場合は比較例4の場合よりも動作電流を約3%低減することができた。
【0058】
(半導体レーザ素子の構成例1)
つぎに、半導体レーザ素子の構成例1について説明する。本構成例1に係る半導体レーザ素子は、レーザ光の出力側にパッシブ導波路部が集積された構成を有する波長可変レーザ素子である。
【0059】
図7は、構成例1に係る半導体レーザ素子の模式図である。図7に示すように、半導体レーザ素子100Aは、埋め込み型導波路によって導波路が形成された埋め込み型導波構造領域110と、スラブ導波路によって導波路が形成されたスラブ導波構造領域120a、120bと、ハイメサ型導波路によって導波路が形成されたハイメサ型導波構造領域130とを有する。
【0060】
埋め込み型導波構造領域110は、発振波長の異なる複数の分布帰還型(DFB:Distributed Feed-Back)レーザ素子111~11112が集積された構造を有し、かつ曲げ導波路である入力導波路113を備えている。スラブ導波構造領域120aは、入力側スラブ導波路141を備え、スラブ導波構造領域120bは、出力側スラブ導波路142を備え、ハイメサ型導波構造領域130は、曲げ導波路であるアレイ導波路143を備えている。入力側スラブ導波路141、出力側スラブ導波路142、及び曲げ導波路であるアレイ導波路143は、一体としてアレイ導波路回折格子(Arrayed Waveguide Grating:AWG)140を構成している。また、入力導波路113及びAWG140がパッシブ導波路部を構成している。なお、ここでは発振波長の異なる12個のDFBレーザ素子111~11112を備える半導体レーザ素子100Aを用いて本構成例1を説明するが、本構成例1はDFBレーザ素子の個数によって限定されるものではない。
【0061】
レーザ発振部であるDFBレーザ素子111~11112は、半導体レーザ素子の一形態であり、例えば1.55μm波長帯域において各DFBレーザ素子111~11112の発振波長が3.5nmずつ異なるように設計されている。DFBレーザ素子111~11112は温度を変更することによって発振波長が変化するという特性を有する。半導体レーザ素子100Aでは、複数のDFBレーザ素子111~11112のうち一つを選択することによって、出力波長の粗調を行い、温度変更によって出力波長の微調を行う。結果、半導体レーザ素子100A全体として、連続的な波長範囲でのレーザ発振を行う波長可変光源として動作する。なお、DFBレーザ素子111~11112はそれぞれDR(Distributed Reflector)レーザ素子に置き換えてもよい。
【0062】
DFBレーザ素子111~11112から出射されたレーザ光は、入力導波路113を介して入力側スラブ導波路141へ導波される。入力側スラブ導波路141は、基板と平行な方向に関して光の閉じ込めがない導波路であり、入力導波路113から入力されたレーザ光を基板と平行方向に回折させながら、アレイ導波路143へレーザ光を導波する。
【0063】
アレイ導波路143は、経路が曲げられて構成された多数の導波路から構成されており、波長に依存した光路長差が設けられている。したがって、この波長に依存した光路長差に対応させて入力側スラブ導波路141に対するレーザ光の入力位置を変えると、出力側スラブ導波路142の出力端では、すべての波長のレーザ光が同一位置に結合することになる。
【0064】
本構成例1では、AWG140はスラブ出射型のAWGであり、出力側スラブ導波路142の出力端142aから直接レーザ光が出射され、半導体レーザ素子100Aの出力端を兼ねている。
【0065】
ここで、本実施形態に係るAWG140の具体的構成例について開示する。
【0066】
アレイ導波路143を構成するハイメサ型導波路の群屈折率nは3.54であり、等価屈折率neffは3.19である。また、アレイ導波路143を構成する導波路における隣接する導波路間の光路長差ΔLは16.3μmである。AWG140の焦点距離Lは480μmである。入力側スラブ導波路141の入力端面141bにおけるアレイ導波路143の導波路間隔は3.5μmである。また、入力側スラブ導波路141の入力端面141aにおける入力導波路113の導波路間隔は5μmである。
【0067】
図8(a)、(b)、(c)は、それぞれ、図7のE-E線断面、F-F線断面、G-G線断面を示す図である。図8(a)は、E-E線断面に含まれる入力導波路113のうちの一つについて図示してある。入力導波路113は、n側電極110aと、n型InPからなり、成長基板を含むn型半導体層110bと、バンドギャップ波長が1.3μmのInGaAsPからなる、厚さ約200nmの導波路コア層110cと、p型InPからなるスペーサ層110jと、p型InPからなるp型半導体層110dと、p型InGaAsからなるコンタクト層110eと、SiNx保護膜110iとがこの順番で積層した構造を有している。導波路コア層110c及びスペーサ層110jは、1.55μm帯の光をシングルモードで光導波するのに適した幅(例えば2.0~2.5μm)にされたストライプメサ構造とされている。ストライプメサ構造の両脇(紙面左右方向)は、p型InP埋め込み層110g及びn型InP電流ブロッキング層110hからなる電流ブロッキング構造を有した埋込み構造となっている。なお、他の入力導波路113も図8(a)に示す構造を有している。
【0068】
図8(b)は、F-F線断面に含まれる入力側スラブ導波路141について図示してある。入力側スラブ導波路141は、n側電極110aと、n型半導体層110bと、導波路コア層110cと、p型半導体層110dと、コンタクト層110eと、SiNx保護膜110iとがこの順番で積層した構造を有している。なお、出力側スラブ導波路142も図8(b)に示す構造を有している。
【0069】
図8(c)は、G-G線断面に含まれるアレイ導波路143のうちの一つについて図示してある。アレイ導波路143は、n側電極110aと、n型半導体層110bと、導波路コア層110cと、p型半導体層110dと、コンタクト層110eとがこの順番で積層した構造を有している。そして、n型半導体層110bの上部からコンタクト層110eまでが、1.55μm帯の光をシングルモードで光導波するのに適した幅(例えば2.0~2.5μm)にされたハイメサ構造となっており、その表面がSiNx保護膜110iによって覆われている。
【0070】
半導体レーザ素子100Aのように、レーザ光の出力側にパッシブ導波路部が集積された半導体レーザ素子は、出力されたレーザ光が、縦方向に長軸を有する扁平率が高い楕円形状のモードフィールドになりやすい。特に、パッシブ導波路部が曲げ導波路を含む場合は、曲げ損失を抑制するためにパッシブ導波路部における導波路の比屈折率差を高く設定するため、モードフィールドの扁平率がより高くなる傾向にある。したがって、このような半導体レーザ素子は半導体光増幅器200と組み合わせて結合効率を高めることが好適である。なお、レーザ光の出力側にパッシブ導波路部が集積された半導体レーザ素子の他の例としては、半導体レーザ素子100Aの構成において、AWG140に換えてMMI(Multi-Mode Interferometer)素子を備える構成の波長可変レーザ素子などがある。
【0071】
(実施形態2)
図9は、実施形態2に係る半導体レーザモジュールの構成を示す模式図である。図9に示すように、半導体レーザモジュール1000Aは、図1に示す半導体レーザモジュール1000の構成において、半導体レーザ素子100を半導体レーザ素子100Bに置き換え、半導体光増幅器200を半導体光増幅器200Aに置き換え、基台1013及び光アイソレータ1014を追加した構成を有する。また、半導体レーザモジュール1000Aは制御器に接続している。
【0072】
以下、半導体レーザモジュール1000Aの半導体レーザモジュール1000との相違点について説明する。半導体レーザ素子100Bは、半導体レーザ素子100と同様に、制御器から駆動電流を供給されて、レーザ光L1を出力する。なお、半導体レーザ素子100の光出力端面100Baにレーザ光L1を導波する導波路の中心軸は、光出力端面100Baの法線に対して7°だけ傾斜している。その結果、レーザ光L1は、半導体レーザ素子100Bの光出力端面100Baの法線に対して23°を成す方向に出力する。これにより、光出力端面100Baにおいて発生する反射光が半導体レーザ素子100B内に戻り、レーザ特性が不安定になるということが抑制される。このようにレーザ光L1が傾斜した方向に出力するため、基台1002はレーザ光L1の進行方向に対して傾斜して配置されている。なお、半導体レーザ素子100Cは、図7に示すような構成の波長可変レーザ素子であってもよい。
【0073】
基台1013は、筐体1001内で基台1003、ビームスプリッタ1005、1007、集光レンズ1006、PD1008、1010、エタロンフィルタ1009、及び光アイソレータ1014を載置している。基台1013は、例えば熱伝導率が170W/m・Kと高いAlNからなるが、AlNに限らず、CuW、SiC、ダイヤモンドなどの熱伝導率が高い材料でもよい。
【0074】
光アイソレータ1014は、コリメータレンズ1004とビームスプリッタ1005との間に配置されている。光アイソレータ1014は、レーザ光L1をコリメータレンズ1004側からビームスプリッタ1005側に通過させるとともに、ビームスプリッタ1005側から進行してきた光を遮断し、当該光が半導体レーザ素子100Bに入力されることを防止する。
【0075】
つぎに、半導体光増幅器200Aについて具体的に説明する。図10は、半導体光増幅器200Aの構成を示す模式図である。
【0076】
半導体光増幅器200Aは、幅が約0.4mm、長さが約2mmであり、活性コア層201Aを備えている。活性コア層201Aは、半導体光増幅器200Aの入力側202Aから出力側203Aまで延伸しており、その長さは約2mmである。活性コア層201Aは、入力側202Aから入力されたレーザ光L1を長手方向(光導波方向)に導波しながら増幅して、レーザ光L2として出力側203Aから出力する。なお、半導体光増幅器200Aの、活性コア層201Aに沿った断面及び活性コア層201Aの長手方向に垂直な断面構造は、半導体光増幅器200の対応する断面構造と同様である。
【0077】
半導体光増幅器200Aの活性コア層201Aは、半導体光増幅器200A内において、均一なコア厚さ160nmを有する。また、図10に示すように、活性コア層201Aは、主導波部201Aa、入力側等幅部201Ab、テーパ部201Ac、及び曲がり導波部201Adを備えている。図10では明確には記載されていないが、曲がり導波部201Adは、テーパ部201Acと主導波部201Aaとを接続する、緩やかかつ連続的に曲がった導波路である。この曲がり導波路部201Adは、テーパ部201Acと一体として、幅の変化と曲がりを同時に有するものとすることも可能である。主導波部201Aaは、入力側主導波部201Aaa、出力側主導波部201Aab、及び曲がり導波部201Aeを備えている。図10では明確には記載されていないが、曲がり導波部201Aeは、入力側主導波部201Aaaと出力側主導波部201Aabとを接続する、緩やかかつ連続的に曲がった導波路である。
【0078】
主導波部201Aaは、活性コア層201Aの長手方向における中央部201Aacを含み、コア幅が一定の部分である。中央部201Aacは、入力側202A及び出力側203Aのそれぞれから約1mmの位置を含む領域である。主導波部201Aaのコア幅W3は、1.55μm帯の光をシングルモードで導波できる値であり、本実施形態2では2μmである。また、主導波部201Aaの出力側主導波部201Aabの中心軸X1は、半導体光増幅器200Aの光出力端面204Aの法線N1に対して角度θ1=7°だけ傾斜している。
【0079】
入力側等幅部201Abは、入力側202Aに位置し、中心軸X2における長さが約20μmであり、コア幅が一定の部分である。入力側等幅部201Abのコア幅W4は本実施形態2では3μmであり、中央部201Aacでのコア幅W3とは異なり、広くなっている。また、入力側等幅部201Abの中心軸X2は、半導体光増幅器200Aの光入力端面205Aの法線N2に対して角度θ2=7°だけ傾斜している。したがって、出力側主導波部201Aabと入力側等幅部201Abとは平行になっている。また、半導体レーザ素子100Cから出力されたレーザ光L1は、半導体光増幅器200Aの光入力端面205Aの法線N2に対して23°を成す方向から半導体光増幅器200Aに入力する。また、レーザ光L2は、半導体光増幅器200Aから、光出力端面204Aの法線N1に対して23°を成す方向に出力する。
【0080】
テーパ部201Acは、入力側202Aから中央部201Aacに向かってコア幅が徐々に狭くなる領域であり、その長さは約100μmである。テーパ部201Acは、中央部201Aacよりも入力側202Aに近い位置にある。テーパ部201Acは、光導波方向における長さが10μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0081】
半導体レーザモジュール1000Aでは、半導体光増幅器200Aの活性コア層201Aが、半導体光増幅器200A内において均一なコア厚さを有するとともに、入力側202Aでのコア幅W4が中央部201Aacでのコア幅W3よりも広くなっていることにより、半導体レーザ素子100Bと半導体光増幅器200Aとの結合効率が高くなっている。
【0082】
また、活性コア層201Aは、半導体光増幅器200Aの入力側202Aと出力側203Aとにおいて、それぞれ光入力端面205A、光出力端面204Aに対して傾斜している。これにより、各端面において発生する反射光が活性コア層201Aに結合し、動作が不安定になるということが抑制される。
【0083】
(半導体光増幅器のその他の構成例)
図11は、半導体光増幅器のその他の構成例を示す模式図である。図11(a)に示す半導体光増幅器200Bは、活性コア層201Bにおいて、主導波部201Baに対して入力側202Bに入力側等幅部201Bbとテーパ部201Bcとを備えるとともに、出力側203Bにも出力側等幅部201Bfとテーパ部201Bgとを備える。入力側等幅部201Bb及び出力側等幅部201Bfの長さ及び幅は、半導体光増幅器200の活性コア層201の入力側等幅部201bの長さ及び幅と同じであってもよい。テーパ部201Bcの長さと幅は、活性コア層201のテーパ部201cの長さ及び幅と同じであってもよい。活性コア層201Bは、出力側203Bのコア幅が、光導波方向における中央部でのコア幅とは異なり、広くなっている。これにより、出力側等幅部201Bfおよびテーパ部201Bgにおいて、電流注入する際の抵抗が下がるので、電力効率が向上する。テーパ部201Bgの長さは、テーパ部201Bcの長さに比べて長くすることにより、抵抗を下げる効果を大きくすることができる。すなわち、テーパ部201Bcの長さはコア幅の急激な変化による損失の増加を抑制することができる範囲でなるべく小さくなるように選ばれるが、テーパ部201Bgの長さはそれよりも長く、例えば500μm程度とすることによって効率が向上する。
【0084】
図11(b)に示す半導体光増幅器200Cは、活性コア層201Cにおいて、主導波部201Caに対して入力側202Cに入力側等幅部201Cbとテーパ部201Ccと曲がり導波部201Cdとを備えるとともに、出力側203Cにも出力側等幅部201Cfとテーパ部201Cgと曲がり導波部201Chとを備える。図11では明確には記載されていないが、曲がり導波部201Cd、201Chは、緩やかかつ連続的に曲がっている。入力側等幅部201Cb及び出力側等幅部201Cfの長さ及び幅は、半導体光増幅器200Aの活性コア層201Aの入力側等幅部201Abの長さ及び幅と同じであってもよい。テーパ部201Ccの長さと幅は、活性コア層201Aのテーパ部201Acの長さ及び幅と同じであってもよい。曲がり導波部201Cdの形状は、活性コア層201Aの曲がり導波部201Adの形状と同じであってもよい。曲がり導波路部201Cdは、テーパ部201Ccと一体として、幅の変化と曲がりを同時に有するものとしてもよい。曲がり導波路部201Chは、テーパ部201Cgと一体として、幅の変化と曲がりを同時に有するものとしてもよい。活性コア層201Cは、出力側203Cのコア幅が、光導波方向における中央部でのコア幅とは異なり、広くなっている。これにより、出力側等幅部201Cfおよびテーパ部201Cgにおいて、電流注入する際の抵抗が下がるので、電力効率が向上する。テーパ部201Cgの長さは、テーパ部201Ccの長さに比べて長くしてもよい。
【0085】
なお、上記実施形態では、半導体光増幅器の活性コア層が、入力側でのコア幅が中央部でのコア幅よりも広くなっている形状を有する。しかし、半導体レーザ素子の特性によっては、入力側でのコア幅が中央部でのコア幅よりも狭くなっている形状とすることにより、半導体レーザ素子と半導体光増幅器との結合効率を高めるようにしてもよい。また、入力側等幅部は長さが実質的にゼロでもよいし、テーパ部は必須の構成ではない。すなわち、活性コア層の入力側のコア幅が、長手方向における少なくとも中央部でのコア幅とは異なることにより、半導体レーザ素子と半導体光増幅器との結合効率を高めることができればよい。また、活性コア層の出力側のコア幅が、光導波方向における中央部でのコア幅とは異なり、狭くなっていてもよい。
【0086】
また、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。例えば、図1に示す半導体レーザモジュール1000において、コリメータレンズ1004とビームスプリッタ1005との間に光アイソレータを配置してもよい。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0087】
201、201A、201B、201C 活性コア層
110b、200b n型半導体層
110j スペーサ層
110g、200f p型InP埋め込み層
110h、200g n型InP電流ブロッキング層
110d、200c p型半導体層
110e、200d コンタクト層
200e p側電極
110i、200h SiNx保護膜
200ha 開口部
110a、200a n側電極
100、100A、100B 半導体レーザ素子
100Ca 光出力端面
110 埋め込み型導波構造領域
110c 導波路コア層
113 入力導波路
120a、120b スラブ導波構造領域
130 ハイメサ型導波構造領域
141 入力側スラブ導波路
141a、141b 入力端面
142 出力側スラブ導波路
142a 出力端
143 アレイ導波路
200、200A、200B、200C 半導体光増幅器
201a、201Aa、201Ba、201Ca 主導波部
201Aaa 入力側主導波部
201Aab 出力側主導波部
201aa、201Aac 中央部
201b、201Ab、201Bb、201BCb、201Cb 入力側等幅部
201c、201Ac、201Bc、201Bg、201Cc、201Cg テーパ部
201Ad、201Ae、201Cd、201Ch 曲がり導波部
201Bf、201Cf 出力側等幅部
202、202A、202B、202C 入力側
203、203A、203B、203C 出力側
204A 光出力端面
205A 光入力端面
1000、1000A 半導体レーザモジュール
1001 筐体
1001a 取付部
1002、1003、1013 基台
1004 コリメータレンズ
1005、1007 ビームスプリッタ
1006、1011 集光レンズ
1009 エタロンフィルタ
1008、1010 PD
1012 光ファイバ
1014 光アイソレータ
111~11112 DFBレーザ素子
L1、L2、L3 レーザ光
N1、N2 法線
X1、X2 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11