(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】硬化性組成物、平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、化合物
(51)【国際特許分類】
B41N 1/14 20060101AFI20220425BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220425BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220425BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20220425BHJP
G03F 7/029 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
B41N1/14
C08F2/44 B
G03F7/004 505
G03F7/004 507
G03F7/004 501
G03F7/00 503
G03F7/029
(21)【出願番号】P 2019503036
(86)(22)【出願日】2018-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2018007359
(87)【国際公開番号】W WO2018159640
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2019-08-27
(31)【優先権主張番号】P 2017037779
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017191496
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017252560
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石地 洋平
(72)【発明者】
【氏名】野越 啓介
(72)【発明者】
【氏名】榎本 和朗
(72)【発明者】
【氏名】宮川 侑也
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/058490(WO,A1)
【文献】特開2015-118267(JP,A)
【文献】特開2006-241406(JP,A)
【文献】特開2015-096598(JP,A)
【文献】特開2007-238777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
B41N 1/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下である有機アニオン、及びb)カウンターカチオンを有する塩化合物を含有する、平版印刷版用硬化性組成物であって、
前記有機アニオンが、(A)環に結合するスルホンアミドアニオン構造又は環に結合するスルホンイミドアニオン構造を有する有機アニオンであり、
前記組成物が、
重合性化合物及び赤外線吸収剤を更に含
み
前記重合性化合物がエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物である、平版印刷版用硬化性組成物。
【請求項2】
a)ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下である有機アニオン、及びb)カウンターカチオンを有する塩化合物を含有する、平版印刷版用硬化性組成物であって、
前記有機アニオンが、下記式(V)で表される有機アニオンであ
り、
前記組成物が、重合性化合物を更に含み、
前記重合性化合物がエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物である、平版印刷版用硬化性組成物。
【化1】
式(V)中、Cy1及びCy2は、同じでも異なってもよく、それぞれ、ホウ素原子、酸素原子及びYと共に形成される環構造を表わし、Yは、それぞれ独立に、-O-又は-NR
5-を表し、R
5は水素原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
前記Cy1で表される環構造は、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基を有する芳香環で縮環されており、前記Cy2で表される環構造は、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基を有する芳香環で縮環されている。
【請求項3】
前記有機アニオンが、下記式(VI)で表される有機アニオンである請求項2に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
【化2】
式(VI)中、R
7~R
14は、同じでも異なってもよく、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、又はスルホンイミド構造を有する基を表す。
R
7~R
10の少なくとも一つは、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、又はスルホンイミド構造を有する基を表し、
R
11~R
14の少なくとも一つは、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、又はスルホンイミド構造を有する基を表す。
【請求項4】
赤外線吸収剤を更に含む、請求項2又は3に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
【請求項5】
前記赤外線吸収剤が、シアニン系色素である、請求項1又は4に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
【請求項6】
前記カウンターカチオンが、ジアリールヨードニウムカチオン、又はトリアリールスルホニウムカチオンである、請求項1~5のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
【請求項7】
前記カウンターカチオンがシアニン系色素におけるカウンターカチオンである、請求項1~6のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
【請求項8】
前記カウンターカチオンが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又は窒素原子上に正電荷が存在する有機カチオンである、請求項1~7のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
【請求項9】
酸発色剤を更に含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
【請求項10】
ポリマー粒子を更に含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
【請求項11】
バインダーポリマーを更に含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物を含有する画像記録層を支持体上に有する平版印刷版原版。
【請求項13】
前記画像記録層上に、保護層を有する、請求項
12に記載の平版印刷版原版。
【請求項14】
請求項
12又は
13に記載の平版印刷版原版を画像露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも1つにより、前記画像記録層の未露光部分を除去する工程と、を含む平版印刷版の作製方法。
【請求項15】
請求項
12又は
13に記載の平版印刷版原版を画像露光する工程と、
pHが2~11の現像液により前記画像記録層の未露光部分を除去する工程と、を含む平版印刷版の作製方法。
【請求項16】
平版印刷版用硬化性組成物を含有する画像記録層を支持体上に有する平版印刷版原版を画像露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも1つにより、前記画像記録層の未露光部分を除去する工程と、を含む平版印刷版の作製方法であって、
前記組成物が、a)ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下である有機アニオン、及びb)カウンターカチオンを有する塩化合物を含有する、平版印刷版用硬化性組成物であって、
前記有機アニオンが、(A)環に結合するスルホンアミドアニオン構造又は環に結合するスルホンイミドアニオン構造を有する有機アニオンであ
り、
前記組成物が、重合性化合物を更に含み、
前記重合性化合物がエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物である、平版印刷版の作製方法。
【請求項17】
平版印刷版用硬化性組成物を含有する画像記録層を支持体上に有する平版印刷版原版を画像露光する工程と、
pHが2~11の現像液により前記画像記録層の未露光部分を除去する工程と、を含む平版印刷版の作製方法であって、
前記組成物が、a)ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下である有機アニオン、及びb)カウンターカチオンを有する塩化合物を含有する、平版印刷版用硬化性組成物であって、
前記有機アニオンが、(A)環に結合するスルホンアミドアニオン構造又は環に結合するスルホンイミドアニオン構造を有する有機アニオンであ
り、
前記組成物が、重合性化合物を更に含み、
前記重合性化合物がエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物である、平版印刷版の作製方法。
【請求項18】
前記画像記録層上に、保護層を有する、請求項
16又は
17に記載の平版印刷版の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、平版印刷版原版、平版印刷版の作製方法、及び、化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
硬化性組成物、なかでも、光硬化性組成物は、光の照射により、照射部分が硬化する性質を有する組成物であり、この組成物を適宜溶剤に溶解又は分散して形成した塗布液を、適当な支持体に塗布、乾燥して、光硬化性皮膜を形成して画像形成材料を作製することができる。画像形成材料としては、平版印刷版原版、プリント配線基盤、カラーフィルター、フォトマスク等の画像露光による硬化を利用する画像形成材料が挙げられる。
以下、平版印刷版原版を例に説明する。
【0003】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキとが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙等の被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
【0004】
平版印刷版原版から平版印刷版を作製する製版工程においては、現在、CTP(コンピュータ・トゥ・プレート)技術による画像露光が行われている。即ち、画像露光は、リスフィルムを介することなく、レーザーやレーザーダイオードを用いて、直接平版印刷版原版に走査露光などにより行われる。
【0005】
また、平版印刷版原版の製版に関しては、地球環境への関心の高まりから、現像処理などの湿式処理に伴う廃液に関する環境問題がクローズアップされ、これに伴い、現像処理の簡易化又は無処理化が指向されている。簡易な現像処理の一つとして、「機上現像」と呼ばれる方法が提案されている。機上現像は、平版印刷版原版を画像露光後、従来の現像処理は行わず、そのまま印刷機に取り付け、画像記録層の非画像部の除去を通常の印刷工程の初期段階で行う方法である。
【0006】
平版印刷版原版は、通常、アルミニウム板などの支持体上に、画像記録層を有する。画像記録層は、ネガ型画像記録層の場合、画像露光により、露光部が硬化して画像部を形成する機能を有する。従って、画像記録層は、画像露光により画像を形成するための成分を含有する。画像記録層に含有される1成分として、露光によりラジカルを発生する光重合開始剤が挙げられる。
画像記録層に含有される光重合開始剤としては、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムと、カウンターアニオンとしての無機又は有機のアニオンからなる塩化合物が用いられる。カウンターアニオンとしての無機又は有機のアニオンとしては、スルホネートアニオン、カルボキシレートアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、p-トルエンスルホネートアニオン、トシレートアニオンなどが知られている。例えば、特許文献1には、特定構造のジアリールヨードニウムカチオンと特定構造のボレートアニオンからなる塩化合物を光重合開始剤として含有する放射線感光性組成物が記載されている。
【0007】
平版印刷版を印刷機に取り付ける前工程として、一般に、平版印刷版に目的通りの画像記録がされているか、平版印刷版上の画像を検査、識別する作業(検版)が行われる。特に、多色印刷においては、見当合わせの目印となるトンボ(レジスタマーク)を判別できるかことが印刷作業において重要である。
【0008】
通常の現像処理工程を伴う平版印刷版原版においては、画像記録層を着色することにより現像処理によって着色画像が得られるので、印刷機に平版印刷版を取り付ける前に画像を容易に確認することができる。
ところが、通常の現像処理工程を伴わない機上現像型又は無処理(無現像)型の平版印刷版原版では、平版印刷版原版を印刷機に取り付ける段階で平版印刷版原版上の画像を確認することが困難であり、検版を十分行うことができない。そのため、機上現像型又は無処理(無現像)型平版印刷版原版においては、機上現像に悪影響を与えることなく、露光した段階で画像を確認する手段、即ち、露光領域が発色又は消色する、いわゆるプリントアウト画像が形成されることが要求される。
【0009】
プリントアウト画像を形成する手段としては、画像記録層に光酸発生剤と酸発色性染料(ロイコ染料)を含有させ、画像露光により光酸発生剤から生じた酸の作用により、酸発色性染料が発色することによって着色画像を形成する方法が知られている。
【0010】
更に、平版印刷版原版は、高い熱経時安定性を有することが望まれる。熱経時安定性が低いと、熱経時により平版印刷版原版中で暗重合が進行し、その結果、機上現像性が低下する。また、ロイコ染料などの酸発色染料を含む平版印刷版原版では、熱経時によりリング状発色を生じるという問題がある。従って、熱経時安定性は平版印刷版原版にとって重要な特性である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、機上現像性に優れる平版印刷版原版を作製できる硬化性組成物を提供することである。
本発明の他の課題は、高い熱経時安定性を有する硬化性組成物を提供することである。
本発明の他の課題は、高い熱経時安定性を有し、機上現像性に優れ、且つ、優れた耐刷性を有する平版印刷版を作製できる平版印刷版原版を提供することである。
本発明の更に他の課題は、高い熱経時安定性を有し、検版性及び機上現像性に優れ、且つ、優れた耐刷性を有する平版印刷版を作製できる平版印刷版原版を提供することである。
本発明の更に他の課題は、高い熱経時安定性を有し、優れた耐刷性を有する平版印刷版を作製できる平版印刷版原版を提供することである。
本発明の更に他の課題は、上記平版印刷版原版を用いる平版印刷版の作製方法を提供することであり、また、上記平版印刷版原版の画像記録層に用いられる化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段を以下に記載する。
<1>
a)ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下である有機アニオン、及びb)カウンターカチオンを有する塩化合物を含有する、平版印刷版用硬化性組成物であって、
上記有機アニオンが、(A)環に結合するスルホンアミドアニオン構造又は環に結合するスルホンイミドアニオン構造を有する有機アニオンであり、
上記組成物が、
重合性化合物及び赤外線吸収剤を更に含
み、
上記重合性化合物がエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物である、平版印刷版用硬化性組成物。
<2>
a)ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下である有機アニオン、及びb)カウンターカチオンを有する塩化合物を含有する、平版印刷版用硬化性組成物であって、
上記有機アニオンが、下記式(V)で表される有機アニオンであ
り、
上記組成物が、重合性化合物を更に含み、
上記重合性化合物がエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物である、平版印刷版用硬化性組成物。
【化1】
式(V)中、Cy1及びCy2は、同じでも異なってもよく、それぞれ、ホウ素原子、酸素原子及びYと共に形成される環構造を表わし、Yは、それぞれ独立に、-O-又は-NR
5-を表し、R
5は水素原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
上記Cy1で表される環構造は、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基を有する芳香環で縮環されており、上記Cy2で表される環構造は、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基を有する芳香環で縮環されている。
<3>
上記有機アニオンが、下記式(VI)で表される有機アニオンである<2>に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
【化2】
式(VI)中、R
7~R
14は、同じでも異なってもよく、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、又はスルホンイミド構造を有する基を表す。
R
7~R
10の少なくとも一つは、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、又はスルホンイミド構造を有する基を表し、
R
11~R
14の少なくとも一つは、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、又はスルホンイミド構造を有する基を表す。
<4>
赤外線吸収剤を更に含む、<2>又は<3>に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
<5>
上記赤外線吸収剤が、シアニン系色素である、<1>又は<4>に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
<6>
上記カウンターカチオンが、ジアリールヨードニウムカチオン、又はトリアリールスルホニウムカチオンである、<1>~<5>のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
<7>
上記カウンターカチオンがシアニン系色素におけるカウンターカチオンである、<1>~<6>のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
<8>
上記カウンターカチオンが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又は窒素原子上に正電荷が存在する有機カチオンである、<1>~<7>のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物
。
<9>
酸発色剤を更に含む、<1>~<
8>のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
<
10>
ポリマー粒子を更に含む、<1>~<
9>のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
<
11>
バインダーポリマーを更に含む、<1>~<
10>のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
<
12>
<1>~<
11>のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物を含有する画像記録層を支持体上に有する平版印刷版原版。
<
13>
上記画像記録層上に、保護層を有する、<
12>に記載の平版印刷版原版。
<
14>
<
12>又は<
13>に記載の平版印刷版原版を画像露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも1つにより、上記画像記録層の未露光部分を除去する工程と、を含む平版印刷版の作製方法。
<
15>
<
12>又は<
13>に記載の平版印刷版原版を画像露光する工程と、
pHが2~11の現像液により上記画像記録層の未露光部分を除去する工程と、を含む平版印刷版の作製方法。
<
16>
平版印刷版用硬化性組成物を含有する画像記録層を支持体上に有する平版印刷版原版を画像露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも1つにより、上記画像記録層の未露光部分を除去する工程と、を含む平版印刷版の作製方法であって、
上記組成物が、a)ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下である有機アニオン、及びb)カウンターカチオンを有する塩化合物を含有する、平版印刷版用硬化性組成物であって、
上記有機アニオンが、(A)環に結合するスルホンアミドアニオン構造又は環に結合するスルホンイミドアニオン構造を有する有機アニオンであ
り、
上記組成物が、重合性化合物を更に含み、
上記重合性化合物がエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物である、平版印刷版の作製方法。
<
17>
平版印刷版用硬化性組成物を含有する画像記録層を支持体上に有する平版印刷版原版を画像露光する工程と、
pHが2~11の現像液により上記画像記録層の未露光部分を除去する工程と、を含む平版印刷版の作製方法であって、
上記組成物が、a)ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下である有機アニオン、及びb)カウンターカチオンを有する塩化合物を含有する、平版印刷版用硬化性組成物であって、
上記有機アニオンが、(A)環に結合するスルホンアミドアニオン構造又は環に結合するスルホンイミドアニオン構造を有する有機アニオンであ
り、
上記組成物が、重合性化合物を更に含み、
上記重合性化合物がエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物である、平版印刷版の作製方法。
<
18>
上記画像記録層上に、保護層を有する、<
16>又は<
17>に記載の平版印刷版の作製方法。
本発明は、上記<1>~<
18>に係る発明であるが、以下、それ以外の事項(例えば、下記〔1〕~〔25〕)についても記載している。
【0014】
〔1〕a)ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下である有機アニオン、及びb)カウンターカチオンを有する塩化合物を含有する、硬化性組成物。
【0015】
〔2〕
上記有機アニオンが、分子内に芳香環又は複素環を有する有機アニオンである、〔1〕に記載の硬化性組成物。
【0016】
〔3〕
上記有機アニオンが、(A)環に結合するスルホンアミドアニオン構造又は環に結合するスルホンイミドアニオン構造を有する有機アニオンである、〔1〕に記載の硬化性組成物。
【0017】
〔4〕
上記有機アニオンが、下記式(V)で表される有機アニオンである〔2〕に記載の硬化性組成物。
【0018】
【0019】
式(V)中、Cy1及びCy2は、同じでも異なってもよく、それぞれ、ホウ素原子、酸素原子及びYと共に形成される環構造を表わし、Yは、それぞれ独立に、-O-又は-NR5-を表し、R5は水素原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
上記Cy1で表される環構造は、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基を有する芳香環で縮環されており、上記Cy2で表される環構造は、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基を有する芳香環で縮環されている。
【0020】
〔5〕
上記有機アニオンが、下記式(VI)で表される有機アニオンである〔4〕に記載の硬化性組成物。
【0021】
【0022】
式(VI)中、R7~R14は、同じでも異なってもよく、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、又はスルホンイミド構造を有する基を表す。
R7~R10の少なくとも一つは、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、又はスルホンイミド構造を有する基を表し、
R11~R14の少なくとも一つは、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、又はスルホンイミド構造を有する基を表す。
【0023】
〔6〕
(A)環に結合するスルホンアミドアニオン構造又は環に結合するスルホンイミドアニオン構造を有する有機アニオン、及び
(B)カウンターカチオン
を有する塩化合物を含有する、硬化性組成物。
【0024】
〔7〕
上記有機アニオンが、下記一般式(I)で表される〔6〕に記載の硬化性組成物。
【0025】
【0026】
一般式(I)中、Cyはアリール基、ヘテロアリール基、又は不飽和結合を有していても良い脂環基を表す。
Xはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、SO2Ra、SORb、CORc、PO3Rd、PO(Re)(Rf)、又はHを表す。Ra、Rb、Rc、Rd、Re、及びRfは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、及びHよりなる群から選ばれる基を表す。Ra、Rb、Rc、Rd、Re、又はRfはCyと結合し環を形成しても良い。
【0027】
〔8〕
上記有機アニオンが、下記一般式(II)で表される〔7〕に記載の硬化性組成物。
【0028】
【0029】
一般式(II)中、Cyはアリール基、ヘテロアリール基、又は不飽和結合を有していても良い脂環基を表す。
Raはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、及びHよりなる群から選ばれる基を表す。RaはCyと結合し環を形成しても良い。
【0030】
〔9〕
上記有機アニオンが、下記一般式(III)または(IV)で表される〔8〕に記載の硬化性組成物。
【0031】
【0032】
一般式(III)中、R1~R10は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。
一般式(IV)中、R11~R14は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。
【0033】
〔10〕
上記カウンターカチオンが、ジアリールヨードニウムカチオン、又はトリアリールスルホニウムカチオンである、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0034】
〔11〕
上記カウンターカチオンがシアニン系色素におけるカウンターカチオンである、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0035】
〔12〕
上記カウンターカチオンが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又は窒素原子上に正電荷が存在する有機カチオンである、〔1〕~〔9〕のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0036】
〔13〕
赤外線吸収剤を更に含む、〔1〕~〔10〕、及び〔12〕のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0037】
〔14〕
上記赤外線吸収剤が、シアニン系色素である、〔13〕に記載の硬化性組成物。
【0038】
〔15〕
重合性化合物を更に含む、〔1〕~〔14〕のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0039】
〔16〕
酸発色剤を更に含む、〔1〕~〔15〕のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0040】
〔17〕
ポリマー粒子を更に含む、〔1〕~〔16〕のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0041】
〔18〕
バインダーポリマーを更に含む、〔1〕~〔17〕のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【0042】
〔19〕
〔1〕~〔18〕のいずれか1項に記載の平版印刷版用硬化性組成物。
【0043】
〔20〕
〔1〕~〔19〕のいずれか1項に記載の硬化性組成物を含有する画像記録層を支持体上に有する平版印刷版原版。
【0044】
〔21〕
上記画像記録層上に、保護層を有する、〔20〕に記載の平版印刷版原版。
【0045】
〔22〕
〔20〕又は〔21〕に記載の平版印刷版原版を画像露光する工程と、
印刷機上で印刷インキ及び湿し水よりなる群から選ばれた少なくとも1つにより、上記画像記録層の未露光部分を除去する工程と、を含む平版印刷版の作製方法。
【0046】
〔23〕
〔20〕又は〔21〕に記載の平版印刷版原版を画像露光する工程と、
pHが2~11の現像液により上記画像記録層の未露光部分を除去する工程と、を含む平版印刷版の作製方法。
【0047】
〔24〕
有機アニオンが下記一般式(III)又は(IV)で表され、カウンターカチオンがジアリールヨードニウムカチオン、トリアリールスルホニウムカチオンである化合物。
【0048】
【0049】
一般式(III)中、R1~R10は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。
一般式(IV)中、R11~R14は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。
【0050】
〔25〕
有機アニオンが下記一般式(III)又は(IV)で表され、カウンターカチオンがシアニン色素におけるカウンターカチオンである化合物。
【0051】
【0052】
一般式(III)中、R1~R10は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。
一般式(IV)中、R11~R14は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、機上現像性に優れる平版印刷版原版を作製できる硬化性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、高い熱経時安定性を有する硬化性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、高い熱経時安定性を有し、機上現像性に優れ、且つ、優れた耐刷性を有する平版印刷版を作製できる平版印刷版原版を提供することができる。
更に、本発明によれば、高い熱経時安定性を有し、検版性及び機上現像性に優れ、且つ、優れた耐刷性を有する平版印刷版を作製できる平版印刷版原版を提供することができる。
更に、本発明によれば、高い熱経時安定性を有し、優れた耐刷性を有する平版印刷版を作製できる平版印刷版原版を提供することができる。
更に、本発明によれば、上記平版印刷版原版を用いる平版印刷版の作製方法、上記平版印刷版原版の画像記録層に用いられる化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書中、「xx~yy」の記載は、xx及びyyを含む数値範囲を表す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの双方、又は、いずれかを表し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの双方、又は、いずれかを表す。
また、本発明において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本発明において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本発明における重量平均分子量(Mw)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
本明細書において、式で表される化合物における基の表記に関して、置換あるいは無置換を記していない場合、上記基が更に置換基を有することが可能な場合には、他に特に規定がない限り、無置換の基のみならず置換基を有する基も包含する。例えば、式において、「Rはアルキル基、アリール基又は一価のヘテロ環基を表す」との記載があれば、「Rは無置換アルキル基、置換アルキル基、無置換アリール基、置換アリール基、無置換の一価のヘテロ環基又は置換基を有する一価のヘテロ環基を表す」ことを意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0055】
[硬化性組成物]
第一の態様として、本発明の硬化性組成物は、a)ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下である有機アニオン(以下、「a)有機アニオン」又は「第一の有機アニオン」ともいう)、及び、b)カウンターカチオンを有する塩化合物(以下、「パラメータ規定化合物」とも言う)を含有する。
なお、δd、δp、及びδHの単位は、MPa0.5である。
【0056】
本発明の第一の態様に係る硬化性組成物(「第一の硬化性組成物」ともいう)は、上記構成により、機上現像性に優れる平版印刷版原版を作製できるものである。
その理由は明らかではないが、以下の通りと推測される。
先ず、本発明らは、インキと湿し水とを用いる平版印刷版原版の機上現像においては、一般に、インキの溶解パラメータ(SP値)と水の溶解パラメータ(SP値)との差が大きいため、機上現像において除去されるべき画像形成層の非画像部は、そもそも、インクと湿し水のそれぞれに対しては親和しにくい環境に曝されており、これが機上現像性の低下の要因になっているものと推測した。
ところで、溶解パラメータ(SP値)としては、ハンセンの溶解パラメータが挙げられ、このハンセンの溶解パラメータとしては、分散性に寄与するδd、極性に寄与するδp、及び、水素結合に寄与するδHが知られているが、今般、本発明者らは、これらの3つのパラメータを用いて規定した有機アニオンを有する特定の塩化合物を硬化性組成物に含有させることによって、平版印刷版原版の機上現像液を向上させることを見出し、上記構成を完成させたものである。
具体的には、先ず、上記塩化合物の有機アニオンにおけるδdを16以上とすることで、この塩化合物間同士には、互いの化合物が有する親油性基と親油性基との相互作用等により、充分な分子間力が発現するように構成されているものと考えられる。これにより、機上現像前においては、画像形成層を所望の状態としつつ、機上現像時においては、インキが上記相互作用を緩和するなどして、上記分子間力を低減しやすくなっているものと考えられる。
また、上記塩化合物の有機アニオンにおけるδpを16以上とすることで、この塩化合物の極性度を高めることにより、機上現像時においては、画像形成層の非画像部が、水に対しても親和するものと考えられる。
しかしながら、本発明者らは、鋭意検討の結果、単に、δpが16以上の有機アニオンを有する塩化合物を画像記録層が含有させればよいのではなく、先ず、δpを32以下とする必要があることを見出した。これは、塩化合物の極性度が高すぎると、インキに対する非親和度が大きくなり、その結果、非画像部の除去がスムーズに進まないことによるものと推測される。
また、本発明者らは、鋭意検討の結果、δHがδpの60%以下とする必要もあることを見出した。これは、詳細な理由は不明ではあるが、インキと湿し水とを用いる平版印刷版原版の機上現像においては、δpに対してδHを一定値以下とした上で、すなわち、水素結合による寄与を一定以下とした上で、上記塩化合物の極性度を高めることが、非画像部の除去、ひいては、機上現像性の向上に必要になるものと推察している。
以上のように、上記塩化合物は、平版印刷版原版の機上現像時に存在するインキ及び湿し水に対して選択的に溶媒和する性質を有し、ひいては、インキ及び湿し水の両方に対して親和性を有するものと考えられる。その結果、本発明の第一の態様に係る硬化性組成物は、機上現像性に優れる平版印刷版原版を作製できるものと考えられる。
【0057】
ハンセンのSP値パラメータおけるδd、δp、及びδHはそれぞれ、市販されているハンセン溶解度パラメータソフトウェア(Hansen Solubility Parameter in Practice version4.1.07)により算出することができる。
【0058】
ハンセンのSP値パラメータにおけるδdは16以上であり、好ましくは18以上、更に好ましくは20以上である。
ハンセンのSP値パラメータにおけるδdの上限値は特に限定されないが、好ましくは32以下であり、更に好ましくは28以下である。
【0059】
ハンセンのSP値パラメータにおけるδpは16以上32以下であり、好ましくは18以上30以下であり、更に好ましくは20以上28以下である。
【0060】
ハンセンのSP値パラメータにおけるδHはδpの60%以下であり、好ましくはδpの55%以下であり、更に好ましくはδpの50%以下である。
δHはδpの20%以上が好ましく、δpの30%以上が更に好ましい。
【0061】
本発明の第一の態様に係る硬化性組成物に含有される塩化合物は、a)有機アニオンとb)カウンターカチオンとがイオン結合により結合している化合物である。
【0062】
〔a)有機アニオン〕
上記a)有機アニオンは、上記「ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下である」を満たしやすいという観点から、分子内に芳香環又は複素環を有する有機アニオンであることが好ましい。
芳香環は、具体的には芳香族炭化水素環であり、芳香族炭化水素環としては、炭素数6~20の芳香族炭化水素環が挙げられ、具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラキノンなどが挙げられる。
複素環は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1つの複素原子を含む複素環である。複素環は5員環~8員環が好ましい。複素環は飽和でも不飽和でもよい。複素環は、芳香族の複素環が好ましい。
複素環の例としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピロリン環などが挙げられる。
【0063】
パラメータ規定化合物は、有機アニオンが、「ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下」の要件を満たせば、特に限定されないが、上記a)有機アニオンが、(A)環に結合するスルホンアミドアニオン構造又は環に結合するスルホンイミドアニオン構造を有する有機アニオンであることが好ましく、これにより、上記要件を容易に満たすことができる。
【0064】
なお、(A)環に結合するスルホンアミドアニオン構造又は環に結合するスルホンイミドアニオン構造を有する有機アニオンは後述の通りである。
【0065】
また、上記a)有機アニオンは、ボレートアニオンであることも好ましく、特には、下記式(V)で表される有機アニオンであることが好ましい。これにより、「ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下」の要件を容易に満たすことができる。
【0066】
【0067】
式(V)中、Cy1及びCy2は、同じでも異なってもよく、それぞれ、ホウ素原子、酸素原子及びYと共に形成される環構造を表わし、Yは、それぞれ独立に、-O-又は-NR5-を表し、R5は水素原子、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
上記Cy1で表される環構造は、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基を有する芳香環で縮環されており、上記Cy2で表される環構造は、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基を有する芳香環で縮環されている。
上記芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環どが挙げられる。
【0068】
式(V)において、Cy1又はCy2で表される環構造を構成する原子鎖は、例えば、-O-C-C-O-、-O-C-C-C-O-、-O-C-C-NR5-、-O-C-C-C-NR5-で表される。ここで、両端の-O-又は-NR5-は共にホウ素原子と直接結合する。環構造を構成する炭素原子は置換基を有していてもよく、例えば、オキシ基(=O)、アルキル基、アリール基が挙げられる。また、隣接する2つの炭素原子は、芳香環により縮環されている。隣接する2つの炭素原子に縮環する芳香環としては、上記した芳香環が挙げられる。芳香環は、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基を有する。
芳香環は、置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基などが挙げられる。
【0069】
式(V)において、Yは-O-が好ましい。Cy1又はCy2で表される環構造の例としては、カテコール、サリチル酸、シュウ酸誘導体と中心原子Bとから形成される環構造などが挙げられる。
【0070】
上記Cy1で表される環構造は、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基を有する芳香環で縮環されており、上記Cy2で表される環構造は、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基を有する芳香環で縮環されている。
【0071】
上記アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基において、アルキルアミド基におけるアルキル基、アルキルウレア基におけるアルキル基は、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキルが更に好ましい。アルキル基は、直鎖でも、分岐鎖でもよい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、ter-ブチル基,ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ter-オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などが挙げられる。アルキル基は置換基を有していてよく、置換基の例としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、アルコキシカルボニル基、シアノ基などが挙げられる。
【0072】
上記アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基において、アルケニルアミド基におけるアルケニル基は、炭素数2~12のアルケニル基が好ましく、炭素数2~6のアルケニル基がより好ましい。アルケニル基は、直鎖でも、分岐鎖でもよい。アルケニル基の例としては、エテニル基、プロペニル基などが挙げられる。アルケニル基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルコキシ基、アルキルカルボニル基などが挙げられる。
【0073】
上記アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基において、アリールアミド基におけるアリール基、アリールウレア基におけるアリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、炭素数6~10のアリール基がより好ましい。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。アリール基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、ウレア基、ハロゲン原子などが挙げられる。
【0074】
上記アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基において、スルホンアミド構造を有する基におけるスルホンアミド構造は、下記の構造を表す。なお、下記構造において、*は結合手を表す。
【0075】
【0076】
上記アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基において、スルホンイミド構造を有する基におけるスルホンイミド構造は、下記の構造を表す。なお、下記構造において、*は結合手を表す。
【0077】
【0078】
上記a)有機アニオンは、下記式(VI)で表される有機アニオンであることが好ましい。
【0079】
【0080】
式(VI)中、R7~R14は、同じでも異なってもよく、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、又はスルホンイミド構造を有する基を表す。
R7~R10の少なくとも一つは、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、又はスルホンイミド構造を有する基を表し、
R11~R14の少なくとも一つは、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、又はスルホンイミド構造を有する基を表す。
【0081】
R7~R14としてのアルキル基は、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基を有する芳香環で縮環されている上記Cy1で表される環構造における、アルキルアミド基におけるアルキル基、アルキルウレア基におけるアルキル基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、又はスルホンイミド構造を有する基は、それぞれ、上記Cy1、又はCy2で表される環構造が縮環される芳香環が有する、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基からなる群より選択される少なくとも一つの基における、アルキルアミド基、アルケニルアミド基、アリールアミド基、アルキルウレア基、アリールウレア基、スルホンアミド構造を有する基、及びスルホンイミド構造を有する基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0082】
a)有機アニオンとしての、ボレートアニオンの具体例をアニオン部として以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
【0084】
上記のB-1、B-2、B-3、B-4、B-5のハンセンのSP値パラメータにおけるδd、δp、δH、及びδHのδpに対する比率(%)((δH/δp)×100)を下表に記載する。
【0085】
【0086】
〔b)カウンターカチオン〕
b)カウンターカチオンは、後述の(B)カウンターカチオンと同様である。
【0087】
本発明に係るパラメータ規定化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明の第一の組成物において、後述の特定化合物の含有量と同様である。
【0088】
[硬化性組成物]
第二の態様として、本発明の硬化性組成物は(A)環に結合するスルホンアミドアニオン構造又は環に結合するスルホンイミドアニオン構造を有する有機アニオン(以下、「(A)有機アニオン」又は「第二の有機アニオン」ともいう)、及び、(B)カウンターカチオンを有する塩化合物を含有する。
【0089】
本発明の硬化性組成物(以下、単に「第二の組成物」ともいう)に含有される塩化合物(以下、単に「特定化合物」ともいう)は、(A)有機アニオンと(B)カウンターカチオンとがイオン結合により結合している化合物である。
【0090】
〔(A)有機アニオン〕
(A)有機アニオンにおけるスルホンアミドアニオン構造とは、下記のスルホンアミド構造から水素原子が除去されたアニオン構造を表す。なお、下記構造において、*は結合手を表す。
【0091】
【0092】
また、(A)有機アニオンにおけるスルホンイミドアニオン構造とは、下記のスルホンイミド構造から水素原子が除去されたアニオン構造を表す。なお、下記構造において、*は結合手を表す。
【0093】
【0094】
本発明における(A)有機アニオンは、窒素原子上に負電荷が存在するものであるが、例えば、共鳴構造によっても記載され得るものであり、窒素原子以外に負電荷が存在する構造でも良い。例えば、一例としてスルホンイミドアニオンにおける共鳴構造を下記に記載する。
【0095】
【0096】
本発明における(A)有機アニオンは、スルホンアミドアニオン構造、又は、スルホンイミドアニオン構造を1つ有する形態であってもよく、2つ以上有する形態であってもよい。
【0097】
本発明に係る特定化合物を構成する有機アニオンにおける環は、特に限定されないが、芳香族炭化水素環、脂環炭化水素環、又は複素環などが挙げられる。
【0098】
芳香族炭化水素環としては、炭素数6~20の芳香族炭化水素環が挙げられ、具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラキノンなどが挙げられる。
脂環炭化水素環としては、炭素数3~30の脂環炭化水素環が挙げられる。なお、脂環炭化水素環は、不飽和結合を有しても良い。
複素環は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1つの複素原子を含む複素環である。複素環は5員環~8員環が好ましい。複素環は飽和でも不飽和でもよい。複素環は、芳香族の複素環が好ましい。
複素環の例としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピロリン環などが挙げられる。
【0099】
本発明における(A)有機アニオンは、下記一般式(I)で表される有機アニオンであることが好ましい。なお、本発明に係る有機アニオンは、一般のアニオンと同様に、電子配置に従って複数の共鳴構造式で表すことができるが、本明細書においては、以下に示すように、窒素原子上の負電荷を有する共鳴構造式を用いて記載する。
【0100】
【0101】
一般式(I)中、Cyはアリール基、ヘテロアリール基、又は不飽和結合を有していても良い脂環基を表す。
Xはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、SO2Ra、SORb、CORc、PO3Rd、PO(Re)(Rf)、又はHを表す。Ra、Rb、Rc、Rd、Re、及びRfは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、及びHよりなる群から選ばれる基を表す。Ra、Rb、Rc、Rd、Re、又はRfは、Cyと結合し環を形成しても良い。
【0102】
Cyで表されるアリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、炭素数6~15のアリール基がより好ましく、炭素数6~10のアリール基が更に好ましい。アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基などが挙げられ、フェニル基などが好ましい。
【0103】
Cyで表されるヘテロアリール基は、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれる少なくとも1つの複素原子を含むヘテロ環から形成される基である。ヘテロ環は5員環~8員環が好ましく、5員環~6員環がより好ましい。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピロリル基、フラニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、インドリル基、キノリニル基、オキサジアゾリル基、ベンツオキサゾリル基などが挙げられる。
【0104】
Cyで表される脂環基は、炭素数3~30の脂環、好ましくは、炭素数4~9の脂環から形成される基である。脂環は、単環又は多環でも良い。また、脂環は、不飽和結合を有しても良い。
不飽和結合を有しても良い脂環基の例としては、シクロペンタニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプタニル基、シクロヘプタジエニル基、ノルボルネン基などが挙げられる。
【0105】
上記のアリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、アルケニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ハロゲン原子の1種又は2種以上が組み合わされてなる基などが挙げられる。
【0106】
式(I)において、Xで表されるアルキル基は、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基が更に好ましいアルキル基は、直鎖でも、分岐鎖でもよい。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基,ペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、tert-オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、エチルヘキシル基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、tert-ブチル基が好ましい。
【0107】
式(I)において、Xで表されるアリール基、ヘテロアリール基は、式(I)において、Cyで表されるアリール基、ヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0108】
式(I)において、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、及びRfで表されるアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基は、式(I)において、Xで表されるアルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0109】
式(I)において、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、及びRfで表されるアルコキシ基は、炭素数1~20のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~16のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1~12のアルコキシ基がさらに好ましい。
【0110】
上記のXで表されるアルキル基、アリール基、又はヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、アルケニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ハロゲン原子の1種又は2種以上が組み合わされてなる基などが挙げられる。
また、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Rf及びRgで表される、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、アルケニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ハロゲン原子の1種又は2種以上が組み合わされてなる基などが挙げられる。
【0111】
Xとしては、アルキル基、ヘテロアリール基、SO2Ra、SORb、CORc、PO3Rd、PO(Re)(Rf)、又はHが好ましい。
Ra、Rb、Rc、Rd、Re、又はRfは、Cyと結合し環を形成しても良い。なお、XがSO2Raであり、RaがH(水素原子)であり、Raが、Cyと結合し環を形成するとは、RaとしてのHが脱離して、SO2がCyと結合することを表すものである。
【0112】
本発明における(A)有機アニオンは、下記一般式(II)で表される有機アニオンであることが好ましい。
【0113】
【0114】
一般式(II)中、Cyはアリール基、ヘテロアリール基、又は不飽和結合を有していても良い脂環基を表す。
Raはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、及びHよりなる群から選ばれる基を表す。RaはCyと結合し環を形成しても良い。
【0115】
式(II)において、Cyで表されるアリール基、ヘテロアリール基、及び、不飽和結合を有していても良い脂環基は、式(I)において、Cyで表されるアリール基、ヘテロアリール基、及び、不飽和結合を有していても良い脂環基と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0116】
上記のCyで表されるアリール基、ヘテロアリール基、又はヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、アルケニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ハロゲン原子の1種又は2種以上が組み合わされてなる基などが挙げられる。
一般式(II)におけるRaは、一般式(I)のXにおけるRaと同様であり、好ましい範囲も同様である。
また、Raで表されるアルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アリール基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、アルケニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ハロゲン原子の1種又は2種以上が組み合わされてなる基などが挙げられる。
【0117】
本発明における(A)有機アニオンは、下記一般式(III)または(IV)で表される有機アニオンであることが好ましい。
【0118】
【0119】
一般式(III)中、R1~R10は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。
一般式(IV)中、R11~R14は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。
【0120】
一般式(III)中、R1~R10で表される1価の置換基としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されないが、例えば、アルキル基(炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基が更に好ましい。アルキル基は、直鎖でも、分岐鎖でもよい。)、アルコキシ基(アルコキシ基におけるアルキル基は炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基が更に好ましい。アルキル基は、直鎖でも、分岐鎖でもよい。)、アリールオキシ基(アリールオキシ基におけるアリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、炭素数6~15のアリール基がより好ましく、炭素数6~10のアリール基が更に好ましい。)、アリール基(炭素数6~20のアリール基が好ましく、炭素数6~15のアリール基がより好ましく、炭素数6~10のアリール基が更に好ましい。)、カルボニル基、アルコキシカルボニル基(アルコキシ基におけるアルキル基は炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基が更に好ましい。アルキル基は、直鎖でも、分岐鎖でもよい。)、シアノ基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、アルケニル基(好ましくは、炭素数2~15、更に好ましくは2~6のアルケニル基)、アリル基、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)の1種又は2種以上が組み合わされてなる基などが挙げられる。
1価の置換基として挙げた基は、他の基で更に置換されていても良い。
【0121】
一般式(III)中、R1~R10で表される基としては、水素原子、上記した1価の置換基が好ましく、アルキル基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基が更に好ましい。
【0122】
一般式(IV)中、R11~R14で表される1価の置換基としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、特に限定されないが、例えば、アルキル基(炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基が更に好ましい。アルキル基は、直鎖でも、分岐鎖でもよい。)、アルコキシ基(アルコキシ基におけるアルキル基は炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基が更に好ましい。アルキル基は、直鎖でも、分岐鎖でもよい。)、アリールオキシ基(アリールオキシ基におけるアリール基は、炭素数6~20のアリール基が好ましく、炭素数6~15のアリール基がより好ましく、炭素数6~10のアリール基が更に好ましい。)、アリール基(炭素数6~20のアリール基が好ましく、炭素数6~15のアリール基がより好ましく、炭素数6~10のアリール基が更に好ましい。)、カルボニル基、アルコキシカルボニル基(アルコキシ基におけるアルキル基は炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基が更に好ましい。アルキル基は、直鎖でも、分岐鎖でもよい。)、シアノ基、アミド基、ウレア基、ウレタン基、アルケニル基(好ましくは、炭素数2~15、更に好ましくは2~6のアルケニル基)、アリル基、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子)の1種又は2種以上が組み合わされてなる基などが挙げられる。
1価の置換基として挙げた基は、他の基で更に置換されていても良い。
【0123】
一般式(IV)中、R11~R14で表される基としては、水素原子、上記した1価の置換基が好ましく、アルキル基、ハロゲン基、アルコキシカルボニル基が更に好ましい。
【0124】
R1~R10の何れかを介して2つ以上のスルホンイミドアニオン構造を含むものも一般式(III)に含まれる。
【0125】
(A)有機アニオンの具体例をアニオン部として以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0126】
【0127】
上記のI-1~I-15、I-17~I-21、及びI-23~I-25のハンセンのSP値パラメータにおけるδd、δp、δH及びδHのδpに対する比率(%)((δH/δp)×100)を下表に記載する。
【0128】
【0129】
ハンセンのSP値パラメータにおけるδdが16以上、δpが16以上32以下、δHがδpの60%以下の要件を容易に満たすことができることから、a)有機アニオンとしては、下記一般式(IA)で表される有機アニオンであることが好ましい。
【0130】
【0131】
一般式(IA)中、Cy1はアリール基、ヘテロアリール基を表す。
X1は、SO2Ra、SORb、CORc、PO3Rd、又はPO(Re)(Rf)を表す。Ra、Rb、Rc、Rd、Re、及びRfは、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、及びHよりなる群から選ばれる基を表す。Ra、Rb、Rc、Rd、Re、又はRfは、Cy1と結合し環を形成しても良い。
Cy1におけるアリール基、ヘテロアリール基は、Cyにおけるアリール基、ヘテロアリール基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(IA)におけるRa、Rb、Rc、Rd、Re、及びRfとしてのアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基は、一般式(I)におけるRa、Rb、Rc、Rd、Re、及びRfとしてのアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0132】
本発明におけるa)有機アニオンとしての下記一般式(IA)で表される有機アニオンは、上記一般式(III)または(IV)で表される有機アニオンであることが好ましい。
【0133】
〔カウンターカチオン〕
本発明に係る特定化合物を構成するカウンターカチオン((B)カウンターカチオン)は、上記アルミニウム原子又はリン原子上に負電荷が存在する有機アニオンとイオン結合により塩化合物を形成しうるカチオンであればよい。
カウンターカチオンは、無機カチオンであっても有機カチオンであってもよい。無機カチオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウム、マグネシウムイオン、カルシウムイオンなどのアルカリ土類金属イオンなどが挙げられる。
有機カチオンとしては、窒素原子上に正電荷が存在する有機カチオンが挙げられる。窒素原子上に正電荷が存在する有機カチオンは、式:N+(R01)(R02)(R03)(R04)(ここで、R01、R02、R03、R04は、それぞれ独立に、アルキル基又はアリール基を表す)で表されるアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンなどを包含する。
アンモニウムカチオンの例としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0134】
カウンターカチオンは、ジアリールヨードニウムカチオン又はトリアリールスルホニウムカチオンであることが好ましい。カウンターカチオンとして、ジアリールヨードニウムカチオン又はトリアリールスルホニウムカチオンを有する、特定化合物は光重合開始剤として、極めて有用である。
【0135】
ジアリールヨードニウムカチオン及びトリアリールスルホニウムカチオンは、各々、例えば、下記式(C1)で表されるヨードニウムカチオン及び(C2)で表されるスルホニウムカチオンを包含する。
【0136】
【0137】
式(C1)及び(C2)中、Ar1、Ar2、Ar3、Ar4及びAr5は、それぞれ独立に、式(C3)で表される基を表す。式(C3)中、R20は、アルキル基、アルコキシ基、ビニル基又はハロゲン原子を表し、複数のR20は同じでも異なってもよい。lは0~5の整数を表す。
【0138】
ジアリールヨードニウムカチオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウムカチオン、4-メトキシフェニル-4-(2-メチルプロピル)フェニルヨードニウムカチオン、4-クロロフェニル-4-フェニルヨードニウムカチオン、4-(2-メチルプロピル)フェニル-p-トリルヨードニウムカチオン、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウムカチオン、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4-ジエトキシフェニルヨードニウムカチオン、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウムカチオン、ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0139】
トリアリールスルホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルスルホニウムカチオン、ビス(4-クロロフェニル)フェニルスルホニウムカチオン、ビス(4-クロロフェニル)-4-メチルフェニルスルホニウムカチオン、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウムカチオン、トリス(2,4-ジクロロフェニル)スルホニウムカチオン、ビス(2,4-ジクロロフェニル)フェニルスルホニウムカチオン、ビス(2,4-ジクロロフェニル)4-メトキシフェニルスルホニウムカチオンが挙げられる。
【0140】
カウンターカチオンとしては、赤外線吸収剤として使用されるシアニン色素におけるカウンターカチオンも有用である。シアニン色素におけるカウンターカチオンについては、後述する赤外線吸収剤に関する説明において記載する。
【0141】
カウンターカチオンの具体例をカチオン部として以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0142】
【0143】
【0144】
本発明のパラメータ規定化合物、及び特定化合物は、それぞれアニオン部とカチオン部の組み合わせからなり、アニオン部およびカチオン部はそれぞれの群より選ばれる構造の任意の組み合わせが可能である。
具体的なアニオン部およびカチオン部の構造の例は上記の通りであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、実施例においては、特定化合物はI-1-j-1のように、アニオン部とカチオン部を記載した形で表される。
【0145】
本発明に係る特定化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明の第二の組成物において、特定化合物の含有量は、特定化合物の構造、意図する効果や用途などにより大きく変動する。一般的には、組成物の全固形分中、0.1~50質量%が好ましく、0.5~40質量%がより好ましく、1~30質量%が更に好ましい。本明細書において、全固形分とは、本発明の組成物における溶剤等の揮発性成分を除いた成分の総量を意味する。
【0146】
本発明に係る特定化合物は、種々の効果を奏する。特定化合物を含有する本発明の組成物は、高い熱経時安定性(強制熱経時後の現像性)を有する。これは、特定化合物を構成する有機アニオンの優れた特性に起因すると考えられ、特許文献1に記載のボレートアニオンと比較しても、顕著な熱経時安定性の改良効果が認められる。従って、本発明の組成物を適用した平版印刷版原版も、優れた熱経時安定性を有する。
また、特定化合物を含有する本発明の第二の組成物は、赤外線露光に起因する赤外線吸収剤から特定化合物への電子移動効率あるいは光熱変換効率に優れる。このため、重合性化合物の重合あるいは熱融着といった硬化反応が促進され、良好な硬化性を示すと考えられる。従って、例えば、本発明の組成物を適用した平版印刷版原版から作製された平版印刷版は、優れた耐刷性を有する。
更に、特定化合物を構成する有機アニオンは、スルホンアミドアニオン構造又はスルホンイミドアニオン構造が窒素原子上に負電荷を有しており、比較的親水性な部分と、その周辺に存在するで、疎水部として剛直な環構造を有する比較的疎水性部分を有するため、乳化性を有すると考えられる。このため、例えば、本発明の組成物を適用した平版印刷版原版は、良好な機上現像性を示す。
更に、特定化合物を構成する有機アニオンは、酸として機能するので、後述するように、本発明の組成物にロイコ染料などの酸発色剤を併用することにより、発色画像を形成することができる。特定化合物を構成する有機アニオンは発色性能に優れており、従って、例えば、本発明の組成物を適用した平版印刷版原版は、優れた検版性を示す。
更に、無機アニオンとして公知のPF6
-を含む重合開始剤をロイコ染料などの酸発色剤と併用した平版印刷版原版は、熱経時でリング状発色を生じるという問題がある。リング状発色は、平版印刷版原版の全表面にわたって、微細なリング状の発色が生じる現象で、検版作業の妨げとなる。PF6
-の代わりに、本発明に係る有機アニオンを含む重合開始剤をロイコ染料などの酸発色剤と併用した平版印刷版原版は、熱経時でリング状発色を生じないという利点がある。
【0147】
また、本発明は、特定化合物にも関する。特定化合物としては、例えば、下記の化合物挙げられる。
<1>
有機アニオンが下記一般式(III)又は(IV)で表され、カウンターカチオンがジアリールヨードニウムカチオン、トリアリールスルホニウムカチオンである化合物。
【0148】
【0149】
一般式(III)中、R1~R10は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。
一般式(IV)中、R11~R14は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。
<2>
有機アニオンが下記一般式(III)又は(IV)で表され、カウンターカチオンがシアニン色素におけるカウンターカチオンである化合物。
【0150】
【0151】
一般式(III)中、R1~R10は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。
一般式(IV)中、R11~R14は、各々独立に、水素原子、又は1価の置換基を表す。
【0152】
一般式(III)、(IV)における各基は、それぞれ前述した各基と同義であり、好ましい範囲も同義である。
ジアリールヨードニウムカチオン、トリアリールスルホニウムカチオンは、前述したジアリールヨードニウムカチオン、トリアリールスルホニウムカチオンと同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0153】
本発明の第二の組成物は、下記形態(1)~(3)の組成物であることが好ましい。
形態(1)の組成物は、特定化合物、赤外線吸収剤、バインダーポリマー及びポリマー粒子の1つ以上、及び重合性化合物を含む。
形態(2)の組成物は、特定化合物、酸発色剤、赤外線吸収剤、バインダーポリマー及びポリマー粒子の1つ以上、及び重合性化合物を含む。
形態(3)の組成物は、特定化合物、酸発色剤、赤外線吸収剤、バインダーポリマー及びポリマー粒子の1つ以上、重合性化合物、及び重合開始剤を含む。
形態(1)の組成物における特定化合物は、カウンターカチオンが、ジアリールヨードニウムカチオンまたはトリアリールスルホニウムカチオンである重合開始剤であることが好ましい。
形態(2)の組成物における特定化合物は、カウンターカチオンが、ジアリールヨードニウムカチオンまたはトリアリールスルホニウムカチオンである重合開始剤であることが好ましい。
形態(3)の組成物における特定化合物は、カウンターカチオンが、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン又は窒素原子上に電荷をもつ有機カチオンである添加剤であることが好ましい。
【0154】
以下に、本発明の第一又は第二の組成物(以下、纏めて「本発明の組成物」ともいう)が含むことができる成分について記載する。
【0155】
〔赤外線吸収剤〕
本発明の組成物は、赤外線吸収剤を含有することが好ましい。赤外線吸収剤は、赤外線により励起して重合開始剤等に電子移動及び/又はエネルギー移動する機能を有する。また、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有する。赤外線吸収剤は、750~1,400nmの波長域に極大吸収を有することが好ましい。赤外線吸収剤としては、染料又は顔料が挙げられ、染料が好ましく用いられる。
【0156】
染料としては、市販の染料、及び、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知の染料が利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
染料のうち、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩が好ましく、シアニン色素がより好ましく、インドレニンシアニン色素が特に好ましい。
【0157】
また、赤外線吸収剤としては、EP1736312号公報の段落0021に記載の化合物、WO2016/027886号公報の段落0069~0080に記載の化合物も使用することができる。
【0158】
シアニン色素の具体例としては、特開2001-133969号公報の段落0017~0019に記載の化合物、特開2002-023360号公報の段落0016~0021、特開2002-040638号公報の段落0012~0037に記載の化合物、好ましくは特開2002-278057号公報の段落0034~0041、特開2008-195018公報の段落0080~0086に記載の化合物、特に好ましくは特開2007-90850号公報の段落0035~0043に記載の化合物が挙げられる。
また、特開平5-5005号公報の段落0008~0009、特開2001-222101号公報の段落0022~0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
顔料としては、特開2008-195018号公報の段落0072~0076に記載の化合物が好ましい。
【0159】
シアニン色素は、本発明に係る有機アニオンを、荷電を中和する対イオンとして含有することができる。この場合、シアニン色素は、本発明に係る特定化合物に相当する。
【0160】
赤外線吸収剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
赤外線吸収剤は、組成物中に任意の量含有させることができる。の赤外線吸収剤の含有量は、組成物の全固形分中、0.05~30質量%が好ましく、0.1~20質量%がより好ましく、0.2~10質量%が更に好ましい。
【0161】
〔重合性化合物〕
本発明の組成物は、重合性化合物を含有することが好ましい。重合性化合物は、例えば、ラジカル重合性化合物であっても、カチオン重合性化合物であってもよいが、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する付加重合性化合物(エチレン性不飽和化合物)であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個有する化合物が好ましく、末端エチレン性不飽和結合を2個以上有する化合物がより好ましい。重合性化合物は、例えばモノマー、プレポリマー、即ち、2量体、3量体若しくはオリゴマー、又は、それらの混合物などの化学的形態を持つことができる。
【0162】
モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)や、そのエステル類、アミド類が挙げられる。好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル類、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン原子、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル類あるいはアミド類と単官能又は多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することもできる。これら化合物は、特表2006-508380号公報、特開2002-287344号公報、特開2008-256850号公報、特開2001-342222号公報、特開平9-179296号公報、特開平9-179297号公報、特開平9-179298号公報、特開2004-294935号公報、特開2006-243493号公報、特開2002-275129号公報、特開2003-64130号公報、特開2003-280187号公報、特開平10-333321号公報等に記載されている。
【0163】
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等が挙げられる。メタクリル酸エステルとして、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス〔p-(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等が挙げられる。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスアクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等が挙げられる。
【0164】
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、その具体例としては、例えば、特公昭48-41708号公報に記載されている、1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に下記式(M)で表されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させて得られる1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(RM4)COOCH2CH(RM5)OH (M)
式(M)中、RM4及びRM5はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
【0165】
また、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報、特開2003-344997号公報、特開2006-65210号公報に記載のウレタンアクリレート類、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報、特開2000-250211号公報、特開2007-94138号公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類、米国特許第7153632号明細書、特表平8-505958号公報、特開2007-293221号公報、特開2007-293223号公報に記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
【0166】
重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、組成物の最終的な用途等を考慮して任意に設定できる。
重合性化合物の含有量は、組成物の全固形分中、5~75質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、15~60質量%が更に好ましい。
【0167】
〔重合開始剤〕
本発明の組成物は、重合開始剤を含有することが好ましい。重合開始剤は、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルやカチオン等の重合開始種を発生する化合物であり、公知の熱重合開始剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などから適宜選択して用いることができる。
重合開始剤としては、赤外線感光性重合開始剤が好ましい。また、重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機ハロゲン化物、カルボニル化合物、アゾ化合物、有機過酸化物、メタロセン化合物、アジド化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ジスルホン化合物、オキシムエステル化合物、及び、オニウム塩化合物が挙げられる。
【0168】
有機ハロゲン化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0022~0023に記載の化合物が好ましい。
カルボニル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0024に記載の化合物が好ましい。
アゾ化合物としては、例えば、特開平8-108621号公報に記載のアゾ化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0025に記載の化合物が好ましい。
メタロセン化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0026に記載の化合物が好ましい。
アジド化合物としては、例えば、2,6-ビス(4-アジドベンジリデン)-4-メチルシクロヘキサノン等の化合物が挙げられる。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0027に記載の化合物が好ましい。
ジスルホン化合物としては、例えば、特開昭61-166544号、特開2002-328465号の各公報に記載の化合物が挙げられる。
オキシムエステル化合物としては、例えば、特開2008-195018号公報の段落0028~0030に記載の化合物が好ましい。
【0169】
重合開始剤の中でも、硬化性の観点から、より好ましいものとして、オキシムエステル及びオニウム塩が挙げられ、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びアジニウム塩等のオニウム塩が更に好ましく挙げられる。本発明の組成物が平版印刷版原版に適用される場合には、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が特に好ましい。ヨードニウム塩及びスルホニウム塩の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0170】
ヨードニウム塩の例としては、ジフェニルヨードニウム塩が好ましく、特に、電子供与性基を置換基として有する、例えば、アルキル基又はアルコキシル基で置換されたジフェニルヨードニウム塩が好ましく、また、非対称のジフェニルヨードニウム塩が好ましい。具体例としては、ジフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-メトキシフェニル-4-(2-メチルプロピル)フェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-(2-メチルプロピル)フェニル-p-トリルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-ヘキシルオキシフェニル-2,4-ジエトキシフェニルヨードニウム=テトラフルオロボラート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=1-ペルフルオロブタンスルホナート、4-オクチルオキシフェニル-2,4,6-トリメトキシフェニルヨードニウム=ヘキサフルオロホスファート、ビス(4-t-ブチルフェニル)ヨードニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0171】
スルホニウム塩の例としては、トリアリールスルホニウム塩が好ましく、特に電子求引性基を置換基として有する、例えば、芳香環上の基の少なくとも一部がハロゲン原子で置換されたトリアリールスルホニウム塩が好ましく、芳香環上のハロゲン原子の総置換数が4以上であるトリアリールスルホニウム塩が更に好ましい。具体例としては、トリフェニルスルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリフェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)フェニルスルホニウム=ベンゾイルホルマート、ビス(4-クロロフェニル)-4-メチルフェニルスルホニウム=テトラフルオロボラート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=3,5-ビス(メトキシカルボニル)ベンゼンスルホナート、トリス(4-クロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファート、トリス(2,4-ジクロロフェニル)スルホニウム=ヘキサフルオロホスファートが挙げられる。
【0172】
重合開始剤は、本発明に係る有機アニオンを、アニオンとして含有することができる。この場合、重合開始剤は、本発明に係る特定化合物に相当する。
【0173】
重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重合開始剤の含有量は、組成物の全固形分中、0.1~50質量%が好ましく、0.5~30質量%がより好ましく、0.8~20質量%が更に好ましい。
【0174】
〔バインダーポリマー〕
本発明の組成物は、バインダーポリマーを含有することが好ましい。バインダーポリマーとしては、皮膜性を有するポリマーが好ましく、組成物に用いられる公知のバインダーポリマーを好適に使用することができる。中でも、バインダーポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0175】
本発明の組成物が平版印刷版原版の画像記録層に適用される場合には、バインダーポリマーは平版印刷版原版の画像記録層に用いられる公知のバインダーポリマーを好適に使用することができる。一例として、機上現像型の平版印刷版原版に用いられるバインダーポリマー(以下、機上現像用バインダーポリマーともいう)について、詳細に記載する。
機上現像用バインダーポリマーとしては、アルキレンオキサイド鎖を有するバインダーポリマーが好ましい。アルキレンオキサイド鎖を有するバインダーポリマーは、ポリ(アルキレンオキサイド)部位を主鎖に有していても側鎖に有していてもよい。また、ポリ(アルキレンオキサイド)を側鎖に有するグラフトポリマーでも、ポリ(アルキレンオキサイド)含有繰返し単位で構成されるブロックと(アルキレンオキサイド)非含有繰返し単位で構成されるブロックとのブロックコポリマーでもよい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位を主鎖に有する場合は、ポリウレタン樹脂が好ましい。ポリ(アルキレンオキサイド)部位を側鎖に有する場合の主鎖のポリマーとしては、(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0176】
アルキレンオキサイドとしては炭素数が2~6のアルキレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが特に好ましい。
ポリ(アルキレンオキサイド)部位におけるアルキレンオキサイドの繰返し数は2~120が好ましく、2~70がより好ましく、2~50が更に好ましい。
アルキレンオキサイドの繰返し数が120以下であれば、摩耗による耐刷性、インキ受容性による耐刷性の両方が低下することがなく好ましい。
【0177】
ポリ(アルキレンオキサイド)部位は、バインダーポリマーの側鎖として、下記式(AO)で表される構造で含有されることが好ましく、(メタ)アクリル樹脂の側鎖として、下記式(AO)で表される構造で含有されることがより好ましい。
【0178】
【0179】
式(AO)中、yは2~120を表し、R1は水素原子又はアルキル基を表し、R2は水素原子又は一価の有機基を表す。
一価の有機基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が挙げられる。
式(AO)において、yは2~70が好ましく、2~50がより好ましい。R1は水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。R2は水素原子又はメチル基が特に好ましい。
【0180】
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。ポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合などの架橋性官能基を高分子の主鎖中又は側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、ポリマー反応により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ-1,4-ブタジエン、ポリ-1,4-イソプレンなどが挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(-COOR又は-CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0181】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、-(CH2)nCR1A=CR2AR3A、-(CH2O)nCH2CR1A=CR2AR3A、-(CH2CH2O)nCH2CR1A=CR2AR3A、-(CH2)nNH-CO-O-CH2CR1A=CR2AR3A、-(CH2)n-O-CO-CR1A=CR2AR3A及び-(CH2CH2O)2-XA(式中、RA1~RA3はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基又はアリールオキシ基を表し、RA1とRA2又はRA3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1~10の整数を表す。XAは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
【0182】
エステル残基の具体例としては、-CH2CH=CH2、-CH2CH2O-CH2CH=CH2、-CH2C(CH3)=CH2、-CH2CH=CH-C6H5、-CH2CH2OCOCH=CH-C6H5、-CH2CH2-NHCOO-CH2CH=CH2及び-CH2CH2O-X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、-CH2CH=CH2、-CH2CH2-Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)及び-CH2CH2-OCO-CH=CH2が挙げられる。
【0183】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接に又は重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0184】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、良好な感度と良好な保存安定性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、0.1~10.0mmolが好ましく、1.0~7.0mmolがより好ましく、2.0~5.5mmolが更に好ましい。
【0185】
以下にバインダーポリマーの具体例1~11を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。下記例示化合物中、各繰返し単位に併記される数値(主鎖繰返し単位に併記される数値)は、繰返し単位のモル百分率を表す。側鎖の繰返し単位に併記される数値は、繰返し部位の繰返し数を示す。また、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【0186】
【0187】
【0188】
バインダーポリマーの分子量は、GPC法によるポリスチレン換算値として重量平均分子量(Mw)が、2,000以上であり、5,000以上が好ましく、10,000~300,000がより好ましい。
また、本発明において、オリゴマーは、Mw800以上2,000未満のものとし、ポリマーは、Mw2,000以上のものとする。
【0189】
必要に応じて、特開2008-195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを併用することができる。また、親油的なポリマーと親水的なポリマーとを併用することもできる。
【0190】
本発明の組成物を平版印刷版原版の画像記録層に適用する場合、上記バインダーポリマーは、組成物中で、各成分のバインダーとして機能するポリマーとして存在してもよいし、粒子の形状で存在してもよい。粒子の形状で存在する場合には、体積平均一次粒径は、好ましくは10~1,000nmであり、より好ましくは20~300nmであり、更に好ましくは30~120nmである。
本発明において、体積平均一次粒径は、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5000個測定し、算術平均値を算出することにより得られる。
非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径(円相当径)として測定する。
上記体積平均一次粒径の測定方法は、特別な記載がない限り、粒子の形状で存在するバインダーポリマー以外の粒子についても同様である。
【0191】
バインダーポリマーは、1種単独で使用してよいし、2種以上を併用してもよい。
バインダーポリマーは、組成物中に任意の量で含有させることができる。バインダーポリマーの含有量は、本発明の組成物の用途などにより適宜選択できるが、組成物の全固形分中、1~90質量%が好ましく、5~80質量%がより好ましい。
【0192】
〔酸発色剤〕
本発明の組成物は酸発色剤を含有することができる。酸発色剤は、電子受容性化合物(例えば酸等のプロトン)を受容することにより、発色する性質を有する化合物である。酸発色剤としては、ラクトン、ラクタム、サルトン、スピロピラン、エステル、アミド等の部分骨格を有し、電子受容性化合物と接触した時に、速やかにこれらの部分骨格が開環若しくは開裂する無色の化合物が好ましい。
【0193】
このような酸発色剤の例としては、3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド(”クリスタルバイオレットラクトン”と称される)、3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)フタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1,2-ジメチルインドール-3-イル)フタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-5-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(1,2-ジメチルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(9-エチルカルバゾール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3,3-ビス(2-フェニルインドール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジメチルアミノフェニル)-3-(1-メチルピロール-3-イル)-6-ジメチルアミノフタリド、
【0194】
3,3-ビス〔1,1-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラブロモフタリド、3,3-ビス〔1-(4-ジメチルアミノフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3,3-ビス〔1-(4-ピロリジノフェニル)-1-(4-メトキシフェニル)エチレン-2-イル〕-4,5,6,7-テトラクロロフタリド、3-〔1,1-ジ(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)エチレン-2-イル〕-3-(4-ジエチルアミノフェニル)フタリド、3-〔1,1-ジ(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)エチレン-2-イル〕-3-(4-N-エチル-N-フェニルアミノフェニル)フタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド、3,3-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド、3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-フタリド等のフタリド類、
【0195】
4,4-ビス-ジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N-ハロフェニル-ロイコオーラミン、N-2,4,5-トリクロロフェニルロイコオーラミン、ローダミン-B-アニリノラクタム、ローダミン-(4-ニトロアニリノ)ラクタム、ローダミン-B-(4-クロロアニリノ)ラクタム、3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-ベンゾイルフェノオキサジン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、4ーニトロベンゾイルメチレンブルー、
【0196】
3,6-ジメトキシフルオラン、3-ジメチルアミノ-7-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-メトキシフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-ジエチルアミノ-6,7-ジメチルフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ブチルアミノ-7-メチルフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジベンジルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-オクチルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-ジ-n-ヘキシルアミノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’-フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(2’,3’-ジクロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-7-(3’-トリフルオロメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’-フルオロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-N-イソペンチル-N-エチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、
【0197】
3-N-n-ヘキシル-N-エチルアミノ-7-(2’-クロロフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メトキシ-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-エトキシ-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-モルホリノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジ-n-ペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-エチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-Nn-プロピル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-プロピル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ブチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ブチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソブチル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソブチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-イソペンチル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-n-ヘキシル-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-プロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-ヘキシルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-シクロヘキシル-N-n-オクチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、
【0198】
3-N-(2’-メトキシエチル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-メトキシエチル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-メトキシエチル)-N-イソブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-エトキシエチル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-エトキシエチル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-メトキシプロピル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-メトキシプロピル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-エトキシプロピル)-N-メチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(3’-エトキシプロピル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(2’-テトラヒドロフルフリル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-N-(4’-メチルフェニル)-N-エチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-エチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(3’-メチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-6-メチル-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、3-ジ-n-ブチルアミノ-7-(2’,6’-ジメチルフェニルアミノ)フルオラン、2,2-ビス〔4’-(3-N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ-6-メチルフルオラン)-7-イルアミノフェニル〕プロパン、3-〔4’-(4-フェニルアミノフェニル)アミノフェニル〕アミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-〔4’-(ジメチルアミノフェニル)〕アミノ-5,7-ジメチルフルオラン等のフルオラン類、
【0199】
3-(2-メチル-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-n-プロポキシカルボニルアミノ-4-ジ-n-プロピルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-メチルアミノ-4-ジ-n-プロピルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-メチル-4-ジn-ヘキシルアミノフェニル)-3-(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4,7-ジアザフタリド、3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、3,3-ビス(1-n-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-フェニルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド、3-(2-ブトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-フェニルインドール-3-イル)-4又は7-アザフタリド3-メチル-スピロ-ジナフトピラン、3-エチル-スピロ-ジナフトピラン、3-フェニル-スピロ-ジナフトピラン、3-ベンジル-スピロ-ジナフトピラン、3-メチル-ナフト-(3-メトキシベンゾ)スピロピラン、3-プロピル-スピロ-ジベンゾピラン-3,6-ビス(ジメチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド、3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオレン-9-スピロ-3’-(6’-ジメチルアミノ)フタリド等のフタリド類、
【0200】
更に、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-イソペンチル)アミノ-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン-3-オン、2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-(4-メチルフェニル))アミノ-3’-メチルスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン、3’-N,N-ジベンジルアミノ-6’-N,N-ジエチルアミノスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オン、2’-(N-メチル-N-フェニル)アミノ-6’-(N-エチル-N-(4-メチルフェニル))アミノスピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9’-(9H)キサンテン]-3-オンなどが挙げられる。
【0201】
酸発色剤は、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロラクトン化合物、スピロラクタム化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
発色後の色素の色相としては、可視性の観点から、緑、青又は黒であることが好ましい。
【0202】
酸発色剤としては市販品を使用することも可能である。例えば、ETAC、RED500、RED520、CVL、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、BLUE220、H-3035、BLUE203、ATP、H-1046、H-2114(以上、福井山田化学工業(株)製)、ORANGE-DCF、Vermilion-DCF、PINK-DCF、RED-DCF、BLMB、CVL、GREEN-DCF、TH-107(以上、保土ヶ谷化学(株)製)、ODB、ODB-2、ODB-4、ODB-250、ODB-BlackXV、Blue-63、Blue-502、GN-169、GN-2、Green-118、Red-40、Red-8(以上、山本化成(株)製)、クリスタルバイオレットラクトン(東京化成品工業(株)製)等が挙げられる。これらの市販品の中でも、ETAC、S-205、BLACK305、BLACK400、BLACK100、BLACK500、H-7001、GREEN300、NIRBLACK78、H-3035、ATP、H-1046、H-2114、GREEN-DCF、Blue-63、GN-169、クリスタルバイオレットラクトンが、赤外線露光における発色特性が良好のため好ましい。
【0203】
酸発色剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸発色剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分中、0.1~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、2~10質量%が更に好ましい。
【0204】
上記酸発色剤は、酸発生剤と併用することにより発色する。酸発生剤は、赤外線により励起した赤外線吸収剤からの電子移動及び/又はエネルギー移動により酸を発生する化合物である。発生した酸が酸発色剤と反応して発色する。発生する酸としては、スルホン酸、塩酸、ヘキサフルオロリン酸、テトラフルオロホウ酸等が有用である。
【0205】
酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アジニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。具体的には、米国特許第4,708,925号明細書、特開平7-20629号公報、特開2008-195018号公報に記載されている化合物を挙げることができる。また、米国特許第5,135,838号や米国特許第5,200,544号の明細書に記載されているベンジルスルホナート類も好ましい。さらに、特開平2-100054号、特開平2-100055号および特開平9-197671号の各公報に記載されている活性スルホン酸エステル、特開2008-001740号公報に記載のN-ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステルなどのイミドエステルや特開昭61-166544号、特開2003-328465号公報等に記載のジスルホン化合物類も好ましい。また、J.C.S. Perkin II (1979 )1653-1660)、J.C.S.Perkin II (1979)156-162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202-232、特開2000-66385号公報、特開2000-80068号公報、特開2008-195018号公報に記載のオキシムエステル化合物も好ましい。他にも、特開平7-271029号に記載されているハロアルキル置換されたs-トリアジン化合物も好ましい。
【0206】
酸発生剤としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びアジニウム塩が特に好ましい。
【0207】
ヨードニウム塩及びスルホニウム塩については、上述の重合開始剤におけるヨードニウム塩及びスルホニウム塩の記載を援用することができる。
【0208】
アジニウム塩の例としては、1-シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-シクロヘキシルオキシ-4-フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-エトキシ-4-フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-(2-エチルヘキシルオキシ)-4-フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、4-クロロ-1-シクロヘキシルメチルオキシピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-エトキシ-4-シアノピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、3,4-ジクロロ-1-(2-エチルヘキシルオキシ)ピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-ベンジルオキシ-4-フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-フェネチルオキシ-4-フェニルピリジニウム=ヘキサフルオロホスファート、1-(2-エチルヘキシルオキシ)-4-フェニルピリジニウム=p-トルエンスルホナート、1-(2-エチルヘキシルオキシ)-4-フェニルピリジニウム=ペルフルオロブタンスルホナート、1-(2-エチルヘキシルオキシ)-4-フェニルピリジニウム=ブロミド、1-(2-エチルヘキシルオキシ)-4-フェニルピリジニウム=テトラフルオロボラートが挙げられる。
【0209】
酸発生剤は、本発明に係る有機アニオンを、アニオンとして含有することができる。この場合、酸発生剤は、本発明に係る特定化合物に相当する。
【0210】
酸発生剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸発生剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分中、1~30質量%が好ましく、3~20質量%がより好ましく、6~15質量%が更に好ましい。
【0211】
〔ラジカル生成助剤〕
本発明の組成物は、ラジカル生成助剤を含有してもよい。ラジカル生成助剤は、本発明の組成物を平版印刷版原版の画像記録層に適用する場合、平版印刷版原版から作製される平版印刷版の耐刷性向上に寄与する。ラジカル生成助剤としては、例えば、以下の5種類が挙げられる。(i)アルキル又はアリールアート錯体:酸化的に炭素-ヘテロ結合が解裂し、活性ラジカルを生成すると考えられる。具体的には、ボレート化合物等が挙げられる。(ii)アミノ酢酸化合物:酸化により窒素に隣接した炭素上のC-X結合が解裂し、活性ラジカルを生成するものと考えられる。Xとしては、水素原子、カルボキシ基、トリメチルシリル基又はベンジル基が好ましい。具体的には、N-フェニルグリシン類(フェニル基に置換基を有していてもよい。)、N-フェニルイミノジ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。(iii)含硫黄化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を硫黄原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。具体的には、フェニルチオ酢酸(フェニル基に置換基を有していてもよい。)等が挙げられる。(iv)含錫化合物:上述のアミノ酢酸化合物の窒素原子を錫原子に置き換えたものが、同様の作用により活性ラジカルを生成し得る。(v)スルフィン酸塩類:酸化により活性ラジカルを生成し得る。具体的は、アリールスルフィン駿ナトリウム等が挙げられる。
【0212】
ラジカル生成助剤の中で、ボレート化合物が好ましい。ボレート化合物としては、テトラアリールボレート化合物又はモノアルキルトリアリールボレート化合物が好ましく、化合物安定性の観点から、テトラアリールボレート化合物がより好ましい。
ボレート化合物が有する対カチオンとしては、アルカリ金属イオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンが好ましく、ナトリウムイオン、カリウムイオン又はテトラブチルアンモニウムイオンがより好ましい。
【0213】
ボレート化合物として具体的には、以下に示す化合物が挙げられる。ここで、Xc
+は一価のカチオンを表し、アルカリ金属イオン又はテトラアルキルアンモニウムイオンが好ましく、アルカリ金属イオン又はテトラブチルアンモニウムイオンがより好ましい。また、Buはn-ブチル基を表す。
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
ラジカル生成助剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル生成助剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分中、0.01~30質量%が好ましく、0.05~25質量%がより好ましく、0.1~20質量%が更に好ましい。
【0219】
〔ポリマー粒子〕
本発明の組成物が平版印刷版原版の画像記録層に適用される場合、平版印刷版原版の機上現像性向上の観点から、本発明の組成物は、ポリマー粒子を含有してもよい。ポリマー粒子は、熱、好ましくは露光により発生する熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できるポリマー粒子であることが好ましい。
ポリマー粒子は、熱融着性粒子、熱反応性ポリマー粒子、重合性基を有するポリマー粒子、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及び、ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。中でも、重合性基を有するポリマー粒子及びミクロゲルが好ましい。
【0220】
熱融着性粒子としては、1992年1月のResearch Disclosure No.33303、特開平9-123387号公報、同9-131850号公報、同9-171249号公報、同9-171250号公報及び欧州特許第931647号明細書などに記載の熱可塑性重合体粒子が好適に挙げられる。
熱融着性粒子を構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマーもしくはコポリマー又はそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチルが挙げられる。熱融着性粒子の数平均一次粒径は0.01~2.0μmが好ましい。
【0221】
熱反応性ポリマー粒子としては、熱反応性基を有するポリマー粒子が挙げられる。熱反応性基を有するポリマー粒子は、熱反応による架橋及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
【0222】
熱反応性基を有するポリマー粒子における熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよく、重合性基が好ましい。その例としては、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などが好適に挙げられる。
【0223】
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001-277740号公報及び特開2001-277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させたものが挙げられる。画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。マイクロカプセルを含有する画像記録層としては、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
【0224】
ミクロゲル(架橋ポリマー粒子)は、その内部及び表面の少なくとも一方に、本発明の組成物の構成成分の一部を含有することができる。特に、ラジカル重合性基をその表面に有することによって反応性ミクロゲルとした態様が画像形成感度や耐刷性の観点から好ましい。
【0225】
本発明の組成物の構成成分をマイクロカプセル化又はミクロゲル化するためには、公知の方法を用いることができる。
マイクロカプセルやミクロゲルの体積平均粒径は、0.01~3.0μmが好ましく、0.05~2.0μmがより好ましく、0.10~1.0μmが更に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
体積平均粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置 LB-500((株)堀場製作所製)を用いて、光散乱法によりにより測定される。
ポリマー粒子の含有量は、本発明の組成物の全固形分中、5~90質量%が好ましい。
【0226】
〔連鎖移動剤〕
本発明の組成物は、連鎖移動剤を含有してもよい。連鎖移動剤は、本発明の組成物が平版印刷版原版の画像記録層に適用される場合、平版印刷版原版から作製される平版印刷版における耐刷性の向上に寄与する。
連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、沸点(揮発し難さ)の観点で炭素数7以上のチオールがより好ましく、芳香環上にメルカプト基を有する化合物(芳香族チオール化合物)が更に好ましい。チオール化合物は単官能チオール化合物であることが好ましい。
【0227】
連鎖移動剤の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
【0232】
連鎖移動剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
連鎖移動剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分中、0.01~50質量%が好ましく、0.05~40質量%がより好ましく、0.1~30質量%が更に好ましい。
【0233】
〔低分子親水性化合物〕
本発明の組成物は、平版印刷版原版の画像記録層に適用される場合、平版印刷版原版から作製される平版印刷版の耐刷性を低下させることなく、平版印刷版原版の機上現像性を向上させるために、低分子親水性化合物を含有してもよい。低分子親水性化合物は、分子量1,000未満の化合物が好ましく、分子量800未満の化合物がより好ましく、分子量500未満の化合物が更に好ましい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類等が挙げられる。
【0234】
低分子親水性化合物は、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類及びベタイン類から選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0235】
有機スルホン酸塩類の具体例としては、n-ブチルスルホン酸ナトリウム、n-ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2-エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n-オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11-トリオキサペンタデカン-1-スルホン酸ナトリウム、5,8,11-トリオキサヘプタデカン-1-スルホン酸ナトリウム、13-エチル-5,8,11-トリオキサヘプタデカン-1-スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14-テトラオキサテトラコサン-1-スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、p-ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル-5-スルホン酸ナトリウム、1-ナフチルスルホン酸ナトリウム、4-ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5-ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6-ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩、特開2007-276454号公報の段落0026~0031及び特開2009-154525号公報の段落0020~0047に記載の化合物等が挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
【0236】
有機硫酸塩類としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又は複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位の数は1~4が好ましく、塩はナトリウム塩、カリウム塩又はリチウム塩が好ましい。具体例としては、特開2007-276454号公報の段落0034~0038に記載の化合物が挙げられる。
【0237】
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素数が1~5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3-ヒドロキシ-4-トリメチルアンモニオブチラート、4-(1-ピリジニオ)ブチラート、1-ヒドロキシエチル-1-イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3-トリメチルアンモニオ-1-プロパンスルホナート、3-(1-ピリジニオ)-1-プロパンスルホナート等が挙げられる。
【0238】
低分子親水性化合物は疎水性部分の構造が小さく、界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持することができる。
【0239】
低分子親水性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
低分子親水性化合物の含有量は、本発明の組成物の全固形分中、0.5~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、2~10質量%が更に好ましい。
【0240】
〔感脂化剤〕
本発明の組成物は、平版印刷版原版の画像記録層に適用される場合、平版印刷版原版から作製される平版印刷版におけるインキの着肉性(以下、単に「着肉性」ともいう)を向上させるために、ホスホニウム化合物、含窒素低分子化合物、アンモニウム基含有ポリマー等の感脂化剤を含有してもよい。特に、平版印刷版原版が保護層に無機層状化合物を含有する場合、これらの化合物は、無機層状化合物の表面被覆剤として機能し、無機層状化合物による印刷途中の着肉性低下を抑制することができる。
感脂化剤としては、ホスホニウム化合物と、含窒素低分子化合物と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することが好ましく、ホスホニウム化合物と、第四級アンモニウム塩類と、アンモニウム基含有ポリマーとを併用することがより好ましい。
【0241】
ホスホニウム化合物としては、特開2006-297907号公報及び特開2007-50660号公報に記載のホスホニウム化合物が挙げられる。具体例としては、テトラブチルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、1,4-ビス(トリフェニルホスホニオ)ブタン=ジ(ヘキサフルオロホスファート)、1,7-ビス(トリフェニルホスホニオ)ヘプタン=スルファート、1,9-ビス(トリフェニルホスホニオ)ノナン=ナフタレン-2,7-ジスルホナート等が挙げられる。
【0242】
含窒素低分子化合物としては、アミン塩類、第四級アンモニウム塩類が挙げられる。また、イミダゾリニウム塩類、ベンゾイミダゾリニウム塩類、ピリジニウム塩類、キノリニウム塩類も挙げられる。中でも、第四級アンモニウム塩類及びピリジニウム塩類が好ましい。具体例としては、テトラメチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、テトラブチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ドデシルトリメチルアンモニウム=p-トルエンスルホナート、ベンジルトリエチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルオクチルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム=ヘキサフルオロホスファート、特開2008-284858号公報の段落0021~0037、特開2009-90645号公報の段落0030~0057に記載の化合物等が挙げられる。
【0243】
アンモニウム基含有ポリマーとしては、その構造中にアンモニウム基を有すればよく、側鎖にアンモニウム基を有する(メタ)アクリレートを共重合成分として5~80モル%含有するポリマーが好ましい。具体例としては、特開2009-208458号公報の段落0089~0105に記載のポリマーが挙げられる。
【0244】
アンモニウム塩含有ポリマーは、特開2009-208458号公報に記載の測定方法に従って求められる還元比粘度(単位:ml/g)の値が、5~120の範囲のものが好ましく、10~110の範囲のものがより好ましく、15~100の範囲のものが特に好ましい。上記還元比粘度を重量平均分子量(Mw)に換算した場合、10,000~150,0000が好ましく、17,000~140,000がより好ましく、20,000~130,000が特に好ましい。
【0245】
以下に、アンモニウム基含有ポリマーの具体例を示す。(1)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比10/90、Mw4.5万)(2)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)(3)2-(エチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=p-トルエンスルホナート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比30/70、Mw4.5万)(4)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/2-エチルヘキシルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.0万)(5)2-(トリメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=メチルスルファート/ヘキシルメタクリレート共重合体(モル比40/60、Mw7.0万)(6)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比25/75、Mw6.5万)(7)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルアクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw6.5万)(8)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=13-エチル-5,8,11-トリオキサ-1-ヘプタデカンスルホナート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート共重合体(モル比20/80、Mw7.5万)(9)2-(ブチルジメチルアンモニオ)エチルメタクリレート=ヘキサフルオロホスファート/3,6-ジオキサヘプチルメタクリレート/2-ヒドロキシ-3-メタクロイルオキシプロピルメタクリレート共重合体(モル比15/80/5、Mw6.5万)
【0246】
感脂化剤の含有量は、本発明の組成物の全固形分中、0.01~30質量%が好ましく、0.1~15質量%がより好ましく、1~10質量%が更に好ましい。
【0247】
〔着色剤〕
本発明の平版印刷版原版の画像記録層は、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として含有することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT-505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、エチルバイオレット6HNAPS、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)及び特開昭62-293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。着色剤を含有させることにより、画像形成後の画像部と非画像部の区別がつきやすくなるので、含有させることが好ましい。
着色剤の添加量は、画像記録層の全固形分に対して、0.005~10質量%が好ましい。
【0248】
〔その他の成分〕
本発明の組成物は、その他の成分として、界面活性剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機粒子、無機層状化合物等を含有することができる。具体的には、特開2008-284817号公報の段落0114~0159に記載された各成分を含有することができる。
【0249】
[平版印刷版原版]
本発明の平版印刷版原版は、本発明の組成物を含有する画像記録層を支持体上に有する。
以下に、本発明の組成物の特徴が顕著に発現される機上現像型の平版印刷版原版を例として説明するが、現像処理により平版印刷版を作製する現像処理型の平版印刷版原版についても適宜説明する。
【0250】
〔画像記録層〕
画像記録層の1つの形態によれば、画像記録層は、赤外線吸収剤、重合性化合物、重合開始剤、並びに、バインダーポリマー及びポリマー粒子の少なくとも1つを含有する。画像記録層は、更に、ラジカル生成助剤、及び、連鎖移動剤を含有することが好ましい。
画像記録層のもう1つの形態によれば、画像記録層は、赤外線吸収剤、熱融着性粒子、及び、バインダーポリマーを含有する。
平版印刷版原版の検版性を向上させるため、画像記録層には、酸発色剤を含有させることができる。
上記画像記録層において、重合開始剤、赤外線吸収剤として、本発明に係る特定化合物を用いることができる。また、酸発色剤を含有する画像記録層においては、酸発色剤に対する酸発生剤として、本発明に係る特定化合物を用いることができる。
画像記録層に含有される赤外線吸収剤、重合性化合物、重合開始剤、バインダーポリマー、ポリマー粒子、ラジカル生成助剤、連鎖移動剤、熱融着性粒子などの各成分、並びに、その含有量については、上記本発明の組成物における記載を参照することができる。
【0251】
<画像記録層の形成>
画像記録層は、例えば、特開2008-195018号公報の段落0142~0143に記載のように、必要な上記各成分を溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、塗布液を支持体上にバーコーター塗布など公知の方法で塗布し、乾燥することにより形成することができる。
溶剤としては、公知の溶剤を用いることができる。具体的には、例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメーチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1-メトキシ-2-プロパノール、3-メトキシ-1-プロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。塗布液中の固形分濃度は1~50質量%程度であることが好ましい。
塗布、乾燥後における画像記録層の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、良好な感度と画像記録層の良好な皮膜特性を得る観点から、0.3~3.0g/m2程度が好ましい。
【0252】
〔下塗り層〕
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層と支持体との間に下塗り層(中間層と呼ばれることもある)を有することが好ましい。下塗り層は、露光部においては支持体と画像記録層との密着を強化し、未露光部においては画像記録層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、耐刷性を損なわずに現像性を向上させることに寄与する。また、赤外線レーザー露光の場合に、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散することによる感度の低下を防ぐ効果も有する。
【0253】
下塗り層に用いられる化合物としては、支持体表面に吸着可能な吸着性基及び親水性基を有するポリマーが挙げられる。画像記録層との密着性を向上させるために吸着性基及び親水性基を有し、更に架橋性基を有するポリマーが好ましい。下塗り層に用いられる化合物は、低分子化合物でもポリマーであってもよい。下塗り層に用いられる化合物は、必要に応じて、2種以上を混合して使用してもよい。
【0254】
下塗り層に用いられる化合物がポリマーである場合、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー及び架橋性基を有するモノマーの共重合体が好ましい。
支持体表面に吸着可能な吸着性基としては、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシ基、-PO3H2、-OPO3H2、-CONHSO2-、-SO2NHSO2-、-COCH2COCH3が好ましい。親水性基としては、スルホ基又はその塩、カルボキシ基の塩が好ましい。架橋性基としては、アクリル基、メタクリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、アリル基などが好ましい。
ポリマーは、ポリマーの極性置換基と、極性置換基と対荷電を有する置換基及びエチレン性不飽和結合を有する化合物との塩形成で導入された架橋性基を有してもよいし、上記以外のモノマー、好ましくは親水性モノマーが更に共重合されていてもよい。
【0255】
具体的には、特開平10-282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2-304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物が好適に挙げられる。特開2005-238816号、特開2005-125749号、特開2006-239867号、特開2006-215263号の各公報に記載の架橋性基(好ましくは、エチレン性不飽和結合基)、支持体表面と相互作用する官能基及び親水性基を有する低分子又は高分子化合物も好ましく用いられる。
より好ましいものとして、特開2005-125749号公報及び特開2006-188038号公報に記載の支持体表面に吸着可能な吸着性基、親水性基及び架橋性基を有する高分子ポリマーが挙げられる。
【0256】
下塗り層に用いられるポリマー中のエチレン性不飽和結合基の含有量は、ポリマー1g当たり、好ましくは0.1~10.0mmol、より好ましくは0.2~5.5mmolである。
下塗り層に用いられるポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、1万~30万がより好ましい。
【0257】
下塗り層は、上記下塗り層用化合物の他に、経時による汚れ防止のため、キレート剤、第二級又は第三級アミン、重合禁止剤、アミノ基又は重合禁止能を有する官能基と支持体表面と相互作用する基とを有する化合物(例えば、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、2,3,5,6-テトラヒドロキシ-p-キノン、クロラニル、スルホフタル酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸など)等を含有してもよい。
【0258】
下塗り層は、公知の方法で塗布される。下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1~100mg/m2が好ましく、1~30mg/m2がより好ましい。
【0259】
〔保護層〕
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層の上に保護層(オーバーコート層と呼ばれることもある)を有していてもよい。保護層は酸素遮断により画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像記録層における傷の発生防止及び高照度レーザー露光時のアブレーション防止の機能を有する。
【0260】
このような特性の保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55-49729号公報に記載されている。保護層に用いられる酸素低透過性のポリマーとしては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができ、必要に応じて2種類以上を混合して使用することもできる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース誘導体、ポリ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
変性ポリビニルアルコールとしてはカルボキシ基又はスルホ基を有する酸変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。具体的には、特開2005-250216号公報及び特開2006-259137号公報に記載の変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0261】
保護層は、酸素遮断性を高めるために無機層状化合物を含有することが好ましい。無機層状化合物は、薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、天然雲母、合成雲母等の雲母群、式:3MgO・4SiO・H2Oで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウム等が挙げられる。
好ましく用いられる無機層状化合物は雲母化合物である。雲母化合物としては、例えば、式:A(B,C)2-5D4O10(OH,F,O)2〔ただし、Aは、K、Na及びCaよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、B及びCは、Fe(II)、Fe(III)、Mn、Al、Mg及びVよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群が挙げられる。
【0262】
雲母群においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。合成雲母としてはフッ素金雲母KMg3(AlSi3O10)F2、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si4O10)F2等の非膨潤性雲母、及び、NaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si4O10)F2、Na又はLiテニオライト(Na,Li)Mg2Li(Si4O10)F2、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si4O10)F2等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に合成スメクタイトも有用である。
【0263】
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。即ち、膨潤性合成雲母は、10~15Å(オングストローム、1Å=0.1nm)程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘土鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi+、Na+、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換し得る。特に、層間の陽イオンがLi+、Na+の場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、特に好ましく用いられる。
【0264】
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きい程よい。従って、アスペクト比は、好ましくは20以上であり、より好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。アスペクト比は粒子の厚さに対する長径の比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0265】
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が、好ましくは0.3~20μm、より好ましくは0.5~10μm、特に好ましくは1~5μmである。粒子の平均の厚さは、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母の場合、好ましい態様としては、厚さが1~50nm程度、面サイズ(長径)が1~20μm程度である。
【0266】
無機層状化合物の含有量は、保護層の全固形分に対して、0~60質量%が好ましく、3~50質量%がより好ましい。複数種の無機層状化合物を併用する場合でも、無機層状化合物の合計量が上記の含有量であることが好ましい。上記範囲で酸素遮断性が向上し、良好な感度が得られる。また、着肉性の低下を防止できる。
【0267】
保護層は可撓性付与のための可塑剤、塗布性を向上させための界面活性剤、表面の滑り性を制御するための無機粒子など公知の添加物を含有してもよい。保護層は、本発明に係る特定化合物を含有してもよい。保護層は、画像記録層において記載した感脂化剤を含有してもよい。
【0268】
保護層は公知の方法で塗布される。保護層の塗布量(固形分)は、0.01~10g/m2が好ましく、0.02~3g/m2がより好ましく、0.02~1g/m2が特に好ましい。
【0269】
〔支持体〕
本発明の平版印刷版原版の支持体は、公知の平版印刷版原版用支持体から適宜選択して用いることができる。支持体としては、公知の方法で粗面化処理され、陽極酸化処理されたアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板は更に必要に応じて、特開2001-253181号公報及び特開2001-322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケートによる表面親水化処理、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸などによる表面親水化処理を適宜選択して行ってもよい。
支持体は、中心線平均粗さが0.10~1.2μmであることが好ましい。
【0270】
支持体は、必要に応じて、画像記録層とは反対側の面に、特開平5-45885号公報に記載の有機高分子化合物又は特開平6-35174号公報に記載のケイ素のアルコキシ化合物等を含むバックコート層を有していてもよい。
【0271】
[平版印刷版の作製方法]
本発明の平版印刷版の作製方法は、本発明の平版印刷版原版を画像露光する工程(露光工程)、及び、画像様露光後の平版印刷版原版を印刷機上で印刷インキ及び湿し水から選ばれる少なくとも1つにより、画像記録層の未露光部を除去する工程(機上現像工程)を含むことが好ましい。
また、本発明の平版印刷版の作製方法は、本発明の平版印刷版原版を画像露光する工程(露光工程)、及び、画像露光後の平版印刷版原版をpHが2~11の現像液により画像記録層の未露光部を除去する工程(現像処理工程)を含むことが好ましい。
【0272】
〔露光工程〕
画像露光は、デジタルデータを赤外線レーザー等により走査露光する方法により行うことが好ましい。
露光光源の波長は、750~1,400nmが好ましく用いられる。750~1,400nmの光源としては、赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好適である。露光機構は内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等のいずれでもよい。
露光工程はプレートセッターなどにより公知の方法で行うことができる。また、機上現像工程を含む場合には、露光装置を備えた印刷機を用いて、平版印刷版原版を印刷機に装着した後、印刷機上で露光を行ってもよい。
【0273】
〔機上現像工程〕
機上現像工程においては、画像露光後の平版印刷版原版に何らの現像処理を施すことなく、印刷機上において、印刷インキ及び湿し水から選ばれた少なくとも一方、好ましくは印刷インキ及び湿し水を供給して印刷(機上現像)を開始すると、印刷途上の初期の段階で平版印刷版原版の未露光部分が除去され、それに伴って親水性支持体表面が露出し非画像部が形成される。印刷インキ及び湿し水としては、公知の平版印刷用の印刷インキ及び湿し水が用いられる。最初に平版印刷版原版表面に供給されるのは、印刷インキでも湿し水でもよいが、湿し水が除去された画像記録層成分によって汚染されることを防止する点で、最初に印刷インキを供給することが好ましい。
このようにして、平版印刷版原版はオフセット印刷機上で機上現像され、そのまま多数枚の印刷に用いられる。
【0274】
本発明の平版印刷版の作製方法は、上記工程以外に、公知の他の工程を含んでいてもよい。他の工程としては、例えば、各工程の前に平版印刷版原版の位置や向き等を確認する工程や、機上現像工程の後に、印刷画像を確認する確認工程等が挙げられる。
【0275】
〔現像処理工程〕
本発明の平版印刷版原版は、画像記録層の構成成分であるバインダーポリマー等を適宜選択することにより、現像液を用いる現像処理によっても平版印刷版を作製することができる。現像液を用いる現像処理は、アルカリ剤を含むpH14以下の高pHの現像液を用いる態様(アルカリ現像処理ともいう)、並びに、界面活性剤及び水溶性高分子化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含有してもよいpH2~11の現像液を用いる態様(簡易現像処理ともいう)を含む。
【0276】
高pHのアルカリ現像液を用いるアルカリ現像処理においては、例えば前水洗工程により保護層を除去し、次いでアルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを水洗除去し、ガム液処理を行い、乾燥工程で乾燥することが行われる。これに対して、簡易現像処理においては、保護層を有する場合には保護層も同時に除去されるため、前水洗工程を省略することも可能となる。
また、現像液中に、必要に応じて、水溶性高分子化合物を含有させることにより、現像及びガム液処理工程を同時に行うこともできる。従って後水洗工程は特に必要とせず、1液1工程で現像とガム液処理を行ったのち、乾燥工程を行うこともできる。それ故、現像液を用いる現像処理としては、画像露光後の平版印刷版原版をpHが2~11の現像液により現像処理する工程を含む平版印刷版の作製方法が好ましい。現像処理の後、スクイズローラーを用いて余剰の現像液を除去してから乾燥を行うことが好ましい。
【0277】
すなわち、本発明に係る平版印刷版の作製方法の現像処理工程においては、1液1工程で現像処理とガム液処理とを行うことが好ましい。
1液1工程で現像とガム液処理を行うとは、現像処理と、ガム液処理とを別々の工程として行うのではなく、現像液に、水溶性高分子化合物を含有させ、1液により、現像処理とガム液処理とを1工程において行うことを意味する。
【0278】
現像処理は、現像液の供給手段及び擦り部材を備えた自動現像処理機により好適に実施することができる。擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動現像処理機が特に好ましい。
回転ブラシロールは2本以上が好ましい。更に自動現像処理機は現像処理手段の後に、スクイズローラー等の余剰の現像液を除去する手段や、温風装置等の乾燥手段を備えていることが好ましい。また、自動現像処理機は現像処理手段の前に、画像露光後の平版印刷版原版を加熱処理するための前加熱手段を備えていてもよい。
このような自動現像処理機での処理は、いわゆる機上現像処理の場合に生ずる保護層/感光層に由来の現像カスへの対応から開放されるという利点がある。
【0279】
現像工程において、手処理の場合、現像処理方法としては、例えば、スポンジや脱脂綿に水溶液を含ませ、版面全体を擦りながら処理し、処理終了後は乾燥する方法が好適に挙げられる。浸漬処理の場合は、例えば、平版印刷版原版を水溶液の入ったバットや深タンクに約60秒浸して撹拌した後、脱脂綿やスポンジなどで擦りながら乾燥する方法が好適に挙げられる。
【0280】
現像処理には、構造の簡素化、工程を簡略化した装置が用いられることが好ましい。
アルカリ現像処理においては、前水洗工程により保護層を除去し、次いで高pHのアルカリ性現像液により現像を行い、その後、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥する。
簡易現像処理においては、現像及びガム引きを1液で同時に行うことができる。従って、後水洗工程及びガム処理工程は省略することが可能となり、1液で現像とガム引き(ガム液処理)とを行った後、必要に応じて乾燥工程を行うことが好ましい。
更に、前水洗工程も行うことなく、保護層の除去、現像及びガム引きを1液で同時に行うことが好ましい。また、現像及びガム引きの後に、スクイズローラーを用いて余剰の現像液を除去した後、乾燥を行うことが好ましい。
【0281】
上記現像処理工程においては、現像液に1回浸漬する方法であってもよいし、2回以上浸漬する方法であってもよい。中でも、上記現像液に1回又は2回浸漬する方法が好ましい。
浸漬は、現像液が溜まった現像液槽中に露光済みの平版印刷版原版をくぐらせてもよいし、露光済みの平版印刷版原版の版面上にスプレーなどから現像液を吹き付けてもよい。
なお、現像液に2回以上浸漬する場合であっても、同じ現像液、又は、現像液と現像処理により画像記録層の成分の溶解又は分散した現像液(疲労液)とを用いて2回以上浸漬する場合は、1液での現像処理(1液処理)という。
【0282】
現像処理では、擦り部材を用いることが好ましく、画像記録層の非画像部を除去する現像浴には、ブラシ等の擦り部材が設置されることが好ましい。
現像処理は、常法に従って、好ましくは0℃~60℃、より好ましくは15℃~40℃の温度で、例えば、露光処理した平版印刷版原版を現像液に浸漬してブラシで擦る、又は、外部のタンクに仕込んだ処理液をポンプで汲み上げてスプレーノズルから吹き付けてブラシで擦る等により行うことができる。これらの現像処理は、複数回続けて行うこともできる。例えば、外部のタンクに仕込んだ現像液をポンプで汲み上げてスプレーノズルから吹き付けてブラシで擦った後に、再度スプレーノズルから現像液を吹き付けてブラシで擦る等により行うことができる。自動現像機を用いて現像処理を行う場合、処理量の増大により現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させることが好ましい。
【0283】
現像処理には、従来、PS版(Presensitized Plate)及びCTP(Computer to Plate)用に知られているガムコーターや自動現像機も用いることができる。自動現像機を用いる場合、例えば、現像槽に仕込んだ現像液、又は、外部のタンクに仕込んだ現像液をポンプで汲み上げてスプレーノズルから吹き付けて処理する方式、現像液が満たされた槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方式、実質的に未使用の現像液を一版毎に必要な分だけ供給して処理するいわゆる使い捨て処理方式のいずれの方式も適用できる。いずれの方式においても、ブラシやモルトンなどによるこすり機構があるものがより好ましい。例えば、市販の自動現像機(Clean Out Unit C85/C125、Clean-Out Unit+ C85/120、FCF 85V、FCF 125V、FCF News(Glunz & Jensen社製)、Azura CX85、Azura CX125、Azura CX150(AGFA GRAPHICS社製)を利用することができる。また、レーザー露光部と自動現像機部分とが一体に組み込まれた装置を利用することもできる。
【0284】
現像処理工程において用いられる現像液の成分等の詳細を以下に説明する。
【0285】
〔pH〕
現像液のpHは、2~11が好ましく、5~9がより好ましく、7~9が更に好ましい。現像性や画像記録層の分散性の観点から言えば、pHの値を高めに設定するほうが有利であるが、印刷性、とりわけ汚れの抑制に関しては、pHの値を低めに設定するほうが有効である。
ここで、pHはpHメーター(型番:HM-31、東亜DKK社製)を用いて25℃で測定される値である。
【0286】
〔界面活性剤〕
現像液には、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤を含有することができる。
上記現像液は、ブラン汚れ性の観点から、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
また、上記現像液は、ノニオン性界面活性剤を含むことが好ましく、ノニオン性界面活性剤と、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤よりなる群から選ばれた少なくとも1種と、を含むことがより好ましい。
【0287】
アニオン性界面活性剤として、下記式(I)で表される化合物が好ましく挙げられる。
R1-Y1-X1 (I)
式(I)中、R1は置換基を有していてもよい、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基又はアリール基を表す。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基等を好ましく挙げることができる。
シクロアルキル基としては、単環型でもよく、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3~8の単環型シクロアルキル基であることが好ましく、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基又はシクロオクチル基であることがより好ましい。多環型としては例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボロニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α-ピネル基、トリシクロデカニル基等を好ましく挙げることができる。
アルケニル基としては、例えば、炭素数2~20のアルケニル基であることが好ましく、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基等を好ましく挙げることができる。
アラルキル基としては、例えば、炭素数7~12のアラルキル基であることが好ましく、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を好ましく挙げることができる。
アリール基としては、例えば、炭素数6~15のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、9,10-ジメトキシアントリル基等を好ましく挙げることができる。
【0288】
置換基としては、水素原子を除く一価の非金属原子団が用いられ、好ましい例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br又はI)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アミド基、エステル基、アシロキシ基、カルボキシ基、カルボン酸アニオン基、スルホン酸アニオン基等が挙げられる。
【0289】
置換基におけるアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ドデシルオキシ基、ステアリルオキシ基、メトキシエトキシ基、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基等の好ましくは炭素数1~40、より好ましくは炭素数1~20のものが挙げられる。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、クメニルオキシ基、メトキシフェニルオキシ基、エトキシフェニルオキシ基、クロロフェニルオキシ基、ブロモフェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6~18のものが挙げられる。アシル基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基等の炭素数2~24のものが挙げられる。アミド基としては、アセトアミド基、プロピオン酸アミド基、ドデカン酸アミド基、パルチミン酸アミド基、ステアリン酸アミド基、安息香酸アミド基、ナフトイック酸アミド基等の炭素数2~24のものが挙げられる。アシロキシ基としては、アセトキシ基、プロパノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ナフトイルオキシ基等の炭素数2~20のものが挙げられる。エステル基としては、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ヘキシルエステル基、オクチルエステル基、ドデシルエステル基、ステアリルエステル基等の炭素数1~24のものが挙げられる。置換基は、上記置換基の2以上の組み合わせからなるものであってもよい。
【0290】
X1は、スルホン酸塩基、硫酸モノエステル塩基、カルボン酸塩基又は燐酸塩基を表す。
Y1は、単結合、-CnH2n-、-Cn-mH2(n-m)OCmH2m-、-O-(CH2CH2O)n-、-O-(CH2CH2CH2O)n-、-CO-NH-、又は、これらの2以上の組み合わせからなる2価の連結基を表し、n≧1及びn≧m≧0を満たす。
【0291】
式(I)で表される化合物の中で、下記式(I-A)又は式(I-B)で表される化合物が、耐キズ汚れ性の観点から、好ましい。
【0292】
【0293】
式(I-A)及び式(I-B)中、RA1~RA10はそれぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し、nAは1~3の整数を表し、XA1及びXA2はそれぞれ独立に、スルホン酸塩基、硫酸モノエステル塩基、カルボン酸塩基又は燐酸塩基を表し、YA1及びYA2はそれぞれ独立に、単結合、-CnH2n-、-Cn-mH2(n-m)OCmH2m-、-O-(CH2CH2O)n-、-O-(CH2CH2CH2O)n-、-CO-NH-、又は、これらを2以上組み合わせた2価の連結基を表し、n≧1及びn≧m≧0を満たし、RA1~RA5又はRA6~RA10中、及び、YA1又はYA2中の炭素数の総和は3以上である。
【0294】
上記式(I-A)又は式(I-B)で表される化合物における、RA1~RA5及びY1A、又は、RA6~RA10及びYA2の総炭素数は、25以下であることが好ましく、4~20であることがより好ましい。上述したアルキル基の構造は、直鎖であってもよく、分枝であってもよい。
式(I-A)又は式(I-B)で表される化合物におけるXA1及びXA2は、スルホン酸塩基、又は、カルボン酸塩基であることが好ましい。また、XA1及びXA2における塩構造は、アルカリ金属塩が特に水系溶媒への溶解性が良好であり好ましい。中でも、ナトリウム塩、又は、カリウム塩が特に好ましい。
上記式(I-A)又は式(I-B)で表される化合物としては、特開2007-206348号公報の段落0019~0037の記載を参照することができる。
アニオン性界面活性剤としては、特開2006-65321号公報の段落0023~0028に記載の化合物も好適に用いることができる。
【0295】
現像液に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されないが、アルキルジメチルアミンオキシドなどのアミンオキシド系、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルイミダゾールなどのベタイン系、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウムなどのアミノ酸系が挙げられる。
【0296】
特に、置換基を有してもよいアルキルジメチルアミンオキシド、置換基を有してもよいアルキルカルボキシベタイン、置換基を有してもよいアルキルスルホベタインが好ましく用いられる。これらの具体例としては、特開2008-203359号公報の段落0256の式(2)で示される化合物、特開2008-276166号公報の段落0028の式(I)、式(II)、式(VI)で示される化合物、特開2009-47927号公報の段落0022~0029に記載の化合物を挙げることができる。
【0297】
現像液に用いられる両性イオン系界面活性剤としては、下記一般式(1)で表される化合物又は一般式(2)で表される化合物が好ましい。
【0298】
【0299】
一般式(1)及び(2)中、R1及びR11は、各々独立に、炭素数8~20のアルキル基又は総炭素数8~20の連結基を有するアルキル基を表す。
R2、R3、R12及びR13は、各々独立に、水素原子、アルキル基又はエチレンオキサイド基を含有する基を表す。
R4及びR14は、各々独立に、単結合又はアルキレン基を表す。
また、R1、R2、R3及びR4のうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよく、R11、R12、R13及びR14のうち2つの基は互いに結合して環構造を形成してもよい。
【0300】
上記一般式(1)で表される化合物又は一般式(2)で表される化合物において、総炭素数値が大きくなると疎水部分が大きくなり、水系の現像液への溶解性が低下する。この場合、溶解を助けるアルコール等の有機溶剤を、溶解助剤として水に混合することにより、溶解性は良化するが、総炭素数値が大きくなりすぎた場合、適正混合範囲内で界面活性剤を溶解することはできない。従って、R1~R4又はR11~R14の炭素数の総和は好ましくは10~40、より好ましくは12~30である。
【0301】
R1又はR11で表される連結基を有するアルキル基は、アルキル基の間に連結基を有する構造を表す。すなわち、連結基が1つの場合は、「-アルキレン基-連結基-アルキル基」で表すことができる。連結基としては、エステル結合、カルボニル結合、アミド結合が挙げられる。連結基は2以上あってもよいが、1つであることが好ましく、アミド結合が特に好ましい。連結基と結合するアルキレン基の総炭素数は1~5であることが好ましい。このアルキレン基は直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキレン基が好ましい。連結基と結合するアルキル基は炭素数が3~19であることが好ましく、直鎖であっても分岐であってもよいが、直鎖アルキルであることが好ましい。
【0302】
R2又はR12がアルキル基である場合、炭素数は1~5であることが好ましく、1~3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
【0303】
R3又はR13がアルキル基である場合、炭素数は1~5であることが好ましく、1~3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでもよいが、直鎖アルキル基であることが好ましい。
R3又はR13で表されるエチレンオキサイドを含有する基としては、-Ra(CH2CH2O)nRbで表される基を挙げることができる。ここで、Raは単結合、酸素原子又は2価の有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、Rbは水素原子又は有機基(好ましくは炭素数10以下)を表し、nは1~10の整数を表す。
【0304】
R4及びR14がアルキレン基である場合、炭素数は1~5であることが好ましく、1~3であることが特に好ましい。直鎖、分岐のいずれでもよいが、直鎖アルキレン基であることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物又は一般式(2)で表される化合物は、アミド結合を有することが好ましく、R1又はR11の連結基としてアミド結合を有することがより好ましい。
一般式(1)で表される化合物又は一般式(2)で表される化合物の代表的な例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0305】
【0306】
【0307】
【0308】
一般式(1)又は(2)で表される化合物は公知の方法に従って合成することができる。また、市販されているものを用いることも可能である。市販品として、一般式(1)で表される化合物は川研ファインケミカル社製のソフタゾリンLPB、ソフタゾリンLPB-R、ビスタMAP、竹本油脂社製のタケサーフC-157L等があげられる。一般式(2)で表される化合物は川研ファインケミカル社製のソフタゾリンLAO、第一工業製薬社製のアモーゲンAOL等があげられる。
両性イオン系界面活性剤は現像液中に、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0309】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンジグリセリン類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N-ビス-2-ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等が挙げられる。
また、アセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系等の界面活性剤も同様に使用することができる。これら界面活性剤は2種以上併用することもできる。
【0310】
ノニオン性界面活性剤として特に好ましくは、下記式(N1)で示されるノニオン性芳香族エーテル系界面活性剤が挙げられる。
XN-YN-O-(A1)nB-(A2)mB-H (N1)
式中、XNは置換基を有していてもよい芳香族基を表し、YNは単結合又は炭素原子数1~10のアルキレン基を表し、A1及びA2は互いに異なる基であって、-CH2CH2O-又は-CH2CH(CH3)O-のいずれかを表し、nB及びmBはそれぞれ独立に、0~100の整数を表し、ただし、nBとmBとは同時に0ではなく、また、nB及びmBのいずれかが0である場合には、nB及びmBは1ではない。
式中、XNの芳香族基としてフェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基としては、炭素数1~100の有機基が挙げられる。なお、式中、A及びBがともに存在するとき、ランダムでもブロックの共重合体でもよい。
【0311】
上記炭素数1~100の有機基の具体例としては、飽和でも不飽和でよく直鎖でも分岐鎖でもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基など、その他に、アルコキシ基、アリーロキシ基、N-アルキルアミノ基、N,N-ジアルキルアミノ基、N-アリールアミノ基、N,N-ジアリールアミノ基、N-アルキル-N-アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N-アルキルカルバモイルオキシ基、N-アリールカルバモイルオキシ基、N,N-ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N-ジアリールカルバモイルオキシ基、N-アルキル-N-アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、N-アルキルアシルアミノ基、N-アリールアシルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N-アルキルカルバモイル基、N,N-ジアルキルカルバモイル基、N-アリールカルバモイル基、N,N-ジアリールカルバモイル基、N-アルキル-N-アリールカルバモイル基、ポリオキシアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖が結合している上記の有機基などが挙げられる。上記アルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
また、ノニオン性界面活性剤としては、特開2006-65321号公報の段落0030~0040に記載された化合物も好適に用いることができる。
【0312】
カチオン性界面活性剤としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、アルキルイミダゾリニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体等が挙げられる。
【0313】
界面活性剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤の含有量は、現像液の全質量に対し、1質量%~25質量%が好ましく、2質量%~20質量%がより好ましく、3質量%~15質量%が更に好ましく、5質量%~10質量%が特に好ましい。上記範囲であると、耐キズ汚れ性により優れ、現像カスの分散性に優れ、また、得られる平版印刷版のインキ着肉性に優れる。
【0314】
〔水溶性高分子化合物〕
現像液は、現像液の粘度調整及び得られる平版印刷版の版面の保護の観点から、水溶性高分子を含むことができる。
水溶性高分子としては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース等)及びその変性体、プルラン、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びアクリルアミド共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体などの水溶性高分子化合物を含有することができる。
【0315】
上記大豆多糖類としては、従来知られているものが使用でき、例えば市販品として商品名ソヤファイブ(不二製油(株)製)があり、各種グレードのものを使用することができる。好ましく使用できるものは、10質量%水溶液の粘度が10mPa・s~100mPa・sの範囲にあるものである。
【0316】
上記変性澱粉としては、下記式(III)で表される澱粉が好ましい。式(III)で表される澱粉としては、トウモロコシ、じゃがいも、タピオカ、米、小麦等のいずれの澱粉も使用できる。これらの澱粉の変性は、酸又は酵素等で1分子当たりグルコース残基数5~30の範囲で分解し、更にアルカリ中でオキシプロピレンを付加する方法等で行うことができる。
【0317】
【0318】
式中、エーテル化度(置換度)はグルコース単位当たり0.05~1.2の範囲であり、nは3~30の整数を表し、mは1~3の整数を表す。
【0319】
水溶性高分子化合物の中でも特に好ましいものとしては、大豆多糖類、変性澱粉、アラビアガム、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0320】
水溶性高分子化合物は、2種以上を併用することもできる。
現像液は、水溶性高分子化合物を含まないか、又は、水溶性高分子化合物の含有量は、現像液の全質量に対し、0質量%を超え1質量%以下であることが好ましく、水溶性高分子化合物を含まないか、又は、水溶性高分子化合物の含有量は、現像液の全質量に対し、0質量%を超え0.1質量%以下であることがより好ましく、水溶性高分子化合物を含まないか、又は、水溶性高分子化合物の含有量は、現像液の全質量に対し、0質量%を超え0.05質量%以下であることが更に好ましく、水溶性高分子化合物を含有しないことが特に好ましい。上記態様であると、現像液の粘度が適度であり、自動現像機のローラー部材に現像カス等が堆積することを抑制することができる。
【0321】
〔その他の添加剤〕
本発明に用いられる現像液は、上記の他に、湿潤剤、防腐剤、キレート化合物、消泡剤、有機酸、有機溶剤、無機酸、無機塩などを含有することができる。
【0322】
湿潤剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン等が好適に用いられる。湿潤剤は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。湿潤剤の含有量は、現像液の全質量に対し、0.1質量%~5質量%であることが好ましい。
【0323】
防腐剤としては、フェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4-イソチアゾリン-3-オン誘導体、ベンゾイソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、第四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、ニトロブロモアルコール系の2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、1,1-ジブロモ-1-ニトロ-2-エタノール、1,1-ジブロモ-1-ニトロ-2-プロパノール等が好ましく使用できる。
防腐剤の添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、現像液の全質量に対し、0.01質量%~4質量%の範囲が好ましい。また、種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
【0324】
キレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができる。キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。
キレート剤は、処理液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものであることが好ましい。キレート剤の含有量は、現像液の全質量に対し、0.001質量%~1.0質量%であることが好ましい。
【0325】
消泡剤としては、一般的なシリコーン系の自己乳化タイプ、乳化タイプ、ノニオン系のHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)が5以下等の化合物を使用することができる。シリコーン消泡剤が好ましい。
なお、シリコーン系界面活性剤は、消泡剤と見なすものとする。
消泡剤の含有量は、現像液の全質量に対し、0.001質量%~1.0質量%の範囲が好適である。
【0326】
有機酸としては、クエン酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、サリチル酸、カプリル酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、レブリン酸、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。有機酸は、そのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形で用いることもできる。有機酸の含有量は、現像液の全質量に対し、0.01質量%~0.5質量%が好ましい。
【0327】
有機溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、“アイソパーE、H、G”(エッソ化学(株)製)等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭化水素(メチレンジクロライド、エチレンジクロライド、トリクレン、モノクロロベンゼン等)、極性溶剤等が挙げられる。
【0328】
極性溶剤としては、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、メチルフェニルカルビノール、n-アミルアルコール、メチルアミルアルコール等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、エチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸ベンジル、乳酸メチル、乳酸ブチル、エチレングリコールモノブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールアセテート、ジエチルフタレート、レブリン酸ブチル等)、その他(トリエチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、N-フェニルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン等)等が挙げられる。
【0329】
上記有機溶剤が水に不溶な場合は、界面活性剤等を用いて水に可溶化して使用することも可能であり、現像液に、有機溶剤を含有する場合は、安全性、引火性の観点から、現像液における溶剤の濃度は、40質量%未満が好ましい。
【0330】
無機酸及び無機塩としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。無機塩の含有量は、現像液の全質量に対し、0.01質量%~0.5質量%の量が好ましい。
【0331】
現像液は、必要に応じて、上記各成分を水に溶解又は分散することによって調製される。現像液の固形分濃度は、2質量%~25質量%であることが好ましい。現像液としては、濃縮液を作製しておき、使用時に水で希釈して用いることもできる。
現像液は、水性の現像液であることが好ましい。
【0332】
現像液は、現像カスの分散性の観点から、アルコール化合物を含有することが好ましい。
アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。中でも、ベンジルアルコールが好ましい。
アルコール化合物の含有量は、現像カスの分散性の観点から、現像液の全質量に対し、0.01~5質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましく、0.2~1質量%が特に好ましい。
【実施例】
【0333】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、高分子化合物において、特別に規定したもの以外は、分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算値とした重量平均分子量(Mw)であり、繰り返し単位の比率はモル百分率である。また、「部」、「%」は、特に断りのない限り、「質量部」、「質量%」を意味する。なお、Meはメチル基を表す。
【0334】
〔合成例1:化合物1の合成〕
【0335】
(中間体SM-5の合成)
中間体SM-5の合成スキームを以下に示す。
【0336】
【0337】
3Lの三つ口フラスコに、5-メチル-2,3,3-トリメチルインドレニン(上記SM-1)217.2g(1.12mol)及び3-メトキシプロピルトシレート(上記SM-2)305.7g(1.25mol)を加え、120℃で3.5時間攪拌することで、中間体SM-3が得られた。この反応液を60℃まで冷却後、イソプロパノール976.3gを加え、40℃で攪拌した。更に、上記SM-4を265.0g(0.50mol)及び無水酢酸127.8g(1.25mol)を加えた。トリエチルアミン316.6g(3.13mol)を滴下した後、80℃にて2時間攪拌した。この反応液を5℃まで冷却し、蒸留水500gを添加し、1時間撹拌した。析出した固体をろ過により回収し、蒸留水1000gで洗浄後、50℃設定の送風乾燥機にて8時間乾燥することで、中間体SM-5が336.4g(0.40mol)得られた。
【0338】
(中間体SM-6の合成)
中間体SM-6の合成スキームを以下に示す。
【0339】
【0340】
3Lの三つ口フラスコに、p-クロロベンゼンスルホンアミド 130.0g(0.678mol)及びジメチルアミノピリジン 165.8g(1.36mol)、アセトン590mlを加え、35℃で溶解させた。次に、2,4,5―トリクロロベンゼンスルホン酸クロリド 189.9g(0.678mol)をアセトン400mlに溶解させ、内温を50℃以下に保ちながら滴下し、滴下終了後、内温50℃で2時間撹拌した、
反応終了後、水を1600ml添加し、室温で1時間撹拌した。その後、析出した固体をろ過により回収し、蒸留水1000gで洗浄後、50℃設定の送風乾燥機にて8時間乾燥することで、中間体SM-6が317.4g(0.57mol)得られた。
【0341】
(化合物1の合成)
化合物1の合成スキームを以下に示す。
【0342】
【0343】
3Lの三つ口フラスコに、上記中間体SM-6を189.7g(0.34mol)及び、メタノール1200gを加え、60℃で撹拌した。50質量%水酸化ナトリウム水溶液24.8g(0.31mol)を加えて30分撹拌後、反応温度を40℃に設定した。上記中間体SM-5を258.0g(0.31mol)、メタノール638gを更に加え、40℃で30分撹拌した。蒸留水2700g、メタノール300gを加えた12Lステンレスビーカーに上記反応液を滴下し、滴下終了後30分撹拌した。析出した固体をろ過により回収し、蒸留水2L、アセトン/蒸留水混合液(体積比2/3)5L、更に酢酸エチル/ヘキサン混合液(体積比1/3)5Lで洗浄した。得られた固体を50℃設定の送風乾燥機にて48時間乾燥することで、化合物1が358.0g(0.30mol)得られた。得られた化合物1の構造は、NMRにて同定した。同定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz、重ジメチルスルホキシド)δ= 1.10(s,12H)、1.83-1.94(m,4H)、2.30(s,6H)、2.88(s,4H)、3.20(s,6H)、3.29-3.33(m,4H)、4.04(t,4H)、5.84(d,2H)、7.06-7.16(m,6H)、7.18-7.25(m,6H)、7.37-7.47(m,8H)、7.56(d,2H)、7.74(s,1H)、7.77(s,1H)
【0344】
〔合成例2:化合物2の合成〕
【0345】
(化合物2の合成)
化合物2の合成スキームを以下に示す。
【0346】
【0347】
100Lの三つ口フラスコに、上記中間体SM-6を2.23g(0.004mol)及び、メタノール20mlを加え、さらに50質量%水酸化ナトリウム水溶液0.32g(0.008mol)を加えて30分撹拌し、SM-6を溶解させた。次に公知の方法で合成可能なSM-7 1.34g(0.002mol)を添加し溶解させた。ここに水を10ml添加し、1時間撹拌した。その後、析出した固体をろ過により回収し、蒸留水20gで洗浄し、室温で乾燥させることで、1.8g(0.0019mol)の化合物2を得た。
得られた化合物2の構造は、NMRにて同定した。同定結果を以下に示す。
1H-NMR(400MHz、重ジメチルスルホキシド)δ= 0.85(m,3H)、1.17-1.4(m,10H)、1.67(m,2H)、3.16(d,4H)、3.85(s,3H)、3.90-4.00(m,8H)、4.10(q,4H)、6.44(s,2H)、6.98(d,2H)、7.39(m,2H)、7.55(m,2H)、7.76(d,2H)、7.82(d,2H)
【0348】
実施例101~118及び比較例101~104
〔平版印刷版原版Aの作製〕
【0349】
<支持体の作製>
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間脱脂処理を施した。その後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス-水懸濁液(比重1.1g/cm3)を用いアルミニウム板表面を砂目立てし、水でよく洗浄した。アルミニウム板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20質量%硝酸水溶液に20秒間浸漬し、水洗した。砂目立て表面のエッチング量は約3g/m2であった。
【0350】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。電解液は硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温は50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0351】
続いて、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dm2の条件で、硝酸電解と同様の方法で電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、アルミニウム板に15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を形成し、水洗、乾燥して支持体Aを作製した。陽極酸化皮膜の表層における平均ポア径(表面平均ポア径)は10nmであった。
陽極酸化皮膜の表層におけるポア径の測定は、超高分解能型SEM((株)日立製作所製S-900)を使用し、12Vという比較的低加速電圧で、導電性を付与する蒸着処理等を施すこと無しに、表面を15万倍の倍率で観察し、50個のポアを無作為抽出して平均値を求める方法で行った。標準偏差誤差は±10%以下であった。
【0352】
その後、非画像部の親水性を確保するため、支持体Aに2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて60℃で10秒間シリケート処理を施し、水洗して支持体Bを作製した。Siの付着量は10mg/m2であった。支持体Bの中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0353】
上記支持体Aの作製において、直流陽極酸化皮膜形成時の電解液を、22質量%リン酸水溶液に変更した以外は、支持体Aの作製方法と同様にして、支持体Cを作製した。陽極酸化皮膜の表層における平均ポア径(表面平均ポア径)を上記と同様の方法で測定したところ、25nmであった。
【0354】
その後、非画像部の親水性を確保するため、支持体Cに2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて60℃で10秒間シリケート処理を施した後、水洗して支持体Dを作製した。Siの付着量は10mg/m2であった。支持体Dの中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.52μmであった。
【0355】
<下塗り層の形成>
上記支持体A上に、下記組成の下塗り層塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/m2になるよう塗布して下塗り層を形成した。
【0356】
(下塗り層塗布液(1))
・ポリマー(P-1)〔下記〕:0.18g
・ヒドロキシエチルイミノ二酢酸:0.10g
・水:61.4g
【0357】
【0358】
ポリマー(P-1)の合成法を以下に記載する。
【0359】
(モノマーM-1の合成)
3つ口フラスコに、アンカミン 1922A(ジエチレングリコールジ(アミノプロピル)エーテル、エアープロダクツ社製)200部、蒸留水435部及びメタノール410部を加え、5℃まで冷却した。次に安息香酸222.5部及び4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-OH-TEMPO)0.025部を加え、メタクリル酸無水物280部を、反応液の内温が10℃以下となる様に滴下した。反応液を5℃で6時間撹拌し、次いで25℃にて12時間撹拌した後、リン酸70部を加えpHを3.3に調整した。反応液をステンレスビーカーに移し、酢酸エチル3,320部、メチル-tertブチルエーテル(MTBE)1,120部及び蒸留水650部を加え、激しく撹拌した後静置した。上層(有機層)を廃棄した後、酢酸エチル1,610部1.8Lを加え、激しく撹拌した後静置し、上層を廃棄した。更に、酢酸エチル1,350部を加え、激しく撹拌した後静置し、上層を廃棄した。次いで、MTBE1,190部を加え、激しく撹拌した後静置し、上層を廃棄した。得られた水溶液に4-OH-TEMPO0.063部を加えてモノマーM-1の水溶液(固形分換算20.1質量%)を12,000部得た。
【0360】
(モノマーM-2の精製)
ライトエステル P-1M(2-メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート、共栄社化学(株)製)420部、ジエチレングリコールジブチルエーテル1,050部及び蒸留水1,050部を分液ロートに加え、激しく撹拌した後静置した。上層を廃棄した後、ジエチレングリコールジブチルエーテル1,050部を加え、激しく撹拌した後静置した。上層を廃棄してモノマーM-2の水溶液(固形分換算10.5質量%)を13,000部得た。
【0361】
(ポリマーP-1の合成)
三口フラスコに、蒸留水を600.6部、モノマーM-1水溶液を33.1部及び下記モノマーM-3を46.1部加え、窒素雰囲気下で55℃に昇温した。次に、下記滴下液1を2時間掛けて滴下し、30分撹拌した後、VA-046B(和光純薬工業(株)製)3.9部を加え、80℃に昇温し、1.5時間撹拌した。反応液を室温(25℃、以下同様)に戻した後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液175部を加え、pHを8.3に調整した。次に、4-OH-TEMPO0.152部を加え、53℃に昇温した。メタクリル酸無水物66.0部を加えて53℃で3時間撹拌した。室温に戻した後、反応液をステンレスビーカーに移し、MTBE1,800部を加え、激しく撹拌した後静置し、上層を廃棄した。同様にしてMTBE1,800部による洗浄操作を更に2回繰り返した後、得られた水層に蒸留水1,700部及び4-OH-TEMPOを0.212部加え、均一溶液としてポリマーP-1(固形分換算11.0%)を41,000部得た。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリエチレングリコール換算値とした重量平均分子量(Mw)は20万であった。
【0362】
滴下液1
・上記モノマーM-1水溶液:132.4g
・上記モノマーM-2水溶液:376.9g
・モノマーM-3〔下記〕:184.3g
・ブレンマー PME4000(日油(株)製):15.3g
・VA-046B(和光純薬工業(株)製):3.9g
・蒸留水:717.4g
【0363】
ブレンマー PME4000:メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(オキシエチレン単位の繰り返し数:90)
VA-046B:2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート
【0364】
【0365】
<画像記録層の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(1)をバー塗布し、100℃で60秒間オーブン乾燥して乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成した。
画像記録層塗布液(1)は下記感光液(1)及びミクロゲル液を塗布直前に混合し撹拌することにより調製した。
【0366】
<感光液(1)>
・バインダーポリマー(1)〔下記〕 0.240g
・赤外線吸収剤(D-1) 〔下記〕 0.024g
・表1記載の特定化合物又は公知の化合物(重合開始剤) 0.245g
・重合性化合物 0.192g
トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート
(NKエステル A-9300、新中村化学(株)製)
・低分子親水性化合物 0.062g
トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート
・フッ素系界面活性剤(1)〔下記〕 0.008g
・2-ブタノン 1.091g
・1-メトキシ-2-プロパノール 8.609g
【0367】
<ミクロゲル液>
・ミクロゲル(1):2.640g
・蒸留水:2.425g
【0368】
上記感光液(1)に用いた赤外線吸収剤(D-1)、バインダーポリマー(1)、フッ素系界面活性剤(1)の構造を以下に示す。バインダーポリマー(1)において、各構成単位の括弧の右下の数字はモル比を表す。
【0369】
【0370】
【0371】
【0372】
上記ミクロゲル液に用いたミクロゲル(1)の調製法を以下に示す。
<多価イソシアネート化合物(1)の調製>
イソホロンジイソシアネート17.78g(80mmol)と下記多価フェノール化合物(1)7.35g(20mmol)との酢酸エチル(25.31g)懸濁溶液に、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)(ネオスタン U-600、日東化成(株)製)43mgを加えて撹拌した。発熱が収まった時点で反応温度を50℃に設定し、3時間撹拌して多価イソシアネート化合物(1)の酢酸エチル溶液(50質量%)を得た。
【0373】
【0374】
<ミクロゲル(1)の調製>
下記油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を45℃で4時間撹拌後、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン-オクチル酸塩(U-CAT SA102、サンアプロ(株)製)の10質量%水溶液5.20gを加え、室温で30分撹拌し、45℃で24時間静置した。蒸留水で、固形分濃度を20質量%になるように調整し、ミクロゲル(1)の水分散液を得た。動的光散乱式粒径分布測定装置 LB-500((株)堀場製作所製)を用いて、光散乱法により体積平均粒径を測定したところ、0.28μmであった。
【0375】
(油相成分)
(成分1)酢酸エチル:12.0g
(成分2)トリメチロールプロパン(6モル)とキシレンジイソシアネート(18モル)を付加させ、これにメチル片末端ポリオキシエチレン(1モル、オキシエチレン単位の繰返し数:90)を付加させた付加体(50質量%酢酸エチル溶液、三井化学(株)製):3.76g
(成分3)多価イソシアネート化合物(1)(50質量%酢酸エチル溶液として):15.0g
(成分4)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(SR-399、サートマー社製)の65質量%酢酸エチル溶液:11.54g
(成分5)スルホン酸塩型界面活性剤(パイオニンA-41-C、竹本油脂(株)製)の10%酢酸エチル溶液:4.42g
【0376】
(水相成分)蒸留水:46.87g
【0377】
〔平版印刷版原版の評価〕
上記各平版印刷版原版Aについて、機上現像性、熱経時安定性(1)、及び耐刷性を以下の評価方法により評価した。評価結果を表1に示す。
<機上現像性>
平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T-6000IIIにより、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像及び20μmドットFMスクリーンの50%網点チャートを含むようにした。
露光された平版印刷版原版を現像処理することなく、(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity-2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues-G(N)墨インキ(DICグラフィックス(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給し、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート紙(76.5kg)(三菱製紙(株)製)に100枚印刷を行った。
印刷機上で画像記録層の未露光部の機上現像が完了し、非画像部にインキが転写しない状態になるまでに要した印刷用紙の枚数を計測し、機上現像性として評価した。枚数が少ない程、機上現像性が良好である。
【0378】
<熱経時安定性(1)>
平版印刷版原版を25℃、60%の環境下で1時間調湿した後、梱包した。次に、梱包物を60℃で4日間熱経時した。熱経時終了後、上記機上現像性の評価と同様にして、画像露光及び機上現像を行い印刷用紙の枚数を計測し、熱経時安定性(1)を評価した。枚数が少ない程、熱経時安定性が良好である。
【0379】
〔耐刷性〕
上記機上現像性の評価を行った後、さらに印刷を続けた。印刷枚数の増加に伴い徐々に画像記録層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で測定した値が印刷100枚目の測定値よりも5%低下するまでの印刷枚数を計測した。耐刷性は、下記式に示すように、印刷枚数が5万枚の場合を100とする相対耐刷性により評価した。数値が大きい程、耐刷性が良好である。
相対耐刷性=((対象平版印刷版原版の印刷枚数)/50,000) × 100
【0380】
【0381】
表1中、「特定化合物」の欄に記載のI-1-j-1、I-3-j-1、I-7-j-1、I-9-j-1、I-10-j-1、I-12-j-1、I-16-j-1、I-19-j-1、I-23-j-1、I-24-j-1、I-26-j-2、I-10-j-2、I-10-j-3、I-10-j-4、I-10-j-9、I-7-j-3、I-7-j-9、及びI-12-j-9は本発明の特定化合物であり、その構造は先に示したとおりである。また、H-1、H-2、H-3及びH-4は公知の化合物であり、その構造は以下に示すとおりである。式中、TfO-はトリフルオロメタンスルホナートアニオンを表し、TsO-はトシラートアニオンを表す。化合物H-1~H-4は、公知の方法により合成した。
【0382】
【0383】
表1に記載の結果から、本発明に係る特定化合物を重合開始剤として含有する画像記録層を有する平版印刷版原版は、熱経時安定性(1)、機上現像性、及び耐刷性の全てにおいて優れていることがわかる。
公知の化合物を重合開始剤として含有する比較例の平版印刷版原版は、熱経時安定性(1)、機上現像性、及び耐刷性のいずれか1つ以上において劣っている。
【0384】
(実施例201~215及び比較例201~206)
〔平版印刷版原版Bの作製〕
上記平版印刷版原版Aの作製において、上記支持体Aの代りに上記支持体Bを用い、上記画像記録層塗布液(1)の代りに、下記画像記録層塗布液(2)を用い、更に、画像記録層上に下記保護層を形成する他は上記平版印刷版原版Aの作製と同様にして、平版印刷版原版Bを作製した。画像記録層塗布液(2)は下記感光液(2)及びミクロゲル液を塗布直前に混合し撹拌することにより調製した。各平版印刷版原版の作製において使用した画像記録層塗布液(2)中の赤外線吸収剤、特定化合物、重合開始剤を表2にまとめて記載する。
【0385】
<感光液(2)> 添加量
・バインダーポリマー(1)〔上記〕: 0.240g
・赤外線吸収剤(D-1)〔上記〕又は(D-2)〔下記〕 0.024g
・表2記載の特定化合物(重合開始剤)又は公知の重合開始剤、又はパラメータ規定化合物 表2記載の量
・表2記載の特定化合物(非オニウム塩型) 表2記載の量
・重合性化合物:トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、(NKエステル A-9300、新中村化学(株)製) 0.192g
・酸発色剤:2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-3’-メチルスピロ[フタリド-3,9’-キサンテン](S-205、福井山田化学工業(株)製) 0.080g
・フッ素系界面活性剤(1)〔上記〕: 0.008g
・2-ブタノン: 1.091g
・1-メトキシ-2-プロパノール: 8.609g
【0386】
<ミクロゲル液>
・ミクロゲル(1)〔上記〕: 2.640g
・蒸留水: 2.425g
上記感光液(2)に用いた赤外線吸収剤(D-2)の構造を以下に示す。なお、赤外線吸収剤(D-2)は、上記の化合物1である。
【0387】
【0388】
<保護層の形成>
画像記録層上に、下記組成の保護層塗布液をバー塗布し、120℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量が0.15g/m2の保護層を形成した。
【0389】
<保護層塗布液>
・無機層状化合物分散液(1)〔下記〕 1.5g
・ポリビニルアルコール(CKS50、日本合成化学工業(株)製、
スルホン酸変性、けん化度99モル%以上、重合度300)6質量%水溶液
0.55g
・ポリビニルアルコール(PVA-405、(株)クラレ製、
けん化度81.5モル%、重合度500)6質量%水溶液 0.03g
・界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エマレックス710、日本エマルジョン(株)製)1質量%水溶液 0.86g
・イオン交換水 6.0g
【0390】
無機層状化合物分散液(1)の調製法を以下に記載する。
<無機層状化合物分散液(1)の調製>
イオン交換水193.6gに合成雲母(ソマシフME-100、コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0391】
〔平版印刷版原版の評価〕
上記各平版印刷版原版Bについて、平版印刷版原版Aにおけると同様に、機上現像性、熱経時安定性(1)、及び耐刷性を評価した。更に、発色性、及び熱経時安定性(2)(リング状発色防止性)を以下の評価方法により評価した。結果を表2に示す。
【0392】
<発色性>
平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにより、出力11.7W、外面ドラム回転数250rpm、解像度2,400dpi(dot per inch、1inch=25.4mm)の条件で露光した。露光は25℃、50%RHの環境下で行った。
露光直後、平版印刷版原版の発色を測定した。測定は、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM2600dとオペレーションソフトCM-S100Wとを用い、SCE(正反射光除去)方式で行った。発色性は、L*a*b*表色系のL*値(明度)を用い、露光部のL*値と未露光部のL*値との差ΔLにより評価した。表2には、ΔLの数値を記載した。ΔLの値が大きい程、発色性が優れ、発色による平版印刷版の検版性にも優れる。
【0393】
<熱経時安定性(2)(リング状発色防止性)>
平版印刷版原版を25℃、60%の環境下で1時間調湿した後、梱包した。次に、梱包物を60℃で4日間熱経時した。熱経時終了後、50×300mmの面積範囲にて、リング状に発色している点を目視で数えた。発色点の数がゼロのものをA、1~10のものをB、10より大きいものをCとしてリング状発色防止性を評価した。平版印刷版原版としては、リング状発色がないことが求められる(B、Cはリング状発色の程度差を表わすための指標)。
【0394】
【0395】
【0396】
表2中、「特定化合物」の欄に記載のI-1-j-1、I-7-j-1、I-9-j-1、I-10-j-1、I-12-j-1、I-16-j-1、I-9-j-3、I-13-j-3、I-1-j-9、I-7-j-1、I-1-h-1、I-7-h-1、I-10-h-1及びI-12-h-1は本発明の特定化合物であり、その構造は先に示したとおりである。また、H-1、H-2、H-3及びH-4は公知の化合物であり、その構造は先に示したとおりである。
【0397】
また、H-5、及びH-6は公知の化合物であり、その構造は以下に示すとおりである。
【0398】
【0399】
上記化合物H-1、H-3~H-6のアニオン部について、ハンセンのSP値パラメータにおけるδd、δp、δH及びδHのδpに対する比率(%)(δH/δp X 100)を下表に記載する。
【0400】
【0401】
表2に記載の結果から、本発明に係る特定化合物又はパラメータ規定化合物を含有する画像記録層を有する平版印刷版原版は、熱経時安定性(1)、機上現像性、耐刷性、発色性、及び熱経時安定性(2)の全てにおいて優れていることがわかる。
公知の重合開始剤を含有する比較例の平版印刷版原版は、熱経時安定性(1)、機上現像性、発色性、及び熱経時安定性(2)のいずれか1つ以上において劣っている。
【0402】
(実施例301~314及び比較例301~306)
〔平版印刷版原版Cの作製〕
【0403】
上記平版印刷版原版Aの作製において、上記支持体Aの代りに上記支持体Cを用い、上記画像記録層塗布液(1)の代りに、下記組成の画像記録層塗布液(3)をバー塗布し、70℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.6g/m2の画像記録層を形成して、平版印刷版原版Cを作製した。各平版印刷版原版の作製において使用した画像記録層塗布液(3)中の赤外線吸収剤、特定化合物、重合開始剤を表3にまとめて記載する。
【0404】
<画像記録層塗布液(3)> 添加量
・赤外線吸収剤(D-3)又は(D-4) 0.018g
・表3記載の特定化合物(重合開始剤)又は公知の重合開始剤、又はパラメータ規定化合物 表3記載の量
・表3記載の特定化合物(非オニウム塩型) 表3記載の量
・ボレート化合物: 0.010g
TPB〔下記〕
・ポリマー粒子水分散液(1)(22質量%)〔下記〕: 10.0g
・重合性化合物: 1.50g
SR-399(サートマー社製)
・酸発色剤:2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-3’-メチルスピロ[フタリド-3,9’-キサンテン](S-205、福井山田化学工業(株)製) 0.080g
・メルカプト-3-トリアゾール: 0.2g
・Byk 336(Byk Chemie社製): 0.4g
・Klucel M(Hercules社製): 4.8g
・ELVACITE 4026(Ineos Acrylics社製):
2.5g
・n-プロパノール: 55.0g
・2-ブタノン: 17.0g
【0405】
上記画像記録層塗布液(3)に用いた赤外線吸収剤(D-3)、(D-4)、TPB、及び商品名で記載の化合物は下記の通りである。
【0406】
【0407】
【0408】
・SR-399:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
・Byk 336:変性ジメチルポリシロキサン共重合体(25質量%キシレン/メトキシプロピルアセテート溶液)
・Klucel M:ヒドロキシプロピルセルロース(2質量%水溶液)
・ELVACITE 4026:高分岐ポリメチルメタクリレート(10質量%2-ブタノン溶液)
【0409】
上記画像記録層塗布液(3)に用いたポリマー粒子水分散液(1)の調製法を以下に示す。
<ポリマー粒子水分散液(1)の調製>
4つ口フラスコに撹拌機、温度計、滴下ロート、窒素導入管、還流冷却器を施し、窒素ガスを導入して脱酸素を行いつつ、ポリエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート(PEGMA、エチレングリコールの平均繰返し単位数:50)10g、蒸留水200g及びn-プロパノール200gを加えて内温が70℃となるまで加熱した。次に、予め混合されたスチレン(St)10g、アクリロニトリル(AN)80g及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.8gの混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後5時間そのまま反応を続けた後、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.4gを添加し、内温を80℃まで上昇させた。続いて、0.5gの2,2’-アゾビスイソブチロニトリルを6時間かけて添加した。合計で20時間反応させた段階でポリマー化はモル基準で98%以上進行しており、質量比でPEGMA/St/AN=10/10/80のポリマー粒子水分散液(1)を調製した。ポリマー粒子の粒径分布は、粒径150nmに極大値を有していた。
【0410】
粒径分布は、ポリマー粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、写真上で粒子の粒径を総計で5,000個測定し、得られた粒径測定値の最大値から0の間を対数目盛で50分割して各粒径の出現頻度をプロットして求めた。なお非球形粒子については写真上の粒子面積と同一の粒子面積を持つ球形粒子の粒径値を粒径とした。
【0411】
〔平版印刷版原版の評価〕
上記各平版印刷版原版Cについて、平版印刷版原版Bにおけると同様に、熱経時安定性(1)、機上現像性、耐刷性、発色性、及び熱経時安定性(2)を評価した。評価結果を表3に示す。
【0412】
【0413】
【0414】
表3中、「特定化合物」の欄に記載のI-1-j-1、I-7-j-1、I-9-j-1、I-10-j-1、I-12-j-1、I-16-j-1、I-9-j-3、I-13-j-3、I-1-j-9、I-9-j-1、I-1-h-1、I-7-h-1、及びI-10-h-1は本発明の特定化合物であり、その構造は先に示したとおりである。また、H-1、H-2、H-3及びH-4は公知の化合物であり、その構造は先に示したとおりである。
【0415】
表3に記載の結果から、本発明に係る特定化合物又はパラメータ規定化合物を含有する画像記録層を有する平版印刷版原版は、熱経時安定性(1)、機上現像性、耐刷性、発色性、及び熱経時安定性(2)の全てにおいて優れていることがわかる。
公知の重合開始剤を含有する比較例の平版印刷版原版は、熱経時安定性(1)、機上現像性、発色性、及び熱経時安定性(2)のいずれか1つ以上において劣っている。
【0416】
(実施例401~415及び比較例401~406)
〔平版印刷版原版Dの作製〕
【0417】
上記平版印刷版原版Aの作製において、上記支持体Aの代りに上記支持体Dを用い、上記画像記録層塗布液(1)の代りに、塗布後の組成が下記となる画像記録層塗布水溶液(4)をバー塗布し、50℃で60秒間オーブン乾燥して、乾燥塗布量0.93g/m2の画像記録層を形成して、平版印刷版原版Dを作製した。各平版印刷版原版の作製において使用した、画像記録層塗布液(4)中の赤外線吸収剤、特定化合物、酸発生剤を表4にまとめて記載する。
【0418】
<画像記録層塗布液(4)>
・赤外線吸収剤(D-3)、(D-5)又は(D-6) 0.045g/m2
・表4記載の特定化合物(酸発生剤)又は公知の酸発生剤、又はパラメータ規定化合物 表4記載
・表4記載の特定化合物(非オニウム塩型) 表4記載
・ボレート化合物: 0.010g/m2
TPB〔上記〕
・酸発色剤:2’-アニリノ-6’-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-3’-メチルスピロ[フタリド-3,9’-キサンテン](S-205、福井山田化学工業(株)製) 0.080g/m2
・ポリマー粒子水分散液(2): 0.693g/m2
・Glascol E15: 0.09g/m2
(Allied Colloids Manufacturing 社製)
・ERKOL WX48/20 (ERKOL社製):0.09g/m2
・Zonyl FSO100 (DuPont社製):0.0075g/m2
【0419】
上記画像記録層塗布水溶液(4)用いた商品名で記載の化合物、ポリマー粒子水分散液(2)、及び赤外線吸収剤(D-5)及び(D-6)は下記の通りである。
・Glascol E15:ポリアクリル酸
・ERKOL WX48/20:ポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニル共重合体
・Zonyl FSO100:界面活性剤
・ポリマー粒子水分散液(2):アニオン性湿潤剤で安定化されたスチレン/アクリロニトリル共重合体(モル比50/50、平均粒径61nm、固形分約20%)
【0420】
【0421】
〔平版印刷版原版の評価〕
上記各平版印刷版原版Dについて、平版印刷版原版Bにおけると同様に、熱経時安定性(1)、機上現像性、耐刷性、発色性、及び熱経時安定性(2)を評価した。評価結果を表4に示す。
【0422】
【0423】
【0424】
表4中、「特定化合物」の欄に記載のI-1-j-1、I-7-j-1、I-9-j-1、I-10-j-1、I-12-j-1、I-16-j-1、I-9-j-3、I-13-j-3、I-1-j-9、I-9-j-1、I-1-h-1、I-7-h-1、I-10-h-1、及びI-12-h-1は本発明の特定化合物であり、その構造は先に示したとおりである。また、H-1、H-2、H-3及びH-4は公知の化合物であり、その構造は先に示したとおりである。表4中、含有量としての数値は乾燥塗布量を表し、単位はg/m2である。
【0425】
表4に記載の結果から、本発明に係る特定化合物又はパラメータ規定化合物を含有する画像記録層を有する平版印刷版原版は、熱経時安定性(1)、機上現像性、耐刷性、発色性、及び熱経時安定性(2)の全てにおいて優れていることがわかる。
公知の酸発生剤を含有する比較例の平版印刷版原版は、熱経時安定性(1)、機上現像性、発色性、及び熱経時安定性(2)のいずれか1つ以上において劣っている。
【0426】
(実施例501~505及び比較例501~502)
〔平版印刷版原版Eの作製〕
【0427】
<支持体Eの作製>
厚さ0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)に、以下の(a)~(i)の各処理を連続的に施して表面処理を行った。なお、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
【0428】
(a)アルカリエッチング処理
上記アルミニウム板に、カセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0429】
(b)デスマット処理
アルミニウム板に、温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)を用いて、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0430】
(c)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0431】
(d)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.25g/m2溶解し、上記電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0432】
(e)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む)を用いて、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
【0433】
(f)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。電解液は、塩酸2.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む)、温度35℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0434】
(g)アルカリエッチング処理
アルミニウム板に、カセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.1g/m2溶解し、上記電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0435】
(h)陽極酸化処理
アルミニウム板に15質量%硫酸水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dm2で2.5g/m2の直流陽極酸化皮膜を形成し、水洗、乾燥した。陽極酸化皮膜の表層における平均ポア径(表面平均ポア径)は10nmであった。
陽極酸化皮膜の表層におけるポア径の測定は、超高分解能型SEM((株)日立製作所製S-900)を使用し、12Vという比較的低加速電圧で、導電性を付与する蒸着処理等を施すこと無しに、表面を15万倍の倍率で観察し、50個のポアを無作為抽出して平均値を求める方法で行った。標準偏差誤差は±10%以下であった。
【0436】
(i)親水化処理
非画像部の親水性を確保するため、アルミニウム板に2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて60℃で10秒間シリケート処理を施した後、水洗して支持体Eを作製した。Siの付着量は9.5mg/m2であった。支持体Eの中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.27μmであった。
【0437】
<下塗り層の形成>
上記支持体E上に、下記組成の下塗り層塗布液(2)を乾燥塗布量が20mg/m2になるよう塗布して下塗り層を形成した。
【0438】
(下塗り層塗布液(2))
・ポリマー(P-2)[下記] 0.18g
・エチレンジアミン四酢酸4ナトリウム 0.10g
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル 0.03g
・水 61.39g
【0439】
【0440】
なお、上記ポリマー(P-2)における各構成単位の括弧の右下の数値は、質量比を表し、また、エチレンオキシ単位の括弧の右下の数値は、繰り返し数を表す。
【0441】
<画像記録層の形成>
下塗り層上に、下記組成の画像記録層塗布液(5)をバー塗布した後、100℃で60秒でオーブン乾燥して、乾燥塗布量1.0g/m2の画像記録層を形成した。
画像記録層塗布液(5)は下記感光液(5)およびミクロゲル液を塗布直前に混合し攪拌することにより調製した。
【0442】
<感光液(5)>
・バインダーポリマー(2)〔下記構造〕: 0.240g
・赤外線吸収剤(D-2)〔上記〕 0.024g
・表5記載の特定化合物(重合開始剤)又は公知の重合開始剤
0.245g
・重合性化合物:トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、(NKエステル A-9300、新中村化学(株)製)
0.192g
・着色剤〔下記〕: 0.030g
・フッ素系界面活性剤(1)〔上記〕: 0.008g
・2-ブタノン: 1.091g
・1-メトキシ-2-プロパノール: 8.609g
【0443】
<ミクロゲル液>
・ミクロゲル(1)〔上記〕: 2.640g
・蒸留水: 2.425g
【0444】
上記感光液(5)に用いたバインダーポリマー(2)及び着色剤の構造を以下に示す。
【0445】
【0446】
なお、Meはメチル基を表し、上記バインダーポリマー(2)の各構成単位の括弧の右下の数字はモル比を表す。
【0447】
【0448】
<保護層の形成>
上記画像記録層上に、更に上記保護層塗布液をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/m2の保護層を形成した。
【0449】
〔平版印刷版原版の評価〕
上記各平版印刷版原版Eについて、耐刷性及び熱経時安定性(3)を、以下の評価方法により評価した。評価結果を表5に示す。
【0450】
<耐刷性>
[画像露光]
平版印刷版原版を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T-6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはベタ画像及び50%網点チャートを含むようにした。[現像処理]
露光後の平版印刷版に、Glunz & Jensen社製のClean Out Unit+ C85を使用し、60cm/minの搬送速度で20℃にて現像処理を行い、平版印刷版を作製した。現像処理には、下記組成の現像液を使用した。この現像液は、保護層の除去、現像及びガム引きを1液で行うことができる現像液である。
【0451】
<現像液>
・ペレックスNBL(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、花王(株)製アニオン界面活性剤): 7.8質量部
・ニューコールB13(ポリオキシエチレンアリールエーテル、日本乳化剤(株)製ノニオン界面活性剤): 2.00質量部
・サーフィノール2502(Air Products社製):
0.6質量部
・ベンジルアルコール(和光純薬工業(株)製): 0.8質量部
・グルコン酸ソーダ(扶桑化学工業(株)製): 3.0質量部
・リン酸一水素二ナトリウム(和光純薬工業(株)製): 0.3質量部
・炭酸水素ナトリウム(和光純薬工業(株)製): 0.3質量部
・消泡剤(Bluester Silicones社製SILCOLAPSE432):
0.01質量部
・水: 85.49質量部
(pH: 8.6)
【0452】
[印刷]
現像した平版印刷版を(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity-2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues-G(N)墨インキ(DICグラフィックス(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給し、毎時10,000枚の印刷速度で、特菱アート紙(76.5kg)(三菱製紙(株)製)に印刷を行った。印刷枚数の増加に伴い徐々に画像記録層が磨耗するため、印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で測定した値が印刷100枚目の測定値よりも5%低下するまでの印刷枚数を計測した。耐刷性は、下記式に示すように、印刷枚数が5万枚の場合を100とする相対耐刷性により評価した。数値が大きい程、耐刷性が良好である。
相対耐刷性=((対象平版印刷版原版の印刷枚数)/50,000) × 100
【0453】
<熱経時安定性(3)>
平版印刷版原版を25℃、60%の環境下で1時間調湿した後、梱包した。次に、梱包物を60℃で5日間熱経時した。熱経時終了後、上記耐刷性評価と同様にして、画像露光及び現像処理を行い、現像処理後に未露光部の濃度測定を行った。濃度測定は、分光濃度計(X-Rite社SpectroEye)を使用し、シアン濃度を測定した。得られたシアン濃度の値と塗布を実施していない支持体Eのシアン濃度の値との差分(△D)を算出し、熱経時安定性をA~Cで評価した。△Dが小さいほど、現像処理後に非画像部に残る画像記録層が少なく、熱経時安定性がよい。
A:△D≦0.01
B:0.01<△D≦0.03
C:0.03<△D
【0454】
【0455】
表5中、「特定化合物」の欄に記載のI-1-j-1、I-5-j-1、I-7-j-1、I-12-j-1、I-16-j-1は本発明の特定化合物であり、その構造は先に示したとおりである。また、H-1、H-2は公知の化合物であり、その構造は先に示したとおりである。
【0456】
表5に記載の結果から、本発明に係る特定化合物を含有する画像記録層を有する平版印刷版原版は、熱経時安定性(3)、耐刷性の全てにおいて優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0457】
本発明によれば、機上現像性に優れる平版印刷版原版を作製できる硬化性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、高い熱経時安定性を有する硬化性組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、高い熱経時安定性を有し、機上現像性に優れ、且つ、優れた耐刷性を有する平版印刷版を作製できる平版印刷版原版を提供することができる。
更に、本発明によれば、高い熱経時安定性を有し、検版性及び機上現像性に優れ、且つ、優れた耐刷性を有する平版印刷版を作製できる平版印刷版原版を提供することができる。
更に、本発明によれば、高い熱経時安定性を有し、優れた耐刷性を有する平版印刷版を作製できる平版印刷版原版を提供することができる。
更に、本発明によれば、上記平版印刷版原版を用いる平版印刷版の作製方法、上記平版印刷版原版の画像記録層に用いられる化合物を提供することができる。
【0458】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2017年2月28日出願の日本特許出願(特願2017-37779)、2017年9月29日出願の日本特許出願(特願2017-191496)、及び2017年12月27日出願の日本特許出願(特願2017-252560)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。