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特許7062644フィルタリングのための補償を用いた終点検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】フィルタリングのための補償を用いた終点検出
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220425BHJP
   B24B 37/013 20120101ALI20220425BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20220425BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
H01L21/304 622S
B24B37/013
B24B49/10
B24B49/04 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019515406
(86)(22)【出願日】2017-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 US2017052514
(87)【国際公開番号】W WO2018057623
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-14
(31)【優先権主張番号】62/397,840
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】シュー, クン
(72)【発明者】
【氏名】リン, ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】カールッソン, インゲマール
(72)【発明者】
【氏名】シェン, シーハル
(72)【発明者】
【氏名】リュウ, チュウ
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-276221(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0158908(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0584786(KR,B1)
【文献】特開2011-249841(JP,A)
【文献】特開2011-205070(JP,A)
【文献】特開2010-240837(JP,A)
【文献】特表2013-541827(JP,A)
【文献】特表2002-517911(JP,A)
【文献】国際公開第2006/126420(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/032753(WO,A1)
【文献】特表2012-506152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/013
B24B 49/10
B24B 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨システムであって、
研磨パッドを保持するためのプラテンと、
研磨中に基板を前記研磨パッドに押し当てて保持するためのキャリアヘッドと、
研磨中に前記基板をモニタし、研磨されている前記基板の層の厚さに依存する信号を生成するためのインシトゥモニタリングシステムと、
コントローラであって、
もとの閾値と、前記信号をフィルタリングするのに必要な時間を表す時間遅延値とを記憶し、
前記インシトゥモニタリングシステムから前記信号を受信し、フィルタリングされた信号を生成するために前記信号をフィルタリングし、
前記もとの閾値及び前記時間遅延値から調整された閾値を決定し、
前記フィルタリングされた信号が前記調整された閾値と交差するとき、研磨終点をトリガする
ように構成されたコントローラと
を備え
前記コントローラが、前記フィルタリングされた信号の勾配を決定するように構成され、
前記コントローラが、前記時間遅延値に前記勾配を乗算することによって、前記閾値に対する調整を決定するように構成される、研磨システム。
【請求項2】
前記コントローラが、
VT’=VT-(ΔT*R)
に従って、調整された閾値VT’を決定するように構成され、ここでVTが前記もとの閾値であり、ΔTが前記時間遅延値であり、Rが前記勾配である、請求項に記載の研磨システム。
【請求項3】
コントローラが、1つ又は複数のフィルタパラメータに従って前記信号をフィルタリングするように構成され、かつ前記1つ又は複数のフィルタパラメータに基づいて前記時間遅延値を決定するように構成される、請求項1に記載の研磨システム。
【請求項4】
前記1つ又は複数のフィルタパラメータが、前記信号からのいくつかの測定値及び/又は前記フィルタリングされた信号を生成するために使用される前記信号の期間を含む、請求項に記載の研磨システム。
【請求項5】
前記プラテンが回転可能であり、前記インシトゥモニタリングシステムが、前記プラテン内に位置決めされたセンサを含み、前記センサが前記基板の下を断続的に掃引する、請求項4に記載の研磨システム。
【請求項6】
前記コントローラが、移動平均又はノッチフィルタのうちの1つ又は複数を前記信号に適用することによって、前記フィルタリングされた信号を生成するように構成される、請求項1に記載の研磨システム。
【請求項7】
前記コントローラが、前記フィルタリングされた信号が前記調整された閾値と比較される前に、前記信号を厚さ測定値のシーケンスに変換するように構成される、請求項1に記載の研磨システム。
【請求項8】
コンピュータプログラム製品であって、プロセッサに、
インシトゥモニタリングシステムから、研磨されている基板の層の厚さに依存する信号を受信させ、
もとの閾値と、前記信号をフィルタリングするのに必要な時間を表す時間遅延値とを記憶させ、
フィルタリングされた信号を生成するために、前記信号をフィルタリングさせ、
前記もとの閾値及び前記時間遅延値から調整された閾値を決定させ、
前記フィルタリングされた信号が前記調整された閾値と交差するとき、研磨終点をトリガさせ
前記フィルタリングされた信号の勾配を決定し、
前記時間遅延値に前記勾配を乗算することによって、前記閾値に対する調整を決定す
ための命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項9】
研磨方法であって、
基板の層を研磨することと、
前記層の厚さに依存する信号を生成するために、インシトゥモニタリングシステムを用いて前記基板の前記層をモニタすることと、
フィルタリングされた信号を生成するために、前記信号をフィルタリングすることと、
もとの閾値と、前記信号をフィルタリングするのに必要な時間を表す時間遅延値とから調整された閾値を決定することと、
前記フィルタリングされた信号が前記調整された閾値と交差するとき、研磨終点をトリガすることと
前記フィルタリングされた信号の勾配を決定することと、
前記時間遅延値に前記勾配を乗算することによって、前記閾値に対する調整を決定することと
を含む研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学機械研磨中の電磁誘導を使用したモニタリング、例えば渦電流モニタリングに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、通常、シリコンウエハ上に導電層、半導体層、又は絶縁層を順次堆積させることによって、及び続いて層を処理することによって、基板(例えば半導体ウエハ)上に形成される。
【0003】
ある製造ステップは、非平面の表面上に充填層を堆積すること、及び非平面の表面が露出するまで充填層を平坦化することを含む。例えば、パターン形成された絶縁層上に導電性充填層を堆積させ、絶縁層内のトレンチ又は孔を充填することができる。次いで、充填層は、絶縁層の隆起したパターンが露出するまで研磨される。平坦化後、絶縁層の隆起したパターンの間に残っている導電層の部分が、基板上の薄膜回路の間の導電経路を提供するビア、プラグ、及びラインを形成する。加えて、リソグラフィのために誘電体層を平坦化するために、平坦化が使用されうる。
【0004】
化学機械研磨(CMP)は、認められた平坦化方法の1つである。この平坦化方法は、通常、基板がキャリアヘッドに装着される必要がある。基板の露出面は、回転する研磨パッドに押し当てるように置かれる。キャリアヘッドは、基板に制御可能な負荷をかけて、基板を研磨パッドに押し当てる。砥粒を含むスラリなどの研磨液が、研磨パッドの表面に供給される。
【0005】
半導体処理中に、基板又は基板上の層のうちの1つ又は複数の特性を決定することが重要でありうる。例えば、CMPプロセス中に導電層の厚さを知ることが重要であり、それによりプロセスは正しい時間に終了しうる。基板特性を決定するために、いくつかの方法が使用されうる。例えば、化学機械研磨中に基板をインシトゥ(その場)でモニタするために、光学センサが使用されうる。代替的には(又は追加的に)、基板上の導電領域に渦電流を誘導して、導電領域の局所的厚さなどのパラメータを決定するために、渦電流感知システムが使用されうる。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、研磨システムは、研磨パッドを保持するためのプラテンと、研磨中に基板を研磨パッドに押し当てて保持するためのキャリアヘッドと、研磨中に基板をモニタし、研磨されている基板の層の厚さに依存する信号を生成するためのインシトゥモニタリングシステムと、コントローラとを含む。コントローラは、もとの閾値と、信号をフィルタリングするのに必要な時間を表す時間遅延値とを記憶させ、インシトゥモニタリングシステムから信号を受信し、フィルタリングされた信号を生成するために信号をフィルタリングし、もとの閾値及び時間遅延値から調整された閾値を決定し、フィルタリングされた信号が調整された閾値と交差するとき、研磨終点をトリガするように構成される。
【0007】
別の態様では、コンピュータプログラム製品は、プロセッサに、インシトゥモニタリングシステムから、研磨されている基板の層の厚さに依存する信号を受信させ、もとの閾値と、信号をフィルタリングするのに必要な時間を表す時間遅延値とを記憶させ、フィルタリングされた信号を生成するために、信号をフィルタリングさせ、もとの閾値及び時間遅延値から調整された閾値を決定させ、フィルタリングされた信号が調整された閾値と交差するとき、研磨終点をトリガさせるための命令を有する非一時的コンピュータ可読媒体を含みうる。
【0008】
別の態様では、研磨方法は、基板の層を研磨することと、層の厚さに依存する信号を生成するために、インシトゥモニタリングシステムを用いて基板の層をモニタすることと、フィルタリングされた信号を生成するために、信号をフィルタリングすることと、もとの閾値と、信号をフィルタリングするのに必要な時間を表す時間遅延値とから調整された閾値を決定することと、フィルタリングされた信号が調整された閾値と交差するとき、研磨終点をトリガすることとを含む。
【0009】
上記の態様のうちのいずれかの実施態様は、以下の特徴のうちの1つ又は複数を含みうる。
【0010】
フィルタリングされた信号の勾配が決定されうる。閾値に対する調整は、時間遅延値に勾配を乗算することによって、決定されうる。調整された閾値VT’は、
に従って決定されうるのであるが、ここで、VTはもとの閾値であり、ΔTは時間遅延値であり、Rは勾配である。
【0011】
信号は、1つ又は複数のフィルタパラメータに従ってフィルタリングされ、時間遅延値は、1つ又は複数のフィルタパラメータに基づいて決定されうる。1つ又は複数のフィルタパラメータは、信号からのいくつかの測定値(例えば、フィルタの次数)及び/又はフィルタリングされた信号を生成するのに使用される信号の期間を含みうる。プラテンは回転可能であってもよく、インシトゥモニタリングシステムは、プラテン内に位置決めされたセンサを含み、センサが基板の下を断続的に掃引する。期間は、測定頻度及びいくつかの測定値から計算されうる。測定周波数は、プラテンの回転速度の逆数とすることができる。
【0012】
フィルタリングされた信号は、移動平均又はノッチフィルタのうちの1つ又は複数を信号に適用することによって生成されうる。インシトゥモニタリングシステムは、渦電流モニタリングシステムでありうる。フィルタリングされた信号が調整された閾値と比較される前に、信号は、厚さ測定値のシーケンスに変換されうる。調整された厚さ閾値は、もとの厚さ閾値から計算することができ、調整された厚さ閾値は、信号値閾値に変換することができ、フィルタリングされた信号は、信号値閾値と比較される。
【0013】
ある実施態様は、以下の利点のうちの1つ又は複数を含むことができる。研磨をターゲットの厚さでより確実に停止させることができ、ウエハ間の不均一性(WTWNU)を低減することができる。研磨をより高速で処理することができ、スループットを増加させることができる。過剰研磨及びディッシングを減少させることができ、抵抗をウエハ間でより厳密に制御することができる。
【0014】
1つ又は複数の実施態様の詳細が、添付図面及び以下の説明に明記される。その他の態様、特徴及び利点は、これらの説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から、明白になろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】電磁誘導モニタリングシステムを含む化学機械研磨ステーションの概略側面図、部分断面図である。
図2図1の化学機械研磨ステーションの概略上面図である。
図3】電磁誘導モニタリングシステムのための駆動システムの概略回路図である。
図4】AからCは基板の研磨の進行を概略的に示す。
図5】電磁誘導モニタリングシステムからの理想化信号を示す例示的グラフである。
図6】電磁誘導モニタリングシステムからの生信号及びフィルタリングされた信号を示す例示的グラフである。
図7】電磁誘導モニタリングシステムからの生信号及びフィルタリングされた信号を示す別の例示的グラフである。様々な図面中の類似の参照符号は、類似の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
CMPシステムは、研磨を受けている基板上の最外金属層の厚さに依存する信号を生成するために渦電流モニタリングシステムを使用することができる。この信号を閾値と比較し、信号が閾値に達するとき、終点を検出することができる。渦電流モニタリングシステムからの信号は、例えば、基板にわたる層の厚さの変動、並びに研磨パッド上のキャリアヘッドの横方向の振動などの他の原因によるノイズを含む可能性がある。このノイズは、例えばノッチフィルタなどのフィルタを信号に適用することによって、低減することができる。
【0017】
ノッチフィルタを含む多くのフィルタリング技術は、公称測定時間のためのフィルタリングされた値を生成するために、公称測定時間の前後両方で、信号値の取得を必要とする。公称測定時間後に信号値を取得する必要があるため、フィルタリングされた値の生成が遅延する。フィルタリングされた値と閾値との比較に基づいて研磨終点が検出される場合、終点が検出された時点までに、基板は、既にターゲット厚さを超えて研磨されていることになる。たとえ終点が適合関数の閾値への射影に基づいて検出されたとしても、フィルタは、遅延を導入する可能性がある。
【0018】
関数を信号値のシーケンスに適合させ、次にフィルタがデータを取得するのに必要な時間を補償することになる量だけ閾値を調整することによって、研磨をターゲット厚さにより近づけて停止させることができる。
【0019】
図1及び図2は、化学機械研磨装置の研磨ステーション20の一例を示す。研磨ステーション20は、研磨パッド30が配置されている回転可能なディスク形状のプラテン24を含む。プラテン24は、軸25周囲を回転するように動作可能である。例えば、モータ22は、プラテン24を回転させるために、駆動軸28を回転させることができる。研磨パッド30は、外層34及びより軟性のバッキング層32を有する二層研磨パッドとすることができる。
【0020】
研磨ステーション22は、スラリなどの研磨液38を研磨パッド30に分配するために、供給ポート又は一体型の供給-すすぎアーム39を含むことができる。研磨ステーション22は、研磨パッドの状態を維持するために、調整ディスクを備えたパッド調整装置を含むことができる。
【0021】
キャリアヘッド70は、基板10を研磨パッド30に押し当てて保持するよう動作可能である。キャリアヘッドが軸71の周囲を回転できるように、キャリアヘッド70は、カルーセル又はトラックのような支持構造体72から吊るされ、駆動シャフト74によってキャリアヘッド回転モータ76に結合される。オプションで、キャリアヘッド70は、例えば、カルーセル又はトラック72上のスライダ上で、又はカルーセル自体の回転振動によって、横方向に振動することができる。
【0022】
動作中、プラテンは、その中心軸25の周囲を回転し、キャリアヘッドは、その中心軸71の周囲を回転し、かつ研磨パッド30の上面にわたって横方向に平行移動する。複数のキャリアヘッドがある場合、各キャリアヘッド70は、その研磨パラメータの個別制御を有することができ、例えば、各キャリアヘッドは、それぞれの基板の各々に印加される圧力を個別に制御することができる。
【0023】
キャリアヘッド70は、基板10の裏側に接触する基板装着面を有する可撓性膜80と、基板10上の種々のゾーン、例えば種々の半径方向のゾーンに、種々の圧力を印加するための複数の加圧可能チャンバ82とを含むことができる。キャリアヘッドはまた、基板を保持するための保持リング84も含むことができる。
【0024】
プラテン24内に凹部26が形成され、オプションでは、凹部26の上にある研磨パッド30に薄い区域36を形成することができる。凹部26及び薄いパッド区域36は、キャリアヘッドの平行移動位置にかかわらず、プラテン回転の一部の間、基板10の下を通るように位置付けることができる。研磨パッド30が二層パッドであると仮定すると、薄いパッド区域36は、バッキング層32の一部分を取り除くことによって作製することができる。薄い区域は、例えばインシトゥの光学モニタシステムがプラテン24内に統合されている場合、オプションで透過性とすることができる。
【0025】
インシトゥモニタリングシステム40は、研磨されている層の厚さに依存する値のシーケンスを生成する。特に、インシトゥモニタリングシステム40は、電磁誘導モニタリングシステムとすることができる。電磁誘導モニタリングシステムは、導電層における渦電流の発生又は導電ループにおける電流の発生のいずれかによって動作することができる。動作中、研磨ステーション22は、いつ層がターゲット深さまで研磨されたかを判定するために、モニタリングシステム40を使用する。
【0026】
モニタリングシステム40は、プラテンの凹部26に設置されたセンサ42を含むことができる。センサ26は、少なくとも部分的に凹部26の中に位置付けられた磁気コア44と、コア44の周囲に巻き付けられた少なくとも1つのコイル46とを含むことができる。駆動感知回路48が、コイル46に電気接続される。駆動感知回路48は信号を生成し、その信号はコントローラ90に送信することができる。駆動感知回路48は、プラテン24の外部のものとして図示されているが、その一部又は全部をプラテン24内に取り付けることができる。回転可能プラテン内のコイル46のような構成要素を、プラテンの外部の駆動感知回路48のような構成要素に電気接続するために、回転カプラ29を使用することができる。
【0027】
プラテン24が回転すると、センサ42が基板10の下を掃引する。回路48からの信号を特定の周波数でサンプリングすることによって、回路48は、基板10にわたってサンプリングゾーンのシーケンスで測定値を生成する。掃引するごとに、サンプリングゾーン94のうちの1つ又は複数における測定値を選択又は結合することができる。ゆえに、複数の掃引にわたって、選択又は結合された測定値が、値の時間変動シーケンスを提供する。
【0028】
研磨ステーション20はまた、センサ42が基板10の真下にあるとき、及びセンサ42が基板から離れているときを検出するために、光学インタラプタなどの位置センサ96(図2を参照)を含むことができる。例えば、位置センサ96は、キャリアヘッド70の反対側の定位置に装着することができる。フラグ98(図2を参照)をプラテン24の周囲に取り付けることができる。フラグ98の取り付け位置及び長さは、センサ42が基板10の下方を掃引するときに、フラグ98が位置センサ96に信号を送信できるように選択される。
【0029】
代替的には、研磨ステーション20は、プラテン24の角度位置を決定するためのエンコーダを含むことができる。プラテンが1回転するごとに、センサは、基板の下を掃引することができる。
【0030】
例えば汎用プログラマブルデジタルコンピュータといったコントローラ90は、電磁誘導モニタリングシステム40から値のシーケンスを受け取る。プラテン24が1回転するごとに、センサ42が基板10の下を掃引するので、トレンチの深さに関する情報は、インシトゥで(プラテン1回転につき1回)蓄積される。基板10が概して薄い区域36の上に重なるときに(位置センサによって決定されるように)、コントローラ90は、モニタリングシステム40からの測定値をサンプリングするようにプログラムすることができる。研磨が進行するにつれ、層の厚さは変化し、サンプリングされる信号が時間と共に変動する。研磨中、モニタリングシステムからの測定値は出力デバイス上に表示されて、そのデバイスのオペレータが研磨動作の進行を視覚的にモニタできるようにする。
【0031】
加えて、コントローラ90は、各サンプリングゾーンの半径方向位置を算出するため、及び測定値を複数の半径方向範囲に分類するために、電磁誘導電流モニタリングシステム40からと、基板の下の各掃引からの両方の測定値を、複数のサンプリングゾーンに分けるようプログラムすることができる。
【0032】
図3は、駆動感知回路48の一例を示す。回路48は、コイル46にAC電流を印加し、コイル46は、コア44の2つのポール52aと52bとの間に磁場50を生成する。コア44は、背部52から平行に延びる2つの(図1参照)又は3つの(図3参照)プロング50を含むことができる。ただ1つのプロングを含む(かつ背部を含まない)実施態様も可能である。動作中、基板10が断続的にセンサ42の上に重なると、磁場50の一部が基板10内に延びる。
【0033】
回路48は、コイル46に並列に接続されたコンデンサ60を含むことができる。コイル46とコンデンサ60は一緒になってLC共振タンクを形成することができる。動作中、電流発生装置62(例えばマージナル発振器回路に基づく電流発生装置)は、コイル46(インダクタンスLを伴う)及びコンデンサ60(キャパシタンスCを伴う)によって形成されたLCタンク回路の共振周波数で、システムを駆動させる。電流発生装置62は、正弦波振動のピークツーピーク振幅を一定の値に維持するよう設計することができる。振幅Vを伴う時間依存電圧は、整流器64を使用して整流され、フィードバック回路66に供給される。フィードバック回路66は、電流発生装置62が電圧の振幅Vを一定に保つための駆動電流を決定する。マージナル発振器回路及びフィードバック回路は、米国特許第4000458号及び第7112960号に更に記載される。
【0034】
電磁誘導モニタリングシステム40は、導電層内に渦電流を誘導するか又は導電層内の導電ループ内に電流を発生させることによって、導電層、例えば金属層の厚さをモニタするために使用することができる。代替的には、電磁誘導モニタリングシステム40は、例えば、基板装着面に取り付けられた導電層又はループ100内に渦電流又は電流をそれぞれ誘導することによって、誘電体層の厚さをモニタするために使用することができる。
【0035】
基板上の導電層の厚さをモニタすることが望ましい場合、次いで磁場50が導電層に達すると、磁場50が通過して電流を発生させることができる(導電ループが層内に形成される場合)か、又は渦電流を形成することができる(導電性特徴がシートのような連続的本体の場合)。これにより実効インピーダンスが形成され、よって電圧の振幅Vを一定に保つために、電流発生装置62に必要な駆動電流が増加する。実効インピーダンスの大きさは、導電層の厚さに依存する。したがって、電流発生装置62によって発生した駆動電流は、研磨されている導電層の厚さの測定を提供する。
【0036】
上述のように、基板上の誘電体層の厚さをモニタすることが望ましい場合、次いで、導電性ターゲット100を、研磨されている誘電体層から基板10の反対側に配置することができる。磁場50が導電性ターゲットに達すると、磁場50は通過して電流を発生させる(ターゲットがループの場合)か、又は渦電流を形成する(ターゲットがシートの場合)ことができる。これにより実効インピーダンスが形成され、よって電圧の振幅Vを一定に保つために電流発生装置62に必要な駆動電流が増加する。実効インピーダンスの大きさは、センサ42とターゲット100との間の距離に依存し、研磨されている誘電体層の厚さに依存する。したがって、電流発生装置62によって発生した駆動電流は、研磨されている誘電体層の厚さの測定を提供する。
【0037】
駆動感知回路48については、他の構成も可能である。例えば、別々の駆動コイルと感知コイルをコアの周囲に巻き付け、駆動コイルは、一定周波数で駆動され、感知コイルからの電流の(駆動発振器に対する)振幅又は位相は、信号に使用することができるだろう。
【0038】
図4A-4Cは、導電層を研磨するプロセスを図解する。図5は、電磁誘導モニタリングシステムからの信号120を示す例示的グラフである。信号120が、理想的な形で図5に示されており、生の信号は、かなりのノイズを含むことになろう。
【0039】
最初に、図4Aに示すように、研磨動作のために、基板10が研磨パッド30と接触して配置される。基板10は、シリコンウエハ12と、半導体層、導体層又は絶縁体層とすることができる1つ又は複数のパターン形成された下層14上に配置された銅、アルミニウム、コバルト、チタン、又は窒化チタンといった金属などの導電層16とを含むことができる。タンタル又は窒化タンタルなどのバリア層18は、金属層を下位の誘電体から分離しうる。パターン形成された下層14は、銅、アルミニウム、又はタングステンのトレンチ、ビア、パッド、及び相互接続などの金属特徴を含むことができる。
【0040】
研磨前には、導電層16のバルクは、最初は比較的厚く連続的であるので、抵抗が低く、比較的強い渦電流を導電層に発生させることができる。渦電流は、金属層をコンデンサ60と並列のインピーダンス源として機能させる。例えば、信号は、時間T1において初期値V1で開始することができる(図5参照)。
【0041】
図4Bを参照すると、基板10が研磨されるにつれて、導電層16のバルク部分が薄くなる。導電層16が薄くなるにつれて、そのシート抵抗は増大し、金属層内の渦電流は減衰していく。その結果、導電層16とセンサ回路との間の結合が減少する(すなわち、仮想インピーダンス源の抵抗が増加する)。センサ回路48のいくつかの実施態様では、これによって信号が初期値V1から低下する可能性がある。
【0042】
図4Cを参照すると、導電層16のバルク部分が最終的に除去され、パターン形成された絶縁層14間のトレンチ内に導電性相互接続16’が残る。この時点で、基板内の導電性部分(一般的には小さく、一般的には不連続である)と、センサ回路からの信号との間の結合は、平坦域になる傾向がある(ただし、トレンチの深さが減少するにつれて低下し続ける)。これにより、センサ回路からの出力信号の振幅の変化率が著しく減少する。図5に示すように、これは、信号が値V2に達する時刻T2に発生する。
【0043】
図1に戻り、その目的が、下層が露出したときに研磨を停止することである場合、次いで、値V2(図5参照)を終点検出のための閾値として使用することができるだろう。しかしながら、上記のように、インシトゥのモニタリングシステム40からの信号は、ノイズを含む可能性がある。したがって、インシトゥモニタリングシステム40からの生信号にフィルタを適用することができる。例えば、コントローラ90は、インシトゥモニタリングシステム40から受信した信号に、フィルタ、例えばノッチフィルタ又は移動平均フィルタを適用して、フィルタリングされた信号を生成することができる。他の種類のフィルタ、例えばバンドパスフィルタ、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、統合フィルタ、又は中央値フィルタを適用することができる。フィルタリングされた信号は、次いで終点の決定に使用することができる。
【0044】
図6は、電磁誘導モニタリングシステムによって使用される信号を示す例示的なグラフである。図1及び図6を参照すると、センサ42は、「生」の信号130を生成することができる。図6に実線として示されているが、実際には、生信号130は、離散値のシーケンスである。測定値は、設定周波数で取得することができる。例えば、センサ42がプラテン24の1回転につき1回基板10の下を通過する場合、次いで、測定周波数は、プラテン回転速度に等しくなる可能性がある。
【0045】
図6に示されるように、この信号130は、著しいノイズを含む可能性があるので、コントローラ90は、フィルタリングされた信号140を生成するために信号130にフィルタをかける。また、実線で示されているが、実際には、フィルタリングされた信号140は、離散値のシーケンスとすることができ、シーケンス内の各値は生信号からの複数の値の組み合わせから計算される。いくつかの実施態様では、フィルタリングされた信号140は、関数、例えば、一次又は二次多項式関数といった多項式関数を、値のシーケンスに適合させることによって生成される。
【0046】
上記のように、公称測定時間の後に信号値を取得する必要があるため、フィルタリングされた値の生成が遅延する。例えば、ウエハの非対称性が小さく、測定値が規則的な周波数で取られると仮定すると、フィルタが生信号から5つの連続する値の移動平均である出力値を生成することによって動作する場合、次に、所与の出力値は、生信号から5番目の値の時間でよりもむしろ生信号から3番目の値の時間での測定値をより正確に表すことになろう。これは、点線135(遅延によって生じる時間オフセットなしに生成された仮想のフィルタリングされた信号を表す)に対して右にシフトされているフィルタリングされた信号140によって図6に表される。
【0047】
フィルタがデータを取得するのに必要な時間を補償するために、公称閾値を調整することができる。特に、コントローラ90は、フィルタによって生成された時間オフセットを表す時間遅延値ΔTを記憶することができる。コントローラ90はまた、フィルタリングされた信号140の勾配Rを決定することができる。この勾配Rは、現在の研磨速度を表すことができる。VTがもとの閾値(例えば、図5のV2)である場合、調整された閾値VT’は、
として計算することができる。
【0048】
次いで、フィルタリングされた信号140が調整された閾値VT’と交差する時間TEで、終点をコントローラによってトリガすることができる。
【0049】
代替的には、図7に示すように、時間遅延値ΔTに等しい時間量だけフィルタリングされた信号140を前方に投影して、投影信号145を生成することが可能でありうる。次に、投影信号145が時間TE+ΔTで閾値VTと交差することをコントローラが検出すると、時間TEでコントローラによって終点をトリガすることができる。これは、効果的には、閾値を調整することと同等である。
【0050】
いくつかの実施態様では、時間遅延値ΔTは、ユーザによって入力することができる。いくつかの実施態様では、時間遅延値ΔTは、フィルタの特性に基づいて、コントローラ90によって自動的に計算することができる。例えば、重み付けされていない移動平均については、時間遅延値ΔTは、生の値が平均化される時間の半分であろう。
【0051】
加重移動平均については、時間遅延値ΔTは、同様に重みに基づくことができよう。例えば、フィルタ値
は、
として計算することができるだろが、ここでNは、平均化されているいくつかの連続した値であり、aは、系列からの値に対する重みである。この場合、時間遅延値ΔTは、
のように計算することができるだろうが、ここで、fは、サンプリングレート(例えば、プラテン1回転につき1回といった、生の値が生成される頻度)である。
【0052】
一般に、時間遅延値は、個々のフィルタに適することになる技術で、測定周波数とフィルタの次数に基づいて決定することができる。
【0053】
いくつかの実施態様では、ユーザは、フィルタが動作することになる期間をコントローラに入力してもよく、この場合、コントローラ90は、この期間(例えば、重み付けされていない移動平均の期間の半分)から時間遅延値ΔTを計算することができ、サンプリングレートからフィルタで使用するためのいくつかの値を計算することができる。いくつかの実施態様では、ユーザは、フィルタで使用するためのいくつかの値をコントローラに入力してもよく、この場合、コントローラ90は、いくつかの値とサンプリングレートとから時間遅延値ΔTを計算することができる。
【0054】
上述の技術は、厚さ測定値に変換された値に対しても、又は変換されていない値に対しても実行することができる。例えば、コントローラ90は、測定値の関数として厚さ値(例えば、電圧値又は可能な信号強度の%)を出力することになる関数、例えば多項式関数又はルックアップテーブルを含むことができる。したがって、図6及び図7に示す信号130は、関数を使用して測定値を厚さ値に変換することによって生成された厚さ値のシーケンス、又は厚さに依存するが実際の厚さ値に変換されない測定値のシーケンスのどちらかであろう。
【0055】
いくつかの実施形態では、勾配Rは、測定値の単位で計算され、次いで勾配Rは、厚さの単位で研磨速度に変換される。例えば、厚さYを測定値Xに関連付ける多項式関数が
Y=C0+C1X+C2
である場合、
R=dX/dtであるから、研磨速度dY/dtは、
dY/dt=R(c1+2c2Y)
として計算することができる。
【0056】
代替的には、いくつかの実施態様では、フィルタリングされた信号140は、研磨速度を決定するために、測定値から厚さ測定値に変換することができる(すなわち、関数は、測定の単位における値というよりむしろ厚さ値に適合される)。
【0057】
上記2つの実施態様のいずれにおいても、調整された厚さ閾値は、もとの厚さターゲット、時間遅延値及び研磨速度に基づいて計算することができる。調整された厚さ閾値は、厚さ領域における閾値として使用することができる。代替的には、調整された厚さ閾値は、フィルタリングされた信号140が調整された閾値と交差する時間に応じて測定値の領域において検出された関数及び終点を用いて、測定値の領域における調整された閾値に逆変換することができる。
【0058】
コンピュータ90はまた、キャリアヘッド70によって印加される圧力を制御する圧力機構、キャリアヘッド回転速度を制御するためのキャリアヘッド回転モータ76、プラテン回転速度を制御するためのプラテン回転モータ(図示せず)、又は研磨パッドに供給されるスラリ組成物を制御するためのスラリ分配システム39に接続されうる。具体的には、測定値を半径方向範囲に分類した後、層厚さに関する情報を、リアルタイムで閉ループコントローラに送り、キャリアヘッドによって印加される研磨圧力プロファイルを周期的に又は連続的に修正することができる。
【0059】
電磁誘導モニタリングシステム40は、様々な研磨システムで使用することができる。研磨パッド若しくはキャリアヘッドのいずれか、又はその両方が、研磨面と基板との間に相対運動を提供するために移動できる。研磨パッドは、プラテン、供給ローラと回収ローラとの間を延びるテープ、又は連続ベルトに固定された、円形(又は他の何らかの形状)のパッドとすることができる。研磨パッドは、プラテンに取り付けられるか、研磨動作の合間にプラテン上で漸進的に前進させるか、又は研磨中にプラテン上で連続的に駆動させることができる。パッドは研磨中にプラテンに固定することができ、又は研磨中にプラテンと研磨パッドとの間に流体軸受が存在してもよい。研磨パッドは、標準的な(例えば、充填剤を含む又は含まないポリウレタン)粗パッド、軟性パッド、又は固定砥粒パッドとすることができる。
【0060】
研磨システムの終点制御について説明してきたが、層を除去又は堆積する他の基板処理システム、例えばエッチング及び/又は化学気相堆積システムにおいて、インシトゥモニタリングシステムからのフィルタリングされた信号に、上述の技術を適合させることができる。
【0061】
いくつかの実施形態が説明されてきた。それにもかかわらず、本開示の精神及び範囲から逸脱せずに、様々な修正がおこなわれてよいことが理解されよう。したがって、他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7