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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】ジカルボン酸モノエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/10 20060101AFI20220425BHJP
   C07C 67/58 20060101ALI20220425BHJP
   C07C 69/757 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
C07C67/10
C07C67/58
C07C69/757 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020549414
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038068
(87)【国際公開番号】W WO2020067391
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2018181966
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 徹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 有次
(72)【発明者】
【氏名】吉田 愛子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慶太
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-25770(JP,A)
【文献】特開昭63-63638(JP,A)
【文献】特開平11-349584(JP,A)
【文献】特開2016-69321(JP,A)
【文献】特開2016-216433(JP,A)
【文献】特開2008-150349(JP,A)
【文献】特開2011-231098(JP,A)
【文献】特開2001-348362(JP,A)
【文献】国際公開第2019/017445(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/017444(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/111853(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/10
C07C 67/58
C07C 69/757
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるジカルボン酸から、下記式(3)で表されるジカルボン酸モノエステルを得るモノエステル化反応工程を有する、ジカルボン酸モノエステルの製造方法であって、
未反応の原料として残存する前記ジカルボン酸を回収し、前記モノエステル化反応工程に再利用する、または、
不純物として副生する下記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルを加水分解し、前記ジカルボン酸として回収し、前記モノエステル化反応工程に再利用する、ジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【化1】

ここで、前記式(1)~(3)中、
nは、1~5の整数を表す。
およびAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、脂肪族炭化水素環、または、脂肪族ヘテロ環を表し、nが2~5の整数である場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Rは、置換基を表す。
【請求項2】
下記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルから、下記式(3)で表されるジカルボン酸モノエステルを得る反応工程を有する、ジカルボン酸モノエステルの製造方法であって、
不純物として副生する下記式(1)で表されるジカルボン酸を回収し、
前記ジカルボン酸から前記ジカルボン酸モノエステルを得るモノエステル化反応工程に利用する、または、
前記ジカルボン酸から前記ジカルボン酸ジエステルを得た後に、前記反応工程に再利用する、ジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【化2】

ここで、前記式(1)~(3)中、
nは、1~5の整数を表す。
およびAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、脂肪族炭化水素環、または、脂肪族ヘテロ環を表し、nが2~5の整数である場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Rは、置換基を表す。
【請求項3】
前記式(1)~(3)中のAおよびAが、いずれも、置換基を有していてもよい炭素数6以上の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数6以上のシクロアルカン環を表す、請求項1または2に記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【請求項4】
前記式(1)~(3)中のAおよびAが、いずれも、シクロヘキサン環を表す、請求項1~3のいずれか1項に記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【請求項5】
前記式(1)で表されるジカルボン酸が、下記式(1-1)で表される化合物であり、前記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルが、下記式(2-1)で表される化合物であり、前記式(3)で表されるジカルボン酸モノエステルが、下記式(3-1)で表される化合物である、請求項1~4のいずれか1項に記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【化3】
【請求項6】
未反応の原料として残存する前記ジカルボン酸が、
前記モノエステル化反応工程の後、反応系内に塩基性水溶液を添加した後に、ジカルボン酸モノエステルを有機溶媒中に抽出し、前記ジカルボン酸の塩を水溶液中に抽出する分相処理と、
前記分相処理の後に、前記ジカルボン酸の塩が抽出された水溶液を酸性化し、析出したジカルボン酸を回収する析出処理と、
を有する回収方法によって回収される、請求項1に記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【請求項7】
前記塩基性水溶液が、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、および、炭酸水素ナトリウム水溶液からなる群から選択される少なくとも1種の水溶液である、請求項6に記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【請求項8】
未反応の原料として残存する前記ジカルボン酸が、
前記モノエステル化反応工程の後に、反応系内に塩基性化合物を添加し、析出した前記ジカルボン酸の塩を分離する分離処理と、
前記分離処理の後、前記ジカルボン酸の塩を水系の溶媒で酸性化し、析出したジカルボン酸を回収する析出処理と、
を有する回収方法によって回収される、請求項1に記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【請求項9】
前記塩基性化合物が、アミン化合物である、請求項8に記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジカルボン酸モノエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学補償シートや位相差フィルムなどの光学フィルムは、画像着色解消や視野角拡大のために、様々な画像表示装置で用いられている。
光学フィルムとしては延伸複屈折フィルムが使用されていたが、近年、延伸複屈折フィルムに代えて、液晶性化合物からなる光学異方性層を有する光学フィルムを使用することが提案されている。
【0003】
このような光学異方性層の形成に用いられる液晶性化合物は、例えば、液晶性化合物の分子中央に位置する骨格(以下、「コア部分」ともいう。)を形成するためのヒドロキシ化合物と、液晶性化合物の側鎖部分を形成するためのカルボン酸化合物と、のエステル化反応を利用して合成することが知られている(例えば、特許文献1~4など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-031223号公報
【文献】特開2012-097078号公報
【文献】国際公開第2014/010325号
【文献】特開2016-081035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、液晶性化合物の側鎖部分を形成するためのカルボン酸化合物として、例えば、下記式(3-1)で表されるジシクロヘキサンジカルボン酸モノエステルなどに代表される、2以上の環構造が単結合で連結した構造を有するジカルボン酸のモノエステル体(以下、「多環ジカルボン酸モノエステル」とも略す。)が有用であることを知見した。なお、下記式(3-1)中、Rは置換基を表す。
また、本発明者らは、多環ジカルボン酸モノエステルを合成する際に、2以上の環構造が単結合で連結した構造を有するジカルボン酸(以下、「多環ジカルボン酸」とも略す。)または多環ジカルボン酸のジエステル体(以下、「多環ジカルボン酸ジエステル」とも略す。)を出発物質(原料)として用いると、未反応の原料または不純物として多環ジカルボン酸が存在することを明らかとし、これを回収し、原料として利用することが重要であることを知見した。
【化1】
【0006】
そこで、本発明は、未反応の原料または不純物として存在する多環ジカルボン酸を回収し、モノエステル化反応に利用する多環ジカルボン酸モノエステルの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] 下記式(1)で表されるジカルボン酸から、下記式(3)で表されるジカルボン酸モノエステルを得るモノエステル化反応工程を有する、ジカルボン酸モノエステルの製造方法であって、
未反応の原料として残存するジカルボン酸を回収し、モノエステル化反応工程に再利用する、または、
不純物として副生する下記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルを加水分解し、ジカルボン酸として回収し、モノエステル化反応工程に再利用する、ジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【化2】

ここで、上記式(1)~(3)中、
nは、1~5の整数を表す。
およびAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、脂肪族炭化水素環、または、脂肪族ヘテロ環を表し、nが2~5の整数である場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Rは、置換基を表す。
【0009】
[2] 下記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルから、下記式(3)で表されるジカルボン酸モノエステルを得る反応工程を有する、ジカルボン酸モノエステルの製造方法であって、
不純物として副生する下記式(1)で表されるジカルボン酸を回収し、
ジカルボン酸からジカルボン酸モノエステルを得るモノエステル化反応工程に利用する、または、
ジカルボン酸からジカルボン酸ジエステルを得た後に、反応工程に再利用する、ジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【化3】

ここで、上記式(1)~(3)中、
nは、1~5の整数を表す。
およびAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、脂肪族炭化水素環、または、脂肪族ヘテロ環を表し、nが2~5の整数である場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Rは、置換基を表す。
【0010】
[3] 上記式(1)~(3)中のAおよびAが、いずれも、置換基を有していてもよい炭素数6以上の芳香環、または、置換基を有していてもよい炭素数6以上のシクロアルカン環を表す、[1]または[2]に記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
[4] 上記式(1)~(3)中のAおよびAが、いずれも、シクロヘキサン環を表す、[1]~[3]のいずれかに記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
[5] 上記式(1)で表されるジカルボン酸が、下記式(1-1)で表される化合物であり、上記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルが、下記式(2-1)で表される化合物であり、上記式(3)で表されるジカルボン酸モノエステルが、下記式(3-1)で表される化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【化4】
【0011】
[6] 未反応の原料として残存するジカルボン酸が、
モノエステル化反応工程の後、反応系内に塩基性水溶液を添加した後に、ジカルボン酸モノエステルを有機溶媒中に抽出し、ジカルボン酸の塩を水溶液中に抽出する分相処理と、
分相処理の後に、ジカルボン酸の塩が抽出された水溶液を酸性化し、析出したジカルボン酸を回収する析出処理と、
を有する回収方法によって回収される、[1]に記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
[7] 塩基性水溶液が、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、および、炭酸水素ナトリウム水溶液からなる群から選択される少なくとも1種の水溶液である、[6]に記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【0012】
[8] 未反応の原料として残存するジカルボン酸が、
モノエステル化反応工程の後に、反応系内に塩基性化合物を添加し、析出したジカルボン酸の塩を分離する分離処理と、
分離処理の後、ジカルボン酸の塩を水系の溶媒で酸性化し、析出したジカルボン酸を回収する析出処理と、
を有する回収方法によって回収される、[1]に記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
[9] 塩基性化合物が、アミン化合物である、[8]に記載のジカルボン酸モノエステルの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、未反応の原料または不純物として存在する多環ジカルボン酸を回収し、モノエステル化反応に利用する多環ジカルボン酸モノエステルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
【0015】
[第1態様]
本発明の第1の態様に係るジカルボン酸モノエステルの製造方法(以下、「本発明の第1製造方法」とも略す。)は、下記式(1)で表されるジカルボン酸から、下記式(3)で表されるジカルボン酸モノエステルを得るモノエステル化反応工程を有する、ジカルボン酸モノエステルの製造方法である。
そして、本発明の第1製造方法は、未反応の原料として残存するジカルボン酸を回収し、モノエステル化反応工程に再利用すること、または、不純物として副生する下記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルを加水分解し、ジカルボン酸として回収し、モノエステル化反応工程に再利用することを特徴とする。
【化5】

ここで、上記式(1)~(3)中、
nは、1~5の整数を表す。
およびAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、脂肪族炭化水素環、または、脂肪族ヘテロ環を表し、nが2~5の整数である場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0016】
本発明の第1製造方法および後述する本発明の第2の態様に係るジカルボン酸モノエステルの製造方法は、各工程において、必要に応じて水または有機溶媒を用いることができる。
有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、1,4-ジオキサンなどのエーテル類;ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレンなどの塩素系溶剤類;アセトン、2-ブタノンなどのケトン類;N,N-ジメチルホルムアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチル=スルホキシド、ヘキサメチルホスホリック=トリアミドなどの非プロトン性極性溶媒類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;酢酸エチル、酢酸n-ブチルなどのエステル類;メタノール、エタノール、t-ブチルアルコールなどのアルコール類;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
以下、本発明の第1製造方法で用いる原料および反応条件などについて詳述する。
【0017】
〔ジカルボン酸〕
本発明の第1製造方法で用いる原料は、下記式(1)で表されるジカルボン酸である。
【化6】
【0018】
上記式(1)中、nは、1~5の整数を表し、1~3の整数であることが好ましく、1または2であることがより好ましく、1であることが更に好ましい。
【0019】
上記式(1)中、AおよびAは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環、芳香族複素環、脂肪族炭化水素環、または、脂肪族ヘテロ環を表し、nが2~5の整数である場合、複数のAは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
ここで、芳香族炭化水素環としては、具体的には、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナンスロリン環などが挙げられる。
また、芳香族複素環としては、具体的には、例えば、フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環などが挙げられる。
また、脂肪族炭化水素環としては、具体的には、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロドデカン環、シクロドコサン環などが挙げられる。
また、脂肪族ヘテロ環としては、具体的には、例えば、ピロリジン、オキソラン、チオラン、ピペリジン、オキサン、チアン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、ピロリジン、アゼチジン、オキセタン、アジリジン、ジオキサン、ペンタメチレンスルフィドなどが挙げられる。
【0020】
これらのうち、フィルムにした際の光学特性が良好となる理由から、上記式(1)中のAおよびAは、いずれも、置換基を有していてもよい炭素数6以上の芳香環(特にベンゼン環)、または、置換基を有していてもよい炭素数6以上のシクロアルカン環であることが好ましく、シクロヘキサン環(例えば、1,4-シクロヘキシレン基など)であることがより好ましく、トランス-1,4-シクロヘキシレン基であることが更に好ましい。
【0021】
また、上述した芳香族炭化水素環などが有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子、エステル基、メルカプト基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基またはt-ブチル基であることが特に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-ブトキシ基、メトキシエトキシ基等)がより好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基であることが更に好ましく、メトキシ基またはエトキシ基であることが特に好ましい。
アリール基としては、例えば、炭素原子数6~15のアリール基が好ましく、フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、9,10-ジメトキシアントリル基がより好ましく、フェニル基であることが更に好ましい。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも、フッ素原子または塩素原子であることが好ましい。
エステル基としては、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ヘキシルエステル基、オクチルエステル基、ドデシルエステル基、ステアリルエステル基などが挙げられ、中でも、メチルエステル基またはエチルエステル基であることが好ましい。
【0022】
上記式(1)中のAおよびAとしては、以上で例示する環構造、または、以上で例示する環構造と置換基の組み合わせのうち、以下に示す環構造が好適に挙げられる。なお、以下に示す環構造中、*は結合位置を表す。
【化7】

【化8】
【0023】
本発明においては、フィルムにした際の光学特性が良好となる理由から、上記式(1)で表されるジカルボン酸が、下記式(1-1)で表される化合物であることが好ましい。
【化9】
【0024】
〔モノエステル化反応工程〕
本発明の第1製造方法が有するモノエステル化反応工程は、上記式(1)で表されるジカルボン酸から、下記式(3)で表されるジカルボン酸モノエステルを得る工程である。
【化10】
【0025】
上記式(3)中、n、AおよびAは、上記式(1)において説明したもの同様である。
【0026】
上記式(3)中、Rは、置換基(以下、「置換基R」とも略す。)を表す。
置換基Rとしては、例えば、上記式(1)中のAおよびAにおいて説明した、芳香族炭化水素環などが有していてもよい置換基と同様のものが挙げられる。
また、置換基Rとしては、-D-G-SP-Pで表される基が好適に挙げられる。
ここで、Dは、単結合、-O-、-CO-O-、-C(=S)O-、-CR-、-CR-CR-、-O-CR-、-CR-O-CR-、-CO-O-CR-、-O-CO-CR-、-CR-CR-O-CO-、-CR-O-CO-CR-、-CR-CO-O-CR-、-NR-CR-、または、-CO-NR-を表す。R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。R、R、RおよびRのそれぞれが複数存在する場合には、複数のR、複数のR、複数のRおよび複数のRはそれぞれ、互いに同一であっても異なっていてもよい。
また、Gは、単結合、炭素数6~12の2価の芳香環基もしくは複素環基、または、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表し、上記脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-または-NR-で置換されていてもよい。Rは、水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。
また、SPは、単結合、-(CH-、-(CH-O-、-(CH-O-)-、-(CHCH-O-)、-O-(CH-、-O-(CH-O-、-O-(CH-O-)-、-O-(CHCH-O-)、-C(=O)-O-(CH-、-C(=O)-O-(CH-O-、-C(=O)-O-(CH-O-)-、-C(=O)-O-(CHCH-O-)、-C(=O)-N(R)-(CH-、-C(=O)-N(R)-(CH-O-、-C(=O)-N(R)-(CH-O-)-、-C(=O)-N(R)-(CHCH-O-)、または、-(CH-O-(C=O)-(CH-C(=O)-O-(CH-で表されるスペーサー基を表す。ここで、nは2~12の整数を表し、mは2~6の整数を表し、Rは水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。また、上記各基における-CH-の水素原子は、メチル基で置換されていてもよい。
また、Pは、重合性基を示す。
【0027】
が示す重合性基は特に限定されないが、ラジカル重合またはカチオン重合可能な重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、公知のラジカル重合性基が挙げられ、アクリロイル基またはメタクリロイル基が好ましい。重合速度はアクリロイル基が一般的に速いことが知られており、生産性向上の観点からアクリロイル基が好ましいが、メタクリロイル基も高複屈折性液晶の重合性基として同様に使用することができる。
カチオン重合性基としては、公知のカチオン重合性が挙げられ、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、および、ビニルオキシ基が挙げられる。中でも、脂環式エーテル基、または、ビニルオキシ基が好ましく、エポキシ基、オキセタニル基、または、ビニルオキシ基がより好ましい。
特に好ましい重合性基の例としては下記が挙げられる。なお、下記式中、*は、重合性基の結合位置を表す。
【0028】
【化11】
【0029】
上記式(3)中、置換基Rとしては、以上で例示するもののうち、以下に示す置換基が好適に挙げられる。なお、以下に示す構造中、*は置換基の結合位置を表し、Bnは「ベンジル基」を表す。
【化12】
【0030】
本発明においては、フィルムにした際の光学特性が良好となる理由から、上記式(3)で表されるジカルボン酸モノエステルが、下記式(3-1)で表される化合物であることが好ましい。
【化13】
【0031】
一方、本発明の第1製造方法が有するモノエステル化反応工程において、上記式(1)で表されるジカルボン酸と反応させる化合物は、上記式(3)中のR(置換基)を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、HO-D-G-SP-P、MsO-D-G-SP-Pなどの一般式で表される化合物が挙げられる。なお、D、G、SPおよびPは、いずれも、上記式(3)中のR(置換基)の例として説明したものと同様であり、Msは、CHSO-を表す。
【0032】
<反応条件>
モノエステル化反応工程の反応条件は特に限定されず、従来公知のエステル化の反応条件を適宜採用することができる。
例えば、反応温度は、-10~150℃で行われることが好ましく、-5~120℃で行われることがより好ましく、-5~100℃で行われることが更に好ましい。
また、反応時間は、10分~24時間行われることが好ましく、30分~10時間行われることがより好ましく、1時間~8時間行われることが更に好ましい。
【0033】
〔回収および再利用〕
本発明の第1製造方法は、上述した通り、未反応の原料として残存するジカルボン酸(すなわち、上記式(1)で表されるジカルボン酸)を回収し、モノエステル化反応工程に再利用すること(以下、「回収態様A」と略す。)、または、不純物として副生する後述する式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルを加水分解し、ジカルボン酸(すなわち、上記式(1)で表されるジカルボン酸)として回収し、モノエステル化反応工程に再利用すること(以下、「回収態様B」と略す。)を特徴としており、なかでも、回収態様Aを特徴とすることが好ましい。
【0034】
<回収態様A(その1)>
本発明においては、簡便な操作で回収できる理由から、未反応の原料として残存するジカルボン酸が、上述したモノエステル化反応工程の後、反応系内に塩基性水溶液を添加した後に、目的物質であるジカルボン酸モノエステル(すなわち、上記式(3)で表されるジカルボン酸モノエステル)を有機溶媒中に抽出し、ジカルボン酸の塩を水溶液中に抽出する分相処理と、分相処理の後に、ジカルボン酸の塩が抽出された水溶液を酸性化し、析出したジカルボン酸を回収する析出処理と、を有する回収方法によって回収されることが好ましい。
【0035】
上記塩基性水溶液としては、具体的には、例えば、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素カリウム水溶液、および、炭酸水素ナトリウム水溶液からなる群から選択される少なくとも1種の水溶液が好適に挙げられる。
【0036】
(分相処理)
上記塩基性水溶液を添加した後の分相処理は、ジカルボン酸モノエステルを有機溶媒中に抽出し、ジカルボン酸の塩を水溶液中に抽出する処理であり、その操作としては、例えば、従来公知の分液操作を適宜採用することができる。
ここで、ジカルボン酸モノエステルが抽出される有機溶媒は、上述したモノエステル化反応工程に有機溶媒を用いる場合は、その有機溶媒であってもよく、分相処理において別途添加する有機溶媒であってもよい。なお、有機溶媒としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
また、ジカルボン酸の塩が抽出される水溶液は、上記塩基性水溶液の水溶液であってもよく、分相処理において別途添加する水であってもよい。
なお、分相処理によって分離した有機相は、必要に応じて、水(例えば、食塩水など)を用いて洗浄してもよい。
【0037】
(析出処理)
上記分相処理後の析出処理は、ジカルボン酸の塩が抽出された水溶液を酸性化し、析出したジカルボン酸を回収する処理である。
ここで、酸性化の手段は特に限定されず、例えば、水溶液に酸を添加する方法が挙げられる。
酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸類またはこれらの塩類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機酸類またはこれらの塩類;テトラフルオロホウ酸リチウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化アルミニウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、四塩化錫、四臭化錫、二塩化錫、四塩化チタン、四臭化チタン、トリメチルヨードシランなどのルイス酸類;アルミナ、シリカゲル、チタニアなどの酸化物;モンモリロナイトなどの鉱物;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、酸性化の程度は特に限定されず、水溶液中に析出するジカルボン酸の様子を確認しながら、上述した酸を添加することができる。
また、酸性化の際には、流動性、ろ過性など操作性を向上させる観点から、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などのケトン溶媒;アセトニトリルなどのニトリル溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などのアミド溶媒;等の有機溶媒を混合してもよい。
また、析出したジカルボン酸を回収する手段は特に限定されず、例えば、ろ過などの従来公知の方法を適宜採用することができる。
【0038】
<回収態様A(その2)>
本発明においては、簡便な操作で回収できる理由から、未反応の原料として残存するジカルボン酸が、モノエステル化反応工程の後に、反応系内に塩基性化合物を添加し、析出したジカルボン酸の塩を分離する分離処理と、分離処理の後、ジカルボン酸の塩を水系の溶媒で酸性化し、析出したジカルボン酸を回収する析出処理と、を有する回収方法によって回収されることが好ましい。
【0039】
上記塩基性化合物としては、アミン化合物であることが好ましく、その具体例としては、テトラメチルエチレンジアミン、ピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルモルフォリンなどが挙げられる。
【0040】
(分離処理)
上記塩基性化合物を添加した後の分離処理は、析出したジカルボン酸の塩を分離する処理であり、その操作としては、ろ過などの従来公知の方法を適宜採用することができる。
【0041】
(析出処理)
上記分離処理後の析出処理は、上記分離処理で分離したジカルボン酸の塩を水溶液に溶解または懸濁させた後、水溶液を酸性化し、析出したジカルボン酸を回収する処理である。
ここで、ジカルボン酸の塩を溶解または懸濁させる水溶液は特に限定されず、水、食塩水などが挙げられる。また、流動性、ろ過性など操作性を向上させる観点から、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)などのケトン溶媒;アセトニトリルなどのニトリル溶媒;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などのアミド溶媒;等の有機溶媒を混合してもよい。
また、酸性化の手段および析出したジカルボン酸の回収する手段は特に限定されず、例えば、上述した分相処理後の析出処理と同様の方法が挙げられる。
【0042】
<回収態様B>
本発明の第1製造方法の他の特徴である回収態様Bは、不純物として副生する下記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルを加水分解し、ジカルボン酸として回収し、モノエステル化反応工程に再利用する態様である。
【化14】
【0043】
上記式(2)中、n、AおよびAは、上記式(1)において説明したもの同様であり、Rは、上記式(2)において説明したものと同様である。
なお、上記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルとしては、フィルムにした際の光学特性が良好となる理由から、下記式(2-1)で表される化合物が好適に挙げられる。
【化15】
【0044】
回収態様Bについて、まず、不純物として副生する上記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルは、一般的な有機合成反応の分離方法により分離することができ、例えば、蒸留、昇華、晶析、再沈殿、抽出、逆抽出、カラムクロマトグラフィーなどの方法で分離することができる。
これらのうち、未反応のジカルボン酸および目的物質であるジカルボン酸モノエステルと、ジカルボン酸ジエステルとを分離する観点から、晶析、逆抽出、カラムクロマトグラフィーが好ましく、中でも、分離選択性および生産性の観点から、逆抽出がより好ましい。
【0045】
次いで、上記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルの加水分解は、一般的なエステルの加水分解法が適用できるが、塩基加水分解法または酸加水分解法が好ましい。
塩基加水分解法としては、一般的な塩基が使用でき、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられるが、コスト、反応性の観点で水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
酸加水分解法としては、一般的な酸が使用でき、塩酸、臭化水素、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などが挙げられるが、コスト、反応性の観点で、塩酸、硫酸が好ましい。
【0046】
また、加水分解の反応条件は特に限定されず、従来公知の加水分解の反応条件を適宜採用することができる。
例えば、反応温度は、-30~100℃で行われることが好ましく、-20~50℃で行われることがより好ましく、-10~40℃で行われることが更に好ましい。
また、反応時間は、10分~24時間行われることが好ましく、20分~10時間行われることがより好ましく、30分~8時間行われることが更に好ましい。
【0047】
[第2態様]
本発明の第2の態様に係るジカルボン酸モノエステルの製造方法(以下、「本発明の第2製造方法」とも略す。)は、上記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルから、上記式(3)で表されるジカルボン酸モノエステルを得る反応工程を有する、ジカルボン酸モノエステルの製造方法である。
そして、本発明の第2製造方法は、不純物として副生する上記式(1)で表されるジカルボン酸を回収し、ジカルボン酸からジカルボン酸モノエステルを得るモノエステル化反応工程に利用する、または、ジカルボン酸からジカルボン酸ジエステルを得た後に、反応工程に再利用することを特徴とする。
なお、本発明の第2製造方法においては、上述した通り、原料は上記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルであり、得られる生成物は上記式(3)で表されるジカルボン酸モノエステルであり、得られる不純物は上記式(2)で表されるジカルボン酸ジエステルであるが、これらの詳細は、上述した本発明の第1製造方法において説明した通りである。
【0048】
本発明の第2製造方法が有する反応工程における反応は特に限定されず、例えば、上述した本発明の第1製造方法の回収態様Bで詳述した加水分解や、酸を用いた脱保護などの方法が挙げられる。
【0049】
また、本発明の第2製造方法の特徴である、ジカルボン酸の回収は、上述した本発明の第1製造方法において詳述した回収態様Aと同様の態様が挙げられる。
そして、回収したジカルボン酸からジカルボン酸モノエステルを得るモノエステル化反応工程に利用する態様は、上述した本発明の第1製造方法において詳述したモノエステル化反応工程と同様の態様が挙げられる。
一方、回収したジカルボン酸からジカルボン酸ジエステルを得た後に、反応工程に再利用する態様について、まず、ジカルボン酸からジカルボン酸ジエステルを得る反応条件は、従来公知のエステル化の反応条件を適宜採用することができる。例えば、反応温度は、-10~150℃で行われることが好ましく、-5~120℃で行われることがより好ましく、-5~100℃で行われることが更に好ましい。また、反応時間は、10分~24時間行われることが好ましく、30分~10時間行われることがより好ましく、1時間~8時間行われることが更に好ましい。次いで、得られたジカルボン酸ジエステルを供する反応工程における反応は特に限定されず、例えば、上述した本発明の第1製造方法の回収態様Bで詳述した加水分解や、酸を用いた脱保護などの方法が挙げられる。
【実施例
【0050】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0051】
[実施例1]
【化16】
【0052】
上記スキームに示す通り、ジカルボン酸(A-1)10.0g(39.3mmol)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)10mL、トルエン4mL、化合物(B-1)10.2g(含率47%のトルエン溶液、21.6mmol)、および、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.2gを室温(23℃)にて混合した。
反応液を90℃に昇温し、トリエチルアミン6.6ml(47.2mmol)を加え、5時間撹拌した。次いで、反応液を室温まで冷却し、トルエン54mL、DMAc9mL、純水36mL、および、2N水酸化ナトリウム水溶液21.6mLを加え、ジカルボン酸モノエステル(C-1)を有機相に抽出し、ジカルボン酸の塩(A’-1)を水相に抽出し、これらを分離した。
次いで、分離した有機相を10%食塩水40mLで洗浄し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、ジカルボン酸モノエステル(C-1)5.0g(収率61%)、および、ジカルボン酸ジエステル(D-1)1.6g(収率15%)を得た。
一方、分離した水相に濃塩酸10mLを滴下し、析出した固体をろ取し、純水で洗浄した。その後、得られた固体にアセトン30mLを添加し、室温で30分撹拌した後、ろ取し、乾燥することでジカルボン酸(A-1)3.7g(回収率37%)を得た。
【0053】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、ジカルボン酸モノエステル(C-1)5.0g(収率61%)、および、ジカルボン酸ジエステル(D-1)1.6g(収率15%)を得た。
次いで、下記スキームに示すように、ジカルボン酸ジエステル(D-1)1.6g(3.2mmol)、および、エタノール10mLの混合液に、2N水酸化ナトリウム水溶液10mLを添加した。反応液を50℃に昇温し、3時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、濃塩酸5mLを滴下し、析出した結晶をろ取した。得られた結晶にアセトン5mLを添加し、室温で30分撹拌した後、ろ取し、アセトンで洗浄した後、乾燥することでジカルボン酸(A-1)0.7g(収率88%)を得た。
【化17】
【0054】
[比較例1]
【化18】
【0055】
上記スキームに示す通り、ジカルボン酸(E-1)6.8(39.3mmol)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)10mL、トルエン4mL、化合物(B-1)10.2g(含率47%のトルエン溶液、21.6mmol)、および、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.2gを室温(23℃)にて混合した。
反応液を90℃に昇温し、トリエチルアミン6.6ml(47.2mmol)を加え、5時間撹拌した。次いで、反応液を室温まで冷却し、トルエン54mL、DMAc9mL、純水36mL、および、2N水酸化ナトリウム水溶液21.6mLを加え、ジカルボン酸モノエステル(F-1)を有機相に抽出した。この際、水相はジカルボン酸の塩(E’-1)とジカルボン酸モノエステルの塩(F’-1)の混合物として抽出され、これらを分離した。
次いで、分離した有機相を10%食塩水40mLで洗浄し、濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製することで、ジカルボン酸モノエステル(F-1)0.8g(収率13%)を得た。
一方、分離した水相に濃塩酸10mLを滴下し、析出した固体をろ取し、純水で洗浄した後、乾燥することでジカルボン酸(E-1)とジカルボン酸モノエステル(F-1)の混合物5.6gを得た。NMR(Nuclear Magnetic Resonance)で確認した結果、混合物はジカルボン酸(E-1)とジカルボン酸モノエステル(F-1)のモル比で1:0.8であった。
【0056】
[実施例3]
【化19】
【0057】
上記スキームに示す通り、ジカルボン酸(A-1)10.0g(39.3mmol)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)11mL、トルエン4mL、化合物(B-1)10.2g(含率47%のトルエン溶液、21.6mmol)、および、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.2gを室温(23℃)にて混合した。
反応液を90℃に昇温し、トリエチルアミン6.0ml(43.1mmol)を加え、5時間撹拌した。次いで、室温まで冷却した後、テトラメチルエチレンジアミン6.16mL(41.3mmol)を滴下し、析出した固体をろ別し、乾燥することで、固体7.7gを得た。
NMRで確認した結果、固体は、ジカルボン酸(A-1)、テトラメチルエチレンジアミンおよびメタンスルホン酸のモル比が、1:1:1の混合物であった。この固体(混合物)を、純水10mLに懸濁させ、1NHCl20mLを滴下し、析出した固体をろ取し、純水で洗浄した後、乾燥することでジカルボン酸(A-1)3.5g(回収率35%)を得た。
一方、回収したろ液からは、トルエン20mLを添加した後、1NHCl20mL、および、1%炭酸水素ナトリウム水溶液30mLを用いて順次洗浄し、濃縮することでジカルボン酸モノエステル(C-1)のトルエン溶液18.2g(含率28%のトルエン溶液、収率62%)を得た。
【0058】
[比較例2]
【化20】
【0059】
上記スキームに示す通り、ジカルボン酸(E-1)6.8g(39.3mmol)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)11mL、トルエン4mL、化合物(B-1)10.2g(含率47%のトルエン溶液、21.6mmol)、および、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール0.2gを室温(23℃)にて混合した。
次いで、反応液を90℃に昇温し、トリエチルアミン6.0ml(43.1mmol)を加え、5時間撹拌した。
次いで、室温まで冷却した後、テトラメチルエチレンジアミン6.16mL(41.3mmol)を滴下したが、固体は析出しなかった。
【0060】
[実施例4]
【化21】
【0061】
上記スキームに示す通り、ジカルボン酸(A-1)10.0g(39.3mmol)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)20mL、および、トルエン80mLの溶液に、室温でトリエチルアミン16.4ml(118mmol)を加え、90℃に昇温した。
次いで、化合物(G-1)14.8g(86.5mmol)を滴下し、その温度で5時間撹拌した。
次いで、反応液を室温まで冷却し、1N塩酸100mLを添加し、水相を除去した後、有機相を10%NaCl水溶液100mLで洗浄し、有機相を硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相を濃縮し、MeOH100mLを加え、析出した固体をろ取することで、化合物(H-1)15.5g(収率91%)を得た。
ここで、得られた化合物(H-1)10.0g(23.0mmol)、テトラヒドロフラン50mL、および、ジメチルアセトアミド25mLの溶液に、室温で2N水酸化ナトリウム水溶液6.0mLを滴下した。
次いで、反応液を40℃に昇温し、5時間撹拌した。その後、反応液を室温まで冷却し、トルエン100mL、および、純水30mLを添加し、ジカルボン酸モノエステル(I-1)を有機相に抽出し、ジカルボン酸の塩(A’-1)を水相に抽出し、これらを分離した。
また、有機相を、1N塩酸30mL、10%NaCl水溶液30mLで順次洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、ジカルボン酸モノエステル(I-1)2.6g(収率33%)を得た。
また、水相に、濃塩酸5mLを滴下し、析出した固体をろ取し、純水で洗浄した。得られた固体にアセトン10mLを添加し、室温で30分撹拌した後、ろ取、乾燥することでジカルボン酸(A-1)1.3g(回収率22%)を得た。