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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEY
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020539220
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 KR2018015429
(87)【国際公開番号】W WO2019143020
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-07-16
(31)【優先権主張番号】10-2018-0007384
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュンウェ・イ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・フン・イ
(72)【発明者】
【氏名】クァンイン・シン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・フン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】サン・キ・イ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-521678(JP,A)
【文献】特表2014-505151(JP,A)
【文献】特表2010-520948(JP,A)
【文献】特開2011-092930(JP,A)
【文献】国際公開第2009/113671(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/046604(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0096322(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-246/00;301/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
B01J 20/00-20/34
A61F 13/15-13/84
B65B 1/00- 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)重合開始剤および内部架橋剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して含水ゲル状重合体を形成する段階;
B)前記含水ゲル状重合体を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;
C)表面架橋剤の存在下で、熱処理により前記ベース樹脂粉末を表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階;および
D)前記高吸水性樹脂粒子を、50RH%以上80RH%未満の相対湿度および40℃以上80℃未満の温度条件に供する湿潤段階を含み、
前記D)段階は、1~15分間行われる、
高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、下記化学式1で表される化合物である、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法:
[化学式1]
-COOM
前記化学式1において、
は不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【請求項3】
前記内部架橋剤は、
N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、およびエチレンカーボネートからなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記内部架橋剤は、単量体重量に対して1,000~10,000ppmwで用いられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記表面架橋剤は;
炭素数3~10のアルキレンカーボネート、炭素数2~10の多価アルコール、炭素数1~10のアミノアルコール、炭素数2~10のオキセタン化合物、炭素数2~10のエポキシ化合物、炭素数2~10の多価アミン化合物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、および塩化鉄からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記C)段階は、180℃~250℃で行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記D)段階は、50RH%以上75RH%以下の相対湿度および40℃以上75℃以下の温度条件で行われる、請求項1からのいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2018年1月19日付韓国特許出願第10-2018-0007384号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれている。
【0002】
本発明は、含水率が高い高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(super absorbent polymer,SAP)とは自重の約5百ないし1千倍程度の水分を吸収できる合成高分子物質として、SAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)等とも呼ばれている。高吸水性樹脂は生理用品に実用化され始め、現在は子供用紙おむつなどの衛生用品、園芸用土壌保水剤、土木用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤など多様な材料に広く使われている。
【0004】
このような高吸水性樹脂を製造する方法としては逆相懸濁重合による方法または水溶液重合による方法などが知られている。
【0005】
水溶液重合による高吸水性樹脂の製造は、複数の軸が備えられた混練機内で含水ゲル状重合体を破断および冷却しながら重合する熱重合方法と、ベルト上で高濃度の水溶液に紫外線などを照射して重合と乾燥を同時に行う光重合方法などが知られている。
【0006】
また、高吸水性樹脂の吸収能や吸収速度など吸収と関連した物性を向上させるための表面架橋、発泡などの多様な後処理工程などが知られており、各工程では、各自の目的を達成するために各種添加剤を用いる方法などが知られている。
【0007】
高吸水性樹脂は、一般に、乾燥、粉砕、および分級などの工程を経て一定の大きさの乾燥粉末で製造される。
【0008】
しかし、このような乾燥粉末は、静電気的に帯電されて工程上問題を起こし得、高吸水性樹脂の製造過程、あるいはおむつの製造や加工などの後続工程において、ろ過集塵機(bag filter)等に詰まり現象などを発生させ得、後続工程のための空気圧輸送(Pneumatic transfer)の過程で破砕が発生し、物性が低下する問題が発生し得る。
【0009】
特に、最近では微細粒子による呼吸器疾患発生と関連して高吸水性樹脂製造工程に投入される人員の健康問題も大きな問題になっている。
【0010】
したがって、前記のような問題を解決できる高吸水性樹脂の製造方法に対する研究が必要な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本明細書は、従来に比べて相対的に含水率が高い高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書は、
A)重合開始剤および内部架橋剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して含水ゲル状重合体を形成する段階;
B)前記含水ゲル状重合体を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;
C)表面架橋剤の存在下で、熱処理により前記ベース樹脂粉末を表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階;および
D)前記高吸水性樹脂粒子を、50RH%以上80RH%未満の相対湿度および40℃以上80℃未満の温度条件に供する湿潤段階を含む、
高吸水性樹脂の製造方法を提供する。
【0013】
また、本明細書は、
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤によって重合および架橋されており、表面架橋剤によって改質された表面架橋層を備えた表面架橋樹脂を含み;
含水率が0.1重量%~10重量%である;
高吸水性樹脂を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本明細書によれば、従来に比べて相対的に含水率が高いながらも、吸収関連の物性の低下がない高吸水性樹脂の製造が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一側面による高吸水性樹脂の製造方法は、
A)重合開始剤および内部架橋剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して含水ゲル状重合体を形成する段階;
B)前記含水ゲル状重合体を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;
C)表面架橋剤の存在下で、熱処理により前記ベース樹脂粉末を表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階;および
D)前記高吸水性樹脂粒子を、50RH%以上80RH%未満の相対湿度および40℃以上80℃未満の温度条件に供する湿潤段階を含む。
【0016】
また、本発明の一側面による高吸水性樹脂は、
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤によって重合および架橋されており、表面架橋剤によって改質された表面架橋層を備えた表面架橋樹脂を含み;
含水率が0.1重量%~10重量%である。
【0017】
そして、前記高吸水性樹脂は、上述した方法によって製造され得る。
【0018】
本明細書において用いられる用語は、単に例示的な実施例を説明するために使われたものであり、本発明を限定することを意図しない。単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解しなければならない。
【0019】
また、本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」または「の上に」形成されると言及される場合は各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味し、他の層または要素が各層間、対象体、基材上に追加的に形成され得ることを意味する。
【0020】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0021】
以下、発明の具体的な実施形態により高吸水性樹脂およびその製造方法についてより詳細に説明する。
【0022】
高吸水性樹脂は保持能、加圧吸収能および吸収速度が重要な物性として評価されており、それのために従来には高吸水性樹脂の内部に気孔を多く形成して水をはやく吸い込むようにしたりまたは高吸水性樹脂の粒子の大きさを小さくする方法などが知られている。
【0023】
しかし、このような高吸水性樹脂は、微細乾燥粉末の形態で製造されるので、前述したように、製造過程で工程自体の問題や投入される人員の健康に関連した様々な問題が生じ得る。
【0024】
このような問題を解決するためには、微細乾燥粉末の形態で製造された高吸水性樹脂粒子の含水率を高め、特定範囲に調整する必要があるが、含水率を増加させる過程で、微細粒子の粒子間凝集(agglomerate)が発生し、相対的に大きい大きさの凝集体粒子が生成され、これにより、吸収と関連した様々な物性が低下する問題が発生した。
【0025】
本発明の発明者らは、重合および内部架橋反応によって形成された含水ゲル状重合体を、乾燥、粉砕および分級して表面架橋を行った後、表面架橋層が形成された高吸水性樹脂に特定工程を追加し、従来の高吸水性樹脂に比べて相対的に高い含水率を有しながらも、微細粒子の粒子間凝集(agglomerate)が発生しないので、大きい大きさの凝集体粒子を殆ど含まなくてもよいことに着眼して本発明の完成に至った。
【0026】
以下、本発明の高吸水性樹脂およびその製造方法を詳細に説明する。
【0027】
参考までに、本発明の明細書で「重合体」または「高分子」は、エチレン性不飽和単量体が重合された状態であることを意味し、すべての水分含有量範囲または粒径範囲を包括し得る。前記重合体のうち、重合後乾燥前状態のもので含水率(水分含有量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル状重合体という場合もある。
【0028】
また、「ベース樹脂」または「ベース樹脂粉末」は、前記重合体、すなわち含水ゲル状重合体を乾燥および粉砕して乾燥粉末(powder)形態にしたものを意味する。
【0029】
本発明の一側面による高吸水性樹脂の製造方法は、
A)重合開始剤および内部架橋剤の存在下で、少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して含水ゲル状重合体を形成する段階;
B)前記含水ゲル状重合体を乾燥、粉砕、および分級してベース樹脂粉末を形成する段階;
C)表面架橋剤の存在下で、熱処理により前記ベース樹脂粉末を表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階;および
D)前記高吸水性樹脂粒子を、50RH%以上80RH%未満の相対湿度および40℃以上80℃未満の温度条件に供する湿潤段階を含む。
【0030】
以下、各段階別に本発明を詳細に説明する。
【0031】
本発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法では、先に酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したエチレン性不飽和単量体、重合開始剤、および内部架橋剤を含む単量体組成物を重合して含水ゲル状重合体を形成する。
【0032】
前記エチレン性不飽和単量体は、酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであり得る。好ましくは前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものが用いられる。この時、前記エチレン性不飽和単量体の中和度は40モル%~95モル%、または40モル%~80モル%、または45モル%~75モル%であり得る。前記中和度の範囲は最終物性に応じて調整され得る。しかし、前記中和度が過度に高いと中和した単量体が析出されて重合が円滑に行われにくく、逆に中和度が過度に低いと高分子の吸収力が大きく劣るだけでなく、取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質をし得る。
【0033】
好ましくは、前記エチレン性不飽和単量体は、下記化学式1で表される化合物である:
【0034】
[化学式1]
-COOM
【0035】
前記化学式1において、
は不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0036】
好ましくは、前記エチレン性不飽和単量体は、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選ばれる1種以上を含む。
【0037】
また、前記単量体組成物のうちエチレン性不飽和単量体の濃度は、重合時間および反応条件などを考慮して適宜調整され得、好ましくは約20重量%~約90重量%、または約40重量%~約70重量%であり得る。このような濃度範囲は、高濃度水溶液の重合反応で現れるゲル現象を用いて重合後未反応単量体を除去する必要がないようにしながらも、後続工程である重合体の粉砕時の粉砕効率を調整するのに有利である。ただし、前記単量体の濃度が過度に低くなると高吸水性樹脂の収率が低くなる。逆に、前記単量体の濃度が過度に高まると単量体の一部が析出されたり重合された含水ゲル状重合体の粉砕時の粉砕効率が劣るなど工程上の問題が生じ得、高吸水性樹脂の物性が低下し得る。
【0038】
一方、前記単量体組成物には高吸水性樹脂の製造に一般的に用いられる重合開始剤が含まれ得る。非制限的な例として、前記重合開始剤としては重合方法により熱重合開始剤または光重合開始剤などが用いられ得る。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などによって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行に応じてある程度の熱が発生するので、熱重合開始剤がさらに含まれ得る。
【0039】
ここで、前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選ばれた一つ以上の化合物が用いられる。その中で、アシルホスフィンの具体的な例として、商用のlucirin TPO、すなわち、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)が用いられ得る。より多様な光重合開始剤についてはReinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier 2007年)」の115ページに開示されており、これを参照し得る。
【0040】
また、前記熱重合開始剤としては過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素、およびアスコルビン酸からなる群より選ばれた一つ以上の化合物が用いられる。具体的には、過硫酸塩系開始剤としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)等を例に挙げられ得る。また、アゾ(Azo)系開始剤としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロリド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))等が例に挙げられる。より多様な熱重合開始剤に対してはOdian著書である「Principle of Polymerization(Wiley、1981年)」の203ページに開示されており、これを参照し得る。
【0041】
このような重合開始剤は、前記単量体組成物に対して約0.001重量%~1重量%の濃度で添加され得る。すなわち、前記重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存モノマーが多量抽出され得るため好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が過度に高い場合、ネットワークをなす高分子鎖が短くなり、水可溶成分の含有量が高まり加圧吸収能が低くなるなど樹脂の物性が低下し得るため好ましくない。
【0042】
一方、前記単量体組成物には前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合による樹脂の物性を向上させるための内部架橋剤を含む。前記架橋剤は含水ゲル状重合体を内部架橋させるためのものとして、前記含水ゲル状重合体の表面を架橋させるための架橋剤(表面架橋剤)とは区分される。
【0043】
前記内部架橋剤としては、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合時架橋結合の導入を可能にするものであれば、特に制限されない。非制限的な例として、前記内部架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、およびエチレンカーボネートのような多官能性架橋剤を単独使用または2以上を併用し得、これに制限されるものではない。
【0044】
このような内部架橋剤は前記単量体重量に対して約1,000ppmw~約10,000ppmwで用いられるか、あるいは前記単量体組成物に対して約0.001重量%~約1重量%の濃度で添加され得る。
【0045】
前記内部架橋剤の濃度が過度に低い場合、樹脂の吸収速度が低くなり、ゲル強度が弱くなるため好ましくない。逆に、前記内部架橋剤の濃度が過度に高い場合、樹脂の吸収力が低くなり吸収体としては好ましくない。
【0046】
一方、前記単量体組成物の架橋重合は、発泡剤の存在下で行われ得る。前記発泡剤は、前記1の重合および架橋反応時分解によって気孔を形成し得る。
【0047】
非制限的な例として、前記発泡剤は、重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、重炭酸カリウム(potassium bicarbonate)、炭酸カリウム(potassium carbonate)、重炭酸カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、重炭酸マグネシウム(magnesium bicarbonat e)、炭酸マグネシウム(magnesium carbonate)、アゾジカルボンアミド(azodicarbonamide,ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン (dinitroso pentamethylene tetramine,DPT)、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド )(p,p’-oxybis(benzenesulfonyl hydrazide)、OBSH)、p-トルエンスルホニルヒドラジド(p-toluenesulfonyl hydrazide,TSH)、ステアリン酸スクロース(sucrose stearate)、パルミチン酸スクロース(sucrose palmitate)、およびラウリン酸スクロース(sucrose laurate)からなる群より選ばれた1種以上の化合物を含み得る。
【0048】
前記発泡剤は、前記単量体組成物に約1,000~約3,000ppmwで存在することが好ましい。具体的には、前記発泡剤は前記単量体組成物に約1,000ppmw以上、あるいは1,100ppmw以上、あるいは1,200ppmw以上;および3,000ppmw以下、あるいは2,500ppmw以下、あるいは2,000ppmw以下で存在し得る。
【0049】
その他にも、前記単量体組成物には必要に応じて増粘剤、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤がさらに含まれ得る。
【0050】
そして、このような単量体組成物は前述した単量体、重合開始剤、内部架橋剤などの原料物質が溶媒に溶解した溶液の形態で準備され得る。この時、使用可能な溶媒としては前述した原料物質を溶解させることのできるものであれば、その構成の限定なしに用いられる。例えば、前記溶媒としては水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテート、N,N-ジメチルアセトアミド、またはこれらの混合物など用いられる。
【0051】
そして、前記単量体組成物の重合による含水ゲル状重合体の形成は、通常の重合方法で行われ得、その工程は特に限定されない。非制限的な例として、前記重合方法は、重合エネルギー源の種類によって大きく熱重合と光重合に分かれるが、前記熱重合を行う場合にはニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行われ得、光重合を行う場合には移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で行われ得る。
【0052】
一例として、攪拌軸が備えられたニーダーなどの反応器に前記単量体組成物を投入し、ここに熱風を供給したり反応器を加熱して熱重合することによって含水ゲル状重合体を得ることができる。この時、反応器に備えられた攪拌軸の形態に応じて反応器の排出口に排出される含水ゲル状重合体は数ミリメートルないし数センチメートルの粒子で得られる。具体的には、得られる含水ゲル状重合体は注入される単量体組成物の濃度および注入速度などに応じて多様な形態で得られるが、通常(重量平均)粒径が約2mm~約50mmの含水ゲル状重合体が得られる。
【0053】
そして、他の一例として、移動可能なコンベヤーベルトが備えられた反応器で前記単量体組成物に対する光重合を行う場合はシート形態の含水ゲル状重合体が得られる。この時、前記シートの厚さは注入される単量体組成物の濃度および注入速度に応じて変わるが、シート全体が均等に重合されるようにしながらも生産速度などを確保するために、通常、約0.5cm~約5cmの厚さに調整されることが好ましい。
【0054】
このような方法で形成される含水ゲル状重合体は、約40重量%~約80重量%の含水率を示し得る。ここで、含水率は含水ゲル状重合体の全体重量で水分が占める重量として、含水ゲル状重合体の重量で乾燥状態の重合体の重量を引いた値であり得る。具体的には、赤外線加熱によって重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義される。この時、乾燥条件は、常温で約180℃まで温度を上昇させた後、約180℃で維持する方式で、総乾燥時間は温度上昇段階約5分を含み、約20分に設定し得る。
【0055】
一方、前記高吸水性樹脂の製造方法には前述した段階により形成された含水ゲル状重合体を乾燥する段階が含まれる。
【0056】
ここで、必要に応じて前記乾燥段階の効率を上げるために、前記乾燥前に前記含水ゲル状重合体を粉砕(粗粉砕)する段階をさらに経る。
【0057】
非制限的な例として、前記粗粉砕に利用可能な粉砕機としては竪型粉砕機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、ロータリーカッターミル(Rotary cutter mill)、カッターミル(Cutter mill)、ディスクミル(Disc mill)、シュレッドクラッシャー(Shred crusher)、クラッシャー(Crusher)、チョッパー(chopper)、ディスクカッター(Disc cutter)等を例に挙げられる。
【0058】
この時、前記粗粉砕は前記含水ゲル状重合体の粒径が約2mm~約10mmになるように行われる。すなわち、乾燥効率の増大のために前記含水ゲル状重合体は10mm以下の粒子で粉砕されることが好ましい。しかし、過度な粉砕時粒子間の凝集現象が発生し得るので、前記含水ゲル状重合体は約2mm以上の粒子で粉砕されることが好ましい。
【0059】
そして、このように含水ゲル状重合体の乾燥段階前に粗粉砕段階を経る場合、重合体は含水率が高い状態であるため粉砕機の表面に重合体がくっ付く現象が現れる。このような現象を最小化するために、前記粗粉砕段階には、必要に応じてスチーム、水、界面活性剤、クレイ(Clay)やシリカ(Silica)などの微粉凝集防止剤;過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素、およびアスコルビン酸などの熱重合開始剤、エポキシ系架橋剤、ジオール(diol)類架橋剤、2官能基または3官能基以上の多官能基のアクリレートを含む架橋剤、水酸化基を含む1官能基の化合物などの架橋剤が添加され得る。
【0060】
一方、上記の粗粉砕あるいは重合直後の含水ゲル状重合体に対する乾燥は約120℃~約250℃、または約150℃~約200℃、または約160℃~約180℃の温度下で行われ得る(この時、前記温度は乾燥のために供給される熱媒体の温度または乾燥工程で熱媒体および重合体を含む乾燥反応器の内部の温度で定義され得る。)。すなわち、乾燥温度が低くて乾燥時間が長くなる場合、最終樹脂の物性が低下し得るが、これを防止するために乾燥温度は約120℃以上であることが好ましい。また、乾燥温度が必要以上に高い場合、含水ゲル状重合体の表面のみ乾燥されて後述する粉砕工程で微粉の発生が多くなり、最終樹脂の物性が低下し得るが、これを防止するためには乾燥温度が約250℃以下であることが好ましい。
【0061】
この時、前記乾燥段階での乾燥時間は特に限定されないが、工程効率などを考慮して前記乾燥温度下で約20分~約90分に調整され得る。
【0062】
そして、前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル状重合体の乾燥工程で通常用いられる方法であればその構成は限定なしに適用可能である。具体的には、前記乾燥段階は、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法が適用され得る。
【0063】
このような方法で乾燥された重合体は、約0.1重量%~約10重量%、好ましくは約0.1重量%~約5重量%、さらに好ましくは約0.1重量%~約1重量%の含水率を示し得る。乾燥された重合体の含水率が過度に低い場合、過度な乾燥による製造原価の上昇および架橋重合体の分解(degradation)が起き得るため有利でない。そして、重合体の含水率が過度に高い場合、以後、粉砕や表面架橋工程で工程度が低下し得、不良が発生し得るため好ましくない。
【0064】
その後、乾燥された重合体を粉砕する段階が行われる。前記粉砕段階は乾燥された重合体の表面積に最適化するための段階として、粉砕された重合体の粒径が約150μm~約850μm、具体的には約150μm以上約850μm未満になるように行い得る。
【0065】
この時、粉砕機としてはピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)、ジョグミル(jog mill)など通常のものが用いられ得る。また、最終製品化される高吸水性樹脂の物性を管理するために、前記粉砕段階により得られる重合体粒子において約150μm以上約850μm未満の粒径を有する粒子を選択的に分級する段階がさらに行われ得る。
【0066】
前述した段階により粉砕された重合体、すなわち、ベース樹脂粉末を表面架橋剤によって表面架橋する段階が行われる。
【0067】
前記表面架橋は、表面架橋剤の存在下で前記粉砕された重合体の表面に架橋反応を誘導することによって、より向上した物性を有する高吸水性樹脂を形成させる段階である。このような表面架橋により前記粉砕された重合体粒子の表面には表面架橋層が形成される。
【0068】
前記表面改質は、重合体粒子表面の架橋結合密度を増加させる通常の方法で行われ得、例えば、表面架橋剤を含む溶液と前記粉砕された重合体を混合して架橋反応させる方法で行われ得る。
【0069】
ここで、前記表面架橋剤は、前記重合体が有する官能基と反応可能な化合物として、その構成は特に限定されない。
【0070】
ただし、非制限的な例として、炭素数3~10のアルキレンカーボネート、炭素数2~10の多価アルコール、炭素数1~10のアミノアルコール、炭素数2~10のオキセタン化合物、炭素数2~10のエポキシ化合物、炭素数2~10の多価アミン化合物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム、および塩化鉄からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0071】
このようなアルキレンカーボネート化合物は、具体的には、例えば、1,3-ジオキソラン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,5-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4,4-ジメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-エチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン-2-オン、1,3-ジオキサン-2-オン、4-メチル-1,3-ジオキサン-2-オン、4,6-ジメチル-1,3-ジオキサン-2-オン、1,3-ジオキセタン-2-オンなどが挙げられる。
【0072】
また、本発明の他の一実施例によれば、前記表面架橋剤は、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(MPEGMAA)などを含むアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系単量体;およびアクリル酸および(メタ)アクリル酸を含む(メタ)アクリレート系単量体などの親水性単量体に由来したランダム共重合体である、ポリカルボン酸系化合物をさらに含み得る。
【0073】
このようなポリカルボン酸系化合物の具体的な例は、韓国公開特許第2015-0143167号などに開示されている。
【0074】
この時、前記表面架橋剤の含有量は、架橋剤の種類や反応条件などに応じて適宜調整され得、好ましくは前記粉砕された重合体100重量部に対して約0.001重量部~約5重量部に調整され得る。前記表面架橋剤の含有量が過度に低いと、表面架橋が正しく行われず、最終樹脂の物性が低下し得る。逆に過量の表面架橋剤が用いられる場合、過度な表面架橋反応により樹脂の吸収力がかえって低下し得るため好ましくない。
【0075】
また、前記表面架橋剤を添加する時、追加的に水が添加され得る。このように表面架橋剤と水が共に添加されることによって表面架橋剤の均等な分散が誘導され得、重合体粒子に対する表面架橋剤の浸透の深さをより最適化することができる。このような目的および効果を考慮し、表面架橋剤と共に添加される水の含有量は前記粉砕された重合体100重量部に対して約0.5重量部~約10重量部に調整され得る。
【0076】
一方、本発明における前記表面架橋は、約180℃~約250℃で行われ得る。前記温度で表面架橋を行う場合、表面架橋密度を高められるため好ましい。より好ましくは、前記表面架橋は、約190℃以上であり、約240℃以下、約230℃以下、約220℃以下、約210℃以下、または約200℃以下で行われ得る。
【0077】
また、前記表面架橋反応は、約50分以上行われ得る。すなわち、最小限度の表面架橋反応を誘導しながらも過度な反応時重合体粒子が損傷して物性が低下することを防止するために前述した表面架橋反応の条件で行われる。また、前記反応は、約120分以下、約100分以下、または約60分以下で行われ得る。
【0078】
そして、前記表面架橋以後、前記高吸水性樹脂粒子を、50RH%以上80RH%未満の相対湿度および40℃以上80℃未満の温度条件に供する湿潤段階を行う。
【0079】
前述したように、乾燥された微細粉末形態である高吸水性樹脂は、様々な問題を発生させ得るために、含水率をより高める必要がある。
【0080】
従来には含水率を高めるために、表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子に水やその他添加剤を投入したり、噴霧形態で噴射させてエージング(aging)した後、再び水を蒸発させながら含水率を調整するなどの方法を用いた。
【0081】
しかし、このような方法の場合、含水率を正確に調整することが難しく、水を投入したり噴霧して含水率を高める過程で一部の粒子が再び凝集し、大きい大きさの凝集体粒子が形成され、これにより、吸収関連の物性が大きく低下する問題が発生する。
【0082】
そこで、本発明の高吸水性樹脂の製造方法では、表面架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子を、相対的に高い湿度および温度条件に一定時間供する方法により含水率を高める。
【0083】
上記のように、表面架橋が行われた高吸水性樹脂粒子を特定の条件に供して含水率を高める場合、湿度や時間を調整することによって、高吸水性樹脂粒子の含水率を正確に調整できる長所がある。また、湿潤過程で高吸水性樹脂粒子が水に直接接しないため、凝集体粒子が形成されず、これによる物性低下が発生しない。
【0084】
前記湿潤段階の進行は、約1分~約15分、好ましくは約1分~約10分の範囲で目標とする含水率範囲に応じて異なる。時間が過度に少ない場合、含水率を高めにくい問題があり、時間が過度に長くなる場合、高吸水性樹脂の表面架橋層に問題が発生して吸収関連の物性が低下し得る。
【0085】
そして、上述した含水率調整および表面架橋層の物性維持の観点から、上述した湿潤段階は、約50RH%以上約75RH%以下の相対湿度、さらに好ましくは約60RH%以上約75RH%以下の相対湿度および、約40℃以上約75℃以下の温度条件、さらに好ましくは約60℃以上約75℃以下の温度条件で行われ得る。
【0086】
上述した製造方法により製造された高吸水性樹脂は優れた吸収関連の物性を有し得、従来の高吸水性樹脂に比べて相対的に含水率が高く、微細乾燥粒子である高吸水性樹脂から起因する問題の発生を未然に防止することができる。
【0087】
本発明の一側面による高吸水性樹脂は;
少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤によって重合および架橋されており、表面架橋剤によって改質された表面架橋層を備えた表面架橋樹脂を含み;
含水率が0.1重量%~10重量%である。
【0088】
前記エチレン性不飽和単量体は、製造方法の部分で説明したように、好ましくは、下記化学式1で表される化合物であり得る。
【0089】
[化学式1]
-COOM
【0090】
前記化学式1において、
は不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0091】
好ましくは、前記エチレン性不飽和単量体は、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選ばれる1種以上を含む。
【0092】
ここで、前記エチレン性不飽和単量体は酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したものであり得る。好ましくは前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものが用いられ得る。この時、前記エチレン性不飽和単量体の中和度は約40モル%~約95モル%、または約40モル%~約80モル%、または約45モル%~約75モル%であり得る。前記中和度の範囲は最終物性に応じて調整され得る。しかし、前記中和度が過度に高いと中和した単量体が析出されて重合が円滑に行われにくく、逆に中和度が過度に低いと高分子の吸収力が大きく劣るだけでなく取り扱いが困難な弾性ゴムのような性質を現わし得る。
【0093】
前記含水率は、その使用目的に応じて異にすることができ、これは製造工程で湿潤段階の条件を調整することによって変化させることができるが、0.1重量%以上、好ましくは約0.5重量%以上、さらに好ましくは約1重量%以上であり得、10重量%以下、好ましくは約7重量%以下、さらに好ましくは約5重量%以下であり得る。
【0094】
そして、本発明の一実施例による高吸水性樹脂は、
粒子の粒径が約150μm以上約850μm未満の表面架橋樹脂を含み、粒径が約850μm以上の凝集体の含有量が約1重量%以下、または約0.5重量%以下、または約0.1重量%であるか、実質的に上述した凝集体粒子を殆ど含まなくてもよく、これにより、凝集体の形成に起因する吸収関連の物性の低下を防止することができる。
【0095】
本発明の他の一実施形態による高吸水性樹脂は、EDANA法WSP241.3により測定した遠心分離保持能(CRC)が約20g/g以上、または約25g/g以上、好ましくは約26g/g以上であり得る。保持能の上限値は特に制限されないが、約50g/g以下、好ましくは約40g/g以下、または約35g/g以下、または約30g/g以下であり得る。
【0096】
前記遠心分離保持能(CRC)は、EDANA法WSP241.3により測定したものであり、下記数式1で表され得る:
【0097】
[数1]
CRC(g/g)={[W2(g)-W1(g)]/W0(g)}-1
前記数式1において、
W0(g)は樹脂の重量(g)であり、
W1(g)は樹脂を用いず、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に測定した装置重量(g)であり、
W2(g)は常温に0.9質量%の生理食塩水に樹脂を30分間浸水した後に、遠心分離機を用いて250Gで3分間脱水した後に樹脂を含み測定した装置重量(g)である。
【0098】
そして、本発明の他の一実施例によれば、前記高吸水性樹脂は、0.7psiで加圧吸収能(AUP)が約15g/g以上、好ましくは約19g/g以上、または約20g/g以上であり得る。その上限値は同様に特に制限されないが、約40g/g以下、好ましくは約30g/g以下、または約27g/g以下、または約25g/g以下であり得る。
【0099】
以下、発明の具体的な実施例により、発明の作用および効果をより詳細に述べる。ただし、このような実施例は発明の例示としての提示に過ぎず、これによって発明の権利範囲は定められない 。
【0100】
<実施例>
準備例:高吸水性樹脂の準備
準備例1
アクリル酸100重量部に内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量:約500g/mol)0.6重量部とヘキサンジオールジアクリレート0.05重量部、および光開始剤としてIRGACURE 819 0.01重量部を混合して単量体溶液を製造した。次いで、前記単量体溶液を定量ポンプで連続供給しながら、同時に24重量%水酸化ナトリウム水溶液160重量部を連続的にライン混合して単量体水溶液を製造した。この時、中和熱によって前記単量体水溶液の温度が約72℃以上に上昇したことを確認した後、温度が40℃に冷却されるまで待った。
【0101】
温度が40℃に冷却された時、前記単量体水溶液に発泡剤である固体相の重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)0.1重量部を添加し、同時に2重量%過硫酸ナトリウム水溶液6重量部を添加した。
【0102】
前記溶液を光照射装置が上部に取り付けられ、内部が80℃に予熱された正方形重合器内に設けられたVat形態のトレー(tray,横15cm、縦15cm)に注いで光照射を行って光開始した。光照射後約25秒後に表面からゲルが発生して50秒程度後に発泡と同時に重合反応が起きることを確認し、3分間追加で反応させてシート形態の含水ゲル重合体を得た。
【0103】
前記段階1で得た前記シート形態の含水ゲル重合体を横3cm、縦3cmの大きさに切った後、円筒形粉砕機の内部に取り付けられたスクリュー型圧縮機を用いて前記含水ゲルを複数の穴が形成された多孔板に押し出しながら粉砕(chopping)した。
【0104】
次いで、粉砕された含水ゲル重合体を上下に風量転移が可能な乾燥器で乾燥させた。乾燥された粉の含水量が約2%以下になるように180℃の熱風(hot air)を15分間下方から上方に流れるようにし、再び15分間上方から下方に流れるようにして前記含水ゲル重合体を均一に乾燥させた。
【0105】
その後乾燥された重合体を粉砕機で粉砕した後分級して150μm以上850μm未満大きさのベース樹脂を得た後、ベース樹脂100重量部を、水4重量部、エチレンカーボネート1重量部、無機物(直径10μm以内の大きさを有するSiO)0.1重量部を混合した架橋剤溶液と混合した後180℃で40分間表面架橋反応させた。そして、得られた生成物を冷却させた後分級して粒径が150~850μmの表面架橋された高吸水性樹脂粒子を得た。
【0106】
準備例2
アクリル酸100重量部に内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量:約500g/mol)0.4重量部とAMA(allyl methacrylate)0.02重量部および光開始剤としてIRGACURE 819 0.01重量部を混合して単量体溶液を製造した。
【0107】
残りの過程は準備例1と同様の方法でベース樹脂を製造した後、前記ベース樹脂100重量部に対してエチレンカーボネート1重量部、プロピレンカーボネート1重量部、水4.5重量部、無機物(直径200~380μmのSiO)0.1重量部を混合して190℃で50分間表面架橋反応させた。そして、得られた生成物を冷却させた後分級して粒径が150~850μmの表面架橋された高吸水性樹脂粒子を得た。
【0108】
準備例3
アクリル酸100重量部に内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量:約500g/mol)0.5重量部とAMA(allyl methacrylate)0.02重量部および光開始剤としてIRGACURE 819 0.01重量部を混合して単量体溶液を製造した。
【0109】
残りの過程は準備例1と同様の方法でベース樹脂を製造した後、前記ベース樹脂100重量部に対してエチレンカーボネート1重量部、プロピレンカーボネート1重量部、水5重量部、無機物(直径10μm以内の大きさを有するSiO)0.1重量部を混合して190℃で50分間表面架橋反応させた。そして、得られた生成物を冷却させた後分級して粒径が150~850μmの表面架橋された高吸水性樹脂粒子を得た。
【0110】
含水率を高めた高吸水性樹脂の製造
前記準備例の高吸水性樹脂各100gを、下記表1に整理した条件で予熱した恒温恒湿器内に入れて高温多湿の環境に供することによって含水率を増加させた。
【0111】
ただし、比較例5-1ないし5-3の場合、高吸水性樹脂各100gを、下記表2に整理した量の水をスプレータイプの噴霧器を用いて噴霧した。
【0112】
実験例:各高吸水性樹脂の物性測定
凝集体の含有量
上記のように含水率を高めた高吸水性樹脂を再び分級して850μm以上の直径を有する凝集体を選び出し、高吸水性樹脂100g当たりの凝集体の含有量(g)を測定した。
【0113】
含水率
前記準備例、実施例、および比較例の各高吸水性樹脂を、アルミニウム皿にそれぞれ5gずつ載せた後、140℃の条件で10分間乾燥して再び質量を測定し、減少した質量を水の量とみなし、含水率(重量%)を計算した。
【0114】
保持能(CRC,Centrifugal Retention Capacity)
保持能の測定はEDANA法WSP241.3を基準とした。準備された高吸水性樹脂試料0.2gをティーバッグに入れて0.9%塩水溶液に30分間沈殿する。その後250G(gravity)の遠心力で3分間脱水した後塩水溶液が吸収された量を測定した。
【0115】
加圧吸収能(AUP,Absorption Under Pressure)
加圧吸収能(AUP)の測定は、EDANA法WSP241.3を基準とした。準備された高吸水性樹脂試料0.9gをEDANAで規定するシリンダに入れてピストンと重りで0.7psiの圧力を加える。後に0.9%塩水溶液を60分間吸収した量を測定した。
【0116】
加圧吸収能(AUL,Absorption Under Load)
加圧吸収能(AUL)は300~600μmで分級した高吸水性樹脂試料0.16gをシリンダに入れてピストンと重りで0.9psiの圧力を加えた後に0.9%塩水溶液を60分間吸収した量を測定する方式で測定した。
【0117】
生理食塩水の流れ誘導性(SFC:Saline Flow Conductivity)
米国特許公開番号第2009-0131255号のcolumn 16の[0184]~[0189]に開示された方法に従い測定した。
【0118】
ゲルベッド透過率(GBP:Gel Bed Permeability)
韓国特許出願番号第10-2014-7018005号に記載された方法に従い測定した。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
前記表3を参照すると、本発明の一実施例による高吸水性樹脂は、湿潤過程を経て含水率が効果的に増加しながらも、凝集体が発生しないことを明確に確認することができる。