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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】清涼感に優れた織編物
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/47 20210101AFI20220426BHJP
   D03D 15/40 20210101ALI20220426BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20220426BHJP
   D04B 21/16 20060101ALI20220426BHJP
   D02G 3/04 20060101ALI20220426BHJP
   D03D 15/208 20210101ALI20220426BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20220426BHJP
【FI】
D03D15/47
D03D15/40
D04B1/16
D04B21/16
D02G3/04
D03D15/208
D03D15/283
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2017086567
(22)【出願日】2017-04-25
(65)【公開番号】P2018184675
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2019-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 篤
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-070310(JP,A)
【文献】特開2009-228198(JP,A)
【文献】特開2001-316951(JP,A)
【文献】特開2008-150737(JP,A)
【文献】特開2009-280922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D1/00-27/18
D04B1/00-1/28
21/00-21/20
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
A41D31/00-31/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルマルチフィラメントと、セルロース系マルチフィラメントとが合撚された複合糸を含み、前記合撚の撚り係数が22000~29000であり、経方向及び緯方向の摩擦係数が0.15~0.25であり、前記ポリエステルマルチフィラメントが仮撚加工糸である織編物。
【請求項2】
ポリエステルマルチフィラメントと、セルロース系マルチフィラメントとが合撚された複合糸を含み、前記合撚の撚り係数が22000~29000であり、経方向及び緯方向の摩擦係数が0.15~0.25であり、前記ポリエステルマルチフィラメントの総繊度が30~50dtexである織編物。
【請求項3】
前記複合糸におけるセルロース系マルチフィラメントの混率が60~80質量%である請求項1または2に記載の織編物。
【請求項4】
前記ポリエステルマルチフィラメントの総繊度が30~84dtexである請求項1に記載の織編物。
【請求項5】
前記ポリエステルマルチフィラメントの単繊維繊度が3dtex以下であり、前記セルロース系マルチフィラメントの単繊維繊度が0.5~5dtexである請求項1~4のいずれか一項に記載の織編物。
【請求項6】
ドレープ係数が、0.20~0.35である請求項1~5のいずれか一項に記載の織編物。
【請求項7】
経糸の織密度が150~250本/25.4mm、緯糸の織密度が90~150本/25.4mmの織物である請求項1~6のいずれか一項に記載の織編物。
【請求項8】
撚り方向がS方向の複合糸と撚り方向がZ方向の複合糸を交互に含む請求項1~7のいずれか一項に記載の織編物。
【請求項9】
前記ポリエステルマルチフィラメントが仮撚加工糸である請求項に記載の織編物。
【請求項10】
前記仮撚り加工糸の仮撚り方向と複合糸の撚り方向が逆である複合糸を含む請求項9に記載の織編物。
【請求項11】
前記織物の組織が二重織または朱子織である請求項7~10のいずれか一項に記載の織編物。
【請求項12】
ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸とセルロース系マルチフィラメントとを撚り係数が22000~29000で合撚した複合糸を使用し、経方向及び緯方向の摩擦係数が0.15~0.25の織編物とする織編物の製造方法。
【請求項13】
前記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚方向と、前記複合糸の撚糸方向が逆である複合糸を含む請求項12に記載の織編物の製造方法。
【請求項14】
前記複合糸におけるセルロース系マルチフィラメントの含有率が50~80質量%である請求項12または13に記載の織編物の製造方法。
【請求項15】
前記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸の仮撚係数が15000~25000である請求項12~14のいずれか一項に記載の織編物の製造方法。
【請求項16】
前記合撚した複合糸の撚り方向がS方向とZ方向の2種類があり、S方向とZ方向の複合糸を交互に配する請求項12~15のいずれか一項に記載の織編物の製造方法。
【請求項17】
前記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸の捲縮率が5~20%である請求項12~16のいずれか一項に記載の織編物の製造方法。
【請求項18】
織編物の組織が二重織または朱子織である請求項12~17のいずれか一項に記載の織編物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊細なシャリ感と膨らみ感を持つ清涼感に優れた織編物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セルロース系繊維とポリエステル繊維からなる複合糸を含む、両者の優れた特徴を兼ね備えた織編物が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリエステル系マルチフィラメントとアセテートフィラメントの複合糸からなる布帛が記載されている。しかしこの方法では、ドライ感と膨らみ感は得られるが、より清涼感に適したシャリ感までは得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-138448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこの問題を解決するものであり、セルロース系マルチフィラメントのもつさわやかな質感と、撚り戻り解撚トルクの大きいポリエステルマルチフィラメント糸による、適度なふくらみ感とシャリ感に優れた清涼感を有する複合繊維布帛を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.ポリエステルマルチフィラメントと、セルロース系マルチフィラメントとが合撚された複合糸を含み、経方向及び緯方向の摩擦係数が0.15~0.25である織編物。
2.前記複合糸におけるセルロース系マルチフィラメントの混率が50~80質量%である1に記載の織編物。
3.前記ポリエステルマルチフィラメントの総繊度が30~84dtexである1または2に記載の織編物。
4.前記ポリエステルマルチフィラメントの単繊維繊度が3dtex以下である1~3のいずれかに記載の織編物。
5.前記セルロース系マルチフィラメントの単繊維繊度が0.5~5dtexである1~のいずれかに記載の織編物。
6.ドレープ係数が、0.20~0.35である1~5のいずれかに記載の織編物。
7.経糸の織密度が150~250本/25.4mm、緯糸の織密度が90~150本/25.4mmの織物である1~6のいずれかに記載の織編物。
8.撚り方向がS方向の複合糸と撚り方向がZ方向の複合糸を交互に含む1~7のいずれかに記載の織編物。
9.前記ポリエステルマルチフィラメントが仮撚加工糸である1~8のいずれかに記載の織編物。
10.前記仮撚り加工糸の仮撚り方向と複合糸の撚り方向が逆である複合糸を含む9に記載の織編物。
11.前記織物の組織が二重織または朱子織である7~10のいずれかに記載の織編物。
12.ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸とセルロース系マルチフィラメントを撚り係数が20000~29000で合撚した複合糸を使用した織編物の製造方法。
13.前記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚方向と、前記複合糸の撚糸方向が逆である12に記載の織編物の製造方法。
14.前記複合糸に対するセルロース系マルチフィラメントの含有率が50~80質量%である12または13に記載の織編物の製造方法。
15.前記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸の仮撚係数が15000~25000である12~14のいずれかに記載の織編物の製造方法。
16.前記合撚した複合糸の撚り方向がS方向とZ方向の2種類があり、S方向とZ方向の複合糸を交互に配する13~15のいずれかに記載の織編物の製造方法。
17.前記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸の捲縮率が5~20%である12~16のいずれかに記載の織編物の製造方法。
18.織編物の組織が二重織または朱子織である請求項12~17のいずれか一項に記載の織編物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の織編物は、適度なふくらみ感とシャリ感に優れた清涼感を有する複合繊維布帛が得られる効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施の形態について具体的に説明する。
本発明の織編物は、ポリエステルマルチフィラメントと、セルロース系マルチフィラメントとが合撚された複合糸を含み、経方向及び緯方向の摩擦係数が0.15~0.25である。
ポリエスエルマルチフィラメントと、セルロース系マルチフィラメントとが合撚された複合糸を使用することで、膨らみ感とセルロース系特有のさらっとした質感が得られ、経方向及び緯方向の摩擦係数が0.15以上であれば、適度なシャリ感が得られ、0.25以下であることで、優れた清涼感が得られる。
この観点から、経方向及び緯方向の摩擦係数は0.18~0.23がより好ましく、0.19~0.21がさらに好ましい。
【0009】
本発明におけるセルロース系フィラメント糸とは、セルロースを原料として、再生或いは半合成された繊維のフィラメント糸であればよく、再生繊維としては例えばビスコースレーヨン、キュプラ等が、半合成繊維としては例えばセルロースジアセテート繊維、セルローストリアセテート繊維等が挙げられるが、その製法や種類を特に限定するものではない。また、単糸の断面形状、表面形状、艶、繊度等を特に限定するものではなく、得ようとする織物の表現を考慮して任意に選定すればよい。
【0010】
本発明の織編物は、前記複合糸におけるセルロース系マルチフィラメントの混率が50~80質量%であることが好ましい。
前記複合糸におけるセルロース系マルチフィラメントの混率が50質量%以上であれば、セルロース系マルチフィラメントによるさわやかな質感が得られ易く、80質量%以下であれば、複合糸の解撚トルクによる膨らみ感が得られる。
これらの効果から、前記複合糸におけるセルロース系マルチフィラメントの混率は、60~75質量%がより好ましい。
【0011】
なお、前記複合糸におけるセルロース系マルチフィラメントの混率(質量%)は、(セルロース系マルチフィラメントの総繊度/複合糸の総繊度)×100で算出する。
【0012】
本発明の織編物は、前記ポリエステルマルチフィラメントの総繊度が30~84dtexであることが好ましい。
前記ポリエステルマルチフィラメントの総繊度が30dtex以上であれば、織編物の膨らみ感が得られ易く、84dtex以下であれば、トータル繊度が太くなり過ぎず衣料用に適した繊度となり好適である。
これらの観点から、前記ポリエステルマルチフィラメントの総繊度は、60dtex以下がより好ましく、50dtex以下がさらに好ましい。
【0013】
本発明の織編物は、前記ポリエステルマルチフィラメントの単繊維繊度が3dtex以下であることが好ましい。
前記ポリエステルマルチフィラメントの単繊維繊度が3dtex以下であれば、膨らみ感のある風合いが得られ易い。
この観点から、前記ポリエステルマルチフィラメントの単繊維繊度は、2.5dtex以下がより好ましく、2dtex以下がさらに好ましい。
【0014】
本発明の織編物は、前記セルロース系マルチフィラメントの単繊維繊度が0.5~5dtexであることが好ましい。
前記セルロース系マルチフィラメントの単繊維繊度が0.5dtex以上であれば、清涼感が得られ易く、5dtex以下であれば、膨らみ感があるので好ましい。
【0015】
本発明の織編物は、ドレープ係数が、0.20~0.35であることが好ましい。
前記ドレープ係数が0.20以上であれば、立体的なシルエットであるため好ましく、0.35以下であれば適度な落ち感のあるシルエットになるため好ましい。
これらの観点から、前記レープ係数は、0.23~0.34がより好ましく、0.25~0.33がさらに好ましい。
【0016】
本発明の織編物は、経糸の織密度が150~250本/25.4mm、緯糸の織密度が90~150本/25.4mmの織物であることが好ましい。
経糸の織密度が150本/25.4mm以上、緯糸の織密度が90本/25.4mm以上の織物とすることで、適度なハリ感が得られ、経糸の織密度が250本/25.4mm以下、緯糸の織密度が150本/25.4mm以下であることで、膨らみが得られ易い。
【0017】
本発明の織編物は、撚り方向がS方向の複合糸と撚り方向がZ方向の複合糸を交互に含むことが好ましい。
撚り方向がS方向の複合糸と撚り方向がZ方向の複合糸を交互に含むことで、膨らみ感や斜行の改善といった効果が得られ易い。
撚り方向がS方向であることを「S撚り」、撚り方向がZ方向であることを「Z撚り」と言う場合がある。
【0018】
本発明の織編物は、前記ポリエステルマルチフィラメントが仮撚加工糸であることが好ましい。
前記ポリエステルマルチフィラメントが仮撚加工糸であることで膨らみ感が得られ易い。
【0019】
本発明の織編物は、前記仮撚加工糸の仮撚り方向と複合糸の撚り方向が同じで複合糸を含むことが好ましい。
前記仮撚加工糸の仮撚り方向と複合糸の撚り方向が同じである複合糸を含むことで、適度なシャリ感を得られ易くなる。
【0020】
本発明の織編物は、前記織物の組織が二重織または朱子織であることが好ましい。
前記織物の組織が二重織または朱子織であることで、清涼感が得られ易くなる。二重織は経二重織、緯二重織、平二重織がより好ましい。
【0021】
本発明の織編物の製造方法は、ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸とセルロース系マルチフィラメントとを、撚り係数が20000~29000で合撚した複合糸を使用した織編物の製造方法である。
前記撚り係数を20000以上とすることで、従来にないシャリ感が得られ、29000以下にすることで、膨らみ感を得易くなる。
これらの観点から、前記撚り係数は、21000~28000がより好ましく、22000~26000がさらに好ましい。
合撚する前記撚り係数は、撚り数T(t/m)と総繊度D(dtex)から、撚り係数=T√Dで算出する。
【0022】
本発明の織編物の製造方法は、前記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚方向と、前記複合糸の撚糸方向が逆である複合糸を含むことが好ましい。
記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚方向と、前記複合糸の撚糸方向が逆である複合糸を含むことで、膨らみ感を得ることができやすい。
【0023】
本発明の織編物の製造方法は、前記複合糸におけるセルロース系マルチフィラメントの含有率が50~80質量%であることが好ましい。
前記複合糸におけるセルロース系マルチフィラメントの混率が50質量%以上であれば、セルロース系マルチフィラメントによるさわやかな質感が得られ易く、80質量%以下であれば、複合糸の解撚トルクが十分得られる。
これらの効果から、前記複合糸におけるセルロース系マルチフィラメントの混率は、60~75質量%がより好ましい。
【0024】
本発明の織編物の製造方法は、前記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸の仮撚係数が15000~25000であることが好ましい。
前記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸の仮撚係数が15000以上であれば、膨らみ感が得られ易く、25000以下であれば、清涼感あるシャリ感が得られる。
これらの観点から、前記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸の仮撚係数は17000~23000がより好ましく、18000~22000がさらに好ましい。
なお、仮撚り係数は、撚り数T(t/m)と総繊度D(dtex)から、撚り係数=T√Dで算出する。
【0025】
本発明の織編物の製造方法は、前記合撚した複合糸の撚り方向がS方向とZ方向の2種類があり、S方向とZ方向の複合糸を交互に配することが好ましい。
S方向とZ方向の複合糸を交互に配することで、織編物に適度な膨らみ感が得られるため好ましい。
【0026】
本発明の織編物の製造方法は、前記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸の捲縮率が5~20%であることが好ましい。
前記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸の捲縮率が5%以上であれば、膨らみ感が得られ易すく、20%以下であれば、セルロース系マルチフィラメント糸の清涼感が得られ易い。
これらの観点から、前記ポリエステルマルチフィラメントの仮撚加工糸の捲縮率は、7~18%がより好ましい。
【0027】
本発明の織編物の製造方法は、織編物の組織が二重織または朱子織であることが好ましい。
織編物の組織が二重織または朱子織であることで、清涼感が得られ易くなる。二重織は経二重織、緯二重織、平二重織がより好ましい。
【0028】
さらに本発明では、前記ポリエステルマルチフィラメントの旋回数(沸水処理後)が120以上、190以下であることが好ましい。旋回数(沸水処理後)が120以上であれば、複合糸の撚り戻り解撚トルクによりふくらみ感が得られ易く、ストレッチ性のある織編物になる。旋回数(沸水処理後)が190以下であれば、複合糸の撚り戻り解撚トルクが強くなり過ぎず、染色工程における糸の飛び出しが防止できる。
【0029】
ここで、旋回数(沸水処理前)とは糸の解撚トルクの強さを現す数値であり、JIS-L1095スナール指数A法に基づきポリエステルマルチフィラメント糸長50cmの試料の中央部に8.82mN×繊度(dtex)の荷重を掛け、糸両端を1cm/秒の速度で糸端間を10cmまで接近させる。通常法の場合、初めて旋回し始めた間隔を読み取るが、糸端の移動速度の差によりばらつきが生じやすい。この為糸端を10cmの間隔で固定し、糸の持つ解撚トルクによって糸が旋回し捩れたスナル状態部分の撚り数T(/10cm)を検撚機で測定した。また、旋回数( 沸水処理後)とは、旋回数(沸水処理前)の測定と同様にして糸端を10cmまで接近させ、糸が旋回し捩れたスナル状態部分をクリップで固定し、沸水中で1分間湿熱処理した後のスナル状態部分の撚り数T(/10cm)を検撚機で測定した。
【0030】
また本発明では、撚糸工程の安定化の為、沸水処理前と沸水処理後の旋回数の差が50以上であることが好ましい。沸水処理前後の旋回数差は、染色時に発現する潜在的に有する解撚トルクを示し、撚糸工程等準備工程でのビリつきが少なくなり、染色工程での湿熱下の処理でトルク発現が充分に発揮でき、十分なふくらみ感とストレッチ性が得られる。
【0031】
次に、本発明の複合繊維布帛の製造法の一例を説明する。
【0032】
また本発明のセルロース系フィラメント糸は、その製法や種類を特に限定するものではないが、アセテート繊維がその低屈折率からくる鮮明性、発色性、高級感のある光沢、適度なヤング率、分散染料可染性(カチオン染料可染性を有する品種もある)等を有しており好ましく用いられる。ちなみにジアセテートの公定水分率は約6.5%、トリアセテートは約3.5%であり適度な吸湿性と速乾性を有し、沸水収縮率も約2~3%と少ない。また風合いや光沢の高級感の点からトリアセテートの使用が更に好ましい。
【0033】
これらのポリエステルマルチフィラメント糸とセルロース系マルチフィラメント糸を、ポリエステルマルチフィラメント糸の有する旋回方向と逆方向で合撚し、撚糸セット温度85℃度以下で処理した複合糸を織編し、染色することで、本発明の複合繊維布帛が得られる。
【実施例
【0034】
以下、実施例をあげて本発明を説明する。
【0035】
なお、評価は以下の方法に従った。
【0036】
(摩擦係数)
表面試験機(KES FB-4、カトーテック社製)を使用し、荷重400gで測定した。
【0037】
(ドレープ係数)
JIS1096剛軟度G法に準じて測定した。
【0038】
(捲縮率)
JIS1013伸縮性C法(簡便法)に準じて測定した。
【0039】
(シャリ感、ふくらみ感評価)
得られた複合繊維布帛をハンドリングで評価した。
◎:非常に優れている。
○:優れている。
△:一般レベル
×:劣っている。
【0040】
(実施例1)
ポリエステルマルチフィラメント糸(33デシテックス(以下dtex)/24フィラメント(以下f))を、三菱重工社製LS-2型仮撚機にて以下に示した条件で仮撚加工を行い、仮撚り方向がZ方向とS方向の2種類の仮撚加工糸を得た。
【0041】
仮撚り撚り係数:20000[仮撚り数:3500t/m]
仮撚り方向:Z、S
仮撚り温度:220℃/-(1ヒーター/2ヒーター)
仮撚りオーバーフィード率:+3%
得られたポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸は、旋回数( 沸水処理後)が125、旋回数(沸水処理後)-旋回数(沸水処理前)が115、捲縮率が8%の特性を有するものであった。
【0042】
前記2種類のポリエステルマルチフィラメント仮撚加工糸それぞれと、セルローストリアセテートマルチフィラメント糸(84dtex/20f)とをパーンワインダーで合糸し、ダブルツイスターを使用し、仮撚方向と逆方向にそれぞれ撚係数Kが24800(2300t/m)で撚糸し、80℃×40分で撚止めヒートセットを行ない、S撚りとZ撚りの2種類の複合糸を得た。
【0043】
このようにして得られたS撚りとZ撚りの2種類の複合糸を用い、経糸及び緯糸について、S撚りした複合糸とZ撚りした複合糸を交互に並び立て、経糸規格が115本/25.4mm、緯糸規格が80本/25.4mmの経二重組織を製織し、該織物を精練、リラックス処理した後、温度125℃×時間60分で染色し、巾だしセットを行い、経糸規格175本/25.4mm、緯糸規格100本/25.4mmの染色織物を得た。
【0044】
得られた染色織物は、繊細なシャリ感に加え、しなやかなドレープ性と適度な膨らみ感を有する織物であった。
これらの条件及び物性を表1に示す。
【0045】
(実施例2)
経糸規格を140本/25.4mm、緯糸規格を100本/25.4mmの緯二重組織にした以外は実施例1と同様にして染色まで行い、経糸規格215本/25.4mm、緯糸規格115本/25.4mmの染色織物を得た。
【0046】
得られた染色織物は、繊細なシャリ感に加え、しなやかなドレープ性と適度な膨らみ感を有する織物であった。
これらの条件及び物性を表1に示す。
【0047】
(実施例3)
経糸規格110本/25.4mm、緯糸規格80本/25.4mmのサテン組織とした以外は実施例1と同様に染色加工までを施し、経糸規格160本/25.4mm、緯糸規格100本/25.4mmの染色織物を得た。
【0048】
得られた染色織物は、繊細なシャリ感に加え、しなやかなドレープ性と適度な膨らみ感を有する織物であった。
これらの条件及び物性を表1に示す。
【0049】
(実施例4)
経糸にS撚りの複合糸のみ使用し、経糸規格125本/25.4mm、緯糸規格100本/25.4mmの平二重組織にした以外は、実施例1と同様にして染色までを施し、経糸規格185本/25.4mm、緯糸規格125本/25.4mmの染色織物を得た。
【0050】
得られた染色織物は、繊細なシャリ感に加え、しなやかなドレープ性と適度な膨らみ感を有する織物であった。
これらの条件及び物性を表1に示す。
【0051】
(比較例1)
S撚及びZ撚りに、撚り係数が15000(撚り数1400t/m)で撚糸した複合糸を使用し、経糸規格130本/25.4mm、緯糸規格85本/25.4mmの経二重組織にした以外は、実施例1と同様に染色までを施し、経糸規格185本/25.4mm、緯糸規格110本/25.4mmの染色織物を得た。
【0052】
得られた染色織物は、適度なドライ感と膨らみ感を有する織物であったが、シャリ感は不足した織物であった。
これらの条件及び物性を表2に示す。
【0053】
(比較例2)
経糸において、S撚りに、撚り係数が15000(撚り数1400t/m)で撚糸した複合糸のみを使用し、経糸規格155本/25.4mm、緯糸規格100本/25.4mmの経二重組織にした以外は、実施例1と同様に染色までを施し、経糸規格220本/25.4mm、緯糸規格123本/25.4mmの染色織物を得た。
【0054】
得られた染色織物は、適度なドライ感と膨らみ感を有する織物であったが、シャリ感は不足した織物であった。
これらの条件及び物性を表2に示す。
【0055】
(比較例3)
複合糸の撚り係数を17300(撚り数1600t/m)にし、経糸規格150本/25.4mm、緯糸規格95本/25.4mmの平二重組織にした以外は、実施例1と同様に染色までを施し、経糸規格205本/25.4mm、緯糸規格120本/25.4mmの染色織物を得た。
【0056】
得られた染色織物は、適度なドライ感と膨らみ感を有する織物であったが、シャリ感は不足した織物であった。
これらの条件及び物性を表2に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】