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特許7062996チオン酸を含む溶液の保存方法および定量方法、ならびにチオン酸を含む試料溶液およびその作製方法
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  • 特許-チオン酸を含む溶液の保存方法および定量方法、ならびにチオン酸を含む試料溶液およびその作製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】チオン酸を含む溶液の保存方法および定量方法、ならびにチオン酸を含む試料溶液およびその作製方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 17/64 20060101AFI20220426BHJP
   C01B 17/48 20060101ALI20220426BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
C01B17/64 Z
C01B17/48
G01N31/00 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018024015
(22)【出願日】2018-02-14
(65)【公開番号】P2018168054
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2017064149
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】淵本 幸宏
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-133921(JP,A)
【文献】特表2004-509232(JP,A)
【文献】特開2013-003113(JP,A)
【文献】特開2015-048524(JP,A)
【文献】特開2015-081371(JP,A)
【文献】特表2012-528243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 17/64
C01B 17/48
G01N 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離塩素および次亜塩素酸とともにチオン酸を含む溶液の保存方法であって、
前記溶液に、前記次亜塩素酸が配位可能な遷移金属イオンを含有させ、かつ前記遷移金属イオンの濃度を飽和濃度とするとともに、前記溶液のpHを2以上、前記遷移金属イオンが水酸化物を形成しないようなpH値以下に調整する、チオン酸を含む溶液の保存方法。
【請求項2】
前記遷移金属イオンがニッケルイオンであって、
前記溶液のpHを2以上4未満に調整する、請求項に記載のチオン酸を含む溶液の保存方法。
【請求項3】
チオン酸、遊離塩素および次亜塩素酸を含む溶液中のチオン酸を定量する定量方法であって、
前記溶液に前記次亜塩素酸と配位可能な遷移金属イオンを含有させ、かつ前記遷移金属イオンの濃度を飽和濃度とするとともに、前記溶液のpHを2以上、前記遷移金属イオンが水酸化物を形成しないようなpH値以下に調整して試料溶液を作製する作製工程と、
前記試料溶液に含まれる前記チオン酸を定量する定量工程と、を有するチオン酸の定量方法。
【請求項4】
チオン酸、遊離塩素および次亜塩素酸を含む溶液から試料溶液を作製する作製方法であって、
前記溶液に前記次亜塩素酸と配位可能な遷移金属イオンを含有させ、かつ前記遷移金属イオンの濃度を飽和濃度とするとともに、前記溶液のpHを2以上、前記遷移金属イオンが水酸化物を形成しないようなpH値以下に調整する、チオン酸を含む試料溶液の作製方法。
【請求項5】
チオン酸、遊離塩素および次亜塩素酸を含む溶液から作製される試料溶液であって、
前記溶液と、前記次亜塩素酸と配位可能な遷移金属イオンと、を含有し、
前記溶液のpHが2以上、前記遷移金属イオンが水酸化物を形成しないようなpH値以下であり、
前記遷移金属イオンの濃度が飽和濃度であり、
8時間経過後の前記チオン酸の減少率が10%未満である、チオン酸を含む試料溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオン酸を含む溶液の保存方法および定量方法、ならびにチオン酸を含む試料溶液およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コバルトやニッケルなどの非鉄金属は、例えば硫化物などを含む原料に塩素ガスを吹き込み塩素浸出し、浸出された金属イオンを電界採取して製錬することで得られる(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
この製錬工程では、工程管理の一環としてチオン酸(例えばチオ硫酸や亜硫酸など)の濃度を把握することが重要となっている。このチオン酸の定量方法としては、例えば硫酸酸性下で過剰量のヨウ化カリウムを添加した後、ヨウ素酸カリウム規定液を用いるヨードメトリー法などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-081371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、非鉄製錬過程で採取される溶液(浸出液)では、pHが低いため、チオン酸を精度よく定量することが困難となっている。チオン酸は中性からアルカリ性の溶液中では安定的に存在できる一方、酸性溶液中では時間の経過とともに分解して消費されてしまうためである。しかも、非鉄製錬過程で採取される溶液のように溶液に塩素ガスが吹き込まれて遊離酸素(Cl)が存在する場合、チオン酸が還元剤として作用し分解が促進されることから、より早く消費されてしまう。
【0006】
一方、チオン酸を安定化させるために溶液のpHを例えば中性からアルカリ性の範囲まで高めることが考えられる。この場合、遊離塩素と平衡状態にある次亜塩素酸(HClO)が増えて遊離塩素が減ることで、遊離塩素による分解が抑制されチオン酸を安定化することができる。しかし、溶液のpHを弱酸性よりも高くすると、非鉄金属イオンが金属塩として沈殿析出するようになり、それに伴ってチオン酸が共沈してしまう。そのため、チオン酸を安定化させたとしても精度よく定量することが困難となっている。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、溶液中で遊離塩素と共存するチオン酸を長期的に安定した状態で保存するとともに精度よく定量する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一般に、遊離塩素は、下記式(1)に示すように溶液中で一部が分解して次亜塩素酸となり、遊離塩素と次亜塩素酸とが平衡状態となっている。この溶液のpHが低くなると、平衡は遊離塩素が生成する方向に偏るのに対して、pHが高くなると、遊離塩素が分解する方向に偏る。具体的には、溶液のpHが高くなる場合、遊離塩素の反応平衡により主に次亜塩素酸が存在することになる。そして、pHが低くなるにつれて、遊離塩素の生成が進み、pHが強酸性の範囲まで低くなると主に遊離塩素となる。そのため、溶液のpHが低くなると、遊離塩素によりチオン酸が分解して消費されやすくなる。
Cl+HO ⇔ HCl+HClO・・・(1)
【0009】
本発明者は、溶液のpHを低くしながらも遊離塩素によるチオン酸の分解を抑制するには、遊離塩素と次亜塩素酸との平衡を、溶液のpHを低くした場合であっても遊離塩素が生成する方向に偏らないようにすればよいと考え、このような方法について検討を行った。その結果、溶液に、次亜塩素酸が配位可能な遷移金属イオンを含有させるとよいことを見出した。遷移金属イオンは溶液中で次亜塩素酸を配位させることで、平衡を、遊離塩素を分解して次亜塩素酸を生成させる方向に偏らせることができる。このように平衡を偏らせることで、溶液のpHを低くしながらも、遊離塩素の生成を抑制することができる。すなわち、溶液のpHを低くすると遊離塩素の生成が進みやすくなるが、遷移金属イオンを溶液に含有させて平衡を移動させることで遊離塩素の生成を抑制し、主に次亜塩素酸の形態で存在させることができる。本発明はこのような知見に基づいて成されたものである。
【0010】
すなわち、本発明の第1の態様は、
遊離塩素および次亜塩素酸とともにチオン酸を含む溶液の保存方法であって、
前記溶液に、前記次亜塩素酸が配位可能な遷移金属イオンを含有させるとともに、前記溶液のpHを2以上、前記遷移金属イオンが水酸化物を形成しないようなpH値以下に調整する、チオン酸を含む溶液の保存方法が提供される。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様のチオン酸を含む溶液の保存方法において、
前記遷移金属イオンの濃度を飽和濃度以下とする。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様のチオン酸を含む溶液の保存方法において、
前記遷移金属イオンがニッケルイオンであって、
前記溶液のpHを2以上4未満に調整する。
【0013】
本発明の第4の態様は、
チオン酸、遊離塩素および次亜塩素酸を含む溶液中のチオン酸を定量する定量方法であって、
前記溶液に前記次亜塩素酸と配位可能な遷移金属イオンを含有させるとともに前記溶液のpHを2以上、前記遷移金属イオンが水酸化物を形成しないようなpH値以下に調整して試料溶液を作製する作製工程と、
前記試料溶液に含まれる前記チオン酸を定量する定量工程と、を有するチオン酸の定量方法が提供される。
【0014】
本発明の第5の態様は、
チオン酸、遊離塩素および次亜塩素酸を含む溶液から試料溶液を作製する作製方法であって、
前記溶液に前記次亜塩素酸と配位可能な遷移金属イオンを含有させるとともに、前記溶液のpHを2以上、前記遷移金属イオンが水酸化物を形成しないようなpH値以下に調整する、チオン酸を含む試料溶液の作製方法が提供される。
【0015】
本発明の第6の態様は、
チオン酸、遊離塩素および次亜塩素酸を含む溶液から作製される試料溶液であって、
前記溶液と、前記次亜塩素酸と配位可能な遷移金属イオンと、を含有し、
前記溶液のpHが2以上、前記遷移金属イオンが水酸化物を形成しないようなpH値以下であり、
8時間経過後の前記チオン酸の減少率が10%未満である、チオン酸を含む試料溶液が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溶液中で遊離塩素と共存するチオン酸を長期的に安定した状態で保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、pHの違いによるチオン酸の経時変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<本発明の一実施形態>
以下、本発明の一実施形態にかかるチオン酸の定量方法について説明する。
【0019】
(準備工程)
まず、定量対象となる溶液を準備する。溶液は、チオン酸、遊離塩素、次亜塩素酸および遷移金属イオンを含む。このような溶液としては、例えば非鉄製錬過程で採取される浸出液などを用いることができる。浸出液としては、例えば遷移金属を含む硫化物から酸性溶液で遷移金属を浸出させた溶液に塩素ガスを吹き込みさらに浸出を行った浸出液を用いることができる。また、浸出液のように遷移金属イオンを含む溶液でない場合は遷移金属イオンを添加するとよい。
【0020】
溶液において、チオン酸は例えば亜硫酸イオンやチオ硫酸イオンなどである。遷移金属イオンは、例えばコバルトやニッケルなど次亜塩素酸を配位可能なイオンである。なお、本明細書において、遷移金属イオンは溶液中で2分子以上が会合した会合体も含む。
【0021】
溶液において、遷移金属イオンの濃度は特に限定されないが、遊離塩素と次亜塩素酸との平衡を、遊離塩素が生成しにくい方向に偏らせる観点からは高くするほどよい。具体的には、遷移金属イオンの濃度を飽和濃度以下とすることが好ましい。
【0022】
(作製工程)
続いて、定量対象である溶液から定量用の試料溶液を作製する。このとき、溶液中のチオン酸を長期的に安定して保存するために溶液のpHを2以上であって、遷移金属イオンが水酸化物を形成しないようなpH値以下の範囲に調整する。本実施形態では、次亜塩素酸が配位可能な遷移金属イオンを溶液に含有させているので、上式(1)において遊離塩素が分解して次亜塩素酸が生成する方向に平衡を偏らせている。これにより、pHを酸性側の低い値に調整した場合であっても遊離塩素の生成を抑制でき、遊離塩素によるチオン酸の分解を抑制することができる。pHを2未満とすると、遊離塩素が生成してチオン酸が分解しやすくなり、pHを過度に高くすると、例えば金属イオンが水酸化物を形成して沈殿するときにチオン酸が共沈してしまうため、チオン酸を長期的に安定して保存することができなくなる。チオン酸の共沈や分解をさらに抑制する観点からは、遷移金属イオンが水酸化物を形成しないようなpH値以下とすることが好ましい。
【0023】
ここで、遷移金属イオンが水酸化物を形成しないようなpH値について説明する。このpH値は、遷移金属イオンの濃度と水酸化物との溶解度積に基づいて求められる。例えば、遷移金属イオンがニッケルイオンである場合、その溶解度積は下記式(2)で示される。式(2)中、nは0~4であり、溶解度積Kはnの値によって異なる値となる。ニッケルイオンの場合、水酸化物が複数の異なる溶存形態をとり得るので、水酸化物の溶存形態に応じた溶解度積Kとニッケルイオンの濃度とからpH値が求められる。ニッケルイオンの場合、水酸化物を形成しないようなpH値は、概ね4未満となる。つまり、ニッケルイオンの場合、溶液のpHを2以上4未満に調整することが好ましい。なお、水酸化物を形成しないようなpH値は遷移金属イオンの種類によって異なるが、その他の遷移金属イオン(例えばコバルトなど)についてもニッケルイオンと同様に、溶解度積と濃度とからpH値を算出するとよい。
=[Ni(OH) 2-n]・[H]/[Ni2+]・・・(2)
【0024】
なお、pHの調整方法は特に限定されず、例えば溶液が浸出液のような酸性溶液であれば水酸化ナトリウムなどを添加して中和するとよい。
【0025】
作製された試料溶液は、主に次亜塩素酸が生成しており、遊離塩素はチオン酸を大きく分解させないような低い濃度となっている。そのため、試料溶液は、チオン酸の分解速度が遅く、チオン酸を長期的に安定して保存することができ、チオン酸の保存安定性に優れている。すなわち、試料溶液は、pHを調整した段階でのチオン酸の濃度を正確に反映している。具体的には、試料溶液は、8時間経過した後のチオン酸の減少率が10%未満である。このように、試料溶液は、チオン酸、遊離塩素、次亜塩素酸および遷移金属イオンを含み、そのpHが酸性側の低い値であっても、チオン酸の保存安定性に優れている。例えば、遷移金属イオンがニッケルイオンである場合、pHが2以上4未満の範囲であっても、チオン酸を安定して保存することができる。
【0026】
(定量工程)
続いて、得られた試料溶液に含まれるチオン酸を定量する。試料溶液ではチオン酸の分解が抑制されているので、pHを調整した段階での溶液に含まれるチオン酸を精度よく定量することができる。なお、定量は、例えばヨードメトリー法など従来公知の方法で行うことができる。
【0027】
以上により、遊離塩素および次亜塩素酸とともに含まれるチオン酸を長期的に安定して保存するとともに、その量を精度よく定量することができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【実施例
【0029】
以下、本発明をさらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0030】
(実施例1)
まず、非鉄製錬で採取される浸出液を模擬した溶液を準備した。本実施例では、ニッケル(Ni)イオンを飽和濃度で、遊離塩素および次亜塩素酸を所定濃度で含有するとともに塩酸および硫酸を含む水溶液にチオン酸としてチオ硫酸ナトリウムを溶解させて、浸出液を模擬した溶液を調製した。
【0031】
本実施例では、調製した溶液から一定量を採取するとともに水酸化ナトリウムを添加して中和することでpHを調整し、試料溶液を作製した。本実施例では、pHが2となるように水酸化ナトリウムを添加した。なお、水酸化ナトリウムとしては64重量体積%のものを用いた。
【0032】
作製した試料溶液について、チオン酸の保存安定性を評価するため、所定時間が経過するごとにチオン酸を定量し、チオン酸の経時変化を測定した。チオン酸の定量は、硫酸酸性下で過剰量のヨウ化カリウムを添加した後、ヨウ素酸カリウム規定液を用いたヨードメトリー法により行った。
【0033】
実施例1での測定結果を図1に示す。図1は、pHの違いによるチオン酸の経時変化を説明するための図であり、横軸に経過時間[h]、縦軸にチオン酸(チオ硫酸ナトリウム)の検出量[mg/L]をとって作成した。図1において、pHを2に調整した場合の経時変化を◆プロット(ひし形プロット)で示す。図1のプロットに示すように、pHを2に調整した実施例1では、8時間経過した後でのチオン酸の減少率が約2%であることが確認された。このことから、チオン酸の減少率を10%未満に抑制でき、チオン酸の保存安定性に優れていることが確認された。すなわち、実施例1の試料溶液はpHを調整した時点でのチオン酸の量を正確に反映していることが確認された。
【0034】
(実施例2)
実施例2では、実施例1で調製した溶液から一定量を採取するとともに、pHが3となるように水酸化ナトリウムを添加した以外は、実施例1と同様に試料溶液を作製し、チオン酸の経時変化を測定した。図1において□プロット(四角プロット)に示すように、実施例2は実施例1と同様にチオン酸の保存安定性に優れ正確に定量できることが確認された。
【0035】
(比較例1)
比較例1では、実施例1で調製した溶液から一定量を採取して、水酸化ナトリウムを添加せずにそのままの状態としてpHが1の試料溶液を作製し、実施例1と同様にチオン酸の経時変化を測定した。図1において、pHが1の場合の経時変化を▲プロット(三角プロット)で示す。図1に示すように、比較例1は、試料溶液のpHを1として2未満としたため、時間の経過とともにチオン酸が分解されて減少し、8時間経過した後でのチオン酸の減少率が約40%となることが確認された。このことから、試料溶液に遷移金属イオンを飽和濃度で含有させてもpHを2未満とした場合では、平衡が遊離塩素を生成する方向に大きく偏り、多くの遊離塩素が存在するため、チオン酸の分解が促進されてしまうことが考えられる。
【0036】
以上説明したように、遊離塩素および次亜塩素酸とともにチオン酸を含む溶液において、次亜塩素酸が配位可能な遷移金属イオンを含有させるとともに溶液のpHを2以上、遷移金属イオンが水酸化物を形成しないようなpH値以下に調整することにより、遊離塩素によるチオン酸の分解を抑制し、チオン酸を長期的に安定して保存することができる。
図1