(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】保全シート
(51)【国際特許分類】
E04G 5/00 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
E04G5/00 301G
(21)【出願番号】P 2018131189
(22)【出願日】2018-07-11
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 建一
【審査官】津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3208349(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第101558211(CN,A)
【文献】特開平08-246644(JP,A)
【文献】実開平05-070936(JP,U)
【文献】特開2016-000889(JP,A)
【文献】登録実用新案第3188959(JP,U)
【文献】特開2011-184978(JP,A)
【文献】特開2010-281097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接して並べられた複数枚の足場板の間の隙間を塞ぐ保全シートであって、
柔軟性素材からなる帯状のシート部材であり、
該シート部材の長手方向に間隔をあけて
、手でちぎるための切り目が形成されている
ことを特徴とする保全シート。
【請求項2】
前記シート部材の幅方向両側部において、
該シート部材の長手方向に延び、
かつ該シート部材の表裏両面から凸状に突起した滑止めリブが形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の保全シート。
【請求項3】
前記滑止めリブが、
前記シート部材の両端部のそれぞれにおいて、
最外縁に設けた外側リブと該最外縁から内側へ寄った位置に形成した内側リブとが
互いに平行に形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の保全シート。
【請求項4】
前記シート部材の幅方向両側部において、
外側滑止めリブと内側滑止めリブとで囲まれた部分に、
固縛用孔が形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の保全シート。
【請求項5】
前記柔軟性素材がゴムである
ことを特徴とする請求項1記載の保全シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保全シートに関する。さらに詳しくは、本発明は、建築足場の隙間を塞ぐために使用される保全シートに関する。
【背景技術】
【0002】
図8は建築現場の足場を示している。足場は複数の足場板10とこれを支えるパイプ11,12から構成される。図では2枚の足場板10,10が幅方向に並べた一対が示されているが、実際には、足場板10が長手方向に多数連接された状態で使用される。
【0003】
足場板10を支えるには、縦パイプ11と横パイプ12が用いられる。
縦パイプ11が間隔をあけて垂直に立てられ、複数の縦パイプ11,11間に横パイプ12が渡しかけて金具で固定される。足場板10の短辺の両側にはフックが設けれられていて、このフックが横パイプ12に引掛けられて足場板10が設置される。
足場板10,10が2枚並列に設けられた場合、その長辺間には、隙間gが生じる。この隙間gは縦パイプ11の直径よりやや大きいので、約10cm位となる。
そして、この隙間gから、足場上での作業中に用いられる工具とかボルトやナットなどの小部品が落下する事故が生じていた。
【0004】
足場からの小部品落下を防止するため、特許文献1,2の従来技術がある。
特許文献1の従来技術は、隣接する足場板における短辺間の隙間からの小部品落下を防ぐためのもので、足場板の短辺の両側に設けているフックに隙間埋めプレートが取り付けられるものである。
しかるに、この従来技術では、隣接する足場板の10,10間の長辺間の隙間gを埋めることはできないので、小部品の落下事故を完全に防ぐことはできなかった。
【0005】
特許文献2記載の従来技術は、足場板の長辺間隙間を覆うための隙間プレートが開示されている。この隙間プレートは、隣接する足場板間の長辺側隙間を覆う大きさのプレート本体と、このプレート本体を足場板に固定するための係合手段からなる。
係合手段は、プレート本体の定位置に固定された固定係合部材と、プレート本体の幅方向と移動可能なボルトを含む可動係合部からなり、固定係合部材はプレート本体の下面に溶接で固定され、可動係合部材のボルトを案内するガイド部材もプレート本体の下面に溶接されている(同文献の段落0014)。
プレート本体の足場板への取付けは、ボルトの締付けによって行われる。プレート本体は溶接可能な部材であるため金属製である。
【0006】
上記特許文献2の従来技術によれば、足場板の長辺間の隙間を埋めることはできるが、プレート本体が金属製であることから、重く運搬設置が大変なこと、規格サイズ以外のものには合わせられないこと、隣接する作業床間に段差があるとプレート本体が傾斜してしまい、不安全であるなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-9127号公報
【文献】特開平11-264239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、運搬や設置が容易で、足場板のサイズや隙間の長さに合わせやすく、作業床との間に段差があっても隙間を生じさせない保全シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の保全シートは、隣接して並べられた複数枚の足場板の間の隙間を塞ぐ保全シートであって、柔軟性素材からなる帯状のシート部材であり、該シート部材の長手方向に間隔をあけて、手でちぎるための切り目が形成されていることを特徴とする。
第2発明の保全シートは、第1発明において、前記シート部材の幅方向両側部において、該シート部材の長手方向に延び、かつ該シート部材の表裏両面から凸状に突起した滑止めリブが形成されていることを特徴とする。
第3発明の保全シートは、第2発明において、前記滑止めリブが、前記シート部材の両端部のそれぞれにおいて、最外縁に設けた外側リブと該最外縁から内側へ寄った位置に形成した内側リブとが互いに平行に形成されていることを特徴とする。
第4発明の保全シートは、第3発明において、前記シート部材の幅方向両側部において、外側滑止めリブと内側滑止めリブとで囲まれた部分に、固縛用孔が形成されていることを特徴とする。
第5発明の保全シートは、第1発明において、前記柔軟性素材がゴムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、シート部材が柔軟性を有しているので、巻取ってコンパクトにした状態で運搬ができ、建設現場での取扱いが容易である。また、作業床との間に段差があったとしても、その作業床との間を滑らかにつないで隙間を無くすことができる。さらに、切り目に沿って人手によってちぎることができるので、現場で必隙間長さに合わせた長さ調整が簡単に行える。
第2発明によれば、足場板の上に置いたとき滑止めリブによって保全シートが動かないよう拘束できるので、足場板の間の隙間を塞いだままにできる。このため、小部品の落下事故を確実に防止できる。
第3発明によれば、シート部材の両端部とも、外側リブと内側リブを設けているので、滑止め効果が高く、使用中のズレ動きが生じにくい。また、必要な剛性を確保できるので作業員の足がのっても隙間に落ち込まない。
第4発明によれば、固縛用孔に針金を通してシート部材を足場板に固縛できるので、使用中のズレ落ちを確実に防止できる。
第5発明によれば、シート部材がゴム製できるので、巻取りも容易であり手でちぎることも容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る保全シートAの斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線矢視拡大正面図である。
【
図7】本発明に係る保全シートAの使用状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本実施形態の保全シートAは
図1に示すように、帯状であり、柔軟性のあるシート部材1から構成されている。
シート部材1は長さには制限がなく、後述するように適宜の長さに切って使用される。また、柔軟性のある素材を用いているので、クルクルと巻き取ることが可能であり、巻き取ってコンパクトにした状態で保管したり搬送ができる。そして使用に際しては簡単に巻き戻して平坦に延ばすことができる。
【0013】
柔軟性のある素材としては、とくに制限なくどのような材料を用いてもよいが、ゴムを素材とすることが好ましい。ゴム製であれば、巻き取ったり巻き戻すために必要な柔軟性が得られ、また足場板10の表面との摩擦が生じて勝手にズレ動くことがないからである。しかも、鋼材に比べ格段に軽量となる。さらに、耐久性があるので何度でも繰り返し使用することができる。
【0014】
素材にゴムを用いる場合、エチレン・プロピレンゴムがより好ましい。エチレン・プロピレンゴムは加工性に優れ、安価で入手が容易だからである。
【0015】
シート部材1の幅W(
図2参照)は、
図7に示す隙間gを塞ぎ、かつ隙間gの両側の足場板10に載せる幅寸法であれば足りる。したがって、数値的に限定されるものではないが、20~50cm位が好適であり、25~40cmがより好適である。
幅寸法Wが20cmを下廻ると隙間gに落ち込みやすくなり、幅寸法Wが50cmより広いと重たくなる。このため、幅寸法Wが20~50cmが隙間gを確実に塞ぎ重量化を防止できる意味で好ましい。そして、幅寸法Wが25~40cmであると、設置位置が多少ズレても隙間gを塞ぐことができ、かつ軽量化も達成できるので、より好ましい。
【0016】
シート部材1の厚さt1(
図3参照)は、1.5~5mmが好適であり、2.5~4mmがより好適である。厚さt1が1.5mmを下廻ると、形状保持性が失われ隙間gに落ち込みやすくなり、5mmより厚いと重くなりすぎる。このため、1.5~5mmが隙間gに落ち込まず、重量化を防止できる意味で好ましい。そして、厚さt1が2.5~4mmであると、隙間g上に作業員の足が載っても落ち込みを防止でき、かつ軽量化も達成できるので、より好ましい。
【0017】
図1~
図3に示すように、シート部材1の両端部のそれぞれにおいて、滑止めリブ2が形成されている。滑止めリブ2は、シート部材1の最外縁に設けた外側リブ2aと最外縁から内側へ寄った位置に形成した内側リブ2bとからなり、両リブ2a,2bは互いに平行に形成されている。
また、外側リブ2aと内側リブ2bの対からなる滑止めリブ2は、シート部材1の幅方向の両端部で同様に形成されている。
【0018】
図3に示すように、外側リブ2aも内側リブ2bも、シート部材1の表裏両面から上下に突出した肉厚部に形成されたものである。
両リブ2a,2bの厚さt2は、シート部材1の厚さt1より片面で1~3mm位大きければ滑止め効果を発揮できる。ゆえに、表裏面で2~6mm位、シート部材1の厚さt1よりも厚くなるものが好ましい。
このように厚さt2を厚くすることで、シート部材1に必要な剛性を確保でき、作業員の足がのっても隙間gに落ち込まないようにできる。
【0019】
滑り止めリブ2におけるリブ2a,2bの幅寸法w2は、厚さt2と同じ位でよい。
リブ2a,2bの断面形状は、
図3に示すように、二つの楕円形が互いに接合した形でもよいが、一個の楕円形、あるいは四角形であってもよい。ただし、角ばっておらず丸みを帯びていることが、作業員に手傷を負わせないため好ましい。
滑り止めリブ2におけるリブ2a,2bの表裏両面は、平坦でもよいが、微少な凹凸や多状溝などが形成されていてもよい。その場合、足場板10に対する摩擦力が高くなり滑りにくくなる。
【0020】
図1~
図3に示すように、シート部材1には、長手方向において複数の間隔をあけて切り目3が形成されている。
この切り目3は、シート部材1の長手方向に対し直角な方向、すなわち幅方向に延び、一側縁から他側縁にかけて形成されている。
切り目3,3間の間隔は等間隔としておくことが好ましい。等間隔であれば、切り目3で切り取ったシート部材1の長さの見当が付けやすいからである。
切り目3,3間の間隔d(
図2参照)は100~150mmが好ましい。この間隔dであると、足場板10の長さに合わせやすいからである。
【0021】
切り目3はシート部材1の表裏両側から内側に向けて形成されており、肉厚方向の中央部のみ残されている。この残された部分の厚さt3(
図6参照)は、0.5~1.5mm、好ましくは、0.8~1.2mmである。厚さt3が0.5~1.5mmの範囲であると、人の手で切り目3からちぎって、シート部材1の長さを自由に調整することができる。厚さt3が0.8~1.2mmであると、勝手にちぎれる事故も防げ、かつ軽い力でちぎれることが可能となる。
【0022】
図1~
図3および
図5に示すように、シート部材1の外側リブ2aと内側リブ2bとで囲まれた部材には、固縛用孔4が形成されている。
図では、両リブ2a,2bで囲まれ、かつ切り目3で囲まれた領域に1個ずつ固縛用孔4が形成されているが、これに限られることはない。
切り目3で囲まれた領域の1マスおきに固縛用孔4を形成してもよい。
【0023】
固縛用孔4は、針金等を通して、シート部材1を足場板10に固縛するために用いられる。針金等を通しても孔が傷まないように、
図5および
図6に示すように、孔の周囲は肉厚部4aより補強されている。
この固縛用孔4の内径は、針金等を通す作業が容易に行えればよい。寸法は、5~15mm位が好適であるが、この寸法に限られない。
【0024】
本実施形態の保全シートAは、
図7に示すように、2枚の足場板10,10の長辺間の隙間g上に置いて使用する。
この場合、つぎの効果を奏する。
(1)シート部材1が柔軟性を有しているので、巻取ってコンパクトにした状態で運搬ができ、建設現場での取扱いが容易である。
(2)作業床と足場板10との間に段差があったとしても、その作業床との間を滑らかにつなぐことができ、作業員が作業しやすくなる。
(3)切り目3に沿って人手によってちぎることができるので、現場で必要な長さに合わせた長さ調整が簡単に行える。
(4)足場板10の上に置いたとき滑止めリブ2によって保全シートAが動かないよう規制できるので、足場板10の間の隙間gを塞いだままにできる。このため、工具や資材などの小部品の落下事故を確実に防止できる。また、作業員が隙間gに足を取られることも無くなる。
(5)シート部材1の両端部とも、外側リブ2aと内側リブ2bを設けているので、滑止め効果が高く、使用中のズレ落ちが生じにくい。かつ、保全シートAに必要な剛性を与えることができる。
(6)固縛用孔4に針金を通してシート部材1を足場板10に固縛できるので、使用中のズレ落ちを確実に防止できる。
(7)シート部材1がゴム製できるので、巻取りも容易であり手でちぎることも容易に行える。
【符号の説明】
【0025】
1 シート部材
2 滑止めリブ
2a 外側リブ
2b 内側リブ
3 切り目
4 固縛用孔
10 足場板
A 保全シート