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特許7063262転写紙保護層用樹脂組成物、及び、その製造方法
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  • 特許-転写紙保護層用樹脂組成物、及び、その製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】転写紙保護層用樹脂組成物、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 1/175 20060101AFI20220426BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220426BHJP
   C08F 20/10 20060101ALI20220426BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20220426BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20220426BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20220426BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20220426BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
B44C1/175 D
B32B27/00 E
C08F20/10
C08L5/00
C08L33/04
C09D5/00 Z
C09D7/40
C09D133/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018508234
(86)(22)【出願日】2018-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2018001378
(87)【国際公開番号】W WO2018135579
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2017007245
(32)【優先日】2017-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 嘉一
【審査官】野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-080411(JP,A)
【文献】特開昭54-159007(JP,A)
【文献】特開2003-183559(JP,A)
【文献】特開2001-081371(JP,A)
【文献】特開2003-246195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 1/16 - 1/175
B32B 27/24 - 27/30
C04B 41/86
C09D 7/40
C09D 133/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数3~12のアルキル(メタ)アクリレート由来の単量体単位を50質量%以上含むアクリル系重合体(A)、溶剤(B)及び可塑剤(D)を含む転写紙保護層用樹脂組成物であって、溶剤(B)は25℃でASTM D445に準拠した方法で測定した動粘度が1.5mm/s以下のナフテン系溶剤及びイソパラフィン系溶剤から選ばれる少なくとも1種の溶剤(B1)を70質量%以上含み、芳香族化合物が2質量%以下である、転写紙保護層用樹脂組成物。
【請求項2】
アクリル系重合体(A)が、アルキル基の炭素数3~6のアルキルメタクリレート由来の単量体単位を50~90質量%、及び、アルキル基の炭素数7~12のアルキルメタクリレート由来の単量体単位を10~50質量%含む、請求項1に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、消泡剤(C)を含む、請求項1又は2に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
【請求項4】
アクリル系重合体(A)100質量部に対して、溶剤(B)を70~500質量部、消泡剤(C)を0.1~15質量部、可塑剤(D)を5~35質量部で含む、請求項3に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
【請求項5】
消泡剤(C)が、ポリシロキサン又はアクリル系化合物である、請求項3又は4に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
【請求項6】
前記アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が50,000~200,000である、請求項1~5のいずれか1項に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
【請求項7】
前記アクリル系重合体(A)のガラス転移温度が10℃以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
【請求項8】
可塑剤(D)が、ポリエステル系、安息香酸系又はフタル酸エステル系の可塑剤である、請求項1~7のいずれか1項に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の転写紙保護層用樹脂組成物を製造する方法であって、
アクリル系重合体(A)、25℃でASTM D445に準拠した方法で測定した動粘度が1.5mm/s以下のナフテン系溶剤及びイソパラフィン系溶剤から選ばれる少なくとも1種の溶剤(B1)並びに可塑剤(D)を配合する、転写紙保護層用樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
さらに、消泡剤(C)を配合する、請求項9に記載の転写紙保護層用樹脂組成物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写紙保護層用樹脂組成物、その製造方法、積層体及び絵付け用転写紙に関する。
本出願は、2017年1月19日に日本に出願された特願2017-007245号に基づき、優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラスチック、木、金属、陶磁器、ガラス、ホーロー、タイル、その他セラミック等(以下、「陶磁器等」ともいう。)の絵付けには、台紙と、水溶性糊剤層と、所望の絵柄に印刷された印刷インキ層と、保護層とが、この順で積層された絵付け用転写紙を用いる単紙絵付法が広く用いられている。この方法では、まず、転写紙を水または温水に浸漬し、台紙から印刷インキ層の付いた保護層を剥離し、陶磁器等の所定の位置に印刷インキ層が内側になるように転写紙を貼り付ける。次いで、陶磁器等と保護層との間の水分や気泡等を除去し、乾燥させる。最後に、焼成または剥離により保護層を除去して、印刷インキ層を陶磁器等の表面に転写することで絵柄を付けることができる。
【0003】
絵付け用転写紙の製造に用いられる保護層用樹脂組成物に含まれる樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂およびセルロース系樹脂等の樹脂が挙げられる。これらのなかでも、アクリル系樹脂が、特に好適に用いられている。アクリル系樹脂は、原料のモノマーの種類が豊富で、かつ、任意の組合せで共重合できるため、広範囲のガラス転移温度や分子量を有する樹脂が自由に得られる。そのため、アクリル系樹脂を含む保護層用樹脂組成物は、印刷適性に優れ、形成される保護層の塗膜物性の調整が容易であるといった好ましい特徴を有する。
【0004】
特許文献1には、溶剤としてスワゾール(登録商標)1000、いわゆるソルベントナフサを配合した保護層用樹脂組成物が記載されている。この樹脂組成物は、形成した保護層に気泡やクレーターが少ないことから、印刷特性にも優れているが、溶剤が芳香族化合物を含有しているため、臭気が強いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-183559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、絵付け用転写紙の製造において、印刷インキ層を被覆する保護層を形成するのに用いられる樹脂組成物であって、保護層に気泡やクレーターが少なく、かつ臭気の少ない転写紙保護層用樹脂組成物及びその製造方法、積層体並びに絵付け用転写紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>アルキル基の炭素数3~12のアルキル(メタ)アクリレート由来の単量体単位を50質量%以上含むアクリル系重合体(A)、溶剤(B)及び可塑剤(D)を含む転写紙保護層用樹脂組成物であって、溶剤(B)は25℃でASTM D445に準拠した方法で測定した動粘度が1.5mm/s以下のナフテン系溶剤及びイソパラフィン系溶剤から選ばれる少なくとも1種の溶剤(B1)を70質量%以上含み、芳香族化合物が2質量%以下である、転写紙保護層用樹脂組成物。
<2>アクリル系重合体(A)が、アルキル基の炭素数3~6のアルキルメタクリレート由来の単量体単位を50~90質量%、及び、アルキル基の炭素数7~12のアルキルメタクリレート由来の単量体単位を10~50質量%含む、前記<1>に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
<3>さらに、消泡剤(C)を含む、前記<1>又は<2>に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
<4>アクリル系重合体(A)100質量部に対して、溶剤(B)を70~500質量部、消泡剤(C)を0.1~15質量部、可塑剤(D)を5~35質量部で含む、前記<3>に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
<5>消泡剤(C)が、ポリシロキサン又はアクリル系化合物である、前記<3>又は<4>に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
<6>前記アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が50,000~200,000である、前記<1>~<5>のいずれか1項に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
<7>前記アクリル系重合体(A)のガラス転移温度が10℃以上である、前記<1>~<6>のいずれか1項に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
<8>可塑剤(D)が、ポリエステル系、安息香酸系又はフタル酸エステル系の可塑剤である、前記<1>~<7>のいずれか1項に記載の転写紙保護層用樹脂組成物。
<9>前記<1>~<8>のいずれか1項に記載の転写紙保護層用樹脂組成物を製造する方法であって、アクリル系重合体(A)、25℃でASTM D445に準拠した方法で測定した動粘度が1.5mm/s以下のナフテン系溶剤及びイソパラフィン系溶剤から選ばれる少なくとも1種の溶剤(B1)並びに可塑剤(D)を配合する、転写紙保護層用樹脂組成物の製造方法。
<10>さらに、消泡剤(C)を配合する、前記<9>に記載の転写紙保護層用樹脂組成物の製造方法
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保護層に気泡やクレーターが少なく臭気の少ない転写紙保護層用樹脂組成物、およびその製造方法、ならびに気泡やクレーターの少ない保護層を有する絵付け用転写紙等の積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の絵付け用転写紙の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書および特許請求の範囲において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。
【0011】
(転写紙保護層用樹脂組成物)
本発明の転写紙保護層用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう。)は、アクリル系重合体(A)、溶剤(B)及び可塑剤(D)を含む。溶剤(B)は、25℃でASTM D445に準拠した方法で測定した動粘度が1.5mm/s以下のナフテン系溶剤及びイソパラフィン系溶剤から選ばれる少なくとも1種の溶剤(B1)を70質量%以上含む。溶剤(B)は溶剤(B1)以外の溶剤(B2)を含んでもよい。また、溶剤(B)に含まれる芳香族化合物は2質量%以下である。
樹脂組成物は、さらに、消泡剤(C)を含んでいてもよい。
樹脂組成物は、その他の添加剤をさらに含んでもよい。
【0012】
<アクリル系重合体(A)>
アクリル系重合体(A)は、アルキル基の炭素数が3~12のアルキル(メタ)アクリレート由来の単量体単位を含む。
アルキル基の炭素数が3~12のアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、Sec-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートおよびラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、いずれかを単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。なお、後述する溶剤(B)への溶解性の観点から、アルキル(メタ)アクリレートは、アルキル基の炭素数は4~8のものがより好ましい。
【0013】
アクリル系重合体(A)中の、アルキル基の炭素数が3~12のアルキル(メタ)アクリレート由来の単量体単位の含有量は、全単量体単位の合計に対して50質量%以上であり、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。前記アルキル(メタ)アクリレート由来の単量体単位の含有量が前記下限値以上であれば、保護層の強度に優れる。前記アルキル(メタ)アクリレート由来の単量体単位の含有量の上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0014】
アクリル系重合体(A)は、アルキル基の炭素数3~6のアルキルメタクリレート由来の単量体単位とアルキル基の炭素数7~12のアルキルメタクリレート由来の単量体単位を含むことが好ましい。アルキル基の炭素数3~6のアルキルメタクリレート由来の単量体単位は、重合体(A)の溶剤(B1)に対する溶解性を向上させ、保護層を柔軟にすることができる。アルキル基の炭素数7~12のアルキルメタクリレート由来の単量体単位は、重合体(A)の溶剤(B1)に対する溶解性をさらに向上させることができる。アクリル系重合体(A)は、アルキル基の炭素数3~6のアルキルメタクリレート由来の単量体単位を50~90質量%、及び、アルキル基の炭素数7~12のアルキルメタクリレート由来の単量体単位を10~50質量%含むことが好ましい。
【0015】
アクリル系重合体(A)は、アルキル基の炭素数が3~12のアルキル(メタ)アクリレート以外の他の単量体由来の単量体単位を含んでもよい。
他の単量体としては、アルキル基の炭素数が3~12のアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能なものであればよく、たとえば、単官能のビニルモノマーが挙げられる。このようなビニルモノマーの具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよびアルキル基の炭素数が13以上のアルキル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸およびクロトン酸等のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートおよび4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有アルキル(メタ)アクリレート、スチレンおよびα-メチルスチレン等の芳香族モノビニルモノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル並びに(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で、または複数種を組み合わせて用いることができる。
他の単量体としては、保護層の引張強度を発現させる観点から、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸及びアミノ基含有アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、(メタ)アクリル酸およびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0016】
アクリル系重合体(A)のガラス転移温度は、良好な耐ブロッキング性を得る観点から、10℃以上であることが好ましく、20~70℃がより好ましい。ガラス転移温度は高いほど形成される保護層に粘着性が出にくく、耐ブロッキング性が良好になる。
アクリル系重合体(A)のガラス転移温度は、単量体単位の種類及び質量分率から、下記(1)式で表されるFoxの式より求められる。
1/Tg=Σ(W/Tg) ・・・・・(1)
上記(1)式において、Tgはアクリル系重合体(A)のガラス転移温度(単位はK)、Wはアクリル系重合体(A)を構成する単量体i由来の単量体単位の質量分率、Tgは単量体iの単独重合体のガラス転移温度(単位はK)を示す。Tgiの値は、POLYMERHANDBOOK Volume 1(WILEY-INTERSCIENCE)に記載の値を用いることができる。
【0017】
アクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、樹脂組成物の成膜性、印刷インキ層から剥離する際の保護層の引張特性等の観点から、50,000~200,000であることが好ましく、70,000~150,000がより好ましい。アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が大きいほど、樹脂組成物から得られる保護層の引張特性が優れたものとなる。また、アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が小さいほど、樹脂組成物の粘度が充分に低くなり、印刷等により保護層を形成する際の成膜性がより優れたものとなる。なお、本発明において説明するアクリル系重合体(A)の重量平均分子量は、GPC-LS法(Gel Permeation Chromatography-Light Scattering Method:GPC-光散乱法)で測定されたポリスチレン換算の値を意味する。
【0018】
アクリル系重合体(A)は、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、または乳化重合等の公知の重合方法によって製造することができる。これらの方法の中でも、得られるアクリル系重合体(A)を高分子量化しやすいこと、樹脂組成物の溶剤選択の自由度が高くなること、樹脂組成物をハイソリッド化又は無溶剤にできること等の利点がある観点から、固形ビーズとしてアクリル系重合体(A)を取得できる懸濁重合とが好ましい。
【0019】
<溶剤(B)>
溶剤(B)は、25℃でASTM D445に準拠した方法で測定した動粘度が1.5mm/s以下のナフテン系溶剤及びイソパラフィン系溶剤から選ばれる少なくとも1種の溶剤(B1)を70質量%以上含む。溶剤(B1)は、動粘度が1.5mm/s超のナフテン系溶剤及び/又はイソパラフィン系溶剤に比べて、樹脂組成物の成膜性を良好にすることができる。
溶剤(B1)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタンや、エクソンモービル社製のエクソール(登録商標)DSP80/100、エクソールDSP100/120、エクソールD30およびエクソールD40等のナフテン系溶剤や、エクソンモービル社製のアイソパー(登録商標)EおよびアイソパーG等のパラフィン系溶剤等の芳香族含有量の少ない溶剤が挙げられる。これらの中でも、溶剤(B1)としては、樹脂組成物の成膜性の観点から、エクソールD30、エクソールD40およびアイソパーGが好ましい。溶剤(B1)は、上記の溶剤を単独で用いてもよいし、あるいは、2種以上を併用して用いることもできる。溶剤(B1)は、アクリル系重合体(A)、消泡剤(C)及び可塑剤(D)、並びに添加剤等のその他の成分と共に配合される溶剤であってもよい。
【0020】
溶剤(B)は、溶剤(B1)以外の溶剤(B2)を含んでもよい。溶剤(B1)以外の溶剤(B2)としては、樹脂相溶性や印刷性等を向上させる観点から、以下に列挙するものの中から選択したものを溶剤(B)として配合してもよい。即ち、溶剤(B2)としては、例えば、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼン等の芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ノルマルブチル、酢酸イソブチル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸イソプロピルおよび酢酸アミル等の酢酸エステル系溶剤;メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトンおよびアセトン等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、ターシャリブチルアルコール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールn-プロピルエーテル等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびプロピレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;メチルセロソルブアセテートおよびメトキシプロピルアセテート等のアセテート系溶剤;ノルマルヘキサン、シクロへキサン、メチルシクロへキサンおよびヘプタン等の炭化水素系溶剤;エクソンモービル社製のエクソール(登録商標)D80、エクソールD110およびエクソールD130等のナフテン系溶剤;エクソンモービル社製のアイソパー(登録商標)H、アイソパーLおよびアイソパーM等のパラフィン系溶剤;エクソンモービル社のソルベッソ(登録商標)100、ソルベッソ150、ソルベッソ200、丸善石油社製のスワゾール(登録商標)1000、スワゾール1500、スワゾール1800、出光興産社製のイプゾール(登録商標)100およびイプゾール150等のナフサ系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いることもできる。溶剤(B2)は、アクリル系重合体(A)、消泡剤(C)及び可塑剤(D)、並びに添加剤等のその他の成分と共に配合される溶剤であってもよい。
【0021】
本発明の樹脂組成物において、溶剤(B)の配合量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対して70~500質量部が好ましく、100~400質量部がより好ましく、保護層の気泡を低減させる観点から150~300質量部がさらに好ましい。溶剤(B)の配合量は、多いほど保護層の気泡が少なくなる。また、溶剤(B)の配合量は、少ないほど保護層の厚みが厚くなるので、台紙から剥がし易くなる。
溶剤(B)に占める溶剤(B1)の含有量は、前記のように70質量%以上である。即ち、保護層の気泡を低減させる観点から、この含有量は70質量%以上であり、80質量%以上が好ましい。
また、溶剤(B2)の含有量は、溶剤(B1)の残余であり、30質量%以下であり、20質量%以下が好ましい。溶剤(B2)が芳香族を含む場合には、臭気の観点から、溶剤(B2)の含有量は少ないほど好ましい。
さらに、本発明の樹脂組成物においては、溶剤(B)に含まれる芳香族含有量が2質量%以下となるように、溶剤(B1)及び溶剤(B2)を選定する。臭気の観点から、芳香族含有量は少ないほど好ましく、1.5質量%以下が好ましい。一般に、芳香族含有量はガスクロマトグラフィーにより測定される。
【0022】
<消泡剤(C)>
消泡剤(C)は、泡の発生を防いだり、発生した泡を破泡したりする添加剤である。消泡剤(C)としては、例えば、ポリアルキルジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサンおよびポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサンを活性成分とするシリコーン系消泡剤、アクリル系化合物等のポリマーを活性成分とする非シリコーン・ポリマー系消泡剤並びに疎水粒子をキャリヤオイルに分散させたミネラルオイル系消泡剤等が挙げられる。消泡剤(C)としては、成膜性の観点から、シリコーン系消泡剤および非シリコーン・ポリマー系消泡剤が好ましく、ポリアルキルジメチルシロキサンを活性成分とするシリコーン系消泡剤及びアクリル系化合物を活性成分とする非シリコーン・ポリマー系消泡剤がより好ましい。
【0023】
本発明の樹脂組成物において、消泡剤(C)を配合する場合の配合量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対して0.1~15質量部が好ましく、更に保護層の気泡の低減と保護層の強度のバランスの観点から0.3~5.0質量部がより好ましい。消泡剤(C)の配合量は、多いほど、保護層の気泡が少なくなるので、保護層の強度が高くなる。
【0024】
<可塑剤(D)>
可塑剤(D)は、アクリル重合体(A)を可塑化する能力を有する添加剤である。可塑剤(D)としては、例えば、フタル酸エステル、リン酸エステル、アジピン酸エステルおよびエーテル系化合物が挙げられる。フタル酸エステルとしては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニルおよびフタル酸ジイソデシル等のフタル酸ジアルキルエステル;フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸アルキルベンジル;フタル酸アルキルアリール;フタル酸ジベンジル;フタル酸ジアリール等が挙げられる。リン酸エステルとしては、リン酸トリクレシル等のリン酸トリアリール系、リン酸トリアルキル系およびリン酸アルキルアリール系等のリン酸エステルが挙げられる。アジピン酸エステルとしては、アジピン酸ジブチルおよびアジピン酸ジオクチル等の脂肪族二塩基酸エステルが挙げられる。エーテル系化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびジブチルグリコールアジペート等が挙げられる。可塑剤(D)としては、その他に、安息香酸系、トリメリット酸系およびポリエステル系並びにエポキシ化大豆油等の大豆油系等の可塑剤も使用できる。これらの可塑剤は、1種を単独で用いるだけでなく、2種以上の可塑剤を混合して用いることも可能である。また、可塑剤(D)としては、樹脂組成物の成膜性の観点から、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、安息香酸エステルおよびトリメリット酸エステルが好ましく、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリス(2-エチルへキシル)および安息香酸エステルがより好ましく、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、アジピン酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチルおよび安息香酸エステルが特に好ましい。
【0025】
本発明の樹脂組成物において、可塑剤(D)の配合量は、アクリル系重合体100質量部に対して5~35質量部が好ましく、絵柄を転写する際の作業性と保護層の強度とのバランスの観点から7~20質量部がより好ましい。可塑剤(D)の配合量は、多いほど保護層が柔らかくなるので、陶磁器等に絵柄を転写する作業性が向上する。一方、可塑剤(D)の配合量は、少ないほど保護層の強度が高くなる。
【0026】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物には前記の(A)、(B)、(C)及び(D)成分に、さらに、添加剤等のその他の成分を配合してもよい。このような添加剤としては、たとえば、印刷等の方法で塗布する際の粘度安定性、柔軟性、乾燥性等を向上させるための、チキソ剤等の助剤を挙げることができる。チキソ剤としては、たとえば、脂肪酸アマイド系ワックス等のアミド系ワックス、ヒマシ油および水添ヒマシ油等が挙げられる。
【0027】
本発明の樹脂組成物において、その他の成分の配合量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対して15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。その他の成分の配合量は、少ないほど、樹脂組成物をスクリーン印刷等により塗布して保護層を形成する際の塗布適性が向上する傾向がある。
【0028】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物の固形分濃度は、20~50質量%が好ましく、25~45質量%がより好ましい。この固形分濃度は、低いほど樹脂組成物の粘度が低くなる。一方、樹脂組成物の固形分濃度は、高いほど塗膜が厚くなり、陶磁器等への貼り付けがしやすくなる。ここで、本明細書で説明する固形分とは、溶剤以外の全ての成分を意味する。
【0029】
本発明の樹脂組成物の粘度は、100~5000mPa・sが好ましく、500~3000mPa・sがより好ましい。本明細書で説明する樹脂組成物の粘度は、B型粘度計を用い、25℃、回転数60rpmで測定される値である。樹脂組成物の粘度は、低いほど樹脂組成物をスクリーン印刷等により塗布して保護層を形成する際の塗布適性が向上する。一方、樹脂組成物の粘度は、高いほど塗膜が厚くなり保護層を陶磁器等に貼り付けやすくなる。樹脂組成物の粘度は、主に溶剤(B)の配合量で調節できる。
【0030】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、アクリル系重合体(A)と、25℃でASTM D445に準拠した方法で測定した動粘度が1.5mm/s以下のナフテン系溶剤及びイソパラフィン系溶剤から選ばれる少なくとも1種の溶剤(B1)と、可塑剤(D)とを配合して製造することができる。このとき、必要に応じて、消泡剤(C)や、添加剤等のその他の成分を配合してもよい。
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、撹拌機、冷却管、及び温度計を備えた混合装置に溶剤(B1)を仕込み、これを撹拌しながらアクリル系重合体(A)を少しずつ添加し、アクリル系重合体(A)が溶解したのを確認した後、消泡剤(C)、可塑剤(D)、必要に応じてその他の添加剤を添加する方法が好ましい。アクリル系重合体(A)、消泡剤(C)、可塑剤(D)またはその他の成分は、溶剤とともに配合してもよい。
【0031】
<樹脂組成物の用途>
本発明の樹脂組成物は、絵付け用転写紙等の積層体に設けられる保護層の材料として用いることができる。絵付け用転写紙としては、たとえば、台紙と水溶性糊剤層と印刷インキ層と保護層とがこの順で積層されたものが挙げられる。
【0032】
<作用効果>
本発明の樹脂組成物は、アクリル系重合体(A)と、25℃でASTM D445に準拠した方法で測定した動粘度が1.5mm/s以下のナフテン系溶剤及びイソパラフィン系溶剤から選ばれる少なくとも1種の溶剤(B1)を70質量%以上含み、芳香族化合物が2質量%以下である溶剤(B)と、可塑剤(D)とを含むため、低臭気であり、保護層を形成する際の成膜性も良好である。たとえば、樹脂組成物を印刷等により塗布して塗膜を形成した際に、塗膜に気泡やクレーターが発生しにくい。そのため、これを乾燥して形成される保護層も、気泡やクレーターの少ないものとなる。
【0033】
(絵付け用転写紙:積層体)
本発明の積層体について、絵付け用転写紙を例に挙げ、添付の図面を参照し、その実施形態を示して説明する。
図1は、本発明の絵付け用転写紙の一実施形態を示す概略断面図である。
本実施形態の絵付け用転写紙1は、台紙3と、水溶性糊剤層5と、印刷インキ層7と、保護層9とが、この順で積層されたものである。
水溶性糊剤層5は、台紙3の片面の全面を覆うように形成されている。印刷インキ層7は、水溶性糊剤層5上に部分的に形成されている。保護層9は、印刷インキ層7を被覆するように形成されている。保護層9の一部は水溶性糊剤層5と接している。
【0034】
台紙3としては、吸水性のよい台紙(和紙)等が挙げられる。水溶性糊剤層5を形成する水溶性糊剤としては、例えば、澱粉、ポリビニルアルコールおよびカルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
印刷インキ層7としては、例えば、熱硬化型インキ、熱可塑性インキおよびUV硬化型インキ等が挙げられる。印刷インキ層7は、陶磁器等に転写される絵柄で形成される。印刷インキ層7は、単層でもよく、多層でもよい。
【0035】
保護層9は、前述の本発明の樹脂組成物の乾燥物からなるものであり、アクリル系重合体(A)と、可塑剤(D)とを含む。保護層9は、消泡剤(C)や、その他の添加剤を含んでいてもよい。
【0036】
絵付け用転写紙1は、たとえば、水溶性糊剤が全面に塗布されて水溶性糊剤層5が形成された台紙3の上に、インキを用いて印刷インキ層7を形成し、その上に本発明の樹脂組成物を塗布し、この樹脂組成物を乾燥して保護層9を形成することで製造できる。
インキとしては、たとえば、熱硬化型インキ、熱可塑性インキおよびUV硬化型インキ等が挙げられる。
印刷インキ層7は、公知の方法により形成できる。たとえば、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷およびオフセット印刷等により、インキを水溶性糊剤層5上に塗布し、必要に応じて硬化させることによって印刷インキ層7を形成できる。
樹脂組成物の塗布方法としては、たとえば、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷およびオフセット印刷等が挙げられる。樹脂組成物の乾燥は、溶剤(B)を揮発させればよい。
【0037】
絵付け用転写紙1を用いると、たとえば、以下のようにして絵付けを行うことができる。
まず、絵付け用転写紙1を水または温水に浸漬し、水溶性糊剤層5を溶解させて、印刷インキ層7の付いた保護層9を台紙3から剥離する。この印刷インキ層7の付いた保護層9を、例えば、陶磁器等のような被転写物の所定の位置に、陶磁器等と印刷インキ層7とが接触するように貼り付ける。そして、印刷インキ層7の付いた保護層9と陶磁器等との間の水分や気泡等を除去した後、保護層9を焼成して陶磁器等の表面に印刷インキ層7が残ることで、陶磁器等への絵付けが行われる。
【0038】
以上、本発明の絵付け用転写紙について、実施形態を示して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換及びその他の変更が可能である。
たとえば、水溶性糊剤層5は、少なくとも印刷インキ層7及び保護層9が形成される位置に設けられていればよく、台紙3の片面の全面を覆うものでなくてもよい。
【実施例
【0039】
以下、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。なお、以下の実施例中の「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。実施例中の評価方法は、以下の方法に拠った。
【0040】
(評価方法)
<成膜性>
市販のシリンダー印刷機を用い、水溶性糊剤が片面の全面に均一に塗布された台紙(株式会社ムラカミ製 SPA 215×290mm)上に、熱硬化型インキ(帝国インキ社製MEG)をナイロン製300メッシュのスクリーンで印刷して、絵付けの花柄模様となる印刷インキ層を形成し、室温で12時間放置した。その後、さらに、その上に、樹脂組成物をナイロン製60メッシュのスクリーンで印刷して樹脂組成物の塗膜を形成し、1分間放置した。放置後、この塗膜を目視で観察し、評価を以下のように実施し、結果を下記表2に示した。
良:気泡やクレーターが無いもの。
不良:気泡やクレーターがあるもの。
【0041】
<臭気>
上記で得られた樹脂組成物の臭気を確認し、その評価を以下のように実施し、結果を下記表2に示した。
良:刺激臭を感じなかった。
不良:刺激臭を感じた。
【0042】
<分散剤の製造方法>
撹拌機、冷却管、及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム60部、メタクリル酸カリウム10部及びメチルメタクリレート12部を入れて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、50℃に昇温した。その中に、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08部を添加し、さらに60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを使用して、メチルメタクリレートを、0.24部/分の速度で75分間連続的に滴下した。滴下終了後、反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10%の分散剤を得た。
【0043】
<アクリル系重合体A1の製造>
撹拌機、冷却管、及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.3部及び分散剤(固形分10%)0.3部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。
次に、イソブチルメタクリレートを81部、2-エチルヘキシルメタクリレート19部、ドデシルメルカプタン0.2部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.3部を加え、水性懸濁液とした。
次に、重合装置内を窒素置換し、80℃に昇温して1時間反応し、さらに重合率を上げるため、後処理温度として90℃に昇温して60分保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む水性懸濁液を得た。
この水性懸濁液を、目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄した後に脱水し、40℃で16時間乾燥して、重量平均分子量が110,000であるアクリル系重合体A1を90部得た。
アクリル系重合体A1は、その原料の仕込み量から、アルキル基の炭素数が3~12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位を100質量%含み、その内訳は、イソブチルメタクリレート単位81質量%、2-エチルヘキシルメタクリレート単位19質量%である。また、アクリル系重合体A1のガラス転移温度は50℃である。
【0044】
(実施例1~10、比較例1~5)
下記表1に示す配合量(部)で各原料を配合し、高速分散機で混合して転写紙保護層用樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、前述の臭気及び成膜性の評価を行い、それらの結果を下記表2に示した。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
表1中の各成分は以下のとおりである。
A-S-A(登録商標) T-380-20BS:商品名、伊藤製油社製脂肪酸アマイド系ワックス(有効成分20%;溶剤:石油系溶剤65%、ベンジルアルコール15%)
BYK(登録商標)-077:商品名、ビックケミージャパン社製シリコーン系消泡剤(有効成分52%;溶剤:高沸点芳香族溶剤)
BYK(登録商標)-052:商品名、ビックケミージャパン社製アクリル系消泡剤(有効成分20%;溶剤:ミネラルスピリット)
エクソール(登録商標)D30:商品名、エクソンモービル社製ナフテン系溶剤(有効成分100%; 動粘度:0.99mm/s; 芳香族含有量:0.01%以下)
エクソール(登録商標)D40:商品名、エクソンモービル社製ナフテン系溶剤(有効成分100%; 動粘度:1.3mm/s; 芳香族含有量:0.05%)
アイソパー(登録商標)G:商品名、エクソンモービル社製イソパラフィン系溶剤(有効成分100%; 動粘度:1.49mm/s; 芳香族含有量:0.005%以下)
アイソパー(登録商標)L:商品名、エクソンモービル社製イソパラフィン系溶剤(有効成分100%; 動粘度:1.6mm/s; 芳香族含有量:0.01%以下)
アイソパー(登録商標)M:商品名、エクソンモービル社製イソパラフィン系溶剤(有効成分100%; 動粘度:3.57mm/s; 芳香族含有量:0.01%)
スワゾール(登録商標)1000:商品名、丸善石油社製芳香族炭化水素系溶剤(有効成分100%; 動粘度:0.9mm/s; 芳香族含有量:100%)
【0048】
実施例1~10の樹脂組成物は、臭気、成膜性ともに評価結果が良好であった。一方、溶剤(B1)に代えて動粘度が1.5mm/sを超えているイソパラフィン系溶剤を用いた比較例1~2は、印刷時に気泡やクレーター等が発生し、成膜性が不良であった。溶剤(B1)に代えて芳香族炭化水素系溶剤を用いた比較例3、及び溶剤(B1)の一部を芳香族炭化水素系溶剤に置き換えた比較例5は、溶剤(B)の芳香族含有量が2質量%を超えていたため刺激臭が強く、取扱いが困難であった。溶剤(B1)の量を70質量%未満の60質量%とした比較例4は、印刷時に気泡やクレーター等が発生し、成膜性が不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の転写紙保護層用樹脂組成物によれば、被転写物に絵付けをする転写紙等の積層体において、気泡やクレーターが少なく、かつ臭気の少ない保護層を形成できるものなので、たとえば、陶磁器等の表面に絵付けを行う絵付け用転写紙における保護層形成用の樹脂組成物として非常に好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 絵付け用転写紙
3 台紙
5 水溶性糊剤層
7 印刷インキ層
9 保護層
図1