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特許7063326複合焼結体、静電チャック部材、静電チャック装置および複合焼結体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】複合焼結体、静電チャック部材、静電チャック装置および複合焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/117 20060101AFI20220426BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
C04B35/117
H01L21/68 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019509773
(86)(22)【出願日】2018-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2018012039
(87)【国際公開番号】W WO2018181130
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2017068710
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 宣浩
(72)【発明者】
【氏名】木村 直人
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-295352(JP,A)
【文献】特開2003-152065(JP,A)
【文献】特開2005-306635(JP,A)
【文献】特開平06-157140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/117
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主相である金属酸化物と、副相である炭化ケイ素と、を含むセラミックスの複合焼結体であり、
前記炭化ケイ素の結晶粒は、前記金属酸化物の結晶粒内および前記金属酸化物の結晶粒界に分散しており、
前記金属酸化物の結晶粒内に分散している前記炭化ケイ素の結晶粒の割合は、前記炭化ケイ素の結晶粒全体に対し面積比で25%以上であり、
前記金属酸化物の平均結晶粒径は、1.3μm以上5μm以下である複合焼結体。
【請求項2】
前記金属酸化物は、酸化アルミニウムまたは酸化イットリウムである請求項1に記載の複合焼結体。
【請求項3】
前記炭化ケイ素の結晶粒の平均結晶粒径は、0.03μm以上1μm以下である請求項1又は2に記載の複合焼結体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の複合焼結体を形成材料とし、一主面が板状試料を載置する載置面である板状の基体と、
前記基体の前記載置面とは反対側、または前記基体の内部に設けられた静電吸着用電極と、を有する静電チャック部材。
【請求項5】
請求項4に記載の静電チャック部材を備える静電チャック装置。
【請求項6】
金属酸化物粒子と炭化ケイ素粒子とを混合する工程と、
前記混合する工程で得られたスラリーについて、前記スラリー中の前記金属酸化物粒子の表面電荷が正となり、前記スラリー中の前記炭化ケイ素粒子の表面電荷が負となる範囲に、前記スラリーのpHを調整する工程と、
pHを調整した前記スラリーから分散媒を除去した後、成形する工程と、
得られる成形体を、非酸化性雰囲気下、25MPa以上の圧力で押し固めながら1600℃以上に加熱して加圧焼結する工程と、を有する複合焼結体の製造方法。
【請求項7】
前記金属酸化物粒子と炭化ケイ素粒子とを混合する工程が、金属酸化物粒子と炭化ケイ素粒子とを、それぞれ高速で噴射してお互いに衝突させながら混合する工程である請求項6に記載の複合焼結体の製造方法。
【請求項8】
前記混合する工程に先立って、前記炭化ケイ素粒子の表面を酸化処理する工程を有する請求項6に記載の複合焼結体の製造方法。
【請求項9】
前記pHを調整する工程は、前記スラリーのpHを3以上7以下とする請求項6から8のいずれか1項に記載の複合焼結体の製造方法。
【請求項10】
前記金属酸化物粒子は、金属酸化物の含有量が99.99%以上である請求項6から9のいずれか1項に記載の複合焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合焼結体、静電チャック部材、静電チャック装置および複合焼結体の製造方法に関する。
本願は、2017年3月30日に、日本に出願された特願2017-068710号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ工程を実施する半導体製造装置では、試料台に簡単に板状試料(ウエハ)を取付けて、固定することができるとともに、そのウエハを所望の温度に維持することができる静電チャック装置が用いられている。静電チャック装置は、一主面がウエハを載置する載置面である基体と、載置面に載置したウエハとの間に静電気力(クーロン力)を発生させる静電吸着用電極と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。基体は、通常セラミックス焼結体を形成材料としている。
【0003】
このような静電チャック装置では、ウエハと静電吸着用電極との間に発生させた静電気力を利用して、ウエハを固定している。具体的には、静電チャック装置においては、ウエハを固定する際には、静電吸着用電極に電圧を印加し、ウエハと静電吸着用電極との間に静電気力を発生させる。一方、静電チャック装置において載置面に固定したウエハを取り外す際には、静電吸着用電極への電圧印加を停止し、ウエハと静電吸着用電極との間の静電気力を消失させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4744855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、半導体を用いたデバイスは高集積化される傾向にある。そのため、デバイスの製造時には、配線の微細加工技術や三次元実装技術が必要とされている。このような加工技術を実施するにあたり、半導体製造装置には、(i)ウエハの面内温度分布(温度差)を低減させることや、(ii)深堀加工技術を確実に実施可能であること、が求められる。
【0006】
本明細書においては、「試料台に載置したウエハの面内温度分布(温度差)の度合い」のことを「均熱性」と称することがある。「均熱性が高い」とは、ウエハの面内温度分布が小さいことを意味する。
【0007】
静電チャック装置においては、(i)ウエハの面内温度分布(温度差)を低減させるため、試料台に微細な溝を設け、前記溝に気体の冷媒(例えばヘリウム)を流動させることで、試料台に載置したウエハを冷却する技術が知られている。このような静電チャック装置において均熱性を高めるためには、冷媒のガス圧を高め冷却効率を向上させることが考えられる。一方、冷媒のガス圧を高める場合、冷媒から受ける圧力によってウエハが脱離しないように、静電チャック装置には高い吸着力が求められる。高い吸着力を得るには、静電チャック装置の基体の誘電率が高いことが好ましい。
【0008】
一方、(ii)深堀加工技術を確実に実施可能とするためには、エッチングする際の入射イオンの散乱を抑制し、入射イオンを所望の位置に入射することが求められる。そのため、近年では、静電チャック装置を用いる半導体製造装置において、バイアス(RF)電圧の低周波化が進められている。
【0009】
しかし、バイアス電圧が低周波化すると、静電チャック装置におけるセラミックス焼結体製の基体の電気特性が、バイアス電圧が高周波である場合と比べ変化する。具体的には、低周波の交流電圧を印加すると、基体の電気特性は、体積固有抵抗値(単位:Ω・cm)の影響を強く受ける。体積固有抵抗値が小さいほど、体積固有抵抗値に依存する誘電正接は大きくなるという関係にある。
【0010】
基体の誘電正接が大きくなると、交流電圧の印加時に基体が発熱しやすくなるため、改善が求められていた。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされ、高い誘電率と低い誘電正接とを両立する静電チャック用の複合焼結体を提供することを目的とする。また、このような複合焼結体を用いた静電チャック部材、静電チャック装置を提供することを併せて目的とする。さらに、このような複合焼結体を容易に製造可能とする複合焼結体の製造方法を提供することを併せて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様は、主相である金属酸化物と、副相である炭化ケイ素と、を含むセラミックスの複合焼結体であり、前記炭化ケイ素の結晶粒は、前記金属酸化物の結晶粒内および前記金属酸化物の結晶粒界に分散しており、前記金属酸化物の結晶粒内に分散している前記炭化ケイ素の結晶粒の割合は、前記炭化ケイ素の結晶粒全体に対し面積比で25%以上である複合焼結体を提供する。
【0013】
本発明の一態様においては、前記金属酸化物は、酸化アルミニウムまたは酸化イットリウムである構成としてもよい。
【0014】
本発明の一態様においては、前記金属酸化物の平均結晶粒径は、1.2μm以上10μm以下である構成としてもよい。
【0015】
本発明の一態様は、上記の複合焼結体を形成材料とし、一主面が板状試料を載置する載置面である板状の基体と、前記基体の前記載置面とは反対側、または前記基体の内部に設けられた静電吸着用電極と、を有する静電チャック部材を提供する。
【0016】
本発明の一態様は、上記の静電チャック部材を備える静電チャック装置を提供する。
【0017】
本発明の一態様は、金属酸化物粒子と炭化ケイ素粒子とを混合する工程と、前記混合する工程で得られたスラリーについて、前記スラリー中の前記金属酸化物粒子の表面電荷が正となり、前記スラリー中の前記炭化ケイ素粒子の表面電荷が負となる範囲に、前記スラリーのpHを調整する工程と、pHを調整した前記スラリーから分散媒を除去した後、成形する工程と、得られる成形体を、非酸化性雰囲気下、25MPa以上の圧力で押し固めながら1600℃以上に加熱して加圧焼結する工程と、を有する複合焼結体の製造方法を提供する。
【0018】
本発明の一態様においては、前記金属酸化物粒子と炭化ケイ素粒子とを混合する工程が、金属酸化物粒子と炭化ケイ素粒子とを、それぞれ高速で噴射してお互いに衝突させながら混合する工程であってもよい。
【0019】
本発明の一態様においては、前記混合する工程に先立って、前記炭化ケイ素粒子の表面を酸化処理する工程を有する製造方法としてもよい。
【0020】
本発明の一態様においては、前記pHを調整する工程は、前記スラリーのpHを3以上7以下とする製造方法としてもよい。
【0021】
本発明の一態様においては、前記金属酸化物粒子は、金属酸化物の含有量が99.99%以上である製造方法としてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高い誘電率と低い誘電正接とを両立する静電チャック用の複合焼結体を提供することができる。また、このような複合焼結体を用いた静電チャック部材、静電チャック装置を提供することができる。さらに、このような複合焼結体を容易に製造可能とする複合焼結体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態の静電チャック装置を示す断面図。
図2】スラリーpHと粒子のζ電位との関係を示すグラフ。
図3】本実施形態の複合焼結体の製造方法について説明する説明図。
図4】本実施形態の複合焼結体の製造方法について説明する説明図。
図5】本実施形態の複合焼結体の製造方法について説明する説明図。
図6】本実施形態の複合焼結体の製造方法について説明する説明図。
図7】本実施形態の複合焼結体の製造方法について説明する説明図。
図8】本実施形態の複合焼結体の製造方法について説明する説明図。
図9】実施例で体積固有抵抗値を測定する際の焼結体の様子を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1を参照しながら、本実施形態に係る静電チャック装置について説明する。以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0025】
[静電チャック装置]
図1は、本実施形態の静電チャック装置を示す断面図である。本実施形態の静電チャック装置1は、一主面(上面)側を載置面とした平面視円板状の静電チャック部2と、この静電チャック部2の下方に設けられて静電チャック部2を所望の温度に調整する厚みのある平面視円板状の温度調節用ベース部3と、を備えている。また、静電チャック部2と温度調節用ベース部3とは、静電チャック部2と温度調節用ベース部3の間に設けられた接着剤層8を介して接着されている。
以下、順に説明する。
【0026】
(静電チャック部)
静電チャック部2は、上面を半導体ウエハ等の板状試料Wを載置する載置面11aとした載置板11と、この載置板11と一体化され前記載置板11の底部側を支持する支持板12と、これら載置板11と支持板12との間に設けられた静電吸着用電極13および静電吸着用電極13の周囲を絶縁する絶縁材層14と、を有している。載置板11および支持板12は、本発明における「基体」に該当する。
【0027】
載置板11および支持板12は、重ね合わせた面の形状を同じくする円板状の部材である。載置板11および支持板12は、機械的な強度を有し、かつ腐食性ガスおよびそのプラズマに対する耐久性を有するセラミックス焼結体からなる。載置板11および支持板12の形成材料について、詳しくは後述する。
【0028】
載置板11の載置面11aには、直径が板状試料の厚みより小さい突起部11bが複数所定の間隔で形成され、これらの突起部11bが板状試料Wを支える。
【0029】
載置板11、支持板12、静電吸着用電極13および絶縁材層14を含めた全体の厚み、即ち、静電チャック部2の厚みは、一例として0.7mm以上5.0mm以下である。
【0030】
例えば、静電チャック部2の厚みが0.7mmを下回ると、静電チャック部2の機械的強度を確保することが難しくなる。静電チャック部2の厚みが5.0mmを上回ると、静電チャック部2の熱容量が大きくなり、載置される板状試料Wの熱応答性が劣化し、静電チャック部の横方向の熱伝達の増加により、板状試料Wの面内温度を所望の温度パターンに維持することが難しくなる。ここで説明した各部の厚さは一例であって、前記範囲に限るものではない。
【0031】
静電吸着用電極13は、電荷を発生させて静電吸着力で板状試料Wを固定するための静電チャック用電極として用いられるもので、その用途によって、その形状や、大きさが適宜調整される。
【0032】
静電吸着用電極13は、酸化アルミニウム-炭化タンタル(Al-Ta)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム-タングステン(Al-W)導電性複合焼結体、酸化アルミニウム-炭化ケイ素(Al-SiC)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム-タングステン(AlN-W)導電性複合焼結体、窒化アルミニウム-タンタル(AlN-Ta)導電性複合焼結体、酸化イットリウム-モリブデン(Y-Mo)導電性複合焼結体等の導電性セラミックス、あるいは、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)等の高融点金属により形成されることが好ましい。
【0033】
静電吸着用電極13の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、0.1μm以上かつ100μm以下の厚みを選択することができ、5μm以上かつ20μm以下の厚みがより好ましい。
【0034】
静電吸着用電極13の厚みが上記下限値を下回ると、充分な導電性を確保することが難しくなる。静電吸着用電極13の厚みが上記上限値を越えると、静電吸着用電極13と載置板11および支持板12との間の熱膨張率差に起因し、静電吸着用電極13と載置板11および支持板12との接合界面にクラックが入り易くなる。
【0035】
このような厚みの静電吸着用電極13は、スパッタ法や蒸着法等の成膜法、あるいはスクリーン印刷法等の塗工法により容易に形成することができる。
【0036】
絶縁材層14は、静電吸着用電極13のまわりを取り囲んで腐食性ガスおよびそのプラズマから静電吸着用電極13を保護するとともに、載置板11と支持板12との境界部、すなわち静電吸着用電極13以外の外周部領域を接合一体化する。絶縁材層14は、載置板11および支持板12を構成する材料と同一組成または主成分が同一の絶縁材料により構成されている。
【0037】
(温度調整用ベース部)
温度調節用ベース部3は、静電チャック部2を所望の温度に調整し、厚みのある円板状である。この温度調節用ベース部3としては、例えば、その内部に冷媒を循環させる流路3Aが形成された液冷ベース等が好適である。
【0038】
この温度調節用ベース部3を構成する材料としては、熱伝導性、導電性、加工性に優れた金属、またはこれらの金属を含む複合材であれば特に制限はない。例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウム合金、銅(Cu)、銅合金、ステンレス鋼(SUS) 等が好適に用いられる。この温度調節用ベース部3の少なくともプラズマに曝される面は、アルマイト処理が施されているか、あるいはアルミナ等の絶縁膜が成膜されていることが好ましい。
【0039】
温度調節用ベース部3の上面側には、接着層6を介して絶縁板7が接着されている。接着層6はポリイミド樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性、および、絶縁性を有するシート状またはフィルム状の接着性樹脂からなる。接着層は例えば厚み5~100μm程度に形成される。絶縁板7はポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの耐熱性を有する樹脂の薄板、シートあるいはフィルムからなる。
【0040】
絶縁板7は、樹脂シートに代え、絶縁性のセラミック板でもよく、またアルミナ等の絶縁性を有する溶射膜でもよい。
【0041】
(フォーカスリング)
フォーカスリング10は、温度調節用ベース部3の周縁部に載置される平面視円環状の部材である。フォーカスリング10は、例えば、載置面に載置されるウエハと同等の電気伝導性を有する材料を形成材料としている。このようなフォーカスリング10を配置することにより、ウエハの周縁部においては、プラズマに対する電気的な環境をウエハと略一致させることができ、ウエハの中央部と周縁部とでプラズマ処理の差や偏りを生じにくくすることができる。
【0042】
(その他の部材)
静電吸着用電極13には、静電吸着用電極13に直流電圧を印加するための給電用端子15が接続されている。給電用端子15は、温度調節用ベース部3、接着剤層8、支持板12を厚み方向に貫通する貫通孔16の内部に挿入されている。給電用端子15の外周側には、絶縁性を有する碍子15aが設けられ、この碍子15aにより金属製の温度調節用ベース部3に対し給電用端子15が絶縁されている。
【0043】
図では、給電用端子15を一体の部材として示しているが、複数の部材が電気的に接続して給電用端子15を構成していてもよい。給電用端子15は、熱膨張係数が互いに異なる温度調節用ベース部3および支持板12に挿入されているため、例えば、温度調節用ベース部3および支持板12に挿入されている部分について、それぞれ異なる材料で構成することとするとよい。
【0044】
給電用端子15のうち、静電吸着用電極13に接続され、支持板12に挿入されている部分(取出電極)の材料としては、耐熱性に優れた導電性材料であれば特に制限されるものではないが、熱膨張係数が静電吸着用電極13および支持板12の熱膨張係数に近似したものが好ましい。例えば、Al-TaCなどの導電性セラミック材料からなる。
【0045】
給電用端子15のうち、温度調節用ベース部3に挿入されている部分は、例えば、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、コバール合金等の金属材料からなる。
【0046】
これら2つの部材は、柔軟性と耐電性を有するシリコン系の導電性接着剤で接続するとよい。
【0047】
静電チャック部2の下面側には、ヒータエレメント5が設けられている。ヒータエレメント5は、一例として、厚みが0.2mm以下、好ましくは0.1mm程度の一定の厚みを有する非磁性金属薄板、例えばチタン(Ti)薄板、タングステン(W)薄板、モリブデン(Mo)薄板等をフォトリソグラフィー法やレーザー加工により所望のヒータ形状、例えば帯状の導電薄板を蛇行させた形状の全体輪郭を円環状に加工することで得られる。
【0048】
このようなヒータエレメント5は、静電チャック部2に非磁性金属薄板を接着した後に、静電チャック部2の表面で加工成型することで設けてもよく、静電チャック部2とは異なる位置でヒータエレメント5を加工成形したものを、静電チャック部2の表面に転写印刷することで設けてもよい。
【0049】
ヒータエレメント5は、厚みの均一な耐熱性および絶縁性を有するシート状またはフィルム状のシリコン樹脂またはアクリル樹脂からなる接着層4により支持板12の底面に接着・固定されている。
【0050】
ヒータエレメント5には、ヒータエレメント5に給電するための給電用端子17が接続されている。給電用端子17を構成する材料は先の給電用端子15を構成する材料と同等の材料を用いることができる。給電用端子17は、それぞれ温度調節用ベース部3に形成された貫通孔3bを貫通するように設けられている。給電用端子17の外周側には、絶縁性を有する碍子18が設けられ、この碍子18により金属製の温度調節用ベース部3に対し給電用端子17が絶縁されている。
【0051】
また、ヒータエレメント5の下面側には温度センサー20が設けられている。本実施形態の静電チャック装置1では、温度調節用ベース部3と接着層6を厚さ方向に貫通するように設置孔21が形成され、これらの設置孔21の最上部に温度センサー20が設置されている。温度センサー20はできるだけヒータエレメント5に近い位置に設置することが望ましいため、図に示す構造から更に接着剤層8側に突き出るように設置孔21を延在して形成し、温度センサー20とヒータエレメント5とを近づけることとしてもよい。
【0052】
温度センサー20は一例として石英ガラス等からなる直方体形状の透光体の上面側に不図示の蛍光体層が形成された蛍光発光型の温度センサーであり、この温度センサー20が透光性および耐熱性を有するシリコン樹脂系接着剤等によりヒータエレメント5の下面に接着されている。
【0053】
蛍光体層は、ヒータエレメント5からの入熱に応じて蛍光を発生する材料からなる。蛍光体層の形成材料としては、発熱に応じて蛍光を発生する材料であれば多種多様の蛍光材料を選択できる。蛍光体層の形成材料は、一例として、発光に適したエネルギー順位を有する希土類元素が添加された蛍光材料、AlGaAs等の半導体材料、酸化マグネシウム等の金属酸化物、ルビーやサファイア等の鉱物を挙げることができ、これらの材料の中から適宜選択して用いることができる。
【0054】
ヒータエレメント5に対応する温度センサー20はそれぞれ給電用端子などと干渉しない位置であってヒータエレメント5の下面周方向の任意の位置にそれぞれ設けられている。
【0055】
これらの温度センサー20の蛍光からヒータエレメント5の温度を測定する温度計測部22は、一例として、温度調節用ベース部3の設置孔21の外側(下側)に前記蛍光体層に対し励起光を照射する励起部23と、蛍光体層から発せられた蛍光を検出する蛍光検出器24と、励起部23および蛍光検出器24を制御するとともに前記蛍光に基づき主ヒータの温度を算出する制御部25とから構成されている。
【0056】
さらに、静電チャック装置1は、温度調節用ベース部3から載置板11までをそれらの厚さ方向に貫通するように設けられたガス穴28を有している。ガス穴28の内周部には筒状の碍子29が設けられている。
【0057】
このガス穴28には、不図示のガス供給装置(冷却手段)が接続される。ガス供給装置27からは、ガス穴28を介して板状試料Wを冷却するための冷却ガス(伝熱ガス)が供給される。冷却ガスは、ガス穴を介して載置板11の上面において複数の突起部11bの間に形成される溝19に供給され、板状試料Wを冷却する。
【0058】
さらに、静電チャック装置1は、温度調節用ベース部3から載置板11までをそれらの厚さ方向に貫通するように設けられた不図示のピン挿通孔を有している。ピン挿通孔は、例えばガス穴28と同様の構成を採用することができる。ピン挿通孔には、板状試料離脱用のリフトピンが挿通される。
静電チャック装置1は、以上のような構成となっている。
【0059】
(複合焼結体)
次に、本実施形態の基体(載置板11および支持板12)について、詳述する。
本実施形態の載置板11および支持板12は、金属酸化物と、炭化ケイ素と、を含むセラミックスの複合焼結体を形成材料としている。
【0060】
複合焼結体中、金属酸化物は主相である。具体的には、複合焼結体全体における金属酸化物の割合が、92質量%以上であることが好ましく、94質量%であることがより好ましい。
【0061】
複合焼結体中、炭化ケイ素は副相である。具体的には、複合焼結体全体における炭化ケイ素の割合が、8質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
本実施形態の複合焼結体が有する金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化イットリウムを使用可能である。
【0063】
本実施形態の複合焼結体において、金属酸化物の平均結晶粒径は、1.2μm以上10μm以下であることが好ましく、1.3μm以上5μm以下であることがより好ましい。
【0064】
複合焼結体において、金属酸化物の平均結晶粒径が上記下限値以上であることにより、金属酸化物の粒子自体の抵抗率が低下し過ぎることなく、十分な絶縁効果を発現させることができる。また、金属酸化物の平均結晶粒径が上記上限値以下であることにより、得られる焼結体の機械的強度が十分高くなり、欠け(チッピング)が生じ難くなる。
【0065】
複合焼結体において、金属酸化物の平均結晶粒径は、焼結温度を制御することにより調節可能である。焼結温度が高くなると、金属酸化物の平均結晶粒径が大きくなる傾向にあり、焼結温度が低くなると、金属酸化物の平均結晶粒径が小さくなる傾向にある。
【0066】
また、本実施形態の複合焼結体において、炭化ケイ素の結晶粒は、金属酸化物の結晶粒内および金属酸化物の結晶粒界に分散している。
【0067】
また、本実施形態の複合焼結体において、金属酸化物の結晶粒内に分散している炭化ケイ素の結晶粒の割合は、炭化ケイ素の結晶粒全体に対し面積比で25%以上である。残りの炭化ケイ素の結晶粒は、金属酸化物の結晶粒界に存在している。
【0068】
複合焼結体において、「炭化ケイ素の結晶粒全体」に対する「金属酸化物の結晶粒内に分散している炭化ケイ素の結晶粒」の割合が、面積比で25%以上であることにより、十分に絶縁性を向上させることができる。絶縁性を向上させるためには、上記割合は大きいほど好ましく、全ての炭化ケイ素の結晶粒が酸化アルミニウムの結晶粒内に分散している状態が特に好ましい。
【0069】
上記割合が25%以上であることにより、複合焼結体の誘電率が高くなる。また、上記割合が25%以上であることにより、低周波での誘電正接が小さくなる。
【0070】
本発明において、複合焼結体における「金属酸化物の結晶粒内に分散している炭化ケイ素の結晶粒の割合」は、複合焼結体の任意の視野の走査型電子顕微鏡写真から算出する。
【0071】
すなわち、無作為に選ばれた視野にて拡大倍率10000倍の電子顕微鏡写真を撮影し、この電子顕微鏡写真に写された炭化ケイ素の結晶粒の総面積を「炭化ケイ素の結晶粒全体」の面積とする。一方、上記電子顕微鏡写真において「金属酸化物の結晶粒内に分散している炭化ケイ素の結晶粒」の面積を求める。このようにして求められた面積から、「炭化ケイ素の結晶粒全体」に対する「金属酸化物の結晶粒内に分散している炭化ケイ素の結晶粒」の割合を面積比で求める。
【0072】
同様の処理を2つの視野の電子顕微鏡写真において行い、平均値を「金属酸化物の結晶粒内に分散している炭化ケイ素の結晶粒の割合」を示す面積比として求める。
【0073】
本実施形態の複合焼結体において、炭化ケイ素の結晶粒の平均結晶粒径は、0.03μm以上1μm以下であることが好ましく、0.05μm以上0.25μm以下であることがより好ましい。
【0074】
本実施形態の複合焼結体において、金属酸化物の結晶粒内に分散している炭化ケイ素の結晶粒の平均結晶粒径は、0.03μm以上0.7μm以下であることが好ましく、0.05μm以上0.2μm以下であることがより好ましい。
【0075】
本実施形態の複合焼結体において、金属酸化物の結晶粒界に存在している炭化ケイ素の結晶粒の平均結晶粒径は、0.03μm以上1μm以下であることが好ましく、0.05μm以上0.3μm以下であることがより好ましい。
【0076】
載置板11および支持板12の形成材料である複合焼結体は、上述のような構成であることにより、高い誘電率と高い体積固有抵抗値、すなわち、高い誘電率と低い誘電正接とを両立することができる。
【0077】
すなわち、本実施形態の複合焼結体を構成する物質のうち、主相である金属酸化物は絶縁体であり、副相である炭化ケイ素は導電体である。そのため、複合焼結体に通電しようとすると、電子は、導電体が配置された結晶粒界を移動しやすい。
【0078】
このとき、従来知られた同組成の複合焼結体にあっては、金属酸化物の結晶粒界には、炭化ケイ素の結晶粒が全体の80%以上存在しているものが知られている。
【0079】
対して、本実施形態の複合焼結体においては、金属酸化物の結晶粒内に分散している炭化ケイ素の結晶粒の割合は、炭化ケイ素の結晶粒全体に対し面積比で25%以上である。
すなわち、金属酸化物の結晶粒界には、炭化ケイ素の結晶粒が全体の75%以下存在している。
【0080】
そのため、本実施形態の複合焼結体は、電子が移動しやすい結晶粒界に存在する導電体(炭化ケイ素)の量が従来の複合焼結体と比べて少ないため、電子が移動し難く、体積固有抵抗値が高くなると考えられる。
【0081】
また、本実施形態の複合焼結体では、金属酸化物の結晶粒内に分散する炭化ケイ素の量が25%以上と、従来のものより多い。このように金属酸化物の結晶粒内に分散する炭化ケイ素の割合が増加すると、結晶粒内において導電体である炭化ケイ素粒子間の距離が短くなり、電気容量が増加する。そのため、本実施形態のような複合焼結体では、誘電率が高くなる傾向がある。
【0082】
金属酸化物の結晶粒内に分散している炭化ケイ素の結晶粒の割合は、炭化ケイ素の結晶粒全体に対し面積比で30%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。
【0083】
炭化ケイ素には、結晶構造が多数あることが知られており、立方晶系で3C型(閃亜鉛鉱型)の結晶構造を有するもの、4H型、6H型等の六方晶系でウルツ鉱型の結晶構造を有するもの、菱面体晶系で15R型の結晶構造を有するもの、が挙げられる。このうち、3C型の結晶構造を有するものを「β-SiC」と称する。また、それ以外の結晶構造を有するもの全てを「α-SiC」と称する。
【0084】
本実施形態の載置板11および支持板12は、複合焼結体に含まれるSiCがβ-SiCであることが好ましい。また、焼結体においては、β-SiCの結晶粒が、マトリックス材料である金属酸化物の結晶粒に取り囲まれる状態で分散して存在していることが好ましい。β-SiCの体積比率は、複合焼結体全体の4体積%以上15体積%以下が好ましく、6体積%以上10体積%以下がより好ましい。
【0085】
β-SiCの体積比率が上記下限値より少ないと、SiC粒子による電子導電性の発現効果が少ない。また、β-SiCの体積比率が上記上限値より多いと、SiC粒子同士の接触を生じSiC粒子を介した抵抗値低下を生じるおそれがある。
【0086】
また、本実施形態の複合焼結体においては、アルミニウム及びケイ素以外の金属不純物含有量が100ppm以下であることが好ましい。金属不純物含有量は、50ppm以下であることが好ましく、25ppm以下であることがより好ましい。
【0087】
[複合焼結体の製造方法]
本実施形態に係る複合焼結体の製造方法は、
(a)金属酸化物粒子と炭化ケイ素粒子とを、それぞれ高速で噴射してお互いに衝突させながら混合する工程と、
(b)混合する工程で得られたスラリーについて、スラリー中の金属酸化物粒子の表面電荷が正となり、スラリー中の前記炭化ケイ素粒子の表面電荷が負となる範囲に、スラリーのpHを調整する工程と、
(c)pHを調整し記スラリーから分散媒を除去した後、成形する工程と、
(d)得られる成形体を、非酸化性雰囲気下、25MPa以上の圧力で押し固めながら1600℃以上に加熱して加圧焼結する工程と、を有する。
【0088】
本実施形態においては、金属酸化物として酸化アルミニウムを用いた場合について以下説明する。
【0089】
本実施形態に係る複合焼結体の製造方法では、用いる酸化アルミニウム粒子は、酸化アルミニウムの含有量が99.99%以上であることが好ましく、99.9999以上であることがより好ましい。このような高純度の酸化アルミニウム粒子は、ミョウバン法を用いることにより調整可能である。ミョウバン法を用いて調整した酸化アルミニウム粒子は、例えばバイヤー法を用いて調整した酸化アルミニウム粒子と比べると、金属不純物であるナトリウム原子の含有量を大幅に低減することが可能である。また、所望の純度の酸化アルミニウム粒子が得られるのであれば、種々の方法を採用可能である。
【0090】
((a)混合する工程)
混合する工程においては、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用い、分散媒に分散させた酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とをそれぞれ加圧することで高速で噴射してお互いに衝突させながら混合する。これにより、酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とが粉砕され、これらの粉砕粒子を含む分散液(スラリー)が得られる。
【0091】
酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とを衝突させる際、大きい粒子は、衝突時の運動エネルギーが大きく、粉砕されやすい。一方、小さい粒子は、衝突時の運動エネルギーが小さく、粉砕されにくい。そのため、上記粉砕混合装置を用いて得られる酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子は、粗大粒子や過粉砕の粒子の少ない、粒度分布幅の狭い粒子となる。したがって、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用いて粉砕混合した混合粒子を用いると、焼結工程において、粗大粒子を核とする異常粒成長を抑制することができる。
【0092】
また、このような粉砕混合装置を用いて粉砕混合する場合、例えば、ボールミルやビーズミル等のメディアを用いて粉砕混合する方法と比べると、各メディアの破損に起因した不純物の混入を抑制することが可能である。
【0093】
本実施形態に係る複合焼結体の製造方法では、用いる炭化ケイ素粒子について、酸化性雰囲気下(例えば、大気雰囲気下)で加熱処理を施し、予め炭化ケイ素粒子の表面を酸化処理する工程を有するとよい。以下、上記酸化処理のことを「プレ酸化」と称する。プレ酸化は、例えば500℃で12時間加熱することにより行う。
【0094】
炭化ケイ素粒子をプレ酸化処理することにより、炭化ケイ素粒子の親水性が高まる。これにより、スラリー中での炭化ケイ素粒子の分散性が向上する。
【0095】
((b)pHを調整する工程)
pHを調整する工程においては、スラリー中の酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子との表面電荷を考慮してpH調整を行う。上記混合する工程で得られるスラリー(pH調整前のスラリー)は、通常、pH11程度の塩基性を示す。
【0096】
図2は、スラリー中の酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とについて、スラリーpHと粒子のζ電位との関係を示すグラフである。図中、横軸はスラリーのpHを示し、縦軸は、各粒子のζ電位(単位:mV)を示す。
【0097】
図に示すように、系のpHが酸性側(pH<7)の場合、酸化アルミニウム粒子のような金属酸化物粒子は、ζ電位が正となる。これは、系のpHが酸性側の場合、金属酸化物粒子の表面の水酸基がプロトン(H)化され、表面が正電荷を帯びることによる。
【0098】
一方、系のpHが塩基性側(pH>7)の場合、酸化アルミニウム粒子のような金属酸化物粒子は、ζ電位が負となる。これは、系のpHが塩基性側の場合、金属酸化物粒子の表面の水酸基からプロトンが解離し、表面が負電荷を帯びることによる。
【0099】
これに対し、炭化ケイ素粒子のζ電位の挙動は異なる。図に示すように炭化ケイ素粒子は、pH2~3付近でζ電位が0となり、pH3付近の酸性領域から、塩基性領域までの広い範囲でζ電位が負となる。
【0100】
このような関係のある2つの粒子が同じスラリーに共存している場合、系のpHが「スラリー中の酸化アルミニウム粒子の表面電荷が正」となり、「スラリー中の炭化ケイ素粒子の表面電荷が負」となる範囲では、両粒子が凝集する、所謂ヘテロ凝集が生じる。
【0101】
この際、酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子とが沈殿しないように、スラリー中には、適宜分散剤を添加しておくとよい。
【0102】
系のpHは、3以上7以下が好ましく、5以上7以下がより好ましく、6以上7以下がさらに好ましい。pH調整後の両粒子のζ電位同士を比べた場合、ζ電位の絶対値が近いほどヘテロ凝集しやすく、所望の凝集状態となる。
【0103】
pHの調整は、スラリーに酸を加えることにより行う。使用可能な酸としては、硝酸、リン酸、塩酸、硫酸等の無機酸、酢酸等の有機酸を挙げることができる。このうち、塩酸、硫酸等は、後述の焼結する工程において装置内で塩素や硫黄を生じ、装置劣化の原因となり得る。そのため、pHの調整には、硝酸、リン酸、有機酸等を用いることが好ましい。
【0104】
((c)成形する工程)
成形する工程においては、まず、pH調整後の分散液をスプレードライすることにより、酸化アルミニウム粒子と炭化ケイ素粒子との混合粒子からなる顆粒を得る。
【0105】
次いで、目的とする焼結体の形状に応じて、得られた顆粒を一軸成形(一軸プレス成形)する。
【0106】
次いで、得られた成形体を不活性ガス雰囲気下、常圧で(プレスすることなく)例えば500℃に加熱し、成形体に含まれる水分や分散媒等の夾雑物を除去する。不活性ガスとしては、窒素またはアルゴンを用いることができる。この操作においては、成形体を変性することなく成形体から夾雑物を除去できるならば、加熱温度は500℃に限られない。
【0107】
さらに、夾雑物を除去した成形体を、大気中、例えば400℃で加熱して成形体を構成する混合粒子を、酸化処理する酸化工程を有することが好ましい。このような操作によれば、酸化処理において混合粒子に含まれる炭化ケイ素粒子の表面には酸化膜が形成される。酸化膜には、混合粒子に含まれる金属不純物が溶け出しやすいため、混合粒子に含まれる金属不純物が粒子表面に偏って存在することになる。すると、後述する加圧焼結する工程において、金属不純物を除去しやすいため好ましい。
【0108】
((d)加圧焼結する工程)
加圧焼成する工程においては、まず、上述の成形体を、真空雰囲気(第1の非酸化性雰囲気)において、1600℃よりも低い温度且つ常圧で(プレスすることなく)加熱(予備加熱)する。このような操作によれば、予備加熱時の温度を適宜設定することにより、混合粒子に含まれるアルカリ金属等の金属不純物が蒸発し、金属不純物を容易に除去できる。そのため、このような操作によれば、混合粒子の純度を向上しやすくなり、基体の体積抵抗値を制御しやすくなる。
【0109】
また、成形する工程において、上述したように夾雑物を除去した成形体に対し酸化処理を施すと、真空雰囲気下で予備加熱することにより、粒子表面に形成された酸化膜が揮発する。同時に、酸化膜に含まれる金属不純物が蒸発する。そのため、成形体から金属不純物を容易に除去できる。したがって、このような操作によれば、混合粒子の純度を向上しやすくなり、基体の体積抵抗値を制御しやすくなる。
【0110】
本実施形態において「真空」とは、「大気圧より低い圧力の基体で満たされた空間内の状態」のことであり、JIS規格において工業的に利用できる圧力として定義された状態のことを指す。本実施形態においては、真空雰囲気は、低真空(100Pa以上)であってもよいが、中真空(0.1Pa~100Pa)であると好ましく、高真空(10-5Pa~0.1Pa)であるとより好ましい。
【0111】
本実施形態の複合焼結体の製造方法においては、例えば、真空雰囲気下、1200℃で4時間以上予備加熱した後、大気圧までアルゴンで気圧を戻す。
【0112】
次いで、予備加熱を施した成形体を、アルゴン雰囲気(第2の非酸化性雰囲気)において、5MPa以上の圧力で押し固めながら1600℃以上に加熱して加圧焼結する。このような操作によれば、成形体に含まれる酸化アルミニウム粒子や炭化ケイ素粒子の焼結が進行し、気孔の少ない緻密な焼結体が得られる。
【0113】
本実施形態の複合焼結体の製造方法においては、例えば、アルゴン雰囲気下、1600℃以上1850℃以下で、焼結圧力25MPa以上50MPa以下の範囲で焼結する。
【0114】
このような方法で製造して得られた焼結体は、金属不純物含有量が低減し高純度となる。金属不純物含有量が目標値に達しない場合には、予備加熱の時間を長くする、または予備加熱の温度を高くするとよい。
【0115】
図3~8は、本実施形態の複合焼結体の製造方法について説明する説明図である。
図3は、例えばpH11程度のスラリーにおける粒子の状態を示す模式図である。図4は、図3で示したスラリーから分散媒を除去した時の粒子の状態を示す模式図である。図5は、図4で示した粒子を用いて作製した複合焼結体を示す模式図である。
【0116】
図5において、各図の六角形は、それぞれ主相である酸化アルミニウムの結晶粒を示している。また、図5において、各図の黒丸は、それぞれ副相である炭化ケイ素の結晶粒を示し、黒丸の大きさは炭化ケイ素の結晶粒の大きさを示している。
【0117】
図3において、符号Aは酸化アルミニウム粒子、符号Bは炭化ケイ素粒子を示す。上述の図2で示したように、pH11程度のスラリーにおいては、酸化アルミニウム粒子および炭化ケイ素粒子のいずれもが、表面が負に帯電している(ζ電位が負である)ため、スラリー系中で互いに反発する。
【0118】
これにより、図4に示すように、(c)成形する工程において分散媒を除去する際、異種粒子同士が均一に混ざり合いにくく、同種の粒子同士が凝集しやすい状況が生まれる。
その結果、(d)焼結する工程において、炭化ケイ素粒子を排除した形で酸化アルミニウム粒子同士が焼結しやすくなる。
【0119】
そのため、図5に示すように、得られる複合焼結体では、炭化ケイ素の結晶粒は、酸化アルミニウムの結晶粒から排除される形で結晶粒界に多く存在する。また、酸化アルミニウムの結晶粒内に存在する炭化ケイ素の結晶粒は、大きく育ちやすく、粒子数も少なくなりやすい。
【0120】
一方、図6は、例えば図3のスラリーをpH6.5程度に調整した後の状態を示す模式図である。図6~8はそれぞれ、図3~5に対応する図である。
【0121】
図6に示すように、pH6.5程度のスラリーにおいては、酸化アルミニウム粒子の表面が正に帯電し(ζ電位が正)、炭化ケイ素粒子の表面が負に帯電する(ζ電位が負)。
そのため、スラリー系中ではヘテロ凝集し、相対的に大きい粒子である酸化アルミニウム粒子の表面に、相対的に小さい粒子である炭化ケイ素粒子が付着する。
【0122】
一方、本実施形態の複合焼結体の製造方法において、スラリーのpHを6.5程度に調整し炭化ケイ素粒子のζ電位が低下すると、炭化ケイ素粒子同士で凝集(ホモ凝集)するおそれも高まる。
【0123】
これに対し、上述のように用いる炭化ケイ素粒子をプレ酸化する場合、炭化ケイ素粒子の分散性が向上する。そのため、プレ酸化処理を施した炭化ケイ素粒子を用いる場合、炭化ケイ素粒子のホモ凝集を抑制し、上記ヘテロ凝集を優位に進めることができる。これにより、所望の凝集状態を得やすくなる。
【0124】
図7に示すように、(c)成形する工程において分散媒を除去する際には、すでに表面に炭化ケイ素が付着した酸化アルミニウムが凝集することにより、異種粒子同士が均一に混ざり合いやすい状況が生まれる。その結果、(d)焼結する工程において、炭化ケイ素粒子を取り込みながら酸化アルミニウム粒子同士が焼結しやすくなる。
【0125】
そのため、図8に示すように、得られる複合焼結体では、酸化アルミニウムが多くの炭化ケイ素の結晶粒を取り込みながら成長する。このため、酸化アルミニウムの結晶粒界における炭化ケイ素の結晶粒は、存在量が少なくなる。また、酸化アルミニウムの結晶粒内においても炭化ケイ素の結晶粒は、小さくなりやすく、粒子数も多くなりやすい。
【0126】
以上のようにして、本実施形態の複合焼結体を製造することができる。
【0127】
得られた複合焼結体は、続く工程において研削することにより、所望の基体とすることができる。基体の載置面に形成された突起については、公知の方法により適宜形成可能である。
【0128】
以上のような複合焼結体によれば、高い誘電率と低い誘電正接とを両立することができる。
【0129】
また、このような複合焼結体を用いた静電チャック部、静電チャック装置によれば、低周波領域において好適に用いることができる。
【0130】
また、以上のような複合焼結体の製造方法によれば、上述の複合焼結体を容易に製造可能となる。
【0131】
また、以上のような静電チャック部、静電チャック装置によれば、高いウエハ吸着力と高い耐電圧とを備えた高性能となる。
【0132】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例
【0133】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0134】
(体積固有抵抗値)
本実施例においては、直流三端子法により円盤状の焼結体の体積固有抵抗値を測定した。
【0135】
(使用機器)
スクリーン印刷機:MODEL MEC-2400型、ミタニマイクロニクス株式会社製
抵抗率測定装置:西山製作所製
絶縁計:デジタル絶縁計(型式DSM-8103、日置電機株式会社)
【0136】
(測定条件)
温度:室温(24℃)、50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃
雰囲気:窒素(純度99.99995%、流量200ml/分)
印加電圧:0.5kV、1kV
【0137】
(測定方法)
スクリーン印刷機を用いて、銀ペースト(NP-4635、株式会社ノリタケカンパニーリミテッド製)を焼結体の上面及び下面に印刷し、大気中100℃で12時間乾燥させた後、大気中450℃で1時間焼き付け、主電極、ガード電極、対極を形成した。図9は、本実施例で体積固有抵抗値を測定する際の焼結体の様子を示す模式図である。図において、符号100は焼結体、符号110は主電極、符号120はガード電極、符号130は対極を示す。
【0138】
このとき、主電極直径は1.47cmであり、ガード電極の内径は1.60cmであった。
【0139】
上述のように電極を形成した焼結体に対し、各測定温度において直流電圧を印加し、1分間充電後の電流を測定して、焼結体の体積抵抗を求めた。その後、焼結体の厚み、および電極面積を用いて下記式(1)より体積固有抵抗値(ρv)を算出した。
ρv=S/t×Rv=S/t×V/I …(1)
(S:電極の有効面積(cm)、t:焼結体の厚み(cm)、Rv:体積抵抗、V:直流電圧(V)、I:電流(A))
【0140】
(比誘電率・誘電正接)
本実施例においては、プレシジョン・インピーダンス・アナライザー(Agilent Technologies社製、型番:4294A)、および誘電体テスト・フィクスチャ(Agilent Technologies社製、型番:16451B)を用い、平行平板法にて比誘電率・誘電正接を測定した。
【0141】
(耐電圧)
本実施例においては、高圧電源(松定プレシジョン社製、型番HGR10-20P)を用い、焼結体を直径20mmの円柱状電極で挟んだ後、室温のシリコーン油中にて昇温速度1kV/秒で電圧を印加したとき、試験片に1μAの電流が流れる電圧(耐電圧)を測定した。
【0142】
(金属酸化物の結晶粒内に分散している炭化ケイ素の結晶粒の割合)
本実施例においては、複合酸化物(焼結体)の表面を3μmのダイヤモンドペーストで鏡面研磨した後、アルゴン雰囲気下、1400℃で30分サーマルエッチングを施した。
得られた焼結体の表面を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー株式会社製、型番:S-4000)を用いて、拡大倍率10000倍で組織観察を行った。
【0143】
得られた電子顕微鏡写真を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Mac-View Version4)に取り込み、200個以上の炭化ケイ素粒子の面積を算出させた。電子顕微鏡写真から各炭化ケイ素粒子について金属酸化物の結晶粒内に存在しているか否かを判断し、面積を求めた炭化ケイ素粒子全体に対する、金属酸化物の結晶粒内に分散している炭化ケイ素の結晶粒の割合を求めた。
【0144】
(金属酸化物の結晶粒の平均結晶粒径)
上記電子顕微鏡写真を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Mac-View Version4)に取り込み、200個以上の金属酸化物の結晶粒の長軸径を算出させた。得られた各結晶粒の長軸径の算術平均値を、求める「平均結晶粒径」とした。
【0145】
(実施例1)
出発原料として、平均粒子径が0.03μmであり熱プラズマCVDで合成されたβ-SiC型の炭化ケイ素(β-SiC)粒子と、平均粒子径が0.1μmであり金属不純物含有量が95ppmの酸化アルミニウム(Al)粒子とを用いた。
【0146】
β-SiC粒子については、大気雰囲気下、500℃で12時間加熱処理し、粒子表面を酸化させた。以下、上記酸化処理のことを「プレ酸化」と称する。以下の工程においては、プレ酸化処理を施したβ-SiCを用いた。
【0147】
β-SiC粒子とAl粒子との全体量に対し、β-SiC粒子が7質量%となるように秤量し、分散剤が入った蒸留水に投入した。β-SiC粒子とAl粒子とを投入した分散液について、超音波分散装置にて分散処理の後、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用いて粉砕混合した。
本操作は、本発明における「混合する工程」に該当する。
【0148】
得られた混合溶液について、スラリーに硝酸を添加し、スラリーのpHを6.5に調整した。
本操作は、本発明における「pHを調整する工程」に該当する。
【0149】
pHを調整したスラリーをスプレードライ装置にて噴霧乾燥させ、β-SiCとAlとの混合粒子とした。
本操作は、本発明における「成形する工程」の一部に該当する。
【0150】
次いで、混合粒子を窒素雰囲気下、370℃まで昇温させ、水分および分散剤(夾雑物)を除去した。
【0151】
混合粒子をプレス圧8MPaで一軸プレス成形し、直径320mm×15mm厚の成形体とした。
本操作は、本発明における「成形する工程」の一部に該当する。
【0152】
得られた成形体を黒鉛製のモールドにセットし、加圧焼結を行った。まず、成形体を、真空雰囲気下、プレス圧を加えることなく1200℃まで昇温させた。その後、アルゴン雰囲気下、プレス圧40MPa、1800℃で焼結を行い、実施例1の複合焼結体を得た。
本操作は、本発明における「加圧焼結する工程」に該当する。
【0153】
また、実施例1の複合焼結体について、上述の条件にて電子顕微鏡写真を撮影した。得られた電子顕微鏡写真からAlの平均結晶粒径を求めたところ、1.41μmであった。また、SiCの平均結晶粒径を求めたところ、0.22μmであった。
【0154】
Alの結晶粒内に分散しているSiCの結晶粒の割合は、27%であった。
【0155】
(実施例2)
β-SiC粒子とAl粒子との全体量に対し、β-SiC粒子を5質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の複合焼結体を得た。
【0156】
また、実施例2の複合焼結体について、上述の条件にて電子顕微鏡写真を撮影した。得られた電子顕微鏡写真からAlの平均結晶粒径を求めたところ、1.44μmであった。また、SiCの平均結晶粒径を求めたところ、0.18μmであった。
【0157】
Alの結晶粒内に分散しているSiCの結晶粒の割合は、41%であった。
【0158】
(実施例3)
β-SiC粒子とAl粒子とを投入した分散液について、超音波分散装置にて分散処理の後、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用いて粉砕混合する代わりに、サンドミルを用いて分散処理及び粉砕混合したこと以外は実施例2と同様にして、実施例3の複合焼結体を得た。
上記のサンドミルを用いた分散処理及び粉砕混合の工程では、粒径φ0.1mmのアルミナビーズを使用し、2500rpmで2時間回転させた。
【0159】
(比較例1)
β-SiC粒子とAl粒子との全体量に対し、β-SiC粒子が8.5質量%となるように原料を秤量し、超音波分散装置にて分散処理の後、2流粒子衝突型の粉砕混合装置を用いて粉砕混合した。
【0160】
得られた混合溶液について、スラリーに硝酸を添加し、スラリーのpHを6.5に調整した。
【0161】
pHを調整したスラリーをスプレードライ装置にて噴霧乾燥させ、β-SiCとAlとの混合粒子とした。
【0162】
混合粒子をプレス圧8MPaで一軸プレス成形し、直径320mm×15mm厚の成形体とした。
【0163】
次いで、成形体を窒素雰囲気下、プレス圧を加えることなく370℃まで昇温させ、水分および分散剤(夾雑物)を除去した。その後、夾雑物を除去した成形体を大気中370℃に加熱し、成形体に含まれるβ-SiC粒子の表面を酸化した。
【0164】
得られた成形体について実施例1と同様に焼結を行い、比較例1の複合焼結体を得た。
【0165】
比較例1の複合焼結体について、上述の条件にて電子顕微鏡写真を撮影した。得られた電子顕微鏡写真からAlの平均結晶粒径を求めたところ、0.94μmであった。
また、SiCの平均結晶粒径を求めたところ、0.34μmであった。
【0166】
Alの結晶粒内に分散しているSiCの結晶粒の割合は、14%であった。
【0167】
(比較例2)
β-SiC粒子とAl粒子との全体量に対し、β-SiC粒子を4質量%としたこと以外は、比較例1と同様にして、比較例2の複合焼結体を得た。
【0168】
また、比較例2の複合焼結体について、上述の条件にて電子顕微鏡写真を撮影した。得られた電子顕微鏡写真からAlの平均結晶粒径を求めたところ、1.05μmであった。また、SiCの平均結晶粒径を求めたところ、0.29μmであった。
【0169】
Alの結晶粒内に分散しているSiCの結晶粒の割合は、18%であった。
【0170】
(比較例3)
β-SiC粒子とAl粒子との全体量に対し、β-SiC粒子を12質量%としたこと、およびプレス成型後の成形体に含まれるβ-SiC粒子の酸化処理の温度を500℃としたこと以外は、比較例1と同様にして、比較例3の複合焼結体を得た。
【0171】
また、比較例3の複合焼結体について、上述の条件にて電子顕微鏡写真を撮影した。得られた電子顕微鏡写真からAlの平均結晶粒径を求めたところ、0.85μmであった。また、SiCの平均結晶粒径を求めたところ、0.27μmであった。
【0172】
Alの結晶粒内に分散しているSiCの結晶粒の割合は、16%であった。
【0173】
実施例1,2、比較例1~3の評価結果を表1~3に示す。
【0174】
【表1】
【0175】
【表2】
【0176】
【表3】
【0177】
評価の結果、実施例の複合焼結体は、比較例の複合焼結体と比べ、誘電率が向上していた。
【0178】
また、実施例の複合焼結体は、比較例の複合焼結体と比べ、誘電正接が大幅に低下していた。
【0179】
本実施形態の結果から、本発明の複合焼結体は、高い誘電率と低い誘電正接とを両立することが分かり、本発明が有用であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0180】
高い誘電率と低い誘電正接とを両立する静電チャック用の複合焼結体を提供することができる。また、このような複合焼結体を用いた静電チャック部材、静電チャック装置を提供することができる。さらに、このような複合焼結体を容易に製造可能とする複合焼結体の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0181】
1 静電チャック装置
2 静電チャック部
3 温度調整用ベース部
3b 貫通孔
4 接着層
5 ヒータエレメント
6 接着層
7 絶縁板
8 接着剤層
10 フォーカスリング
11 載置板(基体)
11a 載置面
11b 突起部
12 支持板(基体)
13 静電吸着用電極
14 絶縁材層
15 給電用端子
15a 硝子
16 貫通孔
17 給電用端子
18 硝子
19 溝
20 温度センサー
21 設置孔
22 温度計測部
23 励起部
24 蛍光検出器
25 制御部
28 ガス穴
29 硝子
100 焼結体
110 主電極
120 ガード電極
130 対極
A 酸化アルミニウム粒子
B 炭化ケイ素粒子
3A 流路
W 板状試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9