IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友化学株式会社の特許一覧

特許7063841反射防止用偏光板、光学積層体及び光学積層体の製造方法
<>
  • 特許-反射防止用偏光板、光学積層体及び光学積層体の製造方法 図1
  • 特許-反射防止用偏光板、光学積層体及び光学積層体の製造方法 図2
  • 特許-反射防止用偏光板、光学積層体及び光学積層体の製造方法 図3
  • 特許-反射防止用偏光板、光学積層体及び光学積層体の製造方法 図4
  • 特許-反射防止用偏光板、光学積層体及び光学積層体の製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】反射防止用偏光板、光学積層体及び光学積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20220426BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220426BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220426BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220426BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/14 A
H05B33/02
H01L27/32
G09F9/00 313
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019075029
(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公開番号】P2019211761
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2018105219
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 龍源
(72)【発明者】
【氏名】宋 ▲ビョン▼▲フン▼
(72)【発明者】
【氏名】金 東輝
【審査官】酒井 康博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-232647(JP,A)
【文献】特開2013-109090(JP,A)
【文献】特開2013-228706(JP,A)
【文献】特開2012-073563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面の反射率がRp(%)である画像表示パネルの当該前面に配置して用いられる反射防止用偏光板であって、
タッチセンサパネル、位相差板、直線偏光板をこの順に備え、
前記タッチセンサパネルが前記画像表示パネル側となる向きで前記画像表示パネルの前面に配置して用いられ、
前記直線偏光板は、重合性液晶化合物の重合体と二色性色素とを含む偏光層を有し、
前記反射防止用偏光板は、視感度補正直交透過率Tcr(%)が、式(1a)の関係を満たし、視感度補正偏光度Py(%)が95%以上であ視感度補正単体透過率Ty(%)が40%以上42.21%以下である、反射防止用偏光板。
Rp×Tcr≦150 (1a)
【請求項2】
視感度補正直交透過率Tcr(%)が、式(1d)の関係を満たす、請求項1に記載の反射防止用偏光板。
Rp×Tcr≦100 (1d)
【請求項3】
視感度補正直交透過率Tcr(%)が、式(1b)の関係を満たす、請求項1又は2に記載の反射防止用偏光板。
Rp×Tcr≦68 (1b)
【請求項4】
前記位相差板は、重合性液晶化合物の重合体を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の反射防止用偏光板。
【請求項5】
前記画像表示パネルと、前記画像表示パネルの前記前面に配置された請求項1~4のいずれか1項に記載の反射防止用偏光板とを含む、光学積層体。
【請求項6】
有機EL表示装置である、請求項5に記載の光学積層体。
【請求項7】
前面の反射率がRp(%)である画像表示パネルを準備する工程と、
タッチセンサパネル、位相差板、直線偏光板をこの順に備え、前記直線偏光板は、重合性液晶化合物の重合体と二色性色素とを含む偏光層を有し、視感度補正直交透過率Tcr(%)が式(1a)を満たし、視感度補正偏光度Py(%)が95%以上であり、視感度補正単体透過率Ty(%)が40%以上42.21%以下である、反射防止用偏光板を準備する工程と、
前記タッチセンサパネルが前記画像表示パネル側となる向きで前記画像表示パネルの前面に、前記反射防止用偏光板を配置する工程と、を有する光学積層体の製造方法。
Rp×Tcr≦150 (1a)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止用偏光板、光学積層体及び光学積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置は、通常、画像表示パネルの視認側に反射防止用偏光板を配置して、外部光の反射による視認性の低下を抑制する構成が採用されている。
【0003】
反射防止用偏光板は、直線偏光板、及び1/4波長位相差層を有する位相差板により構成することができる。特開2012-133312号公報(特許文献1)には、高い光学特性を有する10μm以下の偏光膜を用いて構成された反射防止用偏光板が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-133312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、画像表示パネルの前面に配置して用いられ、外部光の反射による視認性の低下を十分に抑制することができる、反射防止用偏光板、当該反射防止用偏光板を備える光学積層体、及び当該光学積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す反射防止用偏光板、当該反射防止用偏光板を備える画像表示装置、及び当該画像表示装置の製造方法を提供する。
【0007】
〔1〕 前面の反射率がRp(%)である画像表示パネルの当該前面に配置して用いられる反射防止用偏光板であって、
視感度補正直交透過率Tcr(%)が、式(1a)の関係を満たす、反射防止用偏光板。
Rp×Tcr≦150 (1a)
〔2〕 タッチセンサパネル、位相差板、直線偏光板をこの順に備え、
前記タッチセンサパネルが前記画像表示パネル側となる向きで前記画像表示パネルの前面に配置して用いられる反射防止用偏光板であって、
視感度補正直交透過率Tcr(%)が、式(1d)の関係を満たす、〔1〕に記載の反射防止用偏光板。
Rp×Tcr≦100 (1d)
〔3〕 視感度補正直交透過率Tcr(%)が、式(1b)の関係を満たす、〔1〕又は〔2〕に記載の反射防止用偏光板。
Rp×Tcr≦68 (1b)
〔4〕 視感度補正偏光度Py(%)が95%以上である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の反射防止用偏光板。
〔5〕 重合性液晶化合物の重合体を含む偏光層を有する、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の反射防止用偏光板。
〔6〕 前記画像表示パネルと、前記画像表示パネルの前面に配置された〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の反射防止用偏光板とを含む、光学積層体。
〔7〕 有機EL表示装置である、〔6〕に記載の光学積層体。
〔8〕 前面の反射率がRp(%)である画像表示パネルを準備する工程と、
視感度補正直交透過率Tcr(%)が式(1a)を満たす、反射防止用偏光板を準備する工程と、
前記画像表示パネルの前面に前記反射防止用偏光板を配置する工程と、を有する画像表示装置の製造方法。
Rp×Tcr≦150 (1a)
【発明の効果】
【0008】
本発明の反射防止用偏光板を用いることにより、画像表示パネルの前面において、外部光の反射による視認性の低下を十分に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】有機EL表示装置の一例を示す縦断面図である。
図2】有機EL表示装置の他の例を示す縦断面図である。
図3】有機EL表示装置の画素の層構造とその駆動回路の図である。
図4】検証用の光学積層体のサンプルの縦断面図である。
図5】検証用の光学積層体のサンプルの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一形態の反射防止用偏光板、当該反射防止用偏光板及び画像表示パネルを備える光学積層体、及び当該光学積層体の製造方法を説明する。当該光学積層体は、単独で又は他の構成要素と組み合わされて画像表示装置を構成し得る。
【0011】
[反射防止用偏光板]
本形態の反射防止用偏光板は、直線偏光板と位相差板とを備え、前面の反射率がRp((%)である画像表示パネルの当該前面に配置して用いられる。換言すれば、本形態の反射防止用偏光板は、視認側から観察したときの反射率がRp(%)である画像表示パネルの視認側に配置される。反射防止用偏光板は、画像表示パネルの前面に近い側から、位相差板、直線偏光板の順で位置するように配置される。反射防止用偏光板は、さらにタッチセンサパネルを備え、画像表示パネルの前面に近い側から、タッチセンサパネル、位相差板、直線偏光板の順で位置するように配置される構成であってもよい。
【0012】
反射防止用偏光板は、視感度補正直交透過率Tcr(%)が、式(1a)の関係を満たし、好ましくは式(1b)の関係を満たす。
Rp×Tcr≦150 (1a)
Rp×Tcr≦68 (1b)
【0013】
反射防止用偏光板は、式(1a)の関係を満たすことにより、画像表示装置において、外部光の反射による視認性の低下を十分に抑制することができる。また、式(1b)の関係を満たすものとすることにより、画像表示装置において、外部光の反射による視認性の低下をさらに抑制することができる。なお、反射率Rp(%)は、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)を用いてSCI(正反射光含む)モードで測定した値とする。反射率Rp(%)は、視感反射率、すなわちXYZ表色系における三刺激値のY値(%)である。反射率Rp(%)は、JIS Z 8722に準拠して測定することができる。
【0014】
反射防止用偏光板は、画像表示パネルの前面に近い側から、タッチセンサパネル、位相差板、直線偏光板の順で位置するように配置されている構成の場合、視感度補正直交透過率Tcr(%)が、好ましくは式(1d)の関係を満たし、さらに好ましくは式(1b)の関係を満たす。
Rp×Tcr≦100 (1d)
【0015】
反射防止用偏光板は、タッチセンサパネルを備える場合に式(1d)の関係を満たすことにより、タッチセンサパネルの導電層が視認されにくくなるという効果を奏する。
【0016】
画像表示パネルの反射率Rp(%)は、例えば10%以上99%以下である。画像表示パネルの反射率Rp(%)は、例えば、後述のとおり、アノード電極やカソード電極の材料によって制御することができる。反射防止用偏光板は、画像表示装置において、反射した外部光に比べてパネルの発光を大きくし、画面の視認性を向上させる観点から、視感度補正直交透過率Tcr(%)が、式(1c)の関係を満たすことが好ましい。
1≦Rp×Tcr (1c)
【0017】
反射防止用偏光板の視感度補正直交透過率Tcr(%)は、画像表示装置において、外部光の反射による視認性の低下を抑制しつつ十分な画面輝度を得る観点から、0.1%以上10%以下であることが好ましく、0.2%以上5%以下であることがより好ましい。反射防止用偏光板の視感度補正直交透過率Tcr(%)は、直線偏光板の視感度補正直交透過率、位相差板の位相差値および波長分散性、タッチセンサパネルの層構成などより制御することができる。
【0018】
反射防止用偏光板の視感度補正単体透過率Ty(%)は、画像表示装置において、外部光の反射による視認性の低下を抑制しつつ十分な画面輝度を得る観点から、40%以上48%以下であることが好ましく、41%以上47%以下であることがより好ましい。また、反射防止用偏光板の視感度補正偏光度Py(%)は、画像表示装置において、外部光の反射による視認性の低下を抑制しつつ十分な画面輝度を得る観点から、92%以上99.9%以下であることが好ましく、95%以上99.8%以下であることがより好ましい。
【0019】
反射防止用偏光板の視感度補正直交透過率Tcr(%)及び視感度補正偏光度Py(%)は、式(2a)の関係を満たすことが好ましく、式(2b)の関係を満たすことがより好ましい。
Rp×Tcr×Py≦1.5×10 (2a)
Rp×Tcr×Py≦6.5×10 (2b)
【0020】
反射防止用偏光板は、画像表示装置において、反射した外部光に比べてパネルの発光を大きくし、画面の視認性を向上させる観点から、視感度補正直交透過率Tcr(%)及び視感度補正偏光度Py(%)は、式(2c)の関係を満たすことが好ましい。
1.0×10≦Rp×Tcr×Py (2c)
【0021】
反射防止用偏光板の厚みは、薄型化の観点から、50~500μmであることが好ましく、50~200μmであることがより好ましく、50~150μmであることがさらに好ましい。
【0022】
反射防止用偏光板は、直線偏光板と位相差板とを備え、例えば、直線偏光板と位相差板とを接着層等の貼合層を介して積層させることにより反射防止用偏光板を得ることができる。反射防止用偏光板を構成する直線偏光板と位相差板とは、それぞれ、単層であっても、複層であってもよい。
【0023】
反射防止用偏光板においては、位相差板の遅相軸(光軸)と直線偏光板の吸収軸とを実質的に45°又は135°となるように積層することが好ましい。位相差板の遅相軸(光軸)と直線偏光板の吸収軸とを実質的に45°又は135°となるように積層することにより、反射防止機能を得ることができる。なお、実質的に45°又は135°とは通常45±5°又は135±5°の範囲である。
【0024】
本明細書における、反射防止用偏光板の、視感度補正直交透過率Tcr(%)、視感度補正単体透過率Ty(%)、及び視感度補正偏光度Py(%)は、以下の方法により測定し算出した値である。反射防止用偏光板について、積分球付き分光光度計(日本分光(株)製、V7100)を用いて波長380~780nmの範囲におけるMD透過率とTD透過率を測定し、下記式:
単体透過率(%)=(MD+TD)/2
偏光度(%)={(MD-TD)/(MD+TD)}×100
に基づいて各波長における単体透過率及び偏光度を算出する。
【0025】
「MD透過率」とは、グラントムソンプリズムから出る偏光の向きと反射防止用偏光板の直線偏光板の透過軸とを平行にしたときの透過率であり、上記式においては「MD」と表す。また、「TD透過率」とは、グラントムソンプリズムから出る偏光の向きと反射防止用偏光板の直線偏光板の透過軸とを直交にしたときの透過率であり、上記式においては「TD」と表す。得られた単体透過率、偏光度及び直交透過率(TD透過率)について、JIS Z 8701:1999「色の表示方法-XYZ表色系及びX101010表色系」の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率(Ty)、視感度補正偏光度(Py)及び視感度補正直交透過率(Tcr)を求める。
【0026】
<位相差板>
位相差板は、直線偏光板とともに用いられ、直線偏光板からの直線偏光を位相差によって、円偏光(右円偏光又は左円偏光)に変換し、画像表示パネルで反射された円偏光(左円偏光又は右円偏光)を再度直線偏光(その時の直線偏光の振動方向は偏光板の吸収軸に一致する)に変換する機能を有する。ここでいう円偏光としては、実質的に反射防止機能を発現する範囲であれば楕円偏光も包含される。
【0027】
位相差板は、位相差層を含み、位相差層としては、代表的に1/4波長位相差層である。1/4波長位相差層は、波長550nmにおける面内レターデーション値であるRe(550)が、100nm≦Re(550)≦160nmを満足することが好ましい。また、110nm≦Re(550)≦150nmを満足することがより好ましい。
【0028】
位相差層の波長分散性としては、実質的に波長分散機能を発現する範囲であれば正分散性から逆分散性のものまで幅広く使用することができるが、その中でも波長に依存することなく反射防止機能を発現できることから逆分散性であることが好ましい。すなわち、Re(450)≦Re(550)≦Re(650)の関係を満たすことが好ましく、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たすことがより好ましい。
【0029】
1/4波長位相差層は、波長550nmで測定した厚み方向のレターデーション値であるRth(550)が、-120~120nmであることが好ましく、-80~80nmであることがより好ましい。
【0030】
位相差板は、反射防止用偏光板を構成した際に実質的に反射防止機能を発現することができるものであれば、1/4波長位相差層を有するものに限定されず、例えば1/5波長位相差層、1/6波長位相差層を有するものであってもよい。以下、1/4波長位相差層を有する位相差板を「1/4波長板」とも称する。位相差板は、位相差層としてさらにポジティブC層を備えていてもよい。
【0031】
位相差板は、重合性液晶化合物の重合体を含む液晶層をフィルムにて支持したもの(又はその後、支持フィルムを剥離したもの)、高分子素材を一軸又は二軸延伸処理してなる延伸フィルムなどが挙げられる。
【0032】
重合性液晶化合物の重合体を含む液晶層の光学特性は、重合性液晶化合物の配向状態により調節することができる。重合性液晶化合物としては、棒状の重合性液晶化合物および円盤状の重合性液晶化合物が挙げられる。棒状の重合性液晶化合物が基材に対して水平配向または垂直配向して形成された配向層の光軸は、重合性液晶化合物の長軸方向と一致する。円盤状の重合性液晶化合物が配向して形成された配向層の光軸は、該重合性液晶の円盤面に対して直交する方向に存在する。
【0033】
重合性液晶化合物を重合させることにより形成される液晶層が面内位相差を発現するためには、重合性液晶化合物を適した方向に配向させればよい。重合性液晶化合物が棒状の場合は、該重合性液晶化合物の光軸を基材平面に対して水平に配向させることで面内位相差が発現する。この場合、光軸方向と遅相軸方向とは一致する。重合性液晶化合物が円盤状の場合は、重合性液晶化合物の光軸を基材平面に対して水平に配向させることで面内位相差が発現する。この場合、光軸方向と遅相軸方向とは直交する。重合性液晶化合物の配向状態は、配向膜と重合性液晶化合物との組み合わせにより調整することができる。
【0034】
重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。重合性基とは、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸などによって重合反応に関与し得る基のことをいう。重合性基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶が有する液晶性はサーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でも良く、サーモトロピック液晶を秩序度で分類すると、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でも良い。
【0035】
重合性液晶化合物の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善(株)平成12年10月30日発行)の「3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)」、「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料」に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物、特開2002-267838号公報、特開2005-208415号公報、特開2005-208416号公報、特開2005-208414号公報、特開2006-052001号公報、特開2010-270108号公報、特開2010-31223号公報、特開2011-6360号公報、特開2011-207765号公報、特表2010-522893号公報、特表2011-207765号公報、米国特許第6,139,771号明細書、米国特許第6,203,724号明細書、米国特許第5,567,349号公報に記載の重合性液晶化合物が挙げられる。
【0036】
重合性液晶化合物を重合させることにより形成される液晶層は、通常、1以上の重合性液晶化合物を含有する組成物(以下、「塗布用液晶組成物」とも称する)を、基材、配向膜、又は保護層の上に塗布し、得られた塗膜中の重合性液晶化合物を重合させることにより形成される。
【0037】
塗布用液晶組成物は、通常溶剤を含み、溶剤としては、重合性液晶化合物を溶解し得る溶剤であって、且つ、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤がより好ましい。
【0038】
塗布用液晶組成物における溶剤の含有量は、通常、固形分100質量部に対して、10質量部~10000質量部が好ましく、より好ましくは50質量部~5000質量部である。固形分とは、塗布用液晶組成物から溶剤を除いた成分の合計を意味する。
【0039】
塗布用液晶組成物の塗布は、通常、スピンコ-ティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法や、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法によって行われる。塗布後、通常、得られた塗布膜中に含まれる重合性液晶化合物が重合しない条件で溶剤を除去することにより、乾燥被膜が形成される。乾燥方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥および減圧乾燥法が挙げられる。
【0040】
基材は通常透明基材である。透明基材とは、光、特に可視光を透過し得る透明性を有する基材を意味し、透明性とは、波長380~780nmにわたる光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。具体的な透明基材としては、透光性樹脂基材が挙げられる。透光性樹脂基材を構成する樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマーなどの環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシドが挙げられる。入手のしやすさや透明性の観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸エステル、セルロースエステル、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネートが好ましい。
【0041】
配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有するものである。
【0042】
配向膜としては、塗布用液晶組成物の塗布などにより溶解しない溶剤耐性を有し、また、溶剤の除去や重合性液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有するものが好ましい。かかる配向膜としては、配向性ポリマーを含む配向膜及び光配向膜等が挙げられ、配向性ポリマー形成用組成物又は光配向膜形成用組成物を基材に塗布して得ることができる。
【0043】
配向性ポリマー形成用組成物又は光配向膜形成用組成物を基材に塗布する方法としては、スピンコ-ティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、スリットコーティング法、バーコーティング法、アプリケータ法などの塗布法、フレキソ法などの印刷法などの公知の方法が挙げられる。本光学フィルムを、後述するRoll to Roll形式の連続的製造方法により製造する場合、当該塗布方法には通常、グラビアコーティング法、ダイコーティング法又はフレキソ法などの印刷法が採用される。
【0044】
配向膜の厚さは、通常10nm~10000nmの範囲であり、好ましくは10nm~1000nmの範囲であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは10nm~500nmの範囲である。
【0045】
重合性液晶化合物の重合は、重合性基を有する化合物を重合させる公知の方法により行うことができる。具体的には、熱重合および光重合が挙げられ、重合の容易さの観点から、光重合が好ましい。光重合により重合性液晶を重合させる場合、光重合開始剤を含有した重合性液晶組成物を塗布し、乾燥して得られる乾燥被膜中の重合性液晶化合物を液晶相状態にした後、該液晶状態を保持したまま、光重合させることが好ましい。
【0046】
位相差板に含まれる位相差層は、上記のようにして得られる液晶層である。位相差板は、上記のようにして得られる「基材/配向膜/液晶層」との層構成を有する積層体であっても、基材を剥離することによって得られる「配向膜/液晶層」との層構成を有する積層体であっても、基材と配向膜を剥離して残る液晶層のみからなるものであってもよく、また、「基材/配向膜/液晶層」との層構成を有する積層体にさらに他の層を積層したものであってもよい。
【0047】
位相差層が延伸フィルムである場合、延伸フィルムの形成は、溶液膜法または押出成形法としてフィルムを製造し、これを延伸することが望ましい。延伸は、機械流れ方向に延伸する終一軸延伸;機械フローの方向に直交する方向に延伸する横一軸延伸;縦および横を同時に実行する二軸延伸;斜め延伸等が挙げられる。
【0048】
フィルムの材料は、特に限定されることはなく、具体的には、固有複屈折値が正、負、またはこれらの組合せの原料を使用して製造することができる。上記の「固有複屈折値が正である材料」は、分子が一軸性の秩序を持って配向された場合に、光学的に正の一軸性を示す材料を意味する。例えば、正の原料樹脂の場合、分子の配向方向の屈折率が上記の配向方向に直交する方向の光の屈折率よりも大きくなることを意味する。
【0049】
上記の「固有複屈折値が負である材料」は、分子が一軸性の秩序を持って配向された場合に、光学的に負の一軸性を示す材料を意味する。
【0050】
例えば、負の原料樹脂の場合、分子の配向方向の屈折率が上記の配向方向に直交する方向の光の屈折率よりも小さくなることを意味する。
【0051】
フィルムの材料は、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ノルボルネン系ポリマーなどの環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィドおよびポリフェニレンオキシドが挙げられる。
【0052】
位相差層の厚さは、液晶層の場合は、通常10μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上5μm以下である。延伸フィルムの場合は、通常100μm以下であり、好ましくは60μm以下であり、より好ましくは5μm以上50μm以下である。
【0053】
<直線偏光板>
直線偏光板は、外部から入射する自然光(外部光)を直線偏光に変換し、画像表示パネルからの反射光を遮断して外部光の反射を抑制する役割を担う。直線偏光板の具体例としては、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルム(PVA)にヨウ素や二色性染料等の二色性色素が吸着配向したPVA偏光層を高分子フィルム(保護フィルム)で片面あるいは両面を保護した直線偏光板(以下、「PVA偏光板」とも称する。)が挙げられる。この際、保護フィルムとしては、例えば、透明な樹脂フィルムが用いられ、その透明樹脂としては、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースに代表されるアセチルセルロース系樹脂、ポリメチルメタクリレートに代表されるメタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリスルホン樹脂などが挙げられる。PVA偏光層の厚みは、例えば、1~100μmであり、好ましくは5~50μmである。
【0054】
直線偏光板の具体例としては、重合性液晶化合物の重合体と二色性色素とを含む偏光層を有する直線偏光板(以下、「液晶型偏光板」とも称する。)も挙げられる。液晶型偏光板としては、例えば、特開2012-58381、特開2013-37115、国際公開第2012/147633、国際公開第2014/091921に例示されるようなものを用いることができる。
【0055】
重合性液晶化合物の重合体と二色性色素とを含む偏光層は、単独で偏光板として用いてもよく、その片面又は両面に保護フィルムを有する構成で偏光板として用いてもよい。当該保護フィルムとしては、上記したPVA偏光層の直線偏光板で用いられる保護フィルムと同一のものを用いることができる。
【0056】
液晶型偏光板の液晶層は、薄膜化の観点からは薄い方が好ましいものの、薄すぎると強度が低下し加工性に劣る傾向があることから、通常20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上3μm以下である。
【0057】
<タッチセンサパネル>
タッチセンサパネルは、タッチされた位置を検出可能なセンサであれば、検出方式は限定されることはなく、抵抗膜方式、静電容量結合方式、光センサ方式、超音波方式、電磁誘導結合方式、表面弾性波方式等のタッチセンサパネルが例示される。低コストであることから、抵抗膜方式、静電容量結合方式のタッチセンサパネルが好適に用いられる。
【0058】
抵抗膜方式のタッチセンサパネルの一例は、互いに対向配置された一対の基板と、それら一対の基板の間に挟持された絶縁性スペーサーと、各基板の内側の全面に抵抗膜として設けられた透明導電膜と、タッチ位置検知回路とにより構成されている。抵抗膜方式のタッチセンサパネルを設けた画像表示装置においては、画像表示装置の表面がタッチされると、対向する抵抗膜が短絡して、抵抗膜に電流が流れる。タッチ位置検知回路が、このときの電圧の変化を検知し、タッチされた位置が検出される。
【0059】
静電容量結合方式のタッチセンサパネルの一例は、基板と、基板の全面に設けられた位置検出用電極と、タッチ位置検知回路とにより構成されている。静電容量結合方式のタッチセンサパネルを設けた画像表示装置においては、画像表示装置の表面がタッチされると、タッチされた点で人体の静電容量を介して電極が接地される。タッチ位置検知回路が、透明電極の接地を検知し、タッチされた位置が検出される。
【0060】
静電容量結合方式のタッチセンサパネルは、電極や配線等の導電層を含むタッチセンサパターン層のみから構成されていてもよく(以下、「基材層無タッチセンサパネル」とも称する。)、タッチセンサパターン層とこのタッチセンサパターン層を支持する基材層とを備えていてもよい(以下、「基材層有タッチセンサパネル」とも称する。)。タッチセンサパネルがタッチセンサパターン層と基材層とを備えている場合、両者は貼合層によって接合されていてもよく、貼合層を介することなく基材層上にタッチセンサパターン層が形成されていてもよい。貼合層は粘着剤層又は接着剤層であり、上記した粘着剤組成物及び接着剤組成物を用いて形成することができる。
【0061】
タッチセンサパターン層は、視認されないように形成されていることが好ましい。タッチセンサパターン層は、分離層を含むことができる。分離層は、ガラス等の基板上に形成されて、分離層上に形成されたタッチセンサパターン層を分離層とともに、基板から分離するために設けることができる。分離層は、無機物層又は有機物層であることが好ましい。無機物層を形成する材料としては、例えばシリコン酸化物が挙げられる。有機物層を形成する材料としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ポリイミド系樹脂組成物等を用いることができる。タッチセンサパターン層は、さらに少なくとも1層の保護層を含むことができる。保護層は、導電層に接して導電層を支持するために設けることができる。保護層は有機絶縁膜及び無機絶縁膜のうちの少なくとも一つを含み、これらの膜は、スピンコート法、スパッタリング法、蒸着法等によって形成することができる。導電層は、ITO等の金属酸化物からなる透明導電層であってもよく、アルミニウムや銅、銀、金等の金属からなる金属層であってもよい。また、タッチセンサパターン層は、電極や配線等の導電層のみから構成されていてもよい。基材層は、樹脂フィルムであることが好ましく、例えば環状オレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム等のポリエステル系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、トリアセチルセルロース系樹脂フィルム等を用いることができる。
【0062】
<貼合層>
本発明の反射防止用偏光板の一形態において、位相差板と直線偏光板とを貼合する貼合層を有する場合、位相差板とタッチセンサパネルとを貼合する貼合層を有する場合、またタッチセンサパネル内において各層の貼合に貼合層を有する場合、貼合層は、特に限定されることはなく、粘着剤、水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤及びこれらの組み合わせから形成することができる。貼合層の厚さは、0.1μm~50μmであることが好ましく、0.1μm~10μmであることがより好ましく、0.5μm~5μmであることがさらに好ましい。
【0063】
<その他の層構成>
反射防止用偏光板は、従来の一般的な楕円偏光板、直線偏光板、又は位相差板が備える構成を有していてよい。このような構成としては、例えば、反射防止用偏光板を画像表示パネルに貼合するための粘着剤層(シート)、直線偏光板や位相差板の表面を傷や汚れから保護する目的で用いられるプロテクトフィルム、Cプレート等の光学補償層等が挙げられる。
【0064】
<用途>
反射防止用偏光板は、画像表示パネルの前面(視認側)に配置されて反射防止性能を付与する偏光板として、さまざまな光学積層体及び画像表示装置の構成要素として用いることができる。光学積層体は、画像表示パネルと、画像表示パネルの前面に配置された反射防止用偏光板とを備える。画像表示装置は、画像表示パネルと、画像表示パネルの前面に配置された反射防止用偏光板とを備え、発光源として発光素子または発光装置を備える。画像表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)および圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。これらの画像表示装置は、2次元画像を表示する画像表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体画像表示装置であってもよい。
【0065】
[光学積層体]
光学積層体の一形態は、画像表示パネルと、画像表示パネルの前面(視認側)に配置された反射防止用偏光板とを備える。
【0066】
光学積層体の製造方法は、前面の反射率がRp(%)の画像表示パネルを準備する工程と、視感度補正直交透過率Tcr(%)が式(1a)を満たす、好ましくは式(1b)を満たす、反射防止用偏光板を準備する工程と、画像表示パネルの前面に反射防止用偏光板を配置する工程と、を有する。本形態の光学積層体の製造方法によると、画像表示パネルの前面の反射率Rp(%)に応じて反射防止用偏光板を選択することにより、光学積層体において、外部光の反射による視認性の低下を十分に抑制することができる。別の実施形態では、反射防止用偏光板の視感度補正直交透過率Tcr(%)に応じて、式(1a)を満たすように画像表示パネルを選択してもよい。
【0067】
光学積層体の前面(反射防止用偏光板が設けられている側の面)の反射率Rd(%)は、外部光の反射による視認性の低下を抑制できる観点から、6.1%以下であることが好ましく、5.0%以下であることがより好ましい。なお、反射率Rd(%)は、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)を用いてSCIモードで測定した値とする。
【0068】
<有機EL表示装置>
光学積層体の一形態である有機EL表示装置について、図を用いて具体的に説明する。同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。図1は、本発明の有機EL表示装置の一形態を示す縦断面図である。図2は、本発明の有機EL表示装置の他の形態を示す縦断面図である。有機EL表示装置は、本発明に係る光学積層体であり、また画像表示装置でもある。
【0069】
図1に示す有機EL表示装置10は、画像表示パネルである有機ELパネル1と、有機ELパネル1上に第1の粘着剤11を介して接着された反射防止用偏光板2とを備える。反射防止用偏光板2は、1/4波長板3と、1/4波長板3上に第2の粘着剤12を介して接着された直線偏光板5とを備える。
【0070】
有機ELパネル1は、ガラスなどからなる支持基板1aと、支持基板1aの表面の外縁に沿って設けられた枠体スペーサ1bと、支持基板1aと共に枠体スペーサ1bを挟む封止基板1eとを備えており、これらの基板間の空間は密閉され、当該空間内に複数の発光素子が配置されている。
【0071】
支持基板1a上には、複数の薄膜トランジスタQがマトリックス状に設けられており、薄膜トランジスタQを被覆する被覆層1cを介して、画素毎に、有機発光ダイオードR,G,Bが配置されている。有機発光ダイオードR,G,Bは、有機発光層を備える発光ダイオードであり、層構造に応じて、様々な波長の発光を行うことができる。本形態では、有機発光ダイオードR,G,Bと封止基板1eとの間に、赤色、緑色、青色のカラーフィルタFを備えているが、これらのフィルタは無くてもよい。
【0072】
被覆層1cと封止基板1eとの間には、気体が封入された空間1dが存在するが、この空間1d内は樹脂などで充填してもよい。
【0073】
封止基板1e上には、第1の粘着剤11が塗布又は積層されており、第1の粘着剤は1/4波長板3を封止基板1eの表面に接着している。1/4波長板3上には、第2の粘着剤12が塗布又は積層されており、第2の粘着剤12は直線偏光板5を1/4波長板3の表面に接着している。直線偏光板5は、偏光層5bと、偏光層5bの両側に設けられた第1透明保護フィルム5a及び第2透明保護フィルム5cからなる。
【0074】
有機発光ダイオードR,G,Bが発光すると、その光は、フィルタF、封止基板1e、第1の粘着剤11、1/4波長板3、第2の粘着剤12、直線偏光板5を順次介して、外部に出力される。
【0075】
また、外部からの光は、有機EL表示装置内の様々な箇所で反射して外部に反射される。特に、有機発光ダイオードR,G,Bの表面に位置する電極は、反射率が高いため、これによる反射の影響が大きい。
【0076】
図2に示す有機EL表示装置100は、画像表示パネルである有機ELパネル1と、有機ELパネル1上に第1の粘着剤11を介して接着された反射防止用偏光板20とを備える。反射防止用偏光板20は、1/4波長板3と、1/4波長板3上に第2の粘着剤12を介して接着された直線偏光板5とを備え、さらに1/4波長板3の直線偏光板5側とは反対側の表面上に第3の粘着剤13を介して積層されたタッチセンサパネル14を有する。図2に示す有機EL表示装置100は、図1に示す有機EL表示装置10とは、反射防止用偏光板20において、第3の粘着剤13を介して積層されたタッチセンサパネル14を有する点のみが異なる。タッチセンサパネル14が、基材有タッチセンサパネルの場合、基材層が有機ELパネル1側にありタッチセンサパターン層が視認側にあるように配置されることが好ましい。
【0077】
図3は、有機発光ダイオードの層構造と、その駆動回路の図である。上述の有機発光ダイオードR,G,Bの1つを代表して、符号10’で示す。
【0078】
発光ダイオード10’は、カソード電極Ecと、カソード電極Ec上に形成された電子輸送層10aと、発光層10bと、正孔輸送層10cと、アノード電極Eaとを備えている。薄膜トランジスタQをONにすると、電源電位Vcとグランドとの間の順方向バイアス電圧が発光ダイオード10’に印加される。カソード電極Ecとアノード電極Eaとの間に順方向バイアス電圧を印加すると、これに電流が流れ、カソード電極Ecから電子が、アノード電極Eaから正孔が、発光層10b内に流れ込み、発光層10b内において、電子と正孔が再結合して発光する。正孔輸送層10cとしては、芳香族アミン化合物等を用いることができ、電子注入材料10aとしては金属錯体系材料(トリス(8-キノリノラト)アルミニウム)、オキサジアゾール系材料(PBD:2-(4-Biphenylyl)-5-phenyl-4-t-butulphenyl)-1,3,4-oxadiazole)、トリアゾール系材料(TAZ)を用いることができる。発光層10bとしては、π共役系ポリマー、色素含有ポリマーなどを用いることができる。なお、発光ダイオード10’の構成材料としては、様々なものがあり、本形態は、これらに限定されるものではない。
【0079】
以上、説明したように、有機EL表示装置10は有機ELパネル1上に直線偏光板5が位置し、これらの間に1/4波長板3が位置する構造を有している。また、有機EL表示装置100は有機ELパネル1上に直線偏光板5が位置し、これらの間に有機ELパネル1側から順にタッチセンサパネル14、1/4波長板3が位置する構造を有している。
【0080】
有機ELパネル1は、ここで開示されるものに限定されず、従来から知られているものを適用することができる。また、有機ELパネル1は、基板上に陽極と陰極とが積層され、上記の陰極と陽極の間に少なくとも1つの有機薄膜層を設けた構造を有している。これらの構造は、本技術分野でよく知られているものであり、これについての詳しい説明を省略する。
【0081】
なお、アノード電極Eaは、例えば、ITO、IZO、IGZO、錫の酸化物、亜鉛の酸化物、亜鉛アルミニウム酸化物、およびチタニウムナイトライドなどの金属酸化物や金属ナイトライド;金、プラチナ、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、鉛、モリブデン、タングステン、タンタル、ニオブなどの金属;これらの金属の合金または銅のヨウ素化合物の合金;ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、及びポリ(3-メチルチオフェン)などの導電性ポリマー材料の少なくともいずれかの種類を含んでいる。アノード電極は、前述の成分のいずれかの種類のみで形成されるか、または複数の材料の混合物で形成されることもできる。また、同じ組成または異なる組成の複数の層で構成される多層構造が形成されることもできる。
【0082】
カソード電極Ecは、本技術分野で知られていた材料を使用することができ、制限はなく、LiFを電子注入層として使用し、Al、Ca、Mg、Agなどの仕事関数が低い金属の陰極に使用することができ、好ましくはAlが望ましい。
【0083】
アノード電極Eaとカソード電極Ecとの間に位置する有機薄膜層は、赤色、緑色、青色の発光を実現するため、発光層10bを含んでいるが、これに加えて、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層を少なくとも1つを含んでいる。例えば、アノード電極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、及びカソード電極からなる積層構造を有することができる。
【0084】
上記の発光層10bは、主たる材料であるホスト材料に加えて、ドーパント材料を使用することができる。ホスト材料及びドーパント材料としては、様々な種類のものが知られており、本発明は、これに限定されるものではない。また、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層及び電子注入層も、様々な種類のものが知られており、本形態は、これに限定されるものではない。
【0085】
また、有機EL表示パネル1の駆動方式として、パッシブ(PM)型とアクティブ(AM)型があるが、いずれも適用可能である。
【0086】
アノード電極Ea及びカソード電極Ecの材料は、金、銀、銅、アルミニウムなどの金属を用いることができる。例えば、アノード電極Eaとしてアルミニウムを用いた場合、アノード電極Eaは、外部からの光を反射する鏡としても機能する。カソード電極Ecも同様である。有機EL表示パネル1の前面の反射率Rp(%)は、アノード電極Ea及びカソード電極Ecの材料や構成により異なり、例えば、30~70%であることが好ましい。ここで、反射率Rp(%)は、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)を用いてSCIモードで測定した値とする。
【0087】
図1図2における有機EL表示パネル1の代わりに、アルミニウムなどの金属膜を表面に有する反射体を設けた光学積層体の光学特性を調べることにより、外部光の反射に関しては、有機EL表示装置における場合と略同一の挙動を示すものと考えられる。したがって、本願発明者らは、このような検証用の光学積層体を作製して、光学特性について鋭意検討を行い、本発明に至ったものである。
【0088】
図4図5は、検証用の光学積層体のサンプルの縦断面図である。検証用の光学積層体10’,100’は、画像表示パネルの代わりに、反射体1Dを備えている。図1図2の有機EL表示装置10,100における有機EL表示パネル1の代わりに、反射体1Dを設け、これを仮想的に、画像表示パネルにおける反射要素(例えば、有機EL表示装置におけるアノード電極Eaおよびカソード電極Ecとして取り扱っている。
【実施例
【0089】
以下、試験例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0090】
[試験例1~18]
試験例1~13として、図4に示す検証用の光学積層体を構成して、各光学積層体の前面の反射率Rd(%)を測定した。測定結果を表1に示す。試験例14~18として、図5に示す検証用の光学積層体を構成して、各光学積層体の前面の反射率Rd(%)を測定した。測定結果を表2に示す。反射率Rd(%)は、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)を用いてSCIモードで測定した値である。また、試験例14~18については、タッチセンサパターンの視認性について、下記の基準で評価した結果を表2に示す。
【0091】
A:視認側からタッチセンサパターンを視認することができない、
B:視認側からタッチセンサパターンをわずかに視認することができる、
C:視認側からタッチセンサパターンを視認することができる。
【0092】
各試験例で用いた検証用の光学積層体を構成する反射体1D及び反射防止用偏光板は、以下の通りである。
【0093】
<反射体>
試験例1~18においては、図4図5に示す反射体1Dとして、以下の4種類の反射体の内、表1、表2に示す反射体を用いた。なお、各反射体について、分光測色計(コニカミノルタ製、CM-2600d)を用いて、前面側の反射率についてSCIモードの反射率を測定し、これを反射率Rp(%)とした。
【0094】
(反射体1:ミラー)
市販品のミラーを100mm×100mmの大きさに切断し、反射体1とした。反射体1の前面の反射率Rp(%)は、93.70%であった。
【0095】
(反射体2:アルミホイルを貼合したガラス基板)
市販品のアルミホイルを100mm×100mmの大きさに切断し、これを粘着剤を用いて市販品のガラス基板に貼合し、反射体2とした。ガラス基板のアルミホイルが貼合されていない面を反射体2の前面とし、反射体2の前面の反射率Rp(%)を測定したところ、79.28%であった。
【0096】
(反射体3:アルミホイルを貼合した印刷層を有するガラス基板)
市販品のガラス基板の一表面に、黒インクを用いて網目模様を印刷した。網目模様は、網目模様を構成する各線の幅を100μmとし、各線の間隔を500μmとした。市販品のアルミホイルを100mm×100mmの大きさに切断し、これを粘着剤を用いてガラス基板の印刷層を有さない側の表面に貼合し、反射体3とした。ガラス基板のアルミホイルが貼合されていない面を反射体3の前面とし、反射体3の前面の反射率Rp(%)を測定したところ、58.61%であった。
【0097】
(反射体4:アルミホイルを貼合した印刷層を有するガラス基板)
市販品のガラス基板の一表面に、黒インクを用いて網目模様を印刷した。網目模様は、網目模様を構成する各線の幅を300μmとし、各線の間隔を300μmとした。市販品のアルミホイルを100mm×100mmの大きさに切断し、これを粘着剤を用いてガラス基板の印刷層を有さない側の表面に貼合し、反射体4とした。ガラス基板のアルミホイルが貼合されていない面を反射体4の前面とし、反射体4の前面の反射率Rp(%)を測定したところ、17.00%であった。
【0098】
<反射防止用偏光板>
試験例1~13においては、反射防止用偏光板2として、視認側から順に直線偏光板、1/4波長板が積層された反射防止用偏光板を用いた。また、試験例14~18においては、反射防止用偏光板20として、視認側から順に直線偏光板、1/4波長板、タッチセンサパネルが積層された反射防止用偏光板を用いた。直線偏光板は、以下に製造方法を示すPVA偏光板1、PVA偏光板2、液晶型偏光板の内、表1、表2に示す直線偏光板を用いた。1/4波長板は、全ての試験例において、以下に製造方法を示す1/4波長板を用いた。タッチセンサパネルは、以下の製造方法に示す基材層有タッチセンサパネル、基材層無タッチセンサパネルの内、表2に示すタッチセンサパネルを用いた。反射防止用偏光板は、以下の製造方法で製造した。なお、各試験例で用いた反射防止用偏光板について、分光光度計(日本分光製、V7100)を用いて測定を行い、上述した方法にてTy、Tcr、Pyを算出した。表1、表2に算出結果を示す。
【0099】
(PVA偏光板1)
PVAフィルムに対して、延伸処理、ヨウ素染色処理、ホウ酸架橋処理、及び乾燥処理を施し偏光フィルムを作製し、得られた偏光フィルムの一方の表面に接着剤を用いてTACフィルムを積層してPVA偏光板1を得た。
【0100】
(PVA偏光板2)
PVAフィルムに対する処理条件が異なる点以外は、PVA偏光板1と同様の方法でPVA偏光板2を得た。
【0101】
(液晶型偏光板)
TACフィルムの片面に配向膜組成物を塗布し、乾燥及び偏光露光をして形成した配向膜上に、液晶重合性化合物と染料とを含む液晶組成物を塗布し、乾燥した後に、紫外線照射による硬化を行って偏光層を形成し、液晶型偏光板を得た。各液晶型偏光板のTy、Py、Tcrは、液晶組成物に添加する色素の量を調整することにより、表1に示す値に制御した。
【0102】
(1/4波長板)
PETフィルムの片面に配向膜組成物を塗布し、乾燥及び偏光露光をして形成した配向膜上に、液晶重合性化合物を含む液晶組成物を塗布し、乾燥した後に、紫外線照射による硬化を行って位相差層を形成し、PETフィルム付1/4波長板を得た。配向膜及び位相差層からなる積層体を1/4波長板とした。
【0103】
(基材層有タッチセンサパネル)
基材層有タッチセンサパネルとして、タッチセンサパターン層、接着剤層、及び基材層がこの順に積層されたものを準備した。タッチセンサパターン層は、透明導電層としてのITO層と、分離層としてのアクリル系樹脂組成物の硬化層とを含むものであり、厚みが7μmであった。接着剤層は、タッチセンサパターン層の分離層側に設けられ、厚みが3μmであった。
【0104】
(基材層無タッチセンサパネル)
基材層無タッチセンサパネルとして、タッチセンサパターン層のみからなるタッチセンサパネルを準備した。タッチセンサパターン層は、透明導電層としてのITO層と、分離層としてのアクリル系樹脂組成物の硬化層とを含むものであり、厚みが7μmであった。
【0105】
(反射防止用偏光板)
直線偏光板のTACフィルム側でない表面に粘着剤を用いてPETフィルム付1/4波長板のPETフィルム側でない表面を貼合した後、PETフィルムを剥離して、直線偏光板と1/4波長板とからなる反射防止用偏光板を得た。また、1/4波長板側に粘着剤を介してタッチセンサパネルを貼合して、直線偏光板と1/4波長板とタッチセンサパネルとからなる反射防止用偏光板を得た。タッチセンサパネルとして基材層有タッチセンサパネルを用いた場合には、タッチセンサパターン層側が1/4波長板側に位置するように貼合した。
【0106】
(検証用の光学積層体)
各試験例において、表1、表2に示す反射体の前面に、粘着剤を用いて、表1、表2に示す反射防止用偏光板を貼合して、図4図5に示す検証用の光学積層体を得た。反射防止用偏光板は、直線偏光板が視認側となるように、各反射体に貼合した。
【0107】
【表1】
【0108】
表1に示す光学積層体のRd(%)の値からわかるように、Rp×Tcrの値が68以下であり、式(1a)及び式(1b)の関係を満たす試験例1~6は反射率Rd(%)が5.0%以下であり低く反射光による視認性低下の抑制効果が非常に優れており、Rp×Tcrの値が150以下であり、式(1a)の関係を満たす試験例7~11は反射率Rd(%)が6.1%以下であり低く反射光による視認性低下の抑制効果が優れているものであった。
【0109】
【表2】
【0110】
表2に示す光学積層体のRd(%)の値からわかるように、Rp×Tcrの値が100以下であり、式(1a),式(1d)の関係を満たす試験例14~17は反射率Rd(%)が6.0%以下であり低く反射光による視認性低下の抑制効果が優れているものであり、またタッチセンサパターンも視認されにくいものであった。
【符号の説明】
【0111】
1 有機EL表示パネル、2,20 反射防止用偏光板、3 1/4波長板、5 直線偏光板、5b 偏光層、5a,5c 透明保護フィルム、10,100 有機EL表示装置、11,12,13 粘着剤(層)、14 タッチセンサパネル、1D 反射体。
図1
図2
図3
図4
図5