(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】マイクロリソグラフィのための投影露光方法および投影露光装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220426BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
H01L21/30 573
(21)【出願番号】P 2019536648
(86)(22)【出願日】2017-08-24
(86)【国際出願番号】 EP2017071303
(87)【国際公開番号】W WO2018054647
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】102016217929.2
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】パトラ ミヒャエル
【審査官】田中 秀直
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-077123(JP,A)
【文献】米国特許第05303002(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0272967(US,A1)
【文献】特開2007-173826(JP,A)
【文献】特開平05-102004(JP,A)
【文献】特開昭60-147731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0148598(US,A1)
【文献】米国特許第04937619(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズの像平面の領域内に配置された基板を、前記投影レンズの物体平面の領域内に配置されたマスクのパターンのうちの少なくとも1つの像を用いて露光するための投影露光方法であって、
前記基板(SUB)を、第1のフォトレジスト材料からなる第1のフォトレジスト層(FLS1)、および、前記第1のフォトレジスト層と前記基板との間の、第2のフォトレジスト材料からなる別個に適用された第2のフォトレジスト層(FLS2)を備える放射線感受性多層システム(MS)で被覆するステップであって、
前記第1のフォトレジスト材料が、第1の波長範囲において比較的高い
前記第1のフォトレジスト材料における第1の感受性
を有し、前記第1の波長範囲から分離した第2の波長範囲において
前記第1のフォトレジスト材料における前記第1の感受性と比較して低い
前記第1のフォトレジスト材料における第2の感受性を有し、
前記第2のフォトレジスト材料が、前記第2の波長範囲において露光に適した
前記第2のフォトレジスト材料における第2の感受性を有する、ステップ
であって、前記第1のフォトレジスト材料における前記第2の感受性と前記第2のフォトレジスト材料における前記第2の感受性とは互いに異なるステップと、
前記第1の波長範囲および前記第2の波長範囲を含む動作波長範囲を有する放射線源(RS)の放射線を使用して、前記放射線感受性多層システム(MS)で被覆された前記基板を、前記パターンの前記像を用いて露光するステップと
を含み、
前記第1の波長範囲と関連付けられた第1の焦点領域(FOC1)が、焦点距離(ΔFOC)によって、前記第2の波長範囲と関連付けられた第2の焦点領域(FOC2)に対してオフセットされるように、前記第1の波長範囲および前記第2の波長範囲に対して補正される(corrected)投影レンズ(PO)が使用され、
前記第1の焦点領域(FOC1)が、前記第1のフォトレジスト層(FLS1)内にあり、前記第2の焦点領域(FOC2)が、前記第2のフォトレジスト層(FLS2)内にあ
り、
前記第1の波長範囲の重心波長と前記第2の波長範囲の重心波長との間のスペクトル分離Δλが少なくとも10nmである、
投影露光方法。
【請求項2】
前記第1のフォトレジスト材料および前記第2のフォトレジスト材料が、異なるスペクトル感受性特性を有する、請求項1に記載の投影露光方法。
【請求項3】
前記第1のフォトレジスト層(FLS1)を生成するために、前記第1の波長範囲内の光子の10%と60%との間が前記第1のフォトレジスト層内で吸収されるように選択される第1のフォトレジスト材料が使用され、および/または、前記第2のフォトレジスト層(FLS2)を生成するために、前記第2の波長範囲内の光子の10%と60%との間が前記第2のフォトレジスト層内で吸収されるように選択される第2のフォトレジスト材料が使用される、請求項1または2に記載の投影露光方法。
【請求項4】
前記第1のフォトレジスト層(FLS1)を生成するために、前記第1のフォトレジスト層内に吸収される前記第1の波長範囲内の光子の数が、前記第1のフォトレジスト層内に吸収される前記第2の波長範囲内の光子の数よりも少なくとも50%、特に少なくとも100%大きいように選択される第1のフォトレジスト材料が使用され、および/または、前記第2のフォトレジスト層(FLS2)を生成するために、前記第2のフォトレジスト層内に吸収される前記第2の波長範囲内の光子の数が、前記第2のフォトレジスト層内に吸収される前記第1の波長範囲内の光子の数よりも少なくとも50%、特に少なくとも100%大きいように選択される第2のフォトレジスト材料が使用される、請求項1から3のいずれかに記載の投影露光方法。
【請求項5】
前記第1のフォトレジスト層(FLS1)を生成するために、前記第2の波長範囲内の光子の30%未満が、前記第1のフォトレジスト層(FLS1)内で吸収されるように選択される第1のフォトレジスト材料が使用される、請求項1から4のいずれかに記載の投影露光方法。
【請求項6】
前記第2の波長範囲内で前記第1の波長範囲内よりも大きい透過率を有する材料からなるカラーフィルタ層(FFS)が、前記基板(SUB)を被覆するプロセス中に前記第1のフォトレジスト層(FLS1)と前記第2のフォトレジスト層(FLS2)との間に生成される、請求項1から5のいずれかに記載の投影露光方法。
【請求項7】
前記焦点距離(ΔFOC)がRU
M~RU
M/4(ここにおいてRU
M=λ
M/NA
2であり、λ
Mが、前記第1の波長範囲および前記第2の波長範囲から平均された動作波長であり、NAが、投影レンズの像側開口数である)の範囲内にあるように、前記投影レンズ(PO)が設計される、請求項1から6のいずれかに記載の投影露光方法。
【請求項8】
前記第1のフォトレジスト層(FLS1)の層厚がRU
1~RU
1/4(ここにおいてRU
1=λ
1/NA
2であり、λ
1が、前記第1の波長範囲の重心波長であり、NAが、前記投影レンズの前記像側開口数である)の範囲内にあるように、および/または、前記第2のフォトレジスト層(FLS2)の層厚が、RU
2~RU
2/4(ここにおいてRU
2=λ
2/NA
2であり、λ
2が、前記第2の波長範囲の重心波長であり、NAが、前記投影レンズの前記像側開口数である)の範囲内にあるように、前記被覆が実行される、請求項1から7のいずれかに記載の投影露光方法。
【請求項9】
前記第1のフォトレジスト層(FLS1)の層厚および/または前記第2のフォトレジスト層(FLS2)の層厚が、50nm~1500nmの範囲内、特に、100nm~1000nmの範囲内にあるように前記被覆が実行される、請求項1から8のいずれかに記載の投影露光方法。
【請求項10】
水銀灯が放射線源(RS)として使用され、前記第1の波長範囲が、およそ365nm(i線)、およそ405nm(h線)、およびおよそ436nm(g線)に重心波長を有する水銀線のうち正確に1つを含み、前記第2の波長範囲が、前記水銀線のうちから正確に1つの異なる水銀線を含む、請求項1から
9のいずれかに記載の投影露光方法。
【請求項11】
投影レンズの像平面の領域内に配置された基板を、前記投影レンズの物体平面の領域内に配置されたマスクのパターンのうちの少なくとも1つの像を用いて露光するための投影露光装置であって、
第1の波長範囲および前記第1の波長範囲から分離した第2の波長範囲を含む動作波長範囲で放射線を放出するための一次放射線源(RS)と、
前記放射線を受けるため、および前記マスク(M)上に向けられる照明放射線を生成するための照明システム(ILL)と、
投影レンズ(PO)であって、前記投影レンズの像面(IS)の領域内に前記パターンの像を生成するための投影レンズ(PO)であり、前記第1および第2の波長範囲内の各波長により、前記基板上への前記パターンの鮮明な回折限界結像(diffraction-limited imaging)が同一の結像スケールで可能であるように、少なくとも前記第1の波長範囲および前記第2の波長範囲に対して補正される、投影レンズ(PO)と、を備え、
前記第1の波長範囲と関連付けられた第1の焦点領域(FOC1)が、焦点距離(ΔFOC)によって、前記第2の波長範囲と関連付けられた第2の焦点領域(FOC2)に対してオフセットされ、
前記第1の波長範囲の重心波長と前記第2の波長範囲の重心波長との間のスペクトル分離Δλが少なくとも10nmであることを特徴とする、投影露光装置。
【請求項12】
前記焦点距離(ΔFOC)がRU
M~RU
M/4(ここにおいてRU
M=λ
M/NA
2であり、λ
Mが、前記第1の波長範囲および前記第2の波長範囲から平均された動作波長であり、NAが、前記投影レンズの像側開口数である)の範囲内にあるように、前記投影レンズ(PO)が設計される、請求項
11に記載の投影露光装置。
【請求項13】
前記放射線源(RS)が、水銀灯を備え、前記第1の波長範囲が、およそ365nm(i線)、およそ405nm(h線)、およびおよそ436nm(g線)に重心波長を有する水銀線のうち正確に1つを含み、前記第2の波長範囲が、前記水銀線のうちから正確に1つの異なる水銀線を含むことを特徴とする、請求項
11または
12に記載の投影露光装置。
【請求項14】
第1の波長範囲および前記第1の波長範囲から分離した第2の波長範囲を含む動作波長範囲を有する放射線源の放射線を使用する投影露光方法における使用のための被覆された基板を生成するための方法であって、
前記基板(SUB)を、第1のフォトレジスト材料からなる第1のフォトレジスト層(FLS1)、および、前記第1のフォトレジスト層(FLS1)と前記基板(SUB)との間の、第2のフォトレジスト材料からなる別個に適用された第2のフォトレジスト層(FLS2)を備える放射線感受性多層システム(MS)で被覆することを特徴とし、
前記第1のフォトレジスト材料が、第1の波長範囲において比較的高い
前記第1のフォトレジスト材料における第1の感受性
を有し、前記第1の波長範囲から分離した第2の波長範囲において
前記第1のフォトレジスト材料における前記第1の感受性と比較して低い
前記第1のフォトレジスト材料における第2の感受性を有し、
前記第2のフォトレジスト材料が、
前記第2の波長範囲において
前記第2のフォトレジスト材料における第2の感受性を有
し、前記第1のフォトレジスト材料における前記第2の感受性と前記第2のフォトレジスト材料における前記第2の感受性とは互いに異なり、
前記第1の波長範囲の重心波長と前記第2の波長範囲の重心波長との間のスペクトル分離Δλが少なくとも10nmである、方法。
【請求項15】
前記第1のフォトレジスト材料および前記第2のフォトレジスト材料が、異なるスペクトル感受性特性を有する、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記多層システム(MS)が、請求項3から6または9のうちの少なくとも1つの特性部分の特徴に従って生成される、請求項
14または
15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年9月20日提出のドイツ特許出願第10 2016 217 929.2号に関する。上記特許出願の内容は、本出願の内容における明確な参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、投影レンズの像平面の領域内に配置された基板を、投影レンズの物体平面の領域内に配置されたマスクのパターンのうちの少なくとも1つの像を用いて露光するための投影露光方法、および本方法を実行するのに適した投影露光装置に関する。
マイクロリソグラフィ投影露光方法は、例えば、マイクロシステムエンジニアリングのための構造化コンポーネントなど、半導体コンポーネントおよび他の微細構造コンポーネントを生成するために、今日主に使用される。高集積半導体コンポーネントは、典型的には、複数の層を備え、そのうちの一部の層のみが、例えば、数十ナノメートルの規模で、極めて微細に構造化され、他の層は、かなり粗い構造を有する。前者の層は、具体的には、例えば、データの計算および格納などの、半導体コンポーネントの実際の主要機能を実現し、後者の層は、例えば、アドレス指定および電力供給の役割を果たす。比較的粗い典型的な寸法を有する構造は、例えば、微小電気機械システム(MEMS:microelectromechanical systems)または微小光電気機械システム(MOEMS:microoptoelectromechanical systems)においてなど、マイクロシステムエンジニアリングの分野においても見られる。半導体コンポーネントは、典型的には、半導体の基板から生成されるが、他の基板材料、具体的には、金属およびガラス状物質も、マイクロシステムエンジニアリングにおいて使用される。
マイクロリソグラフィ投影露光は、結像される(imaged)べき構造のパターン、例えば、半導体コンポーネントの層の線パターンをもつマスク(レチクル)の使用を伴う。マスクは、投影レンズの物体平面の領域内で照明システムと投影レンズとの間の投影露光装置内に位置付けられ、照明システムによって提供される照明放射により照明される。マスクおよびパターンによって変更された放射は、投影放射として投影レンズを通過し、この投影レンズが、露光されるべき基板上にマスクのパターンを結像する(image)。基板は、例えば、半導体ウエハであり得る。露光されるべき基板は、構造化されるべきその側面にフォトレジスト材料からなる放射線感受性(すなわち、感光性)層をもつ。上記層は、レジスト層とも称される。
【0003】
露光プロセス中、できる限り現物に忠実であるパターンの像が基板に転写されるように、基板表面上の放射線感受性層は、露光時間間隔の間、投影レンズの像側焦点領域(image-side focus region)にあるべきである。具体的には、基板表面上に配置された層は、投影レンズの焦点深度(DOF:depth of focus)の領域にあるべきである。
1つの共通定義に従うと、焦点深度は、点像の強度がベストフォーカスの平面における強度の少なくとも80%である、ベストフォーカスの平面に対する距離を指定する。これは、点像の直径が最大で倍増するという条件と同等である。焦点深度は、RU=λ/NA2(ここにおいてλは、投影露光装置の動作波長であり、NAは、投影レンズの像側開口数である)として規定されるレイリー単位(Rayleigh unit)RUの半分になり、焦点深度条件が満たされる領域は、したがってレイリー単位RUに等しい総厚を有する。一般に、焦点深度が小さくなるほど、投影レンズの解像能力は高くなる。
コンピュータチップ上の特徴サイズのさらなる小型化は、技術的および物理的にますます難しくなっている。いくつかの場合においては、関連費用が、特徴サイズのさらなる小型化をますます魅力のないものにしている。ウエハ領域のより良好な利用の代替案として、単にウエハの表面上またはウエハの表面においてだけでなく、ウエハ内へ深さ方向に構造を生成することによって、第3の次元を利用することが代わりに可能である。
第3の次元は、例えば、必要なコンデンサが奥までエッチングされているDRAM構造の生成のためにすでに使用されている(例えば、米国特許出願公開第2012/0049262号を参照されたい)。別の傾向は、フラッシュメモリ構造の3次元積層である(例えば、米国特許第8,445,447(B2)号を参照されたい)。成長されるシリコン層は、結晶性ではなく非晶質であるため、比較的粗い構造のみが、電子的な理由のために機能的能力を有して生成され得、このことが理由で、一般的には、このタイプのリソグラフィプロセスの場合には193nmまたはさらには13nmなどの比較的短い波長を使用する必要がない。
【0004】
深層構造を生成することができるように、深さと幅との間に大きいアスペクト比を有する孔が、基板内にエッチングされなければならない。例えば、これは、例えばイオンエッチングを用いるなど、ドライエッチングプロセスを用いて行われ得る。このタイプのエッチング方法は、基板だけでなく、現像および硬化されたフォトレジストもアタックする。したがって、放射線感受性層は、小さすぎない最小厚を有するべきである。
比較的厚いフォトレジスト層の露光のため、193nm液浸リソグラフィの分野では、いわゆる「フォーカスドリリング(Focus Drilling)」を使用することが知られている。その場合に使用されるArFレーザ源は、非常に狭帯域であるため、対応する投影レンズが完全に色彩的に補正される必要がない。投影レンズの波長依存性は、主に、使用される放射線の波長に応じた(色依存の)焦点位置に存する。標的化方式でArFレーザのライン狭化モジュール(LNM:line narrowing module)を調節することによって、レーザの帯域幅を人工的に増大させることが可能である。この際、使用される帯域幅内で連続的であるスペクトルの異なる成分が、同時に、異なる焦点位置を生成する。このようにして、フォトレジスト層内でトランスイルミネートされる領域の深さにおける効果的な増加が発生する。しかしながら、効果的に使用可能な焦点深度におけるこのような増加は、ぶれ、したがって、コントラストの減少をもたらし、これが、完成した構造化基板上により粗いおよび/またはより正確性の低い限定的構造をもたらす。
【0005】
論文:“Thick Photoresist Imaging Using A Three Wavelength Exposure Stepper” by B. Todd, W.W. Flack and S. White in: SPIE MEMS 1999 #3874 -40, pages 1 - 15は、放射線源として水銀灯(mercury vapor lamp)を有するウエハステッパを使用した、大きいアスペクト比での微細構造化での応用のための3つの超厚フォトレジスト(50μmまたは100μmの層厚)の適合性について説明する。像側開口数NA=0.16を有する1X Wynne-Dysonタイプの反射屈折投影レンズが、結像のために使用される。Wynne-Dysonタイプの投影レンズは、色収差を導入することなく広帯域露光を可能にする。露光の場合、水銀のg線、h線、およびi線は、350nmから450nmの幅広いスペクトル範囲内で同時に使用される(ghiステッパ)。この結果は、より高いNAのgh線ステッパおよびi線ステッパを用いた他の実験の結果と比較される。
高アスペクト比で基板内に深く延在する孔を生成するための別の技術は、いわゆるハードマスクを使用した多重パターニングである。例は、論文:“Evaluation of an advanced dual hard mask stack for high resolution pattern transfer” by J. Paul, M. Rudolph, S. Riedel, X. Thrun, S. Wege and C. Hohle in: Proc. of SPIE vol. 8685 86850V-1 to 86850V-11に見られる。このプロセスは、比較的複雑かつ高価である。さらには、各追加プロセスステップは、基板上に生成される構造のさらなるエッジ位置決めエラーをもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明によって対処される1つの問題は、露光されるべき基板上の比較的厚い放射線感受性層の露光を、正しく位置付けられた鮮明な輪郭を有する露光ボリュームが層の厚さ全体にわたって生成可能であるように、可能にする投影露光方法を提供するというものである。さらなる問題は、本方法を実行するために適した投影露光装置を提供するというものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題を解決するために、本発明は、請求項1の特徴を有する投影露光方法を提供する。さらには、本投影露光方法を実行するために適しており、かつ請求項12の特徴を有する投影露光装置、および投影露光方法を実行するために適しており、かつ請求項15の特徴を有する被覆された基板を生成するための方法が提供される。
有利な発展形態は、従属請求項内に明記される。すべての請求項の文言が、参照により本説明の内容に組み込まれる。
本投影露光方法において、基板は、放射線感受性または感光性多層システムで被覆される。多層システムは、第1のフォトレジスト層、および第1のフォトレジスト層と基板との間に配置される第2のフォトレジスト層を備える。第1のフォトレジスト層は、したがって、第2のフォトレジスト層よりも放射線入射側の近くにまたは基板から離れて位置する。
第1のフォトレジスト層は、第1のフォトレジスト材料からなり、第2のフォトレジスト層は、第2のフォトレジスト材料からなる。異なるフォトレジスト材料が第1および第2のフォトレジスト層に対して使用され得るように、フォトレジスト層は別個に適用される。結果として、多層システムの層構築の構成には多自由度が存在する。
【0008】
多くの実施形態において、第1および第2のフォトレジスト材料は異なる。この違いは、フォトレジスト材料のスペクトル感受性特性またはフォトレジスト材料の波長依存の吸収挙動を特に考慮するものである。第1および第2のフォトレジスト層に対して同じフォトレジスト材料が使用され得る実施形態も存在する。
本出願の文脈において、「感受性」という用語は、所与の波長の入射光子がフォトレジスト層内に所望の光化学反応を引き起こす可能性を意味する。フォトレジスト層は、この意味では特定の波長範囲に対して、この波長範囲からの放射線がフォトレジスト材料内に吸収され、その結果としてこれが、フォトレジスト材料の露光されたボリュームの特性、特にフォトレジスト材料の溶解度(solubility)を、非露光のボリュームに対して変更する光化学反応をトリガ(trigger)し、その結果として露光されたセクションおよび露光されていないセクションが後続のプロセスステップにおいて異なって挙動する場合に、感受性がある。
基板から離れて配置される第1のフォトレジスト材料は、第1の波長範囲において比較的高い第1の感受性、および、第1の波長範囲から分離した第2の波長範囲において第1の感受性よりも低い第2の感受性を有する。第1のフォトレジスト材料は、第1の波長範囲において露光に適した第1の感受性(すなわち、前の段落の意味においては露光のために適している)を有することが意図される。
【0009】
第2のフォトレジスト材料は、第2の波長範囲において露光に適した第2の感受性(すなわち、露光のために適している)を有することが意図される。「露光に適した」第2の感受性は、特に、第2の波長範囲内の光子の少なくとも10%が第2のフォトレジスト層内に吸収される場合に存在し、このやり方で光化学反応をトリガすることができる。
放射線感受性多層システム(radiation-sensitive multilayer system)で被覆された基板は、投影レンズの有効像視野(effective image field)内で、物体平面内に配置されたパターンの像を用いて露光される。第1の波長範囲および第2の波長範囲を含む動作波長範囲を有する放射線源の放射線が露光に使用される。
これら2つの波長範囲間にある波長の場合、放射線強度および第1のフォトレジスト材料の波長依存の感受性の積は、第1の波長範囲内よりもそこでは著しく小さい値を有するべきである。さらには、放射線強度および第2のフォトレジスト材料の波長依存の感受性の積は、第2の波長範囲内よりもそこでは著しく小さい値を有するべきである。典型的に使用される光源については、波長による放射線強度の変動は、典型的なフォトレジスト材料に対しての波長による感受性の変動よりも大きい。したがって、第1の波長範囲と第2の波長範囲との間の範囲における波長の放射線強度が、第1および第2の波長範囲内よりも著しく低い場合には、上の条件は通常、容易に達成可能である。この条件は、特に、第1の波長範囲の重心波長(centroid wavelength)と第2の波長範囲の重心波長との間に有限スペクトル分離(finite spectral separation)Δλが存在するという効果を有する。
本方法において、第1の波長範囲と関連付けられた第1の焦点領域(focus region)が、焦点距離(focal distance)によって、第2の波長範囲と関連付けられた第2の焦点領域に対してオフセット(offset)されるように、第1の波長範囲および第2の波長範囲に対して補正される(corrected)投影レンズが使用される。第1および第2の焦点領域の位置または焦点距離は、第1の焦点領域が第1のフォトレジスト層内にあり、第2の焦点領域が第2のフォトレジスト層内にあるように、放射線感受性多層システムの層構築と連携される。
【0010】
説明されるタイプの感光性多層システムで基板を被覆することによって達成され得ることは、基板上の放射線感受性被覆が、使用される放射線のすべての波長に対して完全に等しく感受性があるわけではなく、対応する波長の焦点がある特定の波長に対して主に感受性があるということである。この場合、放射線入射側のより近くにある第1のフォトレジスト材料は、第2の波長範囲からの吸収された光子の数(光化学反応のトリガに関連して)が、比較的より低い第2の感受性が原因で、第1の波長の吸収された光子の数に関係して小さくなるように、第1の波長範囲からの放射線に対して主に反応すべきである。基板のより近くにある第2のフォトレジスト材料、または第2のフォトレジスト層は、第2の波長のそこでのより低い吸収が理由で、上に重なっている第1のフォトレジスト層から第2のフォトレジスト層へ比較的大部分が通される、または透過される第2の波長範囲からの放射線に対して主に反応すべきである。
これらの条件下で、第1のフォトレジスト層内の第1の焦点領域および第2のフォトレジスト層内の第2の焦点領域の両方において、多層システム内で露光ゾーンと非露光ゾーンとの間の遷移領域のさらなるバーリング(additional burring)の付随なしに焦点深度の増大が生じるように、鮮明に規定された露光ゾーンが生成され得る。
【0011】
結果として、マイクロリソグラフィ投影露光方法および投影露光装置は、ここで発生する空中像における退色またはいくつかの他のコントラストの損失なしにより厚いフォトレジスト層が露光されることが可能になるようにする。
フォトレジストは、特に、ポリマーベースまたはエポキシ樹脂ベースフォトレジストであり得る。フォトレジストは、ポジ型レジスト(positive resist)またはネガ型レジスト(negative resist)として設計され得る。ネガ型レジストの場合、溶解度は、露光の結果として減少し、ポジ型レジストの場合、溶解度は、露光の結果として増大する。
【0012】
第1のフォトレジスト層における第1の波長範囲内の光子の35%を著しく超える吸収は、層内において、吸収が理由で強度が指数関数的に減少すること、および、過度に高い吸収の場合には線量の不利な深さ依存が発生し得ることから、不利であり得るということが好ましくは考慮されるべきである。現在では、第1のフォトレジスト層の生成のために、第1の波長範囲内の光子の10%と60%との間、特に20%と40%との間が第1のフォトレジスト層内で吸収されるように選択される第1のフォトレジスト材料が使用される場合には有利であると見なされる。下限に著しく達しない場合、露光されるレジストの物理化学挙動を変更するための十分に強い反応が生成されないか、または光源の強度が、十分な露光に達するように増大される必要がある。光吸収が上限を著しく上回っている場合、第1のフォトレジスト層内の露光の著しく顕著な深さ依存が発生し得、ここでは、効果的な露光は、放射線入射側からより大きい距離のところよりも、放射線入射側の付近において著しく高くなる。したがって、第1の波長範囲からの放射線の比較的大部分が、第1のフォトレジスト層内に吸収されず、むしろ第1のフォトレジスト層を透過される場合には有利であると見なされる。
好ましくは、線量の深さ依存を回避するために、第2の波長範囲内の放射線に関する第2のフォトレジスト層の場合に、類似の条件が存在すべきである。したがって、第2のフォトレジスト層を生成するために、第2の波長範囲内の光子の10%と60%との間、特に20%と40%との間が第2のフォトレジスト層内で吸収されるように選択される第2のフォトレジスト材料が使用され得る。
フォトレジスト材料は、露光中に使用される波長範囲に対する感受性特性についての特定の基準に従って選択され得る。
【0013】
特に、第1のフォトレジスト層内に吸収される第1の波長範囲内の光子の数が、第1のフォトレジスト層内に吸収される第2の波長範囲内の光子の数よりも少なくとも50%、特に少なくとも100%多い、および/または、第2のフォトレジスト層内に吸収される第2の波長範囲内の光子の数が、第2のフォトレジスト層内に吸収される第1の波長範囲内の光子の数よりも少なくとも50%、特に少なくとも100%多いというのが事実であり得る。
好ましくは、第2の波長範囲内の光子の30%未満が第1のフォトレジスト層内に吸収されるように選択がなされるべきである。
被覆プロセス中、第1のフォトレジスト層は、第1のフォトレジスト層を通される(透過される)放射線が、直接かつ完全に第2のフォトレジスト層に入るように、第2のフォトレジスト層に直接適用され得る。介在する中間層を提供することも可能である。1つの方法変形(method variant)において、第2の波長範囲内で第1の波長範囲内よりも大きい透過率(transmission)を有する材料からなるカラーフィルタ層が、基板を被覆するプロセス中に、第1のフォトレジスト層と第2のフォトレジスト層との間に生成される。カラーフィルタ層の材料は、光子の吸収が光化学反応をトリガするフォトレジスト材料であり得る。しかしながら、これは必須ではなく、多くの場合、実際には提供されない。吸収された光子が、それらが基板により近い第2のフォトレジスト層を通過しないという意味で失われる場合には十分である。
【0014】
したがって、カラー選択(color-selective)中間層(カラーフィルタ層)は、第2の波長範囲内の放射線を第2のフォトレジスト層の方向により多く透過するが、第1の波長範囲内の放射線の大部分は吸収される。この変形(variant)の1つの利点は、基板により近い第2のフォトレジスト層が、主に第2の波長範囲内の放射線に対する吸収性に対して選択され得る一方、第1の波長範囲内の放射線に関する挙動が大いに恣意的であり得るということである。この点において第2のフォトレジスト材料の要件がより少ないことから、第3のフォトレジスト層なしの変形の場合と比べて、より多くのフォトレジスト材料が、第2のフォトレジスト層を形成するために使用され得る。
特に、挿入されたカラーフィルタ層の使用により、おそらくはより複雑性の低い被覆プロセスが可能となる結果として、第1のフォトレジスト層および第2のフォトレジスト層に対して同じフォトレジスト材料を使用することも可能である。
【0015】
第1のフォトレジスト層および/または第2のフォトレジスト層の層厚は、特定の限度内で自由に選択され得る。特に良好なプロセス結果を得るためには、第1のフォトレジスト層および/または第2のフォトレジスト層の層厚が、使用される波長における投影レンズの焦点深度特性に適合されることが有利であるようである。知られているように、焦点深度は、RU=λ/NA2(ここにおいてλは検討中の波長であり、NAは投影レンズの像側開口数である)として規定されるレイリー単位RUに比例する。第1のフォトレジスト層の層厚は、好ましくは、第1の波長範囲の重心波長λ1のレイリー単位未満であるべきである。特に、第1のフォトレジスト層の層厚がRU1~RU1/4(ここにおいてRU1=λ1/NA2であり、λ1は第1の波長範囲の重心波長である)の範囲内にある場合は有利であると見なされる。代替的にまたは付加的に、対応する条件は、第2の波長範囲の重心波長λ2の関数としての第2のフォトレジスト層の層厚についても事実であり得る。層厚が指定間隔よりも小さい場合、投影露光装置によって提供される焦点深度が完全に利用されず、すなわち、フォトレジスト層は、あるべき状態よりも薄く、したがって、露光に続くエッチングプロセスにおいて、実際に可能であるよりも、下にある基板領域を保護することができるのは短い時間期間である、および/またはあまり十分に保護することができない。層厚が上記間隔よりも大きい場合、これは、層の少なくとも部分領域における像コントラストの悪化を結果としてもたらす。
代替的にまたは付加的に、波長範囲のそれぞれの重心波長λを考慮した最適化が可能である。層厚は、少なくとも、それぞれの重心波長と同じ大きさのものであり得る。層厚は、例えば、それぞれの重心波長の100%と400%の間の範囲内にあり得る。今日では慣習的に350nmと450nmの間の波長範囲内である、0.6までの値よりも著しく高い像側開口を有する投影露光装置では、層厚は、より薄い値も仮定し得る。
【0016】
多くの適したフォトレジストの使用により、第1のフォトレジスト層および/または第2のフォトレジスト層の層厚は、およそ50nm~およそ1500nmの範囲内、特に100nm~1000nmの範囲内にあり得る。
焦点距離が、RUM~RUM/4(ここにおいてRUM=λM/NA2であり、λMは第1の波長範囲および第2の波長範囲から平均された動作波長であり、NAは投影レンズの像側開口数である)の範囲内にあるように投影レンズが設計される場合には、さらには、より大きい深さに対して特に鋭角を有する露光が結果として生じる。これらの条件が満たされた場合には、軸方向にオフセットされた方式にある焦点領域は、概して、層インターフェースからある距離においてそれぞれ関連付けられたフォトレジスト層の内部にうまく位置付けられることができる。
すでに述べたように、第1の波長範囲の重心波長と第2の波長範囲の重心波長との間には有限スペクトル分離Δλが存在すべきであり、スペクトル分離Δλは、例えば少なくとも10nmであり得る。結果として、多層システムの異なる層における化学物理プロセスは、標的化方式で制御され、互いに独立して影響を受け得る。例えば15nmと50nmとの間の範囲内のより大きいスペクトル分離Δλは、結果として、所望の異なる感受性特性を有するスペクトル分離した領域が、根本的に利用可能なフォトレジスト材料のスペクトル吸収特性においてうまく使用され得るために、有利であり得る。
【0017】
異なる波長範囲に対する投影露光装置の焦点距離および個々のフォトレジスト層の層厚は、互いに有利に適合される。第1の波長範囲のための焦点位置と第2の波長範囲のための焦点位置との間の距離は、好ましくは、フォトレジスト層の層厚の合計の半分から最大50%、特に最大20%または10%だけ異なる。焦点距離(焦点位置間の距離)は、例えば、典型的な波長から典型的な波長の10倍の範囲内にあり得、ここでは、典型的な波長は、例えば、すべての波長範囲にわたって平均される波長によって与えられ得る。
特に、比較的粗い構造を生成することを求める用途においては、レーザは、放射線源として要求されない。むしろ、水銀灯が放射線源として使用され、第1の波長範囲が、およそ365nm(i線)、およそ405nm(h線)、およびおよそ436nm(g線)に重心波長を有する水銀線(mercury line)のうち正確に1つを含み、第2の波長範囲が、上記水銀線のうちから正確に1つの異なる水銀線を含むというのが事実であり得る。さらなる手段なしに、連続した広域スペクトルの代わりに、水銀灯の放出スペクトルが、互いから明白にスペクトル分離されている別々の重心波長を提供する。
【0018】
好ましい例示的な実施形態においては、2つのみの異なる波長範囲が、露光のために使用される(2波長露光:two-wavelength exposure)。これは、特に、比較的単純な層構築および相応して単純な被覆プロセスという利点を提供する。しかしながら、本発明は、より多くの動作波長範囲およびフォトレジスト層、例えば、3、4、5、またはそれ以上の波長範囲、およびそれに適合される、異なるフォトレジスト材料のいくつかのフォトレジスト層にまで拡大され得る。有利な状況は、いくつかの動作波長範囲が、例えば、水銀灯が使用されるときにこれらの動作波長範囲の使用が有利であり得るように、一次(primary)放射線源の強い放出線の数に等しい場合に存在し得る。この配置は、n番目の動作波長範囲において、nの値が小さいとさらに基板から離れるn番目の動作波長範囲が、リソグラフィプロセスに十分である感受性を有する一方、第1から(n-1)番目のフォトレジスト層が、実質的には第1の動作波長範囲から(n-1)番目の動作波長範囲に対して感受性があるのみというようなものであり得る。
【0019】
この出願において初めて説明される、特定の特性を有する放射線感受性多層システム付きの基板は、特許請求される投影露光方法の利点をユーザが使用することを可能にする。本発明はまた、第1の波長範囲および第1の波長範囲から分離した第2の波長範囲を含む動作波長範囲を有する放射線源の放射線を使用する投影露光方法における使用のための放射線感受性多層システムを用いて基板を生成するための方法に関する。さらには、本発明は、上記方法によって獲得可能もしくは獲得されまたは生成され、かつ特定の特性を有する放射線感受性多層システムで被覆される基板に関する。
本発明はまた、投影露光装置に関し、この投影露光装置は、説明される投影露光方法がそれを用いて実行され得るように、その放射線源および投影レンズに関して設計される。
本発明のさらなる利点および態様は、特許請求項から、および以下に図を参照して説明される、本発明の好ましい例示的な実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】感光性多層システムで被覆された基板の露光中のマイクロリソグラフィ投影露光装置のコンポーネントを示す図である。
【
図2】水銀灯の典型的な放出スペクトルを概略的に示す図である。
【
図3】互いに対してオフセットされている焦点領域内の2つの別個の波長範囲からの放射線で露光される2層の多層システムからの抜粋の図式の詳細を示す図である。
【
図4】一方が直接的に他方の上にある2つのフォトレジスト層を有する感光性多層システムの層構築を概略的に示す図である。
【
図5】一方が直接的に別の上にある3つのフォトレジスト層を有する感光性多層システムの層構築を概略的に示す図である。
【
図6A】本発明の例示的な実施形態の文脈における使用のためのいくつかの市販のフォトレジスト材料の吸収曲線を有する図である。
【
図6B】様々な吸収係数に対して層厚に対する吸収される放射線エネルギーの比率の依存性を示す図である。
【
図7】第1の例示的な実施形態に従う投影レンズを示す図である。
【
図8】第2の例示的な実施形態に従う投影レンズを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
概略的な
図1は、投影レンズPOの像平面ISの領域内に配置された基板を、投影レンズPOの物体平面OSの領域内に配置されたマスクMのパターンPATのうちの少なくとも1つの像を用いて露光するためのマイクロリソグラフィ投影露光装置WSCのコンポーネントを示す。
投影露光装置は、放射線源RSの放射線を用いて動作される。照明システムILLは、上記放射線源の放射線を受ける、および照明野内のマスクMのパターンに入射される照明放射線を形作るという役割を果たす。投影レンズPOは、光感受性基板上へパターンの構造を結像するという役割を果たす。基板は、例えば、半導体ウエハであり得る。露光されるべき基板は、投影レンズに対向する構造化されるべきその側面にフォトレジスト材料(レジスト層)からなる放射線感受性層MSをもつ。
本投影露光装置は、走査タイプのものである。例証されておらず、「レチクルステージ」とも称される、マスクM(レチクル)を保持および操作するためのデバイスは、パターンPATが投影レンズの物体平面OS内にあるように設計され、上記物体平面は、レチクル平面とも称される。マスクは、走査動作中、スキャナドライブを用いて、この平面内で投影レンズの基準軸AXに垂直の走査方向(y方向)に移動可動である。露光されるべき基板は、「ウエハステージ」とも称され、かつ基板をマスクMと同期して基準軸に垂直に走査方向(y方向)に移動させるためにスキャナドライブを備えるデバイス(例証されない)を用いて運ばれる(carried)。
水銀灯が、放射線源RSとして使用される。ここでは、「放射線源」という用語は、光を放出する一次放射線源だけでなく、フィルタ、絞り(stop)、帯域幅狭化モジュール(bandwidth narrowing module)、または同様のものなど、一次放射線源によって放出された一次放射線のスペクトルを、上記放射線が照明システムに入る前に変更する役割を果たす、存在する可能性のあるデバイスも包含することが意図される。
【0022】
図2は、水銀灯の典型的な放出スペクトルを概略的に示す。およそ350nmおよび450nmの範囲内の放出スペクトルは、比較的高い強度Iを有し、その間に比較的低い強度を有するスペクトル範囲があるという3つのスペクトル線(「水銀線」)によって特徴付けられる。およそ365nmに重心波長を有する水銀線iは、「i線」とも称され、およそ405nmに重心波長を有する水銀線hは、「h線」とも称され、およそ436nmにある水銀線は、「g線」とも称される。したがって、水銀灯は、このスペクトル範囲において、互いから明白にスペクトル分離されている3つの別々の重心波長を利用可能にし、これらの間のスペクトル分離Δλは、それぞれの場合において、20nmを著しく超え、特に30nm以上にもなる。
投影レンズPOは、水銀のg線、h線、およびi線の周辺の3つの波長範囲に対して補正される。これは、特に、3つの波長の各々により、基板上へのマスクのパターンの十分に鮮明な回折限界結像(diffraction-limited imaging)が可能であることを意味する。特に、これら3つの線の光のための結像スケールは同一である。しかしながら、3つの波長の最良の設定平面または焦点領域は、軸方向(すなわち、軸AXに平行)においては一致しない。むしろ、一次軸上色収差(primary longitudinal chromatic aberration)および/または二次軸上色収差(secondary longitudinal chromatic aberration)は、それらが消滅しないが小さい有限値を有するように設定され、その結果として、3つの重心波長のための最良の設定平面は、有限絶対値によって、それぞれの場合において、例えばレイリー単位の規模で、互いに対して軸方向に間隔を保たれる。この偏差は、「焦点距離」(ΔFOC)とも称される。
【0023】
投影レンズを用いて実行され得る投影露光方法は、この状況を特定のやり方で使用し、それは、特に
図3と関連してさらに詳細に説明される。
露光のための基板の準備中に、基板は、構造化されるべきまたは露光に供されるべきその側面において放射線感受性多層システムMSの形態にある放射線感受性層で被覆される。多層システムMSは、第1のフォトレジスト材料からなる第1のフォトレジスト層FLS1、ならびに、第1のフォトレジスト材料とは化学的におよびその光化学特性に関して異なる第2のフォトレジスト材料からなる第2のフォトレジスト層FLS2を備える。第2のフォトレジスト層FLS2は、第1のフォトレジスト層FLS1と基板SUBとの間に配置される。結果として、投影レンズの出口側端から出る投影放射線は、まず、第1のフォトレジスト層FLS1に達する。その後、第1のフォトレジスト層内に吸収されない放射線の部分が、第2のフォトレジスト層FLS2に達する。2つのフォトレジスト層間の違いは、主に、波長に対するフォトレジスト材料の感受性の依存性にある。
【0024】
第1のフォトレジスト材料は、それが重心波長λ1周辺の第1の波長範囲において比較的高い感受性を有するように選択され、その結果として、第1の波長範囲からの入射光子が比較的高い確率で所望の光化学反応を第1のフォトレジスト層内で引き起こす可能性は比較的高い。対照的に、重心波長λ2周辺の第2の波長範囲においては、第1のフォトレジスト材料の感受性は、第1の感受性と比べて著しく低く、その結果として、第2の波長範囲からの光子は、第1の波長範囲内のものよりも比較的小さい規模で第1のフォトレジスト層FLS1内に吸収され、したがって、上記第2の波長範囲からの光子の大部分が、下にある第2のフォトレジスト層FLS2へと浸透することができる。上記第2の波長範囲において、第2のフォトレジスト層FLS2が構築される第2のフォトレジスト材料は、露光に十分な第2の感受性を有し、その結果として、第2の波長は、第2のフォトレジスト層FLS2内でかなりの程度まで光化学反応を引き起こすことができ、上記反応が、第2のフォトレジスト材料の特性、特に第2のフォトレジスト材料の溶解度を変更する。
そのような感光性層の多層構築は、従来の被覆技術を使用して高品質で産出可能である。例として異なるフォトレジスト材料の2つの層は、スピンコーティング(spin-coating)によって基板に連続して適用され得る。
【0025】
投影露光方法の露光フェーズにおいて、放射線感受性多層システムMSで被覆された基板は、投影露光装置を用いて露光される。この場合、放射線源RSは、3つの水銀線のうちの2つが同時にまたは同期して、すなわち、例えば、h線と併せてi線、g線と併せてi線、またはg線と併せてh線が、使用されるように設定される。また、2つの選択された線のうちの一方が、第1の波長範囲に対応し、第2の選択された線が第2の波長範囲に対応する。
図1~
図3の概略的な例の場合において、投影レンズPOは、投影レンズの像平面ISに対する露光されるべき基板の適した配置を前提として、第1の波長の最良の設定平面、すなわち、第1の焦点領域FOC1が、基板から離れている第1のフォトレジスト層FLS1の内側にあるが、第2の波長の最良の設定平面、すなわち、第2の焦点領域FOC2が、第2のフォトレジスト層FLS2内に基板のより近くにあるように、光学的に補正される。
したがって、異なる焦点位置が理由で、第1のフォトレジスト層FLS1内では、露光から生じるレジスト像が、λ
1周辺の第1の波長範囲の空中像によって主に決定される一方、λ
2周辺の第2の波長範囲の空中像は、第2のフォトレジスト層FLS2内でより基板に近いレジスト像を決定する。
【0026】
感光性層の多層構築によって達成されることは、感光性層が、すべての波長に対して、完全に、すなわち、深さ全体にわたって(z方向に)、均等に感受性があるわけではなく、むしろ、対応する波長の焦点領域がある特定の波長範囲または特定の波長に対して主に感受性があるということである。これらの条件の下、互いの間にスペクトル分離を伴っている別々の波長に対して軸方向にオフセットされた2つの焦点位置を有するそのような空中像は、さらなるぶれなしに、比較的厚いレジスト内での焦点深度の増大をもたらし得る。
本発明の例示的な実施形態の文脈における使用のための感光性多層システムMSの基本層構築に関する2つの代替案は、
図4および
図5を参照して説明される。
図4は、まず第2のフォトレジスト層FLS2が基板に適用され、次いで第1のフォトレジスト層が、さらなるフォトレジスト層の介在なしに第2のフォトレジスト層に直接適用されるという変形を概略的に示す。2つのフォトレジスト層は、例えばスピンコーティングにより、連続して適用され得る。
基板から離れており、かつ「上(upper)」層とも称され得る第1のフォトレジスト層FLS1は、この場合、第1の波長範囲(重心波長λ
1を有する)からの光を比較的大いに吸収するが、第2の波長範囲(重心波長λ
2を有する)からの光を第2のフォトレジスト層FLS2へ大部分は透過するフォトレジスト材料からなるべきである。フォトレジスト層の場合、本出願の文脈において、「吸収する」および「光化学反応をトリガする」という2つの用語は、この文脈では実質的に同義語である。基板により近く、かつ「下(lower)」層とも称される第2のフォトレジスト層FLS2は、第2の波長範囲内の光を十分に大いに吸収するが、第1の波長範囲内の光を大部分は透過するフォトレジスト材料からなるべきである。
【0027】
第1の波長範囲に対してのより大きい透過率(すなわち、比較的低い感受性)の要求は、それがなければ第1のフォトレジスト層FLS1内での露光の過度に大きい深さ依存が生じるために、第1の波長の光の大部分が上のフォトレジスト層(第1のフォトレジスト層FLS1)を透過すべきであるということに由来する。第1のフォトレジスト層では、特定の吸収率または感受性が、第1の波長範囲内の光子のおよそ10%およびおよそ30%~55%が第1のフォトレジスト層FLS1内に吸収され、その結果として、第1の波長範囲の大部分が透過されるように選択される第1のフォトレジスト材料が使用される場合には便宜的であることが分かっている。
代替の変形は、
図5に概略的に例証される。この例示的な実施形態において、基板からより離れている第1のフォトレジスト層FLS1と基板により近い第2のフォトレジスト層FLS2との間には、第1の波長範囲(基板からより離れている第1のフォトレジスト層FLS1の露光のために主に使用されることが意図される)内よりも、第2の波長範囲(第2のフォトレジスト層FLS2の露光のために主に使用されることが意図される)内で大きい透過率を有するように選択される材料からなるカラーフィルタ層FFSが配置されている。
【0028】
この変形の1つの利点は、第1の波長範囲内の光に対する上流のカラーフィルタ層FFSによる保護が理由で、基板により近い下層(第2のフォトレジスト層FLS2)が、第2の波長範囲内の光を十分に吸収するという特性を実現させるだけでよい、すなわち、比較的高い第2の感受性を有するということである。また、第1の波長範囲内の光に対する感受性は、カラーフィルタ層FFSによる防御が理由で、上記光の比較的大部分が第2のフォトレジスト層FLS2へと通過することができないために、恣意的であり得る。介在カラーフィルタ層を有する変形の場合、原則として、第1および第2のフォトレジスト層を同じフォトレジスト材料から生成することが可能である。
「2波長露光」のいくつかの具体的な例示的な実施形態が、本明細書で説明される原理を例証するために以下に示される。
図6A内の図は、いくつかの市販のフォトレジスト材料またはレジスト材料の吸収曲線を概略的に示す。図において、吸収係数ABS(1/μmの単位)は、それぞれの場合において、波長λ([nm])の関数として示される。曲線は、ソース:http//www.microchemicals.com/downloads/application_notes.htmlの通り、MicroChemicalsからのフォトレジストを表す。曲線称号FL1、FL2、・・・FL7の商用称号AZ(登録商標)XXXへの割り当ては、以下の通りである。FL1=AZ(登録商標)9260、FL2=AZ(登録商標)4562、FL3(登録商標)=AZ 6632、FL5=AZ(登録商標)1512HS、FL6=AZ(登録商標)701MiR、およびFL7=AZ(登録商標)5214E。
【0029】
用いられるフォトレジストの吸収係数は、対応する波長の入射光子が、層厚に応じて、どれくらいの比率で吸収されるかを計算するために使用され得る。吸収係数は、通常、単位1/μmで指定される。典型的な値は、0.5/μm~1/μmの範囲内にある。これは、フォトレジスト層に入射する放射線がどれくらいの比率でそこに吸収されるかを明らかにする。
図6Bは、4つの異なる吸収係数ABSに対して層厚DSに対する吸収される放射線エネルギーの比率PH-ABSの依存を示す図を示す。例証される曲線は、低線量でのまたは低強度での露光に適用可能である。化学的に増幅されないフォトレジスト、すなわち、特に、水銀灯のg線、h線、およびi線の領域で通常は使用されるフォトレジストは、漂白の現象を呈する。ここでのフォトレジストによる光子の吸収は、フォトレジストがさらなる入射光子に対してさらに透過的になるという効果を有する。フォトレジストの露光に典型的に使用されるものなどの、十分に強い光線量では、したがって、効果的に、図面に例証されるものよりも低い比率のエネルギーが吸収される。
【0030】
第1の具体的な例示的な実施形態においては、
図4に従う層構築が選択される。基板近くの第2の層(FLS2)は、800nmの層厚を有し、AZ(登録商標)4562(曲線FL2)からなる。基板から離れた第1の層FLS1は、800nmの層厚を有し、AZ 9260(FL1)からなる。この例示的な実施形態において、h線は、第1の波長範囲に対応し、g線は、第2の波長範囲に対応する。上層(FLS1)は、事実上h線のみに反応する。基板により近い下層(FLS2)は、h線およびg線にほぼ同等の程度で反応する。しかしながら、h線放射線のかなりの割合が、すでに上層(第1のフォトレジスト層FL1)内に吸収されているため、下層(第2のフォトレジスト層FLS2)の露光は、g線放射線で占められる。この所望の効果は、水銀灯が一般的には、h線よりも大きい強度でg線を放出するということによって強化される(
図2を参照されたい)。
【0031】
第2の具体的な例示的な実施形態においては、
図4に従う層構築がもう一度選択される。この例示的な実施形態では、i線およびg線が露光のために使用される。基板から離れた第1のフォトレジスト層FLS1(層厚800nm)は、AZ(登録商標)9260(FL1に対応する)からなる一方、基板に近い第2のフォトレジスト層FLS2(層厚800nm)は、AZ(登録商標)701MiR(FL6に対応する)からなる。基板から離れた上層(FLS1)は、第1の具体的な例に対して変わりがなく、下層は、ここでは、できる限りg線の光のみに反応することが意図される材料からなる。これは、エネルギー性がいくらか高いi線の光子が、g線の光子によってもトリガされ得る反応もトリガし得るため、限られた範囲内で達成可能である。したがって、i線に対する極小値の感受性を有するフォトレジスト材料を使用することが便宜的である。放射線源が典型的には、i線よりもいくらか大きい強度でg線を放出し、より大きい比率のi線光子が、第1のフォトレジスト層FLS1内にすでに吸収されているため、このようにして達成され得ることは、第2のフォトレジスト層FLS2における光子の吸収がg線の光子で占められるということである。
【0032】
第3の具体的な例示的な実施形態においては、
図4に従う層構築がもう一度選択される。この例示的な実施形態では、i線およびg線が露光のために使用される。第2の例示的な実施形態と比較して、未変更の層厚(800nm)を有する上層(FLS1)が、AZ(登録商標)9260(FL1に対応する)と比較してi光に対してより高い吸収を有するAZ(登録商標)1512HS(曲線FL5に対応する)によって置き換えられた。第2のフォトレジスト層は未変更のままである。この修正形態によって達成されることは、より少ないi線光子が露光のために必要とされることであり、これは望ましい効果と見なされ得る。しかしながら、g線光子もまた、上層の露光にかなり寄与し、これはおそらくは望ましくない場合がある。
第4の具体的な例示的な実施形態においては、
図5に従う層構築が選択され、すなわち介在カラーフィルタ層FFSを有する。g線(第2の波長として)およびi線(第1の波長として)のためのこの例示的な実施形態は、このように追加のカラー選択中間層を使用する。AZ(登録商標)5214E(FL7に対応する)からなる上層(第1のフォトレジスト層FLS1)は、800nmの層厚を有し、かつg線光に対して事実上感受性がなく、その結果として、事実上i線光のみが露光に寄与する。AZ(登録商標)6632(FL3に対応する)からなる下層(第2のフォトレジスト層FLS2)は、800nmの層厚を有し、そのg線感受性、すなわちi線放射線に対するその挙動が無関係であることが主に理由で選択される。これら2つのレジスト間において、90nm厚カラーフィルタ層FFSが、中間層として使用され、i線光が第2のフォトレジスト層FLS2を事実上透過することができないように、i線をフィルタアウトまたはブロックする。
【0033】
例として、i線のための底部反射防止被覆(BARC:bottom antireflective coating)が、カラーフィルタ層として使用され得る。BARCは、対応する光の背面反射を防ぐことが意図され、したがって対応する波長(ここではi線)に対して強い吸収性がある。BARCの行動のさらなる機序は、BARC内での放射線の多重反射の結果としての干渉にある。カラーフィルタ層FFSの特定の層厚を考慮すると、上層(FLS1)内へのi線放射線の背面反射は、抑制される。背面反射光は、レジスト内の入射光との重ね合わせ(superimposition)の結果として、振動曲線として知られる望ましくない重ね合わせを発生させ得る。後者は、厚いレジスト層の場合に特に発生し得る。AZ(登録商標)BARLi II 90の場合、この背面反射の抑制が起こる厚さは90nmである。
BARCの厚さが50%(例えば135nmまで)増大される場合、i線放射線の最小というよりも最大の背面反射が発生する。これは、振動曲線がさらに強くなり得るという欠点を有するが(より薄い層の場合には特定の状況下では弱い効果しか有さない)、代わりに、改善された防御という利点をもたらし、その結果として、望ましくない様式でカラーフィルタ層に浸透することができるi線放射線はより少ない。
【0034】
様々なタイプの投影レンズが、本方法を実行するために使用され得る。例として、屈折投影レンズ、すなわち、屈折力を呈するすべての光学素子(特にレンズ素子)が動作波長範囲内で透過性である材料からなる投影レンズを使用することが可能である。投影レンズが、反射屈折投影レンズ、すなわち、透過性光学素子(例えば、レンズ素子)に加えて、少なくとも1つの曲面鏡、特に凹面鏡が投影ビーム経路内に提供される投影レンズであることも可能である。
適した反射屈折投影レンズは、一次および/または二次軸上色収差を変更するための修正形態によって、例えば、米国特許第7,760,452B2号に示される例から開発され得る。縮小レンズ、すなわち、縮小スケール(例えば、1:4または1:5)で像平面または基板上にパターンを結像する投影レンズが好ましくは使用される。投影光学ユニット内の光学素子の必要な数およびサイズが開口数に伴って著しく増大するため、NA=0.5またはNA=0.6~NA=0.8またはNA=0.93の範囲内の像側開口数NAは、多くの場合、達成可能な解像度と投影露光装置の製作費用との間の良好な妥協を提供する。
【0035】
図7および
図8は、極端な広帯域補正を呈する例示的な実施形態を示す。米国特許第7,760,452(B2)号は、本設計の一般的な補正原則に関する情報を提供する。本設計は、米国特許第7,760,452(B2)号より
図3aの実施形態から発展されている。本設計は、水銀のg線(436nm)、h線(405nm)、およびi線(365nm)周辺の波長範囲に対して補正される。この点に関して、米国特許第7,760,452(B2)号の開示は、参照により本説明の内容に組み込まれる。
米国特許第7,760,452(B2)号に対する唯一の修正は、一次および/または二次軸上色収差が、消滅せず、むしろ小さい有限値を有し、その結果として、3つの重心波長のための最良の設定平面が、有限絶対値(例えば、レイリー単位RUの規模で)によって、互いに対して軸方向に変位されるということである。一次および二次の両方の軸上色収差が、設計において補正可能である(そうでなければスペクトル帯域幅特性は保証されない)ため、一連の焦平面は、先験的に自由に選択可能である。
図7および
図8の例(またはそれぞれ表7、表7A、表8、表8A)において、i線の設定平面は、中央のh線の後ろおよそ1.5μm、g線の設定平面は、中央のh線の前1.5μmにある(すなわち、焦点距離は、それぞれの場合においておよそ1.5μmである)。これは、一次軸上色収差のわずかな離調によって達成され得る。離調は、本設計を米国特許第7,760,452(B2)号からの先行技術と差別化する構造的方策がほとんど認識できないほどにわずかである。
【0036】
図7の投影レンズ700の例示的な実施形態は、一次軸上色収差のわずかな離調の違いを伴うが、米国特許第7,760,452(B2)号の
図3aからの設計と非常に類似している。
図7の設計において、レチクル近くのシステム部内の絞り平面(stop plane)が、システム内の瞳位置を規定する。上記絞り平面は、フロントシステム部全体によってレチクル領域内へ結像される。しかしながら、この結像は、色彩的にかなり補正不足であり、入射瞳の位置が波長により異なり、したがってシステムが異なる波長に対してレチクルにおいて異なるテレセントリック挙動を呈するという結果を伴う。
瞳結像の色彩補正は、ハッチ近くのレンズ部、すなわち、特にレチクル近くのレンズ部および中間像を色彩的に補正することによって達成され得る。
図8の投影レンズ800の例において、瞳結像の上記色彩補正は、レチクル平面の直接下流にある無彩色の過剰補正ダブレット(doublet)DBの使用によって達成することができた。
図面の図に示される投影レンズの仕様は、本説明の最後にまとめられた表に示され、この表の数字は、図面の対応する図の数字に対応する。
【0037】
表は、それぞれの設計の仕様を表形式で要約している。この場合、「SURF」の欄は、屈折面または何らかの他のやり方で区別される表面の数を示し、「RADIUS」の欄は、表面の半径r(mm)を示し、「THICKNESS」の欄は、表面とそれに続く表面との間の、厚さとして指定される距離d(mm)を示し、「MATERIAL」の欄は、光学コンポーネントの材料を示す。「INDEX1」、「INDEX2」、および「INDEX3」の欄は、設計動作波長405.0nm(INDEX1)、および365.5nm(INDEX2)、および436.0nm(INDEX3)における材料の屈折率を示す。「SEMIDIAM」の欄は、使用可能な、レンズ素子または光学素子の自由半径(free radii)または自由光学半径(free optical semidiameters)(mm)を示す。半径r=0(「RADIUS」の欄内)は、平面に対応する。いくつかの光学表面は非球面である。「A」の付いた表は、対応する非球面データを示し、ここでは、非球面表面は、以下の仕様に従って計算される。
【0038】
p(h)=[((1/r)h2)/(1+SQRT(1-(1+K)(1/r)2h2))]+C1*h4+C2*h6+....
この場合、半径の逆数(reciprocal)(1/r)は、面曲率(surface curvature)を示し、hは、表面点(surface point)と光軸との間の距離(すなわち、ビーム高さ)を示す。結果として、p(h)は、矢状方向高さ、すなわち、z方向(光軸の方向)における表面点と表面頂点(surface vertex)との間の距離を示す。定数K、C1、C2・・・は、「A」の付いた表内に表される。円錐定数Kが0に等しい場合、上の式を以下のように単純化することができる。
p(h)=r-SQRT(r2-h2)+C1*h4+C2*h6+....
【0039】
例示的な実施形態の投影レンズは、像側開口数NA=0.5のために設計される。物体高さは、それぞれの場合において62mmである。
【表7】
(表7)(表中、「,」は小数点「.」を意味する。)
【表7A】
(表7A)(表中、「,」は小数点「.」を意味する。)
【表8】
(表8)(表中、「,」は小数点「.」を意味する。)
【表8A】
(表8A)(表中、「,」は小数点「.」を意味する。)