(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】インプリント用硬化性組成物、インプリント用硬化性組成物の製造方法、硬化物、パターン製造方法および半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20220426BHJP
C08F 20/18 20060101ALI20220426BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
C08F20/18
C08F2/44 A
(21)【出願番号】P 2020549196
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037190
(87)【国際公開番号】W WO2020066978
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2018185116
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】下重 直也
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-000612(JP,A)
【文献】特開2015-012100(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170428(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/175668(WO,A1)
【文献】特開2018-097249(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物と、
光重合開始剤と、
Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルと
を含むインプリント用硬化性組成物であって、
前記粒子性メタルの含有量が、前記組成物の固形分の100質量ppt~30質量ppbであ
り、
アミン価が1mmol/g以下である、インプリント用硬化性組成物。
【請求項2】
重合性化合物と、
光重合開始剤と、
Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルと
を含むインプリント用硬化性組成物であって、
前記粒子性メタルの含有量が、前記組成物の固形分の100質量ppt~30質量ppbであり、
酸価が1mmol/g以下である、インプリント用硬化性組成物。
【請求項3】
さらに、前記粒子性メタル以外の粒子性メタルであって、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも1種を含む粒子性メタルを含み、
前記Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルと、
前記粒子性メタル以外の粒子性メタルであって、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも1種を含む粒子性メタルの合計量が組成物の固形分の250質量ppt~40質量ppbである、請求項1
又は2に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項4】
実質的に溶剤を含まない、請求項1~
3のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項5】
実質的に重量平均分子量が2,000以上のポリマーを含まない、請求項1~
4のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項6】
実質的にケイ素原子を含有しない、請求項1~
5のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項7】
さらに、離型剤を含む、請求項
6に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項8】
前記組成物中の重合性化合物の含有量が80質量%以上である、請求項1~
7のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物の製造方法であって、
蒸留処理および酸洗浄処理の少なくとも一方を施した原料を用いることを含む、インプリント用硬化性組成物の製造方法。
【請求項10】
前記組成物の原料を混合した後、ポリアミドを含むフィルターを用いて濾過処理を行うことを含む、請求項
9に記載のインプリント用硬化性組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物から形成された硬化物。
【請求項12】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のインプリント用硬化性組成物を、基板上またはモールド上に適用し、前記インプリント用硬化性組成物を、前記モールドと前記基板で挟んだ状態で光照射することを含むパターン製造方法。
【請求項13】
前記パターンのサイズが100nm以下のライン、ホールおよびピラーの少なくとも1つの形状を含む請求項
12に記載のパターン製造方法。
【請求項14】
請求項
12または
13に記載のパターン製造方法を含む、半導体素子の製造方法。
【請求項15】
請求項
12または
13に記載のパターン製造方法で得られたパターンをマスクとしてエッチングを行うことを含む、請求項
14に記載の半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント用硬化性組成物、インプリント用硬化性組成物の製造方法、硬化物、パターン製造方法および半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント法とは、パターンが形成された金型(一般的にモールド、スタンパと呼ばれる)を押し当てることにより、材料に微細パターンを転写する技術である。インプリント法を用いることで簡易に精密な微細パターンの作製が可能なことから、近年さまざまな分野での応用が期待されている。特に、ナノオーダーレベルの微細パターンを形成するナノインプリント技術が注目されている。
インプリント法としては、その転写方法から熱インプリント法、光インプリント法と呼ばれる方法が提案されている。熱インプリント法では、ガラス転移温度(以下、「Tg」ということがある)以上に加熱した熱可塑性樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することにより微細パターンを形成する。この方法は多様な材料を選択できるが、プレス時に高圧を要すること、熱収縮等により微細なパターン形成が困難であるといった問題点も有する。
【0003】
一方、光インプリント法では、インプリント用硬化性組成物にモールドを押し当てた状態で光硬化させた後、モールドを離型する。未硬化物へのインプリントのため、高圧や高温加熱の必要はなく、簡易に微細なパターンを形成することが可能である。
光インプリント法では、基板(必要に応じて密着処理を行う)上にインプリント用硬化性組成物を塗布後、石英等の光透過性素材で作製されたモールドを押し当てる。モールドを押し当てた状態で光照射によりインプリント用硬化性組成物を硬化し、その後モールドを離型することで目的のパターンが転写された硬化物が作製される。
基板上にインプリント用硬化性組成物を適用する方法としては、スピンコート法やインクジェット法が挙げられる。特にインクジェット法は、インプリント用硬化性組成物のロスが少ないといった観点から、近年注目される適用方法である。
【0004】
また、転写したインプリントパターンをマスクとして微細加工を行う方法はナノインプリントリソグラフィー(NIL)と呼ばれ、現行のArF液浸プロセスに代わる次世代リソグラフィ技術として開発が進められている。そのため、NILに用いられるインプリント用硬化性組成物は、極端紫外線(EUV)レジストと同様、30nm以下の超微細パターンが解像可能であり、かつ加工対象を微細加工する際のマスクとして高いエッチング耐性が必要となる。マスクとして使用を想定したインプリント用硬化性組成物の具体例としては特許文献1~5が挙げられる。
一方、特許文献6には、インプリント用硬化性組成物1質量部に対して、イオン交換樹脂を0.01質量部以上5質量部以下の範囲で加え撹拌した混合物を、ゼーター電位による吸着作用を有するフィルターで濾過することにより、金属不純物の金属毎の含有量を50ppb以下に低減することを特徴とする、金属低減インプリント用硬化性組成物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2005/082992号
【文献】特開2015-009171号公報
【文献】特開2015-185798号公報
【文献】特開2015-070145号公報
【文献】特開2015-128134号公報
【文献】特開2014-192377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インプリント用硬化性組成物をエッチング用マスクとして使用する際には不純物量の管理が重要となる。特に、金属成分の含有量が多いとエッチング時に加工不良が発生し、加工後の欠陥数の増加およびデバイス製造時の歩留りの悪化につながる。
しかしながら、例えば、特許文献6に記載の上記インプリント用硬化性組成物では、イオン交換樹脂では除去困難な金属成分が残ってしまい、かかる成分が、インプリント時にモールドを破損させることが分かった。さらに、特許文献6では、イオン交換樹脂に吸着させた後、フィルター(ゼータプラスSHフィルター40QSH)を用いて濾過することも記載されているが、このようなフィルターで濾過しても金属成分を除去するには十分ではないことが分かった。
さらに、特定の粒子性メタルがエッチングストッパとして機能してしまい加工不良が充分に低減できないことが分かった。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、モールド耐久性およびエッチング加工性に優れたインプリント用硬化性組成物、ならびに、上記インプリント用硬化性組成物の製造方法、上記インプリント用硬化性組成物を用いた硬化物、パターン製造方法および半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、鉄、銅、チタンまたは鉛を含む粒子性メタルであって、粒子径が1nm以上の成分の量を減らすことにより、モールド耐久性およびエッチング耐性を向上可能であることが分かった。一方で、上記粒子性メタルが全く存在しないと、インプリントを繰り返し行った際に、モールドの汚染が顕著になり、モールド耐久性が劣ることも分かった。そして、鉄、銅、チタンまたは鉛を含む粒子性メタルであって、粒子径が1nm以上の成分の量を固形分の100質量ppt~30質量ppbの割合で含む構成とすることにより、モールド耐久性およびエッチング耐性の両方について、良好な性能を達成可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>重合性化合物と、光重合開始剤と、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルとを含むインプリント用硬化性組成物であって、
上記粒子性メタルの含有量が、上記組成物の固形分の100質量ppt~30質量ppbである、インプリント用硬化性組成物。
<2>さらに、上記粒子性メタル以外の粒子性メタルであって、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも1種を含む粒子性メタルを含み、上記Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルと、上記粒子性メタル以外の粒子性メタルであって、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも1種を含む粒子性メタルの合計量が組成物の固形分の250質量ppt~40質量ppbである、<1>に記載のインプリント用硬化性組成物。
<3>アミン価が1mmol/g以下である、<1>または<2>に記載のインプリント用硬化性組成物。
<4>酸価が1mmol/g以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<5>実質的に溶剤を含まない、<1>~<4>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<6>実質的に重量平均分子量が2,000以上のポリマーを含まない、<1>~<5>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<7>実質的にケイ素原子を含有しない、<1>~<6>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<8>さらに、離型剤を含む、<7>に記載のインプリント用硬化性組成物。
<9>上記組成物中の重合性化合物の含有量が80質量%以上である、<1>~<8>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物。
<10><1>~<9>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物の製造方法であって、蒸留処理および酸洗浄処理の少なくとも一方を施した原料を用いることを含む、インプリント用硬化性組成物の製造方法。
<11>上記組成物の原料を混合した後、ポリアミドを含むフィルターを用いて濾過処理を行うことを含む、<10>に記載のインプリント用硬化性組成物の製造方法。
<12><1>~<9>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物から形成された硬化物。
<13><1>~<9>のいずれか1つに記載のインプリント用硬化性組成物を、基板上またはモールド上に適用し、上記インプリント用硬化性組成物を、上記モールドと上記基板で挟んだ状態で光照射することを含むパターン製造方法。
<14>上記パターンのサイズが100nm以下のライン、ホールおよびピラーの少なくとも1つの形状を含む<13>に記載のパターン製造方法。
<15><13>または<14>に記載のパターン製造方法を含む、半導体素子の製造方法。
<16><13>または<14>に記載のパターン製造方法で得られたパターンをマスクとしてエッチングを行うことを含む、<15>に記載の半導体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、モールド耐久性およびエッチング耐性に優れたインプリント用硬化性組成物、ならびに、上記インプリント用硬化性組成物の製造方法、上記インプリント用硬化性組成物を用いた硬化物、パターン製造方法および半導体素子の製造方法を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。「(メタ)アクリロイルオキシ」は、アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシを表す。
本明細書において、「インプリント」は、好ましくは、1nm~10mmのサイズのパターン転写をいい、より好ましくは、およそ10nm~100μmのサイズ(ナノインプリント)のパターン転写をいう。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書において、「光」には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波だけでなく、放射線も含まれる。放射線には、例えばマイクロ波、電子線、極端紫外線(EUV)、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。
本明細書において、固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本発明における沸点測定時の気圧は、特に述べない限り、101325Pa(1気圧)とする。本発明における温度は、特に述べない限り、23℃とする。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として定義される。本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000またはTSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いることによって求めることができる。溶離液は特に述べない限り、THF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。また、検出は特に述べない限り、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
【0010】
本発明のインプリント用硬化性組成物(以下、単に、「本発明の組成物」ということがある)は、重合性化合物と、光重合開始剤と、Single Particle ICP(Inductively Coupled Plasma)-MASS(Mass Spectrometry)法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタル(以下、「特定粒子性メタル」ということがある)とを含むインプリント用硬化性組成物であって、粒子性メタルの含有量が、上記組成物の固形分の100質量ppt~30質量ppbであることを特徴とする。
このように、イオン交換樹脂等での除去が困難な特定粒子性メタルの含有量を30質量ppb以下とすることにより、モールドの破損を効果的に抑制でき、モールド耐久性を向上できると推測される。このメカニズムは、組成物中に特定粒子性メタルが含まれる量が上記範囲を超えると、インプリント時にモールドと特定粒子性メタルが物理的に接触しモールドにダメージを与えるためと推測される。さらに、上記特定粒子性メタルを30質量ppb以下とすることにより、エッチング耐性(ドライエッチング時のエッチング欠陥によるデバイス歩留まりの低下)を顕著に向上させることもできる。特に、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルがエッチング時にエッチングストッパとして働きやすく、エッチング加工時の欠陥増加に影響を与える。
また、特定粒子性メタルの量を100質量ppt以上とすることにより、モールドの汚れを効果的に抑制でき、モールド耐久性を向上できると推測される。このメカニズムは、組成物中に特定粒子性メタルが少量含まれると、効果的にインプリント用硬化性組成物中のモールド汚染不純物をトラップするためと推測される。また、粒子径は1nm以上の粒子性メタルが、モールド耐久性に影響を与える。
また、特定粒子性メタルを30質量ppb以下とすることにより、インプリント用硬化性組成物の経時安定性を向上させることができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
<特定粒子性メタル>
本発明の組成物は、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルを合計で、固形分の100質量ppt~30質量ppbの割合で含む。
特定粒子性メタルは、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子であれば特に定めるものではなく、鉄、銅、チタンおよび鉛の2種以上からなる粒子、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種と他の金属からなる粒子、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種と非金属からなる粒子も含む趣旨である。
【0012】
特定粒子性メタルの粒子径は、1nm以上である。1nm以上の粒子性メタルが、モールド耐久性に影響を与える。上限については、特定粒子性メタルの量が固形分の30質量ppb以下である限り、特に定めるものではないが、999nm以下が実際的である。
粒子径の大きな金属を含む粒子性メタルを含むと、インプリント用硬化性組成物にモールドを接触させた際に、モールドの破損(特に、モールドパターンの破損)を招く傾向にある。また、特定粒子性メタルがインプリント用硬化性組成物中に存在するとエッチングストッパとして機能してしまいエッチング欠陥を発生させてしまう。特に、特定粒子性メタルは、金属イオンに比べ、金属成分の局在性が高くなり致命的なエッチング欠陥が生じデバイス歩留りの低下を招く場合がある。本発明では、特定粒子性メタルの含有量を上記のとおり制限することにより、かかる課題を解決したものである。
また、エッチング欠陥は、特にエッチング加工耐性が低い無機物(例えばSi)を含まないインプリント用硬化性組成物で顕著に発生する傾向にあるが、かかる問題点も効果的に抑制できる。
【0013】
本発明の組成物は、特定粒子性メタルを固形分の100質量ppt~30質量ppbの割合で含む。上記上限値以下とすることにより、モールド耐久性を向上させるとともに、エッチング欠陥の発生が顕著に抑制され、半導体素子の歩留まりが向上する。さらにインプリント用硬化性組成物の経時安定性も向上させることができる。
特定粒子性メタルの含有量は、下限値が、150質量ppt以上が好ましく、200質量ppt以上が一層好ましい。また、特定粒子性メタルの含有量は、上限値が、25質量ppb以下が好ましく、19質量ppb以下がより好ましく、15質量ppb以下がさらに好ましく、10質量ppb以下が一層好ましく、8質量ppb以下がより一層好ましく、5質量ppb以下がさらに一層好ましく、3質量ppb以下がよりさらに一層好ましく、1.5質量ppb以下、1質量ppb以下であってもよい。上述のとおり、特定粒子性メタルの量を30質量ppb以下とすることによって、エッチング体制が向上する傾向にある。一方、100質量ppt以上とすることによって、繰り返しインプリントを実施した際のモールドの汚染を効果的に抑制できる。この理由は定かではないが、インプリント用硬化性組成物中に含まれる微量の極性有機不純物を特定粒子性メタルがトラップしているものと考えられる。また、特定粒子性メタルが含まれるとエッチングストッパ(エッチングできない部分)が発生してしまい加工不良が発生しやすくなる。本発明では、特定粒子性メタルの量を30質量ppb以下とすることによって、この点を回避している。
【0014】
Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、鉄を含む粒子性メタルの含有量は、下限値が、0.01質量ppb以上が好ましく、0.07質量ppb以上がより好ましい。また、上限値は、20質量ppb以下が好ましく、8質量ppb以下がより好ましく、2質量ppb以下がさらに好ましく、1質量ppb以下が一層好ましい。
【0015】
Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、銅を含む粒子性メタルの含有量は、下限値が、0.01質量ppb以上が好ましく、0.05質量ppb以上がより好ましい。また、上限値は、10質量ppb以下が好ましく、5質量ppb以下がより好ましく、1質量ppb以下がさらに好ましく、0.8質量ppb以下が一層好ましい。
【0016】
Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、チタンを含む粒子性メタルの含有量は、下限値が、0.005質量ppb以上が好ましく、0.02質量ppb以上がより好ましい。また、上限値は、7質量ppb以下が好ましく、3質量ppb以下がより好ましく、1質量ppb以下がさらに好ましく、0.2質量ppb以下が一層好ましい。
【0017】
Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、鉛を含む粒子性メタルの含有量は、下限値が、0.001質量ppb以上が好ましい。また、上限値は、5質量ppb以下が好ましく、1質量ppb以下がより好ましい。
【0018】
特定粒子性メタルの粒子径(Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径)および含有量は、後述する実施例に記載の方法で測定される。実施例で使用される機器では測定できない場合、あるいは、廃番等により機器が入手困難な場合には、Agilent 8900を用いることができ、Agilent 8900では測定できない場合、あるいは、廃番等により機器が入手困難な場合には、PerkinElmer社製 NexION350Sを用いることができる。
【0019】
<特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタル>
本発明の組成物は、上記特定粒子性メタル以外の粒子であって、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも1種を含む粒子性メタル(以下、「他の金属を含む粒子性メタル」ということがある)の合計量が、固形分の150質量ppt~60質量ppbであることが好ましく、250質量ppt~40質量ppbであることがより好ましい。このような構成とすることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。さらに、離型性も向上させることができる。
特定粒子性メタルと他の金属を含む粒子性メタルの合計含有量は、下限値が、組成物の固形分の0.3質量ppb以上が好ましい。また、上限値は、100質量ppb以下が好ましく、50質量ppb以下がより好ましく、10質量ppb以下がさらに好ましく、5質量ppb以下が一層好ましい。
特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタルの量は、後述する実施例に記載の方法で測定される。
本発明の組成物は、特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタルとして、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも2種を含むことが好ましく、少なくとも3種を含むことがより好ましく、少なくとも4種を含むことがより好ましい。このような構成とすることにより、モールド耐久性がより向上する傾向にある。
【0020】
<重合性化合物>
本発明の組成物は、さらに、重合性化合物を含む。重合性化合物は、ラジカル重合性化合物であることが好ましい。
重合性化合物は、重合性基が1つである単官能重合性化合物でも、重合性基が2つ以上である多官能重合性化合物でもよい。本発明のインプリント用硬化性組成物は、多官能重合性化合物を含むことが好ましく、多官能重合性化合物と単官能重合性化合物の両方を含むことがより好ましい。
多官能重合性化合物は、二官能重合性化合物および三官能重合性化合物の少なくとも1種を含むことが好ましく、二官能重合性化合物の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0021】
重合性化合物が有する重合性基は、ビニル基、アリル基、ビニルフェニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基などのエチレン性不飽和結合を有する基が挙げられる。重合性基は、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルアミノ基が好ましく、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基がより好ましい。
本発明における重合性化合物の分子量は、2000未満であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1000以下であることが一層好ましく、800以下であってもよい。下限値は、100以上であることが好ましい。
本発明における重合性化合物は、ケイ素原子を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。本発明の一実施形態として、重合性化合物がシリコーン骨格を有する重合性化合物であることが例示される。本発明の他の一実施形態として、重合性化合物がケイ素原子を含有しない重合性化合物であることが例示される。シリコーン骨格を有する重合性化合物としては、信越化学工業社製、シリコーンアクリレートX-22-1602が例示される。
【0022】
本発明のインプリント用硬化性組成物における重合性化合物の含有量は、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましく、80質量%以上であることが一層好ましい。また、本発明のインプリント用硬化性組成物における重合性化合物の含有量は、99.9質量%以下であることが好ましく、99質量%以下であることがより好ましく、98質量%以下であることがさらに好ましい。
他のラジカル重合性化合物は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0023】
<<多官能重合性化合物>>
本発明で用いる多官能重合性化合物が有する重合性基の数は、2以上であり、2~7が好ましく、2~4がより好ましく、2または3がさらに好ましく、2が一層好ましい。
本発明では、下記式(2)で表される化合物を含むことが好ましい。このような化合物を用いることにより、密着性、離型力、経時安定性について、バランスよく、より優れる傾向にある。
【0024】
【0025】
式中、R
21はq価の有機基であり、R
22は水素原子またはメチル基であり、qは2以上の整数である。qは2以上7以下の整数が好ましく、2以上4以下の整数がより好ましく、2または3がさらに好ましく、2が一層好ましい。
R
21は、2~7価の有機基であることが好ましく、2~4価の有機基であることがより好ましく、2または3価の有機基であることがさらに好ましく、2価の有機基であることが一層好ましい。R
21は直鎖、分岐および環状の少なくとも1つの構造を有する炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基の炭素数は、2~20が好ましく、2~10がより好ましい。
R
21が2価の有機基であるとき、下記式(1-2)で表される有機基であることが好ましい。
【化2】
式中、Z
1およびZ
2はそれぞれ独立に、単結合、-O-、-Alk-、または-Alk-O-であることが好ましい。Alkはアルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)を表し、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基を有していてもよい。
【0026】
R9は、単結合または下記の式(9-1)~(9-10)から選ばれる連結基またはその組み合わせが好ましい。中でも、式(9-1)~(9-3)、(9-7)、および(9-8)から選ばれる連結基であることが好ましい。
【0027】
【0028】
R101~R117は任意の置換基である。中でも、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アラルキル基(炭素数7~21が好ましく、7~15がより好ましく、7~11がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、チエニル基、フリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリロイルオキシアルキル基(アルキル基は炭素数1~24が好ましく、1~12がより好ましく、1~6がさらに好ましい)が好ましい。R101とR102、R103とR104、R105とR106、R107とR108、R109とR110、複数あるときのR111、複数あるときのR112、複数あるときのR113、複数あるときのR114、複数あるときのR115、複数あるときのR116、複数あるときのR117は、互いに結合して環を形成していてもよい。
Arはアリーレン基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)であり、具体的には、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、フルオレンジイル基が挙げられる。
hCyはヘテロ環基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、2~5がさらに好ましい)であり、5員環または6員環がより好ましい。hCyを構成するヘテロ環の具体例としては、チオフェン環、フラン環、ジベンゾフラン環、カルバゾール環、インドール環、テトラヒドロピラン環、テトラヒドロフラン環、ピロール環、ピリジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、ピロリドン環、モルホリン環が挙げられ、中でも、チオフェン環、フラン環、ジベンゾフラン環が好ましい。
Z3は単結合または連結基である。連結基としては、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子が置換してもよいアルキレン基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)が挙げられる。
nおよびmは100以下の自然数であり、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい。
pは0以上で、各環に置換可能な最大数以下の整数である。上限値は、それぞれの場合で独立に、置換可能最大数の半分以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、2以下であることがさらに好ましい。
【0029】
多官能重合性化合物は、下記式(2-1)で表されることが好ましい。
【化4】
式(2-1)中、R
9、Z
1およびZ
2は、それぞれ、式(1-2)におけるR
9、Z
1およびZ
2と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0030】
これらの多官能重合性化合物は、1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
【0031】
本発明で用いる多官能重合性化合物を構成する原子の種類は特に定めるものでは無いが、炭素原子、酸素原子、水素原子およびハロゲン原子から選択される原子のみで構成されることが好ましく、炭素原子、酸素原子および水素原子から選択される原子のみで構成されることがより好ましい。
【0032】
本発明で好ましく用いられる多官能重合性化合物としては、下記化合物が挙げられる。また、特開2014-170949号公報に記載の重合性化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に含まれる。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
本発明で用いる多官能重合性化合物の、インプリント用硬化性組成物中の全重合性化合物に対する量としては、30~99質量%であることが好ましく、50~95質量%であることがより好ましく、75~90質量%であることがさらに好ましく、80~90質量%であってもよい。
多官能重合性化合物は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0038】
<<単官能重合性化合物>>
本発明で用いる単官能重合性化合物は、その種類は本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではない。本発明で用いる単官能重合性化合物は、環状構造を有するか、炭素数4以上の直鎖または分岐の炭化水素鎖を有することが好ましい。本発明では単官能重合性化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0039】
本発明で用いる単官能重合性化合物は、25℃で液体であることが好ましい。
本発明において、25℃で液体とは、25℃で流動性を有する化合物であって、例えば、25℃での粘度が、1~100,000mPa・sである化合物を意味する。単官能重合性化合物の25℃での粘度は、例えば、10~20,000mPa・sがより好ましく、100~15,000mPa・sが一層好ましい。
25℃で液体の化合物を用いることにより、溶剤を実質的に含まない構成とすることができる。また、後述する蒸留も容易になる。ここで、溶剤を実質的に含まないとは、例えば、本発明のインプリント用硬化性組成物に対する溶剤の含有量が5質量%以下であることをいい、さらには3質量%以下であることをいい、特には1質量%以下であることをいう。
本発明で用いる単官能重合性化合物の25℃での粘度は、100mPa・s以下が好ましく、10mPa・s以下がより好ましく、8mPa・s以下がさらに好ましく、6mPa・s以下が一層好ましい。単官能重合性化合物の25℃での粘度を上記上限値以下とすることで、インプリント用硬化性組成物の粘度を低減でき、充填性が向上する傾向がある。下限値については、特に定めるものではないが、例えば、1mPa・s以上とすることができる。
【0040】
本発明で用いる単官能重合性化合物は、単官能(メタ)アクリルモノマーであることが好ましく、単官能アクリレートであることがより好ましい。
【0041】
本発明で用いる単官能重合性化合物を構成する原子の種類は特に定めるものでは無いが、炭素原子、酸素原子、水素原子およびハロゲン原子から選択される原子のみで構成されることが好ましく、炭素原子、酸素原子および水素原子から選択される原子のみで構成されることがより好ましい。
【0042】
本発明で用いる単官能重合性化合物は、可塑構造を有することが好ましい。例えば、本発明で用いる単官能重合性化合物は、その少なくとも1種が、以下の(1)~(3)からなる群から選択される1つの基を含むことが好ましい。
(1)アルキル鎖およびアルケニル鎖の少なくとも一方と、脂環構造および芳香環構造の少なくとも一方とを含み、かつ、合計炭素数が7以上である基(以下、「(1)の基」ということがある);
(2)炭素数4以上のアルキル鎖を含む基(以下、「(2)の基」ということがある);ならびに
(3)炭素数4以上のアルケニル鎖を含む基(以下、「(3)の基」ということがある);
このような構成とすることにより、インプリント用硬化性組成物中に含まれる単官能重合性化合物の添加量を減らしつつ、硬化膜の弾性率を効率良く低下させることが可能になる。さらに、モールドとの界面エネルギーが低減し、離型力の低減効果(離型性の向上効果)を大きくすることができる。
上記(1)~(3)の基における、アルキル鎖およびアルケニル鎖は、直鎖、分岐、または環状のいずれであってもよく、それぞれ独立に、直鎖状または分岐状であることが好ましい。また、上記(1)~(3)の基は、上記アルキル鎖およびアルケニル鎖の少なくとも一つを単官能重合性化合物の末端に、すなわち、アルキル基およびアルケニル基の少なくとも一つとして有することが好ましい。このような構造とすることにより、離型性をより向上させることができる。
アルキル鎖およびアルケニル鎖は、それぞれ独立に、鎖中にエーテル基(-O-)を含んでいてもよいが、エーテル基を含んでいない方が離型性向上の観点から好ましい。
<<(1)の基>>
上記(1)の基は、合計炭素数が35以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。
環状構造としては、3~8員環の単環または縮合環が好ましい。上記縮合環を構成する環の数は、2つまたは3つが好ましい。環状構造は、5員環または6員環がより好ましく、6員環がさらに好ましい。また、単環がより好ましい。(1)の基における環状構造としては、シクロヘキサン環、ベンゼン環およびナフタレン環がより好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。また、環状構造は、芳香環構造の方が好ましい。
(1)の基における環状構造の数は、1つであっても、2つ以上であってもよいが、1つまたは2つが好ましく、1つがより好ましい。尚、縮合環の場合は、縮合環を1つの環状構造として考える。
<<(2)の基>>
上記(2)の基は、炭素数4以上のアルキル鎖を含む基であり、炭素数4以上のアルキル鎖のみからなる基(すなわち、アルキル基)であることが好ましい。アルキル鎖の炭素数は、7以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましい。アルキル鎖の炭素数の上限値については、特に限定されるものでは無いが、例えば、25以下とすることができる。なお、アルキル鎖の一部の炭素原子がケイ素原子に置き換わった化合物も単官能重合性化合物として例示できる。
<<(3)の基>>
上記(3)の基は、炭素数4以上のアルケニル鎖を含む基であり、炭素数4以上のアルケニル鎖のみからなる基(すなわち、アルキレン基)であることが好ましい。アルケニル鎖の炭素数は、7以上であることが好ましく、9以上であることがより好ましい。アルケニル鎖の炭素数の上限値については、特に限定されるものでは無いが、例えば、25以下とすることができる。
本発明で用いる単官能重合性化合物は、上記(1)~(3)の基のいずれか1つ以上と、重合性基が、直接にまたは連結基を介して結合している化合物が好ましく、上記(1)~(3)の基のいずれか1つと、重合性基が直接に結合している化合物がより好ましい。連結基としては、-O-、-C(=O)-、-CH2-、-NH-またはこれらの組み合わせが例示される。
【0043】
【0044】
【0045】
本発明で用いる単官能重合性化合物の、インプリント用硬化性組成物中の全重合性化合物に対する量としては、下限値は、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、7質量%以上が一層好ましい。また、上限値は、29質量%以下がより好ましく、27質量%以下がより好ましく、25質量%以下が特にさらに好ましく、20質量%以下が一層好ましく、15質量%以下がより一層好ましい。全重合性化合物に対して、単官能重合性化合物の量を上記下限値以上とすることで、離型性を向上することができ、モールド離型時に欠陥やモールド破損を抑制できる。また、上記上限値以下とすることで、インプリント用硬化性組成物の硬化膜のTgを高くすることができ、エッチング加工耐性、特に、エッチング時のパターンのうねりを抑制できる。
【0046】
本発明では、本発明の趣旨を逸脱しない限り、上記単官能重合性化合物以外の単官能重合性化合物を用いてもよく、特開2014-170949号公報に記載の重合性化合物のうち、単官能重合性化合物が例示され、これらの内容は本明細書に含まれる。
【0047】
<光重合開始剤>
本発明のインプリント用硬化性組成物は、光重合開始剤を含む。
光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であることが好ましい。本発明で用いられる光ラジカル重合開始剤としては、光照射により上述の重合性化合物を重合する活性種を発生する化合物であればいずれのものでも用いることができる。
【0048】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開2008-105414号公報の段落番号0091に記載のものを好ましく採用することができる。この中でもアセトフェノン系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。市販品としては、イルガキュア(登録商標)1173、イルガキュア184、イルガキュア2959、イルガキュア127、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア379、ルシリン(登録商標)TPO、イルガキュア819、イルガキュアOXE-01、イルガキュアOXE-02、イルガキュア651、イルガキュア754等(以上、BASF社製)が挙げられる。
本発明は、光ラジカル重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0049】
光ラジカル重合開始剤は、1種単独で用いてもよいが、2種以上を併用して用いることも好ましい。具体的には、ダロキュア1173とイルガキュア907、ダロキュア1173とルシリンTPO、ダロキュア1173とイルガキュア819、ダロキュア1173とイルガキュアOXE01、イルガキュア907とルシリンTPO、イルガキュア907とイルガキュア819との組み合わせが例示される。このような組み合わせとすることにより、露光マージンを拡げることができる。
【0050】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、その0.01~10質量%が光ラジカル重合開始剤であることが好ましく、より好ましくは0.1~5質量%であり、さらに好ましくは0.5~3質量%である。インプリント用硬化性組成物は、光重合開始剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0051】
<離型剤>
本発明のインプリント用硬化性組成物は、離型剤を含んでいてもよい。
本発明に用いる離型剤は、その種類は本発明の趣旨を逸脱しない限り特に定めるものではないが、好ましくは、モールドとの界面に偏析し、モールドとの離型を促進する機能を有する添加剤を意味する。具体的には、界面活性剤および、末端に少なくとも1つの水酸基を有するか、または、水酸基がエーテル化されたポリアルキレングリコール構造を有し、フッ素原子およびケイ素原子を実質的に含有しない非重合性化合物(以下、「離型性を有する非重合性化合物」ということがある)が挙げられる。
離型剤は1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。また、離型剤を含む場合、含有量は、固形分中、合計で0.1~20質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~5質量%がさらに好ましい。
【0052】
<<界面活性剤>>
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
ノニオン性界面活性剤とは、少なくとも一つの疎水部と少なくとも一つのノニオン性親水部を有する化合物である。疎水部と親水部は、それぞれ、分子の末端にあっても、内部にあってもよい。疎水部は、炭化水素基、含フッ素基、含Si基から選択される疎水基で構成され、疎水部の炭素数は、1~25が好ましく、2~15がより好ましく、4~10がさらに好ましく、5~8が一層好ましい。ノニオン性親水部は、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、エーテル基(好ましくはポリオキシアルキレン基、環状エーテル基)、アミド基、イミド基、ウレイド基、ウレタン基、シアノ基、スルホンアミド基、ラクトン基、ラクタム基、シクロカーボネート基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を有することが好ましい。ノニオン性界面活性剤としては、炭化水素系、フッ素系、Si系、またはフッ素およびSi系のいずれかのノニオン性界面活性剤であってもよいが、フッ素系またはSi系がより好ましく、フッ素系がさらに好ましい。ここで、「フッ素およびSi系界面活性剤」とは、フッ素系界面活性剤およびSi系界面活性剤の両方の要件を併せ持つものをいう。
フッ素系ノニオン性界面活性剤の市販品としては、住友スリーエム(株)製フロラードFC-4430、FC-4431、旭硝子(株)製サーフロンS-241、S-242、S-243、S-650、三菱マテリアル電子化成(株)製エフトップEF-PN31M-03、EF-PN31M-04、EF-PN31M-05、EF-PN31M-06、MF-100、OMNOVA社製Polyfox PF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520、(株)ネオス製フタージェント250、251、222F、212M DFX-18、ダイキン工業(株)製ユニダインDS-401、DS-403、DS-406、DS-451、DSN-403N、DIC(株)製メガファックF-430、F-444、F-477、F-553、F-556、F-557、F-559、F-562、F-565、F-567、F-569、R-40、DuPont社製Capstone FS-3100、Zonyl FSO-100が挙げられる。
本発明のインプリント用硬化性組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、溶剤を除く全組成物中、0.1~10質量%が好ましく、0.2~5質量%がより好ましく、0.5~5質量%がさらに好ましい。インプリント用硬化性組成物は、界面活性剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0053】
<<離型性を有する非重合性化合物>>
インプリント用硬化性組成物は、末端に少なくとも1つの水酸基を有するか、または、水酸基がエーテル化されたポリアルキレングリコール構造を有し、フッ素原子およびケイ素原子を実質的に含有しない非重合性化合物を含んでいてもよい。ここで、非重合性化合物とは、重合性基を持たない化合物をいう。また、非重合性化合物について、フッ素原子およびケイ素原子を実質的に含有しないとは、例えば、フッ素原子およびケイ素原子の合計含有率が1質量%以下であることを表し、フッ素原子およびケイ素原子を全く有していないことが好ましい。フッ素原子およびケイ素原子を有さないことにより、重合性化合物との相溶性が向上し、特に溶剤を実質的に含有しないインプリント用硬化性組成物において、塗布均一性、インプリント時のパターン形成性、ドライエッチング後のラインエッジラフネスが良好となる。
離型性を有する非重合性化合物が有するポリアルキレングリコール構造としては、炭素数1~6のアルキレン基を含むポリアルキレングリコール構造が好ましく、ポリエチレングリコール構造、ポリプロピレングリコール構造、ポリブチレングリコール構造、またはこれらの混合構造がより好ましく、ポリエチレングリコール構造、ポリプロピレングリコール構造、またはこれらの混合構造がさらに好ましく、ポリプロピレングリコール構造が一層好ましい。
さらに、非重合性化合物は、末端の置換基を除き実質的にポリアルキレングリコール構造のみで構成されていてもよい。ここで実質的にとは、ポリアルキレングリコール構造以外の構成要素が全体の5質量%以下であることをいい、好ましくは1質量%以下であることをいう。特に、離型性を有する非重合性化合物として、実質的にポリプロピレングリコール構造のみからなる化合物を含むことが特に好ましい。
ポリアルキレングリコール構造としてはアルキレングリコール構成単位を3~100個有していることが好ましく、4~50個有していることがより好ましく、5~30個有していることがさらに好ましく、6~20個有していることが一層好ましい。
離型性を有する非重合性化合物は、末端に少なくとも1つの水酸基を有するかまたは水酸基がエーテル化されていることが好ましい。末端に少なくとも1つの水酸基を有するかまたは水酸基がエーテル化されていれば、残りの末端は水酸基であってもよく、末端水酸基の水素原子が置換されているものであってもよい。末端水酸基の水素原子が置換されていてもよい基としてはアルキル基(すなわちポリアルキレングリコールアルキルエーテル)、アシル基(すなわちポリアルキレングリコールエステル)が好ましい。連結基を介して複数(好ましくは2または3本)のポリアルキレングリコール鎖を有している化合物も好ましく用いることができる。
離型性を有する非重合性化合物の好ましい具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(例えば、和光純薬製)、これらのモノまたはジメチルエーテル、モノまたはジブチルエーテル、モノまたはジオクチルエーテル、モノまたはジセチルエーテル、モノステアリン酸エステル、モノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、これらのトリメチルエーテルである。
離型性を有する非重合性化合物の重量平均分子量としては150~6000が好ましく、200~3000がより好ましく、250~2000がさらに好ましく、300~1200が一層好ましい。
また、本発明で用いることができる離型性を有する非重合性化合物の市販品としては、オルフィンE1010(日信化学工業社製)、Brij35(キシダ化学社製)等が例示される。
本発明のインプリント用硬化性組成物が離型性を有する非重合性化合物を含有する場合、離型性を有する非重合性化合物の含有量は、溶剤を除く全組成物中、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上がさらに好ましく、2質量%以上が一層好ましい。上記含有量は、また、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
インプリント用硬化性組成物は、離型性を有する非重合性化合物を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0054】
<その他の成分>
本発明のインプリント用硬化性組成物は、上記の成分のほか、増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、溶剤、ポリマー等を含んでいてもよい。これらの化合物は、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。これらの詳細については、特開2014-170949号公報の段落0061~0064の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0055】
<<溶剤>>
本発明のインプリント用硬化性組成物は溶剤を含んでいてもよい。溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルが例示される。溶剤を含む場合、その含有量は、組成物の1~20質量%であることが好ましい。溶剤は1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
また、本発明では、実質的に溶剤を含まない構成とすることもできる。溶剤を実質的に含まないとは、溶剤の含有量が5質量%以下であることをいい、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0056】
<<ポリマー>>
本発明のインプリント用硬化性組成物は、ポリマーを含んでいてもよい。ポリマーとは、例えば、重量平均分子量が2,000以上の成分であり、2,000超の成分であることが好ましい。
また、本発明では、実質的にポリマーを含まない構成とすることもできる。ポリマーを実質的に含まないとは、ポリマーの含有量が5質量%以下であることをいい、3質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
<インプリント用硬化性組成物の特性>
本発明のインプリント用硬化性組成物は、通常、光で硬化するインプリント用硬化性組成物である。
本発明のインプリント用硬化性組成物の一実施形態として、実質的にケイ素原子を含有しない態様が例示される。実質的にケイ素原子を含有しないとは、組成物中のケイ素原子の含有量が1質量%以下であることをいい、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下であることがさらに好ましい。
また、本発明のインプリント用硬化性組成物は、ケイ素含有成分の含有量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。特に、本発明では、シリコーン系樹脂が上記範囲を満たすことが好ましい。このような構成とすることにより、デバイス製造時の加工対象(例えば、シリコン・シリコン酸化物・スピノオングラス材料など)とのエッチング選択比を充分に確保することが可能となる。
【0058】
本発明の組成物は、酸価が2mmol/g以下であることが好ましく、1mmol/g以下であることがより好ましく、0.5mmol/g以下であることがさらに好ましく、0.1mmol/g以下であることが一層好ましく、0.01mmol/g以下であることがより一層好ましい。下限値は、0mmol/gであることが理想であるが、0.001mmol/g以上でも十分に好ましいレベルである。
アミン価も同様に2mmol/g以下であることが好ましく、1mmol/g以下であることがより好ましく、0.5mmol/g以下であることがさらに好ましく、0.1mmol/g以下であることが一層好ましく、0.01mmol/g以下であることがより一層好ましい。下限値は、0mmol/gであることが理想であるが、0.001mmol/g以上でも十分に好ましいレベルである。
薬液からの金属成分由来の不純物の除去方法としてイオン交換樹脂が広く利用されている。しかしながら、イオン交換樹脂を用いた場合、薬液へ樹脂成分が微量な量で溶出してしまう場合がある。溶出物はイオン交換基(例えばスルホ基、カルボキシル基、4級アンモニウム基、1~3級アミノ基)を有するものが多い。そのため、溶出物がインプリント用硬化性組成物に含まれていると、モールドとの接触時に溶出物がモールド表面に吸着し、離型性の悪化やモールド表面の汚染を招いてしまう場合がある。そのため、インプリント用硬化性組成物中の溶出物を一定量以下に抑えることが好ましい。
【0059】
<インプリント用硬化性組成物の製造方法>
本発明のインプリント用硬化性組成物は、原料を所定の割合となるように配合して調整される。原料とは、インプリント用硬化性組成物に積極的に配合される成分をいい、不純物等の意図せずに含まれる成分は除く趣旨である。具体的には、重合性化合物、光重合開始剤、離型剤等が例示される。ここで、原料は市販品であっても、合成品であってもよい。いずれの原料も、通常、不純物(特定粒子性メタルや特定粒子性メタル以外の粒子性メタル、その他の不純物)を含む粒子などを含んでいる。そこで、本発明のインプリント用硬化性組成物の製造方法の好ましい一実施形態として、蒸留処理および酸洗浄処理の少なくとも一方を施した原料(重合性化合物および光重合開始剤、さらに応じて配合される他の成分)を用いることを含む態様が例示される。このような処理を行うことにより、不純物を効果的に除去することができる。特に、混入時のインプリント性能への影響が大きい混入しやすい金属種は、鉄、銅、チタンおよび鉛であり、さらには、これらに加え、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンである。これらの金属の除去処理は、蒸留または酸洗浄が有効である。特に、インプリント用硬化性組成物に含まれる重合性化合物および光重合開始剤について、蒸留処理および酸洗浄処理の少なくとも一方を施すことが好ましく、インプリント用硬化性組成物に含まれるすべての原料において、蒸留処理および酸洗浄処理の少なくとも一方を施すことがより好ましい。
【0060】
蒸留処理は、減圧蒸留であることが好ましく、その圧力は、0.1kPa以上であることが好ましく、0.3kPa以上であることがより好ましく、0.5kPa以上であることがさらに好ましい。一方、上限値としては、10.0kPa以下であることが好ましく、5.0kPa以下であることがより好ましく、1.0kPa以下であることがさらに好ましい。また、圧力を変えて2段階以上の減圧蒸留を行ってもよい。
蒸留処理の留点は、特に定めるものではないが、80~200℃がより好ましく、80~180℃が一層好ましい。また、留点は、対象とする原料の上記減圧圧力下における沸点を基準として、沸点+1℃以上であることが好ましく、沸点+5℃以上であることがより好ましく、沸点+10℃以上であることがさらに好ましい。また、留点の上限は特に定めるものではないが、沸点+50℃以下であることが好ましく、沸点+30℃以下であることがより好ましく、沸点+20℃以下であることがさらに好ましい。
蒸留処理は、23℃で液体の化合物に適している。また、重合性化合物および重合開始剤の不純物の低減に効果的である。
蒸留の対象となる原料が重合性化合物の場合、重合禁止剤を添加して蒸留を行うことが好ましい。蒸留によって、特定粒子性メタルの量を減らす場合、重合性化合物(好ましくは(メタ)アクリレート化合物)が蒸留釜や蒸留塔で重合してしまうことがある。万一、蒸留釜や蒸留塔で重合してしまった場合、設備を停止して修繕をしなければならないため、著しく生産性を落とす。そのため、蒸留時には、重合禁止剤を添加することが好ましい。重合禁止剤としては、N-オキシル化合物が例示され、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルフリーラジカルが好ましい。また、その他の重合禁止剤の具体例としては、特開2012-169462号公報の段落番号0121に記載のものが挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
重合禁止剤の量は、原料である重合性化合物100質量部に対して10~500質量ppmであることが好ましい。上限は、例えば、400質量ppm以下が好ましく、300質量ppm以下が一層好ましい。下限は、例えば、25質量ppm以上が好ましく、50質量ppm以上が一層好ましい。この範囲であれば、蒸留物中への重合禁止剤の量を抑えつつ、重合性化合物の重合を効率よく防止できる。
【0061】
酸洗浄処理は、洗浄対象である原料を溶解させた有機溶剤と酸性水溶液を混合および撹拌した後に静置し、二相分離した状態で特定粒子性メタルや特定粒子性メタル以外の金属が溶解した水相を除去する態様が例示される。この作業を複数回繰り返すことで、原料中の特定粒子性メタルや特定粒子性メタル以外の金属の量を効果的に減らすことができる。その後、イオン交換水を用いた分液精製を行うことが好ましい。イオン交換水を用いた分液精製を行うことにより、溶剤相に溶出した微量の酸成分の量を効果的に減らすことができる。
有機溶剤としては、原料を溶解し、かつ、水を溶解しない非水溶性溶剤であることが好ましい。具体的には、ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの無極性溶剤、エーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤が挙げられ、エステル系溶剤が好ましい。
また、酸性水溶液の具体例としては、塩化水素水溶液(塩酸)、硝酸水溶液、シュウ酸水溶液、クエン酸水溶液などが挙げられる。酸性水溶液の規定度としては、0.1~10規定が好ましく、0.3~5規定がより好ましく、0.5~3規定がさらに好ましい。規定度が上記範囲を上回ると有機溶剤相に酸成分が残留し純度が低下する。また、規定度が上記範囲を下回ると粒子性メタル除去能が低下する。
酸洗浄処理は、重合開始剤、離型剤の不純物の低減に適している。
【0062】
本発明の製造方法は、本発明の組成物に含まれる原料を混合した後、フィルターを用いて濾過処理を行うことが好ましい。フィルターによる濾過はインプリント用硬化性組成物の原料を混合した後に実施することが好ましい。フィルターは、特定粒子性メタル(好ましくは、特定粒子性メタルおよび特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタル)を吸着可能な吸着基を有するものが好ましい。このようなフィルターの例として、ポリアミドを含むフィルターが例示される。
濾過は1段階のフィルターによる濾過でも効果を発揮するが、2段階以上のフィルターによる濾過の方がより好ましい。2段階以上のフィルターによる濾過とは、2つ以上のフィルターを直列に配置して濾過することをいう。本発明では、1~4段階のフィルターによる濾過が好ましく、2~4段階のフィルターによる濾過がより好ましい。
フィルターの材料を構成する成分(材料成分)は、樹脂を含むことが好ましい。樹脂としては特に制限されず、フィルターの材料として公知のものが使用できる。具体的には、6-ポリアミド、6,6-ポリアミド等のポリアミド、ポリエチレン、および、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロエチレンプロペンコポリマー、エチレン・テトラフルオロエチレンコポリマー、エチレン-クロロトリフロオロエチレンコポリマー、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、および、ポリフッ化ビニル等のポリフルオロカーボン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、セルロース、セルロースアセテート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。なかでも、より優れた耐溶剤性を有し、より優れた欠陥抑制性能を有する点で、ポリアミド(なかでも、6,6-ポリアミドが好ましい)、ポリオレフィン(なかでも、ポリエチレンが好ましい)、ポリフルオロカーボン(なかでも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)が好ましい。)、ポリスチレン、ポリスルホン、および、ポリエーテルスルホンからなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、ポリオレフィンおよびポリアミドからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、ポリエチレン(超高分子量のもの、グラフト化されたものを含む)、ポリアミド、および、ポリテトラフルオロエチレンからなる群より選択される少なくとも1種がさらに好ましく、ポリエチレン(超高分子量のもの、グラフト化されたものを含む)およびポリアミドからなる群より選択される少なくとも1種が一層好ましい。これらの重合体は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
また、フィルターの材料を構成する成分(材料成分)の好ましい一実施形態として、中性基の少なくとも1種がグラフト化したポリマー(グラフト化したポリマー)が挙げられる。中性基は、ヒドロキシル基、カルボキシル基から選択される少なくとも1種であることが好ましく、ヒドロキシル基であることがより好ましい。
グラフト化ポリマーは、グラフト化ポリオレフィンであることが好ましく、グラフト化ポリエチレンであることがより好ましい。
グラフト化ポリマーの記載は、国際公開第2016/081729号の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0063】
本発明で用いるフィルターは、インプリント用硬化性組成物中の特定粒子性メタルおよび特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタルを効率よく除去する点でポリアミド製のフィルターが好ましい。ポリアミド製のフィルターはファンデルワールス力および静電力等によって、インプリント用硬化性組成物中の特定粒子性メタルおよび特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタルを吸着する。また、インプリント時の欠陥となりうる有機化合物を含有する粒子性メタルも吸着する。ポリアミド製のフィルターの例としては、ポリアミド6およびポリアミド6,6等のポリアミド挙げられるが、これらに制限されない。また、上記材質は樹脂としてフィルターの多孔質膜を構成していてもよいし、他の樹脂で構成された多孔質膜を被覆したり担持していてもよい。上記材質が被覆および担持されたフィルターは特定粒子性メタルおよび特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタルを吸着する官能基の運動性が向上するため、特定粒子性メタルおよび特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタルの捕捉能力が非常に高い。材質が被覆および担持されたフィルターの具体例としては、特表2017-536232号公報の0058~0059段落に記載の中性基を担持した中性基を有するグラフトポリエチレンフィルターなどが挙げられる。
フィルターの孔径としては100nm以下が好ましく、20nm以下がより好ましく、12nm以下がさらに好ましく、8nm以下が一層好ましく、5nm以下であってもよい。フィルターの孔径を100nm以下とすることにより、特定粒子性メタルおよび特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタルをより効果的に減らすことができる。また、フィルターの孔径の下限値は特に定めるものではないが、例えば1nm以上が好ましい。フィルターの孔径を1nm以上とすることにより、濾過時に必要以上に大きな圧力が印加されず、生産性が向上し、フィルターの破壊を効果的に抑制できる。濾過を段階的に行う場合、1段階目の濾過は、孔径が100~7nmのフィルター(好ましくは孔径が20~7nmのフィルター)を用い、2段階目の濾過は、孔径が7nm未満のフィルター(好ましくは孔径が7nm未満1nm以上のフィルター)を用いることができる。また、1段階目と2段階目、2段階目と3段階目等、直前の段階との孔径の差は、1~8nmであることが好ましい。
フィルターに対するインプリント用硬化性組成物の供給圧力としては特に制限されないが、一般に、0.001~2.0MPaが好ましい。なかでも、より効率良く特定粒子性メタルを除去できる点で、供給圧力は、0.001~1.5MPaが好ましく、0.01~0.1.2MPaがより好ましく、0.05~1.0MPaがさらに好ましく、0.1~1.0MPaが一層好ましい。
また、濾過圧力は濾過精度に影響を与えることから、濾過時における圧力の脈動は可能な限り少ない方が好ましい。フィルターにはフィルター性能(フィルターが壊れない)を保障する耐差圧が設定されており、この値が大きい場合には濾過圧力を高めることで濾過速度を高めることができる。つまり、上記濾過速度上限は、通常、フィルターの耐差圧に依存するが、通常、10.0L/分以下が好ましく、1.0L/分以下がより好ましく、0.5L/分以下がさらに好ましい。下限値としては、例えば、0.001L/分以上であり、0.01L/分以上であることがより好ましい。
インプリント用硬化性組成物をフィルターに通す際の温度としては特に制限されないが、一般に、20~30℃が好ましい。
なお、濾過工程は、クリーンな環境下で実施するのが好ましい。具体的には米国連邦規格(Fed.Std.209E)のClass1000(ISO14644-1:2015では、Class6)を満たすクリーンルームで実施するのが好ましく、Class100(ISO14644-1:2015では、Class5)を満たすクリーンルームがより好ましく、Class10(ISO14644-1:2015では、Class4)を満たすクリーンルームが更に好ましく、Class1(ISO14644-1:2015では、Class3)またはそれ以上の清浄度(クラス2、または、クラス1)を有するクリーンルームが特に好ましい。
濾過工程は循環濾過を採用してもよい。循環濾過の回数としては特に制限されないが、一般に2~4回が好ましい。
【0064】
上述の通り、また、薬液から特定粒子性メタルおよび特定粒子性メタル以外の金属を含む粒子性メタルを低減する方法として、従来から広く用いられているイオン交換樹脂も用いることができる。しかしながら、イオン交換樹脂を用いて不純物の低減を試みると、イオン交換樹脂の樹脂成分が薬液へ溶出してしまうことがある。したがって、本発明において、イオン交換樹脂を用いる場合、イオン交換樹脂による処理を行った後、他の低減方法と併用することが必要である。
また、本発明のインプリント用硬化性組成物の製造方法では、イオン交換樹脂を用いない態様とすることもできる。
【0065】
本発明のインプリント用硬化性組成物の製造方法の第一の実施形態は、インプリント用硬化性組成物に対し、イオン交換樹脂を加え、撹拌した後、樹脂を含むフィルターで濾過する形態が挙げられる。この時の樹脂フィルターでの濾過は、2段階以上のフィルター濾過であることが好ましく、2~4段階のフィルター濾過であることがより好ましい。また、2段階以上のフィルター濾過を行う場合、1段階目と2段階目では、異なる材質のフィルターを用いることが好ましい。例えば、1段階目の濾過は、ポリエチレンフィルターを用い、次いで、ポリアミドフィルターを用いる態様が例示される。
本発明のインプリント用硬化性組成物の製造方法の第二の実施形態は、インプリント用硬化性組成物の原料に対し、蒸留処理および酸洗浄処理の少なくとも一方を施した原料を混合することを含む形態である。第二の実施形態では、蒸留処理および酸洗浄処理の少なくとも一方を施した原料を混合した後、フィルターを用いて濾過処理を行うことが好ましい。
濾過処理は、ポリアミドを含むフィルターを用いた濾過処理、ポリオレフィンを含むフィルターを用いた濾過処理ならびに、中性基およびイオン交換基の少なくとも1種がグラフト化したポリオレフィンを含むフィルターを用いた濾過処理が好ましく、ポリオレフィンを含むフィルターを用いた濾過処理を行った後、中性基およびイオン交換基の少なくとも1種がグラフト化したポリオレフィンを含むフィルターを用いた濾過処理を行うことがより好ましい。
本発明では、第二の実施形態が特に好ましい。
本発明の製造方法は、また、実質的にケイ素原子を含有しないインプリント用硬化性組成物の製造方法に適している。
本実施形態に係るインプリント用硬化性組成物の製造方法は、上記以外の工程を有していてもよい。上記以外の工程としては、例えば、フィルター洗浄工程、装置洗浄工程、除電工程、および、被精製液準備工程等が挙げられる。
【0066】
<収容容器>
本発明のインプリント用硬化性組成物の収容容器としては従来公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器としては、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成された多層ボトルや、6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0067】
本発明のインプリント用硬化性組成物は、硬化物として用いられる。より具体的には、光インプリント法によって、硬化物(パターン)を形成して用いられる。
【0068】
<パターン製造方法>
本発明のパターン製造方法は、本発明のインプリント用硬化性組成物を、基板上またはモールド上に適用し、インプリント用硬化性組成物を、モールドと基板で挟んだ状態で光照射することを含む。
本発明のパターン製造方法では、基板上またはモールド上にパターンを適用する。適用方法としては、特に定めるものでは無く、特開2010-109092号公報(対応米国出願は、米国特許出願公開2011/199592)の段落0102の記載を参酌できこれらの内容は本明細書に組み込まれる。本発明では、スピンコート法やインクジェット法が好ましい。
基板としては、特に定めるものでは無く、特開2010-109092号公報(対応米国出願は、米国特許出願公開2011/199592)の段落0103の記載を参酌できこれらの内容は本明細書に組み込まれる。具体的には、シリコン基板、ガラス基板、サファイア基板、シリコンカーバイド(炭化ケイ素)基板、窒化ガリウム基板、金属アルミニウム基板、アモルファス酸化アルミニウム基板、多結晶酸化アルミニウム基板、GaAsP、GaP、AlGaAs、InGaN、GaN、AlGaN、ZnSe、AlGaInP、または、ZnOから構成される基板が挙げられる。なお、ガラス基板の具体的な材料例としては、アルミノシリケートガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラスが挙げられる。
本発明では、シリコン基板が好ましい。
モールドとしては、特に定めるものでは無く、特開2010-109092号公報(対応米国出願は、米国特許出願公開2011/199592)の段落0105~0109の記載を参酌できこれらの内容は本明細書に組み込まれる。本発明では、石英モールドが好ましい。本発明で用いるモールドのパターン(線幅)は、サイズが50nm以下であることが好ましい。
【0069】
ついで、インプリント用硬化性組成物を、モールドと基板で挟んだ状態で光照射する。基板またはモールドと圧接させる工程は、希ガス雰囲気下、減圧雰囲気下、または減圧した希ガス雰囲気下で好ましく行うことができる。ここで、減圧雰囲気とは大気圧(101325Pa)よりも低い圧力でみたされた空間内の状態を意味し、1000Pa以下が好ましく、100Pa以下がより好ましく、1Pa以下がさらに好ましい。希ガスを使用する場合、ヘリウムが好ましい。露光量は5mJ/cm2~1000mJ/cm2の範囲にすることが望ましい。
ここで、本発明のインプリント用硬化性組成物は、光照射後にさらに加熱して硬化させることが好ましい。また、基板とインプリント用硬化性組成物層の間に下層膜組成物や密着膜形成用組成物を用いて、下層膜や密着膜を設けてもよい。すなわち、インプリント用硬化性組成物(ひいては、本発明の硬化物)は、基板またはモールドの表面に直接に設けてもよいし、基板またはモールドの上に、一層以上の層を介して設けてもよい。
本発明で用いる下層膜形成用組成物は、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルを合計で、固形分の50質量ppt~10質量ppbの割合で含むものを用いてもよい。さらに、本発明で用いる下層膜形成用組成物は、上記Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が10nm以上であり、かつ、鉄、銅、チタンおよび鉛の少なくとも1種を含む粒子性メタルと、上記粒子性メタル以外の粒子性メタルであって、Single Particle ICP-MASS法により測定される粒子径が1nm以上であり、かつ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、リチウム、クロム、ニッケル、錫、亜鉛、ヒ素、銀、金、カドミウム、コバルト、バナジウムおよびタングステンの少なくとも1種を含む粒子性メタルの合計量が、固形分の100質量ppt~30質量ppbであることがより好ましい。このような下層膜形成用組成物を用いることにより、本発明の効果がより効果的に発揮される。
上記の他、パターン製造方法の詳細は、特開2010-109092号公報(対応米国出願は、米国特許出願公開2011/199592)の段落番号0103~0115の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0070】
本発明のパターン製造方法は、光インプリント法(より好ましくは、光ナノインプリント法)により微細なパターンを低コスト且つ高い精度で形成することが可能である。このため、従来のフォトリソグラフィ技術を用いて形成されていたものをさらに高い精度且つ低コストで形成することができる。一例として、半導体素子の製造に用いられる。すなわち、本発明では、本発明のパターン製造方法を含む、半導体素子の製造方法も開示する。より具体的には、本発明のパターンは、エッチングレジスト(エッチングマスク)として好ましく用いられる。特に、液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる、オーバーコート層や絶縁膜などの永久膜や、半導体集積回路、記録材料、あるいはフラットパネルディスプレイなどのエッチングレジストとして適用することも可能である。特に本発明のパターン製造方法により得られたパターンは、エッチング耐性にも優れ、フッ化炭素等を用いるドライエッチングのエッチングレジストとしても好ましく用いることができる。
【0071】
<パターン>
上述のように本発明のパターン製造方法によって形成されたパターンは、LCDなどに用いられる永久膜や、半導体加工用のエッチングレジストとして使用することができる。また、本発明のパターンを利用してLCDのガラス基板にグリッドパターンを形成し、反射や吸収が少なく、大画面サイズ(例えば55インチ、60インチ超)の偏光板を安価に製造することが可能である。例えば、特開2015-132825号公報や国際公開第2011/132649号に記載の偏光板が製造できる。なお、1インチは25.4mmである。
また、インプリント用硬化性組成物は、製造後にガロン瓶やコート瓶などの容器にボトリングし、輸送、保管されるが、この場合に、劣化を防ぐ目的で、容器内を不活性な窒素、またはアルゴンなどで置換しておいてもよい。また、輸送、保管に際しては、常温でもよいが、よりインプリント用硬化性組成物の変質を防ぐため、-20℃から0℃の範囲に温度制御してもよい。勿論、反応が進行しないレベルで遮光することが好ましい。
本発明のパターンは、具体的には、磁気ディスク等の記録媒体、固体撮像素子等の受光素子、LEDや有機EL等の発光素子、LCD等の光デバイス、回折格子、レリーフホログラム、光導波路、光学フィルター、マイクロレンズアレイ等の光学部品、薄膜トランジスタ、有機トランジスタ、カラーフィルター、反射防止膜、偏光板、偏光素子、光学フィルム、柱材等のフラットパネルディスプレイ用部材、ナノバイオデバイス、免疫分析チップ、デオキシリボ核酸(DNA)分離チップ、マイクロリアクター、フォトニック液晶、ブロックコポリマーの自己組織化を用いた微細パターン形成(directed self-assembly、DSA)のためのガイドパターン等の作製に好ましく用いることができる。
【0072】
本発明のパターン製造方法によって形成されたパターンは、エッチングレジスト(リソグラフィ用マスク)としても有用である。パターンをエッチングレジストとして利用する場合には、まず、基板として例えばSiO2等の薄膜が形成されたシリコン基板(シリコンウェハ等)等を用い、基板上に本発明のパターン製造方法によって、例えば、ナノまたはマイクロオーダーの微細なパターンを形成する。本発明では特にナノオーダーの微細パターンを形成でき、さらにはサイズが、100nm以下、さらには50nm以下、特には30nm以下のパターンも形成できる点で有益である。本発明のパターン製造方法で形成するパターンのサイズの下限値については特に定めるものでは無いが、例えば、1nm以上とすることができる。パターンの形状は特に定めるものではないが、例えば、ライン、ホールおよびピラーの少なくとも1つの形状を含む形態が例示される。
その後、ウェットエッチングの場合にはフッ化水素等、ドライエッチングの場合にはCF4等のエッチングガスを用いてエッチングすることにより、基板上に所望のパターンを形成することができる。パターンは、特にドライエッチングに対するエッチング耐性が良好である。すなわち、本発明の製造方法で得られたパターンは、エッチング用マスクとして好ましく用いられる。また、本発明では、本発明の製造方法で得られたパターンをマスクとしてエッチングを行う半導体素子の製造方法についても開示する。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。本実施例は、特に述べない限り、23℃の条件下で行った。
【0074】
比較例1
<インプリント用硬化性組成物の調製>
下記成分を、酸洗浄処理済のパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)製ボトル中で配合して、インプリント用硬化性組成物を調製した。
1,3-フェニレンビス(メチレン)ジアクリレート 50質量部
ネオペンチルグリコールジアクリレート 30質量部
ラウリルアクリレート 15質量部
イルガキュア819(BASF社製) 2質量部
ポリプロピレングリコール(Mw=700)(日油社製) 3質量部
【0075】
<金属を含む粒子性メタルの濃度の測定>
インプリント用硬化性組成物中の金属を含む粒子性メタルの濃度は、ICP-MSを用いて測定した。
具体的には、ICP-MS(「Agilent 8800 トリプル四重極ICP-MS(半導体分析用、オプション#200)」)を用いた。サンプル導入系は石英のトーチと同軸型PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)ネブライザ(自吸用)、および、白金インターフェースコーンを使用した。
クールプラズマ条件の測定パラメータは以下のとおりである。
測定により得られた粒子性メタルの粒子径分布から1nm以上の粒子性メタルの含有量を算出した。単位は質量pptまたは質量ppbとした。
測定した金属は、Na、K、Ca、Fe、Cu、Mg、Mn、Al、Li、Cr、Ni、Sn、Zn、As、Au、Ag、Cd、Co、Pb、Ti、VおよびWとした。
・RF(Radio Frequency)出力:600W
・キャリアガス流量:0.7L/分
・メークアップガス流量:1L/分
・サンプリング深さ:18mm
【0076】
<酸価の測定>
インプリント用硬化性組成物の酸価はJIS K2501-2003に準拠して測定した。
具体的には、インプリント用硬化性組成物をキシレンとジメチルホルムアミドを1:1(質量比)に混合した滴定溶剤に溶かし、電位差滴定法により0.01mol/Lの水酸化カリウム・エタノール溶液で滴定し、滴定曲線上の変曲点を終点とした。水酸化カリウム溶液の終点までの滴定量から酸価を算出した。
【0077】
<アミン価の測定>
インプリント用硬化性組成物を十分に撹拌した後、15.0gを秤量し、酢酸50mLを加え試料溶液とした。試料溶液につき、0.005mol/Lの過塩素酸/酢酸溶液で電位差滴定し、下記の計算式からアミン価を測定した。別途、空試験(インプリント用硬化性組成物を加えない試験)も実施した。
アミン価(μmol/g)=(V-VB)×f×5/W
V:試料の滴定に要した0.005mol/Lの過塩素酸/酢酸溶液の量(単位:mL)
VB:空試験の滴定に要した0.005mol/Lの過塩素酸/酢酸溶液の量(単位:mL)
f:0.005mol/Lの塩素酸/酢酸溶液の力価
W:試料の採取量(g)
【0078】
<エッチング耐性の評価>
石英モールドとして、ホール径40nm、ピッチ80nmで格子状に配置されたホールパターンを有する石英モールドを使用した。
シリコンウェハ上に特開2014-24322号公報の実施例6に示す密着膜形成用組成物をスピンコートし、220℃のホットプレートを用いて1分間加熱し、厚さ5nmの密着膜を形成した。密着膜を形成したウェハ上に、FUJIFILM Dimatix社製インクジェットプリンター DMP-2831を用いて、上記インプリント用硬化性組成物をインクジェット法により適用後、ヘリウム雰囲気下で、上記モールドで挟んだ。石英モールド側から高圧水銀ランプを用いて、100mJ/cm2の条件で露光した後、石英モールドを離型することでパターンを得た。
上記サンプルに対して、エッチング装置(APPLIED MATERIALS社製 Centura-DPS)に導入し、下記条件にてエッチング(1)およびエッチング(2)をこの順に連続して行った。得られたエッチングパターンをSEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)により観察し、欠陥数(DD(Detect Density)、単位は、数/cm2)を確認した。
【0079】
【0080】
結果を以下に示す。AまたはBであることが好ましく、Aであることがより好ましい。
A:DD<1個/cm2
B:1個/cm2≦DD<100個/cm2
C:100個/cm2≦DD<1000個/cm2
D:DD≧1000個/cm2
【0081】
<経時安定性の評価>
インプリント用硬化性組成物10gを、ブルーム処理を行ったバイアル瓶に採取した。その後、バイアル瓶を50℃、85%相対湿度(RH)の環境下で1ヵ月間保管した。その後のインプリント用硬化性組成物について、暗重合成分(バイアル瓶内で重合した成分)の生成有無をGPC(Gel Permeation Chromatography)-MALS(Multi Angle Light Scattering)を用いて確認した。具体的には、各試料をテトラヒドロフラン(THF)で10質量%に希釈し、孔径が0.2μmのセルロースアセテート製フィルターで濾過したものをゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)の測定試料とした。RI(Refractive Index)検査で、光散乱を用いて、経時前後のインプリント用硬化性組成物について、新たなピークの有無およびピーク面積から算出される暗重合成分量Sを測定した。暗重合成分量Sは全ピーク面積の総和に対する暗重合成分のピーク面積の割合を算出した(単位は%)。
A:S=0
B:0<S≦0.001
C:0.001<S≦0.01
D:S>0.01
【0082】
<モールド耐久性の評価>
石英モールドとして、線幅20nm、深さ55nmのライン(Line)/スペース(Space)を有する石英モールドを使用した。マスク欠陥レビューSEM(Scanning Electron Microscope)装置E5610(アドバンテスト社製)を用いて、上記石英モールドの欠陥(マスク欠陥)が存在していない500箇所の座標をあらかじめ把握した。
シリコンウェハ上に特開2014-24322号公報の実施例6に示す密着膜形成用組成物をスピンコートし、220℃のホットプレートを用いて1分間加熱し、厚さ5nmの密着膜を形成した。密着膜を形成したウェハ上に、FUJIFILM Dimatix社製インクジェットプリンター DMP-2831を用いて、上記インプリント用硬化性組成物をインクジェット法により適用後、ヘリウム雰囲気下で、上記モールドで挟んだ。石英モールド側から高圧水銀ランプを用いて、100mJ/cm2の条件で露光した後、石英モールドを離型することでパターンを得た。
本インプリントプロセスを100回繰り返した後に石英モールドを回収し、上記500箇所での石英モールドの欠陥の発生有無を確認した。A、BまたはCであることが好ましく、A又はBであることがより好ましく、Aであることが更に好ましい。A:石英モールドの欠陥の発生は確認されなかった
B:石英モールドの欠陥が確認された箇所が5箇所未満であった
C:石英モールドの欠陥が確認された箇所が5箇所以上25箇所未満であった
D:石英モールドの欠陥が確認された場所が25箇所以上であった
【0083】
<離型性>
石英モールドとして、線幅20nm、深さ55nmのライン(Line)/スペース(Space)を有する石英モールドを使用した。
シリコンウェハ上に特開2014-24322号公報の実施例6に示す密着膜形成用組成物をスピンコートし、220℃のホットプレートを用いて1分間加熱し、厚さ5nmの密着膜を形成した。密着膜を形成したウェハ上に、FUJIFILM Dimatix社製インクジェットプリンター DMP-2831を用いて、上記インプリント用硬化性組成物をインクジェット法により適用後、ヘリウム雰囲気下で、上記モールドで挟んだ。石英モールド側から高圧水銀ランプを用いて、100mJ/cm2の条件で露光した後、石英モールドを離型することでパターンを得た。
上記パターン形成において、石英モールドを離型する際の離型に必要な力(離型力F、単位:N)を測定した。
離型力は特開2011-206977号公報の段落番号0102~0107に記載の比較例に記載の方法に準じて測定を行った。
A:F≦15N
B:15N<F≦18N
C:18N<F≦20N
D:F>20N
【0084】
比較例2
<インプリント用硬化性組成物の調製>
下記成分を、酸洗浄処理済のPFA製ボトル中で配合して、インプリント用硬化性組成物を調製した。
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート 45質量部
ベンジルアクリレート 38質量部
イソボルニルアクリレート 10質量部
ルシリンTPO(BASF社製) 2質量部
ダロキュア1173(BASF社製) 2質量部
Brij35(キシダ化学社製) 3質量部
【0085】
比較例1と同様にして、金属を含む粒子性メタルの濃度、酸価、アミン価、エッチング欠陥、経時安定性、モールド耐久性および離型性について、測定または評価した。
【0086】
比較例3
下記成分を、酸洗浄処理済のPFA製ボトル中で配合して、インプリント用硬化性組成物を調製した。
シリコーンアクリレートX-22-1602(信越化学工業社製、Mw2,400) 96質量部
イルガキュア907(BASF社製) 3質量部
サーフロンS-650(AGCセイミケミカル社製)1質量部
比較例1と同様にして、金属を含む粒子性メタルの濃度、酸価、アミン価、エッチング欠陥、経時安定性、モールド耐久性および離型性について、測定または評価した。
【0087】
比較例4
比較例1で調製したインプリント用硬化性組成物1000gに、イオン交換樹脂(AMBERLYST(登録商標)、15JS-HG・DRY、オルガノ社製)300gを配合し、6時間撹拌した。上澄み液を酸洗浄処理済のPFA製ボトルに採取し、比較例4のインプリント用硬化性組成物を得た。
比較例1と同様にして、金属を含む粒子性メタルの濃度、酸価、アミン価、エッチング欠陥、経時安定性、モールド耐久性および離型性について、測定または評価した。
【0088】
比較例5
比較例1で調製したインプリント用硬化性組成物1000gに、イオン交換樹脂(AMBERLYST(登録商標)MSPS2-1・DRY、オルガノ社製)300gを配合し、6時間撹拌した。その後、比較例4と同様に行った。
【0089】
比較例6
比較例3で調製したインプリント用硬化性組成物1000gに、イオン交換樹脂(AMBERLYST(登録商標)、15JS-HG・DRY、オルガノ社製)300gを配合し、6時間撹拌した。その後、比較例4と同様に行った。
【0090】
実施例1
比較例4で調製したインプリント用硬化性組成物を孔径20nmの超高分子量ポリエチレン(UPE)フィルター、次いで、孔径3nmのポリアミドフィルターを用いて濾過を実施した。この時の温度は、23℃とした。濾過圧力は0.1MPaで濾過速度は0.09L/分とした。フィルターを通過した初流500mLを廃棄後、酸洗浄処理済のPFA製ボトルに採取し、実施例1のインプリント用硬化性組成物を得た。
比較例1と同様にして、金属を含む粒子性メタルの濃度、酸価、アミン価、エッチング欠陥、経時安定性、モールド耐久性および離型性について、測定または評価した。
【0091】
実施例2
比較例5で調製したインプリント用硬化性組成物を孔径10nmのUPE(超高分子量ポリエチレン)フィルター、次いで、孔径3nmのポリアミドフィルターを用いて濾過を実施した。この時の温度は、23℃とした。また、濾過は、米国連邦規格(Fed.Std.209E)のClass1000(ISO14644-1:2015では、Class6)を満たすクリーンルームで実施した(以下、濾過について同じ)。濾過圧力は0.1MPaで濾過速度は0.2L/分とした。フィルターを通過した初流500mLを廃棄後、酸洗浄処理済のPFA製ボトルに採取した。その後、実施例1と同様に行った。
【0092】
実施例3
下記成分について、それぞれ、下記の通り、蒸留または酸洗浄による金属除去処理を施した。
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ベンジルアクリレートおよびイソボルニルアクリレートは、4-ヒドロキシ-2,2-6,6-テトラメチルピペリジンN-オキシルフリーラジカル(4-HO-TEMPO、和光純薬工業製)をそれぞれ100質量ppm添加して、それぞれの成分について、0.67kPaで減圧蒸留を行った。溜点は90~150℃であった。
ルシリンTPOは、酢酸エチルに溶解させた後、分液漏斗中で1規定の塩酸と1:1(質量比)で混合し充分に撹拌した。水相/有機溶剤相に分離するまで静置し、水相を除去した。上記分液精製作業を3回繰り返した後、イオン交換水を用いた分液精製を行い、有機溶媒中に溶解した酸成分を除去した。その後、酢酸エチルを蒸留除去し目的の化合物を得た。
ダロキュア1173は、4-ヒドロキシ-2,2-6,6-テトラメチルピペリジンN-オキシルフリーラジカル(4-HO-TEMPO、和光純薬工業製)を100質量ppm添加して、0.67kPaで減圧蒸留を行った。溜点は105℃であった。
Brij35は、酢酸エチルに溶解させた後、分液漏斗中で2規定の塩酸と1:1で混合し充分に撹拌した。水相/有機溶剤相に分離するまで静置し、水相を除去した。上記分液精製作業を2回繰り返した後、イオン交換水を用いた分液精製を行い、有機溶媒中に溶解した酸成分を除去した。その後、酢酸エチルを蒸留除去し目的の化合物を得た。
【0093】
次いで、金属除去処理をした各成分について、酸洗浄処理済のPFA製ボトル中で、以下の比率で配合して、インプリント用硬化性組成物を得た。
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート 45質量部
ベンジルアクリレート 38質量部
イソボルニルアクリレート 10質量部
ルシリンTPO 2質量部
ダロキュア1173 2質量部
Brij35 3質量部
得られたインプリント用硬化性組成物について、比較例1と同様にして、金属を含む粒子性メタルの濃度、酸価、アミン価、エッチング欠陥、経時安定性、モールド耐久性および離型性について、測定または評価した。
【0094】
実施例4
下記成分について、それぞれ、下記の通り、蒸留または酸洗浄による金属除去処理を施した。
1,3-フェニレンビス(メチレン)ジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートおよびラウリルアクリレートは、実施例3に記載の1,6-ヘキサンジオールジアクリレートと同じ方法で処理した。
イルガキュア819は、実施例3に記載のルシリンTPOと同じ方法で処理した。
ポリプロピレングリコール(Mw=700)は、実施例3に記載のBrij35と同じ方法で処理した。
【0095】
次いで、金属除去処理をした各成分について、酸洗浄処理済のPFA製ボトル中で、以下の比率で配合して、インプリント用硬化性組成物を得た。
1,3-フェニレンビス(メチレン)ジアクリレート 50質量部
ネオペンチルグリコールジアクリレート 30質量部
ラウリルアクリレート 15質量部
イルガキュア819 2質量部
ポリプロピレングリコール(Mw=700) 3質量部
得られたインプリント用硬化性組成物について、比較例1と同様にして、金属を含む粒子性メタルの濃度、酸価、アミン価、エッチング欠陥、経時安定性、モールド耐久性および離型性について、測定または評価した。
【0096】
実施例5
実施例4で調製したインプリント用硬化性組成物を孔径10nmのUPEフィルター、次いで、孔径3nmのポリアミドフィルターを用いて濾過を実施した。この時の温度は、23℃とした。濾過圧力は0.1MPaで濾過速度は0.09L/分とした。フィルターを通過した初流500mLを廃棄後、酸洗浄処理済のPFA製ボトルに採取した。その後、実施例1と同様に行った。
【0097】
実施例6
実施例3で調製したインプリント用硬化性組成物を孔径10nmのUPEフィルター、次いで、孔径5nmのポリアミドフィルターを用いて濾過を実施した。この時の温度は、23℃とした。濾過圧力は0.1MPaで濾過速度は0.09L/分とした。フィルターを通過した初流500mLを廃棄後、酸洗浄処理済のPFA製ボトルに採取した。その後、実施例1と同様に行った。
【0098】
実施例7
実施例4で調製したインプリント用硬化性組成物を孔径10nmのUPEフィルター、次いで、特表2017-536232号公報の0058~0059段落の記載を参照し作製した中性基として、ヒドロキシメチルアクリルアミドに由来するヒドロキシル基を有している孔径5nmのUPEフィルターを用いて濾過を実施した。この時の温度は、23℃とした。濾過圧力は0.1MPaで濾過速度は0.09L/分とした。フィルターを通過した初流500mLを廃棄後、酸洗浄処理済のPFA製ボトルに採取した。その後、実施例1と同様に行った。
【0099】
実施例8
実施例4で調製したインプリント用硬化性組成物を孔径10nmのUPEフィルター、次いで、特表2017-536232号公報の0058~0059段落の記載を参照し作製した中性基として、ヒドロキシメチルアクリルアミドに由来するヒドロキシル基を有している孔径3nmのUPEフィルターを用いて濾過を実施した。この時の温度は、23℃とした。濾過圧力は0.1MPaで濾過速度は0.09L/分とした。フィルターを通過した初流500mLを廃棄後、酸洗浄処理済のPFA製ボトルに採取した。その後、実施例1と同様に行った。
【0100】
比較例7
実施例8で調製したインプリント用硬化性組成物を孔径10nmのUPEフィルター、次いで、特表2017-536232号公報の0058~0059段落の記載を参照し作製した中性基として、ヒドロキシメチルアクリルアミドに由来するヒドロキシル基を有している孔径3nmのUPEフィルターを用いて濾過を実施した。この時の温度は、23℃とした。濾過圧力は0.1MPaで濾過速度は0.09L/分とした。フィルターを通過した初流500mLを廃棄後、酸洗浄処理済のPFA製ボトルに採取した。孔径10nmのUPEフィルター以降の処理について、同様の処理をさらに3回実施した後、酸洗浄処理済のPFA製ボトルに採取したものを比較例7とした。その後、実施例1と同様に行った。
【0101】
実施例9
実施例4で調製したインプリント用硬化性組成物を孔径3nmのポリアミドフィルターを用いて濾過を実施した。この時の温度は、23℃とした。濾過圧力は0.1MPaで濾過速度は0.09L/分とした。フィルターを通過した初流500mLを廃棄後、酸洗浄処理済のPFA製ボトルに採取した。その後、実施例1と同様に行った。
【0102】
比較例および実施例の結果を下記に示す。
【表2】
【表3】
【0103】
上記表から明らかなとおり、本発明の組成物は、モールド耐久性に優れていた。さらに、エッチング耐性および経時安定性にも優れていた。さらに、特定粒子性メタルの濃度をより低くすることにより、離型性にもさらに優れる結果となった。
これに対し、特定粒子性メタルの濃度が高い場合、モールド耐久性及びエッチング耐性の少なくとも一方に劣っていた。さらに、経時安定性にも劣っていた。特に、イオン交換樹脂のみを行った場合(比較例4~6)、何ら処理を行わない比較例1~3よりも離型性が劣る結果となった。