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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20220427BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20220427BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J2/18
B41J2/165 211
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018011428
(22)【出願日】2018-01-26
(65)【公開番号】P2019127007
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】久保寺 貴也
(72)【発明者】
【氏名】森脇 祐太
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-073362(JP,A)
【文献】特開2013-010219(JP,A)
【文献】特開2012-030494(JP,A)
【文献】特開2013-212630(JP,A)
【文献】特開2017-113976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0307032(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の供給口及び回収口と前記液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを介して前記液体が循環する循環経路と、を備え、
前記循環経路は、
前記液体吐出ヘッドの前記供給口に通じる個別供給経路と、
前記液体吐出ヘッドの前記回収口に通じる個別回収経路と、を含み、
前記個別供給経路には、流体抵抗を可変する供給側流体抵抗可変部が設けられ、
前記個別回収経路には、流体抵抗を可変する回収側流体抵抗可変部が設けられ、
前記液体を前記ノズルから排出するメンテナンス動作を行うとき、
前記供給側流体抵抗可変部の流体抵抗は、前記液体を循環させているときの流体抵抗に対して低くし、
前記回収側流体抵抗可変部の流体抵抗は、前記液体を循環させているときの流体抵抗に対して高くする
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
液体の供給口及び回収口と前記液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを介して前記液体が循環する循環経路と、を備え、
前記循環経路は、
前記液体吐出ヘッドの前記供給口に通じる個別供給経路と、
前記液体吐出ヘッドの前記回収口に通じる個別回収経路と、を含み、
前記個別供給経路には、流体抵抗を可変する供給側流体抵抗可変部が設けられ、
前記個別回収経路には、流体抵抗を可変する回収側流体抵抗可変部が設けられ、
前記液体を前記ノズルから排出するメンテナンス動作を行うとき、
前記供給側流体抵抗可変部の流体抵抗は、前記液体を循環させているときの流体抵抗に対して高くし、
前記回収側流体抵抗可変部の流体抵抗は、前記液体を循環させているときの流体抵抗に対して低くする
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
液体の供給口及び回収口を有する複数の液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを介して前記液体が循環する循環経路と、を備え、
前記循環経路は、
前記複数の液体吐出ヘッドの前記供給口にそれぞれ通じる複数の個別供給経路と、
前記複数の液体吐出ヘッドの前記回収口にそれぞれ通じる複数の個別回収経路と、を含み、
前記個別供給経路には、流体抵抗を可変する供給側流体抵抗可変部が設けられ、
前記個別回収経路には、流体抵抗を可変する回収側流体抵抗可変部が設けられ、
所定時間以上前記液体の吐出を行っていない前記液体吐出ヘッドについての前記供給側流体抵抗可変部及び回収側流体抵抗可変部の流体抵抗は、他の前記液体吐出ヘッドについての前記供給側流体抵抗可変部及び回収側流体抵抗可変部の流体抵抗に対して低くする
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」ともいう。)として、ノズルに連通する個別液室への供給流路と個別液室に通じる回収流路とを有し、供給流路に通じる液体の供給口と、回収流路に通じる液体の回収口を備えるフロースルー型ヘッド(循環型ヘッド)がある。
【0003】
そして、従来、インクジェットヘッドに供給されるインクが通過する第1の経路と、インクジェットヘッドから排出されるインクが通過する第2の経路と、インクタンクとインクジェットヘッドとの間で、第1の経路および第2の経路を介してインクを循環させる循環装置と、第1の経路または第2の経路の少なくとも一部の内径を変化させる内径変化部と、第1の経路の流路抵抗と第2の経路の流路抵抗とに基づき、第1の経路の流路抵抗と第2の経路の流路抵抗とが近づくように内径変化部によって第1の経路または第2の経路の内径を変化させる制御部とを備える画像形成装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-212630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フロースルー型ヘッドは、循環経路につながっているために、例えば、ヘッドのノズルから液体を吸引して排出するメンテナンス動作を行うとき、供給経路及び回収経路のいずれからも液体が吸引されることになる。そのため、メンテナンス動作の効率が悪く、無駄に消費される液体量が多くなるという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、無駄な液体消費を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体を吐出する装置は、
液体の供給口及び回収口と前記液体を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを介して前記液体が循環する循環経路と、を備え、
前記循環経路は、
前記液体吐出ヘッドの前記供給口に通じる個別供給経路と、
前記液体吐出ヘッドの前記回収口に通じる個別回収経路と、を含み、
前記個別供給経路には、流体抵抗を可変する供給側流体抵抗可変部が設けられ、
前記個別回収経路には、流体抵抗を可変する回収側流体抵抗可変部が設けられ、
前記液体を前記ノズルから排出するメンテナンス動作を行うとき、
前記供給側流体抵抗可変部の流体抵抗は、前記液体を循環させているときの流体抵抗に対して低くし、
前記回収側流体抵抗可変部の流体抵抗は、前記液体を循環させているときの流体抵抗に対して高くする
構成とした。
【0008】
本発明によれば、無駄な液体消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る液体を吐出する装置の一例の概略説明図である。
図2】同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
図3】液体吐出ヘッドの一例の外観斜視説明図である。
図4】同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図である。
図5】液体循環装置に係る部分のブロック説明図である。
図6】本発明の第1実施形態におけるヘッド及び吸引メンテナンス機構の模式的説明図である。
図7】同ヘッドの平面説明図である。
図8】本発明の第1実施形態における流体抵抗可変部の断面説明図である。
図9】本発明の第1実施形態におけるメンテナンス動作に係る部分のブロック説明図である。
図10】供給側個別経路から回収側個別経路までの流体抵抗の等価的説明図である。
図11】メンテナンス駆動制御部によるメンテナンス動作の制御の説明に供するフロー図である。
図12】同じく主に回収側から液体を吸引するときの説明に供する説明図である。
図13】本発明の第2実施形態におけるメンテナンス動作の説明に供するヘッド及び吸引メンテナンス機構周りの模式的説明図である。
図14】本発明の第3実施形態におけるメンテナンス動作の説明に供するヘッド及び吸引メンテナンス機構周りの模式的説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。図1は同装置の概略説明図、図2は同装置のヘッドユニットの一例の平面説明図である。
【0011】
この液体を吐出する装置である印刷装置1000は、連続体10を搬入する搬入手段1と、搬入手段1から搬入された連続体10を印刷手段5に案内搬送する案内搬送手段3と、連続体10に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段5と、連続体10を乾燥する乾燥手段7と、連続体10を搬出する搬出手段9などを備えている。
【0012】
連続体10は搬入手段1の元巻きローラ11から送り出され、搬入手段1、案内搬送手段3、乾燥手段7、搬出手段9の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段9の巻取りローラ91にて巻き取られる。
【0013】
この連続体10は、印刷手段5において、搬送ガイド部材59上をヘッドユニット50及びヘッドユニット55に対向して搬送され、ヘッドユニット50から吐出される液体によって画像が形成され、ヘッドユニット55から吐出される処理液で後処理が行われる。
【0014】
ここで、ヘッドユニット50には、例えば、媒体搬送方向上流側から、4色分のフルライン型ヘッドアレイ51K、51C、51M、51Y(以下、色の区別しないときは「ヘッドアレイ51」という。)が配置されている。
【0015】
各ヘッドアレイ51は、液体吐出手段であり、それぞれ、搬送される連続体10に対してブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を吐出する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0016】
ヘッドアレイ51は、例えば、図2に示すように、液体吐出ヘッド(これを、単に「ヘッド」ともいう。)100をベース部材52上に千鳥状に並べて配置したものであるが、これに限らない。
【0017】
次に、液体吐出ヘッドの一例について図3及び図4を参照して説明する。図3は同液体吐出ヘッドの外観斜視説明図、図4は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)の断面説明図である。
【0018】
この液体吐出ヘッドは、ノズル板101と、流路板102と、壁面部材としての振動板部材103とを積層接合している。そして、振動板部材103の振動領域(振動板)130を変位させる圧電アクチュエータ111と、ヘッドのフレーム部材を兼ねている共通液室部材120と、カバー129を備えている。なお、流路板102と振動板部材103で構成される部分を流路部材140という。
【0019】
ノズル板101は、液体を吐出する複数のノズル104を有している。
【0020】
流路板102は、ノズル104にノズル連通路105を介して通じる個別液室106、個別液室106に通じる供給側流体抵抗部107、供給側流体抵抗部107に通じる液導入部108となる貫通穴や溝部を形成している。ノズル連通路105は、ノズル104と個別液室106にそれぞれ連なって通じる流路である。また、液導入部108は振動板部材103の開口109を介して供給側共通液室110に通じている。
【0021】
振動板部材103は、流路板102の個別液室106の壁面を形成する変形可能な振動領域130を有する。ここでは、振動板部材103は2層構造(限定されない)とし、流路板102側から薄肉部を形成する第1層と、厚肉部を形成する第2層で形成され、第1層で個別液室106に対応する部分に変形可能な振動領域130を形成している。
【0022】
そして、この振動板部材103の個別液室106とは反対側に、振動板部材103の振動領域130を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ111を配置している。
【0023】
この圧電アクチュエータ111は、ベース部材113上に接合した圧電部材をハーフカットダイシングによって溝加工して所要数の柱状の圧電素子112を所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0024】
そして、圧電素子112を振動板部材103の振動領域130に形成した島状の厚肉部である凸部130aに接合している。また、圧電素子112にはフレキシブル配線部材115が接続されている。
【0025】
共通液室部材120は、供給側共通液室110と回収側共通液室150を形成する。供給側共通液室110は供給ポート(供給口)171に通じ、回収側共通液室150は回収ポート(回収口)172に通じている。
【0026】
なお、ここでは、共通液室部材120は、第1共通液室部材121及び第2共通液室部材122によって構成され、第1共通液室部材121を流路部材140の振動板部材103側に接合し、第1共通液室部材121に第2共通液室部材122を積層して接合している。
【0027】
第1共通液室部材121は、液導入部108に通じる供給側共通液室110の一部である下流側共通液室110Aと、回収流路151に通じる回収側共通液室150とを形成している。また、第2共通液室部材122は、供給側共通液室110の残部である上流側共通液室110Bを形成している。
【0028】
また、流路板102には、各個別液室106にノズル連通路105を介して通じる流路板102の面方向に沿う回収流路151を形成している。回収流路151が回収側共通液室150に通じている。
【0029】
この液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電素子112に与える電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子112が収縮し、振動板部材103の振動領域130が引かれて個別液室106の容積が膨張することで、個別液室106内に液体が流入する。
【0030】
その後、圧電素子112に印加する電圧を上げて圧電素子112を積層方向に伸長させ、振動板部材103の振動領域130をノズル104に向かう方向に変形させて個別液室106の容積を収縮させることにより、個別液室106内の液体が加圧され、ノズル104から液体が吐出される。
【0031】
また、ノズル104から吐出されない液体はノズル104を通過して回収流路151から回収側共通液室150に流入し、回収側共通液室150から外部の循環経路を通じて供給側共通液室110に再度供給される。
【0032】
なお、ヘッドの駆動方法については上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0033】
次に、液体循環装置に係る部分について図5を参照して説明する。図5は同説明に供するブロック説明図である。
【0034】
液体循環装置200は、第1サブタンクである供給タンク201と、第2サブタンクである回収タンク202と、ヘッド100から吐出する液体300を貯留する液体貯留手段であるメインタンクである補充タンク203とを備えている。
【0035】
また、液体循環装置200は、第1送液ポンプである供給ポンプ205と、第2送液ポンプである回収ポンプ206と、第3送液ポンプである補充ポンプ207とを備えている。
【0036】
また、液体循環装置200は、複数のヘッド100の供給ポート171にそれぞれ個別供給経路211を介して通じる第1マニホールドである共通供給経路212を備えている。また、液体循環装置200は、複数のヘッド100の回収ポート172にそれぞれ個別回収経路221を介して通じる第2マニホールドである共通回収経路222を備えている。
【0037】
そして、供給ポンプ205は、供給タンク201から液体経路231を介して共通供給経路212に液体を送液する。回収ポンプ206は、共通回収経路222から液体経路232を介して液体を回収タンク202に送液する。
【0038】
ここで、供給タンク201と回収タンク202とは液体経路233で連通している。
【0039】
これにより、供給タンク201から液体経路231、共通供給経路212、個別供給経路211、ヘッド100の内部の前述した各流路(供給側共通液室110、個別液室106、回収流路151、回収側共通液室150など)、個別回収経路221、共通回収経路222、液体経路232、回収タンク202、液体経路231を通じて液体が循環する循環経路209が構成される。
【0040】
そして、本実施形態では、個別供給経路211には流体抵抗を変化できる供給側流体抵抗可変部213が、個別回収経路221には流体抵抗を変化できる回収側流体抵抗可変部223が、それぞれ設けられている。
【0041】
次に、本発明の第1実施形態におけるヘッド及び吸引メンテナンス機構について図6及び図7を参照して説明する。図6はヘッド及び吸引メンテナンス機構の模式的説明図、図7は同ヘッドの平面説明図である。
【0042】
本実施形態におけるヘッド100は、個別液室106に回収流路151が接続されており、前述した図4で説明したヘッド100のノズル連通路105を有していない点で異なるが、他は同様の構成であるので、対応部分には同じ符号を付して説明を省略する。なお、ここでは、液導入部108及び流体抵抗部107は、供給流路178としている。
【0043】
また、このヘッド100に対する液体循環装置200の構成は、前述した図5で説明したものと同様であるので、ここでは、共通供給経路212から共通回収経路222までの部分を図示している。
【0044】
メンテナンス機構700は、ヘッド100のノズル面101aをキャッピングするキャップ701を備えている。キャップ701は、ノズル面101aに対して進退可能に配置され、後述するキャップ移動機構571で進退移動される。
【0045】
また、キャップ701には吸引経路702が接続され、吸引経路702には吸引手段である吸引ポンプ703が設けられている。ヘッド100のノズル面101aをキャップ701でキャッピングして、吸引ポンプ703を駆動することによって、ノズル104から液体をキャップ701内に吸引して排出する。
【0046】
メンテナンス制御部801は、キャップ移動機構710を介してキャップ701を移動させてノズル面101aをキャッピングし、吸引ポンプ703を駆動してノズル104から液体を吸引排出させるメンテナンス動作を制御する。
【0047】
次に、第1実施形態における流体抵抗可変部について図8を参照して説明する。図8は流体抵抗可変部の断面説明図である。
【0048】
供給側流体抵抗可変部213、回収側流体抵抗可変部223は、いずれも、復元可能に変形可能な液体経路240と、液体経路240の周囲を覆う真空チャンバ241とを備えている。
【0049】
そして、図8(a)に示す状態から、図8(b)に示すように、真空チャンバ241を加圧する(真空度を低くする)ことで、液体経路240が押しつぶされて、流体抵抗が高くなる。
【0050】
これに対し、図8(a)に示す状態から、図8(c)に示すように、真空チャンバ241を減圧する(真空度を高くする)ことで、液体経路240が膨張して、流体抵抗が低くなる。
【0051】
このように、真空チャンパ241の負圧を変化させることによって、液体経路240の開口断面積が変化して、供給側流体抵抗可変部213、回収側流体抵抗可変部223の流体抵抗が変化し、個別供給経路211、個別回収経路221の流体抵抗が変化する。
【0052】
次に、第1実施形態におけるメンテナンス動作に係る部分の制御について図9のブロック説明図を参照して説明する。
【0053】
メンテナンス駆動制御部500は、真空ポンプ514を駆動制御して供給側流体抵抗可変部213の真空チャンバ241内の負圧を制御して供給経路211の流体抵抗を変化させる。また、メンテナンス駆動制御部500は、真空ポンプ524を駆動制御して回収側流体抵抗可変部223の真空チャンバ241内の負圧を制御して回収経路221の流体抵抗を変化させる。
【0054】
メンテナンス駆動制御部500は、駆動モータ574を駆動制御して、キャップ進退機構571を駆動し、キャップ701を進退移動させる。また、メンテナンス駆動制御部500は、吸引ポンプ703を駆動制御する。
【0055】
次に、メンテナンス動作を行うときの流量及び各部の流体抵抗について図10を参照して説明する。図10は供給側個別経路から回収側個別経路までの流体抵抗の等価的説明図である。
【0056】
個別供給経路211の流体抵抗をRi、供給側流体抵抗可変部212の流体抵抗をRia、個別回収経路221の流体抵抗をRo、回収側流体抵抗可変部223の流体抵抗をRoa、ヘッド100内の供給ポート171からノズル104までの流体抵抗の合計値をRhi、ヘッド100内のノズル104から回収ポート172までの流体抵抗の合計値をRhoとする。
【0057】
ここで、メンテナンス機構700によってノズル104から液体を吸引したとき、吸引流量Qdは、供給側吸引流量Qiと回収側吸引流量Qoとの合計(Qd=Qi+Qo)となる。
【0058】
そして、供給側吸引流量Qiと回収側吸引流量Qoは、それぞれ、次の(1)式、(2)式で求められる。
【0059】
【数1】
【0060】
【数2】
【0061】
次に、メンテナンス駆動制御部によるメンテナンス動作の制御について図11及び図12を参照して説明する。図11は同制御の説明に供するフロー図、図12は主に回収側から液体を吸引するときの説明に供する説明図である。
【0062】
まず、供給側に気泡があるか否かを判別する。
【0063】
ここで、供給側に気泡があるときには、回収側流体抵抗可変部223の流体抵抗Roaは、液体を循環しているときの流体抵抗に対して高くする。また、供給側流体抵抗可変部213の流体抵抗Riaは、液体を循環しているときの流体抵抗に対して低くする。
【0064】
これにより、個別供給経路211は液体を循環しているときよりも液体が流れやすくなり、個別回収経路221は液体を循環しているときよりも液体が流れにくくなる。
【0065】
そして、キャップ701でノズル面101aをキャッピングした状態で吸引ポンプ703を駆動して、ノズル104から液体を吸引してキャップ701内に排出させる吸引メンテナンス動作を行う。
【0066】
このとき、個別供給経路211は液体が流れやすくなり、個別回収経路221は液体が流れにくくなっているので、相対的に、個別回収経路221側よりも個別供給経路211側を通じて多くの液体が吸引されて、ノズル104から排出される。
【0067】
その後、再度、供給側に気泡があるか否かを判別し、供給側に気泡がなくなったときに、回収側流体抵抗可変部223の流体抵抗Roa、供給側流体抵抗可変部213の流体抵抗Riaを、それぞれ、液体を循環しているときの流体抵抗値に戻す(元に戻す)。
【0068】
次いで、回収側に気泡があるか否かを判別し、回収側に気泡があるときには、供給側流体抵抗可変部213の流体抵抗Riaは、液体を循環しているときの流体抵抗に対して高くする。また、回収側流体抵抗可変部223の流体抵抗Roaは、液体を循環しているときの流体抵抗に対して低くする。
【0069】
これにより、個別回収経路221は液体を循環しているときよりも液体が流れやすくなり、個別供給経路211は液体を循環しているときよりも液体が流れにくくなる。
【0070】
そして、キャップ701でノズル面101aをキャッピングした状態で吸引ポンプ703を駆動して、ノズル104から液体を吸引してキャップ701内に排出させる吸引メンテナンス動作を行う。
【0071】
このとき、個別回収経路221は液体が流れやすくなり、個別供給経路211は液体が流れにくくなっているので、相対的に、個別供給経路211側よりも個別回収経路221側を通じて多くの液体が吸引されて、ノズル104から排出される。
【0072】
その後、再度、回収側に気泡があるか否かを判別し、回収側に気泡がなくなったときに、供給側流体抵抗可変部213の流体抵抗Ria、回収側流体抵抗可変部223の流体抵抗Roaを、それぞれ、液体を循環しているときの流体抵抗値に戻す(元に戻す)。
【0073】
つまり、供給側に気泡がある場合、回収側流体抵抗可変部223の流体抵抗Roaを高くし、供給側流体抵抗可変部213の流体抵抗Riaを低くすることで、吸引流量Qdに対し、Qi>Qoの関係で液体を吸引できる。これにより、供給側の液体を集中して吸引して気泡を排出できる。
【0074】
これに対し、回収側に気泡がある場合、図12に示すように、供給側流体抵抗可変部213の液体経路240を絞って流体抵抗Riaを高くし、回収側流体抵抗可変部223の液体経路240を拡開して流体抵抗Roaを低くする。これにより、吸引流量Qdに対し、Qo>Qiの関係で液体を吸引することができ、回収側の液体を集中して吸引して気泡を排出できる。
【0075】
これにより、効率的にメンテナンスを行うことができて、無駄に消費される液体量を抑制することができる。
【0076】
次に、本発明の第2実施形態について図13を参照して説明する。図13は同実施形態におけるメンテナンス動作の説明に供するヘッド及び吸引メンテナンス機構周りの模式的説明図である。
【0077】
本実施形態では、特定のヘッド100Aに対してメンテナンス動作を実施するときには、特定のヘッド100A以外のヘッド(ここでは、ヘッド100Bで代表する。)についての供給側流体抵抗可変部213の流体抵抗Ria、回収側流体抵抗可変部223の流体抵抗Roaを、いずれも、メンテナンス動作を行うヘッド100Aについての供給側流体抵抗可変部213の流体抵抗Ria、回収側流体抵抗可変部223の流体抵抗Roaに比べて(対して)高くしている。
【0078】
これにより、共通供給経路212、共通回収経路222でつながる複数のヘッド100の特定のヘッド100Aについてメンテナンス動作を行うとき、共通供給経路212、共通回収経路222を介してヘッド100A以外の他のヘッド100Bから液体を吸引することを抑制できる。
【0079】
これにより、目的とするヘッドを効率的にメンテナンスすることができる。
【0080】
次に、本発明の第3実施形態について図14を参照して説明する。図14は同実施形態におけるメンテナンス動作の説明に供するヘッド及び吸引メンテナンス機構周りの模式的説明図である。
【0081】
本実施形態では、図14(a)に示すように、印刷動作において液体を吐出しているヘッド100Cについては、供給側流体抵抗可変部213の流体抵抗Ria、回収側流体抵抗可変部223の流体抵抗Roaを、いずれも、液体循環を行うときの流体抵抗として、循環量Qで循環を行う。
【0082】
これに対し、図14(b)に示すように、印刷動作において液体を吐出しない、又は、所定時間以上液体を吐出しないヘッド100Dについては、供給側流体抵抗可変部213の流体抵抗Ria、回収側流体抵抗可変部223の流体抵抗Roaを、いずれも、液体を吐出している他のヘッド100Cについての供給側流体抵抗可変部213の流体抵抗Ria、回収側流体抵抗可変部223の流体抵抗Roaに比べて(対して)低くし、循環量Qm(Qm>Q)で循環を行う。
【0083】
これにより、印刷動作において液体を吐出しない、又は所定時間以上液体を吐出しないヘッド100Dについて、循環量が多くなって、ノズル104近傍にフレッシュな液体を多く供給することができ、ノズル104内で増粘が進行することを抑制できる。
【0084】
本願において、吐出される「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0085】
「液体吐出ヘッド」には、液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0086】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0087】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0088】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0089】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0090】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0091】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0092】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0093】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0094】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0095】
5 印刷手段
10 連続体
50 ヘッドユニット
100 液体吐出ヘッド(ヘッド)
200 液体供給装置
201 供給タンク
202 回収タンク
205 供給ポンプ
206 回収ポンプ
211 個別供給経路
212 共通供給経路
213 供給側流体抵抗可変部
221 個別回収経路
222 共通回収経路
223 回収側流体抵抗可変部
1000 印刷装置(液体を吐出する装置)
図1
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