(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 25/20 20060101AFI20220427BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20220427BHJP
H04N 1/393 20060101ALI20220427BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
B41J25/20
H04N1/387 110
H04N1/393
B41J11/42
(21)【出願番号】P 2018046247
(22)【出願日】2018-03-14
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】前山 雄一郎
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0116410(US,A1)
【文献】特開2011-170872(JP,A)
【文献】特開2006-171812(JP,A)
【文献】特開2010-253912(JP,A)
【文献】特開2017-177578(JP,A)
【文献】特開2007-007862(JP,A)
【文献】特開2018-016004(JP,A)
【文献】特開2011-033765(JP,A)
【文献】特開2006-284773(JP,A)
【文献】特開2011-183803(JP,A)
【文献】特開2007-088672(JP,A)
【文献】特開2017-167306(JP,A)
【文献】特開2010-253745(JP,A)
【文献】特開2011-165034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0050723(US,A1)
【文献】特開2013-218567(JP,A)
【文献】特開2012-165220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 21/00-25/34
B41J 29/00-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷出力を行ったときに発生する画像のずれ量を取得するための位置検出マークを印刷して前記ずれ量を取得し、入力画像に対して前記ずれ量に応じた補正を行う印刷装置であって、
表面印刷後の表面の絶対画像位置精度又は裏面印刷後の表裏面の絶対画像位置精度に基づいて、前記位置検出マークの工数を決定する手段を備え、
前記位置検出マークを読取るために前記表面又は表裏面の画像を印刷する試し印刷モードを有し、
前記試し印刷モードでは、本印刷に比べて、前記位置検出マークの個数を多くする
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記試し印刷モードでは、入力画像の位置に関わらず、所定の位置に前記位置検出マークを印刷する
することを特徴とする請求項
1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記試し印刷モードでは、入力画像と前記位置検出マークが重なるときには、前記位置検出マークを優先して、前記位置検出マークの周辺の画像を一部欠落させる
ことを特徴とする請求項
1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記入力画像と前記位置検出マークの重なりから前記位置検出マークを検出可能であるか否かを判別して、検出可能であるときには、前記入力画像を欠落させず、検出可能でないときには前記入力画像を欠落させる
ことを特徴とする請求項
1に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置などの印刷装置において、印刷時の媒体の伸縮による入力画像と出力画像のずれや表裏面の画像のずれなどを補正することが行われる。
【0003】
従来、用紙の四隅に位置検出マーク(トンボ)を印刷し、位置検出マークを読み取ってずれ量を取得し、幾何補正をするものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、媒体に対する所要の画像を印刷しているときに、ずれ量計測用の位置検出マークを印刷すると、処理に時間がかかり、生産性が低下する。そのため、画像の収縮率などに応じた位置検出マークの印刷個数の最適化が求められる。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、位置検出マークの印刷個数の最適化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る印刷装置は、
印刷出力を行ったときに発生する画像のずれ量を取得するための位置検出マークを印刷して前記ずれ量を取得し、入力画像に対して前記ずれ量に応じた補正を行う印刷装置であって、
表面印刷後の表面の絶対画像位置精度又は裏面印刷後の表裏面の絶対画像位置精度に基づいて、前記位置検出マークの工数を決定する手段を備え、
前記位置検出マークを読取るために前記表面又は表裏面の画像を印刷する試し印刷モードを有し、
前記試し印刷モードでは、本印刷に比べて、前記位置検出マークの個数を多くする
構成とした。
【0008】
本発明によれば、位置検出マークの印刷個数の最適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置(画像形成装置)のブロック説明図である。
【
図2】ずれ量の補正の第1例の説明に供する説明図である。
【
図3】ずれ量の補正の第2例の説明に供する説明図である。
【
図4】ずれ量の補正の第3例の説明に供する説明図である。
【
図5】位置検出マーク(トンボ)の個数の決定の説明に供する説明図である。
【
図6】本発明の第2実施形態における試し印刷モードの第1例の説明に供する説明図である。
【
図7】同じく試し印刷モードの第2例の説明に供する説明図である。
【
図8】同じく試し印刷モードの第3例の説明に供する説明図である。
【
図9】本発明の第3実施形態における面付けを行う場合の位置検出マークの個数の説明に供する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明の第1実施形態について
図1を参照して説明する。
図1は同実施形態に係る印刷装置(画像形成装置)のブロック説明図である。
【0011】
印刷装置100は、コントローラ101、エンジン制御部110、画像読取部111、プロッタ部112及び画像処理部113を備えている。
【0012】
コントローラ101は、CPU102、RAM103、ROM104、HDD(ハードディスクドライブ)105、通信I/F(インターフェース)106及び操作I/F107を備え、操作I/F107は操作部108と接続する。これらは、システムバス109によって互いに接続されている。
【0013】
コントローラ101はマイクロコンピュータで構成しており、CPU102は、RAM103をワークエリアとしてROM104又はHDD105に記憶されたプログラムを実行することにより、印刷装置100全体を制御する。
【0014】
このコントローラ101は、本発明に係る印刷する位置検出マークの個数を決定する処理を行う手段を兼ねている。また、コントローラ101は、位置検出マークの検出(読取り)から画像のずれ量を算出して、入力画像に対して幾何補正をする補正処理なども行う。
【0015】
ROM104及びHDD105は、不揮発性記憶媒体(記憶手段)であり、CPU102が実行する各種プログラムや各種の固定データを格納している。
【0016】
通信I/F106は、印刷装置100をネットワークと接続するためのインターフェースである。
【0017】
操作I/F107は、操作部108をシステムバス109に接続してCPU102から制御可能とするためのインターフェースである。
【0018】
操作部108は、ユーザからの操作を受け付けるためのキー、ボタン、タッチセンサ等の操作手段と、ユーザに対して情報を提示するためのディスプレイ等の表示手段とを備えるユーザインタフェースである。
【0019】
画像読取部111は、原稿の画像を読み取ってその画像データを取得する機能を備える画像読取手段である。
【0020】
プロッタ部112は、画像読取部111が読み取った画像データ、あるいは通信I/F106を通して外部から入力された画像データに基づいて、シート材に画像を形成してプリンタ出力する機能を備えた画像形成手段である。画像形成手段は電子写真方式或いは液体吐出方式などのいずれの方式で画像を形成するものであってもよい。
【0021】
画像処理部113は、画像読取部111で読み取った画像データや外部から入力された画像データに対して画像処理を行う画像処理手段である。この画像処理部113だけでなく、コントローラ101のCPU102、RAM103、ROM104及びHDD105と、エンジン制御部110を含めて画像処理装置の機能を実現する。
【0022】
エンジン制御部110は、画像読取部111、プロッタ部112及び画像処理部113を、システムバス109を介してCPU102からのコマンドに従って制御する制御手段である。
【0023】
印刷装置100は、例えば複写機、プリンタ、ファクシミリ装置、デジタル複合機(MFP)等として構成することができる。
【0024】
この印刷装置100では、プロッタ部112によって出力した画像が目標画像に対してどのようにずれているかを画像読取部111にて読み取ることでずれ量を算出し、ずれ量を補正するように画像処理部113にて画像を処理する。ずれ量の補正はあらかじめ試し印刷を行って画像のずれ量を取得して本印刷時の画像を変形させる印刷前補正と、表面の画像に対して裏面の補正をリアルタイムで行う裏面補正などがある。
【0025】
ここで、ずれ量の補正について
図2ないし
図4を参照して説明する。
図2ないし
図4はずれ量の補正の異なる例を説明する説明図である。
【0026】
図12に示す第1例は、シート材(以下、用紙」というが、紙に限定するものではない。)の端部の座標を読み取って、狙いの用紙サイズに対するずれ量を算出し、印刷前の画像を台形に補正する方法である。
【0027】
この第1例では、
図2(a)に示すように、用紙に画像を印刷した後の用紙を読み取って、用紙の端部の座標を確認し、予めユーザが入力した用紙サイズに対してどのように変形しているかを確認する。そして、実際に印刷するときの画像を、
図2(b)に示すように、逆に変形する。これにより、用紙変形に合わせ、画像を狙いの位置に印刷することが可能となる。
【0028】
しかし、この第1例では、印刷前の用紙が変形している影響や用紙は変形しているが画像は変形していないことの影響を受けるため精度が悪くなる。なお、あらかじめユーザの入力した用紙サイズに対して補正を行ったが、別途装置内で印刷前の用紙の大きさ又は用紙端部の座標を測定してもよい。
【0029】
図3に示す第2例は、用紙の四隅に位置検出マーク(以下、「トンボ」という。)を印刷して、用紙の原点からの目標座標に対するトンボの座標のずれ量を算出して補正する。
【0030】
この第2例では、
図3(a)に示すように、用紙上の4か所にトンボMを印刷してトンボの位置と用紙端部の位置を読み取って、用紙原点に対する画像の狙いに対するずれ量を算出する。そして
図3(b)に示すように、実際に印刷するときの画像を反対に補正する。
【0031】
これにより、実際の画像の大きさの変動を確認することができ、高精度な補正が可能となる。一方、読み取る画像の情報量が多いため、トンボの座標を算出するための画像処理に時間がかかる。
【0032】
図4に示す第3例では、用紙に4か所よりも多いトンボを打って、印刷後の画像の変形量を複雑に変形させる。
【0033】
例えば、
図4(a)に示すように、用紙上の6か所にトンボを印刷して、トンボと用紙端部の位置を読み取って、用紙原点に対する画像の狙いに対するずれ量を算出して、実際に印刷するときの画像を反対に補正する。
【0034】
これにより、実際の画像の大きさの変動を詳細に確認することができ、第2例の補正に対しては高精度な補正が可能となるが、読み取る画像の情報量が多く、画像変形のための計算量も多いため画像処理に時間がかかる。また、この第3例の補正方法では、トンボの個数を増加するほど、画像の変形量が詳細に分かるため、必要精度に応じて印刷するトンボの個数を変更する。
【0035】
このように、画像の変形の補正精度は、第1例<第2例<第3例、となり、画像処理を含めた補正にかかる時間も、第1例<第2例<第3例、となる。そのため、表面印刷後に画像を読み取って、裏面の印刷に補正をかける裏面補正では、読取位置から印刷位置までの用紙の搬送時間よりも補正処理時間が長い場合は、補正処理終了を待ってから、裏面印刷することになるため、生産性が低下することになる。
【0036】
次に、本実施形態における位置検出マーク(トンボ)の個数の決定について
図5も参照して説明する。
【0037】
本実施形態では、印刷出力する画像の収縮率、ユーザによって入力される要求精度、断裁領域の有無に基づいて、位置検出マークの個数を決定している。
【0038】
図5を参照して、印刷出力する画像の収縮率は、入力画像の印字率から推定し、ここでは、収縮大、収縮中、収縮小、の3段階に区分している。
【0039】
要求精度は、ユーザが求める精度であり、ここでは、高精度(精度高)と低精度(精度低)の2段階に区分している。
【0040】
断裁領域は、用紙に対して複数ページの画像が面付けされて断裁領域があるか否か(断裁領域のあり/なし)で区分している。
【0041】
そして、これらの収縮率、要求精度、断裁領域の区分に従って予め印刷する(使用する)トンボの個数を決定している(割り当てている)。
【0042】
まず、用紙に断裁領域がない場合は、トンボを印刷することができないため、すべての条件で「トンボなし」、即ち、トンボの個数を「0」としている。
【0043】
断裁領域がある場合は、断裁領域に限定して、必要なトンボ数、トンボの印刷位置を決定する。
【0044】
このとき、画像を出力する部材(用紙)の断裁位置に基づいて非画像領域を判別し、当該非画像領域の広さに基づいてトンボの個数を決定することが好ましい。これにより、より最適な個数のトンボを画像と重ならない領域に配置して、より正確なずれ量を検出することができる。
【0045】
また、トンボが「多数」の場合には、上述したように補正処理などの処理時間が長くなり、生産性が低下するレイアウトとなる。
【0046】
そこで、本実施形態では、ユーザが要求精度として「精度高」を選択し、トンボ数が多くなることで生産性が低下する(印刷速度が遅くなる)場合には、印刷前に、あらかじめユーザに操作パネルや装置画面上で生産性が低下する旨を通知する。
【0047】
次に、本発明の第2実施形態について
図6ないし
図8も参照して説明する。
図6ないし
図8は同実施形態における試し印刷モードの異なる例の説明に供する説明図である。
【0048】
本実施形態では、補正対象が、表面印刷後の表面の絶対画像位置精度又は裏面印刷後の表裏面の絶対画像位置精度であるときに、トンボを読取るために画像を印刷する試し印刷モードを有している。
【0049】
試し印刷モードでは、印刷前補正のための印刷であるので、正確に画像の変形を把握するため、
図5の条件によらずに、例えば、
図6及び
図7に示すように、用紙200上に、トンボMを本印刷の場合よりも可能な限り多く配置する。例えば、50mmピッチで格子状に配置することで、画像領域すべての変形を把握することが可能になる。
【0050】
ここで、
図6に示す第1例の試し印刷モードでは、用紙200上の入力画像201の位置にかかわらず、所定の位置にトンボMを印刷する。つまり、トンボMと入力画像201が重なっていても、トンボMaのように重ねて印刷する。
【0051】
この場合、例えば、入力画像201は特定の一色で印刷し、トンボMは異なる色で印刷することで、入力画像201とトンボMが重複しても、トンボMを検出する(読み取る)ことができる。
【0052】
これにより、試し印刷の処理に要する時間が短くなる。
【0053】
図7に示す第2例の試し印刷モードでは、入力画像201の位置とトンボMの配置位置とが重複しているか否かを判別する。そして、入力画像201とトンボMが重なるときには、トンボMを優先し、トンボMの周辺の画像201の一部(トンボMのサイズよりも一定量大きい範囲に重なる部分)201aを白紙として欠落させて印刷している。
【0054】
この場合には、トンボMの周辺領域と入力画像201が重なる場合には、入力画像201の一部201aが欠落して印刷される。
【0055】
これにより、トンボMが入力画像201と重複する位置に印刷された場合でもトンボMを検出する(読み取る)ことができる。
【0056】
図8に示す第3例の試し印刷モードでは、入力画像201の位置とトンボMの配置位置とが重複しているか否かを判別し、入力画像201とトンボMが重なるときには、更に、入力画像201とトンボMの重なりからトンボMを検出可能であるか否かを判別する。
【0057】
ここでは、便宜上、入力画像201とトンボMの重なりから、トンボMaは検出可能でなく、トンボMbは検出可能とする。
【0058】
そして、入力画像201とトンボMの重なりからトンボMbを検出可能であるときには、入力画像201を欠落させずにトンボMbを所定の配置位置に印刷し、検出可能でない(読み取れない)トンボMaは、第2例と同様に、トンボMaを優先して、トンボMaの周辺の画像201の一部201bを欠落させて印刷する。
【0059】
これにより、第2例よりも入力画像の欠落を低減することができる。
【0060】
そして、これらの試し印刷モードで印刷したトンボMを読み取って得られる入力画像の収縮率もとに、本印刷のトンボ数を決定する条件として収縮率に適用することで、必要なトンボの数を最小限にすることが可能となる。
【0061】
次に、本発明の第3実施形態について
図9を参照して説明する。
図9は同実施形態における面付けを行う場合の位置検出マークの個数の説明に供する説明図である。
【0062】
1枚の用紙に複数ページを面付けする場合、面付け数に応じて、トンボの個数を変更する。
【0063】
例えば、
図8(a)は、1枚の用紙200に6ページ(P1~P6)を面付けして破線で示す断裁位置で断裁する例である。この例では、ページの間に、12個のトンボを印刷している。
【0064】
また、
図8(b)は、1枚の用紙200に4ページ(P1~P6)を面付けして破線で示す断裁位置で断裁する例である。この例では、ページ間に、9個のトンボを印刷している。
【0065】
このようにして、面付けに応じて最適な位置検出マークの個数とすることができる。
【0066】
なお、本願では、画像形成、記録、印刷、印写、印字、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0067】
100 印刷装置
101 コントローラ
111 画像読取部
113 画像処理部