(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】蓄電制御装置、蓄電制御方法、および蓄電制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20220427BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20220427BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220427BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
H02J7/34 C
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
(21)【出願番号】P 2018008177
(22)【出願日】2018-01-22
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100144440
【氏名又は名称】保坂 一之
(72)【発明者】
【氏名】青根 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】押田 憲幸
【審査官】坂本 聡生
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-112853(JP,A)
【文献】特開2010-159661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00- 7/12
7/34- 7/36
H01M10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛蓄電池を有する蓄電装置を制御する蓄電制御装置であって、
前記鉛蓄電池の電圧ドロップを算出することで、均等充電が終了した後の前記鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定部と、
予め定められた複数の均等充電方法から、
算出された前記電圧ドロップに対応する均等充電方法を選択する選択部と、
選択された前記均等充電方法で前記鉛蓄電池に対して次の均等充電を実行させるための充電指示を前記蓄電装置に向けて送信する指示部と
を備える蓄電制御装置。
【請求項2】
前記電圧ドロップが、前記均等充電が終了した後における放電開始時点での電圧と、前記放電開始時点から所定時間が経過した時点での電圧との差である、
請求項
1に記載の蓄電制御装置。
【請求項3】
前記均等充電方法が、前記鉛蓄電池のセル当たりの設定電圧と、充電時間と、充電頻度とのうちの少なくとも一つを用いて定義される、
請求項1
または2に記載の蓄電制御装置。
【請求項4】
鉛蓄電池を有する蓄電装置を制御する蓄電制御装置により実行される蓄電制御方法であって、
前記鉛蓄電池の電圧ドロップを算出することで、均等充電が終了した後の前記鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定ステップと、
予め定められた複数の均等充電方法から、
算出された前記電圧ドロップに対応する均等充電方法を選択する選択ステップと、
選択された前記均等充電方法で前記鉛蓄電池に対して次の均等充電を実行させるための充電指示を前記蓄電装置に向けて送信する指示ステップと
を含む蓄電制御方法。
【請求項5】
鉛蓄電池を有する蓄電装置を制御する蓄電制御装置としてコンピュータを機能させる蓄電制御プログラムであって、
前記鉛蓄電池の電圧ドロップを算出することで、均等充電が終了した後の前記鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定ステップと、
予め定められた複数の均等充電方法から、
算出された前記電圧ドロップに対応する均等充電方法を選択する選択ステップと、
選択された前記均等充電方法で前記鉛蓄電池に対して次の均等充電を実行させるための充電指示を前記蓄電装置に向けて送信する指示ステップと
を前記コンピュータに実行させる蓄電制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一側面は、蓄電制御装置、蓄電制御方法、および蓄電制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置の充放電を管理する手法が従来から知られている。例えば下記の特許文献1には、自然エネルギ利用システムに用いられる鉛蓄電池の寿命を長くするための手法が記載されている。その鉛蓄電池は、鉛蓄電池の状態を測定する電池状態測定部と、鉛蓄電池の電流、電圧、温度を含む出力ファクタと鉛蓄電池の充電状態の関係を表すSOCモデルと、鉛蓄電池の均等充電を実施する均等充電実施部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充電と放電とを繰り返しながら使用される鉛蓄電池については、充電不足による容量低下を防ぐために一定期間ごとに均等充電が実行される。しかし、この均等充電は鉛蓄電池の状態にかかわらず一律に行われるので、充電の過不足が発生し、その結果、電池の寿命が想定より短くなる可能性がある。そこで、鉛蓄電池の状態に応じて均等充電を実行することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る蓄電制御装置は、鉛蓄電池を有する蓄電装置を制御する蓄電制御装置であって、均等充電が終了した後の鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定部と、予め定められた複数の均等充電方法から、判定された劣化状態に対応する均等充電方法を選択する選択部と、選択された均等充電方法で鉛蓄電池に対して次の均等充電を実行させるための充電指示を蓄電装置に向けて送信する指示部とを備える。
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電制御方法は、鉛蓄電池を有する蓄電装置を制御する蓄電制御装置により実行される蓄電制御方法であって、均等充電が終了した後の鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定ステップと、予め定められた複数の均等充電方法から、判定された劣化状態に対応する均等充電方法を選択する選択ステップと、選択された均等充電方法で鉛蓄電池に対して次の均等充電を実行させるための充電指示を蓄電装置に向けて送信する指示ステップとを含む。
【0007】
本発明の一側面に係る蓄電制御プログラムは、鉛蓄電池を有する蓄電装置を制御する蓄電制御装置としてコンピュータを機能させる蓄電制御プログラムであって、均等充電が終了した後の鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定ステップと、予め定められた複数の均等充電方法から、判定された劣化状態に対応する均等充電方法を選択する選択ステップと、選択された均等充電方法で鉛蓄電池に対して次の均等充電を実行させるための充電指示を蓄電装置に向けて送信する指示ステップとをコンピュータに実行させる。
【0008】
このような側面においては、均等充電について複数の方法が予め用意された上で、鉛蓄電池の劣化状態に対応する均等充電方法で均等充電が実行される。したがって、鉛蓄電池の状態に応じて均等充電を実行することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、鉛蓄電池の状態に応じて均等充電を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】蓄電システムおよびその周辺の構成の一例を模式的に示す図である。
【
図2】実施形態に係る統括コントローラ(蓄電制御装置)の機能構成を示す図である。
【
図3】実施形態に係る統括コントローラ(蓄電制御装置)の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
[蓄電システムの全体構成]
実施形態に係る蓄電制御装置は蓄電システム1の一部として機能する機器である。蓄電システム1は、再生可能エネルギを利用して生成された電気を管理するシステムであり、例えば家庭、オフィス、工場、農場等の様々な場所で利用され得る。
【0013】
蓄電制御装置について説明する前に、蓄電システム1を含む電力システムの全体像を説明する。
図1は、蓄電システム1およびその周辺の構成の一例を模式的に示す図である。蓄電システム1は発電装置2と電力系統4および負荷5との間に設けられる。蓄電システム1および発電装置2を含む直流系統と、電力系統4および負荷5を含む交流系統とは、PCS(パワーコンディショニングシステム)3を介して電気的に接続される。蓄電システム1、発電装置2、およびPCS3は、直流電流が流れるDC(Direct Current)バス6を介して電気的に接続される。電力系統4、負荷5、およびPCS3は、交流電流が流れるAC(Alternating Current)バス7を介して電気的に接続される。発電装置2により生成された電気、または蓄電システム1に蓄えられた電気は負荷5に供給され、場合によっては、電力系統4側に供給されること(例えば、売電)もあり得る。蓄電システム1は、蓄電池をクッションのように利用することで発電装置2から電力系統4または負荷5への電力供給の変動を緩和する役割も担う。
【0014】
発電装置2は、再生可能エネルギを利用して発電を行う装置である。発電方法および発電装置2の種類は何ら限定されない。例えば、発電装置2は太陽光発電装置でもよいし風力発電機でもよい。
【0015】
電力系統4は、発電、変電、送電、および配電を統合した商用電源の設備であり、例えば電力会社により提供される。
【0016】
負荷5は、電力を消費する1以上の機器または装置の集合であり、例えば、1以上の家庭用または業務用の様々な電気機器の集合である。
【0017】
PCS3は、直流の電気を交流に変換する装置であり、電力変換器の一種である。PCS3は、DCバス6に接続するDC端子と、ACバス7に接続するAC端子とを有する。
【0018】
蓄電システム1は、蓄電装置10、電力変換器20、および統括コントローラ30を備える。一つの蓄電装置10には一つの電力変換器20が対応し、これら二つの装置はDCバスを介して電気的に接続する。対応し合う蓄電装置10および電力変換器20の組を蓄電ユニットということもできる。
図1の例では蓄電システム1は3組の蓄電装置10および電力変換器20(3個の蓄電ユニット)を備えるが、その組数は限定されず、1でも2でも4以上でもよい。複数の蓄電ユニットが存在する場合に、蓄電装置10の性能(例えば、定格容量、応答速度など)および電力変換器20の性能(例えば、定格出力、応答速度など)は統一されてもよいし、統一されなくてもよい。統括コントローラ30は、通信線40を介して各蓄電装置10および各電力変換器20と通信可能に接続される。
【0019】
蓄電装置10は、発電装置2により生成された電気を化学エネルギに変えて蓄える装置であり、充放電が可能である。蓄電装置10は、発電装置2によって生成された直流電力の変動を緩和(平準化)するためにも用いられ得る。蓄電装置10は、直列に接続された複数のセルを含んで構成される鉛蓄電池11を備える。鉛蓄電池11を構成するセルの個数は限定されず、例えば200でも288でもよい。蓄電装置10はさらに、バッテリ・コントロール・ユニット(Battery Control Unit:BCU)などの制御機能を含み、この制御機能により、蓄電装置10に関するデータを統括コントローラ30に送信することができる。
【0020】
電力変換器20は、蓄電装置10の充放電を制御する装置である。電力変換器20は、統括コントローラ30から指示信号(データ信号)を受信し、その指示信号に基づいて蓄電装置10の充放電を制御する。電力変換器20は、充電モードでは、発電装置2から流れてきた電気を蓄電装置10に蓄え、放電モードでは、蓄電装置10を放電させて外部に電力を供給し、停止状態では充放電を行わない。電力変換器20は、例えばDC/DCコンバータであり得る。
【0021】
[統括コントローラの構成]
統括コントローラ30は電力変換器20および蓄電装置10を制御するコンピュータ(例えばマイクロコンピュータ)である。
図2は、統括コントローラ30の機能構成を示す図である。この図に示すように、統括コントローラ30はハードウェア装置としてプロセッサ101、メモリ102、および通信インタフェース103を備える。プロセッサ101は例えばCPUであり、メモリ102は例えばフラッシュメモリで構成されるが、統括コントローラ30を構成するハードウェア装置の種類はこれらに限定されず、任意に選択されてよい。統括コントローラ30の各機能は、プロセッサ101が、メモリ102に格納されているプログラムを実行することで実現される。例えば、プロセッサ101は、メモリ102から読み出したデータまたは通信インタフェース103を介して受信したデータに対して所定の演算を実行し、その演算結果を他の装置に出力することで、該他の装置を制御する。あるいは、プロセッサ101は受信したデータまたは演算結果をメモリ102に格納する。統括コントローラ30は1台のコンピュータで構成されてもよいし、複数のコンピュータの集合(すなわち分散システム)で構成されてもよい。
【0022】
蓄電システム1の特徴の一つは均等充電の制御にあり、この特徴は特に統括コントローラ30により実現される。本実施形態では、本発明に係る蓄電制御装置を統括コントローラ30に適用する。以下では、均等充電に関する統括コントローラ30の機能および構成を説明する。均等充電とは、一つの鉛蓄電池11を構成する複数のセル間で電圧を一定にするための充電である。鉛蓄電池11の個々のセル間で電圧のばらつきが生じると、電位差よる循環電流が発生してセルに悪影響を及ぼし得る。均等充電は、このようなセル間の電圧のばらつきを解消して電池の品質をリセットする処理である。
【0023】
プロセッサ101は取得部31、判定部32、選択部33、および指示部34として機能する。取得部31は、鉛蓄電池11に関するデータを取得する機能要素である。判定部32は、そのデータに基づいて蓄電装置10内の鉛蓄電池11の劣化状態(States Of Health:SOH)を判定する機能要素である。劣化状態とは、鉛蓄電池11の性能が初期状態(製造時の状態)からどのくらい低下したかを示す概念である。鉛蓄電池11の劣化の典型は、電極に発生する非伝導性の結晶(サルフェーション)により電池内の内部抵抗が増加して鉛蓄電池11の容量が減少することである。選択部33は、判定された劣化状態に基づいて、予め定められた複数の均等充電方法の中から一つの均等充電方法を選択する機能要素である。指示部34は、選択された均等充電方法に基づく充電指示を蓄電装置10に向けて送信する機能要素である。充電指示は、蓄電装置10に鉛蓄電池11の均等充電を実行させるためのデータ信号である。このように、プロセッサ101は蓄電装置10の鉛蓄電池11の劣化状態に合った方法でその鉛蓄電池11に対して均等充電を実行する。
【0024】
メモリ102はプロセッサ101の動作に必要な情報を記憶する。例えば、メモリ102は選択規則35を記憶する。選択規則35は複数の均等充電方法を定義する情報であり、個々の均等充電方法は、鉛蓄電池11の想定される劣化状態と対応付けられる。したがって、選択規則35は、予め用意された複数の均等充電方法の中から、判定された劣化状態に対応する一つの均等充電方法を選択するための規則である。選択規則35の記述方法は限定されない。例えば、選択規則35は数式、アルゴリズム、および対応表のいずれかで表されてもよいし、数式、アルゴリズム、および対応表のうちの任意の2以上の組合せで表されてもよい。あるいは、選択規則35は、プロセッサ101により実行されるプログラムの一部であってもよい。
【0025】
選択規則35は書き換え可能であってもよい。例えば、蓄電装置10または鉛蓄電池11が別の型のものに交換されたり新しい型の蓄電装置10または鉛蓄電池11が追加されたりした場合には、管理者がその構成の変更に応じてメモリ102内の選択規則35を書き換える。この場合、管理者は所定の通信ネットワーク(図示せず)を介して管理用のコンピュータ(図示せず)で統括コントローラ30にアクセスし、構成の変更を反映した新たな選択規則35を統括コントローラ30に転送してもよい。この転送により、メモリ102内の選択規則35が書き換えられる。
【0026】
通信インタフェース103はプロセッサ101と連携してデータの送受信を実行する。例えば、通信インタフェース103は取得部31と連携して、充放電の制御に必要な入力データを受信する。また、通信インタフェース103は指示部34と連携して電力変換器20に充電指示を送信する。
【0027】
[統括コントローラの動作]
図3および
図4を参照しながら、統括コントローラ30の動作を説明するとともに本実施形態に係る蓄電制御方法について説明する。
図3は統括コントローラ30の動作の例を示すフローチャートであり、具体的には、一つの蓄電装置10に対して均等充電を実行する処理を示す。
図4は選択規則35の例を示す図である。
【0028】
ステップS11において蓄電装置10に対する前回の均等充電が終了した後に、次の均等充電のための処理(ステップS12以降の処理)が実行される。次の均等充電のための処理が実行されるタイミングは限定されず、例えば、予め定められた日時に実行されてもよいし、蓄電装置10が放電を開始した時に開始されてもよい。
【0029】
ステップS12では、取得部31が放電開始時点の鉛蓄電池11の電圧Vaを取得する。ステップS13では、取得部31が、放電開始から予め定められた時間T(秒)が経過した時点での鉛蓄電池11の電圧Vbを取得する。電圧Vbは、蓄電装置10がそのT秒間放電を実行し続けた時点での電圧である。取得部31は蓄電装置10または該蓄電装置10に対応する電力変換器20から通信線40経由でデータを受信することで電圧を取得する。二つの電圧Va,Vbは鉛蓄電池11の劣化状態を判定するために用いられる。ステップS12,S13における放電は、劣化状態を判定するために意図的に実行されてもよい。この場合には、指示部34が蓄電装置10をT秒間放電させるための放電指示を生成してその放電指示を蓄電装置10に向けて送信する。そして、取得部31がその送信に応じて放電を開始した蓄電装置10(または、蓄電装置10に対応する電力変換器20)から電圧Va,Vbを取得する。あるいは、ステップS12,S13における放電は、電力系統4または負荷5への電力供給のための放電であってもよい。この場合には、取得部31はこの放電の機会を利用して、その放電が開始された時点での電圧Vaと、その時点からT秒経過後の電圧Vbとを蓄電装置10から取得する。
【0030】
ステップS14では、判定部32が、均等充電が終了した後の(すなわち、ステップS11の後の)鉛蓄電池11の劣化状態を判定する(判定ステップ)。本実施形態では、判定部32は電圧Va,Vbの差分である電圧ドロップを計算し、この計算結果を鉛蓄電池11の劣化状態として得る。
【0031】
ステップS15では、選択部33が選択規則35を参照して、複数の均等充電方法の中から、判定された劣化状態に対応する一つの均等充電方法を選択する(選択ステップ)。本実施形態では、選択部33は算出された電圧ドロップに対応する一つの均等充電方法を選択する。
【0032】
例えば、メモリ102が
図4に示す選択規則35を記憶しているとする。
図4の例では、選択規則35は第1の方法と第2の方法という二つの均等充電方法を定義しており、それぞれの均等充電方法は、電圧ドロップと、充電時の設定電圧(鉛蓄電池11のセル当たりの設定電圧)との対応を示す。第1の方法は、電圧ドロップが閾値Td以上であれば設定電圧2.50V/セルで均等充電を行うことを意味する。第2の方法は、電圧ドロップが閾値Td未満であれば設定電圧2.42V/セルで均等充電を行うことを意味する。閾値Tdは鉛蓄電池11の性能等に応じて任意の基準で設定される。電圧ドロップが相対的に大きい場合には、鉛蓄電池11の劣化が進んでいるので鉛蓄電池11に電気が入りにくい。そのため、第1の方法では、充電の設定電圧を高くすることで鉛蓄電池11に電気が入り易くなるようにしている。これに対して、電圧ドロップが相対的に小さい場合には、鉛蓄電池11の劣化は進んでいないので鉛蓄電池11に電気が入り易い。そのため、第2の方法では、過充電が起こらないように設定電圧を低くしている。選択規則35が
図4に示す例である場合には、選択部33は算出された電圧ドロップと閾値Tdとを比較し、その比較結果に従って、二つの均等充電方法のうちの一方を選択する。
【0033】
均等充電方法は設定電圧以外のパラメータを用いて定義されてもよい。例えば、均等充電方法は充電時間を用いて定義されてもよいし、充電頻度を用いて定義されてもよい。充電時間は、一回の均等充電における鉛蓄電池11の充電の実行時間である。充電頻度は、単位時間(例えば一週間)における均等充電の実行回数である。例えば、選択規則35は、電圧ドロップが閾値Td以上であれば充電時間がTaであり、電圧ドロップが閾値Td未満であれば充電時間がTb(ただし、Tb<Ta)であると定義されてもよい。あるいは、選択規則35は、電圧ドロップが閾値Td以上であれば充電頻度が2回/週であり、電圧ドロップが閾値Td未満であれば充電頻度が1回/週であると定義されてもよい。あるいは、均等充電方法は、設定電圧、充電時間、および充電頻度のうちの任意の2種類以上のパラメータの組合せにより定義されてもよい。予め設定される均等充電方法の個数は3以上でもよい。
【0034】
ステップS16では、指示部34が、選択された均等充電方法に基づく充電指示を生成し、蓄電装置10に向けてその充電指示を送信する(指示ステップ)。「蓄電装置に向けて充電指示を送信する」とは、均等充電を実行するために、該蓄電装置10に、または該蓄電装置10に対応する他の装置に、充電指示を送信することをいう。本実施形態では、指示部34は、蓄電装置10に対応する電力変換器20に通信線40を介して充電指示を送信する。充電指示は、電力変換器20のIPアドレスと、選択された均等充電方法に基づくデータとを含む。例えば、選択された均等充電方法が
図4に示す第1の方法であれば、充電指示は設定電圧2.50V/セルを示すデータを含む。
【0035】
ステップS17では、充電指示を受信した電力変換器20が充電モードに遷移し、充電指示に従って蓄電装置10に対して均等充電を実行する。この結果、鉛蓄電池11の個々のセル間での電圧のばらつきが解消される。
【0036】
蓄電システム1が複数の蓄電装置10を備える場合には、統括コントローラ30はすべての蓄電装置10についてステップS11~S17の処理を実行する。一つの蓄電装置10について、ステップS11~S17の処理は繰り返し(例えば定期的に)実行される。
【0037】
[プログラム]
コンピュータを統括コントローラ30として機能させるための蓄電制御プログラムは、該コンピュータを取得部31、判定部32、選択部33、および指示部34として機能させるためのプログラムコードを含む。この蓄電制御プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、蓄電制御プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。提供された蓄電制御プログラムは例えばメモリ102に記憶される。プロセッサ101がメモリ102と協働してその蓄電制御プログラムを実行することで、上記の各機能要素が実現する。
【0038】
[効果]
以上説明したように、本発明の一側面に係る蓄電制御装置は、鉛蓄電池を有する蓄電装置を制御する蓄電制御装置であって、均等充電が終了した後の鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定部と、予め定められた複数の均等充電方法から、判定された劣化状態に対応する均等充電方法を選択する選択部と、選択された均等充電方法で鉛蓄電池に対して次の均等充電を実行させるための充電指示を蓄電装置に向けて送信する指示部とを備える。
【0039】
本発明の一側面に係る蓄電制御方法は、鉛蓄電池を有する蓄電装置を制御する蓄電制御装置により実行される蓄電制御方法であって、均等充電が終了した後の鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定ステップと、予め定められた複数の均等充電方法から、判定された劣化状態に対応する均等充電方法を選択する選択ステップと、選択された均等充電方法で鉛蓄電池に対して次の均等充電を実行させるための充電指示を蓄電装置に向けて送信する指示ステップとを含む。
【0040】
本発明の一側面に係る蓄電制御プログラムは、鉛蓄電池を有する蓄電装置を制御する蓄電制御装置としてコンピュータを機能させる蓄電制御プログラムであって、均等充電が終了した後の鉛蓄電池の劣化状態を判定する判定ステップと、予め定められた複数の均等充電方法から、判定された劣化状態に対応する均等充電方法を選択する選択ステップと、選択された均等充電方法で鉛蓄電池に対して次の均等充電を実行させるための充電指示を蓄電装置に向けて送信する指示ステップとをコンピュータに実行させる。
【0041】
このような側面においては、均等充電について複数の方法が予め用意された上で、鉛蓄電池の劣化状態に対応する最適な均等充電方法で均等充電が実行される。したがって、鉛蓄電池の状態に応じて均等充電を実行することができる。
【0042】
他の側面に係る蓄電制御装置では、判定部が、鉛蓄電池の電圧ドロップを算出することで劣化状態を判定し、選択部が、算出された電圧ドロップに対応する均等充電方法を選択してもよい。電圧ドロップは、鉛蓄電池に特有の性能低下要因であるサルフェーションの発生を反映する。したがって、この電圧ドロップに基づいて均等充電方法を選択することで、鉛蓄電池の状態に応じて最適な均等充電を実行することができる。
【0043】
他の側面に係る蓄電制御装置では、電圧ドロップが、均等充電が終了した後における放電開始時点での電圧と、放電開始時点から所定時間が経過した時点での電圧との差であってもよい。前回の均等充電後の放電による電圧の低下に基づいて均等充電方法を選択することで、鉛蓄電池の最新の状態に応じて最適な均等充電を実行することができる。
【0044】
他の側面に係る蓄電制御装置では、均等充電方法が、鉛蓄電池のセル当たりの設定電圧と、充電時間と、充電頻度とのうちの少なくとも一つを用いて定義されてもよい。これらのようなパラメータを用いることで、最適な均等充電を実行することができる。
【0045】
[変形例]
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0046】
少なくとも一つのプロセッサにより実行される蓄電制御方法の処理手順は上記実施形態での例に限定されない。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正又は削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【0047】
蓄電システム1内で二つの数値の大小関係を比較する際には、「以上」および「よりも大きい」という二つの基準のどちらを用いてもよく、「以下」および「未満」の二つの基準のうちのどちらを用いてもよい。このような基準の選択は、二つの数値の大小関係を比較する処理についての技術的意義を変更するものではない。
【符号の説明】
【0048】
1…蓄電システム、2…発電装置、3…PCS、4…電力系統、5…負荷、6…DCバス、7…ACバス、10…蓄電装置、11…鉛蓄電池、20…電力変換器、30…統括コントローラ(蓄電制御装置)、31…取得部、32…判定部、33…選択部、34…指示部、35…選択規則、40…通信線。