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  • 特許-歯間清掃具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】歯間清掃具
(51)【国際特許分類】
   A61C 15/04 20060101AFI20220427BHJP
【FI】
A61C15/04 502
A61C15/04 501
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2015184507
(22)【出願日】2015-09-17
(65)【公開番号】P2017056063
(43)【公開日】2017-03-23
【審査請求日】2018-08-07
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】泉 義幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 晋吾
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】千壽 哲郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-47251(JP,A)
【文献】特開2010-99268(JP,A)
【文献】特開2007-215703(JP,A)
【文献】特開平10-80437(JP,A)
【文献】特開2011-245310(JP,A)
【文献】特開2007-7061(JP,A)
【文献】特表2001-503664(JP,A)
【文献】登録実用新案第3199137(JP,U)
【文献】特開2000-197647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔をおいて配置され、樹脂材料で形成された一対の支持片と、
前記一対の支持片を連結し、手で把持可能なハンドル部と、
前記一対の支持片の間で延び、撚られずに束ねられた複数のマルチフィラメントを有する線材と、
を備え、
前記各支持片は、互いに対向する側の第1面と、当該第1面とは反対側の第2面と、を有し、
前記線材の両端部は、それぞれ、前記各支持片を前記第1面と第2面との間で貫通し、
前記線材における前記複数のマルチフィラメントの両端部は、それぞれ、前記第2面側において、溶着によって一体化された塊を有している、歯間清掃具。
【請求項2】
すべての前記マルチフィラメントの両端部は、それぞれ、前記第2面側において、溶着によって一体化された塊を有している、請求項1に記載の歯間清掃具。
【請求項3】
前記各支持片の第2面には、凹部が形成され、
前記線材の両端部における前記塊の少なくとも一部は、前記凹部に配置されている、請求項1または2に記載の歯間清掃具。
【請求項4】
前記各マルチフィラメントは、ポリエチレンにより形成されている、請求項1から3のいずれかに記載の歯間清掃具。
【請求項5】
前記マルチフィラメントの数が、3~7本である、請求項1から4のいずれかに記載の歯間清掃具。
【請求項6】
前記各支持片において前記線材が通過する箇所の肉厚が、他の箇所よりも薄く形成されている、請求項1から5のいずれかに記載の歯間清掃具。
【請求項7】
所定間隔をおいて配置される一対の支持片であって、互いに対向する側の第1面と、当該第1面とは反対側の第2面と、を有する一対の支持片、及び前記一対の支持片を連結し、手で把持可能なハンドル部を備える清掃具本体に対応するキャビティが形成された成形型を準備するステップと、
前記成形型において、前記一対の支持片と対応するキャビティの間で延びるように、撚られずに束ねられた複数のマルチフィラメントを有する線材を配置するステップと、
前記キャビティに樹脂材料を充填するステップと、
前記成形型から成形された清掃具本体と線材とを取り出すステップと、
前記清掃具本体において、前記各支持片の第2面側で前記線材を熱を伴って切断することで、複数の前記マルチフィラメントの両端部に、それぞれ、前記第2面側において、溶着によって一体化された塊を形成するステップと、
を備えている、歯間清掃具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯間清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
歯の間に詰まった歯垢を除去する歯間清掃具としては、従来、種々のものが提案されている。例えば、特許文献1には、一対の支持片と、これら支持片の間で延びる1本の線材(フロス)と、両支持片を連結し手で把持可能なハンドル部と、を有する歯間清掃具が開示されている。
【0003】
上記特許文献1の歯間清掃具では、支持片から線材が離脱しないように、次のように構成されている。まず、各支持片は、互いに対向する第1面と、それとは反対側の第2面を有し、線材は、第1面から第2面へと貫通している。そして、第2面から突出した線材の端部には、塊が形成されており、この塊が抜け止めとなって線材の支持片からの離脱を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3186430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、線材は歯間において歯を擦るように上下左右に移動されるため、大きい力が作用する。そのため、線材を構成する材料によっては、依然として線材が支持片から離脱するおそれがあり、線材が支持片から確実に離脱しない歯間清掃具が要望されていた。本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、線材が支持片から離脱するのを確実に防止できる、歯間清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歯間清掃具は、所定間隔をおいて配置される一対の支持片と、前記一対の支持片を連結し、手で把持可能なハンドル部と、前記一対の支持片の間で延び、束ねられた複数のマルチフィラメントを有する線材と、を備え、前記各支持片は、互いに対向する側の第1面と、当該第1面とは反対側の第2面と、を有し、前記線材の両端部は、それぞれ、前記各支持片を前記第1面と第2面との間で貫通し、前記線材における複数のマルチフィラメントのうち、2以上の前記マルチフィラメントの両端部は、それぞれ、前記第2面側において、溶着によって一体化された塊を有している。
【0007】
この構成によれば、複数のマルチフィラメントのうち、2以上のマルチフィラメントの両端部が、それぞれ、支持片の第2面側において、溶着によって一体化されている。そのため、この一体化された部分が、塊となって抜け止めとなり、マルチフィラメントが支持片から離脱するのを防止することができる。このように、複数のマルチフィラメントを溶融して塊を形成することで、例えば、1本のフィラメントを溶融して塊を形成するのに比べ、複数のマルチフィラメントの端部同士が連結され、また、大きい塊を形成することができるため、抜け止め効果を向上することができる。また、2以上のマルチフィラメントの端部を溶融して塊を形成した場合、当該2以上のマルチフィラメントを構成するモノフィラメントの合計数と同数のモノフィラメントからなる1本のマルチフィラメントの端部を溶融して塊を形成した場合に比べて、抜け止め効果を向上することができる。
【0008】
特に、すべてのマルチフィラメントの両端部を、それぞれ、溶融して一体化し塊を形成すると、抜け止め効果がさらに向上し、マルチフィラメントの離脱をより確実に防止することができ、当該すべてのマルチフィラメントを構成するモノフィラメントの合計数と同数のモノフィラメントからなる1本のマルチフィラメントの端部を溶融して塊を形成した場合に比べて、抜け止め効果を向上することができる。
【0009】
上記歯間清掃具においては、前記各支持片の第2面に、凹部を形成し、前記線材の両端部の塊の少なくとも一部を、前記凹部に配置することができる。
【0010】
この構成によれば、マルチフィラメントが一体化されている塊の少なくとも一部が、凹部に配置されているため、一体化された部分が支持片から外部に突出するのを防止することができる。したがって、塊が視認しがたくなり、歯間清掃具の外観性状を向上することができる。また、当該構成によれば、溶着した両端部の塊が、口腔内にあたり、口腔内を傷つけたり、不快に感じたりすることを防ぐことができる。
【0011】
上記歯間清掃具において、前記各マルチフィラメントは、ポリエチレンにより形成することができる。ポリエチレンは、一般的に摩擦抵抗が小さいため、歯間で滑りやすく、歯垢を掻き取りやすいという利点がある。
【0012】
上記歯間清掃具において、前記マルチフィラメントの数は、例えば、3~7本とすることができる。マルチフィラメントの数を3以上にすると、上述した一体化により離脱防止効果が向上し、歯垢の掻き取り効果も向上する一方、7本以下にすると、ユーザの歯間に入りやすくなり、操作性が高まり、結果として歯垢の掻き取り効果を向上することができる。
【0013】
上記歯間清掃具において、前記支持片及びハンドル部は、ポリスチレンにより形成することができる。ポリスチレンは、一般的に硬い樹脂であるため、両支持片の間で線材を張るのに適している。
【0014】
上記歯間清掃具において、前記各マルチフィラメントは、100~250デニールとすることができる。これは、100デニールよりも小さいと、支持片から離脱するおそれがあり、250デニールよりも大きいと歯間に挿入されがたいという問題があることによる。
【0015】
本発明に係る歯間清掃具の製造方法は、
所定間隔をおいて配置される一対の支持片と、前記一対の支持片を連結し、手で把持可能なハンドル部と、を有する清掃具本体を射出成形する成形型を準備するステップと、
前記成形型の前記一対の支持片に対応するキャビティの間で延びるように、束ねられた複数のマルチフィラメントを有する線材を配置するステップと、
前記成形型に樹脂を注入し、前記線材が前記支持片を貫通するように当該支持片と一体化しつつ、前記清掃具本体の成形を行うステップと、
前記成形型から、前記線材と一体化された前記清掃具本体を取り出すステップと、
前記各支持片において、互いに対向する面とは反対側の面側から突出する前記線材を溶融し、前記複数のマルチフィラメントの両端部を一体化した塊を形成するステップと、
を備えている。
【0016】
上記製造方法では、前記各支持片において、前記線材が通過する箇所の肉厚を、他の箇所の肉厚よりも小さくすることができる
【0017】
上記各製造方法では、前記成形型において前記樹脂を注入するゲートが、前記ハンドル部において、前記支持片から離れた端部側に設けることができる。
【0018】
上記各製造方法では、前記支持片の先端から1~4mmの範囲内に、前記線材を配置することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る歯間清掃具によれば、線材が支持片から離脱するのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る歯間清掃具の平面図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3図1の歯間清掃具を製造する成形型の概略を示す図である。
図4図1の歯間清掃具の製造方法の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る歯間清掃具の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る歯間清掃具の平面図、図2図1のA-A線断面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1の図面内での方向を基準に説明を行う。また、ハンドル部については、図1の左側を先端側、右側を後端側と称することがある。但し、本発明はこの方向の規定により発明が限定されるものではない。
【0022】
<1.歯間清掃具の概要>
図1に示すように、この歯間清掃具は、棒状に延びるハンドル部1を備えており、このハンドル部1から一対の支持片21、22が所定間隔をおいて突出している。ここでは、ハンドル部1の端部から突出する支持片を第1支持片21と称し、これと平行に延びる支持片を第2支持片22と称する。両支持片21,22の間には、歯間に挿入され歯垢を除去するための線材3が配置され、ハンドル部1と平行に配置されている。そして、線材3の両端部は、各支持片21,22にそれぞれ連結されている。以下、各部材について詳細に説明する。
【0023】
<2.ハンドル部及び支持片>
支持片21、22及びハンドル部1は、種々の材料で形成することができるが、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料で形成することができる。このなかで、一般的に、ポリスチレンは硬いため、両支持片21、22の間で線材を張るのに適している。
【0024】
各支持片21、22は板状に形成されており、各支持片21、22の表面の名称について、以下では、図1の紙面の手前を前面211,221、紙面の奥側を後面212,222、図1の右側を右面213(第1面),223(第2面)、左側を左面214(第2面),224(第1面)と称することとする。そして、図2に示すように、各支持片21,22の前面211,221及び後面212,222には、平面視矩形状の凹部215,216,225,226が形成されており、他の箇所よりも肉厚が小さくなっている。そして、各支持片において、このような凹部が形成されている箇所を、上述した線材が通過している。また、各支持片21,22において、線材3が通過する箇所は、各支持片21,22の先端付近、つまり先端からの距離Lが4mm以内が好ましく、3.2mm以内がさらに好ましい。線材3が通過する箇所をこのような範囲とすることで、例えば、ハンドル部1用の樹脂が、ハンドル部1側から射出された場合、各支持片21、22の先端付近に樹脂が到達する際に、樹脂の温度を低くすることができるため、高温の樹脂により線材3が溶融して切断されてしまうという問題を防止することができる。なお、距離Lの下限は、通常1mm程度である。
【0025】
また、第1支持片21の左面214及び第2支持片22の右面223には、線材3の端部が配置される小さい凹部(図示省略)がそれぞれ形成されており、これら凹部が形成されている箇所から線材3の端部が突出している。
【0026】
<3.線材>
次に、線材3について説明する。線材3は、複数のマルチフィラメント31を束ねたものである。各マルチフィラメント31は、種々の樹脂材料により形成された複数のモノフィラメントを撚ったものであり、例えば、ポリエチレン、ナイロン、テフロン(登録商標)、ビニロン、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの熱可塑性合成樹脂で形成することができる。このなかで、特に、ポリエチレンは、摩擦係数が小さいため、歯間を滑りやすく、歯垢を掻き取りやすいという利点がある。また、ハンドル部1の材料が、ポリスチレンであり、且つ線材3の材料がポリエチレンである場合、歯間清掃具の使用時に線材3が抜けやすくなるが、本発明によれば、抜け止め効果が十分に得られる。なお、前記マルチフィラメント31は、モノフィラメントを撚らずに束にしたものであってもよい。
【0027】
各マルチフィラメント31の太さは、特には限定されないが、例えば、100~250デニールとすることが好ましく、100~160デニールであることがさらに好ましい。これは、100デニールよりも小さいと、支持片から離脱するおそれがあり、250デニールよりも大きいと歯間に挿入されがたいという問題があることによる。
【0028】
また、線材3を構成するマルチフィラメント31の数は、特には限定されないが、例えば、3~7本にすることが好ましく、3~5本にすることがさらに好ましい。マルチフィラメント31の数を3本以上にすると、後述するように、複数のマルチフィラメント31を一体化したことによる離脱防止効果が向上し、歯垢の掻き取り効果も向上する一方、7本以下にすると、歯間に入りやすくなり、操作性を向上させ、結果として歯垢の掻き取り効果を向上することができる。
【0029】
<4.線材と支持片の連結>
続いて、線材3と支持片21、22との連結方法について説明する。線材3の両端部は、各支持片21、22を貫通している。具体的に説明すると、線材3の左端部は、第1支持片21の右面213を通過し、左面214から突出しており、突出した線材3のマルチフィラメント31が互いに熱溶着されて一体化し、塊32を形成している。同様に、線材3の右端部は、第2支持片22の左面224を通過し、右面223から突出しており、突出した線材3のマルチフィラメント31が互いに熱溶着されて一体化し、塊32を形成している。これらの塊32は、束ねられたマルチフィラメントの外径よりも大きくなっている。
【0030】
<5.歯間清掃具の製造方法>
次に、上記のように構成された歯間清掃具の製造方法について、図3及び図4を参照しつつ説明する。以下では、説明の便宜上、歯間清掃具のうち、線材3以外の支持片21、22とハンドル部1とで構成された部分を、清掃具本体10と称することとする。
【0031】
まず、図3に示すような射出成形用の成形型100を準備する。この成形型100には、複数の清掃具本体を形成するため、複数のキャビティ101が設けられている。この成形型において、樹脂を注入するためのゲート102は、ハンドル部1の後端部付近に設けられている。そして、射出成形を行う際には、成形型に線材3を配置する。このとき、線材3は、複数のキャビティ101に亘って、各キャビティ101の両支持片21、22に対応する部分の間で延びるように配置される。
【0032】
次に、キャビティ101に清掃具本体用の樹脂を注入する。上記のように樹脂が注入されるゲート102は、ハンドル部1の後端部付近に設けられているため、注入された樹脂は、ゲート102から離れた支持片21、22の先端付近に到達するときには、成形型100によって冷やされ、ゲート102に注入されたときよりも温度が十分に低下している。そのため、清掃具本体用の樹脂の温度によって線材3が溶融するのを防止することができる。すなわち、線材3の材質によっては、高温の樹脂によって溶融し、切断されるおそれがあるが、上記のようにゲート102を支持片21、22から離し、さらに線材3を支持片21、22の先端付近に配置することで、線材3の溶融を防止することができる。
【0033】
また、各支持片21、22において、線材3が通過する箇所(各支持片212、22における、各凹部(215,216,225,226)が位置する箇所)の肉厚は、他の箇所の肉厚よりも薄いため、この箇所を通過する、清掃具本体用の樹脂が、成形型によって冷されやすくなる。これによっても、線材3が樹脂によって溶融するのを防止することができる。
【0034】
例えば、線材3をポリエチレンなどの融点が低い樹脂で形成した場合には、高温状態の、清掃具本体用の樹脂により線材が溶融し切断されすいが、上記のようにゲート102の位置を調整することや、各支持片21、22の線材3が通過する箇所に凹部215,216,225,226を設けることなどで、線材3の切断を防止することができる。一方、清掃具本体10を構成する樹脂を、例えば、高温にしなければ流動性を保つことができないポリスチレンなどにする場合にも、線材が溶融し切断されやすいという問題が生じ得るが、この点も上記各構成により、防止することができる。
【0035】
こうして、樹脂の注入が完了すると、所定時間経過後に、成形型100から複数の清掃具本体10を取り出す。このとき、各清掃具本体10においては、線材3が両支持片21、22に埋め込まれた状態で一体化されている。また、複数の清掃具本体10は、1の線材3によって連結された状態となっている。そのため、次の工程として、図4に示すように、各清掃具本体10の第1支持片21の左面214側、及び第2支持片22の右面223側において、線材3を焼き切る。線材3を焼き切る手段50は、特には限定されないが、例えば、火炎や加熱した刃物で焼き切ったり、遠赤外線などの熱光線の照射、あるいは電気放電によって焼き切ったりすることができる。これにより、線材3と清掃具本体10とが熱溶着され一体化された複数の歯間清掃具が形成される。
【0036】
このように、線材3が焼き切られると、熱によって線材3を構成する複数のマルチフィラメント31が溶融し、一体化することで塊32が形成される。
【0037】
<6.特徴>
以上のように、本実施形態によれば、支持片21、22から突出した線材3の両端部において、複数のマルチフィラメント31が熱溶着によって一体化されている。そのため、この一体化された部分が、塊32となって抜け止めとなり、線材3が支持片21、22から離脱するのを防止することができる。このように、複数のマルチフィラメント31を溶融して塊を形成することで、例えば、1本のフィラメントを溶融して塊を形成するのに比べ、複数のマルチフィラメントの端部同士が連結され、また、大きい塊32を形成することができるため、抜け止め効果をさらに向上することができる。また、2以上のマルチフィラメント31の端部を溶融して塊32を形成した場合、当該2以上のマルチフィラメント31を構成するモノフィラメントの合計数と同数のモノフィラメントからなる1本のマルチフィラメント32の端部を溶融して塊を形成した場合に比べて、抜け止め効果を向上することができる。つまり、線材3を構成するモノフィラメントの本数を増加させ、掻き取り効果などを向上させようとする場合、一本のマルチフィラメントとする場合に比べて、2本以上のマルチフィラメントとした方が、抜け止め効果を向上させることができる。
【0038】
また、ポリエチレンのように融点が高くない樹脂を線材3として使用する場合、清掃具本体10用の樹脂を高温で射出すると、当該樹脂の温度によって溶融する可能性がある。よって、清掃具本体10用の樹脂の温度を高温にし過ぎないことが必要である。その一方で、射出時の樹脂の温度が低い場合、樹脂の流動性が十分に確保できないため、線材3のマルチフィラメント31間やモノフィラメント間の細部に清掃具本体10用の樹脂が十分に行き渡らず、使用時に線材3が抜けやすくなってしまうという問題が生じる。しかしながら、本発明によると、マルチフィラメント31やモノフィラメントが支持片21,22を構成する樹脂と十分に絡み合っていない場合でも、上述した塊32が形成されるため、線材3の抜け止め効果が十分に発揮される。このように、線材3のマルチフィラメント31の樹脂材料がポリエチレンである場合、本発明の効果が特に顕著に発揮されるため、好ましい。
【0039】
また、歯間への挿入性を向上させるには、マルチフィラメント31の太さを100~160デニールとすることが好ましいが、通常、マルチフィラメント31の太さを小さくした場合、抜け止め効果が低減されてしまう。しかしながら、本発明によると、このような場合であっても、上述した塊32が形成されるため、抜け止め効果が十分に発揮され、歯間への挿入性に優れ、且つ抜け止め効果にも優れた歯間清掃具とすることができる。
【0040】
<7.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。なお、以下の変形例は、適宜組合せ可能である。
【0041】
例えば、上記実施形態では、ハンドル部1を両支持片21、22と直角に延びるように連結しているが、手で把持できるのであれば、ハンドル部1の構成は特には限定されない。例えば、両支持片21、22の端部を連結し、両支持片21、22とは反対側に延びるような形状、つまり清掃具本体10を全体としてY字状に形成することもできる。
【0042】
上記実施形態では、線材3の両端部において、すべてのマルチフィラメント31を熱溶着し、一体化しているが、これに限定されない。例えば、すべてのマルチフィラメント31のうち、2以上のマルチフィラメント31同士が熱溶着により一体化していればよい。すなわち、熱溶着された塊32が複数存在するようにマルチフィラメント31同士が熱溶着されていればよい。熱による溶着以外に、化学的に溶着を行ったり、超音波により溶着させたりするなど、種々の溶着を行うことも可能である。
【0043】
また、上記実施形態では、各支持片21、22の線材3が通過する箇所に凹部215,216,225,226を設けることで、線材3の切断を防止することができるものであるが、これらのような凹部とせずに、前記線材3が通過する箇所から各支持片21、22の端部に至るまでの肉厚を、他の箇所の肉厚よりも小さくすることで、線材3の切断を防止することもできる。
【0044】
線材3は、複数のマルチフィラメント31を単に束ねただけであってもよいし、撚っていてもよい。
【0045】
また、線材3には、清涼剤、粉末香味成分、虫歯の予防又は治療剤などの薬剤を塗布することができる。また、このような薬剤は、液体状態で線材3に保持されるほか、常温(例えば25℃)において乾燥状態で固着させておくこともできる。
【符号の説明】
【0046】
1 ハンドル部
21,22 支持片
3 線材
31 マルチフィラメント
32 塊
図1
図2
図3
図4