(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、その溶液、粘着剤層および表面保護フィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 175/14 20060101AFI20220428BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20220428BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220428BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220428BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220428BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
C09J175/14
C09J4/02
C09J11/06
C09J7/38
B32B27/00 M
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2017239443
(22)【出願日】2017-12-14
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 利行
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 達弘
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-522063(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092971(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/175112(WO,A1)
【文献】特表2011-508814(JP,A)
【文献】特開2007-238766(JP,A)
【文献】特開2014-130853(JP,A)
【文献】特開2007-302846(JP,A)
【文献】特開2007-112903(JP,A)
【文献】特開2014-44427(JP,A)
【文献】特開2015-89926(JP,A)
【文献】特開2014-88010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
7/00- 7/50
9/00-201/10
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)と、多官能(メタ)アクリレート(B)と、熱ラジカル開始剤(C)と、架橋剤(D)と、光ラジカル開始剤(E)と、を含有
し、
前記水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)は、(メタ)アクリロイル基を有する、
粘着剤組成物。
【請求項2】
前記水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対する前記熱ラジカル開始剤(C)の含有量が0.01質量部以上、20質量部以下である、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対する前記多官能(メタ)アクリレート(B)の含有量が5質量部以上、500質量部以下である、請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記多官能(メタ)アクリレート(B)は、水酸基価が5mgKOH/g以上である、請求項1から3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記熱ラジカル開始剤(C)は、過酸化物である、請求項1から4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記架橋剤(D)はイソシアネート基を有する化合物を含み、前記水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)の水酸基総量に対する前記イソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基総量との当量比(NCO(モル)/OH(モル))が、0.5以上20以下である、請求項1から5のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対する前記光ラジカル開始剤(E)の含有量が0.01質量部以上、10質量部以下である、請求項1から
6のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
帯電防止剤(F)をさらに含有する、請求項1から
7のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)100質量部に対する前記帯電防止剤(F)の含有量が0.5質量部以上、30質量部以下である、請求項
8に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか1項に記載の粘着剤組成物と、溶剤とを含む、粘着剤組成物溶液。
【請求項11】
請求項1から
9のいずれか1項に記載の粘着剤組成物から形成される、粘着剤層。
【請求項12】
樹脂フィルムと、請求項
11に記載の粘着剤層と、を含む、表面保護フィルム。
【請求項13】
光照射処理により前記粘着剤層の粘着力が低下する、請求項
12に記載の表面保護フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、その溶液、粘着剤層および表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワープロ、コンピュータ、携帯電話、テレビ等の各種ディスプレイ、偏光板もしくはそれに準ずる積層体等の各種光学部品、または電子基板等の各種基板等の表面には、通常、表面保護の目的で粘着剤層を有する表面保護フィルムが貼合される。
【0003】
粘着剤層としては、貼合状態における良好な粘着性を有することが求められている。粘着性とは、被着体に対する十分な粘着力を有し、剥がれや浮き等の不具合が発生しない性質をいう。また、表面保護フィルムは製造工程内で、または使用時に被着体から剥離されるが、接着力が過大であると、剥離時に被着体の割れや破断等の破壊が生じる場合や、被着体上に糊残りが発生する場合がある。これより、粘着剤層としては、剥離時の良好なリワーク性(再剥離性)を有することが求められている。リワーク性とは、被着体の破壊や被着体上の糊残りがなく、容易に剥離することができる性質をいう。
【0004】
かような粘着性とリワーク性との両立の観点から、粘着剤組成物としては、ウレタン系粘着剤組成物が検討されている。
【0005】
特許文献1および特許文献2には、水酸基含有ポリウレタンと、イオン性化合物と、3官能イソシアネート化合物と、を含有する接着剤組成物より形成した粘着剤層によって、粘着フィルムの粘着力とリワーク性との両立が実現されうることが開示されている。
【0006】
特許文献3には、末端に水酸基を有するウレタンウレア樹脂と、イオン性化合物と、多官能イソシアネートと、を含有する接着剤組成物より形成した粘着剤層によって、リワーク性が向上されうることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-169377号公報
【文献】特開2005-154492号公報
【文献】特開2007-238766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1から3のウレタン系接着剤組成物(粘着剤組成物)から形成される粘着剤層は、粘着力の調整により粘着性とリワーク性との両立を試みている。しかしながら、この方法では、粘着性と、リワーク性とが共に粘着剤層の粘着力に依存しトレードオフの関係となる。このため、十分なリワーク性を得ようとすると粘着性が不足し、十分な粘着性を得ようとするとリワーク性が不足することが問題となる。また、リワーク性を向上させるに従い、表面保護フィルム等の粘着剤層を有するフィルムの裁断時における粘着剤層の脱落の発生頻度が高まることも問題となる。
【0009】
そこで、本発明は、剥離時の粘着力を粘着状態の粘着力よりも低減させることによって粘着性とリワーク性とを高いレベルで両立した粘着剤層を形成でき、かつ粘着剤層の脱落の発生を低減させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、以下の手段により解決される。
【0011】
水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)と、多官能(メタ)アクリレート(B)と、熱ラジカル開始剤(C)と、架橋剤(D)と、光ラジカル開始剤(E)と、を含有する、粘着剤組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、剥離時の粘着力を粘着状態の粘着力よりも低減させることによって粘着性とリワーク性とを高いレベルで両立した粘着剤層を形成でき、かつ粘着剤層の脱落の発生を低減させうる手段が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態を説明する。また、特記しない限り、操作および物性等は、室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度40%RH以上50%RH以下の条件で測定する。
【0014】
なお、本明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
【0015】
また、本明細書において、「(共)重合体」とは、単独重合体および共重合体の総称である。
【0016】
<粘着剤組成物>
本発明の一形態は、水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)(以下、(A)成分とも称する)と、多官能(メタ)アクリレート(B)(以下、(B)成分とも称する)と、熱ラジカル開始剤(C)(以下、(C)成分とも称する)と、架橋剤(D)(以下、(D)成分とも称する)と、光ラジカル開始剤(E)(以下、(E)成分とも称する)と、を含有する、粘着剤組成物に関する。
【0017】
本発明者は、上記構成によって課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。
【0018】
ウレタン系粘着剤組成物は、一般的に、組成物に含まれるウレタン系化合物と、例えば、イソシアネート化合物等の架橋剤とが熱重合、架橋反応によって硬化することで、粘着剤層を形成する。特許文献1から3のような従来のウレタン系粘着剤組成物では、ウレタン系化合物もしくは架橋剤の種類、これらの含有量比、または反応条件等を調節することによって、粘着性およびリワーク性を制御することを試みている。しかしながら、粘着性と、リワーク性とは、共に粘着剤層の粘着力に依存することからトレードオフの関係となり、高いレベルでの粘着性およびリワーク性の両立は困難であるという問題を有していた。
【0019】
一方、本発明に係る粘着剤組成物は、水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)および架橋剤(D)に加え、多官能(メタ)アクリレート(B)と、熱ラジカル開始剤(C)と、光ラジカル開始剤(E)と、をさらに含有する。多官能(メタ)アクリレート(B)は、一般的に、より高い粘着力、接着力を有するアクリル系粘着剤として用いられる材料であり、従来の設計思想では粘着力の向上には寄与するものの、リワーク性の付与には不向きであると考えられてきた。しかしながら、本発明に係る粘着剤組成物では、水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)と、架橋剤(D)との熱反応の際に、熱ラジカル開始剤(C)により多官能(メタ)アクリレート(B)の熱重合、架橋反応も進行するため、粘着力が過大となることはない。また、生成物である(メタ)アクリル(共)重合体は、水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)と、架橋剤(D)とから生成されるポリウレタンと絡み合う形となることから、粘着剤の耐衝撃性が増加し、粘着剤層の脱落の発生が低減される。
【0020】
ここで、多官能(メタ)アクリレート(B)と、熱ラジカル開始剤(C)との熱反応は、多官能(メタ)アクリレート(B)の一部で生じるため、熱反応後の生成物である(メタ)アクリル(共)重合体は、依然として(メタ)アクリロイルオキシ基を有している。そして、本発明に係る粘着剤組成物は、光ラジカル開始剤(E)を含有している。このため、リワークの際に光照射を行い、多官能(メタ)アクリレート(B)に由来する(メタ)アクリル(共)重合体の光重合、架橋反応を進行させることで、粘着剤の粘着力を大幅に低下させることができ、極めて良好なリワーク性を得ることができる。
【0021】
本発明に係る粘着剤組成物は、従来のウレタン系粘着剤組成物における粘着性と、リワーク性とがトレードオフの関係にあるとの技術的課題を乗り越えてなされたものである。すなわち、本発明に係る粘着剤組成物は、従来のウレタン系粘着剤組成物とは全く異なる設計思想によって、粘着状態の粘着力とリワーク時の粘着力とを別途制御することを可能にするものである。
【0022】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0023】
[水酸基含有ウレタンプレポリマー(A)]
本発明の粘着剤組成物は、(A)成分を含む。(A)成分は粘着剤組成物への粘着性付与に寄与しうる。
【0024】
(A)成分は、1分子中に2個以上の水酸基を含有するウレタンプレポリマー、すなわち一分子中に2個以上の水酸基を含有するウレタンオリゴマーまたはポリウレタンであれば特に限定されることなく使用することができる。ここで、(A)成分の分子内の水酸基の位置としては、特に制限されない。
【0025】
(A)成分は、ポリオール(a1)(以下、「(a1成分)」という)と多官能イソシアネート化合物(a2)(以下、「(a2成分)」という)とを反応させて得られるものを用いることができる。
【0026】
(a1)成分としては、特に制限されないが、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、(a1)成分の水酸基数は、特に制限されないが、1分子中に2個以上4個以下の範囲であることが好ましい。
【0027】
ポリエーテルポリオールとしては、特に制限されず、公知のポリエーテルポリオールを用いることができる。例えば、メチレンオキサイド鎖、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、ブチレンオキサイド鎖等のアルキレンオキサイド鎖の繰り返し構造を有するものが使用できる。これらのアルキレンオキサイド鎖は、それぞれ単独であってもよく、または2種類以上を組み合わせたものであってもよい。これらの中でもイソシアネート基との反応性が優れる点から第1級炭素原子に結合する水酸基を有するものが好ましい。具体的には、ポリエチレングリコール、末端ポリエチレングリコールキャップのポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0028】
ポリエステルポリオールとしては、特に制限されず、公知のポリエステルポリオールを用いることができる。酸成分としてアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等が挙げられる。また、アルコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。その他、ポリカプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等も挙げられる。
【0029】
ポリカーボネートポリオールとしては、特に制限されず、公知のポリカーボネートポリオールを用いることができる。例えば、炭酸エステルおよび/またはホスゲンと、2個以上の水酸基を有する化合物とを反応させて得られるものを用いることができる。炭酸エステルとしては、例えば、メチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等を用いることができる。これらの炭酸エステルは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、2個以上の水酸基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール等の脂肪族ポリオール;1,2-シクロブタンジオール、1,3-シクロペンタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール等の脂環式ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’-ビフェノール等の芳香族ポリオールなどを用いることができる。これらの化合物は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、粘着剤層の脱落の発生を低減するとの観点から、脂肪族ポリオール及び/または脂環式ポリオールを用いることが好ましく、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールからなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いることがより好ましい。
【0030】
(a1)成分の数平均分子量は、特に限定されないが、合成時の反応制御がより容易になるとの観点から、700以上5,000以下であることが好ましく、1,000以上4,000以下であることがより好ましい。なお、(a1)成分の数平均分子量は、ゲルパーメーションクロマトグラフ法によるポリスチレン換算値として求めることができる。
【0031】
また、必要に応じて、(a1)成分の一部を、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ダイマージオール、ヒマシ油ポリオール等の低分子ポリオール類や、エチレンジアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の多価アミン類に置き換えて用いることができる。
【0032】
(a2)成分としては、特に制限されず、公知のものを使用することができる。例えば、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアナートメチルシクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族または脂環式ジイソシアネートなどを用いることができる。これらの多官能イソシアネート化合物は、1種単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、変色を抑制できる点から、脂肪族または脂環式ジイソシアネートを用いることが好ましく、合成時の反応制御がより容易になる点で脂肪族ジイソシアネートがより好ましい。
【0033】
また、(a2)成分には、上記ジイソシアネートのアダクト体、ビュウレット体、イソシアヌレート体等も用いることができる。
【0034】
(A)成分としては、(a1)成分と、(a2)成分と、水酸基またはイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物(a3)(以下、(a3)成分とも称する)とを反応させて得られるものも用いることができる。水酸基またはイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物(a3)は、(A)成分中に(メタ)アクリロイル基を導入する目的で用いるものである。(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイルオキシ基の形で導入されることが好ましい。
【0035】
(a3)成分としては、特に制限されず、公知の水酸基またはイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物を用いることができる。例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の水酸基を有する(メタ)アクリル化合物;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレートなどを用いることができる。これらの化合物は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのなかでも、原料入手の容易性、硬化性および粘着物性の点から、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を用いることが好ましく、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートを用いることがより好ましい。また、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアネート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等を用いることができる。これらの化合物は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、原料入手の容易性の点から、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートを用いることが好ましく、紫外線硬化性の点から、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートを用いることがより好ましい。
【0036】
(A)成分の製造方法としては、特に制限されず、公知のウレタン化反応を使用し、水酸基が過剰となる条件を適用することができる。例えば、(a2)成分が有するイソシアネート基のモル数に対し、(a1)成分が有する水酸基のモル数が過剰となるように両者を反応させる方法が挙げられる。なお、ウレタン化反応は、必要に応じて後述する公知の有機溶剤中で行ってもよい。有機溶剤としては、具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトン等を例示できる。(a1)成分が有する水酸基と、(a2)成分が有するイソシアネート基とのモル比(NCO/OH)としては、特に制限されないが、反応性制御の容易性及び粘着フィルムの機械的強度の点から、0.4以上1以下の範囲であることが好ましく、0.55以上0.95以下の範囲であることがより好ましく、0.55以上0.84以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0037】
(a3)成分をさらに使用する場合の(A)成分の製造方法としては、特に制限されず、公知の方法を使用することができる。(a3)成分として水酸基を有する(メタ)アクリル化合物を用いる場合は、例えば、無溶剤下で、(a1)成分と、(a3)成分とを反応系中に仕込んだ後に、(a2)成分を供給し、混合、反応させることによって製造する方法等を用いることができる。また、(a3)成分としてイソシアネート基を有する(メタ)アクリル化合物(a3)を用いる場合は、例えば、無溶剤下で(a1)と、(a2)成分とを仕込み、反応させることによって水酸基を有するウレタンプレポリマーを合成し、次いで、(a3)成分を供給し、混合、反応させることによって製造する方法等を用いることができる。これらの反応は、例えば20℃以上120℃以下の条件下で30分以上24時間以下行うことが好ましい。なお、これらの反応は、有機溶剤の存在下で行ってもよい。反応に使用する有機溶剤は、上記挙げたものと同様である。(a1)成分が有する水酸基および(a3)成分が有する水酸基の合計量と、(a2)成分が有するイソシアネート基および(a3)成分が有するイソシアネート基の合計量とのモル比(NCO/OH)としては、特に制限されないが、反応性制御の容易性及び粘着フィルムの機械的強度の点から、0.75以上1以下の範囲であることが好ましく、0.79以上0.995以下の範囲であることがより好ましい。また、モル比(NCO/OH)が1を超える場合で反応させてもよいが、その場合、(A)成分のイソシアネート基を失活させることを目的として、1,2-プロピレングリコールや、1,3-ブチレングリコールなどの第1級炭素原子に結合する水酸基と第2級炭素原子に結合する水酸基とを有する2官能アルコール等の、(a1)成分以外のポリオールを用いることが好ましい。また、イソシアネート基を失活させることを目的として使用可能なアルコールとして、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの単官能アルコール用いてもよい。イソシアネート基の失活を含む(A)成分の製造方法の場合、(a1)成分が有する水酸基と、(a3)成分が有する水酸基と、アルコールが有する水酸基の合計量と、ポリイソシアネート基との合計量とのモル比(NCO/OH)が上記範囲内となるように調整することが好ましい。
【0038】
(A)成分を製造する際には、必要に応じて公知の重合禁止剤、公知のウレタン化触媒等を用いてもよい。
【0039】
(A)成分およびその製造方法としては、特開2005-169377号公報、特開2007-168377号公報等に記載の公知の化合物および公知の製造方法を用いてもよい。
【0040】
(A)成分は、水酸基以外の反応性官能基として(メタ)アクリロイル基をさらに有することが好ましく、(メタ)アクリロイル基を(メタ)アクリロイルオキシ基として有することがより好ましく、アクリロイルオキシ基を有することがさらに好ましい。当該構造を有することで、粘着剤を用いたシートの裁断時に、粘着剤層の脱落の発生の低減効果がより向上する。この理由は、(C)成分により(A)成分の、または(A)成分と(B)成分もしくはその(共)重合体との熱重合、架橋反応が進行するからであると推測している。
【0041】
ここで、(A)成分の分子内の(メタ)アクリロイル基の位置としては、特に制限されない。当該構造を有することで、(C)成分により、(A)成分の、または(A)成分と(B)成分もしくはその(共)重合体との熱重合、架橋反応がより進行し易くなるからであると推測している。
【0042】
(A)成分の二重結合当量(二重結合1molあたりのポリマー質量(g))は、特に制限されないが、30000g/mol以下であることが好ましく、20000g/mol以下であることがより好ましく、10000g/mol以下であることがさらに好ましい。また、(A)成分の二重結合当量は、特に制限されないが、1000g/mol以上であることがより好ましい。上記範囲であると、粘着力がより適切な範囲となり、粘着剤層の脱落の発生の低減効果がより向上する。この理由は、(C)成分による、(A)成分の、または(A)成分と(B)成分もしくはその(共)重合体との熱重合、架橋反応の進行がより適切となるからであると推測している。
【0043】
(A)成分の数平均分子量は、特に制限されないが、1,000以上であることが好ましく、20,000以上500,000以下であることがより好ましく、50,000以上200,000以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、粘着剤の粘度がより適度な範囲となり、より作業性が向上する。
【0044】
(A)成分の数平均分子量は、例えば、以下の方法で算出することができる。サンプル瓶へ(A)成分10mgとTHF10mlとを添加し、1終夜静置することで溶解し、PTFEカードリッジフィルター(0.5μm)でろ過することでサンプルを得る。検出器としてRI検出器RI8020(東ソー株式会社製)、測定用カラムとしてTSKgelGMR-HHRL(東ソー株式会社製)×2本直列、HLC-8020GPC(東ソー株式会社製)を用いる。測定条件は、カラム温度40℃、流速1.0ml/min、溶媒THFの条件で測定を行い、東ソー株式会社製標準ポリスチレンを用いた3次近似曲線検量線として数平均分子量の解析を行う。
【0045】
(A)成分の水酸基価は、特に制限されないが、1mgKOH/g以上230mgKOH/g以下であることが好ましく、3mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることがより好ましく、4mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、粘着力がより適切な範囲となり、粘着剤層の脱落の発生の低減効果がより向上する。この理由は、(A)成分と(D)成分との熱重合、架橋反応の進行がより適切となるからであると推測している。なお、水酸基価は、JIS K0070:1992に準拠した測定より求めることができる。
【0046】
(A)成分は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、例えば、東洋インキ株式会社製 サイアバイン(登録商標)SH101、根上工業株式会社製 アートレジン(登録商標)UN5500等を用いることができる。
【0047】
[多官能(メタ)アクリレート(B)]
本発明の粘着剤組成物は、多官能(メタ)アクリレート(B)を含む。(B)成分は、リワークの際の光照射によって光重合、架橋反応が進行して粘着剤組成物の粘着力を低下させることで、粘着剤組成物へのリワーク性付与に寄与しうる。
【0048】
(B)成分は、一分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を含有する化合物であれば特に制限されないが、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(好ましくは重量平均分子量400以上600以下)ジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジベンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルトリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート等の5官能(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能(メタ)アクリレート;トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等の7官能(メタ)アクリレート;トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等の8官能(メタ)アクリレート;テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート等の9官能(メタ)アクリレート;テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート等の10官能(メタ)アクリレート等、2官能以上10官能以下の(メタ)アクリレート等が好ましい例として挙げられる。また、(B)成分は、例えば、11官能以上のポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等、11官能以上の(メタ)アクリレートであってもよい。
【0049】
また、一分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を含有する化合物としては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等を用いてもよい。ウレタンアクリレートは、TDI、MDI、HDI、IPDI、HMDI等のジイソシアナートとポリ(プロピレンオキサイド)ジオール、ポリ(テトラメチレンオキサイド)ジオール、エトキシ化ビスフェノールA、エトキシ化ビスフェノールSスピログリコール、カプロラクトン変性ジオール、カーボネートジオール等のポリオール、および2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のヒドロキシアクリレートを反応させて得られるモノマー、オリゴマーであり、特開2002-265650公報や、特開2002-355936号公報、特開2002-067238号公報等に記載の多官能ウレタンモノマーを挙げることができる。具体的なウレタンアクリレートとしては、特に制限されないが、例えば、TDIとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物、IPDIとヒドロキシエチルアクリレートとの付加物、HDIとペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)との付加物、TDIとPETAとの付加物を作り残ったイソシアナートとドデシルオキシヒドロキシプロピルアクリレートを反応させた化合物、6,6ナイロンとTDIの付加物、ペンタエリスリトールとTDIとヒドロキシエチルアクリレートの付加物等を挙げることができる。また、ポリエステルアクリレートは、ポリオールと二塩基酸より合成したポリエステル骨格に残ったヒドロキシ基に、(メタ)アクリル酸を縮合してアクリレートにしたものである。具体的なポリエスエルアクリレートとしては、特に制限されないが、例えば、無水フタル酸/プロピオンオキサイド/アクリル酸の反応物、アジピン酸/1,6-ヘキサンジオール/アクリル酸の反応物、トリメリット酸/ジエチレングリコール/アクリル酸の反応物等を挙げることができる。
【0050】
また、(B)成分は、水酸基をさらに含有することが好ましい。当該構造を有することで、粘着剤層の脱落の発生の低減効果をより向上する。この理由は、(A)成分と、(D)成分との熱重合、架橋反応の際に、(A)成分と(B)成分またはその(共)重合体と(D)成分との熱重合、架橋反応が進行するからであると推測している。
【0051】
(B)成分の二重結合当量(二重結合1molあたりの分子質量(g))は、特に制限されないが、1000g/mol未満であることが好ましく、800g/mol以下であることがより好ましく、500g/mol以下であることがさらに好ましく、350g/mol以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、粘着力がより適切な範囲となり、粘着剤層の脱落の発生の低減効果がより向上する。この理由は、(C)成分による、(A)成分と(B)成分またはその(共)重合体との熱重合、架橋反応の進行がより適切となるからであると推測している。
【0052】
(B)成分の水酸基価は、特に制限されないが、特に制限されないが、3mgKOH/g以上であることが好ましく、5mgKOH/g以上230mgKOH/g以下であることがより好ましく、5mgKOH/g以上150mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、粘着力がより適切な範囲となり、粘着剤層の脱落の発生の低減効果がより向上する。この理由は、(A)成分と、(D)成分との熱重合、架橋反応の際に、(A)成分と、(B)成分またはその(共)重合体と、(D)成分との熱重合、架橋反応が進行するからであると推測している。なお、水酸基価は、JIS K0070:1992に準拠した測定より求めることができる。
【0053】
(B)成分は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、例えば、新中村化学工業株式会社製のA-TMM-3、A-TMM-3L、A-TMM-3LM-N、ATM-35E、A-TMMT、A-9550、A-DPH、東亞合成株式会社製のアロニックス(登録商標) M-305、M-402、M-405、大阪有機化学工業株式会社製のビスコート(登録商標)#802,TriPEA等が挙げられる。
【0054】
これらの多官能(メタ)アクリルモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
粘着剤組成物における(B)成分の含有量は、特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して、5質量部以上500質量部以下であることが好ましく、10質量部以上250質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上200質量部以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、粘着力がより適切な範囲となり、粘着剤層の脱落の発生の低減効果がより向上し、リワーク性がより向上する。この理由は、(B)成分の熱重合、架橋反応の進行がより適切となり、また、リワークの際の光照射による(B)成分の光重合、架橋反応がより進行するからであると推測している。
【0056】
[熱ラジカル開始剤(C)]
本発明の粘着剤組成物は、熱ラジカル開始剤(C)を含む。(C)成分は、(B)成分の熱重合、架橋反応を進行させるため、粘着剤組成物への粘着性付与、ならびに粘着剤層の脱落の発生の低減に寄与しうる。
【0057】
(C)成分としては、(B)成分の熱重合、架橋反応を進行させることができれば特に制限されないが、例えば、過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩等が挙げられる。なお、本明細書において、過酸化物とは、分子構造内にパーオキサイド構造「-O-O-」を有する化合物を意味する。これらの1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を用いる場合は、同じ系統のものを2種以上組み合わせてもよいし、異なる系統のものをそれぞれ1種以上組み合わせても構わない。
【0058】
過酸化物は、特に制限されず公知のものを使用できるが、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度88.3℃)、ビス(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(同90.6℃)、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(別名:ペルオキシ二炭酸ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)(同92.1℃)、ビス-sec-ブチルパーオキシジカーボネート(同92.4℃)、t-ブチルパーオキシネオデカノエート(同103.5℃)、t-ヘキシルパーオキシピバレート、(同109.1℃)、t-ブチルパーオキシピバレート(同110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(同116.4℃)、ビス-n-オクタノイルパーオキシド(同117.4℃)、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(同124.3℃)、ビス(4-メチルベンゾイル)パーオキシド(同128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(過酸化ベンゾイル)(同130.0℃)、t-ブチルパーオキシブチレート(同136.1℃)等が例として挙げられる。これらの中でも、架橋反応効率に優れるとの観点から、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシドが好ましい。また、分解温度の観点から、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジラウロイルパーオキシドが好ましい。
【0059】
アゾ化合物の例としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、アゾビス(2-メチルプロピオンニトリル)、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4、4’-アゾビス(4-シアノブタン酸)、ジメチルアゾビス(2-メチルプロピオネート)、アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]-プロピオンアミド}等が挙げられる。
【0060】
過硫酸塩の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0061】
(C)成分としては、(B)成分の熱重合、架橋反応を適度に進行させ、粘着力を適切な範囲とするとの観点から、過酸化物が好ましい。
【0062】
(C)成分の1分間半減期温度は、特に制限されないが、作業性や安定性の観点から、80℃以上160℃以下であることが好ましく、80℃以上140℃以下であることがより好ましく、80℃以上125℃以下であることがさらに好ましく、90℃以上125℃以下であることが特に好ましい。
【0063】
(C)成分の10時間半減期温度は、特に制限されないが、作業性や安定性の観点から、40℃以上135℃以下であることが好ましく、60℃以上100℃以下であることがより好ましく、80℃以上100℃未満であることがさらに好ましい。
【0064】
これらの半減期温度がそれぞれ上記下限値以上あると、粘着剤組成物または粘着剤組成物溶液のポットライフがより長くなり、これらの半減期温度がそれぞれ上記上限値以下であると、より低温で反応を行うことができ、粘着剤層形成時の基材の熱ダメージをより低減することができる。
【0065】
なお、(C)成分の「半減期」とは、(C)成分の分解速度を表す指標であって、(C)成分の残存量が半分になるまでの時間を意味する。ある時間で半減期を得るための分解温度や、ある温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログ等に記載されており、例えば、日油株式会社発行の有機過酸化物カタログ第10版(2015年2月)に記載されている。
【0066】
(C)成分は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、過酸化物では、例えば、日油株式会社製のパークミル(登録商標)ND、パーロイル(登録商標)IB、NPP、IPP、SBP、TCP、OPP、355、L、SA、パーオクタ(登録商標)ND、O、パーヘキシル(登録商標)ND、PV、O、I、パーブチル(登録商標)ND、NHP、PV、O、L、I、A、パーヘキサ(登録商標)25O、MC、TMH、HC、C、25Z、22、ナイパー(登録商標)PMB、BMT、BW、BMT-K40、BMT-M、パーテトラ(登録商標)A等が挙げられる。アゾ化合物では、例えば、大塚化学株式会社製のAZOシリーズ等が挙げられる。過硫酸塩では、例えば、菱江化学株式会社製のAPS、NPS、KPS等が挙げられる。
【0067】
粘着剤組成物における(C)成分の含有量は、特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上10質量部未満であることがさらに好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがよりさらに好ましく、0.8質量部以上5質量部以下であることが特に好ましく、1質量部以上3質量部以下であることが最も好ましい。上記範囲であると、粘着力がより適切な範囲となる。この理由は、(B)成分の熱重合、架橋反応の進行がより適切となるからであると推測している。
【0068】
[架橋剤(D)]
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤(D)を含む。(D)成分は、(A)成分との間での熱重合、架橋を進行させるため、粘着剤組成物への粘着性付与、ならびに粘着剤層の脱落の発生の低減に寄与しうる。
【0069】
(D)成分としては、(A)成分との間での熱重合、架橋反応を進行させることができれば特に制限されないが、例えば、イソシアネート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、およびアジリジン系架橋剤等が挙げられる。これらの1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を用いる場合は、同じ系統のものを2種以上組み合わせてもよいし、異なる系統のものをそれぞれ1種以上組み合わせても構わない。
【0070】
イソシアネート系架橋剤は、特に制限されず、公知のイソシアネート化合物を使用することができる。イソシアネート化合物としては、特に制限されないが、トリアリルイソシアヌレート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、1,4-フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリデンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)などの芳香族ジイソシアネート類;1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ジイソシアネート類;トランスシクロヘキサンー1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6-XDI(水添XDI)、H12-MDI(水添MDI)などの脂環式ジイソシアネート類;これらのジイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ジイソシアネート類;これらのイソシアヌレート変性ジイソシアネート類;これらのイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体;これらのイソシアネート化合物のビウレット体やイソシアヌレート体;これらのイソシアネート化合物、そのアダクト体、ビウレット体またはイソシアヌレート体を主鎖末端、側鎖として、または側鎖末端に有する高分子化合物(例えば、これらに由来する部分構造を主鎖の両末端に有するポリブタジエン樹脂等)が例として挙げられる。これらの中でも、(A)成分との間での熱重合、架橋反応の進行を効率的に行うことができるとの観点から、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、もしくはこれらのアダクト体、ビウレット体、もしくはイソシアヌレート体、またはこれらを主鎖末端、側鎖として、または側鎖末端に有する高分子化合物が好ましい。
【0071】
カルボジイミド系架橋剤は、特に制限されず、公知のカルボジイミド化合物を使用することができる。カルボジイミド化合物は、特に制限されないが、例えば、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネートを脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミド等が挙げられる。脱炭酸縮合反応に供されるジイソシアネートとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1-メトキシフェニル-2,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。また、脱炭酸縮合反応に用いられるカルボジイミド化触媒としては、例えば、1-フェニル-2-ホスホレン-1-オキシド、3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-3-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド、1-エチル-2-ホスホレン-1-オキシド、あるいはこれらの3-ホスホレン異性体等のホスホレンオキシド等が挙げられる。
【0072】
オキサゾリン系架橋剤は、特に制限されず、公知のオキサゾリン化合物を使用することができる。オキサゾリン化合物は、特に制限されないが、例えば、アクリル骨格またはスチレン骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているオキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマーや、アクリル骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているオキサゾリン基含有アクリル系ポリマーといった、オキサゾリン基含有ポリマーが挙げられる。オキサゾリン基としては、例えば、2-オキサゾリン基、3-オキサゾリン基、4-オキサゾリン基などが挙げられ、なかでも、2-オキサゾリン基が好ましい。キサゾリン化合物としては、具体的には、オキサゾリン基含有アクリル系ポリマー、オキサゾリン基含有アクリル/スチレン系ポリマー等が挙げられる。
【0073】
エポキシ系架橋剤は、特に制限されず、公知のエポキシ化合物を使用することができる。エポキシ化合物は、特に制限されず、公知のエポキシ化合物を適宜採用することができる。特に、液状エポキシ化合物は、粘着剤組成物を製造する際の混合操作が容易になる点で好ましい。
【0074】
アジリジン系架橋剤は、特に制限されず、公知のアジリジン化合物を使用することができる。アジリジン化合物は、特に制限されないが、例えば、アジリジン環を複数有する多官能アジリジン化合物を好適に用いることができる。多官能アジリジン化合物としては、例えば、米国特許第3,225,013号明細書、米国特許第4,490,505号明細書、及び米国特許第5,534,391号明細書、特開2003-104970号明細書に開示された化合物等が挙げられる。かようなアジリジン化合物としては、三官能アジリジン化合物(アジリジン環を3つ有する化合物)を好適に用いることができる。三官能アジリジン化合物の具体例としては、トリメチロールプロパントリス[3-アジリジニルプロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(2-メチル-アジリジニル)-プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[2-アジリジニルブチレート]、ペンタエリスリトールトリス-3-(1-アジリジニルプロピオネート)、及びペンタエリスリトールテトラキス-3-(1-アジリジニルプロピオネート)等が挙げられる。
【0075】
(D)成分は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、イソシアネート系架橋剤では、例えば、東ソー株式会社製のコロネート(登録商標)L(例えば、L-45E等)、HL、HX、2030、2031、三井化学株式会社製のタケネート(登録商標)D-102、D-110N、D-200、D-202、旭化成ケミカルズ株式会社製のデュラネート(登録商標)24A-100、TPA-100、TKA-100、P301-75E、E402-80B、E402-90T、E405-80T、TSE-100、D-101、D-201、住化バイエルウレタン株式会社のスミジュール(登録商標)N-75、N-3200、N-3300、三井化学株式会社製のスタビオ(登録商標)D-370N、D-376N、日本曹達株式会社製のNISSO-PB(登録商標)TP1001等が挙げられる。カルボジイミド系架橋剤では、例えば、日清紡ケミカル株式会社製のカルボジライト(登録商標)V-01、V-03、V-05、V-07、V-09等が挙げられる。オキサゾリン系架橋剤では、例えば、日本触媒株式会社製のエポクロス(登録商標)WS-300、WS-500、WS-700、K-1000シリーズ、K-2000シリーズ等が挙げられる。エポキシ系架橋剤では、例えば、三菱ガス化学株式会社製のTETRAD-C、TETRAD-X、株式会社ADEKA製のアデカレジンEPUシリーズ、EPRシリーズ、株式会社ダイセル製のセロキサイドシリーズ等が挙げられる。アジリジン系架橋剤では、例えば、日本触媒株式会社製のケミタイト(登録商標)PZ-33、DZ-22E等が挙げられる。
【0076】
(D)成分としては、(A)成分との間で熱重合、架橋反応を適度に進行させ、粘着力をより適切な範囲とするとの観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0077】
粘着剤組成物における(D)成分の添加量は、特に制限されず、(A)成分との間での熱重合、架橋反応を進行させることができる量を適宜調整すればよい。例えば、(D)成分がイソシアネート系架橋剤を含む場合、イソシアネート系架橋剤の含有量は、粘着剤組成物中の(A)成分の水酸基総量に対する粘着剤組成物中のイソシアネート基総量の当量比(NCO(モル)/OH(モル))が、0.5以上20以下であることが好ましく、1以上11以下であることがより好ましく、1.25以上5以下であることがさらに好ましく、2以上4以下であることがさらに好ましく、3以上4以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、粘着力がより適切な範囲となり、粘着剤層の脱落の発生の低減効果がより向上する。この理由は、(A)成分との間での熱重合、架橋反応の進行がより適切となるからであると推測している。
【0078】
[光ラジカル開始剤(E)]
本発明の粘着剤組成物は、光ラジカル開始剤(E)を含む。(E)成分は、リワークの際の光照射によってラジカルを発生し、(B)成分の光重合、架橋を進行させることで、光照射後の粘着力の低下によるリワーク性の向上に寄与しうる。
【0079】
(E)成分としては、特に制限されず公知のものを使用できるが、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン等のアセトフェノン化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン化合物;4,4’-ジメチルアミノチオキサントン(別名=ミネラーズケトン)、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、α-アシロキシムエステル、ベンジル、メチルベンゾイルホルメート(「バイアキュア55」)、2-エチルアンスラキノン等のアンスラキノン化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド化合物;3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルオパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン等を用いることができる。これらの中でも、リワーク性をより向上できるとの観点から、アシルホスフィンオキサイド化合物が好ましく、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドがより好ましく、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドがさらに好ましい。
【0080】
(E)成分は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、例えば、IGM RESINS社製のIRGACURE(登録商標)184、819、907、651、1700、1800、819、369、261、TPO、1173、DKSHジャパン株式会社製のエザキュア(登録商標)KIP150、TZT、日本化薬株式会社製のKAYACURE(登録商標)BMS、DMBI等が挙げられる。
【0081】
これら光重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
粘着剤組成物における(E)成分の含有量は、特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上10質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましく、0.5質量部以上5質量部以下であることがよりさらに好ましく、1質量部以上2質量部以下であることが特に好ましい。上記範囲であると、リワーク性がより向上する。この理由は、リワークの際の光照射による(B)成分の光重合、架橋反応がより進行するからであると推測している。
【0082】
[帯電防止剤(F)]
本発明の一形態に係る粘着剤組成物は、帯電防止剤(F)を含むことが好ましい。帯電防止剤は、粘着剤組成物から形成される粘着剤層の表面抵抗値の低下に寄与しうる。これより、被着体である液晶セル等に貼合した後、貼りミス等により剥離する必要が生じた際に、静電気の発生を効果的に抑制することができる。その結果、偏光板等の表面にゴミが付着し易くなったり、液晶配向に乱れが生じやすくなったり、周辺回路素子の静電破壊が生じ易くなったりすることを、安定的に防止することができる。
【0083】
(F)成分としては、イオン性液体等のイオン導電剤や、界面活性剤等を用いることが好ましい。
【0084】
イオン性液体としては、特に制限されず公知のものを使用できるが、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、グアニジニウムイオン、アンモニウムイオン、イソウロニウムイオン、チオウロニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、スルホニウムイオン、第4級アンモニウム、第4級ホスホニウム等のカチオン成分と、ハロゲンイオン、硝酸イオン、硫酸イオン、燐酸イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、チオ硫酸イオン、亜硫酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスファートイオン、蟻酸イオン、蓚酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、アルキルスルホン酸イオン等のアニオン成分と、を有する物質が挙げられる。より具体的には、1-アリル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1,3-ジメチルイミダゾリウムクロリド、1,3-ジメチルイミダゾリウムジメチルホスファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオジド、1-エチル-3-メタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスファート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-p-トルエンスルホネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、1-メチル-1-プロピル-ピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-メチルピロリジニウムブロミド、1-ブチル-1-メチルピペリジニウムブロミド、1-エチルピリジニウムクロリド、1-エチルピリジニウムブロミド、1-ブチルピリジニウムクロリド、1-ブチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムクロリド、1-エチル-3-メチルピリジニウムエチルサルフェート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムクロリド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(別名:トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド)、テトラブチルアンモニムクロリド、テトラブチルアンモニムブロミド、シクロヘキシルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラブチルホスホニウムブロミド等が挙げられる。
【0085】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤またはイオン性界面活性剤等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、フルオロ脂肪族重合体エステル等のフッ素系界面活性剤や、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等が挙げられる。イオン性界面活性剤としては、C8以上C22以下のアルキルトリメチルアンモニウムハライド等の陽イオン性界面活性剤や、アルキルサルフェート等の陰イオン性界面活性剤が例示できる。
【0086】
イオン導電剤としてはまた、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩類を用いることも好ましい。
【0087】
これらの中でも、イオン性液体であることが好ましく、トリブチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであることがより好ましい。
【0088】
(F)成分は、合成品であっても市販品であってもよい。市販品としては、例えば、イオン性液体では、3Mジャパン株式会社製 3M(商標)イオン液体型帯電防止剤FC4400等が挙げられる。また、界面活性剤では、3Mジャパン株式会社製 3M(商標)フッ素系界面活性剤FC-4430、FC-4432等が挙げられる。
【0089】
上記成分(F)は、単独で使用してもよいし2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0090】
粘着剤組成物における(F)成分の含有量は、特に制限されないが、(A)成分100質量部に対して、0.5質量部以上30質量部以下であることが好ましく、1質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、2質量部以上15質量部以下であることがさらに好ましい。上記下限値以上であると、表面保護フィルムの剥離帯電圧がより低減し、上記上限値以下であると、表面保護フィルム剥離後のガラス汚染の発生がより抑制される。
【0091】
[その他の成分]
本発明の一形態に係る粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない限り、添加剤として公知の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、特に制限されないが、例えば、硬化促進剤、リチウム塩、無機充填剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、粘着付与樹脂、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、染料、顔料、処理剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤等が挙げられる。
【0092】
[粘着剤組成物の調製方法]
本発明の一形態に係る粘着剤組成物の調製方法(製造方法)は、特に制限されず公知の方法を用いることができ、通常は、上述した各成分を混合することにより得ることができる。混合方法にも特に制限はなく、成分を一括に混合するか、各成分を順次混合するか、または任意の複数の成分を混合した後に残りの成分を混合するなどして、均一な混合物となるように攪拌することにより製造することができる。必要に応じて、特定波長の光を遮光した場所で攪拌を行ってもよく、加温、例えば30℃以上40℃以下の温度に加温し、スターラーなどで均一になるまで、例えば10分以上5時間以下攪拌することにより調製してもよい。
【0093】
本発明の他の一形態は、本発明の一形態に係る粘着剤組成物と、溶剤とを含む、粘着剤組成物溶液に関する。
【0094】
本明細書では、粘着剤組成物と、溶剤とを含む溶液または分散液を、「粘着剤組成物溶液」と称する。ここで、粘着剤組成物溶液は、混合による粘着剤組成物の均一化の向上に用いてもよいし、後述する粘着剤層を形成するための塗布液として用いてもよい。
【0095】
粘着剤組成物の調製の際、または塗布液の調製の際に溶剤(溶媒、分散媒)を使用することが好ましい。溶剤は、特に制限されないが、有機溶剤であることが好ましい。有機溶剤としては、特に制限されないが、例えば、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ヘキサン、アセトン、シクロヘキサノン、3-ペンタノン、アセトニトリル、プロピオニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等を用いることができる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
溶剤を使用する場合、乾燥性および粘着剤組成物溶液として用いる際の塗工性を良好とするとの観点から、粘着剤組成物の濃度が20質量%以上99質量%以下の範囲となる量を添加することが好ましく、30質量%以上95質量%以下の範囲となる量を添加することがより好ましい。
【0097】
<粘着剤層およびその製造方法>
本発明の他の一形態は、本発明の一形態に係る粘着剤組成物から形成される粘着剤層に関する。すなわち、当該形態は、本発明の一形態に係る粘着剤組成物の熱硬化物である粘着剤層であるともいえる。なお、本明細書において、熱硬化物とは、熱により架橋反応が進行することで形成される硬化物であり、必ずしも加熱を必要とするものではなく、室温にて硬化された硬化物も含むものとする。
【0098】
本発明の一形態に係る粘着剤層の粘着力は、粘着性とリワーク性との両立の観点から、後述する表面保護フィルムの粘着力と同様の範囲であることが好ましい。なお、粘着力は、引張試験機を用いて測定することができ、測定方法の詳細は実施例に記載する。また、本発明の一形態に係る粘着剤層は、光照射処理によって粘着力が低下する。このため、本発明の一形態に係る粘着剤層は、粘着状態では極めて良好な粘着性を示しつつ、リワークの際に光照射を行うことによって、顕著に優れたリワーク性を示す。本発明の一形態に係る粘着剤層の光照射後の粘着力は、リワーク性の観点から、後述する表面保護フィルムの光照射後の粘着力と同様の範囲であることが好ましい。なお、光照射後の粘着力は、引張試験機を用いて測定することができ、測定方法の詳細は実施例に記載する。そして、粘着剤層の光照射処理における好ましい照射光、照射エネルギーの好ましい範囲についても、それぞれ、後述する表面保護フィルムの光照射処理の好ましい条件と同様である。
【0099】
粘着剤層の形成方法は、特に制限されないが、粘着剤組成物自体、または粘着剤組成物溶液を支持体上に塗工し、形成される塗膜に対し、必要に応じて加熱乾燥処理または加熱処理を行う方法であることが好ましい。
【0100】
また、粘着剤組成物の塗布厚さ(乾燥後の厚さ)は、用途や、表面保護フィルムとして使用する場合はその基材等に応じて選択すればよいが、1μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上300μm以下であることがより好ましく、20μm以上200μm以下であることがさらに好ましい。
【0101】
塗工方法は、従来公知の方法に従えばよく、例えば、ナチュラルコーター、ナイフベルトコーター、フローティングナイフ、ナイフオーバーロール、ナイフオンブランケット、スプレー、ディップ、キスロール、スクイーズロール、リバースロール、エアブレード、カーテンフローコーター、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、ベーカーアプリケーターおよびグラビアコーター等の装置を用いる種々の塗工方法が挙げられる。
【0102】
粘着剤層の形成に粘着剤組成物自体を用いる場合、粘着剤組成物の加熱処理温度は、架橋反応の進行ができれば特に制限されないが、20℃以上150℃以下であることが好ましく、40℃以上150℃以下であることが好ましく、50℃以上140℃以下であることがより好ましく、80℃以上130℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱処理時間は、適宜設定されうるが、5秒以上20分以下であることが好ましく、30秒以上10分以下であることがより好ましく、1分以上7分以下であることがさらに好ましい。加熱条件を上記の範囲とすることによって、熱による架橋反応をより適切に進行させ、より優れた粘着性を有する粘着剤層を得ることができる。
【0103】
また、粘着剤層の形成に粘着剤組成物溶液を用いる場合、粘着剤組成物溶液の加熱乾燥処理温度は、溶剤の揮発および架橋反応の進行ができれば特に制限されないが、40℃以上150℃以下であることが好ましく、50℃以上140℃以下であることがより好ましく、80℃以上130℃以下であることがさらに好ましい。また、加熱乾燥処理時間は、適宜設定されうるが、5秒以上20分以下であることが好ましく、30秒以上10分以下であることがより好ましく、1分以上7分以下であることがさらに好ましい。加熱乾燥処理条件を上記の範囲とすることによって、溶剤を十分に除去しつつ熱による架橋反応をより適切に進行させ、より優れた粘着性を有する粘着剤層を得ることができる。
【0104】
また、粘着剤層の形成には、塗工および加熱処理または加熱乾燥処理の後、エージング処理をさらに行うことが好ましい。エージング処理を行うことで、架橋反応をより適切に進行させ、より優れた粘着性を有する粘着剤層を得ることができる。エージング処理条件は、特に制限されないが、エージング処理温度は10℃以上40℃以下であることが好ましい。また、常温常湿(例えば、23℃50%RH)であることも好ましい。エージング処理時間は、適宜設定されうるが、1日以上7日以下であることが好ましい。エージング処理条件を上記の範囲とすることによって、熱による架橋反応をより適切に進行させ、より優れた粘着性を有する粘着剤層を得ることができる。
【0105】
なお、エージング処理は、特に制限されないが、支持体、加熱乾燥および加熱後の塗膜、および後述する剥離フィルムをこの順に積層させた状態で行うことが好ましい。
【0106】
<表面保護フィルム>
本発明の他の一形態は、樹脂フィルムと、本発明の一形態に係る粘着剤組成物から形成される粘着剤層(すなわち、上述した粘着剤層)と、を含む、表面保護フィルムに関する。すなわち、当該形態は、樹脂フィルムと、本発明の一形態に係る粘着剤組成物の熱硬化物である粘着剤層と、を含む、表面保護フィルムであるともいえる。なお、粘着剤層の詳細は、上述した通りである。
【0107】
粘着剤層は、樹脂フィルムの少なくとも一方の表面上に直接、または他の部材を介して配置されるが、樹脂フィルムの一方の表面上のみに配置されることが好ましい。
【0108】
表面保護フィルムとは、製品の製造過程、または最終製品が使用されるまでの間、各種光学部品、各種基板等の部材表面に、表面保護の目的で貼合されるフィルムである。
【0109】
樹脂フィルムとしては、表面保護フィルム用途として用いられるものであれば特に制限されず、目的に応じて公知のものから選択をすることができるが、これらの中でも樹脂フィルムであることが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース類;ポリカーボネート類;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー類;ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体等のスチレン類;オレフィン類、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状構造(好ましくはノルボルネン構造)を有するポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体等;ポリ塩化ビニル類;ナイロン6、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド等のポリアミド類、等を主成分(すなわち、50質量%よりも多く含まれる成分)とする樹脂フィルム等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルフィルムであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムであることがより好ましい。なお、上記樹脂フィルムを構成する樹脂材料は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0110】
樹脂フィルムの膜厚は、特に制限されないが、10μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上200μm以下であることがより好ましく、40μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
【0111】
樹脂フィルムは、表面処理をされていてもよい。表面処理としては、特に制限されず、公知の表面処理方法が挙げられる。
【0112】
表面保護フィルムは、樹脂フィルムおよび粘着剤層の他に、他の部材を含有してもよい。他の部材としては、特に制限されないが、例えば、樹脂フィルムと粘着剤層との間に設置される各種中間層や、粘着剤層の樹脂フィルム側の面とは反対側の面に貼合される剥離フィルム等が挙げられるが、これらの中でも当該剥離フィルムが特に好ましい。なお、各種中間層、剥離フィルムは、特に制限されず、表面保護フィルム分野で用いられる公知の中間層、剥離フィルムを用いることができる。剥離フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面をシリコーン剥離剤で処理したものを好ましく用いることができ、市販品としては、例えば、三菱樹脂株式会社製のダイヤホイル(登録商標)MRF83等が挙げられる。
【0113】
本発明の一形態に係る表面保護フィルムの製造方法は、特に制限されないが、粘着剤組成物自体、または粘着剤組成物溶液を樹脂フィルムの表面上に塗工し、必要に応じて加熱乾燥処理または加熱処理を行う方法であることが好ましい。なお、粘着剤層の形成方法の詳細は、上述した通りである。
【0114】
本発明の一形態に係る表面保護フィルムの粘着力は、粘着性とリワーク性との両立の観点から、被着体をガラスとした場合、15g/25mm以上90g/25mm以下であることが好ましく、20g/25mm以上90g/25mm以下であることがより好ましく、30g/25mm以上50g/25mm以下であることがさらに好ましい。なお、粘着力は、引張試験機を用いて測定することができ、測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0115】
また、本発明の一形態に係る表面保護フィルムの粘着剤層は、光照射処理によって粘着力が低下する。このため、本発明の一形態に係る表面保護フィルムは、粘着状態では極めて良好な粘着性を示しつつ、リワークの際に光照射を行うことによって、顕著に優れたリワーク性を示す。本発明の一形態に係る表面保護フィルムの光照射後の粘着力は、リワーク性の観点から、値が小さいほど好ましいが、被着体をガラスとした場合、10g/25mm以下であることが好ましく、7g/25mm以下であることがより好ましく、5g/25mm以下がさらに好ましい(下限0g/25mm)。なお、光照射後の粘着力は、引張試験機を用いて測定することができ、測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0116】
光照射処理における照射光としては、(E)成分による(B)成分の光重合、架橋を進行させることができれば特に制限されず、(E)成分および(B)成分の種類等によって適宜選択することができる。これらの中でも、制御性および取り扱い性の良さ、コストの点から紫外線であることが好ましく、波長200nm以上400nm以下の紫外線であることがさらに好ましい。光照射装置は、特に制限されないが、紫外線照射処理の場合、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ、UV光レーザー等の光源が例として挙げられる。光照射エネルギー量は、適宜設定されうるが、紫外線照射処理の場合、好ましくは50mJ/cm2以上5000mJ/cm2以下であることが好ましく、100mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下であることがより好ましく、300mJ/cm2以上1500mJ/cm2以下であることがさらに好ましい。
【0117】
本発明の一形態に係る表面保護フィルムの剥離帯電圧は、特に制限されないが、剥離後の粘着フィルムが帯電せず作業性に優れるとの観点から、値が小さいほど好ましく、絶対値が10kV以下であることが好ましく、2kV以下であることがより好ましく、0.5kV以下であることがさらに好ましく、0.3kV以下であることがよりさらに好ましく、0.2kV以下であることが特に好ましい(下限0kV)。なお、剥離帯電圧は、電位測定機を用いて測定することができ、測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0118】
本発明の一形態に係る表面保護フィルムは、被着体をガラスとした場合、表面保護フィルムの貼合、剥離後の被着体の表面抵抗が1.0×1016Ω/□以上であることが好ましい。なお、表面抵抗は、三菱ケミカルアナリテック社製のハイレスタ(登録商標)MCP-HT450等の抵抗率計を用いて測定することができ、測定方法の詳細は実施例に記載する。
【実施例】
【0119】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0120】
<粘着剤組成物の調製>
[粘着剤組成物1の調製]
(A)成分である東洋インキ株式会社製 商品名:サイアバイン(登録商標)SH101 100質量部に対して、(B)成分として新中村工業株式会社製 商品名:A-9550 125質量部、(C)成分として日油株式会社製 商品名:パーロイル(登録商標)TCP 5質量部、(D)成分として東ソー株式会社製 商品名:コロネート(登録商標)L-45E 14.8質量部、(E)成分としてIGM RESINS社製 商品名:IRGACURE(登録商標)TPO 2質量部、(F)成分として3Mジャパン株式会社製 商品名:3M(商標)イオン液体型帯電防止剤FC4400 5質量部を混合して粘着剤組成物1を調製し、(A)から(F)成分の合計の濃度が50質量%となるように酢酸エチルを加えて粘着剤組成物溶液1を調製した。
【0121】
[粘着剤組成物2から25の調製]
上記粘着剤組成物1の調製において、(A)から(F)成分の種類、添加量を下記表1および下記表2に記載のように変更して、各粘着剤組成物を調製し、各粘着剤組成物溶液を調製した。
【0122】
なお、下記表1および下記表2において、各(A)から(F)成分は以下を表すものとする。
【0123】
[(A)成分]
A1:サイアバイン(登録商標)SH101(2個以上の水酸基を有するウレタンプレポリマー、水酸基価18mgKOH/g、二重結合当量4000g/mol)、東洋インキ株式会社製、
A2:アートレジン(登録商標)UN5500(2個以上の水酸基と、アクリロイルオキシ基とを有し、かつポリカーボネート骨格を有する、ウレタンプレポリマー、水酸基価4.5mgKOH/g)、根上工業株式会社製。
【0124】
[(B)成分]
B1:A-9550(ジペンタエリスリトールポリアクリレート、水酸基価53mgKOH/g、二重結合当量110g/mol)、新中村工業株式会社製。
【0125】
[(C)成分]
C1:パーロイル(登録商標)TCP(ペルオキシ二炭酸ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)、1分間半減期温度92.1℃)、日油株式会社製。
【0126】
[(D)成分]
D1:コロネート(登録商標)L-45E、東ソー株式会社製、
D2:スタビオ(登録商標)D-376N、三井化学株式会社製、
D3:デュラネート(登録商標)E402-80B、旭化成株式会社製、
D4:NISSO-PB(登録商標)TP1001、日本曹達株式会社製。
【0127】
[(E)成分]
E1:IRGACURE(登録商標)TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド)、IGM Resins社製。
【0128】
[(F)成分]
F1:3M(商標)イオン液体型帯電防止剤FC4400(トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホンイミド)、3Mジャパン株式会社製。
【0129】
<粘着フィルムの製造>
[表面保護フィルム1の製造]
両面にAS処理(帯電防止処理)を施した厚さ75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面に、上記作製した粘着剤組成物溶液を、乾燥後の厚さが75μmとなるよう塗布した。次いで、PETフィルム上の塗膜を120℃の熱風循環式オーブンにて5分間乾燥させ、PETフィルム上に粘着剤層を形成した。続いて、粘着剤層の表面(PETフィルム側の面とは反対側の面)に、剥離フィルム(ダイヤホイル(登録商標)MRF38(厚さ38μmのPETフィルムの表面を、シリコーン剥離剤で処理したもの)、三菱樹脂株式会社製)を貼合した。その後、PETフィルムと、粘着剤層と、剥離フィルムとがこの順に積層されてなる積層体を23℃×50%RHの試験環境下、7日間放置して、粘着フィルム(表面保護フィルム1)を製造した。
【0130】
[表面保護フィルム2から25の製造]
上記表面保護フィルム1の製造において、粘着剤組成物溶液1を粘着剤組成物溶液2から5へと変更した以外は同様にして、各粘着フィルム(表面保護フィルム2から25)を製造した。
【0131】
<粘着フィルムの評価>
上記製造した各粘着フィルムについて、以下の評価を行った。各評価結果は、下記表1および下記表2に示す。
【0132】
[ガラス粘着力(粘着性)]
粘着フィルムを、幅25mm、長さ200mmに裁断した。次いで、質量2000gのゴムロール(厚さ6mmのゴム層で被覆された、幅45mm、直径(ゴム層を含む)95mmのロール、ロール表面のスプリング硬さ80Hs)を用いて、剥離フィルムを剥離した後の粘着フィルムの粘着剤層表面と無アルカリガラス(EAGLE XG(登録商標)、Corning社製)とを圧着した。続いて、23℃×50%RHの試験環境下、引張試験機を用いて、2400mm/分の剥離速度で180°の方向に、無アルカリガラスから粘着フィルムを剥離したときの強度を測定した。この値を粘着フイルム(表面保護フィルム)のガラス粘着力(g/25mm)とした。なお、ガラス粘着力は、15g/25mm以上90g/25mm以下である場合に良好であるとした。
【0133】
[紫外線照射後のガラス粘着力(リワーク性)]
粘着フィルムを、幅25mm、長さ200mmに裁断した。次いで、粘着フィルムに対して、PETフィルム側から、PETフィルム越しに、23℃×50%RHの試験環境下、メタルハライドランプにて300mJ/cm2の紫外線を照射し、粘着剤層の硬化を進行させた。続いて、上記ガラス粘着力の測定と同様にしてガラス粘着力を測定した。この値を粘着フイルム(表面保護フィルム)の紫外線照射後のガラス粘着力(g/25mm)とした。紫外線照射後のガラス粘着力は、10g/25mm以下である場合に良好であるとした。
【0134】
[打ち抜き加工性(粘着剤層の脱落の発生頻度)]
粘着フィルムから剥離フィルムを剥離した。次いで、JIS K5600-5-4:1999に記載の引っかき硬度試験法を参照して、粘着剤層表面に、SUS製の先端が1mmφのPENを45度の角度で500gおよび1000gの荷重で押し付け、2cm滑らせたときの粘着剤カスの発生有無を確認した。打ち抜き時の粘着剤層の脱落の発生頻度と当該試験における粘着剤カスの発生の程度とが対応する傾向を確認しており、当該試験結果は打ち抜き加工性の指標として用いることができる。以下の基準に従って粘着フィルム(表面保護フィルム)の打ち抜き加工性を評価し、○以上が良好な結果であるとした。
【0135】
(評価基準)
◎:1000g荷重において、粘着剤カスが発生しなかった、
○:500g荷重において、粘着剤カスが発生しなかった、
△:500g荷重において、粘着剤層の一部で粘着剤カスが発生した、
×:500g荷重において、粘着剤層の全面で粘着剤カスが発生した。
【0136】
[剥離帯電圧]
上記ガラス粘着力の測定と同様にして、粘着フィルムと無アルカリガラス(EAGLEXG(登録商標)、Corning社製)とを圧着した後、無アルカリガラスから粘着フィルムを剥離した。剥離の際に発生する粘着フィルムの電位を、23℃、50%RHの環境下で、該粘着フィルムの中央から高さ30mmの位置に固定してある電位測定機(STATIRON(登録商標)DZ4、シシド静電気株式会社製)を用いて測定した。この値を粘着フィルム(表面保護フィルム)の剥離帯電圧とした。なお、剥離帯電圧は、値が小さいほど好ましい。
【0137】
[ガラス汚染性]
上記ガラス粘着力の測定と同様にして、粘着フィルムと無アルカリガラス(EAGLE XG(登録商標)、Corning社製)とを圧着した後、無アルカリガラスから粘着フィルムを剥離した。次いで、粘着フィルムの剥離後の無アルカリガラスについて、表面の付着物の有無を目視で確認し、抵抗率計(ハイレスタ(登録商標)MCP-HT450、三菱ケミカルアナリテック社製)を用いて表面抵抗を測定した。粘着フィルム(表面保護フィルム)のガラス汚染性は、以下の基準に従って評価した。
【0138】
(評価基準)
○:付着物なし、表面抵抗1.0×1016Ω/□以上、
△:付着物なし、表面抵抗1.0×1016Ω/□以下、
×:付着物あり、表面抵抗1.0×1016Ω/□以下。
【0139】
【0140】
【0141】
上記表1および上記表2に示した結果から、本発明の範囲外である比較例に係る粘着剤組成物21から25は(C)成分を含有せず、これらの粘着剤組成物から形成された粘着剤層を有する表面保護フィルム21から25は、粘着剤層の脱落の発生が高頻度で発生することが確認された。
【0142】
一方、本発明の範囲内である実施例に係る粘着剤組成物1から20から形成された粘着剤層を有する表面保護フィルム1から20は、粘着性とリワーク性とを高いレベルで両立し、かつ粘着剤層の脱落の発生が低減することが確認された。