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特許7064904人体検出装置、人体検出システム、プログラムおよび人体検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】人体検出装置、人体検出システム、プログラムおよび人体検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 8/20 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
G01V8/20 P
G01V8/20 Q
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2018034147
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019148525
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 亮介
(72)【発明者】
【氏名】中三川 京弥
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-298602(JP,A)
【文献】特開平11-114346(JP,A)
【文献】特開平04-225191(JP,A)
【文献】特開2008-268134(JP,A)
【文献】特開2006-346180(JP,A)
【文献】特開平06-148341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 8/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線センサの出力に基づく信号を取得する取得部と、
前記赤外線センサの出力に基づく信号の経時変化の特性を推定する推定部と、
前記特性に基づいて、前記赤外線センサの視野内における赤外線の放射体が人体か否かを判定する第1判定部と、
を備え
前記特性は、前記赤外線センサの出力に基づく信号の値と、時間との関係を近似した近似関数の少なくとも1つのパラメータである、人体検出装置。
【請求項2】
前記第1判定部は、前記少なくとも1つのパラメータのそれぞれが基準範囲に含まれるか否かを判定することで前記放射体が人体か否かを判定する、
請求項に記載の人体検出装置。
【請求項3】
赤外線センサの出力に基づく信号を取得する取得部と、
前記赤外線センサの出力に基づく信号の経時変化の特性を推定する推定部と、
前記特性に基づいて、前記赤外線センサの視野内における赤外線の放射体が人体か否かを判定する第1判定部と、
を備え
前記特性は、前記赤外線センサの出力に基づく信号の値と、時間との関係を近似した近似関数の残差の絶対値または二乗平均に基づく値である、人体検出装置。
【請求項4】
前記第1判定部は、前記残差の二乗平均が基準範囲に含まれるか否かを判定することで前記放射体が人体か否かを判定する、
請求項に記載の人体検出装置。
【請求項5】
赤外線センサの出力に基づく信号を取得する取得部と、
前記赤外線センサの出力に基づく信号の経時変化の特性を推定する推定部と、
前記特性に基づいて、前記赤外線センサの視野内における赤外線の放射体が人体か否かを判定する第1判定部と、
を備え
前記特性は、前記赤外線センサの出力に基づく信号の値と、時間との関係を近似した近似関数から予測される信号値である、人体検出装置。
【請求項6】
前記第1判定部は、前記予測される信号の値と基準閾値とを比較することで前記放射体が人体か否かを判定する、
請求項に記載の人体検出装置。
【請求項7】
互いに視野が異なる複数の前記赤外線センサを備え、
前記複数の赤外線センサは、机の下部空間の手前側に視野を有する赤外線センサと、前記下部空間の奥側に視野を有する赤外線センサとを有する、
請求項1から6の何れか一項に記載の人体検出装置。
【請求項8】
前記第1判定部は、前記放射体が人体であるか、人体からの余熱を放出する物体であるかを判定する、
請求項1から7の何れか一項に記載の人体検出装置。
【請求項9】
前記近似関数は、指数関数である、
請求項1から8のいずれか1項に記載の人体検出装置。
【請求項10】
前記近似関数は、線形関数である、
請求項1から8のいずれか1項に記載の人体検出装置。
【請求項11】
前記推定部は、最小二乗法または非線形最小二乗法によって前記近似関数を算出する、
請求項9または10に記載の人体検出装置。
【請求項12】
前記赤外線センサの出力に基づく信号から、前記視野内に人体が存在しているか否かを、前記第1判定部とは異なる判定手法により判定する第2判定部と、
前記第1判定部の判定結果及び前記第2判定部の判定結果に基づいて、人体の存在を検出する検出部と、
をさらに備える請求項1から1のいずれか1項に記載の人体検出装置。
【請求項13】
前記第1判定部によって前記放射体が人体ではないと判定された場合に、前記赤外線センサの出力に基づく信号の値から基準補正値を減算して補正信号を出力する信号補正部を備え、
前記第2判定部は、前記補正信号を用いて判定する、
請求項1に記載の人体検出装置。
【請求項14】
互いに視野が異なる複数の前記赤外線センサを備え、
前記第2判定部は、前記複数の赤外線センサの出力に基づく信号同士の差分から、前記視野内に人体が存在しているか否かを判定する、
請求項1に記載の人体検出装置。
【請求項15】
前記信号補正部は、前記第1判定部によって前記放射体が人体でないと判定された場合の前記複数の赤外線センサそれぞれの信号を、当該赤外線センサの信号に対する前記基準補正値として用いる、
請求項1に記載の人体検出装置。
【請求項16】
前記複数の赤外線センサは、机の下部空間の手前側に視野を有する赤外線センサと、前記下部空間の奥側に視野を有する赤外線センサとを有する、
請求項14または15に記載の人体検出装置。
【請求項17】
請求項1から1のいずれか1項に記載の人体検出装置と、
前記赤外線センサと、
を備える人体検出システム。
【請求項18】
コンピュータを、
赤外線センサの出力に基づく信号を取得する取得部と、
前記赤外線センサの出力に基づく信号の経時変化の特性を推定する推定部と、
前記特性に基づいて、前記赤外線センサの視野内における赤外線の放射体が人体か否かを判定する第1判定部
として機能させ
前記特性は、前記赤外線センサの出力に基づく信号の値と、時間との関係を近似した近似関数の少なくとも1つのパラメータであるプログラム。
【請求項19】
コンピュータを、
赤外線センサの出力に基づく信号を取得する取得部と、
前記赤外線センサの出力に基づく信号の経時変化の特性を推定する推定部と、
前記特性に基づいて、前記赤外線センサの視野内における赤外線の放射体が人体か否かを判定する第1判定部
として機能させ
前記特性は、前記赤外線センサの出力に基づく信号の値と、時間との関係を近似した近似関数の残差の絶対値または二乗平均に基づく値であるプログラム。
【請求項20】
コンピュータを、
赤外線センサの出力に基づく信号を取得する取得部と、
前記赤外線センサの出力に基づく信号の経時変化の特性を推定する推定部と、
前記特性に基づいて、前記赤外線センサの視野内における赤外線の放射体が人体か否かを判定する第1判定部
として機能させ
前記特性は、前記赤外線センサの出力に基づく信号の値と、時間との関係を近似した近似関数から予測される信号値であるプログラム。
【請求項21】
赤外線センサの出力に基づく信号を取得する取得段階と、
前記信号の経時変化の特性を推定する推定段階と、
前記特性に基づいて、前記赤外線センサの視野内における赤外線の放射体が人体か否かを判定する第1判定段階と、
を備え
前記特性は、前記赤外線センサの出力に基づく信号の値と、時間との関係を近似した近似関数の少なくとも1つのパラメータである人体検出方法。
【請求項22】
赤外線センサの出力に基づく信号を取得する取得段階と、
前記信号の経時変化の特性を推定する推定段階と、
前記特性に基づいて、前記赤外線センサの視野内における赤外線の放射体が人体か否かを判定する第1判定段階と、
を備え
前記特性は、前記赤外線センサの出力に基づく信号の値と、時間との関係を近似した近似関数の残差の絶対値または二乗平均に基づく値である人体検出方法。
【請求項23】
赤外線センサの出力に基づく信号を取得する取得段階と、
前記信号の経時変化の特性を推定する推定段階と、
前記特性に基づいて、前記赤外線センサの視野内における赤外線の放射体が人体か否かを判定する第1判定段階と、
を備え
前記特性は、前記赤外線センサの出力に基づく信号の値と、時間との関係を近似した近似関数から予測される信号値である人体検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体検出装置、人体検出システム、プログラムおよび人体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線センサを用いて人体の検出を行う様々な手法が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
特許文献1 特許第5308898号
特許文献2 特会2014-75755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、検出精度の向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、赤外線センサの出力に基づく信号を取得する取得部と、赤外線センサの出力に基づく信号の経時変化の特性を推定する推定部と、特性に基づいて、赤外線センサの視野内における赤外線の放射体が人体か否かを判定する第1判定部と、を備える人体検出装置が提供される。
【0005】
本発明の第2の態様においては、第1の態様の人体検出装置と、赤外線センサと、を備える人体検出システムが提供される。
【0006】
本発明の第3の態様においては、コンピュータを、赤外線センサの出力に基づく信号を取得する取得部と、赤外線センサの出力に基づく信号の経時変化の特性を推定する推定部と、特性に基づいて、赤外線センサの視野内における赤外線の放射体が人体か否かを判定する第1判定部として機能させるプログラムが提供される。
【0007】
本発明の第4の態様においては、赤外線センサの出力に基づく信号を取得する取得段階と、信号の経時変化の特性を推定する推定段階と、特性に基づいて、赤外線センサの視野内における赤外線の放射体が人体か否かを判定する第1判定段階と、を備える人体検出方法が提供される。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る人体検出システムを示すブロック図である。
図2】複数の赤外線センサの配置状態を示す。
図3】本実施形態に係る人体検出装置の動作を示すフローチャートである。
図4】赤外線センサからの出力に基づく信号(y、y)の波形を示す。
図5】信号(z、z)同士の差分と、人体が存在するかの判定結果との関係を示す。
図6】赤外線センサからの出力に基づく信号(y、y)の波形、信号(z、z)の波形、および、人体の検出結果を示す。
図7】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0011】
[1.人体検出システムの構成]
図1は、本実施形態に係る人体検出システム1を示すブロック図である。人体検出システム1は、対象とする空間内で人体を検出するものであり、1または複数の赤外線センサ20と、人体検出装置10とを備える。本実施形態では一例として、人体検出システム1は、フリーアドレスオフィスにおいて各座席空間で人体を検出するものであり、座席空間ごとに1または複数の赤外線センサ20と、人体検出装置10とを備えてよい。
【0012】
[1-1.赤外線センサ]
各赤外線センサ20は、視野(例えば観察可能な範囲)内から受光した赤外線に基づいて信号を出力するセンサである。赤外線センサ20による赤外線の検知距離は1m程度でよい。
【0013】
赤外線センサ20は、赤外線エネルギーを吸収することによって発生する温度変化を利用する熱型赤外線センサであってもよいし、入射した光エネルギーで励起された電子によって生じる導電率の変化または起電力を利用する量子型赤外線センサであってもよい。
【0014】
熱型赤外線センサとしては、焦電効果を用いた焦電素子、熱電効果を用いた熱電対およびサーモパイル、温度による電気抵抗の変化効果を用いたボロメータ等が挙げられる。量子型赤外線センサとしては、外部光電効果を用いた光電管、内部光電効果を用いた光伝導型センサおよび光起電力型センサが挙げられる。光伝導型センサおよび光起電力型センサとしては、テルル化カドミウム水銀を含む材料(HgCdTe等)、インジウムおよびアンチモン、砒素を含む材料(InSb、InAsSb、InAs等)等を素子素材としたフォトダイオードおよびフォトトランジスタが挙げられる。
【0015】
熱型赤外線センサと量子型赤外線センサとの間では、量子型赤外線センサが好ましい。量子型赤外線センサは、入射される赤外線のエネルギーの絶対量を検知できるためである。また、赤外線センサ20は、非冷却で動作可能であることが好ましく、低消費電力の観点からバイアス不要で動作可能であることが好ましい。
【0016】
なお、本実施形態では一例として、人体検出装置10にはN個(但しNは2以上の整数)の赤外線センサ20(赤外線センサ20,…20とも称する)が接続されている。ここで、添え字の「1」,…「N」は赤外線センサ20の識別番号を表す。赤外線センサ20の順序は任意に設定されてよい。
【0017】
N個の赤外線センサ20は、互いに視野が異なってよく、少なくとも一部の赤外線センサ20同士で視野が重なっていてもよい。N個の赤外線センサ20は、同一の基板(例えばプリント基板)上に配置されてもよく、異なる基板上にそれぞれ配置されてもよい。量子型赤外線センサを用いる場合は、同一の半導体基板(例えばGaAs基板またはSi基板)上にN個の半導体積層構造を形成し、これをN個の赤外線センサとして使用してもよい。この場合、N個の赤外線積層構造に対する赤外線の入射角(視野角)をそれぞれ制御してもよい。一例として、N個の赤外線センサ20は、旭化成エレクトロニクス社製の赤外線センサ「AK9750」(商品名)であってよい。
【0018】
[1-2.人体検出装置]
人体検出装置10は、N個の赤外線センサ20に接続されており、取得部101と、信号補正部102と、格納部103と、推定部104と、第1判定部105と、第2判定部106と、検出部107とを備える。これらの構成はアナログ回路、デジタル回路、および、プログラムにより動作するプロセッサまたはマイクロコントローラのいずれかまたはその組み合わせを用いて構成されてよい。
【0019】
[1-2-1.取得部]
取得部101は、N個の赤外線センサ20の出力に基づく信号(y)(信号(y,…y,…y)とも称する)をそれぞれ取得する。ここで、赤外線センサ20の出力に基づく信号とは、出力そのものでもよいし、当該出力にA/D変換および増幅等の信号処理が施されたものでもよい。信号(y)(但し、nは1≦n≦Nの整数)とは、n番目の赤外線センサ20による出力に基づく信号(y)である。後述の補正信号(z)等についても同様である。
【0020】
取得部101は、赤外線センサ20が出力する毎に信号(y)を取得してもよいし、基準時間の経過毎に取得してもよい。異なる赤外線センサ20の間で取得タイミングは厳密に一致していなくてもよく、例えば10ms未満の誤差を含んでよい。取得部101は、赤外線センサ20に有線接続されてもよいし、無線接続されてもよい。取得部101は、信号(y)を取得する毎に、当該信号(y)を取得部101による取得タイミングの時刻と対応付けて信号補正部102に供給してよい。なお、赤外線センサ20が出力タイミングの時刻を含めて出力を行う場合には、取得部101は、信号(y)を赤外線センサ20からの出力タイミングの時刻と対応付けて信号補正部102に供給してもよい。
【0021】
[1-2-2.信号補正部]
信号補正部102は、第1判定部105による判定結果に応じて信号(y)の値から基準補正値を減算した信号(z)(信号(z,…z,…z)とも称する)を出力する。信号(z)は補正信号の一例である。信号補正部102は、信号(z)を、取得部101による取得タイミングと対応付けて格納部103に供給してよい。
【0022】
[1-2-3.格納部]
格納部103は、信号(z)をバッファリングする。格納部103は、バッファリングされた1または複数の信号(z)を、取得部101による取得タイミングと対応付けて推定部104に供給してよい。また、格納部103は、バッファリングされた1または複数の信号(z)を第2判定部106に供給してよい。
【0023】
[1-2-4.推定部]
推定部104は、信号(z)の経時変化の1または複数の特性を推定する。信号(z)の経時変化の特性とは、例えば信号(z)の値と、時間(t)との関係を近似した近似関数z=f(t)によって定まる性質でよい。推定部104は、推定した特性を第1判定部105に供給してよい。
【0024】
[1-2-5.第1判定部]
第1判定部105は、推定部104から供給される特性に基づいて、赤外線センサ20の視野内における赤外線の放射体が人体か否かを判定する。例えば、第1判定部105は、放射体が人体であるか、人体からの余熱を放出する物体であるかを判定してよい。人体からの余熱とは、人体から受けて物体に残存する熱でよい。人体から受ける熱は熱伝導に起因してもよいし、対流,輻射に起因してもよい。余熱を放出する物体は、一例として椅子の座板、背もたれ、ひじ掛け、ヘッドレストでもよいし、机の上面でもよいし、キーボードおよび/またはマウスでもよいし、床でもよい。第1判定部105は、判定結果を信号補正部102および検出部107に供給してよい。
【0025】
[1-2-6.第2判定部]
第2判定部106は、信号(z)から、視野内に人体が存在しているか否かを判定する。例えば、第2判定部106は、信号補正部102により補正された信号(z)を用いて判定を行ってよい。第2判定部106による判定手法は、推定部104および第1判定部105による判定手法と異なってよい。第2判定部106は、判定結果を検出部107に供給してよい。
【0026】
[1-2-7.検出部]
検出部107は、第1判定部105の判定結果及び第2判定部106の判定結果に基づいて、人体の存在を検出する。検出部107は、検出結果を外部の装置に出力してよい。例えば、検出部107は、座席の空き状況を表示する表示装置に検出結果を出力してよい。これにより、使用可能な座席がフリーアドレスオフィスの利用者に提示される。これに加えて/代えて、検出部107は、座席ごとの照明装置および/または空調装置に対して検出結果を出力してよい。これにより、使用中の座席のみに対して照明および/または空調を行うことができる。
【0027】
以上の人体検出システム1によれば、信号の経時変化の特性を推定して赤外線の放射体が人体か否かの判定に用いるので、放射体が人体であるか否かを正確に判定することができる。従って、視野内における人体の有無を正確に検出することができる。
【0028】
また、第1判定部105および第2判定部106の判定結果に基づいて人体の存在を検出するので、何れか一方の判定結果のみから人体の存在を検出する場合と比較して、検出の精度を高めることができる。
【0029】
[2.赤外線センサの配置]
図2は、複数の赤外線センサ20の配置状態を示す。本実施形態では一例として、複数の赤外線センサ20は、机200の下部空間の手前側に視野を有する赤外線センサ20と、下部空間の奥側に視野を有する赤外線センサ20とを有する。なお、机200は座席空間ごとに設けられてもよいし、複数の座席空間にわたって(一例として図の紙面の表面側から裏面側に向かう方向に延在して)設けられてもよい。また、各座席空間には椅子201が配置されてよい。椅子201は不使用時に机200の下部空間に収納可能であってよい。
【0030】
ここで、図中の右側部分に示すように、赤外線センサ20,20は、人体100が座席空間に存在する場合、つまり椅子201に座っている場合には、人体100の脚部から放射される赤外線を検出してよい。この場合、視野内に占める脚部の割合から、赤外線センサ20の出力は赤外線センサ20の出力よりも大きくてよい。
【0031】
また、図中の左側部分に示すように、赤外線センサ20,20は、人体100が座席空間に存在しない場合、つまり椅子201に座っていない場合には、床および/または椅子201から放射される赤外線を検出してよい。ここで、椅子201の座板には人体100の体温が伝達されるため、人体100が椅子201から立ち上がった場合には、座板から余熱が放出される。そのため、人体100が座席空間から離れて机200の下部空間に椅子201が収納された場合には、赤外線センサ20,20は、椅子201の座板から放射される赤外線を検出してよい。この場合、視野内に占める座板の割合から、赤外線センサ20の出力は赤外線センサ20の出力よりも大きくてよい。
【0032】
[3.人体検出装置の動作]
図3は、本実施形態に係る人体検出装置10の動作を示すフローチャートである。人体検出装置10は、S1~S15の処理を実行することにより、対象とする空間(本実施形態では一例として座席空間)に人体100が存在するか否かを推定する。なお、以下で説明する動作は人体検出システム1が起動されることにより開始してよい。
【0033】
まず、ステップS1において取得部101が赤外線センサ20の出力に基づく信号(y)を取得する。本実施形態では一例として、取得部101は、机の200の下部空間の手前側に視野を有する赤外線センサ20から信号(y)を取得し、下部空間の奥側に視野を有する赤外線センサ20から信号(y)を取得してよい。
【0034】
次に、ステップS3において信号補正部102が後述のステップS9での第1判定部105による判定結果に応じて信号(y)を補正し、補正後の信号(z)を出力する。例えば、信号補正部102は、第1判定部105によって赤外線の放射体が人体100ではないと判定された場合(一例として放射体が椅子201の座板であると判定された場合)に、信号(y)の値から基準補正値を減算して信号(y)を補正する。基準補正値は後述のステップ11の処理で設定されてよい。信号補正部102は、第1判定部105によって放射体が人体100であると判定された場合には、信号(y)をそのまま信号(z)としてよい。
【0035】
次に、ステップS5において格納部103が信号(z)をバッファリングする。格納部103は、赤外線センサ20ごとに信号(z)をバッファリングしてよい。格納部103は、推定部104により信号(z)の経時変化の特性が推定されうる量の信号(z)をバッファリングしてよい。一例として、格納部103は、各赤外線センサ20について30秒分の信号(z)をバッファリングしてよい。
【0036】
次に、ステップS7において推定部104が信号の経時変化の特性を推定する。例えば、推定部104は、格納部103でバッファリングされた複数の信号(z)の値と、時間(t)との関係を近似した近似関数z=f(t)を算出し、近似関数z=f(t)の少なくとも1つのパラメータを特性として推定してよい。これに加えて/代えて、推定部104は、近似関数z=f(t)の残差の二乗平均に基づく値errを特性として推定してよい。残差とは、近似関数から推測される信号値と、信号(z)の値との誤差でよい。残差の二乗平均に基づく値とは、二乗平均の値から導出される値でよい。値errは、残差の絶対値に基づく値でもよい。推定部104は、机200の下部空間の手前側に視野を有する設置された赤外線センサ20の信号(z)について特性を推定してよい。
【0037】
例えば、推定部104は、指数関数を近似関数としてよく、非線形最小二乗法によって近似関数を算出してよい。一例として、推定部104は、指数関数z=aebt+c(指数関数(1)と称する)を近似関数として算出してよい。また、推定部104は、パラメータa,b,cのうち信号(z)の減少速度に影響するパラメータbを経時変化の特性として推定してよい。なお、推定部104は、パラメータaの値を信号(z)の減少開始点から算出してよく、パラメータcの値を定数(一例として格納部103に記憶済みの信号(z)の最小値からマージン(α)を減算した値)を用いてよい。マージン(α)としては20,30などの任意の数を用いてよい。指数関数を近似関数とする場合には、信号(z)の経時変化がニュートンの冷却の法則に従うものか否かを判定することができるため、信号(z)の経時変化が熱放出によるものか否かを正確に判定することができる。
【0038】
これに代えて、推定部104は、線形関数を近似関数としてもよく、最小二乗法によって近似関数を算出してよい。一例として、推定部104は、zt平面における各信号(z)のプロットを、Z=ln(z-c),T=tで表されるZT平面内のプロットへと変換して、信号(Z)の値と、時間(T)との関係を近似した線形関数Z=A+BT(線形関数(2)と称する)を近似関数として算出してよい。また、推定部104は、この近似関数のパラメータA,Bおよび/または残差の二乗平均errを信号(z)の経時変化の特性として推定してよい。近似関数を線形関数とする場合には、他の関数とする場合と比較して近似を容易化することができる。なお、線形関数は、区分的に定義される区分線形関数でもよい。
【0039】
ここで、線形関数(2)は指数関数(1)(一例としてz=aebt+c)の項cを右辺に移項し、両辺の自然対数を取って指数関数(1)をln(z-c)=ln(a)+btに変形し、Z=ln(z-c),A=ln(a),B=b,T=tの置換を行うことで導出される。そのため、本実施形態では一例として、推定部104は線形関数(2)のパラメータA,Bから更に指数関数(1)のパラメータa,bを算出する。これにより、線形関数(2)の近似計算を行うことで、指数関数(1)のパラメータを算出することができる。また、推定部104は、線形関数(2)から推測される信号値と、信号(Z)の値との差を残差として用い、その二乗平均errを算出する。
【0040】
次に、ステップS9において第1判定部105が経時変化の特性に基づいて、赤外線センサ20の視野内における赤外線の放射体が人体100か否かを判定する。例えば、第1判定部105は、推定された少なくとも1つのパラメータのそれぞれが基準範囲に含まれるか否かを判定することで放射体が人体100か否かを判定してよい。これに加えて/代えて、第1判定部105は、推定された残差の二乗平均errが基準範囲に含まれるか否かを判定することで放射体が人体100か否かを判定してよい。本実施形態においては一例として、第1判定部105はパラメータbが一般的な温度低下の範囲である-0.035≦b≦-0.015を満たし、かつ、残差の二乗平均errがerr≦0.03を満たす場合に、放射体が人体100ではなく椅子201の座板であると判定し、これ以外の場合には放射体が人体100であると判定してよい。なお、パラメータbおよび残差の二乗平均の範囲はこれに限らず、例えば-0.015<b≦-0.01かつerr≦0.01でもよい。
【0041】
次に、ステップS11において信号補正部102が基準補正値を設定する。例えば、信号補正部102は、ステップS9において放射体が人体100でないと判定された場合には、複数の赤外線センサ20それぞれの信号(z)を、当該赤外線センサ20の信号(y)に対する基準補正値として設定する。一例として、信号補正部102は、ステップS11の処理が複数回行われる結果、放射体が人体100ではないとして判定内容が切り替わったときの赤外線センサ20,20からの信号(z,z)の値を、以降のステップS3の処理で信号(y,y)から信号(z,z)への補正に用いる基準補正値として設定してよい。
【0042】
信号補正部102は、ステップS9において放射体が人体100であると判定された場合には、各赤外線センサ20の信号に対する基準補正値を0に設定してよい。これに加え、信号補正部102は、机200の下部空間に配置された椅子201の座板が十分に冷えたと判断される場合(例えば信号(z,z)同士の差分が閾値Dth1(一例としてDth1<0)を下回った場合)に各赤外線センサ20の信号に対する基準補正値を0に設定してもよい。また、信号補正部102は、椅子201が引かれたと判断される場合(例えば信号(y,y)同士の差分が0であると判断される場合)に各赤外線センサ20の基準補正値を0に設定してもよい。一例として、信号補正部102は、現時点での基準補正値を設定した時点での信号(z,z)同士の差分と、現時点での信号(z,z)同士の差分の正負を反転した値とが等しくなる場合に、当該基準補正値を0に設定してもよい。
【0043】
次に、ステップS13において第2判定部106が複数の赤外線センサ20の出力に基づく信号同士の差分から、視野内に人体100が存在しているか否かを判定する。例えば、第2判定部106は差分が閾値Dth2(一例として、閾値Dth2はDth1の正負を反転した値)より大きい場合に人体100が存在すると判定するが、差分が閾値より小さい場合に人体100が存在すると判定してもよい。
【0044】
ここで、本実施形態では一例として、ステップS9で放射体が人体100であると判定される場合には、ステップS11で各赤外線センサ20の基準補正値が0に設定され、ステップS3で信号(y)がそのまま信号(z)とされる。そのため、視野内に占める脚部の割合から、赤外線センサ20の出力に基づく信号(y,z)は、赤外線センサ20の出力に基づく信号(y,z)よりも大きくてよい。また、ステップS9で放射体が人体100ではないと判定される場合には、各赤外線センサ20の信号(z)がステップS11で当該赤外線センサ20の基準補正値として設定され、ステップS3で信号(y)から信号(z)への補正に用いられる。そのため、視野内の環境に変化がない限り、視野内に占める座板の割合から赤外線センサ20の出力に基づく信号(y)は赤外線センサ20の出力に基づく信号(y)よりも大きくなり得るが、信号(z,z)同士の差分は0近傍となる。以上より、第2判定部106は、信号(z)から信号(z)を減算した差分が閾値Dth2よりも大きい場合には視野内に人体100が存在すると判定し、当該差分が閾値Dth2よりも小さい場合には視野内に人体100が存在しないと判定してよい。第2判定部106は、ステップS9で放射体が人体であると判定される場合と、人体でないと判定される場合とで、閾値Dth2を切り替えてもよい。また、第2判定部106は、ステップS13で人体が存在すると判定した場合と、人体が存在しないと判定した場合とで閾値Dth2を切り替えて判定にヒステリシス特性を持たせてよい。
【0045】
次に、ステップS15において検出部107が、判定結果に基づいて人体100の存在を検出する。例えば検出部107は、第1判定部105により放射体が人体100であると判定され、かつ、第2判定部106により人体100が存在していると判定された場合に座席空間に人体100が存在すると検出してよい。また、本実施形態においては第1判定部105の判定結果に応じて信号補正部102により補正された信号(z)を用いて第2判定部106が判定を行うため、検出部107は第2判定部106により人体100が存在していると判定された場合に人体100が存在すると検出してもよい。なお、検出部107は、検出の内容が切り替わった場合には、判定に用いられた信号(z)のタイミングまで遡って検出結果の履歴を変更してよい。例えば、検出部107は、人体100が存在すると検出内容が切り替わった場合に、人体100が存在しないと検出していた過去の期間の少なくとも一部について、人体100が存在していたと検出結果の履歴を変更してよい。一例として、検出部107は、推定部104で特性推定に用いられた最も古い信号(z)の取得タイミングまで遡って検出結果の履歴を変更してよい。
【0046】
以上の動作によれば、信号(z)の値と、時間(t)との関係を近似した近似関数の少なくとも1つのパラメータのそれぞれが基準範囲に含まれるか否かを判定することで放射体が人体100か否かが第1判定部105により判定される。従って、信号(z)の変化を正確に推定し、放射体が人体100であるか否かを正確に判定することができる。
【0047】
また、近似関数の残差が基準範囲に含まれるか否かを判定することで放射体が人体100か否かが第1判定部105により判定される。従って、信号(z)の変化が近似関数で正確に近似し得るかを判定し、放射体が人体100であるか否かをより正確に判定することができる。
【0048】
また、第1判定部105により放射体が人体100ではないと判定された場合に基準補正値を減算した補正信号を用いて第2判定部106が人体100の有無を判定するので、第1判定部105による判定結果を第2判定部106による判定に影響させ、判定精度を高めることができる。
【0049】
また、第2判定部106が信号(z)同士の差分から視野内に人体100が存在しているか否かを判定するので、人体100が存在するとき、および/または、人体100が存在しないときに複数の赤外線センサ20の間で出力が異なるように赤外線センサ20が設置される場合に、人体100が存在しているか否かを正確に検出することができる。
【0050】
また、放射体が人体100でないと判定された場合の赤外線センサ20それぞれの信号(z)が当該赤外線センサ20の信号(y)に対する基準補正値として用いられるので、人体100が存在しないときの差分を概ね0にすることができる。従って、このような差分を用いることにより、人体100が存在するか否かを正確に判定することができる。
【0051】
[4.動作の具体例]
[4-1.信号(y)の波形]
図4は、赤外線センサ20,20からの出力に基づく信号(y、y)の波形を示す。図中の横軸は時間(秒)を示し、縦軸は信号(y)の値(任意単位)を示す。
【0052】
図中、上側のグラフは、時点t11で椅子201に人が座った場合の波形を示す。このグラフに示されるように、時点0~t11の期間では、視野内に占める座板および床面の割合の違いから、信号(y、y)の値に差分が生じている。また、時点t11で椅子201に人が座ると、人体100の脚部から放射される赤外線によって信号(y、y)の値がそれぞれ高くなる。また、視野内に占める脚部の割合の違いから信号(y、y)の差分が大きくなり、一例として200程度となる。
【0053】
また、図中、下側のグラフでは、時点t21で椅子201を引いて人が立ち上がり、時点t22で椅子201を収納した後、時点t23で椅子201が引かれて椅子201に人が座った場合の波形を示す。このグラフに示されるように、時点t21、t23で椅子201が引かれると視野内を床面が占める結果、信号(y、y)の値がそれぞれ下がり、差分が小さくなる。また、時点t22で椅子201が机200の下部空間に収納されると、余熱として座板から放射される赤外線によって信号(y、y)の値がそれぞれ高くなり、視野内に占める座板の割合の違いから信号(y、y)の差分が大きくなり、一例として200程度となる。そして、座板の余熱が放出されるにつれて信号(y、y)の値がそれぞれ低くなる。また、信号(y、y)の差分が小さくなり、一例として100程度となる。なお、本実施形態では一例として、人体100が椅子201に座っている場合に脚部が視野内に占める割合よりも、椅子201が収納された場合に座板が視野内に占める割合の方が大きい。そのため、人体100が椅子201に座っている場合(上側のグラフの時点t11以降を参照)よりも、人体100が離席して椅子201を収納した直後の方が信号(y、y)の値が大きい。
【0054】
[4-2.信号(z)の差分による判定]
図5は、信号(z、z)同士の差分と、人体100が存在するかの判定結果との関係を示す。図中の横軸は時間(秒)を示し、縦軸は信号(z)同士の差分(任意単位)を示す。
【0055】
第2判定部106は、格納部103に格納された過去の複数のタイミングでの信号同士の差分をそれぞれ閾値Dth2と比較して、閾値Dth2より大きい差分の割合が基準割合(一例として5割)を超える場合に人体100が存在していると判定してよい。過去の複数のタイミングでの信号同士の差分とは、直近のタイムウィンドウΔT内の信号同士の差分でよく、例えば格納部103にバッファリングされる期間(本実施形態では一例として30秒)内での信号同士の差分でよい。
【0056】
例えば、時点t31,t32において第2判定部106は、直近のタイムウィンドウΔT(図中、左側,中央の破線枠)内の差分のうち、閾値Dth2より大きい差分の割合が5割を超えることから、人体100が存在していると判定してよい。また、時点t33において第2判定部106は、直近のタイムウィンドウΔT(図中、右側の破線枠)内の差分のうち、閾値Dth2より大きい差分の割合が5割を超えないことから、人体100が存在していないと判定してよい。
【0057】
[4-3.動作例]
図6は、赤外線センサ20,20からの出力に基づく信号(y、y)の波形、信号(z、z)の波形、および、人体100の検出結果を示す。なお、図中、上段,中段のグラフは、時点t41で椅子201を引いて人が立ち上がり椅子201を収納した後、時点t44で再び椅子201が引かれて椅子201に人が座った場合の信号(y、y),信号(z、z)の波形を示す。
【0058】
まず、時点0~t42の期間では信号(z)の近似関数z=aebt+cのパラメータbおよび残差の二乗平均errが-0.035≦b≦-0.015およびerr≦0.03の少なくとも一方を満たさないとして、放射体が人体100であると判定される(S9)。これにより、基準補正値が0に設定されて(S11)、赤外線センサ20,20からの信号(y,y)がそのまま信号(z,z)とされる(S3)。そして、過去の複数のタイミングでの信号(z,z)同士の差分のうち、閾値Dth2より大きい差分が基準割合よりも多いと判定されて、人体100が存在すると判定される結果(S13)、座席空間に人体100が存在すると検出される(S15)。
【0059】
次に、時点t42~t44の期間ではパラメータbおよび残差の二乗平均errが-0.035≦b≦-0.015およびerr≦0.03を満たすとして、放射体が人体100でないと判定される(S9)。これにより、時点t42での信号(z,z)の値が基準補正値として設定されて(S11)、赤外線センサ20,20からの信号(y,y)から基準補正値が減算されて信号(z,z)とされ(S3)、信号(z,z)同士の差分は0近傍となる。そして、時点t42~t43の期間では過去の複数のタイミングでの信号(z,z)同士の差分のうち、閾値Dth2より大きい差分が基準割合よりも多いと判定されて、人体100が存在すると判定される結果(S13)、座席空間に人体100が存在すると検出される(S15)。また、時点t43~t44の期間では過去の複数のタイミングでの信号(z,z)同士の差分のうち、閾値Dth2より大きい差分が基準割合よりも少ないと判定されて、人体100が存在しないと判定される結果(S13)、座席空間に人体100が存在しないと検出される(S15)。
【0060】
次に、時点t44以降の期間ではパラメータbおよび残差の二乗平均errが-0.035≦b≦-0.015およびerr≦0.03の少なくとも一方を満たさないとして、放射体が人体100であると判定される(S9)。これにより、基準補正値が0に設定されて(S11)、赤外線センサ20,20からの信号(y,y)がそのまま信号(z,z)とされる(S3)。そして、時点t44~t45の期間では過去の複数のタイミングでの信号(z,z)同士の差分のうち、閾値Dth2より大きい差分が基準割合よりも少ないと判定されて、人体100が存在しないと判定される結果(S13)、座席空間に人体100が存在しないと検出される(S15)。また、時点t45以降の期間では過去の複数のタイミングでの信号(z,z)同士の差分のうち、閾値Dth2より大きい差分が基準割合よりも多いと判定されて、人体100が存在すると判定される結果(S13)、座席空間に人体100が存在すると検出される(S15)。
【0061】
なお、上記の実施形態では人体検出装置10は複数の赤外線センサ20からの出力に基づいて、赤外線の放射体が人体100であるか否か、人体100が存在するか否かを判定することとして説明したが、一の赤外線センサ20からの出力に基づいて判定を行ってもよい。また、人体検出装置10は複数の赤外線センサ20に接続されることとして説明したが赤外線センサを有することとしてもよい。
【0062】
信号補正部102は信号(y)から基準補正値を減算して信号(y)を信号(z)に補正することとして説明したが、これに代えて/加えて、第1判定部105で判定に用いられる基準範囲の上限値および/または下限値に基準補正値を加算してもよい。
【0063】
また、第1判定部105は、推定された近似関数の少なくとも1つのパラメータのそれぞれが基準範囲に含まれるか否かを判定することで放射体が人体100か否かを判定することとして説明した。しかしながら、第1判定部105は、推定された複数のパラメータに基づく値が基準範囲内かを判定することで放射体が人体100かを判定してもよい。例えば、複数のパラメータから単一の値を算出し、この値が基準範囲内かを判定することで放射体が人体100かを判定してもよい。
【0064】
また、第1判定部105は、信号(z)の経時変化の特性として近似関数のパラメータおよび/または残差の二乗平均を用いることとして説明したが、近似関数から予測される信号値を用いてもよい。例えば、第1判定部105は、予測される信号値と基準閾値とを比較することで放射体が人体100か否かを判定してよい。この場合には、推定される信号値と基準閾値を比較することで放射体が人体100か否かを判定するので、将来的に信号値が基準閾値を上回るまたは下回ることを事前に推定することができる。従って、放射体が人体100か否かを早期に判定することができる。なお、予測される信号値とは、信号値の極限値(収束値)でもよいし、基準時間後の信号値でもよい。また、基準閾値は環境温度の近傍の値でよい。
【0065】
また、推定部104は、近似関数を算出して信号(z)の経時変化の特性を推定することとして説明したが、近似関数を算出せずに、格納部103にバッファリングされた信号(z)のデータ列から特性を推定してもよい。例えば、推定部104は、赤外線センサ20の出力に基づく信号(z)の変化パターンが、特性ごとに予め定められた複数の変化パターンの何れに対応するかを判定することで経時変化の特性を推定してよい。
【0066】
また、第2判定部106は、過去の複数のタイミングでの信号同士の差分のうち、閾値より大きい差分の割合が基準割合を超える場合に人体100が存在すると判定したが、他の手法により判定を行ってもよい。例えば、第2判定部106は、格納部103に格納された赤外線センサ20毎の直近の複数の信号(z)の移動平均同士の差分が閾値より大きい場合に人体100が存在していると判定してよい。また、第2判定部106は、赤外線センサ20,20からの最新の信号(z,z)同士の差分を閾値と比較することで判定を行ってもよい。
【0067】
また、人体検出装置10は、信号補正部102、格納部103、第2判定部106および検出部107を備えることとして説明したが、これらの何れかを備えなくてもよい。例えば、人体検出装置10は、信号補正部102を備えない場合には、信号(y)を用いて第1判定部105および第2判定部106により判定を行ってよい。人体検出装置10は、格納部103を備えない場合には、最新の信号を用いて判定を行ってよい。人体検出装置10は、第2判定部106を備えない場合には、第1判定部105により放射体が人体であると判定される場合に人体が存在するとしてよい。人体検出装置10は、検出部107を備えない場合には、第1判定部105および第2判定部106の判定結果をそのまま出力してよい。
【0068】
また、本発明の様々な実施形態は、フローチャートおよびブロック図を参照して記載されてよく、ここにおいてブロックは、(1)操作が実行されるプロセスの段階または(2)操作を実行する役割を持つ装置のセクションを表わしてよい。特定の段階およびセクションが、専用回路、コンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、および/またはコンピュータ可読媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタルおよび/またはアナログハードウェア回路を含んでよく、集積回路(IC)および/またはディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、および他の論理操作、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウェア回路を含んでよい。
【0069】
コンピュータ可読媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読媒体は、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく実行され得る命令を含む、製品を備えることになる。コンピュータ可読媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROMまたはフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(RTM)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0070】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、またはSmalltalk、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1または複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたコードまたはオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0071】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサまたはプログラマブル回路に対し、ローカルにまたはローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、フローチャートまたはブロック図で指定された操作を実行するための手段を作成すべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0072】
図7は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されてよいコンピュータ2200の例を示す。コンピュータ2200にインストールされたプログラムは、コンピュータ2200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられる操作または当該装置の1または複数のセクションとして機能させることができ、または当該操作または当該1または複数のセクションを実行させることができ、および/またはコンピュータ2200に、本発明の実施形態に係るプロセスまたは当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2200に、本明細書に記載のフローチャートおよびブロック図のブロックのうちのいくつかまたはすべてに関連付けられた特定の操作を実行させるべく、CPU2212によって実行されてよい。
【0073】
本実施形態によるコンピュータ2200は、CPU2212、RAM2214、グラフィックコントローラ2216、およびディスプレイデバイス2218を含み、それらはホストコントローラ2210によって相互に接続されている。コンピュータ2200はまた、通信インタフェース2222、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226、およびICカードドライブのような入/出力ユニットを含み、それらは入/出力コントローラ2220を介してホストコントローラ2210に接続されている。コンピュータはまた、ROM2230およびキーボード2242のようなレガシの入/出力ユニットを含み、それらは入/出力チップ2240を介して入/出力コントローラ2220に接続されている。
【0074】
CPU2212は、ROM2230およびRAM2214内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ2216は、RAM2214内に提供されるフレームバッファ等またはそれ自体の中にCPU2212によって生成されたイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス2218上に表示されるようにする。
【0075】
通信インタフェース2222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ2224は、コンピュータ2200内のCPU2212によって使用されるプログラムおよびデータを格納する。DVD-ROMドライブ2226は、プログラムまたはデータをDVD-ROM2201から読み取り、ハードディスクドライブ2224にRAM2214を介してプログラムまたはデータを提供する。ICカードドライブは、プログラムおよびデータをICカードから読み取り、および/またはプログラムおよびデータをICカードに書き込む。
【0076】
ROM2230はその中に、アクティブ化時にコンピュータ2200によって実行されるブートプログラム等、および/またはコンピュータ2200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入/出力チップ2240はまた、様々な入/出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入/出力コントローラ2220に接続してよい。
【0077】
プログラムが、DVD-ROM2201またはICカードのようなコンピュータ可読媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読媒体から読み取られ、コンピュータ可読媒体の例でもあるハードディスクドライブ2224、RAM2214、またはROM2230にインストールされ、CPU2212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置または方法が、コンピュータ2200の使用に従い情報の操作または処理を実現することによって構成されてよい。
【0078】
例えば、通信がコンピュータ2200および外部デバイス間で実行される場合、CPU2212は、RAM2214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2222に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2222は、CPU2212の制御下、RAM2214、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROM2201、またはICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、またはネットワークから受信された受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0079】
また、CPU2212は、ハードディスクドライブ2224、DVD-ROMドライブ2226(DVD-ROM2201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイルまたはデータベースの全部または必要な部分がRAM2214に読み取られるようにし、RAM2214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU2212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックする。
【0080】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、およびデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理を受けてよい。CPU2212は、RAM2214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプの操作、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM2214に対しライトバックする。また、CPU2212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2212は、第1の属性の属性値が指定される、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0081】
上で説明したプログラムまたはソフトウェアモジュールは、コンピュータ2200上またはコンピュータ2200近傍のコンピュータ可読媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワークまたはインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスクまたはRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読媒体として使用可能であり、それによりプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2200に提供する。
【0082】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0083】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0084】
1 人体検出システム、10 人体検出装置、20 赤外線センサ、100 人体、101 取得部、102 信号補正部、103 格納部、104 推定部、105 第1判定部、106 第2判定部、107 検出部、200 机、201 椅子、2200 コンピュータ、2201 DVD-ROM、2210 ホストコントローラ、2212 CPU、2214 RAM、2216 グラフィックコントローラ、2218 ディスプレイデバイス、2220 入/出力コントローラ、2222 通信インタフェース、2224 ハードディスクドライブ、2226 DVD-ROMドライブ、2230 ROM、2240 入/出力チップ、2242 キーボード
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