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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】表面測定機用手動送り機構
(51)【国際特許分類】
   G01B 21/00 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
G01B21/00 L
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021030346
(22)【出願日】2021-02-26
(62)【分割の表示】P 2017059442の分割
【原出願日】2017-03-24
(65)【公開番号】P2021099357
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】上村 裕明
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-092805(JP,U)
【文献】実開昭61-153715(JP,U)
【文献】実開平05-075605(JP,U)
【文献】特開昭57-009606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0056085(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00-21/32
G01B 5/00- 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と、
前記操作部と連結されるノンバックラッシュ減速機と、
被移動体を任意の一方向に沿って移動させる直線移動機構と、
前記ノンバックラッシュ減速機の回転動作を前記直線移動機構に備えられる回転軸へ伝達するギア動作伝達部と、
を備え、
前記操作部は、操作に応じて回転する操作軸を備え、
前記操作軸は、前記ノンバックラッシュ減速機の入力軸と連結され、かつ、前記操作軸、及び前記入力軸は同一の直線上に配置され、
前記ノンバックラッシュ減速機の出力軸は、前記ギア動作伝達部の入力部と連結され、かつ、前記回転軸は前記ギア動作伝達部の出力部と連結され、
前記ギア動作伝達部は、前記ノンバックラッシュ減速機と前記回転軸との連結及び離間を切り替える表面測定機用手動送り機構。
【請求項2】
前記ギア動作伝達部は電磁クラッチを備える請求項1に記載の表面測定機用手動送り機構。
【請求項3】
前記電磁クラッチへ制御信号を入力するコントローラを備え、
前記電磁クラッチは、前記制御信号が非入力の場合に前記ノンバックラッシュ減速機の出力軸と前記回転軸とを連結させ、前記制御信号が入力される場合に、前記制御信号が入力される場合に前記ノンバックラッシュ減速機の出力軸と前記回転軸とを離間させる請求項2に記載の表面測定機用手動送り機構。
【請求項4】
前記電磁クラッチは、電磁ブレーキが適用される請求項2又は3に記載の表面測定機用手動送り機構。
【請求項5】
前記電磁クラッチは、
前記ノンバックラッシュ減速機に連結される第一摩擦板と、
前記回転軸に連結される第二摩擦板と、
を備える請求項2から4のいずれか一項に記載の表面測定機用手動送り機構。
【請求項6】
前記ノンバックラッシュ減速機は、前記入力軸、及び前記出力軸が同一の直線上に配置される請求項1から5のいずれか一項に記載の表面測定機用手動送り機構。
【請求項7】
前記ノンバックラッシュ減速機の減速比は、400分の1以上20分の1以下である請求項1から6のいずれか一項に記載の表面測定機用手動送り機構。
【請求項8】
前記ノンバックラッシュ減速機は、リング状の第一歯車と、
前記第一歯車に内挿される第二歯車と、
を備え、
前記第一歯車は内周に第一歯を有し、
前記第二歯車は前記第一歯と噛み合わせる第二歯を外周に有し、前記第二歯の歯数は、前記第一歯の歯数未満であり、
前記入力軸は前記第二歯車に取り付けられ、前記出力軸は前記第一歯車に取り付けられる請求項1から7のいずれか一項に記載の表面測定機用手動送り機構。
【請求項9】
前記直線移動機構は、磁力を駆動源として被移動体を移動させるリニアモータと、
前記被移動体と連結される無端状のベルトと、
前記無端状のベルトが巻き掛けられる複数のローラと、
を備え、
前記回転軸は、前記複数のローラのいずれか、又は前記複数のローラのいずれかと連結されるローラである請求項1から8のいずれか一項に記載の表面測定機用手動送り機構。
【請求項10】
前記直線移動機構は、回転軸の回転を前記被移動体の任意の一方向への直線移動に変換するねじ部を備え、
前記回転軸は、ねじ部の端に連結される請求項1から8のいずれか一項に記載の表面測定機用手動送り機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定物の表面を測定する表面測定機に適用される表面測定機用手動送り機構に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定物の表面を測定する表面測定機において、手動操作によって測定子の位置を微調整する手動送り機構を備えた構成が知られている。手動送り機構の例として、測定子の位置を移動させる直線移動機構に操作部を連結させる構成が挙げられる。
【0003】
特許文献1は、手動操作によって、リニアモータの回転軸の位置決めを行う手動送り機構が記載されている。特許文献1に記載の手動送り機構は、手動つまみとリニアモータの回転軸とを連結する機構にウオームギアを採用している。これにより、手動操作による手動送り機構、及び電力遮断の際の落下防止機構の両立がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5354321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の手動送り機構は、ウオームギアを採用したことに起因して、以下の課題が存在している。
【0006】
ウオームギアは組立調整によって、バックラッシュに起因する位置ずれの発生を抑制可能であるものの、ウオームギアを採用した手動送り機構は、バックラッシュに起因する位置ずれを解消することは困難である。
【0007】
また、バックラッシュに起因する位置ずれが発生するので、被移動体の微小距離の移動を実行するためには、作業者の高度な技能が必要となる。
【0008】
更に、特許文献1に記載の手動送り機構は、二つの平歯車を嵌合させて、手動つまみとウオームギアとを連結させている。一方、二つの平歯車を分離させて、手動つまみとウオームギアとの連結を解除している。そうすると、二つの平歯車を噛み合わせる際、及び二つの平歯車の噛み合わせを分離する際に、二つの平歯車の噛み合わせに起因して、二つの平歯車の間のバックラッシュの範囲で被移動体の位置ずれが発生してしまう。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、被移動体の高精度の位置決めを実現しうる表面測定機用手動送り機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、次の発明態様を提供する。
【0011】
第1態様に係る表面測定機用手動送り機構は、操作部と、操作部と連結されるノンバックラッシュ減速機と、被移動体を任意の一方向に沿って移動させる直線移動機構と、ノンバックラッシュ減速機の回転動作を直線移動機構に備えられる回転軸へ伝達するギア動作伝達部と、を備え、操作部は、操作に応じて回転する操作軸を備え、操作軸は、ノンバックラッシュ減速機の入力軸と連結され、かつ、操作軸、及び入力軸は同一の直線上に配置され、ノンバックラッシュ減速機の出力軸は、ギア動作伝達部に備えられる摩擦板と連結され、かつ、回転軸、及び出力軸は同一の直線上に配置され、ギア動作伝達部は、摩擦板の位置を回転軸の側へ移動させることにより、摩擦板と回転軸とを押圧当接させて、ノンバックラッシュ減速機と回転軸とを連結させ、かつ、ギア動作伝達部は、摩擦板の位置を回転軸の反対の側へ移動させることにより、摩擦板と回転軸とを離間させて、ノンバックラッシュ減速機と回転軸との連結を解除させる表面測定機用手動送り機構である。
【0012】
第1態様によれば、ノンバックラッシュ減速機と直線移動機構の回転軸との間において摩擦板を移動させて、ノンバックラッシュ減速機と直線移動機構の回転軸との連結、及び連結の解除を切り替える。これにより、ノンバックラッシュ減速機と直線移動機構の回転軸とを連結させる場合、及びノンバックラッシュ減速機と直線移動機構の回転軸との連結を解除させる場合のバックラッシュの発生が抑制される。
【0013】
また、操作部の操作軸、ノンバックラッシュ減速機の入力軸を同一の直線上に配置し、ノンバックラッシュ減速機の出力軸、及び直線移動機構の回転軸を同一の直線上に配置する。これにより、手動送り機構の省スペース化が可能である。同一の直線上の配置には、各軸にずれが存在するものの、各軸のずれが無視できる程度である、実質的に同一の直線上に配置されている場合が含まれる。
【0014】
操作部は操作つまみ等の回転操作部材を適用してもよい。かかる態様における操作軸は、回転操作部材の回転動作をノンバックラッシュ減速機の入力軸に伝達する。
【0015】
ノンバックラッシュは、ノンバックラッシュ減速機の入力軸を回転させた際に、ノンバックラッシュ減速機の出力軸の遊びが発生しない場合、及びノンバックラッシュ減速機の入力軸を回転させた際に、ノンバックラッシュ減速機の出力軸の遊びが発生するものの、ノンバックラッシュ減速機の出力軸の遊びが手動送りの結果に影響しない実質的なノンバックラッシュの両者が含まれる。
【0016】
第2態様は、第1態様の表面測定機用手動送り機構において、ノンバックラッシュ減速機は、入力軸、及び出力軸が同一の直線上に配置される構成としてもよい。
【0017】
第2態様によれば、ノンバックラッシュ減速機自体の省スペース化が可能となる。
【0018】
第3態様は、第1態様又は第2態様の表面測定機用手動送り機構において、ノンバックラッシュ減速機の減速比は、400分の1以上20分の1以下である構成としてもよい。
【0019】
第3態様によれば、これにより、直線移動機構を用いた被移動体の移動における、被移動体の位置の微調整が可能である。また、直線移動機構の動作を停止させた状態を維持するブレーキ機能の実現が可能である。
【0020】
第4態様は、第1態様から第3態様のいずれか一態様の表面測定機用手動送り機構において、ノンバックラッシュ減速機は、リング状の第一歯車と、第一歯車に内挿される第二歯車と、を備え、第一歯車は内周に第一歯を有し、第二歯車は第一歯と噛み合わせる第二歯を外周に有し、第二歯の歯数は、第一歯の歯数未満であり、入力軸は第二歯車に取り付けられ、出力軸は第一歯車に取り付けられる構成としてもよい。
【0021】
第4態様にかかるノンバックラッシュ減速機の例として、波動歯車減速機、及び遊星歯車減速機が挙げられる。
【0022】
第4態様において、第二歯車は、同一の種類の複数の歯車を用いて構成されてもよい。第二歯車は、複数の種類の歯車を用いて構成されてもよい。例えば、第二歯車は、入力軸が取り付けられる内歯車、及び第一歯車と内歯車との中間に配置される中間歯車から構成されてもよい。
【0023】
第5態様は、第1態様から第4態様のいずれか一態様の表面測定機用手動送り機構において、ギア動作伝達部は、摩擦板を回転軸に付勢させる摩擦板付勢機構と、摩擦板が連結されたノンバックラッシュ減速機を移動させる減速機移動機構と、ノンバックラッシュ減速機の移動方向を切り替える移動方向切替機構と、を備えた構成としてもよい。
【0024】
第5態様によれば、ノンバックラッシュ減速機に連結された摩擦板の移動方向の切り替えが可能となる。
【0025】
ギア動作伝達部は、電磁クラッチ、又は電磁ブレーキを適応してもよい。電磁クラッチ、又は電磁ブレーキは、制御信号に基づいて、ノンバックラッシュ減速機に連結された第一摩擦板と、回転軸に連結された第二摩擦板との押圧当接、及び離間が制御される。
【0026】
第6態様は、第5態様の表面測定機用手動送り機構において、移動方向切替機構は、制御信号に基づいて摩擦板の移動方向の切り替えを行い、制御信号が非入力の場合に、摩擦板を回転軸の側へ移動させる構成としてもよい。
【0027】
第6態様によれば、制御信号が非入力の場合に、操作部と直線移動機構とが連結され、手動送りが可能となる。これにより、移動方向切替機構の省電力化が可能である。
【0028】
第7態様は、第1態様から第6態様のいずれか一態様の表面測定機用手動送り機構において、直線移動機構は、磁力を駆動源として被移動体を移動させるリニアモータと、被移動体と連結される無端状のベルトと、無端状のベルトが巻き掛けられる複数のローラと、を備え、回転軸は、複数のローラのいずれか、又は複数のローラのいずれかと連結されるローラである構成としてもよい。
【0029】
第7態様によれば、直線移動機構にリニアモータを採用することによって、高精度、及び高速の直線移動機構の動作が可能である。
【0030】
第8態様は、第1態様から第6態様のいずれか一態様の表面測定機用手動送り機構において、直線移動機構は、回転軸の回転を被移動体の任意の一方向への直線移動に変換するねじ部を備え、回転軸は、ねじ部の端に連結される構成としてもよい。
【0031】
第8態様によれば、直線移動機構にねじ部を採用することによって、高精度、及び高速の直線移動機構の動作が可能である。
【0032】
第8態様において、ねじ部の一方の端にモータ等の駆動源が連結され、ねじ部の他方の端に回転軸が連結されてもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ノンバックラッシュ減速機と直線移動機構の回転軸との間において摩擦板を移動させて、ノンバックラッシュ減速機と直線移動機構の回転軸との連結、及び離間を切り替える。これにより、ノンバックラッシュ減速機と直線移動機構の回転軸とを連結させる場合、及びノンバックラッシュ減速機と直線移動機構の回転軸とを離間させる場合のバックラッシュの発生が抑制される。
【0034】
また、操作部の操作軸、ノンバックラッシュ減速機の入力軸を同一の直線上に配置し、ノンバックラッシュ減速機の出力軸、及び直線移動機構の回転軸を同一の直線上に配置する。これにより、手動送り機構の省スペース化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は第一実施形態に係る手動送り機構の全体構成図である。
図2図2はノンバックラッシュ減速機と回転軸との連結状態を示す模式図である。
図3図3はノンバックラッシュ減速機と回転軸との非連結状態を示す模式図である。
図4図4は第二実施形態に係る手動送り機構の全体構成図である。
図5図5はノンバックラッシュ減速機と回転軸との連結状態を示す模式図である。
図6図6はノンバックラッシュ減速機と回転軸との非連結状態を示す模式図である。
図7図7は第三実施形態に係る手動送り機構の全体構成図である。
図8図8はノンバックラッシュ減速機と回転軸との連結状態を示す模式図である。
図9図9はノンバックラッシュ減速機の構成例を示す波動歯車減速機の内部構造図である。
図10図10はノンバックラッシュ減速機の他の構成例を示す遊星歯車減速機の構造図である。
図11図11は直線移動機構の構成例を示す直線移動機構の概略構成図である。
図12図12は直線移動機構の他の構成例を示す直線移動機構の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について説明する。本明細書では、先に説明した構成と同一の構成には同一の符号を付し、説明を適宜省略することとする。
【0037】
[第一実施形態に係る手動送り機構]
<構成>
図1は第一実施形態に係る手動送り機構の全体構成図である。図1に示した手動送り機構10は、手動つまみ12、ノンバックラッシュ減速機14、摩擦板16、回転軸18、摩擦板付勢機構20、減速機移動機構22、エアシリンダ24、及びソレノイドバルブ26を備えている。
【0038】
手動つまみ12は、シャフト12Bの先端につまみ12Aが取り付けられる。シャフト12Bの基端は、ノンバックラッシュ減速機14の入力軸が連結される。ノンバックラッシュ減速機14の入力軸の図示は省略する。ノンバックラッシュ減速機14の出力軸14Aは、摩擦板16、及び減速機移動機構22が連結される。
【0039】
ノンバックラッシュ減速機14は、バックラッシュレスの減速機である。ノンバックラッシュ減速機14は、高い減速比を有するギアである。ノンバックラッシュ減速機14の減速比の例として、400分の1以上20分の1以下の範囲の減速比が挙げられる。ノンバックラッシュ減速機14の詳細は後述する。
【0040】
手動つまみ12、ノンバックラッシュ減速機14、及び摩擦板16は、手動つまみ12の回転軸、ノンバックラッシュ減速機14の入力軸、ノンバックラッシュ減速機14の出力軸14A、及び摩擦板16の回転軸が同一の直線上に並ぶ配置を有している。本明細書における同一とは、実際には相違しているものの同一と同様の作用効果を奏する実質的な同一が含まれる。なお、手動つまみ12の回転軸、ノンバックラッシュ減速機14の入力軸の図示は省略する。
【0041】
符号38を付した一点鎖線は、手動つまみ12の回転軸、ノンバックラッシュ減速機14の入力軸、ノンバックラッシュ減速機14の出力軸、及び摩擦板16の回転軸のそれぞれの軸芯が並ぶ直線を示している。
【0042】
摩擦板付勢機構20は、二枚の板ばね20Aの間に板ばね支持部材20Bが取り付けられる構造を有している。二枚の板ばね20Aの基端は、ノンバックラッシュ減速機14が取り付けられる。二枚の板ばね20Aの先端は、板ばね支持部材20Bを用いて支持される。ノンバックラッシュ減速機14は、摩擦板付勢機構20を用いて、直線38に沿って往復移動が可能である。
【0043】
減速機移動機構22の摩擦板連結部材22Aは、摩擦板16が連結される。減速機移動機構22のエアシリンダ連結部材22Bは、エアシリンダ24のピストン24Aが連結される。摩擦板連結部材22A、及びエアシリンダ連結部材22Bは、二つのアーム部材22Cを用いて支持される。二つのアーム部材22Cの基端は、アーム連結部材22Dを用いて支持される。
【0044】
エアシリンダ24は、第一配管28を介してソレノイドバルブ26が連結される。ソレノイドバルブ26は、第二配管30、及び第三配管32が連結される。ソレノイドバルブ26は、制御信号を用いて第一配管28と第二配管30との接続状態と、第一配管28と第三配管32との接続状態との切り替えが可能である。
【0045】
例えば、第二配管30を吸気管とし、第三配管32を排気管としてもよい。かかる態様では、第二配管30は、図示しないエア供給部と接続される。第三配管32は、図示しない排気部と接続される。
【0046】
回転軸18は、無端状のベルト34が巻き掛けられる。ベルト34は、移動ステージ36が取り付けられる。図1では、ベルト34が巻き掛けられる複数のローラのうち、回転軸18のみを図示する。
【0047】
回転軸18は、第一面18Aが摩擦板16と対向する位置に配置される。回転軸18の第一面18Aは、エアシリンダ24の付勢力を用いて摩擦板16を押圧当接させた場合に、摩擦板16との間に摩擦力が発生する。回転軸18の第一面18Aは、回転軸18の摩擦板16の側の面である。
【0048】
図1では、直線移動機構の全体の図示を省略する。直線移動機構の構成例は、図11、及び図12に図示する。図11、及び図12に示した直線移動機構における被移動体の移動方向は、任意の一方向に相当する。
【0049】
手動つまみ12は操作部の構成要素の一例である。シャフト12Bは操作に応じて回転する操作軸の一例である。摩擦板16は、ノンバックラッシュ減速機の回転動作を直線移動機構へ伝達するギア動作伝達部の構成要素の一例である。
【0050】
エアシリンダ24は、移動方向切替機構の構成要素の一例である。ソレノイドバルブ26は、移動方向切替機構の構成要素の一例である。移動ステージ36は被移動体に相当する。
【0051】
<手動送り機構を用いた移動ステージの手動調整>
図2はノンバックラッシュ減速機と回転軸との連結状態を示す模式図である。図2に示すように、ソレノイドバルブ26の排気側を開放した場合、エアシリンダ24のピストン24Aはエアシリンダ24から突出する方向へ動作する。ソレノイドバルブ26の排気側の開放の例として、図1に示した第一配管28と第三配管32との連通状態が挙げられる。
【0052】
図2に示したソレノイドバルブ26の排気側を開放した場合、減速機移動機構22のアーム部材22Cは、アーム連結部材22Dを支点として、エアシリンダ24と反対の側へ揺動する。アーム部材22Cの揺動に応じて、摩擦板連結部材22Aは、エアシリンダ24と反対の側へ移動する。図2に示したばね24Bは、ピストン24Aに作用する付勢力を表している。
【0053】
摩擦板連結部材22Aのエアシリンダ24と反対の側への移動に応じて、摩擦板16は、回転軸18の側へ移動し、かつ、摩擦板16は、ばね24Bの付勢力が作用して、回転軸18の第一面18Aに押圧当接する。摩擦板16と回転軸18の第一面18Aとの間に作用する摩擦力を用いて、摩擦板16の回転力は回転軸18の第一面18Aに伝達される。
【0054】
摩擦板16と回転軸18の第一面18Aとの連結に起因して、回転軸18は、ノンバックラッシュ減速機14と連結される。そして、手動つまみ12は、ノンバックラッシュ減速機14、及び摩擦板16を介して回転軸18と連結される。
【0055】
手動つまみ12と回転軸18とが連結された状態において、手動つまみ12を操作すると、手動つまみ12の操作量に応じて回転軸18が回転する。ベルト34は、回転軸18の回転に応じて走行する。
【0056】
移動ステージ36は、ベルト34の走行に応じて、ベルト34の走行方向に沿って移動する。回転軸18の回転角度は、手動つまみ12の回転角度に、ノンバックラッシュ減速機14のギア比を乗算した値である。移動ステージ36の移動量は、回転軸18の回転角度に回転軸18の半径を乗算した値である。
【0057】
すなわち、手動つまみ12と回転軸18を連結させた場合、手動つまみ12を用いて、移動ステージ36の位置の微調整が可能となる。また、ノンバックラッシュ減速機14と回転軸18とを連結させることに起因して、移動ステージ36の位置の保持が可能である。
【0058】
ソレノイドバルブ26の制御信号がオフの場合に、ソレノイドバルブ26の排気側を開放する態様が好ましい。制御信号のオフは、制御信号の入力端子の無通電と同様の状態である。
【0059】
停電等によってソレノイドバルブ26の制御信号入力端子が無通電となった場合に、ノンバックラッシュ減速機14が直線移動機構のブレーキとして機能する。そうすると、ソレノイドバルブ26の制御信号入力端子が無通電となった場合の、移動ステージ36の位置ずれが抑制される。
【0060】
図3はノンバックラッシュ減速機と回転軸との非連結状態を示す模式図である。図3に示すように、ソレノイドバルブ26の吸気側を開放した場合、エアシリンダ24のピストン24Aは、エアシリンダ24の内部へ向かう方向へ移動する。ソレノイドバルブ26の排気側の開放の例として、図1に示した第一配管28と第二配管30との連通状態が挙げられる。
【0061】
図3に示したソレノイドバルブ26の吸気側を開放した場合、減速機移動機構22のアーム部材22Cは、アーム連結部材22Dを支点として、エアシリンダ24の側へ揺動する。アーム部材22Cの揺動に応じて、摩擦板連結部材22Aは、エアシリンダ24の側へ移動する。
【0062】
摩擦板連結部材22Aのエアシリンダ24の側への移動に応じて、摩擦板16は、回転軸18と反対の側へ移動し、かつ、摩擦板16は、回転軸18の第一面18Aから離間する。
【0063】
摩擦板16と回転軸18との離間させた場合、回転軸18は、ノンバックラッシュ減速機14との連結が解除される。回転軸18とノンバックラッシュ減速機14との連結が解除された状態では、図示しないコントローラからの指令信号に基づき、直線移動機構を用いて移動ステージ36の移動が可能となる。
【0064】
<作用効果>
第一実施形態に係る手動送り機構10によれば、ノンバックラッシュ減速機14と回転軸18との連結は、摩擦板16と回転軸18との間に作用する摩擦力が用いられる。これにより、ノンバックラッシュ減速機14と回転軸18との連結、及び離間の際に歯車の噛み合わせによるバックラッシュが発生せず、移動ステージ36の高精度の位置決めが可能である。
【0065】
手動つまみ12、ノンバックラッシュ減速機14は、手動つまみ12の回転軸、及びノンバックラッシュ減速機14の入力軸が同一の直線上に並ぶ配置を有している。ノンバックラッシュ減速機14、及び摩擦板16は、ノンバックラッシュ減速機14の出力軸14A、及び摩擦板16の中心が同一の直線上に並ぶ配置を有している。これにより、手動送り機構10の省スペース化が可能となる。
【0066】
手動つまみ12と回転軸18との連結に、高い減速比を有するノンバックラッシュ減速機14が用いられる。これにより、手動つまみ12の遊びが抑制され、移動ステージ36の高精度の位置決めが可能である。また、手動つまみ12が操作されない場合の移動ステージ36の位置を保持するブレーキ機能の実現が可能である。
【0067】
更に、手動送り機構10を用いた移動ステージ36の微調整の際に、無励磁作動型ブレーキ等の通電される部品が不要であり、発熱、及び省電力の観点で有利である。
【0068】
図2に示したエアシリンダ24、及びソレノイドバルブ26は、制御信号に基づいて摩擦板の移動方向の切り替えを行い、制御信号が非入力の場合に、摩擦板を回転軸の側へ移動させる移動方向切替機構の構成要素の一例である。
【0069】
[第二実施形態に係る手動送り機構]
<構成>
図4は第二実施形態に係る手動送り機構の全体構成図である。以下、主として、第一実施形態と第二実施形態との相違点について説明する。
【0070】
図4に示した手動送り機構10Aは、図1に示した減速機移動機構22に代わり、図4に示した摩擦板付勢板40を備えている。摩擦板付勢板40は、エアシリンダ24のピストン24Aが連結される。
【0071】
摩擦板付勢板40の先端は、ノンバックラッシュ減速機14の出力軸14A、及び摩擦板16が連結される。摩擦板付勢板40は、摩擦板付勢機構の構成要素の一例である。
【0072】
<手動送り機構を用いた移動ステージの手動調整>
図5はノンバックラッシュ減速機と回転軸との連結状態を示す模式図である。ソレノイドバルブ26の排気側を開放した場合、エアシリンダ24のピストン24Aはエアシリンダ24から突出する方向へ動作する。ソレノイドバルブ26の排気側を開放した場合、摩擦板付勢板40は、エアシリンダ24のピストン24Aの移動方向に沿って、エアシリンダ24と反対の側へ移動する。
【0073】
摩擦板付勢板40のエアシリンダ24と反対の側への移動に応じて、摩擦板16は、回転軸18の側へ移動し、かつ、摩擦板16は、回転軸18の第一面18Aに押圧当接する。摩擦板16と回転軸18の第一面18Aとの間に作用する摩擦力を用いて、摩擦板16は回転軸18の第一面18Aに連結される。
【0074】
手動つまみ12と回転軸18とを連結させた場合、第一実施形態に係る手動送り機構10と同様に、手動つまみ12を用いて、移動ステージ36の位置の微調整が可能となる。また、ノンバックラッシュ減速機14と回転軸18とを連結させることに起因して、移動ステージ36の位置の保持が可能である。
【0075】
図6はノンバックラッシュ減速機と回転軸との非連結状態を示す模式図である。ソレノイドバルブ26の吸気側を開放した場合、エアシリンダ24のピストン24Aはエアシリンダ24の内部へ向かう方向へ動作する。ソレノイドバルブ26の吸気側を開放した場合、摩擦板付勢板40は、エアシリンダ24のピストン24Aの移動方向に沿って、エアシリンダ24の側へ移動する。
【0076】
摩擦板付勢板40のエアシリンダ24の側への移動に応じて、摩擦板16は、回転軸18と反対の側へ移動し、かつ、摩擦板16は、回転軸18の第一面18Aから離間する。摩擦板16と回転軸18との離間した状態では、図示しないコントローラからの指令信号に基づき、直線移動機構を用いて移動ステージ36の移動が可能となる。
【0077】
図5、及び図6に示したエアシリンダ24、及びソレノイドバルブ26は、制御信号に基づいて摩擦板の移動方向の切り替えを行い、制御信号が非入力の場合に、摩擦板を回転軸の側へ移動させる移動方向切替機構の一例である。
【0078】
<作用効果>
第二実施形態に係る手動送り機構10Aによれば、第一実施形態に係る手動送り機構10と同様の作用効果を得ることが可能となる。また、第一実施形態に係る手動送り機構10と比較して、摩擦板16を移動させる構成の簡素化が可能である。
【0079】
[第三実施形態に係る手動送り機構]
<構成>
図7は第三実施形態に係る手動送り機構の全体構成図である。以下、主として、第一実施形態、及び第二実施形態と第三実施形態との相違点について説明する。
【0080】
図7に示した手動送り機構10Bは、図1に示した手動送り機構10における、摩擦板16、摩擦板付勢機構20、減速機移動機構22、エアシリンダ24、及びソレノイドバルブ26に代わり、電磁クラッチ50を備えている。
【0081】
図7に示したノンバックラッシュ減速機14の出力軸14Aは、電磁クラッチ50の入力部50Aと連結される。また、回転軸18は、電磁クラッチ50の出力部と連結される。電磁クラッチ50の出力部の図示は省略する。なお、電磁クラッチ50は、電磁ブレーキと呼ばれることがある。
【0082】
電磁クラッチ50は、公知の電磁クラッチを適用可能である。例えば、二枚の摩擦板の間に生じる摩擦力を利用する構造が挙げられる。電磁クラッチ50は、図示しないコントローラから送信される制御信号に基づいて動作が制御される。電磁クラッチ50は、ノンバックラッシュ減速機14と回転軸18との離間を表す制御信号が入力されると、ノンバックラッシュ減速機14と回転軸18とを離間させる。
【0083】
電磁クラッチ50は、ノンバックラッシュ減速機14と回転軸18との連結を表す制御信号が入力されると、ノンバックラッシュ減速機14と回転軸18とを連結させる。電磁クラッチ50は、摩擦板付勢機構、減速機移動機構、及び移動方向切替機構を一体に構成した態様の一例である。
【0084】
<手動送り機構を用いた移動ステージの手動調整>
図8はノンバックラッシュ減速機と回転軸との連結状態を示す模式図である。図8に示した電磁クラッチ50は、無励磁作動型とする。無励磁作動型の電磁クラッチ50は、制御信号が非入力の場合にノンバックラッシュ減速機14と回転軸18とを連結させる。また、制御信号が入力された場合に、ノンバックラッシュ減速機14と回転軸18とを離間させる。
【0085】
手動送り機構10Bを用いた移動ステージ36の位置の微調整を行う場合は、電磁クラッチ50への制御信号を入力する。ノンバックラッシュ減速機14と回転軸18とが連結され、手動つまみ12を用いて、移動ステージ36の位置の微調整が可能となる。
【0086】
直線移動機構を用いて移動ステージ36を移動させる場合は、電磁クラッチ50への制御信号を入力する。ノンバックラッシュ減速機14と回転軸18とが離間して、直線移動機構を用いて、移動ステージ36の移動が可能となる。
【0087】
図8に示した電磁クラッチ50は、制御信号に基づいて摩擦板の移動方向の切り替えを行い、制御信号が非入力の場合に、摩擦板を回転軸の側へ移動させる移動方向切替機構の一例である。
【0088】
<作用効果>
第三実施形態に係る手動送り機構10Bによれば、第一実施形態に係る手動送り機構10と同様の作用効果を得ることが可能となる。また、第一実施形態に係る手動送り機構10と比較して構造が簡素化され、手動送り機構10Bの省スペース化が可能である。
【0089】
[ノンバックラッシュ減速機の構成例]
<波動歯車減速機の構造>
図9はノンバックラッシュ減速機の構成例を示す波動歯車減速機の内部構造図である。図9に示した波動歯車減速機14Bは、固定歯車100、回転歯車102、及びカム104を備えている。
【0090】
固定歯車100は、金属製の剛体であり、リング形状を有している。固定歯車100は、内周に歯100Aが形成されている。固定歯車100は、図示しないケースに固定される。
【0091】
回転歯車102は、金属製の弾性体であり、カップ形状を有している。回転歯車102は、固定歯車100の中空部分に内挿される。
【0092】
回転歯車102は、中空部分の外周に歯102Aが形成されている。回転歯車102の歯102Aの歯数は、固定歯車100の歯100Aの歯数未満である。回転歯車102の底部は、出力軸102Dが取り付けられる。図9では、破線を用いて出力軸102Dを図示する。
【0093】
カム104は、金属製であり、平面形状が楕円である。カム104は、外周にボールベアリング104Aが嵌められている。ボールベアリング104Aの外周は、ボールベアリング104Aのボール104Bを介して弾性変形する。カム104は、入力軸104Cが取り付けられる。図9に示した波動歯車減速機14Bは、入力軸104C、及び出力軸102Dが同一の直線上に配置される。
【0094】
固定歯車100は、リング状の第一歯車の一例である。回転歯車102は、第一歯車に内挿される第二歯車の一例である。固定歯車100の歯100Aは第一歯の一例である。回転歯車102の歯102Aは、第二歯の一例である。
【0095】
<波動歯車減速機の動作>
図9に示した入力軸104Cを回転させると、カム104の形状に応じて回転歯車102は楕円状に弾性変形する。そうすると、回転歯車102の歯102Aと固定歯車100の歯100Aとが噛み合う位置は、固定歯車100の内周に沿って移動する。
【0096】
カム104を一周させた場合、固定歯車100の歯100Aの歯数から回転歯車102の歯102Aの歯数を減算した歯数分だけ、回転歯車102が移動する。符号104Dを付した矢印付き曲線は、入力軸104Cの回転方向を表している。符号102Eを付した矢印付きの曲線は、出力軸102Dの回転方向を表している。なお、入力軸104Cの回転方向が逆転した場合、出力軸102Dの回転方向も逆転する。
【0097】
例えば、固定歯車100の歯100Aの歯数をz、回転歯車102の歯102Aの歯数をzとした場合、入力軸を一周させた場合の出力軸の回転角度dsは、以下の式1を用いて表される。
【0098】
(z-z)×2×π/z …式1
なお、dsの単位はラジアンである。
【0099】
波動歯車減速機14Bは、400分の1以上20分の1以下の高減速比を適用可能である。波動歯車減速機14Bの減速比は、以下の式2を用いて表される。
【0100】
(z-z)/z …式2
図9に示した波動歯車減速機14Bは、固定歯車100の複数の歯100Aと、回転歯車102の複数の歯102Aとが同時に噛み合わせられる。また、波動歯車減速機14Bは、180度対称の二か所において、固定歯車100の複数の歯100Aと、回転歯車102の複数の歯102Aとが噛み合わせられる。
【0101】
これにより、歯のピッチ誤差、累積ピッチ誤差の回転精度への影響が平均化される。すなわち、ノンバックラッシュを実現し、高い位置決め精度が得られる。ここでいうノンバックラッシュには、図1に示した移動ステージ36の位置決め精度に影響しない程度の微小なバックラッシュが発生する、実質的なノンバックラッシュが含まれる。
【0102】
更に、図9に示した波動歯車減速機14Bは、入力軸104Cと出力軸102Dとが同一の直線の上に配置される。これにより、波動歯車減速機14Bの入力軸104C、及び出力軸102Dと直交する方向における、波動歯車減速機14Bの省スペース化が可能である。
【0103】
図9に示した波動歯車減速機14Bの例として、株式会社ハーモニックドライブシステムズ社製、ハーモニックドライブが挙げられる。なお、ハーモニックドライブは、同社の登録商標である。
【0104】
<遊星歯車減速機の構造>
図10はノンバックラッシュ減速機の他の構成例を示す遊星歯車減速機の構造図である。図10に示した遊星歯車減速機14Cは、外歯車120、中間歯車122、及び内歯車124を備えている。
【0105】
外歯車120は、リング形状を有している。外歯車120は、内周に歯120Aが形成されている。外歯車120は、図示しないケースに回転可能に支持される。外歯車120は、破線を用いて図示した出力軸120Dが取り付けられる。
【0106】
図10に示した中間歯車122は、外周に歯122Aが形成されている。遊星歯車減速機14Cは、複数の中間歯車122を備えている。また、遊星歯車減速機14Cは、固定リング122Bを用いて、複数の中間歯車122の中心の位置が固定支持されている。
【0107】
複数の中間歯車122は、それぞれ一か所の位置において、外歯車120と噛み合わせられている。図10には、二つの中間歯車122を備える遊星歯車減速機14Cを示す。
【0108】
内歯車124は、外周に歯124Aが形成されている。内歯車124の歯124Aは、複数の中間歯車122の歯122Aと噛み合わせられる。換言すると、内歯車124は、複数の中間歯車122との噛み合わせ位置が、中間歯車122の数と同数となっている。各中間歯車122は、それぞれ一か所の噛み合わせ位置において、内歯車124と噛み合わせられる。内歯車124は入力軸124Cが取り付けられる。
【0109】
図10に示した遊星歯車減速機14Cは、入力軸124C、及び出力軸120Dが同一の直線上に配置されている。
【0110】
外歯車120は、リング状の第一歯車の一例である。複数の中間歯車122は、第一歯車に内挿される第二歯車の構成要素の一例である。内歯車124は、第一歯車に内挿される第二歯車の構成要素の一例である。
【0111】
外歯車120の歯120Aは第一歯の一例である。中間歯車122の歯122Aは、第二歯の構成要素の一例である。
【0112】
<遊星歯車減速機の動作>
図10に示した入力軸124Cを回転させると、内歯車124が回転する。内歯車124が回転すると、複数の中間歯車122が回転する。複数の中間歯車122が回転すると、外歯車120が回転し、外歯車120に取り付けられた出力軸120Dが回転する。
【0113】
遊星歯車減速機14Cの減速比は、400分の1以上20分の1以下の高減速比を適用可能である。外歯車120の歯120Aの歯数をz11とし、内歯車124の歯124Aの歯数をz12とした場合、遊星歯車減速機14Cの減速比は、以下の式3を用いて表される。
【0114】
12/z11 …式3
図10に符号124Dを付した矢印付き曲線は、入力軸124Cの回転方向を表している。符号120Eを付した矢印付き曲線は、出力軸120Dの回転方向を表している。なお、入力軸124Cの回転方向が逆転した場合、出力軸120Dの回転方向も逆転する。
【0115】
図10に示した遊星歯車減速機14Cは、外歯車120を固定して、固定リング122Bに出力軸を取り付けてもよい。また、内歯車124を固定して、外歯車120に入力軸を取り付け、かつ、固定リング122Bに出力軸を取り付けてもよい。
【0116】
遊星歯車減速機14Cは、外歯車120の歯120Aと、中間歯車122の複数の歯122Aとが同時に噛み合わせられる。また、遊星歯車減速機14Cは、180度対称の二か所の位置において、外歯車120の歯120Aと、中間歯車122の複数の歯122Aとが噛み合わせられる。
【0117】
これにより、歯のピッチ誤差、累積ピッチ誤差の回転精度への影響が平均化される。すなわち、ノンバックラッシュを実現している。また、高い位置決め精度が得られる。ここでいうノンバックラッシュには、図1に示した移動ステージ36の位置決め精度に影響しない程度の微小なバックラッシュが発生する、実質的なノンバックラッシュが含まれる。
【0118】
更に、図10に示した遊星歯車減速機14Cは、入力軸124Cと出力軸120Dとが同一の直線の上に配置される。これにより、遊星歯車減速機14Cの入力軸124C、及び出力軸120Dと直交する方向における、遊星歯車減速機14Cの省スペース化が可能である。
【0119】
[直線移動機構の構成例]
<リニアモータを用いた直線移動機構>
図11は直線移動機構の構成例を示す直線移動機構の概略構成図である。図11には、リニアモータ200を用いた直線移動機構を示す。図11に示したリニアモータ200は、本体ベース202、ガイドレール204、コイルベース206、スライダー208、マグネット210、及び移動ステージ212を備えている。
【0120】
ガイドレール204は、本体ベース202の上に配置される。リニアモータ200は、リニアモータ200の短手方向について、二本のガイドレール204が配置される。図11では、二本のガイドレール204のうち一本を図示する。なお、リニアモータ200の短手方向は、図11の紙面を貫く方向である。
【0121】
コイルベース206は、二本のガイドレール204の間の位置に配置される。コイルベース206は、リニアモータ200の長手方向について、移動ステージ212の移動範囲の全長に対応する長さを有している。コイルベース206は、電磁石が適用される。
【0122】
スライダー208は、ガイドレール204の上に取り付けられる。スライダー208は、ガイドレール204の反対側の面に移動ステージ212が取り付けられる。スライダー208は、移動ステージ212をガイドレール204に沿って移動可能に支持する。
【0123】
移動ステージ212は、コイルベース206の側の面にマグネット210が取り付けられる。マグネット210とコイルベース206との間には、一定の間隔が空けられる。一定の間隔は、マグネット210とコイルベース206との間に生じる磁力に応じて決められる。
【0124】
リニアモータ200は、指令信号に基づいてコイルベース206を励磁する。コイルベース206の励磁に起因して、マグネット210に駆動力が発生し、これにより移動ステージ212がガイドレール204の上を移動する。
【0125】
図11に示した移動ステージ212は、無端状のベルト220が取り付けられる。図11に示した移動ステージ212は、図1に示した移動ステージ36に相当する。図11に示したベルト220は、図1に示したベルト34に相当する。
【0126】
図11に示したベルト220は、第一ローラ222、第二ローラ224、第三ローラ226、及び第四ローラ228に巻き掛けられる。図11に示した第一ローラ222は、図1に示した回転軸18に相当する。図11に示した第一ローラ222は、図1に示した回転軸18が連結されてもよい。
【0127】
図11に示した移動ステージ212は、リニアモータ200の励磁が解除された場合に、図1に示した手動送り機構10を用いて手動送りが可能である。図1に示したノンバックラッシュ減速機14は、図11に示したリニアモータ200の励磁が解除された場合の移動ステージ212のブレーキとして機能する。
【0128】
図11に示した移動ステージ212は、移動ステージ212を昇降動作させるZ軸方向移動機構に適用される場合に、バランスウエイト、及びバランスウエイトのガイド部材を備える態様が好ましい。バランスウエイトの配置例として、第二ローラ224と第三ローラ226との間のベルト220に取り付ける例が挙げられる。
【0129】
リニアモータ200は、コイルベース206に代わり永久磁石を備え、マグネット210に代わり電磁石を備えてもよい。図11に示したリニアモータ200は、磁力を駆動源として被移動体を移動させるリニアモータの一例である。
【0130】
<ボールねじを用いた直線移動機構>
図12は直線移動機構の他の構成例を示す直線移動機構の概略構成図である。図12は、ボールねじ240を用いた直線移動機構を示す。図12に示したボールねじ240は、ねじ242、ナット244、移動ステージ246、ねじ支持部材248を備えている。
【0131】
ねじ242の一方の端は、連結部材250を介してモータ252が取り付けられる。ねじ242の他方の端は、回転軸254が取り付けられる。図12に示した回転軸254は、図1に示した回転軸18に相当する。図12に示した回転軸254は、図1に示した回転軸18が連結されてもよい。
【0132】
図12に示した移動ステージ246は、モータ252の励磁が解除された場合に、図1に示した手動送り機構10を用いて手動送りが可能である。図1に示したノンバックラッシュ減速機14は、図12に示したモータ252の励磁が解除された場合の移動ステージ246のブレーキとして機能する。
【0133】
直線移動機構は、リニアモータ200を用いた直線移動機構、及びボールねじ240を用いた直線移動機構に限定されない。例えば、ベルトを用いた直線移動機構、及びコンベアを用いた直線移動機構など、他の駆動方式を用いた直線移動機構を採用してもよい。
【0134】
図12に示したボールねじ240は、回転軸の回転を被移動体の任意の一方向への直線移動に変換するねじ部の一例である。
【0135】
[手動送り機構の装置適用例]
本明細書に示した手動送り機構は、表面形状測定機用手動送り機構として適用可能である。また、粗さ測定機、輪郭測定機、及び真円度測定機などの表面測定機用手動送り機構として適用可能である。
【0136】
<手動送り機構を用いた手動調整>
図1に示した手動送り機構10を用いて、表面形状測定機に具備されるスタイラスのX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向における位置の微調整が可能である。スタイラス318は、移動ステージ36に取り付けられている。
【0137】
X軸方向におけるスタイラスの位置の微調整を実行する場合は、まず、摩擦板16と回転軸18とを連結させる。次に、X軸方向移動部のモータの励磁を解除する。手動つまみ12が操作されると、手動つまみ12の操作方向、及び操作量に応じて、X軸方向におけるスタイラスの位置の微調整が可能である。
【0138】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0139】
10,10A,10B…手動送り機構、12…手動つまみ、12B…シャフト、14…ノンバックラッシュ減速機、16…摩擦板、18…回転軸、20…摩擦板付勢機構、22…減速機移動機構、24…エアシリンダ、26…ソレノイドバルブ、40…摩擦板付勢板、50…電磁クラッチ、200…リニアモータ、240…ボールねじ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12