(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20220502BHJP
C23C 16/24 20060101ALI20220502BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/24
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2019195237
(22)【出願日】2019-10-28
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】堀田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】堀池 亮太
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-162974(JP,A)
【文献】特開2005-183514(JP,A)
【文献】特開2014-067796(JP,A)
【文献】特開2019-091819(JP,A)
【文献】特開2003-086511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/24
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(a1)基板に対してハロ
シランを含む第1ガスを供給する
ことでシリコンと塩素とを含む核を形成する工程と、(a2)前記基板に対して水素を含む第2ガスを供給する工程と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコンシード層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してシリコンを含む第3ガスを供給することで、前記シリコンシード層上にシリコンを含む膜を形成する工程と、
を有し、
(a2)における前記基板が存在する空間の圧力を、(a1)における前記基板が存在する空間の圧力よりも高くする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
(a2)における前記第2ガスの供給流量を、(a1)における前記第1ガスの供給流量よりも大きくする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
(a2)における前記第2ガスの供給時間を、(a1)における前記第1ガスの供給時間よりも長くする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
(a)における処理温度を350℃以上450℃以下とする請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
(a)における処理温度を350℃以上400℃以下とする請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
(a1)における前記基板が存在する空間の圧力を667Pa以上1200Pa以下とする請求項4または5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
(a2)における前記基板が存在する空間の圧力を1333Pa以上13332Pa以下とする請求項4または5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
(a)において形成する前記シリコンシード層の厚さを1原子層未満の厚さとする
請求項1~7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
(a1)では、前記基板に対して前記第1ガスと一緒に前記第2ガスを供給する請求項1~8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
(a1)における前記第2ガスの供給流量を、(a2)における前記第2ガスの供給流量よりも小さくする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
(c)(a)を実施した後、(b)を実施する前に、前記基板に対して前記第2ガスを供給する工程を更に有する請求項1~10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
(c)における処理温度を、(a)における処理温度よりも高くする請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
(c)における処理温度を、(b)における処理温度よりも高くする請求項11または12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
(c)における前記基板が存在する空間の圧力を、(a1)における前記基板が存在する空間の圧力よりも高くする請求項11~13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
(c)における処理温度を600℃以上800℃以下とする請求項11~14のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
(c)における前記基板が存在する空間の圧力を1333Pa以上13332Pa以下とする請求項15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
(d)(a)を実施する前に、前記基板に対してハロゲンおよびシリコンを含む第4ガスを供給する工程を更に有する請求項1~16のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
(d)における前記第4ガスの供給時間を、(a1)における前記第1ガスの供給時間よりも長くする請求項17に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
(a)(a1)基板に対してハロシランを含む第1ガスを供給することでシリコンと塩素とを含む核を形成する工程と、(a2)前記基板に対して水素を含む第2ガスを供給する工程と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコンシード層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してシリコンを含む第3ガスを供給することで、前記シリコンシード層上にシリコンを含む膜を形成する工程と、
を有し、
(a2)における前記基板が存在する空間の圧力を、(a1)における前記基板が存在する空間の圧力よりも高くする基板処理方法。
【請求項20】
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の基板に対してハロ
シランを含む第1ガスを供給する第1ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して水素を含む第2ガスを供給する第2ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対してシリコンを含む第3ガスを供給する第3ガス供給系と、
前記処理室内の圧力を調整する圧力調整器と、
前記処理室内において、(a)(a1)基板に対して前記第1ガスを供給する
ことでシリコンと塩素とを含む核を形成する処理と、(a2)前記基板に対して前記第2ガスを供給する処理と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコンシード層を形成する処理と、(b)前記基板に対して前記第3ガスを供給することで、前記シリコンシード層上にシリコンを含む膜を形成する処理と、を行わせ、前記第2ガスを供給する処理における前記基板が存在する空間の圧力を、前記第1ガスを供給する処理における前記基板が存在する空間の圧力よりも高くするように、前記第1ガス供給系、前記
第2ガス供給系、前記第3ガス供給系、および前記圧力調整器を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項21】
基板処理装置の処理室内において、
(a)(a1)基板に対してハロ
シランを含む第1ガスを供給する
ことでシリコンと塩素とを含む核を形成する手順と、(a2)前記基板に対して水素を含む第2ガスを供給する手順と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコンシード層を形成する手順と、
(b)前記基板に対してシリコンを含む第3ガスを供給することで、前記シリコンシード層上にシリコンを含む膜を形成する手順と、
(a2)における前記基板が存在する空間の圧力を、(a1)における前記基板が存在する空間の圧力よりも高くする手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上にシリコンシード層を形成する工程と、シリコンシード層上にシリコンを含む膜を形成する工程と、が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板上に形成されるシリコンを含む膜の特性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)(a1)基板に対してハロゲンおよびシリコンを含む第1ガスを供給する工程と、(a2)前記基板に対して水素を含む第2ガスを供給する工程と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコンシード層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してシリコンを含む第3ガスを供給することで、前記シリコンシード層上にシリコンを含む膜を形成する工程と、
を有し、
(a2)における前記基板が存在する空間の圧力を、(a1)における前記基板が存在する空間の圧力よりも高くする技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板上に形成されるシリコンを含む膜の特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の各態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】本開示の各態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を
図1のA-A線断面図で示す図である。
【
図3】本開示の各態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】本開示の第1態様における基板処理シーケンスを示す図である。
【
図5】本開示の第2態様における基板処理シーケンスを示す図である。
【
図6】本開示の第3態様における基板処理シーケンスを示す図である。
【
図7】シリコンシード層のCl濃度(at/cm
3)、および、シリコン膜の結晶粒の平均粒径(μm)、ステップカバレッジ(%)、膜密度(g/cm
3)の測定結果をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の第1態様>
以下、本開示の第1態様について
図1~
図4を参照しながら説明する。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱機構(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0011】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを第1~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料である非金属材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249a,249cのそれぞれは、ノズル249bに隣接して設けられている。
【0012】
ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241cおよび開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232d,232fがそれぞれ接続されている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232e,232gがそれぞれ接続されている。ガス供給管232d~232gには、ガス流の上流側から順に、MFC241d~241gおよびバルブ243d~243gがそれぞれ設けられている。ガス供給管232a~232gは、例えば,SUS等の金属材料により構成されている。
【0013】
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249bは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249a,249cは、ノズル249bと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249bとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249aと反対側に設けられているということもできる。ノズル249a,249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0014】
ガス供給管232aからは、処理ガス(第3ガス)として、例えば、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのシリコン(Si)を含むシラン系ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。シラン系ガスとしては、ハロゲン非含有の水素化ケイ素ガスを用いることができ、例えば、モノシラン(SiH4、略称:MS)ガスを用いることができる。
【0015】
ガス供給管232bからは、処理ガス(第1ガス)として、例えば、ハロゲンおよびSiを含むガス、すなわち、ハロシランガス(第1ハロシランガス)が、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。ハロゲンには、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。第1ハロシランガスとしては、例えば、ClおよびSiを含むクロロシランガスを用いることができ、例えば、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガスを用いることができる。
【0016】
ガス供給管232dからは、処理ガス(第2ガス)として、例えば、水素(H)を含むガスが、MFC241d、バルブ243d、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。Hを含むガスとしては、還元性ガスである水素(H2)ガスを用いることができる。
【0017】
ガス供給管232eからは、処理ガス(第4ガス)として、例えば、ハロゲンおよびSiを含むガス、すなわち、ハロシランガス(第2ハロシランガス)が、MFC241e、バルブ243e、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。第2ハロシランガスとしては、例えば、ClおよびSiを含むクロロシランガスを用いることができ、例えば、ジクロロシラン(SiH2Cl2、略称:DCS)ガスを用いることができる。
【0018】
ガス供給管232c,232f,232gからは、不活性ガスとして、例えば、窒素(N2)ガスが、それぞれMFC241c,241f,241g、バルブ243c,243f,243g、ガス供給管232a~232c、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給される。N2ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0019】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、第3ガス供給系(シラン系ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第1ガス供給系(第1ハロシランガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、第2ガス供給系(H含有ガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232e、MFC241e、バルブ243eにより、第4ガス供給系(第2ハロシランガス供給系)が構成される。主に、ガス供給管232c,232f,232g、MFC241c,241f,241g、バルブ243c,243f,243gにより、不活性ガス供給系が構成される。
【0020】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243gやMFC241a~241g等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232gのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232g内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243gの開閉動作やMFC241a~241gによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232g等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0021】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。
図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0022】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0023】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0024】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0025】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0026】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0027】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241g、バルブ243a~243g、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0028】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241gによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243gの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御するように構成されている。
【0029】
コントローラ121は、外部記憶装置123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0030】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板としてのウエハ200上に膜を形成し、その後、この膜をアニールする基板処理シーケンス例について、主に
図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0031】
図4に示すように、本態様の基板処理シーケンスは、
ウエハ200に対して第1ガスとしてHCDSガスを供給するステップ(以下、HCDSガス供給)と、ウエハ200に対して第2ガスとしてH
2ガスを供給するステップ(以下、H
2ガス供給)と、を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことで、ウエハ200上にシリコンシード層(以下、Siシード層)を形成するステップ(以下、Siシード層形成)と、
ウエハ200に対して第3ガスとしてMSガスを供給することで、シリコンシード層上に、シリコンを含む膜として、シリコン膜(以下、Si膜)を形成するステップ(以下、Si膜形成)と、
を有し、
Siシード層形成では、H
2ガス供給におけるウエハ200が存在する空間の圧力(処理圧力)を、HCDSガス供給におけるウエハ200が存在する空間の圧力(処理圧力)よりも高くする。
【0032】
なお、本態様の基板処理シーケンスは、
Siシード層形成を実施する前に、ウエハ200に対して第4ガスとしてDCSガスを供給するステップ(以下、プリトリートメント)を更に有する。
【0033】
また、本態様の基板処理シーケンスは、
Si膜形成を実施した後に、Siシード層およびSi膜をアニールするステップ(以下、アニール)を更に有する。
【0034】
本明細書では、上述の基板処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0035】
DCS→(HCDS→H2)×n→MS→ANL
【0036】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0037】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0038】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。この際、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0039】
(プリトリートメント)
その後、処理室201内のウエハ200に対してDCSガスを供給する。
【0040】
具体的には、バルブ243eを開き、ガス供給管232e内へDCSガスを流す。DCSガスは、MFC241eにより流量調整され、ガス供給管232b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してDCSガスが供給される(DCSガス供給)。このとき、バルブ243c,243f,243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へN2ガスを供給するようにしてもよい。
【0041】
後述する処理条件下でウエハ200に対してDCSガスを供給することにより、DCSガスの持つトリートメント作用(エッチング作用)により、ウエハ200の表面から自然酸化膜や不純物等を除去することができ、この面を清浄化させることが可能となる。これにより、ウエハ200の表面を、後述するSiシード層形成において、Siの吸着、すなわち、Siシード層の形成が進行しやすい面とすることができる。プリトリートメントにおけるDCSガスの供給時間を、後述するHCDSガス供給におけるHCDSガスの供給時間よりも長くすることにより、ここで述べたトリートメント作用を確実に得ることが可能となる。
【0042】
ウエハ200の表面が清浄化された後、バルブ243eを閉じ、処理室201内へのDCSガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243c,243f,243gを開き、ノズル249a~249cを介して処理室201内へN2ガスを供給する。ノズル249a~249cより供給されるN2ガスは、パージガスとして作用し、これにより、処理室201内がパージされる(パージ)。
【0043】
DCSガス供給における処理条件としては、
DCSガス供給流量:0.1~1slm
DCSガス供給時間:5~10分
N2ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
処理温度(第1温度):350~450℃、好ましくは350~400℃
処理圧力:667~1333Pa(5~10Torr)
が例示される。
【0044】
パージにおける処理条件としては、
N2ガス供給流量:0.5~20slm
N2ガス供給時間:10~30秒
処理圧力:1~30Pa
が例示される。他の処理条件は、DCSガス供給における処理条件と同様とすることができる。
【0045】
なお、本明細書における「350~450℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「350~450℃」とは「350℃以上450℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0046】
第4ガス(第2ハロシランガス)としては、DCSガスの他、モノクロロシラン(SiH3Cl、略称:MCS)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3、略称:TCS)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4、略称:STC)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6、略称:HCDS)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8、略称:OCTS)ガス等のクロロシランガスを用いることができる。また、第4ガスとしては、テトラフルオロシラン(SiF4)ガス、テトラブロモシラン(SiBr4)ガス、テトラヨードシラン(SiI4)ガス等を用いることができる。すなわち、第4ガスとして、クロロシランガスの他、フルオロシランガス、ブロモシランガス、ヨードシランガス等のハロシランガスを用いることができる。また、第4ガスとしては、塩化水素(HCl)ガス、塩素(Cl2)ガス、トリクロロボラン(BCl3)ガス、フッ化塩素(ClF3)ガス等のSi非含有のハロゲン系ガスを用いることができる。第4ガスは、第1ガスと分子構造(化学構造)が異なっていてもよいし、同一であってもよい。なお、第1温度と、後述する第2温度とを、同一または同様の温度とする場合は、第4ガスとして、第1ガスと分子構造が異なるガスを用いるのが好ましく、同一条件下において第1ガスよりも熱分解温度が高いガスを用いるのが好ましい。これにより、温度条件をこのように設定する場合において、第4ガスによるトリートメント効果が適正に得られるようになる。
【0047】
不活性ガスとしては、N2ガスの他、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0048】
(Siシード層形成)
その後、次のステップ1,2を順次実行する。
【0049】
[ステップ1]
このステップでは、処理室201内のウエハ200に対してHCDSガスを供給する。
【0050】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b内へHCDSガスを流す。HCDSガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してHCDSガスが供給される(HCDSガス供給)。このとき、バルブ243c,243f,243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へN2ガスを供給するようにしてもよい。
【0051】
後述する処理条件下でウエハ200に対してHCDSガスを供給することにより、プリトリートメントで清浄化されたウエハ200の表面に、HCDSに含まれるSiを吸着させ、シード(核)を形成することが可能となる。後述する処理条件下では、ウエハ200の表面に形成される核には、所定量のClが含まれることとなる。また、後述する処理条件下では、ウエハ200の表面に形成される核の結晶構造は、アモルファス(非晶質)となる。
【0052】
ウエハ200の表面に核が形成された後、バルブ243bを閉じ、処理室201内へのHCDSガスの供給を停止する。そして、プリトリートメントにおけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0053】
[ステップ2]
ステップ1が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200の表面に形成された核に対してH2ガスを供給する。
【0054】
具体的には、バルブ243dを開き、ガス供給管232d内へH2ガスを流す。H2ガスは、MFC241dにより流量調整され、ガス供給管232a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してH2ガスが供給される(H2ガス供給)。このとき、バルブ243c,243f,243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へN2ガスを供給するようにしてもよい。
【0055】
後述する処理条件下でウエハ200に対してH2ガスを供給することにより、ウエハ200の表面に形成されている核から、Clを脱離させることが可能となる。核から脱離させたClは、Clを含むガス状物質を生成し、処理室201内から排出される。
【0056】
なお、後述するように、本態様では、H2ガス供給におけるウエハ200が存在する空間の圧力(処理圧力)を、HCDSガス供給におけるウエハ200が存在する空間の圧力(処理圧力)よりも高くする。このようにすることで、H2ガス供給において、核からのClの脱離を促進させることが可能となる。結果として、Siシード層形成を実施することでウエハ200上に形成されるSiシード層を、Cl濃度の低い層とすることが可能となる。
【0057】
なお、本態様では、H2ガス供給におけるH2ガスの供給流量を、HCDSガス供給におけるHCDSガスの供給流量よりも大きくしてもよい。このようにすることで、H2ガス供給における核からのClの脱離をさらに促進させ、ウエハ200上に形成されるSiシード層のCl濃度をさらに低減させることが可能となる。また、本態様では、H2ガス供給におけるH2ガスの供給時間を、HCDSガス供給におけるHCDSガスの供給時間よりも長くしてもよい。このようにすることで、H2ガス供給における核からのClの脱離をさらに促進させ、ウエハ200上に形成されるSiシード層のCl濃度をさらに低減させることが可能となる。
【0058】
ウエハ200の表面に形成された核からClを脱離させた後、バルブ243dを閉じ、処理室201内へのH2ガスの供給を停止する。そして、プリトリートメントにおけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0059】
[所定回数実施]
上述したステップ1,2を交互に、すなわち、同期させることなく非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、上述の核が高密度に形成されてなるシード層、すなわち、Siシード層を形成することが可能となる。本態様では、ステップ1,2を交互に行うことで、すなわち、HCDSガス供給を行うたびにH2ガス供給を行いウエハ200の表面に形成された核からClを脱離させることで、ウエハ200上に形成されるSiシード層を、Cl濃度が低い層とすることが可能となる。また、後述する処理条件下では、ウエハ200上に形成されるSiシード層の結晶構造を、アモルファスとすることが可能となる。
【0060】
ウエハ200上に形成されるSiシード層の厚さは、上述のサイクルの実施回数、処理温度、HCDSガス供給時間などの処理条件を制御することにより調整可能である。本態様では、これらのうち少なくともいずれかの要素を適正に制御することにより、ウエハ200上に形成されるSiシード層の厚さを薄くし、例えば、1原子層未満の厚さとするのが好ましい。このように、ウエハ200上に形成されるSiシード層の厚さを薄くすることにより、この層を、Cl濃度がさらに低い層とすることが可能となり、更には、Cl含有量(絶対量)が極めて少ない層とすることが可能となる。
【0061】
HCDSガス供給における処理条件としては、
HCDSガス供給流量:0.1~1slm
HCDSガス供給時間:0.5~2分
処理温度(第2温度):350~450℃、好ましくは350~400℃
処理圧力:277~1200Pa(2~9Torr)、好ましくは667~1200Pa(5~9Torr)
が例示される。他の処理条件は、DCSガス供給における処理条件と同様とすることができる。
【0062】
なお、処理温度が350℃未満となると、HCDSに含まれるSiがウエハ200の表面に吸着し難くなり、ウエハ200上へのSiシード層の形成が困難となる場合がある。処理温度を350℃以上の温度とすることで、HCDSに含まれるSiをウエハ200の表面に吸着させ、ウエハ200上にSiシード層を形成することが可能となる。
【0063】
処理温度が450℃を超えると、処理室201内へ供給されたHCDSガスが熱分解(気相分解)し、ウエハ200上に形成されるSiシード層の厚さを制御することが困難となる場合がある。処理温度を450℃以下の温度とすることで、処理室201内へ供給されたHCDSガスの熱分解を抑制し、ウエハ200上に形成されるSiシード層の厚さの制御性を高め、例えば、ウエハ200上に形成されるSiシード層の厚さを1原子層未満の厚さとすることが可能となる。処理温度を400℃以下の温度とすることで、処理室201内へ供給されたHCDSガスの熱分解を確実に抑制し、ウエハ200上に形成されるSiシード層の厚さの制御性をより高め、例えば、ウエハ200上に形成されるSiシード層の厚さを1原子層未満の厚さとすることが確実に可能となる。
【0064】
また、処理圧力が277Pa(2Torr)未満となると、HCDSに含まれるSiがウエハ200の表面に吸着し難くなり、ウエハ200上へのSiシード層の形成が困難となる場合がある。処理圧力を277Pa以上の圧力とすることで、HCDSに含まれるSiをウエハ200の表面に吸着させ、ウエハ200上にSiシード層を形成することが可能となる。処理圧力を667Pa(5Torr)以上の圧力とすることで、HCDSに含まれるSiをウエハ200の表面に確実に吸着させ、ウエハ200上にSiシード層を確実に形成することが可能となり、更には、Siシード層におけるSi密度や核密度を高密度化することが可能となる。
【0065】
処理圧力が1200Pa(9Torr)を超えると、処理室201内においてパーティクル(異物)が発生するリスクが高まる場合がある。処理圧力を1200Pa以下の圧力とすることで、処理室201内においてパーティクル(異物)が発生するリスクを低減させることが可能となる。
【0066】
H2ガス供給における処理条件としては、
H2ガス供給流量:2~10slm
H2ガス供給時間:2~5分
処理圧力:1333~13332Pa(10~100Torr)
が例示される。他の処理条件は、DCSガス供給における処理条件と同様とすることができる。
【0067】
なお、処理圧力が1333Pa(10Torr)未満となると、上述した核からのClの脱離効果が低下し、Siシード層のCl濃度が高くなる場合がある。処理圧力を1333Pa以上の圧力とすることで、核からのClの脱離効果を高め、ウエハ200上に形成されるSiシード層をCl濃度の低い層とすることが可能となる。
【0068】
処理圧力が13332Pa(100Torr)を超えると、処理室201内の圧力変更に要する時間が長くなり、基板処理のスループット、すなわち、基板処理の生産性に影響を及ぼす場合がある。処理圧力を13332Pa以下の圧力とすることで、処理室201内の圧力変更に要する時間の増加を抑制することができ、基板処理のスループット、すなわち、基板処理の生産性への影響を低減させることが可能となる。
【0069】
第1ガス(第1ハロシランガス)としては、HCDSガスの他、MCSガス、DCSガス、TCSガス、STCガス、OCTSガス等のクロロシランガスを用いることができる。また、第1ガスとしては、SiF4ガス、SiBr4ガス、SiI4ガス等を用いることができる。すなわち、第1ガスとしては、クロロシランガスの他、フルオロシランガス、ブロモシランガス、ヨードシランガス等のハロシランガスを用いることができる。
【0070】
第2ガス(Hを含むガス)としては、H2ガスの他、SiH4ガスや重水素(D2)ガス等の還元性ガスを用いることができる。
【0071】
(昇温)
ウエハ200上にSiシード層が形成された後、処理室201内の温度、すなわち、ウエハ200の温度を、上述の第2温度よりも高い第3温度へ変更させるように、ヒータ207の出力を調整する。本ステップを行う際、バルブ243c,243f,243gを開き、ノズル249a~249cを介して処理室201内へN2ガスを供給し、排気口231aより排気して、処理室201内をパージする。ウエハ200の温度が第3温度に到達して安定した後、後述するSi膜形成を開始する。
【0072】
ウエハ200の温度を第2温度よりも高い第3温度へと昇温させ、かつ、ウエハ200の温度が安定するまで待機することにより、ウエハ200上に形成されたSiシード層のポリ化(多結晶化)を開始させることが可能となる。なお、このときの処理条件(第3温度、待機時間)によっては、Siシード層をアモルファス状態に維持することも可能である。
【0073】
(Si膜形成)
ウエハ200の温度が第3温度に到達し安定化した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSiシード層の表面に対してMSガスを供給する。
【0074】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a内へMSガスを流す。MSガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対してMSガスが供給される(MSガス供給)。このとき、バルブ243c,243f,243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へN2ガスを供給するようにしてもよい。
【0075】
後述する処理条件下でウエハ200に対してMSガスを供給することにより、MSガスを気相中で分解させて、ウエハ200の表面上、すなわち、ウエハ200上に形成されたSiシード層上にSiを吸着(堆積)させ、Si膜を形成することが可能となる。第3ガスとして、Clを含まないMSガスを用いることから、ウエハ200上に形成されるSi膜は、Clを含まない膜となる。また、後述する処理条件下では、ウエハ200上に形成されるSi膜の結晶構造は、アモルファスとなる。
【0076】
後述する条件下、すなわち、第2温度よりも高い第3温度下でSi膜を形成することにより、昇温でSiシード層のポリ化を開始させた場合は、そのポリ化をさらに進行させることが可能となる。また、昇温でSiシード層をアモルファス状態に維持した場合は、本ステップにおいて、Siシード層のポリ化を開始させることが可能となる。いずれの場合も、Siシード層の少なくとも一部をポリ化させることができ、Siシード層を、アモルファスとポリとの混晶状態、もしくは、ポリ状態に変化させることが可能となる。なお、昇温でSiシード層をアモルファス状態に維持した場合、本ステップにおける処理条件(第3温度、ガス供給時間)によっては、Siシード層をアモルファス状態に維持することも可能である。ただし、本ステップが完了した時点においてアモルファス状態を維持したSiシード層は、その上に形成されたアモルファス状態のSi膜よりも、ポリ化しやすい状態となる。
【0077】
ウエハ200上のSiシード層上へのアモルファス状態のSi膜の形成が完了した後、バルブ243aを閉じ、処理室201内へのMSガスの供給を停止する。そして、プリトリートメントにおけるパージと同様の処理手順、処理条件により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する。
【0078】
Si膜形成における処理条件としては、
MSガス供給流量:0.01~5slm
MSガス供給時間:1~300分
N2ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
処理温度(第3温度):450~550℃
処理圧力:30~400Pa(1.5~3Torr)
が例示される。
【0079】
第3ガス(シラン系ガス)としては、MSガスの他、ジシラン(Si2H6)ガス、トリシラン(Si3H8)ガス、テトラシラン(Si4H10)ガス、ペンタシラン(Si5H12)ガス、ヘキサシラン(Si6H14)ガス等の水素化ケイ素ガスを用いることができる。なお、Si膜形成の終了時におけるSi膜の結晶状態を確実にアモルファスとするには、第3ガスとして、MSガスのような低次の水素化ケイ素ガスを用いるのが好ましい。
【0080】
(アニール)
Siシード層上へのアモルファス状態のSi膜の形成が完了した後、処理室201内の温度、すなわち、ウエハ200の温度を、上述の第3温度よりも高い第4温度へ変更させるようにヒータ207の出力を調整し、Siシード層およびSi膜をそれぞれ熱処理(アニール)する。このステップは、バルブ243c,243f,243gを開き、処理室201内へN2ガスを供給した状態で行ってもよく、また、バルブ243c,243f,243gを閉じ、処理室201内へのN2ガスの供給を停止した状態で行ってもよい。
【0081】
後述する処理条件下でアニールを行うことにより、Siシード層およびSi膜をポリ化させた状態とすることができる。なお、アニール前においては、Siシード層がアモルファスとポリとの混晶状態である場合と、ポリ状態である場合と、アモルファス状態である場合と、があるが、いずれの場合も、先行してSiシード層をポリ化させ、Siシード層をポリ化させた後に、Si膜をポリ化させることができる。これにより、先行してポリ化させたSiシード層の結晶粒(グレイン)を核として、Si膜をポリ化させることができる。
【0082】
この際、先行してポリ化させたSiシード層の結晶構造に基づき、Si膜をポリ化させることができる。アニール処理を行うことでポリ化させたSi膜に含まれる結晶粒の粒径(グレインサイズ)は、先行してポリ化させたSiシード層に含まれる結晶粒の粒径によって影響を受ける。例えば、先行してポリ化させたSiシード層に含まれる結晶粒の粒径が大きいと、アニール処理を行うことでポリ化させたSi膜に含まれる結晶粒の粒径が大きくなる傾向がある。また例えば、先行してポリ化させたSiシード層に含まれる結晶粒の粒径が小さいと、アニール処理を行うことでポリ化させたSi膜に含まれる結晶粒の粒径が小さくなる傾向がある。
【0083】
上述したように、本態様では、Siシード層形成において、HCDSガス供給とH2ガス供給とを非同時に行うサイクルを所定回数行い、H2ガス供給における処理圧力をHCDSガス供給における処理圧力よりも高くすることにより、ウエハ200上に形成されるSiシード層を、Cl濃度の低い層とすることが可能となる。発明者等の鋭意研究によれば、Siシード層に含まれるClは、Siシード層をポリ化させる際、結晶粒の成長を阻害する要因となることが判明している。本態様では、ウエハ200上に形成されるSiシード層をCl濃度の低い層とすることにより、Siシード層を先行してポリ化させる際、Siシード層において成長する結晶粒の粒径を大きくすることが可能となる。結果として、その後にSi膜をポリ化させる際、Si膜において成長する結晶粒の粒径を大きくすることが可能となる。
【0084】
アニールにおける処理条件としては、
N2ガス供給流量(各ガス供給管):0~20slm
処理温度(第4温度):600~1000℃
処理圧力:0.1~100000Pa
処理時間:1~300分
が例示される。
【0085】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ウエハ200上に形成されたSiシード層およびSi膜のポリ化が完了した後、ノズル249a~249cのそれぞれからパージガスとしてのN2ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0086】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0087】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0088】
(a)Siシード層形成において、HCDSガス供給とH2ガス供給とを非同時に行うサイクルを所定回数行い、また、H2ガス供給における処理圧力をHCDSガス供給における処理圧力よりも高くすることにより、ウエハ200の表面に形成されるSiシード層を、Cl濃度の低い層とすることが可能となる。これにより、Siシード層を先行してポリ化させる際、Siシード層において成長させる結晶粒の粒径を大きくすることが可能となる。結果として、先行してポリ化させたSiシード層の結晶構造に基づきSi膜をポリ化させる際、Si膜において成長させる結晶粒の粒径を大きくすることが可能となる。
【0089】
(b)Si膜において成長させる結晶粒の粒径を大きくすることにより、ポリ化させたSi膜の表面ラフネス(RMS)を小さくする方向に調整することが可能となる。これは、ポリ化させたSi膜に含まれる結晶粒の粒径が大きくなることで、ポリ化させたSi膜の表面の単位面積あたりに存在する結晶粒界(グレインバウンダリ)の密度が低下することが一要因として影響しているものと考えられる。なお、「表面ラフネス」とは、表面の粗さの度合いを意味している。「表面ラフネスが小さい」とは、表面が平滑であることを意味している。
【0090】
(c)Si膜中にて成長させる結晶粒の粒径を大きくすることにより、ポリ化させたSi膜のウエハ200面内方向、すなわち、沿面方向における電気抵抗を低減させる方向に調整することが可能となる。これも、ポリ化させたSi膜に含まれる結晶粒の粒径が大きくなることで、ポリ化させたSi膜の表面の単位面積あたりに存在する結晶粒界の密度が低下することが一要因として影響しているものと考えられる。
【0091】
(d)H2ガス供給におけるH2ガスの供給流量を、HCDSガス供給におけるHCDSガスの供給流量よりも大きくすることにより、ウエハ200上に形成されるSiシード層のCl濃度をさらに低減させることが可能となる。これにより、上述した(a)~(c)の効果がより確実に得られるようになる。
【0092】
(e)H2ガス供給におけるH2ガスの供給時間を、HCDSガス供給におけるHCDSガスの供給時間よりも長くすることにより、ウエハ200上に形成されるSiシード層のCl濃度をさらに低減させることが可能となる。これにより、上述した(a)~(c)の効果がより確実に得られるようになる。
【0093】
(f)Siシード層形成において、処理条件を適正に調節し、ウエハ200上に形成されるSiシード層の厚さを1原子層未満の厚さとすることにより、ウエハ200上に形成されるSiシード層のCl濃度を、さらに低減させることが可能となる。また、Siシード層におけるCl含有量(絶対量)を大幅に低減させることが可能となる。これらにより、上述した(a)~(c)の効果がより確実に得られるようになる。また、Siシード層形成の所要時間を短縮させ、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0094】
また、ウエハ200上に形成されるSiシード層の厚さを1原子層未満の厚さとすることにより、Siシード層上に形成されるSi膜の段差被覆性(ステップカバレッジ)、ウエハ面内膜厚均一性をそれぞれ向上させることが可能となる。また、Siシード層上に形成されるSi膜の表面ラフネスを小さくすることも可能となる。
【0095】
(g)Si膜形成を行う前にSiシード層形成を行うことにより、ウエハ200上に形成されるSi膜のインキュベーションタイム(成長遅れ)を短縮させ、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0096】
(h)Siシード層形成の前にプリトリートメントを行い、ウエハ200の表面を予め清浄化させることにより、その後に行うSiシード層形成において、Siの吸着を促進させ、Siシード層の形成を効率的に行うことが可能となる。これにより、基板処理の生産性を向上させることが可能となる。
【0097】
また、ウエハ200の表面全域を予め清浄化させることで、Siシード層を、ウエハ200の面内全域にわたり均一かつ連続的に形成することが可能となる。結果として、Siシード層上に形成されるSi膜の段差被覆性、ウエハ面内膜厚均一性をそれぞれ、より向上させることが可能となる。また、Siシード層上に形成されるSi膜の表面ラフネスを、より小さくすることも可能となる。
【0098】
(i)上述の効果は、第1ガス(第1ハロシランガス)としてHCDSガス以外の上述のハロゲン系ガスを用いる場合や、第2ガス(Hを含むガス)としてH2ガス以外の上述の還元性ガスを用いる場合や、第3ガス(シラン系ガス)としてMSガス以外の上述のシラン系ガスを用いる場合や、第4ガス(第2ハロシランガス)としてDCSガス以外の上述のハロゲン系ガスを用いる場合や、N2ガス以外の不活性ガスを用いる場合にも、同様に得ることができる。
【0099】
<本開示の第2態様>
続いて、本開示の第2態様について、主に
図5を参照しながら説明する。
【0100】
図5や以下に示す基板処理シーケンスのように、Siシード層形成においてHCDSガスを供給する際、ウエハ200に対して、HCDSガスと一緒にH
2ガスを供給するようにしてもよい(HCDSガス+H
2ガス供給)。すなわち、Siシード層形成において、HCDSガス+H
2ガス供給と、H
2ガス供給と、を非同時に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うようにしてもよい。
【0101】
DCS→(HCDS+H2→H2)×n→MS→ANL
【0102】
本態様によっても、上述の第1態様と同様の効果が得られる。また、HCDSガス+H2ガス供給では、HCDSガスと一緒にH2ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成された核からClを脱離させることが可能となる。これにより、ウエハ200上に形成されるSiシード層のCl濃度をより低減させることが可能となる。結果として、第1態様で述べた(a)~(c)の効果がより確実に得られるようになる。
【0103】
なお、HCDSガス+H2ガス供給では、H2ガスの供給流量を、その後に行うH2ガス供給におけるH2ガスの供給流量よりも小さくするのが好ましく、例えば、0.1~0.5slmの範囲内の流量とするのが好ましい。このようにすることで、HCDSガス+H2ガス供給において、処理室201内におけるHCDSガスの分圧の過剰な低下を回避し、Siシード層の形成レートの低下を抑制することが可能となる。
【0104】
<本開示の第3態様>
続いて、本開示の第3態様について、主に
図6を参照しながら説明する。
【0105】
図6や以下に示す基板処理シーケンスのように、Siシード層形成を実施した後、Si膜形成を実施する前に、ウエハ200に対してH
2ガスを供給するステップ(H
2アニール)を行うようにしてもよい。
【0106】
DCS→(HCDS→H2)×n→H2→MS→ANL
【0107】
本態様によっても、上述の第1態様と同様の効果が得られる。また、H2アニールを行うことで、ウエハ200上に形成されたSiシード層からClをさらに脱離させ、この層のCl濃度をさらに低減させることが可能となる。結果として、上述した(a)~(c)の効果がより確実に得られるようになる。
【0108】
H2アニールにおける処理条件としては、
H2ガス供給流量:2~10slm
N2ガス供給流量(ガス供給管毎):0~20slm
ガス供給時間:2~20分
処理温度(第4温度):600~800℃
処理圧力:1333~13332Pa(10~100Torr)
が例示される。
【0109】
なお、処理温度が600℃未満となると、ウエハ200上に形成されたSiシード層からのClの脱離効果が低下する場合がある。処理温度を600℃以上の温度とすることで、Siシード層からのClの脱離効果が十分に得られるようになる。
【0110】
処理温度が800℃を超えると、ウエハ200の温度変更に要する時間が長くなり、基板処理のスループット、すなわち、基板処理の生産性に影響を及ぼす場合がある。処理温度を800℃以下の温度とすることで、ウエハ200の温度変更に要する時間の増加を抑制することができ、基板処理のスループット、すなわち、基板処理の生産性への影響を低減させることが可能となる。
【0111】
また、処理圧力が1333Pa(10Torr)未満となると、ウエハ200上に形成されたSiシード層に含まれるSiがマイグレーションしやすくなり、Siが凝集等することで、Siシード層のウエハ面内におけるSi密度が不均一となる場合がある。またSiシード層が不連続層となる場合もある。結果として、Siシード層上に形成されるSi膜の段差被覆性、ウエハ面内膜厚均一性が低下する場合がある。また、Siシード層上に形成されるSi膜の表面ラフネスが大きくなる場合もある。処理圧力を1333Pa以上の圧力とすることで、ウエハ200上に形成されたSiシード層に含まれるSiのマイグレーションを抑制することが可能となる。結果として、Siシード層上に形成されるSi膜の段差被覆性の悪化、ウエハ面内膜厚均一性の低下、表面ラフネスの増加をそれぞれ回避することが可能となる。
【0112】
処理圧力が13332Pa(100Torr)を超えると、処理室201内の圧力変更に要する時間が長くなり、基板処理のスループット、すなわち、基板処理の生産性に影響を及ぼす場合がある。処理圧力を13332Pa以下の圧力とすることで、処理室201内の圧力変更に要する時間の増加を抑制することができ、基板処理のスループット、すなわち、基板処理の生産性への影響を低減させることが可能となる。
【0113】
なお、H2アニールにおける処理温度(第4温度)は、Siシード層形成における処理温度(第2温度)よりも高くするのが好ましい。このようにすることで、ウエハ200上に形成されたSiシード層からのClの脱離をさらに促進させることが可能となる。結果として、上述した(a)~(c)の効果がより確実に得られるようになる。
【0114】
また、H2アニールにおける処理温度(第4温度)は、Si膜形成における処理温度(第3温度)よりも高くするのが好ましい。このようにすることで、ウエハ200上に形成されたSiシード層からのClの脱離をさらに促進させることが可能となる。結果として、上述した(a)~(c)の効果がより確実に得られるようになる。
【0115】
また、H2アニールにおける処理圧力は、HCDSガス供給における処理圧力よりも高くすのが好ましい。このようにすることで、ウエハ200上に形成されたSiシード層に含まれるSiのマイグレーションを抑制することができ、結果として、Siシード層上に形成されるSi膜の段差被覆性、ウエハ面内膜厚均一性の低下を抑えることが可能となる。また、Siシード層上に形成されるSi膜の表面ラフネスが大きくなることを抑えることも可能となる。
【0116】
第2ガス(Hを含むガス)としては、H2ガスの他、D2ガス等の還元性ガスを用いることができる。
【0117】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の種々の態様を具体的に説明した。但し、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0118】
上述の態様では、Siシード層形成からアニールに至る一連のステップを、同一の処理室201内で(in-situで)行う例について説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、Siシード層形成からSi膜形成に至る一連のステップを同一の処理室内で行い、その後、アニールを他の処理室内で(ex-situで)行うようにしてもよい。この場合においても上述の態様における効果と同様の効果が得られる。
【0119】
また例えば、Si膜形成とアニールとの間に、Si膜以外の膜(シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等)を形成する他のステップ(他の成膜)を行うようにしてもよい。この場合、Siシード層形成からアニールに至る一連のステップ、すなわち、他の成膜を含む一連のステップを、同一の処理室(第1処理室)内で行うようにしてもよい。また、Siシード層形成からSi膜形成に至る一連のステップを同一の処理室(第1処理室)内で行い、他の成膜からアニールに至る一連のステップを他の処理室(第2処理室)内で行うようにしてもよい。また、Siシード層形成からSi膜形成に至る一連のステップを同一の処理室(第1処理室)内で行い、他の成膜を他の処理室(第2処理室)内で行い、アニールをさらに他の処理室(第3処理室)内または第1処理室内で行うようにしてもよい。これらの場合においても上述の態様における効果と同様の効果が得られる。
【0120】
上述の種々の場合において、一連のステップをin-situで行えば、途中、ウエハ200が大気曝露されることはなく、ウエハ200を真空下に置いたまま一貫して処理を行うことができ、安定した基板処理を行うことができる。また、一部のステップをex-situで行えば、それぞれの処理室内の温度を例えば各ステップでの処理温度又はそれに近い温度に予め設定しておくことができ、温度調整に要する時間を短縮させ、生産効率を高めることができる。
【0121】
上述の態様では、ノズル249a~249cが隣接(近接)して設けられている例について説明したが、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、ノズル249a,249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間のうち、ノズル249bから離れた位置に設けられていてもよい。この場合においても上述の態様における効果と同様の効果が得られる。
【0122】
基板処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に格納しておくことが好ましい。そして、処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に格納された複数のレシピの中から、基板処理の内容に応じて、適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、処理を迅速に開始できるようになる。
【0123】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意してもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0124】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0125】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様なシーケンス、処理条件にて成膜を行うことができ、これらと同様の効果が得られる。
【0126】
また、上述の態様や変形例等は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【実施例】
【0127】
図1に示す基板処理装置を用い、以下に示す基板処理シーケンスによりウエハ上にSiシード層を形成し、Siシード層上にSi膜を形成する処理を行い、5種類の評価サンプル(以下、サンプル)を作製した。以下に示す基板処理シーケンスの各ステップにおける処理条件は、上述の各態様に記載の各ステップにおける処理条件範囲内の所定の条件であって、サンプル1~5にわたって共通の条件とした。なお、サンプル1~4では、ウエハ上に形成されるSiシード層の厚さを1原子層以上の厚さ(13Å)とした。また、サンプル5では、ウエハ上に形成されるSiシード層の厚さを1原子層未満の厚さ(1Å未満)とした。
【0128】
サンプル1:DCS→HCDS×n→MS→ANL
サンプル2:DCS→(HCDS→H2)×n→MS→ANL
サンプル3:DCS→(HCDS+H2→H2)×n→MS→ANL
サンプル4:DCS→(HCDS→H2)×n→H2→MS→ANL
サンプル5:DCS→(HCDS→H2)×n→MS→ANL
【0129】
そして、サンプル1~5におけるSiシード層のCl濃度(at/cm
3)、および、サンプル1~5におけるSi膜の結晶粒の平均粒径(μm)、ステップカバレッジ(%)、膜密度(g/cm
3)をそれぞれ測定した。その結果を
図7に示す。
【0130】
図7より、サンプル2~5におけるSiシード層のCl濃度の方が、サンプル1におけるSiシード層のCl濃度よりも低いことが分かる。すなわち、HCDSガス供給を所定回数行ってSiシード層を形成する際、HCDSガス供給と非同時にH
2ガス供給を行う場合の方が、H
2ガス供給を行わない場合よりも、Siシード層のCl濃度を低減させることができることが分かる。
【0131】
また、
図7より、サンプル3におけるSiシード層のCl濃度の方が、サンプル2におけるSiシード層のCl濃度よりも低いことが分かる。すなわち、Siシード層形成においてHCDSガスを供給する際、ウエハに対してHCDSガスと一緒にH
2ガスを供給する場合の方が、HCDSガスと一緒にH
2ガスを供給しない場合よりも、Siシード層のCl濃度を低減させることができることが分かる。
【0132】
また、
図7より、サンプル3におけるSi膜の結晶粒の平均粒径の方が、サンプル2におけるSi膜の結晶粒の平均粒径よりも大きいことが分かる。すなわち、Siシード層形成においてHCDSガスを供給する際、ウエハに対してHCDSガスと一緒にH
2ガスを供給する場合の方が、HCDSガスと一緒にH
2ガスを供給しない場合よりも、Si膜における結晶粒の平均粒径を大きくすることができることが分かる。これは、Siシード層における上述したCl濃度の相違により、先行してポリ化させたサンプル3におけるSiシード層の結晶粒の平均粒径の方が、先行してポリ化させたサンプル2におけるSiシード層の結晶粒の平均粒径よりも大きくなるためと考えられる。
【0133】
また、
図7より、サンプル4におけるSiシード層のCl濃度の方が、サンプル2におけるSiシード層のCl濃度よりも低いことが分かる。すなわち、Siシード層形成の後にH
2アニールを行う場合の方が、Siシード層形成の後にH
2アニールを行わない場合よりも、Siシード層のCl濃度を低減させることができることが分かる。
【0134】
さらには、サンプル4におけるSiシード層のCl濃度の方が、サンプル3におけるSiシード層のCl濃度よりも低いことも分かる。すなわち、Siシード層形成の後に、H2アニールを行うことによるCl濃度の低減効果は、Siシード層形成においてHCDSガス供給時にウエハに対してHCDSガスと一緒にH2ガスを供給する場合よりも、大きくなることが分かる。
【0135】
また、
図7より、サンプル5におけるSiシード層のCl濃度の方が、サンプル2におけるSiシード層のCl濃度よりも、低いことが分かる。すなわち、ウエハ上に形成されるSiシード層の厚さを1原子層未満の厚さとする場合の方が、ウエハ上に形成されるSiシード層の厚さを1原子層以上の厚さとする場合よりも、Siシード層のCl濃度を低減させることができることが分かる。
【0136】
さらには、サンプル5におけるSiシード層のCl濃度の方が、サンプル3,4におけるSiシード層のCl濃度よりも、低いことも分かる。すなわち、Siシード層の厚さを1原子層未満の厚さとすることによるCl濃度の低減効果は、Siシード層形成においてHCDSガスを供給する際、ウエハに対してHCDSガスと一緒にH2ガスを供給する場合(サンプル3)よりも、また、Siシード層形成の後にH2アニールを行う場合(サンプル4)よりも、大きくなることが分かる。
【0137】
また、
図7より、サンプル5におけるSi膜の結晶粒の平均粒径の方が、サンプル2,3における各Si膜の結晶粒の平均粒径よりも大きいことが分かる。これは、Siシード層における上述したCl濃度の相違により、先行してポリ化させたサンプル5におけるSiシード層の結晶粒の平均粒径の方が、先行してポリ化させたサンプル2,3における各Siシード層の結晶粒の平均粒径よりも大きくなるためと考えられる。
【0138】
また、
図7より、サンプル5におけるSi膜のステップカバレッジの方が、サンプル2におけるSi膜のステップカバレッジよりも良好であることが分かる。すなわち、ウエハ上に形成されるSiシード層の厚さを1原子層未満の厚さとすることにより、Siシード層上に形成されるSi膜のステップカバレッジを向上させることができることが分かる。
【0139】
また、
図7より、サンプル5におけるSi膜の膜密度の方が、サンプル2におけるSi膜の膜密度よりも高いことが分かる。すなわち、ウエハ上に形成されるSiシード層の厚さを1原子層未満の厚さとすることにより、Siシード層上に形成されるSi膜の膜密度を高めることができることが分かる。
【0140】
<本開示の好ましい態様>
以下、好ましい態様について付記する。
【0141】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
(a)(a1)基板に対してハロゲンおよびシリコンを含む第1ガスを供給する工程と、(a2)前記基板に対して水素を含む第2ガスを供給する工程と、を非同時に行うサイクルを所定回数行うことで、前記基板上にシリコンシード層を形成する工程と、
(b)前記基板に対してシリコンを含む第3ガスを供給することで、前記シリコンシード層上にシリコンを含む膜を形成する工程と、
を有し、
(a2)における前記基板が存在する空間の圧力を、(a1)における前記基板が存在する空間の圧力よりも高くする半導体装置の製造方法、または、基板処理方法が提供される。
【0142】
前記第1ガスは、クロロシランガスを含み、
前記第2ガスは、水素ガスおよび水素化ケイ素ガスのうち少なくともいずれかを含み、
前記第3ガスは、水素化ケイ素ガスを含み、
前記シリコンを含む膜は、シリコン膜を含む。
【0143】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、
(a2)における前記第2ガスの供給流量を、(a1)における前記第1ガスの供給流量よりも大きくする。
【0144】
(付記3)
付記1または2に記載の方法であって、
(a2)における前記第2ガスの供給時間を、(a1)における前記第1ガスの供給時間よりも長くする。
【0145】
(付記4)
付記1~3のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)における処理温度を350℃以上450℃以下とする。
【0146】
(付記5)
付記1~3のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)における処理温度を350℃以上400℃以下とする。
【0147】
(付記6)
付記4または5に記載の方法であって、
(a1)における前記基板が存在する空間の圧力を667Pa以上1200Pa以下(5Torr以上9Torr以下)とする。
【0148】
(付記7)
付記4~6のいずれか1項に記載の方法であって、
(a2)における前記基板が存在する空間の圧力を1333Pa以上13332Pa以下(10Torr以上100Torr以下)とする。
【0149】
(付記8)
付記1~7のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)において形成する前記シリコンシード層の厚さを1原子層未満の厚さとする。
【0150】
(付記9)
付記1~8のいずれか1項に記載の方法であって、
(a1)では、前記基板に対して前記第1ガスと一緒に前記第2ガスを供給する。
【0151】
(付記10)
付記9に記載の方法であって、
(a1)における前記第2ガスの供給流量を、(a2)における前記第2ガスの供給流量よりも小さくする。
【0152】
(付記11)
付記1~10のいずれか1項に記載の方法であって、
(c)(a)を実施した後、(b)を実施する前に、前記基板に対して前記第2ガスを供給する工程を更に有する。
【0153】
(付記12)
付記11に記載の方法であって、
(c)における処理温度を、(a)における処理温度よりも高くする。
【0154】
(付記13)
付記11または12に記載の方法であって、
(c)における処理温度を、(b)における処理温度よりも高くする。
【0155】
(付記14)
付記11~13のいずれか1項に記載の方法であって、
(c)における前記基板が存在する空間の圧力を、(a1)における前記基板が存在する空間の圧力よりも高くする。
【0156】
(付記15)
付記11~14のいずれか1項に記載の方法であって、
(c)における処理温度を600℃以上850℃以下とする。
【0157】
(付記16)
付記15に記載の方法であって、
(c)における前記基板が存在する空間の圧力を1333Pa以上13332Pa以下(10Torr以上100Torr以下)とする。
【0158】
(付記17)
付記1~16のいずれか1項に記載の方法であって、
(d)(a)を実施する前に、前記基板に対してハロゲンおよびシリコンを含む第4ガスを供給する工程を更に有する。前記第4ガスは前記第1ガスと分子構造(化学構造)が異なっていてもよいし、同一であってもよい。
【0159】
(付記18)
付記17に記載の方法であって、
(d)における前記第4ガスの供給時間を、(a1)における前記第1ガスの供給時間よりも長くする。
【0160】
(付記19)
本開示の他の態様によれば、
基板が処理される処理室と、
前記処理室内の基板に対してハロゲンおよびシリコンを含む第1ガスを供給する第1ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対して水素を含む第2ガスを供給する第2ガス供給系と、
前記処理室内の基板に対してシリコンを含む第3ガスを供給する第3ガス供給系と、
前記処理室内の圧力を調整する圧力調整器と、
前記処理室内において、付記1の各処理(各工程)を行わせるように、前記第1ガス供給系、前記2ガス供給系、前記第3ガス供給系、および前記圧力調整器を制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置が提供される。
【0161】
(付記20)
本開示の更に他の態様によれば、
付記1の各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム、または、該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0162】
200 ウエハ(基板)
201 処理室