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特許7065955二次電池用正極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池
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  • 特許-二次電池用正極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】二次電池用正極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/485 20100101AFI20220502BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220502BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220502BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20220502BHJP
   H01G 11/30 20130101ALI20220502BHJP
【FI】
H01M4/485
H01M4/36 C
H01M4/505
H01M4/525
H01G11/30
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020520740
(86)(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 KR2018012301
(87)【国際公開番号】W WO2019098541
(87)【国際公開日】2019-05-23
【審査請求日】2020-04-13
(31)【優先権主張番号】10-2017-0153282
(32)【優先日】2017-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ホ・オム
(72)【発明者】
【氏名】スン・ホ・バン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・フイ・ベク
(72)【発明者】
【氏名】ナ・リ・パク
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0067085(KR,A)
【文献】特開2017-050204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01G11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム複合遷移金属酸化物を提供する段階、及び
前記リチウム複合遷移金属酸化物及び金属ボレート化合物を混合して熱処理し、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子表面にコーティング部を形成する段階を含み、
前記金属ボレート化合物を粉砕してナノ粒子を形成した後、乾式混合する、二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記金属ボレート化合物は、Zn、Zr、W、Mg、Sn、Al、Ba、Ti及びVからなる群から選択された少なくとも一つの金属を含むボレート化合物である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記金属ボレート化合物は、Znボレート化合物である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)を含み、且つ、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択された少なくとも一つを含み、前記リチウム複合遷移金属酸化物の遷移金属の全含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項5】
前記リチウム複合遷移金属酸化物の遷移金属の全含量のうちニッケル(Ni)の含量が80モル%以上である、請求項4に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記コーティング部は、下記化学式1で表されるリチウム‐金属ボレートを含み、
[化学式1]
Li1+x12+y13+z1
前記化学式1において、Mは、Zn、Zr、W、Mg、Sn、Al、Ba、Ti及びVからなる群から選択された少なくとも一つであり、0<a≦1.5、-0.8≦x1≦4、-1.8≦y1≦4、-2≦z1≦10である、請求項1からのいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項7】
リチウム複合遷移金属酸化物粒子、及び
前記リチウム複合遷移金属酸化物粒子の表面に形成されたコーティング部を含み、
前記コーティング部は、リチウム‐Tiボレートを含む二次電池用正極活物質。
【請求項8】
前記リチウム‐Tiボレートは、下記化学式1で表され、
[化学式1]
Li Ti +x12+y13+z1
前記化学式1において、0<a≦1.5、-0.8≦x1≦4、-1.8≦y1≦4、-2≦z1≦10である、請求項7に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項9】
前記リチウム複合遷移金属酸化物粒子は、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)を含み、且つ、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択された少なくとも一つを含み、前記リチウム複合遷移金属酸化物粒子の遷移金属の全含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である、請求項7または請求項8に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項10】
前記リチウム複合遷移金属酸化物粒子の遷移金属の全含量のうちニッケル(Ni)の含量が80モル%以上である、請求項に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項11】
前記リチウム複合遷移金属酸化物粒子は、下記化学式2で表され、
[化学式2]
LiNi1-(x2+y2+z2)Cox2 y2 z2 q2
前記化学式2において、Mは、Mn及びAlからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、Mは、Zr、B、W、Mg、Al、Ce、Hf、Ta、Ti、Sr、Ba、F、P、S及びLaからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、Mは、Al、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb、Mo、W及びCrからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、0.9≦b≦1.1、0<x2≦0.4、0<y2≦0.4、0≦z2≦0.1、0≦q2≦0.1であり、0<x2+y2+z2≦0.4である、請求項からのいずれか一項に記載の二次電池用正極活物質。
【請求項12】
請求項から請求項11のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、二次電池用正極。
【請求項13】
請求項12に記載の正極を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月16日付韓国特許出願第10-2017-0153282号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、二次電池用正極活物質、その製造方法、及びこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、携帯電話、ノートパソコン、電気自動車など、電池を用いる電子器具の急速な普及に伴い、小型軽量でありながらも相対的に高容量である二次電池の需要が急速に増大されている。特に、リチウム二次電池は、軽量でかつ高エネルギー密度を有しているので、携帯機器の駆動電源として脚光を浴びている。これによって、リチウム二次電池の性能向上のための研究開発努力が活発に進められている。
【0004】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの挿入(intercalations)及び脱離(deintercalation)が可能な活物質からなる正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充電させた状態で、リチウムイオンが正極及び負極で挿入/脱離される際の酸化と還元反応によって電気エネルギーが生産される。
【0005】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムマンガン酸化物(LiMnOまたはLiMnなど)、リン酸鉄リチウム化合物(LiFePO)などが使用された。また、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)の優れた可逆容量は維持しながらも、低い熱安定性を改善するための方法として、ニッケル(Ni)の一部をコバルト(Co)やマンガン(Mn)/アルミニウム(Al)で置換したリチウム複合金属酸化物(以下、簡単に「NCM系リチウム複合遷移金属酸化物」または「NCA系リチウム複合遷移金属酸化物」という)が開発された。しかし、従来の開発されたNCM系/NCA系リチウム複合遷移金属酸化物は、容量特性が充分に高くなく、金属元素等の溶出及びそれによる電池特性の低下の恐れがある。よって、高エネルギー密度化のためにNCM系/NCA系リチウム酸化物としてニッケル(Ni)の含量を増加させようとする研究がなされているが、高含量ニッケル(Ni)NCM系/NCA系リチウム酸化物の場合、リチウム残留副産物の発生が増加し、長期間使用時にサイクル特性が急激に低下し、充放電中に電解質などの分解によってガスが発生するスウェリング現象、低い化学的安定性などの問題があった。
【0006】
よって、ボロン(Boron)系化合物を高含量ニッケル(Ni)NCM系/NCA系リチウム酸化物の正極活物質の表面にコーティングして寿命特性などを向上しようとする研究がなされているが、このように製造された正極活物質は、電解液にボロン(Boron)が溶出される現象が発生し、これによって高温で電池性能の劣化の程度が大きくなるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、正極活物質にボロン(Boron)コーティングするとき、電解液にボロン(Boron)が溶出される現象を抑制することで、安定性を確保し、スウェリング現象を抑制し、高温でのサイクル特性を改善した二次電池用正極活物質を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、リチウム複合遷移金属酸化物を提供する段階;及び前記リチウム複合遷移金属酸化物及び金属ボレート(metal borate)化合物を混合して熱処理し、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子表面にコーティング部を形成する段階;を含む二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、リチウム複合遷移金属酸化物粒子;及び前記リチウム複合遷移金属酸化物粒子の表面に形成されたコーティング部;を含み、前記コーティング部は、リチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)を含む二次電池用正極活物質を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記正極活物質を含む正極及びリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属ボレート(metal borate)化合物を用いてリチウム複合遷移金属酸化物の正極活物質をコーティングすることで、正極活物質の表面にリチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)のコーティング部を形成し、電解液にボロン(Boron)が溶出される現象を抑制することができる。
【0012】
このような本発明に係る二次電池用正極活物質を用いて製造されたリチウム二次電池は、スウェリング現象を抑制し、安定性が確保され、高温でのサイクル特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例及び比較例によって製造された正極活物質を用いたリチウム二次電池において、貯蔵時間別のボロン(Boron)の溶出量を測定したグラフである。
図2】実施例及び比較例によって製造された正極活物質を用いたリチウム二次電池の高温(45℃)でのサイクル特性を評価したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。このとき、本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0015】
本発明の二次電池用正極活物質は、リチウム複合遷移金属酸化物を提供する段階;及び前記リチウム複合遷移金属酸化物及び金属ボレート(metal borate)化合物を混合して熱処理し、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子表面にコーティング部を形成する段階;を含んで製造する。
【0016】
前記正極活物質の製造方法を段階別に具体的に説明する。
【0017】
先ず、リチウム複合遷移金属酸化物を提供する。
【0018】
前記リチウム複合遷移金属酸化物は、ニッケル(Ni)及びコバルト(Co)を含み、マンガン(Mn)及びアルミニウム(Al)からなる群から選択された少なくとも一つを含むリチウム複合遷移金属酸化物であってよい。前記リチウム複合遷移金属酸化物は、遷移金属の全含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である高濃度(High)ニッケル(Ni)NCM系/NCA系リチウム複合遷移金属酸化物であってよく、より好ましくは遷移金属の全含量のうちニッケル(Ni)の含量が80モル%以上であってよい。前記リチウム複合遷移金属酸化物の遷移金属の全含量のうちニッケル(Ni)の含量が60モル%以上である場合、高容量の確保が可能である。このように本発明で用いられるリチウム複合遷移金属酸化物が、遷移金属の全モル比のうちニッケル(Ni)が60モル%以上の高濃度ニッケル(High‐Ni)系である場合、残留リチウム副産物が増加し、安定性及び容量維持率の確保がさらに困難であるため、安定的なボロン(Boron)コーティングを形成することがさらに重要である。
【0019】
より具体的に、前記リチウム複合遷移金属酸化物は、下記化学式2で表され得る。
[化学式2]
LiNi1-(x2+y2+z2)Cox2 y2 z2 q2
前記式において、Mは、Mn及びAlからなる群から選択された少なくとも一つの元素であり、Mは、Zr、B、W、Mg、Al、Ce、Hf、Ta、Ti、Sr、Ba、F、P、S及びLaからなる群から選択された少なくとも一つの元素であり、Mは、Al、Zr、Ti、Mg、Ta、Nb、Mo、W及びCrからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、0.9≦b≦1.1、0<x2≦0.4、0<y2≦0.4、0≦z2≦0.1、0≦q2≦0.1であり、0<x2+y2+z2≦0.4である。
【0020】
前記化学式2のリチウム複合遷移金属酸化物において、Liは、bに該当する含量、すなわち0.9≦b≦1.1で含まれてよい。bが0.9未満であれば容量が低下する恐れがあり、1.1を超過すれば焼成工程で粒子が焼結されてしまうので、正極活物質の製造が困難となり得る。Li含量の制御による正極活物質の容量特性の改善効果の顕著さ、及び正極活物質の製造時の焼結性のバランスを考慮するとき、前記Liは、より好ましくは1.0≦b≦1.05の含量で含まれてよい。
【0021】
前記化学式2のリチウム複合遷移金属酸化物において、Niは1-(x2+y2+z2)に該当する含量、例えば、0.6≦1-(x2+y2+z2)<1で含まれてよい。前記化学式2のリチウム複合遷移金属酸化物内のNiの含量が0.6以上の組成になれば、充放電に寄与するに十分なNi量が確保されて高容量化を図ることができる。より好ましくは、Niは0.8≦1-(x2+y2+z2)≦0.99で含まれてよい。このように本発明で用いられるリチウム複合遷移金属酸化物の遷移金属の全モル比のうち、ニッケル(Ni)が60モル%以上の高濃度ニッケル(High‐Ni)系である場合、残留リチウム副産物が増加し、安定性及び容量維持率の確保がさらに困難であるため、安定的なボロン(Boron)コーティングを形成することがさらに重要である。
【0022】
前記化学式2のリチウム複合遷移金属酸化物において、Coは、x2に該当する含量、すなわち0<x2≦0.4で含まれてよい。前記化学式2のリチウム複合遷移金属酸化物内のCoの含量が0.4を超過する場合、費用増加の恐れがある。Co包含による容量特性の改善効果の顕著さを考慮するとき、前記Coは、より具体的に0.05≦x2≦0.2の含量で含まれてよい。
【0023】
前記化学式2のリチウム複合遷移金属酸化物において、Mは、MnまたはAlであるか、Mn及びAlであってよく、このような金属元素は、活物質の安定性を向上させ、結果として電池の安定性を改善させることができる。寿命特性の改善効果を考慮するとき、前記Mはy2に該当する含量、すなわち0<y2≦0.4の含量で含まれてよい。前記化学式2のリチウム複合遷移金属酸化物内のy2が0.4を超過すれば、むしろ電池の出力特性及び容量特性が低下する恐れがあり、前記Mはより具体的に0.05≦y2≦0.2の含量で含まれてよい。
【0024】
前記化学式2のリチウム複合遷移金属酸化物において、Mは、リチウム複合遷移金属酸化物の結晶構造内に含まれたドーピング元素であってよく、Mは、z2に該当する含量、すなわち0≦z2≦0.1で含まれてよい。
【0025】
前記化学式2のリチウム複合遷移金属酸化物において、Mの金属元素は、リチウム複合遷移金属酸化物構造内に含まれないこともあり、前駆体とリチウムソースを混合して焼成するとき、Mソースを共に混合して焼成するか、リチウム複合遷移金属酸化物を形成した後、別にMソースを投入して焼成する方法を介して前記Mがリチウム複合遷移金属酸化物の表面にドーピングされたリチウム複合遷移金属酸化物を製造することができる。前記Mは、q2に該当する含量、すなわち0≦q2≦0.1の範囲内で正極活物質の特性を低下しない含量で含まれてよい。
【0026】
次いで、前記リチウム複合遷移金属酸化物及び金属ボレート(metal borate)化合物を混合して熱処理し、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子表面にコーティング部を形成する。
【0027】
前記金属ボレート(metal borate)化合物は、Zn、Zr、W、Mg、Sn、Al、Ba、Ti及びVからなる群から選択された少なくとも一つの金属イオンを含むボレート(metal borate)化合物であってよく、より好ましくはZnボレート(Zn‐borate)化合物、Tiボレート(Ti‐borate)化合物またはAlボレート(Al‐borate)化合物であってよく、最も好ましくはZnボレート(Zn‐borate)化合物であってよい。
【0028】
従来には、ボロン(Boron)コーティングするとき、HBOのような硼酸(boric acid)、CB(OH)などのボロン酸(boronic acid)またはBなどの酸化ホウ素(boron oxide)を用いたが、前記のような従来のボロン(Boron)ソース等を用いてコーティングする場合、リチウムボレート(Li‐borate)系コーティング部を形成することになり、このように形成されたリチウムボレート(Li‐borate)系コーティング部は、電解液にボロン(Boron)が溶出されるという問題があった。
【0029】
しかし、本発明では、ボロン(Boron)ソースとして金属ボレート(metal borate)化合物を用いてコーティングすることで、正極活物質の表面にリチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)のコーティング部を形成し、このリチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)は、電解液にボロン(Boron)が溶出される現象を抑制することができることを確認した。これを介して、スウェリング現象を抑制し、安定性を確保し、高温でのサイクル特性を改善することができる。
【0030】
前記金属ボレート(metal borate)化合物を用いたコーティング方法は、通常の正極活物質コーティング方法を制限なく適用することができ、例えば、乾式混合または湿式混合方法を介したコーティング方法を適用することができる。
【0031】
前記乾式混合コーティング方法の場合、より好ましくは前記金属ボレート(metal borate)化合物を粉砕してナノ粒子を形成した後、乾式混合することができる。前記粉砕方法は、例えば、ビーズミル(bead mill)、ジェットミル(Jet mill)またはACM Mill(Air Classifier Mill)を用いて行ってよく、より好ましくはビーズミル(bead mill)を用いて粉砕してよい。前記金属ボレート(metal borate)化合物は、50から400nmのナノ粒子で粉砕した後、乾式混合してコーティングしてよい。
【0032】
前記混合後の熱処理時の温度は、250から600℃、より好ましくは250から450℃であってよい。
【0033】
前記のように金属ボレート(metal borate)化合物を混合した後、熱処理することで、前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子表面にコーティング部を形成する。前記金属ボレート(metal borate)化合物を用いて形成したコーティング部は、リチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)を含んでよい。
【0034】
前記コーティング部に含まれたリチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)は、下記化学式1で表され得る。
[化学式1]
Li1+x12+y13+z1
前記化学式1において、Mは、Zn、Zr、W、Mg、Sn、Al、Ba、Ti及びVからなる群から選択された少なくとも一つであり、0<a≦1.5、-0.8≦x1≦4、-1.8≦y1≦4、-2≦z1≦10である。
【0035】
このように形成されたリチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)は、電解液へのボロン(Boron)の溶出を抑制することができる。
【0036】
次いで、本発明に係る二次電池用正極活物質に対して説明する。
【0037】
前記のような方法で製造された本発明の二次電池用正極活物質は、リチウム複合遷移金属酸化物粒子;及び前記リチウム複合遷移金属酸化物粒子の表面に形成されたコーティング部;を含み、前記コーティング部は、リチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)を含む。
【0038】
前記リチウム複合遷移金属酸化物及びリチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)の組成及び種類は、前記正極活物質の製造方法で説明したところと同様に適用される。
【0039】
具体的に、前記コーティング部に含まれたリチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)は、Li‐Znボレート(Li‐Zn‐borate)、Li‐Tiボレート(Li‐Ti‐borate)またはLi‐Alボレート(Li‐Al‐borate)であってよく、より好ましくはLi‐Znボレート(Li‐Zn‐borate)であってよい。
【0040】
本発明は、金属ボレート(metal borate)化合物を用いて前記リチウム複合遷移金属酸化物の粒子表面にリチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)コーティング部を形成することができる。従来のように、HBOのような硼酸(boric acid)、CB(OH)などのボロン酸(boronic acid)またはBなどの酸化ホウ素(boron oxide)をボロン(Boron)ソースとして用いてコーティングした場合、リチウムボレート(Li‐borate)コーティング部が形成されて電解液へのボロン(Boron)の溶出が発生し、高温での電池性能が劣化されたが、本発明は、前記金属ボレート(metal borate)化合物を用いてコーティングすることで、リチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)コーティング部を形成し、このリチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)は、電解液へのボロン(Boron)の溶出を抑制し、高温サイクル特性などを改善することができる。
【0041】
本発明のまた他の一実施形態によれば、前記正極活物質を含むリチウム二次電池用正極及びリチウム二次電池を提供する。
【0042】
具体的に、前記正極は、正極集電体及び前記正極集電体上に形成され、前記正極活物質を含む正極活物質層を含む。
【0043】
前記正極において、正極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用されてよい。また、前記正極集電体は、通常3μmから500μmの厚さを有してよく、前記集電体の表面上に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0044】
また、前記正極活物質層は、前記で説明した正極活物質とともに、導電材及びバインダを含んでよい。
【0045】
このとき、前記導電材は、電極に導電性を付与するために用いられるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特別な制限なく使用可能である。具体的な例としては、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの伝導性高分子などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてよい。前記導電材は、通常、正極活物質層の総重量に対して1から30重量%で含まれてよい。
【0046】
また、前記バインダは、正極活物質の粒子等間の付着及び正極活物質と正極集電体との接着力を向上させる役割をする。具体的な例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ビニリデンフルオライド‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF‐co‐HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン‐プロピレン‐ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、またはこれらの多様な共重合体などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてよい。前記バインダは、正極活物質層の総重量に対して1から30重量%で含まれてよい。
【0047】
前記正極は、前記正極活物質を用いることを除いては通常の正極の製造方法によって製造されてよい。具体的に、前記正極活物質、及び選択的にバインダ及び導電材を含む正極活物質層形成用組成物を正極集電体上に塗布した後、乾燥及び圧延することで製造されてよい。このとき、前記正極活物質、バインダ、導電材の種類及び含量は、前記で説明した通りである。
【0048】
前記溶媒としては、当該技術分野で一般的に用いられる溶媒であってよく、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide,DMSO)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、N‐メチルピロリドン(NMP)、アセトン(acetone)または水などを挙げることができ、これらのうち1種単独または2種以上の混合物が使用されてよい。前記溶媒の使用量は、スラリーの塗布厚さ、製造歩留まりを考慮して前記正極活物質、導電材及びバインダを溶解または分散させ、それ以後、正極の製造のための塗布時に、優れた厚さ均一度を示し得る粘度を有するようにする程度であれば十分である。
【0049】
また、他の方法として、前記正極は、前記正極活物質層形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションすることにより製造されてもよい。
【0050】
本発明のまた他の一実施形態によれば、前記正極を含む電気化学素子が提供される。前記電気化学素子は、具体的に電池またはキャパシタなどであってよく、より具体的にはリチウム二次電池であってよい。
【0051】
前記リチウム二次電池は、具体的に、正極、前記正極と対向して位置する負極、前記正極と負極との間に介在されるセパレータ及び電解質を含み、前記正極は前記で説明した通りである。また、前記リチウム二次電池は、前記正極、負極、セパレータの電極組立体を収納する電池容器、及び前記電池容器を密封する密封部材を選択的にさらに含んでよい。
【0052】
前記リチウム二次電池において、前記負極は、負極集電体及び前記負極集電体上に位置する負極活物質層を含む。
【0053】
前記負極集電体は、電池に化学的変化を誘発することなく高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面に炭素、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム‐カドミウム合金などが使用されてよい。また、前記負極集電体は、通常3μmから500μmの厚さを有してよく、正極集電体と同様に、前記集電体の表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもできる。例えば、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用されてよい。
【0054】
前記負極活物質層は、負極活物質とともに選択的にバインダ及び導電材を含む。前記負極活物質層は、一例として負極集電体上に負極活物質、及び選択的にバインダ及び導電材を含む負極形成用組成物を塗布して乾燥するか、または前記負極形成用組成物を別の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを負極集電体上にラミネーションすることにより製造されてよい。
【0055】
前記負極活物質としては、リチウムの可逆的なインタカレーション及びデインタカレーションが可能な化合物が使用されてよい。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムと合金化が可能な金属質化合物;SiOα(0<α<2)、SnO、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi‐C複合体またはSn‐C複合体のように前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などを挙げることができ、これらのうちいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されてよい。また、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が使用されてもよい。また、炭素材料は、低結晶性炭素及び高結晶性炭素などが全て使用されてよい。低結晶性炭素としては、軟化炭素(soft carbon)及び硬化炭素(hard carbon)が代表的であり、高結晶性炭素としては、無定形、板状、麟片状、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛、キッシュ黒鉛(Kish graphite)、熱分解炭素(pyrolytic carbon)、メソ相ピッチ系炭素繊維(mesophase pitch based carbon fiber)、メソ炭素微小球体(meso‐carbon microbeads)、メソ相ピッチ(Mesophase pitches)及び石油と石炭系コークス(petroleum or coal tar pitch derived cokes)などの高温焼成炭素が代表的である。
【0056】
また、前記バインダ及び導電材は、前記正極で説明したところと同一のものであってよい。
【0057】
一方、前記リチウム二次電池において、セパレータは、負極と正極を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、通常、リチウム二次電池でセパレータとして用いられるものであれば特別な制限なく使用可能であり、特に電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら電解液含湿能力に優れたものが好ましい。具体的には、多孔性高分子フィルム、例えばエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体及びエチレン/メタクリレート共重合体などのようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム、またはこれらの2層以上の積層構造体が使用されてよい。また、通常の多孔性不織布、例えば高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されてもよい。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されてよく、選択的に単層または多層構造で使用されてよい。
【0058】
また、本発明で用いられる電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル型高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などを挙げることができ、これらに限定されるものではない。
【0059】
具体的に、前記電解質は、有機溶媒及びリチウム塩を含んでよい。
【0060】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関与するイオン等が移動することができる媒質役割が可能なものであれば、特別な制限なく使用されてよい。具体的に前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ‐ブチロラクトン(γ‐butyrolactone)、ε‐カプロラクトン(ε‐caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate,DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate,DEC)、メチルエチルカーボネート(methylethylcarbonate,MEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate,EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate,EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate,PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R‐CN(RはC2からC20の直鎖状、分枝状または環状構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3‐ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されてよい。この中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度及び高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、低粘度の線形カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは約1:1から約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優れて表れ得る。
【0061】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池で用いられるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特別な制限なく使用されてよい。具体的に前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用されてよい。前記リチウム塩の濃度は、0.1から2.0M範囲内で使用するのがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度及び粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0062】
前記電解質には、前記電解質構成成分等の他にも電池の寿命特性の向上、電池容量の減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのようなハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n‐グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N‐置換オキサゾリジノン、N,N‐置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2‐メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれてもよい。このとき、前記添加剤は、電解質の総重量に対して0.1から5重量%で含まれてよい。
【0063】
前記のように本発明に係る正極活物質を含むリチウム二次電池は、優れた放電容量、出力特性及び容量維持率を安定的に示すため、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラなどの携帯用機器、及びハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle,HEV)などの電気自動車の分野などに有用である。
【0064】
これによって、本発明の他の一具現例によれば、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュール及びこれを含む電池パックが提供される。
【0065】
前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle,EV)、ハイブリッド電気自動車、及びプラグインハイブリッド電気自動車(Plug‐in Hybrid Electric Vehicle,PHEV)を含む電気車;または電力貯蔵用システムのうちいずれか一つ以上の中大型デバイスの電源として用いられてよい。
【0066】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施形態に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、いくつか異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0067】
実施例1
リチウム複合遷移金属酸化物LiNi0.9Co0.07Mn0.03の粒子(D50=9.1μm)を形成し、洗浄工程を進めた。その後、ZnBをビーズミル(Bead mill)で加工処理してD50 300nmのナノサイズ(nano size)の粉末で形成し、LiNi0.9Co0.07Mn0.03:ZnBを99.95:0.05の重量比で固相混合した後、300℃で加熱してLiNi0.9Co0.07Mn0.03を含むコア粒子の表面に、Li‐Znボレート(Li‐Zn‐borate)(Li‐Zn‐B‐O固溶体)を含むコーティング部が形成された正極活物質を製造した。
【0068】
実施例2
ZnBの代わりにTi12を用いたことを除き、実施例1と同様に行い、LiNi0.9Co0.07Mn0.03を含むコア粒子の表面にLi‐Tiボレート(Li‐Ti‐borate)(Li‐Ti‐B‐O固溶体)を含むコーティング部が形成された正極活物質を製造した。
【0069】
実施例3
ZnBの代わりにAlBOを用いたことを除き、実施例1と同様に行い、LiNi0.9Co0.07Mn0.03を含むコア粒子の表面に、Li‐Alボレート(Li‐Al‐borate)(Li‐Al‐B‐O固溶体)を含むコーティング部が形成された正極活物質を製造した。
【0070】
比較例1
リチウム複合遷移金属酸化物LiNi0.9Co0.07Mn0.03の粒子(D50=9.1μm)を形成し、洗浄工程を進めた。その後、HBOをLiNi0.9Co0.07Mn0.03:HBOが99.95:0.05重量比で固相混合した後、300℃で加熱してLiNi0.9Co0.07Mn0.03を含むコア粒子の表面にLiボレート(Li‐borate)(LiBO、Liなど)を含むコーティング部が形成された正極活物質を製造した。
【0071】
比較例2
BOの代わりにBを用いたことを除き、比較例1と同様に行い、LiNi0.9Co0.07Mn0.03を含むコア粒子の表面にLiボレート(Li‐borate)(LiBO、Liなど)を含むコーティング部が形成された正極活物質を製造した。
【0072】
比較例3
LiNi0.9Co0.07Mn0.03を含むコア粒子に、ボロン化合物のコーティング処理なしに300℃で熱処理して正極活物質を製造した。
【0073】
[製造例1:リチウム二次電池の製造]
実施例1から3及び比較例1から3によって製造されたそれぞれの正極活物質、カーボンブラック導電材及びPVdFバインダを、N‐メチルピロリドン溶媒中で重量比で6.5:1.5:2の比率で混合して正極合材(粘度:5000mPa・s)を製造し、これをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、130℃で乾燥後、圧延して正極を製造した。また、負極としてリチウムメタルを用いた。
【0074】
前記のように製造された正極と負極との間に多孔性ポリエチレンのセパレータを介在して電極組立体を製造し、前記電極組立体をケース内部に位置させた後、ケース内部に電解液を注入してリチウム二次電池を製造した。このとき、電解液は、エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート(EC/DMC/EMCの混合体積比=3/4/3)からなる有機溶媒に、1.0M濃度のリチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF)を溶解させて製造した。
【0075】
[実験例1:ボロン(Boron)溶出量の評価]
前記のように製造された各リチウム二次電池のコインハーフセル(coin half cell)を、0.2C定電流(CC)で4.25Vで充電した後、コインハーフセルを分解し、得られた正極をエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/エチルメチルカーボネート(EC/DMC/EMCの混合体積比=3/4/3)の電解液15mLと水(HO)1mLが入った容器に浸漬し、60℃恒温槽で1週間、2週間、3週間、4週間保管した後、電解液に溶出されたボロン(Boron)の含量をICP(PerkinElmer社のOPTIMA8000)で分析した。その結果を下記表1及び図1に示した。
【0076】
【表1】
【0077】
前記表1及び図1を参照すれば、金属ボレート(metal borate)化合物を用いてリチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)コーティング部を形成した実施例1から3は、比較例1から2に比べて保管時間別のボロン(B)の溶出量が顕著に減少した。
【0078】
[実験例2:高温サイクル特性の評価]
前記のように製造された各リチウム二次電池のコインハーフセル(coin half cell)を45℃で充電終止電圧4.25V、放電終止電圧2.5V、0.3C/0.3C条件で30サイクル充放電を行いながら容量維持率(Capacity Retention[%])を測定しており、その測定結果は図2に示した。
【0079】
図2を参照すれば、金属ボレート(metal borate)化合物を用いてリチウム‐金属ボレート(Li‐metal borate)コーティング部を形成した実施例1から3は、比較例1から2に比べて高温サイクル特性が向上した。また、ボロンコーティング処理をしない比較例3に比べて、実施例1から3の高温サイクル特性が顕著に向上したことが確認できる。
図1
図2