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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】液体塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/08 20060101AFI20220506BHJP
【FI】
B05C1/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018120262
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020000960
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 武志
(72)【発明者】
【氏名】清水 英満
(72)【発明者】
【氏名】宮村 勲
(72)【発明者】
【氏名】三浦 秀宣
【審査官】塩屋 雅弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-076032(JP,A)
【文献】特開平07-323256(JP,A)
【文献】特開平05-220847(JP,A)
【文献】特開2003-181357(JP,A)
【文献】特開平06-238216(JP,A)
【文献】特開昭62-097661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C1/00-3/20
7/00-21/00
B05D1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺基材を長さ方向に搬送するための搬送手段と、
前記長尺基材の表面に液体を塗布するためのグラビアロールと、
前記長尺基材の幅方向における両端部をグラビアロールから離すための長尺基材離隔手段と、
前記長尺基材の液体塗布面の反対側の面から、搬送される長尺基材と接触しながら長尺基材の端部より内側の近傍のみをグラビアロール側へ押し込むための押込手段と、
を備え、
前記グラビアロールの幅は、グラビアロールによる長尺基材への液体塗布幅より広くなっており、
前記押込手段がロールであり、前記長尺基材の幅方向における前記ロールよりも外側となる端部が、前記長尺基材の幅方向において前記液体が塗布される領域よりも外側となる領域と同じ位置に設置され、
前記長尺基材の端部より内側の近傍からさらに内側にある領域は押し込まれない
ことを特徴とする液体塗布装置。
【請求項2】
前記押込手段は、長尺基材の押込方向または幅方向において可動式である、請求項1に記載の液体塗布装置。
【請求項3】
前記押込手段は、長尺基材に液体が塗布される領域の長尺基材幅方向における両端部のそれぞれの、長尺基材の液体塗布面の反対側の面に設けられる、請求項1または2に記載の液体塗布装置。
【請求項4】
前記押込手段は、長尺基材搬送方向においてグラビアロールの回転軸を基準に5mm以上50mm以下離れて、長尺基材の液体塗布面の反対側の面に設けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体塗布装置。
【請求項5】
前記押込手段のロールと長尺基材とが接触する幅は、長尺基材の幅方向において1mm以上100mm以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の液体塗布装置。
【請求項6】
前記押込手段のロールの直径および幅は、グラビアロールおよびバックアップロールの直径および幅より小さく、前記押込手段のロールの幅に対する直径の比率が0.01以上5以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の液体塗布装置。
【請求項7】
前記押込手段のロールの直径は1mm以上100mm以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の液体塗布装置。
【請求項8】
前記長尺基材の厚みは、5μm以上500μm以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の液体塗布装置。
【請求項9】
前記長尺基材は、長尺基材の幅方向の両端部において各端部から1mm以上100mm以下の範囲にわたって液体が塗布されない部分が形成される、請求項1~のいずれか一項に記載の液体塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺基材に液体を塗布するためのロールを備えた液体塗布装置が知られている(特許文献1乃至3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-220847号公報
【文献】特開2014-188410号公報
【文献】特開2000-24565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
長尺基材に液体を塗布するとき、長尺基材の両端部に液体が塗布されない部分(以下、液体非塗布部分ともいう)を形成することが要求される場合がある。
【0005】
本発明の目的は、長尺基材の両端部に液体非塗布部分を形成しながら長尺基材に液体を塗布することができ、長尺基材への液体塗布幅の安定性に優れた塗布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の態様[1]~[10]を含む。
[1] 長尺基材を長さ方向に搬送するための搬送手段と、
前記長尺基材の表面に液体を塗布するためのグラビアロールと、
前記長尺基材の幅方向における両端部をグラビアロールから離すための長尺基材離隔手段と、
前記長尺基材の液体塗布面の反対側の面から、搬送される長尺基材と接触しながら長尺基材の端部より内側の近傍のみをグラビアロール側へ押し込むための押込手段と、
を備え、
前記グラビアロールの幅は、グラビアロールによる長尺基材への液体塗布幅より広くなっており、
前記長尺基材の端部より内側の近傍からさらに内側にある領域は押し込まれない
ことを特徴とする液体塗布装置。
[2] 前記押込手段は、長尺基材の押込方向または幅方向において可動式である、[1]に記載の液体塗布装置。
[3] 前記押込手段は、長尺基材に液体が塗布される領域の長尺基材幅方向における両端部のそれぞれの、長尺基材の液体塗布面の反対側の面に設けられる、[1]または[2]に記載の液体塗布装置。
[4] 前記押込手段は、長尺基材搬送方向においてグラビアロールの回転軸を基準に5mm以上50mm以下離れて、長尺基材の液体塗布面の反対側の面に設けられる、[1]~[3]のいずれかに記載の液体塗布装置。
[5] 前記押込手段はロールである、[1]~[4]のいずれかに記載の液体塗布装置。
[6] 前記押込手段のロールと長尺基材とが接触する幅は、長尺基材の幅方向において1mm以上100mm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の液体塗布装置。
[7] 前記押込手段のロールの直径および幅は、グラビアロールおよびバックアップロールの直径および幅より小さく、前記押込手段のロールの幅に対する直径の比率が0.01以上5以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の液体塗布装置。
[8] 前記押込手段のロールの直径は1mm以上100mm以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の液体塗布装置。
[9] 前記長尺基材の厚みは、5μm以上500μm以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の液体塗布装置。
[10] 前記長尺基材は、長尺基材の幅方向の両端部において各端部から1mm以上100mm以下の範囲にわたって液体が塗布されない部分が形成される、[1]~[9]のいずれかに記載の液体塗布装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、長尺基材の両端部に液体非塗布部分を形成しながら長尺基材に液体を塗布することが可能な、長尺基材への液体塗布幅の安定性に優れた塗布装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の液体塗布装置の一例を示す長尺基材の搬送方向から見た概略断面図である。
図2】本発明の液体塗布装置の一例を示す長尺基材の幅方向から見た概略断面図である。
図3】押込手段であるフリーロールの一例を示す概略図である。
図4】本発明の液体塗布装置を備える積層体の製造装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(液体塗布装置)
本発明の液体塗布装置について、以下、図面を参照して説明する。
【0010】
図1および図2は、本発明の一態様に係る液体塗布装置を模式的に示す。図1中、円弧状破線矢印はロールの回転方向を示し、矢印110は、長尺基材の搬送方向を示す。液体塗布装置101は、長尺基材102を長さ方向に搬送するための搬送手段の一部としてのガイドロール103と、長尺基材102の表面に液体106を塗布するためのグラビアロール104と、液体供給循環手段105と、長尺基材102とグラビアロール104とを接触させるためのバックアップロール107とを備える。液体塗布装置101は、長尺基材102の幅方向(以下、長尺基材幅方向ともいう)における両端部をグラビアロールから離すための長尺基材離隔手段と、長尺基材の液体塗布面の反対側の面から、搬送される長尺基材と接触しながら長尺基材の端部より内側の近傍のみをグラビアロール側へ押し込むための押込手段とをさらに備える。液体塗布装置101は、グラビアロール104を長尺基材102の搬送方向(以下、長尺基材搬送方向ともいう)と正方向に回転させるコート方式であっても、図1のようにグラビアロール104を長尺基材搬送方向と逆方向に回転させるリバースグラビアコート方式であってもよい。グラビアロール104を通過した長尺基材102には、長尺基材幅方向の両端部において液体106が塗布されない領域が存在する。
【0011】
長尺基材102は、例えば樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板、ガラスシート、ガラス板等であってよい。中でも好ましいのは樹脂フィルムである。樹脂フィルムは、長尺の樹脂フィルムであってよく、枚葉状樹脂フィルムであってよい。樹脂フィルムは、図1に示される通り、連続的に塗布できる点で長尺の樹脂フィルムが好ましい。また、樹脂フィルムは、単層であっても、複数の樹脂フィルムが積層体された多層フィルムであってもよい。
【0012】
樹脂フィルムを構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂等が挙げられる。中でも好ましくは透光性を有する熱可塑性樹脂であり、より好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂で構成されるフィルムである。熱可塑性樹脂としては、例えばトリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、シクロオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂等であってよい。また、樹脂フィルムは、例えばポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等から構成されるフィルムであってもよい。これらの樹脂は、単独でまたは組合わせて用いることができる。
【0013】
長尺基材102の厚みは、例えば1μm以上1mm以下であってよく、好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは10μm以上200μm以下、さらに好ましくは20μm以上100μm以下である。長尺基材102の厚みが1μm以上1mm以下である場合、長尺基材102が破断しにくく、かつ搬送安定性が向上し易い傾向にある。
【0014】
長尺基材102の幅は、例えば100mm以上2000mm以下であってよく、好ましくは200mm以上1800mm以下、より好ましくは400mm以上1500mm以下である。
【0015】
長尺基材102と液体106との密着性を高めるために、長尺基材102に液体106を塗布するのに先立って、長尺基材102の塗布面を表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えばコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線処理、プライマー塗布処理、ケン化処理などの表面処理が挙げられる。中でも均一な処理が可能であり、装置が簡便でコストが低い観点から好ましくはコロナ放電処理およびプラズマ処理である。
【0016】
搬送手段103は、長尺基材102を長さ方向に搬送するためのロールである。搬送手段103は、例えば駆動ロール(例えばニップロール、サクションロール等)、ガイドロール(フリーロール)、サクションロール、巻取装置およびこれらの組合せ等であってよい。
【0017】
長尺基材102を搬送する速度は、例えば1m/分以上100m/分以下であってよく、好ましくは5m/分以上50m/分以下、より好ましくは15m/分以上30m/分以下である。
【0018】
グラビアロール104は、表面に凹凸の彫刻加工が施されており、その表面が塗布する液体106と接触することにより、グラビアロール104の表面の凹部に液体106を溜め、グラビアロール104の表面の余分な液体をブレード109で掻き落とした後、回転しながら長尺基材102がバックアップロール107により押付けられることによりグラビアロール104の凹部に溜った液体106を長尺基材102に転写させる。グラビアロール104を長尺基材102へ押付ける圧力は、長尺基材102の張力やバックアップロール107の長尺基材102への押付け深さによって調節することができる。
【0019】
グラビアロール104の幅(グラビアロール104における長尺基材幅方向長さ)は、長尺基材102の幅および長尺基材への液体塗布幅より広くなっている。グラビアロール104の幅は、例えば200mm以上2500mm以下であってよく、好ましくは300mm以上2200mm以下、より好ましくは500mm以上2000mm以下である。
【0020】
グラビアロール104の直径は、例えば50mm以上500mm以下であってよい。
【0021】
グラビアロール104の液体106の塗布量は、例えば0.05g/m以上12g/m以下であってよく、好ましくは0.2g/m以上6g/m以下、より好ましくは0.5g/m以上4g/m以下である。グラビアロール104の液体106の塗布量が0.05g/m以上12g/m以下である場合、液垂れ等による塗布ムラが生じにくく、かつ目的とする液体106の塗布膜厚が得られ易くなる傾向にある。塗布量はグラビアロール104の彫刻加工の種類、凹凸の深さ、回転数、押付け圧等の選択により調節することができる。
【0022】
グラビアロール104の回転速度は、例えば1回転/分以上100回転/分以下であってよく、好ましくは10回転/分以上80回転/分以下、より好ましくは15回転/分以上60回転/分以下である。グラビアロール104の回転速度が1回転/分以上100回転/分以下である場合、液体106を長尺基材102へ均一に塗布し易くなる傾向にある。
【0023】
グラビアロール104の表面に彫刻加工される凹凸の形状は、例えば格子型、ハニカム型、斜線型等であってよい。凹凸部の幅および深度は、例えば1μm以上3mm以下であってよい。
【0024】
液体塗布装置101は、液体供給循環手段105を備える。液体供給循環手段105は、液体106を矢印111方向から矢印112方向へ循環させながらグラビアロール104の表面に供給する。液体106自体またはそれに含まれる揮発性成分の気化および液体106への異物混入を防止するために、液体供給循環手段105は密閉型が好ましい。
【0025】
液体106は、グラビアコーティング可能な溶液や分散液等であれば特に限定されず、例えば活性エネルギー線硬化性化合物を含有する組成物(以下、活性エネルギー線硬化性組成物ともいう)等であってよい。活性エネルギー線硬化性組成物は、紫外線、可視光、電子線、X線のような活性エネルギー線の照射によって硬化することができる。活性エネルギー線硬化性組成物は、例えば接着剤、インク、プライマー、ハードコート形成用材料、偏光膜形成用材料等として用いることができる。
【0026】
液体塗布装置101によれば、長尺基材幅方向の両端部において液体非塗布部分が形成されるため、液体106を塗布した長尺基材102を、引き続く貼合工程において更なる長尺基材と例えばニップロール等を用いて貼合し、積層体とした場合でも、塗布された液体が貼り合わせた長尺基材からはみ出しにくい傾向にある。したがって、本発明の液体塗布装置は、例えば積層体の製造に用いる接着剤の塗布に好適である。
【0027】
液体106は、粘度が例えば10mPa・s以上200mPa・s以下であってよく、好ましくは20mPa・s以上150mPa・s以下、より好ましくは30mPa・s以上120mPa・s以下である。液体106の粘度が10mPa・s以上200mPa・s以下である場合、塗布膜厚の調節が行い易い傾向にある。
【0028】
バックアップロール107は、矢印113のいずれの方向へも可動性を有しており、例えばバックアップロール107の位置を調節して所望の塗布膜厚を得ることができる。
【0029】
液体106の塗布膜厚は、例えば0.1μm以上10μm以下であってよく、好ましくは0.2μm以上5μm以下、より好ましくは0.5μm以上3μm以下である。
【0030】
バックアップロール107の幅は、長尺基材102の幅より広くすることができる。バックアップロール107の幅を長尺基材102の幅より広くする場合、長尺基材102に対してグラビアロール104の押付ける圧力が均等に加わる傾向にあり、塗布膜厚均一性や搬送安定性が向上し易い傾向にある。バックアップロール107の幅は、例えば200mm以上2500mm以下であってよく、好ましくは300mm以上2200mm以下、より好ましくは500mm以上2000mm以下である。
【0031】
バックアップロール107の直径は、例えば50mm以上500mm以下であってよい。
【0032】
長尺基材102は、長尺基材幅方向における両端部をグラビアロールから離すための長尺基材離隔手段により、長尺基材幅方向における両端部がそれぞれグラビアロール104から離されている。これにより、長尺基材102の両端部がグラビアロール104と接触しなくなり、長尺基材102の両端部に液体非塗布部分を形成しながら長尺基材102に液体106を塗布することが可能となる。長尺基材離隔手段としては、特に限定されないが、例えば長尺基材102と接触しながら長尺基材102をグラビアロール104から離すための部材や、長尺基材端部を吸引して長尺基材102をグラビアロール104から離すための装置等が挙げられる。
【0033】
長尺基材102は、長尺基材幅方向の両端部において、例えば各端部から1mm以上100mm以下の範囲にわたって液体非塗布部分が形成されてよく、好ましくは各端部から3mm以上80mm以下の範囲、より好ましくは各端部から5mm以上50mm以下の範囲にわたって液体非塗布部分が形成される。液体非塗布部分が形成される範囲は、例えば液体106および液体106が塗布された長尺基材102の種類や用途、塗布後に行う処理の種類等に応じて変えることができる。
【0034】
押込手段108は、長尺基材幅方向における長尺基材102の両端部のそれぞれより長尺基材幅方向内側に設けられる。例えば長尺基材102の厚みが大きく長尺基材102の剛性が高い場合に、長尺基材幅方向における長尺基材102の両端部がそれぞれグラビアロール104から離されると、長尺基材102に撓みが発生し、液体塗布幅にばらつきが生じたり、長尺基材102の蛇行搬送が生じたりすることがある。しかしながら、そのような場合であっても、押込手段108により長尺基材液体塗布面の反対側の面から長尺基材102と接触しながら長尺基材の端部より内側の近傍のみを長尺基材102をグラビアロール104側へ押し込むことで、長尺基材102の撓みが抑制され、長尺基材102の液体塗布幅の安定性が向上し、蛇行搬送が抑制され易くなる。押込手段108は、長尺基材幅方向の両端部において、端部より内側の近傍に1以上設けられてよく、好ましくは長尺基材幅方向の両端部において、端部より内側の近傍にそれぞれ1つずつ設けられる。長尺基材102の端部より内側の近傍からさらに内側にある領域205は押し込まれない。
【0035】
押込手段108は、好ましくは長尺基材102の押込方向または幅方向において可動式である。押込手段108は、長尺基材の押込方向または幅方向において設置する位置を調節して、長尺基材102への所望の液体塗布幅を得ることができる。また、長尺基材の種類や製品の仕様、通紙後の運転初期における液体塗布幅や蛇行状況等に応じて塗布運転中に押込手段108の位置の調節することができる。
【0036】
押込手段108の長尺基材幅方向における位置は、長尺基材102への液体塗布幅、長尺基材102の厚み、長尺基材102の剛性、グラビアロール104から離される長尺基材102の端部のグラビアロール側の面201と液体塗布面202との角度203等に応じて決定することができる。
【0037】
押込手段108は、矢印114のいずれの押込方向へも可動性を有している。押込手段108を長尺基材102へ押込む圧力は、長尺基材の厚みや液体塗布、液体塗布膜厚等に応じて押込手段108の長尺基材102への押付け深さによって調節することができる。
【0038】
押込手段108は、例えば長尺基材102に液体106が塗布される領域の長尺基材幅方向における両端部のそれぞれの、長尺基材102の液体塗布面の反対側の面に設けることができる。これにより、長尺基材102へ安定して液体非塗布部分を形成しながら液体106を塗布することが可能となる。また、長尺基材102の厚みが厚く、長尺基材102の剛性が高い場合でも、搬送される長尺基材102とグラビアロール104とが離れる位置が安定し、グラビアロール104による長尺基材102への液体塗布幅204が安定し易くなる傾向にある。押込手段108が後述のロールである場合、長尺基材幅方向において、ロールよりも外側となる端部を、長尺基材幅方向において液体106が塗布される領域よりも外側となる領域と同じ位置に設置することができる。液体106は、一方のロールの幅方向における端部の外側から他方のロールの幅方向における端部の外側までの間に塗布されることとなる。
【0039】
グラビアロール104による長尺基材102への液体塗布幅204は、例えば100mm以上2000mm以下であってよく、好ましくは200mm以上1800mm以下、より好ましくは400mm以上1500mm以下である。液体塗布幅204が100mm以上2000mm以下である場合、液体非塗布部分の幅の制御が行い易い傾向にある。
【0040】
押込手段108が配置される長尺基材搬送方向における位置は、長尺基材102への液体塗布幅、長尺基材102の厚み、長尺基材102の剛性、グラビアロール104から離される長尺基材102の端部のグラビアロール側の面201の液体塗布面202に対する傾斜角203等に応じて決定することができる。
【0041】
押込手段108は、長尺基材搬送方向においてグラビアロール104の回転軸を基準に例えば0mm以上50mm以下離れて設けられてよく、好ましくは0mm以上40mm以下、より好ましくは0mm以上30mm以下離れて、長尺基材102の液体塗布面の反対側の面に設けられてよく、もっとも好ましくは長尺基材搬送方向においてグラビアロール104が配置される位置の、長尺基材102の液体塗布面の反対側の面に設けられる。押込手段108が、長尺基材搬送方向においてグラビアロール104の回転軸を基準に0mm以上50mm以下離れて設けられる場合、長尺基材102の搬送性が安定し、液体塗布幅が安定し易くなる傾向にある。
【0042】
押込手段108は、長尺基材幅方向における両端部より内側の近傍のそれぞれにおいて、長尺基材の搬送方向において少なくとも1つ設けられていればよい。押込手段108は、長尺基材102の液体塗布幅の安定性が向上し、蛇行搬送が抑制され易くなる観点から、長尺基材搬送方向において異なる位置に複数個、設けることができる。
【0043】
押込手段108が長尺基材搬送方向において異なる位置に2以上設けられる場合、長尺基材幅方向の一方の端部に設けられる押込手段108は、長尺基材搬送方向において設けられる別の押込手段から例えば1mm以上100mm以下間隔を空けて設置する。押込手段108を、長尺基材搬送方向において設けられる別の押込手段108から1mm以上100mm以下間隔を空けて設置する場合、長尺基材102の液体塗布幅の安定性が向上し易い傾向にある。押込手段108は好ましくは、長尺基材搬送方向において、グラビアロール104とバックアップロール107との間に設置される。もう一方の端部に設けられる押込手段108もまた同様にして長尺基材搬送方向に設置することができる。長尺基材102の両端部に設けられる押込手段108はそれぞれ、好ましくは搬送方向において同じ位置に設けられる。
【0044】
押込手段108は、搬送される長尺基材102と接触しながら長尺基材102をグラビアロール104側へ押し込むことができれば特に限定されないが、例えばロールであってよい。ロールとしては、例えばフリーロール等が挙げられる。
【0045】
ロールは、例えば金属、ゴム、プラスチック等からできていてよく、長尺基材102との密着性を低くする観点から好ましくは金属製である。金属の例としては、例えばステンレス、鉄、アルミ等が挙げられる。ロールの表面は、長尺基材102との密着性を低くし、長尺基材102の損傷を防止するために表面処理が施されていてよい。表面処理としては、例えば鏡面処理等が挙げられる。
【0046】
押込手段108がロールである場合、ロールと長尺基材102とが接触する幅は、長尺基材幅方向において例えば1mm以上100mm以下であってよく、好ましくは1.5mm以上70mm以下、より好ましくは2mm以上50mm以下である。長尺基材搬送方向におけるロールと長尺基材102とが接触する幅が1mm以上100mm以下である場合、搬送時の長尺基材102の端部のバタつきが抑制され、搬送位置の精密な調節が行い易くなり、搬送する長尺基材の種類が制限されにくくなる傾向にある。
【0047】
押込手段108がロールである場合、ロールの直径および幅は、グラビアロール104およびバックアップロール107の直径および幅より小さくすることができる。また、押込手段108がロールである場合、ロールの幅に対する直径の比率は例えば0.01以上5以下であってよい。
【0048】
押込手段108がロールである場合、ロールの直径は、例えばグラビアロール104およびバックアップロール107の直径より小さくすることができ、好ましくは1mm以上100mm以下、より好ましくは5mm以上50mm以下である。ロールの幅は、上述のロールと長尺基材102とが接触する幅と同一であってよい。
【0049】
押込手段108がフリーロールである場合について、図3を参照しながら以下に説明する。押込手段108は、ロール115とロール支持部材116とから構成されている。ロール115は、搬送される長尺基材102の動きに合わせて回転することができるようにロール支持部材116により支持される。押込手段108は、液体106がグラビアロール104により塗布される面とは反対側からグラビアロール104側へ、長尺基材102とロール115とを接触させながら、長尺基材102の端部117より内側の近傍のみを押し込むように設置される。
【0050】
(積層体の製造装置)
図4に液体塗布装置101を備えた積層体製造装置301を示す。積層体製造装置301は、長尺の樹脂フィルム302の巻出部303、長尺の樹脂フィルム304の巻出部305、バックアップロール107、押込手段108、グラビアロール104、液体供給循環手段105、ニップロール306、UV照射装置307、ガイドロール308を備える。樹脂フィルム302に、活性エネルギー線硬化性組成物を液体塗布装置101により塗布し、塗膜付長尺基材309とした後、樹脂フィルム304と共にニップロール306間を通過させ貼合した後、UV照射装置307により活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させ、積層体310が得られる。
【0051】
本発明の液体塗布装置によれば、液体塗布幅の安定性に優れるため、液体を塗布した長尺基材を、引き続く貼合工程において更なる長尺基材と例えばニップロール等を用いて貼合した場合でも、塗布された液体が貼り合わせた長尺基材からはみ出しにくく、エア噛みやデラミ不良の発生が抑制されるため、積層体の製造装置のための液体塗布装置に好適である。
【0052】
(液体塗布方法)
本発明に係る別の一態様は、長尺基材端部に液体非塗布部分を形成しながら長尺基材に液体を塗布する方法(以下、塗布方法ともいう)であり、長尺基材を搬送する搬送工程と、長尺基材とグラビアロールとをバックアップロールにより接触させ、グラビアロールにより長尺基材の表面に液体を塗布する塗布工程とを含み、塗布工程において、長尺基材の両端部をそれぞれグラビアロールから離し、この両端部のそれぞれの内側に、長尺基材の液体塗布面の反対側の面から、搬送される長尺基材と接触しながら長尺基材をグラビアロール側へ押し込む、方法である。
【0053】
塗布方法における、長尺基材、液体、グラビアロール、バックアップロールは上述の液体塗布装置において例示したものがそれぞれ適用される。
【0054】
塗布工程において、長尺基材の両端部をそれぞれグラビアロールから離す方法および搬送される長尺基材と接触しながら長尺基材をグラビアロール側へ押込む方法はそれぞれ、上述の液体塗布装置において例示した長尺基材離隔手段および押込手段を用いる方法であってよい。
【0055】
実施例および比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【実施例
【0056】
[液体塗布幅安定性]
長尺基材への液体塗布幅のばらつきの有無を目視確認した。
【0057】
[フリーロール]
図3に示すSUS製フリーロールを押込手段として用いた(直径30mm、幅50mm)。
【0058】
[第1フィルム]
セルローストリアセテート(TAC)フィルム、厚み:80μm
【0059】
[第2フィルム]
セルローストリアセテート(TAC)フィルム、厚み:80μm
【0060】
[紫外線硬化性組成物1]
エポキシ樹脂系紫外線硬化性接着剤(粘度40mPa・s)
【0061】
[実施例1]
液体塗布装置において、フリーロールの長尺基材幅方向外側の端部を、長尺基材に液体を塗布する領域の長尺基材幅方向における端部と同じ位置に、グラビアロールが配置される位置の液体塗布面反対側に設けた。
長尺の第2フィルムを連続的に搬送するとともに、長尺の第1フィルムを連続的に搬送し、第1フィルム上に活性エネルギー線硬化性組成物1を、第1フィルムの幅方向において端部から15mmの領域には硬化性組成物層を形成させずに塗布厚約1.5μmでグラビアロールにより塗布した後、貼合ロール間に通した。その後、引き続き、紫外線を照射し、硬化性組成物層を硬化させて、第1フィルム/硬化層/第2フィルムからなる積層体を得た。
この積層体に塗布幅のばらつきは確認されなかった。また、蛇行搬送や長尺基材の撓み、積層体から活性エネルギー線硬化性組成物1のはみ出しも認められなかった。
【0062】
[比較例1]
フリーロールを設置しなかったこと以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。
塗布幅のばらつき、蛇行搬送、長尺基材の撓みが確認された。
【符号の説明】
【0063】
101 液体塗布装置、102 長尺基材、103 搬送機構、104 グラビアロール、105 液体供給循環機構、106 液体、107 バックアップロール、108 押込手段、109 ブレード、115 ロール、 116 ロール支持部材、117 端部、201 グラビアロールから離される長尺基材の端部のグラビアロール側の面、202 長尺基材塗布面、203 傾斜角、204 長尺基材への液体塗布幅、205 長尺基材の端部より内側の近傍からさらに内側にある領域、301 積層体製造装置、302 樹脂フィルム、303 巻出部、304 樹脂フィルム、305 巻出部、306 ニップロール、307 UV照射装置、308 ガイドロール、309 塗膜付長尺基材、310 積層体。
図1
図2
図3
図4