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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/12 20060101AFI20220506BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20220506BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C08L25/12
C08L51/06
C08L23/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020563916
(86)(22)【出願日】2019-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 KR2019014261
(87)【国際公開番号】W WO2020091336
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2020-11-12
(31)【優先権主張番号】10-2018-0132191
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ダ・ウン・スン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヨン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒ・アン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミン・ジャン
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0121519(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0382574(US,A1)
【文献】特表2017-536428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
からC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位、及びビニルシアン系単量体単位を含む第1グラフト共重合体;
からC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、アルキル置換されていないスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第2グラフト共重合体;
からCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第1スチレン系共重合体;
アルキル置換されていないスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第2スチレン系共重合体;及び
からCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含むオレフィン系共重合体を含
前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の合計100重量部に対して、
前記第1グラフト共重合体5から30重量部;
前記第2グラフト共重合体0.1から15重量部;
前記第1スチレン系共重合体2から25重量部;
前記第2スチレン系共重合体50から80重量部;及び
前記オレフィン系共重合体0.01から2重量部を含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記第1グラフト共重合体は、アルキル置換されていないスチレン系単量体単位をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記第1グラフト共重合体と第2グラフト共重合体は、コアの平均粒径が互いに異なる、請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記第1グラフト共重合体は、コアの平均粒径が300から500nmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記第2グラフト共重合体は、コアの平均粒径が50から150nmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記オレフィン系共重合体は、CからCのオレフィン系単量体単位及びCからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を85:15から65:35の重量比で含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記オレフィン系共重合体は、重量平均分子量が50,000から200,000g/molである、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体、第2スチレン系共重合体の合計100重量部に対して、
前記オレフィン系共重合体0.5から1重量部を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の合計100重量部に対して、
前記第1グラフト共重合体及び第2グラフト共重合体を合わせた含量が10から35重量部である、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記第1グラフト共重合体と第2グラフト共重合体の重量比が1.5:1から10:1である、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の合計100重量部に対して、
前記第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体を合わせた含量が65から90重量部である、請求項1~1のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の合計100重量部に対して、
前記第1スチレン系共重合体の含量が14から20重量部である、請求項1~1のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の合計100重量部に対して、
前記第1グラフト共重合体10から15重量部;
前記第2グラフト共重合体5から8重量部;
前記第1スチレン系共重合体14から16重量部;
前記第2スチレン系共重合体62から66重量部;及び
前記オレフィン系共重合体0.3から0.6重量部を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本発明は、2018年10月31日付で出願された韓国特許出願第10-2018-0132191号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関し、耐化学性及び外観特性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に、アクリル系ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体及びビニルシアン系単量体がグラフト重合されたアクリル系グラフト共重合体は、耐候性及び耐老化性に優れる。このようなアクリル系グラフト共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物は、自動車、船舶、レジャー用品、建築材料、園芸用など多方面で用いられ、その使用量が急激に増加している。
【0004】
一方、完成品質への使用者の要求の水準が高くなるにつれ、PVC、鉄板などの基材を熱可塑性樹脂組成物で仕上げ処理して高級な外観、優れた着色性及び耐候性を具現しようとする研究が進められている。
【0005】
アクリル系グラフト共重合体を含むデコシートは、既存のPVCやPPに比べて加工安定性に優れ、重金属成分を含まないので、親環境素材として注目されている。しかし、保管の過程で押し跡が発生したり、加工の過程でシートの寸法が変形(伸びたり縮む)されたりするという問題が発生している。また、基材との接着のために接着剤を使用する際、耐化学性が不十分で溶けるという問題も発生する。
【0006】
したがって、外観品質及び耐化学性が改善された熱可塑性樹脂組成物の開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、加工性、硬度、着色性、耐衝撃性などの基本物性に優れるとともに、耐化学性、耐熱性及び外観特性が改善された熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位、及びビニルシアン系単量体単位を含む第1グラフト共重合体;CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、アルキル置換されていないスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第2グラフト共重合体;CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第1スチレン系共重合体;アルキル置換されていないスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第2スチレン系共重合体;及びCからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含むオレフィン系共重合体を含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、加工性、硬度、着色性、耐衝撃性などの基本物性に優れるとともに、耐化学性、耐熱性及び外観特性を顕著に改善させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳細に説明する。
【0011】
本発明の説明及び特許請求の範囲で用いられた用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0012】
本発明で、グラフト共重合体のシェルの重量平均分子量は、コアにグラフトされた芳香族ビニル系単量体単位とビニルシアン系単量体単位を含む共重合体の重量平均分子量を意味することができる。
【0013】
ここで、芳香族ビニル系単量体単位は、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位及びアルキル置換されていないスチレン系単量体単位からなる群より選択される1種以上であってよい。
【0014】
本発明で、グラフト共重合体のシェルの重量平均分子量は、グラフト共重合体をアセトンに溶解させて遠心分離した後、アセトンに溶解された部分(sol)をテトラヒドロフランに溶解させ、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、waters breeze)を用いて標準PS(ポリスチレン標準;standard polystyrene)試料に対する相対値で測定することができる。
【0015】
本発明で、グラフト共重合体のグラフト率は、下記式に基づいて算出することができる。
グラフト率(%):グラフトされた単量体の重量(g)/ゴム質の重量(g)× 100
グラフトされた単量体の重量(g):グラフト共重合体粉末をアセトンに溶解させて遠心分離した後の不溶性物質(gel)の重量
ゴム質の重量(g):グラフト共重合体粉末の製造工程中に理論上投入されたCからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体の重量
【0016】
本発明で、シード、コア、及びグラフト共重合体の平均粒径は、動的光散乱(dynamic light scattering)法を用いて測定することができ、詳細には、Nicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて測定することができる。
【0017】
本発明で、平均粒径は、動的光散乱法によって測定される粒度分布における算術平均粒径、具体的には、散乱強度平均粒径を意味することができる。
【0018】
本発明で、重量平均分子量は、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を介し標準PS(ポリスチレン標準;standard polystyrene)試料に対する相対値で測定することができる。
【0019】
1.熱可塑性樹脂組成物
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、本発明は、A-1)CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位、及びビニルシアン系単量体単位を含む第1グラフト共重合体;A-2)CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、アルキル置換されていないスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第2グラフト共重合体;B-1)CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第1スチレン系共重合体;B-2)アルキル置換されていないスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む第2スチレン系共重合体;及びC)CからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含むオレフィン系共重合体を含む。
【0020】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物の各構成要素を具体的に説明する。
【0021】
A-1)第1グラフト共重合体
第1グラフト共重合体は、CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位、及びビニルシアン系単量体単位を含む。
【0022】
前記第1グラフト共重合体は、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位を含むので、熱可塑性樹脂組成物に顕著に優れた耐熱性、外観特性を付与することができる。また、後述の第1スチレン系共重合体との相溶性が顕著に改善され、熱可塑性樹脂組成物内に均一に分散され得る。
【0023】
また、前記第1グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた耐衝撃性を付与することができる。
【0024】
前記第1グラフト共重合体は、CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含む架橋重合体からなるコア;及び前記コアにグラフトされたアルキル置換されたスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含むシェルを含むコア-シェル構造であってよい。
【0025】
前記CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位は、CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体由来の単位であってよい。
【0026】
前記CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体は、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート及びデシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上であってよく、このうち、ブチルアクリレートが好ましい。
【0027】
前記CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位は、前記第1グラフト共重合体の総重量に対して、40から60重量%または45から55重量%で含まれてよく、このうち、45から55重量%で含まれることが好ましい。前述の範囲を満たせば、前記第1グラフト共重合体の耐衝撃性がより改善され得る。
【0028】
前記CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位は、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体由来の単位であってよい。
【0029】
前記CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体は、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、及び2,4-ジメチルスチレンからなる群より選択される1種以上であってよく、このうち、α-メチルスチレンが好ましい。
【0030】
前記CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位は、前記第1グラフト共重合体の総重量に対して、25から45重量%または30から40重量%で含まれてよく、このうち30から40重量%で含まれるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性、外観特性及び耐衝撃性がより改善され得る。
【0031】
前記ビニルシアン系単量体単位は、ビニルシアン系単量体由来の単位であってよい。
【0032】
前記ビニルシアン系単量体は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びエタクリロニトリルからなる群より選択される1種以上であってよく、このうちアクリロニトリルが好ましい。
【0033】
前記ビニルシアン系単量体単位は、前記第1グラフト共重合体の総重量に対して、5から25重量%または10から20重量%で含まれてよく、このうち10から20重量%で含まれるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、前記第1グラフト共重合体の耐化学性がより改善され得る。
【0034】
前記第1グラフト共重合体は、重合をより容易に行うために、アルキル置換されていないスチレン系単量体単位をさらに含むことができる。前記アルキル置換されていないスチレン系単量体単位は、アルキル置換されていないスチレン系単量体由来の単位であってよい。前記アルキル置換されていないスチレン系単量体は、スチレン、p-ブロモスチレン、o-ブロモスチレン及びp-クロロスチレンからなる群より選択される1種以上であってよく、このうちスチレンが好ましい。
【0035】
前記アルキル置換されていないスチレン系単量体単位は、前記第1グラフト共重合体の総重量に対して、0.1から15重量%または1から10重量%で含まれてよく、このうち1から10重量%で含まれるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、前記第1グラフト共重合体の重合がより容易に行われ得る。
【0036】
前記第1グラフト共重合体は、前記第2グラフト共重合体とコアの平均粒径が異なっていてよく、具体的には、前記第1グラフト共重合体の平均粒径が前記第2グラフト共重合体に比べてさらに大きくてよい。
【0037】
前記熱可塑性樹脂組成物が、コアの平均粒径が互いに異なるグラフト共重合体を2種以上含むことにより、耐衝撃性、耐候性、着色性、表面光沢特性及び外観特性がいずれも改善され得る。
【0038】
前記第1グラフト共重合体は、コアの平均粒径が300から500nm、または350から450nmであってよく、このうち350から450nmであるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性及び表面光沢特性がより改善され得る。前述の範囲未満であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、前述の範囲を超過すれば、表面光沢特性が低下し得る。
【0039】
前記第1グラフト共重合体は、グラフト率が20から100%、40から80%または45から60%であってよく、このうち40から60%が好ましい。前述の範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性及び分散性がより改善され得る。
【0040】
前記第1グラフト共重合体は、シェルの重量平均分子量が100,000から300,000g/molまたは150,000から250,000g/molであってよく、このうち150,000から250,000g/molが好ましい。前述の範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がより改善され得る。
【0041】
前記第1グラフト共重合体は、ブチルアクリレート-α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体及びブチルアクリレート-スチレン-α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群より選択されてよく、このうちブチルアクリレート-スチレン-α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体が好ましい。
【0042】
前記第1グラフト共重合体は、前記第1グラフト共重合体、前記第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の合計100重量部に対して、5から30重量部、10から25重量部または10から15重量部で含まれてよく、このうち10から15重量部で含まれるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性を顕著に改善させることができる。前述の範囲未満で含まれれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性及び外観特性が顕著に低下し、前述の範囲を超過して含まれれば、外観特性が顕著に低下し得る。
【0043】
一方、前記第1グラフト共重合体は、1)CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体、アルキル置換されていないスチレン系単量体及びビニルシアン系単量体からなる群より選択される1種以上を重合してコアを製造する段階;2)前記コアの存在下で、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体、及びビニルシアン系単量体を重合してシェルを製造する段階を含む製造方法で製造されてよい。
【0044】
前記コアを製造する段階は、CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体、アルキル置換されていないスチレン系単量体及びビニルシアン系単量体からなる群より選択される1種以上を重合してシードを製造する段階;及び前記シードの存在下で、CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体を重合してコアを製造する段階を含むことができる。
【0045】
前記シード及びコアを製造する段階は、乳化剤、開始剤、架橋剤、グラフト剤、電解質及び水からなる群より選択される1種以上の存在下で行われてよい。
【0046】
前記乳化剤は、C12からC18であるアルキルスルホコハク酸の金属塩誘導体及びC12からC20であるアルキル硫酸エステルの金属塩誘導体からなる群より選択される1種以上であってよい。
【0047】
前記C12からC18であるアルキルスルホコハク酸の金属塩誘導体は、ジシクロヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸カリウム及びジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸リチウムからなる群より選択される1種以上であってよい。
【0048】
前記C12からC20であるアルキル硫酸エステルの金属塩誘導体は、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム及びオクタデシル硫酸カリウムからなる群より選択される1種以上であってよい。
【0049】
前記開始剤は、無機過酸化物または有機過酸化物であってよい。前記無機過酸化物は水溶性開始剤であって、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム及び過硫酸アンモニウムからなる群より選択される1種以上であってよい。前記有機過酸化物は脂溶性開始剤であって、クメンヒドロペルオキシド及びベンゾイルペルオキシドからなる群より選択される1種以上であってよい。
【0050】
前記架橋剤は、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート及びトリメチロールメタントリアクリレートからなる群より選択される1種以上であってよい。
【0051】
前記グラフト剤は、アリルメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルアミン及びジアリルアミンからなる群より選択される1種以上であってよい。
【0052】
前記電解質は、KCl、NaCl、KHCO、NaHCO、KCO、NaCO、KHSO、NaHSO、Na、K、KPO、NaPOまたはNaHPO、KOH及びNaOHからなる群より選択される1種以上であってよく、このうちKOHが好ましい。
【0053】
前記水は、乳化重合時に媒質の役割を担い、イオン交換水であってよい。
【0054】
一方、前記シェルを製造する段階において、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体とビニルシアン系単量体は、一定の速度で連続投入されながら重合されてよく、前述の方法で投入されれば、重合時に熱の制御及び過多過熱による暴走の容易な抑制ができる。
【0055】
前記重合は、乳化重合であってよく、50から85℃または60から80℃で行われてよく、このうち60から80℃で行われることが好ましい。前述の範囲を満たせば、乳化重合が安定的に行われてよい。
【0056】
前記シェルを製造する段階は、乳化剤、開始剤、及び水からなる群より選択される1種以上の存在下で行われてよい。
【0057】
前記乳化剤、開始剤及び水は、前記スチレン系単量体及びビニルシアン系単量体とともに連続投入しながら重合されることが好ましい。前述の条件を満たせば、pHが一定に維持されてグラフト重合が容易であり、グラフト共重合体粒子の安定性に優れるだけでなく、粒子の内部が均一に製造され得る。
【0058】
前記乳化剤は、カルボン酸金属塩誘導体であってよく、前記カルボン酸金属塩誘導体は、C12からC20の脂肪酸金属塩及びロジン酸金属塩からなる群より選択される1種以上であってよい。
【0059】
前記C12からC20の脂肪酸金属塩は、脂肪酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム及びオレイン酸カリウムからなる群より選択される1種以上であってよい。
【0060】
前記ロジン酸金属塩は、ロジン酸ナトリウム塩及びロジン酸カリウム塩からなる群より選択される1種以上であってよい。
【0061】
前記開始剤の種類は前述のとおりであり、このうち有機過酸化物が好ましく、t-ブチルペルオキシエチルヘキシルカーボネートがより好ましい。
【0062】
一方、前述の製造方法で製造されたグラフト共重合体は、ラテックス形態であってよい。
【0063】
前記ラテックス形態のグラフト共重合体は、凝集、熟成、洗浄、脱水及び乾燥を行って粉末形態で製造されてよい。
【0064】
A-2)第2グラフト共重合体
第2グラフト共重合体は、CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、アルキル置換されていないスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む。
【0065】
前記第2グラフト共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた耐候性、着色性、耐衝撃性、耐化学性及び表面光沢特性を付与することができる。
【0066】
また、前記第2グラフト共重合体がアルキル置換されていないスチレン系単量体単位を含むので、後述の第2スチレン系共重合体との相溶性が顕著に改善され、熱可塑性樹脂組成物内に均一に分散され得る。
【0067】
前記第2グラフト共重合体は、CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位、アルキル置換されていないスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位からなる群より選択される1種以上を含む架橋重合体からなるコア;及び前記コアにグラフトされたアルキル置換されていないスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含むシェルを含むコア-シェル構造であってよい。
【0068】
前記CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位は、前記第2グラフト共重合体の総重量に対して、40から60重量%または45から55重量%で含まれてよく、このうち45から55重量%で含まれるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、前記第2グラフト共重合体の耐候性及び耐衝撃性がより改善され得る。
【0069】
前記アルキル置換されていないスチレン系単量体単位は、前記第2グラフト共重合体の総重量に対して、25から45重量%または30から40重量%で含まれてよく、このうち30から40重量%で含まれるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、前記第2グラフト共重合体の加工性及び耐衝撃性がより改善され得る。
【0070】
前記ビニルシアン系単量体単位は、前記第2グラフト共重合体の総重量に対して、5から25重量%または10から20重量%で含まれてよく、このうち10から20重量%で含まれるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、前記第2グラフト共重合体の耐化学性がより改善され得る。
【0071】
前記CからC10のアルキル置換されていないスチレン系単量体単位、アルキル置換されていないスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位に対する説明は前述のとおりである。
【0072】
前記第2グラフト共重合体は、コアの平均粒径が50から150nmまたは75から125nmであってよく、このうち75から125nmであるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物内のコアの比表面積が高くなって耐候性が顕著に改善され、可視光線がコアで散乱されずに浸透することができるので、着色性が顕著に改善され得る。また、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性、外観特性及び表面光沢特性がより改善され得る。前述の範囲未満であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐候性、耐化学性、外観特性及び表面光沢特性が顕著に低下し、前述の範囲を超過すれば、耐候性及び着色性が顕著に低下し得る。
【0073】
前記第2グラフト共重合体は、グラフト率が20から80%または25から60%であってよく、このうち25から60%が好ましい。前述の範囲を満たせば、着色性、分散性及び表面光沢特性に優れた第2グラフト共重合体を製造することができる。
【0074】
前記第2グラフト共重合体は、シェルの重量平均分子量が50,000から200,000g/molまたは70,000から170,000g/molであってよく、このうち70,000から170,000g/molが好ましい。前述の範囲を満たせば、分散性及び機械的特性に優れた第2グラフト共重合体を製造することができる。
【0075】
前記第2グラフト共重合体は、ブチルアクリレート-スチレン-アクリロニトリル共重合体であってよい。
【0076】
前記第2グラフト共重合体は、前記第1グラフト共重合体、前記第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の合計100重量部に対して、0.1から15重量部、1から10重量部または5から8重量部で含まれてよく、このうち、5から8重量部で含まれるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の耐候性、耐化学性、着色性、外観特性及び表面光沢特性を顕著に改善させることができる。前述の範囲未満であれば、熱可塑性樹脂組成物の外観特性、耐候性及び着色性が低下し、前述の範囲を超過すれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下し得る。
【0077】
一方、前記第2グラフト共重合体は、1)CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、アルキル置換されていないスチレン系単量体及びビニルシアン系単量体からなる群より選択される1種以上を重合してコアを製造する段階;2)前記コアの存在下でアルキル置換されていないスチレン系単量体、及びビニルシアン系単量体を重合してシェルを製造する段階を含む製造方法で製造されてよい。
【0078】
前記コアを製造する段階は、CからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、アルキル置換されていないスチレン系単量体及びビニルシアン系単量体からなる群より選択される1種以上を重合してシードを製造する段階;及び前記シードの存在下でCからC10のアルキル(メタ)アクリレート系単量体を重合してコアを製造する段階を含むことができる。
【0079】
その他、前記第2グラフト共重合体の製造方法は、前記第1グラフト共重合体の製造方法に記載したとおりである。
【0080】
一方、本発明において、前記第1グラフト共重合体及び第2グラフト共重合体を合わせた含量は、前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の合計100重量部に対して、10から35重量部、好ましくは15から30重量部であってよい。前述の範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物が優れた耐衝撃性、外観特性及び硬度を具現することができる。前述の範囲未満で含まれれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が顕著に低下し、前述の範囲を超過して含まれれば、流動指数が低くなり、外観特性が顕著に低下し得る。
【0081】
また、本発明において、前記第1グラフト共重合体と第2グラフト共重合体の重量比は、1.5:1から10:1、好ましくは1.5:1から5:1、さらに好ましくは1.5:1から3:1であってよい。前述の範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性及び外観特性がより改善され得る。前述の範囲未満であれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下し、前述の範囲を超過すれば、熱可塑性樹脂組成物の外観特性が低下し得る。
【0082】
B-1)第1スチレン系共重合体
第1スチレン系共重合体は、マトリックス共重合体であって、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む。
【0083】
前記第1スチレン系共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた耐熱性及び外観特性を付与することができる。詳細には、優れた耐熱性により、熱可塑性樹脂組成物で製造された成形品の寸法安定性を改善させることができ、押し跡を最小化することができる。
【0084】
また、前記第1スチレン系共重合体がCからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位を含むので、前記第1グラフト共重合体との相溶性に優れることができる。
【0085】
前記CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体単位とビニルシアン系単量体単位の種類は前述のとおりである。
【0086】
前記第1スチレン系共重合体は、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体及びビニルシアン系単量体を含む単量体混合物の共重合物であってよい。
【0087】
前記単量体混合物は、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体及びビニルシアン系単量体を60:40から90:10または65:35から85:15の重量比で含んでよく、このうち65:35から85:15の重量比で含むのが好ましい。前述の範囲を満たせば、耐熱性がより改善され得る。
【0088】
前記第1スチレン系共重合体は、重合を容易に行うために、アルキル置換されていないスチレン系単量体単位をさらに含んでよい。
【0089】
すなわち、前記第1スチレン系共重合体は、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体、ビニルシアン系単量体及びアルキル置換されていないスチレン系単量体を含む単量体混合物の共重合物であってよい。前記アルキル置換されていないスチレン系単量体単位の種類は前述のとおりである。
【0090】
この場合、前記単量体混合物は、前記CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体55から75重量%、ビニルシアン系単量体20から40重量%、前記アルキル置換されていないスチレン系単量体0.1から15重量%で含んでよく、好ましくは、前記CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体60から70重量%、前記ビニルシアン系単量体25から35重量%、前記アルキル置換されていないスチレン系単量体1から10重量%を含んでよい。前述の範囲を満たせば、第1スチレン系共重合体の重合がより容易に進められ得る。
【0091】
前記第1スチレン系共重合体は、重量平均分子量が50,000から150,000g/molまたは70,000から130,000g/molであってよく、このうち70,000から130,000g/molが好ましい。前述の範囲を満たせば、優れた耐化学性及び機械的特性を具現することができる。前述の範囲未満であれば、熱可塑性樹脂組成物の機械的特性が低下し得る。前述の範囲を超過すれば、加工性が低下し得る。
【0092】
前記第1スチレン系共重合体は、α-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体及びα-メチルスチレン-スチレン-アクリロニトリル共重合体からなる群より選択されてよく、このうちα-メチルスチレン-アクリロニトリル共重合体が好ましい。
【0093】
前記第1スチレン系共重合体は、前記第1グラフト共重合体、前記第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の合計100重量部に対して、2から25重量部、7から20重量部、14から20重量部または14から16重量部で含まれてよく、このうち14から16重量部で含まれるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性、加工性及び外観特性がより改善され得る。具体的には、前述の範囲未満で含まれれば、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が低下し、外観特性が低下し得る。前述の範囲を超過すれば、加工性及び耐化学性が低下し得る。
【0094】
前記第1スチレン系共重合体は、CからCのアルキル置換されたスチレン系単量体とビニルシアン系単量体を含む単量体混合物を懸濁または塊状重合で製造した共重合物であってよく、このうち、高純度の重合体を製造することができる塊状重合で製造した共重合物であることが好ましい。
【0095】
B-2)第2スチレン系共重合体
第2スチレン系共重合体は、マトリックス共重合体であって、アルキル置換されていないスチレン系単量体単位及びビニルシアン系単量体単位を含む。
【0096】
前記第2スチレン系共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた加工性、耐化学性及び機械的特性を付与することができる。前記第2スチレン系共重合体は、アルキル置換されていないスチレン系単量体単位を含むので、前記第2グラフト共重合体との相溶性が改善され、前記第2グラフト共重合体が熱可塑性樹脂組成物内に均一に分散されるようにすることができる。
【0097】
前記アルキル置換されていないスチレン系単量体単位とビニルシアン系単量体単位の種類は前述のとおりである。
【0098】
前記第2スチレン系共重合体は、アルキル置換されていないスチレン系単量体及びビニルシアン系単量体を含む単量体混合物の共重合物であってよい。
【0099】
前記単量体混合物は、アルキル置換されていないスチレン系単量体及びビニルシアン系単量体を60:40から90:10または65:35から85:15の重量比で含んでよく、このうち65:35から85:15の重量比で含むのが好ましい。前述の範囲を満たせば、加工性及び耐化学性がより改善され得る。
【0100】
前記第2スチレン系共重合体は、重量平均分子量が100,000から250,000g/molまたは130,000から220,000g/molであってよく、このうち130,000から220,000g/molが好ましい。前述の範囲を満たせば、優れた耐化学性及び機械的特性を具現することができる。前述の範囲未満であれば、熱可塑性樹脂組成物の機械的特性が低下し、前述の範囲を超過すれば、熱可塑性樹脂組成物の加工性が低下し得る。
【0101】
前記第2スチレン共重合体は、スチレン-アクリロニトリル共重合体であることが好ましい。
【0102】
前記第2スチレン系共重合体は、前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の合計100重量部に対して、50から80重量部、55から75重量部または62から66重量部で含まれてよく、このうち62から66重量部で含まれるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の加工性、耐化学性及び機械的特性がより改善され得る。前述の範囲未満で含まれれば、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性及び加工性が低下し、前述の範囲を超過して含まれれば、熱可塑性樹脂組成物の機械的特性が低下し得る。
【0103】
前記第2スチレン系共重合体は、アルキル置換されていないスチレン系単量体とビニルシアン系単量体を懸濁または塊状重合して製造した共重合物であってよく、このうち、高純度の共重合体を製造することができる塊状重合で製造した共重合物であることが好ましい。
【0104】
一方、本発明において、前記第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体を合わせた含量は、前記第1グラフト共重合体、前記第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の合計100重量部に対して、65から90重量部、好ましくは70から85重量部であってよい。前述の範囲未満で含まれれば、熱可塑性樹脂組成物の加工性が低下し、前述の範囲を超過すれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下し得る。
【0105】
C)オレフィン系共重合体
オレフィン系共重合体は、添加剤であって、CからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を含む。
【0106】
前記オレフィン系共重合体熱可塑性樹脂組成物に優れた耐化学性を付与することができる。
【0107】
前記オレフィン系共重合体は、CからCのオレフィン系単量体及びCからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体を含む単量体混合物の共重合物であってよい。
【0108】
前記CからCのオレフィン系単量体は、エチレン、プロピレン及びブテンからなる群より選択される1種以上であってよく、このうちエチレンが好ましい。
【0109】
前記CからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート及びプロピル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上であってよく、このうちメチルアクリレートが好ましい。
【0110】
前記オレフィン系共重合体は、CからCのオレフィン系単量体単位及びCからCのアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位を85:15から65:35または80:20から70:30の重量比で含んでよく、このうち80:20から70:30の重量比で含むのが好ましい。前述の範囲を満たせば、前記オレフィン系共重合体の耐化学性がより改善され得る。具体的には、前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位の含量が過度に少ないと、前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体との相溶性が低下し、熱可塑性樹脂組成物内に均一に分散できないため、耐化学性を改善させる効果が低下し得る。前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位の含量が過度に多いと、前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体との相溶性は改善されるが、オレフィン系単量体単位の含量が減少して耐化学性を改善させる効果が低下し得る。
【0111】
前記オレフィン系共重合体は、重量平均分子量が50,000から200,000g/mol、70,000から150,000g/molまたは90,000から120,000g/molであってよく、このうち90,000から120,000g/molであるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体との相溶性に優れ、機械的特性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。具体的には、前述の範囲未満であれば、機械的特性が低下し、前述の範囲を超過すれば、第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体との相溶性が低下し、熱可塑性樹脂組成物内に均一に分散できないため、耐化学性を改善させる効果が低下し得る。
【0112】
前記オレフィン系共重合体は、エチレン-メチルアクリレート共重合体であることが好ましい。
【0113】
前記オレフィン系共重合体は、前記第1グラフト共重合体、第2グラフト共重合体、第1スチレン系共重合体及び第2スチレン系共重合体の合計100重量部に対して、0.01から2重量部または0.5から1重量部で熱可塑性樹脂組成物に含まれてよく、このうち0.5から1重量部で含まれるのが好ましい。前述の範囲を満たせば、熱可塑性樹脂組成物の硬度、機械的特性及び耐熱性に影響を与えないながらも耐化学性がより改善され得る。前述の範囲未満で含まれれば、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性が低下し、前述の範囲を超過して含まれれば、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下し得る。
【0114】
前記オレフィン系重合体は、市販の物質を用いるか、直接製造して用いてよい。
【0115】
前記オレフィン系重合体を直接製造する場合、溶液重合、スラリー重合、気相重合及び高圧重合からなる群より選択される1種以上の重合法で製造することができる。
【0116】
一方、本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、滴下防止剤、難燃剤、抗菌剤、帯電防止剤、安定剤、離型剤、熱安定剤、紫外線安定剤、無機物添加剤、滑剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、染料及び無機充填剤からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含んでよい。
【0117】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、滑剤、酸化防止剤及び紫外線安定剤からなる群より選択される1種以上を含むのが好ましい。
【0118】
2.熱可塑性樹脂成形品
本発明の他の一実施形態による熱可塑性樹脂成形品は、本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物で製造され、熱変形温度が87℃以上であり、衝撃強度が6.5kg・cm/cm以上であってよく、熱変形温度が89℃以上であり、衝撃強度が6.7kg・cm/cm以上であることが好ましい。
【0119】
前述の条件を満たせば、外観特性、耐熱性及び耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂成形品を製造することができる。
【0120】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂成形品はシートであってよく、好ましくは家具用デコシートであってよい。
【0121】
以下、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるよう、本発明の実施例に対して詳しく説明する。しかし、本発明は幾多の異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施例に限定されない。
【実施例
【0122】
製造例1
<シードの製造>
窒素置換された反応器に、スチレン3重量部、アクリロニトリル3重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.1重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.03重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.02重量部、電解質としてKOH0.025重量部及び蒸留水53.32重量部を一括投入し、70℃まで昇温させた後、開始剤として過硫酸カリウム0.03重量部を一括投入して重合を開始した。その後、2時間の間重合した後、終了してシード(平均粒径:200nm)を収得した。
【0123】
前記シードの平均粒径は、Nicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて動的光散乱法で測定した。
【0124】
<コアの製造>
前記シードが収得された反応器にブチルアクリレート50重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.6重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.1重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.04重量部、蒸留水30重量部、及び開始剤として過硫酸カリウム0.05重量部を混合した混合物を70℃で4時間の間一定の速度で連続投入しながら重合し、投入を終了してから1時間の間さらに重合した後、終了してコア(平均粒径:400nm)を収得した。
【0125】
前記コアの平均粒径は、Nicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて動的光散乱法で測定した。
【0126】
<シェルの製造>
前記コアが収得された反応器に、α-メチルスチレン35重量部、アクリロニトリル9重量部、蒸留水39重量部を投入し、乳化剤としてロジン酸カリウム塩1.9重量部、及び開始剤としてt-ブチルペルオキシエチルヘキシルカーボネート0.19重量部を含む第1混合物と、活性化剤としてピロリン酸ナトリウム0.16重量部、デキストロース0.24重量部、硫酸第一鉄0.004重量部を含む第2混合物をそれぞれ75℃で3時間の間一定の速度で連続投入しながら重合した。連続投入が完了した後、75℃で1時間の間さらに反応させ、60℃まで冷却させて重合反応を終了し、シェルを含むグラフト共重合体ラテックス(平均粒径:500nm)を製造した。
【0127】
前記グラフト共重合体ラテックスの平均粒径は、Nicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて動的光散乱法で測定した。
【0128】
<グラフト共重合体粉末の製造>
前記グラフト共重合体ラテックスに塩化カルシウム水溶液(濃度:23重量%)0.8重量部を投入し、70℃で7分間常圧凝集した後、93℃で7分間熟成し、脱水及び洗浄した後、90℃の熱風で30分間乾燥してグラフト共重合体粉末を製造した。
【0129】
製造例2
<シードの製造>
窒素置換された反応器にブチルアクリレート6重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.5重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.03重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.02重量部、電解質としてKOH0.025重量部及び蒸留水53.32重量部を一括投入し、70℃まで昇温させた後、開始剤として過硫酸カリウム0.03重量部を一括投入して重合を開始した。その後、2時間の間重合した後、終了してシード(平均粒径:54nm)を収得した。
【0130】
前記シードの平均粒径は、Nicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて動的光散乱法で測定した。
【0131】
<コアの製造>
前記シードが収得された反応器にブチルアクリレート43重量部、乳化剤としてドデシル硫酸ナトリウム0.5重量部、架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート0.1重量部、グラフト剤としてアリルメタクリレート0.1重量部、蒸留水30重量部、及び開始剤として過硫酸カリウム0.05重量部を混合した混合物を70℃で2.5時間の間一定の速度で連続投入しながら重合し、投入が終了してから1時間の間さらに重合した後、終了してコア(平均粒径:101nm)を収得した。
【0132】
前記コアの平均粒径は、Nicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて動的光散乱法で測定した。
【0133】
<シェルの製造>
前記コアが収得された反応器に、スチレン36重量部、アクリロニトリル15重量部、蒸留水39重量部を投入し、乳化剤としてロジン酸カリウム塩1.5重量部、分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタン0.1重量部、及び開始剤としてt-ブチルペルオキシエチルヘキシルカーボネート0.04重量部を含む第1混合物と、活性化剤としてピロリン酸ナトリウム0.1重量部、デキストロース0.12重量部、硫酸第一鉄0.002重量部を含む第2混合物をそれぞれ75℃で2.5時間の間一定の速度で連続投入しながら重合した。連続投入が完了した後、75℃で1時間の間さらに反応させ、60℃まで冷却させて重合反応を終了し、シェルを含むグラフト共重合体ラテックス(平均粒径:130nm)を製造した。
【0134】
前記グラフト共重合体ラテックスの平均粒径は、Nicomp 380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて動的光散乱法で測定した。
【0135】
<グラフト共重合体粉末の製造>
製造例1と同一の方法でグラフト共重合体粉末を製造した。
【0136】
製造例3
125mlの高圧反応器を真空にした後、窒素を充填してから、トルエン30mlを投入した。その後、前記反応器を適正な恒温槽に入れ、塩化アルミニウム(III)31mmolを投入した後、メチルアクリレート31mmol(約2.67g)を投入し、反応温度が安定化されるまで30分間待った。その後、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル;Azobisisobutyronitrile)0.0031mmolをクロロベンゼン5mlに溶かして前記反応器に注入した。次いで、エチレンを35barで反応器に充填し、反応温度を70℃に昇温して20時間の間重合を実施した。重合反応が完了した後、反応温度を常温に下げ、非溶媒であるエタノールを投入して製造された共重合体を固体相に沈殿させた。この固体相を沈めて上澄液を除去し、再度エタノールを添加して固体相を洗浄した後、沈めて上澄液を除去し、残っている固体相に粒子を堅固にするために水を添加して撹拌した後、これを濾過して共重合体のみを回収した。このように得られた共重合体を60℃の真空オーブンで一日間乾燥した。
【0137】
一方、収得された共重合体の重量平均分子量は104,000g/molであり、メチルアクリレート単位24重量%、エチレン単位76重量%を含んだ。
【0138】
収得された共重合体の重量平均分子量は、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を介し標準PS(ポリスチレン標準;standard polystyrene)試料に対する相対値で測定した。
【0139】
実施例及び比較例
下記実施例及び比較例で用いられた成分の仕様は次のとおりである。
【0140】
(A-1)第1グラフト共重合体:前記製造例1で製造されたグラフト共重合体粉末を用いた。
(A-2)第2グラフト共重合体:前記製造例2で製造されたグラフト共重合体粉末を用いた。
【0141】
(B-1)第1スチレン系共重合体:LG化学社製の98UHM(α-メチルスチレン及びアクリロニトリルの共重合物、重量平均分子量:100,000g/mol)を用いた。
【0142】
重量平均分子量は、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を介し標準PS(ポリスチレン標準;standard polystyrene)試料に対する相対値で測定した。
【0143】
(B-2)第2スチレン系共重合体:LG化学社製の97HC(スチレン及びアクリロニトリルの共重合物、重量平均分子量:170,000g/mol)を用いた。
【0144】
重量平均分子量は、溶出液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography、waters breeze)を介し標準PS(ポリスチレン標準;standard polystyrene)試料に対する相対値で測定した。
【0145】
(C)オレフィン系共重合体:前記製造例3で製造された共重合体を用いた。
【0146】
前述の成分を下記[表1]に記載された含量通りに混合し、撹拌して熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0147】
実験例1
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物を230℃に設定された二軸混練押出機に投入し、ペレットを製造した。前記ペレットを下記に記載された方法で物性を評価し、下記[表1]に記載した。
【0148】
(1) 流動指数(g/10分):ASTM D1238に基づいて、220℃で測定した。
【0149】
実験例2
実験例1で製造したペレットを射出して試片を製造し、前記試片を下記に記載された方法で物性を評価し、その結果を下記[表1]に記載した。
【0150】
(2) 硬度:ASTM 785方法で測定した。
【0151】
(3) アイゾット衝撃強度(kg・cm/cm):ASTM 256に基づいて測定した。
【0152】
(4) 熱変形温度(heat deflection temperature、℃):ASTM D648に基づいて測定した。
【0153】
実験例3
実験例1で製造したペレットをフィルム押出器で0.3mmのフィルムを製造し、前記フィルムを下記に記載された方法で物性を評価し、その結果を下記[表1]に記載した。
【0154】
(5) フィルム外観:フィルムの押し跡及び突起を目視で評価した。
×:フィルム変形、○:良い、◎:非常に良い
【0155】
(6) 耐化学性:メチルエチルケトンを入れたビーカーにフィルムを2分間浸漬させた。フィルムが溶け始める時間に従って耐化学性を評価した。
×:20秒以下、○:40秒超過、100秒未満、◎:100秒以上
【0156】
【表1】
【0157】
表1を参照すれば、実施例1から実施例5は、流動指数、硬度、衝撃強度、フィルム外観特性及び耐化学性に優れ、熱変形温度も高いことを確認することができた。
【0158】
一方、第1スチレン系共重合体を含まない比較例1は、実施例に比べ流動指数、熱変形温度、衝撃強度が顕著に低下し、フィルム外観特性も優れていないことを確認することができた。
【0159】
第2スチレン系共重合体を含まない比較例2と第3共重合体を含まない比較例3は、流動指数と耐化学性が顕著に低下したことを確認することができた。
【0160】
第1グラフト共重合体を含まない比較例4は、衝撃強度が顕著に低下し、フィルム外観特性も優れていないことを確認することができた。
【0161】
第2グラフト共重合体を含まない比較例5は、耐化学性及びフィルム外観特性に優れていないことを確認することができた。
【0162】
このような結果から、本発明の構成要素を全て含んでこそ、加工性、硬度、耐衝撃性、耐熱性、耐化学性及び外観特性にいずれも優れた熱可塑性樹脂成形品を製造できるということを予測することができた。