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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】エンコーダおよびエンコーダの制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20220506BHJP
   G01D 5/244 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
G01D5/347 110M
G01D5/244 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018015709
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019132730
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 彰秀
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247879(JP,A)
【文献】特開2000-065604(JP,A)
【文献】特開2017-003430(JP,A)
【文献】米国特許第05302944(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01D 5/00- 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定方向に沿って並設される目盛を有するスケールと、前記スケールに沿って相対移動するとともに前記目盛を介した信号を測定方向に沿って並設される複数の検出素子にて検出する検出手段と、前記信号に基づき前記スケールと前記検出手段との相対移動量を算出する算出手段と、を備えるエンコーダであって、
前記検出手段は、
複数の前記検出素子を含むとともに測定方向に沿って並設される複数の検出群を備え、
前記複数の検出群は、測定方向に沿って並設される複数の検出部を備え、
前記複数の検出部は、
所定の前記検出素子を第1検出部とし、
前記第1検出部とは異なる他の前記検出素子を第2検出部とした場合に、
前記算出手段は、
前記第1検出部と前記第2検出部とのそれぞれから信号を検出する信号検出部と、
前記信号検出部にて検出された前記信号から相対移動量を算出するための90度の位相差を有する2相の測定信号を算出する測定信号算出部と、
前記測定信号算出部により算出された測定信号から前記スケールの異常を判定する異常判定信号を抽出する抽出部と、
前記異常判定信号から前記スケールに異常があるか否かを判定する異常判定部と、を備え、
前記複数の検出素子は、前記目盛に対応して並設され、
前記複数の検出群は、前記複数の検出部として第1検出部と第2検出部と第3検出部と第4検出部とを備え、
前記第1検出部は、複数の前記検出素子とし、
前記第2検出部は、前記第1検出部とは異なる他の複数の前記検出素子とするとともに前記第1検出部とは180度位相がずれた位置に配置される複数の前記検出素子とし、
前記第3検出部は、前記第2検出部とは異なる他の複数の前記検出素子とし、
前記第4検出部は、前記第3検出部とは異なる他の複数の前記検出素子とするとともに前記第3検出部とは180度位相がずれた位置に配置される複数の前記検出素子とした場合に、
前記信号検出部は、前記第1検出部と前記第2検出部と前記第3検出部と前記第4検出部とのそれぞれから信号を検出し、
前記測定信号算出部は、前記第1検出部からの信号および前記第2検出部からの信号に基づいて第1測定信号を算出するとともに、前記第3検出部からの信号および前記第4検出部からの信号に基づいて第2測定信号を算出し、
前記抽出部は、前記第1測定信号および前記第2測定信号から異常判定信号を抽出し、
前記異常判定部は、前記異常判定信号から前記スケールにおいて異常があるか否かを判定することを特徴とするエンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載されたエンコーダにおいて、
前記測定信号算出部は、前記第1検出部からの信号および前記第2検出部からの信号を差動演算して第1測定信号を算出するとともに、前記第3検出部からの信号および前記第4検出部からの信号を差動演算して第2測定信号を算出することを特徴とするエンコーダ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたエンコーダにおいて、
前記第3検出部は、
前記第1検出部と前記第2検出部とは異なる他の複数の前記検出素子とするとともに前記第1検出部とは90度位相がずれた位置に配置される複数の前記検出素子とし、
前記第4検出部は、
前記第1検出部と前記第2検出部と前記第3検出部とは異なる他の複数の前記検出素子とするとともに前記第2検出部とは90度位相がずれた位置に配置され、かつ、前記第3検出部とは180度位相がずれた位置に配置される複数の前記検出素子とすることを特徴とするエンコーダ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載されたエンコーダにおいて、
前記第1検出部および前記第2検出部は、同数の前記検出素子とし、
前記第3検出部および前記第4検出部は、同数の前記検出素子とすることを特徴とするエンコーダ。
【請求項5】
測定方向に沿って並設される目盛を有するスケールと、前記スケールに沿って相対移動するとともに前記目盛を介した信号を測定方向に沿って並設される複数の検出素子にて検出する検出手段と、前記信号に基づき前記スケールと前記検出手段との相対移動量を算出する算出手段と、を備えるエンコーダであって、
前記検出手段は、
複数の前記検出素子を含むとともに測定方向に沿って並設される複数の検出群を備え、
前記複数の検出群は、測定方向に沿って並設される複数の検出部を備え、
前記複数の検出部は、
所定の前記検出素子を第1検出部とし、
前記第1検出部とは異なる他の前記検出素子を第2検出部とした場合に、
前記算出手段は、
前記第1検出部と前記第2検出部とのそれぞれから信号を検出する信号検出部と、
前記信号検出部にて検出された前記信号から相対移動量を算出するための90度の位相差を有する2相の測定信号を算出する測定信号算出部と、
前記測定信号算出部により算出された測定信号から前記スケールの異常を判定する異常判定信号を抽出する抽出部と、
前記異常判定信号から前記スケールに異常があるか否かを判定する異常判定部と、を備え、
前記複数の検出素子は、前記目盛に対応して並設され、
前記複数の検出群は、前記複数の検出部として第1検出部と第2検出部と第3検出部とを備え、
前記第1検出部は、複数の前記検出素子とし、
前記第2検出部は、前記第1検出部とは異なる他の複数の前記検出素子とするとともに前記第1検出部とは120度位相がずれた位置に配置される複数の前記検出素子とし、
前記第3検出部は、前記第1検出部と前記第2検出部とは異なる他の複数の前記検出素子とするとともに前記第2検出部とは120度位相がずれた位置に配置される複数の前記検出素子とした場合に、
前記信号検出部は、前記第1検出部と前記第2検出部と前記第3検出部とのそれぞれから信号を検出し、
前記測定信号算出部は、前記第1検出部からの信号と、前記第2検出部からの信号と、前記第3検出部からの信号と、に基づいて第1測定信号および第2測定信号を算出し、
前記抽出部は、前記第1測定信号および前記第2測定信号から異常判定信号を抽出し、
前記異常判定部は、前記異常判定信号から前記スケールにおいて異常があるか否かを判定することを特徴とするエンコーダ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載されたエンコーダにおいて、
前記複数の検出部は、
それぞれ同数の前記検出素子とすることを特徴とするエンコーダ。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載されたエンコーダにおいて、
複数の前記検出群は、複数の前記検出素子の総数がそれぞれ異なることを特徴とするエンコーダ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載されたエンコーダにおいて、
前記検出手段は、測定方向に沿った長さがそれぞれ異なる複数の前記検出群の組み合わせにより構成され、
複数の前記検出群の測定方向に沿ったそれぞれの長さは、
1つの前記検出群による前記信号の検出感度が低下する大きさの汚染物質が前記スケールに付着したときに、少なくとも1つの他の前記検出群による前記信号の検出感度が低下しないように定められていることを特徴とするエンコーダ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載されたエンコーダにおいて、
前記スケールに光を照射する光源と、前記スケールを介した光を受光し信号を検出する検出手段と、を備える光学式エンコーダであることを特徴とするエンコーダ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれかに記載されたエンコーダの制御方法であって、
前記検出手段は、
複数の前記検出素子を含むとともに測定方向に沿って並設される複数の検出群を備え、
前記複数の検出群は、測定方向に沿って並設される複数の検出部を備え、
前記複数の検出部は、
所定の前記検出素子を第1検出部とし、
前記第1検出部とは異なる他の前記検出素子を第2検出部とした場合に、
前記算出手段は、
前記第1検出部と前記第2検出部とのそれぞれから信号を検出する信号検出工程と、
前記信号検出工程にて検出された前記信号を用いて測定信号を算出する測定信号算出工程と、
前記測定信号算出工程により算出された測定信号から前記スケールの異常を判定する異常判定信号を抽出する抽出工程と、
前記異常判定信号から前記スケールに異常があるか否かを判定する異常判定工程と、を備えることを特徴とするエンコーダの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダおよびエンコーダの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定方向に沿って目盛を有するスケールと、スケールに沿って相対移動するとともにスケールを介した信号を検出する検出手段と、信号に基づきスケールと検出手段との相対移動量を算出する算出手段と、を備えるエンコーダが知られている。
このようなエンコーダは、使用することにより使用環境中の塵や金属粉などの汚染物質がスケールに付着することがある。スケールに付着した汚染物質は、検出手段が検出する信号を劣化させ、測定精度を低下させる場合がある。このため、使用者は、定期的にエンコーダを備える測定器や工作機械などを停止して、スケールに付着した汚染物質の有無を確認しなければならない。スケールに付着した汚染物質の有無は、使用者が確認するまで把握することができず、確認のために手間がかかるという問題がある。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1に記載された光電式エンコーダ(エンコーダ)は、メインスケール(スケール)と、メインスケールに対して相対変位可能に対向配置されたインデックススケールと、メインスケールに対するインデックススケールの相対変位量に応じて位相の異なる複数の周期信号を出力するとともに、複数の周期信号のうち同相の複数の周期信号を出力する複数の受光素子(検出手段)と、複数の信号安定度判定手段と、信号合成回路と、を備える。
【0004】
複数の信号安定度判定手段は、複数の受光素子が出力する周期信号を入力して異常がないと判定された周期信号のみを出力する。信号合成回路は、複数の信号安定度判定手段により出力された周期信号を合成して1つの周期信号を生成する。光電式エンコーダは、複数の信号安定度判定手段によりメインスケールに汚染物質が付着していない(異常がない)と判定された周期信号のみを用いて、信号合成回路にて相対変位量(1つの周期信号)を生成する。
したがって、光電式エンコーダは、異常がない周期信号から相対移動量を得るため、測定精度の低下を抑制することができる。また、使用者は、複数の信号安定度判定手段により異常があると判定されたときだけメインスケールを確認すればよいため、確認のための手間を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-65803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された光電式エンコーダでは、複数の信号安定度判定手段は、汚染物質による光遮蔽から異常の有無を判定している。
ここで、エンコーダは、スケールの材質や製造工程に起因するスケールのうねり、スケールと検出手段とのアライメントのずれ、光源劣化による信号増加または信号低下(信号変動)、スケールが有する反射率のムラ等の誤差因子を有している。誤差因子による信号増加や信号低下といった信号変動は、スケールに付着した所定の大きさより小さな汚染物質による信号変動とほぼ同様の信号変動となる。また、エンコーダは、あらかじめこの誤差因子を打ち消すための補正手段を備えている。
【0007】
このため、スケールに付着した汚染物質が所定の大きさより小さい場合、誤差因子による信号変動と、汚染物質が付着したことによる信号変動と、を区別することができず、汚染物質が付着したことによる信号変動を誤差因子による信号変動として補正してしまうことがある。したがって、エンコーダは、スケールに汚染物質が付着したことによる異常を検出することができないことがあるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、エンコーダが有する誤差因子による信号変動とスケールに汚染物質が付着したことによる信号変動とを確実に区別し、スケールの異常を検出することができるエンコーダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のエンコーダは、測定方向に沿って並設される目盛を有するスケールと、スケールに沿って相対移動するとともに目盛を介した信号を測定方向に沿って並設される複数の検出素子にて検出する検出手段と、信号に基づきスケールと検出手段との相対移動量を算出する算出手段と、を備えるエンコーダであって、検出手段は、複数の検出素子を含むとともに測定方向に沿って並設される複数の検出群を備え、複数の検出群は、測定方向に沿って並設される複数の検出部を備え、複数の検出部は、所定の検出素子を第1検出部とし、第1検出部とは異なる他の検出素子を第2検出部とした場合に、算出手段は、第1検出部と第2検出部とのそれぞれから信号を検出する信号検出部と、信号検出部にて検出された信号を用いて測定信号を算出する測定信号算出部と、測定信号算出部により算出された測定信号からスケールの異常を判定する異常判定信号を抽出する抽出部と、異常判定信号からスケールに異常があるか否かを判定する異常判定部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
ここで、エンコーダに誤差因子がなく、スケールへの汚染物質の付着もない場合、異常判定信号は、一様な信号として検出される。また、エンコーダが誤差因子を有している場合、異常判定信号は、信号変動による変動成分を定常的に有した状態で検出される。これに対して、スケールに汚染物質が付着した場合、異常判定信号は、変動成分を一時的に有した状態で検出される。
このため、異常判定部は、異常判定信号において変動成分が定常的(エンコーダの誤差因子)か、一時的(スケールへの汚染物質の付着)か、を判定し、変動成分が一時的なものである場合、スケールに異常があると判定する。
また、複数の検出部は、測定方向に沿って並設される複数の検出素子のうち、異常判定信号の算出に用いる信号を検出する検出素子の位置および数を特定するものである。
【0011】
このため、本発明によれば、信号検出部は、第1検出部および第2検出部から少なくとも2相の信号を検出することができる。そして、信号検出部にて検出された第1検出部と第2検出部のそれぞれからの信号に基づき、測定信号算出部にて測定信号を算出する。抽出部は、測定信号からスケールの異常を判定する異常判定信号を抽出し、異常判定部は、異常判定信号から、スケールに異常があるか否か、すなわち、変動成分が定常的か一時的か、を判定し、変動成分が一時的なものである場合、スケールに異常があると判定する。
したがって、エンコーダは、エンコーダが有する誤差因子による信号変動とスケールに汚染物質が付着したことによる信号変動とを確実に区別し、スケールの異常を検出することができる。
【0012】
この際、複数の検出素子は、目盛に対応して並設され、複数の検出群は、複数の検出部として第1検出部と第2検出部と第3検出部と第4検出部とを備え、第1検出部は、複数の検出素子とし、第2検出部は、第1検出部とは異なる他の複数の検出素子とするとともに第1検出部とは180度位相がずれた位置に配置される複数の検出素子とし、第3検出部は、第2検出部とは異なる他の複数の検出素子とし、第4検出部は、第3検出部とは異なる他の複数の検出素子とするとともに第3検出部とは180度位相がずれた位置に配置される複数の検出素子とした場合に、信号検出部は、第1検出部と第2検出部と第3検出部と第4検出部とのそれぞれから信号を検出し、測定信号算出部は、第1検出部からの信号および第2検出部からの信号に基づいて第1測定信号を算出するとともに、第3検出部からの信号および第4検出部からの信号に基づいて第2測定信号を算出し、抽出部は、第1測定信号および第2測定信号から異常判定信号を抽出し、異常判定部は、異常判定信号からスケールにおいて異常があるか否かを判定することが好ましい。
【0013】
ここで、第1検出部から検出される信号をA相信号とし、第2検出部から検出され、A相信号とは180度位相がずれた信号をa相信号とし、第3検出部から検出される信号をB相信号とし、第4検出部から検出され、B相信号とは180度位相がずれた信号をb相信号とする。
【0014】
このような構成によれば、信号検出部は、複数の検出部から検出された信号に基づき、測定信号算出部は、第1検出部からの信号(A相信号)および第2検出部からの信号(a相信号)に基づいて第1測定信号を算出するとともに、第3検出部からの信号(B相信号)および第4検出部からの信号(b相信号)に基づいて第2測定信号を算出する。抽出部は、第1測定信号および第2測定信号から異常判定信号を抽出し、異常判定部は、異常判定信号からスケールにおいて異常があるか否かを判定することができる。このとき、2つの信号に基づいて算出された測定信号から抽出される異常判定信号は、2相の信号に基づく異常判定信号よりも高感度の異常判定信号である。したがって、エンコーダは、高感度の異常判定信号を用いることで、より確実に、エンコーダが有する誤差因子による信号変動とスケールに汚染物質が付着したことによる信号変動とを区別し、スケールの異常を検出することができる。
【0015】
この際、測定信号算出部は、第1検出部からの信号および第2検出部からの信号を差動演算して第1測定信号を算出するとともに、第3検出部からの信号および第4検出部からの信号を差動演算して第2測定信号を算出することが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、測定信号算出部は、第1検出部からの信号および第2検出部からの信号を差動演算して第1測定信号を算出し、第3検出部からの信号および第4検出部からの信号を差動演算して第2測定信号を算出することができる。このとき、差動演算により算出された測定信号から抽出される異常判定信号は、差動演算を用いずに算出された測定信号から抽出される異常判定信号よりも高感度の異常判定信号である。したがって、エンコーダは、高感度の異常判定信号を用いることで、より確実に、エンコーダが有する誤差因子による信号変動とスケールに汚染物質が付着したことによる信号変動とを区別し、スケールの異常を検出することができる。
【0017】
この際、複数の検出素子は、目盛に対応して並設され、複数の検出群は、複数の検出部として第1検出部と第2検出部と第3検出部とを備え、第1検出部は、複数の検出素子とし、第2検出部は、第1検出部とは異なる他の複数の検出素子とするとともに第1検出部とは120度位相がずれた位置に配置される複数の検出素子とし、第3検出部は、第1検出部と第2検出部とは異なる他の複数の検出素子とするとともに第2検出部とは120度位相がずれた位置に配置される複数の検出素子とした場合に、信号検出部は、第1検出部と第2検出部と第3検出部とのそれぞれから信号を検出し、測定信号算出部は、第1検出部からの信号と、第2検出部からの信号と、第3検出部からの信号と、に基づいて第1測定信号および第2測定信号を算出し、抽出部は、第1測定信号および第2測定信号から異常判定信号を抽出し、異常判定部は、異常判定信号からスケールにおいて異常があるか否かを判定することが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、信号検出部は、3相信号を検出することができる。そして、測定信号算出部は、3相信号から第1測定信号および第2測定信号を算出する。このとき、3相信号に基づき算出された測定信号から抽出される異常判定信号は、2相の信号に基づく異常判定信号よりも高感度の異常判定信号である。したがって、エンコーダは、高感度の異常判定信号を用いることで、より確実に、エンコーダが有する誤差因子による信号変動とスケールに汚染物質が付着したことによる信号変動とを区別し、スケールの異常を検出することができる。
【0019】
この際、第3検出部は、第1検出部と第2検出部とは異なる他の複数の検出素子とするとともに第1検出部とは90度位相がずれた位置に配置される複数の検出素子とし、第4検出部は、第1検出部と第2検出部と第3検出部とは異なる他の複数の検出素子とするとともに第2検出部とは90度位相がずれた位置に配置され、かつ、第3検出部とは180度位相がずれた位置に配置される複数の検出素子とすることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、第1検出部から第4検出部は、それぞれ90度ずつ位相がずれた位置に配置されることになる。そして、信号検出部は、4相信号を検出することができる。この際、4相信号に基づき差動演算により算出された異常判定信号は、2相の信号に基づく異常判定信号よりも高感度の異常判定信号である。したがって、エンコーダは、高感度の異常判定信号を用いることで、より確実に、エンコーダが有する誤差因子による信号変動とスケールに汚染物質が付着したことによる信号変動とを区別し、スケールの異常を検出することができる。
また、エンコーダは、例えば測定方向に沿って連続して設けられる複数の検出素子を第1検出部から第4検出部とすることができるため、異常判定信号の算出のために必要な信号を取得する検出手段について、容易に設計をすることができる。
【0021】
この際、第1検出部および第2検出部は、同数の検出素子とし、第3検出部および第4検出部は、同数の検出素子とすることが好ましい。
【0022】
このような構成によれば、信号検出部は、第1検出部および第2検出部から同じ強度の信号を検出することができ、第3検出部および第4検出部から同じ強度の信号を検出することができる。すなわち、A相信号およびa相信号と、B相信号およびb相信号と、をそれぞれ差動演算する際に、互いに同じ強度の信号同士を差動演算することができる。したがって、エンコーダは、第1検出部および第2検出部と、第3検出部および第4検出部と、がそれぞれ異なる数の検出素子とした場合よりも高感度の異常判定信号を用いることができるため、より確実に、エンコーダが有する誤差因子による信号変動とスケールに汚染物質が付着したことによる信号変動とを区別し、スケールの異常を検出することができる。
【0023】
この際、複数の検出部は、それぞれ同数の検出素子とすることが好ましい。
【0024】
このような構成によれば、複数の検出部は、それぞれ同数の検出素子とすることで、信号検出部は、それぞれの検出部から同じ強度の信号を検出することができる。すなわち、測定信号算出部は、例えばこれらの信号に対して差動演算をすることで、複数の検出部の検出素子の数がそれぞれ異なる場合に検出された信号と比較してノイズの少ない第1測定信号および第2測定信号を算出することができる。
したがって、エンコーダは、より高感度にて、エンコーダが有する誤差因子による信号変動とスケールに汚染物質が付着したことによる信号変動とを確実に区別し、スケールの異常を検出することができる。
【0025】
また、測定信号算出部は、例えば3相信号に基づき第1測定信号および第2測定信号を算出する場合、複数の検出部の検出素子の数がそれぞれ異なる場合に検出された信号と比較してノイズの少ない第1測定信号および第2測定信号を算出することができる。
したがって、エンコーダは、より高感度にて、エンコーダが有する誤差因子による信号変動とスケールに汚染物質が付着したことによる信号変動とを確実に区別し、スケールの異常を検出することができる。
また、複数の検出部は、それぞれ同数の検出素子とすることで、検出手段を容易に設計することができる。
【0026】
この際、複数の検出群は、複数の検出素子の総数がそれぞれ異なることが好ましい。
【0027】
ここで、ある検出群と同じ大きさ(ある検出群の測定方向に沿った長さと同じ長さ)の汚染物質がスケールに付着した場合、ある検出群における複数の検出部のそれぞれからは同様の信号が検出されるため、抽出部にて抽出される異常判定信号には変動成分は発生しない。このため、エンコーダは、汚染物質の有無(スケールの異常)を検出することができないことがあるという問題がある。
【0028】
しかしながら、このような本発明によれば、複数の検出群は、複数の検出素子の総数がそれぞれ異なることで、ある検出群では検出することができない大きさの汚染物質がスケールに付着したとしても、他の検出群にてその汚染物質を検出することができる。すなわち、複数の検出素子の総数がそれぞれの検出群にて異なることで、汚染物質を検出できる面積もそれぞれの検出群にて異なるため、エンコーダは、様々な大きさの汚染物質に対応することができる。したがって、エンコーダは、汚染物質がスケールに付着したか否かの判定および汚染物質の検出感度を向上させることができる。
【0029】
この際、複数の検出群は、測定方向に沿ったそれぞれの検出群の長さの基準をLとした場合に、複数の検出群における検出群の長さLは、それぞれ異なるとともに、1を含んで互いに公約数がなく、測定方向に沿った検出手段の長さ以上の公倍数とならない検出群の長さLの組み合わせにて配置されていることが好ましい。
【0030】
ここで、例えば、複数の検出群は、測定方向に沿ったそれぞれの検出群の長さの基準をLとした場合に、測定方向に沿った汚染物質の長さが検出群の長さ4Lと同じ長さであった場合、長さが2Lの検出群と長さが4Lの検出群は、汚染物質を検出することができず、検出感度のヌケが生じることがあるという問題がある。
【0031】
しかしながら、このような本発明によれば、複数の検出群は、測定方向に沿ったそれぞれの検出群の長さの基準をLとした場合に、複数の検出群における検出群の長さは、それぞれ異なるとともに、1を含んで互いに公約数がなく、測定方向に沿った検出手段の長さ以上の公倍数とならない検出群の長さLの組み合わせにて配置されていることで、汚染物質の長さにより検出感度のヌケが生じることを抑制することができる。
【0032】
この際、本発明のエンコーダは、スケールに光を照射する光源と、スケールを介した光を受光し信号を検出する検出手段と、を備える光学式エンコーダであることが好ましい。
【0033】
このような構成によれば、光学式エンコーダは、本発明のエンコーダを容易に実装することができる。
【0034】
本発明のエンコーダの制御方法は、測定方向に沿って並設される目盛を有するスケールと、スケールに沿って相対移動するとともに目盛を介した信号を測定方向に沿って並設される複数の検出素子にて検出する検出手段と、信号に基づきスケールと検出手段との相対移動量を算出する算出手段と、を備えるエンコーダの制御方法であって、検出手段は、複数の検出素子を含むとともに測定方向に沿って並設される複数の検出群を備え、複数の検出群は、測定方向に沿って並設される複数の検出部を備え、複数の検出部は、所定の検出素子を第1検出部とし、第1検出部とは異なる他の検出素子を第2検出部とした場合に、算出手段は、第1検出部と第2検出部とのそれぞれから信号を検出する信号検出工程と、信号検出部にて検出された信号を用いて測定信号を算出する測定信号算出工程と、測定信号算出部により算出された測定信号からスケールの異常を判定する異常判定信号を抽出する抽出工程と、異常判定信号からスケールに異常があるか否かを判定する異常判定工程と、を備えることを特徴とする。
【0035】
本発明によれば、エンコーダの制御方法は、信号検出工程にて検出された第1検出部と第2検出部のそれぞれからの信号に基づき、測定信号算出工程にて測定信号を算出する。そして、抽出工程は、測定信号からスケールの異常を判定する異常判定信号を抽出し、異常判定工程は、異常判定信号からスケールに異常があるか否か、すなわち、変動成分が定常的か一時的か、を判定し、変動成分が一時的なものである場合、スケールに異常があると判定する。
したがって、エンコーダの制御方法は、エンコーダが有する誤差因子による信号変動とスケールに汚染物質が付着したことによる信号変動とを確実に区別し、スケールの異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1実施形態に係るエンコーダを示す斜視図
図2】前記エンコーダにおける検出手段を示す図
図3】前記エンコーダにおける算出手段を示すブロック図
図4】前記エンコーダにおける異常検出方法を示すフローチャート
図5】前記エンコーダにおける算出手段により算出された信号を示す図
図6】第2実施形態に係るエンコーダにおける検出手段を示す図
図7】前記エンコーダにおける算出手段を示すブロック図
図8】第3実施形態に係るエンコーダにおける検出手段を示す図
図9】前記エンコーダにおける検出手段にて検出される信号を示す図
【発明を実施するための形態】
【0037】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図1から図5に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態に係るエンコーダを示す斜視図である。
エンコーダ1は、図1に示すように、長尺状のスケール2と、スケール2に光を照射する光源3と、スケール2に沿って相対移動するとともにスケール2を介した光を受光し信号を検出する検出手段4と、を備える光学式エンコーダである。
【0038】
スケール2は、測定方向に沿って並設される目盛である複数の回折格子21を有する。スケール2は、透光性のガラスにて形成される。なお、スケール2は、ガラスに限らず、任意の透光性の部材により形成されていてもよい。
光源3は、スケール2の一面に向かって平行光を照射する。光源3は、例えばLED(Light Emitting Diode)である。なお、光源3はLEDに限らず、任意の光源であってもよい。
【0039】
光源3がスケール2に照射した平行光は、複数の回折格子21により図示しない複数の回折光に回折される。複数の回折光は、干渉することにより、測定方向に沿って複数の回折格子21の配置ピッチに対応した周期で明暗を繰り返す干渉縞を生成する。なお、以下の説明において、「位相」とは、特に言及がない限り、複数の回折格子21によって生成される干渉縞の周期についての位相を意味するものとする。
また、以下の説明において、スケール2の長手方向であり測定方向をX方向として説明する場合がある。
【0040】
検出手段4は、測定方向(X方向)に沿って並設される複数の検出素子400を備える。複数の検出素子400は、スケール2における複数の回折格子21の配置ピッチに対応して、X方向に沿って配置ピッチPにて並設されている。複数の検出素子400には、PDA(Photo Diode Array)が用いられる。PDAは、複数の干渉縞を一度に測定することができる性質を持つ検出器である。なお、複数の検出素子400は、PDAに限らず、PSD(Position Sensitive Detector)やCCD(Charge-Coupled Device)等の任意の検出器を用いてもよい。
また、光源3と検出手段4とは、スケール2を挟んで互いに重なるように向かい合せて設置されている。検出手段4は、スケール2の複数の回折格子21を介した光源3からの光を受光し、光によって検出手段4(複数の検出素子400)上に生成された干渉縞から信号を検出する。
【0041】
図2は、前記エンコーダにおける検出手段を示す図である。
検出手段4は、図2に示すように、複数の検出素子400を含むとともにX方向に沿って並設される複数の検出群40を備える。検出手段4は、X方向に沿って複数の検出群40を周期的に配置している。
複数の検出群40は、X方向に沿って並設される複数の検出部41~44を備える。複数の検出群40は、複数の検出部41~44として、第1検出部41と第2検出部42と第3検出部43と第4検出部44とを備える。
【0042】
第1検出部41は、複数の検出素子400とし、第2検出部42は、第1検出部41とは異なる他の複数の検出素子400とするとともに第1検出部41とは180度位相がずれた位置に配置される複数の検出素子400としている。そして、第3検出部43は、第1検出部41と第2検出部42とは異なる他の複数の検出素子400とするとともに第1検出部41とは90度位相がずれた位置に配置される複数の検出素子400とし、第4検出部44は、第1検出部41と第2検出部42と第3検出部43とは異なる他の複数の検出素子400とするとともに第2検出部42とは90度位相がずれた位置に配置され、かつ、第3検出部43とは180度位相がずれた位置に配置される複数の検出素子400としている。
【0043】
複数の検出部41~44は、それぞれ同数の検出素子400とし、本実施形態では、複数の検出部41~44は、それぞれ4個ずつの検出素子400としている。
複数の検出部41~44は、検出手段4における検出群40において、X方向に沿って1/4ずつずれて配置されている。これにより、複数の検出部41~44からは、1/4周期ずつ位相がずれた信号が検出される。そして、第1検出部41からはA相信号が検出され、第2検出部42からはA相信号とは180度位相がずれたa相信号が検出され、第3検出部43からはA相信号とは90度位相がずれたB相信号が検出され、第4検出部44からはB相信号とは180度位相がずれたb相信号が検出される。
【0044】
検出手段4は、複数の検出群40のX方向に沿った長さの基準をLとし、複数の検出素子400の配置ピッチをPとしている。この際、複数の検出素子400の配置ピッチPは4μmに設計され、検出群40の長さLは200μmに設計されていることが好ましい。
【0045】
図3は、前記エンコーダにおける算出手段を示すブロック図である。
エンコーダ1は、図3に示すように、信号に基づきスケール2と検出手段4との相対移動量を算出する算出手段5と、異常報知部6と、をさらに備える。算出手段5は、信号検出部51と、測定信号算出部52と、抽出部53と、異常判定部54と、を備える。
【0046】
信号検出部51は、第1検出部41と第2検出部42と第3検出部43と第4検出部44のそれぞれから信号を検出する。具体的には、信号検出部51は、第1検出部41からA相信号を検出し、第2検出部42からa相信号を検出し、第3検出部43からB相信号を検出し、第4検出部44からb相信号を検出する。
【0047】
測定信号算出部52は、第1検出部41からの信号および第2検出部42からの信号を差動演算して第1測定信号を算出するとともに、第3検出部43からの信号および第4検出部44からの信号を差動演算して第2測定信号を算出する。
具体的には、測定信号算出部52は、A相信号とa相信号とを差動演算して相対移動量を算出するための第1測定信号を算出する。また、測定信号算出部52は、B相信号とb相信号とを差動演算して相対移動量を算出するための第2測定信号を算出する。
【0048】
抽出部53は、第1測定信号および第2測定信号から異常判定信号を抽出する。具体的には、抽出部53は、第1測定信号および第2測定信号に対してローパスフィルタを用いることで異常判定信号を抽出する。異常判定信号は、第1測定信号および第2測定信号よりも長い周期を有する。
【0049】
異常判定部54は、異常判定信号からスケール2において異常があるか否かを判定する。ここで、スケール2においての異常とは、スケール2に汚染物質が付着することである。すなわち、異常判定部54は、スケール2に汚染物質が付着しているか否かを判定する。
異常報知部6は、異常判定部54によりスケール2において異常があると判定された場合、使用者にスケール2の異常を報知する。異常報知部6は、例えばブザー等である。なお、異常報知部は、ブザーに限らず、ディスプレイに警告を表示したり、表示灯(LED)を点滅させる等、使用者に異常を報知することができれば、どのようなものであってもよい。
【0050】
図4は、前記エンコーダにおける異常検出方法を示すフローチャートであり、図5は、前記エンコーダにおける算出手段により算出された信号を示す図である。具体的には、図5(A)は、検出手段4を示す図であり、図5(B)は、第1検出部41~第4検出部44から検出される各信号であり、図5(C)は、第1測定信号および第2測定信号であり、図5(D)は、異常判定信号である。
以下、エンコーダ1の制御方法およびスケール2における異常検出方法について、図4,5を参照して説明する。
【0051】
図4に示すように、エンコーダ1は、先ず、スケール2の複数の回折格子21を介した第1検出部41と第2検出部42と第3検出部43と第4検出部44とのそれぞれからの信号を信号検出部51にて検出する信号検出工程を実行する(ステップST01)。
【0052】
図5(A),(B)に示すように、信号検出部51が信号検出工程を実行すると、複数の検出部41~44に対応して、図5(B)の信号が検出される。具体的には、(1)は第1検出部41からの信号S1であり、(2)は第3検出部43からの信号S2であり、(3)は第2検出部42からの信号S3であり、(4)は第4検出部44からの信号S4である。(1)~(4)において信号が減衰している部分Eは、スケール2に図示しない汚染物質が付着したことによるものである。
【0053】
次に、図4に示すように、測定信号算出部52は、第1検出部41からの信号(A相信号、図5(B)における信号S1)および第2検出部42からの信号(a相信号、図5(B)における信号S3)を差動演算して第1測定信号を算出するとともに、第3検出部43からの信号(B相信号、図5(B)における信号S2)および第4検出部44からの信号(b相信号、図5(B)における信号S4)を差動演算して第2測定信号を算出する測定信号算出工程を実行する(ステップST02)。
【0054】
図5(C)に示すように、(5)は第1測定信号S5であり、(6)は第2測定信号S6である。第1測定信号S5および第2測定信号S6は、測定信号としての振幅(細かい振幅)を有しているが、図5(B)の汚染物質が付着したことにより信号が減衰している部分Eに対応して、測定信号全体としても振幅(緩やかな振幅)を有している。
【0055】
続いて、図4に示すように、抽出部53は、第1測定信号S5および第2測定信号S6からローパスフィルタを用いて異常判定信号を抽出する抽出工程を実行する(ステップST03)。
図5(D)に示すように、(7)は第1測定信号S5から抽出された異常判定信号S7であり、(8)は第2測定信号S6から抽出された異常判定信号S8である。
【0056】
図4に示すように、異常判定信号S7,S8が抽出されると(ステップST03)、異常判定部54は、異常判定信号S7,S8からスケール2において異常があるか否かを判定する異常判定工程を実行する(ステップST04)。異常判定部54は、図5(D)に示すように、異常判定信号S7,S8に変動成分Nがあるか否かにより、異常を判定する。
【0057】
図4に示すように、異常判定部54がスケール2において異常があると判定した場合(ステップST04でYES)、異常報知部6は、スケール2に汚染物質が付着していることを使用者に報知する異常報知工程を実行する(ステップST05)。異常判定部54がスケール2において異常がないと判定した場合(ステップST04でNO)、異常判定部54は、スケール2において異常があると判定されるまで異常判定工程を実行する(ステップST04)。
【0058】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)エンコーダ1において、異常判定部54は、異常判定信号S7,S8からスケールに異常があるか否か、すなわち、変動成分Nが定常的か一時的か、を判定し、変動成分Nが一時的なものである場合、スケール2に異常があると判定する。
したがって、エンコーダ1は、エンコーダ1が有する誤差因子による信号変動とスケール2に汚染物質が付着したことによる信号変動とを確実に区別し、スケール2の異常を検出することができる。
【0059】
(2)差動演算により算出された測定信号S5,S6から抽出される異常判定信号S7,S8は、2相の信号に基づく異常判定信号よりも高感度の異常判定信号である。また、信号検出部51は、4相信号を検出することができる。このとき、4相信号に基づき差動演算により算出された測定信号S5,S6から抽出される異常判定信号S7,S8は、2相の信号に基づく異常判定信号よりも高感度の異常判定信号である。したがって、エンコーダ1は、高感度の異常判定信号S7,S8を用いることで、より確実に、エンコーダ1が有する誤差因子による信号変動とスケール2に汚染物質が付着したことによる信号変動とを区別し、スケール2の異常を検出することができる。
【0060】
(3)測定信号算出部52は、差動演算をすることにより、差動演算を用いずに算出された測定信号から抽出される異常判定信号よりも高感度の異常判定信号S7,S8を算出することができる。
(4)エンコーダ1は、X方向に沿って連続して設けられる複数の検出素子400を第1検出部41から第4検出部44とすることができるため、また、複数の検出部41~44は、それぞれ同数の検出素子400とすることで、異常判定信号S7,S8の算出のために必要な信号を取得する検出手段4について、容易に設計をすることができる。
【0061】
(5)測定信号算出部52は、A相信号およびa相信号と、B相信号およびb相信号と、をそれぞれ差動演算する際に、互いに同じ強度の信号同士を差動演算することができる。したがって、エンコーダ1は、第1検出部41および第2検出部42と、第3検出部43および第4検出部44と、がそれぞれ異なる数の検出素子400とした場合よりも高感度の異常判定信号S7,S8を用いることができるため、より確実に、エンコーダ1が有する誤差因子による信号変動とスケール2に汚染物質が付着したことによる信号変動とを区別し、スケール2の異常を検出することができる。
【0062】
(6)複数の検出部41~44は、それぞれ同数の検出素子400とすることで、信号検出部51は、それぞれの検出部41~44から同じ強度の信号S1~S4を検出することができる。すなわち、測定信号算出部52は、これらの信号S1~S4に対して差動演算をすることで、複数の検出部41~44の検出素子400の数が異なる場合に検出された信号と比較してノイズの少ない第1測定信号S5および第2測定信号S6を算出することができる。
したがって、エンコーダ1は、より高感度にて、エンコーダ1が有する誤差因子による信号変動とスケール2に汚染物質が付着したことによる信号変動とを区別し、スケール2の異常を検出することができる。
(7)エンコーダ1は、光学式エンコーダに容易に実装することができる。
【0063】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図6および図7に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0064】
図6は、第2実施形態に係るエンコーダにおける検出手段を示す図である。
前記第1実施形態のエンコーダ1における検出手段4の複数の検出群40は、図2に示すように、複数の検出部41~44を備え、複数の検出部41~44は、X方向に沿って1/4ずつずれて配置されていた。また、検出部41~44からは、1/4周期ずつ位相がずれた信号が検出されていた。
【0065】
本実施形態では、図6に示すように、エンコーダ1Aにおける検出手段4Aでは、複数の検出群40Aは、複数の検出部41A~43Aとして第1検出部41Aと第2検出部42Aと第3検出部43Aとを備え、第1検出部41Aは、複数の検出素子400とし、第2検出部42Aは、第1検出部41Aとは異なる他の複数の検出素子400とするとともに第1検出部41Aとは120度位相がずれた位置に配置される複数の検出素子400とし、第3検出部43Aは、第1検出部41Aと第2検出部42Aとは異なる他の複数の検出素子400とするとともに第2検出部42Aとは120度位相がずれた位置に配置される複数の検出素子400とする点で前記第1実施形態と異なる。
【0066】
複数の検出部41A~43Aは、それぞれ同数の検出素子400とし、本実施形態では、複数の検出部41A~43Aは、それぞれ4個ずつの検出素子400としている。
複数の検出部41A~43Aは、検出手段4Aにおける検出群40Aにおいて、X方向に沿って1/3ずつずれて配置されている。これにより、複数の検出部41A~43Aからは、1/3周期ずつ位相がずれた信号が検出される。そして、第1検出部41Aと第2検出部42Aと第3検出部43Aとからは、それぞれ120度ずつ位相がずれた信号が検出される。
【0067】
また、前記第1実施形態では、図3に示すように、算出手段5は、複数の検出部41~44のそれぞれから信号を検出する信号検出部51と、第1検出部41からの信号および第2検出部42からの信号を差動演算して第1測定信号を算出するとともに、第3検出部43からの信号および第4検出部44からの信号を差動演算して第2測定信号を算出する測定信号算出部52と、を備えていた。
【0068】
図7は、前記エンコーダにおける算出手段を示すブロック図である。
本実施形態では、算出手段5Aは、第1検出部41Aと第2検出部42Aと第3検出部43Aとのそれぞれから信号を検出する信号検出部51Aと、第1検出部41Aからの信号と、第2検出部42Aからの信号と、第3検出部43Aからの信号と、から第1測定信号および第2測定信号を算出する測定信号算出部52Aと、を備える点で前記第1実施形態と異なる。
具体的には、測定信号算出部52Aは、第1検出部41Aと第2検出部42Aと第3検出部43Aとのそれぞれから検出された3相信号を2相信号へと変換する。測定信号算出部52Aは、3相信号から2相信号に変換された信号から第1測定信号および第2測定信号を算出する。
【0069】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1),(4)~(7)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(8)信号検出部51Aは、3相信号を検出することができる。測定信号算出部52Aは、3相信号から第1測定信号および第2測定信号を算出する。このとき、3相信号に基づき算出された測定信号から抽出される異常判定信号は、2相の信号に基づく異常判定信号よりも高感度の異常判定信号である。したがって、エンコーダ1Aは、高感度の異常判定信号を用いることで、より確実に、エンコーダ1Aが有する誤差因子による信号変動とスケール2に汚染物質が付着したことによる信号変動とを区別し、スケール2の異常を検出することができる。
【0070】
(9)複数の検出部41A~43Aにおいてそれぞれ同数の検出素子400とすることで、測定信号算出部52Aは、3相信号に基づき第1測定信号および第2測定信号を算出する場合、複数の検出部41A~43Aの検出素子400の数が異なる場合に検出された信号と比較してノイズの少ない第1測定信号および第2測定信号を算出することができる。
したがって、エンコーダ1Aは、より高感度にて、エンコーダ1Aが有する誤差因子による信号変動とスケール2に汚染物質が付着したことによる信号変動とを確実に区別し、スケール2の異常を検出することができる。
【0071】
〔第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態を図8および図9に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0072】
図8は、第3実施形態に係るエンコーダにおける検出手段を示す図である。
前記第1実施形態のエンコーダ1における検出手段4では、図2に示すように、複数の検出部41~44はそれぞれ4個ずつの検出素子400であるとし、複数の検出群40のX方向に沿った長さの基準をLとし、X方向に沿って周期的に配置していた。
【0073】
本実施形態のエンコーダ1Bにおける検出手段4Bでは、図8に示すように、複数の検出群40Ba~40Bcは、第1検出群40Baと、第2検出群40Bbと、第3検出群40Bcと、を備え、複数の検出素子400の総数がそれぞれ異なる点で前記第1実施形態と異なる。また、複数の検出群40Ba~40Bcは、X方向に沿ったそれぞれの検出群40Ba~40Bcの長さの基準をLとした場合に、複数の検出群40Ba~40Bcにおける各検出群の長さLは、それぞれ異なるとともに、1を含んで互いに公約数がなく、X方向に沿った検出手段4Bの長さ以上の公倍数とならない検出群40Ba~40Bcの長さLの組み合わせにて配置されている点で前記第1実施形態と異なる。
【0074】
図9は、前記エンコーダにおける検出手段にて検出される信号を示す図である。
具体的には、例えばスケール2に第2検出群40Bbと同じ大きさの汚染物質Tが付着した場合(図8参照)、第1検出群40Baおよび第2検出群40Bbの各検出部41Ba~44Ba,41Bb~44Bbからの信号に基づく異常判定信号には、汚染物質Tによる変動成分は出現しない。図9(A)に示すように、例えば、汚染物質Tの大きさが2Lのとき、第1検出群40Baおよび第2検出群40Bbの信号変動はない(検出感度がない)状態となる。
【0075】
しかしながら、第3検出群40Bcは、第1検出群40Baおよび第2検出群40Bbとは異なる総数の複数の検出素子400を有し、第1検出群40Baおよび第2検出群40Bbより大きい検出面積を有しているため、汚染物質Tを検出することができる。したがって、X方向に沿って様々な長さLを有する複数の検出群40Ba~40Bcを設定することで、エンコーダ1Bは、さまざまな大きさの汚染物質に対応し、検出感度のヌケが生じることを防ぐことができる。
【0076】
また、それぞれの検出群40Ba~40Bcの長さの基準をLとした場合に、複数の検出群40Ba~40Bcにおける検出群の長さLは、1を含んで互いに公約数がなく、検出手段4の長さ以上の公倍数とならない検出群40Ba~40Bcの長さLの組み合わせであることが好ましい。例えば、図9(B)に示すように、Lについて、L、2.5L、3.3Lと設定し、1を含んで互いに公約数がないLの組み合わせ、すなわち、互いに素になる長さLの組み合わせにすることにより、複数の検出群40Ba~40Bcにて汚染物質が検出できないという検出感度のヌケが生じることを防ぐことができる。
【0077】
換言すれば、検出手段4Bの長さ以上の公倍数とならない検出群40Ba~40Bcの長さLの組み合わせとし、公倍数ができるだけ少なくなるような長さLの組み合わせとすることで、検出手段4Bは、検出感度をランダム化することができる。したがって、検出手段4Bは、小さな汚染物質や例えば前記第1実施形態における同じ長さLの複数の検出群40を備える検出手段4(図2参照)が検出できない汚染物質にも対応することができ、汚染物質の検出感度のヌケが生じることを防ぐことができる。よって、エンコーダ1Bは、測定精度の低下を抑制することができる。
【0078】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(7)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(10)複数の検出群40Ba~40Bcは、複数の検出素子400の総数がそれぞれ異なることで、汚染物質Tを検出できる面積も異なるため、エンコーダ1Bは、様々な大きさの汚染物質Tに対応することができる。したがって、エンコーダ1Bは、汚染物質Tがスケール2に付着したか否かの判定および汚染物質Tの検出感度を向上させることができる。
(11)複数の検出群40Ba~40Bcは、X方向に沿ったそれぞれの検出群40Ba~40Bcの長さの基準をLとした場合に、複数の検出群40Ba~40Bcにおける検出群の長さLは、それぞれ異なるとともに、1を含んで互いに公約数がなく、X方向に沿った検出手段4Bの長さ以上の公倍数とならない検出群の長さLの組み合わせにて配置されていることで、汚染物質Tの長さにより検出感度のヌケが生じることを抑制することができる。
【0079】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、エンコーダ1,1A~1Bは光学式エンコーダであり、リニアエンコーダである場合を説明したが、エンコーダはリニアエンコーダではなくロータリーエンコーダであってもよく、また、光学式エンコーダではなく電磁誘導式や静電容量式などの他の方式のエンコーダであってもよい。要するに、エンコーダは、検出器の形式や検出方式等は特に限定されるものではない。
【0080】
前記各実施形態では、抽出部53は、第1測定信号および第2測定信号に対してローパスフィルタを用いることで異常判定信号を抽出していたが、抽出部は、ローパスフィルタではなく、フーリエ変換を用いて算出されたスペクトルを異常判定信号として抽出してもよい。この際、異常判定部は、スペクトルの大きさから汚染物質を判定してもよい。要するに、抽出部は、異常判定信号を抽出することができれば、どのような手法を用いて異常判定信号を抽出してもよい。
【0081】
前記第各実施形態では、複数の検出部41~44,41A~43A,41B~44Bの検出素子400はそれぞれ同数(4個ずつ等)であったが、複数の検出部において検出素子は同数でなくてもよい。すなわち、第1検出部および第2検出部は、同数の検出素子400とし、第3検出部および第4検出部は、同数の検出素子400としてもよいし、複数の検出部においてそれぞれ異なる数の検出素子としてもよい。
要するに、信号検出部が信号を検出することができ、抽出部が異常判定信号を抽出することができれば、複数の検出部においてどのように検出素子の数を設定してもよい。
【0082】
前記第1実施形態では、第1検出部41の複数の検出素子400と第3検出部43の複数の検出素子400とは異なり、第2検出部42の複数の検出素子400と第4検出部44の複数の検出素子400とは異っていたが、第1検出部41と第3検出部43は、同一の検出素子400としてもよいし、第2検出部42と第4検出部44は、同一の検出素子400としてもよい。要するに、測定信号算出部において、ある信号と、180度位相がずれた信号とを差動演算することで測定信号を算出することができれば、複数の検出部は、同一の検出素子を複数の検出部としてもよい。
【0083】
前記第1実施形態では、測定信号算出部52は、複数の検出部41~44からの4相信号を差動演算することで第1測定信号および第2測定信号を算出し、前記第2実施形態では、測定信号算出部52Aは、複数の検出部41A~43Aからの3相信号を2相信号に変換し第1測定信号および第2測定信号を算出していたが、測定信号算出部は、差動演算や3相信号を2相信号に変換する方法を用いず、他の演算方法により、測定信号を算出してもよい。要するに、測定信号算出部は、信号検出部にて検出された信号を用いて測定信号を算出することができれば、どのような方法を用いて測定信号を算出してもよい。
【0084】
前記第3実施形態では、複数の検出群40Ba~40Bcは、第1検出群40Baと、第2検出群40Bbと、第3検出群40Bcと、を備えていたが、第1検出群と第2検出群だけを備えていてもよいし、第4検出群や第5検出群を備えていてもよい。要するに、複数の検出群は、複数の検出素子を含むとともに測定方向に沿って並設されていればよい。
また、前記第3実施形態では、図8に示すように、第1検出群40Baの長さをLとし、第2検出群40Bbの長さを2Lとし、第3検出群40Bcの長さを4Lとしていたが、例えば、第1検出群の長さを4Lとし、第2検出群の長さをLとし、第3検出群の長さを2Lとしてもよい。要するに、複数の検出群は、複数の検出素子の総数がそれぞれ異なり、互いに異なる長さであればよい。
【0085】
前記第1実施形態では、検出素子400は4μmに設計され、検出群Lは200μmに設計されていたが、検出素子および検出群は、任意の大きさに設計してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0086】
以上のように、本発明は、エンコーダおよびエンコーダの制御方法に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0087】
1,1A~1B エンコーダ
2 スケール
3 光源
4,4A~4B 検出手段
5,5A 算出手段
51,51A 信号検出部
52,52A 測定信号算出部
53 抽出部
54 異常判定部
40,40A~40B 検出群
41,41A~41B 第1検出部
42,42A~42B 第2検出部
43,43A~43B 第3検出部
44,44A~44B 第4検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9