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  • 特許-液体洗浄組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】液体洗浄組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/66 20060101AFI20220506BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C11D1/66
C11D3/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2016156811
(22)【出願日】2016-08-09
(65)【公開番号】P2018024753
(43)【公開日】2018-02-15
【審査請求日】2019-07-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野々村 祐輝
【合議体】
【審判長】亀ヶ谷 明久
【審判官】木村 敏康
【審判官】蔵野 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特公昭58-26399(JP,B2)
【文献】特開2006-169318(JP,A)
【文献】特開2004-182900(JP,A)
【文献】特表2013-520551(JP,A)
【文献】特開2003-52802(JP,A)
【文献】特開昭53-21205(JP,A)
【文献】特開2011-219645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性界面活性剤を25重量%以上及び塩酸を含有し、塩酸(塩化水素量で)1重量部に対して非イオン界面活性剤が2.5~6重量部であり、比重が1より大きく、25℃での粘度が1000~3000mPa・sである液体洗浄組成物(但し、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルを含有する液体洗浄組成物、エタノールを含有する液体洗浄組成物を除く)。
【請求項2】
硬質表面に適用される、請求項1に記載の液体洗浄組成物。
【請求項3】
トイレボウルの底部に適用される、請求項1または2に記載の液体洗浄組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体洗浄組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
便器、浴室、洗面等の硬質表面は、水、生体、洗剤等に由来する各種成分が付着しやすく、従って、頻繁に清掃を行う必要がある。しかし、これらの成分は、清掃を行っていても蓄積しやすく頑固な汚れになりやすい。従来、頑固な汚れに対しては、次亜塩素酸ナトリウムを主体とする洗浄剤や塩酸を主体とする洗浄剤等が知られている(特許文献1)。
【0003】
特に、便器や配管等の硬質表面に発生するスケール汚れや尿石汚れ等は非常に強固であり、また、不快であり、その除去には非常に手間を要する。このような汚れに対しては、例えば強酸を長時間作用させて除去する方法が知られているが、洗浄効果を高めるために、洗浄剤中の強酸の含有量を高めたり洗浄剤を多量に使用するなど、安全性やコストに問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-147000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、硬質表面のスケール汚れや尿石汚れ等の頑固な汚れであっても効果的に除去できる液体洗浄組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が前記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、非イオン性界面活性剤を25重量%以上及び塩酸を含有し、比重が1より大きく、25℃での粘度を170mPa・s以上とする液状の組成物によれば、硬質表面のスケール汚れや尿石汚れを効果的に除去できることを見出した。本発明は該知見に基づき更に検討を重ねた結果完成されたものであり、次に掲げるものである。
項1.非イオン性界面活性剤を25重量%以上及び塩酸を含有し、比重が1より大きく、25℃での粘度が170mPa・s以上である液体洗浄組成物。
項2.25℃での粘度が1000mPa・s以上である、項1に記載の液体洗浄組成物。
項3.非イオン性界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーからなる群より選択される少なくとも1種である、項1または2に記載の液体洗浄組成物。
項4.液体洗浄組成物中、塩酸が、塩化水素の含有量として5~10重量%である、項1~3のいずれかに記載の液体洗浄組成物。
項5.硬質表面に適用される、項1~4のいずれかに記載の液体洗浄組成物。
項6.トイレボウルの底部に適用される、項1~5のいずれかに記載の液体洗浄組成物。
項7.液体洗浄組成物をトイレボウルの底部に適用する工程を含む、トイレボウルの底部の洗浄方法、ここで該液体洗浄組成物は、非イオン性界面活性剤を25重量%以上及び塩酸を含有し、比重が1より大きく、25℃での粘度が170mPa・s以上である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、硬質表面のスケール汚れ等の頑固な汚れであっても効果的に洗浄できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は水中での液体洗浄組成物の拡散の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0010】
本発明は、非イオン性界面活性剤を25重量%以上及び塩酸を含有し、比重が1より大きく、25℃での粘度が170mPa・s以上である液体洗浄組成物を提供する。
【0011】
本発明において非イオン性界面活性剤は限定されない。本発明を制限するものではないが、非イオン性界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレイン酸ポリオキシエチレングリセリル、イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、アルキルグルコシド等が例示され、好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐デシルエーテル、ポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等が例示される。
【0012】
更に、本発明を制限するものではないが、非イオン界面活性剤として更に好ましくは、次の一般式(1)で表わされる非イオン界面活性剤が例示される。
-O-[(EO)a/(PO)b]-H (1)
[式中、Rは水素原子、炭素数8~14の直鎖状アルキル基または炭素数8~14の分岐状アルキル基、EOはオキシエチレン基、aはEOの平均付加モル数、POはオキシプロピレン基、bはPOの平均付加モル数を示す。式中、a≧5であり、b≧0であり、[(EO)a/(PO)b]はEOとPOのランダム付加またはブロック付加を示す。]
該一般式(1)において、Rとして好ましくは水素原子、炭素数10~12の直鎖状アルキル基または炭素数10~13の分岐状アルキル基が例示される。また、該一般式(1)において、aとして好ましくは5≦a≦30が例示される。また、該一般式(1)において、bとして好ましくは0≦b≦15が例示される。
【0013】
非イオン界面活性剤として特に好ましくは、前記一般式(1)の条件を満たし、且つ1%水溶液での曇点が50℃以上であり、HLB値が10~16が例示される。
【0014】
このような非イオン界面活性剤については、ノイゲン(登録商標)XL-80、ノイゲンXL-100、ノイゲンXL-140、ノイゲンLF-80X、ノイゲンLF-100X、ノイゲンCL-230、エパン(登録商標)450、エパン740、M-3699等(第一工業製薬株式会社製)、サンノニック(登録商標)FN-140、サンノニックDPE-514、ナロアクティー(登録商標)ID70(三洋化成工業株式会社製)等が市販されており、非イオン界面活性剤として市販品を用いてもよい。
【0015】
これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
本発明の液体洗浄組成物は、非イオン性界面活性剤を25重量%以上含有する。この限りにおいて制限されないが、非イオン性界面活性剤は、液体洗浄組成物中、好ましくは25~75重量%、より好ましくは25~60重量%、更に好ましくは25~50重量%が例示される。
【0017】
塩酸は従来公知である。
【0018】
本発明において塩酸の含有量は制限されないが、液体洗浄組成物中、好ましくは5~10重量%、より好ましくは7~9.5重量%が例示される。塩酸は塩化水素の水溶液ともいえ、ここで液体洗浄組成物中の塩酸の含有量は、塩化水素の含有量にて示す。
【0019】
非イオン性界面活性剤と塩酸の含有割合も、本発明の効果が得られる限り制限されないが、好ましくは塩酸(塩化水素量で)1重量部に対して、非イオン界面活性剤が2.5~7.5重量部、より好ましくは2.6~6重量部、更に好ましくは2.6~5重量部が例示される。
【0020】
本発明の液体洗浄組成物は、25℃における比重が1より大きい。この限りにおいて制限されないが、液体洗浄組成物の比重として好ましくは1より大きく1.25以下、より好ましくは1より大きく1.2以下、更に好ましくは1より大きく1.17以下が例示される。本発明において比重は、標準比重計(1-5659(小型)、日本計量器工業株式会社製)を用いて室温(25℃)で測定される。比重が1.00~1.06のときはNo.6を、1.06~1.12のときはNo.7を、1.12~1.18のときはNo.8を、1.18~1.24のときはNo.9を、1.24~1.28のときはNo.10の比重計をそれぞれ用いる。具体的には、容量が100mlのメスシリンダーに100mlの液体洗浄組成物を入れ、その液体洗浄組成物に比重計を浮かべ、比重計が安定して浮かんだ状態で、液面と比重計の黒線との交点の数値を読み取ることで比重を測定する。
【0021】
本発明の液体洗浄組成物は、25℃での粘度が170mPa・s以上である。この限りにおいて制限されないが、液体洗浄組成物の粘度として好ましくは170~3000mPa・s、より好ましくは1000~3000mPa・sが例示される。本発明において粘度は、1000mPa・s未満の範囲を測定する場合、B型粘度計(TV-10型、東機産業株式会社製)でSPINDLE No.M2のローターを用いて、25℃にて30rpmの回転速度で測定される。1000mPa・s以上~2500mPa・s未満の範囲を測定する場合、B型粘度計(TV-10型、東機産業株式会社製)でSPINDLE No.M2のローターを用いて、25℃にて12rpmの回転速度で測定される。2500mPa・s以上~10000mPa・s未満の範囲を測定する場合、SPINDLE No.M3のローターを用いて、25℃にて12rpmの回転速度で測定される。10000mPa・s以上~20000mPa・s未満の範囲を測定する場合、SPINDLE No.M4のローターを用いて、25℃にて12rpmの回転速度で測定される。本発明の液体洗浄組成物は粘度170mPa・s以上であれば制限されず、通常の温度変化や水との接触によってもゲル化をはじめ固化しないものである。粘度は、液体洗浄組成物の回転開始30秒後に測定する。
【0022】
本発明の液体洗浄組成物はこの限りにおいて制限されないが、液体洗浄組成物のpHは25℃で強酸性域にある。本発明を制限するものではないが、本発明の液体洗浄組成物として、本発明の液体洗浄組成物を、塩化水素1重量%となるように水と混合して得た溶液のpHが1程度以下となるものが例示される。pHは、室温(25℃)で、市販のスティック型pH試験紙(pH0~14)を用いて測定する。
【0023】
本発明の液体洗浄組成物は非イオン性界面活性剤及び塩酸以外に、必要に応じて他の成分を含んでいても良い。他の成分として、溶剤、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、酸化防止剤、酵素、殺菌剤、消臭剤、漂白剤、消泡剤、発泡剤、キレート剤、香料、着色剤、増粘剤、撥水剤、親水剤、充填剤、緩衝剤等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
例えば溶剤として、水、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明を制限するものではないが、溶剤を含有する場合、液体洗浄組成物中、好ましくは1~70重量%、より好ましくは20~57重量%が例示される。なお、ここで水の含有量は、前記塩酸中の水は含まない。
【0026】
陽イオン界面活性剤として、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム等の第4級アンモニウム塩界面活性剤;ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミドグルタミン酸塩、ラノリン脂肪酸ジエチルアミノエチルアミドグルタミン酸塩等のアミドアミン塩型カチオン性界面活性剤;ラウリン酸アミドグアニジン塩酸塩等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
本発明を制限するものではないが、陽イオン界面活性剤を含有する場合、液体洗浄組成物中、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.1~5重量%が例示される。
【0028】
陰イオン界面活性剤として、セッケン用素地、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ヤシカリセッケン等の脂肪酸塩;POEラウリルエーテルカルボン酸塩、POP・POEエーテルミリスチン酸塩等のアルキルエーテルカルボン酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等の高級アルキル硫酸エステル塩;POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリル硫酸ナトリウム等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイル-N-メチル-β-アラニンナトリウム、N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイルグルタミン酸ジナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸モノナトリウム、N-パルミトイルアスパラギン酸ジエタノールアミン等のN-アシルアミン酸塩;N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、POEラウリルアミドエーテルスルホン酸ナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;POEオレイルエーテルリン酸ナトリウム、POEステアリルエーテルリン酸、POEラウリルアミドエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、モノラウロイルモノエタノールアミドポリオキシエチレンスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルポリプロピレングリコールスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;リニアドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、リニアドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、リニアドデシルベンゼンスルホン酸等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、ロート油などの硫酸化油、α-オレフィンスルホン酸塩、高級脂肪酸エステルスルホン酸塩、二級アルコール硫酸エステル塩等の高級脂肪酸エステル硫酸エステル塩;ラウロイルモノエタノールアミドコハク酸ナトリウム、カゼインナトリウム等の高級脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩;アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、脂肪酸アミドエーテル硫酸エステル塩、アシルイセチオン酸塩、スルホコハク酸塩等の硫酸エステル塩型またはスルホン酸塩型界面活性剤;エーテルカルボン酸塩、脂肪酸アミドエーテルカルボン酸塩、N-アシルイミノジ酢酸、N-アシルアミノ酸塩等のカルボン酸型界面活性剤等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
本発明を制限するものではないが、陰イオン界面活性剤を含有する場合、液体洗浄組成物中、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.1~5重量%が例示される。
【0030】
両性界面活性剤として、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等のベタイン型両性界面活性剤;β-ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤、デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド型等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本発明を制限するものではないが、両性界面活性剤を含有する場合、液体洗浄組成物中、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.1~5重量%が例示される。
【0032】
本発明の液体洗浄組成物は、非イオン性界面活性剤及び塩酸ならびに必要に応じて前述の任意の成分を混合することにより製造できる。
【0033】
本発明の液体洗浄組成物は、洗浄対象となる硬質表面に適用することにより使用される。硬質表面としてはプラスチック、ステンレス、陶磁器、ホーロー、石、金属、ガラス、木等の各種の硬質の表面が例示され、平面、立体、凹凸の有無等の形状は問わない。便器(トイレボウル)、配管、浴室、洗面所や台所のシンク、床、壁等の各種表面が例示され、洗浄できる限り制限されない。
【0034】
このことから、本発明の液体洗浄組成物は、トイレ用洗浄剤、配管用洗浄剤、浴室用洗浄剤、洗面所まわり用洗浄剤、台所まわり用洗浄剤、床用洗浄剤、壁用洗浄剤等として利用できる。本発明によれば頑固な汚れを効率良く除去できることから、汚れが溜まりやすい水回り用洗浄剤、例えば便器用洗浄剤、配管用洗浄剤、浴室用洗浄剤、洗面所まわり用洗浄剤、台所まわり用洗浄剤等として、特に便器内側(トイレボウルの底部等)、排管(配管の底部等)、シンク(洗面ボウルの底部等)、浴室の床等に対しても効果的に使用できる。
【0035】
本発明の液体洗浄組成物は、このように硬質表面に適用でき、従って、硬質表面の汚れを効果的に除去できる。また、本発明の液体洗浄組成物は、例えば便器や配管等の底部といったスケール汚れや尿石汚れ等が溜まりやすい底部に密着しやすく、従って、底部付近といった汚れが溜まりやすい部分の汚れを簡便且つより効果的に除去できる。また、このような底部付近は水溜まり部であることが多いが、水共存下であっても、特に水中で使用しても、本発明の液体洗浄組成物は該底部付近に留まりやすく拡散し難い。従って、本発明によれば、このような汚れが溜まりやすい部分の汚れに対して塩酸を効率良く接触、作用させることができ、効率良く洗浄できる。
【0036】
このことから、本発明は、前記液体洗浄組成物を硬質表面に適用する工程を含む、硬質表面の洗浄方法を提供するものでもある。硬質表面も前述と同様に説明でき、便器内側(特にトイレボウルの底部等)、排管(特に配管の底部等)、シンク(特に洗面ボウルや台所ボウルの底部等)等が硬質表面として好ましく例示される。
【実施例
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
試験例1
1.液体洗浄組成物の調製
次の表1に示す組成に従い各成分を混合して、洗浄組成物を作成した(実施例1~3及び比較例1~3)。
【0038】
【表1】
【0039】
2.粘度及び比重の測定
得られた各洗浄組成物について、粘度及び比重を測定した。
【0040】
各洗浄組成物の粘度は、1000mPa・s未満の範囲を測定する場合、B型粘度計(TV-10型、東機産業株式会社製)でSPINDLE No.M2のローターを用いて、25℃にて30rpmの回転速度で測定した。1000mPa・s以上~2500mPa・s未満の範囲を測定する場合、B型粘度計(TV-10型、東機産業株式会社製)でSPINDLE No.M2のローターを用いて、25℃にて12rpmの回転速度で測定した。粘度は、液体洗浄組成物の回転開始30秒後に測定した。
【0041】
比重は、標準比重計(1-5659(小型)、日本計量器工業株式会社製)を用いて室温(25℃)で測定した。比重が1.00~1.06のときはNo.6を、1.06~1.12のときはNo.7を、1.12~1.18のときはNo.8を、1.18~1.24のときはNo.9を、1.24~1.28のときはNo.10の比重計をそれぞれ用いた。具体的には、容量が100mlのメスシリンダーに100mlの各洗浄組成物を入れ、その洗浄組成物に比重計を浮かべ、比重計が安定して浮かんだ状態で、液面と比重計の黒線との交点の数値を読み取ることで比重を測定した。
3.拡散の評価手順
ビーカー(2000ml容量)に水2000ml(常温)を入れ、次いで、得られた各洗浄組成物200mlを注ぎ、得られた溶液のpHを、注いだ直後、注いでから1時間後に測定した。この際、水面付近(水面から4.5~5cm)における溶液のpHを測定した。pHは、室内(25℃)でスティック型pH試験紙(pH0~14)(商品名スティック・pH試験紙 0-14(pH-Fix 0-14) MN(MACHERRY-NAGEL)社製)を用いて測定した。なお、水2000mlのみを入れたビーカーにおいて、水面から4.5~5cmでのpHは7であった。
【0042】
このようにしてpHを測定することにより、各洗浄組成物の水中での拡散の程度を評価した。各洗浄組成物のpHは強酸性域であることから、洗浄組成物が水中で拡散しにくいほど水面付近のpHは7に近いままであり、洗浄組成物が水中で拡散しやすいほど水面付近のpHは速やかに低くなる。測定したpHに基づいて、pH7を◎、pH6以上~7未満を○、pH6未満を×とした。
【0043】
ビーカー内で洗浄組成物が拡散しにくいほど、便器や配管の底部付近といったスケール汚れや尿石汚れ等が溜まりやすい部位に洗浄組成物がとどまりやすくなり、頑固な汚れにも密着しやすく、より効果的な洗浄が可能になるといえる。pHの変化を表1に示す。また、理解を容易にするために、実施例3ならびに比較例1及び3について、ビーカーにおける洗浄組成物の拡散の様子を図1に示す。
4.結果
表1から明らかなように、実施例1~3の洗浄組成物では、水を入れたビーカーに注いだ直後のpHが7であり、1時間後のpHも6以上を維持した。これにより、実施例1~3の洗浄組成物は、水中での拡散が十分に抑制されていることが確認された。
【0044】
これに対して、比較例1の洗浄組成物では、水を入れたビーカーに注いだ直後であってもpHが1まで低下した。また、比較例2及び3の洗浄組成物では、水を入れたビーカーに注いだ直後はpH7または6.5であったが、1時間後にはpH4まで低下した。これにより、比較例1~3の洗浄組成物は水中で速やかに拡散することが確認された。比較例として示す洗浄組成物が水中で速やかに拡散していることは、図1からも明らかである。
【0045】
これらのことから、比較例1~3の洗浄組成物は、水中で速やかに拡散し、底部付近の洗浄効果に劣るのに対して、実施例1~3の洗浄組成物は、水中での拡散が抑制されており、汚れ等が溜まりやすい底部付近等の所望の部位に対しても有用な洗浄組成物であることが確認された、
試験例2
1.各洗浄組成物の調製、粘度等の測定及び評価手順
次の表2に示す組成に従い、各成分を混合し、洗浄組成物を作成した。
【0046】
【表2】
【0047】
得られた各洗浄組成物について、試験例1と同様にして粘度、比重及び水中での拡散の程度を測定、評価した。なお、粘度2500mPa・s以上~10000mPa・s未満の範囲の測定は、前記B型粘度計にてSPINDLE No.M3のローターを用いて、25℃、12rpmの回転速度で、各洗浄組成物の回転開始30秒後に行った。
2.保存試験
また、本試験例では、前述のようにして得た各洗浄組成物を50℃で1週間保存し、各洗浄組成物の粘度、比重及び水中での拡散の程度を測定、評価した。「50℃で1週間保存」は、室温(25℃)で約3ヶ月保存した場合に相当する。
3.結果
表2から明らかなように、実施例4~15の洗浄組成物では、水を入れたビーカーに注いだ1時間後であってもpHも6以上を維持した。これにより、実施例4~15の洗浄組成物は、水中での拡散が十分に抑制されていることが確認された。また、実施例4~15の洗浄組成物では、保存試験を行った場合であっても粘度及び比重に大きな変化は認められず、また、水中での拡散の程度についても、保存前の挙動と同様に、水を入れたビーカーに注いだ1時間後であってもpHも6以上を維持した。
【0048】
これに対して、比較例4~6の洗浄組成物では、そもそもゲル化等の固化が認められ、所望の液体洗浄組成物は得られなかった。洗浄組成物は、安全且つ簡便に使用する観点から好ましくは洗浄後に水で流して使用されるため、このような固形の組成物によれば各種配管等を詰まらせる不具合が生じやすくなるため、洗浄組成物として好ましくない。
【0049】
また、比較例7の洗浄組成物では、調製直後においては水中での拡散が抑制されていたが、保存試験を行うことにより粘度が著しく低下し、また、水中での速やかな拡散が認められた。比較例7の調製直後の粘度及び比重は、実施例13の調製直後の粘度及び比重と似ているが、前述の通り、保存試験により、比較例7においてその品質が著しく低下した。また、比較例7の調製直後の粘度は実施例9、14及び15よりも高い値であるが、前述の通り、保存試験により、比較例7において粘度が著しく低下し、品質が著しく低下した。比較例7と、実施例13や9等との主な相違は、比較例7が陰イオン界面活性剤のみを使用しているのに対して、実施例13及び9が非イオン界面活性剤を使用している点にあるといえる。このことから、陰イオン界面活性剤では所望の液体洗浄組成物が得られないことが確認された。
【0050】
比較例8~11では水中での速やかな拡散が認められ、底部付近の洗浄効果に劣ることが確認された。
【0051】
これらのことから、非イオン性界面活性剤を25重量%以上及び塩酸を含有し、比重が1より大きく、25℃での粘度が170mPa・s以上である液体洗浄組成物によれば、水中での拡散が十分に抑制され、汚れに対して、特に底部付近等に発生しやすい頑固な汚れに対しても効果的に強酸を作用させることができることが確認された。また、該液体洗浄組成物によれば、50℃で1週間保存した場合であっても、比重が1より大きく、25℃での粘度が170mPa・s以上であり、水中での拡散が十分に抑制されていることが確認された。このような液体洗浄組成物は水中で洗浄効果を発揮できるだけでなく、特に底部付近に滞留して拡散しにくいことから、底部付近のスケール汚れや尿石汚れを効果的に除去できることが確認された。また、該液体洗浄組成物によれば、調製直後はもちろん保存後であっても、汚れ等が溜まりやすい底部付近等に対して一層効果的な洗浄作用を発揮できることが確認された。
処方例
以下、処方例を記載するが、本発明はこれに限定されるものではない。処方例においても水中での拡散が十分に抑制される。なお、処方例において粘度及び比重は、50℃で1週間保存した後の値である。
【0052】
【表3】
図1