(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】ナットウキナーゼを含む食品
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20220506BHJP
A23L 33/195 20160101ALI20220506BHJP
A23L 29/281 20160101ALI20220506BHJP
【FI】
A23L5/00 K
A23L33/195
A23L29/281
(21)【出願番号】P 2018122373
(22)【出願日】2018-06-27
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】岡 幸歩
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-13976(JP,A)
【文献】J. Agric. Food Chem.,2010年,vol.58, no.9,pp.5737-5742
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
A23L 33/195
A23L 29/281
A61K 38/46
A61K 9/48
FSTA/CAplus/AGRICOLA/BIOSIS/
MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチン、並びに(C)銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、食品。
【請求項2】
前記(C)成分が、グルコン酸銅及び/又はピロリン酸第二鉄である、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
前記(B)成分で形成されたカプセル皮膜を含むカプセル剤である、請求項1又は2に記載の食品。
【請求項4】
ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンと共に、(C)銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合する、ゼラチンの分解抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナットウキナーゼ及びゼラチンを含みながらも、保存によるゼラチンの分解を抑制できる食品に関する。
【背景技術】
【0002】
血栓症は、血管内に血栓が形成され、循環系における血流が閉塞する病態であり、脳梗塞、心筋梗塞、肺梗塞等の重篤な疾患を発症させる要因になっていることが知られている。従来、血栓症の予防又は治療には、抗血小板剤、抗血液凝固剤、血栓溶解剤等の薬剤の投与によって、血栓の形成を妨げたり、血栓を溶解させたりする方法が用いられている。しかしながら、このような薬剤は、副作用を伴ったり、医師の管理下での服用が必要であったりするため、簡易且つ日常的に摂取できるものではない。
【0003】
一方、日本の伝統食品の1つである納豆は、血栓溶解活性を有するナットウキナーゼが含まれていることが報告されて以来、納豆の健康食品としての価値が見直されている。しかしながら、納豆は、独特の臭いや粘りがあり、納豆を食さない人も多く存在しているのが実情である。そこで、従来、ナットウキナーゼを容易に摂取できるようにするために、ナットウキナーゼをカプセル剤や錠剤等の食品に製剤化したものが開発されている。このようなナットウキナーゼを含む食品は、医師の管理下での服用を必要とせず、簡易且つ日常的に摂取できるので、セルフメディケーションの上でも有益である。
【0004】
また、ナットウキナーゼを含む食品は、摂取容易性等のために、ゼラチン皮膜で被覆された錠剤やカプセルの形態が多く用いられる(例えば、特許文献1等参照)。ナットウキナーゼを含む食品にゲル化剤としてゼラチンを配合してゲル状にしたり、ナットウキナーゼを含む液状食品に増粘剤としてゼラチンを配合して粘性を付与したりすることがある。
【0005】
一方、ナットウキナーゼにはタンパク質分解作用があるので、ナットウキナーゼとゼラチンを含む食品では、保存によってゼラチンがナットウキナーゼによって分解されるという欠点がある。例えば、ゼラチン皮膜で被覆された錠剤やカプセルの場合であれば、このようなゼラチンの分解は、ゼラチン皮膜の割れや内容物の漏れ等を生じさせ、商品価値を著しく低下させてしまう。しかしながら、従来、ナットウキナーゼとゼラチンを含む食品において、保存によるゼラチンの分解を抑制する技術については十分に検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ナットウキナーゼ及びゼラチンを含みながらも、保存によるゼラチンの分解を抑制できる食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品において、銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合することによって、ゼラチンの分解を抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチン、並びに(C)銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、食品。
項2. 前記(C)成分が、グルコン酸銅及び/又はピロリン酸第二鉄である、項1に記載の食品。
項3. 前記(B)成分で形成されたカプセル皮膜を含むカプセル剤である、項1又は2に記載の食品。
項4. ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、
食品に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンと共に、(C)銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合する、ゼラチンの分解抑制方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の食品によれば、ナットウキナーゼ及びゼラチンを含んでいても、ゼラチンの分解を抑制できるので、食品中でゼラチンが担っている機能を安定に維持させることができる。また、本発明の食品が、ゼラチンをカプセル皮膜やコーティング皮膜として含むカプセル剤や錠剤の場合には、開封後に吸湿した状態で保存されても、ゼラチン皮膜の形状を安定に保持し、保存によってゼラチン皮膜の割れや内容物の漏れが生じるのを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.食品
本発明の食品は、(A)ナットウキナーゼ、(B)ゼラチン、並びに(C)銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする。以下、本発明の食品について詳述する。
【0012】
[(A)ナットウキナーゼ]
本発明の食品は、ナットウキナーゼ((A)成分と表記することもある)を含む。ナットウキナーゼとは、納豆菌が産生するフィブリン分解作用を有する酵素である。
【0013】
本発明で使用されるナットウキナーゼは、公知の製造方法で得ることができる。ナットウキナーゼの具体的な製造方法としては、納豆菌を培養する方法、ナットウキナーゼをコードする遺伝子を組み込んだ形質転換体から得る方法、化学合成によって合成する方法等が挙げられる。本発明で使用されるナットウキナーゼは、いずれの製造方法で得られたものであってもよいが、製造コストの低減等の観点から、納豆菌を培養する方法で得られたものが好ましい。
【0014】
また、本発明で使用されるナットウキナーゼは、精製品であってもよいが、食品に配合可能であることを限度として、精製されていない状態であってもよい。例えば、納豆菌を培養することにより得られたナットウキナーゼを使用する場合であれば、納豆菌の培養物の抽出物であってもよい。更には、納豆菌の培養物を、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー等に供してナットウキナーゼを精製したものであってもよく、また、納豆菌の培養物を必要に応じて固液分離等の粗精製処理に供した後に、水分の除去又は乾燥させたもの等であってもよい。
【0015】
また、ナットウキナーゼは、賦形剤等を添加した粉末品、粗精製品、精製品等として市販されており、本発明では、ナットウキナーゼとして、これらの市販品を使用することもできる。
【0016】
本発明の食品において、(A)成分の含有量については、食品の形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、100FU/g以上、好ましくは200~10500FU/g、更に好ましくは300~5000FU/gが挙げられる。
【0017】
なお、本発明において、ナットウキナーゼの活性を示す「FU」は、公益財団法人日本健康・栄養食品協会が2003年1月15日に公示したナットウ菌培養エキス食品の規格基準に従うフィブリン分解活性単位である。
【0018】
[(B)ゼラチン]
本発明の食品は、ゼラチン((B)成分と表記することもある)を含む。ゼラチンとは、動物の皮、骨、腱等の主成分であるコラーゲンに熱を加え、抽出したものである。
本発明において、ゼラチンは、公知の製造方法で得られたものを使用でき、例えば、牛、豚、鶏、魚等の皮、骨、腱等を原料とし、酸又はアルカリで処理して得られる粗コラーゲンを加熱抽出して製造されたものを使用することができる。また、本発明で使用されるゼラチンは、加水分解物、酸素分解物、ゼラチン誘導体(例えば、アシル化ゼラチン等)等であってもよい。
【0019】
本発明の食品において、ゼラチンは、食品の形態に応じた様々な目的・態様で含むことができる。具体的には、本発明の食品において、ゼラチンは、カプセル剤であればカプセル皮膜、コーティング製剤の場合であればコーティング皮膜、ゲル状食品であればゲル化剤、液状食品の場合であれば増粘剤等の態様で含むことができる。
【0020】
本発明の食品において、(B)成分の含有量については、ゼラチンの使用目的、食品の形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、3~80重量%、好ましくは5~50重量%、更に好ましくは10~40重量%が挙げられる。
【0021】
また、本発明の食品において、(A)成分と(B)成分の比率については、前述する各含有量に応じた範囲内であればよいが、例えば、(B)成分1gに対して、(A)成分が100~50000FU、好ましくは3000~30000FUが挙げられる。
【0022】
[(C)鉄及び/又は銅の塩]
本発明の食品は、銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩よりなる群から選択される少なくとも1種((C)成分と表記することもある)を含む。このように特定の銅及び/又は鉄の塩を含むことにより、ナットウキナーゼによるゼラチンの分解を抑制することが可能になる。
【0023】
銅の有機塩を構成する銅は、第一銅又は第二銅のいずれであってもよく、鉄の銅機塩の種類に応じて適した価数であればよい。銅の有機塩の種類については、食品に配合可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、グルコン酸銅、クエン酸銅、ギ酸銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、酪酸銅、乳酸銅、シュウ酸銅、フィチン酸銅、酒石酸銅、リンゴ酸銅、コハク酸銅、マロン酸銅、マレイン酸銅、フマル酸銅、安息香酸銅、サリチル酸銅、アスパラギン酸銅、グルタミン酸銅、グリセロリン酸銅、銅クロロフィル、銅クロロフィリン、銅クロロフィリンナトリウム、ラウロイルサルコシン酸銅等が挙げられる。これらの銅の有機塩は、水和物の形態であってもよい。これらの銅の有機塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
銅の有機塩の中でも、ゼラチンの分解をより一層効果的に抑制させるという観点から、好ましくはグルコン酸銅が挙げられる。
【0025】
銅の無機塩を構成する銅は、第一銅又は第二銅のいずれであってもよく、銅の無機塩の種類に応じて適した価数であればよい。銅の無機塩の種類については、食品に配合可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、塩化銅、フッ化銅、硫酸銅、酸化銅、フルオロケイ酸銅、硝酸銅、リン酸銅、硫化銅、フルオロホウ酸銅、ヨウ素酸銅、硫酸アンモニウム銅、塩化アンモニウム銅、ピロリン酸銅等が挙げられる。これらの銅の無機塩は、水和物の形態であってもよい。これらの銅の無機塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
鉄の有機塩を構成する鉄は、第一鉄又は第二鉄のいずれであってもよく、鉄の有機塩の種類に応じて適した価数であればよい。鉄の有機塩の種類については、食品に配合可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、グルコン酸鉄、クエン酸鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエン酸鉄アンモニウム、乳酸鉄、ギ酸鉄、酢酸鉄、プロピオン酸鉄、酪酸鉄、乳酸鉄、シュウ酸鉄、酒石酸鉄、リンゴ酸鉄、コハク酸鉄、マロン酸鉄、マレイン酸鉄、フマル酸鉄、安息香酸鉄、サリチル酸鉄、アスパラギン酸鉄、グルタミン酸鉄、グリセロリン酸鉄、鉄クロロフィリン、鉄クロロフィリンナトリウム、ヘム鉄、フェリチン鉄、ラクトフェリン鉄、デキストラン鉄、トリエチレンテトラアミン鉄等が挙げられる。これらの鉄の有機塩は、水和物の形態であってもよい。これらの鉄の無機塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
鉄の無機塩を構成する鉄は、第一鉄又は第二鉄のいずれであってもよく、鉄の無機塩の種類に応じて適した価数であればよい。鉄の無機塩の種類については、食品に配合可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ピロリン酸鉄、塩化鉄、フッ化鉄、硫酸鉄、酸化鉄、フルオロケイ酸鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、流化鉄、フルオロホウ酸鉄、ヨウ素酸鉄、硫酸アンモニウム鉄、塩化アンモニウム鉄等が挙げられる。これらの鉄の無機塩は、水和物の形態であってもよい。これらの鉄の無機塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
鉄の無機塩の中でも、ゼラチンの分解をより一層効果的に抑制させるという観点から、好ましくはピロリン酸鉄、更に好ましくはピロリン酸第二鉄が挙げられる。
【0029】
本発明の食品では、銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩の中から1種を選択して単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0030】
これらの中でも、ゼラチンの分解をより一層効果的に抑制させるという観点から、好ましくは銅の有機塩、及び鉄の無機塩、特に好ましくは鉄の無機塩が挙げられる。
【0031】
本発明の食品において、(C)成分の含有量については、使用する(C)成分の種類、ゼラチンの含有量、食品の形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.2~50重量%、好ましくは0.8~20重量%が挙げられる。より具体的には、本発明の食品における(C)成分の種類毎の含有量としては、以下の範囲が例示される。
(C)成分が銅の有機塩及び/又は無機塩である場合:銅の有機塩及び/又は無機塩が、好ましくは0.5~50重量%、更に好ましくは1~30重量%、特に好ましくは4~20重量%。
(C)成分が鉄の有機塩及び/又は無機塩である場合:鉄の有機塩及び/又は無機塩が、好ましくは0.2~50重量%、更に好ましくは1~30重量%、特に好ましくは2~10重量%。
【0032】
また、本発明の食品において、(A)成分と(C)成分の比率については、前述する各含有量に応じた範囲内であればよいが、例えば、(A)成分1000FUに対して、(C)成分が0.6~625mg、好ましくは7.5~250mgが挙げられる。より具体的には、本発明の食品における(C)成分の種類毎の(A)成分と(C)成分の比率としては、以下の範囲が例示される。
(C)成分が銅の有機塩及び/又は無機塩である場合:(A)成分1000FUに対して、銅の有機塩及び/又は無機塩が好ましくは6.25~625mg、更に好ましくは12.5~375mg、特に好ましくは50~250mg。
(C)成分が鉄の有機塩及び/又は無機塩である場合:(A)成分1000FUに対して、鉄の有機塩及び/又は無機塩が好ましくは2.5~625mg、更に好ましくは12.5~375mg、特に好ましくは25~125mg。
【0033】
[その他の成分]
本発明の食品は、前述する成分の他に、必要に応じて、他の栄養成分や機能性成分を含有していてもよい。このような栄養成分や機能性成分としては、食品に使用可能なものであることを限度として特に制限されないが、例えば、ビタミンA類、ビタミンB類、ビタミンC類、ビタミンD類、ビタミンE類、ビタミンK類、ビタミンP類、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン、リコペン等のビタミン類;カテキン、テアフラビン、ロイコアントシアニジン、ペラルゴニジン、シアニジン、ペツニジン、ペオニジン、ペチュニジン、デルフィニジン、マルビジン、フラボン、アピゲニン、ルテオニン、アピゲニニジン、ルテリオニジン、バイカレイン、ケルセチン、ケンフェロール、ミリセチン、ナリジン、ヘスペリジン、リキリチゲニン、アルピノン、タキシフォリン、ゲニステイン、ダイゼイン、ダイジン、グリシテイン、エクオール、ビオカニンA、クメストロール、プエラリン、ホルモノネチン、カルタミン、プロレチン、没食子酸、フェノール酸、クロロゲン酸、エラグ酸、リグナン、セサミン、ピノレジノール、ラリシレジノール、セコイソラリシレジノール、マタイレジノール、クルクミン、クマリン、レスベラトロール、加水分解型タンニン等のポリフェノール;塩酸ベタイン、塩化カルニチン、塩化ベタネコール等の健胃剤;カルシウム、イオウ、マグネシウム、亜鉛、セレン、鉄等のミネラル類;大豆タンパク、卵白粉末、乳清タンパク、サーデンペプチド等のタンパク質・ペプチド;グリシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、シスチン、フェニルアラニン、タウリン、トリプトファン等のアミノ酸;リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸等の脂肪酸類;カラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、アナトー色素、パプリカ色素、紅花色素、紅麹色素、フラボノイド色素、コチニール色素、アマランス、エリスロシン、アルラレッドAC、ニューコクシン、フロキシン、ローズベンガル、アシッドレッド、タートラジン、サンセットイエローFCF、ファストグリーンFCF、ブリリアントブルーFCF、インジゴカルミン等の色素;各種フルーツのフレーバーやエッセンス等の香料;クエン酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、酢酸及びその塩、乳酸及びその塩、食塩、グルタミン酸及びその塩、みりん、食酢、天然果汁、植物抽出エキス、果実・海産物等の裁断物又は粉末化物等の調味剤;アガリクス、シイタケエキス、レイシ、ヤマブシタケ等のキノコ類又はそのエキス;食物繊維、ローヤルゼリー、プロポリス、ハチミツ、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、セラミド、ヒアルロン酸等のその他機能性素材等が挙げられる。これらの成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類や食品の形態等に応じて適宜設定される。
【0034】
また、本発明の食品は、所望の形態に調製するために、必要に応じて、基剤や添加物等が含まれていてもよい。このような基剤及び添加剤としては、食品に使用可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの基剤や添加物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの基剤や添加物の含有量については、使用する基剤や添加物の種類や食品の形態等に応じて適宜設定される。
【0035】
[形態]
本発明の食品は、固体状、半固体状、又は液体状のいずれであってもよい。
【0036】
本発明の食品の形態としては、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品等が挙げられる。本発明の食品の形態として、具体的には、カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤)、錠剤、顆粒剤、粉剤、ゼリー剤等のサプリメント;栄養ドリンク、果汁飲料、炭酸飲料等の飲料;団子、アイス、シャーベット、グミ、キャンディー等の嗜好品等が例示される。これらの飲食品の中でも、好ましくはサプリメント、更に好ましくはカプセル剤、錠剤、顆粒、特に好ましくはカプセル剤が挙げられる。
【0037】
本発明の食品がカプセル剤の場合には、(B)成分がカプセル皮膜として含まれ、(A)成分及び(C)成分が内容物に含まれている態様が好ましい。また、食品が錠剤又は顆粒の場合には、錠剤又は顆粒中で(A)~(C)成分が混合された状態で含まれていてもよく、また、(A)成分及び(C)成分を含む錠剤又は顆粒に対して(B)成分がコーティング皮膜として被覆しているコーティング製剤であってもよい。
【0038】
2.ゼラチンの分解抑制方法
本発明の分解抑制方法は、ナットウキナーゼ及びゼラチンを含む食品においてゼラチンの分解を抑制する方法であって、食品に、(A)ナットウキナーゼ及び(B)ゼラチンと共に、(C)銅の有機塩、銅の無機塩、鉄の有機塩、及び鉄の無機塩よりなる群から選択される少なくとも1種を配合することを特徴とする。
【0039】
本発明の分解抑制方法において、使用するナットウキナーゼ、ゼラチン、並びに各銅及び/又は鉄の塩の種類や配合量、食品に配合できる他の成分、食品の形態等については、前記「1.食品」の欄に記載の通りである。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
なお、以下に示す試験例及び製剤例において、使用した成分の入手元、組成等については、以下の通りである。
ナットウキナーゼ粉末:商品名「納豆菌培養エキス NSK-SD40」、株式会社日本生物.科学研究所製
グルコン酸銅:グルコン酸銅(II)、商品名「ヘルシャスCu」、扶桑化学工業株式会社製
ピロリン酸第二鉄:商品名「サンアクティブFe-P 80R」、太陽化学株式会社
アルギニン:商品名「L-アルギニン」、協和発酵バイオ株式会社製
リジン:商品名「食品添加物 L-リジン塩酸塩」、味の素株式会社製
シトルリン:商品名「発酵シトルリン協和」、協和発酵バイオ株式会社製
難消化性デキストリン:商品名「ファイバーソル2AG」、松谷化学工業株式会社製
ルチン:商品名「αGルチンP」、東洋製糖株式会社製
【0042】
試験例1
ゼラチンプレートを作成し、各種成分存在下で、当該ゼラチンプレートに対するナットウキナーゼの分解作用について評価した。具体的な試験方法及び結果は、以下の通りである。
【0043】
1.試験方法
1-1.ゼラチンプレートの作成
先ず、精製水を50℃に加温し、ゼラチンを20重量%、メチルパラベン(防腐剤)を0.2重量%となるように添加して混合し、ゼラチン溶液を調製した。得られたゼラチン溶液10gをシャーレ(内径9cm)に広げ、シャーレ内のゼラチンの厚みを均一にした後に、4℃で1時間以上冷却し、ゼラチンをゲル化させ、シャーレ内にゼラチンプレート形成させた。
【0044】
1-2.ゼラチンプレートの分解試験
表1及び2に示す組成の試験液を調製し、各試験液0.5mlをシャーレ内のゼラチンプレートに滴下し、シャーレに蓋をした状態で室温で一晩静置した。その後、ゼラチンプレートの外観を目視にて確認し、以下の判定基準に従って、ゼラチンの分解耐性を評価した。
<ゼラチンの分解耐性の判定基準>
1:ゼラチンプレートが僅かに溶解している。
2:ゼラチンプレートが少し溶解しており滴下していない部分との差が明らか。
3:ゼラチンプレートの厚さ半分程度が溶解している。
4:ゼラチンプレートの大部分が溶解しており一部シャーレの底が露出する。
5:ゼラチンプレートが完全に溶解しシャーレの底が完全に露出している。
【0045】
2.試験結果
得られた結果を表1及び2に示す。ナットウキナーゼのみを含む試験液を使用した場合には、ゼラチンプレートは完全に分解されていた(比較例1)。また、ナットウキナーゼと共に、アルギニン、リジン、シトルリン、難消化性デキストリン、又はルチンを含む試験液を使用した場合でも、ゼラチンプレートの分解は全く抑制できていなかった(比較例2~6)。これに対して、ナットウキナーゼと共に、グルコン酸銅、又はピロリン酸第二鉄を含む試験液を使用した場合には、ゼラチンプレートの分解を十分に抑制できていた(実施例1~8)。とりわけ、ピロリン酸第二鉄は、極めて低濃度であっても、ナットウキナーゼによるゼラチンプレートの分解を十分に抑制できており、ゼラチンの分解に対する抑制効果が顕著に奏されていた(実施例5~8)。
【0046】
【0047】
【0048】
製剤例1~8:ソフトカプセル剤
表3に示す組成の内容液、及び表4に示す組成の剤皮(カプセル皮膜)を用いて、ソフトカプセル剤(1剤当り、内容液300mg、剤皮150mg含有)を製造した。
【表3】
【0049】
【0050】
製剤例9~10:錠剤
表5に示す組成の錠剤(1錠当たり700mg)を製造した。
【0051】
【0052】
製剤例11~12:顆粒剤
表6に示す組成の顆粒剤を製造した。
【0053】