(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】基板を処理するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20220506BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20220506BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
C23C14/34 G
C23C14/06 M
C23C14/08 J
C23C14/08 G
C23C14/34 C
(21)【出願番号】P 2018550653
(86)(22)【出願日】2016-12-12
(86)【国際出願番号】 US2016066080
(87)【国際公開番号】W WO2017112439
(87)【国際公開日】2017-06-29
【審査請求日】2019-12-11
(32)【優先日】2015-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ワン ロンジュン
(72)【発明者】
【氏名】スブラマニ アナンサ ケイ
(72)【発明者】
【氏名】チン チー ホン
(72)【発明者】
【氏名】タン シャンミン
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/035225(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/136387(WO,A1)
【文献】特表2013-503496(JP,A)
【文献】特開2012-149339(JP,A)
【文献】国際公開第2015/153509(WO,A1)
【文献】特開2008-063637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
C23C 14/06
C23C 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスチャンバであって、
内部容積を画定するチャンバ本体と、
前記チャンバ本体の上方部分に結合されたチャンバ本体アダプタであって、接地されている、チャンバ本体アダプタと、
前記内部容積内部で基板を支持する基板支持体と、
前記チャンバ本体アダプタに結合され、前記基板上にスパッタリングされる対応する複数のターゲットを有する複数のカソードと、
前記チャンバ本体アダプタに回転可能に結合され、スパッタリングされている前記複数のターゲットのうちの少なくとも1つを露出させる少なくとも1つの孔、およびスパッタリングされていない前記複数のターゲットのうちの少なくとも別の1つを収容する少なくとも1つのポケットを有するシールドであって、前記プロセスチャンバの中心軸の周りで回転し、前記中心軸に沿って直線的に移動するように構成された、シールドと、
前記シールドが格納位置にあるときに、前記シールドを前記チャンバ本体アダプタに接地するために前記シールドと前記チャンバ本体アダプタとの間に配置された複数の接地リングと
を備える、プロセスチャンバ。
【請求項2】
前記複数のターゲットのそれぞれが前記基板支持体に対して所定の角度で配置されている、請求項1に記載のプロセスチャンバ。
【請求項3】
所定のプロセスガスを供給するために前記プロセスチャンバに結合されたプロセスガス供給部、
をさらに備える、請求項1に記載のプロセスチャンバ。
【請求項4】
前記シールドを接地するために前記シールドと前記チャンバ本体アダプタとの間に配置された複数の接地リング、
をさらに備える、請求項1に記載のプロセスチャンバ。
【請求項5】
前記複数のターゲットのそれぞれが前記基板支持体と平行に配置されている、請求項1から4までのいずれか1項に記載のプロセスチャンバ。
【請求項6】
前記複数のターゲットが6つのターゲットを含む、請求項5に記載のプロセスチャンバ。
【請求項7】
前記6つのターゲットが3つの誘電体ターゲットおよび3つの金属ターゲットを含む、請求項6に記載のプロセスチャンバ。
【請求項8】
前記シールドが3つの隣接しない孔を含む、請求項7に記載のプロセスチャンバ。
【請求項9】
前記6つのターゲットが、2つの隣接する誘電体ターゲット、第1の金属から形成された2つの隣接する第1の金属ターゲット、および第2の金属から形成された2つの隣接する第2の金属ターゲットを含む、請求項6に記載のプロセスチャンバ。
【請求項10】
前記シールドが2つの隣接する孔を含む、請求項9に記載のプロセスチャンバ。
【請求項11】
前記シールドが複数の前記複数のターゲットを露出させる複数の孔を含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載のプロセスチャンバ。
【請求項12】
前記シールドが複数の前記複数のターゲットを収容する複数のポケットをさらに含む、請求項11に記載のプロセスチャンバ。
【請求項13】
前記複数のターゲットのそれぞれが実質的に共平面の構成で前記基板支持体と平行に配置され、前記シールドが前記複数のターゲットと平行な平坦な配向を有する、請求項1から4までのいずれか1項に記載のプロセスチャンバ。
【請求項14】
プロセスチャンバの基板支持体上に配置された基板を処理するための方法であって、
前記プロセスチャンバは、シールドが格納位置にあるときに、前記シールドをチャンバ本体アダプタに接地するために前記シールドと前記チャンバ本体アダプタとの間に配置された複数の接地リングを含み、
前記基板の反対側で前記シールドの裏側に形成されたポケットに配置された第2のターゲットをカバーしながら、前記シールドの孔を介して第1のターゲットを露出させるように前記プロセスチャンバ内部に配置された前記シールドを位置決めするステップと、
前記第1のターゲットから第1の材料をスパッタリングするステップと、
前記シールドの前記裏側に形成された前記ポケットまたは第2のポケットに配置された前記第1のターゲットをカバーしながら、前記シールドの前記孔を介して第2のターゲットを露出させるように前記シールドを回転させるステップと、
前記第2のターゲットから第2の材料をスパッタリングするステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
前記第1のターゲットが誘導体ターゲットであり、前記第2のターゲットが金属ターゲットであり、
前記第1の材料をスパッタリングする前に、前記シールドの前記孔を介して前記誘導体ターゲットを露出させるように前記シールドを回転させ、前記シールドを前記プロセスチャンバの中心軸に沿って前記基板支持体から離れるように格納位置まで上方に移動させるステップと、
前記第1の材料を前記基板の表面上にスパッタリングするステップと、
前記基板を前記プロセスチャンバから除去するステップと、
前記シールドを前記中心軸に沿って前記基板支持体に向かって下方に移動させ、前記シールドの前記孔を介して前記金属ターゲットを露出させるように前記シールドを回転させ、前記シールドを前記中心軸に沿って前記格納位置まで上方に移動させるステップと、
前記金属ターゲットからの金属材料を前記プロセスチャンバの内部表面上にペーストするステップと、
前記ペーストされた金属材料を酸化させるために前記プロセスチャンバ内に酸素を流すステップと、
をさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して、基板を処理するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの材料層を除去または構築するための様々な方法が知られている。物理的気相堆積(PVD)法は、半導体産業においてしばしば使用される。
誘電体PVDスパッタリングは、半導体産業において、例えば、抵抗変化型ランダムアクセスメモリ(ReRAM)および導電性ブリッジランダムアクセスメモリ(CBRAM)のフィラメント用のハフニウム酸化物、タンタル酸化物、アルミニウム酸化物、STT-RAMバリア層用のマグネシウム酸化物、画像センサの反射防止膜用のタンタル酸化物およびチタン酸化物などの多くの用途を有する。誘電体材料は、金属の導電性ターゲットが使用され、酸素または窒素プラズマと反応させて誘電体を堆積させる反応性スパッタリングを使用して、あるいはターゲット材料を基板上に直接スパッタリングするためにRF電力(容量性結合または誘導性結合)を用いる複合非導電性ターゲットを使用して堆積させることができる。第2の方法は、典型的には、誘導体堆積中の基板の酸化または窒化が望ましくない用途に使用され、そのような用途において反応性ガスの使用を排除する。反応性スパッタリングを使用して誘電体膜を生成する技法は存在するが、本発明者らは、プロセスキットの寿命が進むにつれ堆積速度が変動すること、欠陥性能が悪化すること、均一性が悪化することを含め、RFプラズマを使用した直接誘電体ターゲットスパッタリングが直面する多くの課題が依然としてあることに気づいた。
上記の問題に対処するために、角度付けされたマルチカソードチャンバが使用される。誘導体ターゲットがRF電源に接続され、金属ターゲットがDC電源に接続される。スパッタリング中のターゲット間の相互汚染を回避するために回転シールドが使用される。金属ターゲットの目的は、シールドをペーストして、誘電体被膜によって引き起こされる接地損失による堆積速度を回復することである。金属ペーストは、シールド上の誘電体粒子の剥脱および剥離を防止するのにも役立つ。
【0003】
しかしながら、本発明者らは、上記の設計に関していくつかの欠点に気づいた。第一に、堆積速度を回復させるためにターゲットを取り囲む暗部領域、特にシールドの孔の側壁を十分にカバーする必要があるため、上記の目的を果たすためには、典型的には大量のペーストが必要である。第二に、ターゲットを取り囲む暗部領域上に堆積される誘電体材料のRFスパッタリングに起因して、金属ターゲットの汚染が不可避である。典型的には、誘電体を基板上にスパッタリングする前に、なんらかの誘電体材料をシールドおよびシャッタ上にスパッタリングして、ペースト材料を薄い誘電体層によってカバーし、汚染を低減させることが可能である。しかしながら、本発明者らは、なんらかの誘電体材料をペースト材料上にスパッタリングすることによってチャンバの粒子性能が悪化することに気づいた。最後に、上記の装置の別の欠点は、接地されたシールドの電位がプラズマの正電位に対して負電位として作用し、結果として以前にシールドの部分に堆積させた材料のスパッタリングをもたらすということである。その結果として、本発明者らは、シールド上のペーストされた金属が基板上にスパッタリングされることにより、基板が汚染されることに気づいた。
したがって、本発明者らは、基板を処理するための改良された方法および装置の実施形態を提供した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
基板を処理するための方法および装置が本明細書で開示される。一部の実施形態では、プロセスチャンバは、内部容積を画定するチャンバ本体と、内部容積内部で基板を支持する基板支持体と、チャンバ本体に結合され、基板上にスパッタリングされる対応する複数のターゲットを有する複数のカソードと、チャンバ本体の上方部分に回転可能に結合され、スパッタリングされる複数のターゲットのうちの少なくとも1つを露出させる少なくとも1つの孔、およびスパッタリングされない複数のターゲットのうちの少なくとも別の1つを収容しカバーするようにシールドの裏側に配置された少なくとも1つのポケットを有するシールドであって、プロセスチャンバの中心軸の周りで回転し、中心軸に沿って直線的に移動するように構成された、シールドと、を含む。
【0005】
一部の実施形態では、プロセスチャンバは、内部容積を画定するチャンバ本体と、チャンバ本体の上方部分に結合されたチャンバ本体アダプタであって、接地されている、チャンバ本体アダプタと、内部容積内部で基板を支持する基板支持体と、チャンバ本体アダプタに結合され、基板上にスパッタリングされる対応する複数のターゲットを有する複数のカソードと、チャンバ本体アダプタに回転可能に結合され、スパッタリングされている複数のターゲットのうちの少なくとも1つを露出させる少なくとも1つの孔、およびスパッタリングされていない複数のターゲットのうちの少なくとも別の1つを収容する少なくとも1つのポケットを有するシールドであって、プロセスチャンバの中心軸の周りで回転し、中心軸に沿って直線的に移動するように構成された、シールドと、シールドを接地するためにシールドとチャンバ本体アダプタとの間に配置された複数の接地リングであって、複数のターゲットが少なくとも1つの誘導体ターゲットおよび少なくとも1つの金属ターゲットを含む、複数の接地リングと、を含む。
【0006】
一部の実施形態では、プロセスチャンバの基板支持体上に配置された基板を処理するための方法は、基板の反対側でシールドの裏側に形成されたポケットに配置された第2のターゲットをカバーしながら、シールドの孔を介して第1のターゲットを露出させるようにプロセスチャンバ内部に配置されたシールドを位置決めするステップと、第1のターゲットから第1の材料をスパッタリングするステップと、シールドの裏側に形成されたポケットまたは第2のポケットに配置された第1のターゲットをカバーしながら、シールドの孔を介して第2のターゲットを露出させるようにシールドを回転させるステップと、第2のターゲットから第2の材料をスパッタリングするステップと、を含む。
【0007】
一部の実施形態では、プロセスチャンバの基板支持体上に配置された基板を処理するための方法は、シールドの孔を介して誘導体ターゲットを露出させるようにプロセスチャンバ内部に配置されたシールドを回転させるステップと、シールドを基板支持体から離れるようにプロセスチャンバの中心軸に沿って格納位置まで上方に移動させるステップと、誘導体ターゲットからの誘電体材料を基板上に堆積させるステップと、基板をプロセスチャンバから除去するステップと、シールドを中心軸に沿って基板支持体に向かって下方に移動させるステップと、シールドの孔を介して金属ターゲットを露出させるようにシールドを回転させるステップと、金属ターゲットからの金属材料をプロセスチャンバの内部表面上にペーストするステップと、ペーストされた金属材料を酸化させるためにプロセスチャンバ内に酸素を流すステップと、を含む。
上で簡単に要約され、以下でより詳細に論じる本開示の実施形態は、添付図面に表される本開示の例示的な実施形態を参照することによって理解され得る。しかしながら、添付図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示し、したがって、範囲を限定していると考えられるべきではなく、その理由は本開示が他の等しく効果的な実施形態を受け入れることができるためである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一部の実施形態によるマルチカソード処理チャンバの概略図である。
【
図2】本開示の一部の実施形態による
図1のマルチカソード処理チャンバ内に配置されたシールドの底面図である。
【
図3】本開示の一部の実施形態によるマルチカソード処理チャンバの上方部分の概略図である。
【
図4】本開示の一部の実施形態による
図3のマルチカソード処理チャンバ内に配置されたシールドの底面図である。
【
図5】本開示の一部の実施形態による
図3のマルチカソード処理チャンバ内に配置されたシールドの底面図である。
【
図6】本開示の一部の実施形態による基板を処理する方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
理解を容易にするために、各図に共通の同一の要素を指定するために、可能な場合は、同一の参照数字が使用された。図は、縮尺通りには描かれておらず、明瞭にするために簡略化されていることがある。一実施形態の要素および特徴は、さらに詳説することなく他の実施形態において有益に組み込まれてもよい。
基板を処理するための方法および装置の実施形態が本明細書で提供される。開示された方法および装置は、有利には、ターゲット寿命を改善し、洗浄前に必要な期間を延長し、ターゲット間の相互汚染を実質的に最小限に抑えまたは排除しながら堆積速度の変動を軽減することができる。
【0010】
一部の実施形態では、マルチカソード-PVDチャンバ(すなわち、プロセスチャンバ100)は、(例えば、チャンバ本体アダプタ108を介して)チャンバ本体に取り付けられた対応する複数のターゲット(少なくとも1つの誘導体ターゲット104および少なくとも1つの金属ターゲット106)を有する複数のカソード102(例えば、5つのカソード)を含む。一部の実施形態では、金属ターゲットは、例えば、タンタル、アルミニウム、チタン、モリブデン、タングステン、および/またはマグネシウムなどの金属、あるいは例えば、チタン酸化物、チタンマグネシウム酸化物、および/またはタンタルマグネシウム酸化物などの導電性金属酸化物から形成されてもよい。しかしながら、他の金属および/または導電性金属酸化物が代替として使用されてもよい。処理チャンバは、基板136を支持するための支持表面134を有する基板支持体132を含む。プロセスチャンバ100は、基板を支持表面134上に下降させるためのリフトピン(図示せず)上に基板136を配置するために、エンドエフェクタ(図示せず)が貫いて延在することができる開口部150(例えば、スリットバルブ)を含む。
【0011】
図1に示す実施形態では、各ターゲットは、支持表面134に対して所定の角度αで配置されている。一部の実施形態では、角度αは、約10°~約50°であってもよい。基板支持体は、整合回路網142を介して、基板支持体132に配置されたバイアス電極140に結合されたバイアス源138を含む。チャンバ本体アダプタ108は、プロセスチャンバ100のチャンバ本体110の上方部分に結合され、接地されている。各カソードは、DC電源112またはRF電源114、および関連付けられたマグネトロンを有することができる。RF電源114の場合、RF電源114は、RF整合回路網115を介してカソードに結合される。
【0012】
シールド116は、チャンバ本体アダプタ108に回転可能に結合され、すべてのカソードによって共有される。同時にスパッタリングされる必要のあるターゲットの数に応じて、回転シールドは、対応する1つまたは複数のターゲットを露出させる1つまたは複数の孔を有することができる。シールド116は、有利には、複数のターゲット104、106間の相互汚染を制限または排除する。例えば、5つのカソードが設けられた一部の実施形態では、シールド116は、スパッタリングされるターゲット104を露出させる少なくとも1つの孔118、およびスパッタリングされていないターゲット(例えば、金属ターゲット106)を収納する少なくとも1つのポケット120を含むことができる。シールド116は、シャフト122を介してチャンバ本体アダプタ108に回転自在に結合されている。
【0013】
アクチュエータ124は、シールド116の反対側でシャフト122に結合されている。アクチュエータ124は、矢印126によって示されるように、シールド116を回転させ、矢印128によって示されるように、プロセスチャンバ100の中心軸130に沿ってシールド116を上下に移動させるように構成されている。本発明者らは、孔118を取り囲むシールドの面が基板136に面するターゲット(例えば、誘導体ターゲット104)の面の背後になるように、シールド116を格納位置へ上方に移動させると、ターゲットを取り囲む暗部(例えば、孔118の側壁上)にスパッタリングされる材料が有利には最小限に抑えられることに気づいた。その結果、1つのターゲット(例えば、誘導体ターゲット104)からスパッタリングされた材料が、暗部に蓄積した材料のスパッタリングのために別のターゲット(例えば、金属ターゲット106)を汚染することがない。加えて、暗部上にスパッタリングされる誘電体材料の量が最小限に抑えられるため、金属ターゲットからペーストされる金属材料の量が、有利には少なくとも3倍減少する。
【0014】
一部の実施形態では、シールド116は、スパッタリングされていないターゲットを収納するポケット120が設けられてもよい。ポケットは、有利には、スパッタリングされたターゲットの散乱材料がスパッタリングされていないターゲット上に堆積するのを防止する。そのような散乱は、不可避であるが、ポケット120は、散乱がスパッタリングされないターゲットのスパッタリング面を汚染しない(または、そのような汚染を最小限に抑える)ことを確実にする。その結果、スパッタリングされていないターゲットの汚染がさらに低減する。
一部の実施形態では、プロセスチャンバ100は、シールドが格納位置にあるときに、接地されたチャンバ本体アダプタ108へのシールド116の接地の改善を行う複数の接地リング144を含む。RF接地リング144は、有利には、プラズマとシールドとの間のエネルギーを最小にすることによってシールド116が負に帯電するのを防止する。その結果、シールドがスパッタリングされる可能性がさらに低減する。
【0015】
一部の実施形態では、プロセスチャンバ100は、プロセスチャンバ100の内部容積105に所定のプロセスガスを供給するプロセスガス供給部146をさらに含む。また、プロセスチャンバ100は、プロセスチャンバ100からプロセスガスを排気するために、内部容積105に流体結合された排気ポンプ148を含むことができる。例えば、一部の実施形態では、プロセスガス供給部146は、金属ターゲット106がスパッタリングされた後に、内部容積105に酸素を供給することができる。本発明者らは、金属酸化物(例えば、タンタル酸化物)のスパッタ収率が金属(例えば、タンタル)のスパッタ収率よりも著しく低いため、金属ペーストの後にプロセスチャンバ100内に酸素を流すことによって、有利には、ペーストされた金属材料のスパッタ収率が低減することに気づいた。その結果、基板136の汚染がさらに低減する。
【0016】
図2は、
図1のシールド116の底面図を表す。
図2では、複数のターゲット104、106は、5つのターゲットとして示されているが、例えば、
図4に示され、以下に記載されるように、より多くのまたはより少ないターゲットが利用されてもよい。
図2に示す実施形態では、シールド116は、1つの孔118および4つのポケット120を含むことができる。しかしながら、シールド116は、代わりに、スパッタリングされる2つ以上のターゲットを露出させる2つ以上の孔118を含んでもよい。
図3は、本開示の一部の実施形態によるプロセスチャンバの上方部分の拡大図を表す。
図1のプロセスチャンバ100の対応する要素と同一または同様の
図3のプロセスチャンバの要素は、同一の参照記号で参照される。そのため、これらの要素の説明は、ここでは省略される。
図3に示すように、代替として、平坦な配向を有するシールド316が、
図1に示すプロセスチャンバ100の角度付けされたシールド116の代わりに使用されてもよい。
図3に示す実施形態では、ターゲット104、106は、支持表面134と平行である。一部の実施形態では、
図3に示すように、ターゲット104、106は、共平面である。
【0017】
シールド316は、スパッタリングされる1つまたは複数のターゲット104、106を露出させる1つまたは複数の孔318を含む。シールド316は、スパッタリングされていない1つまたは複数のターゲットを収納する1つまたは複数のポケット320も含む。孔318は、孔318が孔118よりも小さい幅302を有するという点で角度付けされたシールド116の孔118とは異なる。ターゲット104、106は、支持表面134に対して角度付けされているため、孔118は、シールド116を格納位置に移動させたときに、スパッタリングされているターゲットが孔118を通過することができるように十分に大きい。対照的に、シールド316は、平坦であり、ターゲット104、106は、支持表面134と平行であるため、孔318の幅302は、ターゲットの幅よりもわずかに大きいだけである。スパッタリングされているターゲット(例えば、誘導体ターゲット104)とシールドとの間の間隙は、
図1に示す角度付けされたシールドおよびターゲットの間隙よりも小さいため、孔318の側壁に堆積する材料が少なくなるので、汚染がさらに低減する。
【0018】
本発明者らは、
図3に示すシールド316およびターゲット104、106の平坦な配向が、有利には、
図1の角度付けされたシールド116を使用する5%未満から、平坦なシールド316による約2~3%にRA均一性をさらに改善することを見出した。加えて、シールド316は、平坦であるため、同一の全体的なシールド直径を仮定すると、角度付けされたシールド116の場合よりも、より多くのカソード102を使用することができる。
【0019】
一部の実施形態では、例えば、
図4で表されるように、複数のターゲットは、6つのターゲット、すなわち、3つの誘電体ターゲット104および3つの金属ターゲット106を含むことができる。
図4に示す実施形態では、シールド316は、3つの隣接しない孔318および3つの隣接しないポケット320を含む。3つの隣接しない孔318は、同時スパッタリングされる3つのターゲットを露出させるので、プロセスチャンバのスループットは、堆積速度が単一のスパッタターゲットの3倍であるため、単一のスパッタターゲットに対して3倍増加する。加えて、各ターゲットからスパッタリングされる材料の量が単一のスパッタターゲットよりも2/3少ないため、全体的なターゲット寿命が長くなる。その結果、ターゲットを交換する頻度も減少する。
図4に示す実施形態の別の利点は、各ターゲットを取り囲むシールドの暗部上の堆積が少なくなる(すなわち、単一のスパッタターゲットよりも2/3少ない)ということである。その結果、汚染がさらに低減し、必要とされるペースト材料が2/3少なくなる。
図4の実施形態は、平坦なシールド316を参照して記載されたが、
図4に示す構成は、角度付けされたシールド116にも適用可能である。
【0020】
図5は、本開示の一部の実施形態によるシールド516の構成を表す。シールド516は、シールド516が2つの隣接する孔518および4つのポケット520を含んでいるという点を除いて、
図3および
図4で表されたシールド316と実質的に同様である。
図5に示す実施形態では、複数のターゲットは、2つの隣接する誘電体ターゲット104、第1の金属から形成された2つの隣接する第1の金属ターゲット106、および第2の金属から形成された2つの隣接する第2の金属ターゲット507を含む。一部の実施形態では、2つの隣接する第2の金属ターゲット507は、誘電体ターゲット104の材料とは異なる第2の誘電体材料から形成されてもよい。その結果、シールド516は、有利には、積層堆積プロセスを容易にすることができる。
【0021】
一部の実施形態では、例えば、2つの隣接する誘電体ターゲット104は、マグネシウム酸化物から形成されてもよく、2つの隣接する第1の金属ターゲット106は、タンタルから形成されてもよく、2つの隣接する第2の金属ターゲット507は、マグネシウムから形成されてもよい。その結果、2つの隣接する誘電体ターゲット104からのマグネシウム酸化物の直接スパッタリングまたは2つの隣接する第2の金属ターゲット507からのマグネシウムのスパッタリングおよびその後の酸化を、代替として同一のチャンバで行うことができる。2つの隣接する第2の金属ターゲット507のスパッタリングおよびその後の酸化は、2つの隣接する第2の金属ターゲット507のスパッタリングの後に必要とされる金属ペーストが、誘電体ターゲット104の直接スパッタリングに必要とされる金属ペーストよりも少ないため、誘電体ターゲット104の直接スパッタリングよりも有利である可能性がある。
【0022】
動作において、本開示の実施形態による装置を使用して、プロセスチャンバ内部に配置された1つまたは複数の追加のターゲットを汚染から、またはプロセスを汚染することから保護しながら、プロセスチャンバ内部の1つまたは複数のターゲットから堆積材料をスパッタリングすることができる。例えば、プロセスチャンバ内部に配置されたシールド116、316は、基板の反対側でシールドの裏側に形成されたポケットに配置された第2のターゲット(例えば、106)をカバーしながら、シールドの孔を介して第1のターゲット(例えば、104)を露出させるように位置決めされ得る。その場合、第2のターゲットが、シールドによってカバーされ、シールドのポケット内部に配置されている間に、第1の材料を第1のターゲットからスパッタリングすることができる。
【0023】
第1の材料のスパッタリングが完了すると、シールドは、シールドの裏側に形成されたポケットまたは第2のポケットに配置された第1のターゲットをカバーしながら、シールドの孔を介して第2のターゲットを露出させるように回転することができる。次いで、第1のターゲットがシールドによってカバーされ、シールドのポケット内部に、またはシールドの裏側に形成された第2のポケットに配置されている間に、第2の材料を第2のターゲットからスパッタリングすることができる。
【0024】
別の例示的な例において、
図6は、本開示の一部の実施形態による基板136を処理する方法600を示す流れ図である。602で、誘導体のターゲット104を露出させるようにシールド116、316を回転させる。604で、シールドを、誘導体のターゲット104を取り囲むシールド116、316の面がターゲットの面の背後になるように、プロセスチャンバ100の中心軸130に沿って格納位置まで上方に移動させる。606で、誘電体材料を基板136に堆積させる。608で、基板136がプロセスチャンバ100から除去される。610で、シールド116、316は、プロセスチャンバ100の中心軸130に沿って元の位置まで下方に移動させる。612で、金属ターゲット106を露出させるようにシールドを回転させる。614で、シールド116、316を、金属ターゲット106を取り囲むシールド116、316の面がターゲットの面の背後になるように、プロセスチャンバ100の中心軸130に沿って格納位置まで上方に移動させる。616で、金属ターゲット106がスパッタリングされ、金属材料によってシールド116、316およびプロセスチャンバ100をペーストする。618で、ペーストされた金属材料を酸化させるためにプロセスガス供給部146から内部容積105内に酸素を流す。
前述の事項は、本開示の実施形態を対象としているが、本開示の他のおよびさらなる実施形態が本開示の基本的な範囲から逸脱せずに考案され得る。