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特許7066829基板処理装置、ガスノズルおよび半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-02
(45)【発行日】2022-05-13
(54)【発明の名称】基板処理装置、ガスノズルおよび半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20220506BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20220506BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20220506BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20220506BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/316 X
H01L21/318 B
H01L21/318 C
H01L21/31 F
C23C16/44 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020509752
(86)(22)【出願日】2019-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2019008379
(87)【国際公開番号】W WO2019188017
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2018063255
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹林 雄二
(72)【発明者】
【氏名】小川 雲龍
(72)【発明者】
【氏名】藤野 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】羽田 幸人
(72)【発明者】
【氏名】角田 奈緒子
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-147248(JP,A)
【文献】特開昭61-199629(JP,A)
【文献】特開2018-056300(JP,A)
【文献】特開平07-086178(JP,A)
【文献】特開2005-079481(JP,A)
【文献】特開2013-225648(JP,A)
【文献】特開平08-119650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/316
H01L 21/318
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材で構成され、基板を収容する反応管と、
複数枚の前記基板を、水平姿勢で垂直方向に多段に積載可能な基板支持具と、
前記反応管内に設けられ、前記第1の部材より赤外線に対する反射率が高く、内部に含まれる気泡により前記第1の部材より粗い表面を有する第2の部材で少なくとも一部が構成され、前記反応管内に原料ガスを供給する原料ガスノズルと、を有し、
前記原料ガスノズルは、少なくとも前記基板が搭載される領域の一端側から他端側まで延在して設けられ、前記基板が搭載される領域の途中から下流側の領域は前記第2の部材で構成され、前記基板が搭載されている途中から上流側の領域は前記第1の部材で構成され、前記原料ガスノズルを構成する前記第1の部材及び前記第2の部材には、前記反応管の上部から下部にわたって前記反応管内に前記原料ガスを供給する複数の供給孔が設けられる
板処理装置。
【請求項2】
前記第2の部材の前記反射率は75%以上である請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記赤外線を用いて前記反応管内を加熱するヒータをさらに備える請求項に記載の基板処理装置。
【請求項4】
記ヒータは、少なくとも前記基板が搭載される領域の一端側から他端側まで加熱するように設けられる請求項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記原料ガスノズルを備え、前記原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記原料ガス供給系を制御するよう構成される制御部と、を有し、
前記原料ガス供給系は、前記原料ガスを貯留するタンクを備え、前記タンクに接続されたガス供給管にバルブが設けられ、前記制御部は、前記タンク内で圧縮された前記原料ガスを前記原料ガスノズルに流すように前記バルブを制御することが可能なよう構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記原料ガスノズルを備え、前記原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記原料ガス供給系を制御するよう構成される制御部と、を有し、
前記原料ガス供給系は、不活性ガスを供給する不活性ガス供給系を備え、
前記制御部は、前記原料ガスノズルから前記原料ガスを供給する処理以外の処理において、前記不活性ガスを前記原料ガスノズルに供給するように、前記不活性ガス供給系を制御することが可能なよう構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記原料ガスノズルを備え、前記原料ガスを供給する原料ガス供給系と、
前記反応管内に前記原料ガスとは分子構造が異なる反応ガスを供給する反応ガスノズルを備える反応ガス供給系と、
前記原料ガス供給系と前記反応ガス供給系とを制御するよう構成される制御部と、を有し、
前記制御部は、前記基板が収容された前記反応管内に前記原料ガスノズルから前記原料ガスを供給する処理と、前記反応管内に前記反応ガスノズルから前記反応ガスを供給する処理と、を行い、前記基板上に膜を形成するよう前記原料ガス供給系と前記反応ガス供給系とを制御することが可能なよう構成されている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記反応ガスノズルは、前記第1の部材より反射率が低く、かつ前記第1の部材より表面が滑らかな第3の部材で構成されている請求項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記反応ガスノズルは、前記第2の部材より前記反射率が低く、かつ前記第1の部材より表面が滑らかな第3の部材で構成されている請求項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記反応ガスノズルは、前記第1の部材で構成されている請求項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
複数枚の基板が水平姿勢で垂直方向に多段に積載されるように収容される反応管内に設けられ、前記反応管を構成する第1の部材より赤外線に対する反射率が高く、内部に含まれる気泡により前記第1の部材より粗い表面を有する第2の部材で少なくとも一部が構成され、前記反応管内に原料ガスを供給する原料ガスノズルであって、
前記原料ガスノズルは、少なくとも前記基板が搭載される領域の一端側から他端側まで延在して設けられ、前記基板が搭載される領域の途中から下流側の領域は前記第2の部材で構成され、前記基板が搭載されている途中から上流側の領域は前記第1の部材で構成され、前記原料ガスノズルを構成する前記第1の部材及び前記第2の部材には、前記反応管の上部から下部にわたって前記反応管内に前記原料ガスを供給する複数の供給孔が設けられる、
原料ガスノズル
【請求項12】
第1の部材で構成され、基板を収容する反応管と、複数枚の前記基板を、水平姿勢で垂直方向に多段に積載可能な基板支持具と、前記反応管内に設けられ、前記第1の部材より赤外線の反射率が高く、内部に含まれる気泡により前記第1の部材より粗い表面を有する第2の部材で少なくとも一部が構成され、前記反応管内に原料ガスを供給する原料ガスノズルと、を有し、前記原料ガスノズルは、少なくとも前記基板が搭載される領域の一端側から他端側まで延在して設けられ、前記基板が搭載される領域の途中から下流側の領域は前記第2の部材で構成され、前記基板が搭載されている途中から上流側の領域は前記第1の部材で構成され、前記原料ガスノズルを構成する前記第1の部材及び前記第2の部材には、前記反応管の上部から下部にわたって前記反応管内に前記原料ガスを供給する複数の供給孔が設けられる基板処理装置の前記反応管内に前記基板を収容する工程と、
前記基板に対して、前記原料ガスノズルから前記原料ガスを供給する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項13】
第1の部材で構成され、基板を収容する反応管と、複数枚の前記基板を、水平姿勢で垂直方向に多段に積載可能な基板支持具と、 前記反応管内に設けられ、前記第1の部材より赤外線の反射率が高く、内部に含まれる気泡により前記第1の部材より粗い表面を有する第2の部材で少なくとも一部が構成され、前記反応管内に原料ガスを供給する原料ガスノズルと、を有し、前記原料ガスノズルは、少なくとも前記基板が搭載される領域の一端側から他端側まで延在して設けられ、前記基板が搭載される領域の途中から下流側の領域は前記第2の部材で構成され、前記基板が搭載されている途中から上流側の領域は前記第1の部材で構成され、前記原料ガスノズルを構成する前記第1の部材及び前記第2の部材には、前記反応管の上部から下部にわたって前記反応管内に前記原料ガスを供給する複数の供給孔が設けられる基板処理装置の前記反応管内に前記基板を収容する手順と、
前記基板に対して、前記原料ガスノズルから前記原料ガスを供給する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、ガスノズルおよび半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板を処理して成膜する際には、基板を収容する反応管内に原料ガスノズルから原料ガスを供給する場合がある(例えば特開2017-147262(特許文献1)参照)。基板を収容する反応管内に原料ガスノズルから原料ガスを供給する場合には、原料ガスノズル内も基板処理温度まで加熱され、原料ガスノズル内で異物が発生して基板処理装置の安定稼働の阻害要因となる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示の主な目的は、原料ガスノズル内が基板処理温度まで加熱されるのを抑制または防止できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様によれば、
第1の部材で構成され、基板を収容する反応管と、
前記反応管内に設けられ、前記第1の部材より反射率が高く、内部に含まれる気泡により前記第1の部材より粗い表面を有する第2の部材で少なくとも一部が構成され、前記反応管内に原料ガスを供給する原料ガスノズルと、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0005】
本開示によれば、原料ガスノズル内が基板処理温度まで加熱されるのを抑制または防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本開示の好ましい実施の形態において基板に成膜するのに使用される基板処理装置を説明するための概略縦断面図である。
図2図2は、図1のA‐A線概略横断面図である。
図3図3は、本開示の好ましい実施の形態の基板処理装置で使用する原料ガスノズルと原料ガスノズル内温度とを説明するための図である。
図4図4は、本開示の好ましい実施の形態の基板処理装置で使用する原料ガスノズル内のガスの流れを説明するための概略縦断面図である。
図5図5は、本開示の好ましい実施の形態の基板処理装置で使用する原料ガスノズルを説明するための概略縦断面図である。
図6図6は、本開示の好ましい実施の形態の基板処理装置のコントローラを説明するための概略図である。
図7図7は、本開示の好ましい実施の形態の好適な成膜処理フローを説明するためのフローチャートである。
図8図8は、本開示の好ましい実施の形態における原料ガスノズルと反応ガスノズルのガスのフローを説明するための図である。
図9図9は、比較のための基板処理装置で使用する原料ガスノズルと原料ガスノズル内温度とを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本開示の好ましい実施の形態について説明する。
【0008】
近年、半導体デバイスの高密度化に伴い半導体デバイスを形成する薄膜においても多種多用な要求がある。例えばシリコン酸化膜(SiO膜)で1.6nmの厚さの膜を形成しようとしても電気的制約から困難であるが、高誘電率膜のハフニウム酸化膜(HfO膜)であれば4.5nmの厚さにおいてSiO換算でSiOと同等の容量を得ることができる。
【0009】
このように高誘電率膜の登場で、DRAMのキャパシタを中心とした絶縁膜として、アルミニウム酸化膜(AlO膜)やHfO膜やジルコニウム酸化膜(ZrO膜)が採用されるようになり、その製造方法としては、第1の材料としてのTMA(トリメチルアルミニウム、(CHAl)やTEMAH(テトラキスエチルメチルアミノハフニウム、Hf[N(CH)CHCH)やTEMAZ(テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム、Zr[N(CH)CHCH)などの有機系化合物の液体原料を、気化器を用いてガス化したものと、第2の材料としてのオゾンとを交互に処理室へ供給して成膜を行う成膜法が主流となっている。
【0010】
TMAやTEMAHやTEMAZといった有機系化合物を使用して成膜した場合は、膜中に有機物を同時に取り込みやすいので、膜中に有機物を同時に取り込まないようにするには、できるだけ基板の温度を上げて成膜する事が望ましい。しかし、有機系化合物は一般的に熱耐性が低く、例えばTMAの場合、450~500℃以上に処理室の温度を上げると、膜厚均一性の悪化や異物の発生という問題が生じやすくなる。
【0011】
本件開示者達は、この問題の発生要因が、有機系化合物等の原料ガスを供給する原料ガスノズル内の原料ガスの温度が処理室内の基板の温度と同じになってしまうことにあることを見出した。
【0012】
そして、鋭意研究の結果、本件開示者達は、処理室を構成する反応管の部材よりも反射率が高い部材で原料ガスノズルの少なくとも一部を構成し、この反射率が高い部材の内部に含まれる気泡により原料ガスノズルの表面を反応管の部材の表面よりも粗い表面とすることによって、有機系化合物等の原料ガスを供給する原料ガスノズル内の原料ガスの温度を処理室内の温度よりも低くすることができ、その結果、膜厚均一性の悪化を抑制または防止し、異物の発生を抑制または防止できることを見出した。
【0013】
本開示の好ましい実施の形態は、このような知見に基づくものであり、以下、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1を参照すれば、好ましい実施の形態の基板処理装置10は、処理炉202を備えている。処理炉202は加熱系(温度調整部)としてのヒータ207を有している。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、赤外線を用いて、後述する処理室201内を所定温度で加熱する。
【0015】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220が設けられている。マニホールド209がヒータベース(図示せず)に支持されることにより、反応管203は垂直に据え付けられた状態となる。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を、後述するボート217によって水平姿勢で垂直方向に多段に積載した状態で収容可能に構成されている。なお、ヒータ207は、少なくともウエハ200が配列されるウエハ配列領域の一端側から他端側まで加熱するように設けられている。
【0016】
処理室201内には、ノズル410,420が、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル410,420には、ガス供給ラインとしてのガス供給管310,320が、それぞれ接続されている。このように、処理容器(マニホールド209)には2本のノズル410,420と、2本のガス供給管310,320とが接続されており、処理室201内へ複数種類のガスを供給することが可能となっている。
【0017】
ガス供給管310,320には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322および開閉弁であるバルブ314,324がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320のバルブ314,324よりも下流側には、不活性ガスを供給するガス供給ラインとしてのガス供給管510,520がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC512,522および開閉弁であるバルブ514,524がそれぞれ設けられている。
【0018】
ガス供給管310,320の先端部には、ノズル410,420がそれぞれ接続されている。ノズル410,420は、図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がり、延在するようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル410,420は、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル410,420は、処理室201内へ搬入された各ウエハ200の端部(周縁部)の側方にウエハ200の表面(平坦面)と垂直にそれぞれ設けられている。ノズル410,420はL字型のロングノズルとしてそれぞれ構成されており、それらの各水平部はマニホールド209の側壁を貫通するように設けられており、それらの各垂直部は少なくともウエハ配列領域の一端側から他端側に向かって立ち上がり、当該一端側から当該他端側まで延在するように設けられている。
【0019】
ノズル410,420の側面のウエハ200と対応する高さ(基板の積載領域に対応する高さ)には、ガスを供給する複数の供給孔410a(第1のガス供給孔、第1の原料ガス供給孔),420a(第2のガス供給孔)がそれぞれ設けられている。供給孔410a,420aは、反応管203の中心を向くように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。供給孔410a,420aは、反応管203のウエハ200の存在する領域、すなわち、基板支持具217と対向する位置、換言すると、ヒータ207の下端部から上部にわたって複数設けられている。
【0020】
ノズル420に設けられる複数の供給孔420aは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれが同一の開口面積を有し、さらに同じ開口ピッチで設けられている。ただし、供給孔420aは上述の形態に限定されない。例えば、ノズル420の下部(上流側)から上部(下流側)に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、供給孔420aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0021】
このように、本実施形態では、反応管203の側壁の内壁と、反応管203内に配列された複数枚のウエハ200の端部(周縁部)と、で定義される平面視において円環状の縦長の空間内、すなわち、円筒状の空間内に配置したノズル410,420を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420にそれぞれ開口された供給孔410a,420aから、ウエハ200の近傍で反応管203内にガスを噴出させている。そして、反応管203内におけるガスの主たる流れを、ウエハ200の表面と平行な方向、すなわち、水平方向としている。
【0022】
ガス供給管310からは、原料ガスが、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内へ供給される。原料ガスとしては、例えば、AlO膜を形成する場合は、金属元素であるアルミニウム(Al)を含むTMAガス、HfO膜を形成する場合は、金属元素であるハフニウム(Hf)を含むTEMAHガス、ZrO膜を形成する場合は、金属元素であるジルコニウム(Zr)を含むTEMAZガス等の金属含有ガスである有機系化合物がそれぞれ好適に用いられる。また、成膜する膜の種類によっては、無機系化合物を用いてもよい。ノズル410から原料ガスを流す場合、ノズル410を原料ガスノズルと称してもよい。
【0023】
原料ガスとは、気体状態の原料、例えば、常温常圧下で気体状態である気体原料や、常温常圧下で液体状態である液体原料を気化することで得られるガス等のことである。本明細書において「原料」という言葉を用いた場合は、「液体状態である原料」を意味する場合、「気体状態である原料(原料ガス)」を意味する場合、または、それらの両方を意味する場合がある。TMAやTEMAHやTEMAZ等の有機系化合物は、液体原料なので、気化器等を用いて気化してガス化したものが原料ガスとして使用される。
【0024】
ガス供給管320からは、原料ガスとは分子構造が異なる反応ガスとして、例えば、AlO膜、HfO膜、ZrO膜等の酸化膜を形成する場合は、酸素(O)を含み、Al、Hf、Zrとそれぞれ反応する反応ガス(リアクタント)としての酸素含有ガス(酸化ガス、酸化剤)が、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内へ供給される。O含有ガスとしては、例えば、オゾン(O)ガスを好適に用いることができる。オゾンガスはオゾン発生器等から供給される。
【0025】
ガス供給管510,520からは、不活性ガスとして、例えば、Nガスが、それぞれMFC512,522、バルブ514,524、ガス供給管310,320、ノズル410,420を介して処理室201内へ供給される。
【0026】
ガス供給管310から原料ガスを供給する場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314、ノズル410により、原料ガス供給系が構成される。原料ガス供給系を原料供給系と称することもできる。ガス供給管310から金属含有ガスを供給する場合、原料ガス供給系を金属含有ガス供給系と称することもできる。
【0027】
ガス供給管320から反応ガス(リアクタント)を供給する場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324、ノズル420により、反応ガス供給系(リアクタント供給系)が構成される。反応ガスとして酸素含有ガス(酸化ガス、酸化剤)を供給する場合、ノズル420から反応ガスを流す場合、ノズル420を反応ガスノズルと称してもよい。
【0028】
主に、ガス供給管510,520、MFC512,522、バルブ514,325により、不活性ガス供給系が構成される。
【0029】
原料ガス供給系、反応ガス供給系を合わせてガス供給系と称することもできる。不活性ガス供給系をガス供給系に含めて考えてもよい。
【0030】
次に、原料ガスを流すノズル410について、より詳細に説明する。処理室201を構成する反応管203は赤外線に対する反射率が低い透明石英(第1の部材)で構成している。ノズル410も反応管203を構成する部材と同じ部材である赤外線に対する反射率が低い透明石英で構成すると、図9に示すように、ノズル410は、ヒータ207からの赤外線の吸収で暖まり、ノズル410の内部を流れるガスは、ノズル410内の管壁からの熱伝導(H1)とヒータ207からの赤外線の吸収(H2)で加熱される。この時、ノズル410の内部を流れるガスの温度は、炉内設定温度(反応管203内の温度)とほぼ同じ温度になり、ウエハ200の温度とほぼ同じ温度になる。
【0031】
炉内設定温度を高くして、ウエハ200の温度を高くすると、ウエハ200上に成膜される膜中には有機物は取り込まれにくくなるが、ノズル410の内部を流れるガスの温度も高くなり、ノズル410の内部を流れるTMAやTEMAHやTEMAZといった有機系化合物等の原料ガスは耐熱性が低いので、ノズル410の内部で熱分解を起こし、ノズル410内はウエハ200が設けられている処理室201内よりも圧力が高いことと相まって、ノズル410内で異物が発生し、延いては、膜中への異物混入の問題が生じる。また、原料ガスの熱分解による成膜速度の上昇に伴って膜厚均一性も悪化する。他方、炉内設定温度を低くすると、ノズル410の内部を流れるガスの温度が低くなり、ノズル410内での異物発生の問題は生じにくくなるが、ウエハ200の温度も低くなり、ウエハ200上に成膜される膜中に有機物が取り込まれやすくなってしまう。
【0032】
これに対して、本実施の形態では、処理室201を構成する反応管203は赤外線に対する反射率が低い透明石英で構成しているが、ノズル410は、反応管203を構成する部材よりも赤外線に対する反射率が高い不透明石英(第2の部材)で構成している。図3に示すように、ノズル410は、ヒータ207からの赤外線の吸収で暖まり、ノズル410の内部を流れるガスは、ノズル410内の管壁からの熱伝導(H1)とヒータ207からの赤外線の吸収(H2)で加熱されるが、ノズル410は、赤外線に対する反射率が高い不透明石英で構成されているので、ヒータ207からの赤外線の吸収(H2)が小さくなり、ノズル410の内部を流れるガスの温度は、炉内設定温度(反応管203内の温度)よりも低くなる。
【0033】
また、ノズル410に使用する、赤外線に対する反射率が高い不透明石英は、内部に気泡を含有しているので、その気泡により、ノズル410の内部の表面が細かな凸凹形状となっている。これにより、ノズル410を構成している不透明石英は、反応管203を構成している透明石英(第1の部材)よりも表面が粗いものとすることができる。ノズル410に赤外線に対する反射率が低い透明石英を使用した場合は、ノズル410の内部の表面が非常に滑らかなので、ノズル410内のガスの流れは、図4(a)に示すように層流となり、ノズル410の内部の壁面に近づくほど流速は小さくなる。これに対して、ノズル410の内部の表面が細かな凸凹形状となっている不透明石英の場合は、ノズル410内のガスの流れは、図4(b)に示すように乱流となり、全体としての平均流速は、層流の場合よりも若干小さくなるが、ノズル410の内部の壁面側の流速は大きくなり、ノズル410内の管壁からの熱伝導は小さくなってノズル410の内部を流れるガスは加熱されにくくなる。
【0034】
このように、炉内設定温度やウエハ200の温度よりも、ノズル410の内部を流れるガスの温度が低くなるので、ウエハ200の温度を上げてウエハ200上に成膜される膜中に有機物を取り込まれにくくすると共に、ノズル410内での異物発生の問題も生じにくくなる。
【0035】
また、ノズル410は、熱負荷に応じて赤外線に対する反射率の異なる石英で構成してもよい。図5(a)に示すように、本実施の形態では、L字型のノズル410の下端から上端まで、反射率が高い不透明石英411で構成したが、ノズル410を、熱負荷に応じて反射率の異なる石英で構成してもよい。例えば、図5(b)に示すように、ノズル410の下側(上流側)は反射率が低い透明石英412で構成し、その上(下流側)の、ヒータ207で均一に加熱されるヒータ領域を反射率が高い不透明石英411で構成してもよく、図5(c)に示すように、ノズル410の下側(上流側)はウエハ200が設けられるウエハ領域の途中まで反射率が低い透明石英412で構成し、その上(下流側)の領域を反射率が高い不透明石英411で構成してもよい。すなわち、ノズル410の全てを反射率の高い不透明石英部材(第2の部材)で構成してもよく、また、ノズル410の一部を反射率の高い不透明石英部材(第2の部材)で構成してもよい。ノズル410の下側(上流側)に反射率が低い透明石英412を使用すれば、ガスの予備加熱を効率的に行うことができ、反射率が高い不透明石英411を使用した領域では、ガスの熱分解を抑制することができ、その結果、ガスの熱分解抑制とガスの予備加熱を両立させることができる。
【0036】
また、ノズル410の上流のガス供給管510の途中に、原料ガスを貯留するタンク(図示せず)を備え、タンクに接続されたガス供給管510にバルブ(図示せず)を設け、タンク内で圧縮された原料ガスをノズル410内に流して、供給するガス自体を冷却することにより、ノズル410の内部を流れるガスの温度をより低くすることができる。
【0037】
なお、ノズル420は、処理室201を構成する反応管203と同じ、赤外線に対する反射率が低い透明石英で構成していてもよいし、異なる部材で構成していてもよい。
【0038】
例えば、ノズル420は、赤外線に対する反射率が第1の部材および第2の部材より低い部材(第3の部材)で構成していてもよい。これによって、ノズル420を流れるガスが熱エネルギーを吸収しやすくなってガス加熱を促進することができ、より早く均等にウエハ200と同じ温度まで加熱することができるとともに、ガスを活性化させやすくすることが可能となり、再液化を抑制することもできる。ノズル420内のガスの加熱温度は、各ガスの熱分解温度より低い温度であることが好ましい。例えば、第1の部材として合成石英である透明石英を用いる場合、第3の部材として、合成石英より反射率が低い溶融石英が適用可能である。また、第3の部材は、第1の部材より反射率が低く、かつ表面が滑らかなものとするか、第2の部材より反射率が低く、かつ表面が滑らかなものとすることもできる。
【0039】
また、ノズル420は、赤外線に対する吸収率が第1の部材および第2の部材より高い部材(第4の部材)で構成してもよい。これによって、ノズル420を流れるガスが熱エネルギーを吸収しやすくなってガス加熱を促進することができ、より早く均等にウエハ200と同じ温度まで加熱することができるとともに、ガスを活性化させやすくすることが可能となり、再液化を抑制することもできる。ノズル420内のガスの加熱温度は、各ガスの熱分解温度より低い温度であることが好ましい。第4の部材としては、例えば、黒色石英が適用可能である。
【0040】
赤外線に対する反射率が低い透明石英の赤外線の透過率は、好ましくは80~90%であり、反射率は、好ましくは5~15%であり、吸収率は、好ましくは5~10%である。赤外線に対する反射率が高い不透明石英の赤外線の透過率は、好ましくは10%未満であり、反射率は、好ましくは75~90%であり、吸収率は、好ましくは5~15%である。赤外線に対する吸収率が高い黒色石英の透過率は、好ましくは2%未満であり、反射率は、好ましくは5~15%であり、吸収率は、好ましくは80~90%である。各値は、各部材において透過率+反射率+吸収率=100%となるよう選択される。
【0041】
不透明石英における反射率は高ければ高いほど好ましい。反射率が75%より低いと、ノズル410内も基板処理温度まで加熱され、ノズル410内で異物が発生してしまう場合がある。
【0042】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気流路としての排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および排気バルブ(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ243を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されているバルブである。主に、排気管231、APCバルブ243、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0043】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に垂直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220が設けられている。シールキャップ219の処理室201と反対側には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に垂直に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。また、マニホールド209の下方には、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を降下させている間、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ(図示せず)が設けられている。シャッタ(図示せず)は、例えばSUS等の金属により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ(図示せず)の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング(図示せず)が設けられている。シャッタ(図示せず)の開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構(図示せず)により制御される。
【0044】
基板支持具(基板搭載手段)としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される図示しない断熱板が多段に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。但し、例えば、ボート217の下部に断熱板を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料により構成される筒状の部材として構成された断熱筒218を設けてもよい。
【0045】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、ノズル410,420と同様にL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0046】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0047】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する成膜処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それら両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0048】
I/Oポート121dは、上述のMFC512,522,312,322、バルブ514,524,314,324、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、温度センサ263、ヒータ207、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構(図示せず)等に接続されている。
【0049】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC512,522,312,322による各種ガスの流量調整動作、バルブ514,524,314,324の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ243による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構(図示せず)によるシャッタ(図示せず)の開閉動作等を制御するように構成されている。
【0050】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0051】
上述の基板処理装置10を用い、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成するシーケンス例について、図7図8を参照して説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0052】
本実施形態では、基板としての複数のウエハ200が積載された状態で収容された処理室201を所定温度で加熱しつつ、処理室201に、ノズル410に開口する複数の供給孔410aおよび減圧孔410bから原料ガスとしてTMAガスを供給する工程と、ノズル420に開口する複数の供給孔420aから反応ガスとしてOガスを供給する工程と、を所定回数(n回)行うことで、ウエハ200上に、AlおよびOを含む膜として酸化アルミニウム膜(AlO膜)を形成する。
【0053】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」をいう言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0054】
(ウエハチャージ・ボートロード)(ステップS101、S102)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)される(ステップS101)。シャッタ開閉機構(図示せず)によりシャッタ酸化が移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、図1に示すように、複数枚のウエハ200が収容されたボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内に搬入(ボートロード)される(ステップS102)。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。
【0055】
(圧力・温度調整)(ステップS103)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。続いて、回転機構267によりボート217及びウエハ200の回転を開始する。回転機構267によるボート217及びウエハ200の回転は、少なくとも、ウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0056】
(成膜ステップ)(ステップS110)
その後、原料ガス供給ステップ(ステップS111)、残留ガス除去ステップ(ステップS112)、反応ガス供給ステップ(ステップS113)、残留ガス除去ステップ(ステップS114)をこの順で所定回数行う。
【0057】
〔原料ガス供給ステップ〕(ステップS111)
バルブ314を開き、ガス供給管310へTMAガス(原料ガス)を流す。TMAガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410に開口する供給孔410aからウエハ200に対して供給される。すなわちウエハ200はTMAガスに暴露される。供給孔410aから供給されたTMAガスは、排気管231から排気される。このとき同時に、バルブ514を開き、ガス供給管510内にキャリアガスとしてNガスを流す。Nガスは、MFC512により流量調整され、TMAガスと一緒にノズル410の供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0058】
また、ノズル420へのTMAガスの侵入を防止(逆流を防止)するため、バルブ524を開き、ガス供給管520内へNガスを流す。Nガスは、ガス供給管520、ノズル420を介して処理室201内へ供給され(パージ)、排気管231から排気される。
【0059】
このとき、APCバルブ243を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~1000Pa、好ましくは1~100Pa、より好ましくは10~50Paの範囲内の圧力とする。なお、本明細書では、数値の範囲として、例えば1~1000Paと記載した場合は、1Pa以上1000Pa以下を意味する。すなわち、数値の範囲内には1Paおよび1000Paが含まれる。圧力のみならず、流量、時間、温度等、本明細書に記載される全ての数値についても同様である。MFC312で制御するTMAガスの供給流量は、例えば、10~2000sccm、好ましくは50~1000sccm、より好ましくは100~500sccmの範囲内の流量とする。MFC512で制御するNガスの供給流量は、例えば、1~30slm、好ましくは1~20slm、より好ましくは1~10slmの範囲内の流量とする。TMAガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば、1~60秒、好ましく1~20秒、より好ましくは2~15秒の範囲内とする。
【0060】
ヒータ207は、ウエハ200の温度が、例えば、400~600℃、好ましくは400~550℃、より好ましくは450~550℃の範囲内となるように加熱する。温度を600℃以下とすることで、TMAガスの過剰な熱分解を抑制しつつ成膜速度を適切に得ることができ、不純物が膜内に取り込まれて抵抗率が高くなることが抑制される。なお、TMAガスの熱分解は、当該処理に近い条件下においては450℃程度で開始するため、550℃以下の温度に加熱された処理室201内において本開示を用いるとより有効である。一方、温度が400℃以上であることにより、反応性が高く、効率的な膜形成が可能である。
【0061】
上述の条件下で処理室201内へTMAガスを供給することにより、ウエハ200の最表面に、Al含有層が形成される。Al含有層は、Al層の他、CおよびHを含み得る。Al含有層は、ウエハ200の最表面に、TMAが物理吸着したり、TMAの一部が分解した物質が化学吸着したり、TMAが熱分解することでAlが堆積したりすること等により形成される。すなわち、Al含有層は、TMAやTMAの一部が分解した物質の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Alの堆積層(Al層)であってもよい。
【0062】
〔残留ガス除去ステップ〕(ステップS112)
Al含有層が形成された後、バルブ314を閉じ、TMAガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留する未反応又はAl含有層形成に寄与した後のTMAガスを処理室201内から排除する。バルブ514,524は開いた状態でNガスの処理室201内への供給を維持する。Nガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応又はAl含有層形成に寄与した後のTMAガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。なお、バルブ514,524からのNガスは残留ガス除去ステップの間、常に流し続けてもよいし、断続的(パルス的)に供給してもよい。
【0063】
〔反応ガス供給ステップ〕(ステップS113)
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ324を開き、ガス供給管320内に反応ガスであるOガス(反応ガス)を流す。Oガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420の供給孔420aから処理室201内のウエハ200に対して供給され、排気管231から排気される。すなわちウエハ200はOガスに暴露される。このとき、バルブ524を開き、ガス供給管520内にNガスを流す。Nガスは、MFC522により流量調整され、Oガスと共に処理室201内に供給されて、排気管231から排気される。このとき、ノズル410内へのOガスの侵入を防止(逆流を防止)するために、バルブ514を開き、ガス供給管510内へNガスを流す。Nガスは、ガス供給管510、ノズル410を介して処理室201内に供給され(パージ)、排気管231から排気される。
【0064】
このとき、APCバルブ243を適正に調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~1000Pa、好ましくは1~100Pa、より好ましくは10~40Paの範囲内の圧力とする。MFC322で制御するOガスの供給流量は、例えば、5~40slm、好ましくは5~30slm、より好ましくは10~20slmの範囲内の流量とする。Oガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば、1~60秒、好ましくは1~30秒、より好ましくは5~25秒の範囲内とする。その他の処理条件は、上述の原料ガス供給ステップと同様の処理条件とする。
【0065】
このとき処理室201内に流しているガスは、Oガスと不活性ガス(Nガス)のみである。Oガスは、原料ガス供給ステップでウエハ200上に形成されたAl含有層の少なくとも一部と反応する。Al含有層は酸化され、金属酸化層としてAlとOとを含むアルミニウム酸化層(AlO層)が形成される。すなわちAl含有層はAlO層へと改質される。
【0066】
〔残留ガス除去ステップ〕(ステップS114)
AlO層が形成された後、バルブ324を閉じて、Oガスの供給を停止する。このとき、APCバルブ243は開いたままとし、バルブ514,524は開いた状態でNガスの処理室201内への供給を維持して(パージ)、原料ガス供給ステップ後の残留ガス除去ステップと同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくはAlO層の形成に寄与した後のOガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。
【0067】
〔所定回数実施〕(ステップS115)
上述の原料ガス供給ステップ、残留ガス除去ステップ、反応ガス供給ステップ、残留ガス供給ステップを順に行うサイクルを1回以上(所定回数)行うことにより、ウエハ200上にAlO膜が形成される。このサイクルの回数は、最終的に形成するAlO膜において必要とされる膜厚に応じて適宜選択されるが、このサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。AlO膜の厚さ(膜厚)は、例えば、0.1~150nm、好ましくは0.1~10nmとする。150nm以下とすることで表面粗さを小さくすることができ、0.1nm以上とすることで下地膜との応力差に起因する膜剥がれの発生を抑制することができる。
【0068】
(アフターパージ・大気圧復帰)(ステップS121、S122)
成膜ステップが終了したら、バルブ514,524を開き、ガス供給管310,320のそれぞれからNガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。Nガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留するガスや副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)(ステップS121)。その後、処理室201内の雰囲気がNガスに置換され(Nガス置換)、処理室201内の圧力は常圧に復帰される(大気圧復帰)(ステップS122)。
【0069】
(ボートアンロード・ウエハディスチャージ)(ステップS123、S124)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口されるとともに、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される(ステップS123)。ボートアンロードの後は、シャッタ(図示せず)が移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング(図示せず)を介してシャッタ(図示せず)によりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)(ステップS124)。
【0070】
なお、上記成膜工程(ステップS110(ステップS111~S114))以外の例えばアイドル時に、バルブ514を開き不活性ガス(Nガス)をノズル410内に流す(図8(b)参照)ことでノズル410内壁からの放熱をうながすことも、その後の成膜工程でノズル410内に流れるTMA(原料ガス)の温度を下げるのに有効である。
【0071】
(第1の実施の形態の変形例)
次に、本開示の好ましい第1の実施の形態の変形例について説明する。第1の実施の形態と異なる点は、ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態ではOを使用したが、本変形例では窒素含有ガス(窒化ガス、窒化剤)としてNHを使用する点である。その他は実質的に第1の実施の形態と同様である。本変形例では、TMAとNHとを処理室201内に交互供給してアルミニウム窒化膜(AlN膜)をウエハ200上に形成する。
【0072】
(第2の実施の形態)
次に、本開示の好ましい第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態で好適に使用される基板処理装置10は、上述の第1の実施の形態で好適に使用される基板処理装置10と同様の構成である。ガス供給管310からノズル410を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態ではTMAを使用したが、本実施の形態では、ハフニウム元素を含む有機化合物の一例として、TEMAHを使用する。ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態と同じOを使用する。TEMAHとOを処理室201内に交互供給してHfO膜をウエハ200上に形成する。HfO膜形成のシーケンスも第1の実施の形態と同様である。
【0073】
(第2の実施の形態の変形例)
次に、本開示の好ましい第2の実施の形態の変形例について説明する。第2の実施の形態と異なる点は、ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態ではOを使用したが、本変形例では窒素含有ガス(窒化ガス、窒化剤)としてNHを使用する点である。その他は実質的に第3の実施の形態と同様である。本変形例では、TEMAHとNHとを処理室201内に交互供給してハフニウム窒化膜(HfN膜)をウエハ200上に形成する。
【0074】
(第3の実施の形態)
次に、本開示の好ましい第3の実施形態について説明する。この第3の実施の形態で好適に使用される基板処理装置10は、上述の第1の実施の形態で好適に使用される基板処理装置10と同様の構成である。ガス供給管310からノズル410を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態ではTMAを使用したが、本実施の形態では、ジルコニウム元素を含む有機化合物の一例として、TEMAZを使用する。ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態と同じOを使用する。TEMAZとOを処理室201内に交互供給してZrO膜をウエハ200上に形成する。ZrO膜形成のシーケンスも第1の実施の形態と同様である。
【0075】
(第3の実施の形態の変形例)
次に、本開示の好ましい第3の実施の形態の変形例について説明する。第3の実施の形態と異なる点は、ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態ではOを使用したが、本変形例では窒素含有ガス(窒化ガス、窒化剤)としてNHを使用する点である。その他は実質的に第3の実施の形態と同様である。本変形例では、TEMAZとNHとを処理室201内に交互供給してジルコニウム窒化膜(ZrN膜)をウエハ200上に形成する。
【0076】
(第4の実施の形態)
次に、本開示の好ましい第4の実施形態について説明する。この第4の実施の形態で好適に使用される基板処理装置10は、上述の第1の実施の形態で好適に使用される基板処理装置10と同様の構成である。ガス供給管310からノズル410を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態ではTMAを使用したが、本実施の形態では、チタン元素を含む有機化合物の一例として、TDMAT(テトラキスジメチルアミノチタン、Ti[N(CH)を使用する。ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態と同じOを使用する。TDMATとOを処理室201内に交互供給してチタン酸化膜(TiO膜)をウエハ200上に形成する。TiO膜形成のシーケンスも第1の実施の形態と同様である。
【0077】
(第4の実施の形態の変形例)
次に、本開示の好ましい第4の実施の形態の変形例について説明する。第4の実施の形態と異なる点は、ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第4の実施の形態ではOを使用したが、本変形例では窒素含有ガス(窒化ガス、窒化剤)としてNHを使用する点である。その他は実質的に第4の実施の形態と同様である。本変形例では、TDMATとNHとを処理室201内に交互供給してチタン窒化膜(TiN膜)をウエハ200上に形成する。
【0078】
(第5の実施の形態)
次に、本開示の好ましい第5の実施形態について説明する。この第5の実施の形態で好適に使用される基板処理装置10は、上述の第1の実施の形態で好適に使用される基板処理装置10と同様の構成である。ガス供給管310からノズル410を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態ではTMAを使用したが、本実施の形態では、シリコン元素を含む有機化合物の一例として、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン、SiH(N(CH)を使用する。ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態と同じOを使用する。3DMASとOを処理室201内に交互供給してSiO膜をウエハ200上に形成する。SiO膜形成のシーケンスも第1の実施の形態と同様である。
【0079】
(第5の実施の形態の変形例)
次に、本開示の好ましい第5の実施の形態の変形例について説明する。第5の実施の形態と異なる点は、ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第5の実施の形態ではOを使用したが、本変形例では窒素含有ガス(窒化ガス、窒化剤)としてNHを使用する点である。その他は実質的に第5の実施の形態と同様である。本変形例では、3DMASとNHとを処理室201内に交互供給してシリコン窒化膜(SiN膜)をウエハ200上に形成する。
【0080】
(第6の実施の形態)
次に、本開示の好ましい第6の実施形態について説明する。この第6の実施の形態で好適に使用される基板処理装置10は、上述の第1の実施の形態で好適に使用される基板処理装置10と同様の構成である。ガス供給管310からノズル410を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態ではTMAを使用したが、本実施の形態では、シリコン元素を含む化合物の一例として、HCDS(ヘキサクロロジシラン、SiCl)を使用する。ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態ではOを使用したが、本実施の形態では、酸化ガス(酸化剤)として、酸素(O)と水素(H)を使用する。HCDSと、OおよびHと、を処理室201内に交互供給してSiO膜をウエハ200上に形成する。SiO膜形成のシーケンスも第1の実施の形態と同様である。
【0081】
(第6の実施の形態の変形例)
次に、本開示の好ましい第6の実施の形態の変形例について説明する。第6の実施の形態と異なる点は、ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第6の実施の形態ではOとHを使用したが、本変形例では窒素含有ガス(窒化ガス、窒化剤)としてNHを使用する点である。その他は実質的に第6の実施の形態と同様である。本変形例では、HCDSとNHとを処理室201内に交互供給してシリコン窒化膜(SiN膜)をウエハ200上に形成する。
【0082】
(第7の実施の形態)
次に、本開示の好ましい第7の実施形態について説明する。この第7の実施の形態で好適に使用される基板処理装置10は、上述の第1の実施の形態で好適に使用される基板処理装置10と同様の構成である。ガス供給管310からノズル410を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態ではTMAを使用したが、本実施の形態では六フッ化タングステン(WF)ガスを使用する。ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第1の実施の形態ではOを使用したが、本実施の形態ではジボラン(B)ガスを使用する。Bは還元剤として用いられる。WFとBを処理室201内に交互供給してタングステン膜(W膜)をウエハ200上に形成する。W膜形成のシーケンスも第1の実施の形態と同様である。
【0083】
(第7の実施の形態の変形例1)
次に、本開示の好ましい第7の実施の形態の変形例1について説明する。第7の実施の形態と異なる点は、ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第7の実施の形態ではBガスを使用したが、本変形例1ではBガスに加えて、Oガスを使用する点である。その他は実質的に第7の実施の形態と同様である。ただし、Oガスは、新たに別のガス供給管およびノズルを設けて流してもよい。本変形例1では、WF、B、Oガスを処理室201内に互いに混合しないよう繰り返し供給してタングステン酸化膜(WO膜)をウエハ200上に形成する。
【0084】
(第7の実施の形態の変形例2)
次に、本開示の好ましい第7の実施の形態の変形例2について説明する。第7の実施の形態の変形例1と異なる点は、ガス供給管320からノズル420を介して処理室201内に供給するガスとして、第7の実施の形態の変形例1ではBガスおよびOガスを使用したが、本変形例2では、BガスおよびNHガスを使用する点である。その他は実質的に第7の実施の形態の変形例1と同様である。本変形例2では、WF、B、NHガスガスを処理室201内に互いに混合しないよう繰り返し供給してタングステン窒化膜(WN膜)をウエハ200上に形成する。
【0085】
上記第2~第7の実施の形態においても、処理室201を構成する反応管203は赤外線に対する反射率が低い透明石英で構成しているが、ノズル410は、反応管203を構成する部材よりも赤外線に対する反射率が高い不透明石英で構成している。また、ノズル410に使用する、赤外線に対する反射率が高い不透明石英は、内部に気泡を含有しているので、その気泡により、ノズル410の内部の表面が細かな凸凹形状となっており、ノズル410内のガスの流れは乱流となる。これらの結果、炉内設定温度やウエハ200の温度よりも、ノズル410の内部を流れるガスの温度が低くなるので、ウエハ200の温度を上げてウエハ200上に成膜される膜中に不純物(有機化合物においては有機物)を取り込まれにくくすると共に、ノズル410内での異物発生の問題も生じにくくなる。
【0086】
このように、第1~第7の実施の形態において使用した基板処理装置10は、酸化膜、窒化膜、メタル膜を形成する場合に適用でき、成膜する膜種によらず適用可能だが、自己分解温度より高い温度で成膜するプロセスに対して特に有効である。
【0087】
また、第1~第7の実施の形態において使用した基板処理装置10は、反応管203を構成する部材よりも赤外線に対する反射率が高い第2の部材で構成された原料ガス用のノズル410に供給するガス種によらず適用可能だが、特に、自己分解温度より高い温度で成膜するプロセスに用いられる原料ガスに対して有効である。例えば、第1~第7の実施の形態において使用したガス種の他にも、DCS(ジクロロシラン、SiHCl)、BTBAS(ビスターシャリブチルアミノシラン、SiH[NH(C)])、モノシラン(SiH)、塩化チタン(TiCl)等にも適用可能である。この中でも、有機系原料は熱分解温度が低いため特に有効である。
【0088】
また、第1~第7の実施の形態において使用した基板処理装置10は、赤外線に対する反射率が第1の部材および第2の部材より低い第3の部材、もしくは、赤外線に対する吸収率が第1の部材および第2の部材より高い第4の部材で構成された反応ガス用のノズル420に供給するガス種によらず適用可能だが、特に、自己分解温度より低い温度で成膜するプロセスに用いられる反応ガスであって、失活しにくい反応ガスに対して有効である。例えば、O、OおよびH、亜酸化窒素(NO)、水蒸気(HO)、NH等にも適用可能である。
【0089】
また、第1~第7の実施の形態において使用した基板処理装置10では、自己分解温度より低い温度で成膜するプロセスを行う場合は、原料ガス用のノズル410を、赤外線に対する反射率が第1の部材および第2の部材より低い第3の部材、もしくは、赤外線に対する吸収率が第1の部材および第2の部材より高い第4の部材で構成してもよい。その際、用いられる原料ガスは、自己分解温度より低い温度で成膜するプロセスで用いられる原料ガスであればガス種によらず適用可能であり、例えば、第1~第7の実施の形態において使用したガス種の他にも、DCS、BTBASSiH、TiCl等にも適用可能である。
【0090】
上記の第1~第7の実施の形態は、適宜、組み合わせて各実施の形態で形成される膜の複合膜を形成する場合にも適用可能である。例えば、第1の実施の形態と第5の実施の形態とを組み合わせて、複数の有機化合物を用いてチタンアルミニウム酸化膜(TiAlO膜)を形成する場合にも適用可能である。また、例えば、第6の実施の形態とその変形例とを組み合わせて、複数の反応ガスである酸素含有ガスと窒素含有ガスを用いてシリコン酸窒化膜(SiON膜)を形成する場合にも適用可能である。
【0091】
なお、本明細書における原料ガスノズルは、好適には、ガス供給時にウエハ200上の圧力と同等以上の圧力の経路に用いられ、バッチ式、枚葉式に限定されるものではない。
【0092】
以上、本開示の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本開示はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本開示の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【0093】
日本出願特願2018-063255号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0094】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0095】
10 基板処理装置
200 ウエハ
203 反応管
410 ノズル
420 ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9