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特許7066962抗菌性高分子コーティング組成物および抗菌性高分子フィルム
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  • 特許-抗菌性高分子コーティング組成物および抗菌性高分子フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】抗菌性高分子コーティング組成物および抗菌性高分子フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20220509BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20220509BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20220509BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20220509BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20220509BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20220509BHJP
   C08G 18/40 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D7/40
C09D175/04
C09D5/14
C08G18/62 016
C08G18/48 037
C08G18/48 054
C08G18/40 063
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021505312
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 KR2020004455
(87)【国際公開番号】W WO2020204599
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】10-2019-0037788
(32)【優先日】2019-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ミン、ジーヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミングー
(72)【発明者】
【氏名】オ、ミヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジンキュ
(72)【発明者】
【氏名】シム、ホン シク
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0080863(KR,A)
【文献】特表2018-517013(JP,A)
【文献】特開平7-239548(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0053836(KR,A)
【文献】国際公開第2011/083635(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/013497(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/083259(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106497299(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00、101/00-201/10
C08G 18/00-18/87
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂;
エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体;および
光感応剤;
を含む、
抗菌性高分子コーティング組成物。
【請求項2】
前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂は、
炭素数1~10のアルキル(メタ)アクリレート;
炭素数1~10のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;および
ビニル系単量体;
を含む
単量体混合物の共重合体を含む、
請求項1に記載の抗菌性高分子コーティング組成物。
【請求項3】
前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体は、
1,000~5,000の重量平均分子量を有する、
請求項1または2に記載の抗菌性高分子コーティング組成物。
【請求項4】
前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体は、
ポリ(炭素数1~5のオキシアルキレン(Oxy-A1))-ポリ(炭素数1~5のオキシアルキレン(Oxy-A2))グリコールランダム共重合体を含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の抗菌性高分子コーティング組成物:
前記A1およびA2の炭素数は異なり、少なくとも1つは炭素数2である。
【請求項5】
前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体は、
1,000~5,000の重量平均分子量を有するポリオキシテトラメチレン-ポリオキシエチレングリコール共重合体である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の抗菌性高分子コーティング組成物。
【請求項6】
前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂100重量部対比、
前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体10~100重量部;および
前記光感応剤0.01~5重量部;
を含む、
請求項1から5のいずれか1項に記載の抗菌性高分子コーティング組成物。
【請求項7】
前記光感応剤は、ポルフィン系(porphine)化合物、ポルフィリン系(porphyrins)化合物、クロリン系(chlorins)化合物、バクテリオクロリン系(bacteriochlorins)化合物、フタロシアニン系(phthalocyanine)化合物、ナフタロシアニン系(naphthalocyanines)化合物および5-アミノレブリンエステル系(5-aminolevulinate esters)からなる群より選択された1種以上を含む、
請求項1から6のいずれか1項に記載の抗菌性高分子コーティング組成物。
【請求項8】
前記光感応剤は、炭素数1~10のアルコキシが導入されたフェニル基が1~8個導入されたポルフィン化合物またはポルフィリン化合物を含む、
請求項1から7のいずれか1項に記載の抗菌性高分子コーティング組成物。
【請求項9】
熱開始剤または架橋剤をさらに含む、
請求項1から8のいずれか1項に記載の抗菌性高分子コーティング組成物。
【請求項10】
前記架橋剤は、多官能イソシアネートを含む、
請求項9に記載の抗菌性高分子コーティング組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の抗菌性高分子コーティング組成物の硬化物を含む
抗菌性高分子フィルム。
【請求項12】
3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂;およびエチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体を含む基材層、並びに
前記基材層に分散した光感応剤;
を含む、
抗菌性高分子フィルム。
【請求項13】
前記抗菌性高分子フィルムは、10μm~10,000μmの厚さを有する、
請求項12に記載の抗菌性高分子フィルム。
【請求項14】
KS L ISO27447により測定した抗菌性が99%以上である、
請求項12または13に記載の抗菌性高分子フィルム。
【請求項15】
前記基材層は、前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂100重量部対比、前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体10~100重量部を含む、
請求項12から14のいずれか1項に記載の抗菌性高分子フィルム。
【請求項16】
前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体は、1,000~5,000の重量平均分子量を有する、
請求項12から15のいずれか1項に記載の抗菌性高分子フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性高分子コーティング組成物および抗菌性高分子フィルムに関する。
【0002】
関連出願との相互参照
【0003】
本出願は、2019年4月1日付の韓国特許出願第10-2019-0037788号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0004】
光感応剤(photosensitizer)は光を吸収して活性酸素種(ROS)を生成させるが、外部から特定波長の光を照射して光感応剤から活性酸素種または自由ラジカルを発生させることで、各種病変部位や癌細胞の細胞死滅を誘導して破壊する光線力学療法(photodynamic therapy、PDT)などが幅広く用いられている。
【0005】
このような光線力学的反応(photodynamic reaction)を利用して抗菌性を有する高分子材料を開発しようとする多様な試みがあり、例えば、韓国登録特許第10-1465964号などでは、シリコーン樹脂などを溶融させた後、溶融した樹脂と光感応剤とを混合する方法や、シリコーン樹脂および光感応剤を溶媒に溶かして形成されたコーティング液を用いる方法が開示された。
【0006】
しかし、シリコーン樹脂などを溶融して光感応剤と混合する方法によれば、光感応剤とシリコーン樹脂との間の分散性が低いため、シリコーン樹脂中に光感応剤が均質に分布せずに凝集しうる。また、シリコーン樹脂と溶融する場合、溶融後のシリコーンの厚さを調節することが不可能で、適用される分野や用途に合わせた製品の生産が容易でなかったり、大量生産に適合しない限界があった。
【0007】
そして、シリコーン樹脂および光感応剤を溶媒に溶かして形成されたコーティング液を用いる場合、適用分野に大きな制限を受けることなく一定水準の抗菌性を達成できると知られているが、可視光領域の光を用いる時、十分な抗菌性を発現できる程度に活性酸素を生産することが容易でなく、また、生成された活性酸素がごく短時間だけ存在して過剰の光エネルギーを相対的に長い期間照射しなければならない限界があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、可視光領域の光を用いても高い抗菌性を長時間維持でき、大量生産工程に適した抗菌材料を提供できる抗菌性高分子コーティング組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、可視光領域の光を用いても高い抗菌性を長時間維持できる抗菌性コーティングフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書では、3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂;エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体;および光感応剤;を含む、抗菌性高分子コーティング組成物が提供される。
【0011】
また、本明細書では、前記抗菌性高分子コーティング組成物の硬化物を含む抗菌性高分子フィルムが提供される。
【0012】
さらに、本明細書では、3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂、およびエチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体を含む基材層、並びに前記基材層に分散した光感応剤;を含む、抗菌性高分子フィルムが提供される。
【0013】
以下、発明の具体的な実施形態による抗菌性高分子コーティング組成物および抗菌性高分子フィルムについてより具体的に説明する。
【0014】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびメタクリレートをすべて含む意味である。
【0015】
また、本明細書において、(共)重合体は、単独重合体(homo-polymer)と共重合体(co-polymer)をすべて含む意味である。
【0016】
発明の一実施形態によれば、3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂;エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体;および光感応剤;を含む、抗菌性高分子コーティング組成物が提供できる。
【0017】
本発明者らは、前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂とエチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体を共に、光感応剤と混合して製造された抗菌性高分子コーティング組成物から提供されるコーティングフィルムまたは成形品が可視光領域の光(380nm~780nm)を用いる場合にも高い抗菌性を長時間維持するだけでなく、その使用目的に応じて適切な範囲で抗菌性を制御できるという点を、実験を通して確認して、発明を完成した。
【0018】
これによって、前記実施形態の抗菌性高分子コーティング組成物は、多様な分野に容易に適用可能であり、大量生産にも適合するだけでなく、実際にコーティングフィルムやコーティング成形品に製造する時、可視光領域の光を適用しても高い抗菌性を実現でき、また、生成された活性酸素がかつて知られた抗菌性材料などに比べて長く残留して高い抗菌効率を実現できる。
【0019】
前記実施形態の抗菌性高分子コーティング組成物から提供される高分子フィルムまたは高分子成形品に対して可視光領域の光が照射されると、前記高分子フィルムまたは高分子成形品に含有された光感応剤から活性酸素種または自由ラジカルを発生させるが、上述のように、前記抗菌性高分子コーティング組成物に含まれる成分の相乗作用によって活性酸素がより効率的に生成できながらも活性酸素が残留する時間が非常に長くなる。
【0020】
これは、前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂とエチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体を共に使用することによると見られる。
【0021】
具体的には、前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体は親水性グループ(Hydrophilic group)であって、抗菌コーティング表面を親水性(Hydriphilic)表面にし、これによって、水溶液中に存在する菌との接近性を容易にすることで抗菌性を向上させるであろう。のdiffusion rangeは、抗菌コーティング表面から一定の距離内にあり、疎水性(Hydrophobic)表面は、菌の含まれている溶液がの拡散範囲(diffusion range)より遠くあるようにして抗菌効果がよく現れず、親水性(Hydrophilic)表面は、菌の含まれている溶液がの拡散範囲(diffusion range)内に位置するため、抗菌性能がよく発現すると見られる。
【0022】
具体的には、前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂は、前記抗菌性高分子コーティング組成物およびこれから提供される高分子フィルムまたは高分子成形品においてバインダー樹脂の役割を果たし、光感応剤を強固に担持する作用を果たすことができる。
【0023】
前記(メタ)アクリルポリオール樹脂の数平均分子量が低すぎると、コーティングフィルムがBrittleで割れやすく、コーティング層の形成が困難になる。また、前記(メタ)アクリルポリオール樹脂の数平均分子量が高すぎると、コーティング層の表面がソフト(Soft)で引っ掻かれやすく、べたついてコーティング層の形成が困難になる。
【0024】
前記(メタ)アクリルポリオール樹脂の数平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0025】
前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂は、1種以上の(メタ)アクリレート系単量体と1種以上のヒドロキシ(メタ)アクリレート系単量体との間の共重合体であってもよいし、より具体的には、炭素数1~10のアルキル(メタ)アクリレート;炭素数1~10のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;およびビニル系単量体;を含む単量体混合物から形成された共重合体であってもよい。
【0026】
前記ビニル系単量体は、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ハロゲンまたはアルキル置換スチレン、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル、ビニルトルエンなどがある。
【0027】
前記単量体混合物に含むことが可能な化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸およびこれらの無水物からなる群より選択された少なくとも1つの化合物;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートおよびカプロラクトンアクリレートからなる群より選択された少なくとも1つの化合物;スチレンおよび/またはビニルトルエン;メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、ノルマルブチルメタクリレート、ノルマルブチルアクリレートおよびイソプロピルメタクリレートからなる群より選択された少なくとも1つの化合物;が挙げられる。
【0028】
一方、前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体は、親水性(Hydriphilic)表面にし、これによって、水溶液中に存在する菌との接近性を容易にすることでSinglet Oxygenが効果的に作用できる領域(Area)内に菌を配列させることによって抗菌力を向上させるであろう。
【0029】
前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体は、1,000~5,000の重量平均分子量を有することができる。前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体の重量平均分子量が小さすぎる場合、前記抗菌性高分子コーティング組成物の硬化時に架橋結合が十分に起こらず、最終結果物の機械的物性が低下し、全体的な物性または性能の均一性が低下することがある。
【0030】
前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体の例が大きく限定されるものではないが、エチレングリコール繰り返し単位を含む重合体であるか、エチレングリコール繰り返し単位およびこれと異なる構造のアルキレングリコール繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
【0031】
より具体的には、前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体の例としては、ポリ(炭素数1~5のオキシアルキレン(Oxy-A1))-ポリ(炭素数1~5のオキシアルキレン(Oxy-A2))グリコールランダム共重合体が挙げられる。この時、前記A1およびA2の炭素数は異なり、少なくとも1つは炭素数2である。
【0032】
前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体のより具体的な例としては、1,000~5,000の重量平均分子量を有するポリオキシテトラメチレン-ポリオキシエチレングリコール共重合体が挙げられる。
【0033】
本明細書において、重量平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0034】
前記抗菌性高分子コーティング組成物は、前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂100重量部対比、前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体10~100重量部を含むことができる。
【0035】
前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂対比、前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体の含有量が小さすぎる場合、親水性(Hydrophilic)特性が不足して抗菌特性の発現が困難になる。前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂対比、前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体の含有量が高すぎる場合、硬化がうまくいかず、硬化度を向上させるために硬化剤を追加すれば、マトリックス内の親水性(Hydrophilic)バランスが崩れて抗菌効果が低下し、コーティング表面がsoftで押し跡などによる菌の生息しうる場所を設けて抗菌効果を阻害することがある。
【0036】
上述のように、前記抗菌性高分子コーティング組成物の硬化後に可視光線領域の光が照射される場合、前記光感応剤が反応して活性酸素などを発生させることができるが、このために、前記抗菌性高分子コーティング組成物は、所定の含有量で光感応剤を含むことができる。
【0037】
具体的には、前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂100重量部対比、光感応剤0.001~5重量部を含むことができる。
【0038】
一方、前記光感応剤としては、通常広く知られた化合物を使用することができ、例えば、ポルフィン系(porphine)化合物、ポルフィリン系(porphyrins)化合物、クロリン系(chlorins)化合物、バクテリオクロリン系(bacteriochlorins)化合物、フタロシアニン系(phthalocyanine)化合物、ナフタロシアニン系(naphthalocyanines)化合物、5-アミノレブリンエステル系(5-aminoevuline esters)またはこれらの2種以上の化合物を使用することができる。
【0039】
ただし、前記抗菌性高分子コーティング組成物から製造される最終製品においてより高い抗菌性および抗菌性維持性能を実現するために、ポルフィン系(porphine)化合物またはポルフィリン系(porphyrins)化合物を使用することが好ましく、より好ましくは、前記光感応剤として、Zn(II) meso-Tetra(4-carboxyphenyl) Porphineまたは5,10,15,20-テトラキス(4-メトキシフェニル)-ポルフィンなどのように炭素数1~10のアルコキシが導入されたフェニル基が1~8個導入されたポルフィン化合物またはポルフィリン化合物を使用することができる。
【0040】
一方、前記抗菌性高分子フィルムは、熱開始剤または架橋剤をさらに含むことができる。
【0041】
前記架橋剤としては、(メタ)アクリルポリオール樹脂または前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体の架橋性官能基と架橋反応できるものであれば使用可能であり、具体的には、多官能イソシアネートなどのイソシアネート系架橋剤を使用することができる。
【0042】
前記架橋剤は、ポリオール樹脂を高分子化してコーティング層を形成させる役割を果たすことができ、また、追加的に添加されたエチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体の架橋性官能基と架橋を形成して、光感応剤を高分子マトリックス内によく担持させる作用を果たすことができる。これによって、前記抗菌性高分子コーティング組成物およびこれから提供される高分子フィルムまたは高分子成形品はより高い抗菌性を有することができる。
【0043】
前記イソシアネート系架橋剤は、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メタ-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、および4,4-メチレンビスジシクロヘキシルジイソシアネートなどからなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0044】
前記イソシアネート系架橋剤の含有量は、例えば、前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂100重量部対比、10~80重量部、または10~50重量部であってもよい。
【0045】
一方、前記開始剤は、公知の多様な開始剤を使用することができ、例えば、熱硬化性開始剤を使用することができる。このような熱硬化性開始剤としては、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルヒドロペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、N-ブチル-4,4'-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレートなどの熱ラジカル開始剤およびこれらの多様な混合物などが使用可能であり、トリプル酸塩、三フッ化ホウ素エーテル錯化合物、三フッ化ホウ素などのような陽イオン系、またはプロトン酸触媒、アンモニウム塩、ホスホニウム塩およびスルホニウム塩などの各種オニウム塩、およびメチルトリフェニルホスホニウム臭化物、エチルトリフェニルホスホニウム臭化物、フェニルトリフェニルホスホニウム臭化物、アセトフェニルベンジルメチルスルホニウムフッ化ホウ素化物などの熱によって作用する陽イオン開始剤などを使用してもよい。
【0046】
一方、前記抗菌性高分子コーティング組成物は、エポキシ基、オキセタニル基、環状エーテル基および環状チオエーテル基からなる群より選択された1種以上の熱硬化可能な官能基を含む熱硬化性樹脂をさらに含むことができる。
【0047】
前記熱硬化性樹脂は、前記抗菌性コーティング組成物の具体的な用途や物性などを考慮して、500g/mol~500,000g/mol、または1,000g/mol~100,000g/molの重量平均分子量を有することができる。本明細書において、重量平均分子量は、GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0048】
前記熱硬化性樹脂としては、通常知られた熱硬化性バインダーなどを使用することができる。例えば、前記熱硬化性樹脂としては、分子中に2個以上の環状エーテル基および/または環状チオエーテル基(以下、環状(チオ)エーテル基という)を有する樹脂を使用することができ、また、2官能性のエポキシ樹脂を使用することができる。その他、ジイソシアネートやその2官能性ブロックイソシアネートも使用可能である。
【0049】
前記分子中に2個以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性バインダーは、分子中に3、4または5員環の環状エーテル基、または環状チオエーテル基のうちのいずれか一方または2種の基を2個以上有する化合物になってもよい。また、前記熱硬化性バインダーは、分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有する多官能エポキシ化合物、分子中に少なくとも2個以上のオキセタニル基を有する多官能オキセタン化合物または分子中に2個以上のチオエーテル基を有するエピスルフィド樹脂などになってもよい。
【0050】
前記多官能エポキシ化合物の具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、N-グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキサール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、ヘテロサイクリックエポキシ樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε-カプロラクトン変性エポキシ樹脂などが挙げられる。また、難燃性付与のために、リンなどの原子がその構造中に導入されたものを使用してもよい。これらのエポキシ樹脂は熱硬化することによって、硬化被膜の密着性、ハンダ耐熱性、無電解メッキ耐性などの特性を向上させる。
【0051】
前記多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートや、これらのオリゴマーまたは共重合体などの多官能オキセタン類のほか、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアーレン類、カリックスレゾルシンアーレン類、またはシルセスキオキサンなどのヒドロキシ基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他の、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0052】
前記分子中に2個以上の環状チオエーテル基を有する化合物としては、例えば、ジャパンエポキシレジン社製のビスフェノールA型エピスルフィド樹脂YL7000などが挙げられる。また、ノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基の酸素原子を硫黄原子に代替したエピスルフィド樹脂なども使用可能である。
【0053】
前記抗菌性高分子コーティング組成物は、無機微粒子をさらに含むことができる。前記無機微粒子は、上述した成分、例えば、3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂、および/またはエチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体に分散した形態で樹脂組成物に含まれる。
【0054】
前記無機微粒子として、粒径がナノスケールの無機微粒子、例えば、粒径が約100nm以下、または約10~約100nm、または約10~約50nmのナノ微粒子になってもよい。また、前記無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化チタン粒子、または酸化亜鉛粒子などを含むことができる。
【0055】
前記無機微粒子を含むことによって、前記組成物から製造されたフィルムの硬度をさらに向上させることができる。前記バインダーの総重量を100重量部とする時、前記無機微粒子を約0.1~約10重量部含むことができ、または約0.1~約5重量部含むことができる。
【0056】
前記無機微粒子を前記範囲に含むことによって、高硬度と可撓性がすべて優れた抗菌コーティングフィルムを形成することができる。
【0057】
前記抗菌性高分子コーティング組成物は、UV吸収剤、界面活性剤、黄変防止剤、レベリング剤、防汚剤など通常使用される添加剤を追加的に含んでもよい。また、その含有量は、抗菌コーティングフィルムの物性を低下させない範囲内で多様に調節できるので、特に限定はない。
【0058】
また、前記添加剤として黄変防止剤を含むことができ、前記黄変防止剤としては、ベンゾフェノン系化合物またはベンゾトリアゾール系化合物などが挙げられる。
【0059】
前記抗菌性高分子コーティング組成物は、有機溶媒または界面活性剤をさらに含むことができる。
【0060】
前記有機溶媒は、前記抗菌性高分子コーティング組成物に含まれる各成分を混合する時期に添加されるか、各成分が有機溶媒に分散または混合された状態で添加されながら前記抗菌性高分子コーティング組成物に含まれる。例えば、前記抗菌性高分子コーティング組成物は、含まれる成分の全固形分の濃度が1重量%~80重量%、または2~50重量%となるように有機溶媒を含むことができる。
【0061】
前記有機溶媒の非制限的な例を挙げると、ケトン類、アルコール類、アセテート類およびエーテル類、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。このような有機溶媒の具体例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンまたはイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、またはt-ブタノールなどのアルコール類;エチルアセテート、i-プロピルアセテート、またはポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;テトラヒドロフランまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0062】
前記界面活性剤の種類も大きく限定されるものではなく、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などを使用することができる。
【0063】
一方、発明の他の実施形態によれば、前記抗菌性高分子コーティング組成物の硬化物を含む抗菌性高分子フィルムが提供できる。
【0064】
上述のように、前記抗菌性高分子コーティング組成物を硬化して製造された抗菌性高分子フィルムは、多様な分野に容易に適用可能であり、大量生産にも適合するだけでなく、可視光領域の光を適用しても高い抗菌性を実現でき、特に、生成された活性酸素がかつて知られた抗菌性材料などに比べて長く残留して高い抗菌効率を実現できる。
【0065】
前記抗菌性高分子フィルムは、前記抗菌性高分子コーティング組成物を所定の基材上に塗布し、塗布された結果物を熱硬化することによって得られる。前記基材の具体的な種類や厚さは大きく限定されるものではなく、通常の高分子フィルムの製造に使用されると知られた基材を大きな制限なく使用可能である。
【0066】
前記抗菌性高分子コーティング組成物を塗布するのに通常使用される方法および装置を格別の制限なく使用可能であり、例えば、Meyer barなどのバーコーティング法、グラビアコーティング法、2roll reverseコーティング法、vacuum slot dieコーティング法、2rollコーティング法などを使用することができる。
【0067】
前記抗菌性高分子コーティング組成物のコーティング厚さは、最終的に製造される前記抗菌性高分子フィルムの用途などに応じて決定可能であり、例えば、前記抗菌性高分子コーティング組成物は、1μm~1,000μmの厚さにコーティング(塗布)される。
【0068】
前記熱硬化段階では、通常知られた熱源を用いて60℃以上の温度で硬化を行うことができる。
【0069】
また、前記抗菌性高分子コーティング組成物を熱硬化させる段階では、窒素大気条件を適用するために、窒素パージングなどを行うことができる。
【0070】
一方、発明のさらに他の実施形態によれば、3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂;およびエチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体を含む基材層、並びに前記基材層に分散した光感応剤;を含む、抗菌性高分子フィルムが提供できる。
【0071】
前記基材層が前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂およびエチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体を共に含むことによって、その内部に所定の高分子構造が形成可能であり、これによって、可視光領域の光を用いる場合にも高い抗菌性を長時間維持するだけでなく、その使用目的に応じて適切な範囲で抗菌性を制御することができる。
【0072】
このような抗菌性高分子フィルムに対して可視光領域の光が照射されると、前記基材層に含有された光感応剤から活性酸素種または自由ラジカルを発生させるが、上述のように、活性酸素がより効率的に生成できながらも活性酸素が残留する時間が非常に長くなる。
【0073】
前記基材層は、前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂100重量部対比、前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体10~100重量部を含むことができる。
【0074】
前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂対比、前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体の含有量が小さすぎる場合、親水性(Hydrophilic)特性が不足して前記基材層を含む抗菌性高分子フィルムの抗菌特性が低下することがある。
【0075】
また、前記3,000~20,000の数平均分子量を有する(メタ)アクリルポリオール樹脂対比、前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体の含有量が高すぎる場合、前記基材層の機械的物性が低下したり、基材層内の親水性(Hydrophilic)バランスが崩れて抗菌効果が低下し、コーティング表面がsoftで押し跡などによる菌の生息しうる場所を設けて抗菌効果を阻害することがある。
【0076】
さらに、上述のように、前記エチレングリコール繰り返し単位を含む(共)重合体は、1,000~5,000の重量平均分子量を有することができる。
【0077】
また、前記抗菌性高分子フィルムに対して、JIS R1702(KS L ISO27447:2011ファインセラミックス-半導体光触媒物質の抗菌試験方法)により測定した抗菌性が90%以上、または90%~99.99%であってもよい。
【0078】
前記抗菌性高分子フィルムは、10μm~10,000μmの厚さを有することができる。
【0079】
一方、発明のさらに他の実施形態によれば、上述した抗菌性高分子フィルムを含む電子製品が提供できる。
【0080】
前記電子製品の例が大きく限定されるものではなく、例えば、加湿器、水槽、冷蔵庫、エアワッシャ、水族館、空気清浄器などの有害なバクテリア(カビなど)が成長しやすい製品には適用が可能である。
【0081】
前記抗菌性高分子フィルムにおいて活性酸素またはラジカルを生成させるために、前記電子製品は光照射装置を備えることができる。また、前記電子製品は、生成された活性酸素またはラジカルを分配するための装置、例えば、空気循環装置などを追加的に備えてもよい。
【発明の効果】
【0082】
本発明によれば、可視光領域の光を用いても高い抗菌性を長時間維持でき、大量生産工程に適した抗菌材料を提供できる光硬化型抗菌コーティング組成物と、可視光領域の光を用いても高い抗菌性を長時間維持できる抗菌性コーティングフィルムが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】実施例1および比較例1の高分子フィルムの抗菌性を測定した結果を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
発明の実施形態を下記の実施例でより詳しく説明する。ただし、下記の実施例は発明の実施形態を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0085】
[製造例:(メタ)アクリルポリオール樹脂の製造]
【0086】
温度計と撹拌装置を備えた合成用4口フラスコに、n-ブチルアセテート(n-Butyl Acetate)20g、メチルメタクリレート35g、アゾイソブチロニトリル0.25gを挿入した後、還流温度まで昇温させ、還流が安定した後、60分間還流維持させた。
【0087】
そして、ヒドロキシエチルメタクリレート15g、スチレン10gおよびブチルメタクリレート10gを180分間均一に分離滴加し、反応物をブチルアセテートで希釈した。そして、前記反応物を60℃に冷却して、固形分50%のアクリルポリオール樹脂A(GPC法により測定したポリスチレン換算の数平均分子量は約10,000、ガラス転移温度は50℃)を得た。
【0088】
[実施例:抗菌性高分子コーティング組成物および抗菌性高分子フィルムの製造]
【0089】
実施例1
【0090】
前記製造例で合成された(メタ)アクリルポリオール樹脂10g、Polycerin DC-1800E(重量平均分子量が1,800g/molのNOF Corporation社のポリオキシテトラメチレン-ポリオキシエチレングリコールランダム共重合体)2g、光感応剤[Zn(II) meso-Tetra(4-carboxyphenyl) Porphine]をトルエンに3mMの濃度で溶かして、前記製造例で合成された(メタ)アクリルポリオール樹脂100重量比対比0.3重量比添加し、硬化剤(商品名TKA-100)0.3gとトルエンを追加的に加えて、抗菌性高分子コーティング溶液(固形分の濃度45%)を製造した。
【0091】
そして、前記コーティング液を#20barを用いてコーティングした後、120℃のオーブンで熱硬化を2分間進行させ、40℃のオーブンで24時間エージングして、10μmの厚さの抗菌性高分子フィルムを製造した。
【0092】
実施例2
【0093】
前記Polycerin DC-1800E2gの代わりにPolycerin DCB-2000 2gを用いた点を除き、実施例1と同様の方法で抗菌性高分子コーティング溶液(固形分の濃度を50%)および抗菌性高分子フィルム(10μmの厚さ)を製造した。
【0094】
実施例3
【0095】
前記Polycerin DC-1800E2gの代わりにPolycerin DC-1800E4gを用いた点を除き、実施例1と同様の方法で抗菌性高分子コーティング溶液(固形分の濃度を50%)および抗菌性高分子フィルム(10μmの厚さ)を製造した。
【0096】
実施例4
【0097】
前記Polycerin DC-1800E2gの代わりにPolycerin DC-1800E4gを用い、硬化剤(商品名TKA-100)0.3gの代わりに硬化剤(商品名TKA-100)0.6gを用いた点を除き、実施例1と同様の方法で抗菌性高分子コーティング溶液(固形分の濃度を50%)および抗菌性高分子フィルム(10μmの厚さ)を製造した。
【0098】
比較例1
【0099】
前記Polycerin DC-1800Eを用いない点を除き、実施例1と同様の方法で10μmの厚さの高分子フィルムを製造した。
【0100】
<実験例:実施例および比較例の高分子フィルムの抗菌性の測定>
【0101】
実験例1:抗菌性評価
【0102】
1)バクテリア懸濁液の製造
【0103】
試験バクテリアとしてKS L ISO27447規格に明示された標準大腸菌であるE.coli ATCC8739を用いた。前記E.coli ATCC8739菌株を白金ループを用いてLB栄養培地に接種し、37℃で16~24時間培養した後、5℃の冷蔵庫に保管した。1ヶ月以内に前記過程を模写して2次培養を繰り返した。2次培養する時、CFU(colony forming unit)の最大個数は10でなければならない。LB栄養培地は、25g/L Luria Broth powderと15g/L agar powder(Sigma-Aldrichから購入可能)を蒸留水に混合してから、autoclaveにて滅菌した後、~40℃まで温度が下がるとpetri dishに適正量定量して製造した。
【0104】
前記バクテリア培養液を遠心分離してバクテリアとLB液体培地を分離させた後、バクテリアを食塩水に移動した。Spectrophotometerを用いて600nmでバクテリア-食塩水液の吸収値が0.5となるように懸濁液を希釈し、前記バクテリア懸濁液を試験に用いた。
【0105】
具体的な希釈方法は、各plateは1/10ずつ希釈したものであるので、CFU個数も1/10ずつ減少する。Platingに使用された懸濁液の量は0.1mlである。CのCFU個数が299であり、使用された液の量が0.1mlであるので、299CFU/0.1ml=2,990CFU/mlになる。CのCFU個数は1,000を掛けた~3.0×10CFU/mlであり、Cはバクテリア原液(C0)を1/10希釈したものであるので、バクテリア懸濁液のCFU個数は3.0×10CFU/mlである。
【0106】
2)試験片へのバクテリア接種
【0107】
前記製造した試験片上に、バクテリア懸濁液(C、C、C、C)0.2mLをそれぞれ定量した後、その上に透過率が80%以上のポリプロピレン接着フィルムを配置して、光触媒試料を担持した高分子フィルムと接着フィルムとの間に位置した微生物懸濁液を含むサンドイッチ構造に製造した。
【0108】
3)抗菌試験(光条件;light)
【0109】
前記試験片それぞれに対して、(1)White LED1,000Luxを6時間照射する条件、および(2)Green LED1,000Luxを6時間照射する条件を適用し、(3)405nmおよび0.35mW/cmの条件、(4)それぞれ暗条件で6時間放置した場合と対比した。
【0110】
そして、それぞれ試料における菌の濃度を確認して、ウイルス減少因数(Virus Reduction Factor、R)を下記の一般式1により計算した。
【0111】
[一般式1]
R=log10[(V1×T1)/(V2×T2)]
R:logで表現されるウイルス減少濃度
V1:光処理前の試料の容量
T1:光処理前の試料のウイルス濃度
V2:光処理後の試料の容量
T2:光処理後の試料のウイルス濃度
【0112】
【表1】
【0113】
図1に示されているように、実施例1の抗菌性高分子コーティング組成物から製造された高分子フィルムが、比較例1の抗菌性高分子コーティング組成物から製造された高分子フィルムに比べてより高い抗菌性を示すことが確認された。
【0114】
より具体的には、前記表1の結果に示されているように、実施例1~4の抗菌性高分子コーティング組成物から製造された高分子フィルムは、それぞれ約1.9log10または2.0log10以上のウイルス減少因数を示し、約99%以上の抗菌性を有することが確認され、これに対し、比較例の抗菌性高分子コーティング組成物から製造された高分子フィルムは、1log10未満のウイルス減少因数を示し、実施例に比べて低い水準の抗菌性を示すことが確認された。
図1