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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/52 20060101AFI20220509BHJP
   B22F 7/04 20060101ALI20220509BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20220509BHJP
   C22C 1/04 20060101ALI20220509BHJP
   C22C 9/06 20060101ALN20220509BHJP
   C22C 9/00 20060101ALN20220509BHJP
【FI】
H01L21/52 C
B22F7/04 D
B22F3/24 D
C22C1/04 A
C22C9/06
C22C9/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017182631
(22)【出願日】2017-09-22
(65)【公開番号】P2019057691
(43)【公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】須鎌 千絵
(72)【発明者】
【氏名】江尻 芳則
(72)【発明者】
【氏名】中子 偉夫
(72)【発明者】
【氏名】石川 大
(72)【発明者】
【氏名】川名 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】根岸 征央
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-115865(JP,A)
【文献】特開2015-018843(JP,A)
【文献】特開2016-127219(JP,A)
【文献】国際公開第2017/043545(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/52
B22F 7/04
B22F 3/24-26
C22C 1/04-05
C22C 9/00-10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子搭載用支持部材上に、金属粒子及び分散媒を含む焼結性接合材料を介して半導体素子を載置する工程であり、平面視において、前記焼結性接合材料の外周縁が前記半導体素子の外周縁よりも大きい、載置工程と、
前記載置工程後、前記半導体素子の外周縁を超えて存在する前記焼結性接合材料から、前記分散媒の少なくとも一部を除去する乾燥工程と、
前記乾燥工程後、前記焼結性接合材料を加熱して、前記半導体素子搭載用支持部材と前記半導体素子とを、前記焼結性接合材料の焼結物を介して接合する接合工程と、
前記接合工程後、前記半導体素子の外周縁を超えて存在する、前記焼結性接合材料の焼結物を除去する除去工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記金属粒子が銅粒子を含み、前記銅粒子の含有量が、前記焼結性接合材料の全質量を基準として80質量%以上である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記銅粒子がサブマイクロ銅粒子及びフレーク状マイクロ銅粒子を含み、前記サブマイクロ銅粒子の含有量及び前記フレーク状マイクロ銅粒子の含有量の合計が、前記金属粒子の全質量を基準として80質量%以上である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記半導体素子がワイドバンドギャップ半導体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とを、金属粒子及び分散媒を含む焼結性接合材料を用いて接合する、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体パッケージ材料には、耐熱性(高温・高湿下での安定性や信頼性に優れること)が求められている。例えば、ハイブリッド自動車や電気自動車、電鉄、分散電源では、インバーターにパワー半導体が多く使われているが、パワー密度の向上が著しく、パッケージ材料は高温に晒される。また、カーエレクトロニクス分野で用いられる通常の半導体チップを使用するエレクトロニクスコントロールユニット(ECU)も、これまで車室内に搭載されていたが、より環境の厳しいエンジンルーム内へ搭載される方向にあり、より高い耐熱性が要求されている。さらに、ワイドバンドギャップ半導体(SiC等)も適用されてきており、200℃以上で高温動作させる用途も予想されている。
【0003】
このような高温条件下では、半導体素子の接合材としてこれまで用いられてきたはんだでは対応が困難である。そのため、金属微粒子を含むペーストを焼結して得られる焼結金属による接合が、高温対応の接合技術として提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、ペーストを用いて接合をする場合、接合時に半導体素子の外周部からはみ出したペーストが半導体素子端面に這い上がり、半導体素子が短絡する虞がある。このような這い上がりは、支持部材との接着性を高めようと、半導体素子を加圧しながら加熱した場合において特に顕著に現れる。
【0004】
そこで、ペーストの塗布面積を予め小さくしておき、接合時にペーストが半導体素子の外周縁からはみ出ないようにする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-214340号公報
【文献】特開2015-153966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体素子は、動作時に通電による発熱と冷却を繰り返す。このとき、半導体素子及び半導体素子近傍の部材は、各々の線膨張係数に従った伸縮動作を繰り返すため、半導体素子の周縁部には一定の負荷がかかる。この点につき、特許文献2の方法では、半導体素子の面積よりもペーストの焼結物である焼結金属層の面積が小さく、同文献の図1に示されるように半導体素子の周縁部には焼結金属層が形成されない。半導体素子の周縁部に焼結金属層が形成されない場合、半導体動作時に接合界面において界面剥離が生じる虞がある。この界面剥離は、半導体装置の接続信頼性を低下させる原因となる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、接続信頼性に優れる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、半導体素子搭載用支持部材上に、金属粒子及び分散媒を含む焼結性接合材料を介して半導体素子を載置する工程であり、平面視において、焼結性接合材料の外周縁が半導体素子の外周縁よりも大きい、載置工程と、半導体素子の外周縁を超えて存在する焼結性接合材料から、分散媒の少なくとも一部を除去する乾燥工程と、焼結性接合材料を加熱して、半導体素子搭載用支持部材と半導体素子とを、焼結性接合材料の焼結物を介して接合する接合工程と、半導体素子の外周縁を超えて存在する、焼結性接合材料の焼結物を除去する除去工程と、を備える、半導体装置の製造方法を提供する。
【0009】
本発明では、焼結性接合材料の焼結を進行させる前に、乾燥工程を必須とする。これにより、特に半導体素子の外周縁を超えて存在する焼結性接合材料において、当該材料に含まれる分散媒の揮発が進む。分散媒が揮発した金属粒子の堆積層を焼結したとしても充分な可撓性も密着性も得られない。すなわち、当該堆積層は、室温から焼成温度である数百度に昇温した際に、熱膨張率差で生じる変位により半導体素子搭載用支持部材上に定着することができず、金属焼結片となる。金属焼結片は、除去工程により好適に除去することができる。得られた半導体装置においては、半導体素子端部への焼結性接合材料の這い上がりもなく、また、半導体素子と半導体素子搭載用支持部材とが、半導体素子の接合面と略同面積の焼結物により接合されることとなる。いずれも従来の課題を解決するものであり、本発明は、接続信頼性に優れる半導体装置の製造方法を提供することができると言える。
【0010】
本発明において、金属粒子が銅粒子を含み、銅粒子の含有量が、焼結性接合材料の全質量を基準として80質量%以上であることが好ましい。
【0011】
本発明において、銅粒子がサブマイクロ銅粒子及びフレーク状マイクロ銅粒子を含み、サブマイクロ銅粒子の含有量及びフレーク状マイクロ銅粒子の含有量の合計が、金属粒子の全質量を基準として80質量%以上であってもよい。
【0012】
本発明において、半導体素子はワイドバンドギャップ半導体であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、接続信頼性に優れる半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る半導体装置の製造方法により得られる半導体装置の一例を示す模式断面図である。
図2】本実施形態に係る半導体装置の製造方法により得られる半導体装置の他の例を示す模式断面図である。
図3】実施例の封止サンプルについての断面SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
以下、図面を参照しながら好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
(焼結性接合材料)
本実施形態に係る半導体装置の製造方法で用いられる焼結性接合材料の一例を以下に示す。
【0018】
本実施形態に係る焼結性接合材料は、金属粒子及び分散媒を含んでおり、接合用の金属ペーストということができる。特に、焼結性接合材料が金属粒子として銅粒子を含む場合は、接合用銅ペーストということができる。
【0019】
(金属粒子)
本実施形態に係る金属粒子としては、サブマイクロ銅粒子、フレーク状マイクロ銅粒子、これら以外の銅粒子、その他の金属粒子等が挙げられる。
【0020】
(サブマイクロ銅粒子)
サブマイクロ銅粒子としては、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子を含むものが挙げられ、例えば、体積平均粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子を用いることができる。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.12μm以上であれば、サブマイクロ銅粒子の合成コストの抑制、良好な分散性、表面処理剤の使用量の抑制といった効果が得られ易くなる。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.8μm以下であれば、サブマイクロ銅粒子の焼結性が優れるという効果が得られ易くなる。より一層上記効果を奏するという観点から、サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径は、0.15μm以上0.8μm以下であってもよく、0.15μm以上0.6μm以下であってもよく、0.2μm以上0.5μm以下であってもよく、0.3μm以上0.45μm以下であってもよい。
【0021】
なお、本願明細書において体積平均粒径とは、50%体積平均粒径を意味する。銅粒子の体積平均粒径を求める場合、原料となる銅粒子、又は金属ペーストから揮発成分を除去した乾燥銅粒子を、分散剤を用いて分散媒に分散させたものを光散乱法粒度分布測定装置(例えば、島津ナノ粒子径分布測定装置(SALD-7500nano,株式会社島津製作所製))で測定する方法等により求めることができる。光散乱法粒度分布測定装置を用いる場合、分散媒としては、ヘキサン、トルエン、α-テルピネオール等を用いることができる。
【0022】
サブマイクロ銅粒子は、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子を10質量%以上含むことができる。金属ペーストの焼結性の観点から、サブマイクロ銅粒子は、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子を20質量%以上含むことができ、30質量%以上含むことができ、100質量%含むことができる。サブマイクロ銅粒子における粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子の含有割合が20質量%以上であると、銅粒子の分散性がより向上し、粘度の上昇、ペースト濃度の低下をより抑制することができる。
【0023】
銅粒子の粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)像から算出することができる。銅粒子の粉末を、SEM用のカーボンテープ上にスパチュラで載せ、SEM用サンプルとする。このSEM用サンプルをSEM装置により5000倍で観察する。このSEM像の銅粒子に外接する四角形を画像処理ソフトにより作図し、その一辺をその粒子の粒径とする。
【0024】
サブマイクロ銅粒子の含有量は、金属粒子の全質量を基準として、20質量%以上90質量%以下であってもよく、30質量%以上90質量%以下であってもよく、35質量%以上85質量%以下であってもよく、40質量%以上80質量%以下であってもよい。サブマイクロ銅粒子の含有量が上記範囲内であることで接合性に優れる焼結物(焼結金属層)を形成することが容易となる。
【0025】
サブマイクロ銅粒子の含有量は、サブマイクロ銅粒子の質量及びフレーク状マイクロ銅粒子の質量の合計を基準として、20質量%以上90質量%以下であってもよい。サブマイクロ銅粒子の上記含有量が20質量%以上であれば、フレーク状マイクロ銅粒子の間を充分に充填することができ、接合性に優れる焼結物を形成することが容易となる。サブマイクロ銅粒子の上記含有量が90質量%以下であれば、金属ペーストを焼結した時の体積収縮を充分に抑制できるため、接合性に優れる焼結物を形成することが容易となる。より一層上記効果を奏するという観点から、サブマイクロ銅粒子の含有量は、サブマイクロ銅粒子の質量及びフレーク状マイクロ銅粒子の質量の合計を基準として、30質量%以上85質量%以下であってもよく、35質量%以上85質量%以下であってもよく、40質量%以上80質量%以下であってもよい。
【0026】
サブマイクロ銅粒子の形状は、特に限定されるものではない。サブマイクロ銅粒子の形状としては、例えば、球状、塊状、針状、フレーク状、略球状及びこれらの凝集体が挙げられる。分散性及び充填性の観点から、サブマイクロ銅粒子の形状は、球状、略球状、フレーク状であってもよく、燃焼性、分散性、フレーク状マイクロ粒子との混合性等の観点から、球状又は略球状であってもよい。
【0027】
サブマイクロ銅粒子は、分散性、充填性、及びフレーク状マイクロ粒子との混合性の観点から、アスペクト比が5以下であってもよく、3以下であってもよい。本明細書において、「アスペクト比」とは、粒子の長辺/厚みを示す。粒子の長辺及び厚みの測定は、例えば、粒子のSEM像から求めることができる。
【0028】
サブマイクロ銅粒子は、特定の表面処理剤で処理されていてもよい。特定の表面処理剤としては、例えば、炭素数8~16の有機酸が挙げられる。炭素数8~16の有機酸としては、例えば、カプリル酸、メチルヘプタン酸、エチルヘキサン酸、プロピルペンタン酸、ペラルゴン酸、メチルオクタン酸、エチルヘプタン酸、プロピルヘキサン酸、カプリン酸、メチルノナン酸、エチルオクタン酸、プロピルヘプタン酸、ブチルヘキサン酸、ウンデカン酸、メチルデカン酸、エチルノナン酸、プロピルオクタン酸、ブチルヘプタン酸、ラウリン酸、メチルウンデカン酸、エチルデカン酸、プロピルノナン酸、ブチルオクタン酸、ペンチルヘプタン酸、トリデカン酸、メチルドデカン酸、エチルウンデカン酸、プロピルデカン酸、ブチルノナン酸、ペンチルオクタン酸、ミリスチン酸、メチルトリデカン酸、エチルドデカン酸、プロピルウンデカン酸、ブチルデカン酸、ペンチルノナン酸、ヘキシルオクタン酸、ペンタデカン酸、メチルテトラデカン酸、エチルトリデカン酸、プロピルドデカン酸、ブチルウンデカン酸、ペンチルデカン酸、ヘキシルノナン酸、パルミチン酸、メチルペンタデカン酸、エチルテトラデカン酸、プロピルトリデカン酸、ブチルドデカン酸、ペンチルウンデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルノナン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸、エチルシクロヘキサンカルボン酸、プロピルシクロヘキサンカルボン酸、ブチルシクロヘキサンカルボン酸、ペンチルシクロヘキサンカルボン酸、ヘキシルシクロヘキサンカルボン酸、ヘプチルシクロヘキサンカルボン酸、オクチルシクロヘキサンカルボン酸、ノニルシクロヘキサンカルボン酸等の飽和脂肪酸;オクテン酸、ノネン酸、メチルノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、サビエン酸等の不飽和脂肪酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o-フェノキシ安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ブチル安息香酸、ペンチル安息香酸、ヘキシル安息香酸、ヘプチル安息香酸、オクチル安息香酸、ノニル安息香酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。有機酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。このような有機酸と上記サブマイクロ銅粒子とを組み合わせることで、サブマイクロ銅粒子の分散性と焼結時における有機酸の脱離性を両立できる傾向にある。
【0029】
表面処理剤の処理量は、サブマイクロ銅粒子の表面に一分子層~三分子層付着する量であってもよい。この量は、サブマイクロ銅粒子の表面に付着した分子層数(n)、サブマイクロ銅粒子の比表面積(A)(単位m/g)と、表面処理剤の分子量(M)(単位g/mol)と、表面処理剤の最小被覆面積(S)(単位m/個)と、アボガドロ数(N)(6.02×1023個)から算出できる。具体的には、表面処理剤の処理量は、表面処理剤の処理量(質量%)={(n・A・M)/(S・N+n・A・M)}×100%の式に従って算出される。
【0030】
サブマイクロ銅粒子の比表面積は、乾燥させたサブマイクロ銅粒子をBET比表面積測定法で測定することで算出できる。表面処理剤の最小被覆面積は、表面処理剤が直鎖飽和脂肪酸の場合、2.05×10-19/1分子である。それ以外の表面処理剤の場合には、例えば、分子モデルからの計算、又は「化学と教育」(上江田捷博、稲福純夫、森巌、40(2),1992,p114-117)に記載の方法で測定できる。表面処理剤の定量方法の一例を示す。表面処理剤は、金属ペーストから分散媒を除去した乾燥粉の熱脱離ガス・ガスクロマトグラフ質量分析計により同定でき、これにより表面処理剤の炭素数及び分子量を決定できる。表面処理剤の炭素分割合は、炭素分分析により分析できる。炭素分分析法としては、例えば、高周波誘導加熱炉燃焼/赤外線吸収法が挙げられる。同定された表面処理剤の炭素数、分子量及び炭素分割合から上記式により表面処理剤量を算出できる。
【0031】
表面処理剤の上記処理量は、0.07質量%以上2.1質量%以下であってもよく、0.10質量%以上1.6質量%以下であってもよく、0.2質量%以上1.1質量%以下であってもよい。
【0032】
サブマイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているサブマイクロ銅粒子としては、例えば、CH-0200(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.36μm)、HT-14(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.41μm)、CT-500(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.72μm)、Tn-Cu100(大陽日酸株式会社製、体積平均粒径0.12μm)が挙げられる。
【0033】
(フレーク状マイクロ銅粒子)
フレーク状マイクロ銅粒子としては、最大径が1μm以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上の銅粒子を含むものが挙げられ、例えば、平均最大径が1μ以上20μm以下であり、アスペクト比が4以上の銅粒子を用いることができる。フレーク状マイクロ銅粒子の平均最大径及びアスペクト比が上記範囲内であれば、金属ペーストを焼結した際の体積収縮を充分に低減でき、接合性に優れる焼結物を形成することが容易となる。より一層上記効果を奏するという観点から、フレーク状マイクロ銅粒子の平均最大径は、1μm以上10μm以下であってもよく、3μm以上10μm以下であってもよい。フレーク状マイクロ銅粒子の最大径及び平均最大径の測定は、例えば、粒子のSEM像から求めることができ、後述するフレーク状構造の長径X及び長径の平均値Xavとして求められる。
【0034】
フレーク状マイクロ銅粒子は、最大径が1μm以上20μm以下の銅粒子を50質量%以上含むことができる。焼結物内での配向、補強効果、接合ペーストの充填性の観点から、フレーク状マイクロ銅粒子は、最大径が1μm以上20μm以下の銅粒子を70質量%以上含むことができ、80質量%以上含むことができ、100質量%含むことができる。接合不良を抑制する観点から、フレーク状マイクロ銅粒子は、例えば、最大径が20μmを超える粒子等の接合厚みを超えるサイズの粒子を含まないことが好ましい。
【0035】
フレーク状マイクロ銅粒子の長径XをSEM像から算出する方法を例示する。フレーク状マイクロ銅粒子の粉末を、SEM用のカーボンテープ上にスパチュラで載せ、SEM用サンプルとする。このSEM用サンプルをSEM装置により5000倍で観察する。SEM像のフレーク状マイクロ銅粒子に外接する長方形を画像処理ソフトにより作図し、長方形の長辺をその粒子の長径Xとする。複数のSEM像を用いて、この測定を50個以上のフレーク状マイクロ銅粒子に対して行い、長径の平均値Xavを算出する。
【0036】
フレーク状マイクロ銅粒子は、アスペクト比が4以上であってもよく、6以上であってもよい。アスペクト比が上記範囲内であれば、金属ペースト内のフレーク状マイクロ銅粒子が、接合面に対して略平行に配向することにより、金属ペーストを焼結させたときの体積収縮を抑制でき、接合性に優れる焼結物を形成することが容易となる。
【0037】
フレーク状マイクロ銅粒子の含有量は、金属粒子の全質量を基準として、1質量%以上90質量%以下であってもよく、10質量%以上70質量%以下であってもよく、20質量%以上50質量%以下であってもよい。フレーク状マイクロ銅粒子の含有量が、上記範囲内であれば、接合性に優れる焼結物を形成することが容易となる。
【0038】
サブマイクロ銅粒子の含有量及びフレーク状マイクロ銅粒子の含有量の合計は、金属粒子の全質量を基準として、80質量%以上であってもよい。サブマイクロ銅粒子の含有量及びフレーク状マイクロ銅粒子の含有量の合計が上記範囲内であれば、接合性に優れる焼結物を形成することが容易となる。より一層上記効果を奏するという観点から、サブマイクロ銅粒子の含有量及びフレーク状マイクロ銅粒子の含有量の合計は、金属粒子の全質量を基準として、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよく、100質量%であってもよい。
【0039】
フレーク状マイクロ銅粒子において、表面処理剤の処理の有無は特に限定されるものではない。分散安定性及び耐酸化性の観点から、フレーク状マイクロ銅粒子は表面処理剤で処理されていてもよい。表面処理剤は、接合時に除去されるものであってもよい。このような表面処理剤としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、オレイン酸等の脂肪族カルボン酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o-フェノキシ安息香酸等の芳香族カルボン酸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソボルニルシクロヘキサノール、テトラエチレングリコール等の脂肪族アルコール;p-フェニルフェノール等の芳香族アルコール;オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミン;ステアロニトリル、デカニトリル等の脂肪族ニトリル;アルキルアルコキシシラン等のシランカップリング剤;ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリコーンオリゴマー等の高分子処理材等が挙げられる。表面処理剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
表面処理剤の処理量は、粒子表面に一分子層以上の量であってもよい。このような表面処理剤の処理量は、フレーク状マイクロ銅粒子の比表面積、表面処理剤の分子量、及び表面処理剤の最小被覆面積により変化する。表面処理剤の処理量は、通常0.001質量%以上である。フレーク状マイクロ銅粒子の比表面積、表面処理剤の分子量、及び表面処理剤の最小被覆面積については、上述した方法により算出することができる。
【0041】
上記サブマイクロ銅粒子のみから金属ペーストを調製する場合、分散媒の揮発に伴う体積収縮及び焼結収縮が大きいため、金属ペーストの焼結時に被着面より剥離し易くなり、半導体素子等の接合においては充分なダイシェア強度及び接続信頼性が得られにくい。サブマイクロ銅粒子とフレーク状マイクロ銅粒子とを併用することで、金属ペーストを焼結させたときの体積収縮が抑制され、接合性に優れる焼結物を形成することが容易となる。
【0042】
本実施形態に係るフレーク状マイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているフレーク状マイクロ銅粒子としては、例えば、MA-C025(三井金属鉱業株式会社製、平均最大径4.1μm)、3L3(福田金属箔粉工業株式会社製、平均最大径7.3μm)、1110F(三井金属鉱業株式会社製、平均最大径5.8μm)、2L3(福田金属箔粉工業株式会社製、平均最大径9μm)が挙げられる。
【0043】
銅粒子の含有量は、焼結性接合材料の全質量を基準として80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。これにより、接合性に優れる焼結物を形成することが容易となる。
【0044】
(銅粒子以外のその他の金属粒子)
金属粒子としては、上述したサブマイクロ銅粒子及びマイクロ銅粒子以外のその他の金属粒子を含んでいてもよく、例えば、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金等の粒子を含んでいてもよい。その他の金属粒子は、体積平均粒径が0.01μm以上10μm以下であってもよく、0.01μm以上5μm以下であってもよく、0.05μm以上3μm以下であってもよい。その他の金属粒子を含んでいる場合、その含有量は、充分な接合性を得るという観点から、金属粒子の全質量を基準として、20質量%未満であってもよく、10質量%以下であってもよい。その他の金属粒子は、含まれなくてもよい。その他の金属粒子の形状は、特に限定されるものではない。
【0045】
銅粒子以外の金属粒子を含むことで、複数種の金属が固溶又は分散した焼結物を得ることができるため、焼結物の降伏応力、疲労強度等の機械的な特性が改善され、接続信頼性が向上し易い。また、複数種の金属粒子を添加することで、形成される焼結物は、特定の被着体に対して、接合強度及び接続信頼性が向上し易い。
【0046】
(分散媒)
分散媒は揮発性のものであることが好ましい。揮発性の分散媒としては、例えば、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、α-テルピネオール、イソボルニルシクロヘキサノール(MTPH)等の一価及び多価アルコール類;エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ-ブチロラクトン、炭酸プロピレン等のエステル類;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等の酸アミド;シクロヘキサノン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン等の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;炭素数1~18のアルキル基を有するメルカプタン類;炭素数5~7のシクロアルキル基を有するメルカプタン類が挙げられる。炭素数1~18のアルキル基を有するメルカプタン類としては、例えば、エチルメルカプタン、n-プロピルメルカプタン、i-プロピルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、i-ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン及びドデシルメルカプタンが挙げられる。炭素数5~7のシクロアルキル基を有するメルカプタン類としては、例えば、シクロペンチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン及びシクロヘプチルメルカプタンが挙げられる。
【0047】
分散媒の含有量は、金属粒子の全質量を100質量部として、5~50質量部であってもよい。分散媒の含有量が上記範囲内であれば、金属ペーストをより適切な粘度に調整でき、また、銅粒子の焼結を阻害しにくい。
【0048】
(添加剤)
金属ペーストには、必要に応じて、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ向上剤;シリコーン油等の消泡剤;無機イオン交換体等のイオントラップ剤等を適宜添加してもよい。
【0049】
(金属ペーストの調製)
金属ペーストは、上述のサブマイクロ銅粒子、マイクロ銅粒子、その他の金属粒子及び任意の添加剤を分散媒に混合して調製してもよい。各成分の混合後に、撹拌処理を行ってもよい。金属ペーストは、分級操作により分散液の最大粒径を調整してもよい。
【0050】
金属ペーストは、サブマイクロ銅粒子、表面処理剤、分散媒をあらかじめ混合して、分散処理を行ってサブマイクロ銅粒子の分散液を調製し、更にマイクロ銅粒子、その他の金属粒子及び任意の添加剤を混合して調製してもよい。このような手順とすることで、サブマイクロ銅粒子の分散性が向上してマイクロ銅粒子との混合性が良くなり、金属ペーストの性能がより向上する。サブマイクロ銅粒子の分散液に対し分級操作を行って、凝集物を除去してもよい。
【0051】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態に係る、半導体装置の製造方法は、半導体素子搭載用支持部材上に、金属粒子及び分散媒を含む焼結性接合材料を介して半導体素子を載置する載置工程と、半導体素子の外周縁を超えて存在する焼結性接合材料から、分散媒の少なくとも一部を除去する乾燥工程と、焼結性接合材料を加熱して、半導体素子搭載用支持部材と半導体素子とを、焼結性接合材料の焼結物を介して接合する接合工程と、半導体素子の外周縁を超えて存在する、焼結性接合材料の焼結物を除去する除去工程と、を備える。
【0052】
(載置工程)
焼結性接合材料を半導体素子搭載用支持部材上に設ける方法としては、焼結性接合材料を堆積させられる方法であれば特に限定されない。このような方法としては、例えば、スクリーン印刷、転写印刷、オフセット印刷、ジェットプリンティング法、ディスペンサー、ジェットディスペンサ、ニードルディスペンサ、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スリットコート、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、ステンシル印刷、ソフトリソグラフ、バーコート、アプリケータ、粒子堆積法、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ、電着塗装等を用いることができる。焼結性接合材料の厚みは、1μm以上1000μm以下であってもよく、10μm以上500μm以下であってもよく、50μm以上200μm以下であってもよく、10μm以上3000μm以下であってもよく、15μm以上500μm以下であってもよく、20μm以上300μm以下であってもよく、5μm以上500μm以下であってもよく、10μm以上250μm以下であってもよく、15μm以上150μm以下であってもよい。
【0053】
焼結性接合材料は、平面視において、焼結性接合材料の外周縁が半導体素子の外周縁よりも大きくなるように設けられる。これにより、焼結性接合材料の一部が、半導体素子の接合面から「はみ出る」状態となる。半導体素子搭載用支持部材と半導体素子との接合界面が、全体にわたって焼結性接合材料の焼結物により充分に接合されるよう、焼結性接合材料は、平面視において、半導体素子の外周縁から好ましくは少なくとも1mm、より好ましくは少なくとも5mmはみ出すように設けることができる。なお、一般的な半導体素子及び半導体素子搭載用支持部材のサイズに鑑み、当該はみ出し幅の上限は20mm程度とすることができる。
【0054】
焼結性接合材料上に半導体素子を載置する方法としては、例えば、チップマウンター、フリップチップボンダー、カーボン製又はセラミックス製の位置決め冶具が挙げられる。
【0055】
本工程により、半導体素子、半導体素子の自重が働く方向側に、半導体素子の接合面積を超える面積を有する焼結性接合材料、及び半導体素子搭載用支持部材がこの順に積層された前駆積層体を得ることができる。
【0056】
(乾燥工程)
本工程では、載置工程により得られた前駆積層体に乾燥処理を施す。これにより、特に、半導体素子の外周縁を超えて存在する焼結性接合材料から、分散媒の少なくとも一部を除去する。
【0057】
乾燥工程のガス雰囲気は大気中であってもよく、窒素、希ガス等の無酸素雰囲気中であってもよく、水素、ギ酸等の還元雰囲気中であってもよい。乾燥処理としては、常温乾燥であってもよく、加温乾燥であってもよく、減圧乾燥であってもよく、常温又は加温乾燥と減圧乾燥との組合せによる乾燥であってもよい。加温乾燥及び減圧乾燥には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉、熱板プレス装置等を用いることができる。
【0058】
なお、乾燥処理として例えば加温乾燥を行う場合は、加温温度及び時間は、使用した分散媒の種類及び量に合わせて適宜調整すればよい。加温温度及び時間としては、それぞれ50℃以上230℃以下、1分間以上120分間以下とすることができる。
【0059】
(接合工程)
本工程では、乾燥工程を経た前駆積層体に加熱処理を施すことで、焼結性接合材料の焼結を行う。加熱処理には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉等を用いることができる。
【0060】
接合工程のガス雰囲気は、焼結体、半導体素子、及び半導体素子搭載用支持部材の酸化抑制の観点から、無酸素雰囲気であってもよい。接合工程のガス雰囲気は、焼結性接合材料に含まれる金属粒子表面の酸化物を除去するという観点から、還元雰囲気であってもよい。無酸素雰囲気としては、例えば、窒素、希ガス等の無酸素ガス雰囲気、又は真空雰囲気が挙げられる。還元雰囲気としては、例えば、純水素ガス雰囲気、フォーミングガスに代表される水素及び窒素の混合ガス雰囲気、ギ酸ガスを含む窒素雰囲気、水素及び希ガスの混合ガス雰囲気、ギ酸ガスを含む希ガス雰囲気等が挙げられる。
【0061】
加熱処理時の到達最高温度は、半導体素子及び半導体素子搭載用支持部材への熱ダメージの低減及び歩留まりを向上させるという観点から、250℃以上450℃以下であってもよく、250℃以上400℃以下であってもよく、250℃以上350℃以下であってもよい。到達最高温度が、250℃以上であれば、到達最高温度保持時間が60分以下において焼結が充分に進行する傾向にある。
【0062】
到達最高温度保持時間は、分散媒を充分に(好ましくは全て)揮発させ、また、歩留まりを向上させるという観点から、1分以上60分以下であってもよく、1分以上40分未満であってもよく、1分以上30分未満であってもよい。
【0063】
接合時の圧力は特に限定されないが、焼結物における銅の含有量(堆積割合)が、焼結物の全体積を基準として65体積%以上となる条件であると好ましい。例えば、上記に記載した、サブマイクロ銅粒子、フレーク状マイクロ銅粒子等を含有する所定の焼結性接合材料を用いることで、接合時に加圧をしなくても、接合性に優れる焼結物を形成することができる。この場合、焼結性接合材料上に存在する半導体素子による自重のみ、又は半導体素子の自重に0.01MPa以下、好ましくは0.005MPa以下の圧力をさらに加えた状態で、充分な接合強度を得ることができる。この場合、特別な加圧装置が不要なため、歩留まりを損なうこと無く、ボイドの低減、接合強度及び接続信頼性をより一層向上させることができる。焼結性接合材料が0.01MPa以下の圧力を受ける方法としては、例えば、半導体素子上に重りを載せる方法等が挙げられる。
【0064】
歩留まり向上、焼結物の緻密度向上の観点から、半導体素子を介して接合用ペーストに対し加圧を伴っても良い。加圧圧力は0.01MPa以上10MPa以下とすることができる。0.01MPa以上0.1MPa以下程度の低圧であれば、剥離等の接合欠陥を抑えて歩留まりの向上が見込まれる。一方、1MPa以上10MPa以下であれば焼結物の緻密度の向上により、接合強度のさらなる向上や、熱伝導率の向上が見込める。加圧方法としては、重り、バネ冶具、シリコーンゴム等を用いた加圧冶具、熱圧着装置、熱板プレス装置が挙げられる。
【0065】
(除去工程)
本工程では、接合工程により形成された焼結物のうち、平面視において、半導体素子の外周縁を超えて存在する焼結物(焼結金属片)を除去する。すなわち、焼結性接合材料の、半導体素子の接合面からはみ出た部分から形成される、接合に寄与しない焼結物を除去する。これにより、そのような焼結物の脱落による動作不良を防止する。本工程は、例えば、エアガン、粘着シート、粘着テープ等を用いて実施することができる。
【0066】
<半導体装置>
本実施形態に係る半導体装置の製造方法により、図1に示す半導体装置を得ることができる。図1において、半導体装置100は、半導体素子2と、半導体素子搭載用支持部材3と、半導体素子2及び半導体素子搭載用支持部材3を接合する、焼結性接合材料の焼結物(焼結金属層)1を備える。本実施形態に係る半導体装置の製造方法により得られる半導体装置100は、半導体素子2と半導体素子搭載用支持部材3とが、半導体素子2の接合面2aと略同面積の焼結物1により接合されている。
【0067】
なお、半導体素子2には、シリコン(Si)等の一般的な半導体材料の他、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムナイトライド(GaN)等のワイドバンドギャップ半導体材料などを特に制限なく用いることができる。半導体素子2としては、具体的には、IGBT、ダイオード、ショットキーバリヤダイオード、MOS-FET、サイリスタ、ロジック、センサー、アナログ集積回路、LED、半導体レーザー、発信器等の半導体素子などが挙げられる。また、半導体素子搭載用支持部材3としては、リードフレーム、金属板貼付セラミックス基板(例えばDBC)、LEDパッケージ等の半導体素子搭載用基材、銅リボン及び金属フレーム等の金属配線、金属ブロック等のブロック体、端子等の給電用部材、放熱板、水冷板などが挙げられる。
【0068】
図2は、半導体装置の他の例を示す模式断面図である。図2に示す半導体装置110は、半導体素子2と半導体素子搭載用支持部材3とを、焼結性接合材料の焼結物(焼結金属層)1により接合した後、半導体素子2上部の端子(図示せず)をワイヤ4でリードフレーム5に接続し、最後に全体を絶縁性の封止材6で覆うことで得られるものである。
【実施例
【0069】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
<実施例1>
(金属ペーストの準備)
分散媒としてα-テルピネオール(和光純薬工業株式会社製)5.2g及びイソボルニルシクロヘキサノール(MTPH、日本テルペン化学株式会社製)6.8gと、サブマイクロ銅粒子としてCH-0200(三井金属鉱業株式会社製、0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子の含有量95質量%)52.8gとをポリ瓶に混合し、超音波ホモジナイザー(US-600、日本精機株式会社製)により19.6kHz、600W、1分間処理し分散液を得た。この分散液に、フレーク状マイクロ銅粒子としてMA-C025(三井金属鉱業株式会社製、平均最大径4.1μmであり、アスペクト比が6.6の銅粒子の含有量100質量%)35.2gを添加し、スパチュラで乾燥粉がなくなるまでかき混ぜた。ポリ瓶を密栓し、自転公転型攪拌装置(Planetry Vacuum Mixer ARV-310、株式会社シンキー製)を用いて、2000rpmで2分間撹拌し、減圧下、2000rpmで2分間撹拌して金属ペースト(焼結用銅ペースト)を得た。
【0071】
(載置工程)
サイズ19mm×25mm×3mm(厚さ)の銅基板と、サイズ5mm×5mm×150μm(厚さ)であり、接合面全面にスパッタリングによりチタン層/ニッケル層がこの順で設けられたSiチップと、を準備した。銅基板上に、10mm×10mmの正方形の開口を有する厚さ100μmのステンレスマスクとスキージを用いて、金属ペーストをステンシル印刷した。金属ペーストの印刷物上に、Siチップを、ニッケル層が金属ペーストに接するように置いた。Siチップをピンセットで軽く押さえてSiチップと金属ペーストとを密着させた。これにより前駆積層体を得た。
【0072】
(乾燥工程)
載置工程で得られた前駆積層体を、温風乾燥機(エスペック製)を用いて、大気中、160℃で5分間加温した。その後温風乾燥機を停止し、温風乾燥機内が100℃以下となってから前駆積層体を出した。これにより、特にSiチップの接合面からはみ出た金属ペーストから分散媒の少なくとも一部を除去した。
【0073】
(接合工程)
乾燥工程を経た前駆積層体をチューブ炉(株式会社エイブイシー製)にセットし、アルゴンガスを1L/minで流して空気をアルゴンガスに置換した。その後、水素ガスを300mL/minで流しながら350℃まで10分間かけて昇温、350℃で10分間保持の条件で加熱処理して、金属ペーストを焼結した。これにより、銅基板とSiチップとが、金属ペーストの焼結物である焼結金属層を介して接合された積層体を得た。その後、アルゴンガスを0.3L/minで流しながら冷却し、50℃以下で積層体を空気中に取り出した。
【0074】
(除去工程)
接合工程により形成された焼結物のうち、Siチップの外周縁を超えて存在する焼結物(焼結金属片)を除去した。除去は、エアガン(アズワン製)を用いた窒素ブローを10~120秒間実施して行った。
【0075】
<実施例2~8及び比較例1>
乾燥工程における雰囲気、加温温度及び加温時間を表1のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして載置工程~除去工程を実施した。
【0076】
<比較例2>
10mm×10mmの正方形の開口を有する厚さ100μmのステンレスマスクに代えて、3mm×3mmの正方形の開口を有する厚さ100μmのステンレスマスクを用いたこと以外は、比較例1と同様にして載置工程~接合工程を実施した。
【0077】
<各種評価>
(焼結金属片の除去性評価)
除去工程後、除去されずに残存した焼結金属片の面積が、金属ペーストを塗布した面積(チップ面積分を除く)の何割程度であるかを、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製)を用いて観察及び評価した。そして、下記基準に基づいて焼結金属片の除去性を評価した。得られた結果を表1に示す。なお、下記A又はBの基準を満たした場合に合格とした。
A:1割未満
B:1割以上2割未満
C:2割以上9割未満
D:9割以上
【0078】
【表1】
【0079】
(接続信頼性評価)
実施例及び比較例2について、銅基板の放熱面を除いた部分を封止材(封止樹脂)によって封止した。封止材には日立化成株式会社製固形封止材(CEL-400ZHF16、ガラス転移温度204℃、無機充填剤含有エポキシ系樹脂、弾性率17.1GPa、線膨張係数10.2×10-6/℃)を用いた。封止は、トンラスファーモールド装置を用いて、金型温度180℃、成形圧力6.9MPa、硬化加熱時間90秒間の条件にて行った。その後、封止後のサンプルを175℃のオーブンにて6時間加熱することで封止材を硬化した。これにより、各例の封止サンプルを作製した。
【0080】
得られた封止サンプルに対し温度サイクル試験を実施した。試験槽内にて封止サンプル(パッケージ)には温風と冷風によって温度サイクルが与えられた。まず、試験槽内が200℃±5℃で5分間以上保持されるように、温風を15分間送風した。次に、試験槽内が-40℃±5℃で5分間以上保持されるように、冷風を15分間送風した。これを温度サイクル1回とし、1000回まで温度サイクル試験を実施した。温度サイクル400回の時点と、1000回の時点において、SAM観察(Scanning Acoustic Microscope)により焼結金属層の密着面積率を算出し、接続信頼性を評価した。具体的な評価手法は以下のとおりである。
【0081】
まず、温度サイクル試験前に、封止サンプルの銅基板側から35MHzの超音波を照射し、焼結金属層で反射された超音波を測定することにより、基準となるSAM画像(焼結金属層の密着面積SDBを示す)を撮像した。次に温度サイクル400回後に、同様に焼結金属層のSAM画像を撮像した。温度サイクル試験前のSAM画像よりもコントラストが明るくなった箇所の面積SAを評価した。SDBからSAを減算した後、SDBで除算し、焼結金属層の密着面積率S400(%)を算出した。次に温度サイクル1000回後に同様に焼結金属層のSAM画像を撮像した。温度サイクル試験前のSAM画像よりもコントラストが明るくなった箇所の面積SAを評価した。SDBからSAを引算した後、SDBで除算し、焼結金属層の密着面積率S1000(%)を算出した。そして、下記基準に基づいて接続信頼性を評価した。得られた結果を表2に示す。なお、下記A又はBの基準を満たした場合に合格とした。
A:密着面積率が90%以上
B:密着面積率が70%以上90%未満
C:密着面積率が30%以上70%未満
D:密着面積率が30%未満
【0082】
【表2】
【0083】
(断面観察)
接続信頼性評価にて準備した実施例の封止サンプルについて、断面観察を行った。まず、レジノイド切断ホイールをつけたリファインソー・エクセル(リファインテック株式会社製)を用い、当該封止サンプル(ここでは実施例7)の観察したい断面付近で切断した。耐水研磨紙(カーボマックペーパー、リファインテック株式会社製)をつけた研磨装置(Refine Polisher HV、リファインテック株式会社製)で断面を削り、Siチップの断面を出した。余分な封止材を同様にして削り落とした。その後、バフ研磨剤を染み込ませたバフ研磨布をセットした研磨装置で断面を平滑にし,SEM用サンプルとした。このSEM用サンプルを、SEM装置(ESEM XL30、Philips社製)により、印加電圧10kVの条件で観察し、撮像した。図3は、実施例の封止サンプルについての断面SEM像である。図3に示すように、実施例の封止サンプルにおいては、半導体素子(Siチップ)2と、半導体素子搭載用支持部材(銅基板)3とが、半導体素子2の接合面と略同面積の焼結物(焼結金属層)1により接合され、それらが封止材6により封止されていることが分かった。
【0084】
実施例に示されるように、焼結接合前に適切な乾燥工程を実施することによって、焼結接合後に、金属焼結層周囲の(余分な)残存焼結金属片を好適に除去できた。これにより、半導体素子と略同面積の金属焼結層を形成することができ、半導体装置の接続信頼性が向上した。一方、比較例1に示したように、乾燥工程を実施しない場合には、残存焼結金属片を充分に除去できなかった。また、比較例2では、焼結金属層周囲に焼結金属片こそ観察されなかったが、接続信頼性が低かった。
【符号の説明】
【0085】
1…焼結性接合材料の焼結物(焼結金属層)、2…半導体素子、3…半導体素子搭載用支持部材、2a…半導体素子の接合面、4…ワイヤ、5…リードフレーム、6…封止材、100,110…半導体装置。
図1
図2
図3