(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】回路接続用接着剤組成物及び回路接続構造体
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20220509BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20220509BHJP
C09J 175/14 20060101ALI20220509BHJP
C09J 103/02 20060101ALI20220509BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20220509BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220509BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220509BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20220509BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20220509BHJP
H01B 1/20 20060101ALI20220509BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20220509BHJP
H05K 3/36 20060101ALI20220509BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J4/02
C09J175/14
C09J103/02
C09J9/02
C09J11/06
C09J11/08
C09J11/04
C09J7/30
H01B1/20 D
H01B5/16
H05K3/36 A
H05K1/14 E
(21)【出願番号】P 2017239330
(22)【出願日】2017-12-14
【審査請求日】2020-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】森尻 智樹
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健太
(72)【発明者】
【氏名】大當 友美子
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 弘行
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222804(JP,A)
【文献】特開2016-183270(JP,A)
【文献】特開2016-222894(JP,A)
【文献】特開2017-183200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
H01B 1/00- 1/24
H01B 5/00- 5/16
H05K 3/36
H05K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリロタキサン
、ラジカル重合性化合物、及びラジカル重合開始剤を含有
し、
前記ポリロタキサンの含有量が、接着剤組成物の導電粒子以外の固形分全質量を基準として、0.5~10質量%であり、
前記ラジカル重合性化合物の含有量が、前記ポリロタキサン及び前記ラジカル重合性化合物の総量を基準として、75~98質量%である、回路接続用接着剤組成物。
【請求項2】
前記ポリロタキサンが反応性官能基を有する、請求項1に記載の回路接続用接着剤組成物。
【請求項3】
前記反応性官能基が、(メタ)アクリロイル基、水酸基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載の回路接続用接着剤組成物。
【請求項4】
導電粒子をさらに含有する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤組成物。
【請求項5】
前記導電粒子の含有量が、前記接着剤組成物の前記導電粒子以外の固形分全質量を基準として、50質量%以下である、請求項
4に記載の回路接続用接着剤組成物。
【請求項6】
熱可塑性樹脂をさらに含有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤組成物。
【請求項7】
フィルム状に形成された、請求項1~
6のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤組成物。
【請求項8】
異方導電性を有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤組成物。
【請求項9】
第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、
第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が形成され、前記第二の回路電極と前記第一の回路電極とが互いに対向するように配置された第二の回路部材と、
前記第一の回路部材及び前記第二の回路部材の間に配置され、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とを互いに電気的に接続する回路接続部材と、
を備え、
前記回路接続部材が、請求項1~
8のいずれか一項に記載の回路接続用接着剤組成物の硬化物である、回路接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路接続用接着剤組成物及び回路接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子及びディスプレイ素子において、素子中の種々の回路部材同士を接着させる目的で種々の接着剤組成物が使用されている。このような接着剤組成物には、接着性に加えて、耐熱性、高温高湿状態における信頼性等の多岐にわたる特性が要求されている。例えば、特許文献1には、これら要求特性に応じて選択される添加剤を含有する接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らの検討によれば、従来の接着剤組成物を用いた場合、高温高湿環境下では、接着剤組成物を硬化して得られる回路接続部材と回路部材との間の相互作用が有効に機能せず、回路接続部材が回路部材から剥離してしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、高温高湿下にさらした場合においても、回路接続部材が回路部材から剥離することを抑制できる回路接続用接着剤組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明者らは、接着剤組成物にポリロタキサンを含有させることによって、接着特性が改善され、高温高湿下にさらした場合においても、剥離を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の一側面は、ポリロタキサンを含有する、回路接続用接着剤組成物を提供する。回路接続用接着剤組成物は、ポリロタキサンを含有することによって、高温高湿下にさらした場合においても、回路接続部材が回路部材から剥離することを抑制でき、信頼性の高いものとなる。このような効果が奏する理由は定かではないが、本発明者らは、以下のように考えている。ポリロタキサンは、後述のとおり、環状分子が直鎖状分子に沿って移動可能であるという性質を有する。そのため、ポリロタキサンを含有する回路接続用接着剤組成物を硬化させ、ポリロタキサンの環状分子と他の成分(例えば、他のポリロタキサンの環状分子、後述のラジカル重合性化合物、熱可塑性樹脂、カップリング剤、充填剤等)との間で架橋点が形成される(又は相互作用(水素結合、共有結合等)が生じる)と、当該架橋点は、直鎖状分子に沿って移動すること、すなわち柔軟に変動することが可能となり得る。架橋点が柔軟に変動することによって、回路接続部材の応力が緩和されることが予想される。このような作用によって、回路接続部材の架橋点における破断及び回路接続部材と回路部材との界面の応力が発生し難くなり、結果として、高温高湿下にさらした場合においても、回路接続部材が回路部材から剥離することを抑制できると考えられる。
【0008】
ポリロタキサンは、反応性官能基を有していてもよい。ポリロタキサン(特に、環状分子)が反応性官能基を有することによって、ポリロタキサン同士又はポリロタキサンと他の成分(例えば、後述のラジカル重合性化合物、熱可塑性樹脂等)との間で架橋点を形成し易くなる傾向にある。反応性官能基は、(メタ)アクリロイル基、水酸基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0009】
回路接続用接着剤組成物は、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤をさらに含有していてもよい。
【0010】
回路接続用接着剤組成物は、導電粒子をさらに含有していてもよい。導電粒子の含有量は、接着剤組成物の導電粒子以外の固形分全質量を基準として、50質量%以下であってもよい。
【0011】
通常の熱可塑性成分等で同様の応力緩和性能を実現しようとした場合、弾性率を下げる成分を添加することが一般的である。しかし、その場合、回路接続用接着剤組成物に含有される導電粒子の保持性能と回路接続部材の応力緩和性能とが、トレードオフの関係にある。一方、ポリロタキサンを用いた場合、外部環境から応力を受けると、架橋点が柔軟に変動することによって、応力を一時的に緩和し、外部環境から応力がなくなると、環状分子が元の状態に戻ると推定される。これにより、高温高湿試験等において、より優れた剥離を抑制するとともに、導電粒子の保持性能についても、通常の熱可塑性成分等を添加した場合と同様の保持性能を示すことが予想される。さらに、接続抵抗の信頼性に影響を与える導電粒子の保持性能と回路接続部材の応力緩和性能との両立が可能となり得る。
【0012】
回路接続用接着剤組成物は、熱可塑性樹脂をさらに含有していてもよい。
【0013】
回路接続用接着剤組成物は、フィルム状に形成されたものであってもよい。なお、本明細書において、フィルム状に形成された回路接続用接着剤組成物を「接着剤フィルム」という場合がある。
【0014】
回路接続用接着剤組成物は、異方導電性を有していてもよい。なお、本明細書において、異方導電性を有する接着剤フィルムを「異方導電性接着剤フィルム」という場合がある。
【0015】
本発明はまた、上述のポリロタキサンを含有する組成物の回路接続用接着剤としての応用、又は上述のポリロタキサンを含有する組成物の回路接続用接着剤の製造のための応用に関してもよい。
【0016】
別の側面において、本発明は、第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が形成され、第二の回路電極と第一の回路電極とが互いに対向するように配置された第二の回路部材と、第一の回路部材及び第二の回路部材の間に配置され、第一の回路電極と第二の回路電極とを互いに電気的に接続する回路接続部材と、を備え、回路接続部材が、上述の回路接続用接着剤組成物の硬化物である、回路接続構造体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高温高湿下にさらした場合においても、回路接続部材が回路部材から剥離することを抑制できる回路接続用接着剤組成物が提供される。また、本発明によれば、このような回路接続用接着剤組成物を用いた回路接続構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】異方導電性接着剤フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】回路接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】回路接続構造体の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0020】
本明細書において、「回路接続用接着剤」は、互いに対向する回路電極を有する回路基板間に介在し、互いに対向する回路電極同士が電気的に接続されるように回路基板を接着するために用いられるものを意味する。
【0021】
本明細書において、(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はそれに対応するメタクリル酸を意味する。(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基等の他の類似表現についても同様である。
【0022】
[ポリロタキサン]
本実施形態の回路接続用接着剤組成物は、ポリロタキサンを含有する。ロタキサンは、環状分子と、環状分子の分子環内を貫通する直鎖状分子と、直鎖状分子の両末端に配置され、環状分子の解離を防ぐ末端基と、を含む化合物(包接化合物)である。ポリロタキサンは、多数の構成分子(特に、環状分子)で形成されたロタキサンを意味する。ポリロタキサンは、環状分子が直鎖状分子に沿って移動可能であるという性質を有する。
【0023】
環状分子は、その分子環内を貫通するように直鎖状分子を包接することができる分子である。環状分子は、当該直鎖状分子に沿って移動することができる分子であれば、特に制限されない。なお、本明細書において、環状分子の「環状」は、実質的に「環状」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子に沿って移動できるのであれば、環状分子は完全に閉環していなくてもよい。
【0024】
環状分子としては、例えば、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ジメチルシクロデキストリン、グルコシルシクロデキストリン等のシクロデキストリン;クラウンエーテル;これらの誘導体などが挙げられる。これらは、ポリロタキサン中、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、環状分子は、入手が容易であること及び末端基の種類を多数選択できることから、シクロデキストリンであってもよい。
【0025】
環状分子は、反応性官能基を有していてもよい。環状分子が反応性官能基を有することによって、ポリロタキサン同士又はポリロタキサンと他の成分(例えば、後述のラジカル重合性化合物、熱可塑性樹脂、カップリング剤、充填剤等)との間で架橋点を形成し易くなる又は相互作用し易くなる傾向にある。反応性官能基は、ポリロタキサン又は他の成分との間で架橋点を形成できる基(例えば、ラジカル重合性基)又は相互作用(水素結合、共有結合等)を発現し得る基であれば、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基、水酸基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる少なくとも1種であってもよい。
【0026】
直鎖状分子は、環状分子に包接されて一体化することができる直鎖状の分子であれば、特に制限されない。なお、本明細書において、直鎖状分子の「直鎖状」は、実質的に「直鎖状」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子上で環状分子が移動できるのであれば、直鎖状分子は分岐鎖を有していてもよい。
【0027】
直鎖状分子としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、直鎖状分子は、ポリアルキレングリコールであってもよい。
【0028】
末端基は、直鎖状分子から環状分子の解離を防ぐことができる基であれば、特に制限されない。末端基としては、例えば、アダマンタン基、ジニトロフェニル基、トリチル基、シクロデキストリン基、アダマンチル基、トリチル基、フルオレセイニル基、ピレニル基、アントラセニル基等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、末端基は、導入が容易であることから、アダマンタン基であってもよい。
【0029】
ポリロタキサンは、例えば、特開2005-154675号公報、特開2009-270119号公報、国際公開第2009/145073号に記載の方法に準じて、得ることができる。また、例えば、「セルム(登録商標)スーパーポリマー」シリーズ(アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製)等の市販品を用いることができる。
【0030】
ポリロタキサンの含有量は、回路接続部材と回路部材とのさらなる剥離抑制の観点から、接着剤組成物の導電粒子以外の固形分全質量を基準として、0.5質量%以上、0.8質量%以上、又は1.0質量%以上であってもよい。ポリロタキサンの含有量は、接続抵抗のさらなる低減の観点から、接着剤組成物の導電粒子以外の固形分全質量を基準として、15質量%以下、10質量%以下、又は8質量%以下であってもよい。
【0031】
[ラジカル重合性化合物]
本実施形態の回路接続用接着剤組成物は、ラジカル重合性化合物及び後述のラジカル重合開始剤をさらに含有していてもよい。ラジカル重合性化合物は、特に制限されず、任意のものであってもよい。なお、ラジカル重合性化合物は、上述のポリロタキサンを包含しない概念である。ラジカル重合性化合物は、後述の化合物のモノマ及びオリゴマのいずれであってもよく、両者を併用したものであってもよい。
【0032】
ラジカル重合性化合物は、1以上のラジカル重合性基を有する。ラジカル重合性基としては、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、アルケニル基、アルケニレン基、(メタ)アクリロイル基、マレイミド基等が挙げられる。ラジカル重合性化合物が有する重合性基の数は、重合後、接続抵抗を低減するために必要な物性(例えば、架橋密度等)を得る観点から、2以上であってよく、重合時の硬化収縮をより抑える観点から、10以下であってもよい。なお、架橋密度と効果収縮とのバランスを保つ観点から、重合性基の数が上記範囲内(2~10)のラジカル重合性化合物に、重合性基の数が上記範囲外の他のラジカル重合性化合物を加えて用いてもよい。
【0033】
ラジカル重合性化合物の具体例としては、(メタ)アクリレート化合物、マレイミド化合物、ビニルエーテル化合物、アリル化合物、スチレン誘導体、アクリルアミド誘導体、ナジイミド誘導体、天然ゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、カルボキシル化ニトリルゴム等が挙げられる。
【0034】
(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーンアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-シアノエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフォスフェート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性2官能(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性3官能(メタ)アクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジアクリロキシプロパン、2,2-ビス〔4-(アクリロキシメトキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ジ(メタ)アクリロイロキシジエチルフォスフェート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート等が挙げられる。
【0035】
マレイミド化合物としては、例えば、1-メチル-2,4-ビスマレイミドベンゼン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-トルイレンビスマレイミド、N,N’-4,4-ビフェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジメチル-ビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-(3,3’-ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’-4,4-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’-3,3-ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(3-s-ブチル-4-8(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’-シクロヘキシリデン-ビス(1-(4マレイミドフェノキシ)-2-シクロヘキシルベンゼン、2,2’-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
【0036】
ビニルエーテル化合物としては、例えば、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0037】
アリル化合物としては、例えば、1,3-ジアリルフタレート、1,2-ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0038】
ラジカル重合性化合物は、硬化反応速度に優れ、硬化後により良好な物性が得られる観点から、(メタ)アクリレート化合物であってもよい。ラジカル重合性化合物は、接続抵抗を低下させるための凝集力と接着力を向上させるための伸びとを両立させることができ、より優れた接着特性が得られる観点から、(ポリ)ウレタン(メタ)アクリレート化合物であってもよい。また、ラジカル重合性化合物は、接続抵抗を低下させるための凝集力をより向上させる観点から、ジシクロペンタジエン骨格を有する(メタ)アクリレート化合物等の高Tg(ガラス転移点)を有する化合物などであってもよい。
【0039】
ラジカル重合性化合物は、架橋密度と効果収縮とのバランスを保ち、接続抵抗を低下させ、接続信頼性を向上させる観点から、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂の末端又は側鎖にビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等の重合性基を導入した化合物(例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレート)であってもよい。このようなラジカル重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、架橋密度と効果収縮とのバランスを保つ観点から、3000以上、5000以上、又は10000以上であってもよい。また、ラジカル重合性化合物の重量平均分子量は、他成分との相溶性の観点から、1000000以下、500000以下、又は250000以下であってもよい。なお、重量平均分子量は、実施例に記載の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した値をいう。
【0040】
ラジカル重合性化合物は、(メタ)アクリレート化合物として、下記一般式(1)で表されるリン酸エステル構造を有する(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。この場合、無機物(金属等)の表面に対する接着強度が向上するため、例えば、回路電極同士の接着に好適である。
【0041】
【化1】
[式中、nは1~3の整数を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。]
【0042】
上記リン酸エステル構造を有する(メタ)アクリレート化合物は、例えば、無水リン酸と2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。リン酸エステル構造を有する(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、モノ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート、ジ(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドフォスフェート等が挙げられる。
【0043】
ラジカル重合性化合物の含有量は、接続抵抗のさらなる低減の観点から、ポリロタキサン及びラジカル重合性化合物の総量を基準として、10質量%以上であってもよい。ラジカル重合性化合物の含有量は、25質量%以上、50質量%以上、75質量%以上、又は90質量%以上であってもよい。ラジカル重合性化合物の含有量は、回路接続部材と回路部材とのさらなる剥離抑制の観点から、ポリロタキサン及びラジカル重合性化合物の総量を基準として、99.5質量%以下、99質量%以下、又は98質量%以下であってもよい。
【0044】
[ラジカル重合開始剤]
ラジカル重合開始剤は、例えば、過酸化物、アゾ化合物等の化合物から任意に選択することができる。
【0045】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(3-メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられる。
【0046】
ラジカル重合開始剤の含有量は、速硬化性により優れる観点から、ラジカル重合性化合物の全質量を基準として、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上であってもよい。ラジカル重合開始剤の含有量は、貯蔵安定性により優れる観点から、ラジカル重合性化合物の全質量を基準として、50質量%以下、25質量%以下、又は10質量%以下であってもよい。
【0047】
[導電粒子]
本実施形態の回路接続用接着剤組成物は、導電粒子をさらに含有していてもよい。導電粒子は、導電性を有する粒子であれば特に制限されず、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属で構成された金属粒子、導電性カーボンで構成された導電性カーボン粒子などであってもよい。導電粒子は、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック(ポリスチレン等)などを含む核と、上記金属又は導電性カーボンを含み、核を被覆する被覆層とを備える被覆導電粒子であってもよい。これらの中でも、熱溶融性の金属で形成された金属粒子、又はプラスチックを含む核と、金属又は導電性カーボンを含み、核を被覆する被覆層とを備える被覆導電粒子が好ましく用いられる。この場合、光硬化性組成物の硬化物を加熱又は加圧により変形させることが容易であるため、回路電極同士を電気的に接続する際に、回路電極と導電粒子との接触面積を増加させ、電極間の導電性をより向上させることができる。
【0048】
導電粒子は、上記の金属粒子、導電性カーボン粒子、又は被覆導電粒子と、樹脂等の絶縁材料を含み、該粒子の表面を被覆する絶縁層とを備える絶縁被覆導電粒子であってもよい。導電粒子が絶縁被覆導電粒子であると、導電粒子の含有量が多い場合であっても、粒子の表面が樹脂で被覆されているため、導電粒子同士の接触による短絡の発生を抑制でき、また、隣り合う回路電極回路間の絶縁性を向上させることもできる。導電粒子は、上述した各種導電粒子の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
導電粒子の平均粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、1.0μm以上、2.0μm以上、又は2.5μm以上であってもよい。導電粒子の平均粒径は、分散性及び導電性に優れる観点から、50μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってもよい。なお、本明細書において、導電粒子の平均粒径は、任意の導電粒子300個について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により粒径の測定を行い、得られた粒径の平均値を意味する。
【0050】
導電粒子の含有量は、短絡をより抑制し易い観点から、接着剤組成物の導電粒子以外の固形分全質量を基準として、50質量%以下であってもよい。導電粒子の含有量は、40質量%以下、30質量%以下、又は20質量%以下であってもよい。導電粒子の含有量は、導電性をより向上させることができる観点から、接着剤組成物の導電粒子以外の固形分全質量を基準として、0.1質量%以上であってもよい。導電粒子の含有量は、0.5質量%以上、1質量%以上、又は2質量%以上であってもよい。
【0051】
[熱可塑性樹脂]
本実施形態の回路接続用接着剤組成物は、熱可塑性樹脂をさらに含有していてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、ブチラール樹脂、及びアクリル樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であってもよい。
【0052】
熱可塑性樹脂の含有量は、接着剤組成物の全質量を基準として、5~95質量%であってもよい。熱可塑性樹脂の含有量は、5質量%以上、10質量%以上、又は15質量%以上であってもよい。熱可塑性樹脂の含有量は、95質量%以下、90質量%以下、又は85質量%以下であってもよい。
【0053】
[その他の成分]
本実施形態の回路接続用接着剤組成物は、その他の成分をさらに含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、カップリング剤、充填剤、軟化剤、促進剤、劣化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤等が挙げられる。
【0054】
カップリング剤としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、アミノ基、イミダゾール基等の有機官能基を有するシランカップリング剤、テトラアルコキシチタネート誘導体、ポリジアルキルチタネート誘導体などが挙げられる。
【0055】
充填剤としては、例えば、非導電性のフィラー(例えば、非導電粒子)が挙げられる。充填剤は、無機フィラー及び有機フィラーのいずれであってもよい。無機フィラーとしては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、シリカ-アルミナ微粒子、チタニア微粒子、ジルコニア微粒子等の金属酸化物微粒子;窒化物微粒子などの無機微粒子が挙げられる。有機フィラーとしては、例えば、シリコーン微粒子、メタクリレート-ブタジエン-スチレン微粒子、アクリル-シリコーン微粒子、ポリアミド微粒子、ポリイミド微粒子などの有機微粒子が挙げられる。これらの微粒子は、均一な構造を有していてもよく、コア-シェル型構造を有していてもよい。
【0056】
その他の成分の含有量は、接着剤組成物の全質量を基準として、例えば、0.1~50質量%であってもよい。
【0057】
本実施形態の回路接続用接着剤組成物は、フィルム状に形成されたものであってもよい。接着剤フィルムは、例えば、回路接続用接着剤組成物に必要に応じてメチルエチルケトン等の溶剤などを加えることによって得られたワニスを、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離型紙等の剥離性支持体上に塗布し、溶剤等を除去する方法により得ることができる。接着剤フィルムは、取り扱い等の点から一層便利であるあるため、効率よく回路接続構造体を製造できる。
【0058】
本実施形態の回路接続用接着剤組成物は、異方導電性を有していてもよい。異方導電性を有する接着剤組成物は、例えば、導電粒子を含有している。異方導電性を有する接着剤組成物は、異方導電性接着剤フィルム(異方導電性を有するフィルム状に形成された接着剤組成物)であってもよい。
【0059】
図1は、異方導電性接着剤フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示すように、異方導電性接着剤フィルム1は、フィルム状に形成された接着剤成分2と、接着剤成分2中に分散された複数の導電粒子3と、を備えている。
【0060】
異方導電性接着剤フィルム1の厚さは、10~50μmであってもよい。異方導電性接着剤フィルム1の厚さが10μm以上であると、接着剤組成物が回路電極間に充分に充填される傾向にある。異方導電性接着剤フィルム1の厚さが50μm以下であると、導通の確保が容易になる傾向にある。
【0061】
以下、異方導電性接着剤フィルムを用いて、回路基板及び回路基板の主面上に形成された回路電極を有する回路部材同士を被着体として接続した回路接続構造体及びその製造方法の一例について説明する。
【0062】
図2は、回路接続構造体の一実施形態を示す模式断面図である。
図2に示す回路接続構造体10は、互いに対向する第一の回路部材4及び第二の回路部材5と、第一の回路部材4及び第二の回路部材5の間において第一の回路部材4及び第二の回路部材5を接続する回路接続部材6と、を備えている。
【0063】
第一の回路部材4は、第一の回路基板41と、第一の回路基板41の主面41a上に形成された第一の回路電極42と、を備えている。なお、第一の回路基板41の主面41a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0064】
第二の回路部材5は、第二の回路基板51と、第二の回路基板51の主面51a上に形成された第二の回路電極52と、を備えている。また、第二の回路基板51の主面51a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0065】
第一の回路部材4及び第二の回路部材5は、電気的接続を必要とする回路電極が形成された部材であれば、特に制限されない。第一の回路基板41及び第二の回路基板51としては、半導体、ガラス、セラミック等の無機基板;TCP(Tape Carrier Package)、FPC(Flexible Printed Circuit)、COF(Chip On Film)等に代表されるポリイミド基板;ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエーテルスルホン等のフィルム上に電極を形成した基板;プリント配線板などが用いられ、これらは複数の組み合わせであってもよい。
【0066】
回路接続部材6は、本実施形態の回路接続用接着剤組成物の硬化物、すなわち、異方導電性接着剤フィルム1によって形成され、接着剤成分2の硬化物である絶縁性物質7と、絶縁性物質7中に分散した導電粒子3と、を含有している。導電粒子3は、互いに対向する第一の回路電極42と第二の回路電極52との間のみならず、第一の回路基板41の主面41aと第二の回路基板51の主面51aとの間に配置されていてもよい。回路接続構造体10においては、第一の回路電極42及び第二の回路電極52が、導電粒子3を介して電気的に接続されている。すなわち、導電粒子3が第一の回路電極42及び第二の回路電極52の双方に接触している。
【0067】
回路接続構造体10においては、上述したように、互いに対向する第一の回路電極42と第二の回路電極52とが導電粒子3を介して電気的に接続されている。このため、第一の回路電極42及び第二の回路電極52間の接続抵抗が充分に低減される。したがって、第一の回路電極42及び第二の回路電極52間の電流の流れを円滑にすることが可能であり、第一の回路部材4及び第二の回路部材5が有する機能を充分に発揮させることができる。
【0068】
本実施形態に係る回路接続構造体の製造方法は、例えば、回路電極を有し対向配置された一対の回路部材を、異方導電性接着剤フィルムムを間に挟んで配置する配置工程と、一対の回路部材及び異方導電性フィルムを、異方導電性接着剤フィルムの厚み方向に加熱加圧する圧着工程と、を備える。圧着工程では、異方導電性接着剤フィルムと電極とを接続することにより、異方導電性接着剤フィルムの導電粒子を介して電極同士が電気的に接続されるとともに、異方導電性接着剤フィルムにより基板同士が接着される。
【0069】
次に、
図3を用いて回路接続構造体の製造方法について具体的に説明する。
図3は、回路接続構造体の製造方法の一実施形態を示す模式断面図である。
【0070】
まず、第一の回路部材4と、異方導電性接着剤フィルム1とを用意する(
図3(a)参照)。
【0071】
次に、異方導電性接着剤フィルム1を第一の回路部材4の主面41a上に配置する。異方導電性接着剤フィルム1が支持体(図示せず)上に積層されている場合には、当該積層体の異方導電性接着剤フィルム1側を第一の回路部材4に向けるようにして、積層体を第一の回路部材4上に配置する。
【0072】
そして、異方導電性接着剤フィルム1を、
図3(a)の矢印A及びB方向に加圧し、異方導電性接着剤フィルム1を第一の回路部材4に仮接続する(
図3(b)参照)。このとき、加圧とともに加熱を行ってもよい。
【0073】
続いて、
図3(c)に示すように、第一の回路部材4上に配置された異方導電性接着剤フィルム1上に、第二の回路電極52側を第一の回路部材4に向けるようにして(すなわち、第一の回路電極42と第二の回路電極52とが対向配置される状態にして)第二の回路部材5をさらに配置する。異方導電性接着剤フィルム1が支持体(図示せず)上に積層されている場合には、支持体を剥離してから第二の回路部材5を異方導電性接着剤フィルム1上に配置する。
【0074】
そして、異方導電性接着剤フィルム1を加熱しながら、
図3(c)の矢印A及びB方向に加圧する。これにより、異方導電性接着剤フィルム1が硬化され、本接続が行われる。その結果、
図2に示すような回路接続構造体10が得られる。
【0075】
上記のようにして得られる回路接続構造体10においては、互いに対向する第一の回路電極42及び第二の回路電極52の双方に導電粒子3を接触させることが可能であり、第一の回路電極42及び第二の回路電極52間の接続抵抗を充分に低減することができる。
【0076】
また、異方導電性接着剤フィルム1を加熱しながら加圧することにより、第一の回路電極42及び第二の回路電極52間の距離を充分に小さくした状態で接着剤成分2が硬化して絶縁性物質7となり、第一の回路部材4と第二の回路部材5とが回路接続部材6を介して強固に接続される。すなわち、回路接続構造体10においては、回路接続部材6が、本実施形態の回路接続用接着剤組成物の硬化物によって構成されていることから、第一の回路部材4及び第二の回路部材5に対する回路接続部材6の接着強度が充分に高くなり得る。特に、回路接続部材6は、高温高湿条件下において充分な接着強度を有し得る。また、回路接続構造体10では、接着強度が充分に高い状態が長期間にわたって持続され得る。したがって、回路接続構造体10では、第一の回路電極42及び第二の回路電極52間の距離の経時的変化が充分に抑制され、第一の回路電極42及び第二の回路電極52間の電気特性の長期信頼性に優れるものとなり得る。
【0077】
本実施形態では、取り扱いが容易である異方導電性接着剤フィルム1を用いて回路接続構造体10を製造している。このため、第一の回路部材4と第二の回路部材5との間に異方導電性接着剤フィルム1を容易に介在させることが可能であり、第一の回路部材4と第二の回路部材5との接続を容易に行うことができる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明について実施例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0079】
<ポリウレタンアクリレート(UA1)の合成>
撹拌機、温度計、塩化カルシウム乾燥管を有する還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、ポリ(1,6-ヘキサンジオールカーボネート)(商品名:デュラノール T5652、旭化成ケミカルズ株式会社製、数平均分子量1000)2500質量部(2.50mol)と、イソホロンジイソシアネート(シグマアルドリッチ社製)666質量部(3.00mol)とを3時間かけて均一に滴下した。次いで、反応容器に充分に窒素ガスを導入した後、反応容器内を70~75℃に加熱して反応させた。次に、反応容器に、ハイドロキノンモノメチルエーテル(シグマアルドリッチ社製)0.53質量部(4.3mmol)と、ジブチルスズジラウレート(シグマアルドリッチ社製)5.53質量部(8.8mmol)とを添加した後、2-ヒドロキシエチルアクリレート(シグマアルドリッチ社製)238質量部(2.05mol)を加え、空気雰囲気下70℃で6時間反応させた。これにより、ポリウレタンアクリレート(UA1)を得た。ポリウレタンアクリレート(UA1)の重量平均分子量(Mw)は15000であった。なお、重量平均分子量は、下記の条件に従って、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)より標準ポリスチレンによる検量線を用いて測定した。
【0080】
(測定条件)
装置:東ソー株式会社製 GPC-8020
検出器:東ソー株式会社製 RI-8020
カラム:日立化成株式会社製 Gelpack GLA160S+GLA150S
試料濃度:120mg/3mL
溶媒:テトラヒドロフラン
注入量:60μL
圧力:2.94×106Pa(30kgf/cm2)
流量:1.00mL/min
【0081】
<導電粒子の作製>
ポリスチレン粒子の表面上に、層の厚さが0.2μmとなるようにニッケルからなる層を形成した。このようにして、平均粒径4μm、比重2.5(g/cm3)の導電粒子を得た。
【0082】
(実施例1~6及び比較例1、2)
<接着剤組成物のワニスの調製>
以下に示す成分を表1に示す配合量(質量部)で混合し、さらに、上述の導電粒子を、接着剤組成物の導電粒子以外の固形分全質量を基準として、5.0質量%となるように配合して、実施例1~6及び比較例1、2の接着剤組成物のワニスを得た。
【0083】
(A)ポリロタキサン
A1:セルムスーパーポリマー(商品名:SA3403P、Mw:1000000、反応性官能基:アクリロイル基、アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製)
A2:セルムスーパーポリマー(商品名:SA1313P、Mw:180000、反応性官能基:アクリロイル基、アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製)
A3:セルムスーパーポリマー(商品名:SM3403P、Mw:1000000、反応性官能基:メタクリロイル基、アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製)
A4:セルムスーパーポリマー(商品名:SH3400P、Mw:700000、反応性官能基:水酸基、アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社製)
(B)ラジカル重合性化合物
B1:ジシクロペンタジエン型ジアクリレート(商品名:DCP-A、共栄社化学株式会社製)
B2:上述のとおり合成したポリウレタンアクリレート(UA1)
B3:2-メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(商品名:ライトエステルP-2M、共栄社化学株式会社製)
(C)ラジカル重合開始剤
C1:ベンゾイルパーオキサイド(商品名:ナイパーBMT-K40、日油株式会社製)
(D)熱可塑性樹脂
D1:ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(商品名:PKHC、ユニオンカーバイド社製)
(E)カップリング剤
E1:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業株式会社製)
(F)充填剤
F1:シリカ微粒子(商品名:R104、日本アエロジル株式会社製、平均粒径(一次粒径):12nm)
(G)溶剤
G1:メチルエチルケトン
【0084】
<接着剤フィルムの作製>
実施例1~6及び比較例1、2の接着剤組成物のワニスを、それぞれ厚さ50μmのPETフィルム上に塗工装置を用いて塗布した。次いで、70℃、3分間の熱風乾燥を行い、PETフィルム上に厚さが10μmの実施例1~6及び比較例1、2の接着剤フィルムを作製した。
【0085】
<回路接続構造体の作製>
作製した接着剤フィルムを介して、ピッチ25μmのCOF(FLEXSEED社製)と、ガラス基板上に窒化ケイ素(SiNx)からなる薄膜電極(0.12μm(1200Å))を備える、薄膜電極付きガラス基板(ジオマテック社製)とを、熱圧着装置(加熱方式:コンスタントヒート型、株式会社太陽機械製作所製)を用いて、170℃、6MPaで4秒間の条件で加熱加圧を行って幅1mmにわたり接続し、接着剤フィルムにより形成された硬化膜(回路接続部材)を備える、実施例1~6及び比較例1、2の回路接続構造体を作製した。
【0086】
<剥離評価>
得られた実施例1~6及び比較例1、2の回路接続構造体の接続直後の接続外観、及び高温高湿試験後の接続外観を、光学顕微鏡を用いて観察し、剥離評価を行った。具体的には、薄膜電極付きガラス基板側から該ガラス基板と回路接続部との界面において剥離が発生している面積(剥離面積)を測定した。高温高湿試験は、プレッシャークッカー試験機(株式会社平山製作所製)を用いて、121℃、2気圧、100%RHの条件で、96時間行った。結果を表1に示す。
【0087】
【0088】
ポリロタキサンを含有する実施例1~6の回路接続用接着剤組成物を用いて作製した回路接続構造体は、ポリロタキサンを含有しない比較例1、2の回路接続用接着剤組成物を用いて作製した回路接続構造体に比べて、PCT試験後において、剥離が抑制されていることが判明した。これらの結果から、本発明の回路接続用接着剤組成物が、高温高湿下にさらした場合においても、硬化膜(回路接続部材)が回路部材から剥離することを抑制でき、優れた接着信頼性を有することが確認された。
【符号の説明】
【0089】
1…異方導電性接着剤フィルム、2…接着剤成分、3…導電粒子、4…第一の回路部材、5…第二の回路部材、6…回路接続部材、7…絶縁性物質、10…回路接続構造体、41…第一の回路基板、42…第一の回路電極、51…第二の回路基板、52…第二の回路電極。