(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】ガラス板及び表示装置
(51)【国際特許分類】
C03C 19/00 20060101AFI20220509BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20220509BHJP
C03C 17/34 20060101ALI20220509BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C03C19/00 A
C03C21/00 101
C03C17/34 Z
G09F9/00 313
(21)【出願番号】P 2018006517
(22)【出願日】2018-01-18
【審査請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉田 稔
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕介
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/043538(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/026318(WO,A1)
【文献】特許第5867649(JP,B2)
【文献】特表2017-510533(JP,A)
【文献】特開2017-213881(JP,A)
【文献】特開2016-136232(JP,A)
【文献】特開2016-040211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00 - 23/00
G09F 9/00
G01M 11/00 - 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチグレア処理された第1の主面と、前記第1の主面に対向する第2の主面とを有するガラス板であって、
下記に示す方法で定量化される視認性指標値T、反射像拡散性指標値R、及びぎらつき指標値Sの値がそれぞれ、
視認性指標値T≧0.8、
反射像拡散性指標値R≧0.01、及び
ぎらつき指標値S≧0.85
の関係を満たし、かつ
JIS K 7136(2000年)に準拠する方法で測定した透過ヘイズが15%以下であるガラス板。
視認性指標値T:DM&S社製SMS-1000を用い、長さ40mm、幅0.1mmのスリット状白色光源の上から30mm離れた位置に、前記第1の主面側が光源側となるようにガラス板を設置し、前記ガラス板の上方から輝度を測定する。カメラレンズは焦点距離が16mmのC1614Aレンズを絞り5.6で使用し、ガラス板の前記第1の主面から前記カメラレンズまでの距離は550mmに設定する。前記ガラス板の厚さ方向と平行な方向を角度θ=0゜とした時に、角度θ=0゜±0.1°の範囲の輝度の平均値をT
1とし、角度θ=0.7°±0.1°の範囲の輝度の平均値をT
2とし、角度θ=-0.7°±0.1°の範囲の輝度の平均値をT
3とした場合に、下記式(1)により算出される値を視認性指標値Tとする。
視認性指標値T=1-(T
2+T
3)/(2×T
1) 式(1)
反射像拡散性指標値R:DM&S社製SMS-1000を用い、101mm幅のスリット状の光を前記第1の主面側からガラス板に放射し、その反射光の輝度を測定する。カメラレンズは焦点距離が16mmのC1614Aレンズを絞り5.6で使用し、ガラス板の前記第1の主面から前記カメラレンズまでの距離は300mm、Imaging Scaleは0.0276~0.0278の範囲に設定する。前記ガラス板の厚さ方向と平行な方向を角度φ=0゜とした時に、角度φ=5.7°±0.1°の角度から前記光を放射し、全反射する際の角度φ=-5.7°を基準(角度α=0°)とする。角度α=0°±0.1°の範囲の反射光の輝度の平均値をR
1、角度α=0.5°±0.1°の範囲の反射光の輝度の平均値をR
2、角度α=-0.5°±0.1°の範囲の反射光の輝度の平均値をR
3とした場合に、下記式(2)により算出される値を反射像拡散性指標値Rとする。
反射像拡散性指標値R=(R
2+R
3)/(2×R
1) 式(2)
ぎらつき指標値S:解像度264ppiである表示装置の表示面側に、前記第2の主面が接するようにガラス板を配置する。前記表示装置にRGB(0,255,0)で構成される緑単色の画像を表示させた状態で、前記ガラス板の上方に設置したDM&S社製SMS-1000を用いた画像解析により求められたSparkle値をぎらつきS
aとする。固定撮像素子と前記ガラス板との間の距離dは540mmとし、カメラレンズは焦点距離が50mmの23FM50SPレンズを絞り5.6で使用する。また、参照試料として前記ガラス板と同じ厚さのガラス基板(VRD140ガラス;Asahi Glass Europe社製)についても同様の条件で画像解析を行い、求められたSparkle値をぎらつきS
sとする。S
a及びS
sの値から下記式(3)により算出される値をぎらつき指標値Sとする。
ぎらつき指標値S=1-(S
a/S
s) 式(3)
【請求項2】
前記視認性指標値T、前記反射像拡散性指標値R、及び前記ぎらつき指標値Sの値がそれぞれ、
視認性指標値T≧0.85、
反射像拡散性指標値R≧0.02、及び
ぎらつき指標値S≧0.88
の関係を満たし、かつ前記透過ヘイズが7%以下である請求項1に記載のガラス板。
【請求項3】
前記第1の主面上の少なくとも一部に反射防止層が設けられた請求項1又は2に記載のガラス板。
【請求項4】
前記第1の主面側の最表面に防汚層が設けられた請求項1~3のいずれか1項に記載のガラス板。
【請求項5】
前記第2の主面上の少なくとも一部に印刷層が設けられた請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス板。
【請求項6】
ソーダライムガラス又はアルミノシリケートガラスである請求項1~5のいずれか1項に記載のガラス板。
【請求項7】
前記第1の主面及び前記第2の主面の少なくともいずれか一方が化学強化処理された請求項1~6のいずれか1項に記載のガラス板。
【請求項8】
前記第1の主面及び前記第2の主面の少なくともいずれか一方に屈曲部を有する請求項1~7のいずれか1項に記載のガラス板。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のガラス板と発光体とを備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板及び前記ガラス板を備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、LCD(Liquid Crystal Display)装置等の表示装置の表示面側には、該表示装置の保護のため、透明基体で構成されたカバーが配置される。
【0003】
しかしながら、表示装置上にこのような透明基体を設置した場合、透明基体を介して表示装置の表示画を視認しようとした際に、しばしば、周辺に置かれているものの映り込みが発生する場合がある。透明基体にそのような映り込みが生じると、表示画の視認者は、表示画を視認することが難しくなる上、不快な印象を受けるようになる。特に車載ディスプレイ用カバーガラスでは、ドライバーと表示装置との距離が固定されており、日光を代表とする強い光源が映り込むと、表示画の視認は非常に困難となり、必要な情報が読み取れないことから運転に支障をきたす可能性が高い。
【0004】
そこで、このような映り込みを抑制するため、例えば、透明基体の表面に、凹凸形状を形成するアンチグレア処理を実施する方法等が採用されている。
【0005】
これらに対し、特許文献1には、特殊な装置を用いて、表示装置への映り込みを評価する方法が示されている。しかしながら、車載ディスプレイ用カバーガラス等に要求される光学特性は、映り込みの低減のみに限られるものではない。すなわち、車載ディスプレイ用カバーガラスには、解像度又は視認性、反射像拡散性、およびぎらつきなどにおいてそれぞれ所定レベルの光学特性を併せ持つことが求められる。従って、ガラス板等の透明基体を選定する際に、いずれか1つの光学特性を考慮するのみでは不十分であり、しばしば、複数の光学特性を同時に考慮する必要が生じる。
【0006】
そこで特許文献2には、解像度指標値T、反射像拡散性指標値R及びぎらつき指標値Sの3つの指標値を用いて評価した際に、これら指標値が特定の範囲を満たすと、車載ディスプレイ用として好適な解像度・反射像拡散性・ぎらつき防止性を有するガラス板が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-147343号公報
【文献】特許第5867649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、車載ディスプレイ用カバーガラス等に要求される上記光学特性に加えた色味に関する検討はなされておらず、色の評価はL*a*b*表色系を用いて行われるのが一般的であった。
また、散乱された白色外光に起因して、視認される表示画の色味が実際の画像の色味とは異なることに着目し、改善した報告はなかった。
そこで、本発明では、好適な視認性・反射像拡散性・ぎらつき防止性に加え、色の再現性にも優れたガラス板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討した結果、透過ヘイズが色の再現性と密接な関係があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明に係るガラス板は、アンチグレア処理された第1の主面と、前記第1の主面に対向する第2の主面とを有するガラス板であって、
下記に示す方法で定量化される視認性指標値T、反射像拡散性指標値R、及びぎらつき指標値Sの値がそれぞれ、
視認性指標値T≧0.8、
反射像拡散性指標値R≧0.01、及び
ぎらつき指標値S≧0.85
の関係を満たし、かつ
JIS K 7136(2000年)に準拠する方法で測定した透過ヘイズが15%以下である。
視認性指標値T:DM&S社製SMS-1000を用い、長さ40mm、幅0.1mmのスリット状白色光源の上から30mm離れた位置に、前記第1の主面側が光源側となるようにガラス板を設置し、前記ガラス板の上方から輝度を測定する。カメラレンズは焦点距離が16mmのC1614Aレンズを絞り5.6で使用し、ガラス板の前記第1の主面から前記カメラレンズまでの距離は550mmに設定する。前記ガラス板の厚さ方向と平行な方向を角度θ=0゜とした時に、角度θ=0゜±0.1°の範囲の輝度の平均値をT1とし、角度θ=0.7°±0.1°の範囲の輝度の平均値をT2とし、角度θ=-0.7°±0.1°の範囲の輝度の平均値をT3とした場合に、下記式(1)により算出される値を視認性指標値Tとする。
視認性指標値T=1-(T2+T3)/(2×T1) 式(1)
反射像拡散性指標値R:DM&S社製SMS-1000を用い、101mm幅のスリット状の光を前記第1の主面側からガラス板に放射し、その反射光の輝度を測定する。カメラレンズは焦点距離が16mmのC1614Aレンズを絞り5.6で使用し、ガラス板の前記第1の主面から前記カメラレンズまでの距離は300mm、Imaging Scaleは0.0276~0.0278の範囲に設定する。前記ガラス板の厚さ方向と平行な方向を角度φ=0゜とした時に、角度φ=5.7°±0.1°の角度から前記光を放射し、全反射する際の角度φ=-5.7°を基準(角度α=0°)とする。角度α=0°±0.1°の範囲の反射光の輝度の平均値をR1、角度α=0.5°±0.1°の範囲の反射光の輝度の平均値をR2、角度α=-0.5°±0.1°の範囲の反射光の輝度の平均値をR3とした場合に、下記式(2)により算出される値を反射像拡散性指標値Rとする。
反射像拡散性指標値R=(R2+R3)/(2×R1) 式(2)
ぎらつき指標値S:解像度264ppiである表示装置の表示面側に、前記第2の主面が接するようにガラス板を配置する。前記表示装置にRGB(0,255,0)で構成される緑単色の画像を表示させた状態で、前記ガラス板の上方に設置したDM&S社製SMS-1000を用いた画像解析により求められたSparkle値をぎらつきSaとする。固定撮像素子と前記ガラス板との間の距離dは540mmとし、カメラレンズは焦点距離が50mmの23FM50SPレンズを絞り5.6で使用する。また、参照試料として前記ガラス板と同じ厚さのガラス基板(VRD140ガラス;Asahi Glass Europe社製)についても同様の条件で画像解析を行い、求められたSparkle値をぎらつきSsとする。Sa及びSsの値から下記式(3)により算出される値をぎらつき指標値Sとする。
ぎらつき指標値S=1-(Sa/Ss) 式(3)
【0010】
本発明に係るガラス板の一態様は、前記視認性指標値T、前記反射像拡散性指標値R、及び前記ぎらつき指標値Sの値がそれぞれ、
視認性指標値T≧0.85、
反射像拡散性指標値R≧0.02、及び
ぎらつき指標値S≧0.88
の関係を満たし、かつ前記透過ヘイズが7%以下である。
本発明に係るガラス板の一態様は、前記第1の主面上の少なくとも一部に反射防止層が設けられている。
本発明に係るガラス板の一態様は、前記第1の主面側の最表面に防汚層が設けられている。
本発明に係るガラス板の一態様は、前記第2の主面上の少なくとも一部に印刷層が設けられている。
本発明に係るガラス板の一態様は、ソーダライムガラス又はアルミノシリケートガラスからなる。
本発明に係るガラス板の一態様は、前記第1の主面及び前記第2の主面の少なくともいずれか一方が化学強化処理されている。
本発明に係るガラス板の一態様は、前記第1の主面及び前記第2の主面の少なくともいずれか一方に屈曲部を有する。
本発明に係る表示装置の一態様は、前記ガラス板と発光体とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るガラス板によれば、好適な視認性・反射像拡散性・ぎらつき防止性に加え、色の再現性にも優れた表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、視認性指標値Tを測定する際に使用される測定装置の一例を示した模式図である。
【
図2】
図2は、反射像拡散性指標値Rを測定する際に使用される測定装置の一例を示した模式図である。
【
図3】
図3は、ぎらつき指標値Sを測定する際に使用される測定装置の一例を示した模式図である。
【
図4】
図4(a)及び(b)は本発明に係るガラス板の一態様を示した模式断面図であり、
図4(a)はアンチグレア処理された第1の主面を有するガラス板であり、
図4(b)はアンチグレア処理された第1の主面を有し、第2の主面の一部に印刷層が設けられているガラス板である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳しく説明する。なお、本明細書中、数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0014】
[ガラス板]
本発明に係るガラス板は、アンチグレア処理された第1の主面と、前記第1の主面に対向する第2の主面とを有するガラス板であって、
後述する方法で定量化される視認性指標値T、反射像拡散性指標値R、及びぎらつき指標値Sの値がそれぞれ、
視認性指標値T≧0.8、
反射像拡散性指標値R≧0.01、及び
ぎらつき指標値S≧0.85
の関係を満たし、かつ
JIS K 7136(2000年)に準拠する方法で測定した透過ヘイズが15%以下である。
【0015】
視認性(Clarity)とは、ガラス板を通して表示画を視認した際に、表示画とどの程度一致した像が得られるかを表すものであり、観察者の目視による視認性(解像性)の判断結果と相関し、人の視感に近い挙動を示すことが確認されている。例えば、視認性指標値Tが小さな(0に近い)値を示すガラス板は視認性が劣り、逆に視認性指標値Tが大きな値を示すガラス板は、良好な視認性を有する。従って、この視認性指標値Tは、ガラス板の視認性を判断する際の定量的指標として使用できる。
【0016】
視認性指標値Tは以下の方法により定量化される。
DM&S社(Display-Messtechnik&Systeme社)製SMS-1000(解析装置)を用い、長さ40mm、幅0.1mmのスリット状白色光源の上から30mm離れた位置に、前記第1の主面側が光源側となるようにガラス板を設置し、前記ガラス板の上方から輝度を測定する。カメラレンズは焦点距離が16mmのC1614Aレンズを絞り5.6で使用し、ガラス板の前記第1の主面から前記カメラレンズまでの距離は550mmに設定する。前記ガラス板の厚さ方向と平行な方向を角度θ=0゜とした時に、角度θ=0゜±0.1°の範囲の輝度の平均値をT1とし、角度θ=0.7°±0.1°の範囲の輝度の平均値をT2とし、角度θ=-0.7°±0.1°の範囲の輝度の平均値をT3とした場合に、下記式(1)により算出される値を視認性指標値Tとする。
視認性指標値T=1-(T2+T3)/(2×T1) 式(1)
【0017】
より具体的に、
図1を参照し、ガラス板50の視認性指標値Tの測定方法の一態様を説明する。
測定装置70Aは、光源71及び検出器(解析装置)75を有し、測定装置70A内に、被測定試料、すなわちガラス板50が配置される。ガラス板50はアンチグレア処理された第1の主面52と第2の主面53とを有する。光源71は、第1の主面52側からガラス板50に向かって、前記ガラス板50の厚さ方向と平行な方向の第1の光を放射し、当該第1の光が、ガラス板50を透過した透過光の輝度をガラス板50の第2の主面53側に位置する検出器(解析装置)75で検出し、解析する。
【0018】
前記ガラス板50の厚さ方向と平行な方向を角度θ=0°とし、角度θ=0゜±0.1°の範囲で検出された輝度の平均値(T1)、角度θ=0.7°±0.1°の範囲で検出された輝度の平均値(T2)及び、角度θ=-0.7°±0.1°の範囲で検出された輝度の平均値(T3)から、上記式(1)によりガラス板50の視認性指標値Tが算出される。
なお、角度θにおけるマイナス(-)の符号は、入射した第1の光に対して反時計回りに傾斜していることを表し、プラス(+)の符号は、入射した第1の光に対して時計回りに傾斜していることを表す。
【0019】
反射像拡散性(Reflection image diffusiveness index value)とは、ガラス板の周辺に置かれている物体(例えば照明)の反射像が、元の物体とどの程度一致しているかを表すものであり、観察者の目視による防眩性の判断結果と相関し、人の視感に近い挙動を示すことが確認されている。例えば、反射像拡散性指標値Rが小さな(0に近い)値を示すガラス板は防眩性が劣り、逆に反射像拡散性指標値Rが大きな値(1に近いほど大きい)を示すガラス板は、良好な防眩性を有する。
【0020】
反射像拡散性指標値Rは以下の方法により定量化される。
DM&S社製SMS-1000を用い、101mm幅のスリット状の光を前記第1の主面側からガラス板に放射し、その反射光の輝度を測定する。カメラレンズは焦点距離が16mmのC1614Aレンズを絞り5.6で使用し、ガラス板の前記第1の主面から前記カメラレンズまでの距離は300mm、Imaging Scaleは0.0276~0.0278の範囲に設定する。前記ガラス板の厚さ方向と平行な方向を角度φ=0゜とした時に、角度φ=5.7°±0.1°の角度から前記光を放射し、全反射する際の角度φ=-5.7°を基準(角度α=0°)とする。角度α=0°±0.1°の範囲の反射光の輝度の平均値をR1、角度α=0.5°±0.1°の範囲の反射光の輝度の平均値をR2、角度α=-0.5°±0.1°の範囲の反射光の輝度の平均値をR3とした場合に、下記式(2)により算出される値を反射像拡散性指標値Rとする。
反射像拡散性指標値R=(R2+R3)/(2×R1) 式(2)
【0021】
より具体的に、
図2を参照し、ガラス板50の反射像拡散性指標値Rの測定方法の一態様を説明する。
測定装置70Bは、光源71および検出器(解析装置)75を有し、測定装置70B内に、被測定試料、すなわちガラス板50が、第1の主面52を光源71及び検出器75側にして配置される。ガラス板50の第2の主面53側には黒色板51を設置する。光源71は、ガラス板50に向かって、101mm幅のスリット状の第2の光731を放射する。検出器(解析装置)75は、第1の主面52から、所定の角度で反射される反射光を受光し、その輝度を解析する。
【0022】
測定の際には、測定装置70Bの光源71からガラス板50に向かって、第2の光731が照射される。第2の光731は、ガラス板50の法線Lの方向(ガラス板の厚さ方向)と平行な方向を角度φ=0°とした時に、時計回りに5.7゜傾斜した角度(
図1中φで図示)でガラス板50に照射される。なお、実際の測定には誤差が含まれるため、角度φは、より正確には、5.7゜±0.1゜の範囲を含む。
【0023】
次に、検出器(解析装置)75を用いて、ガラス板50の第1の主面52に入射した光のうち正反射される光(以下、「第1の反射光733」という)を検出し、その輝度の平均値R
1を解析、算出する。
なお、実際には、第1の反射光733の法線Lに対する角度は-(入射角)°であるため、-5.7゜±0.1°(
図1中α
1で図示)である。マイナス(-)の符号は、角度が前記法線Lに対して反時計回りに傾斜していることを表し、プラス(+)の符号は、角度が前記法線に対して時計回りに傾斜していることを表す。
【0024】
ここで、第1の反射光733は、法線Lに対して-5.7°傾いた方向を基準(角度α=0°)とすると、角度α=0゜±0.1°(=α1)の範囲となる。
【0025】
同様に、ガラス板50の第1の主面52から、法線Lに対して-5.7°傾いた方向を基準(角度α=0°)として角度α=0.5°±0.1°で表される第2の角度α2で反射される反射光(以下、「第2の反射光735」という)の輝度の平均値R2、および角度α=-0.5°±0.1°で表される第3の角度α3で反射される反射光(以下、「第3の反射光737」という)の輝度の平均値R3を測定する。
【0026】
得られた各輝度R1、R2、R3を用いて、前記式(2)により、ガラス板50の反射像拡散性指標値Rが算出される。
【0027】
ぎらつき(Anti-Sparkle)とは、表示画像からの光(像)がガラス板を透過する際にガラス板表面によって散乱され、散乱された光が相互に干渉することによって生じる輝点のムラが、どの程度観察されるかを表すものであり、観察者の目視によるぎらつきの判断結果と相関し、人の視感に近い挙動を示すことが確認されている。例えば、ぎらつき指標値Sが小さなガラス板は、ぎらつきが顕著であり、逆にぎらつき指標値Sが大きなガラス板は、ぎらつきが抑制される傾向にある。
【0028】
ぎらつき指標値Sは以下の方法により定量化される。
解像度264ppiである表示装置の表示面側に、前記第2の主面が接するようにガラス板を配置する。前記表示装置にRGB(0,255,0)で構成される緑単色の画像を表示させた状態で、前記ガラス板の上方に設置したDM&S社製SMS-1000を用いた画像解析により求められたSparkle値をぎらつきSaとする。固定撮像素子と前記ガラス板との間の距離dは540mmとし、カメラレンズは焦点距離が50mmの23FM50SPレンズを絞り5.6で使用する。また、参照試料として前記ガラス板と同じ厚さのガラス基板(VRD140ガラス;Asahi Glass Europe社製)についても同様の条件で画像解析を行い、求められたSparkle値をぎらつきSsとする。Sa及びSsの値から下記式(3)により算出される値をぎらつき指標値Sとする。
ぎらつき指標値S=1-(Sa/Ss) 式(3)
【0029】
ここで、表示装置にRGB(0,255,0)で構成される緑単色の画像を表示させるのは、視覚感度の高い色であり、視認しやすいためである。
また、固定撮像素子とガラス板との間の距離d=540mmを距離指数rで表すと、r=10.8に相当する。距離指数rとは、固体撮像素子の焦点距離fおよび固体撮像素子と透明基体の間の距離dを用いて、下記式(3-1)で表される。
距離指数r=(固体撮像素子と透明基体の間の距離d)/(固体撮像素子の焦点距離f) 式(3-1)
【0030】
より具体的に、
図3を参照し、ガラス板50のぎらつき指標値Sの測定方法の一態様を説明する。
測定装置70Cは、被測定試料、すなわちガラス板50と、ガラス板50の第1の主面52側に検出器75が配置され、ガラス板50の第2の主面53と接するように、解像度264ppiである表示装置54が設置される。表示装置54としては、例えばLCDパネルが挙げられる。この表示装置54にRGB(0,255,0)で構成される緑単色の画像を表示させ、ガラス板50を介した当該画像を検出器(解析装置)75を用いて解析を行う。その画像解析結果から求められるSparkle値をぎらつきS
aとする。
当該ぎらつきS
aと、参照試料としてガラス板50と同じ厚さのガラス基板(VRD140ガラス;Asahi Glass Europe社製)についても同様の条件で求めたぎらつきS
sとの値から上記式(3)によりガラス板のぎらつき指標値Sが算出される。
【0031】
透過ヘイズとは、ガラス板に光が入射する際、空気との屈折率差に応じて表面反射(フレネル反射)が生じることにより生じる透過率ロスを表すものである。透過ヘイズはJIS K 7136(2000年)に準拠する方法で測定を行う。
【0032】
具体的には、透過ヘイズは以下の方法により定量化される。
スガ試験機社製ヘイズメーターHZ-1を用い、光源の上に、前記第1の主面側が光源側となるようにガラス板を設置し、前記ガラス板の上方から透過光を測定する。
ガラス板の厚さ方向と平行な方向を角度0°とした時に、±2.5°以内で検出される光を透過光とし、-2.5°未満又は+2.5°超で検出される光を散乱光(透過光ロス)とし、前記散乱光が透過光と散乱光の和、すなわち全光透過量に対して占める割合を透過ヘイズ(%)とする。
【0033】
透過ヘイズは透過率ロスを表すものであり、従来、光の散乱により白味が強くなり陰影が付きやすく、目視による外観の均一性に影響を及ぼす特性として知られていた。しかしながら、本発明では、当該透過ヘイズの値と、ガラス板を通して視認される表示画の色味が実際の画像の色味とは異なる程度とが関連することをも新たに見出したものである。
すなわち、透過ヘイズの値が低いほど、視認される表示画の色味と実際の画像の色味とが近く、色の再現性に優れていることを意味する。
【0034】
色の再現性に優れるとは、例えばガラス板の第2の主面上の少なくとも一部に印刷層が設けられている場合、前記印刷層の実際の色味と、ガラス板の第1の主面側から視認される前記印刷層の色味とが、同一又はほぼ同一となることを意味する。また、表示画上にガラス板の第2の主面が接するようにガラス板を設置した場合、表示画の実際の色味と、ガラス板の第1の主面側から視認される前記表示画の色味とが、同一又はほぼ同一となることを意味する。なお、本明細書において色の再現性に優れるとは、色の鮮明性に優れるということと同義である。
【0035】
上述したように、透過ヘイズの値は、ガラス板を通して視認される表示画の色味と実際の色味との差に関連することから、本発明は、透過ヘイズの値を用いてガラス板を介した色の再現性を評価する方法にも関する。色の再現性の対象となる色味を単色に限定して評価することも可能であり、例えば当該色味を黒色に限定し、透過ヘイズの値を用いてガラス板を介した黒味を評価する方法とすることもできる。
このように、透過ヘイズの値を用いた色の再現性又は黒味を評価する方法においては、透過ヘイズの値が小さいほど色の再現性が高い又は黒味が灰色化せずに、鮮明な黒味であることを意味する。
【0036】
また、上記色の再現性又は黒味を評価する方法において、ガラス板を介して視認される色又は黒味に限定されず、例えばポリカ、有機ガラス等のプラスチック、アクリル樹脂、サイトップ(登録商標)等の非晶質樹脂等の透明板を介して視認される色又は黒味を評価対象とすることもできる。すなわち、本発明は、透過ヘイズの値を用いて、透明板を介した色の再現性又は黒味を評価する方法にも関する。
【0037】
本発明に係るガラス板は上記4つの光学特性が判断対象となる。
すなわち、視認性指標値Tは0.8以上であり、0.85以上が好ましく、0.9以上がより好ましく、高いほど好ましい。上限は1.0である。
反射像拡散性指標値Rは0.01以上であり、0.02以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。反射像拡散性指標値Rが下限以上であれば、外光の存在下でも表示体に表示された情報が把握できる効果が得られる。上限は0.95以下が好ましく、0.9以下がより好ましい。反射像拡散性指標値Rが上限以下であれば、非常に強い外光が当たった場合に全面が散乱光で視認不能となる「ホワイトアウト」を抑止する効果が得られる。
ぎらつき指標値Sは0.85以上であり、0.88以上が好ましく、0.93以上がより好ましく、表示体に表示された情報の視認性が向上するため高いほど好ましい。上限は1.0である。
透過ヘイズは15%以下であり、10%以下が好ましく、7%以下がより好ましく、5%未満がさらに好ましく、色の再現性が向上するため低いほど好ましい。
【0038】
本発明によれば、4つの光学特性が数値化されているため、これらを総合的に考慮することで、用途に応じたガラス板をより適正に選定できる。また、客観的かつ定量的な判断もできる。
【0039】
本発明に係るガラス板は、
図4(a)に示すように、第1の主面52がアンチグレア処理されたアンチグレア処理層60である。アンチグレア処理とは、光源のガラス板への反射による映り込みを少なくする加工法であり、ガラス板表面に微細な凹凸を形成する処理方法である。このアンチグレア処理により、正反射の低減や指ざわり感の向上、防汚性の向上等を実現することができ、前記4つの光学特性を実現することも可能となる。
【0040】
ガラス板の第1の主面の算術平均粗さRaは上記4つの光学特性が得られれば特に限定されないが、例えば0.05μm以上とすることにより反射像拡散性指標値Rを大きくできることから好ましく、0.07μm以上がより好ましい。また、0.5μm以下とすることにより、ガラス表面の凹凸形状に起因した光の干渉を減らし、ぎらつき指標値を大きくできることから好ましく、0.4μm以下がより好ましい。
なお、算術平均粗さRaはJIS B 0601:2001(ISO4287:1997)に準拠する方法で測定を行う。
【0041】
ガラス板の第1の主面の粗さ曲線要素の平均長さRSmは上記4つの光学特性が得られれば特に限定されないが、例えば5μm以上とすることにより反射像拡散性指標値Rを大きくできることから好ましく、8μm以上がより好ましい。また、30μm以下とすることによりガラス表面の凹凸形状に起因した光の干渉を減らし、ぎらつき指標値Sを大きくできることから好ましく、25μm以下がより好ましい。
なお、粗さ曲線要素の平均長さRSmはJIS B 0601:2001(ISO4287:1997)に準拠する方法で測定を行う。
【0042】
ガラス板は、第1の主面上の少なくとも一部に反射防止層(AR層)を有してもよい。反射防止層を設けることにより、反射率低減の効果をもたらし、光の映り込みによる眩しさを低減する。また、このガラス板を画像表示装置に使用した場合には、画像表示装置からの光の透過率を向上でき、画像表示装置の視認性を向上できる。なお、ガラス板の第1の主面上に防眩層等のその他機能層が成膜されている場合には、当該その他機能層上に反射防止層を形成できる。
【0043】
反射防止層の材料は特に限定されず、公知の物を公知の方法により使用できる。例えば、反射防止層は、高屈折率層と低屈折率層とを複数層積層した構成であってもよい。
この場合、例えば高屈折率層は波長550nmでの屈折率が1.9以上とし、低屈折率層は波長550nmでの屈折率が1.6以下とできる。また、層のマトリックス中に中空粒子や空孔を混在させた波長550nmでの屈折率が1.2~1.4の層を含む構成とできる。
【0044】
反射防止層における高屈折率層と低屈折率層との層構成はそれぞれ1層ずつを含む形態であってもよいが、それぞれ2層以上を含む構成であってもよい。高屈折率層と低屈折率層とをそれぞれ2層以上含む場合には、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した形態であることが好ましい。また、低屈折率層1層のみでもよい。
【0045】
反射防止性を高めるためには、反射防止層は複数の層が積層された積層体が好ましい。積層体は、積層数が多い程、より広い波長範囲で、より低反射性を発現する層構成の光学設計が可能となる。例えば該積層体は全体で2層以上8層以下の積層が好ましく、2層以上6層以下の積層が、反射率低減効果および量産性の観点からより好ましい。ここでの積層体は、上記の様に高屈折率層と低屈折率層とを積層した積層体が好ましく、この場合、高屈折率層、低屈折率層各々の層数を合計したものが上記範囲であることが好ましい。
【0046】
高屈折率層、低屈折率層の材料は特に限定されず、要求される反射防止性の程度や生産性等を考慮して適宜選択できる。高屈折率層を構成する材料としては、例えば酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化タンタル(Ta2O5)、窒化ケイ素(SiN)から選択された1種以上を好ましく使用できる。低屈折率層を構成する材料としては、酸化ケイ素(SiO2)、SiとSnとの混合酸化物を含む材料、SiとZrとの混合酸化物を含む材料、SiとAlとの混合酸化物を含む材料から選択された1種以上を好ましく使用できる。
【0047】
生産性や、屈折率の観点から、高屈折率層が酸化ニオブ、酸化タンタル、窒化ケイ素から選択される1種からなり、低屈折率層が酸化ケイ素からなる層である構成が好ましい。
【0048】
ガラス板は、第1の主面上の少なくとも一部に防汚層を有してもよい。防汚層とは表面への有機物、無機物の付着を抑制する層、または、表面に有機物、無機物が付着した場合においても、ふき取り等のクリーニングにより付着物が容易に除去できる効果をもたらす層である。
【0049】
防汚層を有するガラス板の場合、上記効果を得る観点からガラス板の第1の主面側の最表面に形成されることが好ましく、反射防止層やその他機能層上に防汚層が形成されることが好ましい。防汚層は、防汚性を付与できるものであれば特に限定されないが、例えば含フッ素有機ケイ素化合物を加水分解縮合反応により硬化させて得られる含フッ素有機ケイ素化合物被膜からなることが好ましい。
【0050】
防汚層の厚さは、特に限定されないが、防汚層が含フッ素有機ケイ素化合物被膜からなる場合、防汚層の厚さは2~20nmが好ましく、2~15nmがより好ましく、2~10nmがさらに好ましい。厚さが2nm以上であれば、防汚層によって均一に覆われた状態となり、耐擦り性の観点で実用に耐えるものとなる。また、厚さが20nm以下であれば、防汚層が形成された状態での光学特性が良好である。
【0051】
ガラス板は、その他の機能層を有してもよい。その他の機能層としては、防眩層、赤外線カット層、紫外線カット層、撥水層、静電防止層、印刷層、アンダーコート層、密着改善層、保護層等が挙げられる。これら機能層は、公知のものを公知の方法で使用できる。
【0052】
また、印刷層は、例えばガラス板を表示装置用カバーガラスやパネルディスプレイ等のカバーガラスとして用いる場合、
図4(b)に示すように、ガラス板の第2の主面53上の少なくとも一部に設けられることが好ましく、特に周縁部に沿って枠状に印刷層61が設けられることが好ましい。また、ガラス板を装飾ガラスとして使用できる。
【0053】
[ガラス板の製造方法]
ガラス板は、無アルカリガラス、ソーダライムガラス、ソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、ホウ珪酸ガラス等からなる。
ガラス板を車載ディスプレイ用カバーガラスとして用いる場合には、車体を軽量化するためにガラス板の厚さは3mm以下が好ましく、かつ外部から応力がかかった際に破損することが無いように、ガラス板の最表面に圧縮応力層を導入することが好ましい。これらを両立するためにはイオン交換処理による化学強化処理を行うことが好ましく、容易にイオン交換できる点からガラス板は、ソーダライムガラス又はアルミノシリケートガラスからなることが好ましい。
【0054】
より具体的なガラス組成として、モル%で表示した組成で、例えばSiO2を50~80%、Al2O3を0.1~25%、Li2O+Na2O+K2Oを3~30%、MgOを0~25%、CaOを0~25%およびZrO2を0~5%含むガラスが挙げられるが、特に限定されない。
【0055】
さらに具体的には以下(i)~(v)のガラス組成が挙げられる。なお、例えば、「MgOを0~25%含む」とは、MgOは必須ではないが25%まで含んでもよい、の意である。
【0056】
(i)酸化物基準のモル%で表示した組成で、モル%で表示した組成で、SiO2を63~73%、Al2O3を0.1~5.2%、Na2Oを10~16%、K2Oを0~1.5%、Li2Oを0~5.0%、MgOを5~13%及びCaOを4~10%を含むガラス、
(ii)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO2を50~74%、Al2O3を1~10%、Na2Oを6~14%、K2Oを3~11%、Li2Oを0~5.0%、MgOを2~15%、CaOを0~6%およびZrO2を0~5%含有し、SiO2およびAl2O3の含有量の合計が75%以下、Na2OおよびK2Oの含有量の合計が12~25%、MgOおよびCaOの含有量の合計が7~15%であるガラス、
(iii)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO2を68~80%、Al2O3を4~10%、Na2Oを5~15%、K2Oを0~1%、Li2Oを0~5.0%、MgOを4~15%およびZrO2を0~1%含有するガラス、
(iv)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO2を67~75%、Al2O3を0~4%、Na2Oを7~15%、K2Oを1~9%、Li2Oを0~5.0%、MgOを6~14%およびZrO2を0~1.5%含有し、SiO2およびAl2O3の含有量の合計が71~75%、Na2OおよびK2Oの含有量の合計が12~20%であり、CaOを含有する場合その含有量が1%未満であるガラス、
(v)酸化物基準のモル%で表示した組成が、SiO2を56~73%、Al2O3を7~24%、B2O3を0~6%、P2O5を0~6%、Li2Oを2~12%、Na2Oを2~11%、K2Oを0~5%、MgOを0~8%、CaOを0~2%、SrOを0~5%、BaOを0~5%、ZnOを0~5%、TiO2を0~2%およびZrO2を0~4%含有するガラス。
【0057】
また、ガラス板に化学強化処理を行う場合には、化学強化処理を適切に行うため、そのガラス組成におけるLi2OとNa2Oの含有量の合計が12モル%以上であることが好ましい。さらに、ガラス組成におけるLi2Oの含有率が増加するにしたがって、ガラス転移点が下がり、成形が容易となるため、Li2Oの含有率は0.5モル%以上が好ましく、1.0モル%以上がより好ましく、2.0モル%以上がさらに好ましい。さらに、表面圧縮応力(Compressive Stress:CS)および圧縮応力層深さ(Depth of Layer:DOL)を大きくするため、ガラス板のガラス組成がSiO2を60モル%以上、Al2O3を8モル%以上含有することが好ましい。
【0058】
上記組成になるように、各成分の原料を調合し、ガラス溶融窯で加熱溶融する。バブリング、撹拌、清澄剤の添加等によりガラスを均質化し、公知の成形法により所定の厚さのガラス板に成形し、徐冷する。ガラスの成形法としては、例えば、フロート法、プレス法、フュージョン法、ダウンドロー法及びロールアウト法が挙げられる。特に、大量生産に適したフロート法が好適である。また、フロート法以外の連続成形法、すなわち、フュージョン法およびダウンドロー法も好適である。任意の成形法により平板状に成形されたガラス部材は、徐冷された後、所望のサイズに切断される。なお、より正確な寸法精度が必要な場合等には、切断後のガラス部材に後述の研磨加工や端面加工が施されてもよい。これにより、成形工程などでのハンドリングにおいて、ガラス板の割れや欠けを低減でき、歩留まりを向上できるようになる。
【0059】
ガラス板の第1の主面及び第2の主面の少なくともいずれか一方に屈曲部を有する場合には、平板状のガラス板から所定の形状に成形することが好ましい。なお、屈曲部とは、平均曲率がゼロでない部分を意味する。
成形法としては、自重成形法、真空成形法、プレス成形法等を使用できる。中でも真空成形法は、ガラス板を所定の形状に成形する方法として優れている。真空成形法であれば、ガラス板の一方の主面は成形型と接触せずに成形できるため、傷、へこみなどの凹凸状欠点を減らせる。また、これらの成形法のうち、2種以上の成形法を併用してもよい。
【0060】
ガラス板の少なくとも一方の主面を研磨加工する場合には、例えば、回転研磨ツールの研磨加工部を一定圧力で接触させて、一定速度で移動させることで研磨加工を実施できる。一定圧力、一定速度の条件で研磨することにより、一定の研磨レートで研削面を均一に研磨できる。回転研磨ツールの研磨加工部の接触時の圧力としては、経済性及び制御のし易さ等の点で1~1,000,000Paが好ましい。速度は、経済性及び制御のし易さなどの点で1~10,000mm/minが好ましい。移動量は基材の形状等に応じて適宜決められる。
【0061】
回転研磨ツールは、その研磨加工部が研磨可能な回転体であれば特に限定されないが、ツールチャッキング部を有するスピンドル、リューターに研磨ツールを装着させる方式等が挙げられる。回転研磨ツールの材質としては、少なくともその研磨加工部がセリウムパッド、ゴム砥石、フェルトバフ、ポリウレタン等、被加工物を加工除去でき、且つヤング率が好ましくは7GPa以下、更に好ましくは5GPa以下のものであれば種類は限定されない。回転研磨ツールの材質をヤング率7GPa以下の部材を用いることにより、圧力により研磨加工部を対象物の形状に沿うように変形させて、底面及び側面を上述した所定の表面粗さに加工できる。回転研磨ツールの研磨加工部の形状は円又はドーナツ型の平盤、円柱型、砲弾型、ディスク型、たる型等が挙げられる。
【0062】
ガラス板に回転研磨ツールの研磨加工部を接触させて研磨を行う場合、研磨砥粒スラリーを介在させた状態で加工を行うことが好ましい。この場合、研磨砥粒としてはシリカ、セリア、アランダム、ホワイトアランダム(WA)、エメリー、ジルコニア、SiC、ダイヤモンド、チタニア、ゲルマニア等が挙げられ、その粒度は10nm~10μmが好ましい。回転研磨ツールの相対移動速度は、上述したように、1~10,000mm/minの範囲で選定できる。回転研磨ツールの研磨加工部の回転数は100~10,000rpmである。回転数が小さいと加工レートが遅くなり、所望の表面粗さにするのに時間がかかりすぎる場合があり、回転数が大きいと加工レートが速くなり、ツールの磨耗が激しくなるため、研磨の制御が難しくなる場合がある。
【0063】
なお、ガラス板の形状に沿うように回転研磨ツールとガラス板とを相対的に移動させて研磨加工してもよい。移動させる方式は移動量、方向、速度を一定に制御できる方式であればいかなるものでもよい。例えば、多軸ロボット等を用いる方式等が挙げられる。
【0064】
ガラス板の端面は、面取加工などの処理がなされた面でもよい。面取加工としては、機械的な研削により一般的にR面取、C面取と呼ばれる加工が好ましいが、エッチングなどによる加工でもよく、特に限定されない。
【0065】
ガラス板は、少なくともいずれか一方の主面に強化処理を行うことで、表面に圧縮応力層を形成し、強度及び耐擦傷性が高められる。強化処理は物理強化処理、化学強化処理のいずれも適用可能であり、厚さが薄いガラス板であってもより多くの圧縮応力が導入できることから、化学強化処理が好ましい。
化学強化処理は、ガラス転移点以下の温度で、溶融したアルカリ金属塩にガラス板を浸漬させることにより、ガラス板の最表面に存在するイオン半径が小さなアルカリ金属イオン(典型的には、LiイオンまたはNaイオン)を、イオン半径のより大きなアルカリ金属イオン(典型的には、Liイオンに対してはNaイオン、Naイオンに対してはKイオン)に交換することで、ガラス表面に圧縮応力層を形成する処理である。ガラス板は従来公知の方法によって化学強化処理できる。
【0066】
得られたガラス板の第1の主面にアンチグレア処理を行うことで、特定範囲の視認性指標値T、反射像拡散性指標値R、ぎらつき指標値S及び透過ヘイズを満たすガラス板が得られる。
【0067】
アンチグレア処理により第1の主面に微細な凹凸を形成する手法としてはフロスト加工、サンドブラスト加工を行った後にエッチングを行う手法、ウェットブラスト法などが挙げられるが、フロスト法では微細構造を形成することが難しい。また、サンドブラスト法では砥粒が摩耗して繰り返し加工が難しい。そのため、アンチグレア処理にはウェットブラスト法を用いることが好ましい。
【0068】
ウェットブラスト法は、ガラス板、好ましくは研磨加工を行ったガラス板に対してウェットブラスト加工を行う。ウェットブラスト加工とは、水等の液体と研磨材としての粒子(砥粒)とを混合したスラリーをポンプでブラストガンに送り、圧縮空気で加速した後、ガラス板の第1の主面に噴射し、表面粗化や加工、洗浄、ピーニング等を行う工法である。
ウェットブラスト加工で用いられる砥粒径、砥粒分布、砥粒種、吐出圧、吐出時間、掃引速度、射出角度、射出距離等を適宜変更することにより、前記4つの光学特性を満たす好ましい条件を決定する。
【0069】
ウェットブラスト加工の後、洗浄を行い、次いで、フッ酸によるエッチング処理、洗浄等の工程を経ることにより、ガラス板を製造できる。
【0070】
ガラス板に対し反射防止層を形成する場合、反射防止層はガラス板の第1の主面の表面に、又は前記第1の表面に形成されたその他機能層の表面に、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレーコート法、静電噴霧堆積法(ESD法)等により塗布した後、必要に応じて加熱処理する方法、または密着層の表面に化学的気相蒸着法(CVD法)、スパッタリング法やPLD法のような物理的気相蒸着法(PVD法)等を用いて形成できる。
【0071】
ガラス板の第1の主面上の少なくとも一部に含フッ素有機ケイ素化合物被膜を形成する方法としては、パーフルオロアルキル基;パーフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を含むフルオロアルキル基等のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤の組成物を、第1の主面の表面に、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレーコート法等により塗布した後必要に応じて加熱処理する方法、または含フッ素有機ケイ素化合物を密着層の表面に気相蒸着させた後必要に応じて加熱処理する真空蒸着法等が挙げられ、被膜形成の手法は問わない。
【0072】
被膜形成用組成物は、含フッ素加水分解性ケイ素化合物を含有する組成物であって、被膜形成が可能な組成物であれば、特に制限されない。被膜形成用組成物は含フッ素加水分解性ケイ素化合物以外の任意成分を含有してもよく、含フッ素加水分解性ケイ素化合物のみで構成されてもよい。任意成分としては、本発明の効果を阻害しない範囲で用いられる、フッ素原子を有しない加水分解性ケイ素化合物(以下「非フッ素水分解性ケイ素化合物」という。)、触媒等が挙げられる。
【0073】
なお、含フッ素加水分解性ケイ素化合物、および、任意に非フッ素加水分解性ケイ素化合物を被膜形成用組成物に配合するにあたって、各化合物はそのままの状態で配合されてもよく、その部分加水分解縮合物として配合されてもよい。また、該化合物とその部分加水分解縮合物の混合物として被膜形成用組成物に配合されてもよい。
【0074】
また、2種以上の加水分解性ケイ素化合物を組み合わせて用いる場合には、各化合物はそのままの状態で被膜形成用組成物に配合されてもよく、それぞれが部分加水分解縮合物として配合されてもよく、さらには2種以上の化合物の部分加水分解共縮合物として配合されてもよい。また、これらの化合物、部分加水分解縮合物、部分加水分解共縮合物の混合物であってもよい。ただし、真空蒸着などで成膜する場合、使用する部分加水分解縮合物、部分加水分解共縮合物は、真空蒸着が可能な程度の重合度のものとする。以下、加水分解性ケイ素化合物の用語は、化合物自体に加えてこのような部分加水分解縮合物、部分加水分解共縮合物を含む意味で用いられる。
【0075】
含フッ素有機ケイ素化合物被膜の形成に用いる含フッ素加水分解性ケイ素化合物は、得られる含フッ素有機ケイ素化合物被膜が、撥水性、撥油性等の防汚性を有するものであれば特に限定されない。
【0076】
具体的には、パーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキレン基およびパーフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有する含フッ素加水分解性ケイ素化合物が挙げられる。これらの基は加水分解性シリル基のケイ素原子に連結基を介してまたは直接結合する含フッ素有機基として存在する。市販のパーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキレン基およびパーフルオロアルキル基からなる群から選ばれる1つ以上の基を有するフッ素含有有機ケイ素化合物(含フッ素加水分解性ケイ素化合物)として、KP-801(商品名、信越化学工業社製)、X-71(商品名、信越化学工業社製)、KY-130(商品名、信越化学工業社製)、KY-178(商品名、信越化学工業社製)、KY-185(商品名、信越化学工業社製)、KY-195(商品名、信越化学工業社製)、Afluid(登録商標)S-550(商品名、旭硝子社製)、オプツ-ル(登録商標)DSX(商品名、ダイキン工業社製)などが好ましく使用できる。上記した中でも、KY-185、KY-195、オプツ-ルDSX、S-550がより好ましい。
【0077】
このような含フッ素加水分解性ケイ素化合物を含む被膜形成用組成物を、密着層表面に付着させ反応させて成膜することで、含フッ素有機ケイ素化合物被膜が得られる。反応を促進させるために、成膜後に、必要に応じて加熱処理や加湿処理を行ってもよい。なお、具体的な成膜方法、反応条件については従来公知の方法、条件等が適用可能である。
【0078】
防汚層を形成した最表面の静止摩擦係数は1.0以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましい。静止摩擦係数が1.0以下であれば、人間の指がガラス板の最表面に触れる際に指滑り性が良い。
また、ガラス板が屈曲部を有する際には、当該屈曲部の動摩擦係数は0.02以下が好ましく、0.015以下がより好ましく、0.01以下がさらに好ましい。動摩擦係数が0.02以下であれば、ガラス板が屈曲部を有する場合において、人間の指が前記屈曲部に触れる際に指滑り性が良い。
最表面の静止摩擦係数及び屈曲部の動摩擦係数は、例えば次のように測定可能である。トリニティーラボ社製触角評価測定機TL201Tsにおいて、ガラスの主面上に、同社製疑似指接触子を、荷重30gをかけた状態で置く。これを10mm/秒の速度で、ガラスの主面上を移動させ、静止摩擦係数と動摩擦係数を測定する。前記接触子が静止状態から動き始めた際の摩擦係数を静止摩擦係数、前記接触子が移動している際の摩擦係数を動摩擦係数と定義する。
【0079】
(変形例)
ガラス板に対し、防眩膜を形成する。防眩膜とは主に反射光を散乱させ、光源の映り込みによる反射光の眩しさを低減する効果をもたらす膜のことである。
防眩膜は、例えばシリカ前駆体および粒子の少なくとも一方と、液状媒体とを含有し、必要に応じて、前記シリカ前駆体および粒子以外の他の成分を含んでいてもよい組成物の塗膜を焼成することにより得ることができる。また、静電塗装により防眩膜を形成することも可能である。
なお、シリカ前駆体とは、焼成することによってSiO2を主成分とするマトリックスを形成し得る物質を意味する。
【0080】
組成物がシリカ前駆体を含む場合、防眩膜のマトリックスは、シリカ前駆体に由来する、シリカを主成分とするマトリックスを含む。防眩膜は、粒子から構成されてもよく、また、前記マトリックス中に粒子が分散したものであってもよい。
【0081】
組成物は、液状媒体として、例えば沸点150℃以下の液状媒体を含む。前記沸点150℃以下の液状媒体の含有量は、液状媒体全量に対して86質量%以上であることが好ましい。
【0082】
防眩膜の表面の最大高さ粗さRzは、0.2~5μmが好ましく、0.3~4.5μmがより好ましく、0.5~4.0μmがさらに好ましい。防眩膜の表面の最大高さ粗さRzが前記範囲の下限値以上であれば、防眩効果が充分に発揮される。防眩膜の表面の最大高さ粗さRzが前記範囲の上限値以下であれば、画像のコントラストの低下が充分に抑えられる。なお、最大高さ粗さRzは、JIS B 0601-2001に規定に従い測定できる。
【0083】
ガラス板は印刷層を有してもよい。印刷層を設けることで、使用者にボタン位置を明示し、操作性を向上させる効果や、タッチパネル用の配線を隠蔽することで意匠性を向上させる効果が得られる。
印刷層は第2の主面上の少なくとも一部に設けられることが好ましく、公知の方法や条件を用いて設けられる。
【0084】
[用途]
本発明に係るガラス板の用途は以下に挙げられるが特に限定されない。
具体例としては、車両用透明部品(ヘッドライトカバー、サイドミラー、フロント透明基板、サイド透明基板、リア透明基板、車載ディスプレイ、車載ディスプレイ用カバーガラス等)、メータ、建築窓、ショーウインドウ、ディスプレイ(ノート型パソコン、モニタ、LCD、PDP、ELD、CRT、PDA等)、LCDカラーフィルタ、タッチパネル用基板、ピックアップレンズ、光学レンズ、眼鏡レンズ、カメラ部品、ビデオ部品、CCD用カバー基板、光ファイバ端面、プロジェクタ部品、複写機部品、太陽電池用透明基板(カバーガラス等。)、携帯電話窓、バックライトユニット部品(導光板、冷陰極管等。)、バックライトユニット部品液晶輝度向上フィルム(プリズム、半透過フィルム等。)、液晶輝度向上フィルム、有機EL発光素子部品、無機EL発光素子部品、蛍光体発光素子部品、光学フィルタ、光学部品の端面、照明ランプ、照明器具のカバー、増幅レーザ光源、反射防止フィルム、偏光フィルム、農業用フィルム等が挙げられる。
【0085】
中でも、ガラス板を視認する人と、前記ガラス板との距離が固定されている用途に用いることが好ましく、すなわち、車両用透明部品の中でも、車載ディスプレイ用カバーガラスに用いることが好ましい。
前記車載ディスプレイとは、例えばスピードメータ等のクラスターと呼ばれる計器盤類、カーナビやディスプレイオーディオ等のCID(Center Information Display)、RSE(Rear Seat Entertainment)、HUD(Head-up Display)、カメラモニタリングシステム用電子ミラー(Back Mirror/Side Mirror)向けのTFT液晶ディスプレイ(TFT-LCD)、AM-OLED(Active Matrix Organic Light Emitting Diode)等が挙げられる。
【0086】
本発明の一実施態様として、前記ガラス板と発光体とを備える表示装置が挙げられる。発光体としては、有機EL、OLED(有機発光ダイオード)、液晶ディスプレイ(LCD)用光源、マイクロLED、蛍光体等が挙げられる。表示装置としては有機ELディスプレイ、OLEDディスプレイ、LCD、マイクロLEDディスプレイ、プラズマディスプレイ等が挙げられる。
【0087】
表示装置におけるガラス板は、ガラス板の第1の主面側が視認側となるように配置する。当該表示装置は、良好な視認性、反射像拡散性、及びぎらつき防止性に加え、色の再現性にも優れたものとなる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の記載によっては限定されない。
<評価方法>
(視認性指標値T)
長さ40mm、幅0.1mmのスリット状白色光源の上から30mm離れた位置に、ガラス板(100mm×100mm×1.3mmt)の第1の主面側が光源側となるように設置し、前記ガラス板の上方からDM&S社(Display-Messtechnik&Systeme社)製SMS-1000(解析装置)を用いてガラス板を透過した光と角度θを検出し、各々における輝度を測定した。また、カメラレンズは焦点距離が16mmのC1614Aレンズを絞り5.6で使用し、ガラス板の前記第1の主面から前記カメラレンズまでの距離は550mmに設定した。
前記ガラス板の厚さ方向と平行な方向を角度θ=0゜とした時に、角度θ=0゜±0.1°の範囲の輝度の平均値をT1とし、角度θ=0.7°±0.1°の範囲の輝度の平均値をT2とし、角度θ=-0.7°±0.1°の範囲の輝度の平均値をT3とした場合に、下記式(1)により算出される値を視認性指標値Tとした。
視認性指標値T=1-(T2+T3)/(2×T1) 式(1)
【0089】
(反射像拡散性指標値R)
ガラス板(100mm×100mm×1.3mmt)を、第1の主面側が上になるように設置し、その上方から101mm幅のスリット状の光を放射して得られた反射光の輝度を、DM&S社製SMS-1000により測定した。この際、第2の主面からの反射光(裏面反射)をなくすために、第2の主面側に艶消しの黒色板を設置した。カメラレンズは焦点距離が16mmのC1614Aレンズを絞り5.6で使用し、ガラス板の前記第1の主面からカメラレンズまでの距離は300mm、Imaging Scaleは0.0276~0.0278の範囲に設定した。
前記ガラス板の厚さ方向と平行な方向を角度φ=0゜とした時に、角度φ=5.7°±0.1°の角度から前記光を放射し、全反射する際の角度φ=-5.7°を基準(角度α=0°)とした。角度α=0°±0.1°の範囲の反射光の輝度の平均値をR1、角度α=0.5°±0.1°の範囲の反射光の輝度の平均値をR2、角度α=-0.5°±0.1°の範囲の反射光の輝度の平均値をR3とした場合に、下記式(2)により算出される値を反射像拡散性指標値Rとした。
反射像拡散性指標値R=(R2+R3)/(2×R1) 式(2)
【0090】
(ぎらつき指標値S)
解像度264ppiである表示装置(iPad-Air(登録商標)、アップル社製)の表示面側に、ガラス板(100mm×100mm×1.6mmt)の第2の主面が接するように設置した。前記表示装置にRGB(0,255,0)で構成される緑単色の画像を表示させた状態で、前記ガラス板の上方に設置したDM&S社製SMS-1000を用いた画像解析により求められたSparkle値をぎらつきSaとした。固定撮像素子と前記ガラス板との間の距離dは540mmとし、カメラレンズは焦点距離が50mmの23FM50SPレンズを絞り5.6で使用した。
参照試料として同じスケール(100mm×100mm×1.6mmt)のガラス基板(VRD140ガラス;Asahi Glass Europe社製)についても同様の条件で画像解析を行い、求められたSparkle値をぎらつきSsとした。
Sa及びSsの値から下記式(3)により算出される値をぎらつき指標値Sとした。
ぎらつき指標値S=1-(Sa/Ss) 式(3)
【0091】
(透過ヘイズ)
JIS K 7136(2000年)に準拠する方法で測定を行った。
具体的には、光源の上に、ガラス板の第1の主面側が光源側となるように設置し、前記ガラス板の上方からスガ試験機社製ヘイズメーターHZ-1を用いて透過光を測定した。
ガラス板の厚さ方向と平行な方向を角度0°とした時に、±2.5°以内で検出される光を透過光とし、-2.5°未満又は+2.5°超で検出される光を散乱光(透過光ロス)とし、前記散乱光が透過光と散乱光の和、すなわち全光透過量に対して占める割合を透過ヘイズ(%)とした。
【0092】
(色の再現性)
色の再現性の評価として、黒色の鮮明性の評価を行った。
ガラス板の第2の主面側に黒色インクA(セイコーアドバンス社製インキHF GV3)又は黒色インクB(帝国インキ製造社製 墨一)を印刷し、第2の主面の印刷された部分以外はマスキング(白色)を行った。このガラス板を第1の主面が上面となるように設置し、ガラス板上方から、当該印刷した部分の黒味と、元の黒色インクA又は黒色インクBの黒味の比較を行った。評価は被験者9人(30歳代~60歳代)による視認(官能試験)により行った。
【0093】
評価方法は以下のとおりである。
◎:実際のインクの色と、ガラス板上方から視認されたインクの色がほぼ同一であり区別できなかった。
○:実際のインクの色と、ガラス板上方から視認されたインクの色が厳密にはやや異なるが、同一とみなすことができた。
△:実際のインクの色と、ガラス板上方から視認されたインクの色が異なると判断された。
【0094】
<実施例及び比較例>
ガラス板にドラゴントレイル(登録商標)(旭硝子株式会社製、厚さ(t)が1.3mmt。)を準備し、ダイヤモンドカッターにより500mm×400mmの大きさに割断し、割断で生じた鋭利な端部を400番のダイヤモンド砥石で研削し、C面取り形状とした。
【0095】
次いで、ガラス板の一方の主面に対し、アンチグレア処理をウェットブラスト法により行った。アンチグレア処理を行った方の主面を第1の主面とする。
表1に記載のホワイトアルミナ粒子又はアルミナ粒子を砥粒として、水に砥粒:水=1:10(重量比)の比で分散させたスラリーを、ポンプでブラストガンに送り、圧縮空気で加速したガラス板の第1の主面に噴射することで表面粗化を行った。表面粗化における吐出圧(圧力[MPa])、投射距離[mm]、投射角度[deg]、及び掃引速度[mm/s]といった処理条件は表1に記載のとおりである。
ウェットブラスト加工の後、水による洗浄を行い、次いで、フッ酸によるエッチング処理及び洗浄の工程を経ることにより、アンチグレア処理されたガラス板を得た。フッ酸によるエッチング量[μm]は表1に記載のとおりである。
【0096】
得られたガラス板の視認性指標値T、反射像拡散性指標値R、ぎらつき指標値S、透過ヘイズ(%)及び色の再現性の評価結果を表1に示す。
【0097】
【0098】
この結果、透過ヘイズの値が低いほど色の再現性に優れることが確認され、透過ヘイズの値が15%以下であれば、良好な色の再現性が得られることが分かった。
さらに、視認性指標値T≧0.8、反射像拡散性指標値R≧0.01、及びぎらつき指標値S≧0.85を満たすことにより、好適な視認性・反射像拡散性・ぎらつき防止性を有するガラス板が得られることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明に係るガラス板を表示装置に適用することにより、視認性及び反射像拡散性に優れ、ぎらつきが防止されるのみならず、表示画の色の再現性にも優れた表示装置を提供できる。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上記した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能なものである。
【符号の説明】
【0101】
50 ガラス板
51 黒色板
52 第1の主面
53 第2の主面
54 表示装置
60 アンチグレア処理層
61 印刷層
70A、70B、70C 測定装置
71 光源
75 検出器(解析装置)
731 第2の光
733 第1の反射光
735 第2の反射光
737 第3の反射光