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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】ガス洗浄塔
(51)【国際特許分類】
   B01D 47/06 20060101AFI20220509BHJP
【FI】
B01D47/06 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018041705
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019155230
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】藤山 哉
(72)【発明者】
【氏名】高谷 悟
(72)【発明者】
【氏名】高橋 武史
(72)【発明者】
【氏名】福田 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】仙波 隆信
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-113769(JP,A)
【文献】特開昭49-007866(JP,A)
【文献】実公昭56-028416(JP,Y2)
【文献】特開2001-029743(JP,A)
【文献】米国特許第07135058(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D47/00-47/18
B01D53/14-53/18
B01D53/34-53/96
B01J10/00-10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の洗浄塔本体と、
前記洗浄塔本体の塔頂側に設置されている洗浄水噴射手段と、
前記洗浄塔本体の内部に水平に配置されている多孔板と、
前記洗浄塔本体の塔底側に形成されているガス供給口と、
前記洗浄塔本体の塔頂側に形成されているガス排出口と、
を有するガス洗浄塔であって、
前記多孔板は、多数の透過孔が略全面に亘って形成されていて、
前記洗浄水噴射手段は、噴射口と飛散板により構成されていて、
前記噴射口は、前記洗浄塔本体の円筒中心軸方向に向けて設置されていて、
前記飛散板は、前記洗浄塔本体の内壁の内周円に沿った洗浄水の旋回流を形成することができるように、前記噴射口から噴射される水流を、前記内壁の内周円上の洗浄水噴射手段が設置された1点を通る接線方向から該1点を起点として前記内周円の中心方向寄りに所定角度で回旋させた水平方向に規制することができる位置及び向きで設置されている、
ガス洗浄塔。
【請求項2】
前記洗浄水噴射手段が、複数配置されている、請求項1に記載のガス洗浄塔。
【請求項3】
前記内壁の内周円上において相互に180°反転した対向位置に配置されている2つの前記洗浄水噴射手段からなり、相互に同一回転方向に向けて洗浄水を噴射する、一組の洗浄水噴射ユニットを有する、請求項2に記載のガス洗浄塔。
【請求項4】
前記多孔板が前記洗浄塔本体の内部に鉛直方向に沿って水平に複数配置されていて、
各々の多孔板における前記透過孔の開口径は略同一であって、
前記洗浄塔本体内で最上段に配置されている前記多孔板の前記透過孔の開口径が、その他の前記多孔板における前記透過孔よりも小さい、
請求項1からのいずれかに記載のガス洗浄塔。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載のガス洗浄塔を備えてなる排ガス処理設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス洗浄塔に関する。より詳しくは、洗浄塔本体の内部に塔底側から排ガスを供給する一方で塔頂側から洗浄水を供給して、排ガスと洗浄水とを洗浄塔本体の内部で接触させることにより除塵を行う気液接触方式のガス洗浄塔に関する。
【背景技術】
【0002】
上述の気液接触方式のガス洗浄塔は、例えば、ウェルツ法による酸化亜鉛鉱の製造プラントの排ガス処理設備において用いられる。図4は、そのような排ガス処理設備の一例である。同図に示す排ガス処理設備10においては、乾燥加熱炉である乾燥加熱ロータリーキルン(DRK)2から排出されたダストを含有する排ガスが、ガス洗浄塔1、湿式電気集塵機3、排ガスファン4、スタック5が一連の装置として順次配置されており、これらの各装置が連接されてなる一連の排ガス処理設備10の中を、処理対象とされている排ガスが順次移送されていく。
【0003】
ここで、上記のような気液接触方式のガス洗浄塔において排ガスの洗浄効率を高めるためには、排ガスと洗浄水との接触機会を増加させることが重要である。そのためには、先ず、洗浄水を洗浄塔本体の内部の空間に十分に拡散させる必要がある。このために、洗浄塔本体の内部に複数段の棚段を設け、塔頂の一箇所から供給する洗浄水が、これらの棚段を順次経由して水平方向にも拡散しつつ落下していくように、各棚段間に洗浄水を導く専用の流路を形成した洗浄塔(特許文献1参照)や、或いは、洗浄水を供給する多数の噴霧ノズルを洗浄塔本体の垂直方向及び水平方向に分散配置した洗浄塔(特許文献2参照)等が提案されている。
【0004】
又、排ガスと洗浄水との接触機会を増加させるための他の工夫として、洗浄塔本体の内部において上昇方向以外の方向にも排ガスを誘導するガス流路を増設することにより、洗浄塔本体における排ガスの流れを上昇方向のみならず、その他の方向にも導いて、これにより排ガスと洗浄水との接触機会を増加させるガス洗浄塔も提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、上述の各ガス洗浄塔の導入には、複雑な配管工事や、洗浄塔本体の大型化が不可避となる。排ガス処理を必要とする一般的な製造プラントにおいては、そのような巨大で複雑な構造のガス洗浄塔の導入は、経済的条件或いは製造現場のスペースに係る物理的条件等から極めて困難である場合が多かった。
【0006】
よって、例えば、洗浄塔本体内に多孔板が配置されていて、洗浄塔本体の塔頂側にのみ設置された洗浄水供給手段から洗浄水を供給し、これを塔底側から上昇してくる排ガスと接触させるという仕組みのガス洗浄塔が、多くの製造プラントにおいて採用されている。そして、このようなガス洗浄塔においては、通常、洗浄水と排ガスとの接触機会を十分に確保するために、洗浄塔本体の内部に、洗浄水を水平方向に拡散させて、尚且つ、透過孔付近における排ガスと洗浄水との接触時間を確保することを企図した多孔板が設置されている。
【0007】
ところが、上記のような仕組みのガス洗浄塔においては、洗浄塔本体の塔頂側にのみ設置した洗浄水供給手段から供給された洗浄水が、十分に水平方向に拡散しないうちに、下方に落下してしまう場合があり、この場合に、排ガスと洗浄水との接触機会が不十分になってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-189536号公報
【文献】特開2012-528707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、排ガスを塔底側から供給し、洗浄水を塔頂から供給し多孔板を経由させて塔底側まで降下させる構造のガス洗浄塔において、洗浄塔本体の塔頂側にのみ設置した洗浄水供給手段から供給された洗浄水を、十分に水平方向に拡散させることができる、ガス洗浄塔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、上記構造のガス洗浄塔において、洗浄水の噴射方向を最適化することで洗浄塔本体の内壁の内周円に沿った洗浄水の旋回流を形成し、塔頂から供給された洗浄水を多孔板上に均一に分散させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
(1) 円筒状の洗浄塔本体と、前記洗浄塔本体の塔頂側に設置されている洗浄水噴射手段と、前記洗浄塔本体の内部に水平に配置されている多孔板と、前記洗浄塔本体の塔底側に形成されているガス供給口と、前記洗浄塔本体の塔頂側に形成されているガス排出口と、を有するガス洗浄塔であって、前記多孔板は、多数の透過孔が略全面に亘って形成されていて、前記洗浄水噴射手段は、洗浄水の噴射方向が、前記洗浄塔本体の内壁の内周円に沿った前記洗浄水の旋回流を形成することができるように、前記内周円上の洗浄水噴射手段が設置された1点を通る接線方向から該1点を起点として前記内周円の中心方向寄りに所定角度で回旋させた水平方向とされている、ガス洗浄塔。
【0012】
(2) 前記洗浄水噴射手段が、複数配置されている、(1)に記載のガス洗浄塔。
【0013】
(3) 前記内壁の内周円上において相互に180°反転した対向位置に配置されている2つの前記洗浄水噴射手段からなり、相互に同一回転方向に向けて洗浄水を噴射する、一組の洗浄水噴射ユニットを有する、(2)に記載のガス洗浄塔。
【0014】
(4) 前記洗浄水噴射手段が、噴射口と飛散板により構成される、(1)から(3)のいずれかに記載のガス洗浄塔。
(5) 前記多孔板が前記洗浄塔本体の内部に鉛直方向に沿って水平に複数配置されていて、各々の多孔板における前記透過孔の開口径は略同一であって、前記洗浄塔本体内で最上段に配置されている前記多孔板の前記透過孔の開口径が、その他の前記多孔板における前記透過孔よりも小さい、(1)から(4)のいずれかに記載のガス洗浄塔。
【0015】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載のガス洗浄塔を備えてなる排ガス処理設備。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、排ガスを塔底側から供給し、洗浄水を塔頂から供給し多孔板を経由させて塔底側まで降下させる構造のガス洗浄塔において、洗浄塔本体の塔頂側にのみ設置した洗浄水供給手段から供給された洗浄水を、十分に水平方向に拡散させることができる、ガス洗浄塔を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のガス洗浄塔の模式的な斜視図であり、本発明の作用効果の説明に供する図面である。
図2】本発明のガス洗浄塔が備える複数の多孔板、各々の平面図である。
図3】本発明のガス洗浄塔の備えうる洗浄水噴射手段の模式的な平面図である。
図4】本発明のガス洗浄塔を含んで構成される排ガス処理設備の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<酸化亜鉛鉱の製造プロセス>
本発明は、「ウェルツ法による酸化亜鉛鉱の製造プロセス」を行う製造プラントにおいて、乾燥加熱ロータリーキルン(DRK)から排出される排ガスの排ガス処理に好ましく適用することができる。「ウェルツ法による酸化亜鉛鉱の製造プロセス」とは、以下の「還元焙焼工程」、「湿式工程」、「乾燥加熱工程」の各工程を順次行うプロセスである。但し、本発明は、このような実施形態に限定されない。本発明は、洗浄水を、塔頂から供給し、多孔板を経由させて塔底まで降下させる構造のガス洗浄塔、及び、それを用いる排ガス処理設備や排ガス処理方法全般に、広く適用することができる。
【0019】
[還元焙焼工程]
還元焙焼工程においては、鉄鋼ダスト等の亜鉛含有鉱の還元焙焼処理が行われる。還元焙焼処理は、通常、還元焙焼ロータリーキルン(RRK)を用いて行われる。RRK内で還元焙焼され揮発した金属亜鉛は炉内で再酸化されて粉状の酸化亜鉛となる。粉状の酸化亜鉛は、RRKからの排出ガスとともに集塵機に導入され、捕捉されて粗酸化亜鉛ダストとして回収される。
【0020】
[湿式工程]
湿式工程においては、上記の粗酸化亜鉛ダストを、処理液によってレパルプすることにより粗酸化亜鉛スラリーとし、カドミウム、塩素、フッ素等の不純物を処理液中に分配させる。そして上記処理を経た粗酸化亜鉛スラリーを脱水し、粗酸化亜鉛ケーキとして次工程の乾燥加熱工程に供給する。
【0021】
[乾燥加熱工程]
乾燥加熱工程においては、上記の粗酸化亜鉛ケーキを、乾燥加熱ロータリーキルン(DRK)2に装入して焼成する。この工程により、カドミウム等の濃度を更に低減した酸化亜鉛鉱(焼鉱)を得ることができる。尚、DRKに装入された粗酸化亜鉛ケーキ等の装入物は、全長約30mのロータリーキルン内において、造粒、乾燥、加熱、焼成されるが、造粒、乾燥の過程で飛散した装入物の粉塵、加熱、焼成の過程で揮発した酸化物やハロゲン化物等がダストとなる。DRKから排出される排ガス(以下、「DRK排ガス」とも言う)のダスト濃度は、通常、30~40g/Nm程度である。
【0022】
<ガス洗浄塔>
以下、排ガス処理設備10を構成することができるガス洗浄塔1について説明する。図1に示す通り、ガス洗浄塔1は、円塔状の洗浄塔本体11の塔頂側に、洗浄水噴射手段13A、13Bが設置されている。そして、円塔状の洗浄塔本体11の内部に、鉛直方向に沿った異なる位置に、3枚の多孔板12A、12B、12Cがそれぞれ水平に配置されている。又、洗浄塔本体11の内部へのガス供給口14は、洗浄塔本体11の塔底側に形成されていて、ガス排出口15は、洗浄塔本体11の塔頂側に形成されている。
【0023】
尚、本発明のガス洗浄塔の多孔板の枚数は、必ずしも図1に示すような3枚には限定されない。本発明の他の要件を満たす限り、本発明のガス洗浄塔は、多孔板の枚数は1枚でもよい。但し、多孔板の枚数は2枚以上であることが好ましく、任意の複数の多孔板を設置したものとすることができる。但し、以下、本発明における複数の多孔板の作用効果の理解を容易とするために、3枚の多孔板12A、12B、12Cを有するガス洗浄塔1を、本発明の好ましい一実施形態として例示しつつ本発明の詳細を説明する。
【0024】
本発明のガス洗浄塔は、洗浄水wの噴射方向が最適化された洗浄水噴射手段が、洗浄塔本体の塔頂側に設置される。洗浄水噴射手段の洗浄水wの噴射方向は、図3に示すように、洗浄塔本体11の内壁の内周円上の洗浄水噴射手段が設置された1点を通る接線方向から、その1点を起点として上記内周円の中心方向寄りに回旋させた水平方向であって、洗浄水噴射手段13近傍の洗浄塔本体11の内壁に洗浄水wを直撃させることができる方向であればよい。
【0025】
又、洗浄水噴射手段13の設置数については特に限定されないが、後に詳しく説明する通り、最小限の洗浄水供給手段で洗浄水を効率よく水平方向に拡散させるために、図1に示すガス洗浄塔1のように、洗浄塔本体11の内壁の内周円の対向する位置に一対の洗浄水噴射手段13A、13Bが設置されていることが好ましい。
【0026】
上述の構成を基本構成とするガス洗浄塔1においては、図1に示す通り、ガス供給口14から洗浄塔本体11の内部に導入された排ガスgは、洗浄塔本体11の内部を塔頂に向けて上昇していく。そして、洗浄水噴射手段13から洗浄塔本体11の内部に供給された洗浄水wは、各多孔板12上で水平方向に拡散されつつ洗浄塔本体11の内部を降下していく。この過程で、洗浄塔本体11の内部において排ガスgと洗浄水wが接触し、排ガスg中のダストが洗浄水wによって取り除かれる。
【0027】
[洗浄塔本体]
洗浄塔本体11は、円塔状の中空の構造体からなる。その形状について詳しくは、少なくとも排ガスgの上昇経路となる主たる部分が中空の円筒形であればよい。又、円塔状の中空の構造体を形成する材料については、実際にガス洗浄塔1が設置される製造プラント毎に、必要とされる強度、耐久性、又、処理対象となる排ガスの種類に応じて求められる耐腐食性等を備える各種の材料を適宜選択することができる。一般的には、洗浄塔本体11は、一般構造用圧延鋼材(SS鋼材)、ステンレス鋼材等の各種の金属材で形成される。又、処理対象とするガスの化学的性質や処理温度の条件が適合する場合であれば、繊維強化プラスチック(FRP)により形成することもできる。又、金属材の洗浄塔本体11の内面については、処理対象とするガスの化学的性質や処理温度の条件に応じて、ゴムライニング、FRPライニング、フッ素樹脂ライニング等、各種のライニング処理が施されていることが好ましい。
【0028】
[多孔板]
多孔板12(12A、12B、12C)は、その外周を洗浄塔本体11の内壁の内周円に嵌合させる態様で設置される円盤状の部材であり、図2に示すように、この部材を貫通する多数の透過孔121(121A、121B、121C)が略全面に亘って形成されている。鉛直方向に沿って複数の多孔板が配置される場合、各多孔板(例えば、多孔板12A)において、この透過孔121(例えば、透過孔121A)の開口径(直径)は、全ての孔において略同一であることが好ましい。又、各多孔板における透過孔121の開口ピッチ(円の中心間距離)も、全ての孔において略同一であることが好ましい。
【0029】
各々の多孔板12の透過孔121の開口径について、洗浄塔本体11の内部で最下段、即ち、鉛直方向において最も塔底寄りに配置されている多孔板12Cの透過孔121Cの開口径を、少なくとも最上段の透過孔121Aよりは大きく、その他の全ての多孔板の透過孔の開口径と同一以上の大きさとすることが好ましい。
【0030】
多孔板12の透過孔121の開口径について、洗浄塔本体11の内部に鉛直方向に沿って上下に2枚の多孔板12が設置されている場合(多孔板12Bが存在しない場合:図示せず)は、鉛直方向における塔底寄りに配置されている多孔板12Cの透過孔121Cの開口径が、塔頂よりに配置されている多孔板12Aの透過孔121Aの開口径よりも大きいことが好ましい。
【0031】
又、図1のように、洗浄塔本体11の内部に鉛直方向に沿って3枚以上の多孔板が配置されている場合には、最上段の多孔板よりも最下段の多孔板の方が、透過孔の開口径が大きいという上述の条件を満たした上で、尚且つ、いずれの多孔板の開口径も、各々の多孔板の直下に隣接配置されている他の多孔板の開口径と同一以下の開口径であることが好ましい。
【0032】
具体的に、例えば、図1に示すように、3枚の多孔板12A、12B、12Cが配置されているガス洗浄塔1においては、最下段の透過孔121Cの開口径は、少なくとも最上段の透過孔121Aの開口径よりは、大きく、尚且つ、中段の透過孔121Bの開口径と同一以上であることが好ましく、同開口径よりも大きいことがより好ましい。そして、中段の透過孔121Bの開口径は、上段の透過孔121Aの開口径と同一以上であることが好ましく、同開口径よりも大きいことがより好ましい。
【0033】
3枚の多孔板12A、12B、12Cを備えるガス洗浄塔1においては、排ガスダスト濃度が最も高い状態で接触することとなる最下段の多孔板12Cの透過孔121Cが最も目詰まりを起こしやすい。この透過孔121Cの開口径を他の透過孔の開口径よりも相対的に大きくすることで、この多孔板12Cの目詰まりの発生を相対的に抑制して、各多孔板へのダスト負荷を分散させることで、目詰まりの掃除のための操業停止の頻度を従来よりも少なくすることができる。
【0034】
一方、洗浄塔本体11の内部において最上段に配置されている多孔板12Aの透過孔121Aは、相対的に目詰まりは起こしにくいので、この最上段の多孔板の表面に撒布される洗浄水の滞留時間を十分に長く保持して、洗浄水を水平方向に十分に拡散させるために、この多孔板の透過孔の開口径は、その他の不都合が生じない限りにおいて、できるだけ小さいことが好ましい。そのことにより、多量の洗浄液を多孔板上に均一に分散させることができ、排ガスの洗浄効率を、更に向上させることができる。
【0035】
多孔板12A、12B、12Cそれぞれにおける各透過孔121A、121B、121Cの孔の数は、特段限定されない。但し、最上段に配置する多孔板12Aについては、上述の通り、他の多孔板よりも開口径を小さくする一方で、孔の数については、他の多孔板よりも多くして、他の多孔板よりも密に透過孔を形成することが好ましい。これにより、洗浄水の水平方向への拡散を十分に促進して、その直下に隣接配置されている中段の多孔板12Bへの洗浄水wの落下量を多孔板の全面においてより均一に分散させることができる。
【0036】
又、各多孔板において、多孔板の全表面積(貫通孔部分も含む)に対する貫通孔部分の面積比、即ち開口率は、特段限定されない。例えば、ダスト濃度が30~40g/Nm程度のDRK排ガスを処理する場合であれば、開口率を10%~40%程度の範囲内とすることで、本発明の効果を良好な態様で享受することができる。但し、最上段の多孔板12Aについては、洗浄水を保持する十分な時間を確保するために、少なくとも最下段の多孔板12Cよりも、開口率についても、より小さくすることが好ましい。
【0037】
上述のように、本発明の効果を良好な態様で享受することができるガス洗浄塔とするための多孔板の設計例としては、洗浄塔本体11の塔頂側から順に3枚の多孔板12A、12B、12Cが並置されている場合において、塔頂側の多孔板12Aの開口径を20mm、開口率を16%とし、中段及び塔底側の多孔板12B、12Cの開口径を30mm、開口率を28%とする例が、好ましい一具体例として挙げられる。
【0038】
又、3枚以上の多孔板が鉛直方向に並置されている場合、各多孔板の透過孔の開口径が、最上段側の多孔板から最下段側の多孔板に向けて段毎に漸減していく構造とすることが更に好ましい。これにより、ガス洗浄塔の排ガスからの除塵効率を良好に維持したまま、多孔板の目詰まりの発生まで、即ち、多孔板の掃除を行うために操業の中断をするまでの時間を延長させて、排ガス処理設備の稼働効率を更に高めることができる。
【0039】
[洗浄水噴射手段]
洗浄水噴射手段13は、洗浄水噴射手段13からの洗浄水wの噴射方向を、図3に示す通り、洗浄塔本体11の内壁の内周円上の洗浄水噴射手段が設置された1点を通る接線方向から、その1点を起点として上記内周円の中心方向寄りに所定角度で回旋させた水平方向とする。又、洗浄水噴射手段13としては、従来公知の一般的な噴射ノズル等、洗浄塔本体11の内部に塔頂側から洗浄水wを供給する機能を有する各種の撒水器具を適宜採用することができる。
【0040】
洗浄水噴射手段13における上述の洗浄水wの噴射方向は、図3に示すように、洗浄水噴射手段13近傍の洗浄塔本体11の内壁に沿わせて洗浄水wを直撃させることができる方向(da、db)に向けて洗浄水wを噴射することができるようにすることが、この噴射方向に係る実質的な必須の要求事項となる。この洗浄水wの噴射方向は、より具体的には、内径(直径)が、2.6mの洗浄塔本体を一例とする場合、洗浄塔本体の内壁の内周円上の洗浄水噴射手段が設置された1点を通る接線方向を0°、その1点を起点として上記内周円の中心方向を90°とした場合において、概ね20°~40°程度となる。この方向に向けて洗浄水wを噴射することにより、最上段の多孔板12A上において、多孔板の円周方向に沿って旋回しながら多孔板上の中心に向けて洗浄水が渦巻き状に拡散する洗浄水の旋回流を形成することができる。
【0041】
洗浄水噴射手段13からの洗浄水の噴射方向を上記方向に向けるには、例えば、噴射ノズル等の噴射手段の噴射口を、予めその方向に向けて設置してもよいが、例えば、図3に示すように、洗浄塔本体の円筒中心軸方向に向けて、洗浄水噴射手段13として、噴射口131(131A、131B)が設置されている場合、これらの噴射口131A、131Bの近傍に水流を上記各方向(da、db)に規制する飛散板132A、132Bを設置することによって、そのような方向(da、db)への洗浄水の噴射流を形成してもよい。又、噴射口をシャワー状のノズルにはせずに、上記のように飛散板により、水流方向と広がりを制御する構成とすることによれば、設置容易な簡易な構造でありながら、上記の噴射方向の角度調整を適切に行なうことができる。又、排ガス中のダストによるシャワー状のノズルの目詰まりを回避できる点において有利でもある。
【0042】
又、洗浄水噴射手段13は、洗浄塔本体11の内壁の内周円上の相互に180°反転した対向位置に、それぞれ洗浄水噴射手段13A及び13Bとして設置されていて、これらが相互に同一回転方向に向けて洗浄水を噴射することができる一組の洗浄水噴射ユニットとして設置されていることが好ましい。洗浄水噴射手段をこのような構成の洗浄水噴射ユニットとすることにより、上述の洗浄水の旋回流が多孔板全体により均一に形成されやすくなる。
【0043】
(ガス洗浄塔の作用効果)
以上、説明した、本発明に係るガス洗浄塔1においては、洗浄水噴射手段13による洗浄水wの噴射方向が、洗浄塔本体11の内壁の内周円上の洗浄水噴射手段13が設置された1点を通る接線方向から、その1点を起点として上記内周円の中心方向寄りに所定角度で回旋させた水平方向であって、洗浄水噴射手段13近傍の洗浄塔本体11の内壁に沿わせて洗浄水wを直撃させることができる方向に最適化されている。これにより、最上段の多孔板12Aの表面に洗浄水が渦巻き状に旋回しながら均一に拡散する。そして、十分に時間をかけて多孔板12A全体に拡散された洗浄水は、その直下の多孔板12B、更には、多孔板12Cの表面の全体に均一に降下する。一方、洗浄塔本体11の塔底側から導入された排ガスは、上記態様で水平方向に十分に拡散されながら降下する洗浄水と十分な接触機会を与えられるので、良好な除去率で排ガス中のダストを除去することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 ガス洗浄塔
11 洗浄塔本体
12(12A、12B、12C) 多孔板
121(121A、121B、121C) 透過孔
13(13A、13B) 洗浄水噴射手段
131(131A、131B) 噴射口
132(132A、132B) 飛散板
14 ガス供給口
15 ガス排出口
2 乾燥加熱ロータリーキルン(DRK)
3 湿式電気集塵機
4 排ガスファン
5 スタック
10 排ガス処理設備
g 排ガス
w 洗浄水
図1
図2
図3
図4