(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】クラッド材と金属との複合材
(51)【国際特許分類】
B32B 15/01 20060101AFI20220509BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20220509BHJP
B23K 26/24 20140101ALI20220509BHJP
B23K 20/04 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
B32B15/01 D
B32B15/01 B
B32B15/01 G
B32B15/01 H
B23K26/21 F
B23K26/24
B23K20/04 B
(21)【出願番号】P 2018045846
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100153567
【氏名又は名称】田中 祐介
(72)【発明者】
【氏名】横田 将幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 淳
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-169901(JP,A)
【文献】特許第5410646(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第104329560(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B23K 20/00-20/26、26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成される第1層および第2層と、前記第1層と前記第2層との間に配置され、Cu、Cu合金、AlまたはAl合金から構成される第3層と
が接合された厚みが1mm以下のクラッド材から構成されるクラッド材部分と、
前記クラッド材部分とは別部材から構成され、前記クラッド材部分の厚み方向に延びる側面に接合され、前記第1層および前記第2層と同種の金属から構成される接合材部分と、を備え、
前記接合材部分は、曲げ変形された曲げ部分を含み、曲げ部分の外周面に他部材と接合する接合部が形成される、クラッド材と金属との複合材。
【請求項2】
前記第1層、前記第2層および前記接合材部分は、共に、ステンレス鋼から構成され、
前記第3層は、CuまたはCu合金から構成されている、請求項1に記載のクラッド材と金属との複合材。
【請求項3】
前記第1層、前記第2層および前記接合材部分は、共に、オーステナイト系ステンレス鋼から構成されている、請求項2に記載のクラッド材と金属との複合材。
【請求項4】
前記クラッド材部分は帯状または四角形状であって、前記接合材部分は、前記クラッド材部分の厚み方向と直交する方向のうち、対向する一対の側面に沿って接合されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載のクラッド材と金属との複合材。
【請求項5】
前記接合材部分は、前記クラッド材部分の前記厚み方向と平行な全ての前記側面に沿って接合されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載のクラッド材と金属との複合材。
【請求項6】
前記クラッド材部分の前記側面と外部とを熱的および電気的に接続可能なように設けられた接続部材をさらに備える、請求項1~
5のいずれか1項に記載のクラッド材と金属との複合材。
【請求項7】
前記接合材部分は、前記クラッド材部分と前記接合材部分との接合界面および前記接合界面の近傍において、前記クラッド材部分の前記厚み方向の一方側の表面よりも前記一方側に突出しないように形成されているとともに、前記クラッド材部分の前記厚み方向の他方側の表面よりも前記他方側に突出しないように形成されている、請求項1~
6のいずれか1項に記載のクラッド材と金属との複合材。
【請求項8】
前記クラッド材部分および前記接合材部分が存在する前記厚み方向と直交する方向において、前記クラッド材部分の長さは、前記複合材の長さの1/2以上である、請求項1~
7のいずれか1項に記載のクラッド材と金属との複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クラッド材と金属との複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば熱伝導性や導電性のよいCu(銅)に対して、異種金属が接合されたクラッド材が知られている(たとえば、特許文献1、2参照)。
【0003】
上記特許文献1には、ステンレス鋼からなる芯材と、芯材の厚み方向の両表面に圧延され拡散接合されたCuからなる表皮材とから構成されるクラッド材が開示されている。また、上記特許文献2には、CuまたはCu合金からなる第1層と、第1層の厚み方向の両表面に圧延され拡散接合されたステンレス鋼からなる第2層および第3層とから構成されるクラッド材が開示されている。これらのクラッド材では、厚み方向に延びる側面において、ステンレス鋼とCuまたはCu合金の端面がいずれの場合も外部に露出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-134073号公報
【文献】特許第6237950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のクラッド材では、外部に露出しているCuからなる表皮材が、厚み方向の両表面に限らず、厚み方向に延びる側面においても腐食するという問題点がある。また、特許文献2に記載のクラッド材では、CuまたはCu合金からなる第1層の厚み方向の両表面に接合されたステンレス鋼からなる第2層および第3層によって、第1層の厚み方向の両表面における腐食は抑制される一方、厚み方向に延びる側面において中間層であるCuまたはCu合金からなる第1層が外部に露出しているため、側面においてCuまたはCu合金からなる第1層が腐食するという問題点がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、本発明の1つの目的は、腐食しやすいCuやAl(アルミニウム)に対して異種金属が接合されたクラッド材において、クラッド材の厚み方向の両表面およびクラッド材の厚み方向に延びる側面が腐食するのを抑制することが可能な材料(クラッド材と金属との複合材)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面によるクラッド材と金属との複合材は、ステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成される第1層および第2層と、前記第1層と前記第2層との間に配置され、Cu、Cu合金、AlまたはAl合金から構成される第3層とが接合された厚みが1mm以下のクラッド材から構成されるクラッド材部分と、前記クラッド材部分とは別部材から構成され、前記クラッド材部分の厚み方向に延びる側面に接合され、前記第1層および前記第2層と同種の金属から構成される接合材部分と、を備え、前記接合材部分は、曲げ変形された曲げ部分を含み、曲げ部分の外周面に他部材と接合する接合部が形成される。
【0008】
なお、「Ti合金」は、Ti(チタン)を50質量%以上含有することにより、Tiから主に構成される合金を意味する。「Cu合金」は、Cu(銅)を50質量%以上含有することにより、Cuから主に構成される合金を意味する。「Al合金」は、Al(アルミニウム)を50質量%以上含有することにより、Alから主に構成される合金を意味する。また、「第1層および第2層と同種の金属から構成される接合材部分」は、第1層および第2層がステンレス鋼から構成されている場合には、接合材部分がステンレス鋼から構成され、第1層および第2層がTiまたはTi合金から構成されている場合には、接合材部分がTiまたはTi合金から構成されることを意味する。
【0009】
本発明の一の局面によるクラッド材と金属との複合材では、上記のように、ステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成される第1層および第2層と、第1層と第2層との間に配置され、Cu、Cu合金、AlまたはAl合金から構成される第3層とが接合されたクラッド材から構成されるクラッド材部分の厚み方向に延びる側面に、第1層および第2層と同種の金属(ステンレス鋼、TiまたはTi合金)から構成される接合材部分が接合されている。これにより、耐腐食性の高いステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成される第1層および第2層によって、耐腐食性の低いCu、Cu合金、AlまたはAl合金から構成される第3層の厚み方向の両表面が覆われるだけでなく、耐腐食性の高いステンレス鋼、TiまたはTi合金(第1層および第2層と同種の金属)から構成される接合材部分がクラッド材部分の側面に接合されることにより、接合材部分によって、クラッド材部分の側面において、中間層としての第3層を覆うことができる。この結果、クラッド材(クラッド材部分)の厚み方向の両表面だけでなく、クラッド材(クラッド材部分)の耐腐食性が低い中間層(第3層)の厚み方向の側面が腐食するのを抑制することが可能な材料(クラッド材と金属との複合材)を提供することができる。また、接合材部分が曲げ変形された曲げ部分を含むことにより、接合材部分を他の部材に対して溶接等を行う場合に、曲げ変形された曲げ部分に溶接等を行うことができるので、たとえば他の部材が厚み方向に延びる部材である場合などに、曲げ部分を他の部材に沿わせるように配置することができるので、接合材部分を他の部材に対して容易に溶接等を行うことができる。
【0010】
また、本発明の一の局面によるクラッド材と金属との複合材では、接合材部分を、クラッド材の第1層および第2層と同種の金属から構成する。これにより、接合材部分がクラッド材の第1層および第2層と異種の金属から構成されている場合と比べて、クラッド材部分の側面において、クラッド材部分と接合材部分とを強固かつ容易に接合することができる。この結果、クラッド材部分の側面において、接合材部分によって中間層(第3層)を覆われる状態を確実に形成することができる。
【0011】
また、本発明の一の局面によるクラッド材と金属との複合材では、熱伝導性および導電性のよいCu、Cu合金、AlまたはAl合金から第3層を構成するので、クラッド材部分のステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成される第1層および第2層と接合材部分とにおいて耐腐食性を有するとともに、クラッド材部分の第3層において熱伝導性および導電性のよい複合材を提供することができる。これにより、耐腐食性を有する複合材を、熱伝導性を要するヒートシンクまたは導電性を要する導電部材として好適に用いることができる。
【0012】
上記一の局面によるクラッド材と金属との複合材において、好ましくは、第1層、第2層および接合材部分は、共に、ステンレス鋼から構成され、第3層は、CuまたはCu合金から構成されている。このように構成すれば、第1層、第2層および接合材部分が、共に、TiまたはTi合金から構成されることに比べて、溶接が容易で、かつ安価なステンレス鋼から構成された接合材部分により、第3層が腐食するのを抑制することができるので、中間層(第3層)の腐食を抑制することが可能な複合材を容易かつ安価に作製することができる。また、第3層が、好ましくはCuまたはCu合金から構成されることによって、第3層がAlまたはAl合金から構成されることに比べて、複合材のクラッド材部分における熱伝導性および導電性を一層向上させることができる。これにより、耐腐食性を有する複合材を、熱伝導性を要するヒートシンクまたは導電性を要する導電部材として一層好適に用いることができる。
【0013】
この場合、好ましくは、第1層、第2層および接合材部分は、共に、オーステナイト系ステンレス鋼から構成されている。このように構成すれば、第1層、第2層および接合材部分が、フェライト系などの磁性を有するステンレス鋼ではなくSUS316Lなどの磁性を有しにくいオーステナイト系ステンレス鋼から構成されるとともに、第3層が非磁性のCuまたはCu合金により構成されることによって、複合材が磁化するのを抑制することができる。これにより、複合材が用いられる周辺の電子部品等に複合材の磁気に起因する不具合が生じるのを抑制することができる。
【0015】
上記一の局面によるクラッド材と金属との複合材において、クラッド材部分は帯状または四角形状であって、接合材部分は、クラッド材部分の厚み方向と直交する方向のうち、対向する一対の側面に沿って接合することができる。このように構成すれば、帯状または四角形状のクラッド材部分の厚み方向に延びる4つの側面のうちの少なくとも2つの側面(対向する一対の側面)において、クラッド材部分の中間層(第3層)が腐食するのを抑制することができる。これにより、中間層(第3層)の腐食を複合材の大きな領域で抑制することができる。また、たとえば、クラッド材を圧延で連続的に作製する場合に、長手方向に延びる対向する一対の側面に接合材部分を接合しながら圧延後の帯状のクラッド材を搬送することによって、容易かつ効率的に、接合材部分がクラッド材部分の長手方向に延びる対向する一対の側面に接合された複合材を得ることができる。なお、帯状または四角形状(正方形状を含む長方形状)のクラッド材においては、長手方向は、たとえば、クラッド材の圧延方向であってよく、短手方向は、たとえば、クラッド材の圧延方向と直交する幅方向であってよい。
【0016】
上記一の局面によるクラッド材と金属との複合材において、好ましくは、接合材部分は、クラッド材部分の厚み方向と平行な全ての側面に沿って接合されている。このように構成すれば、全ての側面において中間層(第3層)が腐食するのを抑制することができる。
【0017】
上記一の局面によるクラッド材と金属との複合材において、好ましくは、クラッド材部分の側面と外部とを熱的および電気的に接続可能なように設けられた接続部材をさらに備える。このように構成すれば、接続部材により接合材部分を介さずにクラッド材部分と外部とを直接的に熱的または電気的に接続することができるので、Cu、Cu合金、AlまたはAl合金と比べて熱伝導性および導電性が比較的低いステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成される接合材部分に起因して複合材の熱伝導性および導電性が低下するのを抑制することができる。なお、上記接続部材は、Cu、Cu合金、AlまたはAl合金から構成される第3層と同種の金属から構成されることが好ましく、第3層と実質的に同等の熱伝導性および導電性を有することが可能になる。
【0018】
上記一の局面によるクラッド材と金属との複合材において、好ましくは、接合材部分は、クラッド材部分と接合材部分との接合界面および接合界面の近傍において、クラッド材部分の厚み方向の一方側の表面よりも一方側に突出しないように形成されているとともに、クラッド材部分の厚み方向の他方側の表面よりも他方側に突出しないように形成されている。このように構成すれば、接合材部分の厚みをクラッド材部分の厚み以下にすることができるとともに、接合材部分の表面がクラッド材部分の表面から突出することを抑制することができるので、複合材の厚みが大きくなるのを抑制することができる。
【0020】
上記一の局面によるクラッド材と金属との複合材において、好ましくは、クラッド材部分および接合材部分が存在する厚み方向と直交する方向において、クラッド材部分の長さは、複合材の長さの1/2以上である。言い換えれば、クラッド材と金属との複合材において、好ましくは、クラッド材部分および接合材部分が存在する厚み方向と直交する方向において、クラッド材部分の長さと接合材部分の長さとの合計に対して、クラッド材部分の長さの割合が50%以上である。このように構成すれば、複合材において、熱伝導性および導電性のよいCu、Cu合金、AlまたはAl合金から構成される第3層が位置するクラッド材部分を十分に確保することができるので、複合材において熱伝導性および導電性を十分に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記のように、腐食しやすいCuやAlに対して異種金属が接合されたクラッド材において、クラッド材の厚み方向の両表面およびクラッド材の厚み方向に延びる側面が腐食するのを抑制することが可能な材料(クラッド材と金属との複合材)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第1実施形態によるクラッド材と金属との複合材を用いた携帯機器の模式的な分解斜視図である。
【
図2】
図1の600-600線に沿った断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態によるクラッド材と金属との複合材の製造方法を説明するための模式図である。
【
図4】本発明の第1実施形態によるクラッド材と金属との複合材の製造方法のうち、接合工程を説明するための模式的な斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態によるクラッド材と金属との複合材の斜視図である。
【
図6】
図5の610-610線または620-620線に沿った断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態によるクラッド材と金属との複合材の製造方法を説明するための模式図である。
【
図8】本発明の効果を確認するために行った溶接試験の観察結果を示した写真である。
【
図9】第1実施形態の変形例によるクラッド材と金属との複合材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
[第1実施形態]
まず、
図1を参照して、本発明の第1実施形態によるクラッド材と金属との複合材4(以降、複合材4と称する)を備える携帯機器100の概略的な構成について説明する。
【0025】
(携帯機器の構成)
第1実施形態による携帯機器100は、
図1に示すように、Z方向からの平面視において、X方向(長手方向)に長くY方向(短手方向)に短い矩形状に形成されている。携帯機器100は、上側筐体1と、発熱源となるディスプレイ2と、電池および基板などの発熱源を含む電子部品3と、複合材4と、下側筐体5とを備えている。上側筐体1、ディスプレイ2、電子部品3、複合材4および下側筐体5は、Z1側からZ2側に向かってこの順で積層されている。上側筐体1はZ2側に開口を有するフレーム状である。下側筐体5はZ1側に開口を有する箱状である。この結果、下側筐体5は、Z方向に延びる側面部を有している。また、下側筐体5は、ディスプレイ2、電子部品3および複合材4を上側筐体1との間の内部に収容している。
【0026】
ディスプレイ2は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどからなり、Z1側の表面(上面)に画像を表示する機能を有する。また、上側筐体1と下側筐体5とは、金属、ガラスまたは樹脂などから構成されている。
【0027】
(複合材の構成)
複合材4は、携帯機器100に必要とされる所定の形状寸法を有し、少なくとも、携帯機器100の機械的強さを確保する機能と、ディスプレイ2および電子部品3から発生する熱を外部に放出する機能とを有している。つまり、複合材4は、シャーシとしての機能とヒートシンクとしての機能とを兼ねることが可能である。複合材4は、下側筐体5のY1側の内側面5aに対して、溶接などにより固定されている。
【0028】
図2に示すように、複合材4の厚み(Z方向の長さ)t1は、1mm以下である。これにより、携帯機器100がZ方向に大きくなるのを抑制する(低背化する)ことが可能である。なお、携帯機器100をより低背化させるために、複合材4の厚みt1は、0.5mm以下であるのが好ましく、0.3mm以下であるのがより好ましく、0.2mm以下であるのがより一層好ましい。また、複合材4の製造が困難になるのを抑制するために、複合材4の厚みt1は、0.03mm以上であるのが好ましく、0.05mm以上であるのがより好ましい。
【0029】
ここで、第1実施形態では、
図1および
図2に示す複合材4は、3層構造のクラッド材6から構成されるクラッド材部分41と、クラッド材部分41の長手方向(X方向)に延びるY1側の側面41aに接合される接合材部分42と、クラッド材部分41の長手方向(X方向)に延びるY2側の側面41bに接合される接合材部分43を含む。つまり、接合材部分42および接合材部分43は、クラッド材部分41の厚み方向(Z方向)と直交する側面のうち、Y方向に対向する一対の側面(側面41aおよび側面41b)に沿ってそれぞれ接合されている。
【0030】
なお、第1実施形態では、
図1および
図2に示すクラッド材部分41は、3層構造の平板状のクラッド材6から構成されている。このクラッド材部分41の平板状の部分の厚みとクラッド材6の平板状の部分の厚みは実質的に同等であるため、以下、クラッド材部分41の厚み(Z方向の長さ)およびクラッド材6の厚み(Z方向の長さ)を、共に、t2と表記する。
【0031】
複合材4では、
図1に示すように、クラッド材部分41と接合材部分42とを、クラッド材部分41の側面41aのX方向の略全体に渡って、レーザ溶接により接合することができる。この結果、クラッド材部分41と接合材部分42との接合界面F1および接合界面F1の近傍(接合箇所B1)は、クラッド材部分41の側面41aに沿ってX方向に延びるように形成されている。また、
図2に示すように、クラッド材部分41と接合材部分42との接合箇所B1は、複合材4の厚み方向に延びるように形成されている。この結果、クラッド材部分41の第1層61および第2層62と接合材部分42とが強固に接合されている。
【0032】
同様に、複合材4では、
図1に示すように、クラッド材部分41と接合材部分43とを、クラッド材部分41の側面41bのX方向の略全体に渡って、レーザ溶接により接合することができる。この結果、クラッド材部分41と接合材部分43との接合界面F2および接合界面F2の近傍(接合箇所B2)は、クラッド材部分41の側面41bに沿ってX方向に延びるように形成されている。また、
図2に示すように、クラッド材部分41と接合材部分43との接合箇所B2は、複合材4の厚み方向に延びるように形成されている。この結果、クラッド材部分41の第1層61および第2層62と接合材部分43とが強固に接合されている。
【0033】
また、複合材4の厚み方向と直交する方向のうち、Y方向(短手方向)において、クラッド材部分41の長さL2は、好ましくは複合材4の長さL1の1/2以上である。つまり、Y方向において、接合材部分42の長さL3および接合材部分43の長さL4の合計は、複合材4の長さL1の1/2以下であるのが好ましい。言い換えれば、クラッド材部分41の長さL2と接合材部分42の長さL3および接合材部分43の長さL4との合計に対して、好ましくはクラッド材部分41の長さL2の割合が50%以上である。つまり、Y方向において、複合材の長さL1に対して、接合材部分42の長さL3および接合材部分43の長さL4の合計の割合は50%以下であるのが好ましい。なお、クラッド材部分41の長さL2は、複合材4の長さL1の4/5以上であるのがより好ましい。言い換えれば、クラッド材部分41の長さL2と接合材部分42の長さL3および接合材部分43の長さL4との合計に対して、クラッド材部分41の長さL2の割合が80%以上であるのがより好ましい。
【0034】
クラッド材6は、ステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成されるZ1側の第1層61と、ステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成されるZ2側の第2層62と、第1層61と第2層62との間に配置される中間層となる、Cu、Cu合金、AlまたはAl合金から構成される第3層63とが圧延により接合された3層構造を有している。なお、第1層61と第2層62とは、同種の金属から構成されている。たとえば、第1層61がステンレス鋼から構成されている場合は、第2層62もまたステンレス鋼から構成されている。
【0035】
クラッド材6は、オーバーレイ型を用いることができる。つまり、クラッド材6では、第3層63のZ1側の表面の略全面に第1層61が拡散接合されているとともに、第3層63のZ2側の表面の略全面に第2層62が拡散接合されていてよい。なお、第1層61と第3層63との界面および第3層63と第2層62との界面において、拡散焼鈍により互いの層に互いの構成元素が拡散することによって、原子間接合を形成することができる。この結果、第1層61と第3層63とが強固に接合されるとともに、第3層63と第2層62とが強固に接合される。
【0036】
また、クラッド材6の厚み(Z方向の長さ)t2は、複合材4の厚みt1と略同一であってよい。
【0037】
第1層61および第2層62は、上記のように、ステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成される。第1層61および第2層62を、たとえばステンレス鋼を用いて構成する場合には、耐食性が良いとの観点で、ステンレス鋼の種類を必要に応じて選定することができる。ステンレス鋼としては、オーステナイト系、オーステナイト-フェライト系、フェライト系またはマルテンサイト系などを用いることが可能である。なお、第1層61および第2層62をステンレス鋼から構成する場合は、非磁性であるオーステナイト系ステンレス鋼から構成されるのが好ましく、SUS316、SUS316L、SUS304またはSUS305などのSUS300系(JIS規格)のオーステナイト系ステンレス鋼から構成されるのがより好ましく、そのうちSUS316Lがより一層好ましい。SUS316Lは、18質量%のCrと、12質量%のNiと2.5質量%のMoと、Cを含む不可避不純物等と、残部Fe(鉄)とを含有するオーステナイト系ステンレス鋼において、Cの含有量を低下させたオーステナイト系ステンレス鋼であり、圧延加工などを行っても十分な非磁性を有することができる。
【0038】
また、第1層61および第2層62を、たとえばTiまたはTi合金を用いて構成する場合には、耐食性が良いとの観点で、TiまたはTi合金の種類を必要に応じて選定することができる。Ti(純チタン)としては、JIS規格において、成形加工性のよい1種、成形加工性と機械的強さのバランスがよい2種、ならびに、機械的強さが高い3種および4種などを用いることが可能である。Ti合金としては、質量%で、溶接性のよいTi-5%Al-2.5%Sn系、溶接性と機械的強さのバランスがよい60種および61種(JIS規格)、ならびに、機械的強さが高い80種(JIS)およびTi-15%V-3%Cr-3%Sn-3%Al系(質量%)などを用いることが可能である。なお、第1層61および第2層62をTiまたはTi合金から構成する場合には、成形加工性と機械的強さのバランスがよい2種のTi、または、溶接性と機械的強さのバランスがよい60種もしくは61種のTi合金から構成されるのがより好ましい。
【0039】
第3層63は、上記のように、Cu、Cu合金、AlまたはAl合金から構成される。第3層63を、たとえばCuまたはCu合金を用いて構成する場合には、熱伝導性が良いとの観点で、CuまたはCu合金の種類を必要に応じて選定することができる。Cu(純銅)としては、高い熱伝導性および導電性を有するC1000系(JIS規格)、たとえば、無酸素銅(C1020)、タフピッチ銅(C1100)、および、りん脱酸銅(C1201、C1220、C1221)などを用いることが可能である。Cu合金としては、JIS規格において、成形加工性(展延性)のよいC2000系、耐食性のよいC3000系、および、導電性のよいC5000系などを用いることが可能である。なお、第3層63をCuまたはCu合金で構成する場合は、高い熱伝導性および導電性を有する無酸素銅、りん脱酸銅、タフピッチ銅などのCuから構成されるのがより好ましい。
【0040】
また、第3層63を、たとえばAlまたはAl合金を用いて構成する場合には、熱伝導性が良いとの観点で、また、CuまたはCu合金を用いて構成する場合と比べて比重が小さく軽量化が可能との観点で、AlまたはAl合金の種類を必要に応じて選定することができる。Al(純アルミニウム)としては、高い熱伝導性および導電性を有するA1000系(たとえばA1050、JIS規格)などを用いることが可能である。Al合金としては、A3003(JIS規格)などのAl-Mn合金、A5052(JIS規格)などのAl-Mg合金、および、A6061(JIS規格)などのAl-Mg-Si合金などを用いることが可能である。なお、第3層63をAlまたはAl合金から構成する場合は、高い熱伝導性および導電性を有し、Alの中でも比較的成形加工性のよいA1050から構成されるのが好ましい。
【0041】
なお、クラッド材6において、第3層63を構成するCu、Cu合金、AlまたはAl合金は、一般的に、第1層61および第2層62を構成するステンレス鋼、TiまたはTi合金よりも熱伝導性および導電性が高い。
【0042】
また、複合材4のヒートシンクとしての熱伝導性を高めるためには、クラッド材部分41において、第1層61の厚みt11および第2層62の厚みt12は、共に、第3層63の厚みt13よりも小さい方が好ましい。この場合、第3層63の厚みt13は、クラッド材部分41の厚みt2(携帯機器100の
図2に示す断面図においては複合材4の厚みt1と同じ)の1/2以上であることがより好ましい。つまり、t13≧t2/2の厚みの関係を満たすのがより好ましい。一方で、複合材4のシャーシとしての機械的強さを高めるためには、クラッド材部分41において、第1層61の厚みt11および第2層62の厚みt12は、共に、第3層63の厚みt13以上であることが好ましい。つまり、t11≧t13の厚みの関係を満たすのが好ましいとともに、t12≧t13の厚みの関係を満たすのが好ましい。また、圧延容易のため、第1層61の厚みt11と第2層62の厚みt12とは、略等しいのが好ましい。
【0043】
接合材部分42および接合材部分43は、共に、第1層61および第2層62と同種の金属であるステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成されている。たとえば、接合材部分42および接合材部分43は、共に、第1層61および第2層62と同一のステンレス鋼であるオーステナイト系ステンレス鋼から構成されている。なお、第1層61および第2層62と接合材部分42および接合材部分43との接合性(溶接性など)および物性(磁性の有無など)の観点から、第1層61、第2層62、接合材部分42および接合材部分43は、共に、同一のステンレス鋼(JIS規格において同じJIS記号を付されるステンレス鋼)から構成されるのが好ましい。
【0044】
接合材部分42のY2側の側面42aは、クラッド材部分41の側面41aに対して、X方向の略全体に渡って溶接により接合することができる。同様に、接合材部分43のY1側の側面43aは、クラッド材部分41の側面41bに対して、X方向の略全体に渡って溶接により接合することができる。
【0045】
また、接合材部分42の厚み(Z方向の長さ)t3および接合材部分43の厚み(Z方向の長さ)t4は、クラッド材部分41(クラッド材6)の厚みt2と略同一であってよい。また、接合材部分42のZ1側の表面42bと、接合材部分43のZ1側の表面43bと、クラッド材部分41のZ1側の第1層61の表面41cとは略面一であってよい。つまり、接合材部分42のZ1側の表面42bおよび接合材部分43のZ1側の表面43bは、クラッド材部分41の厚み方向(Z方向)のZ1側の第1層61の表面41cよりもZ1側に突出しないように形成されていてよい。同様に、接合材部分42のZ2側の表面42cと、接合材部分43のZ2側の表面43cと、クラッド材部分41のZ2側(第2層62)の表面41dとは略面一であってよい。つまり、接合材部分42のZ2側の表面42cおよび接合材部分43のZ2側の表面43cは、クラッド材部分41の厚み方向(Z方向)のZ2側の第2層62の表面41dよりもZ2側に突出しないように形成されていてよい。この結果、接合材部分42はクラッド材部分41の側面41aの略全体に渡って、および接合材部分43はクラッド材部分41の側面41bの略全体に渡って、それぞれ、第3層63を覆うようにクラッド材部分41に接合される。
【0046】
接合材部分42は、
図2に示すように、Y1側の端部近傍に形成された曲げ部分42dを有することができる。曲げ部分42dは、接合材部分42のY1側の端部近傍が約90度で折り曲げられることにより形成されていてよい。この結果、曲げ部分42dには、下側筐体5のZ方向に延びる内側面5aに沿って延びる接合部42eが形成されていてよい。そして、曲げ部分42dの接合部42eと下側筐体5の内側面5aとを、接合箇所B3において、X方向の略全体に渡って溶接することができる。これにより、複合材4が下側筐体5に固定される。なお、
図1および
図2に示す第1実施形態とは異なるが、接合材部分42のY1側の端部近傍は、上記の溶接に替えて、接合箇所B3において、かしめ加工やねじ止めなどにより接合されていてよい。また、接合材部分43のY2側の端部近傍についても、接合材部分42のY1側の端部近傍と同様に、上記の溶接に替えて、かしめ加工またはねじ止めなどにより接合されていてよい。
【0047】
次に、
図1~
図4を参照して、本発明の第1実施形態による複合材4の製造方法について説明する。
【0048】
(クラッド材の製造)
まず、搬送方向(X方向)に長い平板状(帯状と称する)のクラッド材6を作製するのが望ましい。具体的なクラッド材6の作製工程の一例としては、
図3に示すように、帯状の一対の第1金属板161および第2金属板162と、帯状の第3金属板163とを準備する。なお、第1金属板161および第2金属板162はステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成され、第1金属板161および第2金属板162は同種の金属から構成されている。第3金属板163はCu、Cu合金、AlはまたAl合金から構成されている。また、第1金属板161の厚みと、第2金属板162の厚みと、第3金属板163の厚みとは、作製されるクラッド材6における第1層61、第3層63および第2層62の厚み比率(t11:t13:t12、
図2参照)に合わせて適宜選択される。
【0049】
そして、第1金属板161と、第3金属板163と、第2金属板162とを、この順に積層した状態で、圧延ローラ201を用いて圧延して接合するクラッド圧延を連続的に行う(圧延工程)のが望ましい。これにより、第1金属板161と、第3金属板163と、第2金属板162とが厚み方向にこの順に積層された状態で互いに接合(圧延接合)された帯状の圧接材106が作製される。なお、クラッド圧延のパス数(圧延回数)は、適宜選択可能である。
【0050】
そして、適切な焼鈍温度に設定された焼鈍炉202を用いて拡散焼鈍を連続的に行う(焼鈍工程)のが望ましい。これにより、第1金属板161と第3金属板163との界面および第3金属板163と第2金属板162との界面において、拡散処理により互いの層が原子間接合を形成して強固に接合する。この結果、
図2に示す第1層61と、第3層63と、第2層62とが厚み方向にこの順に積層された状態で互いに拡散接合された帯状のクラッド材6が作製される。
【0051】
(複合材の製造方法)
また、第1金属板161および第2金属板162と同種の金属の板材から構成される、帯状の接合材142および接合材143を準備するのが望ましい。この帯状の接合材142の厚みおよび接合材143の厚みは、帯状のクラッド材6の厚みt2(
図2参照)と略等しくするのが望ましい。そして、帯状のクラッド材6を搬送方向(X方向)に搬送しながら、帯状のクラッド材6の側面41aおよび側面41b(
図2参照)に、それぞれ、接合材142の側面42aおよび接合材143の側面43aを当接させるのが望ましい。この際、接合材142および接合材143を、それぞれ、クラッド材6の側面41aおよび側面41bに押し付けるようにして軽微な圧力を加えることにより、接合材142とクラッド材6の側面41aの間および接合材143とクラッド材6の側面41bとの間を予圧するとよい。
【0052】
そして、帯状の接合材142および接合材143と、帯状のクラッド材6とを連続的に接合する(接合工程)のが望ましい。具体的には、
図4に示すように、帯状のクラッド材6の側面41aに接合材142の側面42aを当接させた状態で、レーザ溶接機203aにより、当接部分に所定の強度(出力)および所定のスポット径のレーザ光を照射することができる。これにより、クラッド材6の側面41a近傍の金属と、接合材142の側面42a近傍の金属とを、レーザ光の熱で溶融し、その後冷却することによって接合することができる。この結果、帯状の接合材142と帯状のクラッド材6とが溶接される。なお、レーザ光の照射は、
図4に示すような帯状のクラッド材6の片面に対して行う方法に限定されず、帯状のクラッド材6の両面に対して行う方法の採用も可能である。
【0053】
また、帯状のクラッド材6の側面41bに接合材143の側面43aを当接させた状態で、レーザ溶接機203bにより、当接部分に所定の強度および所定のスポット径のレーザ光を照射することができる。これにより、クラッド材6の側面41b近傍の金属と、接合材143の側面43a近傍の金属とを、レーザ光の熱で溶融し、その後冷却することによって接合することができる。この結果、帯状の接合材143と帯状のクラッド材6とが搬送方向(X方向)に沿って溶接される。これにより、クラッド材6から構成されるクラッド材部分41と、接合材142から構成される接合材部分42と、接合材143から構成される接合材部分43とを含む帯状の複合材104が作製される。
【0054】
そして、
図3に示すように、曲げローラ204を用いて、帯状の複合材104の接合材部分42を連続的に折り曲げ加工する(曲げ工程)のが望ましい。これにより、接合材部分42のY1側の端部近傍に搬送方向(X方向)に沿って曲げ部分42d(
図2参照)が形成された帯状の複合材4が作製される。最後に、切断機205を用いて、帯状の複合材4を搬送方向(X方向、長手方向)に所定の長さになるように切断する(切断工程)のが望ましい。これにより、
図1および
図2に示す平板状のような携帯機器100に必要とされる所定の形状寸法を有する複合材4が作製される。
【0055】
なお、曲げ工程または切断工程の前に、必要に応じて熱処理を行うことによって、帯状の複合材104(4)に対して焼きなまし、または、改質を行うことができる。熱処理に際して、第1層61および第2層62ならびに接合材部分42および接合材部分43がステンレス鋼から構成される場合、たとえばオーステナイト系ステンレス鋼から構成される場合の熱処理温度としては、850℃以上1050℃以下であるのが好ましい。また、第1層61および第2層62ならびに接合材部分42および接合材部分43が、たとえばフェライト系ステンレス鋼から構成される場合の熱処理温度としては、750℃以上950℃以下であるのが好ましく、かつ、熱処理後に急冷するのが好ましい。
【0056】
また、第1層61および第2層62ならびに接合材部分42および接合材部分43がTiから構成される場合の熱処理温度としては、650℃以上750℃以下であるのが好ましい。また、第1層61および第2層62ならびに接合材部分42および接合材部分43がTi合金から構成される場合の熱処理温度は、一般的にTi以外の元素が増えると再結晶温度が高くなるのでTi(純チタン)よりも高温にする必要があること、Ti合金の種類に応じて相変態が生じることなどを考慮してTi合金の種類に合わせて適宜設定することができる。
【0057】
また、接合箇所B1周辺がクラッド材部分41の表面41cまたは表面41dに対して隆起している場合、もしくは、接合箇所B2周辺がクラッド材部分41の表面41cまたは表面41dに対して隆起している場合には、研磨またはスキンパス圧延などを行うことにより、隆起部分を除去して平坦化することができる。これにより、接合材部分42の表面42bと、接合材部分43の表面43bと、クラッド材部分41の表面41cとを略面一にすることが可能であり、接合材部分42の表面42cと、接合材部分43の表面43cと、クラッド材部分41の表面41dとを略面一にすることが可能である。
【0058】
なお、作製された複合材4は、
図1および
図2に示すように、携帯機器100の下側筐体5内に配置された状態で、下側筐体5の内側面5aと曲げ部分42dの接合部42eとが溶接される。
【0059】
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0060】
第1実施形態では、上記のように、ステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成される第1層61および第2層62と、第1層61と第2層62との間に配置され、Cu、Cu合金、AlまたはAl合金から構成される第3層63とが接合されたクラッド材6から構成されるクラッド材部分41の厚み方向(Z方向)に延びる側面41aおよび側面41bに、それぞれ、第1層61および第2層62と同種の金属(ステンレス鋼)から構成される接合材部分42および接合材部分43を接合する。これにより、耐腐食性の高いステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成される第1層61および第2層62によって、耐腐食性の低いCu、Cu合金、AlまたはAl合金から構成される第3層63の厚み方向の両表面が覆われる。加えて、耐腐食性の高いステンレス鋼、TiまたはTi合金(第1層61および第2層62と同種の金属)から構成される接合材部分42および接合材部分43がクラッド材部分41の側面41aおよび側面41bにそれぞれ接合されることにより、接合材部分42および接合材部分43によってクラッド材部分41の側面41aおよび側面41bにおける第3層63を覆うことができる。この結果、クラッド材6から構成されるクラッド材部分41の耐腐食性が低い第3層63の厚み方向の側面が腐食するのを抑制することが可能な材料(複合材4)を提供することができる。
【0061】
また、第1実施形態では、接合材部分42および接合材部分43を、クラッド材6の第1層61および第2層62と同種の金属から構成する。これにより、接合材部分42および接合材部分43がクラッド材6から構成されるクラッド材部分41の第1層61および第2層62と異種の金属から構成されている場合と比べて、クラッド材部分41の側面41aおよび側面41bにおいて、それぞれ、クラッド材部分41と接合材部分42および接合材部分43とを強固かつ容易に接合することができる。この結果、クラッド材部分41の側面41aおよび側面41bにおいて、接合材部分42および接合材部分43によって第3層63が覆われる状態を確実に形成することができる。
【0062】
また、第1実施形態では、熱伝導性(および導電性)のよいCu、Cu合金、AlまたはAl合金から第3層63を構成するので、ステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成される第1層61および第2層62と接合材部分42および接合材部分43とにおいて耐腐食性を有するとともに、第3層63において熱伝導性(および導電性)のよい複合材4を提供することができる。これにより、耐腐食性を有する複合材4を、熱伝導性を要するヒートシンク(または導電性を要する導電部材)として好適に用いることができる。
【0063】
また、第1実施形態では、第1層61、第2層62および接合材部分42および接合材部分43を、共に、ステンレス鋼から構成することが好ましい。これにより、TiまたはTi合金から構成されることに比べて、溶接が容易で、かつ安価なステンレス鋼から構成された接合材部分42および接合材部分43により、第3層63が腐食するのを抑制することができるので、第3層63の腐食を抑制することが可能な複合材4を容易かつ安価に作製することができる。また、第3層63を、好ましくはCuまたはCu合金から構成することによって、AlまたはAl合金から構成されることに比べて、複合材4のクラッド材部分41における熱伝導性(および導電性)を一層向上させることができる。これにより、耐腐食性を有する複合材4を、熱伝導性を要するヒートシンク(または導電性を要する導電部材)として一層好適に用いることができる。
【0064】
また、第1実施形態では、好ましくは、第1層61、第2層62および接合材部分42および接合材部分43を、共に、ステンレス鋼のうち好ましくは、オーステナイト系ステンレス鋼から構成する。このように構成すれば、オーステナイト系ステンレス鋼から構成される第1層61および第2層62と、Cu、Cu合金、AlまたはAl合金から構成される第3層とが、共に非磁性であるので、複合材4が磁化するのを抑制することができる。これにより、複合材4が用いられる周辺の電子部品3等に複合材4の磁気に起因する不具合が生じるのを抑制することができる。
【0065】
また、第1実施形態では、接合材部分42および接合材部分43を、それぞれ、好ましくは、クラッド材部分41の側面41aおよび側面41bに溶接により接合する。これにより、溶接により接合材部分42および接合材部分43をクラッド材部分41の側面41aおよび側面41bにそれぞれ確実に接合することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、複合材4は帯状または四角形状であってよく、接合材部分42および接合材部分43を、それぞれ、クラッド材部分41の厚み方向と直交する方向のうち、対向する一対の側面、たとえば、長手方向(X方向)に延びる側面41aおよび側面41bに沿って接合することができる。これにより、帯状または四角形状のクラッド材部分41の厚み方向(Z方向)に延びる複数の側面のうちの少なくとも対向する2つの側面(側面41aおよび側面41b)において、たとえば、短手方向(Y方向)の側面と比べて第3層63の露出面積が大きいX方向の側面41aおよび側面41bにおいて、第3層63が腐食するのを抑制することができる。この結果、第3層63の腐食を複合材4の大きな領域で抑制することができる。また、クラッド材6を圧延で連続的に作製する際に、好ましくは、X方向に延びる側面41aおよび側面41bに接合材部分42および接合材部分43をそれぞれ接合しながら圧延後の帯状のクラッド材6を搬送することによって、容易かつ効率的に、接合材部分42および接合材部分43がクラッド材部分41のX方向に延びる側面41aおよび側面41bにそれぞれ接合された複合材4を得ることができる。
【0067】
また、第1実施形態では、接合材部分42を、クラッド材部分41と接合材部分42との接合界面F1および接合界面F1の近傍(接合箇所B1)において、クラッド材部分41の厚み方向(Z方向)の一方側(Z1側)の表面41cと略面一に形成することができる。また、接合材部分43を、クラッド材部分41と接合材部分43との接合界面F2および接合界面F2の近傍(接合箇所B2)において、クラッド材部分41の厚み方向の他方側(Z2側)の表面41dと略面一に形成することができる。つまり、接合材部分42の厚みt3および接合材部分43の厚みt4を、クラッド材部分41の厚みt2と略等しくすることができる。これにより、接合材部分42の表面42bおよび接合材部分43の表面43bがクラッド材部分41の表面41cからZ1側に突出することが抑制されるとともに、接合材部分42の表面42cおよび接合材部分43の表面43cがクラッド材部分41の表面41dからZ2側に突出することが抑制される。これらの結果、複合材4の厚みt1が大きくなるのを抑制することができる。
【0068】
また、第1実施形態では、接合材部分42が曲げ変形された曲げ部分42dを含むことができる。これにより、接合材部分42を他の部材(下側筐体5)に対して溶接を行う場合に、曲げ変形された曲げ部分42dに溶接等を行うことができるので、たとえば他の部材が厚み方向(Z方向)に延びる部材である場合などに、曲げ部分42dを他の部材(下側筐体5の内側面5a)に沿わせるように配置することができるので、接合材部分42を他の部材に対して容易に溶接等により接合することができる。
【0069】
また、第1実施形態では、クラッド材部分41と接合材部分42および接合材部分43とが存在する厚み方向と直交するY方向において、クラッド材部分41の長さL2は、好ましくは複合材4の長さL1の1/2以上である。これにより、複合材4において、熱伝導性(および導電性)のよい第3層63を有するクラッド材部分41を十分に確保することができるので、複合材4において熱伝導性(および導電性)を十分に発揮させることができる。
【0070】
[第2実施形態]
次に、
図5および
図6を参照して、本発明の第2実施形態によるクラッド材と金属との複合材304(以降、複合材304と称する)の構成について説明する。この第2実施形態では、第1実施形態のクラッド材部分41のY方向の側面41aおよび側面41bにそれぞれ接合材部分42および接合材部分43が接合された複合材4とは異なり、クラッド材部分341の全ての側面341aに接合材部分342が接合された例について説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付すとともに説明を省略する。
【0071】
第2実施形態の複合材304は、3層構造のクラッド材6から構成されるクラッド材部分341と、ステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成され、クラッド材部分341の厚み方向(Z方向)と平行な全ての側面341aに接合される接合材部分342とを含む。
【0072】
具体的には、Z方向からの平面視において、クラッド材部分341は、正方形状または長方形状(矩形状と称する)に形成されている。また、Z方向からの平面視において、接合材部分342は、矩形状のクラッド材部分341に対応する矩形状の孔部を有する枠状に形成されている。そして、クラッド材部分341のZ方向と直交するX方向に延びる両側面およびY方向に延びる両側面(
図6に示す側面341a)と、枠状の接合材部分342のX方向に延びる両側面およびY方向に延びる両側面(
図6に示す側面342a)とが当接した状態でそれぞれ接合されることによって、クラッド材部分341の側面341aの略全面に接合材部分342が接合された複合材304が構成されている。
【0073】
複合材304では、クラッド材部分341と接合材部分342とを、ろう接により接合することができる。つまり、クラッド材部分341の側面341aと、枠状の接合材部分342の側面342aとの間の略全体にろう材を配置し、加熱して溶融させ、冷却して凝固させることによって、クラッド材部分341と接合材部分342とをろう材を介して接合する(ろう接と称する)ことができる。なお、ろう接に用いるろう材としては、接合強度を十分に確保するために、クラッド材部分341および接合材部分342をステンレス鋼を用いて構成する場合はNi系のろう材、または、Agろうなどの貴金属系のろう材が好ましく、クラッド材部分341および接合材部分342をTiまたはTi合金を用いて構成する場合はTi系のろう材が好ましい。
【0074】
複合材304の厚み方向と直交する方向のうち、Y方向において、クラッド材部分341の長さL12は、好ましくは複合材304の長さL11の1/2以上である。また、複合材304の厚み方向と直交する方向のうち、X方向において、クラッド材部分341の長さL22は、好ましくは複合材304の長さL21の1/2以上である。なお、複合材304に対するクラッド材部分314の長さの好ましい割合については、上記第1実施形態の複合材4に対するクラッド材部分41の長さの好ましい割合と同様である。
【0075】
接合材部分342は、共に、第1層61および第2層62と同種の金属であるステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成されている。また、クラッド材部分341と接合材部分342との接合界面F11および接合界面F11の近傍(接合箇所B11)において、クラッド材部分341の厚み方向の一方側(Z1側)の表面41cよりもZ1側に突出しないように形成することができるとともに、クラッド材部分341の厚み方向の他方側(Z2側)の表面41dよりもZ2側に突出しないように形成することができる。
図6に示す複合材304では、接合材部分342の厚み(Z方向の長さ)t5は、複合材304の厚みt21(クラッド材部分341の厚みt22)よりも若干小さく形成されている。なお、接合材部分342は、クラッド材部分341の側面341aの全体に渡って、第3層63を覆うようにクラッド材部分341に接合することができる。
【0076】
また、第2実施形態における複合材304の厚みt21は、1mm以下である。なお、第2実施形態における複合材304のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0077】
次に、
図5~
図7を参照して、本発明の第2実施形態による複合材304の製造方法について説明する。
【0078】
まず、
図7に示すように、第1実施形態と同様にして、第1金属板161と、第3金属板163と、第2金属板162とを、この順に積層した状態で、圧延ローラ201を用いて圧延して接合するクラッド圧延を連続的に行う(圧延工程)ことにより帯状の圧接材106を作製し、焼鈍炉202を用いて拡散焼鈍を連続的に行う(焼鈍工程)ことにより帯状のクラッド材6を作製することが望ましい。そして、切断機205を用いて、帯状のクラッド材6を所定の長さになるように切断するのが望ましい。これにより、Z方向からの平面視において、矩形状のクラッド材6(
図5参照)が作製される。
【0079】
なお、第1金属板161および第2金属板162はステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成され、第1金属板161および第2金属板162は同種の金属から構成されている。第3金属板163はCu、Cu合金、AlはまたAl合金から構成されている。また、第1金属板161の厚みと、第2金属板162の厚みと、第3金属板163の厚みとは、作製されるクラッド材6における第1層61、第3層63および第2層62の厚み比率(t11:t13:t12、
図2参照)に合わせて適宜選択される。
【0080】
また、Z方向からの平面視において、矩形状のクラッド材6に対応するように矩形状の孔部が形成され、第1金属板161および第2金属板162と同種の金属の板材から構成される、枠状の接合材を準備するのが望ましい。そして、接合材内にクラッド材6を配置した状態で、クラッド材6の側面341aと接合材の側面(側面342a)とを、ろう材を用いてろう接により環状に接合する(接合工程)のが望ましい。これにより、クラッド材6の側面341aと接合材の側面(側面342a)との間のろう材により、ろう材を介してクラッド材6の側面341aと枠状の接合材の側面(側面342a)とが接合される。この結果、矩形状のクラッド材6から構成されるクラッド材部分341と、枠状の接合材部分342とを含む複合材304aが作製される。
【0081】
そして、複合材304aに対して、必要に応じて研磨を行うことにより、複合材304aの表面上の不要なろう材(ろう接による盛り上り部分)を除去する(研磨工程)のが望ましい。これにより、
図5および
図6に示す複合材304が作製される。なお、研磨工程の前に、必要に応じて熱処理を行うことによって、複合材304aに対して焼きなまし、または、改質を行うことができる。
【0082】
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0083】
第2実施形態では、上記のように、ステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成される第1層61および第2層62と、第1層61と第2層62との間に配置され、Cu、Cu合金、AlまたはAl合金から構成される第3層63とが接合されたクラッド材6から構成されるクラッド材部分341の厚み方向(Z方向)に延びる側面41aおよび側面41bに、それぞれ、第1層61および第2層62と同種の金属(ステンレス鋼、TiまたはTi合金)から構成される接合材部分342を接合する。これにより、第1実施形態と同様に、クラッド材6(クラッド材部分341)の第3層63が腐食するのを抑制することが可能な材料(複合材304)を提供することができる。
【0084】
また、第2実施形態では、接合材部分342を、クラッド材部分241の厚み方向(Z方向)と平行な全ての側面341aに沿って接合することができる。これにより、全ての側面341aにおいて第3層63が腐食するのを抑制することができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0085】
[実施例]
次に、本発明の効果を確認するために行ったクラッド材と接合材との溶接試験について説明する。溶接試験では、実際にクラッド材と接合材とをレーザ溶接することによって、クラッド材と金属との複合材を作製した。そして、作製した複合材について、接合状態を観察した。
【0086】
具体的には、まず、クラッド材6(
図2および
図3参照)を準備した。この際、第1層61および第2層62は、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316L(JIS規格)から構成されるものとした。また、第3層63は、Cuである無酸素銅から構成されるものとした。そして、第1層61、第3層63および第2層62の厚み比率(t2:t4:t3)が1:2:1であるとともに、クラッド材6の厚みt2が0.2mmである、クラッド材6を作製した。また、クラッド材6の側面に接合する接合材(
図3参照)としては、第1層61および第2層62と同じSUS316Lから構成され、クラッド材6の厚みt2と同じ0.2mmの厚みを有する板材(SUS板材)を用いた。
【0087】
そして、試験材1~8を作製する溶接試験を行った。溶接試験では、クラッド材6の厚み方向(Z方向)に延びる側面(
図2に示す側面41a参照)と接合材の側面(
図2に示す側面42a参照)とを当接させた状態で、第1実施形態と同様に、レーザ溶接を行った。ここで、レーザ溶接機におけるレーザ光発振器として、IPGフォトニクス製のYLR-150-1500QCW-ACを用いた。また、レーザ溶接時の溶接環境として、窒素ガス雰囲気に設定するとともに、溶接速度を10m/minに設定した。また、スポット径を40μmに設定した。
【0088】
この溶接試験において、試験材1~7では、クラッド材および接合材の厚み方向の一方側(
図8に示すレーザ光照射側参照)から、クラッド材と接合材との当接界面にレーザ光を照射した。その際、試験材1~7によって、レーザ溶接する際のレーザ光の出力を変化させた。具体的には、試験材1~7に対して、250Wで100%の出力となるレーザ光の出力を35%、40%、45%、50%、55%、60%および65%として、それぞれ溶接を行った。
【0089】
また、試験材8では、クラッド材と接合材との当接界面に対して、クラッド材および接合材の厚み方向の両側からレーザ光を同時に照射した。その際、試験材8に対して照射するレーザ光は、試験材2と同じ40%の出力とした。
【0090】
そして、クラッド材と金属との複合材である試験材1~8を厚み方向に切断した後、切断面をエッチングした。その後、切断面について光学顕微鏡を用いて観察した。
【0091】
試験材1~8の切断面の写真を
図8に示す。なお、
図8に示す複合材のクラッド材部分は、厚み方向において、レーザ光照射側である最上層が第1層、中間層が第3層、および最下層が第2層である。
【0092】
溶接試験の結果としては、レーザ光の出力が小さい試験材1および試験材2に関しては、レーザ光照射とは反対側において、非溶接部分が観察された。これは、レーザ光照射による熱がレーザ光照射とは反対側まで十分に到達せずに、レーザ光照射側とは反対側のクラッド材部分の第2層および接合材部分のSUS板材とが十分に溶融して接合しなかったからであると考えられる。このような非溶接部分が生じた試験材1および試験材2は、クラッド材部分と接合材部分との接合強度が小さく、かつ、クラッド材部分の第3層の大部分が側面において十分に覆われていないので、好ましくないと考えられる。
【0093】
一方、レーザ光の出力が大きい試験材3~7に関しては、厚み方向において、レーザ光照射側から反対側のクラッド材部分の第2層および接合材部分のSUS板材まで溶接されていた。これらの結果、レーザ光の出力を調整することによって、非溶接部分が生じないように、クラッド材部分と接合材部分とを接合することが可能であることが確認できた。なお、レーザ光の出力以外の条件、たとえば、複合材(クラッド材および接合材)の厚み、レーザ光のスポット径または溶接速度などを調節することによっても、非溶接部分が生じないように、クラッド材部分と接合材部分とを接合することが可能であると考えられる。
【0094】
なお、非溶接部分が生じない複合材が好ましいものの、非溶接部分が観察される、レーザ光照射側とは反対側のクラッド材部分の第2層が接合されていない場合であっても、クラッド材部分の第3層が接合材部分により覆われている場合は、複合材として使用することは可能であると考えられる。
【0095】
また、EDX(エネルギー分散型X線分析)を用いた断面観察から、レーザ光の出力が大きくなることに伴い、クラッド材部分の第3層からCuが溶接部分に拡散しやすくなることが判明した。溶接部分に、クラッド材部分の第1層および第2層と接合材部分のSUS板材を構成するSUS316Lに含まれるCu量(約0.3質量%以下)を超えて多量のCuが拡散していると、溶接部分の接合強度が低下しやすくなると考えられるため、レーザ溶接におけるレーザ光の出力は適切な範囲(たとえば、250Wで100%の出力となるレーザ光の出力を50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下とする)に選択されるのがよいことが判明した。なお、クラッド材部分の第3層がCuまたはCu合金と比べて溶接割れなどの不具合を生じやすいAlまたはAl合金から構成される場合は、溶接割れなどの不具合が生じるのを抑制するために、溶接部分へのAlの拡散が抑制されるように、もしくは第3層の一部または全部が非溶接部分となるように、レーザ光の出力を調整することが好ましい。具体的には、たとえば上記と同等性能のレーザ光発振器を用いるとすれば、250Wで100%の出力となるレーザ光の出力を40%以下に抑制することが好ましいと考えられる。
【0096】
また、試験材8の溶接試験の結果としては、非溶接部分が生じずに、クラッド材部分と接合材部分とが接合されていた。これにより、レーザ光の出力が、レーザ光照射が一方側からのみではレーザ光照射側とは反対側において非溶接部分が生じる程度に小さい場合であっても、レーザ光を厚み方向の両側から照射することにより、クラッド材部分と接合材部分とを十分に接合することが可能であることが確認できた。なお、試験材8のように、クラッド材と接合材との当接界面に対して、クラッド材および接合材の厚み方向の両側からレーザ光を同時に照射した場合において、クラッド材部分における第1層と第2層の間の第3層の一部または全部が非溶接部分となって接合されていない場合も起こり得る。この場合でも、非溶接部分が生じない複合材が好ましいものの、クラッド材部分の第3層が接合材部分により覆われているので、複合材として使用することは可能であると考えられる。また、クラッド材部分の第3層がCuまたはCu合金と比べて溶接割れなどの不具合を生じやすいAlまたはAl合金から構成される場合は、第3層の一部または全部が非溶接部分となるように接合することにより、溶接割れなどの不具合が生じるのを抑制することができる。
【0097】
なお、実際に試験材7および試験材8に対して、クラッド材部分と接合材部分とを接合箇所を境に逆方向に引っ張る引張試験を行うことによって接合強度を測定した。この際、試験材7の接合強度は468MPaになり、試験材8の接合強度は282MPaになった。このことから、複合材として十分な接合強度を有していることが確認できた。
【0098】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0099】
たとえば、上記第1実施形態の複合材4および上記第2実施形態の複合材304において、クラッド材部分41の第1層61および第2層62、クラッド材部分341の第1層61および第2層62、接合材部分42、接合材部分43および接合材部分342は、いずれも、ステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成されるとして、実施例ではオーステナイト系ステンレス鋼(SUS316L)を用いた例を示しているが、本発明はオーステナイト系ステンレス鋼(SUS316L)に限られない。すなわち、本発明では、クラッド材部分の第1層および第2層と、接合材部分とを、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS316L)以外のステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成してもよい。なお、TiまたはTi合金から共に構成されたクラッド材部分と接合材部分とを、ろう接により接合する場合には、接合強度を十分に確保するために、ろう材としてTi系のろう材を用いるのが好ましい。これにより、クラッド材部分の第1層および第2層と接合材部分とがステンレス鋼から構成される場合と比べて、複合材をより軽量化することが可能である。
【0100】
また、上記第1実施形態の複合材4および第2実施形態の複合材304において、クラッド材部分41の第3層63およびクラッド材部分341の第3層63は、いずれも、Cu、Cu合金、AlまたはAl合金から構成されるとして、実施例ではCu(無酸素銅)を用いた例を示しているが、本発明はCu(無酸素銅)に限られない。すなわち、本発明では、クラッド材部分の第3層(中間層)をCu(無酸素銅)以外のCu合金、AlまたはAl合金から構成してもよい。クラッド材部分の第3層をCu合金から構成した場合は、クラッド材部分の第3層がCuから構成される場合と比べて、複合材の機械的強さおよび導電性を高くすることが可能である。また、クラッド材部分の第3層をAlまたはAl合金から構成した場合には、クラッド材部分の第3層がCuまたはCu合金から構成される場合と比べて、複合材を軽量化することが可能である。
【0101】
また、上記第1実施形態の複合材4および第2実施形態の複合材304の構成に加えて、クラッド材部分の側面と外部とを熱的および電気的に接続可能なように設けられた接続部材を追加してもよい。具体的には、
図9に示す第1実施形態の変形例の複合材404のように、クラッド材部分441と接合材部分442との接合界面F21に接続部材447を挟み込むとともに、クラッド材部分441と接合材部分443との接合界面F22に接続部材448を挟み込んだ状態で、クラッド材部分441と接合材部分442および接合材部分443とをそれぞれ接合してもよい。なお、接続部材447および接続部材448は、それぞれ、接合界面F21および接合界面F22から外部に引き出されて、複合材404とは他の部材(図示せず)と接続される。なお、接続部材447および接続部材448は、それぞれ、クラッド材部分441の側面41aおよび側面41bにおいて、第3層63の一部または全部に当接するように配置されるのが好ましい。これにより、接続部材447および接続部材448により、接合材部分442および接合材部分443を介さずにクラッド材部分441と外部とを直接的に熱的および電気的に接続することができる。この結果、Cu、Cu合金、AlはまたAl合金から構成される第3層に比べて、熱伝導性および導電性が比較的低いステンレス鋼、TiまたはTi合金から構成される接合材部分442および接合材部分443に起因して複合材404の熱伝導性および導電性が低下するのを抑制することが可能である。なお、上記の接合材部分442および接合材部分443のような接合材部分を設ける場合、たとえば、上記第1実施形態の複合材4において、第3層63の露出の有無に拘らず、第3層63のX方向の両側面に接合材部分を設ける構成であってもよい。また、本発明の接続部材は、熱伝導のみを主に行い電気伝導を略行わない用途に用いてもよいし、電気伝導のみを主に行い熱伝導を略行わない用途に用いてもよい。
【0102】
また、上記第1実施形態では、接合材部分42の側面42aおよび接合材部分43の側面43aを、それぞれ、クラッド材部分41の側面41aおよび側面41bに対して、厚み方向に直交する方向(X方向)の略全体に渡って溶接により接合した例を示したが、本発明はこれに限られない。また、上記第2実施形態では、クラッド材部分341の側面341aと、枠状の接合材部分342の側面342aとの略全面が接合された例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、クラッド材部分41の側面41aおよびクラッド材部分341の側面341aにおいて第3層63を覆うことが可能であれば、クラッド材部分の側面の厚み方向に直交する方向の略全体に渡って接合材部分を接合しなくてもよく、たとえば、クラッド材部分と接合材部分とをスポット的に接合してもよい。
【0103】
また、上記第1実施形態では、レーザ溶接により、クラッド材部分41と接合材部分42および接合材部分43とを接合する例を示したが、本発明はこれに限られない。また、上記第2実施形態では、ろう接により、クラッド材部分341と接合材部分342とを接合する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、クラッド材部分と接合材部分との接合方法は特に限定されない。たとえば、電子ビームを照射すること(電子ビーム溶接)により、クラッド材部分と接合材部分とを接合してもよい。
【0104】
また、上記第1実施形態では、複合材4の厚み方向と直交する方向(Y方向)の一方側(Y1側)の接合材部分42に曲げ部分42dを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複合材の厚み方向と直交する短手方向の両側(第1実施形態を示す
図1におけるY1側およびY2側に対応する)、または、複合材の厚み方向と直交する長手方向の両側(第1実施形態を示す
図1におけるX1側およびX2側に対応する)の接合材部分に曲げ部分を設けてもよい。また、第2実施形態の複合材304の接合材部分342の任意の位置に、たとえば
図5に示す接合材部分342のX1側、X2側、Y1側またはY2側の1箇所以上に、曲げ部分を設けてもよい。
【0105】
また、上記第2実施形態では、Z方向(厚み方向)からの平面視において、矩形状のクラッド材部分341と枠状の接合材部分342とを接合する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、厚み方向からの平面視におけるクラッド材部分の形状は、矩形状に限定されない。なお、接合材部分は、クラッド材部分の形状に対応する形状を有していればよい。
【0106】
また、上記第1実施形態では、複合材4が、機械的強さを確保するシャーシとしての機能および熱を外部に放出するヒートシンクとしての機能とを有しているとして、携帯機器100に用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、クラッド材と金属との複合材の用途は特に限定されない。たとえば、電池などにおいて電気的な接続に用いられる導電部材(バスバー)などに本発明の複合材を用いてもよい。また、上記第1実施形態における複合材4をシャーシおよびヒートシンクとしての機能に加えて、携帯機器などの導電部材として用いられるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0107】
4、304、404 クラッド材と金属との複合材
6 クラッド材 41、341、441 クラッド材部分
41a、41b、341a 側面
41c (クラッド材の一方側の)表面
41d (クラッド材の他方側の)表面
42、43、342、442 接合材部分
42d 曲げ部分
61 第1層
62 第2層
63 第3層
F1、F2、F11、F21、F22 接合界面