(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/05 20060101AFI20220509BHJP
C08F 290/04 20060101ALN20220509BHJP
【FI】
G03G5/05 103B
C08F290/04
(21)【出願番号】P 2018047392
(22)【出願日】2018-03-15
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2017050855
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】特許業務法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 篤
(72)【発明者】
【氏名】福岡 博之
(72)【発明者】
【氏名】沼田 修
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-289630(JP,A)
【文献】特開平06-051541(JP,A)
【文献】特開2011-118054(JP,A)
【文献】特開2011-209309(JP,A)
【文献】特開2008-214530(JP,A)
【文献】特開2002-194037(JP,A)
【文献】特開2012-158696(JP,A)
【文献】特開2015-218231(JP,A)
【文献】特開2016-166260(JP,A)
【文献】特開平08-234503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A1)で表される繰返し単位を含む重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
(式(A1)中、X
1、X
2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基、又は、下記式(A2)で表される基である。R
11~R
13、R
15~R
16は、水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基である。R
14は
直鎖状のアルキレン基である。Zは、末端基である。nは1以上の整数である。)
【化2】
(式(A2)中、R
21は、水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基、又は、置換基を有してもよい複素環基である。)
【請求項2】
前記重合体が更に下記式(A3)で表される繰返し単位を含む請求項1に記載の電子写真感光体。
【化3】
(式(A3)中、Yは単結合又は2価の基である。RfはC-F結合を有する基である。R
31~R
33は水素原子又は炭化水素基である。)
【請求項3】
前記式(A1)のX
1及びX
2のうち少なくとも一方が、前記式(A2)で表される基である請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記重合体の重量平均分子量(Mw)が10,000以上200,000以下である請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記式(A1)で表される繰り返し単位の重量平均分子量が、2,000以上20,000以下である請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項6】
前記
重合体が更に下記式(A3)で表される繰返し単位を含み、式(A3)中のRfが、炭素数4以上6以下の直鎖状のパーフルオロアルキル基である請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【化4】
(式(A3)中、Yは単結合又は2価の基である。RfはC-F結合を有する基である。R
31
~R
33
は水素原子又は炭化水素基である。)
【請求項7】
前記式(A1)で表される繰り返し単位の含有量が、重合体全体に対して1質量%以上80質量%以下である請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項8】
フッ素系樹脂粒子を含有する請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の電子写真感光体、並びに、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置よりなる群から選ばれる少なくとも1つの装置を備えたことを特徴とする電子写真感光体カートリッジ。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の重合体を用いた電子写真感光体、電子写真感光体カートリッジ、画像形成装置に関し、更には、特定の重合体を用いた電気特性、耐摩耗性等に優れる電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂粒子は、フッ素系樹脂の持つ、表面エネルギーが低く撥水性・撥油性であること、比重が大きいこと等から、有機溶剤のような非水系液状媒体中で分散させる場合、フッ素系樹脂粒子の凝集及び沈降が起きやすく、微粒径まで分散することや該微粒径の分散状態を維持することは非常に困難である。
そこで従来、フッ素系樹脂用分散剤を用いることにより、有機溶剤中でのフッ素系樹脂粒子の分散が行われている(特許文献1~3等)。
【0003】
一方、電子写真感光体は、電子写真プロセス、即ち、帯電、露光、現像、転写、クリーニング、除電等のサイクルで繰り返し使用されており、その間の様々なストレスを受けている。このストレスには、クリーニングブレード、磁気ブラシ等の摺擦、現像剤、紙との接触等による感光層表面の摩耗、傷の発生、膜の剥がれ等の機械的なストレスがある。このような機械的ストレスによる損傷は画像上に現れやすく、直接、画像品質を損なうため感光体の寿命を制限する大きな要因となっている。
【0004】
感光体の機械的ストレスに対する手段として様々な検討がなされている。例えば、感光体の最表面層に保護層を設ける、最表面層中の結着樹脂の機械的強度を高くする、最表面層にフィラーを添加する等がある。
その中で、フィラーとしてフッ素系樹脂粒子を使用する検討がされている(特許文献4等)。フッ素系樹脂粒子は、高い潤滑性を有しており、感光体が電子写真プロセス中で接触する部材との摩擦力を低減させることで、感光体の耐摩耗性を向上させる役割がある。
【0005】
電子写真感光体にフッ素系樹脂粒子を含有させて用いる場合、有機溶剤を用いた塗布液中におけるその分散性の悪さが問題となるため、フッ素系樹脂分散剤が使用されている。 その際、電子写真感光体においては、電気特性が求められることから、比較的に電気特性を悪化させにくい特定の構造を有するフッ素系(メタ)アクリルグラフトポリマーが用いられている(特許文献5~7等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-213062号公報
【文献】特開2010-090338号公報
【文献】特許第5719014号公報
【文献】特許第4418600号公報
【文献】特許第4436456号公報
【文献】特許第5544850号公報
【文献】特許第5589497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したような分散剤では、未だ有機溶剤中におけるフッ素系樹脂粒子の微粒径化、該微粒径の状態での分散安定性等が不十分なため、均一な膜が得られず、電子写真感光体の耐摩耗性が十分に改善されない。
また、特許文献5~7に記載のような特定の構造を有するフッ素系(メタ)アクリルグラフトポリマーを分散剤とし電子写真感光体に用いた場合、繰返し使用における残留電位の上昇といった電気特性の悪化が問題となる。
【0008】
本発明は上記問題点や課題に鑑みてなされたものである。
即ち、本発明の課題は、電気特性や、フッ素系樹脂粒子の分散性等の界面活性機能に優れた重合体を提供するものであり、更には、該重合体を用いることにより耐摩耗性や電気特性に優れた電子写真感光体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するマクロモノマー由来の部分構造(部位)を有する重合体は、フッ素系樹脂粒子の分散性に優れた界面活性機能を有し、均一に分散された塗布膜を提供できるため、得られる電子写真感光体は耐摩耗性に優れることを見出した。
また、本発明の重合体は、電子写真感光体に使用したときに、電子写真感光体に要求される電気特性に優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]~[10]に存する。
[1]下記式(A1)で表される繰返し単位を含む重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】
(式(A1)中、X
1、X
2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基、又は、下記式(A2)で表される基である。R
11~R
13、R
15~R
16は、水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基である。R
14は置換基を有してもよい炭化水素基である。Zは、末端基である。nは1以上の整数である。)
【化2】
(式(A2)中、R
21は、水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基、又は、置換基を有してもよい複素環基である。)
【0011】
[2]前記重合体が更に下記式(A3)で表される繰返し単位を含む[1]に記載の電子写真感光体。
【化3】
(式(A3)中、Yは単結合又は2価の基である。RfはC-F結合を有する基である。R
31~R
33は水素原子又は炭化水素基である。)
[3]前記式(A1)のX
1及びX
2のうち少なくとも一方が、前記式(A2)で表される基である[1]又は[2]に記載の電子写真感光体。
[4]前記重合体の重量平均分子量(Mw)が10,000以上200,000以下である[1]乃至[3]の何れか1項に記載の電子写真感光体。
[5]前記式(A1)で表される繰り返し単位の重量平均分子量が、2,000以上20,000以下である[1]乃至[4]の何れか1項に記載の電子写真感光体。
[6]前記式(A3)中のRfが、炭素数4以上6以下の直鎖状のパーフルオロアルキル基である[1]乃至[5]の何れか1項に記載の電子写真感光体。
[7]前記式(A1)で表される繰り返し単位の含有量が、重合体全体に対して1質量%以上80質量%以下である[1]乃至[6]の何れか1項に記載の電子写真感光体。
[8]フッ素系樹脂粒子を含有する[1]乃至[7]の何れか1項に記載の電子写真感光体。
【0012】
[9][1]乃至[8]の何れか1項に記載の電子写真感光体、並びに、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置よりなる群から選ばれる少なくとも1つの装置を備えたことを特徴とする電子写真感光体カートリッジ。
【0013】
[10][1]乃至[9]の何れか1項に記載の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【0014】
また、本発明の要旨は、以下の<1>~<10>にも存する。
<1>下記式(1)で表される構造由来の部位及び下記式(3)で表される繰返し単位を含むことを特徴とする共重合体。
【化4】
(式(1)中、X
1、X
2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基、又は、下記式(2)で表される基である。R
1は水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基である。nは2以上の整数である。)
【化5】
(式(2)中、R
2は、水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基、又は、置換基を有してもよい複素環基である。)
【化6】
(式(3)中、Yは単結合又は2価の基である。RfはC-F結合を有する基である。R
3は水素原子又は炭化水素基である。
【0015】
<2>前記式(1)のX1又はX2が前記式(2)で表される基であることを特徴とする<1>に記載の共重合体。
<3>前記共重合体の重量平均分子量(Mw)が10,000以上200,000以下であることを特徴とする<1>又は<2>に記載の共重合体。
<4>前記式(1)で表される構造由来の部位の重量平均分子量が、2,000以上20,000以下であることを特徴とする<1>~<3>の何れか1項に記載の共重合体。
<5>前記式(3)中のRfが、炭素数4以上6以下の直鎖状のパーフルオロアルキル基であることを特徴とする<1>~<4>の何れか1項に記載の共重合体。
<6>前記式(1)で表される構造由来の部位の含有量が、共重合体全体に対して1質量%以上80質量%以下であることを特徴とする<1>~<5>の何れか1項に記載の共重合体。
【0016】
<7>導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体であって、前記感光層が、<1>~<6>の何れか1項に記載の共重合体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
<8>前記感光体にフッ素系樹脂粒子が含有されることを特徴とする<7>に記載の電子写真感光体。
【0017】
<9><7>又は<8>に記載の電子写真感光体、並びに、「該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置よりなる群から選ばれる少なくとも1つの装置」を備えたことを特徴とする電子写真感光体カートリッジ。
【0018】
<10><7>又は<8>に記載の電子写真感光体、並びに、「該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置」を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明の共重合体は、有機溶媒に対する溶解性に優れ、フッ素系樹脂粒子の分散性に優れ、電気特性が良好であるため、該共重合体を用いた電子写真感光体は、耐摩耗性や電気特性に優れる。
即ち、本発明によれば、特定の構造を有する共重合体を用いることにより、フッ素系樹脂粒子の分散安定性に優れた分散液を得ることができ、また該分散液を用いて感光層を形成することにより、耐摩耗性や電気特性に優れた電子写真感光体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置の一例を表す概念図である。
【
図2】実施例で用いたオキシチタニウムフタロシアニンのCuKα特性X線によるX線回折スペクトルを示す図である。
【
図3】実施例で用いたオキシチタニウムフタロシアニンのCuKα特性X線によるX線回折スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0022】
1.電子写真感光体
1-1.重合体
本発明の電子写真感光体は、下記式(A1)で表される繰返し単位を含む重合体を含有する。本発明の重合体は、式(A1)で表される構造由来の部位以外の、部位、構造、繰り返し単位等を含んでいてもよい。
【化7】
(式(A1)中、X
1、X
2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基、又は、下記式(A2)で表される基である。R
11~R
13、R
15~R
16は、水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基である。R
14は置換基を有してもよい炭化水素基である。Zは、末端基である。nは1以上の整数である。)
【化8】
(式(A2)中、R
21は、水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基、又は、置換基を有してもよい複素環基である。)
【0023】
また、本発明の電子写真感光体が含有する前記重合体は、更に、下記式(A3)で表される繰返し単位を含んでいてもよい(すなわち、共重合体であってもよい)。
【化9】
(式(A3)中、Yは単結合又は2価の基である。RfはC-F結合を有する基である。R
31~R
33は水素原子又は炭化水素基である。)
【0024】
1-1-1.X1、X2、R11、R12、R13、R15、R16及びR21における炭化水素基
以下の炭化水素基についての記載は、X1、X2、R11、R12、R13、R15、R16及びR21に共通である。
「炭化水素基」とは、炭素原子及び水素原子から構成された基のことを表し、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が該当する。
「脂肪族炭化水素基」とは、炭素原子及び水素原子から構成された非環式又は環式の炭化水素基であって、芳香族構造を有さない基を表す。脂肪族炭化水素基には、直鎖状、分岐状、環状のものが挙げられ、好ましくは、直鎖状、環状のものであり、より好ましくは直鎖状のものである。直鎖状、環状である方が、溶剤と親和力が高く、フッ素系樹脂粒子の分散安定性が良好となる。
また、「芳香族炭化水素基」とは、炭素原子及び水素原子から構成された芳香族構造を有する炭化水素基を表す。
【0025】
脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。脂肪族炭化水素基の炭素数に特に制限はないが、アルキル基は通常1以上、アルケニル基及びアルキニル基は通常2以上である。一方、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基ともに、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、特に好ましくは6以下である。上記炭素数の範囲とすることで、高い溶媒親和性が得られる。
【0026】
芳香族炭化水素基としては、アリール基、アラルキル基が挙げられる。芳香族炭化水素基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは炭素数6以上である。一方、20以下が好ましく、12以下がより好ましい。上記範囲とすることで、溶解性及び電気特性に優れる。
【0027】
炭化水素基の具体例として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、i-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基等の炭素数1~5のアルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基等の炭素数2~5のアルケニル基;
エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基等の炭素数2~5のアルキニル基;等が挙げられる。
【0028】
また、炭化水素基の具体例として、アリール基、アラルキル基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、n-プロピルフェニル基、i-プロピルフェニル基、n-ブチルフェニル基、sec-ブチルフェニル基、i-ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ナフチル基、アントレセン基、ビフェニル基、ピレン基等のアリール基;
ベンジル基、α-メチルベンジル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、フェネチル基、2-フェニルプロピル基、2-メチル-2-フェニルプロピル基、3-フェニルプロピル基、3-フェニルブチル基、3-メチル-3-フェニルブチル基、4-フェニルブチル基、5-フェニルペンチル基、6-フェニルヘキシル基等の炭素数7~12のアラルキル基等;等が挙げられる。
【0029】
特に好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、フッ素系樹脂粒子の分散性の観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基等のアルケニル基;エチニル基、1-プロピニル基等のアルキニル基;等が挙げられる。
【0030】
また、特に好ましくは、アリール基、アラルキル基としては、フッ素系樹脂粒子の分散性の観点から、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基等のアラルキル基;等が挙げられる。
【0031】
中でも、更に好ましくは、電気特性の観点、フッ素系樹脂粒子の分散性の観点から、炭化水素基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基等であり、最も好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基又はベンジル基である。
【0032】
また、R12、R13、R15及びR16に関しては、水素原子が最も好ましい。
上記の基であれば、重合体の溶解性と反応性を両立できる。
【0033】
1-1-2.X1、X2、R11、R12、R13、R15、R16及びR21における置換基
X1、X2、R11、R12、R13、R15、R16及びR21は上記した基であるが、該基は置換基を有していてもよい。
該置換基としては、炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン基等が挙げられる。
ここで、炭化水素基は、「1-1-1.」に記載した炭化水素基と同義である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、片末端アルコシキポリエチレングリコキシ基、片末端アルコキシポリプロピレングリコキシ基等が挙げられる。ハロゲン基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基が挙げられる。
【0034】
また、該置換基としては、他にも、シアノ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリル基、水酸基、アミノ基、シロキサン基、親水性若しくはイオン性を示す基、等も挙げられる。
該アシルオキシ基としては、アセテート基、プロピオネート基、スクシネート基、マロネート基、フタレート基、2-ヒドロキシエチル-フタレート基、ベンゾエート基、ナフトエート基等が挙げられる。該アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ベンジルアルコキシカルボキル基等が挙げられる。該アミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0035】
電気特性の観点から、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基;アセテート基、プロピオネート基、フタレート基等のアシルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルアルコキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;等が好ましい。
【0036】
1-1-3.R14における炭化水素基
R14における炭化水素基としては、「1-1-1.X1、X2、R11、R12、R13、R15、R16及びR21における炭化水素基」における炭化水素基から水素原子を1つ除いて誘導される2価の基が該当する。
R14における炭化水素基は、置換基を有していてもよく、例えば、「1-1-2.X1、X2、R11、R12、R13、R15、R16及びR21における置換基」と同様のものが挙げられる。
【0037】
R14における(置換基を有していてもよい)炭化水素基の好ましい具体例として、アルキレン基、2価の芳香族基、エーテル基を含む2価の基、エステル基を含む2価の基等が挙げられる。
上記アルキレン基としては、直鎖状、分岐状、脂環状の炭化水素基が挙げられる。直鎖状の基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等、分岐状の基としてはメチルエチレン基、メチルトリメチレン基、ジメチルトリメチレン基等、脂環状の基としてはシクロへキシレン基、1,4-ジメチレンシクロヘキサン基等のアルキレン基が挙げられる。
構造の元となる(メタ)アクリレートの安定性及び反応性の観点から、直鎖状のアルキレン基が好ましく、製造上の簡便性から、炭素数1~3のアルキレン基がより好ましく、メチレン基が特に好ましい。
【0038】
前記2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基等が挙げられる。
エーテル基を含む2価の基としては、-[(CH2)lO]m-(lは、1~10の整数、mは1~100の整数を表す。)等が挙げられる。
前記エステル基を含む2価の基としては、-R’COOR”-(R’、R”はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を表す)等が挙げられる。
【0039】
1-1-4.R21における複素環基について
上記R21の「置換基を有してもよい複素環基」の「複素環」としては、例えば、炭素数2~18の複素環が挙げられる。
該複素環基としては、芳香族複素環基、環状エーテル基、環状アミノ基、環状チオエーテル基等が挙げられる。複素環基の具体例として、フラニル基、ピローリル基、ピリジニル基、チオフェニル基、オキシラニル基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基、テトラヒドロチオフェニル基等が挙げられる。電気特性の観点から、フラニル基、チオフェニル基、テトラヒドロフラニル基が好ましい。
【0040】
複素環基における「置換基」としては、「1-1-2.」に記載した置換基と同義のものが挙げられる。該置換基としては、例えば、炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン基等が挙げられる。
【0041】
1-1-5.式(A1)について
上記X1、X2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基、又は、前記式(A2)で表される基である。反応性及び分散性の観点から、前記式(A1)のX1及びX2のうち少なくとも一方が、前記式(A2)で表される基であることが好ましい。
すなわち、X1とX2とが独立して上記した2種の基の何れかであってもよく、X2だけに関しても、式(A1)におけるn個の繰り返し単位ごとに、それぞれ独立に前記した基でもよく、互いに異なっていてもよい。
【0042】
(n個の)繰り返し単位全体において(式(A1)で表される構造由来の部位全体に対して)、X2が式(A2)で表されるもの(繰り返し単位)の占める割合は、60モル%以上が好ましく、80モル%以上が特に好ましい。
【0043】
反応性及び分散性の観点から、X1又はX2は、上記式(A2)で表される基であること(X2については、n個の繰り返し単位の全てが上記式(A2)で表される基であること)がより好ましい。
更に、反応性及び分散性の観点から、X1及びX2は、前記式(A2)で表される基であることが特に好ましい。
【0044】
合成上の観点から、式(A1)中の繰返し単位におけるR11の半数以上が炭化水素基であることが好ましい。
【0045】
式(A1)におけるZは、末端基である。末端基としては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子又はラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。
【0046】
式(A1)における「n」は、1以上の整数であり、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、5以上が更に好ましく、10以上が特に好ましい。一方、上限に特に限定はないが、通常1000以下であり、800以下が好ましく、500以下がより好ましく、200以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、良好な分散性となる。
【0047】
前記式(A1)で表される繰り返し単位の重量平均分子量(Mw)に特に制限はないが、通常2,000以上が好ましく、3,000以上が特に好ましい。一方、20,000以下が好ましく、15,000以下が特に好ましい。
なお、「前記式(A1)で表される繰り返し単位の重量平均分子量(Mw)」とは、「前記式(A1)で表される繰り返し単位の元となるマクロモノマーの重量平均分子量(Mw)」である。
上記範囲の分子量とすることにより、良好な溶媒親和性が得られ、かつ、他の結着樹脂と相溶性が良く平滑な塗膜が得られる。
本発明における重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを基準物質とするゲル浸透クロマトグラフ(GPC)による重量平均分子量をいう。
【0048】
1-1-6.式(A3)のYについて
Yは単結合又は2価の基である。
該「2価の基」は、2価の基であれば特に制限はないが、2価の炭化水素基、エーテル基を含む2価の基、エステル基を含む2価の基、炭化水素基とエーテル基を含む2価の基、炭化水素基とエステル基を含む2価の基、「炭化水素基、エーテル基及びエステル基を含む2価の基」等が挙げられる。
2価の炭化水素基としては、「1-1-1.X1、X2、R11、R12、R13、R15、R16及びR21における炭化水素基」における炭化水素基から水素原子を1つ除いて誘導される2価の基が該当する。
【0049】
2価の炭化水素基の好ましい具体例として、アルキレン基、2価の芳香族基、エーテル基を含む2価の基、エステル基を含む2価の基等が挙げられる。
上記アルキレン基としては、直鎖状、分岐状、脂環状の炭化水素基が挙げられる。直鎖状の基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等、分岐状の基としてはメチルエチレン基、メチルトリメチレン基、ジメチルトリメチレン基等、脂環状の基としてはシクロへキシレン基、1,4-ジメチレンシクロヘキサン基等のアルキレン基が挙げられる。
構造の元となる(メタ)アクリレートの安定性及び反応性の観点から、直鎖状のアルキレン基が好ましく、製造上の簡便性から、炭素数1~3のアルキレン基が特に好ましい。
【0050】
前記2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基等が挙げられる。
エーテル基を含む2価の基としては、-[(CH2)lO]m-(lは、1~10の整数、mは1~100の整数を表す。)等が挙げられる。
前記エステル基を含む2価の基としては、-R’COOR”-(R’、R”はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を表す)等が挙げられる。
置換基としては、「1-1-2.X1、X2、R11、R12、R13、R15、R16及びR21における置換基」と同様のものが挙げられる。
【0051】
1-1-7.式(A3)のRfについて
RfはC-F結合を有する基であって、特に制限はなく任意の基を使用することができる。C-F結合を有する基は、「1-1-1.X1、X2、R11、R12、R13、R15、R16及びR21における炭化水素基」における炭化水素基のC-H結合の一部又は全部をC-F結合に置き換えた基が挙げられる。
【0052】
具体的には、フルオロアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルキニル基、フルオロフェニル基、フルオロアリール基、フルオロアラルキル基が挙げられる。
C-F結合を有する基の炭素数に特に制限はないが、フルオロアルキル基の場合、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、一方、通常6以下である。フルオロアルケニル基の場合、通常2以上、好ましくは3以上であり、一方、通常7以下、好ましくは6以下である。フルオロアルキニル基の場合、通常2以上、好ましくは3以上であり、一方、通常7以下、好ましくは6以下である。
上記範囲であることにより、特に良好なフッ素系樹脂粒子の分散性と良好な電気特性が得られる。
【0053】
フルオロアルキル基の具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
また、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフフルオロn-ブチル基、パーフルオロn-ペンチル基、パーフルオロn-ヘキシル基、パーフルオロiso-プロピル基、パーフルオロiso-ブチル基、パーフルオロtert-ブチル基、パーフルオロsec-ブチル基、パーフルオロiso-ペンチル基、パーフルオロiso-ヘキシル基、パーフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシル基等のパーフルオロ(シクロ)アルキル基が挙げられる。
また、2H-テトラフルオロエチル基、3H-ヘキサフルオロプロピル基、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル基、2H-ヘキサフルオロプロピル基、4H-オクタフルオロブチル基、6H-ドデカフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0054】
Rfは、炭素数4以上6以下の直鎖状のパーフルオロアルキル基であることが、特に良好なフッ素系樹脂粒子の分散性と良好な電気特性が得られる点から好ましい。
Rfが炭素数4以上6以下の直鎖状のパーフルオロアルキル基である場合、Yは、フッ素原子を含まない2価の基であることが好ましい。
【0055】
電気特性の観点から、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフフルオロn-ブチル基、パーフルオロn-ペンチル基、パーフルオロn-ヘキシル基が好ましく、フッ素系樹脂粒子の分散性の観点から、パーフフルオロn-ブチル基、パーフルオロn-ペンチル基、パーフルオロn-ヘキシル基が特に好ましい。
【0056】
Rfはヘテロ原子を有していてもよい。ヘテロ原子の具体例としては、窒素、酸素、硫黄、リン等が挙げられ、好ましくは酸素又は硫黄であり、より好ましくは酸素である。
ヘテロ原子を有する基の具体例を以下に示す。
【0057】
【0058】
上記のヘテロ原子を有する基の具体例のうち、好ましいものを以下に示す。
【0059】
【0060】
Rfがヘテロ原子を有している場合、更に2価の炭化水素基を有していることが好ましい。2価の炭化水素基としては、好ましくは、アルキレン基、フルオロアルキレン基、アルケニレン基、フルオロアルケニレン基、アルキニレン基、フルオロアルキニレン基、アリーレン基、フルオロアリーレン基、アラルキレン基、フルオロアラルキレン基等が挙げられ、これらの中でも、アルキレン基又はフルオロアルキレン基がより好ましく、フルオロアルキレン基が特に好ましい。
【0061】
2価の炭化水素基の炭素数に特に制限はないが、通常1以上、好ましくは2以上である。一方、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下、特に好ましくは6以下、最も好ましくは4以下である。
上記範囲であることにより、良好な溶解性や電気特性が得られる。
【0062】
フルオロアルキレン基の具体例としては、パーフルオロメチレン基、パーフルオロエチレン基、パーフルオロ2-メチルエチレン基、パーフルオロ2-エチルエチレン基、パーフルオロ2-プロピルエチレン基、パーフルオロ2-ブチルエチレン基、パーフルオロトリメチレン基、パーフルオロテトラメチレン基、パーフルオロペンタメチレン基、パーフルオロヘキサメチレン基等が挙げられる。
溶解性の観点から、パーフルオロメチレン基、パーフルオロエチレン基、パーフルオロ2-メチルエチレン基が好ましい。
【0063】
Rfは、下記式(4)で表される構造が好ましい。
【0064】
【0065】
R41は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は、C-F結合を有する基の何れかを表し、R42はヘテロ原子を有する基を表し、R43はC-F結合を有する基を表す。
n41は1以上20以下の整数を表し、n42は0以上100以下の整数を表す。
上記の構造とすることで、ラジカル反応の反応性を高めることができ、共重合体を収率良く得ることができる。
【0066】
1-1-8.式(A3)のR31、R32及びR33について
式(A3)中のR31は式(A1)中のR11と同様のものが挙げられる。反応性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
式(A3)中のR32及びR33は、式(A1)中のR12及びR13と同様のものが挙げられる。
【0067】
1-1-9.式(A3)について
式(A3)で表される繰返し単位の元となるフッ素含有(メタ)アクリレートを具体的に記載すると、例えば、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(パーフルオロエチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロプロピル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロペンチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロiso-プロピル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロiso-ブチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロtert-ブチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロsec-ブチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロiso-ペンチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロiso-ヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロシクロペンチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロエチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロプロピル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロペンチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロiso-プロピル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロiso-ブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロtert-ブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロsec-ブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロiso-ペンチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロiso-ヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロシクロペンチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロエチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロプロピル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロブチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロペンチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロiso-プロピル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロiso-ブチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロtert-ブチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロsec-ブチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロiso-ペンチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロiso-ヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロシクロペンチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロシクロヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロエチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロプロピル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロブチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロペンチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロヘキシル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロiso-プロピル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロiso-ブチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロtert-ブチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロsec-ブチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロiso-ペンチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロiso-ヘキシル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロシクロペンチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロシクロヘキシル)ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0068】
また、式(A3)で表される繰返し単位の元となるフッ素含有(メタ)アクリレートとしては、具体的には、例えば、下記に構造式を示す(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0069】
【0070】
この中でも、(メタ)アクリレートの安定性、製造の簡便性の観点から、(パーフルオロエチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロプロピル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロペンチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロエチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロプロピル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロペンチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロエチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロプロピル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロブチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロペンチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0071】
また、フッ素系樹脂の分散性の観点から、(パーフルオロブチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロペンチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロペンチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロブチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロペンチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート等がより好ましく、マクロモノマーとの反応性から、(パーフルオロブチル)メチルアクリレート、(パーフルオロペンチル)メチルアクリレート、(パーフルオロヘキシル)メチルアクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、2-(パーフルオロペンチル)エチルアクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、3-(パーフルオロブチル)プロピルアクリレート、3-(パーフルオロペンチル)プロピルアクリレート、3-(パーフルオロヘキシル)プロピルアクリレート等が特に好ましい。
【0072】
上述したフッ素含有(メタ)アクリレート化合物は、必要に応じて複数の化合物を組み合わせて用いることも可能である。
【0073】
1-1-10.重合体のその他の事項
前記重合体の重量平均分子量(Mw)は、10,000以上が好ましく、15,000以上がより好ましい。一方、200,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。上記範囲の分子量とすることで、良好なフッ素系樹脂粒子の分散安定性が得られる。
前記重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnは、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましく、2.5以上が特に好ましい。一方、10.0以下が好ましく、7.5以下がより好ましく、5.0以下が特に好ましく、4.0以下が更に好ましい。上記範囲とすることで、フッ素系樹脂粒子の分散性が良好となる。
【0074】
前記重合体に含まれる前記式(A1)で表される構造由来の部位の含有量は、該重合体全体に対して、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。一方、80質量%以下が好ましく、60質量%以下が好ましく、50質量%以下が特に好ましい。上記範囲の含有量とすることで、良好な電気特性が得られる。
【0075】
一方、前記重合体に含まれる前記式(A1)で表される構造由来の未反応原料の含有量は、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、電気特性が良好となる。
【0076】
前記重合体に含まれる前記式(A3)で表される繰返し単位の含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。一方、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が特に好ましい。上記範囲の含有量とすることで、良好なフッ素系樹脂粒子の分散安定性が得られる。
【0077】
一方、前記重合体に含まれる前記(A3)で表される繰返し単位の元となる未反応フッ素含有(メタ)アクリレートの含有量は、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、良好な電気特性が得られる。
【0078】
前記重合体は、他の単量体と共重合してもよい。他の単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸モノマー、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、芳香族ビニルモノマー、アルキルビニルエーテルモノマー、ビニルエステルモノマー等が挙げられる。他の単量体としては、電気特性の観点から(メタ)アクリレートモノマー、芳香族ビニルモノマーが好ましく、フッ素系樹脂粒子の分散安定性の観点から、(メタ)アクリレートモノマーが特に好ましい。
本発明の重合体における他の単量体の含有量としては、20質量%以下が好ましく、電気特性の観点から15質量%以下がより好ましく、フッ素系樹脂粒子の分散性の観点から10質量%以下がより好ましい。
【0079】
(メタ)アクリレートモノマーの具体例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-イソプロピル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2-シアノエチル(メタ)アクリレート、2-ブロモエチル(メタ)アクリレート、2-クロロエチル(メタ)アクリレート、2,3-ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレート、アントリルメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-スクシネートエチル(メタ)アクリレート、2-ヘキサヒドロフタルレートエチル(メタ)アクリレート、2-フタルレートエチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチル-3-ベンゾエートプロピル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、アントラセン(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、PMMAやポリスチレン、ポリエステル等に(メタ)アクリレート基を有するマクロモノマー等が挙げられる。
【0080】
電気特性の観点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレート、PMMA又はポリスチレンに(メタ)アクリレート基を有するマクロモノマー等が好ましく、マクロモノマーとの反応性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート等が特に好ましい。
【0081】
1-1-11.重合体の製造方法
本発明の重合体の製造方法は、前記式(A1)で表される繰り返し単位の元となるマクロモノマー(及び、必要に応じて前記式(A3)で表される繰返し単位の元となるフッ素含有(メタ)アクリレート)を用いて製造されれば、その製造方法について特段の制約はないが、反応性の観点からラジカル重合による製造が好ましく、電気特性の観点から熱重合開始剤を用いた製造がより好ましい。
【0082】
<式(A1)で表される繰り返し単位の元となるマクロモノマーの製造方法>
前記式(A1)で表される繰り返し単位の元となるマクロモノマー(以下、「マクロモノマーa1」という場合がある。)は、公知の方法で製造できる。本発明におけるマクロモノマーa1の製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許4680352号明細書)、α-ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開第88/004304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(特開昭60-133007号公報、米国特許5147952号明細書)、熱分解による方法(特開平11-240854号公報)等が挙げられる。これらの中でも、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法及びα-ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法が好ましい。
【0083】
コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法、α-ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法の2つの中では、製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点でコバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。コバルト連鎖移動剤を用いてマクロモノマーa1を製造する方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法及び水系分散重合法が挙げられる。水系分散重合法としては、例えば、懸濁重合法及び乳化重合法が挙げられる。
【0084】
これらの中で、マクロモノマーa1の回収工程の簡略化の点から、水系分散重合法が好ましい。水系分散重合法では溶剤として、水のみ又は「水及び水溶性溶剤(例えばエタノール)との混合物」を使用してもよい。水系分散重合法で得られるマクロモノマーa1の粒状物は、例えば平均粒径が20~400μm、好ましくは50~200μm程度である。
【0085】
マクロモノマーa1を溶液重合法で得る際に使用される溶剤としては、例えば、トルエン等の炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;アセトン等のケトン;メタノール等のアルコール;アセトニトリル等のニトリル;酢酸エチル等のエステル;エチレンカーボネート等のカーボネート;超臨界二酸化炭素等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0086】
<重合方法>
本発明の重合体の製造は、マクロモノマーa1(及び、必要に応じて前記式(A3)で表される繰返し単位の元となるフッ素含有(メタ)アクリレート)を用い、ラジカル重合による製造が好ましい。
ラジカル重合による製造では、マクロモノマーa1及びフッ素含有(メタ)アクリレート等の反応性物質を有機溶剤に溶解させた後に熱重合開始剤を添加して、40~200℃に加熱して重合させることにより目的とする重合体を得ることができる。重合反応の仕込み方法は、全ての原料を一括して仕込む方法や、開始剤やフッ素含有(メタ)アクリレートで表される単量体等少なくとも一つの原料を連続的に反応器中に供給する方法、全原料を連続供給し、同時に反応器から連続的に抜き出す方法等がある。これらのなかでもフッ素含有(メタ)アクリレートの単独重合を防ぐ観点から、フッ素含有(メタ)アクリレートを連続的に反応器中に供給する方法が好ましい。
【0087】
ラジカル重合に用いられる溶媒に特に制限はないが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。
【0088】
これらの溶剤の中で、重合時に揮発性の観点から、トルエン、キシレン、アニソール、ジメトキシエタン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミドが好ましく、本発明の重合体の溶解性の観点からアニソール、ジメトキシエタン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが特に好ましい。これらは何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0089】
反応溶剤の使用量は、マクロモノマーa1及び前記式(A3)で表される繰返し単位の元となるフッ素含有(メタ)アクリレート等の反応性物質の合計100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上が特に好ましい。一方、500質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下が特に好ましい。上記範囲とすることにより、高分子量かつ均一な重合体を得ることができる。
【0090】
ラジカル重合で使用する重合開始剤は、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、レドックス型重合開始剤等、公知の重合開始剤を用いることができる。
【0091】
前記アゾ系化合物としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2-(tert-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等が挙げられる。
【0092】
前記有機過酸化物としては、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス(tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0093】
前記無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0094】
また、前記レドックス型重合開始剤としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたものを用いることができる。
【0095】
これらの重合開始剤の中で、残存物による電気特性等の影響の観点から、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキサイドが好ましい。
【0096】
重合開始剤は、マクロモノマーa1及び前記式(A3)で表される繰返し単位の元となる(メタ)アクリレート等の反応性物質100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.10質量部以上が特に好ましい。一方、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、2質量部以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、高分散性及び良好な電気特性となる。
【0097】
ラジカル反応に分子量調整や他官能基導入の目的に連鎖移動剤を用いてもよい。用いる連鎖移動剤としては、特に限定はないが、1-ブタンチオール、1-ヘキシルチオール、1-デカンチオール、チオグリコール2-エチルヘキシル等のチオール類;四臭化炭素、四塩化炭素等のハロゲンポリハロゲン化水素類;2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン等のα‐メチルスチレン二量体類;ナフトキノン類;等が挙げられる。
【0098】
反応温度は、使用する溶剤や重合開始剤に応じて適切に調節することができる。50~200℃が好ましく、60~90℃が特に好ましい。重合後の重合体含有溶液は、有機溶剤に溶解された溶液として使用するか、重合体が不溶のアルコールその他有機溶媒中に析出させるか、重合体が不溶の分散媒中で溶媒を留去するか、加熱、減圧等により溶媒を留去することにより取り出してもよい。
【0099】
重合体を取り出した場合の乾燥は、通常重合体の分解温度以下の温度で乾燥するが、好ましくは30℃以上、重合体の溶融温度以下で乾燥することができる。このとき、減圧下で乾燥することが好ましい。
乾燥時間は残存溶媒等の不純物の純度が一定以下になるまでの時間以上行うことが好ましく、具体的には、残存溶媒が通常1000ppm以下、好ましくは300ppm以下、特に好ましくは100ppm以下になる時間以上乾燥する。
【0100】
1-1-12.共重合体A
本発明の電子写真感光体が含有する重合体のうち、「前記式(A1)で表される繰返し単位」と「前記式(A3)で表される繰返し単位」の両方を含む重合体(共重合体)の好ましい例として、以下に述べる「共重合体A」が挙げられる。
【0101】
本発明の共重合体Aは、下記式(1)で表される構造由来の部位及び下記式(3)で表される繰返し単位を含む。本発明の共重合体Aは、「上記式(1)で表される構造由来の部位」及び「上記式(3)で表される繰返し単位」を含むが、それら以外の、部位、構造、繰り返し単位等を含んでいてもよい。
【化14】
(式(1)中、X
1、X
2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基、又は、下記式(2)で表される基である。R
1は水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基である。nは2以上の整数である。)
【化15】
(式(2)中、R
2は、水素原子、置換基を有してもよい炭化水素基、又は、置換基を有してもよい複素環基である。)
【化16】
(式(3)中、Yは単結合又は2価の基である。RfはC-F結合を有する基である。R
3は水素原子又は炭化水素基である。)
【0102】
1-1-12-1.X1、X2、R1及びR2における炭化水素基
以下の炭化水素基についての記載は、X1、X2、R1及びR2に共通である。
「炭化水素基」とは、炭素原子及び水素原子から構成された基のことを表し、脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基が該当する。
「脂肪族炭化水素基」とは、炭素原子及び水素原子から構成された非環式又は環式の炭化水素基であって、芳香族構造を有さない基を表す。脂肪族炭化水素基には、直鎖状、分岐状、環状のものが挙げられ、好ましくは、直鎖状、環状のものであり、より好ましくは直鎖状のものである。直鎖状、環状である方が、溶剤と親和力が高く、フッ素系樹脂粒子の分散安定性が良好となる。
また、「芳香族炭化水素基」とは、炭素原子及び水素原子から構成された芳香族構造を有する炭化水素基を表す。
【0103】
脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。脂肪族炭化水素基の炭素数に特に制限はないが、アルキル基は通常1以上、アルケニル基及びアルキニル基は通常2以上である。一方、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基ともに、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、特に好ましくは6以下である。上記炭素数の範囲とすることで、高い溶媒親和性が得られる。
【0104】
芳香族炭化水素基としては、アリール基、アラルキル基が挙げられる。芳香族炭化水素基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは炭素数6以上であり、一方、20以下が好ましく、12以下がより好ましい。上記範囲とすることで、溶解性及び電気特性に優れる。
【0105】
炭化水素基の具体例として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、i-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基等の炭素数1~5のアルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基等の炭素数2~5のアルケニル基;
エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基等の炭素数2~5のアルキニル基;等が挙げられる。
【0106】
また、炭化水素基の具体例として、アリール基、アラルキル基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、n-プロピルフェニル基、i-プロピルフェニル基、n-ブチルフェニル基、sec-ブチルフェニル基、i-ブチルフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ナフチル基、アントレセン基、ビフェニル基、ピレン基等のアリール基;
ベンジル基、α-メチルベンジル基、1-メチル-1-フェニルエチル基、フェネチル基、2-フェニルプロピル基、2-メチル-2-フェニルプロピル基、3-フェニルプロピル基、3-フェニルブチル基、3-メチル-3-フェニルブチル基、4-フェニルブチル基、5-フェニルペンチル基、6-フェニルヘキシル基等の炭素数7~12のアラルキル基等;等が挙げられる。
【0107】
特に好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基としては、フッ素系樹脂粒子の分散性の観点から、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等のアルキル基;ビニル基、1-プロペニル基等のアルケニル基;エチニル基、1-プロピニル基等のアルキニル基;等が挙げられる。
【0108】
また、特に好ましくは、アリール基、アラルキル基としては、フッ素系樹脂粒子の分散性の観点から、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基、tert-ブチルフェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、3-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基等のアラルキル基;等が挙げられる。
【0109】
中でも、更に好ましくは、電気特性の観点、フッ素系樹脂粒子の分散性の観点から、炭化水素基として、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基等であり、最も好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基又はベンジル基である。
【0110】
また、R1に関しては、水素原子が最も好ましい。
上記の基であれば、共重合体Aの溶解性と反応性を両立できる。
【0111】
1-1-12-2.X1、X2、R1及びR2における置換基
X1、X2、R1及びR2は上記した基であるが、該基は置換基を有していてもよい。
該置換基としては、炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン基等が挙げられる。
ここで、炭化水素基は、「1-1-12-1.」に記載した炭化水素基と同義である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、片末端アルコシキポリエチレングリコキシ基、片末端アルコキシポリプロピレングリコキシ基等が挙げられる。ハロゲン基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基が挙げられる。
【0112】
また、該置換基としては、他にも、シアノ基、アシルオキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリル基、水酸基、アミノ基、シロキサン基、親水性若しくはイオン性を示す基、等も挙げられる。
該アシルオキシ基としては、アセテート基、プロピオネート基、スクシネート基、マロネート基、フタレート基、2-ヒドロキシエチル-フタレート基、ベンゾエート基、ナフトエート基等が挙げられる。該アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ベンジルアルコキシカルボキル基等が挙げられる。該アミノ基としては、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等が挙げられる。
【0113】
電気特性の観点から、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシ基;アセテート基、プロピオネート基、フタレート基等のアシルオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルアルコキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;等が好ましい。
【0114】
1-1-12-3.R2における複素環基について
上記R2の「置換基を有してもよい複素環基」の「複素環」としては、例えば、炭素数2~18の複素環が挙げられる。
該複素環基としては、芳香族複素環基、環状エーテル基、環状アミノ基、環状チオエーテル基等が挙げられる。複素環基の具体例として、フラニル基、ピローリル基、ピリジニル基、チオフェニル基、オキシラニル基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基、テトラヒドロチオフェニル基等が挙げられる。電気特性の観点から、フラニル基、チオフェニル基、テトラヒドロフラニル基が好ましい。
【0115】
複素環基における「置換基」としては、「1-1-12-2.」に記載した置換基と同義のものが挙げられる。該置換基としては、例えば、炭化水素基、アルコキシ基、ハロゲン基等が挙げられる。
【0116】
1-1-12-4.式(1)について
上記X1、X2は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基、又は、前記式(2)で表される基である。反応性及び分散性の観点から、X1又はX2は上記式(2)で表される基であることが好ましい。
すなわち、X1とX2とが独立して上記した2種の基の何れかであってもよく、X2だけに関しても、式(1)におけるn個の繰り返し単位ごとに、それぞれ独立に前記した基でもよく、互いに異なっていてもよい。
【0117】
(n個の)繰り返し単位全体において(式(1)で表される構造由来の部位全体に対して)、X2が式(2)で表されるもの(繰り返し単位)の占める割合は、60モル%以上が好ましく、80モル%以上が特に好ましい。
【0118】
反応性及び分散性の観点から、X1又はX2は、上記式(2)で表される基であること(X2については、n個の繰り返し単位の全てが上記式(2)で表される基であること)がより好ましい。
更に、反応性及び分散性の観点から、X1及びX2は、前記式(2)で表される基であることが特に好ましい。
【0119】
合成上の観点から、式(1)中の繰返し単位におけるR1の半数以上が炭化水素基であることが好ましい。
【0120】
式(1)における「n」は、2以上の整数であり、3以上が好ましく、5以上が更に好ましく、10以上が特に好ましい。一方、上限に特に限定はないが、通常1000以下であり、800以下が好ましく、500以下がより好ましく、200以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、良好な分散性となる。
【0121】
前記式(1)で表される構造の重量平均分子量(Mw)に特に制限はないが、通常2,000以上が好ましく、3,000以上が特に好ましい。一方、20,000以下が好ましく、15,000以下が特に好ましい。
上記範囲の分子量とすることにより、良好な溶媒親和性が得られ、かつ、他の結着樹脂と相溶性が良く平滑な塗膜が得られる。
本発明における重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレンを基準物質とするゲル浸透クロマトグラフ(GPC)による重量平均分子量をいう。
【0122】
1-1-12-5.式(3)のYについて
Yは単結合又は2価の基である。
該「2価の基」は、2価の基であれば特に制限はないが、2価の炭化水素基、エーテル基を含む2価の基、エステル基を含む2価の基、炭化水素基とエーテル基を含む2価の基、炭化水素基とエステル基を含む2価の基、「炭化水素基、エーテル基及びエステル基を含む2価の基」等が挙げられる。
2価の炭化水素基としては、「1-1-12-1.X1、X2、R1及びR2における炭化水素基」における炭化水素基から水素原子を1つ除いて誘導される2価の基が該当する。
【0123】
2価の炭化水素基の好ましい具体例として、アルキレン基、2価の芳香族基、エーテル基を含む2価の基、エステル基を含む2価の基等が挙げられる。
上記アルキレン基としては、直鎖状、分岐状、脂環状の炭化水素基が挙げられる。直鎖状の基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等、分岐状の基としてはメチルエチレン基、メチルトリメチレン基、ジメチルトリメチレン基等、脂環状の基としてはシクロへキシレン基、1,4-ジメチレンシクロヘキサン基等のアルキレン基が挙げられる。
構造の元となる(メタ)アクリレートの安定性及び反応性の観点から、直鎖状のアルキレン基が好ましく、製造上の簡便性から、炭素数1~3のアルキレン基が特に好ましい。
【0124】
前記2価の芳香族基としては、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基等が挙げられる。
エーテル基を含む2価の基としては、-[(CH2)lO]m-(lは、1~10の整数、mは1~100の整数を表す。)等が挙げられる。
前記エステル基を含む2価の基としては、-R’COOR”-(R’、R”はそれぞれ独立に2価の炭化水素基を表す)等が挙げられる。
置換基としては、「1-1-12-2.X1、X2、R1及びR2における置換基における置換基」と同様のものが挙げられる。
【0125】
1-1-12-6.式(3)のRfについて
RfはC-F結合を有する基であって、特に制限はなく任意の基を使用することができる。C-F結合を有する基は、「1-1-12-1.X1、X2、R1及びR2における炭化水素基」における炭化水素基のC-H結合の一部又は全部をC-F結合に置き換えた基が挙げられる。
【0126】
具体的には、フルオロアルキル基、フルオロアルケニル基、フルオロアルキニル基、フルオロフェニル基、フルオロアリール基、フルオロアラルキル基が挙げられる。
C-F結合を有する基の炭素数に特に制限はないが、フルオロアルキル基の場合、通常1以上、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、一方、通常6以下である。フルオロアルケニル基の場合、通常2以上、好ましくは3以上であり、一方、通常7以下、好ましくは6以下である。フルオロアルキニル基の場合、通常2以上、好ましくは3以上であり、一方、通常7以下、好ましくは6以下である。
上記範囲であることにより、特に良好なフッ素系樹脂粒子の分散性と良好な電気特性が得られる。
【0127】
フルオロアルキル基の具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、テトラフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
また、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフフルオロn-ブチル基、パーフルオロn-ペンチル基、パーフルオロn-ヘキシル基、パーフルオロiso-プロピル基、パーフルオロiso-ブチル基、パーフルオロtert-ブチル基、パーフルオロsec-ブチル基、パーフルオロiso-ペンチル基、パーフルオロiso-ヘキシル基、パーフルオロシクロペンチル基、パーフルオロシクロヘキシル基等のパーフルオロ(シクロ)アルキル基が挙げられる。
また、2H-テトラフルオロエチル基、3H-ヘキサフルオロプロピル基、1H-1-(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル基、2H-ヘキサフルオロプロピル基、4H-オクタフルオロブチル基、6H-ドデカフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0128】
Rfは、炭素数4以上6以下の直鎖状のパーフルオロアルキル基であることが、特に良好なフッ素系樹脂粒子の分散性と良好な電気特性が得られる点から好ましい。
【0129】
電気特性の観点から、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフフルオロn-ブチル基、パーフルオロn-ペンチル基、パーフルオロn-ヘキシル基が好ましく、フッ素系樹脂粒子の分散性の観点から、パーフフルオロn-ブチル基、パーフルオロn-ペンチル基、パーフルオロn-ヘキシル基が特に好ましい。
【0130】
Rfはヘテロ原子を有していてもよい。ヘテロ原子の具体例としては、窒素、酸素、硫黄、リン等が挙げられ、好ましくは酸素又は硫黄であり、より好ましくは酸素である。
ヘテロ原子を有する基の具体例を以下に示す。
【0131】
【0132】
上記のヘテロ原子を有する基の具体例のうち、好ましいものを以下に示す。
【0133】
【0134】
Rfがヘテロ原子を有している場合、更に2価の炭化水素基を有していることが好ましい。2価の炭化水素基としては、好ましくは、アルキレン基、フルオロアルキレン基、アルケニレン基、フルオロアルケニレン基、アルキニレン基、フルオロアルキニレン基、アリーレン基、フルオロアリーレン基、アラルキレン基、フルオロアラルキレン基等が挙げられ、これらの中でも、アルキレン基又はフルオロアルキレン基がより好ましく、フルオロアルキレン基が特に好ましい。
【0135】
2価の炭化水素基の炭素数に特に制限はないが、通常1以上、好ましくは2以上である。一方、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下、特に好ましくは6以下、最も好ましくは4以下である。
上記範囲であることにより、良好な溶解性や電気特性が得られる。
【0136】
フルオロアルキレン基の具体例としては、パーフルオロメチレン基、パーフルオロエチレン基、パーフルオロ2-メチルエチレン基、パーフルオロ2-エチルエチレン基、パーフルオロ2-プロピルエチレン基、パーフルオロ2-ブチルエチレン基、パーフルオロトリメチレン基、パーフルオロテトラメチレン基、パーフルオロペンタメチレン基、パーフルオロヘキサメチレン基等が挙げられる。
溶解性の観点から、パーフルオロメチレン基、パーフルオロエチレン基、パーフルオロ2-メチルエチレン基が好ましい。
【0137】
Rfは、下記式(4)で表される構造が好ましい。
【0138】
【0139】
R41は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、又は、C-F結合を有する基の何れかを表し、R42はヘテロ原子を有する基を表し、R43はC-F結合を有する基を表す。
n41は1以上20以下の整数を表し、n42は0以上100以下の整数を表す。
上記の構造とすることで、ラジカル反応の反応性を高めることができ、共重合体Aを収率良く得ることができる。
【0140】
1-1-12-7.式(3)のR3について
式(3)中のR3はR1と同様のものが挙げられる。反応性の観点から、水素原子又はメチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0141】
1-1-12-8.式(3)について
式(3)で表される繰返し単位の元となるフッ素含有(メタ)アクリレートを具体的に記載すると、例えば、パーフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-プロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロtert-ブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロsec-ブチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロiso-ヘキシル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(パーフルオロエチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロプロピル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロペンチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロiso-プロピル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロiso-ブチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロtert-ブチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロsec-ブチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロiso-ペンチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロiso-ヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロシクロペンチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロエチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロプロピル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロペンチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロiso-プロピル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロiso-ブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロtert-ブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロsec-ブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロiso-ペンチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロiso-ヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロシクロペンチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロエチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロプロピル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロブチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロペンチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロiso-プロピル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロiso-ブチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロtert-ブチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロsec-ブチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロiso-ペンチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロiso-ヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロシクロペンチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロシクロヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロエチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロプロピル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロブチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロペンチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロヘキシル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロiso-プロピル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロiso-ブチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロtert-ブチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロsec-ブチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロiso-ペンチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロiso-ヘキシル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロシクロペンチル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(パーフルオロシクロヘキシル)ブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0142】
また、式(3)で表される繰返し単位の元となるフッ素含有(メタ)アクリレートとしては、具体的には、例えば、下記に構造式を示す(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0143】
【0144】
この中でも、(メタ)アクリレートの安定性、製造の簡便性の観点から、(パーフルオロエチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロプロピル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロペンチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロエチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロプロピル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロペンチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロエチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロプロピル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロブチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロペンチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0145】
また、フッ素系樹脂の分散性の観点から、(パーフルオロブチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロペンチル)メチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロペンチル)エチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロブチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロペンチル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(パーフルオロヘキシル)プロピル(メタ)アクリレート等がより好ましく、マクロモノマーとの反応性から、(パーフルオロブチル)メチルアクリレート、(パーフルオロペンチル)メチルアクリレート、(パーフルオロヘキシル)メチルアクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、2-(パーフルオロペンチル)エチルアクリレート、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート、3-(パーフルオロブチル)プロピルアクリレート、3-(パーフルオロペンチル)プロピルアクリレート、3-(パーフルオロヘキシル)プロピルアクリレート等が特に好ましい。
【0146】
上述したフッ素含有(メタ)アクリレート化合物は、必要に応じて複数の化合物を組み合わせて用いることも可能である。
【0147】
1-1-12-9.共重合体Aのその他の事項
前記共重合体Aの重量平均分子量(Mw)は、10,000以上が好ましく、15,000以上がより好ましい。一方、200,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。上記範囲の分子量とすることで、良好なフッ素系樹脂粒子の分散安定性が得られる。
前記共重合体Aの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnは、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上が更に好ましく、2.5以上が特に好ましい。一方、10.0以下が好ましく、7.5以下がより好ましく、5.0以下が特に好ましく、4.0以下が更に好ましい。上記範囲とすることで、フッ素系樹脂粒子の分散性が良好となる。
【0148】
前記共重合体Aに含まれる前記式(1)で表される構造由来の部位の含有量は、該共重合体A全体に対して、1質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。一方、80質量%以下が好ましく、60質量%以下が好ましく、50質量%以下が特に好ましい。上記範囲の含有量とすることで、良好な電気特性が得られる。
【0149】
一方、前記共重合体Aに含まれる前記(1)で表される構造由来の未反応原料の含有量は、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、電気特性が良好となる。
【0150】
前記共重合体Aに含まれる前記式(3)で表される繰返し単位の含有量は、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。一方、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が特に好ましい。上記範囲の含有量とすることで、良好なフッ素系樹脂粒子の分散安定性が得られる。
【0151】
一方、前記共重合体Aに含まれる前記(3)で表される繰返し単位の元となる未反応フッ素含有(メタ)アクリレートの含有量は、0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、良好な電気特性が得られる。
【0152】
前記共重合体Aは、他の単量体と共重合してもよい。他の単量体として、例えば、(メタ)アクリル酸モノマー、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、芳香族ビニルモノマー、アルキルビニルエーテルモノマー、ビニルエステルモノマー等が挙げられる。他の単量体としては、電気特性の観点から(メタ)アクリレートモノマー、芳香族ビニルモノマーが好ましく、フッ素系樹脂粒子の分散安定性の観点から、(メタ)アクリレートモノマーが特に好ましい。
本発明の共重合体Aにおける他の単量体の含有量としては、20質量%以下が好ましく、電気特性の観点から15質量%以下がより好ましく、フッ素系樹脂粒子の分散性の観点から10質量%以下がより好ましい。
【0153】
(メタ)アクリレートモノマーの具体例として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-イソプロピル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2-シアノエチル(メタ)アクリレート、2-ブロモエチル(メタ)アクリレート、2-クロロエチル(メタ)アクリレート、2,3-ジブロモプロピル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-トリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、メトキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレート、アントリルメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-スクシネートエチル(メタ)アクリレート、2-ヘキサヒドロフタルレートエチル(メタ)アクリレート、2-フタルレートエチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチル-3-ベンゾエートプロピル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、アントラセン(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、PMMAやポリスチレン、ポリエステル等に(メタ)アクリレート基を有するマクロモノマー等が挙げられる。
【0154】
電気特性の観点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチルメチル(メタ)アクリレート、PMMA又はポリスチレンに(メタ)アクリレート基を有するマクロモノマー等が好ましく、マクロモノマーとの反応性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、2-ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート等が特に好ましい。
【0155】
1-1-12-10.共重合体Aの製造方法
本発明の共重合体Aの製造方法は、前記式(1)で表されるマクロモノマー及び前記式(3)で表される繰返し単位の元となるフッ素含有(メタ)アクリレートを用いて製造されれば、その製造方法について特段の制約はないが、反応性の観点からラジカル重合による製造が好ましく、電気特性の観点から熱重合開始剤を用いた製造がより好ましい。
【0156】
<式(1)で表されるマクロモノマーの製造方法>
前記式(1)で表されるマクロモノマーは、公知の方法で製造できる。本発明におけるマクロモノマーの製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許4680352号明細書)、α-ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開第88/004304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(特開昭60-133007号公報、米国特許5147952号明細書)、熱分解による方法(特開平11-240854号公報)等が挙げられる。これらの中でも、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法及びα-ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法が好ましい。
【0157】
コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法、α-ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法の2つの中では、製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点でコバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。コバルト連鎖移動剤を用いて式(1)で表されるマクロモノマーを製造する方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法及び水系分散重合法が挙げられる。水系分散重合法としては、例えば、懸濁重合法及び乳化重合法が挙げられる。
【0158】
これらの中で、式(1)で表されるマクロモノマーの回収工程の簡略化の点から、水系分散重合法が好ましい。水系分散重合法では溶剤として、水のみ又は「水及び水溶性溶剤(例えばエタノール)との混合物」を使用してもよい。水系分散重合法で得られる式(1)で表されるマクロモノマーの粒状物は、例えば平均粒径が20~400μm、好ましくは50~200μm程度である。
【0159】
式(1)で表されるマクロモノマーを溶液重合法で得る際に使用される溶剤としては、例えば、トルエン等の炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素;アセトン等のケトン;メタノール等のアルコール;アセトニトリル等のニトリル;酢酸エチル等のエステル;エチレンカーボネート等のカーボネート;超臨界二酸化炭素等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0160】
<重合方法>
本発明の共重合体Aの製造は、前記式(1)で表されるマクロモノマー及び前記式(3)で表される繰返し単位の元となるフッ素含有(メタ)アクリレートを用い、ラジカル重合による製造が好ましい。
ラジカル重合による製造では、式(1)で表されるマクロモノマー及びフッ素含有(メタ)アクリレート等の反応性物質を有機溶剤に溶解させた後に熱重合開始剤を添加して、40~200℃に加熱して重合させることにより目的とする共重合体Aを得ることができる。重合反応の仕込み方法は、全ての原料を一括して仕込む方法や、開始剤やフッ素含有(メタ)アクリレートで表される単量体等少なくとも一つの原料を連続的に反応器中に供給する方法、全原料を連続供給し、同時に反応器から連続的に抜き出す方法等がある。これらのなかでもフッ素含有(メタ)アクリレートの単独重合を防ぐ観点から、フッ素含有(メタ)アクリレートを連続的に反応器中に供給する方法が好ましい。
【0161】
ラジカル重合に用いられる溶媒に特に制限はないが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。
【0162】
これらの溶剤の中で、重合時に揮発性の観点から、トルエン、キシレン、アニソール、ジメトキシエタン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N,N-ジメチルホルムアミドが好ましく、本発明の共重合体Aの溶解性の観点からアニソール、ジメトキシエタン、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが特に好ましい。これらは何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0163】
反応溶剤の使用量は、前記式(1)で表されるマクロモノマー及び前記式(3)で表される繰返し単位の元となるフッ素含有(メタ)アクリレート等の反応性物質の合計100質量部に対して、20質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、40質量部以上が特に好ましい。一方、500質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、100質量部以下が特に好ましい。上記範囲とすることにより、高分子量かつ均一な重合体を得ることができる。
【0164】
ラジカル重合で使用する重合開始剤は、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、レドックス型重合開始剤等、公知の重合開始剤を用いることができる。
【0165】
前記アゾ系化合物としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2-(tert-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等が挙げられる。
【0166】
前記有機過酸化物としては、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス(tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0167】
前記無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
【0168】
また、前記レドックス型重合開始剤としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたものを用いることができる。
【0169】
これらの重合開始剤の中で、残存物による電気特性等の影響の観点から、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキサイドが好ましい。
【0170】
重合開始剤は、式(1)で表されるマクロモノマー及び前記式(3)で表される繰返し単位の元となる(メタ)アクリレート等の反応性物質100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.10質量部以上が特に好ましい。一方、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、2質量部以下が特に好ましい。上記範囲とすることで、高分散性及び良好な電気特性となる。
【0171】
ラジカル反応に分子量調整や他官能基導入の目的に連鎖移動剤を用いてもよい。用いる連鎖移動剤としては、特に限定はないが、1-ブタンチオール、1-ヘキシルチオール、1-デカンチオール、チオグリコール2-エチルヘキシル等のチオール類;四臭化炭素、四塩化炭素等のハロゲンポリハロゲン化水素類;2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン等のα‐メチルスチレン二量体類;ナフトキノン類;等が挙げられる。
【0172】
反応温度は、使用する溶剤や重合開始剤に応じて適切に調節することができる。50~200℃が好ましく、60~90℃が特に好ましい。重合後の共重合体A含有溶液は、有機溶剤に溶解された溶液として使用するか、共重合体Aが不溶のアルコールその他有機溶媒中に析出させるか、共重合体Aが不溶の分散媒中で溶媒を留去するか、加熱、減圧等により溶媒を留去することにより取り出してもよい。
【0173】
共重合体Aを取り出した場合の乾燥は、通常共重合体Aの分解温度以下の温度で乾燥するが、好ましくは30℃以上、共重合体Aの溶融温度以下で乾燥することができる。このとき、減圧下で乾燥することが好ましい。
乾燥時間は残存溶媒等の不純物の純度が一定以下になるまでの時間以上行うことが好ましく、具体的には、残存溶媒が通常1000ppm以下、好ましくは300ppm以下、特に好ましくは100ppm以下になる時間以上乾燥する。
【0174】
1-2.フッ素系樹脂及びその分散
本発明の電子写真感光体は、フッ素系樹脂粒子を含有していてもよい。本発明における重合体は、フッ素系樹脂粒子の分散剤として用いることが可能である。上記フッ素系樹脂粒子としては、4フッ化エチレン樹脂、3フッ化塩化エチレン樹脂、6フッ化プロピレン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、2フッ化2塩化エチレン樹脂及びそれらの共重合体の中から1種又は2種以上を適宜選択するのが望ましい。特に、4フッ化エチレン樹脂、フッ化ビニリデン樹脂が好ましい。
【0175】
前記フッ素系樹脂粒子の平均一次粒径は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、特に好ましくは0.15μm以上である。一方、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは10μm以下、特に好ましくは1μm以下である。
平均一次粒径が0.1μm以上であると、分散時の凝集が抑制され安定的な分散液が得られる。一方、20μm以下であると、画質欠陥が抑制される。フッ素系樹脂の平均一次粒径は、例えば、FPAR-1000(大塚電子株式会社製)による動的光散乱法や、マイクロトラック(日機装株式会社製)によるレーザー回折・散乱法により測定される。
【0176】
フッ素系樹脂を分散する際に使用する本発明の共重合体の量は、フッ素系樹脂100質量部に対して、分散性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、3質量部以上が特に好ましい。一方で、電気特性、及び、塗膜にする際の他の結着樹脂との相分離による成膜性低下抑止の観点から、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0177】
フッ素系樹脂を分散時に使用する溶媒としては非水系溶剤が好ましく、例として、キシレン、トルエン、シクロヘキサン等の炭化水素溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;テトラヒドロフラン、アニソール、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、ジオキソラン、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル溶剤;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n-アミル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル溶剤;n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、シクロヘキサノール、2-エチルヘキサノール、3-メチル-3-メトキシブタノール等のアルコール溶剤;等が挙げられる。
フッ素系樹脂分散剤の溶解性、電気特性の影響の観点から、トルエン、キシレン、アニソール、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタンが好ましい。これらの溶剤を、単独で使用してもよく、複数種混合して使用してもよい。
【0178】
フッ素系樹脂の分散液の調製は、フッ素系樹脂、非水系液状媒体及び本発明の共重合体を混合した後に、超音波、ペイントシェーカー、ビーズミル、ボールミル、各種ミキサー、又は各種高圧湿式分散機等の分散装置を用いて、フッ素系樹脂を分散させることにより行うことができる。
【0179】
1-3.電子写真感光体の層構成等
本発明の重合体が使用される電子写真感光体は、導電性支持体上に設けた感光層を有する。
【0180】
感光層の具体的な構成としては、例えば、導電性支持体上に、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層と電荷輸送物質及び結着樹脂を主成分とする電荷輸送層とを積層した積層型感光体;導電性支持体上に、電荷輸送物質及び結着樹脂を含有する層中に電荷発生物質を分散させた感光層を有する分散型(単層型)感光体等が挙げられる。
また、感光体の最表面に保護層を有してもよい。前記重合体や前記フッ素系樹脂粒子は、通常、最表面層に使用され、積層型感光体の場合は電荷輸送層への使用が好ましく、単層型感光体の場合は該単層への使用が好ましく、保護層を有する感光体の場合は該保護層への使用が好ましい。
【0181】
<導電性支持体>
導電性支持体について特に制限はないが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫等の導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。導電性支持体の形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状等のものが用いられる。更には、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性等の制御や欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものを用いてもよい。
【0182】
また、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いてもよい。陽極酸化被膜を施した場合には、公知の方法により封孔処理を施すことが好ましい。
【0183】
支持体表面は、平滑であってもよいし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていてもよい。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでもよい。また、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
【0184】
<下引き層>
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けてもよい。下引き層としては、樹脂、及び樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したもの等が用いられる。また、下引き層は、単一層からなるものであっても、複数層からなるものであってもよい。下引き層には、公知の酸化防止剤等、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させて用いてもよい。その膜厚は、電子写真感光体の電気特性、強露光特性、画像特性、繰り返し特性、及び製造時の塗布性を向上させる観点から、通常は0.01μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常30μm以下、好ましくは20μm以下である。
【0185】
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子等が挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いてもよいし、複数の種類の粒子を混合して用いてもよい。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていてもよい。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスの何れも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていてもよい。
【0186】
また、金属酸化物粒子の粒径としては種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の点から、その平均一次粒径は、10nm以上100nm以下が好ましく、特に10nm以上50nm以下が好ましい。この平均一次粒径は、TEM写真等から得ることができる。
【0187】
下引き層は、金属酸化物粒子を結着樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられる結着樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタンアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤等の公知の結着樹脂が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0188】
また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を表すことから好ましい。
下引き層に用いられる結着樹脂に対する無機粒子の使用比率は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、結着樹脂に対して、通常は10質量%以上、500質量%以下の範囲で使用することが好ましい。
【0189】
<感光層>
感光層の形式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、結着樹脂中に分散された単層型と、電荷発生物質が結着樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送物質が結着樹脂中に分散された電荷輸送層の二層からなる機能分離型(積層型)とが挙げられるが、何れの形式であってもよい。積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、何れを採用することも可能であるが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
【0190】
[電荷発生層-積層型]
積層型感光体(機能分離型感光体)の場合、電荷発生層は、電荷発生物質を結着樹脂で結着することにより形成される。その膜厚は通常0.1μm以上、好ましくは0.15μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは0.6μm以下の範囲である。
【0191】
電荷発生物質としては、セレニウム及びその合金;硫化カドミウム等の無機系光導電材料;有機顔料等の有機系光導電材料;等が挙げられるが、有機系光導電材料が好ましく、中でも特に有機顔料が好ましい。
有機顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム)顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。これらの中でも、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましい。電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、通常はこれらの有機顔料の微粒子を、各種の結着樹脂で結着した分散層の形で使用する。
【0192】
電荷発生物質として無金属フタロシアニン化合物、金属含有フタロシアニン化合物を用いた場合は、比較的長波長のレーザー光、例えば780nm近辺の波長を有するレーザー光に対して高感度の感光体が得られる。
また、モノアゾ、ジアゾ、トリスアゾ等のアゾ顔料を用いた場合には、白色光、660nm近辺の波長を有するレーザー光、又は、比較的短波長のレーザー光(例えば、450nm、400nm近辺の波長を有するレーザー光)に対して十分な感度を有する感光体を得ることができる。
【0193】
電荷発生物質として有機顔料を使用する場合、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましい。フタロシアニン顔料は、比較的長波長のレーザー光に対して高感度の感光体が得られる点で、また、アゾ顔料は、白色光及び比較的短波長のレーザー光に対し十分な感度を持つ点で、それぞれ優れている。
【0194】
電荷発生物質としてフタロシアニン顔料を使用する場合、具体的には無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、スズ、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム、アルミニウム等の金属又はその酸化物、ハロゲン化物、水酸化物、アルコキシド等の配位したフタロシアニン類の各結晶型を持ったもの、酸素原子等を架橋原子として用いたフタロシアニンダイマー類等が使用される。特に、感度の高い結晶型であるX型、τ型無金属フタロシアニン、A型(別称β型)、B型(別称α型)、D型(別称Y型)等のチタニルフタロシアニン(別称:オキシチタニウムフタロシアニン)、バナジルフタロシアニン、クロロインジウムフタロシアニン、ヒドロキシインジウムフタロシアニン、II型等のクロロガリウムフタロシアニン、V型等のヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型、I型等のμ-オキソ-ガリウムフタロシアニン二量体、II型等のμ-オキソ-アルミニウムフタロシアニン二量体が好適である。
【0195】
また、これらフタロシアニンの中でも、A型(別称β型)、B型(別称α型)、及び粉末X線回折の回折角2θ(±0.2゜)が27.1゜若しくは27.3゜に明瞭なピークを表すことを特徴とするD型(Y型)チタニルフタロシアニン、II型クロロガリウムフタロシアニン、V型及び28.1゜に最も強いピークを有すること、また26.2゜にピークを持たず28.1゜に明瞭なピークを有し、かつ25.9゜の半値幅Wが0.1゜≦W≦0.4゜であることを特徴とするヒドロキシガリウムフタロシアニン、G型μ-オキソ-ガリウムフタロシアニン二量体等が特に好ましい。これらの中でも、D型(Y型)チタニルフタロシアニンが良好な感度を表すため好ましい。
【0196】
フタロシアニン化合物は単一の化合物のものを用いてもよいし、幾つかの混合又は混晶状態のものを用いてもよい。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態に置ける混合状態としては、それぞれの構成要素を後から混合したものを用いてもよいし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでもよい。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。混晶状態を生じさせるためには、特開平10-48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に磨砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
【0197】
電荷発生層に用いる結着樹脂は特に制限されないが、例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アルキッド樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマー等が挙げられる。これらの結着樹脂は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の組み合わせで混合して用いてもよい。
【0198】
電荷発生層において、結着樹脂と電荷発生物質との配合比(質量)は、結着樹脂100質量部に対して電荷発生物質が通常10質量部以上、好ましくは30質量部以上、また、通常1000質量部以下、好ましくは500質量部以下の範囲である。
【0199】
[電荷輸送層-積層型]
積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有するとともに、通常は結着樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。電荷輸送層は、単一の層から成ってもよいし、構成成分又は組成比の異なる複数の層を重ねたものでもよい。その膜厚は、通常、5μm~50μm、好ましくは10μm~45μmである。
【0200】
電荷輸送物質としては特に限定されず、任意の物質を用いることが可能である。電荷輸送物質の例としては、2,4,7-トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、又はこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。
【0201】
これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送物質は単独で用いてもよいし、いくつかを混合してもよい。
電荷輸送物質の好適な構造の具体例を以下に表す。
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
電荷輸送層は、電荷輸送物質等を結着樹脂により結着することにより形成される。結着樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルポリカーボネート、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂等が挙げられる。これら樹脂の中でも感光体としての光減衰特性、機械強度の面から、ポリカーボネート樹脂又はポリエステル樹脂が好ましい。
【0206】
前記結着樹脂に好適な繰り返し構造単位の具体例を以下に示す。これら具体例は例示のために示したものであり、本発明の趣旨に反しない限りはいかなる公知の結着樹脂を混合して用いてもよい。
【0207】
【0208】
結着樹脂の粘度平均分子量は、機械的強度の観点から、通常20,000以上、好ましくは30,000以上、より好ましくは40,000以上、また、感光層形成のための塗布液作製の観点から、通常150,000以下、好ましくは120,000以下、より好ましくは100,000以下である。
【0209】
結着樹脂全体と電荷輸送物質との割合としては、通常同一層中の結着樹脂100質量部に対して電荷輸送物質を10質量部以上の比率で使用する。中でも、残留電位低減の観点から20質量部以上が好ましく、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から30質量部以上がより好ましい。一方、通常電荷輸送物質を150質量部以下、感光層の熱安定性の観点から120質量部以下の比率で使用する。中でも、電荷輸送物質と結着樹脂との相溶性の観点から100質量部以下が好ましく、耐摩耗性の観点から80質量部以下がより好ましい。
【0210】
電荷輸送層に含まれる重合体の含有量は結着樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上であり、0.01質量部以上が好ましく0.1質量部以上がより好ましい。一方で、通常10質量部以下であり、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。上記範囲とすることで、良好な電気特性及び平滑な塗膜が得られる。
【0211】
フッ素系樹脂粒子を用いる場合、電荷輸送層に含まれるフッ素系樹脂の種類は、「1-2.フッ素系樹脂及びその分散」で挙げたものと同様のものが使用できる。電荷輸送層に含まれるフッ素系樹脂の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、通常1質量部以上であり、すべり性及び耐摩耗性の観点から、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。一方で、通常30質量部以下であり、塗布液の安定性及び電気特性の観点から、25質量部以下がより好ましい。
【0212】
電荷輸送層に含まれる本発明の重合体の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、通常0.01質量部以上であり、分散性の観点から、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。一方で、通常3質量部以下であり、電気特性の観点から、2質量部以下がより好ましい。
【0213】
なお、電荷輸送層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、染料、顔料、レベリング剤等の添加剤を含有させてもよい。酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物等が挙げられる。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物等が挙げられる。
【0214】
可塑剤の分子量は、150以上が好ましく、170以上がより好ましく、200以上が更に好ましく、一方、400以下が好ましく、380以下がより好ましく、350以下が更に好ましい。上記範囲内の分子量とすることで、成膜/乾燥時における昇華を抑えつつ、バインダー樹脂と馴染むことにより耐クラック性や耐ガス性を向上させることが可能となる。
これらの可塑剤は単独で用いてもよいし、いくつかを混合してもよい。可塑剤の好適な構造の具体例を以下に表す。
【0215】
【0216】
これらの可塑剤の中でも、好ましくはAD-2、AD-4、AD-5、AD-6、AD-8、AD-10、AD-11、AD-13であり、より好ましくは、AD-2、AD-6、AD-8、AD-10、AD-11、AD-13である。上記の可塑剤であれば、電気特性を悪化させることなく、耐ガス性や耐クラック性を向上させることができる。
酸化防止剤の例としては、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、トリアルキルアミン、ジアルキルアリールアミン等が挙げられる。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物等が挙げられる。
【0217】
電荷輸送層には、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、アルミナ、シリカ等の無機粒子、シリコーン粒子、ポリエチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋(メタ)アクリレート粒子等の有機粒子等を含有させてもよい。
【0218】
[単層型感光層]
単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質に加えて、積層型感光体の電荷輸送層と同様に、膜強度確保のために結着樹脂を使用して形成する。具体的には、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種結着樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。電荷輸送物質として、正孔輸送物質と電子輸送物質を併用することが好ましい。正孔輸送物質としては、電荷輸送層で例示した電荷輸送物質が使用でき、電子輸送物質としては、ジフェノキノン系化合物やジナフトキノン系化合物が使用できる。
【0219】
電荷発生物質、電荷輸送物質、フッ素系樹脂及び結着樹脂の種類並びにこれらの使用比率は、積層型感光体の電荷輸送層について説明したものと同様である。これらの電荷輸送物質及び結着樹脂からなる電荷輸送媒体中に、更に電荷発生物質が分散される。単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を充分に小さくする必要がある。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
【0220】
単層型感光層内に分散される電荷発生物質の量は、少な過ぎると充分な感度が得られない一方で、多過ぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害があることから、単層型感光層全体に対して通常0.5質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常50質量%以下、好ましくは20質量%以下の範囲で使用される。
【0221】
また、単層型感光層における結着樹脂と電荷発生物質との使用比率は、結着樹脂100質量部に対して電荷発生物質が通常0.1質量部以上、好ましくは1質量部以上、また、通常30質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
【0222】
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲である。この場合にも成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコーンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていてもよい。
【0223】
<その他の機能層>
積層型感光体、単層型感光体ともに、感光層又はそれを構成する各層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させる目的で、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤等の添加物を含有させてもよい。また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層に、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂等、又はこれらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を、表面層に含有させてもよい。或いは、これらの樹脂粒子や本発明の重合体とフッ素系樹脂粒子を含む層を新たに表面層としたオーバーコート層を形成してもよい。更に必要に応じて、バリアー層、接着層、ブロッキング層等の中間層、透明絶縁層等、電気特性、機械特性の改良のための層を有していてもよい。
【0224】
<各層の形成方法>
これらの感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を、支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
【0225】
塗布液の作製に用いられる溶媒又は分散媒に特に制限はないが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-メトキシエタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2-ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類;n-ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類;等が挙げられる。
これらの溶剤の中で、環境配慮の観点から、非ハロゲン系溶剤が好ましく、溶解性の観点から、トルエン、キシレン、アニソール、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンが特に好ましい。これらは何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0226】
溶媒又は分散媒の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶媒・分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
例えば、単層型感光体、及び機能分離型感光体の電荷輸送層の場合には、塗布液の固形分濃度を、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上、また、通常40質量%以下、好ましくは35質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度を、通常10cps以上、好ましくは50cps以上、また、通常500cps以下、好ましくは400cps以下の範囲とする。
また、積層型感光体の電荷発生層の場合には、塗布液の固形分濃度は、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、また、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度は、通常0.01cps以上、好ましくは0.1cps以上、また、通常20cps以下、好ましくは10cps以下の範囲とする。
【0227】
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
【0228】
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行なってもよい。
【0229】
2.電子写真感光体カートリッジ及び画像形成装置
次に、本発明の電子写真感光体を用いた電子写真感光体カートリッジや画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を表す
図1を用いて説明する。ただし、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
【0230】
本発明は、前記の電子写真感光体、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置でもある。
図1に、かかる画像形成装置の一例を示す。
図1の画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3及び現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5、クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
【0231】
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、
図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
【0232】
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、例えば、電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
【0233】
本発明は、前記の電子写真感光体を備えたことを特徴とする電子写真感光体カートリッジでもある。
また、本発明は、前記の電子写真感光体、並びに、該電子写真感光体を帯電させる帯電装置、該帯電した電子写真感光体を露光させて静電潜像を形成する露光装置、及び、該電子写真感光体上に形成された静電潜像を現像する現像装置よりなる群から選ばれる少なくとも1つの装置を備えたことを特徴とする電子写真感光体カートリッジでもある。
【0234】
3.作用・原理
前記した本発明の重合体は、有機溶媒に対する溶解性に優れ、フッ素系樹脂粒子の分散性に優れ、かつ電気特性が良好であるため、耐摩耗性及び電気特性に優れた電子写真感光体の提供が可能となった。
この溶解性や分散性の向上の理由については明らかではなく、本発明は、以下の作用・原理の及ぶ範囲に限定されるものではないが、以下のように考えられる。
【0235】
即ち、前記式(1)等で表される構造を有するマクロモノマーは、特殊な反応活性を有し、他単量体との重合はリビングラジカル反応のように進行させることから(Yamadaらの文献等;Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol.41, 645-654(2003))、該マクロモノマーを用いて得られる重合体は、他の「(メタ)アクリレートを有するマクロモノマー」を用いて得られる重合体よりも、フッ素系樹脂粒子との相溶性部位と有機溶剤との相溶性部位がそれぞれ重合体内において局在化することにより、優れた界面活性機能を発現したためと考えられる。
【0236】
また、本発明の重合体は、フッ素系樹脂粒子に強く作用することから、分散液中においても遊離量が少ないため、優れた電気特性を有する塗膜が得られたと考えられる。
また、本発明の重合体及びフッ素系樹脂粒子を含有する電子写真感光体は、塗膜中にフッ素系樹脂粒子が均一に分散されていることから、電子写真感光体として耐摩耗性に優れるようになったと考えられる。
【実施例】
【0237】
以下に、本発明の具体的態様を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0238】
[マクロモノマーの製造]
<重合分散剤(I)の合成>
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900質量部、メタクリル酸2-スルホエチルナトリウム60質量部、メタクリル酸カリウム10質量部、メチルメタクリレート12質量部を加えて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、重合温度50℃に昇温し、重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08質量部を添加し、更に重合温度60℃に昇温した。
該重合開始剤の添加と同時に、滴下ポンプを使用して、メチルメタクリレート(以下、MMA)を0.24質量部/分の速度で75分間連続的に滴下し、重合温度60℃で6時間保持した後、室温に冷却して重合分散剤(I)を得た。この重合分散剤(I)の固形分は10質量%あった。
【0239】
<連鎖移動剤(c)の合成>
撹拌装置を備えた反応容器に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬株式会社製、和光特級)2.00g(8.03mmol)及びジフェニルグリオキシム(東京化成株式会社製、EPグレード)3.86g(16.1mmol)及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル100mlを入れ、室温で2時間撹拌した。
次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(東京化成株式会社製、EPグレード)20mlを加え、更に6時間撹拌した。反応物を濾過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、100MPa以下で、20℃において12時間乾燥し、連鎖移動剤(c)5.02g(7.93mmol、収率99質量%)を得た。
【0240】
<製造例1>マクロモノマー(1-1)の製造
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145質量部、硫酸ナトリウム(Na2SO4)0.1質量部及び重合分散剤(I)(固形分10質量%)0.25質量部を入れて撹拌して、均一な水溶液とした。
次に、MMA100質量部、連鎖移動剤(c)0.0022質量部及び1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(日油株式会社製、商品名:パーオクタO)0.4質量部を加え、分散液とした。
この後、重合装置内を十分に窒素置換し、分散液を80℃に昇温してから4時間保持し、更に、92℃に昇温して2時間保持した。
その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む懸濁液を得た。この懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー(1-1)を得た。
マクロモノマー(1-1)のMwは6,000、Mnは3,700、平均繰返し数nは35であった。マクロモノマー(1-1)の構造式を以下に表す。
【0241】
【0242】
<製造例2>マクロモノマー(1-2)の製造
製造例1において、連鎖移動剤(c)の量を0.0012質量部、パーオクタOの量を0.27質量部にそれぞれ変更した以外は製造例1と同様の操作を行ない、マクロモノマー(1-2)を得た。マクロモノマー(1-2)のMwは12,600、Mnは5,900、平均繰返し数nは58であった。マクロモノマー(1-2)の構造式を以下に表す。
【0243】
【0244】
[共重合体の合成]
<製造例3>共重合体(A-1)の製造
製造例1で製造したマクロモノマー(1-1)を50質量部、酢酸ブチル40質量部を反応容器に仕込んだ後、反応容器内を窒素置換した。窒素をフローしながら70℃へ加熱し溶解させた後に、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)(東京化成工業株式会社製)(以下、AIBN)0.125質量部を添加し3分間撹拌を行った。
続いて、2-(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(東京化成工業株式会社製)(以下、「フッ素含有アクリレート(3-1)」と記載する)50質量部を6.5時間かけて滴下した後、6時間撹拌を行った。
酢酸ブチル210質量部で希釈した後、90℃に昇温し、1時間撹拌を行い、続いて、固形分濃度が40質量%となるように酢酸ブチルで調整し共重合体(A-1)の溶液を得た。
得られた共重合体溶液を一部乾燥し、重量平均分子量(Mw)を測定したところ、Mwは19,100、Mw/Mnは2.8であった。
【0245】
[重量平均分子量(Mw)の測定方法]
異なる分子量の分子を分離できるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)(カラムは東ソー株式会社製で製品名TSKGEL、GMHXL、温度40℃、溶出溶媒はTHF)で、製造したサンプルを分子量ごとに溶出し、分子量分布を求めた。
予め分子量既知のポリスチレン標準物質から校正曲線を得ておき、この共重合体の分子量分布と比較して、共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)との比Mw/Mnを求めた。
【0246】
<製造例4>共重合体(A-2)の製造
「マクロモノマー(1-1)50質量部、フッ素含有アクリレート(3-1)50質量部」の代わりに、「マクロモノマー(1-1)45質量部、フッ素含有アクリレート(3-1)55質量部」を用いた以外は製造例3と同等に操作し、共重合体(A-2)の40質量%溶液を得た。
得られた共重合体溶液を一部乾燥し、重量平均分子量(Mw)を測定したところ、Mwは24,100、Mw/Mnは3.2であった。
【0247】
<製造例5>共重合体(A-3)の製造
「マクロモノマー(1-1)50質量部、フッ素含有アクリレート(3-1)50質量部」の代わりに、「マクロモノマー(1-1)50質量部、2-(パーフルオロブチル)エチルアクリレート(以下、「フッ素含有アクリレート(3-2)」と記載する)50質量部」を用いた以外は製造例3と同等に操作し、共重合体(A-3)の40質量%溶液を得た。
得られた共重合体溶液を一部乾燥し、重量平均分子量(Mw)を測定したところ、Mwは44,300、Mw/Mnは3.2であった。
【0248】
<製造例6>共重合体(A-4)の製造
マクロモノマー(1-1)を45質量部、酢酸ブチル40質量部を反応容器に仕込んだ後、反応容器内を窒素置換した。窒素をフローしながら70℃へ加熱し溶解させた後、AIBN0.125質量部を添加し3分間撹拌を行った。
続いて、別途調製したフッ素含有アクリレート(3-1)45質量部、ベンジルアクリレート(東京化成工業株式会社製)(以下、(4-1))5質量部及び2-フェノキシエチルアクリレート(東京化成工業株式会社製)(以下、(4-2))5質量部の混合液を6.5時間かけて滴下した後、6時間撹拌を行った。
酢酸ブチル210質量部で希釈した後、90℃に昇温し1時間撹拌を行い、続いて固形分濃度が40質量%となるように酢酸ブチルで調整し共重合体(A-4)の溶液を得た。得られた共重合体溶液を一部乾燥し、重量平均分子量(Mw)を測定したところ、Mwは41,800、Mw/Mnは3.8であった。
【0249】
<製造例7>共重合体(A-5)の製造
「マクロモノマー(1-1)45質量部、フッ素含有アクリレート(3-1)45質量部、(4-1)5質量部、(4-2)5質量部」の代わりに、「マクロモノマー(1-1)50質量部、フッ素含有アクリレート(3-1)40質量部、(4-1)5質量部、(4-2)5質量部」を用いた以外は製造例6と同等に操作し、共重合体(A-5)の40質量%溶液を得た。
得られた共重合体溶液を一部乾燥し、重量平均分子量(Mw)を測定したところ、Mwは42,000、Mw/Mnは3.5であった。
【0250】
<製造例8>共重合体(A-6)の製造
マクロモノマー(1-1)50質量部の代わりに、マクロモノマー(1-2)50質量部を用いた以外は製造例7と同等に操作し、共重合体(A-6)の40質量%溶液を得た。
得られた共重合体溶液を一部乾燥し、重量平均分子量(Mw)を測定したところ、88,400、Mw/Mnは3.8であった。
【0251】
共重合体(A-1)~(A-6)の組成及び分子量を表-1に示す。
【0252】
【0253】
(実施例1)
<PTFEのTHF分散液の作製>
製造例3で製造した共重合体(A-1)の40質量%溶液を1.25質量部(固形分として0.5質量部相当)計量し、テトラヒドロフラン90質量部で溶解させた後、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)粒子(株式会社喜多村製KTL-500F:1次粒子径0.3μm)10質量部を添加した。続いて、調製した溶液を発振周波数40kHz、高周波出力600Wの超音波条件で1時間分散し、固形分10質量%のPTFEのTHF分散液D1を作製した。
【0254】
[PTFEのTHF分散液における分散安定性評価]
上記PTFEのTHF分散液D1について、1晩静置することによりPTFE粒子の沈降具合から分散安定性評価を行った。結果を表-2に示す。
分散性の判定として、一晩静置後もほとんど沈降なしを○、PTFE粒子が一部沈降し、容器下部に沈降塊が有りを△、PTFE粒子の沈降多く、分散液の上澄みが透明を×とした。
【0255】
[PTFEの結着樹脂溶液における分散安定性評価]
製造例3で製造した共重合体(A-1)の40質量%溶液を2質量部(固形分として0.8質量部相当)計量し、テトラヒドロフラン180質量部で溶解させた後、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)粒子(株式会社喜多村製KTL-500F:一次粒子径0.3μm)20質量部を添加した。続いて、調製した溶液を発振周波数40kHz,高周波出力600Wの超音波条件で1時間分散し、固形分10質量%のPTFEのTHF分散液D2を作製した。
【0256】
結着樹脂であるポリカーボネート樹脂PC-Z(三菱ガス化学株式会社製ユピターゼPCZ-400、粘度平均分子量40,000)100質量部を、テトラヒドロフラン457質量部とトルエン154質量部との混合溶媒で溶解させた後に、上記PTFEのTHF分散液D2(分散直後の溶液)202質量部(PTFE20質量部に該当)を加え、1時間撹拌することによりPTFEの結着樹脂含有溶液を作製した。
【0257】
このPTFEの結着樹脂含有溶液について、1晩静置することによりPTFE粒子の沈降具合から分散安定性評価を行った。結果を表-2に示す。
分散性の判定として、一晩静置後もほとんど沈降なしを○、PTFE粒子が一部沈降し、容器下部に沈降塊が有りを△、PTFE粒子の沈降多く、分散液の上澄みが透明を×とした。
【0258】
[電気特性評価]
[感光体シートの作製]
下引き層用分散液の調製は以下の手法で行なった。即ち、平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機[株式会社カワタ社製「SMG300」]に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1-プロパノールのボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。
【0259】
該分散スラリーと、メタノール/1-プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、ε-カプロラクタム[下記式(F)で表される化合物]/ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(G)で表される化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(H)で表される化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(I)で表される化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(J)で表される化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1-プロパノール/トルエンの質量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比3/1で含有する、固形分濃度18.0質量%の下引き層分散液とした。
【0260】
【0261】
電荷発生層用塗布液の調製は、以下の手法で行った。CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)が27.3゜に強い回折ピークを示し、
図2に示す粉末X線回折スペクトルを有するオキシチタニウムフタロシアニン10質量部を1,2-ジメトキシエタン150質量部に加え、サンドグラインドミルにて粉砕分散処理により顔料分散液を作製した。こうして得られた顔料分散液160質量部と、ポリビニルブチラール(電気化学工業株式会社製、商品名#6000C)の5質量%1,2-ジメトキシエタン溶液100質量部と、適量の1,2-ジメトキシエタンとを混合して、最終的に固形分濃度4.0質量%の分散液を作製した。
【0262】
電荷輸送層用塗布液の調製は、以下の手法で行った。電荷輸送物質として、下記に表す構造を主成分とする、幾何異性体の化合物群からなる特開2002-080432号公報の実施例1に記載の方法で製造した混合物CTM1を50質量部、結着樹脂として下記に表す繰返し構造からなるPC-ZB(粘度平均分子量50,000)を100質量部、酸化防止剤(イルガノックス1076)4質量部、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05質量部を、テトラヒドロフラン290質量部とトルエン112質量部との混合溶媒で溶解させた後に、上記PTFEのTHF分散液(共重合体5質量部、分散直後の溶液)100質量部(PTFE10質量部に該当)を加え、1時間以上混合させることにより電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
【0263】
表面にアルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートシート上に、前記下引き層用分散液をバーコーターにより、乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように塗布し、乾燥させ下引き層を形成した。続いて電荷発生層用塗布液を、前記下引き層上に乾燥後の膜厚が0.4μmとなるようにワイアバーで塗布した後、乾燥して電荷発生層を形成した。
次に、電荷輸送用塗布液を前記電荷発生層上に、乾燥後の膜厚が25μmとなるようにアプリケーターを用いて塗布し、125℃で20分間乾燥して電荷輸送層を形成して、感光体シートを作製した。
【0264】
【0265】
【0266】
[繰返し使用における残留電位の評価]
電子写真学会測定標準に従って作製された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、電子写真学会編、コロナ社、404-405頁記載)を使用し、上記で作製した感光体シートをアルミニウム製ドラムに貼り付けて円筒状にし、アルミニウム製ドラムと感光体のアルミニウム基体との導通を取った上で、ドラムを一定回転数で回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行った。その際、初期表面電位を-700Vとし、露光は780nm、除電は660nmの単色光を用い、露光光を2.4μJ/cm2照射した時点の表面電位(残留電位:VL)を測定した。VL測定に際しては、露光から電位測定に要する時間を139msとした。
【0267】
また、上記のプロセスを5000回繰り返した後のVLを測定し、繰返し測定前後のVL差をΔVLとした。測定環境は、温度35℃、相対湿度85%下(H/H)で行った。VLの値が低いほど電気特性に優れ、ΔVLが小さい方が電気特性に優れる。結果を表-2に示す。
【0268】
(実施例2~6)
共重合体(A-1)の代わりに、表-2に示すように共重合体(A-2)~(A-6)を用いた以外は、実施例1と同様に実施した。評価結果を表-2に示す。
【0269】
(比較例1)
共重合体(A-1)の代わりに、以下に構造を示す、構造B-11及び構造B-12からなるフッ素化グラフトポリマー(B-1:Mw85,000、l:m=84:16(モル比)、n=30、(構造B-11):(構造B-12)=40:60(重量比))を用いた以外は実施例1と同様に実施した。評価結果を表-2に示す。
【0270】
【0271】
(比較例2)
共重合体(A-1)を用いない以外は、実施例1と同様に実施した。評価結果を表-2に示す。
【0272】
【0273】
表-2から明らかなように、本発明の共重合体を用いることにより、フッ素系樹脂粒子の溶剤に対する分散安定性及び結着樹脂溶液に対する分散安定性が優れる。また、その分散液を用いて作製した電子写真感光体は電気特性が優れていた。
一方、異なる構造からなるフッ素化グラフトポリマーを用いた場合(比較例1)、分散安定性は不十分であり、更にそれを用いた電子写真感光体の電気特性は劣っていた。
また、共重合体を添加しない場合は、フッ素系樹脂粒子の分散安定性が非常に悪く、塗膜に粒子塊起因の凹凸が発生した(比較例2)。
【0274】
<電子写真感光体ドラムの作製>
<下引き層形成用塗布液の製造>
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業株式会社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3質量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン株式会社製「TSL8117」)とを、ヘンシェルミキサーにて混合して得られた表面処理酸化チタン50質量部と、メタノール120質量部を混合してなる原料スラリー1kgを、直径約100μmのジルコニアビーズ(株式会社ニッカトー製「YTZ」)を分散メディアとして、ミル容積約0.15Lの寿工業株式会社製ウルトラアペックスミル(UAM-015型)を用い、ロータ周速10m/秒、液流量10kg/時間の液循環状態で1時間分散処理し、酸化チタン分散液を作製した。
【0275】
前記酸化チタン分散液と、メタノール/1-プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、前記感光体シート作製時の下引き層用分散液作製時に使用した同様のポリアミド樹脂のペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、出力1200Wの超音波発信器による超音波分散処理を1時間行い、更に孔径5μmのPTFE製メンブレンフィルター(アドバンテック製 マイテックス LC)により濾過し、表面処理酸化チタン/共重合ポリアミドを質量比が3/1であり、メタノール/1-プロパノール/トルエンの混合溶媒の質量比が7/1/2であって、含有する固形分の濃度が18.0質量%の下引き層形成用塗布液を作製した。
【0276】
<電荷発生層形成用塗布液の製造>
電荷発生物質として、
図2のCuKα特性X線によるX線回折スペクトルを示すオキシチタニウムフタロシアニン20質量部と1,2-ジメトキシエタン280質量部とを混合し、サンドグラインドミルで1時間粉砕して微粒化分散処理を行なった。
続いてこの微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業株式会社製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10質量部を、1,2-ジメトキシエタンの255質量部と4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノンの85質量部との混合液に溶解させて得られた結着液、及び、230質量部の1,2-ジメトキシエタンを混合して電荷発生層形成用塗布液Aを調製した。
【0277】
電荷発生物質として、
図3のCuKα特性X線によるX線回折スペクトルを示すオキシチタニウムフタロシアニン20質量部と1,2-ジメトキシエタン280質量部とを混合し、サンドグラインドミルで4時間粉砕して微粒化分散処理を行なった。
続いてこの微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業株式会社製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10質量部を、1,2-ジメトキシエタンの255質量部と4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノンの85質量部との混合液に溶解させて得られた結着液、及び、230質量部の1,2-ジメトキシエタンを混合して電荷発生層形成用塗布液Bを調製した。
【0278】
電荷発生層形成用塗布液Aと電荷発生層形成用塗布液Bを55:45の質量比で混合し、本実施例で用いる電荷発生層形成用塗布液を作製した。
【0279】
<電荷輸送層形成用塗布液の製造>
[塗布液C1]
製造例3で製造した共重合体(A-1)0.5質量部をテトラヒドロフラン90質量部で溶解させた後、PTFE粒子(一次粒径0.3μm)10質量部を添加し、この液を高速液衝突型分散機にて高圧分散し、PTFE分散液を得た。
PC-ZB100質量部、CTM1を60質量部、酸化防止剤2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノールを2質量部、ジメチルポリシロキサン(信越化学社製KF96-10CS)0.05質量部及びテトラヒドロフラン430質量部/トルエン65質量部の溶解液に、上記PTFE含有液100.5質量部を加え、電荷輸送層形成用塗布液C1を調製した。
【0280】
[塗布液C2]
前記塗布液において共重合体(A-1)を、製造例6で製造した共重合体(A-4)に変更した以外は塗布液C1と同様にして塗布液C2を作製した。
【0281】
[塗布液C3]
前記塗布液において共重合体(A-1)をフッ素系グラフトポリマー(B-1)に変更した以外は塗布液C1と同様にして塗布液C3を作製した。
【0282】
[塗布液C4]
前記塗布液において共重合体(A-1)を、製造例4で製造した共重合体(A-2)に変更した以外は塗布液C1と同様にして塗布液C4を作製した。
【0283】
[塗布液C5]
前記塗布液において共重合体(A-1)を、製造例7で製造した共重合体(A-5)に変更した以外は塗布液C1と同様にして塗布液C5を作製した。
【0284】
<感光体ドラムの製造>
表面が切削加工された外径24mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのアルミニウム合金よりなるシリンダーに、塗布液の製造例で作製した下引き層形成用塗布液、電荷発生層形成用塗布液、電荷輸送層形成用塗布液を浸漬塗布法により順次塗布、乾燥し、乾燥後の膜厚がそれぞれ、1.5μm、0.4μm、36μmとなるように、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を形成し、感光体ドラムを製造した。なお、電荷輸送層の乾燥は、125℃で24分間行なった。
【0285】
<画像試験>
得られた感光体を、Samsung社製モノクロプリンタ ML6510の感光体カートリッジに搭載して、気温25℃、相対湿度50%下において、印字率5%で、600,000枚の連続印刷を行った。耐刷後の電荷輸送層の膜厚を測定し、耐刷前後の電荷輸送層の膜厚比較することにより膜減り量を確認し、耐刷性を評価した。値が小さい方が耐摩耗性に優れる。
【0286】
[実施例7~10、比較例3]
表-3に示す感光体ドラムを作製し、耐刷性、及び電子写真感光体の評価を行った。結果を表-3に示す。
【0287】
【0288】
表-3から、本発明の共重合体を用いた電子写真感光体は、耐摩耗性に優れることが明らかになった。
【符号の説明】
【0289】
1 電子写真感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(加圧ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙