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特許7067330エッチング装置、エッチング方法及びプリント配線板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】エッチング装置、エッチング方法及びプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/08 20060101AFI20220509BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C23F1/08 102
C23F1/08 103
H05K3/06 Q
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018133233
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020012131
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【弁理士】
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100193976
【弁理士】
【氏名又は名称】澤山 要介
(72)【発明者】
【氏名】登坂 祐治
(72)【発明者】
【氏名】染川 淳生
【審査官】▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-220370(JP,A)
【文献】特開平6-302935(JP,A)
【文献】特開平5-178436(JP,A)
【文献】特開平7-010309(JP,A)
【文献】特開昭62-004113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F1/00-1/46
H05K3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ30μm以下である基材の一方の面に第1金属層を有し、他方の面に第2金属層を有する積層体をエッチングするエッチング装置であって、
前記積層体の少なくとも1対の対向する縁部に、前記積層体に張力を付与するように設置する冶具と、
前記冶具を設置した前記積層体を搬送する搬送ベルトと、
前記積層体の前記第1金属層にエッチング液を噴流する第1エッチング部と、
前記積層体の表裏を反転させる反転部と、
前記積層体の前記第2金属層にエッチング液を噴流する第2エッチング部とを備える、エッチング装置。
【請求項2】
前記冶具は、前記積層体を積層方向に挟持して保持する、請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記冶具は、前記積層体に設置した際に、前記積層体に関して面対称となる形状である、請求項1又は2に記載のエッチング装置。
【請求項4】
前記搬送ベルトは、前記冶具を固定する固定部を備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のエッチング装置。
【請求項5】
前記搬送ベルトは、前記冶具が嵌合可能な溝を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載のエッチング装置。
【請求項6】
前記第1エッチング部は、前記第1金属層と対向する前記積層体の面の少なくとも一部が前記搬送ベルトと接触した状態でエッチング液を噴流する、請求項1~5のいずれか1項に記載のエッチング装置。
【請求項7】
前記第2エッチング部は、前記第2金属層と対向する前記積層体の面の少なくとも一部が前記搬送ベルトと接触した状態でエッチング液を噴流する、請求項1~6のいずれか1項に記載のエッチング装置。
【請求項8】
厚さ30μm以下である基材の一方の面に第1金属層を有し、他方の面に第2金属層を有する積層体を用意する工程と、
前記積層体の少なくとも1対の対向する縁部に、前記積層体に張力を付与するように冶具を設置する工程と、
前記冶具を設置した前記積層体を搬送ベルトで搬送する工程と、
前記第1金属層にエッチング液を噴流させる工程と、
前記積層体の表裏を反転させる工程と、
前記積層体の前記第2金属層にエッチング液を噴流させる工程とを含む、エッチング方法。
【請求項9】
請求項8に記載のエッチング方法によって回路パターンを形成する工程を含む、プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング装置、エッチング方法及びプリント配線板の製造方法に関し、特に、極薄基材に適用可能なエッチング装置、エッチング方法及びプリント配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体チップ等の電子部品は集積密度が非常に高くなり、実装するプリント配線板も狭小化が進んでいる。そのため、使用する金属張り積層板の厚さも、とても薄いものになっている。そして、積層板の厚さをさらに薄くするために、厚さが30μm以下であるような極薄基材を使用することが検討されている。極薄基材を用いる場合、強度が足らず、製造工程中に、基材がカールする、基材が切れる等の不良が発生しやすく、取り扱いが難しい。
【0003】
特に、不要となる金属箔を除去するエッチング工程は、強度維持に大きく影響する金属箔が無くなるため、工程中での不良の主因となる。そのため、回路パターン形成時に金属箔部分を多くし強度を高くする方法があるがこれは基板中の製品になる割合が減るため効率が悪くなる。また、エッチング時にスプレー及びノズル等からエッチング液を吹き付けるスプレー方式であっては、エッチング液の圧力で金属箔が除去された絶縁(基材)部分、特に回路部分と金属除去部分との界面は弾性率が異なる材料の界面になるため圧力が集中し薄い基材に割れが入ることが多い。
【0004】
そこで、極薄基材であってもスプレー方式のエッチング工程に製品が耐えられ、かつ、簡易的に作業を行えるようにするために、表面に金属層を有する金属層付板状物の上下に補強用の保護板を取り付けて強度を上げ、処理ラインでの扱いを容易にし、かつ、保護板に細孔を形成することによりスプレー方式でエッチングを行えるようにする提案がされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-149930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、厚さが30μm以下であるような極薄基材を使用する場合であっては、特許文献1に記載の技術は、エッチング液を上下から吹き付けるため、回路部分と金属除去部分との界面部分で薄い基材に割れが生じたりすることを防止することが難しい。
【0007】
本発明はかかる背景に鑑み、極薄基材を使用する場合であっても、エッチング工程中に、基材の強度不足による不良を抑制することが可能なエッチング装置、エッチング方法及びプリント配線板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のものに関する。
[1]厚さ30μm以下である基材の一方の面に第1金属層を有し、他方の面に第2金属層を有する積層体をエッチングするエッチング装置であって、前記積層体の少なくとも1対の対向する縁部に、前記積層体に張力を付与するように設置する冶具と、前記冶具を設置した前記積層体を搬送する搬送ベルトと、前記積層体の前記第1金属層にエッチング液を噴流する第1エッチング部と、前記積層体の表裏を反転させる反転部と、前記積層体の前記第2金属層にエッチング液を噴流する第2エッチング部とを備える、エッチング装置。
[2]前記冶具は、前記積層体を積層方向に挟持して保持する、[1]のエッチング装置。
[3]前記冶具は、前記積層体に設置した際に、前記積層体に関して面対称となる形状である、[1]又は[2]のエッチング装置。
[4]前記搬送ベルトは、前記冶具を固定する固定部を備える、[1]~[3]のいずれかのエッチング装置。
[5]前記搬送ベルトは、前記冶具が嵌合可能な溝を備える、[1]~[4]のいずれかのエッチング装置。
[6]前記第1エッチング部は、前記第1金属層と対向する前記積層体の面の少なくとも一部が前記搬送ベルトと接触した状態でエッチング液を噴流する、[1]~[5]のいずれかのエッチング装置。
[7]前記第2エッチング部は、前記第2金属層と対向する前記積層体の面の少なくとも一部が前記搬送ベルトと接触した状態でエッチング液を噴流する、[1]~[6]のいずれかのエッチング装置。
[8]厚さ30μm以下である基材の一方の面に第1金属層を有し、他方の面に第2金属層を有する積層体を用意する工程と、前記積層体の少なくとも1対の対向する縁部に、前記積層体に張力を付与するように冶具を設置する工程と、前記冶具を設置した前記積層体を搬送ベルトで搬送する工程と、前記第1金属層にエッチング液を噴流させる工程と、前記積層体の表裏を反転させる工程と、前記積層体の前記第2金属層にエッチング液を噴流させる工程とを含む、エッチング方法。
[9][8]のエッチング方法によって回路パターンを形成する工程を含む、プリント配線板の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、極薄基材を使用する場合であっても、エッチング工程中に、基材の強度不足による不良を抑制することが可能なエッチング装置、エッチング方法及びプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るエッチング装置の概略図である。
図2】本発明の実施の形態に係るエッチング装置でエッチングする積層体の断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るエッチング装置でエッチングする積層体に冶具を設置した斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係るエッチング装置でエッチングする積層体に冶具を設置することを示す断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係るエッチング装置でエッチングする積層体に冶具を説明する概略図である。
図6】本発明の実施の形態に係るエッチング装置の搬送ベルトに備える固定部を示す概略図である。
図7】本発明の実施の形態に係るエッチング装置の搬送ベルトに備える溝を示す概略図である。
図8】本発明の実施の形態に係るエッチング装置の第1エッチング部を示す概略図である。
図9】本発明の実施の形態に係るエッチング装置の反転部の反転機構を示す概略図である。
図10】本発明の実施の形態に係るエッチング装置の第2エッチング部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[エッチング装置]
本発明の実施の形態に係るエッチング装置は、図1に示すように、冶具20を設置した積層体10を搬送する搬送ベルト30と、第1エッチング部40と、反転部50と、第2エッチング部60とを備える。
【0012】
積層体10は、図2に示すように、厚さ30μm以下である基材11の一方の面に第1金属層12を有し、他方の面に第2金属層13を有する。
【0013】
基材11としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス及びQガラス等の無機物繊維、ポリイミド、ポリエステル及びテトラフルオロエチレン等の有機繊維、並びに、それらの混合物などが挙げられる。
基材11の形状としては、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット及びサーフェシングマット等が挙げられる。
基材11の厚さtは、積層板10の小型化への寄与の観点から、25μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、15μm以下であることがさらに好ましい。基材11の厚さtは、積層板10の強度を維持する観点から、5μm以上であることが好ましく、7μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることがさらに好ましい。
【0014】
第1金属層12及び第2金属層13は、回路パターン等のパターンを形成することが可能な金属箔である。第1金属層12及び第2金属層13は、図2に示すように、所望のパターンとなるように配置されたレジスト14を用いてエッチング処理することにより回路パターン等のパターンが形成される。
第1金属層12及び第2金属層13としては、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミ箔等が挙げられ、これらの中でも、銅箔が好ましい。銅箔の種類としては、特に限定されず、電解銅箔、圧延銅箔等を使用することができる。
第1金属層12及び第2金属層13には、必要に応じて、防錆処理、クロメート処理及びシランカップリング剤処理等を行ってもよい。
【0015】
冶具20は、図3に示すように、積層体10の少なくとも1対の対向する縁部10aに、積層体10に張力を付与するように設置する。冶具20が積層体10に張力を付与することで、搬送処理及びエッチング処理等を安定して処理することができる。
【0016】
冶具20を積層体10に対する設置方法としては、図4に示すように、積層体10を積層方向に挟持して保持することが好ましい。積層体10を挟持する冶具20の手段としては、例えば、分離した冶具20のそれぞれに異なる極を有する磁石を備える手段、分離した冶具20のそれぞれが引き合うように弾性部材を備える手段、及び、分離した冶具20が積層体10を挟持した状態にした後に固定する手段等が挙げられる。分離した冶具20のそれぞれに異なる極を有する磁石を備える手段を採用した場合であって、冶具20を取り外す場合は、冶具20の端部に、冶具20の磁力よりも強力な磁石を近づけることで、磁石が近接した冶具20の端部が磁石の逆極になるため、それぞれの冶具20が反発することにより取り外すことができる。
【0017】
冶具20は、図5に示すように、積層体10に設置した際に、積層体10に関して面対称となる形状であることが好ましい。冶具20積層体10に関して面対称となる形状であることによって、積層体10の表裏を反転させても安定して搬送処理及びエッチング処理等を行うことができる。冶具20の積層体10に関して面対称となる形状としては、図5(a)に示すような円柱形状及び図5(b)に示すような四角柱形状等が挙げられる。
【0018】
搬送ベルト30は、図6に示すように、冶具20を固定する固定部31を備えることが好ましい。搬送ベルト30が固定部31を備えることで、冶具20を設置した積層体10を安定して搬送することができる。固定部31の形状は、冶具20を固定可能な形状であれば良く、例えば、フック形状、突起形状及び挟持形状等が挙げられる。
【0019】
搬送ベルト30は、図7に示すように、冶具20が嵌合可能な溝32を備えることが好ましい。搬送ベルト30が溝32を備えることで、冶具20を設置した積層体10を安定して搬送することができる。溝32の形状は、冶具20の形状に合わせればよく、例えば、図7に示したように冶具20が円柱形状である場合は半円溝とすることができる。
【0020】
第1エッチング部40は、図1及び図8に示すように、積層体10の第1金属層12にエッチング液を噴流するスプレー及びノズル等の噴流機構41を有する。噴流機構41は、単独であってもよく、複数からなる形態であってもよい。
噴流機構41がエッチング液を噴流する流量は、エッチング対象の金属箔の厚さ、作製する回路の幅、回路密度等の作製条件でエッチング装置の各種条件は変動するが、エッチング液を第1金属層12へ直接吹き付けて十分なエッチングを施す観点から、100ml/min以上であることが好ましく、150ml/min以上であることがより好ましく、200ml/min以上であることがさらに好ましい。
エッチング液を噴流する際の噴流機構41のポンプ圧力は、積層体10上に滞留するエッチング液を除去可能とし、第1金属層12に十分なエッチング液を供給する観点から、0.01MPa以上であることが好ましく、0.03MPa以上であることがより好ましく、0.05MPa以上であることがさらに好ましい。
噴流機構41による積層体10に対するエッチング液の液圧力は、極薄基材におけるスプレー方式のエッチング工程での破損を防ぐ観点から、0.2MPa以下であることが好ましく、0.15MPa以下であることがより好ましく、0.1MPa以下であることがさらに好ましい。
【0021】
第1エッチング部40で使用するエッチング液としては、酸性及びアルカリ性のいずれであってもよく、第1金属層12のエッチングに適したものを適宜選択することができる。エッチング液は、生産性及び汎用性の観点から、塩化第二鉄であることが好ましい。
【0022】
第1エッチング部40は、図8に示すように、第1金属層12と対向する積層体10の面の少なくとも一部が搬送ベルト30と接触した状態でエッチング液を噴流することが好ましい。ここで、搬送ベルト30と接触する積層体10の面としては、第2金属層13及びレジスト14等が挙げられる。積層体10の面の少なくとも一部が搬送ベルト30と接触した状態でエッチング液を噴流することによって、対向する積層体10の面側を搬送ベルト30が支えることができ、エッチング液によって第1金属層12側から付与される圧力による積層体10の割れ等による不良を防ぐことができる。積層体10の面の少なくとも一部が搬送ベルト30と接触した状態とするためには、例えば、溝32の深さを調整して積層体10の面の少なくとも一部と搬送ベルト30とを接触させる手段、及び、搬送ベルト30を積層体10へ近接させて積層体10の面の少なくとも一部と搬送ベルト30とを接触させる手段等が挙げられる。
【0023】
反転部50は、第1エッチング部40と第2エッチング部60との間に備えられる。
反転部50は、積層体10の表裏を反転させる反転機構を有する。反転機構は、搬送処理の一連の流れの中で積層体10の表裏を反転させることが可能で機能であれば特に限定されない。
反転機構の一例について、図9を参照して説明する。まず、図9(a)に示すように、反転部50に積層体10が到達した際に、短い冶具20(20a)を反転部材51aで固定し、長い冶具20(20b)を反転部材51bで固定する。次いで、図9(a)で示す第1金属層12が上面の状態から図9(b)に示す第2金属層13が上面の状態となるように、短い冶具20aを固定軸として、長い冶具20bを持ち上げて積層体10の表裏を反転させる。反転するに際し、短い冶具20aの端部位置Aと、反転部材51aの端部位置Bと、長い冶具20bの端部位置Cとがそれぞれ異なる位置とすることで、それぞれが干渉することがなくなり好ましい。次いで、反転部材51a,51bを開放し、表裏を反転させた積層体10を搬送ベルト30で搬送する。
【0024】
第2エッチング部60は、図1及び図10に示すように、積層体10の第2金属層13にエッチング液を噴流するスプレー及びノズル等の噴流機構61を有する。噴流機構61は、単独であってもよく、複数からなる形態であってもよい。
噴流機構61がエッチング液を噴流する流量は、エッチング対象の金属箔の厚さ、作製する回路の幅、回路密度等の作製条件でエッチング装置の各種条件は変動するが、エッチング液を第2金属層13へ直接吹き付けて十分なエッチングを施す観点から、100ml/min以上であることが好ましく、150ml/min以上であることがより好ましく、200ml/min以上であることがさらに好ましい。
エッチング液を噴流する際の噴流機構61のポンプ圧力は、積層体10上に滞留するエッチング液を除去可能とし、第2金属層13に十分なエッチング液を供給する観点から、0.01MPa以上であることが好ましく、0.03MPa以上であることがより好ましく、0.05MPa以上であることがさらに好ましい。
噴流機構61による積層体10に対するエッチング液の液圧力は、極薄基材におけるスプレー方式のエッチング工程での破損を防ぐ観点から、0.2MPa以下であることが好ましく、0.15MPa以下であることがより好ましく、0.1MPa以下であることがさらに好ましい。
なお、第2エッチング部でのエッチング処理は、第1金属層12のエッチング処理が済んでおり、第1金属層12による回路部分と金属除去部分との界面部分が存在するので基材割れ等が第1エッチング部40より生じやすいため、流速、ポンプ圧力及び液圧力は、第1エッチング部40と比して第2エッチング部が低いことが好ましい。
【0025】
第2エッチング部60で使用するエッチング液としては、酸性及びアルカリ性のいずれであってもよく、第2金属層13のエッチングに適したものを適宜選択することができる。エッチング液は、生産性及び汎用性の観点から、塩化第二鉄であることが好ましい。
【0026】
第2エッチング部60は、図10に示すように、第2金属層13と対向する積層体10の面の少なくとも一部が搬送ベルト30と接触した状態でエッチング液を噴流することが好ましい。ここで、搬送ベルト30と接触する積層体10の面としては、第1金属層12及びレジスト14等が挙げられる。積層体10の面の少なくとも一部が搬送ベルト30と接触した状態でエッチング液を噴流することによって、対向する積層体10の面側を搬送ベルト30が支えることができ、エッチング液によって第2金属層13側から付与される圧力による積層体10の割れ等による不良を防ぐことができる。積層体10の面の少なくとも一部が搬送ベルト30と接触した状態とするためには、例えば、溝32の深さを調整して積層体10の面の少なくとも一部と搬送ベルト30とを接触させる手段、及び、搬送ベルト30を積層体10へ近接させて積層体10の面の少なくとも一部と搬送ベルト30とを接触させる手段等が挙げられる。
【0027】
本実施形態に係るエッチング装置によれば、極薄基材を使用する場合であっても、エッチング工程中に、基材の強度不足による不良を抑制することが可能となる。
【0028】
[エッチング方法]
本発明の実施の形態に係るエッチング方法は、厚さ30μm以下である基材の一方の面に第1金属層を有し、他方の面に第2金属層を有する積層体を用意する工程と、積層体の少なくとも1対の対向する縁部に、積層体に張力を付与するように冶具を設置する工程と、冶具を設置した積層体を搬送ベルトで搬送する工程と、第1金属層にエッチング液を噴流させる工程と、積層体の表裏を反転させる工程と、積層体の第2金属層にエッチング液を噴流させる工程とを含むことを特徴とする。
【0029】
本発明の実施の形態に係るエッチング方法は、エッチング液を除去するために、水洗工程及び脱水工程等を適宜含ませることができる。
【0030】
本発明のエッチング方法は、本発明のエッチング装置を用いることで良好に実施することができる。
【0031】
本実施形態に係るエッチング方法によれば、極薄基材を使用する場合であっても、エッチング工程中に、基材の強度不足による不良を抑制することが可能となる。
【0032】
[プリント配線板の製造方法]
本発明の実施の形態に係るプリント配線板の製造方法は、上記エッチング方法によって回路パターンを形成する工程を含むことを特徴とする。
本発明の実施の形態に係るプリント配線板の製造方法としては、サブトラクティブ法及びアディティブ法等の公知の回路パターン形成方法における金属層のエッチング工程において、本発明のエッチング装置及びエッチング方法を採用することができる。
【0033】
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法によれば、極薄基材を使用する場合であっても、エッチング工程中に、基材の強度不足による不良を抑制することが可能となる。そのことにより、プリント配線板の製造において不良製品を削減することが可能となる。
【実施例
【0034】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されない。
【0035】
(実施例1)
極薄基材(厚さ15μm、商品名「ガラスクロス#1017」、日東紡績(株)製)の一方の面に厚さ12μmの銅箔(第1金属層)を有し、他方の面に厚さ12μmの銅箔(第2金属層)を有する銅張り積層板(積層体)(商品名「MCL-E700G U0.03」、日立化成(株)製)を用意した。用意した銅張り積層板にエッチングレジスト(商品名「フォテックH-9025」、日立化成(株)製)をラミネートし、JIS C5012に記載の多層プリント配線板用複合パターンの第1層のパターンを一方の面に焼き付け、当該多層プリント配線板用複合パターンの第6層のパターンを他方の面に焼き付け、現像した基板(焼付け基板)を作製した。
エッチングレジストのPETを剥離後、銅張り積層板の少なくとも1対の対向する縁部に、銅張り積層板に張力を付与するように冶具を設置した。冶具は、分離可能であり、分離した冶具のそれぞれに異なる極を有する磁石を備えるものを用いた。冶具は、分離した後に銅張り積層板を挟持するように設置した。
次いで、冶具を設置した銅張り積層板を搬送ベルトで搬送した。搬送ベルトによる搬送のライン速度は0.8m/分とした。
次いで、第1金属層にエッチング液をスプレーノズル(噴流機構)で噴流させた。エッチング薬液は塩化第二鉄で、液温30℃とした。エッチング条件は、スプレーノズルのポンプ圧力が0.08MPa、エッチング液流量が300ml/minのスプレーノズルを用いて、スプレーノズル・銅張り積層板間隔250mmで実施した。
次いで、銅張り積層板の表裏を反転させた。
次いで、第2金属層にエッチング液をスプレーノズル(噴流機構)噴流させた。エッチング薬液は塩化第二鉄で、液温30℃とした。エッチング条件は、スプレーノズルのポンプ圧力が0.08MPa、エッチング液流量が300ml/minのスプレーノズルを用いて、スプレーノズル・銅張り積層板間隔250mmで実施した。
その後、水洗工程及び脱水工程を経た後に、銅張り積層板から冶具を外し、プリント配線板を得た。
【0036】
(比較例1)
実施例1と同様に、焼付け基板を作製した。
作製した焼付け基板は、第1金属層及び第2金属層を同時にエッチング可能なエッチング装置によってエッチング処理を行った。エッチング装置の上下に設置されたスプレーノズルは実施例1と同様であり、エッチング条件も実施例1と同様とした。
比較例1においては、エッチング工程以外は実施例1と同様の手順でプリント配線板を得た。
【0037】
(比較例2)
実施例1と同様に、焼付け基板を作製した。
作製した焼付け基板は、第1金属層が上面となるように、FR-4基板(商品名「MCL-67 t1.0」、日立化成(株)製)の銅箔を全面エッチングしたものに乗せ、4辺をセロハンテープ(商品名「セロテープ(登録商標)」、ニチバン(株)製)で貼り付けて固定した。
固定した焼付け基板は、一方の面をエッチング可能なエッチング装置によって第1金属層のエッチング処理を行った。エッチング装置に設置されたスプレーノズルは実施例1と同様であり、エッチング条件も実施例1と同様とした。
第1金属層のエッチング処理を行った焼付け基板は、4辺のセロハンテープを剥し、第2金属層が上面となるように、銅箔を全面エッチングしたFR-4基板に乗せ、4辺をセロハンテープで貼り付けて固定した。
固定した焼付け基板は、一方の面をエッチング可能なエッチング装置によって第2金属層のエッチング処理を行った。エッチング装置に設置されたスプレーノズルは実施例1と同様であり、エッチング条件も実施例1と同様とした。
比較例2においては、エッチング工程以外は実施例1と同様の手順でプリント配線板を得た。
【0038】
[効果の確認]
実施例1及び比較例1~2において、510mm×510mmの積層体を10枚連続投入し、エッチング処理を行った。その際、各例において下記項目を評価した。結果を表1に示す。
<不良率>
エッチング処理完了後、基材にカール、割れ及び折れ等の不良があるか観測し、不良であると判断した枚数から不良率を算出した。
不良であると判断する基準を以下に示す。
(1)端部不良:基材の端部から「10mm以上」の割れ及び折れがある場合
(2)面内不良:基材の面内に「0.3mm以上」の割れ及び折れが10箇所以上ある場合
<作業時間>
10枚の積層体のエッチング処理が完了するまでの時間を計測した。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1は、エッチング処理による不良が発生せず、作業時間も短時間であったため良好な製品歩留まりであった。
比較例1は、エッチング処理におけるエッチング液の液圧力により、10枚すべての基材が形状を維持することができなかったので不良率が100%となった。
比較例2は、焼付け基板を固定するためのセロハンテープを剥がす際に、基材に割れが生じるものがあり、不良率が10%となった。また、比較例2は、セロハンテープを貼り替える時間を要するため、作業時間が長くかかってしまった。
【符号の説明】
【0041】
10…積層体
11…基材
12…第1金属層
13…第2金属層
14…レジスト
20…冶具
20a…短い冶具
20b…長い冶具
30…搬送ベルト
31…固定部
32…溝
40…第1エッチング部
41…噴流機構
50…反転部
51a、51b…反転部材
60…第2エッチング部
61…噴流機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10