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特許7067524ウェーハのフラットネス測定機の選定方法及び測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】ウェーハのフラットネス測定機の選定方法及び測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/30 20060101AFI20220509BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G01B11/30 101
H01L21/66 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019077332
(22)【出願日】2019-04-15
(65)【公開番号】P2020176847
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】大西 理
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-261271(JP,A)
【文献】特開2012-231005(JP,A)
【文献】特開2011-134828(JP,A)
【文献】特表2016-517631(JP,A)
【文献】特開2013-238595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフラットネス測定機の中から測定精度の高いフラットネス測定機を選定する方法であって、
予めフラットネスの異なる複数のウェーハを準備し、
該複数のウェーハの厚み分布を、前記複数のフラットネス測定機において、それぞれ複数回測定し、
該複数回測定した複数のウェーハの厚み分布から、それぞれのウェーハの厚み分布の差分プロファイル、該差分プロファイルのLine SFQR、前記測定毎のESFQRの少なくともいずれかの値を算出し、
前記差分プロファイルの前記複数のウェーハの平均プロファイル中の最大値と最小値の差、前記Line SFQRの最大値の前記複数のウェーハの平均値、前記ESFQRの前記測定毎の最大値の前記複数のウェーハの平均値の少なくともいずれかが所定の値より小さいフラットネス測定機、及び/又は、
前記ESFQRのうち、前記複数回測定において得られた前記ESFQR同士の相関関係から、相関度が所定の値より大きいフラットネス測定機、
を選ぶことで、測定精度の高い測定機を選定することを特徴とするウェーハのフラットネス測定機の選定方法。
【請求項2】
前記複数のフラットネス測定機において、それぞれ複数回測定する際に、前記ウェーハを表裏反転させる前と後でそれぞれ1回以上測定することを特徴とする請求項1に記載のウェーハのフラットネス測定機の選定方法。
【請求項3】
前記複数のフラットネス測定機において、それぞれ複数回測定する際に、前記ウェーハを回転させることで投入角度を変更して複数回測定することを特徴とする請求項1に記載のウェーハのフラットネス測定機の選定方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のウェーハのフラットネス測定機の選定方法で選定されたフラットネス測定機を用いてウェーハのフラットネスを測定することを特徴とするウェーハのフラットネスの測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハのフラットネス測定機の選定方法及びそれにより選定されたフラットネス測定機を用いたウェーハのフラットネスの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Si単結晶ウェーハは集積回路の原料として広く用いられている。集積回路に求められる性能が向上するにつれて、Si単結晶ウェーハの厚み分布(平坦度)もより一層良好なものが求められる。Si単結晶ウェーハの平坦度測定には、KLA-Tencor社(ケーエルエー・テンコール社)のWaferSightに代表されるような、Si単結晶ウェーハの表面と裏面の変位量を個別に計測し、平坦度として算出される測定機が多く用いられている(特許文献1)。
【0003】
測定機の精度や機差もデザインルールの狭小化に伴い向上してきた。しかしながら、Si単結晶ウェーハに求められる平坦度が一層タイトになるにつれ、製造装置の工程能力に余力が無くなり、フラットネス測定機の測定精度の機差がSi単結晶ウェーハの歩留まりを左右する状況となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-238595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一定の歩留まりを確保するため、特に悪い検査値を出力する装置を用いないことも可能だが、根拠のない測定機選定となるため、本来必要とされる真の平坦度を知ることもできなくなってしまう。更にそれによって、生産技術開発の方向性をも見失うこととなる。よって、真の値に近い値を出力する測定機を選別し機差を低減することが必要となるが、現段階でその術はない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、複数のフラットネス測定機のなかから測定精度の高いフラットネス測定機を選定し、信頼性及び測定精度の高いウェーハの平坦度測定を可能にするウェーハのフラットネス測定機の選定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、複数のフラットネス測定機の中から測定精度の高いフラットネス測定機を選定する方法であって、
予めフラットネスの異なる複数のウェーハを準備し、
該複数のウェーハの厚み分布を、前記複数のフラットネス測定機において、それぞれ複数回測定し、
該複数回測定した複数のウェーハの厚み分布から、それぞれのウェーハの厚み分布の差分プロファイル、該差分プロファイルのLine SFQR、前記測定毎のESFQRの少なくともいずれかの値を算出し、
前記差分プロファイルの前記複数のウェーハの平均プロファイル中の最大値と最小値の差、前記Line SFQRの最大値の前記複数のウェーハの平均値、前記ESFQRの前記測定毎の最大値の前記複数のウェーハの平均値の少なくともいずれかが所定の値より小さいフラットネス測定機、及び/又は、
前記ESFQRのうち、前記複数回測定において得られた前記ESFQR同士の相関関係から、相関度が所定の値より大きいフラットネス測定機、
を選ぶことで、測定精度の高い測定機を選定することを特徴とするウェーハのフラットネス測定機の選定方法。
【0008】
本発明のウェーハのフラットネス測定機の選定方法であれば、複数のフラットネス測定機のなかから、測定機の表面側と裏面側のシステムの個体差が少ない、測定精度の高いフラットネス測定機を選定することができるため、従来よりも信頼性及び測定精度の高いウェーハの平坦度測定が可能となる。また、そのような測定機を用いて測定を行えば、ウェーハの平坦度測定の機差を低減することが可能となる。
【0009】
このとき、前記複数のフラットネス測定機において、それぞれ複数回測定する際に、前記ウェーハを表裏反転させる前と後でそれぞれ1回以上測定することが好ましい。
【0010】
このような方法であれば、より確実に測定精度の高い測定機を選定することが可能となる。
【0011】
また、前記複数のフラットネス測定機において、それぞれ複数回測定する際に、前記ウェーハを回転させることで投入角度を変更して複数回測定することが好ましい。
【0012】
このような方法であっても、より確実に測定精度の高い測定機を選定することが可能となる。
【0013】
また、本発明はウェーハのフラットネス測定機の選定方法で選定されたフラットネス測定機を用いてウェーハのフラットネスを測定することを特徴とするウェーハのフラットネスの測定方法を提供する。
【0014】
このようなウェーハのフラットネスの測定方法であれば、測定精度の高いフラットネス測定機を用いて測定を行うことができるため、信頼性及び測定精度の高いウェーハの平坦度測定が可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のウェーハのフラットネス測定機の選定方法であれば、複数のフラットネス測定機のなかから、測定機の表面側と裏面側のシステムの個体差が少ない、測定精度の高いフラットネス測定機を選定することができるため、従来よりも信頼性及び測定精度の高いウェーハの平坦度測定が可能となる。また、そのような測定機を用いて測定を行えば、ウェーハの平坦度測定の機差を低減して精度の高い測定をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】ESFQRmaxの平均値の測定機平均からのずれを示す図である。
図2】ノッチ角度毎のESFQRmaxの全ウェーハの平均値の測定機平均からのずれを示す図である。
図3】一般的なウェーハのフラットネス測定機を示す概略図である。
図4】テストウェーハのシェイプと表裏反転する前と後の厚み分布の差分プロファイル(ΔTHK)の関係を示す図である。
図5】それぞれの測定機の通常測定時のESFQRと反転測定時のESFQRとの自己相関を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0018】
上記のように、ウェーハのフラットネス測定機には測定精度の機差が存在し、そのような機差を示す複数のフラットネス測定機のなかから、真の値に近い値を出力する測定機を選別することは困難であった。
【0019】
本発明者は、創意工夫を重ねた結果、複数回測定した複数のウェーハの厚み分布から、それぞれのウェーハの厚み分布の差分プロファイル、差分プロファイルのLine SFQR、測定毎のESFQRの少なくともいずれかの値を算出し、差分プロファイルの複数のウェーハの平均プロファイル中の最大値と最小値の差、Line SFQRの最大値の複数のウェーハの平均値、ESFQRの測定毎の最大値の複数のウェーハの平均値の少なくともいずれかが所定の値より小さい、及び/又は、ESFQR同士の相関度が所定の値より大きいフラットネス測定機を選べば、測定精度の高い測定機を選定することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0020】
即ち、本発明は、複数のフラットネス測定機の中から測定精度の高いフラットネス測定機を選定する方法であって、
予めフラットネスの異なる複数のウェーハを準備し、
該複数のウェーハの厚み分布を、前記複数のフラットネス測定機において、それぞれ複数回測定し、
該複数回測定した複数のウェーハの厚み分布から、それぞれのウェーハの厚み分布の差分プロファイル、該差分プロファイルのLine SFQR、前記測定毎のESFQRの少なくともいずれかの値を算出し、
前記差分プロファイルの前記複数のウェーハの平均プロファイル中の最大値と最小値の差、前記Line SFQRの最大値の前記複数のウェーハの平均値、前記ESFQRの前記測定毎の最大値の前記複数のウェーハの平均値の少なくともいずれかが所定の値より小さいフラットネス測定機、及び/又は、
前記ESFQRのうち、前記複数回測定において得られた前記ESFQR同士の相関関係から、相関度が所定の値より大きいフラットネス測定機、
を選ぶことで、測定精度の高い測定機を選定することを特徴とするウェーハのフラットネス測定機の選定方法である。
【0021】
このようなウェーハのフラットネス測定機の選定方法であれば、複数のフラットネス測定機のなかから、測定機の表面側と裏面側のシステムの個体差が少ない、測定精度の高いフラットネス測定機を選定することができるため、従来よりも信頼性及び測定精度の高いウェーハの平坦度測定が可能となる。また、そのような測定機を用いて測定を行えば、ウェーハの平坦度測定の機差を低減することが可能となる。
【0022】
本発明のウェーハのフラットネス測定機の選定方法では、まず、予めフラットネスの異なる複数のウェーハを準備する。
【0023】
次に、複数のウェーハの厚み分布を、複数のフラットネス測定機において、それぞれ複数回測定する。ここで、上記のようにそれぞれ複数回測定する際に、ウェーハを表裏反転させる前と後とでそれぞれ1回以上測定することとすることができる。また、それぞれ複数回測定する際に、ウェーハを回転させることで投入角度を変更して複数回測定することもできる。これらの方法であれば、より確実に測定精度の高い測定機を選定することが可能となる。
【0024】
次に、複数回測定した複数のウェーハの厚み分布から、それぞれのウェーハの厚み分布の差分プロファイル、該差分プロファイルのLine SFQR、測定毎のESFQRの少なくともいずれかの値を算出する。
そして、差分プロファイルの複数のウェーハの平均プロファイル中の最大値と最小値の差、Line SFQRの最大値の複数のウェーハの平均値、ESFQRの測定毎の最大値の複数のウェーハの平均値の少なくともいずれかが所定の値より小さいフラットネス測定機、及び/又は、ESFQRのうち、複数回測定において得られたESFQR同士の相関関係から、相関度が所定の値より大きいフラットネス測定機を選ぶことで、測定精度の高い測定機を選定する。
【0025】
以下、ウェーハを表裏反転させる前と後でそれぞれ1回ずつ測定する場合を例として、より詳細に説明するが、それぞれのウェーハについて複数回測定すれば、測定方法、回数は限定されるものではない。
【0026】
ウェーハの平坦度を測定する際には、ウェーハの表裏面の変位量を個別に計測する必要がある。図3は一般的なウェーハのフラットネス測定機を示す概略図である。通常は、ウェーハWの表面はフラットネス測定機100の表面側のシステム101で、裏面は裏面側のシステム102でそれぞれ変位量を測定し、両者の差から厚みの平坦度を算出している。
【0027】
これに対して、ウェーハを表裏反転させた後の測定は、ウェーハを反転させてウェーハの表面を裏面側のシステムで、ウェーハの裏面を表面側のシステムで変位量を測定し、両者の変量の差から厚みの平坦度を算出する。ウェーハの厚みデータはr-theta(θ)座標系で表現することができるが、表裏反転させた後の測定の厚み平坦度を出力する際には、反転測定を考慮して、ウェーハの厚みデータのthetaの位相を反転させればよい。
【0028】
次に、差分プロファイルの複数のウェーハの平均プロファイル中の最大値と最小値の差、Line SFQRの最大値の複数のウェーハの平均値、ESFQRの測定毎の最大値の複数のウェーハの平均値、複数回測定において得られたESFQR同士の相関関係の相関度の基準によりフラットネス測定機を選定する方法について説明する。これらの基準のうち、少なくともいずれか一つの基準によりフラットネス測定機を選定する。
【0029】
[差分プロファイルの平均プロファイル中の最大値と最小値の差]
上記のようにして表裏反転させる前の通常測定による厚みの平坦度(厚み分布)と表裏反転させた後のウェーハ反転測定による厚みの平坦度を比較した場合、表裏反転とはいえども同一の測定機で測定しているため、測定結果は同一となり、両者の差は0になることが望ましい。しかしながら、一般的なフラットネス測定機は、ウェーハの表裏面を個別に測定する表面側と裏面側のシステムに個体差があることから、この差は必ずしも0にならないことが多く、この差の大きさは大小さまざまである。
【0030】
また、このような表裏反転測定によるウェーハの厚み分布から算出される差分プロファイルは、元々のウェーハのシェイプと相関が有ることが分かり、このことから、フラットネス測定機の表裏面の各変位量測定システムのウェーハシェイプに対する変位量測定のダイナミックレンジ等によるシステム差を表すことができることに想到した。以上のことから、通常測定とウェーハ反転測定との厚み分布の差分プロファイルの最大値と最小値の差(高低差)から測定機の良し悪しを判断することができる。例えば、差分プロファイルの高低差が0に近い測定機は、測定したウェーハの差分プロファイルとシェイプとの相関度が低く、測定精度が高いといえ、差分プロファイルの高低差が大きい測定機は、測定したウェーハの差分プロファイルとシェイプとの相関度が高く測定精度が低いといえる。
従って、複数のフラットネス測定機の中から、差分プロファイルの複数のウェーハの平均プロファイルをとり、その平均プロファイル中の最大値と最小値の差が所定の値よりも小さいフラットネス測定機を選ぶことで、差分プロファイルの最大値と最小値の差が平均的に小さい、即ち、測定精度の高い測定機を選定することができる。ここで、平均プロファイルは、複数のウェーハの厚みデータのr-theta(θ)座標に基づいて、複数のウェーハの差分プロファイルの対応する座標の平均をとればよい。
【0031】
差分プロファイルと元々のウェーハのシェイプとの相関、及び、測定機の測定精度の機差が生じることについては、以下のような理由が考えられる。例えば、WaferSightに代表されるような光学干渉式の変位量測定機の場合、ウェーハそのもののシェイプ(ソリや凹凸)によってウェーハ像を正確に結像出来ないことが起こりえる。また、フラットネス測定機においてウェーハを保持するグリッパーは力学的にウェーハを変形させることが知られているため、グリッパーによる変形とウェーハそのもののシェイプが干渉した場合、そのソリ量や凹凸は更に大きくなることが容易に想像できる。更に、光学干渉式の測定においては、測定対象のウェーハよりも大きな口径のレンズやミラーといった光学部品が用いられるが、これらの形状個体差がウェーハシェイプと干渉し、理想的な結像が行えない部位がウェーハには存在すると考えられる。このような不確定要素によって、差分プロファイルと元々のウェーハのシェイプとの相関、測定機の測定精度の機差は発生すると考えられる。また、これらのことから、測定精度の低い測定機では、本来一致するはずの、ウェーハを表裏反転させる前と後の厚み分布が一致せず、差分プロファイルを算出してもウェーハのシェイプの影響が残り、差分プロファイルの複数のウェーハの平均プロファイル中の最大値と最小値の差が大きくなってしまうと考えられる。
【0032】
[Line SFQRの最大値の平均値]
この場合、上記のように、[通常測定による厚み分布のプロファイル]-[ウェーハ反転測定による厚み分布のプロファイル]の引き算から表裏反転測定における厚み分布の差分プロファイルを得、得られた差分プロファイルのLine SFQRの最大値(Line SFQRmax)を算出する。差分プロファイルのLine SFQRとは、例えば直径300mmのSi単結晶ウェーハの場合、r-theta座標系で表現されたウェーハの差分プロファイルの角度1度毎に半径118mm~148mmの差分プロファイルを出力したのちに、これに最小二乗線を適用した際の、最小二乗線からの差分プロファイルの変位のレンジ(Max-Min)とすることができる。ひとつの円盤状データからは360個のLine SFQRが得られるが、その最大値がLine SFQRmaxとなる。
このように算出されたLine SFQRmaxも、上記差分プロファイルの複数のウェーハの平均プロファイル中の最大値と最小値の差と同様に、フラットネス測定機の表面側と裏面側のシステムの個体差やウェーハのシェイプが変位量測定に影響を及ぼしているかどうかの指標とすることができる。このため、複数のフラットネス測定機の中から、上記Line SFQRmaxの複数のウェーハの平均値が所定の値よりも小さいフラットネス測定機を選ぶことで測定精度の高い測定機を選定することができる。
【0033】
[ESFQRの測定毎の最大値の平均値]
この場合、複数のウェーハの表裏反転させる前と後の厚み分布において、それぞれ厚み分布のESFQRの最大値(ESFQRmax)の平均値を算出する。ここでESFQRとは、例えば直径300mmのSi単結晶ウェーハの場合、半径118mm~148mm、角度5度の領域における裏面基準の厚み分布に対して最小二乗面を適用し、最小二乗面からの変位のレンジ(Max-Min)とすることができる。ひとつの円盤状の厚み分布のデータからは72個のESFQRが得られるが、その最大値がESFQRmaxとなる。ESFQRmaxを、複数のウェーハについて表裏反転させる前と後とでそれぞれ算出し、それらのESFQRmaxの複数のウェーハの平均値を求める。
このように算出されたESFQRmaxの複数のウェーハの平均値も、上記と同様に、フラットネス測定機の表面側と裏面側のシステムの個体差やウェーハのシェイプが変位量測定に影響を及ぼしているかどうかの指標とすることができる。このため、複数のフラットネス測定機の中から、ESFQRmaxの複数のウェーハの平均値が所定の値よりも小さいフラットネス測定機を選ぶことで測定精度の高い測定機を選定することができる。
【0034】
[ESFQR同士の相関関係の相関度]
この場合、上記のように算出された表裏反転させる前と後のそれぞれの厚み分布のESFQR同士の相関関係から、その相関度を求める。上記記載したように、表裏反転させた後の測定の厚み分布からESFQRを算出する際に、r-theta座標におけるthetaの位相を表裏反転させる前の通常測定と合わせるため、平坦度プロファイルデータおよびESFQRのtheta座標を反転させ、表裏反転させる前と後のESFQRの自己相関を算出する。
同一ウェーハの対応する領域のESFQRは、表裏反転させる前後の異なる測定においても同一の値を示すはずであるため、測定精度が高い測定機であれば、複数回測定において得られたESFQR同士の相関関係の相関度は高くなるはずである。このため、複数のフラットネス測定機の中から、上記相関度が所定の値よりも大きいフラットネス測定機を選ぶことで測定精度の高い測定機を選定することができる。
【0035】
また、複数のウェーハの厚み分布を、複数のフラットネス測定機において、それぞれ複数回測定する際に、ウェーハを回転させることで投入角度を変更して複数回測定する場合、差分プロファイルの複数のウェーハの平均プロファイルは、異なる角度間の差分プロファイルを算出し、それらを複数のウェーハについて平均すればよい。またこのとき、差分プロファイルのLine SFQRは、上記算出した異なる角度間の差分プロファイルを基に、上記記載の表裏反転測定時と同様に算出することができる。またこのとき、ESFQRの測定毎の最大値の平均値は、上記記載の表裏反転測定時と同様に算出することができ、ESFQR同士の相関関係は、投入角度を考慮して、厚み分布のtheta座標を回転させて、対応する領域のESFQRの相関関係を求めればよい。
【0036】
また、上記の方法により、測定精度の高いフラットネス測定機に選定されなかったフラットネス測定機は、表裏反転測定等の複数回測定を行っても同一の平坦度の結果が出るように測定機の調整を行えばよい。また、調整後の測定機の評価については、上記と同様に、複数のウェーハの厚み分布を測定し、差分プロファイルの複数のウェーハの平均プロファイル中の最大値と最小値の差、Line SFQRの最大値の複数のウェーハの平均値、ESFQRの測定毎の最大値の複数のウェーハの平均値の少なくともいずれかが所定の値よりも小さいこと、及び/又は、複数回測定において得られたESFQR同士の相関関係の相関度が所定の値よりも大きいことにより判断することができる。
【0037】
また、上記選定方法により選定されたフラットネス測定機を用いてウェーハのフラットネスを測定すれば、測定精度の高いフラットネス測定機を用いて測定を行うため、信頼性及び測定精度の高いウェーハの平坦度測定が可能となる。
【実施例
【0038】
以下、実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0039】
[実施例1]
フラットネス測定機を5台(測定機(M/#)A~E)、この5台のフラットネス測定機から測定精度の高い測定器を選定するために用いる直径300mmのテストウェーハを15枚準備した。この際、結晶スラブからウェーハを切り取る際に発生するソーマークや熱変形によるお椀状のシェイプを持つテストウェーハを用いた。
【0040】
準備した15枚のテストウェーハの表面をフラットネス測定機の表面側変位量測定システムでそれぞれ測定し、テストウェーハの裏面を裏面側変位量測定システムでそれぞれ測定し、表裏面の変位量の通常測定を行った。そして、両者の差分から、それぞれのテストウェーハの厚み分布を得、それぞれのテストウェーハのESFQRを算出した。ここでESFQRは、半径118mm~148mm、角度5度の領域における裏面基準の厚み分布に対して最小二乗面を適用したときの、最小二乗面からの変位のレンジ(Max-Min)である。
また、上記と同様のテストウェーハの表面を上記と同様のフラットネス測定機の裏面側変位量測定システムで測定し、テストウェーハの裏面を表面側変位量測定システムで測定し、表裏面の変位量の反転測定を行った。そして、両者の差分から、それぞれのテストウェーハの反転測定における厚み分布を得、それぞれのテストウェーハの反転測定におけるESFQRを算出した。この際、r-theta座標におけるthetaの位相を通常測定と合わせるため、厚み分布およびESFQRのtheta座標を反転させた。
【0041】
上記通常測定及び反転測定を5台のフラットネス測定機で行った。
【0042】
[通常測定による厚み分布のプロファイル]-[ウェーハ反転測定による厚み分布のプロファイル]の引き算から、それぞれのテストウェーハについて、通常測定と反転測定との厚み差分プロファイル(ΔTHK)を得、得られた差分プロファイルに対して外周30mm、 2mmEEにおけるLine SFQRの最大値(Line SFQRmax)を算出した。ここでLine SFQRは、1度毎に半径118mm~148mmの差分プロファイルを出力したのちに、これに最小二乗線を適用したときの、最小二乗線からの差分プロファイルの変位のレンジ(Max-Min)である。ひとつの円盤状データからは360個のLine SFQRが得られるが、その最大値をLine SFQRmaxとした。
また、表裏反転時(通常測定及び反転測定)のESFQRの自己相関を算出した。
【0043】
以下の表1に、ESFQRの自己相関(傾き、切片、及び、決定係数R)、差分プロファイルのLine SFQRmaxの全ウェーハの平均値(ΔTHK Line SFQRmax)を示す。また図5に、それぞれの測定機の通常測定時のESFQRと反転測定時のESFQRとの自己相関を示す。
【0044】
【表1】
【0045】
通常測定及び反転測定における厚みの差分プロファイルのLine SFQRmaxの全ウェーハの平均値が小さいもの、ESFQRの自己相関の相関度を示す決定係数Rが高いものの順にそれぞれ5台の装置のデータを並べ、最も測定機の表裏面の測定システムの差が小さい測定機を選出した結果、測定機Eが最も好調で測定機Dが最も不調であると判断された。
【0046】
また、表裏反転させる前と後のそれぞれ厚み分布における、ESFQRの最大値であるESFQRmaxを算出し、それぞれのフラットネス測定機においてESFQRmaxの全ウェーハの平均値を求めた。図1にESFQRmaxの全ウェーハの平均値の測定機平均からのずれ(ESFQRmaxのずれ)を示す。ここで、測定機平均とは、すべてのフラットネス測定機の、ESFQRmaxの全ウェーハの平均値を平均したものである。
【0047】
上記で最も不調と判断された測定機Dは同一サンプルを測定しても最も高いESFQRmaxの全ウェーハの平均値を示した。
【0048】
また、図1に示したESFQRmaxの全ウェーハの平均値を比較した場合、測定機Bが最も平均値に近い値を示しているが、表裏反転による自己相関において、測定機Bは測定機Eの自己相関より劣っている(表1参照)。このことより、平均値に近い値を示していることは、測定機自体の自己相関性、すなわち健全性が保たれていることとは言えず、自己相関の良し悪しが測定機の健全性を比較する重要な指標となる。
【0049】
また、表裏反転する前と後の厚み分布の差分プロファイルの15枚のウェーハの平均プロファイルの最大値と最小値の差も、上記で最も不調と判断された測定機Dで最も大きな値を示した。この結果から、測定機Dが最もウェーハシェイプの影響を強く受け、更に差分プロファイルの高低差が大きいことから表裏面の変位量測定システム差が大きいと判断された。一方、測定機Eは最もウェーハシェイプの影響を受けにくく、差分プロファイルの高低差も小さいことから表裏面の変位量測定システム差が小さいと判断できた。
これらのことは、図4に示したテストウェーハのシェイプと表裏反転する前と後の厚み分布の差分プロファイル(ΔTHK)の関係からも確認できる。図4には、例として、15枚のテストウェーハのうちの5枚のテストウェーハ(S/#01~05)のウェーハシェイプと、それぞれのテストウェーハを5台の測定機(M#A~E)で表裏反転測定したときのΔTHKとの関係を示している。図4において、シェイプ及びΔTHKの濃淡は高低差を表している。このとき、測定機の測定精度が高い場合は表裏反転する前と後の厚み分布に差がないと考えられるため、ウェーハシェイプによらず、ΔTHK中の高低差は小さくなり、濃淡の変化は少なくなる。図4から明らかなように、ESFQRの自己相関から測定精度が高いと判断された測定機Eは、様々なシェイプのテストウェーハについて、平坦なΔTHKを示した。一方、最も不調であると判断された測定機Dでは、ΔTHKがウェーハシェイプの影響を大きく受けていることが分かる。
【0050】
上記の結果から、複数枚のウェーハを測定した際の表裏面差分プロファイルの平均プロファイルの最大値と最小値との差、同差分プロファイルのLine SFQRの最大値、表裏反転させて得られる厚み形状をthetaで補正したESFQRの相関係数や傾き、切片等(図5、表1参照)に一定の閾値を設け、閾値より大きい又は小さい測定機を選別することによって、真の値に近く測定精度の高い測定機を選別することができることが示された。
【0051】
[実施例2]
実施例1と同様のテストウェーハのセットと測定機(M/# A~E)を用い、テストウェーハの通常測定を行った。ここで、実施例2では、測定の際、テストウェーハを回転させることで投入角度(ノッチ角度)を変更した。実施例1と同様にESFQRmaxを算出し、投入角度とESFQRmaxの全ウェーハの平均値との関係を評価した。図2に、ノッチ角度毎のESFQRmaxの全ウェーハの平均値の測定機平均からのずれを示す。
【0052】
測定精度の高い装置であれば、ノッチ角度によるESFQRmaxの変動は無いことが理想的だが、実際は、図2に示すノッチ角度毎のESFQRmaxの全ウェーハの平均値のように測定機への投入角度によって、ESFQRmaxの全ウェーハの平均値は変動することが分かった。更に、下記表2に示すように、ESFQRmaxの全ウェーハの平均値の変動の大きさとESFQRmaxの全ウェーハ及び全ノッチ角度の平均値の絶対値の大小関係も一致していた。このことから、全ウェーハ及びノッチ角度の平均値が所定の値より小さいものを選べば、ノッチ角度によるESFQRmaxの変動が無く、測定精度の高い測定機を選定することができることが明らかとなった。また、投入角度によるESFQRmaxの全ウェーハの平均値の変動(ESFQRmaxのバラツキ)からも装置の良し悪しが判断できると言える。
【0053】
【表2】
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0055】
100…フラットネス測定機、
101…表面側のシステム、 102…裏面側のシステム。
図1
図2
図3
図4
図5