(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】仕切り部材及び組電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20220509BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220509BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20220509BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20220509BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20220509BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M50/204 401H
(21)【出願番号】P 2020511142
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019014237
(87)【国際公開番号】W WO2019189850
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2018070009
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本多 立彦
(72)【発明者】
【氏名】丸 直人
【審査官】原 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-157747(JP,A)
【文献】特開2016-121804(JP,A)
【文献】特開2016-084836(JP,A)
【文献】国際公開第2010/143408(WO,A1)
【文献】特開平06-283216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/00-17/02
F16L 59/00-59/22
G01Q 10/00
60/16
60/22
60/38
60/54
70/00
G12B 1/00-17/08
H01M 10/42-10/667
50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向と該厚み方向に直交する面方向とを有し、該厚み方向において単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、
断熱材と、
該面方向において該断熱材に隣接して配置され、該厚み方向における該断熱材の収縮範囲を規制する補助部材とを含み、
前記断熱材が繊維質を含み、
前記繊維質が紙、コットンシート、ポリイミド繊維、アラミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維及び生体溶解性無機繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
前記補助部材が、弾性を有し、圧力によって変形するものであり、
該断熱材の密度に対する該補助部材の密度の比が0.50~6.0である
仕切り部材。
【請求項2】
前記厚み方向から前記断熱材及び前記補助部材を平面視した場合において、前記断熱材の面積に対する前記補助部材の面積の比が0.020~1.0である、請求項1に記載の仕切り部材。
【請求項3】
前記断熱材の密度が0.23~1.1g/cm
3である、請求項1又は2に記載の仕切り部材。
【請求項4】
前記補助部材の密度が0.30~2.0g/cm
3である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の仕切り部材。
【請求項5】
前記弾性体がゴムである
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の仕切部材。
【請求項6】
前記厚み方向から前記断熱材及び前記補助部材を平面視した場合において、前記断熱材の形状が長方形であるとともに、前記補助部材が、前記長方形の対向する2辺に沿った位
置、前記長方形の3辺に沿った位置、前記長方形の4辺に沿った位置、及び前記長方形の4隅の位置のいずれかに配置されている、請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の仕切り部材。
【請求項7】
前記断熱材が液体を保持可能な多孔質体を含む材料で形成されている、請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の仕切り部材。
【請求項8】
前記多孔質体
が粒子を含む、請求項
7に記載の仕切り部材。
【請求項9】
前記断熱材及び前記補助部材を収容する外装体を有する、請求項1乃至
8のいずれか
一項に記載の仕切り部材。
【請求項10】
前記外装体が、金属箔と樹脂のラミネート体である、請求項
9に記載の仕切り部材。
【請求項11】
前記金属箔が、アルミニウム箔、銅箔、錫箔、ニッケル箔、ステンレス箔、鉛箔、錫鉛合金箔、青銅箔、銀箔、イリジウム箔及び燐青銅
箔から選ばれる少なくとも1つである、請求項
10に記載の仕切り部材。
【請求項12】
前記樹脂が、熱可塑性樹脂である、請求項
10又は11に記載の仕切り部材。
【請求項13】
複数の単電池と、断熱材と、該断熱材に隣接して配置され、該
断熱材の厚み方向における該断熱材の収縮範囲を規制する補助部材とを備える組電池であって、
前記断熱材が繊維質を含み、
前記繊維質が紙、コットンシート、ポリイミド繊維、アラミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維及び生体溶解性無機繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つであり、
前記補助部材が、弾性を有し、圧力によって変形するものであり、
該断熱材の密度に対する該補助部材の密度の比が0.50~6.0である
組電池。
【請求項14】
前記断熱材及び前記補助部材を厚み方向から平面視した場合において、前記断熱材の面積に対する前記補助部材の面積の比が0.020~1.0である、請求項
13に記載の組電池。
【請求項15】
前記断熱材の密度が0.23~1.1g/cm
3である、請求項
13又は14に記載の組電池。
【請求項16】
前記補助部材の密度が0.30~2.0g/cm
3である、請求項
13乃至15のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項17】
前記弾性体がゴムである
請求項13乃至16のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項18】
前記厚み方向から前記断熱材及び前記補助部材を平面視した場合において、前記断熱材の形状が長方形であるとともに、前記補助部材が、前記長方形の対向する2辺に沿った位置、前記長方形の3辺に沿った位置、前記長方形の4辺に沿った位置、及び前記長方形の4隅の位置のいずれかに配置されている、請求項
13乃至17のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項19】
前記断熱材が液体を保持可能な多孔質体を含む材料で形成されている、請求項
13乃至
18のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項20】
前記多孔質体
が粒子を含む、請求項
19に記載の組電池。
【請求項21】
前記断熱材及び前記補助部材を収容する外装体を有する、請求項
13乃至20のいずれか一項に記載の組電池。
【請求項22】
前記外装体が、金属箔と樹脂のラミネート体である、請求項21に記載の組電池。
【請求項23】
前記金属箔が、アルミニウム箔、銅箔、錫箔、ニッケル箔、ステンレス箔、鉛箔、錫鉛合金箔、青銅箔、銀箔、イリジウム箔及び燐青銅
箔から選ばれる少なくとも1つである、請求項22に記載の組電池。
【請求項24】
前記樹脂が、熱可塑性樹脂である、請求項
22又は23に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仕切り部材及び組電池に関する。
【0002】
従来、車両や船舶等の移動体に搭載される二次電池(以下、単電池ともいう)を含む電池モジュールに関して、単電池間に配置される仕切り部材、又は仕切り部材の一部として弾性部材を用いる以下の技術が種々検討されている。
【0003】
例えば、単電池の膨張を許容して各単電池に付与される面圧を適正に維持することができる緩衝板を単電池間に配置した二次電池モジュールがある(例えば、特許文献1)。また、隣接する単電池セルへの伝熱を抑制し、効率的に放熱空間へ放熱するために、曲げ弾性率の高い樹脂部材を基材とする熱伝導部材を単電池セル間に配置した組電池がある(例えば、特許文献2)。また、電極群の正極及び負極と電池容器との間を絶縁し、振動を吸収する絶縁部材を有する二次電池モジュールがある(例えば、特許文献3)。さらに、電池の温度制御のために断熱材を使用する技術が開示されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-157747号公報
【文献】特開2011-108617号公報
【文献】特開2013-219027号公報
【文献】米国特許第6146783号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の単電池と、単電池間を仕切る仕切り部材とを含む組電池において、複数の単電池の一つが異常発熱した場合(ここでは「単電池を構成する電極や電解液等を構成する化学物質の一部ないし全てが、単電池内部で発熱を伴いながら分解反応を起こすことにより、単電池の温度が上昇し、単電池の一部ないし全領域が200℃以上になる場合」を意味する)に、その異常発熱した単電池からの熱を、仕切り部材を介して異常発熱していない単電池へ伝達することが考えられている。組電池を構成する複数の単電池は、例えば、厚み方向に並べられ、厚み方向に圧力がかけられた状態で筐体に収められる場合がある。この場合、単電池間に挟まれる仕切り部材や、単電池と単電池以外の部材との間に配置される仕切り部材にも圧力がかる状態となる。仕切り部材は、単電池を筐体に収める際の拘束圧を受けて圧縮される。また、単電池は、充電や高温となることで膨張することが知られている。この場合、仕切り部材に対し、さらなる圧力がかかることになる。仕切り部材は、圧力の増大に伴い、さらに圧縮されることになる。
【0006】
一方で、単電池は、放電により収縮するが、この場合、仕切り部材に対する圧力が緩和されることになる。本発明者等の検討によれば、この放電による収縮によって仕切り部材が元の状態まで復元せず、仕切り部材と二次電池との間に隙間が形成されるという問題が生じる場合があることがわかった。このようにして仕切り部材と二次電池との間に隙間ができると、その隙間に入り込んだ空気が断熱層として作用し、二次電池と仕切り部材との間の好適な熱移動が阻害され、その結果として仕切り部材を介した熱伝導性が低下するという問題が生じる場合があることがわかった。
【0007】
特許文献1~3等の従来技術に係る仕切り部材は、単電池と仕切り部材との緩衝、単電池の放熱、振動の抑制等を目的として、弾性部材(緩衝板、樹脂部材、絶縁部材など)を含む構成となっている。このため、単電池が収縮した場合に、単電池と仕切り部材との間に隙間が形成され密着性が低下するという問題が認識されていなかった。また、特許文献4には電池の温度制御のために断熱材を用いているが、このような断熱材を用いる場合において、高い拘束圧がかかる状況での使用が想定されておらず、そのための対策はなされていなかった。
【0008】
本発明は、仕切り部材と単電池との間に隙間ができるのを回避し得る仕切り部材及び組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様は、以下の仕切り部材及び組電池である。
【0010】
[1]厚み方向と該厚み方向に直交する面方向とを有し、該厚み方向において単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、
断熱材と、
該面方向において該断熱材に隣接して配置され、該厚み方向における該断熱材の収縮範囲を規制する補助部材とを含み、
該断熱材の密度に対する該補助部材の密度の比が0.50~6.0である
仕切り部材。
【0011】
[2] 前記厚み方向から前記断熱材及び前記補助部材を平面視した場合において、前記断熱材の面積に対する前記補助部材の面積の比が0.020~1.0である、[1]に記載の仕切り部材。
[3] 前記断熱材の密度が0.23~1.1g/cm3である、[1]又は[2]に記載の仕切り部材。
[4] 前記補助部材の密度が0.30~2.0g/cm3である、[1]乃至[3]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
[5] 前記厚み方向から前記断熱材及び前記補助部材を平面視した場合において、前記断熱材の形状が長方形であるとともに、前記長方形の対向する2辺に沿った位置、前記長方形の3辺に沿った位置、前記長方形の4辺に沿った位置、及び前記長方形の4隅の位置のいずれかに配置されている、[1]乃至[4]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
【0012】
[6] 前記断熱材が液体を保持可能な多孔質体を含む材料で形成されている、[1]乃至[5]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
[7] 前記多孔質体が繊維質及び粒子の少なくとも一方を含む、[6]に記載の仕切り部材。
【0013】
[8] 前記断熱材及び前記補助部材を収容する外装体を有する、[1]乃至[7]のいずれか一つに記載の仕切り部材。
[9] 前記外装体が、金属箔と樹脂のラミネート体である、[8]に記載の仕切り部材。
[10] 前記金属箔が、アルミニウム箔、銅箔、錫箔、ニッケル箔、ステンレス箔、鉛箔、錫鉛合金箔、青銅箔、銀箔、イリジウム箔及び燐青銅から選ばれる少なくとも1つである、[9]に記載の仕切り部材。
[11] 前記樹脂が、熱可塑性樹脂である、[9]又は[10]に記載の仕切り部材。
【0014】
[12] 複数の単電池と、断熱材と、該断熱材に隣接して配置され、該厚み方向における該断熱材の収縮範囲を規制する補助部材とを備える組電池であって、
該断熱材の密度に対する該補助部材の比が0.50~6.0である
組電池。
【0015】
[13] 前記断熱材を厚み方向から平面視した場合において、前記断熱材の面積に対する前記補助部材の面積の比が0.020~1.0である、[12]に記載の組電池。
[14] 前記断熱材の密度が0.23~1.1g/cm3である、[12]又は[13]に記載の組電池。
[15] 前記補助部材の密度が0.30~2.0g/cm3である、[12]乃至[14]のいずれか一つに記載の組電池。
[16] 前記厚み方向から前記断熱材及び前記補助部材を平面視した場合において、前記断熱材の形状が長方形であるとともに、前記補助部材が、前記長方形の対向する2辺に沿った位置、前記長方形の3辺に沿った位置、前記長方形の4辺に沿った位置、及び前記長方形の4隅の位置のいずれかに配置されている、[12]乃至[15]のいずれか一つに記載の組電池。
【0016】
[17] 前記断熱材が液体を保持可能な多孔質体を含む材料で形成されている、
[12]乃至[16]のいずれか一つに記載の組電池。
[18] 前記多孔質体が繊維質及び粒子の少なくとも一方を含む、[17]に記載の組電池。
【0017】
[19] 前記断熱材及び前記補助部材を収容する外装体を有する、[12]乃至[17]のいずれか一つに記載の組電池。
[20] 前記外装体が、金属箔と樹脂のラミネート体である、[19]に記載の組電池。
[21] 前記金属箔が、アルミニウム箔、銅箔、錫箔、ニッケル箔、ステンレス箔、鉛箔、錫鉛合金箔、青銅箔、銀箔、イリジウム箔及び燐青銅から選ばれる少なくとも1つである、[20]に記載の組電池。
[22] 前記樹脂が、熱可塑性樹脂である、[20]又は[21]に記載の組電池。
【発明の効果】
【0018】
本発明の仕切り部材及び組電池によれば、仕切り部材と単電池との間に隙間ができるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係る仕切り部材の構成例を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示した仕切り部材をA-A線で切断した場合の断面図である。
【
図3】
図3は、仕切り部材が受ける圧力について説明する図である。
【
図5】
図5は、補助部材の他の配置例を示す図である。
【
図6】
図6は、断熱材が補助部材に比べて変形しにくい場合を例示する図である。
【
図7】
図7は、断熱材が補助部材に比べて変形しやすい場合を例示する図である。
【
図12】
図12は、
図11に示した組電池の側面を、手前側の側板を外した状態で模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について説明する。以下の図面に示す実施形態の説明は例示であり、本発明は以下に示す実施形態の構成に限定されない。
【0021】
〔仕切り部材〕
本発明の仕切り部材は、厚み方向と該厚み方向に直交する面方向とを有し、該厚み方向において単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切る仕切り部材であって、断熱材と、該面方向において該断熱材に隣接して配置され、該厚み方向における該断熱材の収縮範囲を規制する補助部材とを含み、該断熱材の密度に対する該補助部材の密度の比が0.50~6.0である。
【0022】
本発明の仕切り部材は、上記した断熱材及び補助部材を含むことで、組電池製造時に拘束圧を受ける場合や単電池の膨張による圧力を受けて圧縮された後、単電池の収縮により圧力が緩和された場合に、断熱材の復元性を確保することができる。すなわち、本発明の仕切り部材は、単電池との密着性の低下を抑制し、単電池との間に隙間ができるのを回避することができる。これにより、本発明の仕切り部材は、熱伝導性の低下を抑制することができる。
【0023】
図1は、本発明の仕切り部材の構成例を示す。
図1には仕切り部材1の正面図が図示されている。
図2は、
図1に示した仕切り部材をA-A線に沿って切断した場合の右側面側の断面を示す。
【0024】
図1及び
図2の例において、仕切り部材1は、高さ方向(H)、幅方向(W)及び厚み方向(D)を有する平板状、或いはシート状の全体形状を有する。仕切り部材1は、厚み方向(D)と厚み方向(D)に直交する面方向(P)とを有する。面方向(P)は、上記した高さ方向(H)及び幅方向(D)と、高さ方向(H)及び幅方向(D)の間にある複数の斜め方向とを含む。
【0025】
仕切り部材1は、その厚み方向(D)において、組電池を構成する単電池間、又は単電池と単電池以外の部材とを仕切るために使用される。仕切り部材1は、断熱材110と、補助部材130と、前記断熱材110を収容する外装体120とを有する。外装体120はオプションである。
【0026】
〔断熱材〕
断熱材はその密度が0.23~1.1g/cm3のものを用いることが好ましい。断熱材の密度が上記下限値以上であると、内部空隙に空気層を多く有するため、断熱性が良好となるために好ましい。一方、断熱材の密度が上記上限値以下であると、圧縮時の変形量が小さくなるために好ましい。また、断熱材の密度は、これらの観点から、より好ましくは0.25g/cm3以上であり、更に好ましくは0.28g/cm3以上であり、一方、より好ましくは1.0g/cm3以下であり、更に好ましくは0.90g/cm3以下である。
【0027】
また、断熱材110は具体的には、多孔質体を含む材料で形成されることが好ましい。多孔質体の採用により、仕切り部材が液体を含む場合において、好適に液体が保持されるので、仕切り部材1内における液体の分布を所望の状態にし易くなる。多孔質体は、繊維質(繊維状無機物ともいう)及び粒子(粉末状無機物ともいう)を含む。
【0028】
繊維質(繊維状無機物)は、例えば、紙、コットンシート、ポリイミド繊維、アラミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維、ガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維及び生体溶解性無機繊維からなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、これらの中でもガラス繊維、ロックウール、セラミック繊維及び生体溶解性無機繊維から選ばれる少なくとも1つであることが特に好ましい。セラミック繊維は、主としてシリカとアルミナからなる繊維(シリカ:アルミナ=40:60~0:100)であり、具体的には、シリカ・アルミナ繊維、ムライト繊維、アルミナ繊維を用いることができる。
【0029】
また、粒子(粉末状無機物)は、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、ケイ酸カルシウム、粘土鉱物、バーミキュライト、マイカ、セメント、パーライト、フュームドシリカ及びエアロゲルからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましく、これらの中でもシリカ粒子、アルミナ粒子、ケイ酸カルシウム及びバーミキュライトから選ばれる少なくとも1つが特に好ましい。ケイ酸カルシウムの種類の中では、ゾノトライト、トバモライト、ワラストナイト、ジャイロライトが好ましく、特に好ましいのはジャイロライトである。花弁状構造を持つジャイロライトは圧縮変形した際にも多孔質構造を保つため、保水性に優れる。粘土鉱物は主としてケイ酸マグネシウム(タルク、セピオライトを含む)、モンモリナイト、カオリナイトである。
【0030】
なお、断熱材110の全体が多孔質体で形成されていてもよい。以下の説明では、断熱材110全体が多孔質体で形成され、液体は多孔質体が有する空洞内に保持される。断熱材110は、圧力に対応できるように弾性を有するのが好ましい。すなわち、断熱材110は、弾性を有することで、拘束圧又は単電池の膨張による圧力を受けて圧縮され、単電池の収縮により単電池からの圧力が緩和されると復元する。したがって、断熱材110は、単電池又は単電池以外の部材との密着状態を維持することができる。
【0031】
〔液体〕
本発明の仕切り部材または本発明の組電池において、前述の液体を保持可能な多孔質体を用いる場合、用いる液体としては、常圧における沸点が80℃以上250℃以下の液体が好ましく、常圧における沸点が100℃以上150℃以下の液体がさらに好ましい。液体は、水の他、例えば、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、炭化水素類、フッ素系化合物及びシリコーン系オイルからなる群から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。これらは1種のみでも、2種以上の混合物として用いることもできる。液体は、不凍性を付与する物質(不凍剤)、防腐剤、pH調整剤などの添加物を含んでもよい。不凍性の付与により、凍結に伴う膨張により外装体が破損するのを回避し得る。また、pH調整剤の添加によって、粉末状無機物から溶出する成分等によって液体のpHが変化し、粉末状無機物、外装体、液体(水)自体が変質する可能性を低減できる。液体に含めるものはこれに限られず、必要に応じて追加することができる。
【0032】
〔外装体〕
外装体120は、液体及び断熱材110を密封状態で収容する。外装体120としては、例えば、樹脂や金属製のフィルムやシートを適用することができる。例えば、金属と樹脂とを積層したフィルムやシートを用いて液体を保持した断熱材をラミネートするのが高い耐熱性及び強度を得る上で好ましい。上記ラミネートに用いる、金属と樹脂との積層構造を有するラミネート体として、樹脂層、金属層、樹脂シーラント層を含む3層以上のラミネート体を適用するのが好ましい。金属は、例えば、アルミニウム箔、銅箔、錫箔、ニッケル箔、ステンレス箔、鉛箔、錫鉛合金箔、青銅箔、銀箔、イリジウム箔及び燐青銅箔などである。特に、アルミニウム箔、銅箔、ニッケル箔であるのが好ましく、アルミニウム箔であるのがさらに好ましい。金属は、上記列記した例示から少なくとも1つ選択されるのが好ましい。
【0033】
また、樹脂として、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の少なくとも一方を用いることができる。もっとも、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、アクリル、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、アラミド等が挙げられる。特に、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレートから選ばれる少なくとも1つが好ましい。
【0034】
外装体120の厚みは特に限定されないが、例えば5μm~200μmである。上記の積層体の場合、金属箔を3μm~50μm、樹脂層を2μm~150μmとしてよい。これにより、金属箔の耐熱性及び低水蒸気透過性を発揮させるとともに、樹脂により密封性を向上させることができる。
【0035】
また、外装体120は、二つの外装体の周縁部を熱融着や接着等により環状に接合することによって、断熱材110が外装体120内に密封(封止)される。或いは、1つの外装体を折り曲げて周縁部を熱融着や接着等により接合し、液体及び断熱材110を密封(封止)してもよい。外装体120は、可撓性(弾性)を有するのが好ましいが、可撓性を有しない場合もあり得る。
【0036】
図1に示す例では、外装体120には、その周縁部を封止する封止部120aが設けられ、断熱材110は、封止部120aによる密閉により外装体120に形成された内部空間111に収容される。
図1に示す例では、内部空間111において、封止部120aと断熱材110との間に隙間120bが設けられている。換言すれば、内部空間111は、仕切り部材1の正面の平面視において、外装体120と断熱材110とが重なる第1の領域S1と、外装体120と断熱材110とが重ならない第2の領域S2とを含む。但し、隙間120bは必ずしも必要ではない。隙間120bは、そこに流体(気体及び液体)が存在しない場合に外装体120の内面同士が接触した状態となっていてもよい。なお、本発明において、内部空間111の容積は、内部空間111の面積と断熱材110の厚みの積として定義される。また、断熱材110の配置は必ずしも内部空間111の中央である必要はなく、また、外装体に対して必ずしも平行である必要はない。
【0037】
〔補助部材〕
補助部材130は、単電池の膨張によって仕切り部材1が圧縮され、単電池の収縮等により圧力が緩和されたときに、断熱材110の復元性を確保するために用いられる。補助部材130は、断熱材110とは異なる弾性率を有することが好ましい。すなわち、補助部材130は、断熱材110と弾性率が異なることにより、断熱材110の収縮範囲を規制し、断熱材110に対する過度の圧縮を抑制することができる。補助部材130は、仕切り部材1の面方向において断熱材110に隣接して配置される。「隣接」は、断熱材110と補助部材130とが隣り合っていることを意味し、断熱材110と補助部材130とが接触している場合と、近接している場合(非接触の場合)とを含む。また、「隣接」には、断熱材110と補助部材130との間に他の部材が介在している場合も含まれる。また、面方向において、補助部材が断熱材の周囲に配置されている場合の他、補助部材が断熱材に囲まれた状態で配置されている場合もある。また、補助部材130の一部又は全部が仕切り部材1の厚み方向において断熱材110と重なっている場合もあり得る。
【0038】
補助部材130は、単電池からの圧力が緩和された場合に復元性を確保する上で、例えば、ゴムなどの弾性部材であることが好ましい。ゴムとしては、例えば、シリコンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴムなどのゴム系材料が使用される。補助部材130は、弾性を有し、圧力によって変形するものであれば、ゴム系材料に限られることはない。
【0039】
(仕切り部材が受ける圧力)
図3は、仕切り部材が受ける圧力について説明する図である。P1は、設置前の単電池間に仕切り部材1が配置された状態を示す。設置前の仕切り部材1の膜厚(仕切り部材の厚み方向の長さ)はdとする。P2は、組電池を設置する際、仕切り部材1が単電池から厚み方向に規定の拘束圧を受けた状態を示す。仕切り部材1は、拘束圧により厚み方向に圧縮されて膜厚はd-Δdとなる。P3は、単電池が充電により膨張し、仕切り部材1が、拘束圧に加えて単電池の膨張による圧力を受けた状態を示す。仕切り部材1は、S2の状態から、さらに圧縮されて膜厚はd-Δd-Δxとなる。
【0040】
単電池は、充電により膨張した後、放電することにより収縮する。このため、仕切り部材1が単電池から受ける圧力は緩和される。仕切り部材1は、単電池から受ける圧力が緩和された場合、圧縮されて膜厚が減少した状態から復元しなければ、単電池との間に隙間が形成され、単電池間の熱抵抗は増大する。そこで、仕切り部材1は、外圧が緩和された場合に、断熱材110とは異なる弾性率を有する補助部材130を配置することにより、復元性を確保する。
【0041】
(補助部材の配置)
図4及び
図5を用いて、補助部材130が、仕切り部材1の面方向において断熱材110に隣接して配置される例について説明する。
図4は、補助部材130の配置例を示す図である。
図4は、仕切り部材1を厚み方向から平面視した図及びB-B線で切断した場合の断面図を示す。
図4に示す仕切り部材1は、面方向において断熱材110の対向する2辺に補助部材130を配置する。また、断面図で示されるように、補助部材130は、断熱材110とともに外装体120に内包される。
【0042】
図5は、補助部材の他の配置例を示す図である。
図5は、仕切り部材1を厚み方向から平面視した図及びC-C線で切断した場合の断面図を示す。
図5に示す仕切り部材1は、面方向において断熱材110の周囲に補助部材130を配置する。また、断面図で示されるように、補助部材130は、断熱材110を内包する外装体120の外部に配置される。
【0043】
補助部材130は、上述のように外装体120に内包されてもよく、外装体120の外部に配置されてもよい。また、厚み方向から前記断熱材及び前記補助部材を平面視した場合において、前記断熱材の形状が長方形であるとともに、前記長方形の対向する2辺に沿った位置、前記長方形の3辺に沿った位置、前記長方形の4辺に沿った位置、及び前記長方形の4隅のいずれかに配置されているものであってもよい。即ち、補助部材130の配置は、
図4に示すように断熱材110の対向する2辺に沿って配置されたり、
図5に示すように、平面矩形環状の補助部材130が断熱材110の周囲に配置されたりする例に限られない。また、補助部材130は、仕切り部材1の面方向において、断熱材110の3辺に沿ってコの字に配置されてもよい。また、補助部材130としては、1又は複数の部材が断熱材110の各辺又は4隅に隣接配置されてもよい。さらに、補助部材130は、断熱材110の厚み方向に開けた1以上の穴の中に配置されてもよい。上記の長方形は矩形の一例である。
【0044】
(密度比)
本発明の仕切り部材及び後述する本発明の組電池において、断熱材110の密度に対する補助部材130の密度の比(以下、密度比ともいう)は、0.50~6.0である。密度比が0.50より低くなると、補助部材130は、断熱材110に比べて大きく圧縮変形する。この場合、外圧に対して断熱材110に過度の荷重がかかるようになり、断熱材110の圧縮後の復元性は低下する。このため、断熱材110と単電池等との密着性が低下して隙間が形成され、単電池間の熱抵抗は増大する。一方、密度比が6.0よりも高くなると、断熱材110が補助部材130に比べて大きく圧縮変形する。この場合、単電池が膨張収縮した際に、断熱材110は単電池の表面に追随して弾性変形しなくなり、単電池との密着性が低下して隙間が形成される。したがって、単電池間の熱抵抗は増大する。密度比を0.50~6.0の範囲内とし、密度比は、好ましくは0.55以上であり、より好ましくは0.60以上であり、一方、好ましくは5.9以下であり、より好ましくは5.8以下である。断熱材110の復元性を確保するためには、補助部材130の密度は、0.30~2.0g/cm3であることが好ましい。
【0045】
(面積比)
断熱材110の面積に対する補助部材130の面積の比(以下、面積比ともいう)は、0.020~1.0であることが好ましい。面積比が1.0以下であると、断熱材110の面積が相対的に高くなるため、仕切り部材1は、異常発熱時に断熱材としての機能を発揮しやすくなる。一方で面積比が0.020以上になると、断熱材110に過度の荷重がかかって圧縮されるのを防ぐことができるため、断熱材110の復元性は向上する傾向にある。その結果として、仕切り部材1と単電池との間に隙間が形成されるのを防ぎ、熱抵抗の増大が抑えられる。以上の観点から、この面積比は、好ましくは0.030以上であり、より好ましくは0.040以上であり、一方、好ましくは0.950以下である。なお、断熱材110の面積は通常、10~200cm2であり、補助部材130の面積は上記面積比となるように選択すると良い。
【0046】
(補助部材の膜厚)
図6及び
図7を用いて、補助部材の膜厚について説明する。断熱材110及び補助部材130の膜厚は、所定の拘束圧における断熱材110及び補助部材130の変形度合に応じて選択することができる。補助部材130は、断熱材110とは異なる弾性率を有するため、所定の拘束圧をかけた場合の変形度合も、断熱材110とは異なる。
【0047】
図6は、断熱材が補助部材に比べて変形しにくい場合を例示する図である。断熱材110が補助部材130に比べて変形しにくい場合、
図6に示すように、補助部材130の膜厚は、断熱材110の膜厚よりも厚くすればよい。断熱材110及び補助部材130に対し、矢印Y1の向きに単電池からの圧力がかかった場合、補助部材130が圧縮されて、断熱材110と補助部材130の膜厚は同程度となる。この場合、断熱材110は、単電池と密着することで効率的に熱伝導を行うことができる。
【0048】
図7は、内包体が補助部材に比べて変形しやすい場合を例示する図である。断熱材110が補助部材130に比べて変形しやすい場合、
図7に示すように、補助部材130の膜厚は、断熱材110の膜厚よりも薄くすればよい。断熱材110及び補助部材130に対し、矢印Y2の向きに単電池からの圧力がかかった場合、内包体110が圧縮されて、断熱材110と補助部材130の膜厚は同程度となる。このように、断熱材110は、補助部材130に比べて変形しやすい場合でも、補助部材に比べて変形しにくい場合と同様に、単電池と密着することで効率的に熱伝導を行うことができる。
【0049】
上述のように、断熱材110及び補助部材130の膜厚は、断熱材110及び補助部材130のうち、変形しやすい部材が厚くなるように決めることができる。断熱材110と単電池との密着性の低下を抑制するためには、断熱材110の膜厚に対する補助部材130の膜厚の比は、0.80~2.0であることが好ましい。
【0050】
<組電池>
本発明の組電池は、複数の単電池と、断熱材と、該断熱材に隣接して配置され、該断熱材が受ける厚み方向における収縮範囲を規制する補助部材とを備える組電池であって、該断熱材の密度に対する該補助部材の比が0.50~6.0であるものである。
【0051】
本発明の組電池において、用いられる断熱材及び補助部材は、前述の本発明の仕切り部材において説明したものと同様である。即ち、本発明の組電池において、断熱材の密度に対する該補助部材の密度の比が0.50~6.0であることが重要であり、断熱材及び補助部材のそれぞれについて、密度の好ましい範囲も同様である。
【0052】
また、本発明の組電池において、前述の本発明の仕切り部材において説明したように、前述の液体や外装体を用いるのが好ましく、その実施態様は本発明の仕切り部材において説明したものと同様である。
【0053】
本発明の仕切り部材及び本発明の組電池は、例えば、電気自動車(EV、Electric Vehicle)、ハイブリッド電気自動車(HEV、Hybrid Electric Vehicle)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV、Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、電動重機、電動バイク、電動アシスト自転車、船舶、航空機、電車、無停電電源装置(UPS、Uninterruptible Power Supply)、家庭用蓄電システム、風力/太陽光/潮力/地熱等の再生可能エネルギーを利用した電力系統安定化用蓄電池システム等に搭載される電池パックに適用される。但し、組電池は、上述のEV等以外の機器に電力を供給する電力源としても使用し得る。
【0054】
〔単電池〕
図8は組電池を構成する単電池の一例を示す平面図であり、
図9は
図8に示した単電池の正面図であり、
図10は、単電池の右側面図である。単電池200は、高さ方向(H)、幅方向(W)、厚み方向(D)を有する直方体状に形成されており、その上面に端子210、端子220が設けられている。単電池200は、例えば、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極、並びに電解質を備えるリチウムイオン二次電池である。リチウムイオン二次電池以外に、リチウムイオン全固体電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、鉛蓄電池等の二次電池を適用し得る。
【0055】
〔組電池〕
図11は、複数の単電池200を用いて形成された組電池100の上面図を示し、
図12は、
図11に示した組電池100から側板300dを取り外した状態を模式的に示す側面図である。
図11及び
図12において、組電池100は、筐体300と筐体300内に収容された複数の単電池200とを含む。筐体300は、底板300eと、底板300eの外周に沿って立設された側板300a、300b、300c及び300dとを有する。
図11及び
図12では、一例として5個の単電池200が例示されているが、単電池の数は適宜選択可能である。
【0056】
筐体300内において、複数の単電池200は厚み方向に並べられ、単電池200間には、上述した仕切り部材1が配置されている。仕切り部材1を介して隣り合う(対向する)単電池200の正極端子(例えば端子210)と負極端子(例えば端子220)とがバスバー301によって電気的に直列に接続されることにより、組電池100は、所定の電力を出力する。
図12に示されるように、組電池100は、筐体300の底板300eの上面と各単電池200との間に、仕切り部材1Aが配置されている。仕切り部材1Aは仕切り部材1と同様の構成を有する。
【0057】
<仕切り部材及び組電池の確認方法>
ある仕切り部材又は組電池が本発明の仕切り部材又は本発明の組電池に該当するかどうかは、次のように確認すればよい。
1)確認の対象とする仕切り部材又は組電池より断熱材及び補助部材を取り出す。
2)取り出した断熱材及び補助部材を乾燥する。乾燥方法としては、例えば、90℃で一昼夜、真空乾燥してもよい。
3)乾燥させた断熱材及び補助部材の密度を測定する。密度の測定法としては、例えば12.5mmΦのハンドパンチを用いて打ち抜きサンプルを作製し、接触型膜厚計(ミツトヨ社製デジマチックインジケータ)を用いて膜厚を測定し、重量は電子天秤を用いて測定することができる。
4)断熱材の密度に対する補助部材の密度の比を算出する。
【実施例】
【0058】
次に、本発明に係る実施例について説明する。
【0059】
<実施例1~4及び比較例1、2>
(実施例1)
断熱材としての40mm×50mmの断熱シート(厚み1.14mm、密度0.85g/cm3、バーミキュライトとガラス繊維を含む)の左右に、補助部材としての5mm×50mmのエチレン・プロピレンゴム(厚み1.03mm、密度1.24g/cm3)を2枚並べて、50mm×50mmの仕切り部材を得た。
【0060】
(1)密度比
上述した実施例1に係る仕切り部材について、断熱材の密度に対する補助部材の密度の比(密度比)は、補助部材の密度(1.2g/cm3)を断熱材の密度(0.85g/cm3)で除算して、1.4と求めた。
【0061】
(2)面積比
実施例1に係る仕切り部材の補助部材の面積は、エチレン・プロピレンゴム(面積は5mm×50mm=250mm2)2枚の面積の合計で500mm2、断熱材の面積は、40mm×50mm=2000mm2と求めた。したがって、実施例1に係る仕切り部材について、断熱材の面積に対する補助部材の面積の比(面積比)は、補助部材の面積(500mm2)を、断熱材の面積(2000mm2)で除算して、求めた実施例1に係る仕切り部材の面積比は、0.25と求めた。なお、補助部材及び断熱材の面積は、仕切り部材を厚み方向から平面視した場合における面積とした。
【0062】
(3)変形率
実施例1に係る仕切り部材の上に金属プレート(ミスミ社製、SUS430製、100mm×150mm×35mm)を載せ、ハイプレッシャージャッキ(アズワン社製、型番:J-15)を用いて、1.3tの荷重を1分間かけた(52kgf/cm2相当)。金属プレートを取り外し、1分間放置後、接触型膜厚計(ミツトヨ社製デジマチックインジケータ)を用いて断熱材の厚みを測定すると0.97mmであった。仕切り部材の変形前の断熱材の厚みをL1、圧縮除圧後、1分間放置した後の断熱材の厚みをL2とし、以下の式1により変形率を算出した。
{(L1-L2)/L1}×100 (式1)
実施例1に係る仕切り部材の変形率は、L1=1.14mm、L2=0.97mmであるため、14.9%と算出された。
【0063】
(実施例2)
実施例1の仕切り部材における断熱材を26mm×50mmの生体溶解性繊維シート(厚み0.93mm、密度0.25g/cm3、アルカリアースシリケートウールを含む)、補助部材を12mm×50mmのニトリルゴム(厚み1.06mm、密度1.4g/cm3)に変更した仕切り部材を得た。実施例2に係る仕切り部材について、実施例1と同じ実験を行った。実施例2に係る仕切り部材において、圧縮除圧後、1分間放置した後の断熱材の厚みは0.87mmであった。実施例2の仕切り部材について、実施例1で説明した方法で密度比、面積比、及び変形率を求めた。
【0064】
(実施例3)
実施例1の仕切り部材における断熱材を75mm×75mmの断熱シート(実施例1で使用したものと同種類)とし、中央に12.5mmΦの穴をあけた。また、断熱材にあけた穴の中に、補助部材として12.5mmΦのフッ素ゴム(厚み1.05mm、密度1.8g/cm3)を入れて75mm×75mmの仕切り部材を得た。実施例1と同様に、仕切り部材上に金属プレートを載せ、2.9tの荷重を1分間かけた(52kgf/cm2相当)。金属プレートを取り外し、1分間放置後、断熱材の厚みを測定すると0.94mmであった。実施例3の仕切り部材について、実施例1で説明した方法で密度比、面積比、及び変形率を求めた。
【0065】
(実施例4)
実施例1の仕切り部材における断熱材を90mm×90mmの無機充填シート(厚み1.02mm、密度0.54g/cm3、ロックウール及び水酸化アルミニウムを含む)とし、中央に12.5mmΦの穴を2か所あけた。また、断熱材にあけた穴の中に、補助部材として12.5mmΦのシリコンスポンジゴム(厚み1.00mm、密度0.40g/cm3)を入れて90mm×90mmの仕切り部材を得た。実施例1と同様に、仕切り部材の上に金属プレートを載せ、4.1tの荷重を1分間かけた(52kgf/cm2相当)。金属プレートを取り外し、1分間放置後、断熱材の厚みを測定すると0.82mmであった。実施例4の仕切り部材について、実施例1で説明した方法で密度比、面積比、及び変形率を求めた。
【0066】
(比較例1)
実施例1の仕切り部材における断熱材を24mm×50mmの断熱シート(実施例1で使用したものと同種類)、補助部材を13mm×50mmのシリコンスポンジゴムに変更した仕切り部材を得た。比較例1に係る仕切り部材について、実施例1と同じ実験を行った。比較例1に係る仕切り部材において、圧縮除圧後、1分間放置した後の断熱材の厚みは0.74mmであった。比較例1の仕切り部材について、実施例1で説明した方法で密度比、面積比、及び変形率を求めた。
【0067】
(比較例2)
実施例1の仕切り部材における断熱材を40mm×50mmの生体溶解性繊維シート(厚み1.06mm、密度0.21g/cm3、アルカリアースシリケートウールを含む)、補助部材を5mm×50mmの軟質クロロプレンゴム(厚み1.07mm、密度1.3g/cm3)に変更した仕切り部材を得た。比較例2に係る仕切り部材について、実施例1と同じ実験を行った。比較例2に係る仕切り部材において、圧縮除圧後、1分間放置した後の断熱材の厚みは0.65mmであった。比較例2の仕切り部材について、実施例1で説明した方法で密度比、面積比、及び変形率を求めた。
【0068】
実施例1~4、比較例1、2に係る密度比(断熱材の密度に対する補助部材の密度の比)、面積比(断熱材の面積に対する補助部材の面積の比)、及び変形率を以下の表1に示す。
【表1】
【0069】
実施例1~4では、仕切り部材の変形率は20%以下となった。この場合、各実施例に係る仕切り部材と単電池との密着性の低下は抑制される。
【0070】
比較例1では、仕切り部材の密度比は0.50よりも低く、補助部材は、断熱材に比べて大きく圧縮変形した。断熱材に過度の荷重がかかって圧縮されたため、変形率は35.1%に上昇した。したがって、比較例1に係る仕切り部材は、圧縮除圧後、単電池との密着性が低下する。
【0071】
比較例2では、仕切り部材の密度比は6.0よりも高く、断熱材は、補助部材に比べて大きく圧縮変形し、圧縮除圧後の変形率は38.7%であった。したがって、比較例2に係る仕切り部材は、圧縮除圧後に断熱材が単電池の表面に追随して弾性変形せず、単電池との密着性は低下する。
【0072】
<実施例5~8及び比較例4、5>
(実施例5)
断熱材としての40mm×50mmの断熱シート(実施例1で使用したものと同種類)の左右に、補助部材としての5mm×50mmのエチレン・プロピレンゴムを2枚並べて、液体としての水1cm3とを、外装体としてのアルミラミネートフィルム(樹脂層としてポリエチレンテレフタレート(外側)、ポリエチレン(内側)を含む;厚み0.15cm)内に配置し、真空脱気シーラー(富士インパルス社製、型番FCB-200)を用いて封止(密閉)することによって高さ90mm、幅90mm、厚み1.40mmの仕切り部材を得た。実施例5に係る仕切り部材1において、圧縮除圧後、1分間放置した後の仕切り部材の厚みは1.17mmであった。実施例5の仕切り部材について、実施例1で説明した方法で密度比、面積比、及び変形率を求めた。
【0073】
(実施例6)
実施例5の仕切り部材における断熱材を26mm×50mmの生体溶解性繊維シート(実施例2で使用したものと同種類)、補助部材を12mm×50mmのニトリルゴム、液体としての水0.5cm3に変更した高さ90mm、幅90mm、厚み1.17mmの仕切り部材を得た。実施例6に係る仕切り部材について、実施例1と同じ実験を行った。実施例6に係る仕切り部材において、圧縮除圧後、1分間放置した後の仕切り部材の厚みは0.957mmであった。実施例6の仕切り部材について、実施例1で説明した方法で密度比、面積比、及び変形率を求めた。
【0074】
(実施例7)
実施例5の仕切り部材における断熱材を75mm×75mmの断熱シート(実施例1で使用したものと同種類)とし、中央に12.5mmΦの穴をあけた。また、断熱材にあけた穴の中に、補助部材として12.5mmΦのフッ素ゴムを入れて、液体としての水3cm3に変更した高さ115mm、幅115mm、厚み1.36mmの仕切り部材を得た。実施例1と同様に、仕切り部材の上に金属プレートを載せ、2.9tの荷重を1分間かけた(52kgf/cm2相当)。金属プレートを取り外し、1分間放置後、仕切り部材の厚みを測定すると1.13mmであった。実施例7の仕切り部材について、実施例1で説明した方法で密度比、面積比、及び変形率を求めた。
【0075】
(実施例8)
実施例5の仕切り部材における断熱材を90mm×90mmの無機充填シート(実施例4で使用したものと同種類)とし、中央に12.5mmΦの穴を2か所あけた。また、断熱材にあけた穴の中に、補助部材として12.5mmΦのシリコンスポンジゴムを入れて、液体としての水4cm3に変更した高さ130mm、幅130mm、厚み1.20mmの仕切り部材を得た。実施例1と同様に、仕切り部材の上に金属プレートを載せ、4.1tの荷重を1分間かけた(52kgf/cm2相当)。金属プレートを取り外し、1分間放置後、仕切り部材の厚みを測定すると1.03mmであった。実施例8の仕切り部材について、実施例1で説明した方法で密度比、面積比、及び変形率を求めた。
【0076】
(比較例3)
実施例5の仕切り部材における断熱材を24mm×50mmの断熱シート(実施例1で使用したものと同種類)、補助部材を13mm×50mmのシリコンスポンジゴムに変更し、液体としての水0.5cm3に変更した高さ90mm、幅90mm、厚み1.41mmの仕切り部材を得た。比較例3に係る仕切り部材について、実施例1と同じ実験を行った。比較例3に係る仕切り部材において、圧縮除圧後、1分間放置した後の仕切り部材の厚みは1.13mmであった。比較例3の仕切り部材について、実施例1で説明した方法で密度比、面積比、及び変形率を求めた。
【0077】
(比較例4)
実施例5の仕切り部材における断熱材を40mm×50mmの生体溶解性繊維シート(実施例2で使用したものと同種類)、補助部材を5mm×50mmのフッ素ゴム、液体としての水1cm3に変更した高さ90mm、幅90mm、厚み1.17mmの仕切り部材を得た。比較例4に係る仕切り部材について、実施例1と同じ実験を行った。比較例4に係る仕切り部材において、圧縮除圧後、1分間放置した後の仕切り部材の厚みは0.902mmであった。比較例4の仕切り部材について、実施例1で説明した方法で密度比、面積比、及び変形率を求めた。
【0078】
【0079】
実施例5~8では、仕切り部材の変形率は20%未満となった。この場合、各実施例に係る仕切り部材と単電池との密着性の低下は抑制される。
【0080】
比較例3では、仕切り部材の密度比は0.50よりも低く、補助部材は、断熱材に比べて大きく圧縮変形した。断熱材に過度の荷重がかかって圧縮されたため、変形率は20.3%に上昇した。したがって、比較例3に係る仕切り部材は、圧縮除圧後、単電池との密着性が低下する。
【0081】
比較例4では、仕切り部材の密度比は6.0よりも高く、断熱材は、補助部材に比べて大きく圧縮変形し、圧縮除圧後の変形率は22.6%であった。したがって、比較例2に係る仕切り部材は、圧縮除圧後に断熱材が単電池の表面に追随して弾性変形せず、単電池との密着性は低下する。
【0082】
以上説明したように、仕切り部材は、断熱材の密度に対する補助部材の密度の比が0.50~6.0である場合に、外圧が変化する環境においても変形率を好適な範囲に抑制することができる。これにより、仕切り部材は、単電池との密着性の低下による熱伝導性の低下を抑制することができる。上述した実施形態にて説明した構成は、発明の目的を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 仕切り部材
100 組電池
110 断熱材
120 外装体
130 補助部材
200 単電池
300 筐体