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特許7067731ヒドリドイオン導電体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】ヒドリドイオン導電体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20220509BHJP
   C01F 11/00 20060101ALI20220509BHJP
   C01F 17/00 20200101ALI20220509BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20220509BHJP
   H01M 8/02 20160101ALN20220509BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20220509BHJP
   H01M 8/22 20060101ALN20220509BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALN20220509BHJP
【FI】
H01B1/06 A
C01F11/00
C01F17/00
H01B13/00 Z
H01M8/02
H01M8/12
H01M8/22
H01M10/0562
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2015228680
(22)【出願日】2015-11-24
(65)【公開番号】P2017098067
(43)【公開日】2017-06-01
【審査請求日】2018-11-16
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 20▲th▼ International Conference on Solid State Ionics Program Guide(発行所:Materials Research Society、発行日:平成27年6月14日) [刊行物等] 2015年(第157回)秋期講演大会 日本金属学会講演概要集(発行所:公益社団法人日本金属学会、発行日:平成27年9月2日)
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(72)【発明者】
【氏名】菅野 了次
(72)【発明者】
【氏名】平山 雅章
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 明尋
(72)【発明者】
【氏名】小林 玄器
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】恩田 春香
【審判官】小川 将之
(56)【参考文献】
【文献】小林玄器、「ヒドリド含有酸化物を基軸とした新規機能性材料の開発」、2013年度第1回TMS研究会講演会 講演予稿集、Vol.2013、No.1、TMS研究会、2013年1月、p.9-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式M AHα(式中、Mは3価の希土類元素、Mはアルカリ土類金属元素またはMg、AはLi、Na、Sc,Co,Ni,Cu,MnまたはFeを示す。0≦x≦2;0≦y≦2;x+y=2;0<z<4;ならびに1≦α<3もしくは3<α<4である。)で示される組成を有してなるヒドリドイオン導電体(ただし、一般式La 2-y Sr LiH 1+y 3-y において0<y≦1で示される組成を有してなるヒドリドイオン導電体を除く。)
【請求項2】
3価の希土類元素が、La、Ce,Sc、Y、Nd、Sm、Eu、およびGdの少なくとも1種から選ばれる請求項1に記載のヒドリドイオン導電体。
【請求項3】
アルカリ土類金属元素が、Ca,SrおよびBaの少なくとも1種から選ばれる請求項1または2に記載のヒドリドイオン導電体。
【請求項4】
一般式M AHα(式中、Mは3価の希土類元素、Mはアルカリ土類金属元素またはMg、AはLi、Na、Sc,Co,Ni,Cu,MnまたはFeを示す。0≦x≦2;0≦y≦2;x+y=2;0<z<4;ならびに1≦α<3もしくは3<α<4である。)で示される組成を有してなるヒドリドイオン導電体(ただし、一般式La 2-y Sr LiH 1+y 3-y において0<y≦1で示される組成を有してなるヒドリドイオン導電体を除く。)を製造する方法であって、M、MおよびAを含む原料化合物を焼成することを特徴とするヒドリドイオン導電体の製造方法。
【請求項5】
焼成が、600~1000℃で行われる請求項4に記載のヒドリドイオン導電体の製造方法。
【請求項6】
焼成が、加圧下または常圧下で行われる請求項4または5に記載のヒドリドイオン導電体の製造方法。
【請求項7】
3価の希土類元素が、La、Ce,Sc、Y、Nd、Sm、Eu、およびGdの少なくとも1種から選ばれる請求項4~6のいずれか1項に記載のヒドリドイオン導電体の製造方法。
【請求項8】
アルカリ土類金属元素が、Ca,SrおよびBaの少なくとも1種から選ばれる請求項4~7のいずれか1項に記載のヒドリドイオン導電体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒドリドイオン導電体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロトンや酸素イオンは、燃料電池や空気電池を代表としたエネルギー変換デバイスの可動イオンとして重要な役割を担っている。ヒドリドイオンは、一価でイオン半径が約1.2 Åと適度な大きさであることから、プロトンや酸素イオンより可動イオンとして適した特徴を持つ。さらに、H2 + 2e- → 2H-の酸化還元電位が-2.25 V(vs. SHE)と高いことから、高電位の新規エネルギー変換デバイスを生み出すポテンシャルを有している。しかしながら、これまでにヒドリドイオン導電体の報告は皆無であり、電子伝導性酸化物中にヒドリドイオンを導入した場合、高速で動く可能性があると報告されているだけであった(非特許文献1)。
【0003】
ヒドリドイオンを結晶構造中に導入可能な酸化物としてはK2NiF4型構造(Fig. 1a)が提案されている(非特許文献2)。CaH2による還元処理でLaSrCoO4-xの格子中にヒドリドイオンを導入できる(LaSrCoO3Hx)とされているが、分解温度の500℃付近でヒドリドが通電する可能性が示唆されたのみで、実験的なヒドリド導電の確証は報告されていない(非特許文献1)。
【0004】
本発明者らは、先に、一般式Ln2-XAH(式中、Lnは3価の希土類元素、Mは4価のCeまたはアルカリ土類金属元素、AはLiまたはNaを示す。Mが4価のCeであるとき、0<x<0.2、y=1+xであり、そしてMがアルカリ土類金属元素であるとき、0<x<1、y=1-xである。)で示される組成を有してなるヒドリドイオン導電体を見出した(特許文献1)が、その類縁体の探索の一環として、「O」に固定されず、幅広い酸素および水素の組成で高い導電特性を有するヒドリドイオン導電体を見出し、本発明に到達したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-204632号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】C. A. Bridges et al., Adv. Mater., 18, 3304 (2006)
【文献】M. A. Hayward et al., Science, 295, 1822 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、Ln2-XAHと比較して、幅広い酸素および水素の組成で高い導電特性を有するヒドリドイオン導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の発明を提供する。
(1)一般式M AHα(式中、Mは3価の希土類元素、Mはアルカリ土類金属元素またはMg、AはLi、Na、Sc,Co,Ni,Cu,MnまたはFeを示す。0≦x≦2;0≦y≦2;x+y=2;0<z<4;ならびに1≦α<3もしくは3<α<4である。)で示される組成を有してなるヒドリドイオン導電体。
(2)3価の希土類元素が、La、Ce,Sc、Y、Nd、Sm、Eu、およびGdの少なくとも1種から選ばれる上記(1)に記載のヒドリドイオン導電体。
(3)アルカリ土類金属元素が、Ca,SrおよびBaの少なくとも1種から選ばれる上記(1)または(2)に記載のヒドリドイオン導電体。
(4)一般式M AHα(式中、Mは3価の希土類元素、Mはアルカリ土類金属元素またはMg、AはLi、Na、Sc,Co,Ni,Cu,MnまたはFeを示す。0≦x≦2;0≦y≦2;x+y=2;0<z<4;ならびに1≦α<3もしくは3<α<4である。)で示される組成を有してなるヒドリドイオン導電体を製造する方法であって、M、MおよびAを含む原料化合物を焼成することを特徴とするヒドリドイオン導電体の製造方法。
(5)焼成が、600~1000℃で行われる上記(4)に記載のヒドリドイオン導電体の製造方法。
(6)焼成が、加圧下または常圧下で行われる上記(4)または(5)に記載のヒドリドイオン導電体の製造方法。
(7)3価の希土類元素が、La、Ce,Sc、Y、Nd、Sm、Eu、およびGdの少なくとも1種から選ばれる上記(4)~(6)のいずれかに記載のヒドリドイオン導電体の製造方法。
(8)アルカリ土類金属元素が、Ca,SrおよびBaの少なくとも1種から選ばれる上記(4)~(7)のいずれかに記載のヒドリドイオン導電体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、Ln2-XAHと比較して、幅広い酸素および水素の組成で高い導電特性を有するヒドリドイオン導電体を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】BaLiHOの結晶構造解析結果を示す。
図2】BaLiHOのヒドリド導電特性を示す。
図3】BaLiHOの輸率を示す。
図4】LaSrLiHのX線回折図形を示す。
図5】SrLiHOのX線回折図形を示す。
図6】SrLiHOのヒドリド導電特性を示す。
図7】La1.4Sr0.6LiH2.4のX線リートベルト解析結果を示す。
図8】La1.6Sr0.4LiH2.6のX線リートベルト解析結果を示す。
図9】La0.7Sr1.3LiH1.7の中性子リートベルト解析結果を示す。
図10】LaSrLiHO系のヒドリド導電特性を示す。
図11】BaScH0.93。05のX線回折図形を示す。
図12】BaScH0.93。05のヒドリド導電特性を示す。
図13】本発明のヒドリドイオン導電体を用いた全固体ヒドリドイオン電池の構造、および放電曲線の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のヒドリドイオン導電体は、一般式M AHαで示される組成を有してなる。式中、Mは3価の希土類元素、Mはアルカリ土類金属元素またはMg、AはLi、Na、Sc,Co,Ni,Cu,MnまたはFeを示す。0≦x≦2;0≦y≦2;x+y=2;0<z<4;ならびに1≦α<3もしくは3<α<4である。ヒドリド導電特性の点から、αは、好適には1≦α≦2であり、zは、1<z<4である。
【0012】
3価の希土類元素は、La、Ce、Sc、Y、Nd、Sm、Eu、およびGdの少なくとも1種から選ばれるが、イオン半径、コストの点からはLaが好ましい。また、アルカリ土類金属元素は、イオン半径の点から、Ca,SrおよびBaの少なくとも1種から選ばれるが好適である。また、Aとしては、イオン半径の点からはLiが好ましい。
【0013】
本発明のヒドリドイオン導電体は、M、MおよびAを含む原料化合物を焼成することにより得られる。好適にはM、MまたはAの酸化物、水素化物、炭酸塩もしくは硝酸塩等、Aの水素化物、を含む原料化合物を焼成することにより得られる。Mの酸化物としては、La、Sc、Y、Nd、Sm、Eu、またはGdが挙げられる。また、Mの酸化物としては、CaO,SrO、BaO、またはMgOが挙げられる。Aの酸化物としては、LiO,NaO,Li,またはNaが挙げられる。原料の混合は、ボールミル等を用いて行うのが好適である。焼成を加圧下に行う場合には、MおよびMの酸化物もしくは水素化物、ならびにAHを用いるのが好適である。これらの原料化合物の仕込み比は、目的とする組成比に応じて調整されるが、たとえば、Liと反応容器であるAuチューブの合金化による組成ずれの回避、合成時の水素分圧の制御等のために、随時微調整され得る。
【0014】
焼成は、通常600~1000℃で行われる。好適には1~10GPa程度の加圧下で、620~750℃である。加圧下での焼成に際して、反応器は、特に制限されないが、Au、Ptまたは岩塩カプセル内に所定仕込み比で原料化合物を封入して高圧反応を行うのが好適である。反応時間は、反応条件に依存するが、通常、30分~24時間程度から選ばれる。
【0015】
また、本発明のヒドリドイオン導電体は、無機複合酸化物等の固相反応に用いられる、通常の電気炉内で600~1000℃程度の温度で製造され得、その焼成は、水素気流中で低圧ないし常圧下で、1~24時間程度で行われるのが好適である。
【0016】
本発明のヒドリドイオン導電体は、そのヒドリドイオン導電特性を利用して、ヒドリドイオン二次電池、アンモニア燃料電池等に好適に利用し得る。たとえば、後述の実施例5に示すような、全固体ヒドリドイオン電池を得ることができる。
【実施例
【0017】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。
実施例1 (Ba LiHOの合成)
(A)合成
合成は高圧合成法によって行った。以下に合成条件を示す。
原料: BaO、BaH、LiH
遊星ボールミルにより150rpmで3時間、粉砕・混合した。
条件: Auチューブに封入し、圧力媒体であるパイロフィライトセルに組み込み、キュービックアンビルセルを用いて、 1GPa、650℃で60分間、焼成した。
【0018】
原料の仕込み比は、LiとAuチューブの合金化による組成ずれの回避と合成時の水素分圧の制御のため、Li過剰のBaO:BaH:LiH= 1:1:1.5とした。
(B)結晶構造の同定
合成した試料の結晶構造は、Miniflex 600により粉末X線回折測定により決定した。放射光X線回折は、Spring-8 BL02B2ラインにて測定を行った(波長:0.5Å、測定範囲:1°~75°)。また、構造解析にはプログラムRIEAN-FPを用いた。
(C)粉末中性子回折測定
J-PARC iMateriaを使用して測定を行った。構造解析にはプログラムZ-Cooleを用いた。
【0019】
図1は、BaLiHOの結晶構造解析を示し、(a) および(b)は、放射光粉末X線回折測定から得られたデータを用いたリートベルト解析の結果、(c)は結晶構造モデルを示す。BaLiHOは、空間群I4/mmmで指数付けされ、KNiF4型構造をとることが明らかとなった。
(D)交流インピーダンス測定
高圧合成後の凝結した試料を研摩し、直径約3mm、厚さ約1mmのペレットに成型した。ペレットの両面に電極として金またはパラジウムを蒸着させ、Ar雰囲気中で不活性雰囲気用測定セル(Plobo Stat)を用いて測定した。以下に測定条件を記す。
測定装置:Solatron 1260
測定条件:室温~400℃、周波数1Hz~10MHz、交流電圧50-500mV
図2にBaLiHOのヒドリド導電特性を示す。(a)はアレニウスプロット、(b)および(c)はCole-Coleプロットを示す。インピーダンス測定結果から、BaLiHOの導電率σ(S/cm)は、4.2×10-6(250℃)および7.4×10-3(300℃)であり、活性化エネルギーEaは62.5kJ/molであった。
【0020】
金を電極として交流インピーダンスを測定した場合における、300℃における急激なイオン導電率の上昇は、イオンブロッキング電極である金とBaLiHOの副反応に由来する可能性があったため、水素透過電極であるパラジウムを用いて、同様に交流インピーダンスを測定した。その結果、電極の差異による、イオン導電率の有意な差は認められず、300℃付近で生じる急激なイオン導電率の上昇が同様に観察された。また、パラジウム電極を用いた測定において、300℃以上の温度域で、低周波側に電荷移動抵抗由来の円弧が確認されたことから、水素ガスがヒドリドに還元される反応が生じていることが示唆された。以上から、300℃以上での温度域で発現する高いイオン導電率は、副反応由来ではなく、BaLiHOの本質的な特性であると考えられる。
(E)直流分極測定
交流インピーダンス測定により得られたイオン導電率における電子伝導の寄与を検討するために、直流分極測定を行った。測定には、交流インピーダンス測定と同一のペレットおよび装置を使用し、水素気流下で測定した。測定条件は次のとおりである。
【0021】
電圧:0.2V~2V、緩和時間:10分間~60分間、温度:300℃
図3に、BaLiHOの輸率の測定結果を示す。電子とホールの混合伝導度は観測されたイオン導電率と比較して無視できる値であることがわかり、電子が伝導に寄与していないことが明らかとなった。したがって、BaLiHOは、輸率1のヒドリド導電体であることがわかった。
実施例2 (常圧合成法によるLaSrLiHおよびSrLiHOの合成)
原料: LaO、LaH,LiH、SrH,SrO, LiO
合成は、常圧下に、650℃、12時間、水素雰囲気下で行った。
【0022】
得られたLaSrLiHのX線回折図形を図4に示す。さらに、得られたSrLiHOのX線回折図形およびヒドリド導電特性(T≧300℃)を、それぞれ図5および6に示す。
実施例3 (高圧合成法によるLaSrLiHO系の合成)
原料: LaO、LaH,LiH、SrH,SrO, LiO
合成は高圧合成法によって行った。以下に合成条件を示す。
条件: 2GPa、650℃、0.5時間、Auチューブ
得られたLa1.4Sr0.6LiH2.4およびLa1.6Sr0.4LiH2.6のX線リートベルト解析結果とLa0.7Sr1.3LiH1.7の中性子リートベルト解析結果をそれぞれ図7図8図9に示し、LaSrLiHO系のヒドリド導電特性を図10に示す。
実施例4(高圧合成法によるBaScH0.93.05の合成)
原料: BaO、BaH、Sc2O3
遊星ボールミルにより300rpmで3時間、粉砕・混合した。
条件: 前駆体を岩塩カプセルに封入し、圧力媒体であるパイロフィライトセルに組み込み、キュービックアンビルセルを用いて、3GPa、800℃で30分間、焼成した。原料の仕込み比は、BaO:BaH:Sc2O3= 3:1:1とした。合成時の反応容器内の水素圧を高めるために、水素発生剤としてNaHBH4とCa(OH)2を1:1で混合した粉末を岩塩カプセル内に添加した。
【0023】
得られたBaScH0.93.05のX線回折図形を図11に、ヒドリド導電特性を図12に示す。
実施例5(全固体ヒドリドイオン電池)
図13は、本発明のヒドリドイオン導電体を用いた全固体ヒドリドイオン電池(Ti/ヒドリドイオン導電体/TiH)の構造、および得られる放電曲線の一例を示す。図13において、電解質はヒドリドイオン導電体;正極はTiH+ヒドリドイオン導電体;ならびに負極はTi+ヒドリドイオン導電体、である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、ヒドリドを構造中に含む酸化物によって、固体中で高いイオン伝導を持つヒドリドイオン導電体を提供し得、固体電解質燃料電池等の電解質として利用し得る。さらには、ヒドリドイオン導電体を用いた新たなエネルギーデバイスを生み出す可能性を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13