(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】断続的な再修復プラズマを用い、ALDによる酸化ケイ素表面コーティングを使用したラジカル再結合の最少化
(51)【国際特許分類】
C23C 16/50 20060101AFI20220509BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20220509BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20220509BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
C23C16/50
C23C16/44 B
H01L21/316 X
H01L21/31 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2016054587
(22)【出願日】2016-03-18
【審査請求日】2019-03-15
(32)【優先日】2015-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バドリ・エヌ.・バラダラジャン
(72)【発明者】
【氏名】ボー・ゴン
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル・イー.・バッザー
(72)【発明者】
【氏名】フアタン・チュウ
(72)【発明者】
【氏名】バート・ジェイ.・バン シュラベンディック
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ホーン
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/111498(WO,A1)
【文献】特開2009-188198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/50
C23C 16/44
H01L 21/316
H01L 21/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔プラズマ加工を行うために使用される反応チャンバを調整する方法であって、
前記反応チャンバ内に基板が存在しない状態で、原子層堆積プロセスによって前記反応チャンバ内部の露出された表面上に低再結合材料コーティングを形成するステップと、
1つまたは複数の基板に対して遠隔プラズマ操作を実施した後に、前記反応チャンバを酸化プラズマに露出させて、前記反応チャンバ内部の前記露出された表面を再調整し、それにより前記低再結合材料コーティングを再形成するステップと
を含
み、前記低再結合材料コーティングは、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、およびこれらのうちの任意の2以上の組合せのいずれか一つである、方法。
【請求項2】
前記低再結合材料コーティングを形成した後に、前記遠隔プラズマ操作を行って、前記反応チャンバ内で1枚または数枚の基板を加工するステップをさらに含み、前記遠隔プラズマ操作が、前記反応チャンバ内部の前記露出された表面の少なくとも一部への第2のコーティングの形成をもたらし、前記第2のコーティングが、前記遠隔プラズマ操作中に、前記低再結合材料コーティングよりも高い割合のラジカル再結合をもたらす請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応チャンバを前記酸化プラズマに露出させるステップが、前記第2のコーティングを改質して、前記低再結合材料コーティングを再形成する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応チャンバが、約0.05~5秒の期間にわたって前記酸化プラズマに露出される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記期間が約0.1~1秒の間である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記反応チャンバ内部の露出された表面上に前記低再結合材料コーティングを形成するための前記原子層堆積プロセスが、
(a)第1の反応物を前記反応チャンバ内に流し、前記第1の反応物を、前記反応チャンバ内部の露出された表面上に吸着させるステップと、
(b)前記第1の反応物を前記反応チャンバからパージするステップと、
(c)第2の反応物を前記反応チャンバ内に流すステップと、
(d)前記反応チャンバ内部の前記露出された表面をプラズマに露出させて、前記第1の反応物と前記第2の反応物との表面反応を推し進めて、前記反応チャンバ内部の前記露出された表面上に低再結合材料コーティングを形成するステップと、
(e)前記低再結合材料コーティングが最終的なコーティング厚さに達するまで、ステップ(a)~(d)を繰り返すステップと
を含む請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記低再結合材料コーティングの前記最終的なコーティング厚さが、前記反応チャンバ内部の基板支持体上での前記低再結合材料コーティングの平均厚さによって測定されたときに、少なくとも約50Åである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記低再結合材料コーティングが酸化ケイ素を含む請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記低再結合材料コーティングが酸化ケイ素を含み、前記遠隔プラズマ操作を実施するステップが、前記1枚または数枚の基板上にケイ素含有被膜を堆積するステップを含み、前記第2のコーティングがケイ素含有材料を含む請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の反応物と前記第2の反応物の少なくとも一方が、遠隔プラズマチャンバから前記反応チャンバ内に流れ、前記遠隔プラズマチャンバが、前記反応チャンバの近位に位置され、シャワーヘッドによって前記反応チャンバから離隔される請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第1
の反応物と前記第2の反応物の両方が、前記遠隔プラズマチャンバから前記反応チャンバ内に流れ、前記酸化プラズマが、前記遠隔プラズマチャンバ内で発生され、前記シャワーヘッドを通って前記反応チャンバ内に流れる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化プラズマが、前記反応チャンバ内でインサイチュで発生される請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記遠隔プラズマ操作を実施するステップが、
前記1枚または数枚の基板のうちの1枚を前記反応チャンバ内に提供するステップと、
ケイ素含有反応物をインサイチュプラズマに露出させずに、前記ケイ素含有反応物を前記反応チャンバ内に流すステップと、
前記反応チャンバの近位に位置決めされ、シャワーヘッドによって前記反応チャンバから離隔された遠隔プラズマチャンバ内で水素プラズマを発生し、前記水素プラズマを、前記シャワーヘッドを通して前記反応チャンバ内に流し、その一方で、前記ケイ素含有反応物が前記反応チャンバ内に流されるステップと、
前記基板を前記ケイ素含有反応物と前記水素プラズマとに同時に露出させて、前記基板上にケイ素含有被膜を堆積するステップと
を含む請求項2または請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記反応チャンバが前記酸化プラズマに露出されるときに、1枚または数枚の基板が前記反応チャンバ内に存在する請求項2、請求項3、または請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記基板が前記反応チャンバ内にある状態で前記反応チャンバを前記酸化プラズマに露出させた後、第2の遠隔プラズマ操作を実施して、前記反応チャンバ内で前記基板をさらに加工するステップであって、前記第2の遠隔プラズマ操作が、再び前記第2のコーティングの形成をもたらすステップと、
前記第2の遠隔プラズマ操作を実施した後、前記基板が前記反応チャンバ内に存在する状態で前記反応チャンバを第2の酸化プラズマに露出させて、前記反応チャンバ内部の前記露出された表面を再び再調整して、前記第2のコーティングを改質して、前記低再結合材料コーティングを再形成するステップと
をさらに含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(a)1枚または数枚の基板に対して遠隔プラズマ操作を実施するステップと、(b)前記反応チャンバを前記酸化プラズマに露出させて、前記反応チャンバ内部の前記露出された表面を再調整するステップとを循環して繰り返すことをさらに含み、ステップ(b)の各繰返しの合間に、ステップ(a)において約1~50枚の基板が加工される請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記反応チャンバ内部の前記露出された表面上に存在する低再結合材料コーティングおよび第2のコーティングを除去するために、前記反応チャンバを洗浄するステップであって、前記反応チャンバをフッ素含有プラズマに露出させるステップと、
前記反応チャンバを洗浄した後、請求項1に記載の方法を繰り返すステップと
をさらに含む
請求項2、3、または9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
1枚または数枚の基板に対して前記遠隔プラズマ操作を実施するステップであって、前記遠隔プラズマ操作が、
前記1枚または数枚の基板のうちの1枚を前記反応チャンバ内に提供するステップと、
ケイ素含有反応物をインサイチュプラズマに露出させずに、前記ケイ素含有反応物を前記反応チャンバ内に流すステップと、
前記反応チャンバの近位に位置決めされ、シャワーヘッドによって前記反応チャンバから離隔された遠隔プラズマチャンバ内で水素プラズマを発生し、前記水素プラズマを、前記シャワーヘッドを通して前記反応チャンバ内に流し、その一方で、前記ケイ素含有反応物が前記反応チャンバ内に流されるステップと、
前記基板を前記ケイ素含有反応物と前記水素プラズマとに同時に露出させて、前記基板上にケイ素含有被膜を堆積するステップと
をさらに含む請求項1ないし17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記低再結合材料コーティングが、前記反応チャンバ内部の基板支持体上での前記低再結合材料コーティングの平均厚さによって測定されたときに、約50~500Åの間の厚さに形成される請求項1ないし18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記低再結合材料コーティングが、酸化ケイ素を含み、
前記方法が、1枚または数枚の基板を遠隔プラズマに露出させることによって前記1枚または数枚の基板上で前記遠隔プラズマ操作を実施し、それにより前記1枚または数枚の基板上に炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、または酸炭化ケイ素を堆積することをさらに含み、
前記遠隔プラズマ操作を実施するステップが、前記反応チャンバ内部の前記露出された表面上に炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、または酸炭化ケイ素を形成し、
前記反応チャンバを前記酸化プラズマに露出させるステップが、前記反応チャンバ内部の前記露出された表面上の前記炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、または酸炭化ケイ素を酸化させることによって前記低再結合材料コーティングを再形成し、それにより前記反応チャンバ内部の前記露出された表面上の酸化ケイ素を再形成する請求項1ないし19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
基板を加工するための遠隔プラズマ加工装置であって、
反応チャンバと遠隔プラズマチャンバと制御装置とを備え、
前記反応チャンバが、
チャンバ内面と、
前記反応チャンバ内部で前記基板を支持するための基板支持体と、
前記反応チャンバから材料を除去するための排出口と
を備え、
前記遠隔プラズマチャンバが、
前記遠隔プラズマチャンバ内部でプラズマを発生するためのプラズマ発生器と、
前記遠隔プラズマチャンバにガスを送給するための入口と、
前記遠隔プラズマチャンバ内で発生されたプラズマを前記反応チャンバに提供するための出口と
を備え、
前記制御装置が、
記反応チャンバ内に基板が存在しない状態で、原子層堆積プロセスによって前記反応チャンバの前記チャンバ内面上に低再結合材料コーティングの形成をもたらすように構成され、
前記基板に対して遠隔プラズマ操作を実施した後に、前記反応チャンバを酸化プラズマに露出させて、前記チャンバ内面を再調整し、それにより前記低再結合材料コーティングの再形成をもたらすように構成され、
前記低再結合材料コーティングは、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、およびこれらのうちの任意の2以上の組合せのいずれか一つである、
遠隔プラズマ加工装置。
【請求項22】
前記制御装置が、
前記低再結合材料コーティングを形成した後に、前記反応チャンバ内に前記基板の提供をもたらすように構成され、
前記遠隔プラズマチャンバ内でプラズマを発生し、前記プラズマを前記反応チャンバに提供して、前記基板に対する前記遠隔プラズマ操作の実施をもたらすように構成される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記制御装置が、前記基板に対する前記遠隔プラズマ操作中に、前記チャンバ内面の少なくとも一部への第2のコーティングの形成をもたらすように構成され、前記第2のコーティングが、前記遠隔プラズマ操作中に、前記低再結合材料コーティングよりも高い割合のラジカル再結合をもたらす請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記制御装置が、前記第2のコーティングを改質して、前記低再結合材料コーティングの再形成をもたらすように構成される請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記遠隔プラズマチャンバの前記出口が、前記遠隔プラズマチャンバを前記反応チャンバから離隔するシャワーヘッドである請求項21ないし24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記制御装置が、約0.05~5秒の間の期間にわたって前記反応チャンバを前記酸化プラズマに露出させるように構成される請求項21ないし25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
前記制御装置が、
(a)第1の反応物を前記反応チャンバ内に提供し、前記第1の反応物を、前記反応チャンバ内部の前記チャンバ内面上に吸着させ、
(b)前記第1の反応物を前記反応チャンバからパージさせ、
(c)第2の反応物を前記反応チャンバ内に流入させ、
(d)前記反応チャンバを堆積プラズマに露出させて、前記第1の反応物と前記第2の反応物との表面反応を推し進めて、前記反応チャンバ内部の前記チャンバ内面上に前記低再結合材料コーティングを形成させ、
(e)前記低再結合材料コーティングが最終的なコーティング厚さに達するまで、ステップ(a)~(d)を繰り返させることによって、
前記低再結合材料コーティングの形成をもたらすように構成される請求項21ないし26のいずれか一項に記載の装置。
【請求項28】
前記制御装置が、前記反応チャンバのフッ素含有プラズマへの露出をもたらすように構成される請求項21ないし27のいずれか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記制御装置が、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、イットリア安定化ジルコニア、およびそれらの組合せからなる群より選択された材料を含むような前記低再結合材料コーティングの形成をもたらすように構成される請求項21ないし28のいずれか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記制御装置が、酸化ケイ素を含むような前記低再結合材料コーティングの形成をもたらすように構成される請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記制御装置が、酸化ジルコニウムを含むような前記低再結合材料コーティングの形成をもたらすように構成される請求項29に記載の装置。
【請求項32】
前記制御装置が、酸化アルミニウムを含むような前記低再結合材料コーティングの形成をもたらすように構成される請求項29に記載の装置。
【請求項33】
前記制御装置が、酸化ハフニウムを含むような前記低再結合材料コーティングの形成をもたらすように構成される請求項29に記載の装置。
【請求項34】
前記制御装置が、酸化イットリウムを含むような前記低再結合材料コーティングの形成をもたらすように構成される請求項29に記載の装置。
【請求項35】
前記制御装置が、イットリア安定化ジルコニアを含むような前記低再結合材料コーティングの形成をもたらすように構成される請求項29に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2015年3月26日出願の「MINIMIZING RADICAL RECOMBINATION」という名称の米国仮特許出願第62/138,810号の利益を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0002】
半導体加工は、典型的には、特殊化された半導体加工装置内で行われる。そのような装置は、しばしば、加工中に基板を収容する反応チャンバを含む。また、反応チャンバは、典型的には、半導体製造プロセスを達成するための様々なハードウェア部品(例えば基板支持体やシャワーヘッドなど)を含む。いくつかの場合には、基板を加工するために反応チャンバが使用する前に、反応チャンバを処理することがある。反応チャンバ処理は、多くの異なる形態を取ってよく、様々な理由で実施して差し支えない。
【発明の概要】
【0003】
本明細書における特定の実施形態は、反応チャンバを調整する方法に関する。本明細書における特定の他の実施形態は、反応チャンバを調整するために構成された装置に関する。反応チャンバは、遠隔プラズマ加工を使用して基板を加工するために使用してよい。様々な実施形態において、反応チャンバを調整するステップは、低い度合いのラジカル再結合をもたらす材料でチャンバ内面をコーティングするステップを含む。また、チャンバは、低再結合材料を再形成するために定期的に再調整してもよい。
【0004】
本明細書における実施形態の一態様では、遠隔プラズマ加工を行うために使用される反応チャンバを調整するための方法であって、反応チャンバ内に基板が存在しない状態で、原子層堆積プロセスによって反応チャンバ内部の露出された表面上に低再結合材料コーティングを形成するステップと、1つまたは複数の基板に対して遠隔プラズマ操作を実施した後に、反応チャンバを酸化プラズマに露出させて、反応チャンバ内部の露出された表面を再調整し、それにより低再結合材料コーティングを再形成するステップとを含む方法が提供される。
【0005】
この方法は、低再結合材料コーティングを形成した後に、遠隔プラズマ操作を行って、反応チャンバ内で1枚または数枚の基板を加工するステップをさらに含むことができ、遠隔プラズマ操作が、反応チャンバ内部の露出された表面の少なくとも一部への第2のコーティングの形成をもたらし、第2のコーティングが、遠隔プラズマ操作中に、低再結合材料コーティングよりも高い割合のラジカル再結合をもたらす。様々な場合に、反応チャンバを酸化プラズマに露出させるステップが、第2のコーティングを改質して、低再結合材料コーティングを再形成する。
【0006】
いくつかの実施形態では、反応チャンバは、約0.05~5秒の期間にわたって酸化プラズマに露出される。そのような場合には、期間は、約0.1~1秒の間でよいこともある。
【0007】
反応チャンバ内部の露出された表面上に低再結合材料コーティングを形成するための原子層堆積プロセスが、(a)第1の反応物を反応チャンバ内に流し、第1の反応物を、反応チャンバ内部の露出された表面上に吸着させるステップと、(b)第1の反応物を反応チャンバからパージするステップと、(c)第2の反応物を反応チャンバ内に流すステップと、(d)反応チャンバ内部の露出された表面をプラズマに露出させて、第1の反応物と第2の反応物との表面反応を推し進めて、反応チャンバ内部の露出された表面上に低再結合材料コーティングを形成するステップと、(e)低再結合材料コーティングが最終的なコーティング厚さに達するまで、ステップ(a)~(d)を繰り返すステップとを含んでよい。低再結合材料コーティングの最終的な厚さは、反応チャンバ内部の基板支持体上での低再結合材料コーティングの平均厚さによって測定されたときに、少なくとも約50Åでよい。
【0008】
様々な実施形態において、低再結合材料コーティングは、酸化ケイ素を含む。いくつかのそのような実施形態では、遠隔プラズマ操作を実施するステップは、1枚または数枚の基板上にケイ素含有被膜を堆積するステップを含み、第2のコーティングは、ケイ素含有材料を含む。
【0009】
プラズマは、多くの異なる方法で発生させてよい。いくつかの実施形態では、第1と第2の反応物の少なくとも一方が、遠隔プラズマチャンバから反応チャンバ内に流れ、遠隔プラズマチャンバは、反応チャンバの近位に位置され、シャワーヘッドによって反応チャンバから離隔される。例えば、第1と第2の反応物の両方が、遠隔プラズマチャンバから反応チャンバ内に流れるものとしてよく、酸化プラズマは、遠隔プラズマチャンバ内で発生され、シャワーヘッドを通って反応チャンバ内に流れるようにしてもよい。いくつかの他の実施形態では、酸化プラズマが、反応チャンバ内でインサイチュで発生される。
【0010】
遠隔プラズマ操作は、いくつかのステップを含んでもよい。例えば、遠隔プラズマ操作を実施するステップは、1枚または数枚の基板のうちの1枚を反応チャンバ内に提供するステップと、ケイ素含有反応物をインサイチュプラズマに露出させずに、ケイ素含有反応物を反応チャンバ内に流すステップと、反応チャンバの近位に位置決めされ、シャワーヘッドによって反応チャンバから離隔された遠隔プラズマチャンバ内で水素プラズマを発生し、水素プラズマを、シャワーヘッドを通して反応チャンバ内に流し、その一方で、ケイ素含有反応物が反応チャンバ内に流されるステップと、基板をケイ素含有反応物と水素プラズマとに同時に露出させて、基板上にケイ素含有被膜を堆積するステップとを含むものとしてよい。
【0011】
反応チャンバが酸化プラズマに露出されるとき、反応チャンバは、基板を含むことも、含まないこともある。いくつかの実施形態では、反応チャンバが酸化プラズマに露出されるとき、1枚または数枚の基板が反応チャンバ内に存在する。他の実施形態では、チャンバを酸化プラズマに露出させる前に基板が取り除かれる。
【0012】
いくつかの実施形態では、この方法は、基板が反応チャンバ内にある状態で反応チャンバを酸化プラズマに露出させた後、第2の遠隔プラズマ操作を実施して、反応チャンバ内で基板をさらに加工するステップであって、第2の遠隔プラズマ操作が、再び第2のコーティングの形成をもたらすステップと、第2の遠隔プラズマ操作を実施した後、基板が反応チャンバ内に存在する状態で反応チャンバを第2の酸化プラズマに露出させて、反応チャンバ内部の露出された表面を再び再調整して、第2のコーティングを改質して、低再結合材料コーティングを再形成するステップとをさらに含むものとしてよい。
【0013】
いくつかの場合には、この方法は、循環して実施してもよい。例えば、この方法は、(a)1枚または数枚の基板に対して遠隔プラズマ操作を実施するステップと、(b)反応チャンバを酸化プラズマに露出させて、反応チャンバ内部の露出された表面を再調整するステップとを循環して繰り返すことを含むことができ、ステップ(b)の各繰返しの合間に、ステップ(a)において約1~50枚の基板が加工される。
【0014】
1バッチの基板が加工された後、反応チャンバ内部の露出された表面上に存在するすべての低再結合材料コーティングおよび第2のコーティングを除去するために反応チャンバを洗浄することができ、この洗浄は、反応チャンバをフッ素含有プラズマに露出させることを含む。洗浄後、この方法を繰り返すしてもよい。
【0015】
開示される実施形態の別の態様では、基板を加工するための遠隔プラズマ加工装置であって、反応チャンバを含み、反応チャンバが、チャンバ内面と、反応チャンバ内で基板を支持するための基板支持体と、反応チャンバから材料を除去するための排出口とを含み、遠隔プラズマ加工装置がさらに、遠隔プラズマチャンバを含み、遠隔プラズマチャンバが、遠隔プラズマチャンバ内部でプラズマを発生するためのプラズマ発生器と、遠隔プラズマチャンバにガスを送給するための入口と、遠隔プラズマチャンバ内で発生されたプラズマを反応チャンバに提供するための出口とを含み、遠隔プラズマ加工装置がさらに、制御装置を含み、制御装置が、反応チャンバ内に基板が存在しない状態で、原子層堆積プロセスによって反応チャンバのチャンバ内面上に低再結合材料コーティングを形成するための命令と、基板に対して遠隔プラズマ操作を実施した後に、反応チャンバを酸化プラズマに露出させて、チャンバ内面を再調整し、それにより低再結合材料コーティングを再形成するための命令とを有する遠隔プラズマ加工装置が提供される。
【0016】
制御装置は、低再結合材料コーティングを形成した後に、反応チャンバ内に基板を提供するための命令と、遠隔プラズマチャンバ内でプラズマを発生し、プラズマを反応チャンバに提供して、遠隔プラズマ操作を実施するための命令とをさらに有することができ、遠隔プラズマ操作が、チャンバ内面の少なくとも一部への第2のコーティングの形成をもたらし、第2のコーティングが、遠隔プラズマ操作中に、低再結合材料コーティングよりも高い割合のラジカル再結合をもたらし、反応チャンバを酸化プラズマに露出させることが、第2のコーティングを改質して、低再結合材料コーティングを再形成する。
【0017】
様々な実施形態において、遠隔プラズマチャンバの出口は、遠隔プラズマチャンバを反応チャンバから離隔するシャワーヘッドである。
【0018】
反応チャンバを酸化プラズマに露出させるための命令は、約0.05~5秒の間の期間にわたって反応チャンバを酸化プラズマに露出させるための命令を含むものとしてよい。いくつかの実施形態では、原子層堆積プロセスによって反応チャンバのチャンバ内面上に低再結合材料コーティングを形成するための命令が、(a)第1の反応物を反応チャンバ内に流し、第1の反応物を、反応チャンバ内部の露出された表面上に吸着させるための命令と、(b)第1の反応物を反応チャンバからパージするための命令と、(c)第2の反応物を反応チャンバ内に流すための命令と、(d)反応チャンバ内部の露出された表面をプラズマに露出させて、第1の反応物と第2の反応物との表面反応を推し進めて、反応チャンバ内部の露出された表面上に低再結合材料コーティングを形成するための命令と、(e)低再結合材料コーティングが最終的なコーティング厚さに達するまで、ステップ(a)~(d)を繰り返すための命令とを含んでよい。様々な実施形態において、最終的なコーティング厚さが、基板支持体上に堆積された平均厚さに基づいて測定されたときに、少なくとも約50Åである。
【0019】
これらおよび他の特徴を、関連の図面を参照しながら以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】遠隔プラズマを使用して基板を加工するための反応チャンバの簡略図である。
【0021】
【
図2】内面を覆う低再結合材料コーティングを有する
図1の反応チャンバを示す図である。
【0022】
【
図3】原子層堆積(ALD)タイプの反応を使用してチャンバ内面上に低再結合材料コーティングを形成する方法を述べる流れ図である。
【0023】
【
図4A】低再結合材料コーティングが再調整される前の反応チャンバ内で加工される基板に関する被膜厚さプロファイルを示す図である。
【
図4B】低結合材料コーティングが再調整された後の反応チャンバ内で加工される基板に関する被膜厚さプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本出願において、用語「半導体ウェハ」、「ウェハ」、「基板」、「ウェハ基板」、および「半製造された集積回路」は、交換可能に使用される。用語「半製造された集積回路」は、シリコンウェハ上での集積回路製造の多くの段階の任意の段階中のシリコンウェハを表すことができることを当業者は理解されよう。半導体デバイス産業で使用されるウェハまたは基板は、典型的には、200mm、または300mm、または450mmの直径を有する。別段の記載がない限り、本明細書に記載する加工の細目(例えば流量や出力レベルなど)は、直径300mmの基板の加工、または直径300mmの基板を加工するために構成されたチャンバの処理に関するものであり、他のサイズの基板またはチャンバに適するようにスケール調整することができる。本明細書で述べるチャンバを使用して、様々な形状、サイズ、および材料の加工対象物を加工して差し支えない。半導体ウェハに加えて、特定の実施形態に従って用意されるチャンバ内で加工される可能性がある他の加工対象物は、プリント回路基板、磁気記録媒体、磁気記録センサ、ミラー、光学素子、マイクロメカニカルデバイスなど様々な物品を含む。
【0025】
以下の説明では、提示される実施形態を完全に理解できるように、いくつかの特定の詳細を記載する。開示される実施形態は、これらの特定の詳細のいくつかまたは全てを伴わずに実施してもよい。なお、開示される本発明の実施形態を不要に曖昧にしないように、周知のプロセス操作は詳細には述べていない。開示される実施形態を特定の実施形態に関連付けて述べるが、開示される実施形態を限定することは意図されていないことを理解されたい。
【0026】
様々な半導体製造プロセスは、遠隔プラズマの使用を含む。遠隔プラズマは、ある場所で発生され、加工が行われる第2の場所に送給されるプラズマであり、第2の場所は、第1の場所とは別である。例えば、遠隔プラズマは、反応チャンバと接続されたプラズマ源で発生させることができ、プラズマは、加工中にプラズマ源から反応チャンバに送給される。いくつかのプロセスにおいて遠隔プラズマが望ましい1つの理由は、遠隔プラズマが、加工チャンバ内で直接発生されるプラズマに比べて、比較的高濃度のラジカルと、比較的低濃度のイオンとを提供することができることである。したがって、ラジカルによって加工が行われることが望まれるときには、遠隔プラズマを使用することが特に有用である。
【0027】
本明細書では、遠隔プラズマ加工用に使用される反応チャンバ、および遠隔プラズマ加工用に使用される装置を調整する方法が開示される。ラジカルベースのプロセスの例は、堆積プロセス、エッチングプロセス、および処理プロセスを含む。特定の例では、ラジカルベースのプロセスは、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、およびそれらの組合せ(例えば酸炭窒化ケイ素)などのケイ素含有被膜を堆積するための水素ラジカルベースのプロセスである。いくつかの実施形態では、堆積プロセスは、以下にさらに述べる水素ラジカルベースの堆積プロセスである。
【0028】
様々な遠隔プラズマプロセスで生じる1つの問題は、ラジカル再結合である。基板に達する前にラジカルが再結合する場合、そのようなラジカルは、基板上での加工にはもはや利用可能でない。いくつかのラジカルが、他のラジカルよりも大きい度合いでこの問題を被る。例えば、水素ラジカルは、ほとんどの材料に対して非常に高い再結合率を有する。その結果、遠隔で発生された水素ラジカルを使用して基板を加工するとき、そのようなラジカルは、プラズマ源と反応チャンバとの間の表面上および/または反応チャンバの表面上でしばしば再結合し、これにより、これらのラジカルは、気相中または基板上での有用な加工を行うことができなくなる。
【0029】
ラジカル再結合は、チャンバ洗浄の直後に特に問題となる。様々な実装形態において、半導体基板は、バッチ内で順次に加工される。1つのバッチは、連続するチャンバ洗浄操作の合間に同じ反応チャンバ内で加工される1群の基板を含む。一例では、反応チャンバが洗浄され、次いで100枚の基板が反応チャンバ内で加工され(例えば1枚ずつ、または、反応チャンバ内で複数の基板を一度に加工するために装置が複数のステーションを装備されている場合には一度に数枚ずつ)、次いで反応チャンバが再び洗浄される。それら100枚の基板が1バッチである。本明細書におけるいくつかの実施形態では、バッチは、約100~3000枚の基板を含む。バッチサイズは、各基板上に堆積される被膜の厚さに少なくとも一部依存する。バッチサイズは、チャンバ表面上での蓄積の増加に伴う堆積される被膜の不均一性の増加、または蓄積の増加に伴う欠陥(粒子)の増加によって主に制限される。最適なバッチサイズは、堆積される被膜によっても影響を及ぼされ、チャンバ壁と基板とに堆積する被膜材料の量によっても影響を及ぼされる。多くの場合にチャンバはペデスタルよりも低温であるので、低温で比較的多く堆積する被膜は、これらの表面上で非常に急速に成長し、最終的には粒子の問題を引き起こす。逆に、より低温で比較的低い速度で堆積する被膜に関しては、粒子の問題が生じる前に、より多くのウェハを容易に処理しても差し支えないであろう。
【0030】
いくつかの実施形態では、チャンバは、フッ素ベースの化学物質で洗浄してもよい(裸のチャンバ壁、例えば裸のアルミニウム壁を残す)。チャンバが洗浄された後、残存して基板に達するラジカルの数は非常に少なく、望み通りに基板を加工できなくなる。
【0031】
(低ラジカル再結合表面コーティング)
本明細書で開示される方法の実装形態は、関連するラジカルに関して低い再結合率を示す材料で関連するチャンバ表面をコーティングすることを含む。例えば、特定の実施形態では、チャンバ内の基板を加工するために使用されるラジカルは、チャンバ表面上にコーティングされた材料上で約5E-4以下(例えば1E-4以下)の再結合確率を有する。例えば、酸化ケイ素でコーティングされた表面と相互作用する水素ラジカルは、約4E-5の再結合確率を示す。
【0032】
水素ラジカルの文脈で、低い再結合率をもたらす1つの材料は、酸化ケイ素(SiO2)である。酸化ケイ素は、他のラジカルについても低いラジカル再結合率をもたらすことがある。したがって、本明細書における様々な実施形態において、関連する表面上での水素ラジカル(または他のラジカル)の低い再結合率を維持する助けとなるように、関連する表面が酸化ケイ素でコーティングされる。関連する表面は、例えば、反応チャンバ内部の表面、反応チャンバと遠隔プラズマ源との間の表面、および遠隔プラズマ源内部の表面を含むことがある。コーティングされることがある反応チャンバ内部または近傍の表面は、例えば、基板支持体/ペデスタル、チャンバ壁/天井/床、シャワーヘッド、シャワーヘッド穴、入口、出口などを含む。特定の実施形態で低い割合のラジカル再結合をもたらす場合のある他の材料の例は、以下に列挙する。
【0033】
図1は、水素ラジカルベースの堆積プロセスなど、特定のラジカルベースのプロセスのために使用され得る装置の簡略図を示す。特定の実施形態によれば、他のラジカルベースのプロセスおよび反応チャンバを使用してもよい。加工チャンバ102は、チャンバ壁103と、チャンバ床104と、チャンバ天井105とを含む。加工チャンバ102の内部には基板支持体106があり、基板支持体106上に基板107が乗る。また、加工チャンバ102は、入口108と、排出口109とを含む。遠隔プラズマ源110が、加工チャンバ102の上方に提供される。遠隔プラズマ源110は、遠隔プラズマ源内部でプラズマを発生させるためのプラズマ発生器(図示せず)を含む。プラズマ発生器は、プラズマを生成するためのハードウェア(例えばコイルや電極など)を含み、このプラズマは、誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ、マイクロ波結合プラズマなどでよい。遠隔プラズマ源110は、複数のシャワーヘッド穴112を有するシャワーヘッド111によって加工チャンバ102から離隔される。遠隔プラズマ源110は、遠隔プラズマを発生するために使用されるガスを提供するための入口113を有する。
【0034】
図2は、低再結合材料コーティング220でコーティングされた後の、
図1に示される装置を示す。この図では基板107が示されておらず、低再結合材料コーティング220は、例示の目的で厚さを誇張されている。さらに、低再結合材料コーティング220は、シャワーヘッド穴112の内面上など、
図2では見えない領域に存在することもある。いくつかの実施形態では、低再結合材料コーティング220は、加工チャンバ102の内部にある表面のみを覆う。他の実施形態では、低再結合材料コーティング220は、上述したように、遠隔プラズマ110の内部の表面、および/またはシャワーヘッド表面も覆う。
【0035】
本明細書における実施形態の多くは、酸化ケイ素からなる低再結合材料の文脈で提示される。酸化ケイ素は、水素ラジカルの再結合を最小限に抑えるのに非常に効果的な材料である。しかし、特定の実装形態では、酸化ケイ素以外の材料を使用してもよい。選択される材料は、使用される特定のラジカルについて低い割合のラジカル再結合をもたらすものにすべきである。さらに、選択される材料は、例えば本明細書で述べる原子層堆積(ALD)法を使用して、反応チャンバの表面の上に共形に形成することができるものにすべきである。様々な場合に、低再結合材料は酸化物である。低再結合材料として有用であり得る酸化ケイ素以外の材料の例は、限定はしないが、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化イットリウム、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、およびそれらの組合せである。
【0036】
(低再結合材料コーティングの形成)
低再結合材料コーティングは、堆積が望まれる全ての表面上への低再結合材料の堆積を生じるように形成してもよい。この目標に特に適した1つの方法は、原子層堆積(ALD)である。ALD法は、露出された表面上に非常に均一な/共形の被膜を堆積する循環プロセスである。
【0037】
図3は、反応チャンバの表面上に低再結合材料コーティングを形成する方
法に関する流れ図を示す。この方法を、
図1および
図2に示される装置の文脈で提示する。方
法は操作301から始まり、操作301において、第1の反応物が加工チャンバ102内に流される。第1の反応物は、入口108を通って加工チャンバ102に流入するものとしてよく、または入口113を通って遠隔プラズマチャンバ110に流入するものとしてよい。入口113を通して遠隔プラズマチャンバ110に反応物を流すことは、遠隔プラズマチャンバ110内部の表面上およびシャワーヘッド穴112の内面上への低結合材料220の形成をもたらす。第1の反応物が入口108を通って加工チャンバ102内に流される特定の場合には、第1の反応物が送給される一方で、遠隔プラズマ源110を通ってはガスが流れない。第1の反応物が送給される場所に関係なく、第1の反応物は、プラズマが存在しない状態で、ガスの形態で送給される。第1の反応物は、チャンバ壁103、チャンバ床104、チャンバ天井105、および基板支持体106など加工チャンバ102の表面上に吸着する。第1の反応物が吸着するさらなる表面は、シャワーヘッド111の表面と、遠隔プラズマチャンバ110内部の表面とを含むことがある。排気弁(図示せず)を閉じ、第1の反応物の送給と共に加工チャンバ内部の圧力をわずかに上昇させることによって、第1の前駆体の吸着および飽和をもたらすものとしてよい。
【0038】
低再結合材料220が酸化ケイ素である場合、第1の反応物は、典型的にはケイ素含有反応物である。いくつかの場合には、ケイ素含有反応物は、シラン、ハロシラン、またはアミノシランである。シランは、水素および/または炭素基を含むが、ハロゲンを含まない。シランの例は、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、およびオルガノシラン、例えば、メチルシラン、エチルシラン、イソプロピルシラン、t-ブチルシラン、ジメチルシラン、ジエチルシラン、ジ-t-ブチルシラン、アリルシラン、sec-ブチルシラン、テキシルシラン、イソアミルシラン、t-ブチルジシラン、ジ-t-ブチルジシランなどである。ハロシランは、少なくとも1つのハロゲン基を含み、水素および/または炭素基を含むことも含まないこともある。ハロシランの例は、ヨードシラン、ブロモシラン、クロロシラン、およびフルオロシランである。ハロシラン、特にフルオロシランは、シリコン材料をエッチングすることができる反応性ハロゲン化合物種を生成することがあるが、本明細書で述べる特定の実施形態では、プラズマが衝突されるときにケイ素含有反応物は存在しない。具体的なクロロシランは、テトラクロロシラン(SiCl4)、トリクロロシラン(HSiCl3)、ジクロロシラン(H2SiCl2)、モノクロロシラン(ClSiH3)、クロロアリルシラン、クロロメチルシラン、ジクロロメチルシラン、クロロジメチルシラン、クロロエチルシラン、t-ブチルクロロシラン、ジ-t-ブチルクロロシラン、クロロイソプロピルシラン、クロロ-sec-ブチルシラン、t-ブチルジメチルクロロシラン、テキシルジメチルクロロシランなどである。アミノシランは、ケイ素原子に結合された少なくとも1つの窒素原子を含むが、水素、酸素、ハロゲン、および炭素も含むことがある。アミノシランの例は、モノ-、ジ-、トリ-、およびテトラ-アミノシラン(それぞれ、H3Si(NH2)4、H2Si(NH2)2、HSi(NH2)3、およびSi(NH2)4)、ならびに、置換されたモノ-、ジ-、トリ-、およびテトラ-アミノシラン、例えば、t-ブチルアミノシラン、メチルアミノシラン、tert-ブチルシランアミン、ビス(tert-ブチルアミノ)シラン(SiH2(NHC(CH3)3)2(BTBAS))、tert-ブチルシリルカルバメート、SiH(CH3)-(N(CH3)2)2、SiHCl-(N(CH3)2)2、(Si(CH3)2NH)3などである。アミノシランのさらなる例は、トリシリルアミン(N(SiH3
)
3
)、ジメチルアミノジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、およびビス(ジエチルアミノ)シランを含む。いくつかの場合には、これらの反応物の組合せを使用してもよい。
【0039】
低再結合材料が金属酸化物である場合、第1の反応物は、いくつかの場合には、金属アルキルアミン、金属アルコキシド、金属アルキルアミド、金属ハロゲン化合物、金属β-ジケトネート、金属カルボニル、有機金属などでよい。適切な金属含有前駆体は、被膜に取り込まれることが望まれる金属を含む。例えば、低再結合材料が酸化アルミニウムである場合、第1の反応物は、とりわけ、アルミニウムトリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)(Al(OCC(CH3)3CHCOC(CH3)3)3)、トリイソブチルアルミニウム([(CH3)2CHCH2]3Al)、トリメチルアルミニウム((CH3)3Al)、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム(Al(N(CH3)2)3)、およびそれらの組合せである。
【0040】
低再結合材料が酸化ハフニウムである場合、第1の反応物は、典型的には、ハフニウム含有反応物である。ハフニウム含有反応物の例は、とりわけ、ビス(tert-ブチルシクロペンタジエニル)ジメチルハフニウム(C20H32Hf)、ビス(メチル-η5-シクロペンタジエニル)ジメチルハフニウム(Hf[C5H4(CH3)]2(CH3)2)、ビス(メチル-η5-シクロペンタジエニル)メトキシメチルハフニウム(HfCH3(OCH3)[C5H4(CH3)]2)、ビス(トリメチルシリル)アミドハフニウムクロライド([[(CH3)3Si]2N]2HfCl2)、ジメチルビス(シクロペンタジエニル)ハフニウム((C5H5)2Hf(CH3)2)、ハフニウムtert-ブトキシド(Hf[OC(CH3)3]4)、ハフニウムイソプロポキシドイソプロパノール(C12H28HfO4)、テトラキス(ジエチルアミド)ハフニウム([(CH2CH3)2N]4Hf)、テトラキス(ジメチルアミド)ハフニウム([(CH3)2N]4Hf)、テトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウム([(CH3)(C2H5)N]4Hf)、およびそれらの組合せを含む。
【0041】
低再結合材料が酸化ジルコニウムである場合、第1の反応物は、典型的には、ジルコニウム含有反応物である。ジルコニウム含有反応物の例は、限定はしないが、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジヒドリド(C10H12Zr)、ビス(メチル-η5-シクロペンタジエニル)メトキシメチルジルコニウム(Zr(CH3C5H4)2CH3OCH3)、ジメチルビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(C22H36Zr)、テトラキス(ジエチルアミド)ジルコニウム([(C2H5)2N]4Zr)、テトラキス(ジメチルアミド)ジルコニウム([(CH3)2N]4Zr)、テトラキス(エチルメチルアミド)ジルコニウム(Zr(NCH3C2H5)4)、ジルコニウムジブトキシド(ビス-2,4-ペンタンジオネート)(C18H32O6Zr)、ジルコニウム2-エチルヘキサノエート(Zr(C8H15O2)4)、ジルコニウムテトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)(Zr(OCC(CH3)3CHCOC(CH3)3)4)、およびそれらの組合せを含む。他の金属酸化物が形成されることもあり、他の反応物を使用してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1の反応物は、ハロゲン含有反応物でない。いくつかの実施形態では、特定のチャンバ表面(例えばアルミニウム表面)との望ましくない相互作用を回避するために、ハロゲンを含有しない反応物が有益であり得る。いくつかのそのような実施形態では、第1の反応物は、アミン基を含むことがある。これらまたは他の場合、第1の反応物は、アルコキシ基を含むことがある。
【0043】
これらの反応チャンバは、典型的には、第1の反応物の送給中に比較的高い圧力で維持される。高い圧力は、全ての関連する表面上に第1の反応物が吸着することを保証する助けとなる。化学物質の分圧が高ければ高いほど、飽和反応が行われるのにかかる時間が短くなる。いくつかの実施形態では、反応チャンバ内の圧力は、約0.1~20Torrの間、例えば約0.5~4Torrの間でよい。最適な圧力は、可能な前駆体流量、時間、およびチャンバ体積によって主に影響を及ぼされる。チャンバ表面は、約20~600℃の間、例えばいくつかの場合には約50~450℃の間の温度で維持してもよい。いくつかの実施形態では、第1の反応物は、約0.1秒~5分の間または約10秒~3分の間の期間にわたって、約1~1000sccmの間または約1~25sccmの間の速度で反応チャンバ内に流してもよい。第1の反応物の流れに関する最適な期間は、前駆体の流量および分圧によって、ならびにチャンバのサイズによって影響を及ぼされる。
【0044】
次に、操作303で、加工チャンバ102がパージされる。パージは、加工チャンバ102をパージガス(例えば不活性ガス)でスイープすることによって、真空に吸引して加工チャンバ102内のガスを抜くことによって、またはこれらのオプションの組合せによって行ってもよい。パージは、吸着していない第1の反応物の分子を加工チャンバ102から除去する作用をする。
【0045】
加工チャンバ102をパージした後、操作305で、第2の反応物が加工チャンバ102内に流される。第1の反応物と同様に、第2の反応物は、入口108を通して加工チャンバ102に流入させる、または入口113を通して遠隔プラズマチャンバ110に流入させてもよい。入口113を通して遠隔プラズマチャンバ110内に第2の反応物を流すことは、遠隔プラズマチャンバ110内部の表面上およびシャワーヘッド111の表面上に低再結合材料を形成する助けとなる。第1と第2の反応物の一方または両方を、キャリアガス、例えば不活性ガスと共に流してもよい。
【0046】
第2の反応物は、しばしば、酸素含有反応物である。酸素含有反応物の例は、限定はしないが、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)、一酸化二窒素(N2O)、水(H2O)、オゾン、およびそれらの組合せを含む。特定の例では、第2の反応物は酸素である。いくつかの実施形態では、第2の反応物は、約0.25~60秒の間または約1~20秒の間の期間にわたって、約100~20000sccmの間または約500~5000sccmの間の速度で流れる。第2の反応物は、不活性キャリアガス(例えばヘリウムやアルゴンなど)と共に送給することができ、これはまた、プラズマを確立して維持する、および分解効率を高める助けとなり得る。
【0047】
操作307で、表面反応を使用して前駆体を低再結合材料コーティング220に変換するためにエネルギーが供給される。低再結合材料220は、例えば
図2に示されるように様々な表面上に生じる。多くの実施形態において、エネルギーは、熱エネルギーまたはプラズマエネルギーでよい。反応を推し進めるために熱エネルギーが使用される場合、低再結合材料の形成をもたらすためにチャンバ表面を高温にしてもよい。さらに、熱エネルギーが使用される場合、低再結合材料を形成するために使用される反応物は、特に反応性が高いもの(例えばオゾンや水など)を選択してもよい。プラズマエネルギーが使用される場合、いくつかの場合には比較的低い反応性の反応物を使用してもよい。
【0048】
プラズマは、加工チャンバ102内または遠隔プラズマチャンバ110内で発生させてもよい。プラズマが遠隔プラズマチャンバ110内で発生される場合、ラジカルは、基板に対する加工に伴って、加工チャンバ102内に拡散して広がる。プラズマは、誘導結合プラズマ、容量結合プラズマ、マイクロ波結合プラズマなどでよい。いくつかの実施形態では、プラズマを発生させるために使用されるRF出力は、1ステーション当たり約200~4500Wの間または1ステーション当たり約1500~3000Wの間でよい。最適な出力は、プラズマを発生するために使用されるプラズマ源に依存する。ICP源は、典型的には比較的高い出力を使用し、CCP源は、典型的には比較的低い出力を使用する。プラズマを発生するために使用される周波数は、いくつかの実施形態ではHF周波数でよい。例示的なHF周波数は、約1.8MHz~約2.45GHzの間の範囲である。いくつかの実施形態で使用されることがある特定の例示的な周波数は、13.56MHz、27MHz、40MHz、60MHz、100MHz、および/または2.45GHzを含む。プラズマは、約0.25~60秒の間または約1~20秒の間の期間にわたって存在することがある。
【0049】
いくつかの実施形態では、第2の反応物の流れが止まった後に、操作307(時として変換操作とも呼ばれる)が行われる。任意選択で、操作305と操作307との間に、例えばスイープガスを使用して、および/または加工チャンバ102を真空化することによって、加工チャンバ102をパージするものとしてもよい。他の実施形態では、操作305と操作307とが重なり合っていてもよい。例えば、いくつかの場合には、第2の反応物が加工チャンバ102内に依然として流れている状態で変換操作307が始まる(すなわち、操作305の進行中に操作307が始まる)。他の場合には、変換操作307と、操作305での第2の反応物の送給とが実質的に同時に始まる。操作305での第2の反応物の流れは、変換操作307の終了前、終了中、または終了時に止めるものとしてもよい。
【0050】
次に、操作309で、吸着していない種を除去するために加工チャンバ102がパージされる。操作309は、時として、プラズマ後パージと呼ばれる。操作301~309がひとまとまりで、ALD反応の1回のサイクルとなる。各サイクルは、約1モノレイヤ(約0.5~3Å程度の厚さであり得る)の材料を堆積するものとしてよいが、いくつかの実施形態では、1モノレイヤ未満の層または1モノレイヤよりも厚い層を堆積するものとしてもよい。各ALDサイクルの終了時、操作311で、堆積された低再結合材料コーティング220が十分に厚いかどうかが判断される。材料が十分に厚い場合、堆積プロセスは終了する。そうでない場合、プロセスは、操作301から繰り返し、追加の低再結合材料が堆積される。操作311での判断は、しばしば、1サイクル当たりに堆積される既知/推定の厚さ、サイクルの数、および所望の最終厚さに基づいて行われる。
【0051】
いくつかの実施形態では、低再結合材料コーティング220は、約50~500Åの間または約100~300Åの間の合計の厚さに堆積される。特定の場合には、より厚いコーティングが使用されることもある。1つの特定の例では、低再結合材料220は、約200Åの厚さに堆積される。これらの厚さは、低再結合材料の堆積中に約400℃の温度で基板支持体が維持された場合に基板支持体106(または存在する場合には基板支持体106上の基板)上に堆積される被膜の平均厚さに基づく。少なくとも低再結合材料が酸化ケイ素である場合には、様々なチャンバ表面上で被膜厚さが比較的均一であると考えられるが、被膜は、他の領域では異なる厚さを有することもある。これらまたは他の実施形態において、低再結合材料コーティング220を形成するためのALDサイクルの総数は、約50~1000の間または約100~300の間でよい。特定の例では、約150サイクルが使用され、基板支持体106上で約200Åの合計の厚さを生じる。
【0052】
酸化ケイ素からなる低再結合材料コーティング220を形成する代替法を使用することができる。一例では、水素(H
2)プラズマを使用して、加工チャンバ内部の水晶構成要素をエッチングすることができる。水晶構成要素から、水晶中のSiO
2がエッチングされ、加工チャンバ内部で表面上に再分散される。水晶をエッチングしてSiO
2を再分散する方法を使用してもよいが、特定のチャンバに関しては、ALD加工がより適していることがあり得る。
図3に関連して述べたALDを用いた低再結合材料の堆積と比較して、インサイチュH
2プラズマ法は、より長時間かかることがあり、チャンバ表面上の被覆がそれほど均一でない。さらに、この方法(H
2プラズマ)は、望ましくないことがある水晶構成要素の劣化を引き起こし、また、以下にさらに述べるように、このようにして形成された酸化ケイ素は、加工チャンバ内で加工が行われた後に再調整して低再結合材料にすることがあまり上手くできないことがある。
【0053】
低再結合材料コーティング220は、典型的には、基板を加工するために加工チャンバが使用される前に形成される。様々な実施形態において、低再結合材料コーティング220は、(例えばフッ素ベースの化学物質または他のチャンバ洗浄技法を使用する)チャンバ洗浄操作の後、かつ基板を加工する前に形成される。すなわち、低再結合材料コーティング220は、基板の各バッチの開始時に形成してもよい。
【0054】
低再結合材料コーティング220は、基板上で化学気相成長(CVD)および/または原子層堆積(ALD)を行うための特定のリアクタなど特定の半導体加工装置で使用される「アンダーコート」と対比することができる。
図2に示される低再結合材料コーティング220と非常に似た様式で、様々なCVDおよびALDリアクタにおいて、約3~4μmの間の厚さを有するアンダーコートがチャンバ内面(多くの場合、アルミニウムである)に堆積される。しかし、これら2つのコーティングは大きく異なる厚さを有し(アンダーコートは、開示される低再結合材料コーティング220よりもはるかに厚い)、異なる理由で提供される。CVDおよびALDリアクタにおいて、アンダーコートは、金属チャンバ表面が基板を汚染するのを防止するためにチャンバ表面を覆うために提供される。そのようなリアクタで使用されるインサイチュプラズマは、非常に反応性が高いものであり得、アンダーコートが存在しない場合には金属チャンバ表面を侵食し得る。また、アンダーコートは、1バッチの基板を加工する過程にわたって、より均一なチャンバインピーダンスを提供するようにさせてよい。対照的に、低再結合材料コーティング220は、CVDおよびALDリアクタで使用されるアンダーコートよりもはるかに薄く、単に、基板上での加工に利用可能なラジカルの量を最大にするためにラジカル再結合の量を最小限に抑えるために提供される。理論に拘束されることを望むものではないが、裸のチャンバ表面に関係付けられる基板汚染の問題は、遠隔プラズマが使用される場合にははるかに小さい。なぜなら、遠隔プラズマはそれほど反応性が高くなく、チャンバ表面を侵食して基板を汚染する可能性がより低いからである。本明細書における様々な実施形態において、加工チャンバおよびその内部の表面は、低再結合材料の比較的薄い層でコーティングされ、(本明細書で述べたような)比較的厚いアンダーコートは使用されない。
【0055】
(低再結合材料コーティングの再調整)
低再結合材料コーティングは、加工中のラジカル再結合の度合いを最小限に抑えるのに非常に有用であるが、基板のバッチ全体の加工中にいくつかの問題が生じる。例えば、バッチ内でさらなる基板が加工されるとき、低再結合材料でコーティングされた様々な表面上に材料が蓄積する。蓄積する材料は、基板上に堆積される材料(例えば、いくつかの場合には、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、または酸炭化ケイ素)や、加工の副生成物などであり得る。この材料は、低再結合材料コーティングをある程度覆うことがあり、これは、低再結合材料コーティングの有効性を大幅に低下させる。多くの場合、1バッチ中にチャンバ表面上に蓄積する材料は、低再結合材料コーティングに使用される材料(例えばSiO2、または本明細書で述べるような他の材料)よりも高い割合のラジカル再結合をもたらす材料である。したがって、バッチが進むにつれて、ラジカル再結合がより大きな問題となる。
【0056】
徐々に悪化するラジカル再結合の問題は、所与の基板に関する被膜均一性にかなりの影響を及ぼす。より特定的には、中心-縁部の被膜均一性が損なわれる。材料がチャンバ表面上に堆積するにつれて、基板の周縁部分は、基板の中心部分よりもはるかに大きな影響を及ぼされる。これは、基板の周縁部分に対してチャンバ表面が近くにあること(これは、材料が堆積される時/後に近くのラジカルを実質的に消滅させる)、およびそもそもこの周縁領域に送給されるラジカルがより少ないことによる。この被膜不均一性は、1バッチの過程にわたり、比較的安定した値へ向かうにつれて、悪化する。さらに、徐々に悪化するラジカル再結合の問題は、基板上で堆積が生じる速度の揺れを生じさせることがある(1バッチの過程にわたって堆積速度が減速する)。
【0057】
本明細書で開示される方法の特定の実施形態は、低再結合材料コーティングを定期的に再調整することによって、材料蓄積の問題に対処する。この再調整は、蓄積された材料を変質して、より低い度合いのラジカル再結合をもたらす材料に変える。これは、蓄積された材料を変質して、ヒドロキシル化表面を形成することを含むことがある。特定の例では、蓄積された材料は、ケイ素含有材料(例えば、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、および/または酸炭化ケイ素)であり、再調整プロセスは、ケイ素含有材料を酸化ケイ素に変えることを含む。
【0058】
低再結合材料コーティングを再調整するための1つの方法は、材料を酸素含有プラズマに露出させることである。酸素含有プラズマは、蓄積された材料から炭素(および他のケイ素/酸素以外の元素)を効果的に燃焼/除去し、望まれる二酸化ケイ素からなる低再結合材料を再形成する。
【0059】
別の例示的実施形態では、アルミニウム含有被膜を形成するために加工チャンバが使用されることがあり、低再結合材料は酸化アルミニウムであり、チャンバ表面上の望ましくない蓄積された材料はアルミニウム含有被膜であり、再調整プロセスは、チャンバ表面を酸素含有プラズマに露出させて、蓄積された材料を酸化アルミニウムに変換して戻すことを含む。別の実施形態では、ハフニウム含有被膜を形成するために加工チャンバが使用され、低再結合材料は酸化ハフニウムであり、チャンバ表面上の望ましくない蓄積された材料はハフニウム含有被膜であり、再調整プロセスは、チャンバ表面を酸素含有プラズマに露出させて、蓄積された材料を酸化ハフニウムに変換して戻すことを含む。他の金属を使用する同様の実装形態も、本発明の実施形態の範囲内で企図される。さらに他の実施形態では、低再結合材料は酸化ケイ素であり、再調整プロセスは、基板上で行われるプロセスまたは蓄積された材料の組成に関係なく、酸化ケイ素の形成をもたらすために酸素含有プラズマに露出させることを含む。
【0060】
酸素含有プラズマを生成するために使用して差し支えのないガスを例示すると、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)、一酸化二窒素(N2O)、水(H2O)、オゾン、H2+O2、およびそれらの組合せが含まれる。いくつかの実施形態では、酸素含有プラズマを発生するために使用されるガスは、不活性ガスを含むこともある。酸素含有ガスは、約100~20000sccmの間または約500~5000sccmの間の速度で流してもよい。プラズマは、加工チャンバ内部または遠隔プラズマチャンバ内部で発生させてもよい。
【0061】
多くの場合、加工チャンバは、比較的短時間にわたって、例えば約5秒以下、約3秒以下、または約1秒以下、酸素含有プラズマに露出される。いくつかの実施形態では、低再結合材料を再調整するための酸素含有プラズマ露出の期間は、約0.05~3秒の間または約0.1~1秒の間である。
【0062】
プラズマ露出の期間は非常に短いので、特定の実施形態では、基板が反応チャンバ内に依然として存在する状態で反応チャンバがプラズマに露出される。一例では、SiO2からなる低再結合材料コーティングを有する加工チャンバ内に基板が装填され、Hラジカルベースの堆積プロセスが行われて、基板上に約10~100Å(例えば30Å)のケイ素含有被膜を堆積する。次いで、堆積プロセスが停止し、基板が加工チャンバ内に依然として存在する状態で、基板およびチャンバが酸素含有プラズマに露出される。酸素含有プラズマは、基板上に堆積された被膜に対していくらかの影響を及ぼすことがあるが、そのような影響は小さい可能性が高く、多くの場合には許容可能なものと予想される。酸素含有プラズマへの露出後、さらなる10~100Å(例えば30Å)のケイ素含有被膜が基板上に堆積される。堆積された被膜がその最終的な厚さに達するまで、(a)基板上への堆積と、(b)酸素含有プラズマへの露出とを繰り返してよい。この実施形態は、基板上に堆積される被膜が特に厚い場合(例えば、最終的な厚さで少なくとも約60Å、時として最終的な厚さで約60~1500Åの間)に特に有用である。いくつかの場合には、連続する再調整プラズマ露出の合間に個々の基板上に堆積される被膜厚さは、約20~70Åの間または約30~50Åの間である。連続する再調整プロセスの合間に堆積すべき最適な被膜厚さは、被膜が堆積されることにより被膜不均一性が悪化する速さに依存する。
【0063】
再調整の頻度は、様々な実装形態で異なることがある。前述の例では、低再結合材料コーティングは、基板当たり少なくとも1回(多くの場合には少なくとも2回)再調整される。基板上での望まれる最終的な被膜厚さが1000Åであり、連続する再調整プロセスの合間に40Åの被膜が堆積される別の例では、再調整プロセスは、基板当たり約25回行われる。合計被膜厚さと、再調整プロセスの合間に堆積される厚さとが、再調整を行うべき回数を決定する。
【0064】
同様の例で、低再結合材料コーティングは、基板当たり少なくとも1回再調整されるが、酸素含有プラズマへの露出中に基板が反応チャンバから取り除かれる。一実装形態では、基板が加工チャンバ内に装填され、第1の厚さまで堆積が行われ、基板が加工チャンバから取り除かれ、本明細書で述べるように加工チャンバが再調整され、基板が再び加工チャンバ内に装填され、堆積が行われて、基板上に第2の厚さまで被膜を堆積する。これらのステップは、基板上の被膜が最終的な厚さに達するまで繰り返してよい。別の実装形態では、低再結合材料コーティングは、連続する基板の加工の合間に再調整される(例えば、再調整中、加工チャンバ内に基板が存在しても存在しなくてもよい)。さらに別の実装形態では、再調整は、n枚の基板ごとに1回行われ、ここで、nは、約1~50の間または約1~10の間である。
【0065】
再調整に関する理想的な頻度は、基板上で行われる加工のタイプ、使用される化学物質、チャンバ表面上に蓄積する材料の組成、各基板上に堆積される被膜の厚さなどを含めた様々な因子に依存する。低再結合材料コーティングをどの程度頻繁に再調整するかを決定するために、(基板加工が基板上への堆積を含む実施形態では)基板上に堆積された被膜厚さの均一性に注目することができる。上記のように、材料の蓄積は、基板の中心部分よりも基板の周縁部分に大きな影響を及ぼす。したがって、被膜厚さ均一性(中心-縁部)が特定の閾値に達したときに、低再結合材料コーティングを再調整してよい。
【0066】
基板の1バッチの終了時、加工チャンバ(および任意選択で遠隔プラズマチャンバ)を洗浄することができる。洗浄プロセスは、いくつかの場合には、フッ素含有化学物質(例えばフッ素含有プラズマ、例えばNF
3ベースのプラズマ)の使用を含むことがあるが、他の方法を使用しても差し支えない。洗浄は、低再結合材料を含めた関連する表面上の全ての蓄積された材料を除去する。チャンバが洗浄された後、新たな基板バッチを提供するものとしてよい。新たなバッチが加工される前に、例えば
図3に関連して述べた方法を使用して、新鮮な低再結合材料コーティングを提供することができる。新たな基板バッチが加工されるとき、上述したように、低再結合材料コーティングが定期的に再調整される。低再結合材料を提供し、再調整することによって、ラジカル再結合の度合いが最小限に抑えられ、残存して基板に達するラジカルの量が時間にわたってより均一になり、基板のバッチ内での(および個々の基板内部での)均一性が改良される。
【0067】
様々な実施形態において、低再結合材料コーティングは、ALDプロセスによって形成される。上記のように、低再結合材料を形成するのに利用可能な1つの他の方法は、水素プラズマを使用して、反応チャンバ内部で水晶構成要素をエッチングすることであり、水晶中の二酸化ケイ素がエッチングされて様々なチャンバ表面上に再堆積される。意外にも、酸化ケイ素の低再結合材料コーティングがこの様式で最初に形成されるとき、酸素含有プラズマ露出は酸化ケイ素材料を上手く再調整しないことが判明している。材料は、酸素含有プラズマへの露出後でさえ、(少なくとも水素ラジカルに関して)比較的高い再結合の材料のままである。
【0068】
酸素含有プラズマ再調整プロセスは、プラズマ加工で使用される反応チャンバを洗浄するために一般に使用される洗浄プロセスとは区別すべきである。様々な文脈において、プラズマリアクタは、蓄積された材料をチャンバ表面から除去するために、プラズマ(例えば、除去すべき材料のタイプに応じて、Fベースのプラズマまたはいくつかの場合にはOベースのプラズマ)を使用して洗浄するものとしてよい。一例では、化学気相成長によって被膜を堆積するために使用される反応チャンバは、酸素ベースのプラズマを使用して洗浄される。洗浄は、チャンバ表面上に意図せず堆積された材料(例えば、基板上に堆積される被膜、および/またはそのような堆積の副生成物)と、チャンバ表面上に意図して堆積された材料(例えば、本明細書の他の箇所で述べた比較的厚いアンダーコート)との両方を除去する。チャンバが洗浄された後、チャンバ表面は裸(例えばいくつかの場合にはアルミニウム)である。対照的に、酸素ベースのプラズマ再調整プロセスは、単に、チャンバ表面上の被膜に対して影響を及ぼして、露出された被膜を酸化ケイ素(または別の低再結合材料)に変換する。チャンバ表面を覆う被膜は改質され、除去はされない。
【0069】
(基板に対する加工)
本明細書における実施形態は、基板に対して任意の特定のタイプの加工が行われている場合に限定されない。いくつかの場合には、基板に対して行われる加工は、堆積プロセスでよい。他の場合には、基板に対して行われる加工は、例えばエッチングプロセスまたは処理プロセスでよい。一般に、開示される実施形態は、ラジカルによって加工が行われることが望まれる任意の場合に有用である。
【0070】
本明細書で論じる様々な実装形態は、遠隔水素プラズマを使用して基板上にケイ素含有被膜(例えば、炭化ケイ素、炭窒化ケイ素、または酸炭化ケイ素)を堆積することを含む半導体加工法の文脈で提示される。文脈上、この特定の実装形態のいくつかの詳細が提供されるが、実施形態がこのタイプの加工に限定されないことを理解されたい。
いくつかの実施形態では、基板上にケイ素含有被膜を堆積するためのプロセスは、水素ラジカルベースの堆積プロセスである。そのようなプロセスは、2015年2月6日出願の、「CONFORMAL FILM DEPOSITION OF SILICON CARBIDE FILMS」という名称の米国特許出願公開第14,616,435号;2013年5月31日出願の、「METHOD TO OBTAIN SIC CLASS OF FILMS OF DESIRED COMPOSITION AND FILM PROPERTIES」という名称の米国特許出願公開第13,907,699号にさらに論じられており、それらの全体をそれぞれ参照により本明細書に援用する。
【0071】
図1および
図2の文脈で、プロセスは、例えば入口108を通した加工チャンバ102への1つまたは複数の前駆体の送給を含むことがある。前駆体は、活性状態のプラズマに直接は露出されない。そうではなく、遠隔プラズマ源110内で水素プラズマが発生され、遠隔Hプラズマが、シャワーヘッド111の穴112を通って加工チャンバ102内に拡散する。前駆体は、ケイ素含有前駆体でよい。ケイ素含有前駆体は、1つまたは複数のケイ素-水素結合および/またはケイ素-ケイ素結合を有することがある。また、ケイ素含有前駆体は、1つまたは複数のケイ素-酸素結合、ケイ素-窒素結合、および/またはケイ素-炭素結合を有することもある。前駆体と水素プラズマとは、同時に加工チャンバ102内に流され/加工チャンバ102に対して露出されて、ケイ素含有被膜を形成する。これらの堆積プロセスにおいて、反応チャンバ内の圧力は、約0.2~40Torr(いくつかの場合には約0.2~8Torrの間または約10~20Torrの間)で維持することができ、基板温度は、約50~500℃の間(いくつかの場合には約200~400℃の間)で維持するものとしてよい。
【0072】
ラジカル種を生成するために、遠隔プラズマ源において任意のタイプのプラズマ源を使用してもよい。これは、限定はしないが、容量結合プラズマ、誘導結合プラズマ、マイクロ波プラズマ、DCプラズマ、およびレーザにより生成されたプラズマを含む。容量結合プラズマの一例は、高周波(RF)プラズマである。高周波プラズマは、13.56MHz以上で動作するように構成することができる。そのような遠隔プラズマ源の一例は、Novellus Systems(米国カリフォルニア州サンノゼ)によって製造されているGAMMA(登録商標)でよい。そのようなRF遠隔プラズマ源の別の例は、MKS Instruments(米国マサチューセッツ州ウィルミントン)によって製造されているAstron(登録商標)でよく、これは、440kHzで動作することができ、1枚の基板または並行して数枚の基板を加工するためのより大きな装置にボルト留めされたサブユニットとして提供することができる。いくつかの実施形態では、やはりMKS Instrumentsによって製造されているAstex(登録商標)などのマイクロ波プラズマを遠隔プラズマ源として使用することができる。2.45GHzの周波数で動作するようにマイクロ波プラズマを構成することができる。また、これらのプラズマ源は、上述したように低再結合材料を形成および/または再調整するために使用するものとしてよい。
【0073】
(装置)
本明細書で述べる方法は、任意の適切な装置によって実施しても差し支えない。適切な装置は、プロセス操作を達成するためのハードウェアと、本発明に従ってプロセス操作を制御するための命令を有するシステム制御装置とを含む。例えば、いくつかの実施形態では、ハードウェアは、プロセスツールに含まれる1つまたは複数のプロセスステーションを含んでもよい。1つの例示的な装置は、
図1および
図2に提供されている。しかし、実施形態は、この装置に限定されない。開示される技法は、ラジカルベースの加工が行われる任意の文脈で有用となるものと期待される。(必ずしも全てではないが)多くの場合に、遠隔プラズマが関連する。特定の実装形態では、Lam Research Corporation(米国カリフォルニア州フリーモント)から市販されているVersa-S装置で実施形態を実現してもよい。
【0074】
(システム制御装置)
いくつかの実装形態では、制御装置は、上述した例の一部となり得るシステムの一部である。そのようなシステムは、処理ツール、チャンバ、処理用のプラットフォーム、および/または専用処理構成要素(ウェハペデスタルやガスフローシステムなど)を含めた半導体処理機器を備えることがある。これらのシステムは、半導体ウェハまたは基板の処理前、処理中、および処理後にそれらの動作を制御するための電子回路と一体化されることがある。電子回路は、「制御装置」と呼ばれることもあり、システムの様々な構成要素または一部分を制御するものとしてもよい。制御装置は、処理要件および/またはシステムのタイプに応じて、本明細書で開示されるプロセスの任意のものを制御するようにプログラムすることができ、そのようなプロセスは、処理ガスの送給、温度設定(例えば加熱および/または冷却)、圧力設定、真空設定、出力設定、高周波(RF)発生器の設定、RF整合回路の設定、周波数設定、流量設定、流体送給設定、位置および動作の設定、ツールの内外へのウェハ移送、および特定のシステムに接続またはインターフェースされた他の移送ツールおよび/またはロードロックの内外へのウェハ移送を含む。
【0075】
広範に言うと、制御装置は、例えば、命令を受信する、命令を送信する、動作を制御する、洗浄操作を可能にする、およびエンドポイント測定を可能にする様々な集積回路、論理回路、メモリ、および/またはソフトウェアを有する電子回路として定義されることがある。集積回路は、プログラム命令を格納するファームウェアの形態でのチップ、デジタル信号処理装置(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)として定義されるチップ、および/または1つまたは複数のマイクロプロセッサ、もしくはプログラム命令(例えばソフトウェア)を実行するマイクロコントローラを含むことがある。プログラム命令は、様々な個別の設定(またはプログラムファイル)の形態で制御装置に通信される命令でよく、特定のプロセスを半導体ウェハ上で、もしくは半導体ウェハ用に、またはシステムに対して実施するための動作パラメータを定義する。いくつかの実装形態では、動作パラメータは、ウェハの1つまたは複数の層、材料、金属、酸化物、ケイ素、二酸化ケイ素、表面、回路、および/またはダイの製造中に1つまたは複数の加工ステップを達成するためにプロセスエンジニアによって定義されるレシピの一部でよい。
【0076】
いくつかの実装形態では、制御装置は、コンピュータの一部でよく、またはコンピュータに結合されていてよく、コンピュータは、システムと一体化される、システムに結合される、他の形でシステムにネットワーク化される、またはそれらの組合せで構成される。例えば、制御装置は、「クラウド」または工場ホストコンピュータシステムの全てもしくは一部でよく、ウェハ処理の遠隔アクセスを可能にする場合がある。コンピュータは、システムへの遠隔アクセスを可能にすることがあり、製造操作の現在の進行状況を監視し、過去の製造操作の履歴を検査し、複数の製造操作から傾向または性能規準を検査して、現在の処理のパラメータを変更する、現在の処理に続くように処理ステップを設定する、または新たなプロセスを開始する。いくつかの例では、遠隔コンピュータ(例えばサーバ)が、ローカルネットワークまたはインターネットを含むことがあるネットワークを介してシステムにプロセスレシピを提供するものとしてよい。遠隔コンピュータはユーザインターフェースを含むことがあり、ユーザインターフェースは、パラメータおよび/または設定の入力またはプログラミングを可能にし、これらのパラメータおよび/または設定は、次いで遠隔コンピュータからシステムに通信される。いくつかの例では、制御装置は、1つまたは複数の操作中に行うべき各加工ステップに関するパラメータを指定するデータの形態で命令を受信する。パラメータが、実施すべきプロセスのタイプ、および制御装置がインターフェースまたは制御するように構成されたツールのタイプに特有のものであり得ることを理解されたい。したがって、上述したように、制御装置は、例えば1つまたは複数のディスクリート制御装置を含むことによって分散されることがあり、それらの制御装置は、互いにネットワーク化され、本明細書で述べるプロセスや制御など共通の目的に向けて協働する。そのような目的のための分散型制御装置の一例は、(例えばプラットフォームレベルで、または遠隔コンピュータの一部として)遠隔に位置された1つまたは複数の集積回路と通信するチャンバにある1つまたは複数の集積回路であり、これらが組み合わさってチャンバでのプロセスを制御する。
【0077】
限定はしないが、例示的なシステムには、プラズマエッチングチャンバまたはモジュール、堆積チャンバまたはモジュール、スピンリンスチャンバまたはモジュール、金属めっきチャンバまたはモジュール、洗浄チャンバまたはモジュール、ベベルエッジエッチングチャンバまたはモジュール、物理気相成長(PVD)チャンバまたはモジュール、化学気相成長(CVD)チャンバまたはモジュール、原子層堆積(ALD)チャンバまたはモジュール、原子層エッチング(ALE)チャンバまたはモジュール、イオン注入チャンバまたはモジュール、トラックチャンバまたはモジュール、および、半導体ウェハの作製および/または製造に関連付けられるまたは使用されることがある任意の他の半導体処理システムが含まれることがある。
【0078】
上述したように、ツールによって行うべきプロセスステップに応じて、制御装置は、他のツール回路またはモジュール、他のツール構成要素、クラスタツール、他のツールインターフェース、隣接するツール、近隣のツール、全工場内に位置されたツール、メインコンピュータ、別の制御装置、または、ウェハのコンテナを半導体製造工場内のツール位置および/または装填ポートに/から導く材料輸送で使用されるツールの1つまたは複数と通信する場合がある。
【0079】
開示される実施形態の文脈で、制御装置は、基板がさらされるプロセスに従って基板を加工するように設計または構成されることに加えて、低再結合材料コーティングを形成および再調整するように設計または構成してもよい。制御装置は、本明細書で述べるプロセス/方法の任意のものを行うための命令を有するものとしてもよい。
【0080】
上述した様々なハードウェアおよび方法実施形態は、例えば、半導体デバイス、ディスプレイ、LED、太陽光発電パネルなどの作製または製造のためのリソグラフィパターン形成ツールまたはプロセスに関連して使用するものとしてもよい。必須ではないが、典型的には、そのようなツール/プロセスは、共通の製造施設で一緒に使用または実施される。
【0081】
被膜のリソグラフィパターン形成は、典型的には、以下のステップのいくつかまたは全てを含み、各ステップが、いくつかの可能なツールによって実現可能にされる:(1)スピンオンまたはスプレーオンツールを使用して、加工対象物、例えば窒化ケイ素被膜が上に形成された基板にフォトレジストを塗布するステップ;(2)ホットプレートまたは炉または他の適切な硬化ツールを使用してフォトレジストを硬化するステップ;(3)ウェハステッパなどのツールを用いて可視光またはUV光またはX線光でフォトレジストを露光するステップ;(4)ウェットベンチやスプレー現像装置などのツールを使用して、レジストを現像し、レジストを選択的に除去し、それによりレジストをパターン形成するステップ;(5)ドライエッチングまたはプラズマ支援エッチングツールを使用することによって、下にある被膜または加工対象物にレジストパターンを転写するステップ;および(6)RFまたはマイクロ波プラズマレジストストリッパなどのツールを使用してレジストを除去するステップ。いくつかの実施形態では、アッシャブルハードマスク層(非晶質炭素層など)および別の適切なハードマスク(反射防止層など)が、フォトレジストの塗布前に堆積されることがある。
【0082】
本明細書で述べる構成および/または手法は、性質上例示にすぎず、多くの変形が可能であるので、これらの特定の実施形態または例は、限定的な意味で解釈すべきではないことを理解されたい。本明細書で述べる特定のルーチンまたは方法は、多くの処理ストラテジのうちの1つまたは複数を表すことがある。したがって、例示される様々な作用は、例示される順序で、他の順序で、もしくは並行して実施することができ、またはいくつかの場合には省略してもよい。同様に、上述したプロセスの順序を変えてもよい。
【0083】
本開示の主題は、様々なプロセス、システム、および構成の全ての新規であり自明でない組合せおよび部分的組合せ、ならびに、本明細書で開示される他の特徴、機能、作用、および/または特性、ならびにそれらの全ての均等形態を含む。例えば、本開示は、以下の適用例として実施可能である。
[適用例1]遠隔プラズマ加工を行うために使用される反応チャンバを調整する方法であって、
前記反応チャンバ内に基板が存在しない状態で、原子層堆積プロセスによって前記反応チャンバ内部の露出された表面上に低再結合材料コーティングを形成するステップと、
1つまたは複数の基板に対して遠隔プラズマ操作を実施した後に、前記反応チャンバを酸化プラズマに露出させて、前記反応チャンバ内部の前記露出された表面を再調整し、それにより前記低再結合材料コーティングを再形成するステップと
を含む方法。
[適用例2]前記低再結合材料コーティングを形成した後に、前記遠隔プラズマ操作を行って、前記反応チャンバ内で1枚または数枚の基板を加工するステップをさらに含み、前記遠隔プラズマ操作が、前記反応チャンバ内部の前記露出された表面の少なくとも一部への第2のコーティングの形成をもたらし、前記第2のコーティングが、前記遠隔プラズマ操作中に、前記低再結合材料コーティングよりも高い割合のラジカル再結合をもたらす適用例1に記載の方法。
[適用例3]前記反応チャンバを前記酸化プラズマに露出させるステップが、前記第2のコーティングを改質して、前記低再結合材料コーティングを再形成する適用例2に記載の方法。
[適用例4]前記反応チャンバが、約0.05~5秒の期間にわたって前記酸化プラズマに露出される適用例1から適用例3のいずれか一項に記載の方法。
[適用例5]前記期間が約0.1~1秒の間である適用例4に記載の方法。
[適用例6]前記反応チャンバ内部の露出された表面上に前記低再結合材料コーティングを形成するための前記原子層堆積プロセスが、
(a)第1の反応物を前記反応チャンバ内に流し、前記第1の反応物を、前記反応チャンバ内部の露出された表面上に吸着させるステップと、
(b)前記第1の反応物を前記反応チャンバからパージするステップと、
(c)第2の反応物を前記反応チャンバ内に流すステップと、
(d)前記反応チャンバ内部の前記露出された表面をプラズマに露出させて、前記第1の反応物と前記第2の反応物との表面反応を推し進めて、前記反応チャンバ内部の前記露出された表面上に低再結合材料コーティングを形成するステップと、
(e)前記低再結合材料コーティングが最終的なコーティング厚さに達するまで、ステップ(a)~(d)を繰り返すステップと
を含む適用例1から適用例5のいずれか一項に記載の方法。
[適用例7]前記低再結合材料コーティングの前記最終的なコーティング厚さが、前記反応チャンバ内部の基板支持体上での前記低再結合材料コーティングの平均厚さによって測定されたときに、少なくとも約50Åである適用例6に記載の方法。
[適用例8]前記低再結合材料コーティングが酸化ケイ素を含む適用例1から適用例7のいずれか一項に記載の方法。
[適用例9]前記低再結合材料コーティングが酸化ケイ素を含み、前記遠隔プラズマ操作を実施するステップが、前記1枚または数枚の基板上にケイ素含有被膜を堆積するステップを含み、前記第2のコーティングがケイ素含有材料を含む適用例2または適用例3に記載の方法。
[適用例10]前記第1と第2の反応物の少なくとも一方が、遠隔プラズマチャンバから前記反応チャンバ内に流れ、前記遠隔プラズマチャンバが、前記加工チャンバの近位に位置され、シャワーヘッドによって前記加工チャンバから離隔される適用例6または適用例7に記載の方法。
[適用例11]前記第1と第2の反応物の両方が、前記遠隔プラズマチャンバから前記反応チャンバ内に流れ、前記酸化プラズマが、前記遠隔プラズマチャンバ内で発生され、前記シャワーヘッドを通って前記加工チャンバ内に流れる適用例10に記載の方法。
[適用例12]前記酸化プラズマが、前記反応チャンバ内でインサイチュで発生される適用例1から適用例11のいずれか一項に記載の方法。
[適用例13]前記遠隔プラズマ操作を実施するステップが、
前記1枚または数枚の基板のうちの1枚を前記反応チャンバ内に提供するステップと、
ケイ素含有反応物をインサイチュプラズマに露出させずに、前記ケイ素含有反応物を前記反応チャンバ内に流すステップと、
前記反応チャンバの近位に位置決めされ、シャワーヘッドによって前記反応チャンバから離隔された遠隔プラズマチャンバ内で水素プラズマを発生し、前記水素プラズマを、前記シャワーヘッドを通して前記反応チャンバ内に流し、その一方で、前記ケイ素含有反応物が前記反応チャンバ内に流されるステップと、
前記基板を前記ケイ素含有反応物と前記水素プラズマとに同時に露出させて、前記基板上にケイ素含有被膜を堆積するステップと
を含む適用例2または適用例3に記載の方法。
[適用例14]前記反応チャンバが前記酸化プラズマに露出されるときに、1枚または数枚の基板が前記反応チャンバ内に存在する適用例2、適用例3、または適用例9のいずれか一項に記載の方法。
[適用例15]前記基板が前記反応チャンバ内にある状態で前記反応チャンバを前記酸化プラズマに露出させた後、第2の遠隔プラズマ操作を実施して、前記反応チャンバ内で前記基板をさらに加工するステップであって、前記第2の遠隔プラズマ操作が、再び前記第2のコーティングの形成をもたらすステップと、
前記第2の遠隔プラズマ操作を実施した後、前記基板が前記反応チャンバ内に存在する状態で前記反応チャンバを第2の酸化プラズマに露出させて、前記反応チャンバ内部の前記露出された表面を再び再調整して、前記第2のコーティングを改質して、前記低再結合材料コーティングを再形成するステップと
をさらに含む適用例14に記載の方法。
[適用例16](a)1枚または数枚の基板に対して遠隔プラズマ操作を実施するステップと、(b)前記反応チャンバを前記酸化プラズマに露出させて、前記反応チャンバ内部の前記露出された表面を再調整するステップとを循環して繰り返すことをさらに含み、ステップ(b)の各繰返しの合間に、ステップ(a)において約1~50枚の基板が加工される適用例1から適用例15のいずれか一項に記載の方法。
[適用例17]前記反応チャンバ内部の前記露出された表面上に存在する低再結合材料コーティングおよび第2のコーティングを除去するために、前記反応チャンバを洗浄するステップであって、前記反応チャンバをフッ素含有プラズマに露出させるステップと、
前記反応チャンバを洗浄した後、適用例1に記載の方法を繰り返すステップと
をさらに含む適用例2、3、または9のいずれか一項に記載の方法。
[適用例18]基板を加工するための遠隔プラズマ加工装置であって、
反応チャンバを備え、前記反応チャンバが、
チャンバ内面と、
前記反応チャンバ内で前記基板を支持するための基板支持体と、
前記反応チャンバから材料を除去するための排出口と
を備え、
遠隔プラズマ加工装置がさらに、
遠隔プラズマチャンバを備え、前記遠隔プラズマチャンバが、
前記遠隔プラズマチャンバ内部でプラズマを発生するためのプラズマ発生器と、
前記遠隔プラズマチャンバにガスを送給するための入口と、
前記遠隔プラズマチャンバ内で発生されたプラズマを前記反応チャンバに提供するための出口と
を備え、
遠隔プラズマ加工装置がさらに、
制御装置を備え、前記制御装置が、
前記反応チャンバ内に基板が存在しない状態で、原子層堆積プロセスによって前記反応チャンバのチャンバ内面上に低再結合材料コーティングを形成するための命令と、
前記基板に対して遠隔プラズマ操作を実施した後に、前記反応チャンバを酸化プラズマに露出させて、前記チャンバ内面を再調整し、それにより前記低再結合材料コーティングを再形成するための命令と
を有する遠隔プラズマ加工装置。
[適用例19]前記制御装置が、
前記低再結合材料コーティングを形成した後に、前記反応チャンバ内に前記基板を提供するための命令と、
前記遠隔プラズマチャンバ内でプラズマを発生し、前記プラズマを前記反応チャンバに提供して、遠隔プラズマ操作を実施するための命令と
をさらに有し、
前記遠隔プラズマ操作が、前記チャンバ内面の少なくとも一部への第2のコーティングの形成をもたらし、前記第2のコーティングが、前記遠隔プラズマ操作中に、前記低再結合材料コーティングよりも高い割合のラジカル再結合をもたらし、
前記反応チャンバを前記酸化プラズマに露出させることが、前記第2のコーティングを改質して、前記低再結合材料コーティングを再形成する
適用例18に記載の装置。
[適用例20]前記遠隔プラズマチャンバの前記出口が、前記遠隔プラズマチャンバを前記反応チャンバから離隔するシャワーヘッドである適用例18または適用例19に記載の装置。
[適用例21]前記反応チャンバを酸化プラズマに露出させるための前記命令が、約0.05~5秒の間の期間にわたって前記反応チャンバを前記酸化プラズマに露出させるための命令を含む適用例18から適用例20のいずれか一項に記載の装置。
[適用例22]原子層堆積プロセスによって前記反応チャンバのチャンバ内面上に前記低再結合材料コーティングを形成するための前記命令が、
(a)第1の反応物を前記反応チャンバ内に流し、前記第1の反応物を、前記反応チャンバ内部の露出された表面上に吸着させるための命令と、
(b)前記第1の反応物を前記反応チャンバからパージするための命令と、
(c)第2の反応物を前記反応チャンバ内に流すための命令と、
(d)前記反応チャンバ内部の前記露出された表面をプラズマに露出させて、前記第1の反応物と前記第2の反応物との表面反応を推し進めて、前記反応チャンバ内部の前記露出された表面上に低再結合材料コーティングを形成するための命令と、
(e)前記低再結合材料コーティングが最終的なコーティング厚さに達するまで、ステップ(a)~(d)を繰り返すための命令と
を含む適用例18から適用例21のいずれか一項に記載の装置。
[適用例23]前記最終的なコーティング厚さが、前記基板支持体上に堆積された平均厚さに基づいて測定されたときに、少なくとも約50Åである適用例22に記載の装置。
【0084】
(実験)
開示される低再結合材料コーティングを使用して、ラジカル再結合を最小限に抑え、基板に対する加工に利用可能なラジカルの量を最大にすることができることを実験結果が示している。また、開示される再調整プロセスを使用して、チャンバ表面上の蓄積された材料をより低い度合いのラジカル再結合をもたらす材料に効果的に変換することができることも実験結果が示している。
【0085】
図4Aおよび
図4Bは、チャンバ内で加工される基板上に堆積されたケイ素含有被膜の厚さプロファイルを示し、チャンバは、ALDにより堆積されたSiO
2で初めにコーティングされており、SiO
2コーティングの初期形成後のチャンバ表面上でのいくらかの度合いの材料蓄積を有している。
図4Aは、加工チャンバが酸素プラズマによって再調整される前の、堆積されたケイ素含有被膜の厚さプロファイルを示し、
図4Bは、加工チャンバが酸素プラズマによって再調整された後の、堆積されたケイ素含有被膜の厚さプロファイルを示す。
図4Aでのプロファイルは、大きな中心-縁部の厚さ不均一性を示す。この場合に観察された厚さの範囲は、被膜の最も薄い部分と最も厚い部分との間で約9Åであった。これは、平均被膜厚さの約32%を表していた。1σの厚さ不均一性が、約12.5%として計算された。それに対し、
図4Bの基板は、わずか約5Å、または平均被膜厚さの約14%の範囲内で、はるかに均一な厚さプロファイルを示す。この場合の1σの厚さ不均一性は、わずか約4.1%であった。これは、チャンバが再調整される前の、加工される基板に関する
図4Aでの不均一性よりもはるかに低い。
【0086】
図4Aでのプロファイルは、堆積された被膜が基板の縁部の周りで薄いことを示す。縁部で薄いこのプロファイルは、基板の縁部の近位にあるチャンバ表面での材料蓄積により、ラジカルがこの領域で実質的に排除されることに起因すると考えられる。対照的に、
図4Bでのプロファイルは、径方向の中央位置で最も厚く、全体的に、より均一である。これらの結果は、再調整プロセスが非常に効果的であることを示唆する。