(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】食肉脱骨機構および食肉脱骨装置
(51)【国際特許分類】
A22C 17/00 20060101AFI20220509BHJP
A22C 15/00 20060101ALI20220509BHJP
A22C 17/02 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
A22C17/00
A22C15/00
A22C17/02
(21)【出願番号】P 2017250330
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】日野 和睦
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 順一
(72)【発明者】
【氏名】碓氷 弘之
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特許第4327099(JP,B2)
【文献】特開昭63-214137(JP,A)
【文献】特開平07-000093(JP,A)
【文献】特開2008-099573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 17/00
A22C 15/00
A22C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食肉屠体の背割り半截ブロックの肩ロース部およびスペアリブを除去した食肉ブロックを、吊り下げ状態で脱骨処理する食肉脱骨機構であって、
前記食肉ブロックに含まれる肩甲骨を引っ張る引張動作と、前記食肉ブロックに対して前記肩甲骨を捩じる捩じり動作と、を行うことが可能な肩甲骨脱骨部を備え
、
前記肩甲骨脱骨部における前記肩甲骨の捩じり角度は、90°以上150°以下の角度であることを特徴とする食肉脱骨機構。
【請求項2】
前記肩甲骨脱骨部における前記肩甲骨の捩じり角度は、110°以上130°以下の角度であることを特徴とする請求項1に記載の食肉脱骨機構。
【請求項3】
予め取得した前記食肉ブロックの寸法データに基づいて、前記肩甲骨を脱骨する脱骨処理位置を設定し、
前記肩甲骨脱骨部に対し、前記肩甲骨を前記脱骨処理位置まで引っ張った後に、前記肩甲骨の捩じり動作を行わせる捩じり動作制御部を更に備えることを特徴とする
請求項1
または2に記載の食肉脱骨機構。
【請求項4】
予め取得した前記食肉ブロックの寸法データに基づいて、前記肩甲骨脱骨部が前記肩甲骨の捩じり動作を行うときの捩じり速度を制御する捩じり速度制御部を更に備えることを特徴とする
請求項1
から3のいずれか一項に記載の食肉脱骨機構。
【請求項5】
前記食肉ブロックを吊り下げた状態で、前記食肉ブロックを上下方向に移動可能なワーク移動部を更に備えることを特徴とする
請求項1から
4のいずれか一項に記載の食肉脱骨機構。
【請求項6】
予め取得した前記食肉ブロックの寸法データに基づいて、前記ワーク移動部に前記食肉ブロックの移動動作を行わせるワーク高さ制御部を更に備えることを特徴とする
請求項
5に記載の食肉脱骨機構。
【請求項7】
前記食肉ブロックの吊り下げ状態で、前記食肉ブロックに含まれる上腕骨の肉部背面を支持可能なバックサポート部を更に備えることを特徴とする
請求項1から
6のいずれか一項に記載の食肉脱骨機構。
【請求項8】
前記バックサポート部は、
前記肩甲骨の引張方向から見て、左右方向に延在するサポートバーと、
前記肩甲骨の引張方向から見て、前記サポートバーの両端部から下方に延びた後、左右方向内側ほど上方に位置するように傾斜して延びる左右一対のサポートアームと、を備えることを特徴とする
請求項
7に記載の食肉脱骨機構。
【請求項9】
前記肩甲骨脱骨部は、
前記バックサポート部が前記上腕骨の肉部背面を支持している状態で、前記肩甲骨の下部を前方から押して前記肩甲骨の上部の関節部を前記上腕骨から分離させ、前記肩甲骨を前倒し可能な肩甲骨前倒し部と、
前記肩甲骨前倒し部によって前倒しされた前記肩甲骨のくびれ部を把持可能な肩甲骨チャック部と、を備えることを特徴とする
請求項
7または
8に記載の食肉脱骨機構。
【請求項10】
前記肩甲骨チャック部は、前記肩甲骨の引張方向から見て、台形枠状をなす台形枠部を備えることを特徴とする
請求項
9に記載の食肉脱骨機構。
【請求項11】
前記肩甲骨チャック部は、前記台形枠部の上辺部に設けられ、かつ前記肩甲骨の引張方向から見て、逆V字状をなす凹部を有する肩甲骨位置決め部を更に備えることを特徴とする
請求項
10に記載の食肉脱骨機構。
【請求項12】
前記肩甲骨脱骨部は、
前記肩甲骨前倒し部および前記肩甲骨チャック部を支持する架台と、
前記架台を前記肩甲骨の引張方向に沿って案内可能なガイドレールと、を更に備えることを特徴とする
請求項
9から
11のいずれか一項に記載の食肉脱骨機構。
【請求項13】
前記ガイドレールは、前記バックサポート部の側ほど上方に位置するように傾斜していることを特徴とする
請求項
12に記載の食肉脱骨機構。
【請求項14】
前記バックサポート部が前記上腕骨の肉部背面を支持している状態で、前記食肉ブロックに含まれる肩バラ肉を開くことが可能な肩バラ開き部を更に備えることを特徴とする
請求項
7から
13のいずれか一項に記載の食肉脱骨機構。
【請求項15】
前記肩バラ開き部は、
前記肩バラ肉の開き方向に揺動可能な第一揺動アームと、
前記肩バラ肉の開き方向に揺動可能に設けられ、前記肩甲骨の引張方向から見て、前記第一揺動アームよりも長い第二揺動アームと、を備えることを特徴とする
請求項
14に記載の食肉脱骨機構。
【請求項16】
前記第一揺動アームおよび前記第二揺動アームの少なくとも一方には、
前記第一揺動アームおよび前記第二揺動アームを同期して揺動させることが可能なストッパが設けられていることを特徴とする
請求項
15に記載の食肉脱骨機構。
【請求項17】
前記バックサポート部が前記上腕骨の肉部背面を支持している状態で、前記バックサポート部とは反対側から前記食肉ブロックを押さえることが可能な肉押さえ部を更に備えることを特徴とする
請求項
7から
16のいずれか一項に記載の食肉脱骨機構。
【請求項18】
前記肩甲骨脱骨部が前記肩甲骨の捩じり動作を行っている途中で、前記肉押さえ部に前記食肉ブロックの押さえ動作を行わせる肉押さえ動作制御部を更に備えることを特徴とする
請求項
17に記載の食肉脱骨機構。
【請求項19】
前記食肉ブロックが投入される投入ステーションと、
前記食肉ブロックから肩甲骨の脱骨処理を行う肩甲骨脱骨ステーションと、
前記食肉ブロックから上腕骨の脱骨処理を行う上腕骨脱骨ステーションと、を備える食肉脱骨装置であって、
前記肩甲骨脱骨ステーションは、請求項1から
18のいずれか一項に記載の食肉脱骨機構を備えることを特徴とする食肉脱骨装置。
【請求項20】
前記食肉ブロックの寸法を計測するワーク計側ステーションと、
前記ワーク計側ステーションで計測された前記食肉ブロックの寸法に基づいて、前記食肉脱骨機構を制御する制御装置と、を更に備えることを特徴とする
請求項
19に記載の食肉脱骨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食肉脱骨機構および食肉脱骨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、豚、牛、馬、羊、山羊等の食肉の脱骨処理は、背割りして分割された食肉の枝肉ブロックに筋入れ等の前処理を行った後に行われている。例えば、特許文献1には、食肉屠体の背割り半截ブロックの肩ロース部およびスペアリブを除去した食肉ブロックを、吊り下げ状態で脱骨処理する食肉脱骨装置が開示されている。特許文献1の食肉脱骨装置では、上腕骨の肉部背面の押圧と、肩甲骨下端の押圧とを対向させて肩甲骨の上部の関節部を上腕骨から分離し、前倒した肩甲骨のくびれ部を門型チャックにより把持した後、肩甲骨を引き剥がしている。特許文献1の食肉脱骨装置では、アクチュエータおよびリニアガイドを介して、肩甲骨を一方向に直線的に引き剥がしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、肩甲骨を一方向に直線的に引き剥がす動作のみでは、肩甲骨の剥がし部において割れ等につながる過大な負荷がかかり、食肉ブロックから肩甲骨を安定して剥がすことができない可能性がある。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、食肉ブロックから肩甲骨を安定して剥がすことが可能な食肉脱骨機構および食肉脱骨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る食肉脱骨機構は、食肉屠体の背割り半截ブロックの肩ロース部およびスペアリブを除去した食肉ブロックを、吊り下げ状態で脱骨処理する食肉脱骨機構であって、前記食肉ブロックに含まれる肩甲骨を引っ張る引張動作と、前記食肉ブロックに対して前記肩甲骨を捩じる捩じり動作と、を行うことが可能な肩甲骨脱骨部を備え、前記肩甲骨脱骨部における前記肩甲骨の捩じり角度は、90°以上150°以下の角度であることを特徴とする。
上記構成において、前記肩甲骨脱骨部における前記肩甲骨の捩じり角度は、110°以上130°以下の角度でもよい。
【0007】
この構成によれば、肩甲骨の引張動作に加えて肩甲骨の捩じり動作を行うことができるため、肩甲骨を一方向に直線的に引き剥がす動作のみ行う場合と比較して、肩甲骨の剥がし部に過大な負荷がかかることを抑制することができる。したがって、食肉ブロックから肩甲骨を安定して剥がすことができる。
ところで、食肉ブロックには、肩甲骨よりも軟らかい肩甲軟骨が含まれている。肩甲骨を一方向に直線的に引き剥がす動作のみ行う場合、肩甲骨の剥がし部において肩甲軟骨の割れ等につながる過大な負荷がかかり、食肉ブロックから肩甲骨とともに肩甲軟骨を安定して剥がすことができない可能性が高い。これに対し、この構成によれば、肩甲骨の剥がし部に過大な負荷がかかることを抑制することができるため、食肉ブロックから肩甲骨とともに肩甲軟骨を安定して剥がすことができる。
【0008】
本発明の一態様において、予め取得した前記食肉ブロックの寸法データに基づいて、前記肩甲骨を脱骨する脱骨処理位置を設定し、前記肩甲骨脱骨部に対し、前記肩甲骨を前記脱骨処理位置まで引っ張った後に、前記肩甲骨の捩じり動作を行わせる捩じり動作制御部を更に備えていてもよい。
この構成によれば、食肉ブロックの個体ごとに脱骨処理位置を変更することができる。これにより、食肉ブロックの個体差による脱骨処理位置の誤差を可及的に抑えることができるため、食肉ブロックの個体差によらずに肩甲骨を安定して剥がすことができる。加えて、肩甲骨を脱骨処理位置まで引っ張った後に肩甲骨の捩じり動作が行われるため、肩甲骨の剥がし部(肩甲軟骨の部分)の手前で捩じり動作を行うことができ、肩甲骨とともに肩甲軟骨をより安定して剥がすことができる。
【0009】
本発明の一態様において、予め取得した前記食肉ブロックの寸法データに基づいて、前記肩甲骨脱骨部が前記肩甲骨の捩じり動作を行うときの捩じり速度を制御する捩じり速度制御部を更に備えていてもよい。
この構成によれば、食肉ブロックの個体ごとに捩じり速度を変更することができる。これにより、食肉ブロックの個体差による肩甲骨の捩じり速度の誤差を可及的に抑えることができるため、食肉ブロックの個体差によらずに肩甲骨を安定して剥がすことができる。加えて、人手作業と同様に肩甲骨を捩じりながら優しく剥がすことができるため、肩甲骨とともに肩甲軟骨をより安定して剥がすことができる。
【0010】
本発明の一態様において、前記食肉ブロックを吊り下げた状態で、前記食肉ブロックを上下方向に移動可能なワーク移動部を更に備えていてもよい。
この構成によれば、食肉ブロックを吊り下げた状態で、食肉ブロックの上下位置を所望の位置に設定することができる。
【0011】
本発明の一態様において、予め取得した前記食肉ブロックの寸法データに基づいて、前記ワーク移動部に前記食肉ブロックの移動動作を行わせるワーク高さ制御部を更に備えていてもよい。
この構成によれば、食肉ブロックの個体ごとに食肉ブロックの上下位置を変更することができる。これにより、食肉ブロックの個体差による食肉ブロックの上下位置の誤差を可及的に抑えることができるため、食肉ブロックの個体差によらずに肩甲骨を安定して剥がすことができる。
【0012】
本発明の一態様において、前記食肉ブロックの吊り下げ状態で、前記食肉ブロックに含まれる上腕骨の肉部背面を支持可能なバックサポート部を更に備えていてもよい。
この構成によれば、食肉ブロックを吊り下げた状態で上腕骨の肉部背面が支持されるため、食肉ブロックの吊り下げ姿勢を保持することができる。
【0013】
本発明の一態様において、前記バックサポート部は、前記肩甲骨の引張方向から見て、左右方向に延在するサポートバーと、前記肩甲骨の引張方向から見て、前記サポートバーの両端部から下方に延びた後、左右方向内側ほど上方に位置するように傾斜して延びる左右一対のサポートアームと、を備えていてもよい。
この構成によれば、サポートバーにより上腕骨の肉部背面を支持しつつ、左右一対のサポートアームにより上腕骨の肉部背面を左右方向内側に案内する(食肉ブロックのセンタリングを行う)ことができるため、食肉ブロックの吊り下げ姿勢をより安定して保持することができる。
【0014】
本発明の一態様において、前記肩甲骨脱骨部は、前記バックサポート部が前記上腕骨の肉部背面を支持している状態で、前記肩甲骨の下部を前方から押して前記肩甲骨の上部の関節部を前記上腕骨から分離させ、前記肩甲骨を前倒し可能な肩甲骨前倒し部と、前記肩甲骨前倒し部によって前倒しされた前記肩甲骨のくびれ部を把持可能な肩甲骨チャック部と、を備えていてもよい。
この構成によれば、前倒しされた肩甲骨のくびれ部をチャック部で把持した状態で、肩甲骨の引張動作に加えて肩甲骨の捩じり動作を行うことができるため、食肉ブロックから肩甲骨を安定して剥がすことができる。
【0015】
本発明の一態様において、前記肩甲骨チャック部は、前記肩甲骨の引張方向から見て、台形枠状をなす台形枠部を備えていてもよい。
この構成によれば、前倒しされた肩甲骨のくびれ部を台形枠部内に収めることができるため、肩甲骨の位置決めを安定して行うことができる。
【0016】
本発明の一態様において、前記肩甲骨チャック部は、前記台形枠部の上辺部に設けられ、かつ前記肩甲骨の引張方向から見て、逆V字状をなす凹部を有する肩甲骨位置決め部を更に備えていてもよい。
この構成によれば、前倒しされた肩甲骨のくびれ部を台形枠部内に収めつつ、逆V字状をなす凹部により肩甲骨のくびれ部を逆V字の斜面に沿って案内する(肩甲骨のくびれ部をセンタリングする)ことができるため、肩甲骨の位置決めをより安定して行うことができる。
【0017】
本発明の一態様において、前記肩甲骨脱骨部は、前記肩甲骨前倒し部および前記肩甲骨チャック部を支持する架台と、前記架台を前記肩甲骨の引張方向に沿って案内可能なガイドレールと、を更に備えていてもよい。
この構成によれば、肩甲骨前倒し部および肩甲骨チャック部を一体的に移動させることができるため、肩甲骨前倒し部および肩甲骨チャック部を別個独立に移動させる場合と比較して、構成の簡素化および省エネルギー化を図ることができる。
【0018】
本発明の一態様において、前記ガイドレールは、前記バックサポート部の側ほど上方に位置するように傾斜していてもよい。
ところで、ガイドレールが水平面と平行に直線状に延びていたり、バックサポート部の側ほど下方に位置するように傾斜していたりすると、肩甲骨前倒し部により肩甲骨の下部を前方から押している途中で空振りし(肩甲骨前倒し部が後方に抜け)、肩甲骨を十分に前倒しできない可能性がある。これに対し、この構成によれば、ガイドレールがバックサポート部の側ほど上方に位置するように傾斜していることで、肩甲骨前倒し部により肩甲骨の下部を押し続けることできるため、肩甲骨を十分に前倒しすることができる。
【0019】
本発明の一態様において、前記バックサポート部が前記上腕骨の肉部背面を支持している状態で、前記食肉ブロックに含まれる肩バラ肉を開くことが可能な肩バラ開き部を更に備えていてもよい。
この構成によれば、上腕骨の肉部背面が支持されている状態で肩バラ肉を開くことができるため、肩甲骨が肩バラ肉で隠れている場合において、肩甲骨を露出させることができる。
【0020】
本発明の一態様において、前記肩バラ開き部は、前記肩バラ肉の開き方向に揺動可能な第一揺動アームと、前記肩バラ肉の開き方向に揺動可能に設けられ、前記肩甲骨の引張方向から見て、前記第一揺動アームよりも長い第二揺動アームと、を備えていてもよい。
ところで、肩バラ肉の厚み及び大きさは個体差があるため、1本の揺動アームのみを備える場合、肩バラ肉を十分に開くことができず、肩甲骨を十分に露出させることができない可能性がある。これに対し、この構成によれば、第一揺動アームおよび第二揺動アームを備えることで、第一揺動アームおよび第二揺動アームの二段階で肩バラ肉を捕らえることができるため、肩バラ肉を十分に開くことができ、肩甲骨を十分に露出させることができる。
【0021】
本発明の一態様において、前記第一揺動アームおよび前記第二揺動アームの少なくとも一方には、前記第一揺動アームおよび前記第二揺動アームを同期して揺動させることが可能なストッパが設けられていてもよい。
この構成によれば、第一揺動アームおよび第二揺動アームを同期して揺動させることができるため、第一揺動アームおよび第二揺動アームを別個独立に移動させる場合と比較して、構成の簡素化および省エネルギー化を図ることができる。
【0022】
本発明の一態様において、前記バックサポート部が前記上腕骨の肉部背面を支持している状態で、前記バックサポート部とは反対側から前記食肉ブロックを押さえることが可能な肉押さえ部を更に備えていてもよい。
この構成によれば、バックサポート部により上腕骨の肉部背面を支持しつつ、肉押さえ部により前記肉部背面とは反対側から食肉ブロックを押さえることができるため、食肉ブロックの吊り下げ姿勢をより安定して保持することができる。
【0023】
本発明の一態様において、前記肩甲骨脱骨部が前記肩甲骨の捩じり動作を行っている途中で、前記肉押さえ部に前記食肉ブロックの押さえ動作を行わせる肉押さえ動作制御部を更に備えていてもよい。
本発明者は、鋭意検討の結果、肩甲骨の捩じり動作の途中で食肉ブロックの押さえ動作を行うことにより、食肉ブロックを押さえた後に肩甲骨の捩じり動作を行う場合と比較して、食肉ブロックから肩甲骨を安定して剥がすことができる成功率が高まることを見出した。この構成によれば、肩甲骨の捩じり動作の途中で食肉ブロックの押さえ動作を行うことで、食肉ブロックから肩甲骨を安定して剥がすことができる成功率を更に高めることができる。
【0024】
本発明の一態様に係る食肉脱骨装置は、前記食肉ブロックが投入される投入ステーションと、前記食肉ブロックから肩甲骨の脱骨処理を行う肩甲骨脱骨ステーションと、前記食肉ブロックから上腕骨の脱骨処理を行う上腕骨脱骨ステーションと、を備える食肉脱骨装置であって、前記肩甲骨脱骨ステーションは、上記食肉脱骨機構を備えることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、肩甲骨脱骨ステーションが上記食肉脱骨機構を備えることで、食肉ブロックから肩甲骨を安定して剥がすことが可能な食肉脱骨装置を提供することができる。
【0026】
本発明の一態様において、前記食肉ブロックの寸法を計測するワーク計側ステーションと、前記ワーク計側ステーションで計測された前記食肉ブロックの寸法に基づいて、前記食肉脱骨機構を制御する制御装置と、を更に備えていてもよい。
この構成によれば、食肉ブロックの個体ごとに食肉脱骨機構の制御を変更することができる。これにより、食肉ブロックの個体差による食肉脱骨機構の誤動作を可及的に抑えることができるため、食肉ブロックの個体差によらずに肩甲骨を安定して剥がすことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、食肉ブロックから肩甲骨を安定して剥がすことが可能な食肉脱骨機構および食肉脱骨装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】実施形態に係る食肉脱骨装置の構成を示すブロック図。
【
図5】実施形態に係る食肉脱骨機構の動作説明図。
図5(a)は、実施形態に係る食肉脱骨機構の初期状態の斜視図。
図5(b)は、実施形態に係る肩甲骨の引張動作の説明図。
図5(c)は、実施形態に係る肩甲骨の捩じり動作の説明図。
【
図8】実施形態に係る肩バラ開き部の動作説明図。
図8(a)は、実施形態に係る肩バラ開き部の初期状態の前面図。
図8(b)は、実施形態に係る肩バラ開き部の動作後の状態の前面図。
【
図9】実施形態に係る食肉脱骨機構の動作説明図。
図9(a)は、実施形態に係る食肉脱骨機構の初期状態の側面図。
図9(b)は、実施形態に係るバックサポート部の動作説明図。
【
図10】実施形態に係る食肉脱骨機構の動作説明図。
図10(a)は、実施形態に係る肩バラ開き部の動作説明図。
図10(b)は、実施形態に係るワーク移動部および肩甲骨前倒し部の動作説明図。
【
図11】実施形態に係る食肉脱骨機構の動作説明図。
図11(a)は、実施形態に係るワーク移動部の動作説明図。
図11(b)は、実施形態に係る肩甲骨チャック部の動作説明図。
【
図12】実施形態に係る食肉脱骨機構の動作説明図。
図12(a)は、実施形態に係るワーク移動部および肩甲骨脱骨部の動作説明図。
図12(b)は、実施形態に肩甲骨脱骨部の動作説明図。
【
図13】実施形態に係る食肉脱骨機構の動作説明図。
図13(a)は、実施形態に係る肩甲骨脱骨部の動作説明図。
図13(b)は、実施形態に係る肩甲骨の排出および原点復帰の動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。各図において、同一構成については同一の符号を付す。実施形態においては、食肉脱骨装置の一例として、背割りして分割された豚肉の左側部の枝肉ブロックのうち、うで・肩ロース部(
図14参照)の脱骨処理を行う食肉脱骨装置を挙げて説明する。
【0030】
実施形態の食肉脱骨装置は、前処理において、肩ロース部およびスペアリブの分割除去と、前腕骨の脱骨とをした後、上腕骨および肩甲骨の周辺部に筋入れした豚うで部位(食肉ブロック)を脱骨処理の対象とする。実施形態の食肉脱骨装置は、左側の豚うで部位を「うで肉」、「上腕骨」、「肩甲骨」に脱骨処理する。
【0031】
[食肉脱骨装置1]
図1に示すように、食肉脱骨装置1は、左側の豚うで部位(以下「ワーク」ともいう。)が投入される投入ステーション2と、ワークの寸法を計測するワーク計測ステーション3と、ワークから肩甲骨の脱骨処理を行う肩甲骨脱骨ステーション4と、ワークから上腕骨の脱骨処理を行う上腕骨脱骨ステーション5と、脱骨処理による肉分離により残った骨部を排出する骨部排出ステーション6と、各ステーション間を連絡する搬送路に沿ってワークを搬送するワーク搬送機構7と、ワークより分離した肉を搬送する製品搬送部8(以下「コンベア8」という。)と、各ステーション2~6を制御する制御装置9(
図2参照)と、各ステーションを支持するフレーム10と、フレーム10を支持する脚部11と、を備える。各ステーション2~6は、一方向に直線状に間隔をあけて配置されている。
【0032】
以下の説明においては、上下方向のうち、脚部11側を下方、脚部11とは反対側を上方として説明する。また、上下方向に直交する方向において、投入ステーション2側(ワークの搬送方向上流側)を右方とし、投入ステーション2とは反対側(ワークの搬送方向下流側)を左方とする。また、上下方向および左右方向のそれぞれに直交する方向を前後方向とする。
【0033】
[投入ステーション2]
投入ステーション2には、人手(作業者)により上腕骨および肩甲骨の周辺の筋入れ等が行われたワークが投入される。例えば、投入ステーション2は、ワークを引っ掛けるためのフックと、フックを上下方向に昇降移動させる昇降機構と、昇降機構を作動させるためのスイッチと、を備える。
【0034】
例えば、作業者は、ワークに含まれる上腕骨のくびれ部を、フックに引っ掛ける。上腕骨のくびれ部がフックに引っ掛けられた後、作業者は、スイッチを押す。スイッチが押されると、昇降機構は、フックとともにワークを上昇させ、次工程のワーク計測ステーション3が位置する搬送路にワークを吊り下げ状態で導入する。昇降機構は、前記搬送路にワークを導入した後、フックを下降させ、
図1の初期状態(原点位置)に戻す。
【0035】
[ワーク計測ステーション3]
図1に示すように、ワーク計測ステーション3は、投入ステーション2の下流側(右側)に隣接して配置されている。ワーク計測ステーション3は、ワーク寸法(食肉ブロックの寸法)としてワークの上下長さを計測する。例えば、ワーク計測ステーション3は、上腕骨のくびれ部を支持する上腕骨くびれ支持部と、吊り下げ状態のワークの下端位置を検知するワーク下端位置検知部と、を備える。
【0036】
例えば、ワーク下端位置検知部は、ワークの下端位置を検知する接触式センサと、接触式センサを上下方向に昇降移動させる昇降装置と、を備える。昇降装置は、吊り下げ状態にあるワークの下方に配置されている。昇降装置は、接触式センサをワーク下端に向けて上方に移動させる。接触式センサがワーク下端に接触することにより、ワークの下端位置が検知される。昇降装置は、接触式センサによりワークの下端位置が検知された後、接触式センサを下方に移動させる。ワーク搬送機構7は、下端位置が検知されたワークを次工程の肩甲骨脱骨ステーション4が位置する搬送路に導入する。
【0037】
ワーク計測ステーション3は、上腕骨くびれ支持部により支持されているくびれ部(支持位置)と、ワークの下端位置とにより、ワークの上下長さを算出する。ここで、ワークの上下長さは、上腕骨のくびれ部の支持位置とワークの下端位置との上下方向間の距離を意味する。
【0038】
ワーク計測ステーション3により計測されたワーク上下長さのデータ(以下「全長測定データ」ともいう。)は、制御装置9(
図2参照)に出力される。制御装置9の記憶部70(
図2参照)には、ワークに含まれる上腕骨および肩甲骨の長さ、太さ、比率などに関する情報(以下「ワーク情報」ともいう。)が記憶されている。制御装置9は、全長測定データおよびワーク情報に基づいて、ワークにおける上腕骨と肩甲骨との関節部の位置を算出する。これにより、ワークの個体差により関節部の位置の誤差を可及的に抑えることができる。
【0039】
[肩甲骨脱骨ステーション4]
図1に示すように、肩甲骨脱骨ステーション4は、ワーク計測ステーション3の下流側(左側)に隣接して配置されている。肩甲骨脱骨ステーション4は、実施形態に係る食肉脱骨機構19を備える。実施形態において、食肉脱骨機構19は、豚肉屠体を背割りした左側部の半截ブロックの肩ロース部およびスペアリブを除去したワークを吊り下げ、ワークの吊り下げ状態で肩甲骨の脱骨処理を行う。ワーク搬送機構7は、肩甲骨の脱骨処理が完了したワークを次工程の上腕骨脱骨ステーション5が位置する搬送路に導入する。
【0040】
[上腕骨脱骨ステーション5]
図1に示すように、上腕骨脱骨ステーション5は、肩甲骨脱骨ステーション4の下流側(左側)に隣接して配置されている。上腕骨脱骨ステーション5は、肩甲骨の脱骨処理が完了したワークに対し、上腕骨の脱骨処理を行う。具体的に、上腕骨脱骨ステーション5は、肩甲骨の脱骨処理が完了したワーク(以下「第二ワーク」ともいう。)に対し、上腕骨の骨部寄りの肉部剥ぎ取りと、上腕骨の骨頭周りの筋切断と、上腕骨の下部近傍の切断による肉分離と、を行う。
【0041】
例えば、上腕骨脱骨ステーション5は、吊り下げ状態の第二ワークに含まれる上腕骨のくびれ部(上端部)を把持可能な上腕骨チャック部と、上腕骨の骨部寄りの肉部を剥ぎ取るミートセパレータと、上腕骨の下端近傍を切断して上腕骨から肉分離を行う水平回転丸刃と、を備える。
【0042】
例えば、上腕骨脱骨ステーション5は、吊り下げ状態の第二ワークを上下方向に移動可能な第二ワーク移動部と、吊り下げ状態の第二ワークの寸法を計測する第二ワーク寸法計測部と、第二ワーク寸法計測部の計測結果に基づいて、第二ワーク移動部に第二ワークの移動動作を行わせる第二ワーク高さ制御部と、第二ワーク移動部が第二ワーク寸法計測部の計測結果に基づく第二ワークの移動動作を行った後に、水平回転丸刃に上腕骨の下端近傍を切断させる切断動作制御部と、を備えていてもよい。これにより、第二ワークの個体差による上腕骨の下端近傍の上下位置の誤差を可及的に抑えることができるため、上腕骨の下端近傍を正確に切断して上腕骨から肉分離を安定して行うことができる。
【0043】
上腕骨チャック部は、上腕骨からの肉分離が完了した後、上腕骨のくびれ部の把持を解除する。把持が解除された上腕骨は、骨部排出ステーション6に導入される。
一方、上腕骨から分離された肉は、コンベア8に導入される。
【0044】
[食肉脱骨機構19]
図3に示すように、食肉脱骨機構19は、ワーク(図中符号90)に含まれる肩甲骨を引っ張る引張動作と、ワークに対して肩甲骨を捩じる捩じり動作と、を行うことが可能な肩甲骨脱骨部20と、ワークを上下方向に移動可能なワーク移動部30と、ワークに含まれる上腕骨の肉部背面を支持可能なバックサポート部40と、ワークに含まれる肩バラ肉を開くことが可能な肩バラ開き部50と、バックサポート部40とは反対側からワークを押さえることが可能な肉押さえ部60と、食肉脱骨機構19の各部を制御する制御部71~74(制御装置9、
図2参照)と、を備える。
以下の説明においては、前後方向のうち、バックサポート部40側を後方、バックサポート部40とは反対側を前方として説明する。
【0045】
[肩甲骨脱骨部20]
図3に示すように、肩甲骨脱骨部20は、食肉脱骨機構19の下部に配置されている。肩甲骨脱骨部20は、ワークに含まれる肩甲骨を、上面視でモータ軸線C1の右回り(時計回り)に捩じる。具体的に、肩甲骨脱骨部20は、肩甲骨を脱骨処理位置まで引っ張った後に、肩甲骨を
図4の矢印V1方向に捩じる。肩甲骨の脱骨処理位置および捩じり角度は、捩じり動作制御部71(制御装置9、
図2参照)により設定される。例えば、肩甲骨の捩じり角度は、90°以上150°以下の角度とする。より好ましくは、肩甲骨の捩じり角度は、110°以上130°以下の角度とする。
【0046】
肩甲骨脱骨部20は、肩甲骨の上部の関節部を上腕骨から分離させて肩甲骨を前倒し可能な肩甲骨前倒し部21と、前倒しされた肩甲骨のくびれ部を把持可能な肩甲骨チャック部22と、肩甲骨前倒し部21および肩甲骨チャック部22を支持する架台23と、架台23を肩甲骨の引張方向(
図4の矢印V2方向)に沿って案内可能なガイドレール24と、肩甲骨チャック部22を肩甲骨の捩じり方向(
図4の矢印V1方向、
図5(c)参照)に駆動可能な捩じり駆動源25と、架台23をガイドレール24とは反対側から摺動可能に支持するサポートガイド26と、を備える。
【0047】
[肩甲骨前倒し部21]
図3に示すように、肩甲骨前倒し部21は、肩甲骨を前方から
図4の矢印V3方向(
図5(b)参照)に押圧可能な肩甲骨前倒プレート21aと、肩甲骨前倒プレート21aを傾動可能なプレート傾動部21bと、を備える。実施形態において、肩甲骨前倒プレート21aは、初期状態(
図5(a)参照)で水平面に対して僅かに前傾している。初期状態における肩甲骨前倒プレート21aの傾斜角度は、ガイドレール24の傾斜角度と実質的に等しい。
【0048】
プレート傾動部21bは、肩甲骨前倒プレート21aの初期状態の前傾姿勢と、肩甲骨前倒プレート21aの傾動状態の後傾姿勢との間で、肩甲骨前倒プレート21aを揺動可能である。肩甲骨前倒プレート21aが前傾姿勢にあるとき、肩甲骨前倒プレート21aの上面には、前倒しされた肩甲骨(ワーク)が載置される。一方、肩甲骨前倒プレート21aが後傾姿勢にあるとき、肩甲骨前倒プレート21aの上面に残された肩甲骨(ワークから剥がされた肩甲骨)は、肩甲骨前倒プレート21aの傾斜(後傾)に沿って排出される。
【0049】
[肩甲骨チャック部22]
図4に示すように、肩甲骨チャック部22は、肩甲骨前倒し部21によって前倒しされた肩甲骨のくびれ部を把持する。肩甲骨チャック部22は、肩甲骨のくびれ部を把持するチャック部本体22aと、チャック部本体22aと共同して肩甲骨のくびれ部を把持するチャック台座22bと、チャック部本体22aを上下方向に昇降可能なチャック昇降部22cと、を備える。
【0050】
図6は、肩甲骨チャック部22を肩甲骨の引張方向に沿う前方から見た図(前面図)である。
図6の前面視で、チャック部本体22aは、台形枠状をなす台形枠部81と、台形枠部81の上辺部81aに設けられた肩甲骨位置決め部82と、台形枠部81とチャック昇降部22cとを連結するチャック連結部83と、を備える。
【0051】
図9(a)の側面視で、台形枠部81の上部は、上側ほど後方に位置するように傾斜している。
図9(a)の側面視で、台形枠部81の上辺部81aは、チャック連結部83よりも後方に位置している。
【0052】
図6の前面視で、肩甲骨位置決め部82には、逆V字状をなす凹部82aが設けられている。言い換えると、肩甲骨位置決め部82には、前面視で左右方向内側ほど上方に位置するように直線状に傾斜する左右一対の傾斜辺部が設けられている。
図6の前面視で、チャック連結部83の上端縁は、左右方向に直線状に延びている。チャック連結部83の上端縁と、左右一対の傾斜辺部との間には、肩甲骨のくびれ部(肩甲骨の上部の関節部)を挿通可能な空間85が形成されている。
【0053】
図9(a)に示すように、チャック台座22bは、台形枠部81の上辺部81aと上下方向で対向する位置に配置されている。
図9(a)の側面視で、チャック台座22bは、台形枠部81の上辺部81aの下方に配置されている。
図9(a)の側面視で、チャック台座22bには、上方に突出する三角形状をなす三角凸部が設けられている。実施形態によれば、肩甲骨位置決め部82における逆V字状の凹部82a(
図6参照)と、チャック台座22bにおける三角凸部とにより、肩甲骨のくびれ部をしっかりと把持することができる。
【0054】
図3に示すように、実施形態において、チャック昇降部22cは、上下方向に伸縮可能な左右一対のシリンダ機構を備える。これにより、1つのシリンダ機構のみを備えた構成と比較して、チャック部本体22aとともに肩甲骨を安定して保持し、かつ昇降動作を安定して行うことができる。
【0055】
[ガイドレール24]
図3に示すように、ガイドレール24は、食肉脱骨機構19の下部右側に配置されている。ガイドレール24は、架台23を肩甲骨の引張方向(
図4の矢印V2方向、
図5(b)参照)に沿って案内する。ガイドレール24は、バックサポート部40の側ほど上方に位置するように直線状に傾斜している。例えば、フレーム10の上面10a(水平面、
図1参照)に対するガイドレール24の傾斜角度(以下「レール傾斜角度」ともいう。)は、5°以上12°以下の角度とする。より好ましくは、レール傾斜角度は、8°以上9°以下の角度とする。
なお、
図3において、符号24aはガイドレール24の前端部を支持するレール前支持部、符号24aはガイドレール24の後端部を支持するレール後支持部をそれぞれ示す。
【0056】
[捩じり駆動源25]
例えば、捩じり駆動源25は、サーボモータである。サーボモータの回転軸線は、モータ軸線C1(
図3参照)を形成している。実施形態において、モータ軸線C1は、鉛直線に対して僅かに前傾している。
【0057】
[ワーク移動部30]
図3に示すように、ワーク移動部30は、食肉脱骨機構19の上部に配置されている。ワーク移動部30は、ワークの吊り下げ状態で食肉ブロックを上下方向(
図4の矢印V4方向)に移動させる。ワーク移動部30は、ワークに含まれる上腕骨のくびれ部を懸架する上腕骨くびれ懸架部31と、上腕骨くびれ懸架部31を上下方向に昇降可能な懸架昇降部32と、を備える。
【0058】
実施形態において、懸架昇降部32は、上下方向に伸縮可能な左右一対のシリンダ機構を備える。これにより、1つのシリンダ機構のみを備えた構成と比較して、上腕骨くびれ懸架部31とともにワークを安定して保持し、かつ昇降動作を安定して行うことができる。
【0059】
[バックサポート部40]
図3に示すように、バックサポート部40は、食肉脱骨機構19の後部に配置されている。バックサポート部40は、ワークの吊り下げ状態でワークに含まれる上腕骨の肉部背面を支持する。具体的に、バックサポート部40は、ワークが肩甲骨脱骨ステーション4に導入された直後に、
図4の矢印V5方向に揺動してワーク上部背面を支持する。
【0060】
図7は、バックサポート部40を肩甲骨の引張方向に沿う前方から見た図(前面図)である。
図7の前面視で、バックサポート部40は、左右方向に直線状に延在するサポートバー41と、サポートバー41の両端部から下方に延びた後に左右方向内側ほど上方に位置するように傾斜して延びる左右一対のサポートアーム42,43と、サポートバー41に連結され後上方に延びる左右一対のサポートパイプ44と、左右一対のサポートパイプ44を
図4の矢印V5方向に揺動させるサポート駆動部45(
図4参照)と、を備える。
【0061】
図7の前面視で、バックサポート部40の形状は、左右非対称となっている。
図7の前面視で、左側のサポートアーム42は、右側のサポートアーム43よりも小さい外形を有している。
【0062】
[肩バラ開き部50]
図3に示すように、肩バラ開き部50は、食肉脱骨機構19の上部に配置されている。肩バラ開き部50は、バックサポート部40が上腕骨の肉部背面を支持している状態でワークに含まれる肩バラ肉を開く。
【0063】
図8は、肩バラ開き部50を肩甲骨の引張方向に沿う前方から見た図(前面図)である。
図8(a)は、肩バラ開き部50の初期状態を示す。
図8(b)は、肩バラ開き部50の動作後の状態を示す。
図8(a)に示すように、肩バラ開き部50は、肩バラ肉の開き方向(
図8(b)の矢印V6方向)に揺動可能な第一揺動アーム51と、第一揺動アーム51の前方に設けられた第二揺動アーム52と、第一揺動アーム51および第二揺動アーム52を揺動可能に支持する揺動軸支部53と、第一揺動アーム51と第二揺動アーム52とを揺動させる揺動駆動部54(
図3参照)と、を備える。
【0064】
図8(a)の前面視(初期状態)で、第一揺動アーム51は、揺動軸支部53から左方向に向けて直線状に延びる第一アーム本体51aと、第一アーム本体51aの左端部から後方に延びる第一後方延在部51bと、を備える。
図8(a)の前面視で、第二揺動アーム52は、第一揺動アーム51よりも長い。
図8(a)の前面視で、第二揺動アーム52は、第一アーム本体51aよりも長く揺動軸支部53から左方向に向けて直線状に延びる第二アーム本体52aと、第二アーム本体52aの左端部から後方に延びる第二後方延在部52bと、を備える。
【0065】
第一揺動アーム51には、第一揺動アーム51および第二揺動アーム52を同期して揺動させることが可能なストッパ55が設けられている。
図8(a)の前面視で、ストッパ55は、第一アーム本体51aの左側部から前方に突出している。
【0066】
図8(a)の前面視で、ストッパ55には、第二アーム本体52aが当接している。これにより、第一揺動アーム51の矢印V6方向(
図8(b)参照)への揺動に従って、第二揺動アーム52を
図8(b)の矢印V6方向に揺動させることができる。加えて、第一揺動アーム51を途中で停止させることにより、第二揺動アーム52のみを揺動させることができる。
一方、
図8(b)の動作後の状態から第二揺動アーム52を
図8(b)の矢印V6方向とは反対方向に揺動させる場合(原点復帰させる場合)には、第二揺動アーム52が原点に復帰する途中でストッパ55に引っ掛かる。これにより、第二揺動アーム52の矢印V6方向とは反対方向への揺動に従って、第一揺動アーム51を矢印V6方向とは反対方向に揺動させることができる。
【0067】
[肉押さえ部60]
図3に示すように、肉押さえ部60は、食肉脱骨機構19の上部に設けられている。肉押さえ部60は、バックサポート部40が上腕骨の肉部背面を支持している状態で、バックサポート部40とは反対側からワークを押さえる。
【0068】
肉押さえ部60は、左右方向に延在する肉押さえバー61と、肉押さえバー61の右端部を支持する押さえバー支持部62と、押さえバー支持部62を介して肉押さえバー61をワークに近接する方向およびワークから離反する方向に揺動させる押さえバー駆動部63と、を備える。
図4において、矢印V9方向は、肉押さえバー61による肉押さえ方向を示す。
【0069】
[制御装置9]
図2に示すように、制御装置9は、食肉脱骨装置1の各要素を統括制御する。制御装置9は、ワーク計測ステーション3で計測された全長測定データに基づいて、食肉脱骨機構19を制御する。制御装置9は、記憶部70、捩じり動作制御部71、捩じり速度制御部72、ワーク高さ制御部73および肉押さえ動作制御部74を備える。
【0070】
[捩じり動作制御部71]
捩じり動作制御部71は、予め取得した全長測定データに基づいて、肩甲骨を脱骨する脱骨処理位置を設定する。ここで、脱骨処理位置は、肩甲骨の引張動作によりワークから肩甲骨本体が引き剥がされ、ワークから肩甲軟骨が引き剥がされる手前の位置である。捩じり動作制御部71は、肩甲骨脱骨部20に対し、肩甲骨を脱骨処理位置まで引っ張った後に、肩甲骨の捩じり動作を行わせる。
【0071】
[捩じり速度制御部72]
捩じり速度制御部72は、予め取得した全長測定データに基づいて、肩甲骨脱骨部20が肩甲骨の捩じり動作を行うときの捩じり速度(
図3に示すモータ軸線C1の回りの回転速度)を制御する。例えば、捩じり速度制御部72は、捩じり速度を三段階で制御する。具体的に、捩じり速度制御部72は、以下の三段階の速度制御を行う。
(1)捩じり速度制御部72は、肩甲骨の捩じり初期において、捩じり速度を第一速度S1とする。
(2)捩じり速度制御部72は、肩甲骨の捩じり終期において、捩じり速度を第一速度S1よりも遅い第二速度S2とする(S2<S1)。
(3)捩じり速度制御部72は、肩甲骨の捩じり初期と終期との中間時期において、捩じり速度を第一速度S1と第二速度S2との間の第三速度S3とする(S2<S3<S1)。
【0072】
本発明者は、鋭意検討の結果、左側部のワークの吊り下げ状態で肩甲骨を脱骨処理位置まで引っ張った後に肩甲骨の捩じり動作を行う場合、肩甲骨の捩じり初期においては肩甲骨の剥がし部において割れ等が生じにくく、肩甲骨の捩じり後期においては肩甲骨の剥がし部において割れ等が生じ易い傾向にあることを見出した。この傾向は、左側部のワークに含まれる肩甲骨の向きは決まっているため、肩甲骨につながる半月状の肩甲軟骨の幅の大きさも決まっており、肩甲骨の捩じり初期においては肩甲軟骨の幅が広く、肩甲骨の捩じり後期においては肩甲軟骨の幅が狭いことに起因すると考えられる。
実施形態によれば、捩じり速度を上記速度S1~S3で制御することにより、肩甲骨の剥がし部において割れ等が生じにくい範囲では素早く捩じり、肩甲骨の剥がし部において割れ等が生じ易い範囲ではゆっくりと捩じることができる。したがって、肩甲骨の捩じり動作において捩じり速度を一定速度とした場合と比較して、ワークから肩甲骨をより安定してスムーズに剥がすことができる。
【0073】
[ワーク高さ制御部73]
ワーク高さ制御部73は、予め取得した全長測定データに基づいて、ワーク移動部30にワークの移動動作を行わせる。ワーク高さ制御部73は、ワークが肩甲骨脱骨ステーション4に導入された後、所定のタイミングでワーク高さを制御する。
【0074】
[肉押さえ動作制御部74]
肉押さえ動作制御部74は、肩甲骨脱骨部20が肩甲骨の捩じり動作を行っている途中で、肉押さえ部60にワークの押さえ動作を行わせる。肉押さえ動作制御部74は、肩甲骨脱骨部20が肩甲骨の捩じり動作を始めた後、所定のタイミングで肉押さえ部60にワークの押さえ動作を行わせる。例えば、肉押さえ動作制御部74は、肩甲骨の捩じり初期と終期との中間時期において、肉押さえ部60にワークの押さえ動作を行わせる。
【0075】
[食肉脱骨機構19の動作]
以下、食肉脱骨機構19の動作について
図9~
図13を参照しつつ説明する。食肉脱骨機構19の各動作は、制御装置9により制御される。
図9(a)は、食肉脱骨機構19による肩甲骨の脱骨処理前の初期状態(原点位置)を示す。
図9(a)に示す初期状態において、制御装置9は、上腕骨くびれ懸架部31に、ワークに含まれる上腕骨(図中符号91)のくびれ部を懸架させる。これにより、ワークを上下方向に吊り下げた状態で保持する。初期状態において、制御装置9は、肩甲骨チャック部22をワークの前方に離反して配置し、バックサポート部40をワークの後方に離反して配置する。
【0076】
次に、制御装置9は、バックサポート部40を前方(
図9(b)の矢印V5方向)に揺動させる。これにより、バックサポート部40は、吊り下げ状態のワークに含まれる上腕骨の肉部背面を支持する(
図9(b)参照)。
図9(b)の側面視で、バックサポート部40に肉部背面が支持された吊り下げ状態のワークは、下側ほど前方に位置するように傾斜している。
【0077】
次に、制御装置9は、肩バラ開き部50に、吊り下げ状態のワークの前側に位置する肩バラ肉(図中符号94)を右側方(
図10(a)の矢印V6方向)に開かせる(
図10(a)参照)。これにより、ワークに含まれる肩甲骨(図中符号92)を前方に露出させる。なお、
図10(a)においては、バックサポート部40などの図示を省略している。
【0078】
次に、制御装置9は、予め取得した全長測定データに基づいて、ワーク移動部30にワークの移動動作を行わせる(
図10(b)参照)。例えば、制御装置9は、ワーク移動部30に、ワークを上方(
図10(b)の矢印V4u方向)へ移動させる(第一引上げ動作)。これにより、ワークに含まれる肩甲骨の下部を、肩甲骨前倒し部21の進路上に配置する。
【0079】
加えて、制御装置9は、バックサポート部40が上腕骨の肉部背面を支持している状態で、
図3に示すガイドレール24に沿って架台23を後方(
図10(b)の矢印V3方向)に移動させる(
図10(b)参照)。制御装置9は、肩甲骨前倒し部21に、肩甲骨の下部を前方から押圧させて、肩甲骨の上部の関節部を上腕骨から分離させ、肩甲骨を前倒しさせる。
【0080】
次に、制御装置9は、ワーク移動部30に、ワークを上方(
図11(a)の矢印V4u方向)へ移動させる(第二引上げ動作)。これにより、ワークを、第一引上げ動作による位置(
図10(b)の位置)よりも高い位置に配置する。
図11(a)の側面視で、ワークに含まれる肩甲骨のくびれ部は、台形枠部81の空間85に挿通されている。
【0081】
次に、制御装置9は、
図3に示すチャック昇降部22cに、台形枠部81を下方(
図11(b)の矢印V7d方向)へ移動させる。制御装置9は、肩甲骨チャック部22に、前倒しされた肩甲骨のくびれ部を把持させる(
図11(b)参照)。これにより、ワークに含まれる肩甲骨のくびれ部を、肩甲骨位置決め部82とチャック台座22bとで把持する。
【0082】
次に、制御装置9は、ワーク移動部30に、ワークを上方(
図12(a)の矢印V4u方向)へ移動させる(第三引上げ動作)。これにより、ワークを、第二引上げ動作による位置(
図11(a)の位置)よりも高い位置に配置する。
【0083】
加えて、制御装置9は、
図3に示すガイドレール24に沿って架台23を前方(
図12(a)の矢印V2方向)に移動させる(
図12(a)参照)。制御装置9は、肩甲骨脱骨部20に、ワークに含まれる肩甲骨を、ワークから肩甲軟骨(図中符号93)が剥がされる手前の脱骨処理位置まで引っ張らせる。
【0084】
次に、制御装置9は、肩甲骨脱骨部20に、ワークに対して肩甲骨を
図12(b)の矢印V1方向に捩じらせる(
図12(b)参照)。制御装置9は、肩甲骨脱骨部20を脱骨処理位置で一旦停止させ、脱骨処理位置において、肩甲骨脱骨部20に肩甲骨の捩じり動作を行わせる。
【0085】
次に、制御装置9は、
図3に示すガイドレール24に沿って架台23を前方(
図13(a)の矢印V2方向)に移動させる(
図13(a)参照)。制御装置9は、肩甲骨脱骨部20に、ワークに含まれる肩甲骨を脱骨処理位置よりも前方に引っ張らせる。これにより、ワークから肩甲骨の脱骨処理が完了する。
【0086】
次に、制御装置9は、
図3に示すプレート傾動部21bに、肩甲骨前倒プレート21aを
図13(b)の矢印V8方向へ傾動させ、後傾させる(
図13(b)参照)。これにより、肩甲骨前倒プレート21aの上面に残された肩甲骨(ワークから剥がされた肩甲骨および肩甲軟骨)を、肩甲骨前倒プレート21aの傾斜(後傾)に沿って排出する。なお、上腕骨くびれ懸架部31は、肩甲骨の脱骨処理が完了した第二ワーク(図中符号90A)を吊り下げ状態で懸架している。
【0087】
そして、制御装置9は、肩甲骨脱骨部20を原点位置に復帰させる(
図13(b)参照)。
例えば、制御装置9は、ワーク移動部30に、第二ワークを下方(
図13(b)の矢印V4d方向)へ移動させる(第二ワークの原点復帰動作)。
例えば、制御装置9は、
図3に示すチャック昇降部22cに、台形枠部81を上方(
図13(b)の矢印V7u方向)へ移動させる(肩甲骨チャック部22の原点復帰動作)。
例えば、制御装置9は、バックサポート部40を後方(
図13(b)の矢印V5b方向)へ揺動させる(バックサポート部40の原点復帰動作)。
【0088】
以上説明したように、上記実施形態に係る食肉脱骨機構19は、食肉屠体の背割り半截ブロックの肩ロース部およびスペアリブを除去した豚うで部位を、吊り下げ状態で脱骨処理する食肉脱骨機構19であって、豚うで部位(食肉ブロック)に含まれる肩甲骨を引っ張る引張動作と、豚うで部位に対して肩甲骨を捩じる捩じり動作と、を行うことが可能な肩甲骨脱骨部20を備える。
【0089】
この構成によれば、肩甲骨の引張動作に加えて肩甲骨の捩じり動作を行うことができるため、肩甲骨を一方向に直線的に引き剥がす動作のみ行う場合と比較して、肩甲骨の剥がし部に過大な負荷がかかることを抑制することができる。したがって、豚うで部位から肩甲骨を安定して剥がすことができる。
ところで、豚うで部位には、肩甲骨よりも軟らかい肩甲軟骨が含まれている。肩甲骨を一方向に直線的に引き剥がす動作のみ行う場合、肩甲骨の剥がし部において肩甲軟骨の割れ等につながる過大な負荷がかかり、豚うで部位から肩甲骨とともに肩甲軟骨を安定して剥がすことができない可能性が高い。これに対し、この構成によれば、肩甲骨の剥がし部に過大な負荷がかかることを抑制することができるため、豚うで部位から肩甲骨とともに肩甲軟骨を安定して剥がすことができる。
【0090】
上記実施形態において、予め取得した前記豚うで部位の寸法データに基づいて、肩甲骨を脱骨する脱骨処理位置を設定し、肩甲骨脱骨部20に対し、肩甲骨を脱骨処理位置まで引っ張った後に、肩甲骨の捩じり動作を行わせる捩じり動作制御部71を更に備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、豚うで部位の個体ごとに脱骨処理位置を変更することができる。これにより、豚うで部位の個体差による脱骨処理位置の誤差を可及的に抑えることができるため、豚うで部位の個体差によらずに肩甲骨を安定して剥がすことができる。加えて、肩甲骨を脱骨処理位置まで引っ張った後に肩甲骨の捩じり動作が行われるため、肩甲骨の剥がし部(肩甲軟骨の部分)の手前で捩じり動作を行うことができ、肩甲骨とともに肩甲軟骨をより安定して剥がすことができる。
【0091】
上記実施形態において、予め取得した豚うで部位の寸法データに基づいて、肩甲骨脱骨部20が肩甲骨の捩じり動作を行うときの捩じり速度を制御する捩じり速度制御部72を更に備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、豚うで部位の個体ごとに捩じり速度を変更することができる。これにより、豚うで部位の個体差による肩甲骨の捩じり速度の誤差を可及的に抑えることができるため、豚うで部位の個体差によらずに肩甲骨を安定して剥がすことができる。加えて、人手作業と同様に肩甲骨を捩じりながら優しく剥がすことができるため、肩甲骨とともに肩甲軟骨をより安定して剥がすことができる。
【0092】
上記実施形態において、豚うで部位を吊り下げた状態で、豚うで部位を上下方向に移動可能なワーク移動部30を更に備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、豚うで部位を吊り下げた状態で、豚うで部位の上下位置を所望の位置に設定することができる。
【0093】
上記実施形態において、予め取得した全長測定データに基づいて、ワーク移動部30に豚うで部位の移動動作を行わせるワーク高さ制御部73を更に備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、豚うで部位の個体ごとに豚うで部位の上下位置を変更することができる。これにより、豚うで部位の個体差による豚うで部位の上下位置の誤差を可及的に抑えることができるため、豚うで部位の個体差によらずに肩甲骨を安定して剥がすことができる。
【0094】
上記実施形態において、豚うで部位の吊り下げ状態で、豚うで部位に含まれる上腕骨の肉部背面を支持可能なバックサポート部40を更に備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、豚うで部位を吊り下げた状態で上腕骨の肉部背面が支持されるため、豚うで部位の吊り下げ姿勢を保持することができる。
【0095】
上記実施形態において、バックサポート部40は、肩甲骨の引張方向から見て、左右方向に延在するサポートバー41と、肩甲骨の引張方向から見て、サポートバー41の両端部から下方に延びた後、左右方向内側ほど上方に位置するように傾斜して延びる左右一対のサポートアーム42,43と、を備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、サポートバー41により上腕骨の肉部背面を支持しつつ、左右一対のサポートアーム42,43により上腕骨の肉部背面を左右方向内側に案内する(豚うで部位のセンタリングを行う)ことができるため、豚うで部位の吊り下げ姿勢をより安定して保持することができる。
【0096】
上記実施形態において、肩甲骨脱骨部20は、バックサポート部40が上腕骨の肉部背面を支持している状態で、肩甲骨の下部を前方から押して肩甲骨の上部の関節部を上腕骨から分離させ、肩甲骨を前倒し可能な肩甲骨前倒し部21と、肩甲骨前倒し部21によって前倒しされた肩甲骨のくびれ部を把持可能な肩甲骨チャック部22と、を備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、前倒しされた肩甲骨のくびれ部をチャック部で把持した状態で、肩甲骨の引張動作に加えて肩甲骨の捩じり動作を行うことができるため、豚うで部位から肩甲骨を安定して剥がすことができる。
【0097】
上記実施形態において、肩甲骨チャック部22は、肩甲骨の引張方向から見て、台形枠状をなす台形枠部81を備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、前倒しされた肩甲骨のくびれ部を台形枠部81内に収めることができるため、肩甲骨の位置決めを安定して行うことができる。
【0098】
上記実施形態において、肩甲骨チャック部22は、台形枠部81の上辺部81aに設けられ、かつ前記肩甲骨の引張方向から見て、逆V字状をなす凹部82aを有する肩甲骨位置決め部82を更に備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、前倒しされた肩甲骨のくびれ部を台形枠部81内に収めつつ、逆V字状をなす凹部82aにより肩甲骨のくびれ部を逆V字の斜面に沿って案内する(肩甲骨のくびれ部をセンタリングする)ことができるため、肩甲骨の位置決めをより安定して行うことができる。
【0099】
上記実施形態において、肩甲骨脱骨部20は、肩甲骨前倒し部21および肩甲骨チャック部22を支持する架台23と、架台23を肩甲骨の引張方向に沿って案内可能なガイドレール24と、を更に備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、肩甲骨前倒し部21および肩甲骨チャック部22を一体的に移動させることができるため、肩甲骨前倒し部21および肩甲骨チャック部22を別個独立に移動させる場合と比較して、構成の簡素化および省エネルギー化を図ることができる。
【0100】
上記実施形態において、ガイドレール24は、バックサポート部40の側ほど上方に位置するように傾斜していることで、以下の効果を奏する。
ところで、ガイドレール24が水平面と平行に直線状に延びていたり、バックサポート部40の側ほど下方に位置するように傾斜していたりすると、肩甲骨前倒し部21により肩甲骨の下部を前方から押している途中で空振りし(肩甲骨前倒し部21が後方に抜け)、肩甲骨を十分に前倒しできない可能性がある。これに対し、この構成によれば、ガイドレール24がバックサポート部40の側ほど上方に位置するように傾斜していることで、肩甲骨前倒し部21により肩甲骨の下部を押し続けることできるため、肩甲骨を十分に前倒しすることができる。
【0101】
上記実施形態において、バックサポート部40が上腕骨の肉部背面を支持している状態で、豚うで部位に含まれる肩バラ肉を開くことが可能な肩バラ開き部50を更に備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、上腕骨の肉部背面が支持されている状態で肩バラ肉を開くことができるため、肩甲骨が肩バラ肉で隠れている場合において、肩甲骨を露出させることができる。
【0102】
上記実施形態において、肩バラ開き部50は、肩バラ肉の開き方向に揺動可能な第一揺動アーム51と、肩バラ肉の開き方向に揺動可能に設けられ、肩甲骨の引張方向から見て、第一揺動アーム51よりも長い第二揺動アーム52と、を備えることで、以下の効果を奏する。
ところで、肩バラ肉の厚み及び大きさは個体差があるため、1本の揺動アームのみを備える場合、肩バラ肉を十分に開くことができず、肩甲骨を十分に露出させることができない可能性がある。これに対し、この構成によれば、第一揺動アーム51および第二揺動アーム52を備えることで、第一揺動アーム51および第二揺動アーム52の二段階で肩バラ肉を捕らえることができるため、肩バラ肉を十分に開くことができ、肩甲骨を十分に露出させることができる。
【0103】
上記実施形態において、第一揺動アーム51には、第一揺動アーム51および第二揺動アーム52を同期して揺動させることが可能なストッパ55が設けられていることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、第一揺動アーム51および第二揺動アーム52を同期して揺動させることができるため、第一揺動アーム51および第二揺動アーム52を別個独立に移動させる場合と比較して、構成の簡素化および省エネルギー化を図ることができる。
【0104】
上記実施形態において、バックサポート部40が上腕骨の肉部背面を支持している状態で、バックサポート部40とは反対側から豚うで部位を押さえることが可能な肉押さえ部60を更に備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、バックサポート部40により上腕骨の肉部背面を支持しつつ、肉押さえ部60により前記肉部背面とは反対側から豚うで部位を押さえることができるため、豚うで部位の吊り下げ姿勢をより安定して保持することができる。
【0105】
上記実施形態において、肩甲骨脱骨部20が前記肩甲骨の捩じり動作を行っている途中で、肉押さえ部60に前記豚うで部位の押さえ動作を行わせる肉押さえ動作制御部74を更に備えることで、以下の効果を奏する。
本発明者は、鋭意検討の結果、肩甲骨の捩じり動作の途中で豚うで部位の押さえ動作を行うことにより、豚うで部位を押さえた後に肩甲骨の捩じり動作を行う場合と比較して、豚うで部位から肩甲骨を安定して剥がすことができる成功率が高まることを見出した。この構成によれば、肩甲骨の捩じり動作の途中で豚うで部位の押さえ動作を行うことで、豚うで部位から肩甲骨を安定して剥がすことができる成功率を更に高めることができる。
【0106】
上記実施形態に係る食肉脱骨装置1は、豚うで部位が投入される投入ステーション2と、豚うで部位から肩甲骨の脱骨処理を行う肩甲骨脱骨ステーション4と、豚うで部位から上腕骨の脱骨処理を行う上腕骨脱骨ステーション5と、を備える食肉脱骨装置1であって、肩甲骨脱骨ステーション4は、上記食肉脱骨機構19を備える。
【0107】
この構成によれば、肩甲骨脱骨ステーション4が上記食肉脱骨機構19を備えることで、豚うで部位から肩甲骨を安定して剥がすことが可能な食肉脱骨装置1を提供することができる。
【0108】
上記実施形態において、豚うで部位の寸法を計測するワーク計側ステーション3と、ワーク計側ステーション3で計測された豚うで部位の寸法に基づいて、食肉脱骨機構19を制御する制御装置9と、を更に備えることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、豚うで部位の個体ごとに食肉脱骨機構19の制御を変更することができる。これにより、豚うで部位の個体差による食肉脱骨機構19の誤動作を可及的に抑えることができるため、豚うで部位の個体差によらずに肩甲骨を安定して剥がすことができる。
【0109】
なお、上記実施形態では、食肉脱骨装置の一例として、背割りして分割された豚肉の左側部の枝肉ブロックのうち、うで・肩ロース部(
図14参照)の脱骨装置を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、食肉脱骨装置として、背割りして分割された牛、馬、羊、山羊等の豚肉以外の食肉の脱骨装置を用いてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、左側の豚うで部位を脱骨処理の対象とする例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、右側の豚うで部位を脱骨処理の対象としてもよい。例えば、右側の豚うで部位を脱骨処理の対象とする場合には、左側の豚うで部位用の食肉脱骨装置と勝手違い(左右対象の仕様違い)の脱骨装置を用いてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、第一揺動アーム51にストッパ55が設けられている例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、第二揺動アーム52にストッパ55が設けられていてもよい。すなわち、第一揺動アーム51および第二揺動アーム52の少なくとも一方にストッパ55が設けられていてもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、チャック昇降部22cが左右一対のシリンダ機構を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、チャック昇降部22cは、1つのシリンダ機構のみを備えていてもよいし、3つ以上の複数のシリンダ機構を備えていてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、懸架昇降部32が左右一対のシリンダ機構を備える例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、懸架昇降部32は、1つのシリンダ機構のみを備えていてもよいし、3つ以上の複数のシリンダ機構を備えていてもよい。
【0114】
なお、本発明の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0115】
1…食肉脱骨装置、2…投入ステーション、3…ワーク計測ステーション、4…肩甲骨脱骨ステーション、5…上腕骨脱骨ステーション、9…制御装置、19…食肉脱骨機構、20…肩甲骨脱骨部、21…肩甲骨前倒し部、22…肩甲骨チャック部、23…架台、24…ガイドレール、30…ワーク移動部、40…バックサポート部、41…サポートバー、42…左側のサポートアーム、43…右側のサポートアーム、50…肩バラ開き部、51…第一揺動アーム、52…第二揺動アーム、55…ストッパ、60…肉押さえ部、71…捩じり動作制御部、72…捩じり速度制御部、73…ワーク高さ制御部、74…肉押さえ動作制御部、81…台形枠部、81a…上辺部、82…肩甲骨位置決め部、82a…凹部、90…ワーク(食肉ブロック)、91…上腕骨、92…肩甲骨、94…肩バラ肉