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特許7067971処理区間判定装置、処理区間判定方法、プログラム、および診断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】処理区間判定装置、処理区間判定方法、プログラム、および診断装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20220509BHJP
   G05B 19/4063 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G05B19/18 W
G05B19/18 X
G05B19/4063 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018045182
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019159759
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】宮良 岳士
【審査官】杉田 隼一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-031541(JP,A)
【文献】特開2017-157234(JP,A)
【文献】特開2002-268742(JP,A)
【文献】特開2017-208072(JP,A)
【文献】特開2018-025945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18
G05B 19/4063
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象装置の動作に応じて変化する物理量を検知する検知部から出力される検知情報を取得する第1の取得部と、
前記対象装置を動作させる区間を示す信号を前記対象装置から取得する第2の取得部と、
前記検知情報および前記信号に基づき、前記対象装置における非処理区間と処理区間とを識別する第1の識別部と、
前記検知情報および前記第1の識別部による識別結果に基づき、前記対象装置における非処理区間と処理区間とを識別する第2の識別部と、を備える、
処理区間判定装置。
【請求項2】
前記第1の識別部が前記信号に基づいて選択した前記非処理区間の検知情報から特徴情報を抽出する抽出部と、
前記非処理区間の前記特徴情報を学習に用いて第1のモデルを生成し、前記第1のモデルを前記非処理区間前記処理区間の識別に用いる生成部と、を備える、
請求項1に記載の処理区間判定装置。
【請求項3】
前記第1の取得部は、
被処理物が存在しない状態で前記対象装置を事前に動作させて得られる、前記非処理区間の検知情報に相当する検知情報を取得し、
前記事前動作における前記検知情報から特徴情報を抽出する抽出部と、
前記特徴情報を学習に用いて第1のモデルを事前に生成し、前記第1のモデルを前記非処理区間前記処理区間の識別に用いる生成部と、を備える、
請求項1に記載の処理区間判定装置。
【請求項4】
前記第の識別部が識別した前記非処理区間および前記処理区間の検知情報から特徴情報を抽出する抽出部と、
前記非処理区間の特徴情報を学習に用いて第2のモデルを生成し、前記処理区間の特徴情報を学習に用いて第3のモデルを生成し、前記第2および第3のモデルを前記非処理区間および前記処理区間の識別に用いる、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の処理区間判定装置。
【請求項5】
対象装置の処理区間を判定する処理区間判定装置で実行される処理区間判定方法であって、
第1の取得部が、前記対象装置の動作に応じて変化する物理量を検知する検知部から出力される検知情報を取得する第1の取得ステップと、
第2の取得部が、前記対象装置を動作させる区間を示す信号を前記対象装置から取得する第2の取得ステップと、
第1の識別部が、前記検知情報および前記信号に基づき、前記対象装置における非処理区間と処理区間とを識別する第1の識別ステップと、
第2の識別部が、前記検知情報および前記第1の識別ステップによる識別結果に基づき、前記対象装置における非処理区間と処理区間とを識別する第2の識別ステップと、を有する、
処理区間判定方法。
【請求項6】
コンピュータに、
対象装置の動作に応じて変化する物理量を検知する検知部から出力される検知情報を取得する第1の取得ステップと、
前記対象装置を動作させる区間を示す信号を前記対象装置から取得する第2の取得ステップと、
前記検知情報および前記信号に基づき、前記対象装置における非処理区間と処理区間とを識別する第1の識別ステップと、
前記検知情報および前記第1の識別ステップによる識別結果に基づき、前記対象装置における非処理区間と処理区間とを識別する第2の識別ステップと、を実行させるための、
プログラム。
【請求項7】
対象装置の動作に応じて変化する物理量を検知する検知部から出力される検知情報を取得する第1の取得部と、
前記対象装置を動作させる区間を示す信号を前記対象装置から取得する第2の取得部と、
前記検知情報および前記信号に基づき、前記対象装置における非処理区間と処理区間とを識別する第1の識別部と、
前記検知情報および前記第1の識別部による識別結果に基づき、前記対象装置における非処理区間と処理区間とを識別する第2の識別部と、
識別された前記処理区間の検知情報を用いて前記対象装置の異常の有無を判定する異常判定部と、を備える、
診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理区間判定装置、処理区間判定方法、プログラム、および診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械等がワークを加工する上で、工具の異常ならびに加工品質の予知および推定を行う方法として、機械のモータの電流値の情報、振動、または力等の物理量を検知して用いる方法が既に知られている。
【0003】
このような物理量を検知して工具の異常等を判定する装置として、主軸の負荷等の機械情報の時系列データと装置のイベントデータとを同期させて出力させ、加工動作の異常を検出する装置が知られている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、装置のイベントデータから実際の加工処理の区間を明確に把握することが困難であった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、実際の処理区間を精度よく把握することが可能な処理区間判定装置、処理区間判定方法、プログラム、および診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、対象装置の動作に応じて変化する物理量を検知する検知部から出力される検知情報を取得する第1の取得部と、前記対象装置を動作させる区間を示す信号を前記対象装置から取得する第2の取得部と、前記検知情報および前記信号に基づき、前記対象装置における非処理区間と処理区間とを識別する第1の識別部と、前記検知情報および前記第1の識別部による識別結果に基づき、前記対象装置における非処理区間と処理区間とを識別する第2の識別部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、実際の処理区間を精度よく把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態にかかる診断システムの全体構成の一例を機能ブロックで示す図である。
図2図2は、実施形態にかかる加工機のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態にかかる診断装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態にかかる加工機の検知情報およびラダー信号の一例を示す図である。
図5図5は、実施形態にかかる診断装置が検知情報から抽出した特徴情報を周波数成分で例示する図である。
図6図6は、実施形態にかかる診断装置が非加工区間および加工区間の特徴情報を選択する一例を説明する図である。
図7図7は、実施形態にかかる診断装置が非加工区間および加工区間から選択した特徴情報を周波数スペクトルで例示する図である。
図8図8は、実施形態にかかる診断装置がユークリッド距離から加工区間らしさを算出した一例を示す図である。
図9図9は、実施形態にかかる診断装置が算出した加工区間らしさから加工区間を推定する動作を説明する図である。
図10図10は、実施形態にかかる診断装置による加工初期の異常判定処理の手順の一例を示すフロー図である。
図11図11は、実施形態にかかる第1の識別部による加工区間の推定処理の手順の一例を示すフロー図である。
図12図12は、実施形態にかかる診断装置による所定期間経過後の異常判定処理の手順の一例を示すフロー図である。
図13図13は、実施形態にかかる第2の識別部による加工区間の推定処理の手順の一例を示すフロー図である。
図14図14は、実施形態にかかる加工機において同一行程での加工が連続で複数回行われる例を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、図1図14を参照しながら、本発明に係る処理区間判定装置、処理区間判定方法、プログラム、および診断装置の実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0010】
(診断システムの全体構成)
図1は、実施形態にかかる診断システム1の全体構成の一例を機能ブロックで示す図である。診断システム1が備える処理区間判定装置としての診断装置100は、対象装置としての加工機200の動作に応じて変化する物理量を検知する検知部225から出力される検知情報を取得する第1の取得部としての検知情報受信部112と、加工機200を動作させる区間を示す信号としてのラダー信号を加工機200から取得する第2の取得部としての加工情報取得部101と、検知情報および信号に基づき、加工機200における非処理区間と処理区間とを識別する第1の識別部104と、検知情報、信号、および第1の識別部による識別結果に基づき、加工機200における非処理区間と処理区間とを識別する第2の識別部105と、を備える。以下に、実施形態の診断システム1の詳細について説明する。
【0011】
図1に示すように、実施形態の診断システム1は、加工機200および加工機200に接続される診断装置100を備える。加工機200は、工具を用いて、加工対象に対して切削、研削または研磨等の加工を行う工作機械である。加工機200は、診断装置100による診断の対象となる対象装置の一例である。診断装置100は、加工機200に対して通信可能となるように接続され、加工機200の動作について異常の診断を行う装置である。
【0012】
加工機200は、数値制御部201と、通信制御部221と、駆動制御部223と、駆動部224と、検知部225と、を有する。
【0013】
数値制御部201は、駆動部224による加工を数値制御(NC:Numerical Control)により実行する機能部である。例えば、数値制御部201は、駆動部224の動作を制御する数値制御データを生成して出力する。また、数値制御部201は、工具を駆動させる駆動部224の動作状態を示すコンテキスト情報(加工情報)として、例えば、工具の加工対象に対する送り動作から実際の加工処理が終了するまでの区間(工具送り区間)を示すON/OFF信号であるラダー信号を通信制御部221に出力する。コンテキスト情報とは、加工機200の動作の種類ごとに複数定められる情報である。コンテキスト情報は、上記のラダー信号のほか、例えば、加工機200の識別情報、駆動部224の識別情報(例えば、工具の識別情報等)、駆動部224に駆動される工具の径、および工具の材質等のコンフィギュレーション情報、ならびに、駆動部224の動作状態、駆動部224の使用開始からの累積使用時間、駆動部224に加わる負荷、駆動部224の回転数、駆動部224の加工速度等の加工条件の情報等を示す情報を含んでいてもよい。
【0014】
数値制御部201は、例えば、現在の加工機200の動作に対応するコンテキスト情報を、逐次、通信制御部221を介して診断装置100に送信する。数値制御部201は、加工対象を加工する際、加工の工程に応じて、駆動する駆動部224の種類、または駆動部224の駆動状態(回転数、回転速度等)を変更する。数値制御部201は、動作の種類を変更するごとに、変更した動作の種類に対応するコンテキスト情報を、通信制御部221を介して診断装置100に逐次送信する。
【0015】
通信制御部221は、診断装置100等の外部装置との間の通信を制御する機能部である。通信制御部221は、例えば、現在の動作に対応するコンテキスト情報を診断装置100に送信する。
【0016】
駆動制御部223は、数値制御部201により求められた数値制御データに基づいて、駆動部224を駆動制御する機能部である。
【0017】
駆動部224は、駆動制御部223による駆動制御の対象となる機能部である。駆動部224は、駆動制御部223による制御によって工具を駆動する。駆動部224は、駆動制御部223によって駆動制御されるアクチュエータ(モータ)等である。なお、駆動部224は、加工に用いられ、数値制御の対象となるものであればどのようなアクチュエータであってもよい。また、駆動部224は、2以上備えられていてもよい。
【0018】
検知部225は、加工機200で発生する物理量を検知し、検知した物理量の情報を検知情報(センサデータ)として診断装置100へ出力する機能部である。加工機200で発生する物理量としては、加工機200で発生する振動または音等である。このような振動または音等は、例えば、加工機200に設置された工具と加工対象とが加工動作中に接触することにより発生する。または、このような振動または音等は、工具もしくは加工機200自体により発せられる。検知部225の個数は任意である。例えば、同一の物理量を検知する複数の検知部225を備えてもよいし、相互に異なる物理量を検知する複数の検知部225を備えてもよい。例えば、加工に用いる工具である刃の折れ、および、刃のチッピング等が発生すると、加工時の振動や音が変化する。このため、検知部225で振動データや音響データを検知し、正常な振動や音を判断するモデル等を用いて判断することにより、加工機200の動作の異常が検知可能となる。
【0019】
診断装置100は、通信制御部111と、検知情報受信部112と、加工情報取得部101と、特徴抽出部102と、生成部103と、第1の識別部104と、第2の識別部105と、異常判定部106と、記憶部113と、入力部114と、表示制御部107と、表示部115と、を有する。
【0020】
通信制御部111は、加工機200との間の通信を制御する機能部である。例えば、通信制御部111は、加工機200の数値制御部201から、通信制御部221を介して、コンテキスト情報を受信する。
【0021】
第1取得部としての検知情報受信部112は、加工機200に設置された検知部225から検知情報を受信する機能部である。
【0022】
第2取得部としての加工情報取得部101は、加工機200から、通信制御部111により受信されたコンテキスト情報(加工情報)を取得する機能部である。
【0023】
抽出部としての特徴抽出部102は、種々の判定で用いる特徴情報を、検知情報から抽出する機能部である。例えば、特徴情報は、コンテキスト情報に含まれるラダー信号がONになっている区間、つまり、工具送り区間から、非加工区間と加工区間とを識別するときに用いられる。また、加工機200が正常なときに取得された特徴情報は、後述する生成部103によりモデルが生成されるときに用いられる。また、加工機200の異常判定を行うために取得された加工区間における特徴情報は、生成部103により生成されたモデルと比較されて異常判定に用いられる。
【0024】
生成部103は、種々の判定に用いられるモデルを上述の特徴情報から生成する機能部である。例えば、非加工区間の特徴情報から生成されたモデルは、非加工区間と加工区間とを識別するときに用いられる。また、加工機200が正常なときに取得された加工区間の特徴情報から生成されたモデルは、加工が正常に行われたことの判定に用いられる。
【0025】
第1の識別部104は、加工機200での加工初期において、非加工区間から加工区間を識別する機能部である。加工機200の立ち上げ後や工具交換後の一定期間は、特徴情報や特徴情報から生成されるモデル等、非加工区間から加工区間を識別するためのデータが充分にあるとはいえない。第1の識別部104は、少ないデータを用いて、加工区間を推定する。かかる機能を実現するため、第1の識別部104は、選択部104aと、算出部104bと、区間判定部104cと、を備える。
【0026】
選択部104aは、特徴抽出部102により抽出された特徴情報から、所定のフレームごとの特徴情報を選択する機能部である。選択部104aは、工具送り区間のうち、非加工区間の特徴情報を選択する。選択部104aは、また、非加工区間の特徴情報と比較するために、工具送り区間のうち、加工区間の可能性がある区間の特徴情報を対象特徴情報として選択する。選択された非加工区間の特徴情報からは、生成部103によりモデルが生成される。かかるモデルは、第1のモデルとしての非加工区間のモデルとして加工区間の識別に用いられる。
【0027】
算出部104bは、選択部104aにより選択された非加工区間の特徴情報から生成された非加工区間のモデルと対象特徴情報とを比較して、それぞれの対象特徴情報の加工区間らしさを算出する機能部である。モデルと対象特徴情報との比較としては、例えば、対象特徴情報のモデルからの外れ値を求める手法が用いられる。
【0028】
区間判定部104cは、算出部104bにより算出された加工区間らしさに対して閾値判定を行う機能部である。加工区間と判定された区間の特徴情報は加工区間の特徴情報として確定される。この特徴情報からは、例えば、生成部103によりモデルが生成される。かかるモデルは、加工区間のモデルとして異常判定に用いられる。
【0029】
第2の識別部105は、非加工区間と加工区間とを識別するための充分なデータが得られた後に、非加工区間と加工区間とを識別する機能部である。かかる機能を実現するため、第2の識別部105は、選択部105aと、算出部105bと、区間判定部105cと、特徴情報収集部105dと、を備える。
【0030】
特徴情報収集部105dは、加工機200での加工初期において、特徴抽出部102により抽出された非加工区間および加工区間の特徴情報を収集する。充分な特徴情報が収集された後は、これらの特徴情報から、それぞれ生成部103により第2のモデルとしての非加工区間のモデル、及び第3のモデルとしての加工区間のモデルが生成される。これらのモデルは非加工区間および加工区間の識別に用いられる。
【0031】
選択部105aは、特徴抽出部102により抽出された特徴情報から、所定のフレームごとの特徴情報を選択する機能部である。選択部105aは、工具送り区間のうち、非加工区間の特徴情報を選択する。選択部105aは、また、非加工区間の特徴情報と比較するために、工具送り区間のうち、加工区間の可能性がある区間の特徴情報を対象特徴情報として選択する。
【0032】
算出部105bは、特徴情報収集部105dにより収集された特徴情報から生成されたモデルと対象特徴情報とを比較して、それぞれの対象特徴情報の加工区間らしさを算出する機能部である。非加工区間の特徴情報から生成されたモデルと対象特徴情報との比較としては、例えば、対象特徴情報のモデルからの外れ値を求める手法が用いられる。加工区間の特徴情報から生成されたモデルと対象特徴情報との比較としては、例えば、対象特徴情報のモデルとの近似値を求める手法が用いられる。
【0033】
区間判定部105cは、算出部105bにより算出された加工区間らしさに対して閾値判定を行う機能部である。加工区間と判定された区間の特徴情報は加工区間の特徴情報として確定される。
【0034】
異常判定部106は、特徴抽出部102により抽出された異常判定の対象となる特徴情報と、生成部103により生成された加工区間ごとのモデルと、を用いて、加工機200の動作が正常であるか否かを判定する機能部である。
【0035】
記憶部113は、生成部103により生成されたモデルをコンテキスト情報と関連付けて記憶する機能部である。また、記憶部113は、検知情報受信部112により取得された検知情報をコンテキスト情報と関連付けて記憶する。
【0036】
入力部114は、文字および数字等の入力、各種指示の選択、ならびにカーソルの移動等の操作を行う機能部である。
【0037】
表示制御部107は、表示部115の表示動作を制御する機能部である。具体的には、表示制御部107は、例えば、異常判定部106による異常判定の結果等を、表示部115に表示させる。表示部115は、表示制御部107による制御に従って各種情報を表示する機能部である。
【0038】
なお、診断装置100および加工機200それぞれの機能部は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、図1で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、図1の1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成してもよい。
【0039】
また、加工機200と診断装置100とは、どのような接続形態で接続されてもよい。例えば、加工機200と診断装置100とは、専用の接続線、有線LAN(Local Area Network)等の有線ネットワーク、または、無線ネットワーク等により接続されていてもよい。
【0040】
また、図1には1台の加工機200が診断装置100に接続されている例が示されているが、これに限定されるものではなく、複数台の加工機200が診断装置100に対して、それぞれ通信可能となるように接続されていてもよい。
【0041】
(加工機のハードウェア構成)
次に、図2を用い、実施形態の加工機200のハードウェア構成例について説明する。図2は、実施形態にかかる加工機200のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0042】
図2に示すように、加工機200は、CPU(Central Processing Unit)20と、ROM(Read Only Memory)20aと、RAM(Random Access Memory)20bと、通信I/F(インターフェース)21と、駆動制御回路23と、がバス2Bで通信可能に接続された構成となっている。
【0043】
CPU20は、加工機200の全体を制御する演算装置である。CPU20は、例えば、RAM20bをワークエリア(作業領域)としてROM20a等に格納されたプログラムを実行することで、加工機200全体の動作を制御し、加工機能を実現する。図1の数値制御部201は、例えば、CPU20で動作するプログラムによって実現される。
【0044】
通信I/F21は、診断装置100等の外部装置との通信に用いられるインターフェースである。通信I/F21は、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)に対応したNIC(Network Interface Card)等である。図1の通信制御部221は、例えば、通信I/F21、およびCPU20で動作するプログラムによって実現される。
【0045】
駆動制御回路23は、モータ24の駆動を制御する回路である。モータ24は、加工に用いる工具24aを駆動する。工具24aには、ドリル、エンドミル、バイトチップ、砥石等、および、加工対象が載置され加工に合わせて移動されるテーブル等が含まれる。図1の駆動制御部223は、例えば、駆動制御回路23によって実現される。図1の駆動部224は、例えば、モータ24によって実現される。
【0046】
センサ25は、例えば、マイクデバイス、振動センサ、加速度センサ、またはAE(Acoustic Emission)センサ等で構成され、例えば、振動または音等が検出できる工具の近傍に設置される。センサ25が接続されたセンサアンプ25aは、診断装置100に通信可能に接続されている。センサ25およびセンサアンプ25aは、加工機200に予め備えられていてもよく、または、完成機械である加工機200に対して後から取り付けられてもよい。また、センサアンプ25aは、加工機200に設置されることに限定されるものではなく、診断装置100側に設置されていてもよい。図1の検知部225は、例えば、センサ25及びセンサアンプ25aによって実現される。
【0047】
なお、図2に示したハードウェア構成は一例であり、加工機200がすべての構成機器を備えている必要はなく、また、他の構成機器を備えていてもよい。例えば、図1に示す数値制御部201および通信制御部221は、図2に示すCPU20にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよく、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよく、または、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。
【0048】
(診断装置のハードウェア構成)
次に、図3を用い、実施形態の診断装置100のハードウェア構成例について説明する。図3は、実施形態にかかる診断装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0049】
図3に示すように、診断装置100は、CPU10と、ROM10aと、RAM10bと、通信I/F11と、センサI/F12と、補助記憶装置13と、入力装置14と、ディスプレイ15と、がバス1Bで通信可能に接続された構成となっている。
【0050】
CPU10は、診断装置100の全体を制御する演算装置である。CPU10は、例えば、RAM10bをワークエリア(作業領域)としてROM10a等に格納されたプログラムを実行することで、診断装置100全体の動作を制御し、診断機能を実現する。図1の加工情報取得部101、特徴抽出部102、生成部103、第1の識別部104、第2の識別部105、異常判定部106、および表示制御部107は、例えば、CPU10で動作するプログラムによって実現される。
【0051】
通信I/F11は、加工機200等の外部装置との通信に用いられるインターフェースである。通信I/F11は、例えば、TCP/IPに対応したNIC等である。図1の通信制御部111は、例えば、図3に示す通信I/F11、およびCPU10で動作するプログラムによって実現される。
【0052】
センサI/F12は、加工機200に設置されたセンサ25からセンサアンプ25aを介して検知情報を受信するインターフェースである。図1の検知情報受信部112は、例えば、センサI/F12、およびCPU10で動作するプログラムによって実現される。
【0053】
補助記憶装置13は、診断装置100の設定情報、加工機200から受信された検知情報およびコンテキスト情報、OS(Operating System)、およびアプリケーションプログラム等の各種データを記憶するHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性の記憶装置である。なお、補助記憶装置13は、診断装置100が備えるものとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、診断装置100の外部に設置された記憶装置であってもよく、または、診断装置100とデータ通信可能なサーバ装置が備えた記憶装置であってもよい。図1の記憶部113は、例えば、RAM10bおよび補助記憶装置13等によって実現される。
【0054】
入力装置14は、文字および数字等の入力、各種指示の選択、ならびにカーソルの移動等の操作を行うマウスまたはキーボード等の入力装置である。図1の入力部114は、例えば、入力装置14によって実現される。
【0055】
ディスプレイ15は、文字、数字、および各種画面および操作用アイコン等を表示するCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、LCD(Liquid Crystal Display)、または有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置である。図1の表示部115は、例えば、ディスプレイ15によって実現される。
【0056】
なお、図3に示したハードウェア構成は一例であり、診断装置100がすべての構成機器を備えている必要はなく、また、他の構成機器を備えていてもよい。例えば、図1に示した診断装置100の各機能部(加工情報取得部101、特徴抽出部102、生成部103、第1の識別部104、第2の識別部105、異常判定部106、および表示制御部107)は、CPU10にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよく、IC等のハードウェアにより実現してもよく、または、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。また、診断装置100が加工機200の診断動作に特化し、診断結果を外部のサーバ装置等に送信する場合、入力装置14およびディスプレイ15は備えられていない構成としてもよい。
【0057】
(第1の識別部の動作例)
次に、図4図9を用い、第1の識別部104の動作例について説明する。第1の識別部104は非加工区間から加工区間を識別する。第1の識別部104が非加工区間から加工区間を識別するにあたり、特徴抽出部102が非加工区間の検知情報から特徴情報を抽出する。
【0058】
図4は、実施形態にかかる加工機200の検知情報およびラダー信号の一例を示す図である。図4に示すように、センサデータ(検知情報)には、非加工区間を示す波形部分、および、加工区間を示す波形部分が含まれる。非加工区間は、工具が加工対象に接触する前後の区間である。加工区間は、工具が加工対象に接触して実際の加工処理を行っている区間である。
【0059】
一方、加工機200は、例えば、工具による加工動作の開始時にラダー信号をONにし、工具を加工対象まで送り動作をさせ、実際の加工処理が終了したときにラダー信号をOFFとする。この場合、加工機200は、工具が加工対象に接触してからラダー信号をONさせているわけではない。このため、ラダー信号がON状態となっている工具送り区間には、工具が加工対象に接触していない区間である非加工区間と、工具が加工対象に接触して加工処理を行っている加工区間とが含まれることになる。
【0060】
加工条件等によっては加工対象と工具との距離がわからないため、このようなラダー信号に基づいて、加工区間を正確に判定することは困難な場合がある。ただし、加工機200の異常判定に際し、非加工区間の検知情報を含めてしまうと、判定の精度が低下する。そこで、実際に加工が行われている区間を精度よく推定する必要がある。
【0061】
特徴抽出部102は、例えば、検知情報が振動センサやマイクデバイスにより収集された周波数データである場合、エネルギー、周波数スペクトル、および、MFCC(メル周波数ケプストラム係数)等を特徴情報として抽出する。本実施形態では、抽出される特徴情報は、周波数スペクトルであるものとして説明する。
【0062】
図5は、実施形態にかかる診断装置100が検知情報から抽出した特徴情報を周波数成分で例示する図である。図5に示す区間は、工具送り区間を1つ含む。つまり、図5の区間には、加工区間が1つ含まれる。特徴抽出部102は、1つの加工区間を推定するために、検知情報受信部112により受信される検知情報のうち、工具送り区間を1つ含む区間の検知情報から特徴情報を抽出する。
【0063】
具体的には、特徴抽出部102は、例えば、検知情報に対してフレームごとにフーリエ変換を行うことによって特徴情報を抽出する。ここで、フレームとは、検知情報の所定時間(例えば、20[ms]、40[ms]等)のデータ量を示し、例えば、特徴情報が、検知情報に対してフーリエ変換されることにより得られる周波数スペクトルである場合の窓長のデータ量に相当する。図5に示す特徴情報は、対応する検知情報のフレームの時間に関連付けられている。加工区間の周波数スペクトルは、非加工区間の周波数スペクトルと相違する特徴を有する。ただし、図5では、非加工区間の特徴情報と加工区間の特徴情報との違いを模式的に示すため、非加工区間において周波数成分が図示されていない。このことは、非加工区間に周波数成分が存在しないことを示すわけではない。
【0064】
第1の識別部104の選択部104aは、非加工区間のモデルを生成させるため、上記のように抽出された特徴情報から非加工区間の特徴情報を選択する。また、選択部104aは、非加工区間のモデルと比較させるため、上記のように抽出された特徴情報から対象特徴情報を選択する。
【0065】
図6は、実施形態にかかる診断装置100が非加工区間および加工区間の特徴情報を選択する一例を説明する図である。図6においては、非加工区間の特徴情報において選択部分401のフレームに対応する特徴情報と、加工区間の特徴情報において選択部分402のフレームに対応する特徴情報とが選択されている。
【0066】
非加工区間の特徴情報を選択する場合、選択部104aは、選択部分401のように、例えば、ラダー信号がOFF状態の区間の特徴情報を選択する。ただし、選択部104aによる非加工区間の特徴情報の選択はこれに限定されるものではない。例えば、ラダー信号がONした直後の区間も非加工区間である可能性が高いことから、選択部104aは、当該区間の特徴情報を選択してもよい。または、選択部104aは、非加工区間に含まれる特徴情報に対する機械学習によって生成された情報を非加工区間の特徴情報として選択してもよい。このように選択された非加工区間の特徴情報からは、生成部103によってモデルが生成される。
【0067】
一方、加工区間の特徴情報を選択する場合、選択部104aは、選択部分402のように、例えば、ラダー信号がON状態となっている工具送り区間の後半部分の特徴情報を選択すればよい。工具送り区間の前半部分には、非加工区間が含まれ得るからである。選択部104aは、工具送り区間の前半部分において、非加工区間の特徴情報から生成されたモデルと比較するため、順次、フレーム単位で特徴情報を選択していく。なお、選択部104aが、順次、フレーム単位で特徴情報を選択する場合、各フレームが重複することを妨げるものではない。
【0068】
図7は、実施形態にかかる診断装置100が非加工区間および加工区間から選択した特徴情報を周波数スペクトルで例示する図である。図7には、選択部分401のフレームに対応する特徴情報としての周波数スペクトル、および、選択部分402のフレームに対応する特徴情報としての周波数スペクトルが示されている。選択部分402の周波数スペクトルは、工具が加工対象に接触して加工処理を行っている加工区間での周波数スペクトルであるため、特定の周波数成分において振幅が大きい周波数スペクトルとなっている。一方、選択部分401の周波数スペクトルは、工具が加工対象に接触していない非加工区間での周波数スペクトルであるため、全体的に振幅が小さい周波数スペクトルとなっている。
【0069】
第1の識別部104の算出部104bは、非加工区間に対応するモデルと、加工区間の可能性がある区間の対象特徴情報とを比較して、それぞれの対象特徴情報の加工区間らしさを算出する。かかるモデルと対象特徴情報との比較方法としては、ユークリッド距離を求めて比較する方法の他、相互相関係数またはGMM(Gaussian Mixture Model)等の機械学習が用いられる。
【0070】
図8は、実施形態にかかる診断装置100がユークリッド距離から加工区間らしさを算出した一例を示す図である。図8においては、加工区間らしさが「1」に近いほど、加工区間の尤もらしさが高いことを示す。加工区間らしさは、雑音を含む検知情報から抽出された特徴情報から算出されるので、図8に示すように、ばらつきを含む値となる。
【0071】
第1の識別部104の区間判定部104cは、算出部104bにより算出された個々の特徴情報の加工区間らしさが所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0072】
図9は、実施形態にかかる診断装置100が算出した加工区間らしさから加工区間を推定する動作を説明する図である。図9に示すように、区間判定部104cは、加工区間らしさが所定の閾値よりも大きい「推定される加工区間」を加工区間として推定する。区間判定部104cは、逆に、加工区間らしさが閾値よりも小さい区間を非加工区間として推定する。なお、加工区間を推定するために、区間判定部104cは、加工区間らしさに対して閾値判定を行っているが、これに限定されるものではなく、例えば、統計的な手法を用いて、加工区間らしさに対して判定を行ってもよい。
【0073】
第1の識別部104は、このように区間判定部104cによって加工区間らしさが所定の閾値よりも大きいと判定された区間を、加工区間として推定する。
【0074】
(第2の識別部の動作例)
次に、図7図9を援用して、第2の識別部105の動作例について説明する。第2の識別部105は、第1の識別部104による識別結果を利用して、非加工区間と加工区間とを識別する。
【0075】
第2の識別部105の特徴情報収集部105dは、第1の識別部104による識別結果から特定される非加工区間および加工区間の特徴情報を収集する。加工機200の立ち上げ後や工具交換後の一定期間が経過すると、図7に示す特徴情報が所定数、収集される。特徴情報収集部105dは、それぞれの特徴情報からモデルを生成するだけの充分なデータ数が得られたらフラグを立てる。このフラグをトリガとして、収集された所定数の特徴情報からは、生成部103により、それぞれ非加工区間のモデル、及び加工区間のモデルが生成される。
【0076】
第2の識別部105の選択部105aは、非加工区間の検知情報に基づき抽出された特徴情報を選択する。また、選択部105aは、加工区間の可能性がある区間の検知情報に基づき抽出された特徴情報を選択する。つまり、選択部105aは、図7における選択部分401のフレームに対応する特徴情報と、選択部分402のフレームに対応する特徴情報とを選択する。
【0077】
第2の識別部105の算出部105bは、非加工区間のモデルと、選択部105aにより選択された複数の特徴情報とを比較し、それぞれの特徴情報の加工区間らしさを算出する。また、算出部105bは、加工区間のモデルと、上記の特徴情報とを比較し、それぞれの特徴情報の加工区間らしさを算出する。つまり、個々の特徴情報は、図8に示すように、非加工区間のモデル及び加工区間のモデルの両方と比較され、加工区間らしさを算出される。
【0078】
第2の識別部105の区間判定部105cは、図9に示すように、算出部105bにより算出された個々の特徴情報の加工区間らしさが所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。
【0079】
第2の識別部105は、区間判定部105cによって加工区間らしさが所定の閾値よりも大きいと判定された区間を、加工区間として推定する。
【0080】
(加工初期の異常判定処理の例)
次に、図10および図11を用い、加工初期における加工機200の異常判定処理の例について説明する。図10は、実施形態にかかる診断装置100による加工初期の異常判定処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0081】
異常判定に先駆けて、まずは、加工機200が正常な時のモデルが生成される。
【0082】
図10に示すように、ステップS110において、加工情報取得部101は、通信制御部111を介して加工機200からのコンテキスト情報を取得する。ステップS120において、検知情報受信部112は、検知部225からの検知情報を取得する。このとき取得されるコンテキスト情報および検知情報は、加工機200が正常に動作しているときの情報である。
【0083】
ステップS130において、特徴抽出部102は、ラダー信号による所定区間から、非加工区間と加工区間とを含む区間の特徴情報を抽出する。
【0084】
ステップS140において、第1の識別部104は加工区間を推定する。
【0085】
ステップS150において、生成部103は、推定された加工区間の特徴量からモデルを生成する。
【0086】
ステップS160において、第1の識別部104は、第2の識別部105への切り替え判定を行う。具体的には、第1の識別部104は、第2の識別部105の特徴情報収集部105dにより充分なデータが収集されたことを示すフラグが立っているか否かを判定する。現段階においては、充分なデータ収集がなされていないので(No)、第1の識別部104は第2の識別部105への切り替えは行わず、ステップS101へと戻る。
【0087】
次に、診断装置100は、加工機200の異常判定を行う。
【0088】
ステップS110,S120において、コンテキスト情報および検知情報が取得される。これらのコンテキスト情報および検知情報は、加工機200の異常判定が必要になったときに取得される。
【0089】
ステップS130において、特徴抽出部102は、非加工区間と加工区間とを含む区間の特徴情報を抽出する。
【0090】
ステップS140において、第1の識別部104は加工区間を推定する。
【0091】
ステップS150において、異常判定部は、先に生成された正常時の加工区間のモデルと、今回取得された加工区間の検知情報に基づく特徴情報とを比較して、加工機200の異常判定を行う。
【0092】
ステップS160において、第1の識別部104は、第2の識別部105への切り替え判定を行う。第2の識別部105の特徴情報収集部105dにより充分なデータが収集されたことを示すフラグが立っていれば(Yes)、第1の識別部104は第2の識別部105への切り替えを行う。
【0093】
以上により、加工初期における加工機200の異常判定処理が終了する。これ以降、診断装置100は、第2の識別部105の機能により、非加工区間と加工区間とを識別し、異常判定を行う。
【0094】
次に、図11を用い、ステップS140の詳細について説明する。
【0095】
図11は、実施形態にかかる第1の識別部104による加工区間の推定処理の手順の一例を示すフロー図である。図11に示すように、ステップS141において、選択部104aは、非加工区間の特徴情報を選択する。ステップS142において、生成部103は、非加工区間の特徴情報から非加工区間のモデルを生成する。
【0096】
ステップS143において、選択部104aは加工区間の可能性のある区間から、順次、対象特徴情報を選択する。算出部104bは、これらの対象特徴情報と非加工区間のモデルとを比較し、外れ値を求める。ステップS144において、算出部104bは、さらに、それぞれの対象特徴情報について加工区間らしさを算出する。
【0097】
ステップS145において、区間判定部104cは、加工区間らしさが所定の閾値よりも大きいと判定した区間を加工区間として推定する。
【0098】
以上により、第1の識別部104による加工区間の推定処理が終了する。
【0099】
(所定期間経過後の異常判定処理の例)
加工初期から所定期間経過後は、第2の識別部105が非加工区間および加工区間の識別を行い、診断装置100によるモデルの生成および異常判定が行われる。
【0100】
図12は、実施形態にかかる診断装置100による所定期間経過後の異常判定処理の手順の一例を示すフロー図である。ステップS200において、非加工区間および加工区間のモデルがそれぞれ生成される。かかるモデルは、特徴情報収集部105dにより収集された所定数の特徴情報から生成される。
【0101】
ステップS210,S220において、異常判定が必要な加工機200のコンテキスト情報および検知情報が取得される。
【0102】
ステップS230において、特徴抽出部102は、非加工区間と加工区間とを含む区間の特徴情報を抽出する。
【0103】
ステップS240において、第2の識別部105は加工区間を推定する。
【0104】
ステップS250において、異常判定部は、ステップS200で生成された加工区間のモデルと、ステップS220で取得された検知情報に基づく特徴情報とを比較して、加工機200の異常判定を行う。
【0105】
以上により、所定期間経過後における加工機200の異常判定処理が終了する。
【0106】
次に、図13を用い、ステップS240の詳細について説明する。
【0107】
図13は、実施形態にかかる第2の識別部105による加工区間の推定処理の手順の一例を示すフロー図である。図13に示すように、ステップS421において、算出部105bは、図12のステップS200で生成された非加工区間のモデルと各対象特徴量とを比較する。また、ステップS200の加工区間のモデルと各対象特徴量とを比較し、それぞれの特徴情報についてモデルに対する近似値を求める。ステップS242において、算出部105bは、さらに、それぞれの対象特徴情報について加工区間らしさを算出する。
【0108】
ステップS243において、区間判定部105cは、加工区間らしさが所定の閾値よりも大きいと判定した区間を、加工区間として推定する。
【0109】
以上により、第2の識別部105による加工区間の推定処理が終了する。
【0110】
例えば、特許文献1の情報取得装置においては、主軸負荷等の機械情報の時系列データと、プログラム名、工具番号およびオペレータ操作によるオーバーライド値等の装置のイベントデータとを対応させて出力させる。これにより、加工動作の異常を検出している。しかしながら、装置のイベントデータから非加工区間と加工区間とを切り分けて、実際の加工区間を精度よく把握することが困難であった。
【0111】
実施形態の診断装置100においては、加工初期においても、少ない特徴情報から非加工区間のモデルを生成し、非加工区間から加工区間を識別している。これにより、区間推定において所定の精度が得られる。
【0112】
また、実施形態の診断装置100においては、加工初期から所定期間経過した後は、それまでに得られた豊富な特徴情報に基づき非加工区間と加工区間の両方についてモデルを生成し、両区間の識別に利用する。これにより、実際の加工区間をいっそう精度よく把握することが可能となる。
【0113】
このように、実施形態の診断装置100においては、加工初期と所定期間経過後とにおいて、それぞれ適切なアルゴリズムを用いているので、より効率的な加工区間の推定を行うことができる。
【0114】
また、加工機200においては、図14に示すように、同一の工具を用いた加工が複数回連続して行われることがある。図14においては、例えば、工程1-1と1-2とが同一であり、工程1-4~1-6が同一であり、工程1-7~1-9が同一である。かかる工程は、同一のコンテキスト情報に基づく加工となる。このような場合であっても、実施形態の第1の識別部104および第2の識別部105は、非加工区間と加工区間とを識別し、加工区間を精度よく推定することができる。
【0115】
(変形例)
上述の実施形態では、第1の識別部104により非加工区間と加工区間とを区別するために非加工区間のモデルを生成するにあたり、実際の非加工区間の特徴情報を用いることとしたが、これに限られない。加工開始前に、被加工物が存在しない状態で加工機200を事前に動作させて特徴情報を取得してもよい。これを非加工区間における特徴情報として、非加工区間のモデルを生成することができる。
【0116】
上述の実施形態では、検知情報は、例えば、振動データまたは音響データ等であるとしたが、モータの電流値、負荷、トルク等、他のデータであっても検知情報として用いることができる。
【0117】
上述の実施形態では、診断対象の装置を例えば加工機200であるとしたが、組立機、測定機、検査機、または洗浄機等の機械が対象装置であってもよい。
【0118】
なお、上述の実施形態および各変形例の診断システムで実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供するように構成してもよい。
【0119】
また、上述の実施形態および各変形例の診断システムで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk-Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータ・プログラム・プロダクトとして提供するように構成してもよい。
【0120】
また、上述の実施形態および各変形例の診断システムで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態および各変形例の診断システムで実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0121】
また、上述の実施形態および各変形例の診断システムで実行されるプログラムは、上述した各機能部を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)がROMからプログラムを読み出して実行することにより上述の各機能部が主記憶装置上にロードされ、各機能部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【符号の説明】
【0122】
1 診断システム
1B バス
2B バス
10 CPU
10a ROM
10b RAM
11 通信I/F
12 センサI/F
13 補助記憶装置
14 入力装置
15 ディスプレイ
20 CPU
20a ROM
20b RAM
21 通信I/F
23 駆動制御回路
24 モータ
24a 工具
25 センサ
25a センサアンプ
100 診断装置
101 加工情報取得部
102 特徴抽出部
103 生成部
104 第1の識別部
105 第2の識別部
106 異常判定部
107 表示制御部
111 通信制御部
112 検知情報受信部
113 記憶部
114 入力部
115 表示部
200 加工機
201 数値制御部
221 通信制御部
223 駆動制御部
224 駆動部
225 検知部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0123】
【文献】特開第2017-033346号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14