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特許7068003屋外用光透過性カバーおよびそれを備えた屋外用筒状体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】屋外用光透過性カバーおよびそれを備えた屋外用筒状体
(51)【国際特許分類】
   F21V 3/10 20180101AFI20220509BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20220509BHJP
   F21V 3/02 20060101ALI20220509BHJP
   F21V 3/06 20180101ALI20220509BHJP
   F21V 17/00 20060101ALI20220509BHJP
   F21S 9/03 20060101ALI20220509BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20220509BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20220509BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20220509BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220509BHJP
【FI】
F21V3/10 310
F21V3/00 310
F21V3/02 400
F21V3/06 110
F21V3/06 130
F21V17/00 154
F21S9/03
B32B27/36 102
B32B3/30
B32B27/18 A
F21Y115:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018065372
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019175797
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167988
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】横田 克彦
(72)【発明者】
【氏名】小菅 聡
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-053908(JP,A)
【文献】特開2011-156719(JP,A)
【文献】特開2004-330541(JP,A)
【文献】特開2015-159062(JP,A)
【文献】登録実用新案第3204514(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 3/10
F21V 3/00
F21V 3/02
F21V 3/06
F21V 17/00
F21S 9/03
B32B 27/36
B32B 3/30
B32B 27/18
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共押出成形体からなる屋外用光透過性カバーであって、
少なくとも内層および外層を備えた積層構造のカバー本体と、そのカバー本体の内層に形成された一対の突出部とを有し、
前記内層は、芳香族ポリカーボネート樹脂を含有している透光性の樹脂層であり、
前記外層は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と、シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位とを含むポリカーボネート樹脂を含有している透光性の樹脂層であり、
前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と、シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位の含有比率が、49/51~51/49(モル比)であり、
前記外層が、前記ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、
0.31~0.33重量部の2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと、
0.04~0.06重量部のビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートと、
0.09~0.11重量部のペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]と、
0.001~0.015重量部の2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(ジブチルヒドロキシトルエン)と、
0.049~0.051重量部のトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトと、
0.09~0.11重量部のエチレングリコールジステアレートとを含む、
屋外用光透過性カバー。
【化1】
【請求項2】
前記カバー本体の厚みが1~5mmであり、
前記外層の厚みが前記カバー本体の厚みの5~50%である、
請求項1記載の屋外用光透過性カバー。
【請求項3】
前記一対の突出部の少なくとも一方は弾性変形可能である、
請求項1または2記載の屋外用光透過性カバー。
【請求項4】
前記弾性変形可能な突出部は、先端又は先端近傍に係止部を有する、
請求項3記載の屋外用光透過性カバー。
【請求項5】
長手方向に沿って延びる収容部を有する長尺基材と、
その収容部との間に空間が形成されるように、前記長尺基材に固定される請求項1から4いずれか記載の屋外用光透過性カバーとを備えており、
前記長尺基材には、前記突出部が固定されるカバー固定部が設けられている、
屋外用筒状体。
【請求項6】
長手方向に沿って延びる第1収容部及び第2収容部を有する長尺基材と、
前記第1収容部との間に第1空間が形成されるように、前記長尺基材に固定される請求項1から4いずれか記載の屋外用光透過性カバーと、
前記第2収容部との間に第2空間が形成されるように、前記長尺基材に固定される第2光透過性カバーと、
前記第1収容部に収容される太陽電池モジュールと、
前記第2収容部に収容される照明と、
前記太陽電池モジュールにより発生した電力を蓄電して前記照明に電力を供給する蓄電池とを備えている、
屋外用筒状体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外用光透過性カバーおよびそれを備えた屋外用筒状体に関する。
【背景技術】
【0002】
車道と歩道との間の仕切りとして設けられる防護柵や、歩道に沿って設けられる柵型の手摺が知られている。
このような防護柵として、例えば、特許文献1に示すように、防護柵の長さ方向に沿って照明が設けられたものが知られている。この防護柵において、発光手段を保護するものとして、アクリル樹脂等の中空管が用いられている。
一方、屋外用光透過性カバーとしては、車両ランプ用保護カバーが知られている。このようなカバーとしては、特許文献2に示すように、芳香族ポリカーボネートが用いられている。
さらに、特許文献3には、式(1)で表される部位を有するヒドロキシ化合物に由来する構造を含むポリカーボネート樹脂層と、芳香族ポリカーボネート樹脂層とを積層した積層体が開示されている。この積層体は、カーポート、樹脂窓および防音壁などの屋外の建材に使用される。
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-144232号公報
【文献】特開2008-311133号公報
【文献】WO2011/108594
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、アクリル樹脂は強度が小さく、壊れやすいことで知られている。そのため、防護柵に用いるには、特許文献1に示すように、柵等によって保護する必要がある。
一方、芳香族ポリカーボネートは、紫外線を吸収し、樹脂が劣化することが知られている。特に、樹脂が劣化するにつれて黄色味を帯びる。そのため、特許文献2に示すように、紫外線吸収層を設けることが知られている。またキズ付き防止のため、ハードコート層を設けることが知られている。
特許文献3には、屋外で日射に晒される用途に用いることができる積層体が開示されている。しかし、特許文献3の積層体は、屋外に設置される照明または屋外に設置される太陽電池モジュールを保護するカバーを想定していない。
本発明は、外力が加わっても変形しにくく、かつ、紫外線に当たっても変色しにくい耐久性の高い屋外用光透過性カバーおよび屋外用筒状体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の屋外用光透過性カバーは、共押出成形体からなる屋外用光透過性カバーであって、少なくとも内層および外層を備えた積層構造のカバー本体と、そのカバー本体の内層に形成された一対の突出部とを有し、前記内層は、芳香族ポリカーボネート樹脂を含有している透光性の樹脂層であり、前記外層は、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と、シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位とを含むポリカーボネート樹脂を含有している透光性の樹脂層であり、前記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と、シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位の含有比率が、49/51~51/49(モル比)であることを特徴としている。
【化1】
【0006】
本発明の屋外用光透過性カバーは、カバー本体の内層に一対の突出部が形成されているため、その突出部を、長尺基材等の基材に固定する固定部として用いることにより、カバーを基材に安定して固定することができる。さらに、突出部を構成する内層は、強度の高いポリカーボネート樹脂を用いているため、外力が加わっても破壊しにくく、多様な用途に使用することができる。例えば、基材に固定する固定部としたり、突出部自体に照明や太陽電池モジュール等の収容物を保持させたりすることができる。さらに、外層に耐光性が高い特定のポリカーボネート樹脂を用いているため、屋外に長期間載置しても劣化しにくい。
【0007】
本発明の屋外用光透過性カバーであって、前記外層がさらに酸化防止剤、光安定剤及び滑剤を有するものが好ましい。この場合、外層は太陽光が当たる位置に使用されるため、外層の劣化を防止できる。
本発明の屋外用光透過性カバーであって、前記外層が、前記ポリカーボネート100重量部に対して、0.31~0.33重量部の2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと、0.04~0.06重量部のビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートと、0.09~0.11重量部のペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]と、0.001~0.015重量部の2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(ジブチルヒドロキシトルエン)と、0.049~0.051重量部のトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトと、0.09~0.11重量部のエチレングリコールジステアレートとを含んでいるものが好ましい。
【0008】
本発明の屋外用光透過性カバーであって、前記カバー本体の厚みが1~5mmであり、前記外層の厚みが前記カバー本体の厚みの5~50%であるものが好ましい。
本発明の屋外用光透過性カバーであって、前記一対の突出部の少なくとも一方は弾性変形可能であるものが好ましい。この場合、突出部に外力を与えても破壊することなく弾性変形するため、突出部を基材に対する固定部として使用するとき、その弾性によりカバーを基材に容易に固定させることができる。
本発明の屋外用光透過性カバーであって、弾性変形可能な突出部が先端又は先端近傍に係止部を有するものが好ましい。この場合、突出部を基材に対する固定部として使用するとき、より確実に基材に固定可能となる。
【0009】
本発明の屋外用筒状体は、長手方向に沿って延びる収容部を有する長尺基材と、その収容部との間に空間が形成されるように、前記長尺基材に固定される本発明の屋外用光透過性カバーとを備えており、前記長尺基材には、前記突出部が固定されるカバー固定部が設けられていることを特徴としている。
本発明の屋外用筒状体は、本発明の屋外用光透過性カバーを備えているため、屋外において、照明および/または太陽電池モジュールを収容するのに優れている。
【0010】
本発明の屋外用筒状体の第2の態様は、長手方向に沿って延びる第1収容部及び第2収容部を有する長尺基材と、前記第1収容部との間に第1空間が形成されるように、前記長尺基材に固定される本発明の屋外用光透過性カバーと、前記第2収容部との間に第2空間が形成されるように、前記長尺基材に固定される第2光透過性カバーと、前記第1収容部に収容される太陽電池モジュールと、前記第2収容部に収容される照明と、前記太陽電池モジュールにより発生した電力を蓄電して前記照明に電力を供給する蓄電池とを備えていることを特徴としている。
この場合、外部電力を必要とすることなく、筒状体に沿って、照明を照らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1aは本発明の屋外用筒状体の実施形態を示す側面図であり、図1bはそのX-X線断面図である。
図2図2aは図1の屋外用光透過性カバー(本発明の屋外用光透過性カバーの実施形態)を示す断面図であり、図2bはその一部拡大図である。
図3図1の長尺基材を示す断面図である。
図4図1の第2光透過性カバーを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1a、図1bの屋外用筒状体100は、長尺基材101と、第1光透過性カバー10と、第2光透過性カバー102と、長尺基材101に収容される太陽電池モジュール103と、長尺基材101に収容される照明104と、長尺基材101に収容される蓄電池105と、長尺基材101に収容される制御部106とを備えている。この筒状体100の断面は、円形を呈している。また長尺筒状体100の両端には、蓋材107が設けられている。この屋外用筒状体は、例えば、防護柵の横パイプ、柵型手摺の手摺、既設のフェンスの一部として使用することができる。
【0013】
初めに屋外用光透過性カバーの実施形態である第1光透過性カバー10について説明する。
第1光透過性カバー10は、図2aに示すように、長尺状のカバー本体11と、その内面から突出した一対の突出部12とを有する共押出成形体からなる。カバー本体11は、光透過性を有する内層16と、光透過性を有する外層17とを備えた二層構造である。なお、カバー本体11の端面(図2において、下を向いている端面)は、外層17によって覆われている。しかし、端面において、内層16が露出していてもよい。
【0014】
カバー本体11は、一定の厚みで、外方に突出するように円弧状に湾曲した板材である。つまり、凹側が内面となる。カバー本体11の形状は、実質的に後述する長尺基材101の断面で切欠いた第1円弧A1と同じ形状である。
このように円弧状に湾曲させることにより、カバー内に向かう光を収束させることができる、または、カバー外に向かう光を拡散させることができる。また外力に対して強くなる。円柱状の筒状体100を構成するカバー本体11であって、例えば、太陽電池モジュール等を取り付けた基材に取り付けるカバー本体11の円弧の角度α1は、45~180度、好ましくは90~180度である。45度より小さいと、太陽電池モジュールに当たる太陽光の時間が小さくなる。180度より大きくても太陽電池モジュールに当たる太陽光の時間はあまり変わらない。なお、LED等の照明を取り付けた基材に取り付けるカバー本体11の場合、照明光を当てる部位に応じて、その角度は適宜設計する。
このようなカバー本体11の厚みは、1~5mm、好ましくは、1.5~4mm、特に好ましくは2~3mmである。
【0015】
次にカバー本体11の外層17について説明する。
カバー本体11の外層17は、構造の一部に下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と、シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位とを含むポリカーボネート樹脂を含有している透光性の樹脂層である。詳しくは、下記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物とシクロヘキサンジメタノールとを有するジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルまたはホスゲンとをエステル交換反応させることにより合成される重合体または共重合体である。
【化1】
【0016】
上記式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせても良い。
なお、これらのジヒドロキシ化合物のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
【0017】
シクロヘキサンジメタノール類としては、特に限定されないが、入手のしやすさ、取り扱いのしやすさという観点から、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。
【0018】
炭酸ジエステルとしては、特に限定されないが、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレジルカーボネート、ジナルチルカーボネート、ジブチルカーボネートおよびジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0019】
外層17のポリカーボネート樹脂における式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位とシクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位との含有割合については、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位:シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位=49:51~51:49(モル%)である。一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が、シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位に対して多くなりすぎると着色しやすくなる。逆に一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が、シクロヘキサンジメタノールに由来する構成単位に対して少なくなりすぎると合成されるポリカーボネート樹脂の分子量が上がりにくくなる傾向がある。
【0020】
ポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度の下限は、通常0.30dL/g以上が好ましく、0.35dL/g以上が特に好ましい。一方、還元粘度の上限は、通常1.20gL/g以下が好ましく、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/gが特に好ましい。
【0021】
なお、ポリカーボネート樹脂は、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物及びシクロヘキサンジメタノール以外のジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が、光学特性の性能を維持する範囲で含まれていても良い。例えば、ポリカーボネート樹脂を構成する全ジヒドロキシ化合物に対する一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物とシクロヘキサンジメタノールの合計の割合が90モル%以上であることが好ましい。しかし、ポリカーボネート樹脂はジヒドロキシ化合物として一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物とシクロヘキサンジメタノールのみで構成されることが好ましい。
なお、外層17の樹脂成分として、外層17の光学特性および耐光性が変わらない範囲で、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を混ぜてもよい。しかし、外層17の樹脂成分はポリカーボネート樹脂で構成するのが好ましい。
【0022】
外層17は、酸化防止剤、光安定剤及び滑剤を含有するのが好ましく、さらに熱安定剤、衝撃強度改質剤、光拡散剤、帯電防止剤、顔料等の各種添加剤を含めてもよい。
外層17における添加剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.1~1.5重量部、特に好ましくは0.5~1.0重量部である。
【0023】
光安定剤としては、紫外線そのものを吸収する紫外線吸収剤やラジカル捕捉作用のある光安定剤等を挙げることができる。
【0024】
紫外線吸収剤は、外部から内層16に到達する紫外線を減らし、内層16の劣化を防止するために使用する。また外層17は上述した所定のポリカーボネート樹脂を主成分としているため、内層16を構成している芳香族ポリカーボネート樹脂に比べて劣化は著しく小さいが、外層17の劣化を防止するために使用する。
紫外線吸収剤としては特に制限はなく、芳香族系紫外線吸収性化合物、例えば、芳香族炭化水素類、芳香族カルボン酸類およびその塩、芳香族アルデヒド類、芳香族アルコール類、芳香族アミン類およびその塩、芳香族スルホン酸類およびその塩およびフェノール類等が好適である。
【0025】
この種の芳香族系紫外線吸収性化合物として、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン、ナフタセン、ピレン、ペリレン、フルオレノン、フルオランテン、9-アセチルアントラセン、9-メチルアントラセン、アントラキノンカルボン酸、アントラセン-9-メタノール、ビフェニル、安息香酸ナトリウム、フタル酸、ベンズアルデヒド、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、ベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、アントラキノン-2-スルホン酸ナトリウム、フェノール、クレゾール、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシルオキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2-ヒドロキシー4-メトキシ-2'-カルボキシベンゾフェノン、2'-ヒドロキシ-4-クロロベンゾフェノン、2(2'-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2'-ヒドロキシ-3'-t-ブチル-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、サリチル酸フェニル、サリチル酸p-オクチルフェニル、サリチル酸p-t-ブチルフェニル、サリチル酸カルボキシフェニル、サリチル酸ストロンチウム、サリチル酸メチル、サリチル酸ドデシル、レゾルシノールモノベンゾエート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、Ni-ビスオクチルフェニルスルフィド、[2,2'-チオビス(4-t-オクチルフェノラト)]-n-ブチルアミン-Niが挙げられる。これらを単独で用いても、2種以上で用いてもよい。特に、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールが好ましい。
外層17における紫外線吸収剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.01~0.5重量部、特に好ましくは0.31~0.33重量部である。
【0026】
ラジカル捕捉作用のある光安定剤は、外層17の耐光性を向上させるために使用する。このラジカル捕捉作用のある光安定剤は、紫外線吸収剤と共に使用するのが好ましい。
ラジカル捕捉作用のある光安定剤としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルアミノ)-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6)-テトラメチル-4-ピペリジル-1、6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物などが挙げられる。これらを単独で用いても、2種以上で用いてもよい。
特に、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートが好ましい。
外層17におけるラジカル捕捉作用のある光安定剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.01~0.1重量部、特に好ましくは0.04~0.06重量部である。ラジカル捕捉作用のある光安定剤の量が少なすぎると耐光性向上の効果が低くなる場合がある。一方、ラジカル捕捉作用のある光安定剤の量が多すぎるとブリードアウトによる外観不良が生じるおそれがある。
【0027】
酸化防止剤としては、酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の公知の酸化防止剤が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール-3-ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール等が挙げられる。これらを単独で用いても、2種以上で用いてもよい。
特に、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]および/または2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(ジブチルヒドロキシトルエン)が好ましい。
ホスファイト系酸化防止剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸及びこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’-ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。特に、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく使用される。これらを単独で用いても、2種以上で用いてもよい。
【0028】
外層17における酸化防止剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.06~0.35重量部、特に好ましくは0.14~0.18重量部である。酸化防止剤の量が少なすぎると成形加工時の着色防止効果が小さくなる。一方、酸化防止剤の量が多すぎると加水分解性の悪化やブリードアウトによる外観不良が生じるおそれがある。特に、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が0.09~0.11重量部、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトが0.049~0.051重量部、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(ジブチルヒドロキシトルエン)が0.001~0.015重量部とするのが好ましい。
【0029】
滑剤は、押出成形における生産効率を向上させるために使用する。なお、滑剤は離型剤と呼ばれることもある。
滑剤としては、一価又は多価アルコールの高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸、パラフィンワックス、蜜蝋、オレフィン系ワックス、カルボキシ基及び/又はカルボン酸無水物基を含有するオレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられる。特に、透明性の観点から高級脂肪酸エステルのうち、ステアリン酸エステルが好ましく挙げられる。
ステアリン酸エステルとしては、置換又は無置換の炭素数1~炭素数20の一価又は多価アルコールとステアリン酸との部分エステル又は全エステルが好ましい。かかる一価又は多価アルコールとステアリン酸との部分エステル又は全エステルとしては、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、ブチルステアレート、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレートなどがより好ましい。なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリルステアレートが更に好ましく、エチレングリコールジステアレートが特に好ましい。これらを単独で用いても、2種以上で用いてもよい。
外層17における滑剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.01~0.2重量部、特に好ましくは0.09~0.11重量部である。滑剤の量が少なすぎると加工機やダイとの滑性の不足により外観不良が発生する恐れがある。一方、滑剤の量が多すぎるとブリードアウトによる金具汚染により外観不良が発生する恐れがある。
【0030】
外層17の厚みの下限は、カバー本体全体の厚みの5%以上、好ましくは10%以上、特に好ましくは15%以上である。具体的には、0.2mm以上、好ましくは0.3mm以上、特に好ましくは0.4mm以上である。これより薄いと、技術的に共押出ができない。
一方、外層17の厚みの上限は、50%以下、好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下である。具体的には、2mm以下、好ましくは1mm以下、特に好ましくは0.7mm以下である。これより厚いと、全体としての強度が低下する。
【0031】
次にカバー本体11の内層16について説明する。
カバー本体11の内層16は、芳香族ポリカーボネート樹脂を含有している透光性の樹脂層である。
【0032】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルまたはホスゲンとをエステル交換反応させることによって合成される重合体または共重合体である。芳香族ポリカーボネート樹脂は、分岐構造であっても、直鎖構造であってもよく、分岐構造と直鎖構造との混合物であってもよい。炭酸ジエステルは、前述のポリカーボネート樹脂と実質的に同じものが挙げられる。
【0033】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、ビスフェノール類が挙げられ、特に、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)が好ましく挙げられる。また、ビスフェノールAの一部または全部を他の芳香族ジヒドロキシ化合物で置き換えても良い。
【0034】
他の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、4,4-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタンおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(4-ヒドロキシフェニル)ある菅、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフォキシドおよびビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテルなどの化合物、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのアルキル化ビスフェノール類、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのハロゲン化ビスフェノール類が挙げられる。
【0035】
なお、内層16の樹脂成分として、内層16の光学特性が変わらない範囲で、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を混ぜてもよい。しかし、内層16の樹脂成分は、芳香族ポリカーボネート樹脂で構成するのが好ましい。
なお、内層16は、外層17と同様に、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、衝撃強度改質剤、光拡散剤、帯電防止剤、顔料等の各種添加剤を含んでいてもよい。例えば、紫外線吸収剤を含めることにより、芳香族ポリカーボネートの劣化を防止できる。
【0036】
内層16の厚みの下限は、カバー本体全体の厚みの50%以上、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。具体的には、0.5mm以上、好ましくは1mm以上、特に好ましくは1.5mm以上である。内層16が薄すぎると、強度が低下し、防護柵、柵型手摺や既設のフェンスの一部として使用したとき、通行者等による不意な外力で破損しやすくなる。また芳香族ポリカーボネートを厚くすることにより安価である。一方、内層16の厚みの上限は、カバー本体全体の厚みの95%以下、好ましくは、90%以下、特に好ましくは85%以下である。具体的には、4mm以下、好ましくは3mm以下、特に好ましくは2.5mm以下である。これ以上厚いことにあまり意味がない。
【0037】
カバー本体11の内層16、外層17の厚みは、カバー本体11の長手方向に対して垂直な面で切った断面(以下、横断面)から光学顕微鏡を用いて測定できる。
【0038】
突出部12は、長手方向すなわち押出方向に延在し、カバー本体11の側縁から若干内側に入った部位から鉛直方向下側に向かって延びている。その厚みは、0.5~3.5mm、好ましくは1.0~2.5mm、特に好ましくは1.0~2.0mmである。突出部12の先端又は先端近傍には、図2bに示すように、後述する長尺基材のカバー固定部と係合する係止部12aが形成されている。係止部12aは、突出部12から略水平に延びる突起であり、下面はカバー本体11の中心に向かって上方に傾斜している。また突出部12は、突出部12の基端近辺を中心として係止部12aが略水平方向に移動可能に弾性変形する。突出部12の内層16は、芳香族ポリカーボネート樹脂で形成されているため強度が高く、突出部12の厚みが0.5~3.5mm程度の薄肉状であっても、長尺基材固定時の弾性変形に実用的に耐えうる突出部を形成することができる。なお、一対の突出部12は、カバー本体11を半分に切断する鉛直面を中心として左右対称に設けられており、一対の突出部の少なくとも一方は、該突出部の基端近辺を中心として弾性変形可能である。通常は、長尺基材に対する固定力を鑑みて、両方の突出部を弾性変形可能とし、さらに両方の突出部に長手方向に延在する係止部を設ける。
【0039】
第1光透過性カバー10は、長手方向を押出方向とした共押出成形法により製造することができる。共押出成型法により製造される共押出成形体は、長手方向において略一定の断面形状(横断面の構成)を有する。
共押出成形法は、溶融した2種の合成樹脂を所定のダイ内に投入し、2種の合成樹脂をダイ内において所定の厚みで積層し、2種の合成樹脂を積層体としてダイ外に押し出す方法である。その押出条件は、内層側の押出温度が150度~350度、好ましくは200度~300度、外層側の押出温度が130度~330度、好ましくは180度~250度である。そして、生産速度は、30cm/分~200cm/分、好ましくは50cm/分~120cm/分である。ダイの形状および寸法を調整することにより、カバー本体11、内層16および外層17の形状及び寸法、突出部12の形状および寸法を適宜調整することができる。さらに、自由な長さの第1光透過性カバー10を製造できる。
【0040】
屋外用の第1光透過性カバー10は、外層17に耐光性が高いポリカーボネート樹脂を用いているため、屋外に長期間載置しても劣化しにくい。一方、内層16に耐熱性が高く、かつ、強度の強い芳香族ポリカーボネート樹脂を用いているため、防護柵、柵型手摺、フェンスの一部として求められる強度を与えることができる。なお、内層16および外層17に紫外線吸収剤を用いることにより、紫外線等が内層16に到達しにくくでき、内層16の劣化を防止できる。
第1光透過性カバー10のカバー本体11が外側に突出するように湾曲しているため、カバー内に向かう光を収束させることができる、または、カバー外に向かう光を拡散させることができる。また外力に対して強い。
なお、第1光透過性カバー10の外周面に、ハードコート(ガラス状の硬質被膜)を設けてもよい。この場合、一層耐久性が高くなる。
【0041】
次に、長尺基材101、について説明する。
長尺基材101は、図3に示すように、長手方向に沿って延びる第1収容部111及び第2収容部112を有する筒状のものである。詳しくは、長尺基材101の断面が、筒状体100の断面の円中心から鉛直方向上側の点を中心とした第1円弧A1および筒状体100の断面の円中心から鉛直方向下側から45度の点を中心とした第2円弧A2を筒状体100の断面の円から切欠いた形状を構成する2つの円弧状の第1枠101a1及び第2枠101a2と、第1枠の一方の端部と第2枠の一方の端部を第1円弧A1の代わりに連結する第1収容部111と、第1枠の他方の端部と第2枠の他方の端部を第2円弧A2の代わりに連結する第2収容部112とから構成されている。第1収容部111は鉛直方向上側に開口あるいは向いている。第2収容部112は鉛直方向下側に対して45度の角度を持った方向に開口あるいは向いている。なお、第2収容部112の向きは、特に限定されず、鉛直方向下側に対して90度未満の角度を持った方向に開口あるいは向いているのが好ましい。
長尺基材101は、ステンレススチール、アルミニウム等の金属からなる。金属から構成することにより、長尺基材101と第1光透過性カバー10との間の空間に蓄積される熱量を放出することができる。特に、強度、放熱性、軽量性の点からアルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。
【0042】
第1収容部111は、長手方向に延びる第1基部116と、その第1基部の両側に沿って設けられる一対の第1カバー固定部117とを有する。第1収容部111は太陽電池モジュール103を収容する。また第1収容部111には第1光透過性カバー10が連結される。
第1基部116は、太陽電池モジュール103を装着する部位である。詳しくは、長手方向に延びる凹部116bを備えており、凹部116bを覆うように太陽電池モジュール103が装着される(図1b参照)。なお、太陽電池モジュール103と凹部116bによって形成される空間には、放熱材や接着剤などが充填される。また第1基部116には、太陽電池モジュール103と照明104とを電気的に連通するリード線を通す連通孔116aが形成されている。
第1カバー固定部117は、第1光透過性カバー10の突出部12の係止部12aと係合する。第1カバー固定部117と係止部12aとの間に、シール材108を設けるのが好ましい。これにより確実に、長手方向に延びる線シール構造を形成することができる。なお、第1カバー固定部117と係止部12aの固定構造は、前述したように、長さ方向に線シールを形成するように、第1光透過性カバー10と長尺基材101とを連結するものであれば、特に限定されない。また、第1カバー固定部117と係止部12aとを接着剤等で連結してもよい。
【0043】
第2収容部112は、長手方向に延びる第2基部118と、その第2基部の両側に沿って設けられる一対の第2カバー固定部119とを有する。第2収容部112は照明104を収容する。また第2収容部112には第2光透過性カバー102が連結される。
第2基部118は、照明104を装着する部位である。また第2基部118には、照明104と太陽電池モジュール103とを電気的に連通するリード線を通す連通孔118aが形成されている。
第2カバー固定部119は、後述する第2光透過性カバー102の第2係止部と係合する。なお、第2カバー固定部119と第2係止部の係合構造は、第2光透過性カバー102と長尺基材101とを連結するものであれば、特に限定されない。この実施形態において、第2収容部112と第2光透過性カバー102との間には、長手方向に延びる線シール構造を設けていない。これは第2収容部112が下方に向かって開口しているため、水分が入りにくいためである。しかし、照明を水分から保護するべく、第2収容部112と第2光透過性カバー102との間に線シール構造を設けてもよい。
【0044】
第2光透過性カバー102は、図4に示すように、長尺状の第2カバー本体121と、そのカバー本体の内面から突出する一対の第2突出部122とを有する。
第2カバー本体121は、一定の厚みで、外方に突出するように円弧状に湾曲した板材である。つまり、凹側が内面となる。第2カバー本体121の形状は、実質的に長尺基材101の断面で切欠いた第2円弧A2と同じ形状である。
第2突出部122は、第2カバー本体121の側縁から若干内側に入った部位から鉛直方向下側に向かって延びている。第2突出部122の下端には、第2収容部112のカバー固定部と係合する第2係止部122aが形成されている。また第2突出部122は、第2突出部122の基端近辺を中心として第2係止部122aが略水平方向に移動可能に弾性変形する。
一対の第2突出部122は、第2カバー本体121を半分に切断する鉛直面を中心として左右対称に設けられている。
第2光透過性カバー102は、透光性を有する合成樹脂であれば、その材料は特に限定されない。第2光透過性カバー102は、鉛直方向下側に対して90度未満の角度を持った方向に開口あるいは向いている第2収容部112を覆うように連結されるため、第1光透過性カバー10のように直射日光を受けにくく、第1光透過性カバー10のように劣化しにくいためである。ただし、第1光透過性カバー10と同様に2層構造とし、同様の合成樹脂を用いてもよい。
第2光透過性カバー102は、材料に応じて押出成型または共押出成型によって成形するのが好ましい。
【0045】
太陽電池モジュール103は、基板と、その基板に配置されるソーラーセルとを有する。太陽電池モジュール103の面積は、使用する照明に応じて選択すればよい。例えば、天候によって電力生成が左右されること、蓄電池を充填することにより電力のロスがあることを考慮して、照明によって一日で消費される電力とよりも大きな電力を発電できるようにする。
【0046】
照明104としては、LED、蛍光灯、電球等の電力によって発光するものが挙げられる。特に、太陽電池モジュールで発電した電力を使用することを考えると、電力消費量の小さいLEDが好ましい。
【0047】
蓄電池105は、太陽電池モジュール103で発電した電力を蓄電する。その容量は、太陽電池モジュール103で一日に生産できる電力を蓄電できるようにする。蓄電池105は、長尺基材101の内部空間に設けている。しかし、その配置場所は特に限定されず、第1収容部111または第2収容部112に配置させてもよい。
【0048】
制御部106は、日中に太陽電池モジュールの発電電力を蓄電池に蓄電させ、夜間に蓄電池の電力を用いて照明を発光させる。例えば、周囲の照度によって日中と夜間の切り替えと行う。また、タイマーによって自動的に切り替えを行うようにしてもよい。さらに、夜間において、人や車等が近づいてくることをセンサ等で察知させて、察知した場合に所定時間照明を点灯するようにしてもよい。制御部106は、長尺基材101の内部空間に設けている。
【0049】
上述の実施形態では、自己発電型の照明機能を有する筒状体に基づいて、光透過性カバーの説明をした。しかし、照明機能のみ、あるいは、太陽電池モジュールのみを収容した筒状体としてもよい。
上述の実施形態では、第1光透過性カバー10のカバー本体は湾曲しているが、その長尺基材の収容部を塞ぐことができて板状であれば、その断面形状は特に限定されない。例えば、平板状であってもよい。しかし、その場合、強度が低下し、かつ、光の拡散効率、収束効率も低下する。
【実施例
【0050】
[実施例1]
(外層17の樹脂組成物)
外層17の樹脂組成物として、イソソルビドに由来する構造単位(50モル%)と、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位(50モル%)とを共重合させたポリカーボネート樹脂に表1の添加剤を加えたものを準備した。このポリカーボネート樹脂の還元粘度は、0.6dL/gであった。
【0051】
【表1】
【0052】
(内層16の樹脂組成物)
内層16の樹脂組成物として、ポリカーボネート樹脂(帝人社製、「パンライト LV2250Z」)準備した。
【0053】
次に、共押出成形機に、内層16の樹脂組成物および外層17の樹脂組成物をそれぞれ別々に、かつ、同時に溶融・押出し、それらの溶融体を所定形状のダイス内で一体化させ、冷却・固化することにより、図2aの第1光透過性カバー10を製造(実施例1)した。その第1光透過性カバー10の寸法は、外層17の厚みが0.5mm、内層16の厚みが2.0mm、カバー本体11の円弧の角度α1は125度、突出部12の中心線の高さが5.5mm、突出部12の厚さが1.2mm、長さが1000mmであった。
そして押出条件は、内層側の押出温度が約250度、外層側の押出温度が約230度、生産速度は約100cm/分であった。
【0054】
[耐光性試験]
実施例1の光透過性カバーに、波長が300~400mmの光を温度23℃、相対湿度50%の環境下で、外層側及び内層側から1000時間照射した。それぞれのカバーの状態を検討した。その結果を次のように示す。
【0055】
【表2】
○:変化無し
△:若干黄色味を帯びた
×:黄色に変色
【0056】
内層側から照射した光透過性カバーは500hを超えた当たりから内層側が明らかに黄色味を帯び始め、1000hでは完全に変色した。一方、外層側から照射した光透過性カバーは、1000h後でも変化は見られなかった。
【符号の説明】
【0057】
10 第1光透過性カバー
11 カバー本体
12 突出部
12a 係止部
16 内層
17 外層
100 筒状体
101 長尺基材
101a1 第1枠
101a2 第2枠
102 第2光透過性カバー
103 太陽電池モジュール
104 照明
105 蓄電池
106 制御部
107 蓋材
108 シール材
111 第1収容部
112 第2収容部
116 第1基部
116a 連通孔
116b 凹部
117 第1カバー固定部
118 第2基部
118a 連通孔
119 第2カバー固定部
121 第2カバー本体
122 第2突出部
122a 第2係止部
図1
図2
図3
図4