(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-06
(45)【発行日】2022-05-16
(54)【発明の名称】感放射線性組成物、膜、カラーフィルタ、遮光膜および固体撮像素子
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20220509BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20220509BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220509BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20220509BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G03F7/004 501
G03F7/031
G02B5/20 101
H01L27/146 D
(21)【出願番号】P 2020099305
(22)【出願日】2020-06-08
(62)【分割の表示】P 2016005233の分割
【原出願日】2016-01-14
【審査請求日】2020-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和敬
(72)【発明者】
【氏名】田口 貴規
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-276406(JP,A)
【文献】特開2013-029709(JP,A)
【文献】特開2014-111734(JP,A)
【文献】特開2011-203506(JP,A)
【文献】特開2013-068972(JP,A)
【文献】特開2009-265527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
G02B 5/20
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が2,000~2,000,000の樹脂と、着色剤と、
分子量が250~1500のモノマーである重合性化合物と、光重合開始剤と、紫外線吸収剤を含む感放射線性組成物であって、
前記着色剤は、
黒色顔料であるチタンブラックを含み、かつ、
前記チタンブラックを感放射線性組成物の全固形分に対して12~30質量%含むか、あるいは、前記着色剤は、
黒色顔料であるチタンブラックと、有彩色顔料を1種類以上とを含み、かつ、
前記チタンブラックを感放射線性組成物の全固形分に対して10~35質量%と、有彩色顔料を感放射線性組成物の全固形分に対して1.5~17.5質量%含み、
前記樹脂と前記着色剤との質量比である、樹脂/着色剤が、1.5~4.0であり、
前記重合性化合物は、水酸基及び酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合性化合物を含み、
屈折率が1.8以上の高屈折率粒子の含有量が、感放射線性組成物の全固形分に対して0.5質量%以下であり、
前記高屈折率粒子は、
前記着色剤以外の素材であって、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化バナジウムおよび酸化ニオブから選ばれる少なくとも1種であり、
前記感放射線性組成物を用いて膜厚0.5μmの膜を形成した際に、前記膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab
550が0.1~0.8であり、前記膜の、波長400~700nmの範囲における透過率の標準偏差が10%以下であり、前記膜の波長365nmの光に対する吸光度Ab
365と前記膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab
550との比であるAb
365/Ab
550が、1.7~3.7である、
感放射線性組成物。
【請求項2】
前記高屈折率粒子を含まない、請求項1に記載の感放射線性組成物。
【請求項3】
前記樹脂は、アルカリ可溶性樹脂を含み、前記アルカリ可溶性樹脂のエチレン性不飽和結合当量が1.0mmol/g以下である、請求項1または2に記載の感放射線性組成物。
【請求項4】
前記光重合開始剤は、α-アミノケトン化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の感放射線性組成物。
【請求項5】
前記有彩色顔料がオレンジ色顔料を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の感放射線性組成物。
【請求項6】
感放射線性組成物を用いて膜厚0.5μmの膜を形成した際に、波長633nmの光の屈折率が1.20~1.65である、請求項1~5のいずれか1項に記載の感放射線性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の感放射線性組成物を用いた膜。
【請求項8】
膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab
550が0.1~0.8であり、
膜の波長400~700nmの範囲における透過率の標準偏差が10%以下であり、
膜の波長365nmの光に対する吸光度Ab
365と、膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab
550との比である、Ab
365/Ab
550が、1.7~3.7である、請求項7に記載の膜。
【請求項9】
膜の波長633nmの光に対する屈折率が1.20~1.65である、請求項7または8に記載の膜。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の感放射線性組成物を用いた硬化膜を有するカラーフィルタ。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載の感放射線性組成物を用いた硬化膜を有する遮光膜。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか1項に記載の感放射線性組成物を用いた硬化膜を有する固体撮像素子。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の感放射線性組成物を用いた硬化膜と、着色画素との積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感放射線性組成物に関する。さらに詳しくは、可視領域の光を適度に遮光できる膜(灰色膜など)の形成に用いることができる感放射線性組成物に関する。また、膜、カラーフィルタ、遮光膜および固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
イメージセンサの解像度の向上を目的として、その画素数の拡大とともに画素の微細化が進展している。その反面、開口部は小さくなり、感度低下の要因となっている。そこで、灰色画素(可視領域の光を適度に遮光する膜)を採用し、イメージセンサーのダイナミックレンジを拡大することなどが試みられている。
【0003】
可視領域の光を適度に遮光する硬化膜の形成用の感放射線性組成物としては、例えば、特許文献1、2などに記載されたものなどが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-71911号公報
【文献】特開2014-111734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
感放射線性組成物を用いて硬化膜を製造する場合、パターン形成時の露光時間の短縮のために、露光照度を高めて行うこともある。しかしながら、露光照度を高めるに伴い、所望のパターンを得ることが困難になる傾向にある。このため、近年においては、感放射線性組成物のリソグラフィ性のさらなる向上が求められている。特に、可視領域の光を適度に透過する硬化膜などの製造に用いる感放射線性組成物においては、感度の調整が困難なことが多く、リソグラフィ性のさらなる向上が求められている。
【0006】
よって、本発明の目的は、リソグラフィ性に優れた感放射線性組成物、膜、カラーフィルタ、遮光膜および固体撮像素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは詳細に検討した結果、以下の構成とすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
<1> 樹脂と、着色剤と、重合性化合物と、光重合開始剤とを含み、
樹脂と着色剤との質量比である、樹脂/着色剤が、1.0~6.0であり、
重合性化合物は、水酸基及び酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合性化合物を含む、感放射線性組成物。
<2> 樹脂と着色剤との質量比である、樹脂/着色剤が、1.5~4.0である、<1>に記載の感放射線性組成物。
<3> 着色剤は、顔料を含み、感放射線性組成物の全固形分に対し、顔料を7~50質量%含有する、<1>または<2>に記載の感放射線性組成物。
<4> 顔料は、黒色顔料を含む、<3>に記載の感放射線性組成物。
<5> 樹脂は、アルカリ可溶性樹脂を含み、アルカリ可溶性樹脂のエチレン性不飽和結合当量が1.0mmol/g以下である、<1>~<4>のいずれかに記載の感放射線性組成物。
<6> 更に紫外線吸収剤を含む、<1>~<5>のいずれかに記載の感放射線性組成物。
<7> 光重合開始剤は、α-アミノケトン化合物を含む、<1>~<6>のいずれかに記載の感放射線性組成物。
<8> 感放射線性組成物を用いて膜厚0.5μmの膜を形成した際に、
膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab550が0.1~0.8であり、
膜の、波長400~700nmの範囲における透過率の標準偏差が10%以下であり、
膜の波長365nmの光に対する吸光度Ab365と、膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab550との比である、Ab365/Ab550が、1.7~3.7である、<1>~<7>のいずれかに記載の感放射線性組成物。
<9> 感放射線性組成物を用いて膜厚0.5μmの膜を形成した際に、波長633nmの光の屈折率が1.20~1.65である、<1>~<8>のいずれかに記載の感放射線性組成物。
<10> <1>~<9>のいずれかに記載の感放射線性組成物を用いた膜。
<11> 膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab550が0.1~0.8であり、
膜の、波長400~700nmの範囲における透過率の標準偏差が10%以下であり、
膜の波長365nmの光に対する吸光度Ab365と、膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab550との比である、Ab365/Ab550が、1.7~3.7である膜。
<12> 膜の波長633nmの光に対する屈折率が1.20~1.65である、<10>または<11>に記載の膜。
<13> <1>~<9>のいずれかに記載の感放射線性組成物を用いた硬化膜を有するカラーフィルタ。
<14> <1>~<9>のいずれかに記載の感放射線性組成物を用いた硬化膜を有する遮光膜。
<15> <1>~<9>のいずれかに記載の感放射線性組成物を用いた硬化膜を有する固体撮像素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リソグラフィ性に優れた感放射線性組成物、膜、カラーフィルタ、遮光膜および固体撮像素子を提供することが可能になった。
また、上述の分光特性を有する本発明の膜は、リソグラフィ性が良好で、さらには、特定の波長で過度の吸収を示さない、言い換えると、光吸収の波長依存性が小さい、良好な灰色膜(硬化膜)とすることができ、例えば固体撮像素子の灰色画素として用いたときに透過率に偏りのない良好な性能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の硬化膜を用いたカラーフィルタの一実施形態を示す図である。
【
図2】本発明の硬化膜を用いたカラーフィルタの一実施形態を示す図である。
【
図3】本発明の硬化膜を用いたカラーフィルタの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)を包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)を包含する。
本明細書において光とは、活性光線または放射線を意味する。また、「活性光線」または「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、電子線等を意味する。
本明細書において「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光などを用いた露光のみならず、電子線、イオンビーム等の粒子線を用いた描画も露光に含める。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アリル」は、アリルおよびメタリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したポリスチレン換算値として定義される。
【0011】
<感放射線性組成物>
本発明の感放射線性組成物は、樹脂と、着色剤と、重合性化合物と、光重合開始剤と、を含み、樹脂と着色剤との質量比である、樹脂/着色剤が、1.0~6.0であり、重合性化合物は、水酸基及び酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合性化合物を含む。なお、樹脂/着色剤とは、樹脂と着色剤の質量比(樹脂の質量/着色剤の質量)を意味する。感放射線性組成物が樹脂を2種類以上含む場合、樹脂の質量は、2種類以上の樹脂の合計である。また、感放射線性組成物が着色剤を2種類以上含む場合、着色剤の質量は、2種類以上の着色剤の合計である。
【0012】
本発明によれば、上述した構成とすることにより、リソグラフィ性に優れた感放射線性組成物とすることができる。すなわち、樹脂/着色剤の質量比を、1.0~6.0とし、かつ、水酸基及び酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合性化合物を用いたことで、組成物中における着色剤の分散性を良好にしつつ、感度を適度に調整でき、優れたリソグラフィ性が得られる。
【0013】
また、樹脂/着色剤の質量比を1.0~6.0とし、かつ、酸基を有する重合性化合物を含むことで、洗浄液などに対する洗浄性が良好で、塗布装置のメンテナンス性などに優れる。すなわち、本発明の感放射線性組成物は、樹脂の含有量が多く、かつ、酸基を有する重合性化合物を含むので、洗浄液への溶解性が良好で、例えば塗布装置のノズルなどに付着した汚れなどを、溶剤などの洗浄液で容易に洗浄できる。
また、樹脂/着色剤の質量比を、1.0~6.0とし、かつ、上記の重合性化合物を含むことで、塗布基板への濡れ性が良好になるため、塗布性を良好にできる。特に、塗布のエッジ部分において効果が顕著であり、膜のエッジ部の塗布均一性に優れる。
【0014】
本発明の感放射線性組成物は、黒色顔料を含む着色剤を用いることが好ましい。この態様によれば、可視領域の光を適度に透過する硬化膜の製造に適した感放射線性組成物とすることができる。
【0015】
本発明の感放射線性組成物は、エチレン性不飽和結合当量が1.5mmol/g以下のアルカリ可溶性樹脂を用いることが好ましい。可視領域の光を適度に透過する硬化膜を製造する場合、膜のi線透過率が高くなるので、高照度露光した際に感度が高くなりやすい。これに対し、アルカリ可溶性樹脂として、エチレン性不飽和結合当量が1.5mmol/g以下のアルカリ可溶性樹脂を用いることで、感放射線性組成物の感度を適度に調整でき、露光照度を高めても、所望のパターンを形成しやすくできる。このため、優れたリソグラフィ性が得られやすい。特に、黒色顔料を含む着色剤を用いた場合において、優れたリソグラフィ性が得られやすい。
【0016】
本発明の感放射線性組成物は、光重合開始剤として、α-アミノケトン化合物を用いることが好ましい。可視領域の光を適度に透過する硬化膜を製造する場合、膜のi線透過率が高くなるので、高照度露光した際に感度が高くなりやすい。これに対し、光重合開始剤として、α-アミノケトン化合物を用いることで、感度を適度に調整でき、露光照度を高めても、所望のパターンを形成しやすくできる。このため、優れたリソグラフィ性が得られやすい。特に、黒色顔料を含む着色剤を用いた場合において、優れたリソグラフィ性が得られやすい。
【0017】
本発明の感放射線性組成物は、感放射線性組成物を用いて膜厚0.5μmの膜を形成した際に、膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab550が0.1~0.8であり、膜の、波長400~700nmの範囲における標準偏差が10%以下であり、膜の波長365nmの光に対する吸光度Ab365と、膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab550との比である、Ab365/Ab550が、1.7~3.7であることが好ましい。なお、上述の膜は、露光前の状態の膜である。すなわち、上述の分光特性は、露光前の状態の膜に対する分光特性である。
【0018】
上述の特性を有する感放射線性組成物を用いることで、可視領域の光を適度に透過する硬化膜を形成できる。すなわち、上記の特性を有する膜は、波長400~700nmの範囲の透過率が低く、かつ、この波長範囲の特定の波長に過度の吸収ピークをもたず、その領域において全体にフラットな状態の透過スペクトルを呈する。このため、上記の膜を露光などして硬化することで、可視領域における特定の波長で過度の吸収を示さない、良好な灰色膜とすることができる。例えば、固体撮像素子の灰色画素として用いたときに透過率に偏りのない良好な性能を実現することができる。このため、例えば、本発明の感放射線性組成物を用いて得られた膜を硬化してなる硬化膜は、カラーフィルタの着色画素などと組み合わせて使用した場合、良好な画像認識性などが得られやすい。また、本発明の膜は、Ab365/Ab550が、1.7~3.7であるので、波長365nmの光の吸光度が相対的に高い。すなわち、この膜は、波長365nmの光の透過率の低い膜でもある。このため、i線透過率が適度に低く、露光時におけるハンドリングが良好であり、リソグラフィ性に優れる。
【0019】
本発明の感放射線性組成物は、感放射線性組成物を用いて膜厚0.5μmの膜を形成した際に、波長633nmの光の屈折率が1.20~1.65であることが好ましい。この特性を有する感放射線性組成物を用いることで、膜表面や、他の層との界面における光の反射などを抑制できる。このため、例えば、本発明の感放射線性組成物を用いて得られた硬化膜を、カラーフィルタの着色画素などと組み合わせて使用した場合、膜表面や、他の層(例えば着色画素など)との界面における光の反射などを抑制して、良好な画像認識性などが得られやすい。
以下、本発明の感放射線性組成物について詳細に説明する。
【0020】
<<着色剤>>
本発明の感放射線性組成物は、着色剤を含有する。また、着色剤は、有彩色の着色剤であってもよく、黒色着色剤であってもよい。黒色着色剤を少なくとも含むことが好ましい。着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。顔料が好ましい。顔料を用いることで、波長400~700nmの範囲における透過率の標準偏差の小さい膜を製造しやすい。特に、顔料として黒色顔料を用いた場合、上記範囲における透過率の標準偏差が10%以下の膜を製造しやすい。
【0021】
(顔料)
顔料としては、従来公知の種々の顔料を挙げることができる。
有彩色の有機顔料として、以下のものを挙げることができる。但し本発明は、これらに限定されるものではない。
カラーインデックス(C.I.)ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等、
C.I.ピグメントオレンジ 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等、
C.I.ピグメントレッド 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279
C.I.ピグメントグリーン 7,10,36,37,58,59
C.I.ピグメントバイオレット 1,19,23,27,32,37,42
C.I.ピグメントブルー 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80
また、緑色顔料として、分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子が平均8~12個であり、塩素原子が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることも可能である。具体例としては、WO2015/118720公報に記載の化合物が挙げられる。
これら有機顔料は、単独若しくは色純度を上げるため種々組合せて用いることができる。
【0022】
黒色顔料は、各種公知の黒色顔料を用いることができる。たとえば、カーボンブラックや以下に示す黒色金属含有無機顔料が挙げられる。黒色金属含有無機顔料としては、Co、Cr、Cu、Mn,Ru、Fe、Ni、Sn、Ti及びAgからなる群より選ばれた1種又は2種以上の金属元素を含む金属酸化物、金属窒素物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、また、2種以上の混合物として用いることもできる。また、黒色顔料に、さらに、他の色相の無機顔料を組み合わせて用いることで、所望の遮光性を有するように、調製してもよい。組みあわせて用いうる具体的な無機顔料の例として、例えば、亜鉛華、鉛白、リトポン、酸化チタン、酸化クロム、酸化鉄、沈降性硫酸バリウムおよびバライト粉、鉛丹、酸化鉄赤、黄鉛、亜鉛黄(亜鉛黄1種、亜鉛黄2種)、ウルトラマリン青、プロシア青(フェロシアン化鉄カリ)ジルコングレー、プラセオジムイエロー、クロムチタンイエロー、クロムグリーン、ピーコック、ビクトリアグリーン、紺青(プルシアンブルーとは無関係)、バナジウムジルコニウム青、クロム錫ピンク、陶試紅、サーモンピンク等が挙げられる。特に、紫外から赤外までの広い波長域での遮光性を発現する目的で、これら黒色顔料や他の色相を有する無機顔料を、単独のみならず、複数種の顔料を混合し、使用することが可能である。
【0023】
黒色顔料は、カーボンブラック、チランブラックが好ましく、紫外から赤外までの広い波長域の遮光性を有するという観点からチタンブラックが特に好ましい。チタンブラックとは、チタン原子を有する黒色粒子である。好ましくは低次酸化チタンや酸窒化チタン等である。特に限定されないが、酸窒化チタンとしては、WO2008/123097号公報や、特開2009-58946号公報、特開2010-14848号公報、特開2010-97210号公報、特開2011-2274670号公報などに記載の酸窒化チタン、特開2010-95716号公報に記載の酸窒化チタンと炭化チタンの混合物などが使用できる。チタンブラック粒子は、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、表面を修飾することが可能である。酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムで被覆することが可能であり、また、特開2007-302836号公報に示されるような撥水性物質での処理も可能である。チタンブラックは、分散性、着色性等を調整する目的でCu、Fe、Mn、V、Ni等の複合酸化物、酸化コバルト、酸化鉄、カーボンブラック等の黒色顔料を1種あるいは2種以上の組み合わせで含有してもよい。
【0024】
チタンブラックの製造方法としては、二酸化チタンと金属チタンの混合体を還元雰囲気で加熱し還元する方法(特開昭49-5432号公報)、四塩化チタンの高温加水分解で得られた超微細二酸化チタンを水素を含む還元雰囲気中で還元する方法(特開昭57-205322号公報)、二酸化チタンまたは水酸化チタンをアンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭60-65069号公報、特開昭61-201610号公報)、二酸化チタンまたは水酸化チタンにバナジウム化合物を付着させ、アンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭61-201610号公報)などがある。ただし、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0025】
チタンブラックの比表面積は特に制限されないが、BET(Brunauer, Emmett, Teller)法にて測定した値が5m2/g以上150m2/g以下であることが好ましく、20m2/g以上120m2/g以下であることがより好ましい。
チタンブラックの市販品の例としては、チタンブラック10S、12S、13R、13M、13M-C、13R、13R-N、13M-T(商品名:三菱マテリアル(株)製)、ティラック(Tilack)D(商品名:赤穂化成(株)製)などが挙げられる。
【0026】
黒色顔料は、平均一次粒子径が5nm以上であることが好ましく、10nm以上であることが好ましい。同様の観点から、上限としては10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。黒色顔料の平均一次粒子径は、次の方法で測定した値とする。黒色顔料を含む混合液を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートで80倍に希釈し、得られた希釈液について動的光散乱法を用いて測定した値とする。この測定は、日機装株式会社製マイクロトラック(商品名)UPA-EX150を用いて行って得られた平均粒径のこととする。
【0027】
(染料)
染料としては、例えば特開昭64-90403号公報、特開昭64-91102号公報、特開平1-94301号公報、特開平6-11614号公報、特登2592207号、米国特許4808501号明細書、米国特許5667920号明細書、米国特許505950号明細書、米国特許5667920号明細書、特開平5-333207号公報、特開平6-35183号公報、特開平6-51115号公報、特開平6-194828号公報等に開示されている色素を使用できる。化学構造として区分すると、ピラゾールアゾ化合物、ピロメテン化合物、アニリノアゾ化合物、トリフェニルメタン化合物、アントラキノン化合物、ベンジリデン化合物、オキソノール化合物、ピラゾロトリアゾールアゾ化合物、ピリドンアゾ化合物、シアニン化合物、フェノチアジン化合物、ピロロピラゾールアゾメチン化合物等を使用できる。また、染料としては色素多量体を用いてもよい。色素多量体としては、特開2011-213925号公報、特開2013-041097号公報に記載されている化合物が挙げられる。
【0028】
(着色剤の好ましい組み合わせ)
着色剤の好ましい態様としては、以下の(1)~(3)などが挙げられる。以下の着色剤を用いることで、本発明の感放射線性組成物を用いて膜厚0.5μmの膜を形成した際に、膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab550が0.1~0.8であり、膜の、波長400~700nmの範囲における標準偏差が10%以下であり、膜の波長365nmの光に対する吸光度Ab365と、膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab550との比である、Ab365/Ab550が、1.7~3.7の条件を満たす膜などの製造に適した感放射線性組成物を得ることができる。
【0029】
(1)黒色顔料を含む着色剤を用い、かつ、黒色顔料を感放射線性組成物の全固形分に対して7~50質量%(好ましくは、10~40質量%、さらに好ましくは12~30質量%)含有させる。
(2)黒色顔料を1種類以上と、有彩色顔料を1種類以上とを含む着色剤を用い、かつ、黒色顔料を感放射線性組成物の全固形分に対して5.8~43.7質量%(好ましくは、8.3~39.3質量%、さらに好ましくは10.0~35.0質量%)含有させ、有彩色顔料を感放射線性組成物の全固形分に対して1.5~17.5質量%(好ましくは、2.1~15.7質量%、さらに好ましくは2.5~14.0質量%)含有させる。
【0030】
上記(1)の態様は、黒色顔料を60質量%以上含む着色剤が好ましく、黒色顔料を80質量%以上含む着色剤がより好ましい。黒色顔料は、カーボンブラックおよびチタンブラックが好ましく、チタンブラックがより好ましい。
【0031】
上記(2)の態様は、黒色顔料を50~99質量%と、有彩色顔料を1~50質量%含む着色剤が好ましく、黒色顔料を60~90質量%と、有彩色顔料を10~40質量%含む着色剤がより好ましい。黒色顔料は、カーボンブラックおよびチタンブラックが好ましく、チタンブラックがより好ましい。有彩色顔料は、赤色顔料、オレンジ色顔料および黄色顔料から選ばれる少なくとも1種の顔料が好ましい。
【0032】
着色剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対し7~50質量%が好ましい。下限は、7質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、12質量%以上が更に好ましい。上限は、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下が更に好ましい。
着色剤は、顔料の含有量が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上がより好ましい。
また、顔料の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対し、7~50質量%が好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましい。上限は、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
また、黒色顔料の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対し、7~50質量%が好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましい。上限は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましい。
【0033】
<<重合性化合物>>
本発明の感放射線性組成物は、重合性化合物を含有する。重合性化合物は、エチレン性不飽和結合を有する基を1個以上有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基を2個以上有する化合物がより好ましく、エチレン性不飽和結合を有する基を3個以上有する化合物がさらに好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基の上限は、たとえば、15個以下が好ましく、6個以下がより好ましい。エチレン性不飽和結合を有する基としては、ビニル基、スチリル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基などが挙げられる。
【0034】
重合性化合物は、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの多量体などの化学的形態のいずれであってもよい。モノマーが好ましい。重合性化合物の分子量は、100~3000が好ましく、250~1500がより好ましい。重合性化合物は、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。
【0035】
本発明の感放射線性組成物は、重合性化合物として、水酸基及び酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合性化合物を含むことが好ましい。水酸基及び酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合性化合物を用いることで、組成物中の着色剤以外の固形分が多い場合であっても、現像性に優れ、優れたリソグラフィ性が得られる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。
【0036】
水酸基及び酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合性化合物の酸価は、10~200mgKOH/gが好ましく、15~100mgKOH/gがより好ましく、20~50mgKOH/gがさらに好ましい。酸価が上記範囲であれば、リソグラフィ後にムラの少ない均一な膜が得られるという効果が得られる。
【0037】
水酸基及び酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合性化合物としては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルが好ましく、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応の水酸基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた重合性化合物がより好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製の、アロニックスTO-2349、M-305、M-510、M-520などが挙げられる。
【0038】
水酸基及び酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合性化合物は、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1)
(A)n1-L-(Ac)n2
(一般式(1)中、Aは水酸基または酸基を表し、Lは、炭素原子および水素原子を少なくとも含む(n1+n2)価の基であり、Acは(メタ)アクリロイルオキシ基を示す。n1は1以上の整数を表し、n2は1以上の整数を表す。)
【0039】
Aが表す酸基は、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。
Lは、炭素原子および水素原子を少なくとも含む(n1+n2)価の基を表す。たとえば、-CH2-、-O-、-S-、-C(=O)-、-COO-、-NR-、-CONR-、-OCO-、-SO-、-SO2-およびこれらを2個以上連結して形成される基が挙げられる。ここで、Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。Lは、-CH2-を少なくとも含む基が好ましい。Lを構成する炭素原子のは、3~100あることが好ましく、6~50であることがより好ましい。
n1は、1または2が好ましく、1がより好ましい。n2は、1~6が好ましく、2~5がより好ましい。
【0040】
水酸基及び酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合性化合物は、下記一般式(11)又は(12)で表される化合物が好ましい。
【化1】
一般式(11)中、R
1、T
1、及びX
1は、各々独立に、R
1、T
1、又はX
1として以下に示す基の何れかを表す。nは、0~14の整数を表す。
【化2】
【化3】
【0041】
一般式(12)中、Z
1及びG
1は、各々独立に、Z
1又はG
1として以下に示す基の何れかを表す。W
1は、一般式(11)においてR
1又はX
1で表される基と同義であり、6個存在するW
1のうち3個以上がR
1を表し、1個以上がX
1を表す。pは0~14の整数を表す。
【化4】
【0042】
一般式(11)又は一般式(12)で表される化合物の中でも、ペンタエリスリトール誘導体及び/又はジペンタエリスリトール誘導体がより好ましい。
【0043】
水酸基及び酸基から選ばれる少なくとも1種の基を有する重合性化合物の具体例としては、例えば下記化合物が挙げられる。また、特開2009-221114号公報の段落0093~0096に記載された化合物を用いることもできる。この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【化5】
【0044】
本発明の感放射線組成物は、水酸基および酸基を有さない重合性化合物(以下、他の重合性化合物ともいう)をさらに含んでいてもよく、他の重合性化合物を含んでいることが好ましい。他の重合性化合物は、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの多量体などの化学的形態のいずれであってもよい。モノマーが好ましい。他の重合性化合物の分子量は、100~3000が好ましく、250~1500がより好ましい。他の重合性化合物は、3~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、3~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましい。これらの具体的な化合物としては、特開2009-288705号公報の段落番号〔0095〕~〔0108〕、特開2013-29760号公報の段落0227、特開2008-292970号公報の段落番号0254~0257に記載の化合物を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0045】
他の重合性化合物は、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としてはKAYARAD D-320;日本化薬(株)製)ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造(例えば、サートマー社から市販されている、SR454、SR499)が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。また、KAYARAD RP-1040、DPCA-20(日本化薬(株)製)を使用することもできる。また、下記化合物を使用することもできる。
【化6】
【0046】
他の重合性化合物は、カプロラクトン構造を有する化合物も好ましい態様である。カプロラクトン構造を有する重合性化合物は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20、DPCA-30、DPCA-60、DPCA-120等が挙げられる。
【0047】
他の重合性化合物は、アルキレンオキシ基を有する重合性化合物を用いることもできる。アルキレンオキシ基を有する重合性化合物は、エチレンオキシ基及び/またはプロピレンオキシ基を有する重合性化合物が好ましく、エチレンオキシ基を有する重合性化合物が更に好ましく、エチレンオキシ基を4~20個有する3~6官能(メタ)アクリレート化合物がより好ましい。
【0048】
アルキレンオキシ基を有する重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ基を4個有する4官能アクリレートであるSR-494、日本化薬(株)製のペンチレンオキシ基を6個有する6官能アクリレートであるDPCA-60、イソブチレンオキシ基を3個有する3官能アクリレートであるTPA-330などが挙げられる。また、下記化合物を使用することもできる。
【化7】
【0049】
他の重合性化合物としては、特公昭48-41708号公報、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。また、特開昭63-277653号公報、特開昭63-260909号公報、特開平1-105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることも好ましい。
市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS-10、UAB-140(山陽国策パルプ社製)、UA-7200(新中村化学社製)、DPHA-40H(日本化薬(株)製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(共栄社製)などが挙げられる。
【0050】
本発明の感放射線性組成物において、重合性化合物の含有量(酸基を有する重合性化合物と、酸基を有さない重合性化合物の合計)は、感放射線性組成物の全固形分に対し、10~70質量%が好ましい。下限は、例えば15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましい。
また、酸基を有する重合性化合物の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対し、9~50質量%であることが好ましく、12~40質量%であることがより好ましい。
また、全重合性化合物のうち、酸基を有する重合性化合物の割合は、10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましい。
酸基を有する重合性化合物は、1種類のみでもよく、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0051】
<<硬化促進剤>>
本発明の感放射線性組成物は、重合性化合物の反応を促進させたり、硬化温度を下げる目的で、硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤としては、分子内に2個以上のメルカプト基を有する多官能チオール化合物(多官能メルカプト化合物)などが挙げられる。多官能チオールは安定性、臭気、解像性、現像性、密着性等の改良を目的として添加してもよい。多官能チオール化合物は、2級のアルカンチオール類であることが好ましく、特に下記一般式(T1)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
一般式(T1)
【化8】
(式(T1)中、nは2~4の整数を表し、Lは2~4価の連結基を表す。)
【0052】
上記一般式(T1)において、連結基Lは炭素数2~12の脂肪族基であることが好ましく、nが2であり、Lが炭素数2~12のアルキレン基であることが特に好ましい。多官能チオール化合物の具体的としては、下記の構造式(T2)~(T4)で表される化合物が挙げられ、式(T2)で表される化合物が特に好ましい。これらの多官能チオールは1種または複数組み合わせて使用することが可能である。
【0053】
【0054】
また、硬化促進剤は、メチロール系化合物(例えば特開2015-34963号公報の段落0246において、架橋剤として例示されている化合物)、アミン類、ホスホニウム塩、アミジン塩、アミド化合物(以上、例えば特開2013-41165号公報の0186段落に記載の硬化剤)、塩基発生剤(例えば、特開2014-55114号公報に記載のイオン性化合物)、シアネート化合物(例えば、特開2012-150180号公報の段落0071に記載の化合物)、アルコキシシラン化合物(例えば、特開2011-253054号公報に記載のエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物)、オニウム塩化合物(例えば、特開2015-34963号公報の段落0216に酸発生剤として例示されている化合物、特開2009-180949号公報に記載の化合物)などを用いることもできる。
【0055】
本発明感放射線性組成物が硬化促進剤を含有する場合、硬化促進剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対して0.3~8.9質量%が好ましく、0.8~6.4質量%がより好ましい。
【0056】
<<エポキシ基を有する化合物>>
本発明の感放射線性組成物は、エポキシ基を有する化合物を含有することも好ましい。
エポキシ基を有する化合物としては、1分子内にエポキシ基を2つ以上有する化合物が好ましい。エポキシ基は、1分子内に2~10個が好ましく、2~5個がより好ましく、3個が特に好ましい。
【0057】
エポキシ基を有する化合物は、2つのベンゼン環が炭化水素基で連結した構造を有する化合物を用いることもできる。炭化水素基は、炭素数1~6のアルキレン基が好ましい。
また、エポキシ基は、連結基を介して連結していることが好ましい。連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、-O-、-NR’-(R’は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、水素原子が好ましい)で表される構造、-SO2-、-CO-、-O-および-S-から選ばれる少なくとも一つを含む基が挙げられる。
【0058】
エポキシ基を有する化合物は、エポキシ当量(=エポキシ基を有する化合物の分子量/エポキシ基の数)が500g/eq以下であることが好ましく、100~400g/eqであることがより好ましく、100~300g/eqであることがさらに好ましい。
【0059】
エポキシ基を有する化合物は、低分子化合物(例えば、分子量2000未満、さらには、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)のいずれでもよい。エポキシ基を有する化合物の重量平均分子量は、200~100000が好ましく、500~50000がより好ましい。
エポキシ基を有する化合物は、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれることとする。
市販品としては、例えば、「EHPE3150、(株)ダイセル製」、「EPICLON N660(DIC(株)社製)」などが挙げられる。
【0060】
本発明の感放射線性組成物がエポキシ基を有する化合物を含有する場合、エポキシ基を有する化合物の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対し、0.1~40質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。上限は、例えば、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。エポキシ基を有する化合物は、1種単独であってもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0061】
<<樹脂>>
本発明の感放射線性組成物は、樹脂を含む。樹脂は、例えば、着色剤を組成物中で分散させる用途、バインダーの用途で配合される。なお、主に着色剤を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外を目的で使用することもできる。
【0062】
樹脂の重量平均分子量(Mw)は、2,000~2,000,000が好ましい。上限は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましい。下限は、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましい。
【0063】
樹脂のエチレン性不飽和結合当量は、1.5mmol/g以下であることが好ましく、1.0mmol/g以下であることがより好ましい。樹脂のエチレン性不飽和結合当量が1.0mmol/g以下であれば、感放射線性組成物の感度を適度に調整でき、ハンドリング性に優れる。このため、良好なリソグラフィ性が得られる。特に、特に黒色顔料を含む着色剤を用いた場合において、良好なリソグラフィ性が得られる。
【0064】
本発明の感放射線性組成物において、樹脂の含有量は、感放射線性組成物の全固形分の5~50質量%であることが好ましく、15~35質量%であることがより好ましい。
また、感放射線性組成物中における樹脂と着色剤との質量比(樹脂/着色剤)は、1.0~6.0であり、1.5~4.0が好ましく、1.5~3.0がさらに好ましい。樹脂/着色剤が、1.0以上であれば、リソグラフィ後のピクセル直線性が良好であり、6.0以下であれば、本発明の分光を有する膜を形成することが可能となる。
本発明の組成物は、樹脂を、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0065】
本発明において、樹脂は、エチレン性不飽和結合当量が1.0mmol/gを超える樹脂の含有量が、樹脂の全質量に対して、70質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましく、含有しないことが一層好ましい。
【0066】
(アルカリ可溶性樹脂)
本発明の感放射線性組成物は、樹脂としてアルカリ可溶性樹脂を含有する。アルカリ可溶性樹脂を含有することにより、現像性およびパターン形成性が向上する。なお、アルカリ可溶性樹脂は、分散剤やバインダーとして用いることもできる。
【0067】
アルカリ可溶性樹脂の分子量としては、特に定めるものではないが、重量平均分子量(Mw)が5000~100,000であることが好ましい。また、数平均分子量(Mn)は、1000~20,000であることが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、線状有機高分子重合体であってもよく、分子(好ましくは、アクリル系共重合体、スチレン系共重合体を主鎖とする分子)中に少なくとも1つのアルカリ可溶性を促進する基を有するアルカリ可溶性樹脂の中から適宜選択することができる。
【0068】
アルカリ可溶性樹脂としては、耐熱性の観点からは、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましく、現像性制御の観点からは、アクリル系樹脂、アクリルアミド系樹脂、アクリル/アクリルアミド共重合体樹脂が好ましい。
アルカリ可溶性を促進する基(以下、酸基ともいう)としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基、フェノール性水酸基などが挙げられるが、有機溶剤に可溶で弱アルカリ水溶液により現像可能なものが好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましいものとして挙げられる。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0069】
アルカリ可溶性樹脂のエチレン性不飽和結合当量は、1.5mmol/g以下であることが好ましく、1.0mmol/g以下であることがより好ましい。アルカリ可溶性樹脂のエチレン性不飽和結合当量が1.0mmol/g以下であれば、感放射線性組成物の感度を適度に調整でき、露光照度を高めても、所望のパターンを形成しやすく、ハンドリング性に優れる。このため、良好なリソグラフィ性が得られる。特に、黒色顔料を使用した場合において、良好なリソグラフィ性が得られる。なお、本発明においてエチレン性不飽和結合当量(二重結合当量)は、エチレン性不飽和基のモル数と樹脂質量の比で定義される。
【0070】
アルカリ可溶性樹脂の製造には、例えば、公知のラジカル重合法などを適用することができる。ラジカル重合法でアルカリ可溶性樹脂を製造する際の温度、圧力、ラジカル開始剤の種類およびその量、溶媒の種類等々の重合条件は、当業者において容易に設定可能であり、実験的に条件を定めるようにすることもできる。
【0071】
アルカリ可溶性樹脂としては、側鎖にカルボン酸を有するポリマーが好ましく、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体、ノボラック型樹脂などのアルカリ可溶性フェノール樹脂等、並びに側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの挙げられる。特に、(メタ)アクリル酸と、これと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が、アルカリ可溶性樹脂として好適である。(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、ビニル化合物などが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートおよびアリール(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ポリスチレンマクロモノマー、ポリメチルメタクリレートマクロモノマー等、特開平10-300922号公報に記載のN位置換マレイミドモノマーとして、N―フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等を挙げることができる。なお、これらの(メタ)アクリル酸と共重合可能な他のモノマーは1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0072】
アルカリ可溶性樹脂は、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーからなる多元共重合体が好ましく用いることができる。また、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートを共重合したもの、特開平7-140654号公報に記載の、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート/ポリメチルメタクリレートマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、2-ヒドロキシエチルメタクリレート/ポリスチレンマクロモノマー/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体なども好ましく用いることができる。また、市販品としては、例えばFF-426(藤倉化成社製)などを用いることもできる。
【0073】
アルカリ可溶性樹脂は、下記一般式(ED1)で示される化合物および/または下記一般式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分を重合してなるポリマーを含むことも好ましい。
【0074】
【0075】
一般式(ED1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化11】
一般式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1~30の有機基を表す。一般式(ED2)の具体例としては、特開2010-168539号公報の記載を参酌できる。
【0076】
一般式(ED1)中、R1およびR2で表される置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、tert-アミル、ステアリル、ラウリル、2-エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、tert-ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2-メチル-2-アダマンチル等の脂環式基;1-メトキシエチル、1-エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらの中でも特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。
【0077】
エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-29760号公報の段落0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。エーテルダイマーは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。一般式(ED)で示される化合物由来の構造体は、その他のモノマーを共重合させてもよい。
【0078】
アルカリ可溶性樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。
【化12】
式(X)において、R
1は、水素原子またはメチル基を表し、R
2は炭素数2~10のアルキレン基を表し、R
3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0079】
上記式(X)において、R2のアルキレン基の炭素数は、2~3が好ましい。また、R3のアルキル基の炭素数は1~20であるが、より好ましくは1~10であり、R3のアルキル基はベンゼン環を含んでもよい。R3で表されるベンゼン環を含むアルキル基としては、ベンジル基、2-フェニル(イソ)プロピル基等を挙げることができる。
【0080】
アルカリ可溶性樹脂の具体例としては、以下が挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表す。
【化13】
【0081】
アルカリ可溶性樹脂は、特開2012-208494号公報段落0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の[0685]~[0700])以降の記載を参酌でき、これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
さらに、特開2012-32767号公報に記載の段落番号0029~0063に記載の共重合体(B)および実施例で用いられているアルカリ可溶性樹脂、特開2012-208474号公報の段落番号0088~0098に記載のバインダー樹脂および実施例で用いられているバインダー樹脂、特開2012-137531号公報の段落番号0022~0032に記載のバインダー樹脂および実施例で用いられているバインダー樹脂、特開2013-024934号公報の段落番号0132~0143に記載のバインダー樹脂および実施例で用いられているバインダー樹脂、特開2011-242752号公報の段落番号0092~0098および実施例で用いられているバインダー樹脂、特開2012-032770号公報の段落番号0030~0072の記載のバインダー樹脂を用いることもできる。これらの内容は本願明細書に組み込まれる。
【0082】
アルカリ可溶性樹脂の酸価は、30~500mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上がより好ましく、70mgKOH/g以上が更に好ましい。上限は、400mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以下がさらに好ましく、150mgKOH/g以下が特に好ましく、120mgKOH/g以下が一層も好ましい。
【0083】
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対して、0.1~20質量%が好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が更に好ましく、3質量%以上が特に好ましい。上限は、12質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。本発明の感放射線性組成物は、アルカリ可溶性樹脂を、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0084】
(分散剤)
本発明の感放射線性組成物は、樹脂として分散剤を含有することができる。特に、顔料を用いた場合、分散剤を含むことが好ましい。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。分散剤は、酸性分散剤を少なくとも含むことが好ましく、酸性分散剤のみであることがより好ましい。分散剤が、酸性分散剤を少なくとも含むことにより、着色剤の分散性が向上し、優れた現像性が得られるので、フォトリソグラフィにて、好適にパターン形成を行うことができる。なお、分散剤が酸性分散剤のみであるとは、例えば、分散剤の全質量中における、酸性分散剤の含有量が99質量%以上であることが好ましく、99.9質量%以上とすることもできる。
【0085】
ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。
また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%以上を占める樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミンが好ましい。
酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40~105mgKOH/gが好ましく、50~105mgKOH/gがより好ましく、60~105mgKOH/gがさらに好ましい。
【0086】
分散剤として用いる樹脂は、酸基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。樹脂が酸基を有する繰り返し単位を含むことにより、フォトリソグラフィによりパターンを形成する際、画素の下地に発生する残渣をより低減することができる。
【0087】
また、分散剤として用いる樹脂は、グラフト共重合体であることも好ましい。グラフト共重合体は、グラフト鎖によって溶剤との親和性を有するために、着色剤の分散性、及び、経時後の分散安定性に優れる。また、組成物においては、グラフト鎖の存在により重合性化合物やアルカリ可溶性樹脂などとの親和性を有するので、アルカリ現像で残渣を生じにくくできる。なお、本発明において、グラフト共重合体とは、グラフト鎖を有する樹脂を意味する。また、グラフト鎖とは、ポリマーの主鎖の根元から、主鎖から枝分かれしている基の末端までを示す。
【0088】
本発明において、グラフト共重合体としては、水素原子を除いた原子数が40~10000の範囲であるグラフト鎖を有する樹脂が好ましい。また、グラフト鎖1本あたりの水素原子を除いた原子数は、40~10000が好ましく、50~2000がより好ましく、60~500が更に好ましい。
【0089】
グラフト共重合体の主鎖構造としては、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂などが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
グラフト共重合体のグラフト鎖としては、グラフト部位と溶剤との相互作用性を向上させ、それにより分散性を高めるために、ポリ(メタ)アクリル、ポリエステル、又はポリエーテルを有するグラフト鎖であることが好ましく、ポリエステル又はポリエーテルを有するグラフト鎖であることがより好ましい。
グラフト共重合体は、グラフト鎖を有する繰り返し単位を、質量換算で、グラフト共重合体の総質量に対し2~90質量%の範囲で含むことが好ましく、5~30質量%の範囲で含むことがより好ましい。グラフト鎖を有する繰り返し単位の含有量が、この範囲内であると、着色剤の分散性が良好である。
【0090】
本発明では、グラフト共重合体として、下記式(1)~式(4)のいずれかで表される繰り返し単位を含む共重合体を用いることもできる。このグラフト共重合体は、黒色顔料の分散剤として特に好ましく用いることができる。
【化14】
【0091】
式(1)~式(4)において、W1、W2、W3、及びW4はそれぞれ独立に酸素原子又はNHを表す。W1、W2、W3、及びW4は酸素原子であることが好ましい。
式(1)~式(4)において、X1、X2、X3、X4、及びX5は、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基を表す。X1、X2、X3、X4、及びX5としては、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基であることが好ましく、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0092】
式(1)~式(4)において、Y1、Y2、Y3、及びY4は、それぞれ独立に、2価の連結基を表し、連結基は特に構造上制約されない。Y1、Y2、Y3、及びY4で表される2価の連結基として、具体的には、下記の(Y-1)~(Y-21)の連結基などが例として挙げられる。下記に示した構造において、A、Bはそれぞれ、式(1)~式(4)における左末端基、右末端基との結合部位を意味する。
【0093】
【0094】
式(1)~式(4)において、Z1、Z2、Z3、及びZ4は、それぞれ独立に1価の有機基を表す。有機基の構造は、特に限定されないが、具体的には、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基、及びアミノ基などが挙げられる。これらの中でも、Z1、Z2、Z3、及びZ4で表される有機基としては、特に分散性向上の観点から、立体反発効果を有するものが好ましく、各々独立に炭素数5から24のアルキル基又はアルコキシ基が好ましく、その中でも、特に各々独立に炭素数5から24の分岐アルキル基、炭素数5から24の環状アルキル基、又は、炭素数5から24のアルコキシ基が好ましい。なお、アルコキシ基中に含まれるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0095】
式(1)~式(4)において、n、m、p、及びqは、それぞれ独立に、1から500の整数である。
また、式(1)及び式(2)において、j及びkは、それぞれ独立に、2~8の整数を表す。式(1)及び式(2)におけるj及びkは、分散安定性、現像性の観点から、4~6の整数が好ましく、5が最も好ましい。
【0096】
式(3)中、R3は分岐若しくは直鎖のアルキレン基を表し、炭素数1~10のアルキレン基が好ましく、炭素数2又は3のアルキレン基がより好ましい。pが2~500のとき、複数存在するR3は互いに同じであっても異なっていてもよい。
式(4)中、R4は水素原子又は1価の有機基を表し、この1価の有機基としては特に構造上限定はされない。R4として好ましくは、水素原子、アルキル基、アリール基、及びヘテロアリール基が挙げられ、更に好ましくは、水素原子、又はアルキル基である。R4がアルキル基である場合、アルキル基としては、炭素数1~20の直鎖状アルキル基、炭素数3~20の分岐状アルキル基、又は炭素数5~20の環状アルキル基が好ましく、炭素数1~20の直鎖状アルキル基がより好ましく、炭素数1~6の直鎖状アルキル基が特に好ましい。式(4)において、qが2~500のとき、グラフト共重合体中に複数存在するX5及びR4は互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0097】
式(1)で表される繰り返し単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(1A)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
また、式(2)で表される繰り返し単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(2A)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【0098】
また、式(3)で表される繰り返し単位としては、分散安定性、現像性の観点から、下記式(3A)又は式(3B)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【化16】
【0099】
式(1A)中、X1、Y1、Z1及びnは、式(1)におけるX1、Y1、Z1及びnと同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(2A)中、X2、Y2、Z2及びmは、式(2)におけるX2、Y2、Z2及びmと同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(3A)又は(3B)中、X3、Y3、Z3及びpは、式(3)におけるX3、Y3、Z3及びpと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0100】
また、上述したグラフト共重合体は、上述した式(1)~(4)で表される繰り返し単位の他に、疎水性繰り返し単位を有することも好ましい。ただし、本発明において、疎水性繰り返し単位は、酸基(例えば、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、フェノール性水酸基等)を有さない繰り返し単位である。
【0101】
疎水性繰り返し単位は、好ましくは、ClogP値が1.2以上の化合物(モノマー)に由来する(対応する)繰り返し単位であり、より好ましくは、ClogP値が1.2~8の化合物に由来する繰り返し単位である。
【0102】
ClogP値は、Daylight Chemical Information System, Inc.から入手できるプログラム“CLOGP”で計算された値である。このプログラムは、Hansch, Leoのフラグメントアプローチ(下記文献参照)により算出される“計算logP”の値を提供する。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、化学構造を部分構造(フラグメント)に分割し、そのフラグメントに対して割り当てられたlogP寄与分を合計することにより化合物のlogP値を推算している。その詳細は以下の文献に記載されている。本発明では、プログラムCLOGP v4.82により計算したClogP値を用いる。
A. J. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch, P. G. Sammnens, J. B. Taylor and C. A. Ramsden, Eds., p.295, Pergamon Press, 1990 C. Hansch & A. J. Leo. SUbstituent Constants For Correlation Analysis in Chemistry and Biology. John Wiley & Sons. A.J. Leo. Calculating logPoct from structure. Chem. Rev., 93, 1281-1306, 1993.
【0103】
logPは、分配係数P(Partition Coefficient)の常用対数を意味し、ある有機化合物が油(一般的には1-オクタノール)と水の2相系の平衡でどのように分配されるかを定量的な数値として表す物性値であり、以下の式で示される。
logP=log(Coil/Cwater)
式中、Coilは油相中の化合物のモル濃度を、Cwaterは水相中の化合物のモル濃度を表す。
logPの値が0をはさんでプラスに大きくなると油溶性が増し、マイナスで絶対値が大きくなると水溶性が増すことを意味し、有機化合物の水溶性と負の相関があり、有機化合物の親疎水性を見積るパラメータとして広く利用されている。
【0104】
グラフト共重合体は、疎水性繰り返し単位として、下記一般式(i)~(iii)表されるモノマーに由来の繰り返し単位から選択された1種以上の繰り返し単位を有することが好ましい。
【0105】
【0106】
上記式(i)~(iii)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、又は炭素原子数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す。
R1、R2、及びR3は、より好ましくは水素原子、又は炭素原子数が1~3のアルキル基であり、最も好ましくは、水素原子又はメチル基である。R2及びR3は、水素原子であることが特に好ましい。
【0107】
Xは、酸素原子(-O-)又はイミノ基(-NH-)を表し、酸素原子であることが好ましい。
【0108】
Lは、単結合又は2価の連結基である。2価の連結基としては、2価の脂肪族基(例えば、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(例えば、アリーレン基、置換アリーレン基)、2価の複素環基、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、イミノ基(-NH-)、置換イミノ基(-NR31-、ここでR31は脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、カルボニル基(-CO-)、又は、これらの組合せ等が挙げられる。
Lは、単結合、アルキレン基又はオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であることが好ましい。オキシアルキレン構造は、オキシエチレン構造又はオキシプロピレン構造であることがより好ましい。また、Lは、オキシアルキレン構造を2以上繰り返して含むポリオキシアルキレン構造を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン構造としては、ポリオキシエチレン構造又はポリオキシプロピレン構造が好ましい。ポリオキシエチレン構造は、-(OCH2CH2)n-で表され、nは、2以上の整数が好ましく、2~10の整数であることがより好ましい。
【0109】
Zとしては、脂肪族基(例えば、アルキル基、置換アルキル基、不飽和アルキル基、置換不飽和アルキル基、)、芳香族基(例えば、アリーレン基、置換アリーレン基)、複素環基、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、イミノ基(-NH-)、置換イミノ基(-NR31-、ここでR31は脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、カルボニル基(-CO-)、又は、これらの組合せ等が挙げられる。
【0110】
脂肪族基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。脂肪族基の炭素原子数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましい。脂肪族基には、更に環集合炭化水素基、架橋環式炭化水素基が含まれ、環集合炭化水素基の例としては、ビシクロヘキシル基、パーヒドロナフタレニル基、ビフェニル基、4-シクロヘキシルフェニル基などが含まれる。架橋環式炭化水素環として、例えば、ピナン、ボルナン、ノルピナン、ノルボルナン、ビシクロオクタン環(ビシクロ[2.2.2]オクタン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環等)などの2環式炭化水素環、ホモブレダン、アダマンタン、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、トリシクロ[4.3.1.12,5]ウンデカン環などの3環式炭化水素環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン、パーヒドロ-1,4-メタノ-5,8-メタノナフタレン環などの4環式炭化水素環などが挙げられる。また、架橋環式炭化水素環には、縮合環式炭化水素環、例えば、パーヒドロナフタレン(デカリン)、パーヒドロアントラセン、パーヒドロフェナントレン、パーヒドロアセナフテン、パーヒドロフルオレン、パーヒドロインデン、パーヒドロフェナレン環などの5~8員シクロアルカン環が複数個縮合した縮合環も含まれる。脂肪族基は不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。また、脂肪族基は、置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、芳香族基及び複素環基が挙げられる。ただし、脂肪族基は、置換基として酸基を有さない。
【0111】
芳香族基の炭素原子数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。また、芳香族基は置換基を有していてもよい。置換基の例は、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基及び複素環基が挙げられる。ただし、芳香族基は、置換基として酸基を有さない。
【0112】
複素環基は、複素環として5員環又は6員環を有することが好ましい。複素環に他の複素環、脂肪族環又は芳香族環が縮合していてもよい。また、複素環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N-R32、ここでR32は脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、脂肪族基、芳香族基及び複素環基が挙げられる。ただし、複素環基は、置換基として酸基を有さない。
【0113】
上記式(iii)中、R4、R5、及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、又は炭素原子数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、Z、又は-L-Zを表す。ここでL及びZは、上記におけるものと同義である。R4、R5、及びR6としては、水素原子、又は炭素数が1~3のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0114】
上記一般式(i)で表されるモノマーは、R1、R2、及びR3が水素原子又はメチル基であって、Lが単結合又はアルキレン基若しくはオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であって、Xが酸素原子又はイミノ基であって、Zが脂肪族基、複素環基又は芳香族基である化合物が好ましい。上記一般式(ii)で表されるモノマーは、R1が水素原子又はメチル基であって、Lがアルキレン基であって、Zが脂肪族基、複素環基又は芳香族基である化合物が好ましい。上記一般式(iii)で表されるモノマーは、R4、R5、及びR6が水素原子又はメチル基であって、Zが脂肪族基、複素環基又は芳香族基である化合物が好ましい。
【0115】
式(i)~(iii)で表される代表的な化合物の例としては、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、スチレン類などから選ばれるラジカル重合性化合物が挙げられる。なお、式(i)~(iii)で表される化合物の例としては、特開2013-249417号公報の段落0089~0093に記載の化合物を参照でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0116】
グラフト共重合体において、疎水性繰り返し単位は、質量換算で、グラフト共重合体の総質量に対し10~90質量%の範囲で含まれることが好ましく、20~80質量%の範囲で含まれることがより好ましい。含有量が上記範囲において十分なパターン形成が得られる。
【0117】
上述したグラフト共重合体は、上述した式(1)~(4)で表される繰り返し単位の他に、着色剤などと相互作用を形成しうる官能基を有する繰り返し単位を含むことが好ましい。
【0118】
上記酸基としては、例えば、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基などがあり、カルボキシル基が好ましい。カルボキシル基を有することで、黒色顔料などの着色剤への吸着力が良好で、黒色顔料などの分散性を向上できる。
【0119】
グラフト共重合体は、酸基を有する繰り返し単位を1種又は2種以上有してもよい。
グラフト共重合体は、酸基を有する繰り返し単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、酸基を有する繰り返し単位の含有量は、質量換算で、グラフト共重合体の総質量に対して、好ましくは5~80質量%が好ましく、より好ましくは、10~60質量%である。
【0120】
上記塩基性基としては、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基、N原子を含むヘテロ環、アミド基などがあり、特に好ましいものは、着色剤への吸着力が良好で、且つ、その分散性が高い第3級アミノ基である。グラフト共重合体は、これらの塩基性基を1種或いは2種以上、有することができる。
グラフト共重合体は、塩基性基を有する繰り返し単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、塩基性基を有する繰り返し単位の含有量は、質量換算で、グラフト共重合体の総質量に対して、好ましくは0.01~50質量%であり、より好ましくは、現像性阻害抑制という観点から、0.01~30質量%である。
【0121】
上記配位性基、および反応性を有する官能基としては、例えば、アセチルアセトキシ基、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、酸無水物、酸塩化物などが挙げられる。特に好ましいものは、着色剤への吸着力が良好で分散性が高いアセチルアセトキシ基である。グラフト共重合体は、これらの基を1種又は2種以上有してもよい。
グラフト共重合体は、配位性基を有する繰り返し単位、又は、反応性を有する官能基を有する繰り返し単位を含有してもしなくてもよいが、含有する場合、これらの繰り返し単位の含有量は、質量換算で、グラフト共重合体の総質量に対して、好ましくは10~80質量%であり、より好ましくは、現像性阻害抑制という観点から、20~60質量%である。
【0122】
グラフト共重合体が、グラフト鎖以外に、着色剤と相互作用を形成しうる官能基を有する場合、これらの官能基がどのように導入されているかは特に限定はされないが、グラフト共重合体は、下記一般式(iv)~(vi)で表されるモノマーに由来の繰り返し単位から選択された1種以上の繰り返し単位を有することが好ましい。
【0123】
【0124】
一般式(iv)~一般式(vi)中、R11、R12、及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、又は炭素原子数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)を表す。
一般式(iv)~一般式(vi)中、R11、R12、及びR13は、より好ましくは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数が1~3のアルキル基であり、最も好ましくは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。一般式(iv)中、R12及びR13は、それぞれ水素原子であることが特に好ましい。
【0125】
一般式(iv)中のX1は、酸素原子(-O-)又はイミノ基(-NH-)を表し、酸素原子であることが好ましい。
一般式(v)中のYは、メチン基又は窒素原子を表す。
【0126】
一般式(iv)~一般式(v)中のL1は、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基の例としては、2価の脂肪族基(例えば、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、及び置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(例えば、アリーレン基、及び置換アリーレン基)、2価の複素環基、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、イミノ基(-NH-)、置換イミノ結合(-NR31’-、ここでR31’は脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、カルボニル結合(-CO-)、又は、これらの組合せ等が挙げられる。
【0127】
L1は、単結合、アルキレン基又はオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であることが好ましい。オキシアルキレン構造は、オキシエチレン構造又はオキシプロピレン構造であることがより好ましい。また、Lは、オキシアルキレン構造を2以上繰り返して含むポリオキシアルキレン構造を含んでいてもよい。ポリオキシアルキレン構造としては、ポリオキシエチレン構造又はポリオキシプロピレン構造が好ましい。ポリオキシエチレン構造は、-(OCH2CH2)n-で表され、nは、2以上の整数が好ましく、2~10の整数であることがより好ましい。
【0128】
一般式(iv)~一般式(vi)中、Z1は、グラフト鎖以外に着色剤と相互作用を形成しうる官能基を表し、カルボキシル基、第三級アミノ基であることが好ましく、カルボキシル基であることがより好ましい。
【0129】
一般式(vi)中、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素等)、炭素原子数が1~6のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、-Z1、又は-L1-Z1を表す。ここでL1及びZ1は、上記におけるL1及びZ1と同義であり、好ましい例も同様である。R14、R15、及びR16としては、それぞれ独立に水素原子、又は炭素数が1~3のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0130】
一般式(iv)で表されるモノマーは、R11、R12、及びR13がそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、L1がアルキレン基又はオキシアルキレン構造を含む2価の連結基であって、Xが酸素原子又はイミノ基であって、Zがカルボン酸基である化合物が好ましい。一般式(v)で表されるモノマーは、R11が水素原子又はメチル基であって、L1がアルキレン基であって、Z1がカルボン酸基であって、Yがメチン基である化合物が好ましい。一般式(vi)で表されるモノマーは、R14、R15、及びR16がそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であって、Lが単結合又はアルキレン基であって、Zがカルボン酸基である化合物が好ましい。
【0131】
上記グラフト共重合体の具体例の例としては、以下が挙げられる。また、特開2014-111734号公報の段落0121~0130に記載の樹脂が挙げられ、この内容は本願明細書に組み込まれることとする。
【化19】
【0132】
また、樹脂(分散剤)は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系分散剤を用いることもできる。オリゴイミン系分散剤としては、pKa14以下の官能基を有する部分構造Xを有する繰り返し単位と、原子数40~10,000の側鎖Yを含む側鎖とを有し、かつ主鎖及び側鎖の少なくとも一方に塩基性窒素原子を有する樹脂が好ましい。塩基性窒素原子とは、塩基性を呈する窒素原子であれば特に制限はない。
【0133】
オリゴイミン系分散剤については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0174の記載を参酌でき、本明細書には上記内容が組み込まれることとする。オリゴイミン系分散剤の具体例としては、下記の樹脂や、特開2012-255128号公報の段落番号0168~0174に記載の樹脂を用いることができる。
【化20】
【0134】
分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、楠本化成株式会社製「DA-7301」、BYKChemie社製「Disperbyk-101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、111(リン酸系分散剤)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK-P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050~4010~4165(ポリウレタン系)、EFKA4330~4340(ブロック共重合体)、4400~4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822、PB880、PB881」、共栄社化学社製「フローレンTG-710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS-860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA-703-50、DA-705、DA-725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN-B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL-18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、日本ルーブリゾール(株)製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、12000、17000、20000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル者製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS-IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」、川研ファインケミカル(株)製 ヒノアクトT-8000E等、信越化学工業(株)製、オルガノシロキサンポリマーKP341、裕商(株)製「W001:カチオン系界面活性剤」、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、「W004、W005、W017」等のアニオン系界面活性剤、森下産業(株)製「EFKA-46、EFKA-47、EFKA-47EA、EFKAポリマー100、EFKAポリマー400、EFKAポリマー401、EFKAポリマー450」、サンノプコ(株)製「ディスパースエイド6、ディスパースエイド8、ディスパースエイド15、ディスパースエイド9100」等の高分子分散剤、(株)ADEKA製「アデカプルロニックL31、F38、L42、L44、L61、L64、F68、L72、P95、F77、P84、F87、P94、L101、P103、F108、L121、P-123」、および三洋化成(株)製「イオネット(商品名)S-20」等が挙げられる。また、アクリベースFFS-6752、アクリベースFFS-187、アクリキュア-RD-F8、サイクロマーPを用いることもできる。
なお、上記分散剤で説明した樹脂は、分散剤以外の用途で使用することもできる。例えば、バインダーとして用いることもできる。
【0135】
<<光重合開始剤>>
本発明の感放射線性組成物は、光重合開始剤を含有する。光重合開始剤としては、重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の光重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。また、光重合開始剤は、約300nm~800nm(330nm~500nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0136】
光重合開始剤としては、少なくとも芳香族基を有する化合物であることが好ましく、例えば、(ビス)アシルホスフィンオキシド又はそのエステル類、アセトフェノン系化合物、α-アミノケトン化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、チオキサントン化合物、オキシムエステル化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、トリハロメチル化合物、アゾ化合物、有機過酸化物、ジアゾニウム化合物、ヨードニウム化合物、スルホニウム化合物、アジニウム化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ケタール誘導体化合物、メタロセン化合物等のオニウム塩化合物、有機硼素塩化合物、ジスルホン化合物などが挙げられる。感度の観点から、オキシムエステル化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、アセトフェノン系化合物、α-アミノケトン化合物、トリハロメチル化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、及び、チオール化合物が好ましく、α-アミノケトン化合物がより好ましい。着色剤として黒色顔料を用いた場合においては、光重合開始剤としてα-アミノケトン化合物を用いることで、優れたリソグラフィ性が得られやすい。
【0137】
α-アミノケトン化合物としては、下式(AK-1)で表される化合物が挙げられる。
【化21】
【0138】
式中、Arは、-SR13あるいは-N(R7E)(R8E)で置換されているフェニル基を表し、R13は水素原子または、アルキル基を表す。
【0139】
R1DおよびR2Dは、それぞれ独立して、炭素数1~8のアルキル基を表す。R1DとR2Dは互いに結合して炭素数2~9のアルキレン基を構成してもよい。
R1DおよびR2Dが表すアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、直鎖または分岐が好ましい。
R1DおよびR2Dが表すアルキル基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、アリール基、ヘテロ環基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、-ORY1、-SRY1、-CORY1、-COORY1、-OCORY1、-NRY1RY2、-NHCORY1、-CONRY1RY2、-NHCONRY1RY2、-NHCOORY1、-SO2RY1、-SO2ORY1、-NHSO2RY1などが挙げられる。RY1およびRY2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。置換基はアリール基が好ましい。特に、R1DおよびR2Dのいずれか一方が無置換のアルキル基で、他方は、アリール基で置換されたアルキル基が好ましい。
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
RY1およびRY2が表すアルキル基の炭素数は、1~20が好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。
置換基としてのアリール基およびRY1およびRY2が表すアリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。アリール基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。
RY1およびRY2が表すヘテロ環基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロ環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。ヘテロ環基を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。ヘテロ環基を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロ環基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。
【0140】
R3DおよびR4Dは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ置換された炭素数2~4のアルキル基、又は、炭素数3~5のアルケニル基を表す。R3DとR4Dとは互いに結合して炭素数3~7のアルキレン基を形成してもよく、そのアルキレン基は、アルキレン鎖中に、-O-あるいは-N(R12)-を含むものであってもよい。R12は、炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0141】
R7EおよびR8Eは、それぞれ独立して水素原子、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ置換された炭素数2~4のアルキル基、又は、炭素数3~5のアルケニル基を表す。R7EとR8Eとは互いに結合して炭素数3~7のアルキレン基を形成してもよく、そのアルキレン基は、アルキレン鎖中に、-O-あるいは-N(R12)-を含むものであってもよい。ここで、R12は前述したものと同義である。
【0142】
式(AK-1)で表される化合物の例としては、2-メチル-1-フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-(ヘキシル)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-エチル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン等が挙げられる。
市販品としては、IRGACURE907、IRGACURE369、及び、IRGACURE379(商品名:いずれもBASF社製)などが挙げられる。
【0143】
光重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、及び、アシルホスフィン化合物も好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤も用いることができる。
ヒドロキシアセトフェノン系開始剤としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959,IRGACURE-127(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE-907、IRGACURE-369、及び、IRGACURE-379(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。アミノアセトフェノン系開始剤として、365nm又は405nm等の長波光源に吸収波長がマッチングされた特開2009-191179公報に記載の化合物も用いることができる。また、アシルホスフィン系開始剤としては市販品であるIRGACURE-819やDAROCUR-TPO(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0144】
オキシム化合物の具体例としては、特開2001-233842号公報記載の化合物、特開2000-80068号公報記載の化合物、特開2006-342166号公報記載の化合物を用いることができる。オキシム化合物の具体例としては、例えば、3-ベンゾイロキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイロキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0145】
オキシム化合物としては、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.1653-1660)、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.156-162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年)pp.202-232、特開2000-66385号公報記載の化合物、特開2000-80068号公報、特表2004-534797号公報、特開2006-342166号公報の各公報に記載の化合物等が挙げられる。
市販品ではIRGACURE-OXE01(BASF社製)、IRGACURE-OXE02(BASF社製)も好適に用いられる。また、TRONLY TR-PBG-304、TRONLY TR-PBG-309、TRONLY TR-PBG-305(常州強力電子新材料有限公司社(CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD)製)、アデカアークルズNCI-930(ADEKA社製)も用いることができる。
【0146】
また上記記載以外のオキシム化合物として、カルバゾールN位にオキシムが連結した特表2009-519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許第7626957号公報に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010-15025号公報及び米国特許公開2009-292039号記載の化合物、国際公開特許2009-131189号公報に記載のケトオキシム化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許7556910号公報に記載の化合物、405nmに吸収極大を有しg線光源に対して良好な感度を有する特開2009-221114号公報記載の化合物、などを用いてもよい。好ましくは、例えば、特開2013-29760号公報の段落0274~0275を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
【0147】
本発明は、光重合開始剤として、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることもできる。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0148】
本発明は、光重合開始剤として、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることもできる。フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報記載の化合物、特表2014-500852号公報記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報記載の化合物(C-3)などが挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0149】
本発明は、光重合開始剤として、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることができる。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落0031~0047、特開2014-137466号公報の段落0008~0012、0070~0079に記載されている化合物や、アデカアークルズNCI-831(ADEKA社製)が挙げられる。
【0150】
オキシム化合物を低照度領域で使用する場合、オキシム化合物の添加量を少なくするか、感度の異なる2種以上の光重合開始剤と併用することが好ましい。オキシム化合物の併用であっても良いし、オキシム化合物とそれ以外の光重合開始剤化合物との併用であっても良い。オキシム化合物とα-アミノケトン化合物なども挙げられる。
【0151】
オキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0152】
【0153】
光重合開始剤は、350nm~500nmの波長領域に極大吸収波長を有する化合物が好ましく、360nm~480nmの波長領域に吸収波長を有する化合物がより好ましく、365nm及び405nmの吸光度が高い化合物が特に好ましい。
【0154】
光重合開始剤は、365nm又は405nmにおけるモル吸光係数は、感度の観点から、1,000~300,000であることが好ましく、2,000~300,000であることがより好ましく、5,000~200,000であることが特に好ましい。化合物のモル吸光係数の測定は、公知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Cary-5 spectrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
光重合開始剤は、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0155】
光重合開始剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対し0.1~50質量%が好ましく、より好ましくは0.5~30質量%であり、さらに好ましくは1~20質量%である。この範囲で、より良好な感度とパターン形成性が得られる。
また、光重合開始剤は、α-アミノケトン化合物を50質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%が特に好ましい。上限は、100質量%とすることもでき、99.5質量%以下とすることもでき、99質量%以下とすることもできる。
また、光重合開始剤と着色剤との質量比は、光重合開始剤/着色剤=0.1~1.0が好ましく、0.1~0.8がより好ましく、0.1~0.6がさらに好ましく、0.1~0.5が特に好ましい。光重合開始剤と着色剤との質量比が上記の範囲であれば、膜の露光前の状態における、膜の波長365nmの光に対する吸光度Ab365と、膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab550との比である、Ab365/Ab550を、1.7~3.7に調整しやすい。特に、黒色顔料を含む着色剤を用いた場合、光重合開始剤と着色剤との質量比を上記の範囲で調整することで、Ab365/Ab550を、1.7~3.7に調整しやすい。
本発明の感放射線性組成物は、光重合開始剤を、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0156】
<<溶剤>>
本発明の感放射線性組成物は、溶剤を含有することが好ましい。溶剤は有機溶剤が好ましい。溶剤は、各成分の溶解性や感放射線性組成物の塗布性を満足すれば特に制限はない。
【0157】
有機溶剤の例としては、例えば、以下のものが挙げられる。エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸シクロヘキシル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸アルキル(例えば、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル(例えば、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等))、3-オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例えば、3-オキシプロピオン酸メチル、3-オキシプロピオン酸エチル等(例えば、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル等))、2-オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピル等(例えば、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル))、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸メチル及び2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エチル(例えば、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル等)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル等、並びに、エーテル類として、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等、並びに、ケトン類として、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等、並びに、芳香族炭化水素類として、例えば、トルエン、キシレン等が好適に挙げられる。
【0158】
有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。有機溶剤を2種以上組みあわせて用いる場合、特に好ましくは、上記の3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液である。
【0159】
本発明において、有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0160】
溶剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分が5~80質量%となる量が好ましい。下限は10質量%以上が好ましい。上限は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0161】
<<顔料誘導体>>
本発明の感放射線性組成物は、顔料誘導体を含有することができる。顔料誘導体としては、有機顔料の一部分を、酸性基、塩基性基又はフタルイミドメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。顔料誘導体を構成するための有機顔料としては、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料等が挙げられる。また、顔料誘導体が有する酸性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基及びその4級アンモニウム塩基が好ましく、カルボン酸基及びスルホン酸基がさらに好ましく、スルホン酸基が特に好ましい。顔料誘導体が有する塩基性基としては、アミノ基が好ましく、特に三級アミノ基が好ましい。顔料誘導体の具体例としては、例えば下記化合物が挙げられる。また、特開2011-252065号公報の段落0162~0183の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【化24】
【0162】
本発明の感放射線性組成物における顔料誘導体の含有量は、顔料の全質量に対し、1~30質量%が好ましく、3~20質量%がさらに好ましい。顔料誘導体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0163】
<<界面活性剤>>
本発明の感放射線性組成物は、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を含有させてもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0164】
本発明の感放射線性組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上し、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。即ち、フッ素系界面活性剤を含有する感放射線性組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力が低下して、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行うことができる。
【0165】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0166】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、RS-72-K(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC1068、同SC-381、同SC-383、同S393、同KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(OMNOVA社製)等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。フッ素系界面活性剤としてブロックポリマーを用いることもでき、具体例としては、例えば特開2011-89090号公報に記載された化合物が挙げられる。
フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができ、下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化25】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000~50,000であり、例えば、14,000である。
フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和基を側鎖に有する含フッ素重合体をフッ素系界面活性剤として用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報0050~0090段落および0289~0295段落に記載された化合物、例えばDIC社製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K等が挙げられる。
【0167】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセリンエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)等が挙げられる。また、和光純薬工業社製の、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002を使用することもできる。
【0168】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA-745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0169】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)、サンデットBL(三洋化成(株)社製)等が挙げられる。
【0170】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP341、KF6001、KF6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0171】
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
界面活性剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対して、0.001~2.0質量%が好ましく、0.005~1.0質量%がより好ましい。
【0172】
<<シランカップリング剤>>
本発明の感放射線性組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤としては、一分子中に少なくとも2種の反応性の異なる官能基を有するシラン化合物が挙げられる。例えば、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、が好ましく、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシメチルシランなどが挙げられる。シランカップリング剤の詳細については、特開2013-254047号公報の段落番号0155~0158の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれることとする。
【0173】
本発明の感放射線性組成物がシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対して、0.5~30質量%が好ましい。下限は、0.7質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。本発明の感放射線性組成物は、シランカップリング剤を、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0174】
<<重合禁止剤>>
本発明の感放射線性組成物は、重合禁止剤を含有することも好ましい。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、t-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
【0175】
本発明の感放射線性組成物において、重合禁止剤を用いると、低照度露光を行なった際の、その後の現像性能変動が抑えられ、パターンの線幅、膜厚、分光スペクトル等のパターン形成性に関係する露光照度依存性をより効果的に抑制することができる。更には、一定量の光が透過する膜に使用した場合であっても、未露光部分の不必要な硬化や、意図した露光以外の光による硬化を抑制できる場合がある。
【0176】
本発明の感放射線性組成物が重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対して、0.01~5質量%が好ましい。本発明の感放射線性組成物は、重合禁止剤を、1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。2種類以上含む場合は、その合計量が上記範囲となることが好ましい。
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で塗布膜の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、感放射線性組成物の質量に対して、0.5~10質量%が好ましい。
【0177】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の感放射線性組成物は、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤を含有させることで、波長365nmの光の透過率を調整でき、リソグラフィ性に優れた感放射線性組成物とすることができる。紫外線吸収剤は、共役ジエン系化合物が好ましく、下記一般式(1)で表される化合物よりが好ましい。この共役ジエン系化合物を用いると、特に低照度露光を行なった際のその後の現像性能変動が抑えられ、パターンの線幅、膜厚、分光スペクトル等のパターン形成性に関係する露光照度依存性をより効果的に抑制することができる。
【化26】
【0178】
R1及びR2は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1~20のアルキル基、又は炭素原子数6~20のアリール基を表し、R1とR2とは互いに同一でも異なっていてもよいが、同時に水素原子を表すことはない。
R3及びR4は、電子吸引基を表す。ここで、電子吸引基は、ハメットの置換基定数σp値(以下、単に「σp値」という。)が、0.20以上1.0以下の基である。好ましくは、σp値が0.30以上0.8以下の基である。R3、R4としては、アシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、スルファモイル基が好ましく、特にアシル基、カルバモイル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基、スルファモイル基が好ましい。
上記一般式(1)については、特開2010-049029号公報の段落番号0148~0158の記載を参酌でき、この内容は本願明細書に組み込まれることとする。
【0179】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては以下の化合物が挙げられる。また、特開2010-049029号公報の段落番号0160~0162に記載の化合物に挙げられ、この内容は本願明細書に組み込まれることとする。
【化27】
【0180】
紫外線吸収剤の含有量は、感放射線性組成物の全固形分に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。
また、紫外線吸収剤と着色剤との質量比は、紫外線吸収剤/着色剤=0.1~1.2が好ましく、0.1~1.0がより好ましく、0.1~0.8がさらに好ましく、0.1~0.7が特に好ましい。紫外線吸収剤と着色剤との質量比が上記の範囲であれば、膜の露光前の状態における、膜の波長365nmの光に対する吸光度Ab365と、膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab550との比である、Ab365/Ab550を、1.7~3.7に調整しやすい。特に、黒色顔料を含む着色剤を用いた場合、紫外線吸収剤と着色剤との質量比を上記の範囲で調整することで、Ab365/Ab550を、1.7~3.7に調整しやすい。紫外線吸収剤は2種以上併用しても良い。
【0181】
<<増感剤>>
本発明の感放射線性組成物は、光重合開始剤のラジカル発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、増感剤を含有していてもよい。増感剤としては、併用する光重合開始剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。増感剤の好ましい例としては、特開2008-214395号公報の段落番号〔0085〕~〔0098〕に記載された化合物を挙げることができる。増感剤の含有量は、感度と保存安定性の観点から、感放射線性組成物の全固形分に対し、0.1~30質量%の範囲が好ましく、1~20質量%の範囲がより好ましく、2~15質量%の範囲が更に好ましい。
【0182】
<<その他添加剤>>
本発明の感放射線性組成物には、必要に応じて、各種添加物、例えば、充填剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤等を配合することができる。これらの添加物としては、特開2004-295116号公報の段落0155~0156に記載のものを挙げることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。酸化防止剤としては、例えばフェノール化合物、リン系化合物(例えば特開2011-90147 0042段落に記載の化合物)、チオエーテル化合物などを用いることができる。市販品としては、例えば(株)ADEKA製のアデカスタブシリーズ(AO-20、AO-30、AO-40、AO-50、AO-50F、AO-60、AO-60G、AO-80、AO-330など)が挙げられる。酸化防止剤は2種以上を混合して使用してもよい。本発明の感放射線性組成物においては、特開2004-295116号公報の段落0078に記載の増感剤や光安定剤、同公報の段落0081に記載の熱重合防止剤を含有することができる。
【0183】
用いる原料等により感放射線性組成物中に金属元素が含まれることがあるが、欠陥発生抑制等の観点で、感放射線性組成物中の第2族元素(カルシウム、マグネシウム等)の含有量は50ppm以下であることが好ましく、0.01~10ppmに制御することが好ましい。また、感放射線性組成物中の無機金属塩の総量は100ppm以下であることが好ましく、0.5~50ppmに制御することがより好ましい。
【0184】
本発明の感放射線性組成物は、高屈率折粒子の含有量が、感放射線性組成物の全固形分に対して5質量%未満であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。高屈率折粒子を実質的に含まない態様とすることもできる。高屈率折粒子を実質的に含まないとは、感放射線性組成物の全固形分に対して、高屈率折粒子の含有量が0.5質量%以下であること好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、含有しないことがさらに好ましい。高屈率折粒子の含有量が、5質量%未満であれば、波長633nmの光の屈折率が1.20~1.65の特性を有する膜および硬化膜を製造しやすい。
【0185】
高屈折粒子としては、屈折率が1.8以上である材料が挙げられる。下限は、1.9以上とすることもでき、2以上とすることもできる。上限は、3以下とすることもでき、2.9以下とすることもでき、2.8以下とすることもできる。高屈折率粒子の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びSから選択される少なくとも一種の元素を有する金属酸化物を含む粒子が挙げられる。具体的には二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ(ITO)、シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化バナジウム、酸化ニオブの粒子が挙げられる。金属酸化物粒子は、これらの金属の酸化物を主成分とし、更に他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例としては、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P及びS等が挙げられる。
【0186】
<感放射線性組成物の調製方法>
本発明の感放射線性組成物は、前述の成分を混合して調製できる。
感放射線性組成物の調製に際しては、感放射線性組成物を構成する各成分を一括配合してもよいし、各成分を溶剤に溶解および/または分散した後に逐次配合してもよい。また、配合する際の投入順序や作業条件は特に制約を受けない。例えば、全成分を同時に溶剤に溶解および/または分散して組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜2つ以上の溶液または分散液としておいて、使用時(塗布時)にこれらを混合して組成物として調製してもよい。
本発明の感放射線性組成物は、異物の除去や欠陥の低減などの目的で、フィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン-6、ナイロン-6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量を含む)等を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)が好ましい。
フィルタの孔径は、0.01~7.0μm程度が適しており、好ましくは0.01~3.0μm程度、さらに好ましくは0.05~0.5μm程度である。この範囲とすることにより、後工程において均一及び平滑な感放射線性組成物の調製を阻害する、微細な異物を確実に除去することが可能となる。
【0187】
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。
また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社(DFA4201NXEYなど)、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
第2のフィルタは、上述した第1のフィルタと同様の材料等で形成されたものを使用することができる。
例えば、第1のフィルタでのフィルタリングは、分散液のみで行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタリングを行ってもよい。
【0188】
<膜、硬化膜>
次に、本発明の膜および硬化膜について説明する。本発明の膜および硬化膜は、本発明の感放射線性組成物を用いてなるものである。また、本発明の膜は、以下の特性を有する膜でもある。なお、本発明における「膜」は、露光前の状態の膜を意味する。また、本発明における「硬化膜」は、露光などの硬化処理を行った後の膜を意味する。
膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab550が0.1~0.8であり、
膜の、波長400~700nmの範囲における透過率の標準偏差が10%以下であり、
膜の波長365nmの光に対する吸光度Ab365と、膜の波長550nmの光に対する吸光度Ab550との比である、Ab365/Ab550が、1.7~3.7である。
【0189】
本発明の膜(露光前の膜)のAb365/Ab550は、1.7~3.7であり、1.8~3.5が好ましく、1.8~3.4がより好ましく、1.9~3.3がさらに好ましい。Ab365/Ab550が上記範囲であれば、密着性よく高解像可能なリソグラフィ性能が得られる。
【0190】
本発明の膜(露光前の膜)および本発明の硬化膜(露光後の膜)のAb550は、0.1~0.8であり、0.15~0.70が好ましく、0.18~0.50がより好ましく、0.20~0.30がさらに好ましい。また、本発明の膜(露光前の膜)および本発明の硬化膜(露光後の膜)の上記標準偏差は、10%以下であり、5%以下が好ましく、3%以下がさらに好ましい。
Ab550が上記範囲であれば、可視領域の光を程よく遮光できる。そして、上記標準偏差が10%以下であれば、上述の波長範囲の特定の波長に過度の吸収ピークをもたず、その領域において全体にフラットな状態の透過スペクトルを呈する。このため、Ab550を0.1~0.8とし、上記標準偏差を、10%以下とすることで、特定の波長で過度の吸収を示さない、良好な灰色膜とすることができ、例えば固体撮像素子の灰色画素として用いたときに透過率に偏りのない良好な性能を実現することができる。
【0191】
本発明の膜(露光前の膜)および本発明の硬化膜(露光後の膜)は、膜の波長633nmの光に対する屈折率が1.20~1.65であることが好ましく、1.20~1.60であることがより好ましく、1.20~1.58がさらに好ましい。波長633nmの光の屈折率が上記範囲であれば、光の反射を抑制できるので、膜表面における光の反射を抑制できる。このため、本発明の硬化膜を、カラーフィルタの着色画素などと組み合わせて使用した場合、本発明の硬化膜の表面や、本発明の硬化膜と他の層(例えば着色画素など)との界面における光の反射などを抑制して、良好な画像認識性などが得られやすい。
【0192】
上述の特性を有する膜および硬化膜は、本発明の感放射線性組成物を用いて製造することができる。
【0193】
また、上記の特性を有する膜および硬化膜は、1層の膜(単層膜)が上記の分光特性を有していてもよく、2層以上の膜を組み合わせた多層膜により上記分光特性を満たしていてもよい。2層以上の膜を組み合わせて上記分光特性を満たす場合、例えば、各層の着色剤の濃度を高めることができ、単層膜の場合に比べて膜全体における膜厚をより薄くできることがある。また、材料設計の自由度を高めることができる。
【0194】
<<単層膜>>
上記単層膜は、着色剤の種類や配合量、紫外線吸収剤の配合量などを調整することで、達成できる。例えば、露光前の膜および露光後の膜(硬化膜)のAb550は、着色剤の含有量を変えることで、調整することができる。また、露光前の膜および露光後の膜(硬化膜)の波長400~700nmの範囲における透過率の標準偏差は、着色剤の種類を変えることで調整できる。
また露光前の膜のAb365/Ab550の比率は、各主成分の組成を変えることで調整できる。例えば、着色剤、紫外線吸収剤、光重合開始剤の種類や含有量を変えることで、Ab365/Ab550の比率を調整することができる。
【0195】
例えば、以下の(1)~(2)のいずれかの感放射線性組成物を用いることで、上記の分光特性の膜(露光前の膜)および硬化膜(露光後の膜)を製造することができる。好ましくは、(1)~(2)のいずれかの態様において、着色剤を、感放射線性組成物の全固形分に対して7~50質量%(好ましくは10~45質量%、より好ましくは、12~40質量%)含む感放射線性組成物である。感放射線性組成物の着色剤以外の組成については、上述した本発明の感光性組成物で説明したものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0196】
(1)黒色顔料を含む着色剤を用い、かつ、黒色顔料を感放射線性組成物の全固形分に対して7~50質量%(好ましくは、10~40質量%、さらに好ましくは12~30質量%)含有させる。
(2)黒色顔料を1種類以上と、有彩色顔料を1種類以上とを含む着色剤を用い、かつ、黒色顔料を感放射線性組成物の全固形分に対して5.8~43.7質量%(好ましくは、8.3~39.3質量%、さらに好ましくは10.0~35.0質量%)含有させ、有彩色顔料を感放射線性組成物の全固形分に対して1.5~17.5質量%(好ましくは、2.1~15.7質量%、さらに好ましくは2.5~15.7質量%)含有させる。
【0197】
上記(1)の態様は、黒色顔料を60質量%以上含む着色剤が好ましく、黒色顔料を80質量%以上含む着色剤がより好ましい。黒色顔料は、カーボンブラックおよびチタンブラックが好ましく、チタンブラックがより好ましい。
【0198】
上記(2)の態様は、黒色顔料を50~99質量%と、有彩色顔料を1~50質量%含む着色剤が好ましく、黒色顔料を60~90質量%と、有彩色顔料を10~40質量%含む着色剤がより好ましい。黒色顔料は、カーボンブラックおよびチタンブラックが好ましく、チタンブラックがより好ましい。有彩色顔料は、赤色顔料、オレンジ色顔料および黄色顔料から選ばれる少なくとも1種の顔料が好ましい。
【0199】
また、上記の(1)および(2)の態様において、紫外線吸収剤の含有量を、感放射線性組成物の全固形分に対して、0.01~10質量%とすることが好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。紫外線吸収剤の含有量を調整することで、Ab365/Ab550の比率を調整することもできる。Ab365/Ab550が低すぎる場合は、紫外線吸収剤の含有量を増やすことで、Ab365/Ab550の比率を高めることができる。また、Ab365/Ab550が高すぎる場合は、紫外線吸収剤の含有量を減らすことで、Ab365/Ab550の比率を下げることができる。紫外線吸収剤と着色剤との質量比は、紫外線吸収剤/着色剤=0.1~1.2が好ましく、0.1~1.0がより好ましく、0.1~0.8がさらに好ましく、0.1~0.7が特に好ましい。
【0200】
また、上記の(1)および(2)の態様において、光重合開始剤の含有量を調整することで、Ab365/Ab550の比率を調整することもできる。Ab365/Ab550が低すぎる場合は、光重合開始剤の含有量を増やすことで、Ab365/Ab550の比率を高めることができる。また、Ab365/Ab550が高すぎる場合は、光重合開始剤の含有量を減らすことで、Ab365/Ab550の比率を下げることができる。光重合開始剤と着色剤との質量比は、光重合開始剤/着色剤=0.1~1.0が好ましく、0.1~0.8がより好ましく、0.1~0.6がさらに好ましく、0.1~0.5が特に好ましい。
【0201】
また、波長633nmの光の屈折率を1.20~1.65に調整するには、例えば、高屈率折粒子の含有量が、感放射線性組成物の全固形分に対して5質量%未満(好ましくは、3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下)である感放射線性組成物を用いて製造することができる。
【0202】
上記単層膜(硬化膜)の膜厚は、特に限定はないが、0.2~1.0μmが好ましく、0.3~0.7μmがより好ましい。
【0203】
<<多層膜>>
本発明の膜が2層以上の膜を組み合わせて上記分光特性を満たす場合は、例えば、黒色顔料を含む着色剤Aを用いた第一の感放射線性組成物と、黒色顔料または有彩色顔料を含む着色剤Bを用いた第二の感放射線性組成物とを用いて製造することができる。各感放射線性組成物の着色剤以外の組成については、上述した本発明の感光性組成物で説明したものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
なお、着色剤Bが黒色顔料を含む着色剤である場合、着色剤Aが含む黒色顔料と、着色剤Bが含む黒色顔料は異なる種類であることが好ましい。例えば、着色剤Aは、黒色顔料としてチタンブラックを用い、着色剤Bは、黒色顔料としてカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0204】
上記多層膜(硬化膜)の各膜厚は、特に限定はないが、0.2~1.0μmが好ましく、0.2~0.7μmがより好ましい。各膜厚は同じであっても、異なっていても良い。
【0205】
第一の感放射線性組成物は、黒色顔料を感放射線性組成物の全固形分に対して8~50質量%含むことが好ましく、12~45質量%含むことがより好ましく、15~40質量%含むことがさらに好ましい。着色剤Aは、さらに有彩色顔料を含んでいてもよい。第一の感放射線性組成物は、以下の(a1)、(a2)が好ましい態様として挙げられる。
(a1)チタンブラックを感放射線性組成物の全固形分に対して8~50質量%含むことが好ましく、12~45質量%含むことがより好ましく、15~40質量%含むことがさらに好ましい。
(a2)カーボンブラックを感放射線性組成物の全固形分に対して8~50質量%含むことが好ましく、12~45質量%含むことがより好ましく、15~40質量%含むことがさらに好ましい。
【0206】
第二の感放射線性組成物は、黒色顔料または有彩色顔料を感放射線性組成物の全固形分に対して2~26質量%含むことが好ましく、3~24質量%含むことがより好ましく、4~22質量%含むことがさらに好ましい。第二の感放射線性組成物は、以下の(b1)~(b3)が好ましい態様として挙げられる。
(b1)有彩色顔料を感放射線性組成物の全固形分に対して2~26質量%含むことが好ましく、3~24質量%含むことがより好ましく、4~22質量%含むことがさらに好ましい。
(b2)チタンブラックを感放射線性組成物の全固形分に対して3~23質量%含むことが好ましく、4~21質量%含むことがより好ましく、5~19質量%含むことがさらに好ましい。
(b3)カーボンブラックを感放射線性組成物の全固形分に対して3~23質量%含むことが好ましく、4~21質量%含むことがより好ましく、5~19質量%含むことがさらに好ましい。
【0207】
本発明の硬化膜は、カラーフィルタに用いることができる。本発明の硬化膜を、カラーフィルタに用いる場合、カラーフィルタの着色画素と、本発明の硬化膜とを組み合わせて用いることができる。この態様によれば、より鮮明な色彩を有する画像が得られやすい。
例えば、本発明の硬化膜をカラーフィルタに用いる場合、カラーフィルタの着色画素と本発明の硬化膜とが隣接した構造が挙げられる。本発明の硬化膜は、着色画素と厚み方向で接して、本発明の硬化膜と着色画素とで積層体をなしていてもよい。積層体は、
図1に示すように、着色画素10が、本発明の硬化膜11よりも光の入射光A側に有していてもよく、
図2に示すように、本発明の硬化膜11が、着色画素10よりも光の入射光A側に有していてもよい。このように、本発明の硬化膜と着色画素とを積層して用いることで、透過光を均等に減らすという効果が期待できる。
また、本発明の硬化膜と、着色画素は、厚みに対して垂直方向に並んで両者が接していてもよい。すなわち、
図3に示すように、本発明の硬化膜11と、着色画素10とが同一平面上に並んで、両者が接していてもよい。この態様によれば、イメージセンサ(CCD、CMOSなど)の解像度の向上に伴う高解像度化に伴う感度低下の抑制(感度向上)という効果が期待できる。
なお、図中の12は支持体である。
【0208】
カラーフィルタは、CCD(電荷結合素子)やCMOS(相補性金属酸化膜半導体)等の固体撮像素子に好適に用いることができ、特に100万画素を超えるような高解像度のCCDやCMOS等に好適である。カラーフィルタは、例えば、CCDまたはCMOSを構成する各画素の受光部と、集光するためのマイクロレンズと、の間に配置して用いることができる。また、カラーフィルタは、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子用として好ましく用いることができる。有機EL素子としては、白色有機EL素子が好ましい。有機EL素子は、タンデム構造であることが好ましい。有機EL素子のタンデム構造については、特開2003-45676号公報、三上明義監修、「有機EL技術開発の最前線-高輝度・高精度・長寿命化・ノウハウ集-」、技術情報協会、326-328ページ、2008年などに記載されている。有機EL素子のタンデム構造としては、例えば、基板の一面において、光反射性を備えた下部電極と光透過性を備えた上部電極との間に有機EL層を設けた構造などが挙げられる。下部電極は、可視光の波長域において十分な反射率を有する材料により構成されていることが好ましい。有機EL層は、複数の発光層を含み、それら複数の発光層が積層された積層構造(タンデム構造)を有していることが好ましい。有機EL層は、例えば、複数の発光層には、赤色発光層、緑色発光層及び青色発光層を含むことができる。そして、複数の発光層とともに、それらは発光層を発光させるための複数の発光補助層を併せて有することが好ましい。有機EL層は、例えば、発光層と発光補助層とが交互に積層する積層構造とすることができる。こうした構造の有機EL層を有する有機EL素子は、白色光を発光することができる。その場合、有機EL素子が発光する白色光のスペクトルは、青色領域(430nm-485nm)、緑色領域(530nm-580nm)及び黄色領域(580nm-620nm)に強い極大発光ピークを有するものが好ましい。これらの発光ピークに加え更に赤色領域(650nm-700nm)に極大発光ピークを有するものがより好ましい。白色光を発光する有機EL素子(白色有機EL素子)と、本発明のカラーフィルタとを組み合わせることにより、色再現性上優れた分光が得られ、より鮮明な映像や画像を表示可能である。
【0209】
カラーフィルタにおける着色パターン(着色画素)の膜厚は、2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましく、0.7μm以下がさらに好ましい。下限は、例えば0.1μm以上とすることができ、0.2μm以上とすることもできる。
また、着色パターン(着色画素)のサイズ(パターン幅)としては、2.5μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.7μm以下が特に好ましい。下限は、例えば0.1μm以上とすることができ、0.2μm以上とすることもできる。
【0210】
本発明の硬化膜は、遮光膜に用いることもできる。遮光膜は、画像表示装置やセンサモジュール内の各種部材(例えば、赤外光カットフィルタ、固体撮像素子の外周部、ウェハーレベルレンズ外周部、固体撮像素子裏面など)などに形成して用いることができる。また、赤外光カットフィルタの表面上の少なくとも一部に、遮光膜を形成して、遮光膜付き赤外光カットフィルタとしてもよい。遮光膜の厚みは特に制限されないが、0.2~25μmが好ましく、1.0~10μmがより好ましい。上記厚みは平均厚みであり、遮光膜の任意の5点以上の厚みを測定し、それらを算術平均した値である。
【0211】
また、本発明の硬化膜は、パーソナルコンピュータ、タブレット、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラなどのポータブル機器;プリンタ複合機、スキャナなどのOA(Office Automation)機器;監視カメラ、バーコードリーダ、現金自動預け払い機(ATM)、ハイスピードカメラ、顔画像認証を使用した本人認証などの産業用機器;車載用カメラ機器;内視鏡、カプセル内視鏡、カテーテルなどの医療用カメラ機器;生体センサー、バイオセンサー、軍事偵察用カメラ、立体地図用カメラ、気象・海洋観測カメラ、陸地資源探査カメラ、宇宙の天文・深宇宙ターゲット用の探査カメラなどの宇宙用機器などに用いることができる。
【0212】
<パターン形成方法>
次に、本発明のパターン形成方法について説明する。
本発明のパターン形成方法は、本発明の感放射線性組成物を用いて支持体上に感放射線性組成物層を形成する工程と、組成物層をパターン状に露光する工程と、未露光部を現像除去してパターンを形成する工程とを経て製造することができる。さらに、必要に応じて、感放射線性組成物層をベークする工程(プリベーク工程)、および、現像されたパターンをベークする工程(ポストベーク工程)を設けてもよい。以下、各工程について詳細を述べる。
【0213】
<<感放射線性組成物層を形成する工程>>
感放射線性組成物層を形成する工程では、本発明の感放射線性組成物を用いて、支持体上に感放射線性組成物層を形成する。
【0214】
支持体としては、例えば、ガラス、シリコン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の透明基板を挙げることができる。これらの透明基板上に、有機EL素子を駆動するための薄膜トランジスタが形成されていてもよい。
また、基板上にCCD(電荷結合素子)やCMOS(相補性金属酸化膜半導体)等の固体撮像素子(受光素子)が設けられた固体撮像素子用基板を用いることができる。
【0215】
支持体上への本発明の感放射線性組成物の適用方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷法等の各種の方法を用いることができる。
【0216】
支持体上に形成した感放射線性組成物層は、加熱(プリベーク)することが好ましい。加熱は、120℃以下で行うことが好ましく、50~120℃がより好ましく、80~110℃がさらに好ましく、90~105℃が特に好ましい。加熱を120℃以下で行うことにより、画像表示装置の発光光源として有機EL素子を用いた場合や、イメージセンサーの光電変換膜を有機素材で構成した場合において、これらの特性をより効果的に維持することができる。
加熱時間は、10秒~300秒が好ましく、40~250秒がより好ましく、80~220秒がさらに好ましい。加熱は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0217】
<<<露光工程>>>
次に、支持体上に形成した感放射線性組成物層を、パターン状に露光する(露光工程)。例えば、支持体上に形成した感放射線性組成物層に対し、ステッパー等の露光装置を用いて、所定のマスクパターンを有するマスクを介して露光することで、パターン露光することができる。これにより、露光部分を硬化することができる。
露光に際して用いることができる放射線(光)としては、g線、i線等の紫外線が好ましく(特に好ましくはi線)用いられる。照射量(露光量)は、例えば、30~1500mJ/cm2が好ましく、50~1000mJ/cm2がより好ましく、50~500mJ/cm2が最も好ましい。低エネルギーでの製造と、安定製造性の両立の観点で上記範囲が好ましい。
露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、50体積%)で露光してもよい。また、露光エネルギーの照度は適宜設定することが可能であり、通常1000W/m2~100000W/m2(例えば、5000W/m2、15000W/m2、35000W/m2)の範囲から選択することができる。酸素濃度と露光照度は適宜条件を組み合わせてよく、例えば、酸素濃度10体積%で照度10000W/m2、酸素濃度25体積%で照度25000W/m2などとすることができる。
【0218】
<<<現像工程>>>
次に、未露光部を現像除去してパターンを形成する。未露光部の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、露光工程における未露光部の感放射線性組成物層が現像液に溶出し、光硬化した部分だけが残る。
現像液としては、下地の固体撮像素子や回路などにダメージを起さない、有機アルカリ現像液が望ましい。
現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。
【0219】
現像液に用いるアルカリ剤としては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ-[5、4、0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物が挙げられる。現像液は、これらのアルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましく使用される。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。
また、現像液には無機アルカリを用いてもよい。無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウムなどが好ましい。
また、現像液には、界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤の例としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。
なお、このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
【0220】
現像後、乾燥を施した後に加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。
ポストベークは、硬化を促進するための現像後の加熱処理であり、加熱温度は、例えば100~240℃が好ましい。また、画像表示装置の発光光源として有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を用いた場合や、イメージセンサーの光電変換膜を有機素材で構成した場合は、50~120℃(より好ましくは80~100℃、さらに好ましくは80~90℃)で加熱処理(ポストベーク)を行うことが好ましい。
ポストベーク処理は、現像後の膜を、上記条件になるようにホットプレートやコンベクションオーブン(熱風循環式乾燥機)、高周波加熱機等の加熱手段を用いて、連続式あるいはバッチ式で行うことができる。
【0221】
<固体撮像素子>
本発明の固体撮像素子は、上述した本発明の硬化膜(カラーフィルタ、遮光膜など)を備える。本発明の固体撮像素子の構成としては、本発明の硬化膜を備え、固体撮像素子として機能する構成であれば特に限定はないが、例えば、以下のような構成が挙げられる。
【0222】
支持体上に、固体撮像素子(CCDイメージセンサー、CMOSイメージセンサー等)の受光エリアを構成する複数のフォトダイオードおよびポリシリコン等からなる転送電極を有し、フォトダイオードおよび転送電極上にフォトダイオードの受光部のみ開口した遮光膜を有し、遮光膜上に遮光膜全面およびフォトダイオード受光部を覆うように形成された窒化シリコン等からなるデバイス保護膜を有し、デバイス保護膜上に、カラーフィルタを有する構成である。さらに、デバイス保護層上であってカラーフィルタの下(支持体に近い側)に集光手段(例えば、マイクロレンズ等。以下同じ)を有する構成や、カラーフィルタ上に集光手段を有する構成等であってもよい。また、カラーフィルタは、隔壁により例えば格子状に仕切られた空間に、各色画素を形成する硬化膜が埋め込まれた構造を有していてもよい。この場合の隔壁は各色画素に対して低屈折率であることが好ましい。このような構造を有する撮像装置の例としては、特開2012-227478号公報、特開2014-179577号公報に記載の装置が挙げられる。
【0223】
<画像表示装置>
本発明の硬化膜(カラーフィルタ、遮光膜など)は、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置などの、画像表示装置に用いることができる。表示装置の定義や各表示装置の詳細については、例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。また、液晶表示装置については、例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば、上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。
【0224】
本発明におけるカラーフィルタは、カラーTFT(Thin Film Transistor)方式の液晶表示装置に用いてもよい。カラーTFT方式の液晶表示装置については、例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。さらに、本発明はIPS(In Plane Switching)などの横電界駆動方式、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)などの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置や、STN(Super-Twist Nematic)、TN(Twisted Nematic)、VA(Vertical Alignment)、OCS(on-chip spacer)、FFS(fringe field switching)、および、R-OCB(Reflective Optically Compensated Bend)等にも適用できる。
また、本発明におけるカラーフィルタは、明るく高精細なCOA(Color-filter On Array)方式にも供することが可能である。COA方式の液晶表示装置にあっては、カラーフィルタに対する要求特性は、前述のような通常の要求特性に加えて、層間絶縁膜に対する要求特性、すなわち低誘電率および剥離液耐性が必要とされることがある。本発明のカラーフィルタは、耐光性などに優れるので、解像度が高く長期耐久性に優れたCOA方式の液晶表示装置を提供することができる。なお、低誘電率の要求特性を満足するためには、カラーフィルタ層の上に樹脂被膜を設けてもよい。
これらの画像表示方式については、例えば、「EL、PDP、LCDディスプレイ-技術と市場の最新動向-(東レリサーチセンター調査研究部門 2001年発行)」の43ページなどに記載されている。
【0225】
本発明の液晶表示装置は、本発明におけるカラーフィルタ以外に、電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角保障フィルムなど様々な部材から構成される。本発明のカラーフィルタは、これらの公知の部材で構成される液晶表示装置に適用することができる。これらの部材については、例えば、「'94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎 (株)シーエムシー 1994年発行)」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表良吉(株)富士キメラ総研、2003年発行)」に記載されている。
バックライトに関しては、SID meeting Digest 1380(2005)(A.Konno et.al)や、月刊ディスプレイ 2005年12月号の18~24ページ(島 康裕)、同25~30ページ(八木隆明)などに記載されている。
【実施例】
【0226】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」および「部」は質量基準である。
【0227】
(重量平均分子量の測定)
以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィにより重量平均分子量を測定した。
カラムの種類:TSKgel Super AWM―H(東ソー(株)製、6.0mmID(内径)×15.0cm)
展開溶媒:10mmol/L リチウムブロミドNMP(N-メチルピロリジノン)溶液
カラム温度:25℃
流量(サンプル注入量):0.6mL/min
装置名:HLC-8220(東ソー(株)製)
検量線ベース樹脂:ポリスチレン樹脂
【0228】
<分散液の調製>
(分散液1)
下記組成1に示す成分を、攪拌機(IKA社製EUROSTAR)を使用して、15分間混合し、分散混合物を得た。
<<組成1>>
・チタンブラック(三菱マテリアル製13M-T(粉体)):24部
・分散剤(樹脂)1の30質量%プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液:25部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:25部
・酢酸ブチル:26部
【0229】
分散剤1:下記構造(重量平均分子量=35000、酸価=85mgKOH/g
【化28】
【0230】
得られた分散混合物に対し、シンマルエンタープライゼス社製ビーズミルNPMならびに循環式の配管および投入タンクを使用し、下記条件にて分散処理を行って、分散液1を得た。
<<分散条件>>
ビーズ径:直径0.05mm
ビーズ充填率:60体積%
ミル周速:10m/sec
分散処理する混合液量:5000g
循環流量(ポンプ供給量):30kg/hour
処理液温度:25℃~30℃
冷却水:水道水
処理時間:30パス
【0231】
(分散液2)
下記組成2に示す成分を、攪拌機(IKA社製EUROSTAR)を使用して、15分間混合し、分散混合物を得た。得られた分散混合物に対し、分散液1の分散条件と同じ条件で分散処理を行って、分散液2を得た。
【0232】
<<組成2>>
・カーボンブラック(カーボンブラックMA-100R(三菱化成工業(株)製)):19部
・分散剤(樹脂)2の45質量%PGMEA溶液:18部
・PGMEA:63部
【0233】
【0234】
(分散液3)
分散液1において、分散剤(樹脂)1の代わりに、分散剤(樹脂)3(下記構造、重量平均分子量=20000)を用いた以外は、分散液1と同様の方法で、分散液3を得た。
【化30】
【0235】
(分散液4)
C.I.Pigment Red 254を9.6部、C.I.Pigment Yellow 139を4.3部、分散剤(樹脂)(Disperbyk-161、BYKChemie社製)を6.8部、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」と称する。)79.3部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散して、分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、分散液4を得た。
【0236】
(分散液5)
C.I.Pigment Orange 71を12.3部、顔料誘導体(下記構造)を1.1部、分散剤(樹脂)4を5.0部、PGMEAを81.6部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合および分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cm3の圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、分散液5を得た。
【0237】
【0238】
分散剤(樹脂)4:下記構造(重量平均分子量=24000)
【化32】
【0239】
<感放射線性組成物の調製>
下記表に示す材料を、下記表1に示す割合(質量%)で混合および攪拌した後、孔径0.45μmのナイロン製フィルタ(日本ポール(株)社製、DFA4201NXEY)でろ過して、感放射線性組成物を調製した。
【0240】
<評価方法>
(リソグラフィ性)
上記で得られた各感放射線性組成物を、塗布後の膜厚が0.5μmになるように、シリコンウェハ上にスピンコート法で塗布し、その後ホットプレート上で、100℃で2分間加熱して組成物層を得た。次いで、得られた組成物層に対し、i線ステッパー露光装置FPA-3000i5+(Canon(株)製)を用い、1.1μm×1.1μmのアイランドパターンを有するマスクを介して露光した。次いで、露光後の組成物層に対し、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3%水溶液を用い、23℃で60秒間パドル現像を行った。その後、スピンシャワーにてリンスを行い、さらに純水にて水洗し、パターンを得た。
得られたパターンの形状を測長SEM(商品名:S-7800H、(株)日立製作所製)を用いシリコンウェハ上から30000倍で観察し、以下の基準でリソグラフィ性を評価した。
A:パターンの線幅1.1μmとなる露光量が1000mJ/cm2以上2500mJ/cm2以下の範囲。残渣量は下地全面積の1%未満で、パターン密着性およびパターン形状問題なし。
B:パターンの線幅1.1μmとなる露光量が200mJ/cm2以上1000mJ/cm2未満。残渣量は下地全面積の1%未満で、パターン密着性およびパターン形状問題なし。
C:パターンの線幅1.1μmとなる露光量が200mJ/cm2未満。残渣量は下地全面積の1%未満で、パターン密着性およびパターン形状問題なし。
D:リソグラフィ後のパターン密着性不良。
E:パターンの線幅1.1μmとなる露光量が1000mJ/cm2以上2500mJ/cm2以下の範囲。残渣量は下地全面積の1%以上。
F:リソグラフィ後のパターン上にムラが観察された。
【0241】
<経時安定性の評価>
各感放射線性組成物をシリコンウェハ上に、塗布後の膜厚が0.5μmになるように、塗布し、その後ホットプレート上で、100℃で2分間加熱した。その基板を露光量1000mJ/cm2で露光した。さらに、ホットプレート上で200℃で8分間加熱し、硬化膜を製造した。得られた硬化膜を白灯下で40℃下に4ヶ月間静置した後、(株)島津製作所製分光器「UV-3600(商品名)」により、波長550nmにおける吸光度(OD1)を測定した。静置前の各硬化膜についても、静置後のものと同様にして吸光度(OD0)を測定した。静置保管前後の吸光度の比を下記式により算出した。
変化率(%)=(静置後の550nmにおける吸光度OD0/静置前の550nmにおける吸光度OD1)×100
以下の評価基準で経時安定性を評価した。
A:変化率が5%未満
B:変化率が5%以上10%未満
C:変化率が10%以上
【0242】
(塗布性)
各感放射線性組成物をウエハに塗布して、膜厚0.5μmの塗布膜を形成し、200rpmで60秒乾燥スピンしたのち、ウエハを1500rpmで15秒間回転させながら、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/プロピレングリコールモノメチルエーテル=1/1(質量比)の混合溶液でEBR洗浄(端面洗浄)を実施し、以下の基準で塗布性を評価した。
A:エッジ部の塗布膜形状は問題なし。
B:エッジ部の塗布膜形状が一部乱れている。
C:エッジ部の塗布膜は一部除去されずに残っている。
【0243】
【0244】
上記表に示すとおり、実施例は、リソグラフィ性に優れていた。さらには、塗布性も良好であった。また、東京エレクトロン製CLEAN TRACK ACT8を用い、実施例の組成物をウエハ200枚に塗布し、その後コーターカップをシクロヘキサノンに24時間浸漬したところ、付着した汚れを良好に除去することができ、良好な装置メンテナンス性を有していることが確認できた。
一方、比較例は、リソグラフィ性が劣っていた。さらには、塗布性も劣っていた。また、比較例の組成物を、ウエハ200枚に塗布し、その後コーターカップをシクロヘキサノンに24時間浸漬したところ、一部付着した汚れが残ってしまった。このため、実施例に比べて装置メンテナンス性が劣っていた。
【0245】
上記表に示す材料は以下の通りである。
【0246】
(後添樹脂)
B-1:下記構造(重量平均分子量=14000、酸価=77mgKOH/g)
B-2:下記構造(重量平均分子量=11000、酸価=69mgKOH/g、エチレン性不飽和結合当量=1.4mmol/g)
B-3:下記構造(重量平均分子量=12000、酸価=37mgKOH/g、エチレン性不飽和結合当量=1.1mmol/g)
【化33】
【0247】
(重合性化合物)
M-1~M-3:下記構造の化合物
【化34】
M-4: 東亜合成社製アロニックスM-510
【0248】
(光重合開始剤)
C-1~C-4:下記構造の化合物
【化35】
【0249】
【0250】
(重合禁止剤)
E-1:p-メトキシフェノール
(界面活性剤)
F-1:下記混合物(Mw=14000)
【化37】
【0251】
(有機溶剤)
G-1:シクロヘキサノン
【0252】
<膜の製造>
(実施例1~14、比較例1~4)
下記表に示す感放射線性組成物をシリコンウェハ上に、塗布後の膜厚が0.5μmになるように、塗布し、その後ホットプレート上で、100℃で2分間加熱した。その基板を露光量1000mJ/cm2で露光した。さらに、ホットプレート上で200℃で8分間加熱し、硬化膜を製造した。
【0253】
(実施例15、16)
下記表に示す1層目の感放射線性組成物をシリコンウェハ上に、塗布後の膜厚が0.25μmになるように、塗布し、その後ホットプレート上で、100℃で2分間加熱した。その基板を露光量1000mJ/cm2で露光した。さらに、ホットプレート上で200℃で8分間加熱し、膜を製造した。続いて、下記表に示す2層目の感放射線性組成物をシリコンウェハ上に、塗布後の膜厚が0.25μmになるように、塗布し、その後ホットプレート上で、100℃で2分間加熱した。その基板を露光量1000mJ/cm2で露光した。さらに、ホットプレート上で200℃で8分間加熱し、硬化膜を製造した。
【0254】
(屈折率の測定)
硬化膜の屈折率を、エリプソメトリー VUV-VASE(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製)を用いて測定した。測定温度は室温(25℃)、測定波長は633nmとした。
【0255】
(分光性能の評価)
島津製作所製分光器UV3600を用いて、膜(露光前の膜)および硬化膜(露光後の膜)の分光透過率および吸光度を測定した。測定温度は室温(25℃)とした。
標準偏差は以下の基準で評価した。
A:波長400~700nmの範囲における透過率の標準偏差が3%以下
B:波長400~700nmの範囲における透過率の標準偏差が3%を超え5%以下
C:波長400~700nmの範囲における透過率の標準偏差が5%を超え10%以下
D:波長400~700nmの範囲における透過率の標準偏差が10%を超える
分光評価は、以下の基準で評価した。
A:硬化膜の波長550nmの吸光度が0.1~0.8であり、露光前の膜の波長350nmと550nmの吸光度比が1.7~3.5であり、かつ、硬化膜の標準偏差の評価がAである。
B:硬化膜の波長550nmの吸光度が0.1~0.8、露光前の膜の波長350nmと550nmの吸光度比が1.7~3.5であり、かつ、硬化膜の標準偏差の評価がBである。
C:硬化膜の波長550nmの吸光度が0.1~0.8であり、露光前の膜の波長350nmと550nmの吸光度比が1.7~3.5であり、硬化膜の標準偏差の評価がCである。
D:硬化膜の波長550nmの吸光度が0.1~0.8であるが、露光前の膜の波長350nmと550nmの吸光度比が1.7~3.5から外れている。
E:硬化膜の波長550nmの吸光度が0.1~0.8から外れている。
【0256】
【0257】
上記表に示す通り、実施例は、分光特性に優れていた。灰色画素として好適に用いることができた。これに対し、比較例は、実施例に比べて分光特性が劣っていた。
また、実施例および比較例の硬化膜を、固体撮像素子に組み込んだところ、実施例の硬化膜を組み込んだ固体撮像素子は、比較例の硬化膜を組み込んだ固体撮像素子に比べて良好な画像認識性を有していた。
【0258】
実施例14で用いた組成物14について、有機溶剤 G-1(シクロヘキサノン)を、3-エトキシプロピオネート(東京化成工業(株)社製)の変更した以外は、実施例14と同様にして評価を行なったところ、実施例14と同様の評価結果が得られた。また、実施例14に用いた組成物14について、有機溶剤 G-1(シクロヘキサノン)を、シクロヘキサノンと3-エトキシプロピオネートとを質量比で50:50にて混合した溶剤を用いた以外は、実施例14と同様にして評価を行なったところ、実施例14と同様の評価結果が得られた。この結果から、他の有機溶剤や、有機溶剤を併用した場合でも良好な結果が得られることが予想される。
【0259】
実施例2で用いた組成物2について、塗布後の膜厚が0.1μm、0.2μm、0.4μm、0.5μm、0.7μm、0.9μm、及び1.1μm、になるように塗布した他は同様にして硬化膜を製造し、実施例2と同様に評価した。評価結果を以下に示す。
【表4】
上記結果より、膜厚を変化させても、優れたリソグラフィ性、経時安定性および塗布性を有していた。
【符号の説明】
【0260】
10:着色画素
11:硬化膜
12:支持体