(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20220510BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20220510BHJP
B41J 2/19 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J2/18
B41J2/19
(21)【出願番号】P 2018017622
(22)【出願日】2018-02-02
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】竹内 則康
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-315341(JP,A)
【文献】特開2012-006374(JP,A)
【文献】特開2017-159561(JP,A)
【文献】特開2012-035432(JP,A)
【文献】特開2017-202678(JP,A)
【文献】特開2004-017517(JP,A)
【文献】特開平07-081056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルと、
複数の前記ノズルにそれぞれ通じる複数の個別液室と、
複数の前記個別液室に通じ、
前記個別液室に前記液体を供給する供給共通液室とを備え、
前記供給共通液室のノズル配列方向両端にそれぞれヘッド外部に到
る拡張部を有する液体吐出ヘッドにおいて、
複数の拡張部のうちの少なくともひとつは、部品が接続可能な接続部と、前記接続部と前記
供給共通液室との間の流路を開閉する開閉弁とを備えた流路形成手段が接続されており、残りの拡張部は、前記液体が流れるような状態に変更不能に封止
されており、
複数の前記個別液室から前記液体が流れ込む循環共通液室を有し、
前記循環共通液室は、ヘッド外部に到る複数の循環拡張部を有しており、
複数の循環拡張部のうちの少なくともひとつは、部品が接続可能な接続部と、この接続部と前記循環共通液室との間の流路を開閉する開閉弁とを備えた流路形成手段が接続されており、残りの循環拡張部は、前記液体が流れるような状態に変更不能に封止されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記残りの拡張部または前記残りの拡張部に接続された筒状部材が潰された封止部を設けることで、前記残りの拡張部を前記液体が流れるような状態に変更不能に封止したことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記残りの拡張部の内層または前記残りの拡張部に接続された筒状部材の内層は、熱可塑性樹脂で形成されており、前記内層が溶着されて前記封止部が形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド
。
【請求項4】
請求項1
乃至3いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドにおいて、
前記循環共通液室のノズル配列方向の両端それぞれに前記循環拡張部が設けられていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
液体を吐出させる液体吐出ヘッドを備えた液体を吐出する装置において、
前記液体吐出ヘッドとして、請求項1乃至
4いずれか一項に記載の液体吐出ヘッドを用いたことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項6】
液体を吐出する複数のノズルと、複数の前記ノズルにそれぞれ通じる複数の個別液室と、複数の前記個別液室に通じる共通液室とを備え、前記共通液室は、ヘッド外部に到る複数の拡張部を有する液体吐出ヘッドを製造する液体吐出ヘッドの製造方法において、
複数の拡張部のうちの少なくともひとつに、部品が接続可能な接続部と、前記接続部と前記共通液室との間の流路を開閉する開閉弁とを備えた流路形成手段を接続する工程と、
複数の拡張部の少なくともひとつから前記共通液室へ液体を供給して液体吐出ヘッド内へ液体を充填する工程と、
前記流路形成手段が接続されていない残りの拡張部に接続された筒状部材に液体が満たされている状態で、前記筒状部材の一端と拡張部に接続された他端との間を溶着して部品接続不能な封止部を形成する工程とを有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体を吐出する装置及び液体吐出ヘッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を吐出する複数のノズルと、複数のノズルにそれぞれ通じる複数の個別液室と、複数の個別液室に通じる共通液室とを備え、共通液室は、ヘッド外部に到る複数の拡張部を有する液体吐出ヘッドが知られている。
【0003】
特許文献1には、上記液体吐出ヘッドとして、共通液室のノズル配列方向両端それぞれにヘッド外部に到る拡張部を有するものが記載されている。一方の拡張部には排出管の一端が接続されており、他方の拡張部には供給管の一端が接続されている。排出管の他端には排出側開閉弁が取り付けられている。供給管の他端にはインクを一時貯留するヘッドタンクに接続されている。このヘッドタンクには供給チューブの一端が接続されている。この供給チューブの他端には開閉弁(バルブ)を有するヘッド側供給継手が取りつけられている。
【0004】
空の液体吐出ヘッドにインクを充填する初期充填を行なうときは、インク充填ユニットのインクボトルに一端が接続されたチューブの他端に取り付けられた充填側継手をヘッド側供給継手に接続してヘッド側供給継手の開閉弁を開く。また、インク充填ユニットの廃液タンクに一端が接続されたチューブの他端に取り付けられた排出側継手を排出管の他端に取り付けられた開閉弁に接続して開閉弁を開く。次に、インクボトルのインクを送り出す。インクボトルから送り出されてインクは、供給チューブ内を移動してヘッドタンクへ流れ込む。そして、ヘッドタンクから供給管へ流れて液体吐出ヘッドに流れ込む。液体吐出ヘッドにインクが充填され、インクが廃液タンクに排出されてきたらインクの供給を停止し初期充填動作を終了する。初期充填動作終了後、開閉弁を閉じるとともに上記充填側継手を上記ヘッド側供給継手から取り外す。また、排出側開閉弁を閉じた後、排出側開閉弁から排出側継手を取り外す。各開閉弁を閉じることで各拡張部が封止され、初期充填後に液体吐出ヘッドに空気が流入したり、インクが漏れ出したりすることが抑制される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置においては、装置のコストアップに繋がるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、液体を吐出する複数のノズルと、複数の前記ノズルにそれぞれ通じる複数の個別液室と、複数の前記個別液室に通じ、前記個別液室に前記液体を供給する供給共通液室とを備え、前記供給共通液室のノズル配列方向両端にそれぞれヘッド外部に到る拡張部を有する液体吐出ヘッドにおいて、複数の拡張部のうちの少なくともひとつは、部品が接続可能な接続部と、前記接続部と前記供給共通液室との間の流路を開閉する開閉弁とを備えた流路形成手段が接続されており、残りの拡張部は、前記液体が流れるような状態に変更不能に封止されており、複数の前記個別液室から前記液体が流れ込む循環共通液室を有し、前記循環共通液室は、ヘッド外部に到る複数の循環拡張部を有しており、複数の循環拡張部のうちの少なくともひとつは、部品が接続可能な接続部と、この接続部と前記循環共通液室との間の流路を開閉する開閉弁とを備えた流路形成手段が接続されており、残りの循環拡張部は、前記液体が流れるような状態に変更不能に封止されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、装置のコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の液体吐出ヘッドの液体流路の構成を示す模式図。
【
図3】一つの個別液室をノズル配列方向と直交する方向に沿って切断した断面図。
【
図4】初期充填動作時における液体流路の一例を示す模式図。
【
図7】変形例の液体吐出ヘッドの液体流路の構成を示す模式図。
【
図8】一つの個別液室をノズル配列方向と直交する方向に沿って切断した変形例の液体吐出ヘッドの断面図。
【
図9】インク循環システムの一例を示すブロック図。
【
図10】インク循環システムの他の例を示すブロック図。
【
図11】本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部平面説明図。
【
図12】本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部側面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本実施形態の液体吐出ヘッド434の液体流路の構成を示す模式図である。
本実施形態に係る液体吐出ヘッド434には、液体たるインクを吐出する複数のノズル31と、これらノズル31に対応して複数の個別液室23とが設けられている。また、液体吐出ヘッド434は、各個別液室にインクを供給する供給共通液室12を有している。
【0010】
供給共通液室12のノズル配列方向(図中左右方向)の一端(図中右側)には、供給共通液室12からヘッドの外部にまで延びて、外部と連通する拡張部たる第一連通部121aが設けられており、他端には、拡張部たる第二連通部121bが設けられている。第一連通部121aには、第一接続管71の一端が取り付けられており、第一接続管71の他端には、接続部としての封止機能付きカップリング80の第二カップリング部材80bが取り付けられている。封止機能付きカップリング80の第一カップリング部材80aは、インクを一次貯留したヘッドタンクに一端が接続された供給管74の他端に取り付けられている。通常のインク吐出動作においては、第一連通部121aを介してヘッドタンクのインクが液体吐出ヘッド434に供給される。
【0011】
また、第二連通部121bには、第二接続管72の一端が接続されており、この第二接続管72の他端には封止部73が形成されている。この封止部73は、後述するように溶着等により潰されて形成されたものである。
【0012】
図2は、封止機能付きカップリング80の概略図である。
封止機能付きカップリング80は、第一カップリング部材80aと、第二カップリング部材80bとを有している。各カップリング部材80a,80bには、それぞれバネ80a1,80b1で付勢された開閉弁80a2,80b2が備えられている。離間時(非連結時)は開閉弁80a2,80b2が閉じた状態で流路が封止され、連結時には互いに開閉弁80a2,80b2を押し下げて開く構成となっていて、押し下げることで流路を開く構成になっている。このような封止機能付きカップリング80としては、CPC製のノンスピルカップリングなど、市販されているものを使用することができる。
【0013】
図3は、一つの個別液室23をノズル配列方向と直交する方向に沿って切断した断面図である。
図3に示すように、液体吐出ヘッド434は、供給共通液室12が形成されたフレーム1と、複数の個別液室23等が形成された流路板2と、複数のノズル31が形成されたノズル板3と、振動板6とを備えている。さらに、複数の個別液室23に対応して設けられた複数の圧力発生素子である積層圧電素子5と、積層圧電素子5を固定しているベース4とを備えている。
【0014】
上記ノズル板3は金属材料、例えば電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成したもので、インク滴を飛翔させるための微細な吐出口であるノズル31を多数形成している。このノズル31の内部形状(内側形状)は、ホーン形状(略円柱形状又は略円錘台形状でもよい。)に形成している。また、このノズル31の径はインク滴出口側の直径で約20[μm]~35[μm]である。また各列のノズルピッチは150[dpi]とした。
【0015】
このノズル板3のインク吐出面(ノズル表面側)は、撥水性の表面処理を施した撥水処理層を設けている。例えば、PTFE-Ni共析メッキやフッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチなど)を蒸着コートしたもの、シリコン系樹脂・フッ素系樹脂の溶剤塗布後の焼き付け等、インク物性に応じて選定した撥水処理層を設けている。これにより、インクの滴形状、飛翔特性を安定化し、高品位の画像品質を得られるようにしている。
【0016】
上記流路板2は、ノズル板3に積層される形で設けられており、複数の個別液室23のほかに、供給共通液室12から個別液室23へインクを導入する複数の導入部20、振動板6のダンパ64に対応する凹状のダンパ室24を有している。このダンパ室24は、ダンパ64を挟んで供給共通液室12に対向する。また、流路板2は、個別液室23と導入部20との間に供給流体抵抗部21を有している。
【0017】
流路板2は、シリコン単結晶基板を用いて、個別液室23、導入部20およびダンパ室24をエッチング工法でパターニングして形成している。また、この液体吐出ヘッド434ではエッチング幅を狭くする部分を設けて、これを供給流体抵抗部21とした。
【0018】
上記振動板6は、流路板2に積層される形で設けられており、薄膜のダイヤフラム部62と、これの中央部に形成した積層圧電素子5と接合する島状凸部61と、供給共通液室12と導入部20とを連通するインク流入口63と、薄膜のダンパ64とを有している。薄膜のダイヤフラム部62、島状凸部61と、インク流入口63は、個別液室23に対応させて複数有している。
【0019】
積層圧電素子5は、島状凸部61に接着層7を介して接合されている。積層圧電素子5は、厚さ10[μm]~50[μm]/1層のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の圧電層と、厚さ数[μm/1層]の銀・パラジューム(AgPd)からなる内部電極層とを交互に積層している。内部電極層は両端で外部電極に接続する。積層圧電素子5はハーフカットのダイシング加工により櫛歯状に分割され、1つ毎に駆動部と支持部(非駆動部)として使用する。外部電極の外側はハーフカットのダイシング加工で分割されるように、切り欠き等の加工により長さを制限しており、これらは複数の個別電極となる。他方はダイシング加工では分割されずに導通しており共通電極となる。
【0020】
積層圧電素子5の個別電極にはFPC(フレキシブルプリント回路)が半田接合されている。また、共通電極は積層圧電素子5の端部に電極層を設けて回し込んでFPCのGnd電極に接合している。FPCにはヘッド制御部であるヘッドドライバが実装されており、これにより駆動部への駆動電圧印加を制御している。
【0021】
積層圧電素子5を固定しているベース4は、チタン酸バリウム系セラミックからなり、積層圧電素子5を2列配置して接合している。また、供給共通液室12が形成されたフレーム1は樹脂成形で作製している。また、このフレーム1のノズル配列方向両端に、供給共通液室12の壁の外周面である上面に到るように形成された第一連通部121aと第二連通部121bも形成されている。
【0022】
このように構成した液体吐出ヘッド434においては、記録信号に応じて積層圧電素子5に駆動パルスで構成される駆動波形(10[V]~50[V]のパルス電圧)を印加する。これによって、積層圧電素子5に積層方向の変位が生起し、振動板6を介して個別液室23が加圧されて圧力が上昇し、ノズル31からインク滴が吐出される。その後、インク滴吐出の終了に伴い、個別液室23内のインク圧力が低減し、インクの流れの慣性と駆動電圧(駆動パルス)の放電過程によって個別液室23内に負圧が発生してインク充填工程へ移行する。具体的には、供給共通液室12のインクが、供給共通液室12からインク流入口63を経て供給流体抵抗部21を通り、個別液室23内に充填される。
【0023】
供給流体抵抗部21は、吐出後の残留圧力振動の減衰に効果がある反面、表面張力による最充填(リフィル)に対して抵抗になる。供給流体抵抗部21を適宜に選択することで、残留圧力の減衰とリフィル時間のバランスが取れ、次のインク滴吐出動作に移行するまでの時間(駆動周期)を短くできる。
【0024】
次に、液体吐出ヘッド434にインクを充填する初期充填動作について説明する。
【0025】
図4は、初期充填動作時における液体流路の一例を示す模式図である。
液体吐出ヘッド434の第一連通部121aに、一端に封止機能付きカップリング80の第二カップリング部材80bが取り付けられた第一接続管71の他端を接続する。これにより、第一連通部121aに、接続部たるカップリング部材と、カップリング部材と供給共通液室との間の流路を開閉する開閉弁80b2とを備えた流路形成手段が接続される。また、第二連通部121bに、第二接続管72の一端を接続する。次に、第二接続管72の他端を、廃液タンク82に接続し、第二カップリング部材80bを、インク液貯留部81に接続された供給管83の先端に取り付けられた第一カップリング部材80aに接続する。なお、第二接続管72の他端を、インク液貯留部81に接続し、第二カップリング部材80bを、廃液タンク82に接続された管の先端に取り付けられた第一カップリング部材に接続する構成でもよい。
【0026】
次に、インク液貯留部内のインクを、ポンプ等により流し、第一連通部121aを介して供給共通液室12へインクを供給する。すると、供給共通液室12や各個別液室23にインクが流れ込み、供給共通液室12や各個別液室23にインクが満たされていく。また、供給共通液室内の空気が、第二連通部121b、第二接続管72を通って廃液タンク82に排出される。
【0027】
供給共通液室12に液体が満たされると、第二連通部121bからインクが排出され、廃液タンク82へ排出される。そして、廃液タンク82にインクが排出されたら、液体吐出ヘッド434へのインク供給を停止する。これにより、確実なインクの充填を行なうことができ、液体吐出ヘッド内に空気が残留するのを抑制することができる。また、この例では、廃液タンク82にインクが排出されたら、液体吐出ヘッド434へのインク供給を停止しているが、例えば、廃液タンク82へ排出されるインクに空気が含まれなくなって所定量インクを排出してからインク供給を停止するようにしてもよい。
【0028】
また、供給共通液室12の両端に連通部を設け、一端の連通部からインクを供給し、他端の連通部からインクを排出することで、効率よく液体吐出ヘッド434内の空気を排出することができ、液体吐出ヘッド内に空気が残留するのを良好に抑制することができる。
【0029】
図5は、初期充填後の作業について説明する図である。
第二カップリング部材80bを、インク液貯留部81の第一カップリング部材80aから取り外す。また、第二接続管72を、変形させて潰して液体が流れるような状態に変更不能な封止部73を形成するともに、封止部73を形成した箇所から、第二接続管72を切断する。封止部73は、第二連通部121bの近傍に形成するのが好ましい。封止部73を第二連通部121bの近傍に形成することで、第二接続管72が液体を吐出する装置内で邪魔になるのを抑制することができる。
【0030】
第二接続管72の材質がチューブなどの熱可塑性樹脂の場合は、熱溶着を行うことで封止部73を形成し、かつ、封止部73を形成した箇所から第二接続管72を切断することができる。また、第二接続管72が金属などの場合は、圧着により封止部73を形成することができる。また、第二接続管72の封止部73を形成する箇所のみを金属管とし、その金属管を圧着して封止部73を形成してもよい。なお、封止のし易さ等の観点から、金属の圧着による封止よりも、熱可塑性樹脂の熱溶着による封止の方が好ましい。
【0031】
また、熱可塑性樹脂の熱溶着としては、例えば、折り曲げるなどして潰した第二接続管72の箇所に熱を直接加えて熱溶着してもよいし、潰した箇所の管の内周面を超音波振動させて摩擦熱により溶着する超音波溶着を用いてもよい。超音波溶着は、熱を直接加えて熱溶着する方法に比べて、短時間で溶着が行えるなどの利点があり、超音波溶着で溶着するのが好ましい。
【0032】
これにより、先の
図1に示した、第一連通部121aに第一接続管71と第二カップリング部材80bとを備えた流路形成手段が接続され、第二連通部121bに先端が潰されて液体が流れるような状態に変更不能な封止部73が形成された第二接続管72が接続された液体吐出ヘッドが製造される。
【0033】
上記のようにして製造された液体吐出ヘッド434は、第一連通部121aは第二カップリング部材80bにより封止され、第二連通部121bは第二接続管72の封止部73により封止されるので、これら連通部から空気が入り込むことがない。このようにして製造された液体吐出ヘッドを、液体を吐出する装置に取り付けた後、第二カップリング部材80bを、一端がヘッドタンクに接続された管の他端に取り付けた第一カップリング部材に接続する。これにより、ノズルから吐出されて消費されたインク液がヘッドタンクから液体吐出ヘッド434に補給される。
【0034】
図6は、従来の液体吐出ヘッド434’を示している。
従来においては、第一連通部121a、第二連通部121bそれぞれに接続管と第二カップリング部材80bとで構成された流路形成手段が接続されていた。そして、第一連通部121aおよび第二連通部121bのいずれか一方の第二カップリング部材80bをインク液貯留部81に接続された管の先端に取り付けられた第一カップリング部材に接続し、他方の第二カップリング部材80bを廃液タンク82に接続された管の先端に取り付けられた第一カップリング部材に接続して初期充填動作を実行する。初期充填動作が終了したら、第一連通部121a、第二連通部121bの第二カップリング部材を第一カップリング部材から取り外すことで、インクが充填された液体吐出ヘッドを得ることができる。第一連通部121a、第二連通部121bは、第二カップリング部材により封止されるので、第一連通部121a、第二連通部121bから空気が入り込むことがない。
【0035】
しかしながら、従来の液体吐出ヘッドにおいては、第一連通部121aと第二連通部121bの両方に封止機能付きのカップリング部材を備えた流路形成手段が接続されるため、装置のコストアップに繋がるという課題がある。また、封止機能付きのカップリング部材を両方に設けることで、装置の大型化に繋がるという課題もある。
【0036】
一方、本実施形態においては、第二連通部121bには、先端を潰して封止部73とした第二接続管72が接続されるので、
図6に示す従来の構成に比べて部品点数を削減することができ、装置のコストアップを抑えることができ、かつ、装置の大型化を抑制することができる。
【0037】
なお、初期充填動作前に、先端を潰して封止部73とした第二接続管72を接続した場合は、液体吐出ヘッド内の空気を良好に抜けず第二接続管72に空気が残留してしまう。また、初期充填動作後に、第二接続管72から、先端を潰して封止部73が形成された管を付け替えた場合も、付け替え時に空気が入り込み、管に空気が残留してしまう。本実施形態のように、初期充填動作終了後に、第二接続管72を潰して封止部73を形成することで、第二接続管72に空気が残留することがなく、第二接続管72をインクで満たすことができる。言い換えれば、第二接続管72がインクで満たされていれば、初期充填後に封止部73を形成したと判断することができる。
【0038】
また、本実施形態では、第二接続管72を潰して液体が流れるような状態に変更不能な封止部を形成しているが、第二連通部121bを潰して液体が流れるような状態に変更不能な封止部を形成してもよい。この構成においては、第二接続管72も不要となり、さらなるコストダウンを図ることができる。なお、共通液室から凸状に拡張された部分があれば、その部分が、連通部121bを潰して液体が流れるような状態に変更不能な封止部を形成したものと判断することができる。
【0039】
また、本実施形態では、接続部たるカップリング部材に開閉弁を設けているが、カップリング部材と開閉弁とを別々に設けた構成でもよい。また、第一連通部121aに接続される流路形成手段を、第一接続管71の先端に開閉弁を設け、この開閉弁に接続部としての接続パイプを設けた構成でもよい。
【0040】
また、連通部を3つ以上設けてもよい。かかる構成においては、インク吐出動作において、ヘッドタンクからインクが供給される連通部には、先端に部品が接続可能な接続部を有し、この接続部と連通部との間の流路を開閉する開閉弁とを備えた流路系背手段を接続し、残りの連通部を部品着脱不能に封止する。
【0041】
次に、変形例について説明する。
【0042】
図7は、変形例の液体吐出ヘッドの液体流路の構成を示す模式図であり、
図8は、一つの個別液室23をノズル配列方向と直交する方向に沿って切断した変形例の液体吐出ヘッドの断面図である。
この変形例の液体吐出ヘッドは、個別液室23からインクが流れ込む循環共通液室50を有しており、この循環共通液室50に流れ込んだインクを、ヘッドタンクへ戻して、インクを循環させるインク循環型の液体吐出ヘッドである。循環共通液室50は、
図8に示すように、供給共通液室12が形成されたフレーム1に形成されている。
【0043】
また、循環共通液室50のノズル配列方向(図中左右方向)の他端(図中左側)には、液体吐出ヘッドの外周面に到り外部と連通する循環拡張部たる第一循環連通部151aが設けられており、一端(図中右側)には、循環拡張部たる第二循環連通部151bが設けられている。第一循環連通部151aには、一端に封止機能付きカップリング80の第二カップリング部材80bが取り付けられた第一循環接続管91の他端が取り付けられており、第二循環連通部151bには、潰されて形成された封止部93を先端に備えた第二循環接続管92が取り付けられている。第二カップリング部材80bは、ヘッドタンクに接続された循環管の先端に取り付けられた第一カップリング部材に接続されている。
【0044】
第一連通部121aを、ノズル配列方向の一端側に設け、第一循環連通部151aをノズル配列方向の他端側に設けているが、これに限られるものではなく、第一連通部121aと第一循環連通部151aとを、ノズル配列方向の一端側に設けてもよい。しかし、第一連通部121aと第一循環連通部151aとを互いに異なる端部側に設けることで、ノズル配列方向一端側と他端側とでそれぞれ封止機能付きカップリング80が、ひとつずつ配置されることになり、バランスのとれた配置にすることができ、好ましい。
【0045】
吐出動作により、ノズル31から気泡を巻き込んだり、十分に脱気されていなかったインクが使用されたりすることによって、個別液室23に気泡が混入することがある。このように個別液室23に気泡が滞留すると、インク吐出時の圧力変化が緩和されてしまい、十分な速度が得られないなど吐出特性に影響を及ぼす。また、液体吐出ヘッド434では、インクが長い時間、吐出されずに滞留していると、ノズル31から揮発成分が揮発して粘度が上昇し、吐出特性が変化したり、ノズル31の周りに固着したりして、吐出曲がりなどの要因となる。
【0046】
そのため、この変形例では、循環共通液室50を設け、個別液室23内の気泡や粘度が上昇したインクを循環共通液室50へ流し、循環共通液室50からヘッドタンクへインクを戻してインクを循環させている。
【0047】
図9は、インク循環システムの一例を示すブロック図である。
図9に示すように、インク循環システムは、メインタンク410、液体吐出ヘッド434、ヘッドタンク435、供給側ポンプ438a、循環側ポンプ438b、送液ポンプ438c、供給側圧力センサ439a及び循環側圧力センサ439bなどで構成されている。供給側圧力センサ439aは、供給側ポンプ438aと液体吐出ヘッド434との間に設けられている。また、循環側圧力センサ439bは、液体吐出ヘッド434と循環側ポンプ438bとの間に設けられている。そして、供給側圧力センサ439aで正圧、循環側圧力センサ439bで負圧が検知されるように、供給側ポンプ438a及び循環側ポンプ438bでインクを流す。これにより、ヘッドタンク435から第一連通部121aを通って供給共通液室12に流入する。供給共通液室12に流入したインクは、個別液室23を通って、循環共通液室50へ流れ、第一循環連通部151aから排出されてヘッドタンク435に戻るように、インクが循環する。この例では、ポンプによりインクを循環させているが、例えば、ヘッドタンク435内に加圧空気を送り込んでインクを加圧することでインクを循環させてもよい。
【0048】
また、供給側圧力センサ439aが一定正圧、循環側圧力センサ439bが一定負圧となるように、供給側ポンプ438a及び循環側ポンプ438bを常に制御し続ける。これにより、液体吐出ヘッド434内を通ってインクを循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。
【0049】
このように、インクを循環させることで、液体吐出ヘッド434内の気泡が、インクとともに第一循環連通部151aから排出され、液体吐出ヘッド434内の気泡を取り除くことができる。また、ノズル31から揮発成分が揮発して粘度上昇したインクを、第一循環連通部151aから排出することができる。これにより、良好な吐出特性を維持することができる。また、定期的に液滴を吐出させることで常にノズル31近傍の液滴の状態を吐出に適した状態に維持するものに比べて、インクの無駄な消費がなくなり、ランニングコストの上昇を抑えることができる。
【0050】
また、液体吐出ヘッド434のノズル31から液滴を吐出すると、ヘッドタンク435内のインク量が減少していくため、適宜メインタンク410から送液ポンプ438cを用いて、ヘッドタンク435にインクを補充することが望ましい。メインタンク410からヘッドタンク435へのインク補充のタイミングは、ヘッドタンク435内のインクの液面高さが所定高さよりも下がったらインク補充を行うなど、ヘッドタンク435内に設けた液面センサなどの検知結果によって制御することができる。
【0051】
図10は、インク循環システムの他の例を示すブロック図である。
図10に示す液体循環システム530は、メインタンク502、液体吐出ヘッド434、供給タンク531、循環タンク532、コンプレッサ533、真空ポンプ534、第一送液ポンプ535、第二送液ポンプ536、供給側圧力センサ537、循環側圧力センサ538、レギュレータ(R)539a,539bなどで構成されている。供給側圧力センサ537は、供給タンク531と液体吐出ヘッド434との間に配置されている。循環側圧力センサ538は、液体吐出ヘッド434と循環タンク532との間に接続されている。
【0052】
循環タンク532の一方は、第一送液ポンプ535を介して供給タンク531と接続されており、循環タンク532の他方は第二送液ポンプ536を介してメインタンク502と接続されている。これにより、供給タンク531から液体吐出ヘッド434内にインクが流入し、液体吐出ヘッドから循環タンク532へインクが排出される。そして、さらに第一送液ポンプ535によって循環タンク532から供給タンク531へ液体が送られることによって液体が循環する。また、供給タンク531にはコンプレッサ533がつなげられており、供給側圧力センサ537で所定の正圧が検知されるように制御される。一方、循環タンク532には真空ポンプ534がつなげられており、循環側圧力センサ538で所定の負圧が検知されるよう制御される。これにより、液体吐出ヘッド434内を通って液体を循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。
【0053】
また、液体吐出ヘッド434のノズル31から液体を吐出すると、供給タンク531及び循環タンク532内の液体量が減少していく。そのため、適宜メインタンク502から第二送液ポンプ536を用いて、メインタンク502から循環タンク532に液体を補充することが望ましい。メインタンク502から循環タンク532への液体補充のタイミングは、循環タンク532内のインクの液面高さが所定高さよりも下がったら液体補充を行うなど、循環タンク532内に設けた液面センサなどの検知結果によって制御することができる。
【0054】
この変形例の液体吐出ヘッドの初期充填は、液体吐出ヘッド434の第一連通部121aに、一端に封止機能付きカップリング80の第二カップリング部材80bが取り付けられた第一接続管71の他端を取り付け、第二連通部121bに、熱可塑性樹脂からなる第二接続管72の一端を取り付ける。次に、第二接続管72の他端を、廃液タンク82に接続し、第二カップリング部材80bを、インク液貯留部81に接続された管の先端に取り付けられた第一カップリング部材80aに接続する。
【0055】
同様に、液体吐出ヘッド434の第一循環連通部151aに、一端に第二カップリング部材80bが取り付けられた第一循環接続管9の他端を取り付け、第二循環連通部151bに、熱可塑性樹脂からなる第二循環接続管92の一端を接続する。次に、第二循環接続管92の他端を、廃液タンク82に接続し、第二カップリング部材80bを、インク液貯留部81に接続された管の先端に取り付けられた第一カップリング部材80aに接続する。
【0056】
次に、インク液貯留部内のインクを、ポンプ等により流し、供給共通液室12と循環共通液室50へインクを供給する。すると、供給共通液室12、循環共通液室50および各個別液室23にインクが流れ込み、供給共通液室12、循環共通液室50および各個別液室23にまた、供給共通液室内の空気が、第二連通部121bから排出され、循環共通液室50の空気が第二循環連通部151bから排出される。次に、第二接続管72と第二循環接続管92から廃液タンク82へインクが排出されたら、インクの供給を停止する。そして、第二接続管72の第二連通部121bの近傍と、第二循環接続管92の第二循環連通部151bの近傍をそれぞれ潰して溶着し、封止部73,93を形成する。
【0057】
第二連通部121bと第二循環連通部151bがないインク循環型の液体吐出ヘッドでは、液体吐出ヘッドにインクを良好に充填することができず、供給共通液室12や循環共通液室50に空気が残留してしまう。具体的には、第二連通部121bと第二循環連通部151bがないインク循環型の液体吐出ヘッドにおいては、供給共通液室12の連通部を、インク液貯留部81に接続し、循環共通液室50の連通部を廃液タンク82に接続して、初期充填を行なうことになる。しかし供給共通液室12の下方に配置された各個別液室23が、供給共通液室12へ供給されたインクにより満たされてしまうと、供給共通液室12内の空気の逃げ場なくなってしまい、供給共通液室12内に空気が残留してしまう。また、各個別液室23から循環共通液室50へ流れたインクは、循環共通液室50の連通部へ向けて流れていくため、循環共通液室50の連通部から離れた箇所では、インクが滞留し、空気を押し流すことができず、循環共通液室50に空気が残留するおそれがある。
【0058】
一方、この変形例では、供給共通液室12の両端に連通部を設けることで、一方の連通部からインクを供給しながら、他方の連通部から供給共通液室の空気を排出することができる。これにより、供給共通液室12に空気が残留するのを抑制できる。また、循環共通液室50の両端に循環連通部を設けることで、一方の循環連通部からインクを供給しながら他方の循環連通部からインクを排出することで、循環共通液室50の一端から他端へ向けてインクを流すことができ、インクの流れで循環共通液室内の空気を、良好に排出することができる。これにより、循環共通液室内に空気が残留するのを抑制することができる。
【0059】
また、変形例でも、初期充填後に第二接続管72と、第二循環接続管92を潰して液体が流れるような状態に変更不能な封止部を形成することで、初期充填後に第二連通部121bや第二循環連通部151bから空気が入り込むのを防止することができる。また、コストダウンを図ることができ、かつ、装置の大型化を抑制することができる。
【0060】
また、第二連通部121bと第二循環連通部151bを潰して封止部を形成してもよい。また、循環連通部を3つ以上設けてもよい。インク吐出動作において、ヘッドタンクへインクを戻すための循環連通部には、先端に部品が接続可能な接続部を有し、この接続部と上記循環連通部との間の流路を開閉する開閉弁とを備えた流路形成手段を接続し、残りの循環接続部を、部品着脱不能に封止する。
【0061】
次に、実施形態に係る液体吐出ヘッド434を適用可能な液体を吐出する装置の一例を、
図11及び
図12を参照して説明する。
図11は本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部平面説明図であり、
図12は本実施形態に係る液体を吐出する装置の要部側面説明図である。この液体を吐出する装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構593によって、キャリッジ503は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構593は、ガイド部材501、主走査モータ505、及び、タイミングベルト508等で構成されている。ガイド部材501は、装置長手方向両側に設けられた側板591A,591Bに架け渡されており、キャリッジ503を移動可能に保持している。キャリッジ503は、主走査モータ505によって、駆動プーリ506と従動プーリ507との間に架け渡したタイミングベルト508を介して装置長手方向である主走査方向に往復移動される。
【0062】
このキャリッジ503には、複数の液体吐出ヘッド434を搭載した液体吐出ユニット540が設けられている。液体吐出ユニット540は、液体吐出ヘッド434は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド434は、複数のノズル31からなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0063】
液体を吐出する装置は、用紙510を搬送するための搬送機構595を備えている。搬送機構595は、搬送手段である搬送ベルト512、搬送ベルト512を駆動するための副走査モータ516などで構成されている。搬送ベルト512は、用紙510を吸着して液体吐出ヘッド434に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト512は、無端状ベルトであり、搬送ローラ513とテンションローラ514との間に掛け渡されている。搬送ベルト512への用紙510の吸着は、静電吸着あるいはエアー吸引などで行うことができる。搬送ベルト512は、副走査モータ516によってタイミングベルト517及びタイミングプーリ518を介して搬送ローラ513が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0064】
キャリッジ503の主走査方向の一方側には、搬送ベルト512の側方に液体吐出ヘッド434の維持回復を行う維持回復機構520が配置されている。維持回復機構520は、例えば液体吐出ヘッド434のノズル面(ノズル31が形成された面)をキャッピングするキャップ部材521や、ノズル面を払拭するワイパ部材522などで構成されている。
【0065】
主走査移動機構593、維持回復機構520、及び、搬送機構595は、側板591A,591B及び背板591Cなどで構成される筐体に取り付けられている。このように構成した、液体を吐出する装置においては、用紙510が搬送ベルト512上に給紙されて吸着され、搬送ベルト512の周回移動によって用紙510が副走査方向に搬送される。そして、キャリッジ503を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド434を駆動することにより、停止している用紙510に液体を吐出して画像を形成する。このように、液体を吐出する装置では、液体吐出ヘッド434を備えているので、高画質画像を安定して形成することができる
【0066】
次に、液体吐出ユニット540の他例について
図13を参照して説明する。
図13は同ユニットの要部平面説明図である。この液体吐出ユニット540は、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板591A,591B及び背板591Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構593と、キャリッジ503と、液体吐出ヘッド434とで構成されている。なお、この液体吐出ユニット540の例えば側板591Bに、前述した維持回復機構520の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニット540を構成することもできる。
【0067】
本実施形態において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0068】
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、供給循環機構、キャリッジ、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0069】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドと供給循環機構が一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットの供給循環機構と液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ユニットとして、供給循環機構若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものとする。
【0070】
「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドまたは液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0071】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0072】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0073】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30[mPa・s]以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどである。これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0074】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。また、「液体を吐出する装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で、用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置がある。また、原材料を溶液中に分散した組成液をノズルを介して噴射させて、原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0075】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
インクなど液体を吐出する複数のノズル31と、複数のノズルにそれぞれ通じる複数の個別液室23と、複数の個別液室23に通じる供給共通液室12などの共通液室とを備え、共通液室は、ヘッド外部に到る複数の連通部121a,121bなどの拡張部を有する液体吐出ヘッドにおいて、複数の拡張部のうちの少なくともひとつは、部品が接続可能なカップリング部材などの接続部と、前記接続部と前記共通液室との間の流路を開閉する開閉弁80b2とを備えた流路形成手段(本実施形態では、第一接続管71と開閉弁80b2を有する第二カップリング部材80bとで構成)が接続されており、残りの拡張部は前記液体が流れるような状態に変更不能に封止した。
先の特許文献1に記載の液体吐出ヘッドにおいては、すべての拡張部に、継手などの接続部と開閉弁とを備えた流路形成手段が連結されており、コストアップに繋がる。
そこで、態様1では、複数の拡張部のうちの少なくともひとつには、部品が接続可能なカップリング部材などの接続部と、接続部と共通液室との間の流路を開閉する開閉弁とを備えた流路形成手段を接続し、残りの拡張部は、前記液体が流れるような状態に変更不能に封止した。液体が流れるような状態に変更不能、すなわち、流れが生じない状態しか取りえない封止は、拡張部や、拡張部に接続されたチューブなどの筒状部材を、初期充填後に潰して封止部を形成することで得ることができる。このようにして、拡張部を液体が流れるような状態に変更不能に封止することで、初期充填後に拡張部から共通液室に空気などが入り込むのを抑制できる。また、すべての拡張部に接続部と開閉弁とを備えた流路形成手段を接続するものに比べて、装置のコストダウンを図ることができる。
また、複数の拡張部のうちの少なくともひとつは、接続部と開閉弁とを備えた流路手段を接続することで、液体を吐出する動作を行なうときは、この接続部に液体供給手段を接続することで、液体の吐出により消費された液体を液体吐出ヘッドに補給することができる。
【0076】
(態様2)
態様1において、第二連通部121bなどの残りの拡張部または残りの拡張部に接続された第二接続管72などの筒状部材が潰された封止部73を設けることで、残りの拡張部を液体が流れるような状態に変更不能に封止した。
これによれば、実施形態で説明したように、初期充填動作後に第二接続管72などの筒状部材または第二連通部121bなどの残りの拡張部を潰して、封止部73を形成することができ、例えば、キャップ部材などで筒状部材や残りの拡張部を塞いで封止するものに比べて、残りの拡張部を介してヘッド内に空気を入り込むなどの不具合が生じるのを抑制することができる。
【0077】
(態様3)
態様2において、第二連通部121bなどの残りの拡張部の内層または拡張部に接続された第二接続管72などの筒状部材の内層は、熱可塑性樹脂で形成されており、前記内層が溶着されて前記封止部73が形成されている。
これによれば、実施形態で説明したように、金属を圧着して封止部73を形成するよりも容易に封止部73を形成するこができる。
【0078】
(態様4)
態様1乃至3いずれかにおいて、共通液室は、個別液室23にインクなどの液体を供給する供給共通液室12であり、供給共通液室12のノズル配列方向両端それぞれに連通部などの拡張部が形成されている。
これによれば、実施形態で説明したように、初期充填時において、供給共通液室12のノズル配列方向一端の連通部などの拡張部からインクなどの液体を供給しながら、他端の拡張部から供給共通液室内の空気を排出することができ、供給共通液室12に空気が残留するのを抑制して良好に供給共通液室12に液体を充填することができる。
【0079】
(態様5)
態様4において、複数の個別液室23からインクなどの液体が流れ込む循環共通液室50を有し、循環共通液室50は、ヘッド外部に到る複数の循環連通部151a,151bなどの循環拡張部を有しており、複数の循環拡張部のうちの少なくともひとつは、部品が接続可能な第二カップリング部材80bなどの接続部と、接続部と循環共通液室50との間の流路を開閉する開閉弁80b2とを備えた流路形成手段(本実施形態では、第一循環接続管91と、開閉弁を有する第二カップリング部材とで構成)が接続されており、残りの循環拡張部は、液体が流れるような状態に変更不能に封止されている。
これによれば、変形例で説明したように、初期充填時においては、複数の循環拡張部の少なくともひとつから液体を供給しながら、残りの循環拡張部から空気を排出して、循環共通液室50に液体を充填することができ、循環共通液室50に空気が残留するのを抑制することができる。
また、初期充填後は、上記残りの循環拡張部や、上記残りの循環拡張部に接続された第二循環接続管92などの筒状部材を潰して封止することにより、空気が入り込むことなく、部品が接続不能に封止することができる。また、すべての循環拡張部に接続部と開閉弁とを備えた流路形成手段を接続するものに比べて、装置のコストダウンを図ることができる。
また、複数の循環拡張部のうちの少なくともひとつは、接続部と開閉弁とを備えた流路形成手段を接続することで、液体を吐出する動作を行なうときは、この接続部にヘッドタンクへ戻すための流路形成部材を接続することで、液体吐出ヘッド内の液体を循環させることができる。
【0080】
(態様6)
態様5において、循環共通液室50のノズル配列方向の両端それぞれに循環連通部151a,151bなどの循環拡張部が設けられている。
これによれば、変形例で説明したように、初期充填において、循環共通液室50のノズル配列方向一端の循環連通部などの循環拡張部からインクなどの液体を供給しながら、ノズル配列方向他端の循環連通部などの循環拡張部から循環共通液室50内の空気を排出することができ、良好に循環共通液室内に液体を充填することができ、循環共通液室50に空気が残留するのを抑制することができる。
【0081】
(態様7)
液体を吐出させる液体吐出ヘッド434を備えた液体を吐出する装置において、前記液体吐出ヘッドとして、態様1乃至6いずれかの液体吐出ヘッドを用いた。
これによれば、装置のコストダウンを図ることができ、かつ、装置の大型化を抑制することができる。
【0082】
(態様8)
液体を吐出する複数のノズル31と、複数の前記ノズル31にそれぞれ通じる複数の個別液室23と、複数の前記個別液室23に通じる供給共通液室12などの共通液室とを備え、共通液室は、ヘッド外部に到る複数の連通部121a,121bなどの拡張部を有する液体吐出ヘッドを製造する液体吐出ヘッドの製造方法において、複数の拡張部のうちの少なくともひとつに、部品が接続可能な第二カップリング部材80bなどの接続部と、接続部と共通液室との間の流路を開閉する開閉弁80b2とを備えた流路形成手段を接続する工程と、複数の拡張部の少なくともひとつから共通液室へ液体を供給して液体吐出ヘッド内へ液体を充填する工程と、流路形成手段が接続されていない第二連通部121bなどの残りの拡張部に、液体が流れるような状態に変更不能な封止部73を形成する工程とを有する。
これによれば、実施形態で説明したように、液体吐出ヘッド内に空気が入り込むのを抑制し、かつ、安価に液体吐出ヘッドを製造することができる。
【0083】
(態様9)
態様8において、第二連通部121bなどの残りの拡張部、または、前記残りの拡張部に接続された第二接続管72などの筒状部材を溶着により溶着して前記封止部73を形成した。
これによれば、実施形態で説明したように、容易に封止部を形成することができる。
【符号の説明】
【0084】
12 :供給共通液室
23 :個別液室
31 :ノズル
50 :循環共通液室
71 :第一接続管
72 :第二接続管
73 :封止部
74 :供給管
80 :封止機能付きカップリング
80a :第一カップリング部材
80b :第二カップリング部材
81 :インク液貯留部
82 :廃液タンク
91 :第一循環接続管
92 :第二循環接続管
93 :封止部
121a :第一接続部
121b :第二接続部
151a :第一循環接続部
151b :第二循環接続部
434 :液体吐出ヘッド
435 :ヘッドタンク
【先行技術文献】
【特許文献】
【0085】