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特許7068655高強度コンクリート組成物、及び、高強度コンクリート硬化体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】高強度コンクリート組成物、及び、高強度コンクリート硬化体
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20220510BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/14 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018110323
(22)【出願日】2018-06-08
(65)【公開番号】P2019210200
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】亀島 博之
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-051682(JP,A)
【文献】特開2014-169213(JP,A)
【文献】特開平07-041348(JP,A)
【文献】特開2016-098140(JP,A)
【文献】特開2009-227558(JP,A)
【文献】特開2013-159548(JP,A)
【文献】特開2004-123422(JP,A)
【文献】特開2014-177370(JP,A)
【文献】特開2013-189335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントと、粗骨材と、細骨材と、水とを含有する高強度コンクリート組成物であって、
前記細骨材が銅スラグ細骨材を含有し、
前記銅スラグ細骨材の含有量は、細骨材全体に対して、10体積%以上であり、かつ、組成物全体に対して、84kg/m 以上であり、
水セメント比が30重量%未満であり、
シリカフュームを含まない、高強度コンクリート組成物。
【請求項2】
前記銅スラグ細骨材の含有量が、前記細骨材全体に対して、30~100体積%である、請求項1に記載の高強度コンクリート組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高強度コンクリート組成物を硬化させてなる、高強度コンクリート硬化体。
【請求項4】
単位体積質量が2.42t/m以上である、請求項3に記載の高強度コンクリート硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度コンクリート組成物、及び、該高強度コンクリート組成物を硬化させてなる高強度コンクリート硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、設計基準強度が95N/mm以上の硬化体を得るために、高強度コンクリート組成物は、結合材として低発熱型セメント(低熱又は中庸熱ポルトランドセメント等)及びシリカフュームを含有することが知られている(例えば、特許文献1)。該高強度コンクリート組成物は、低発熱型セメントを含有することにより、該組成物の水和熱を抑制することができる。また、シリカフュームを含有することにより、硬化体の長期的な強度発現を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-114825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シリカフュームは、コンクリート組成物の硬化体の長期的な強度発現に大きく寄与することから、設計基準強度が95N/mm以上の硬化体を得るには必要不可欠な成分である。しかしながら、シリカフュームを含有するコンクリート組成物の硬化体は、自己収縮ひずみが大きくなるため、収縮ひび割れを起こしやすいという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、強度が高く、かつ、自己収縮ひずみを抑制した硬化体を得ることが可能な高強度コンクリート組成物、及び、該高強度コンクリート組成物を硬化させてなる高強度コンクリート硬化体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る高強度コンクリート組成物は、セメントと、粗骨材と、細骨材と、水とを含有し、前記細骨材が銅スラグ細骨材を含有し、水セメント比が30重量%未満である。
【0007】
斯かる構成により、強度が高く、かつ、自己収縮ひずみを抑制した硬化体を得ることが可能な高強度コンクリート組成物を提供することができる。
【0008】
本発明に係る高強度コンクリート組成物は、前記銅スラグ細骨材の含有量が、前記細骨材全体に対して、30~100体積%であることが好ましい。
【0009】
斯かる構成により、自己収縮ひずみをさらに抑制した硬化体を得ることが可能な高強度コンクリート組成物を提供することができる。
【0010】
本発明に係る高強度コンクリート硬化体は、前記高強度コンクリート組成物を硬化させてなる。
【0011】
斯かる構成により、強度が高く、かつ、自己収縮ひずみを抑制した高強度コンクリート硬化体を提供することができる。
【0012】
本発明に係る高強度コンクリート硬化体は、単位体積質量が2.42t/m以上であることが好ましい。
【0013】
斯かる構成により、自己収縮ひずみをさらに抑制した高強度コンクリート硬化体を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、強度が高く、かつ、自己収縮ひずみを抑制した硬化体を得ることが可能な高強度コンクリート組成物、及び、該高強度コンクリート組成物を硬化させてなる高強度コンクリート硬化体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<高強度コンクリート組成物>
以下、本発明の実施形態に係る高強度コンクリート組成物について説明する。
【0016】
(セメント)
本実施形態に係る高強度コンクリート組成物は、セメントを含有する。前記セメントとしては、例えば、JIS R 5210で規定される普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメント、アルミナセメント、ジェットセメント等の超速硬セメント等が挙げられる。これらの中でも、コンクリート組成物の水和熱を抑制する観点から、中庸熱ポルトランドセメント、又は、低熱ポルトランドセメントであることが好ましい。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記セメントの含有量は、組成物全体に対して、500kg/m以上であることが好ましく、600kg/m以上であることがより好ましい。また、1200kg/m以下であることが好ましく、1060kg/m以下であることがより好ましい。なお、前記セメントが2種以上含まれる場合、前記含有量は前記セメントの合計含有量である。
【0018】
(粗骨材)
本実施形態に係る高強度コンクリート組成物は、粗骨材を含有する。前記粗骨材とは、5mm網ふるいに質量で85%以上とどまる骨材のことをいう(JIS A 0203:2014)。
【0019】
前記粗骨材としては、特に限定されるものではなく、例えば、川砂利、山砂利、海砂利等の天然骨材、砂岩、硬質石灰岩、玄武岩、安山岩等の砕石等の人工骨材、再生骨材等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記粗骨材の表乾密度は、2.5g/cm以上であることが好ましい。また、前記細骨材の吸水率は、3.0質量%以下であることが好ましい。なお、前記表乾密度及び前記吸水率は、例えば、JIS A 1109-2006に記載の測定方法で測定することができる。
【0021】
前記粗骨材の含有量は、組成物全体に対して、450kg/m以上であることが好ましく、500kg/m以上であることがより好ましい。また、1200kg/m以下であることが好ましく、1150kg/m以下であることがより好ましい。なお、前記粗骨材が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記粗骨材の合計含有量である。
【0022】
本実施形態に係る高強度コンクリート組成物は、細骨材を含有する。前記粗骨材とは、10mm網ふるいを全部通過し、5mm網ふるいを質量で85%以上通過する骨材のことをいう(JIS A 0203:2014)。
【0023】
前記細骨材は、銅スラグ細骨材を含有する。前記銅スラグ細骨材としては、特に限定されるものではなく、JIS A 5011-3(コンクリート用スラグ骨材-第3部:銅スラグ骨材)で規定される細骨材を用いることができる。
【0024】
前記銅スラグ細骨材の含有量は、自己収縮ひずみをさらに抑制した硬化体を得る観点から、前記細骨材全体に対して、30体積%以上であることが好ましく、40体積%以上であることがより好ましく、50体積%以上であることがさらに好ましい。また、100体積%以下であることが好ましく、90体積%以下であることがより好ましく、80体積%以下であることがさらに好ましい。なお、前記銅スラグ細骨材が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記銅スラグ細骨材の合計含有量である。
【0025】
また、前記銅スラグ細骨材の含有量は、組成物全体に対して、30kg/m以上であることが好ましく、50kg/m以上であることがより好ましい。また、1400kg/m以下であることが好ましく、1300kg/m以下であることがより好ましい。なお、前記銅スラグ細骨材が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記銅スラグ細骨材の合計含有量である。
【0026】
本実施形態に係る高強度コンクリート組成物は、その他の細骨材を含有していてもよい。その他の細骨材としては、特に限定されるものではなく、例えば、JIS A 5308附属書Aレディミクストコンクリート用骨材で規定される川砂、陸砂、山砂、海砂、砕砂、石灰石砕砂等の天然物由来の砂、高炉スラグ、電気炉酸化スラグ、フェロニッケルスラグ等のスラグ由来の砂等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記その他の細骨材の含有量は、組成物全体に対して、30kg/m以上であることが好ましく、50kg/m以上であることがより好ましい。また、1000kg/m以下であることが好ましく、900kg/m以下であることがより好ましい。なお、前記その他の細骨材が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記その他の細骨材の合計含有量である。
【0028】
前記細骨材の表乾密度は、2.40g/cm以上であることが好ましく、2.50g/cm以上であることがより好ましい。また、前記細骨材の吸水率は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。なお、前記表乾密度及び前記吸水率は、例えば、JIS A 1109-2006に記載の測定方法で測定することができる。
【0029】
(水)
本実施形態に係る高強度コンクリート組成物は、水を含む。前記水としては、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用することができる。前記水には、コンクリート組成物の水和反応及びコンクリート硬化体に悪影響を及ぼす有機物、塩化物イオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が含まれないか、含まれていても極めて微量であることが好ましい。前記水としては、品質の安定した水道水又は工業用水であることがより好ましい。
【0030】
前記水の合計含有量は、組成物全体に対して、150~190kg/mであることが好ましく、160~180kg/mであることがより好ましい。
【0031】
前記セメントに対する前記水の比(水セメント比)は、30重量%未満である。前記水セメント比は、28重量%以下であることが好ましく、25重量%以下であることがより好ましい。
【0032】
本実施形態に係る高強度コンクリート組成物は、必要に応じて、その他の添加材を含んでいてもよい。前記その他の添加材としては、膨張材、AE剤、減水剤、AE減水剤、流動化剤、分離低減剤、凝結遅延剤、凝結促進剤、急結剤、収縮低減剤、起泡剤、発泡剤、防水剤等が挙げられる。なお、これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本実施形態に係る高強度コンクリート組成物は、硬化体の自己収縮ひずみを抑制する観点から、シリカフュームを含まないことが好ましい。なお、シリカフュームは、前記高強度コンクリート組成物に悪影響を与えない範囲であれば、不可避的に含まれていてもよい。
【0034】
本実施形態に係る高強度コンクリート組成物は、セメントと、粗骨材と、細骨材と、水とを含有し、前記細骨材が銅スラグ細骨材を含有し、水セメント比が30重量%未満であることにより、強度が高く、かつ、自己収縮ひずみを抑制した硬化体を得ることが可能な高強度コンクリート組成物を提供することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る高強度コンクリート組成物は、前記銅スラグ細骨材の含有量が、前記細骨材全体に対して、30~100体積%であることにより、自己収縮ひずみをさらに抑制した硬化体を得ることが可能な高強度コンクリート組成物を提供することができる。
【0036】
本実施形態に係る高強度コンクリート組成物の製造方法は、特に限定されるものではない。前記高強度コンクリート組成物は、例えば、セメントと、粗骨材と、細骨材と、水と、必要に応じてその他の添加材を混合することにより製造することができる。
【0037】
<高強度コンクリート硬化体>
以下、本発明の実施形態に係る高強度コンクリート硬化体について説明する。
【0038】
本実施形態に係る高強度コンクリート硬化体は、上述の高強度コンクリート組成物を硬化させてなる。斯かる構成により、強度が高く、かつ、自己収縮ひずみを抑制した高強度コンクリート硬化体を提供することができる。
【0039】
前記高強度コンクリート硬化体は、自己収縮ひずみをさらに抑制する観点から、単位体積質量が2.42t/m以上であることが好ましく、2.46t/m以上であることがより好ましい。
【実施例
【0040】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(高強度コンクリート組成物の作製)
表1に示す各成分を混合することにより、各実施例及び比較例の高強度コンクリート組成物を作製した。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示す各成分の詳細を以下に示す。
セメント:低熱ポルトランドセメント、住友大阪セメント社製、密度3.24g/cm
シリカフューム:エルケムジャパン社製、密度2.25g/cm
CUS:銅スラグ細骨材、住友金属鉱山社製、密度3.47g/cm
S:山砂、静岡県掛川市産、密度2.59g/cm
粗骨材:砂岩砕石、茨城県岩瀬産、密度2.64g/cm
SF500H:高性能AE減水剤、フローリック社製
水:上水道水
【0044】
(圧縮強度の評価)
圧縮強度は、JIS A 1108に準拠して測定した。材齢28日における圧縮強度を表2に示す。
【0045】
(自己収縮ひずみの評価)
自己収縮ひずみは、JCI超流動コンクリート研究委員会報告書の「高流動コンクリートの自己収縮試験方法」に準拠して測定した。
【0046】
【表2】
【0047】
表2の結果から分かるように、本発明の要件をすべて満たす実施例1~13の高強度コンクリート組成物は、圧縮強度が95N/mm以上であり、また、同一の水セメント比の比較例と比較して、自己収縮ひずみが小さいことが分かる。さらに、銅スラグ細骨材の含有量が、前記細骨材全体に対して、30~100体積%である実施例1~3,5~7,9~11,12の高強度コンクリート組成物は、同一の水セメント比の比較例と比較して、自己収縮ひずみが2割以上小さいことが分かる。
【0048】
一方、比較例1及び2の高強度コンクリート組成物は、水セメント比が30重量%以上であるため、圧縮強度が95N/mm未満である。また、比較例3~6の高強度コンクリート組成物は、銅スラグ細骨材を含有しないため、同一の水セメント比の実施例と比較して、自己収縮ひずみが大きいことが分かる。