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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】血中脂質低減用医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20220510BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20220510BHJP
   A61K 36/9068 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61K36/185
A61P3/06
A61K33/06
A61K33/00
A61K36/9068
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017212556
(22)【出願日】2017-11-02
(65)【公開番号】P2019085348
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】原田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】平野 真
(72)【発明者】
【氏名】若林 健一
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-196990(JP,A)
【文献】医療薬学,2008年,Vol.34, No.6,pp.513-521
【文献】動脈硬化,1987年,Vol.15, No.1,pp.107-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00 -36/9068
A61K 33/00 -33/44
A61P 3/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防風通聖散、及び大柴胡湯を含有する、血中脂質低減用医薬組成物。
【請求項2】
乾燥エキス末含量換算で、防風通聖散1重量部に対し、大柴胡湯が0.05~10重量部含まれる、請求項1に記載の血中脂質低減用医薬組成物。
【請求項3】
防風通聖散の1日当たりの投与量が乾燥エキス末含量で、500~10000mgに設定されている、請求項1又は2に記載の血中脂質低減用医薬組成物。
【請求項4】
大柴胡湯の1日当たりの投与量が乾燥エキス末含量で400~8000mgに設定されている、請求項1~3のいずれかに記載の血中脂質低減用医薬組成物。
【請求項5】
錠剤である、請求項1~4のいずれかに記載の血中脂質低減用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漢方薬を含み、肝機能障害を抑制しつつ優れた血中脂質低減効果を奏する血中脂質低減用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メタボリックシンドローム、糖尿病、心臓病、脳卒中、高血圧、高脂血症等の生活習慣病の増加が大きな問題となっている。このような生活習慣病は、高脂肪食の摂取、運動不足、脂質代謝能の低下等により、血中脂質(血中の中性脂肪、血中のトリグリセリド)の増加が原因の一つとされる。従来、血中脂質を低減させる方法として、食生活改善や運動習慣等と共に、漢方薬を利用することが行われている。
【0003】
血中脂質を低減させる漢方薬としては、防風通聖散や大柴胡湯等が知られている(非特許文献1及び2参照)。しかしながら、このような従来漢方製剤では、血中脂質低減作用が十分に発揮されないことがあり、血中脂質の低減作用を高めた漢方製剤の開発が望まれている。
【0004】
防風通聖散又は大柴胡湯の服用量を増大させることによって、血中脂質低減作用の向上が期待できる。しかしながら、防風通聖散及び大柴胡湯には、ALT(GPT)値の上昇や、肝機能障害といった副作用が知られている(非特許文献1~3参照)。これらの漢方薬の服用量の増大は、副作用の点で深刻な問題を生じさせる懸念がある。
【0005】
従来、防風通聖散又は大柴胡湯の肝機能障害に関する副作用懸念を払拭できる漢方製剤については報告されておらず、防風通聖散又は大柴胡湯を用いて血中脂質の低減作用を高めた漢方製剤を実現できていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】「漢方製剤 ツムラ防風通聖散エキス顆粒(医療用)」医薬品インタビューフォーム、2014年11月(改訂第6版)
【文献】「漢方製剤 ツムラ大柴胡湯エキス顆粒(医療用)」医薬品インタビューフォーム、2014年11月(改訂第4版)
【文献】「-臨床報告- 大柴胡湯により肝機能障害と間質性肺炎を来した1例」、日本消化器学会雑誌、第94巻、第11号、787-791頁、1997年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、漢方薬を利用して、肝機能障害を抑制しつつ、優れた血中脂質低減効果を奏する血中脂質低減用医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、防風通聖散と大柴胡湯とを併用することによって、血中脂質低減作用を向上させることができ、しかも、意外なことに、ALT値の上昇を抑えられ、肝機能障害を抑制できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 防風通聖散、及び大柴胡湯を含有する、血中脂質低減用医薬組成物。
項2. 乾燥エキス末含量換算で、防風通聖散1重量部に対し、大柴胡湯が0.05~10重量部含まれる、項1に記載の血中脂質低減用医薬組成物。
項3. 防風通聖散の1日当たりの投与量が乾燥エキス末含量で、500~10000mgに設定されている、項1又は2に記載の血中脂質低減用医薬組成物。
項4. 大柴胡湯の1日当たりの投与量が乾燥エキス末含量で400~8000mgに設定されている、項1~3のいずれかに記載の血中脂質低減用医薬組成物。
項5. 錠剤である、項1~4のいずれかに記載の血中脂質低減用医薬組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の血中脂質低減用医薬組成物によれば、防風通聖散と大柴胡湯とを併用することによって、血中脂質低減作用が向上しているので、増加した血中脂質の低下抑制、及び食事等に起因する血中脂質の上昇抑制が可能になる。また、本発明の血中脂質低減用医薬組成物は、前記両漢方を併用することによって、肝機能障害ALT値の上昇を抑えることが可能になっており、副作用を抑制した、安全性の高い組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の血中脂質低減用医薬組成物は、防風通聖散、及び大柴胡湯を含有することを特徴とする。以下、本発明の血中脂質低減用医薬組成物について詳述する。
【0012】
[防風通聖散]
本発明の血中脂質低減用医薬組成物は、防風通聖散を含有する。防風通聖散は、「新 一般用漢方処方の手引き」(合田 幸広・袴塚 高志監修、日本漢方生薬製剤協会編集、株式会社じほう発行)に記載されている漢方処方が好ましく、トウキ、シャクヤク、センキュウ、サンシシ、レンギョウ、ハッカ、ショウキョウ、ケイガイ、ボウフウ、マオウ、ダイオウ、ビャクジュツ、キキョウ、オウゴン、カンゾウ、セッコウ、カッセキ、ボウショウからなる混合生薬である。また、防風通聖散には、漢方生薬調査会により定められた「漢方製剤の基本的取扱い方針」に規定されるように、現在繁用されている漢方関係の書簡に記載されている混合生薬(漢方処方)が包含される。
【0013】
本発明では、防風通聖散として、混合生薬自体を使用してもよく、また混合生薬から抽出したエキスを使用してもよい。本発明で使用される防風通聖散として、服用容易性の観点から、防風通聖散のエキスが挙げられる。防風通聖散のエキスとしては、軟エキス等の液状のエキス、又は固形状の乾燥エキス末のいずれであってもよい。
【0014】
防風通聖散の液状のエキスは、防風通聖散処方に従った混合生薬を抽出処理し、得られた抽出液を必要に応じて濃縮することにより得ることができる。また、防風通聖散の乾燥エキス末は、液状のエキスを乾燥処理することにより得ることができる。
【0015】
防風通聖散のエキスの製造において、抽出処理に使用される抽出溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水、又は含水エタノールが挙げられる。防風通聖散の抽出処理としては、特に限定されないが、例えば、防風通聖散に含まれる生薬の総重量(乾燥重量換算)に対して、20倍量程度の抽出溶媒で抽出した後、1/2容量になるまで濃縮し、固形分を除いたものを防風通聖散の液状エキスとして得る方法が挙げられる。また、この液状エキスを乾燥処理に供することにより、乾燥エキス末が得られる。乾燥処理としては、特に限定されず、公知の方法を用いればよく、例えば、スプレードライ法や、エキスの濃度を高めた軟エキスに適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法等が挙げられる。
【0016】
本発明において防風通聖散としてエキスを使用する場合、前述の方法で調製したエキスを用いてもよいし、市販されるものを用いてもよい。例えば、防風通聖散の乾燥エキス末としては、防風通聖散乾燥エキスA、防風通聖散乾燥エキスAM、防風通聖散乾燥エキスE、及び防風通聖散乾燥エキスEM(いずれも日本粉末株式会社製)、並びに防風通聖散料乾燥エキス-C、及び防風通聖散料乾燥エキス-F(いずれもアルプス薬品工業株式会社製)等がそれぞれ商品として知られており、商業的に入手することもできる。
【0017】
本発明の血中脂質低減用医薬組成物において、防風通聖散の含有量としては、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、防風通聖散の乾燥エキス末量換算で、通常20~95重量%、好ましくは25~90重量%、より好ましくは30~80重量%、更に好ましくは40~75重量%が挙げられる。なお、本発明において、防風通聖散の乾燥エキス末量換算とは、防風通聖散の乾燥エキス末を使用する場合にはそれ自体の量であり、防風通聖散の液状のエキスを使用する場合には、溶媒を除去した残量に換算した量である。また、防風通聖散の乾燥エキス末が、製造時に添加される吸着剤等の添加剤を含む場合は、当該添加剤を除いた量である。
【0018】
[大柴胡湯]
本発明の血中脂質低減用医薬組成物は、更に大柴胡湯を含有する。大柴胡湯は、「新 一般用漢方処方の手引き」(合田 幸広・袴塚 高志監修、日本漢方生薬製剤協会編集、株式会社じほう発行)に記載されている漢方処方が好ましく、サイコ、ハンゲ、オウゴン、キジツ、シャクヤク、ショウキョウ、タイソウ、ダイオウからなる混合生薬である。また、大柴胡湯には、漢方生薬調査会により定められた「漢方製剤の基本的取扱い方針」に規定されるように、現在繁用されている漢方関係の書簡に記載されている混合生薬(漢方処方)が包含される。
【0019】
本発明では、大柴胡湯として、混合生薬自体を使用してもよく、また混合生薬から抽出したエキスを使用してもよい。本発明で使用される大柴胡湯として、服用容易性の観点から、大柴胡湯のエキスが挙げられる。大柴胡湯のエキスとしては、軟エキス等の液状のエキス、又は固形状の乾燥エキス末のいずれであってもよい。
【0020】
大柴胡湯の液状のエキスは、大柴胡湯処方に従った混合生薬を抽出処理し、得られた抽出液を必要に応じて濃縮することにより得ることができる。また、大柴胡湯の乾燥エキス末は、液状のエキスを乾燥処理することにより得ることができる。
【0021】
大柴胡湯のエキスの製造において、抽出処理に使用される抽出溶媒としては、特に限定されず、水又は含水エタノールが挙げられる。大柴胡湯の抽出処理としては、特に限定されないが、例えば、大柴胡湯に含まれる生薬の総重量(乾燥重量換算)に対して、20倍量程度の抽出溶媒で抽出した後、1/2容量になるまで濃縮し、固形分を除いたものを、大柴胡湯の液状エキスとして得る方法が挙げられる。また、この液状エキスを乾燥処理に供することにより、大柴胡湯の乾燥エキス末が得られる。乾燥処理としては、特に限定されず、公知の方法を用いればよく、例えば、スプレードライ法や、エキスの濃度を高めた軟エキスに適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法等が挙げられる。
【0022】
本発明において大柴胡湯としてエキスを使用する場合、前述の方法で調製したエキスを使用してもよいし、市販されるものを使用してもよい。例えば、大柴胡湯の乾燥エキス末としては、大柴胡湯乾燥エキスAM、大柴胡湯乾燥エキスSN、及び大柴胡湯乾燥エキス粉末(いずれも日本粉末株式会社製)、並びに大柴胡湯乾燥エキスF、及び大柴胡湯乾燥エキス-F(いずれもアルプス薬品工業製)等がそれぞれ商品として知られており、商業的に入手することもできる。
【0023】
本発明の血中脂質低減用医薬組成物において、大柴胡湯の含有量としては、本発明の効果を奏する限り、特に限定されないが、大柴胡湯の乾燥エキス末量換算で、通常5~80重量%、好ましくは10~70重量%、より好ましくは20~60重量%、更に好ましくは30~50重量%が挙げられる。なお、本発明において、大柴胡湯の乾燥エキス末量換算とは、柴胡湯の乾燥エキス末を使用する場合にはそれ自体の量であり柴胡湯の液状のエキスを使用する場合には、溶媒を除去した残量に換算した量である。また、柴胡湯の乾燥エキス末が、製造時に添加される吸着剤等の添加剤を含む場合は、当該添加剤を除いた量である。
【0024】
[防風通聖散と大柴胡湯の重量比]
本発明の血中脂質低減用医薬組成物において、防風通聖散と大柴胡湯の含有量の比率については、特に制限されないが、血中脂質低減作用及びALT値の上昇抑制作用をより一層向上させるという観点から、乾燥エキス末量換算で、防風通聖散1重量部に対し、大柴胡湯が、通常0.05~10重量部、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは0.25~4重量部、更に好ましくは0.5~3重量部が挙げられる。
【0025】
[他の含有成分]
本発明の血中脂質低減用医薬組成物は、前述の防風通聖散及び大柴胡湯の他に、必要に応じて、他の薬理成分を含んでいてもよい。このような薬理成分の種類については、特に限定されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬、生薬エキス末、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの薬理成分の含有量については、使用する薬理成分の種類等に応じて公知のものから適宜設定すればよい。
【0026】
本発明の血中脂質低減用医薬組成物には、所望の剤型に調製するために、必要に応じて、薬学的に許容される基剤や添加剤等が含まれていてもよい。このような基剤及び添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの基剤や添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの基剤や添加剤の含有量については、使用する添加成分の種類や剤型等に応じて公知のものから適宜設定すればよい。
【0027】
[剤型]
本発明の血中脂質低減用医薬組成物の剤型については、特に制限されず、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤、液剤(ドリンク剤)等のいずれであってもよい。これらの剤型の中でも、服用簡易性等の観点から、好ましくは錠剤が挙げられる。これらの剤型は、薬学的に許容される基材や添加剤を用いて調製することができ、当該基材や添加剤の種類や配合量についても、製剤技術の分野で公知である。
【0028】
本発明の血中脂質低減用医薬組成物を錠剤として提供する場合、当該錠剤は、胃溶性錠剤(通常錠剤)又は腸溶性錠剤のいずれであってもよく、また、必要に応じて、糖衣基剤、水溶性フィルムコーティング基剤等でコーティングがなされていてもよい。
【0029】
[用途]
本発明の血中脂質低減用医薬組成物は、血中脂質低減用途に適用され、具体的には、増加した血中脂質を低下させたり、血中脂質の増加を抑制したりする目的で使用される。また、血中脂質の高値は、メタボリックシンドローム、糖尿病、脳卒中、高血圧、高脂血症等の疾患や症状の一因になっているので、本発明の血中脂質低減用医薬組成物は、これらの疾患又は症状の予防又は治療目的で使用できる。
【0030】
[用量・用法]
本発明の血中脂質低減用医薬組成物は、経口投与によって投与される。本発明の血中脂質低減用医薬組成物の投与量については、肥満の程度、患者の年齢等に応じて適宜設定されるが、例えば、乾燥エキス末量換算で、1日当たりの投与量として、防風通聖散が500~10000mg、好ましくは600~8000mg、更に好ましくは1000~5000mgが挙げられ、大柴胡湯が400~8000mg、好ましくは600~5000mg、更に好ましくは1000~5000mgが挙げられる。
【実施例
【0031】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0032】
実験例
1.エキス末の調製
(1)防風通聖散エキス末
原料生薬を、トウキ1.2(重量部、以下同じ)、シャクヤク1.2、センキュウ1.2、サンシシ1.2、レンギョウ1.2、ハッカ1.2、ショウキョウ1.2、ケイガイ1.2、ボウフウ1.2、マオウ1.2、ダイオウ1.5、ボウショウ1.5、ビャクジュツ2.0、キキョウ2.0、オウゴン2.0、カンゾウ2.0、セッコウ2.0およびカッセキ3.0の割合で用い、これらを刻んだ後、水20倍重量(560重量部)を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、防風通聖散エキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0033】
(2)大柴胡湯エキス末
原料生薬を、サイコ6.0(重量部、以下同じ)、ハンゲ4.0、ショウキョウ1.0、オウゴン3.0、シャクヤク3.0、タイソウ3.0、キジツ2.0、ダイオウ1.0の割合で用い、これらを刻んだ後、水20倍重量(460重量部)を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得、減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、大柴胡湯エキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0034】
2.実験方法
TSODマウス(雄、3週齢、購入元:一般財団法人 動物繁殖研究所)を普通飼料(MF飼料、オリエンタル酵母工業株式会社製)で1週間馴化した(馴化時平均体重:30.54g)。馴化後のマウスを、表1に示す5群(7匹/群)に分け、それぞれの群について、表1に示す配合割合でエキス末を混合した普通飼料にて8週間飼育した。飼育期間中、マウスには飼料及び水を自由に摂取させた。飼育開始から8週目に各マウスに採決を行い、中性脂肪、LDLコレステロール、及びALTの血中濃度の測定を行った。
【0035】
【表1】
【0036】
3.実験結果
結果を表2に示す。防風通聖散・大柴胡湯投与群(実施例1)では、防風通聖散投与群1及び2(比較例2及び3)並びに大柴胡湯投与群(比較例4)に比べて、血中の中性脂肪の減少効果が向上していた。また、血中のLDLコレステロール濃度については、防風通聖散・大柴胡湯投与群(実施例1)では、防風通聖散投与群1及び2(比較例1及び3)並びに大柴胡湯投与群(比較例4)と同程度であった。
【0037】
一方、防風通聖散を単独で投与すると、用量依存的にAST値の増加が認められた(比較例2及び3)。これに対して、防風通聖散・大柴胡湯投与群(実施例1)では、これと同量の防風通聖散を摂取させている比較例2よりもAST値が大幅に低くなっており、肝機能障害を効果的に抑制できていた。
【0038】
以上の結果から、防風通聖散と大柴胡湯を組み合わせることで、肝機能障害を抑制しつつ、血中脂質を効果的に低減できることが確認された。
【0039】
【表2】
【0040】
処方例
表3~6に示す組成の錠剤を常法に従って調製した。得られた錠剤は、肝機能障害を抑制しつつ、血中脂質を効果的に低減することが期待できる。
【0041】
【表3】
【0042】
【表4】
【0043】
【表5】
【0044】
【表6】