(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20220510BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20220510BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220510BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220510BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0569
H01M10/052
H01M4/13
H01M10/44 P
(21)【出願番号】P 2018028124
(22)【出願日】2018-02-20
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 英和
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 賢一
(72)【発明者】
【氏名】西本 淳
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/146555(WO,A1)
【文献】特開2002-141109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0328938(US,A1)
【文献】特表2010-539640(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0309161(US,A1)
【文献】特開2008-071499(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0003597(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0266904(US,A1)
【文献】特開2008-243661(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0241647(US,A1)
【文献】特開2008-041413(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102694207(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00-4/62
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極極板における容量密度が3.8mAh/cm
2以上であ
り、前記正極極板の上に設けられた正極活物質層の空隙率は、18%以上30%以下であり、
前記正極極板の上に設けられた正極活物質層の量は、40mg/cm
2
以上である、正極と、
298Kにおける導電率が9.0mS/cm以上である電解液と、
を備え、
前記電解液は、総質量に対して、0質量%超3質量%以下の硫酸エステル化合物、及び10質量%以上のジメチルカーボネートを含む、リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記正極極板における容量密度は、4.0mAh/cm
2以上である、請求項
1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記電解液の298Kにおける導電率は、9.5mS/cm以上である、請求項1
または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記硫酸エステル化合物は、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシドである、請求項1~
3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
1.5C以上のレートで充放電する電流制御回路又は電源制御回路をさらに備える、請求項1~
4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記リチウムイオン二次電池は、1.5C以上の充放電レートで用いられる、請求項1~
5のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン(lithium ion)二次電池等の非水電解質二次電池は、ノート型パソコン(note PC)又は携帯電話などのポータブル(portable)機器の電源として広く用いられている。また、リチウムイオン二次電池は、これらの用途に加え、電気自動車又はハイブリッド(hybrid)自動車等のxEV向けの電源としても注目されている。このため、近年、リチウムイオン二次電池の需要は、さらに活発に伸長するものと考えられる。
【0003】
ここで、xEV向けのリチウムイオン二次電池は、従来のガソリンエンジン(gasoline engine)車と同等の性能を確保するために、高容量及び長寿命が求められる。また、xEV向けのリチウムイオン二次電池では、ガソリンエンジン車の給油時間と同等の時間内に充電を完了するための急速充電特性(すなわち、高レートでの充放電特性)も強く求められている。
【0004】
従来、リチウムイオン二次電池の諸特性については、それぞれ個別に特性の改善が進められていた。例えば、下記の特許文献1及び2には、電解液に特定の成分を含有させることで、リチウムイオン二次電池の充放電特性を改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開1998-189042号公報
【文献】特開2013-229307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、リチウムイオン二次電池では、ある特性を向上させた一方で、他の特性が低下してしまうことが生じ得る。
【0007】
例えば、リチウムイオン二次電池を高容量化した場合、高レート(rate)での充放電特性が損なわれる可能性がある。具体的には、リチウムイオン二次電池を高容量化するために活物質の量又は充填密度を大きくした場合、リチウムイオンが活物質に対して挿入又は脱離しにくくなるため、高レートでの充放電特性が低下していた。
【0008】
特に、高レートでの充放電特性の向上は、リチウムイオンの挿入又は脱離が容易な活物質の構造によって実現され得るが、活物質の構造は、活物質内に吸蔵可能なリチウムイオンの量にも影響する。そのため、従来、リチウムイオン二次電池の高容量化と、高レートでの充放電特性の向上との双方を向上させることは困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、正極極板のエネルギー密度が高い場合であっても、高レートでの充放電特性を向上させることが可能な、新規かつ改良されたリチウムイオン二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、正極極板における容量密度が3.8mAh/cm2以上である正極と、298Kにおける導電率が9.0mS/cm以上である電解液と、を備え、前記電解液は、総質量に対して、0質量%超3質量%以下の硫酸エステル化合物、及び10質量%以上のジメチルカーボネートを含む、リチウムイオン二次電池を提供する。
【0011】
本観点によれば、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池において、高レートでの充放電特性を向上させることができる。
【0012】
前記正極極板の上に設けられた正極活物質層の空隙率は、18%以上30%以下であってもよい。
【0013】
本観点によれば、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池において、高レートでの充放電特性をさらに向上させることができる。
【0014】
前記正極極板の上に設けられた正極活物質層の量は、40mg/cm2以上であってもよい。
【0015】
本観点によれば、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池において、高レートでの充放電特性をさらに向上させることができる。
【0016】
前記正極極板における容量密度は、4.0mAh/cm2以上であってもよい。
【0017】
本観点によれば、さらに高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池であっても、高レートでの充放電特性を向上させることができる。
【0018】
前記電解液の298Kにおける導電率は、9.5mS/cm以上であってもよい。
【0019】
本観点によれば、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池において、高レートでの充放電特性をさらに向上させることができる。
【0020】
前記硫酸エステル化合物は、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシドであってもよい。
【0021】
本観点によれば、高エネルギー密度であるリチウムイオン二次電池において、高レートでの充放電特性をさらに向上させることができる。
【0022】
1.5C以上のレートで充放電する電流制御回路又は電源制御回路をさらに備えてもよい。
【0023】
本観点によれば、リチウムイオン二次電池を高レートでの充放電用途に用いることができる。
【0024】
前記リチウムイオン二次電池は、1.5C以上の充放電レートで用いられてもよい。
【0025】
本観点によれば、リチウムイオン二次電池を高レートでの充放電用途に用いることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように本発明によれば、リチウムイオン二次電池の容量密度が高い場合であっても、高レートでの充放電特性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】リチウムイオン二次電池の構成を概略的に示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
<1.リチウムイオン二次電池の構成>
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池10の構成について説明する。
図1は、リチウムイオン二次電池の構成を概略的に示す側断面図である。
【0030】
図1に示すように、リチウムイオン二次電池10は、正極20と、負極30と、セパレータ40と、電解液とを備える。なお、リチウムイオン二次電池10の形態は、特に限定されない。即ち、リチウムイオン二次電池10は、円筒形、角形、ラミネート(laminate)形又はボタン(button)形等のいずれの形態であってもよい。
【0031】
(正極20)
正極20は、正極極板21と、正極活物質層22とを備える。正極極板21は、導電体として用いられるものであればどのようなものでも良い。正極極板21は、例えば、アルミニウム(aluminium)、ステンレス(stainless)鋼、又はニッケルメッキ(nickel coated)鋼等で構成されてもよい。
【0032】
正極活物質層22は、少なくとも正極活物質を含み、導電剤と、バインダとをさらに含んでもよい。なお、正極活物質、導電剤及びバインダの含有量の比率は、特に制限されず、一般的なリチウムイオン二次電池にて用いられる含有量の比率を使用することが可能である。
【0033】
正極活物質は、例えばリチウムを含む固溶体酸化物である。ただし、正極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出することができる物質であれば特に制限されない。固溶体酸化物は、例えば、LiaMnxCoyNizO2(1.150≦a≦1.430、0.45≦x≦0.6、0.10≦y≦0.15、0.20≦z≦0.28)、LiMnxCoyNizO2(0.3≦x≦0.85、0.10≦y≦0.3、0.10≦z≦0.3)、又はLiMn1.5Ni0.5O4などであってもよい。
【0034】
導電剤は、例えば、ケッチェンブラック(ketjen black)若しくはアセチレンブラック(acetylene black)等のカーボンブラック(carbon black)、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブ(carbon nanotubes)、グラフェン(graphene)若しくはカーボンナノファイバ(carbon nanofibers)等の繊維状炭素、又はこれら繊維状炭素とカーボンブラック(carbon black)との複合体等を用いることができる。ただし、導電剤は、正極の導電性を高めるためのものであれば特に制限されない。
【0035】
バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、エチレンプロピレンジエン(ethylene-propylene-diene)三元共重合体、スチレンブタジエンゴム(Styrene-butadiene rubber)、アクリロニトリルブタジエンゴム(acrylonitrile-butadiene rubber)、フッ素ゴム(fluororubber)、ポリ酢酸ビニル(polyvinyl acetate)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリエチレン(polyethylene)、又はニトロセルロース(cellulose nitrate)等である。ただし、バインダは、正極活物質及び導電剤を正極極板21上に結着させることができるものであれば、特に制限されない。
【0036】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10において、正極20は、高エネルギー密度となるように、正極活物質の含有量、充填密度、及びローディング(Loading)量が制御される。具体的には、正極20は、正極極板21における容量密度が3.8mAh/cm2以上、好ましくは4.0mAh/cm2以上となるように構成される。本実施形態によれば、このように容量密度が高く、高容量を実現するリチウムイオン二次電池10において、高レートでの充放電特性を向上させることができる。なお、正極極板における容量密度の上限は、特に限定されない。ただし、安全性等の観点から、例えば、正極極板における容量密度は、6.5mAh/cm2以下としてもよい。
【0037】
例えば、正極20は、正極極板21の上に設けられる正極活物質層22のローディング量を多くすることでエネルギー密度を高めてもよい。具体的には、正極20の正極極板21の上に設けられた正極活物質層22の量は、40mg/cm2以上であってもよい。正極極板21の上に設けられた正極活物質層22の量が多い程、正極極板21の単位面積当たりの正極活物質の量が増加するため、正極20のエネルギー密度を高めることができる。正極活物質層22のローディング量の上限は、特に限定されないが、例えば、60mg/cm2としてもよい。なお、上述したローディング量は、正極極板21の単位面積あたりの量であり、正極極板21の両面に正極活物質層22が設けられる場合には両面の合計量、正極極板21の片面のみに正極活物質層22が設けられる場合には片面のみの量である。
【0038】
また、正極20は、正極活物質層22における充填密度を高めることでエネルギー密度を高めてもよい。具体的には、正極20の正極極板21の上に設けられた正極活物質層22の空隙率は、18%以上30%以下であってもよい。正極活物質層22の空隙率を30%以下とすることによって、正極20は、正極活物質層22における充填密度を高め、エネルギー密度を本実施形態に係る範囲まで高めることができる。一方、正極活物質層22の空隙率が18%未満である場合、正極活物質層22の充填密度が過度に高くなることで、リチウムイオン二次電池10の充放電特性が低下するため好ましくない。
【0039】
(負極30)
負極30は、負極極板31と、負極活物質層32とを含む。負極極板31は、導電体として用いられるものであればどのようなものでも良い。負極極板31は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、ステンレス鋼又はニッケルメッキ鋼等で構成されてもよい。
【0040】
負極活物質層32は、少なくとも負極活物質を含み、導電剤と、バインダとをさらに含んでいてもよい。なお、負極活物質、導電剤及びバインダの含有量の比率は、特に制限されず、一般的なリチウムイオン二次電池にて用いられる含有量の比率を使用することが可能である。
【0041】
負極活物質は、例えば、黒鉛活物質、ケイ素(Si)若しくはスズ(Sn)系活物質、又は酸化チタン(TiOx)系活物質等である。ただし、負極活物質は、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵及び放出することができる物質であれば特に制限されない。黒鉛系活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、人造黒鉛と天然黒鉛との混合物、又は人造黒鉛で被覆した天然黒鉛などであってもよい。ケイ素若しくはスズ系活物質は、ケイ素若しくはスズの微粒子、ケイ素若しくはスズの酸化物の微粒子、又はケイ素若しくはスズの合金などであってもよい。酸化チタン系活物質は、Li4Ti5O12等であってもよい。さらに、負極活物質は、これらの他に、例えば金属リチウム(Li)等であってもよい。
【0042】
導電剤は、正極活物質層22で用いた導電剤と同様のものが使用可能である。
【0043】
バインダは、例えば、スチレンブタジエンゴム(Styrene-Butadiene Rubber:SBR)などを用いることができる。ただし、バインダは、負極活物質及び導電剤を負極極板31上に結着させることができるものであれば、特に制限されない。
【0044】
(セパレータ40)
セパレータ40は、リチウムイオン二次電池のセパレータとして使用されるものであれば、特に制限されず使用することが可能である。セパレータは、優れた高率放電性能を示す多孔膜又は不織布等を、単独若しくは併用して用いることが好ましい。セパレータを構成する樹脂は、例えばポリエチレン(polyethylene),ポリプロピレン(polypropylene)等に代表されるポリオレフィン(polyolefin)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate),ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)等に代表されるポリエステル(Polyester)系樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン(VDF)-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、フッ化ビニリデン-パーフルオロビニルエーテル(par fluorovinyl ether)共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン(trifluoroethylene)共重合体、フッ化ビニリデン-フルオロエチレン(fluoroethylene)共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロアセトン(hexafluoroacetone)共重合体、フッ化ビニリデン-エチレン(ethylene)共重合体、フッ化ビニリデン-プロピレン(propylene)共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロプロピレン(trifluoro propylene)共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)-ヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene)共重合体、フッ化ビニリデン-エチレン(ethylene)-テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)共重合体等であってもよい。
【0045】
(電解液)
電解液は、非水溶媒に電解質塩を含有させた組成を有する。本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10において、電解液は、導電率が高くなるように電解液の溶媒の組成、及び電解質塩の濃度が制御される。具体的には、電解液は、298Kの導電率が9.0mS/cm以上、好ましくは9.5mS/cm以上となるように構成される。本実施形態によれば、電解液の導電率を高くすることで、高レートにおける充放電特性を向上させることができる。なお、電解液の導電率の上限は、特に限定されない。ただし、安全性等の観点から、電解液の導電率は、例えば、20.0mS/cm以下としてもよい。
【0046】
例えば、電解液は、総質量に対して、0質量%超3質量%以下の硫酸エステル化合物、及び10質量%以上のジメチルカーボネートを含むように構成される。電解液は、上述した成分を上述した含有量で含むことによって、298Kの導電率を本実施形態に係る範囲まで高めることができる。なお、硫酸エステル化合物としては、公知の種々の化合物を使用することができるが、例えば、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシドを使用してもよい。
【0047】
電解液に硫酸エステル化合物が含まれない、又は電解液に硫酸エステル化合物が3質量%超で含まれる場合、リチウムイオン二次電池10の高レートにおける充放電特性が低下するため好ましくない。一方、電解液にジメチルカーボネートが10質量%未満で含まれる場合、リチウムイオン二次電池10の高レートにおける充放電特性が低下するため好ましくない。なお、ジメチルカーボネートの含有量は、特に上限を定めないが、例えば、電解液の総質量に対して、95質量%未満としてもよい。
【0048】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10の電解液は、上述した成分以外に他の非水溶媒を含んでもよいことは言うまでもない。例えば、電解液は、非水溶媒として、プロピレンカーボネート(propylene carbonate)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate)、ブチレンカーボネート(ethylene carbonate)、クロロエチレンカーボネート(chloroethylene carbonate)、ビニレンカーボネート(vinylene carbonate)等の環状炭酸エステル(ester)類;γ-ブチロラクトン(butyrolactone)、γ-バレロラクトン(valerolactone)等の環状エステル類;ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate)、エチルメチルカーボネート(ethyl methyl carbonate)等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル(methyl formate)、酢酸メチル(methyl acetate)、酪酸メチル(butyric acid methyl)等の鎖状エステル類;テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)又はその誘導体;1,3-ジオキサン(dioxane)、1,4-ジオキサン(dioxane)、1,2-ジメトキシエタン(dimethoxyethane)、1,4-ジブトキシエタン(dibutoxyethane)、メチルジグライム(methyl diglyme)等のエーテル(ether)類;アセトニトリル(acetonitrile)、ベンゾニトリル(benzonitrile)等のニトリル(nitrile)類;ジオキソラン(Dioxolane)又はその誘導体;エチレンスルフィド(ethylene sulfide)、スルホラン(sulfolane)、スルトン(sultone)又はその誘導体等を単独で若しくは2種以上混合して含んでもよい。
【0049】
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10の電解液は、電解質塩として、例えば、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6,LiPF6-x(CnF2n+1)x(但し、1<x<6,n=1or2),LiSCN,LiBr,LiI,Li2SO4,Li2B10Cl10,NaClO4,NaI,NaSCN,NaBr,KClO4,KSCN等のリチウム(Li)、ナトリウム(Na)又はカリウム(K)の1種を含む無機イオン塩、LiCF3SO3,LiN(CF3SO2)2,LiN(C2F5SO2)2,LiN(CF3SO2)(C4F9SO2),LiC(CF3SO2)3,LiC(C2F5SO2)3,(CH3)4NBF4,(CH3)4NBr,(C2H5)4NClO4,(C2H5)4NI,(C3H7)4NBr,(n-C4H9)4NClO4,(n-C4H9)4NI,(C2H5)4N-maleate,(C2H5)4N-benzoate,(C2H5)4N-phtalate、ステアリルスルホン酸リチウム(stearyl sulfonic acid lithium)、オクチルスルホン酸リチウム(octyl sulfonic acid)、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム(dodecyl benzene sulphonic acid)等の有機イオン塩等であってもよい。電解質塩は、これらのイオン塩又はイオン性化合物を単独で若しくは2種以上混合して用いることができる。なお、電解質塩の濃度は、一般的なリチウムイオン二次電池で使用される濃度と同様の濃度(0.8mol/L~2.0mol/L程度)を使用することができる。
【0050】
なお、電解液には、各種の添加剤が添加されてもよい。このような添加剤としては、負極作用添加剤、正極作用添加剤、エステル系添加剤、炭酸エステル系添加剤、硫酸エステル系添加剤、リン酸エステル系添加剤、ホウ酸エステル系添加剤、酸無水物系添加剤、又は電解質系添加剤等が挙げられる。これらのうちいずれか1種又は複数種類の添加剤が電解液に添加されてもよい。
【0051】
以上にて、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10について説明した。本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10は、高レートでの急速充電を行う用途に好適に用いられる。例えば、リチウムイオン二次電池10は、1.5C以上のレートでの急速充放電が行われる用途に用いられてもよい。このような場合、リチウムイオン二次電池10には、1.5C以上のレートでの充放電を制御するための電流制御回路又は電源制御回路が設けられる。なお、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池10に好適な急速充電における充放電レートの上限は、特に限定されない。ただし、安全性等の観点から、リチウムイオン二次電池10における充放電レートは、例えば、10.0C以下としてもよい。
【0052】
<2.リチウムイオン二次電池の製造方法>
次に、リチウムイオン二次電池10の製造方法について説明する。
【0053】
正極20は、以下の方法にて作製される。まず、正極活物質、導電剤及びバインダを所定の割合で混合したものを、溶媒(例えばN-メチル-2-ピロリドン)に分散させることで正極スラリー(slurry)を形成する。次に、正極スラリーを正極極板21上に塗布し、乾燥させることで、正極活物質層22を形成する。なお、塗布の方法は、特に限定されない。塗布の方法としては、例えば、ナイフコーター(knife coater)法、グラビアコーター(gravure coater)法等を用いることができる。続いて、プレス(press)機により正極活物質層22を所定の密度となるように圧縮する。これにより、正極20が作製される。
【0054】
負極30も、正極20と同様の方法にて作製される。まず、負極活物質、及びバインダを混合したものを、溶媒(例えば水)に分散させることで負極スラリーを形成する。次に、負極スラリーを負極極板31上に塗布し、乾燥させることで、負極活物質層32を形成する。続いて、プレス機により負極活物質層32を所定の密度となるように圧縮する。これにより、負極30が作製される。
【0055】
次に、セパレータ40を正極20及び負極30で挟むことで、電極構造体を作製する。続いて、作製した電極構造体を所望の形態(例えば、円筒形、角形、ラミネート形又はボタン形等)に加工し、該所望の形態の容器に挿入する。その後、容器内に電解液を注入することで、セパレータ40内の各気孔に電解液を含浸させる。これにより、リチウムイオン二次電池10が作製される。
【実施例】
【0056】
以下では、実施例及び比較例を参照しながら、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電池の製造方法について具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも一例であって、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池、及びリチウムイオン二次電池の製造方法が下記の例に限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
正極活物質としてLiNi0.88Co0.1Al0.02O2で表されるリチウムニッケルコバルト酸化物を用い、導電剤として炭素粉末を用い、バインダとしてポリフッ化ビニリデンを用いた。正極活物質、導電剤、及びバインダを94:4:2の質量比になるように混合し、N-メチル-2-ピロリドンを加えて混練することで、正極スラリーを調整した。
【0058】
次に、厚み12μm、長さ238mm及び幅29mmのアルミニウム箔からなる正極極板に、上記の正極スラリーを正極極板の一面に長さ222mm及び幅29mmで塗布し、該一面と対向する他面に長さ172mm及び幅29mmで塗布した。正極スラリー塗布後の正極極板を乾燥させた後、圧延し、正極を作製した。このとき、正極の厚みは、両面で125μmであり、正極極板上の正極活物質層の量は42.5mg/cm2であり、正極活物質層の充填密度は3.75g/cm3であった。
【0059】
作製した正極の電流密度(容量密度)を1CのCレートで測定したところ、4.3mAh/cm2であった。また、このときの正極活物質層の空隙率を断面SEM(Sccaning Electron Microscope)観察等で測定したところ、23%であった。
【0060】
その後、上記の正極の正極活物質層が形成されていない部分に、厚み70μm、長さ40mm及び幅4mmのアルミニウム平板からなる集電タブを取り付けた。
【0061】
負極活物質として人造黒鉛及びシリコン含有炭素を用い、バインダとしてカルボキシメチルセルロース及びスチレンブタジエンゴムを用いた。人造黒鉛、シリコン含有炭素、カルボキシメチルセルロース、及びスチレンブタジエンゴムを92.2:5.3:1.0:1.5の質量比になるように混合し、水を加えて混練することで、負極スラリーを調整した。
【0062】
次に、厚み8μm、長さ271mm及び幅30mmのアルミニウム箔からなる負極極板に、上記の負極スラリーを負極極板の一面に長さ235mm及び幅30mmで塗布し、該一面と対向する他面に長さ178mm及び幅30mmで塗布した。負極スラリー塗布後の負極極板を乾燥させた後、圧延し、負極を作製した。このとき、負極の厚みは両面で152μmであり、負極極板上の負極活物質層の量は23.0mg/cm2であり、負極活物質層の充填密度は1.6g/cm3であった。
【0063】
その後、上記の負極極板の負極活物質層が形成されていない部分に、厚み70μm、長さ40mm及び幅4mmのニッケル平板からなる集電タブを取り付けた。
【0064】
エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、及びジメチルカーボネートを20:20:60の体積比になるように混合することで、非水溶媒を作製した。作製した非水溶媒に、電解質塩としてLiPF6を1.15mol/Lの濃度で溶解させ、電解液を作製した。さらに、作製した電解液に、ビニレンカーボネートを電解液の総質量に対して1.5質量%にて外添し、かつ1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド(DTD)を電解液の総質量に対して1.0質量%にて外添した。
【0065】
電解液の導電率は、電気伝導率計CM25R(東亜ディーケーケー社製)に、電気伝導率セルCT57101B(東亜ディーケーケー社製)を接続することで測定した。導電率の測定は、温度を23℃(298K)に保った、露点-40℃の乾燥雰囲気中にて、電解液5mLに上記の電気伝導率セルを浸漬することで行った。
【0066】
上記で作製した正極、負極及び電解液を用いてリチウム二次電池を作製した。正極及び負極はセパレータを介して対向するように配置し、これらを所定の位置で折り返して巻回した後、プレスすることで扁平型の電極組立体を作製した。なお、セパレータは、長さ350mm及び幅32mmのポリエチレン製多孔体からなるセパレータを2枚用いた。
【0067】
作製した電極組立体をアルミラミネートにて構成される電池容器に収納し、電池容器に電解液を注入した。このとき、正極及び負極の集電タブを外部に取り出せるように配置した。以上の方法によって、実施例1に係るリチウムイオン二次電池を作製した。作製したリチウムイオン二次電池の設計容量は480mAhである。
【0068】
(リチウムイオン二次電池の評価)
続いて、上記で作製したリチウムイオン二次電池の初期充放電を行った。具体的には、25℃の環境下において、リチウムイオン二次電池を48mAの定電流で4.3Vになるまで充電し、さらに4.3Vの定電圧で電流値が24mAになるまで充電した後、48mAの定電流で2.8Vになるまで放電を行った。このときの放電容量を初期容量Q1とした。
【0069】
次に、上記のように初期充放電を行ったリチウム二次電池について、25℃の環境下において、240mAの定電流で4.3Vになるまで充電し、さらに4.3Vの定電圧で電流値が24mAになるまで充電した。その後、720mAの電流で2.8Vになるまで放電を行った。このときの放電容量を1.5C放電容量とした。
【0070】
さらに、上記のように初期充放電を行ったリチウム二次電池について、25℃の環境下において、960mAの定電流で4.3Vになるまで充電した後、4.3Vの定電圧で電流値が24mAになるまで充電し、さらに240mAの電流で2.8Vになるまで放電を行った。これを1サイクルとして、100サイクルの充放電を繰り返し行った。その後、初期容量Q1及び100サイクル目の放電容量Q[2.0C]から、以下の式を用いて、2.0Cサイクルにおける容量維持率を求めた。
2.0Cサイクルにおける容量維持率(%)=(Q[2.0C]/Q1)×100
【0071】
[実施例2]
エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、及びジメチルカーボネートを20:40:40の体積比になるように混合して、電解液中の非水溶媒を作製した以外は、実施例1と同様の方法で実施例2に係るリチウムイオン二次電池を作製した。
【0072】
[実施例3]
エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、及びメチルプロピオネートを20:10:50:20の体積比になるように混合して、電解液中の非水溶媒を作製した以外は、実施例1と同様の方法で実施例3に係るリチウムイオン二次電池を作製した。
【0073】
[比較例1]
エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、及びジメチルカーボネートを20:60:20の体積比になるように混合して、電解液中の非水溶媒を作製した以外は、実施例1と同様の方法で比較例1に係るリチウムイオン二次電池を作製した。
【0074】
[比較例2]
エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、及びメチルプロピオネートを20:45:5:30の体積比になるように混合して、電解液中の非水溶媒を作製した以外は、実施例1と同様の方法で比較例2に係るリチウムイオン二次電池を作製した。
【0075】
(比較例3)
1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド(DTD)を外添しなかった以外は、実施例1と同様の方法で比較例3に係るリチウムイオン二次電池を作製した。
【0076】
[実施例4]
正極にて、正極極板上の正極活物質層の量を46mg/cm2に変更し、正極の厚みを両面で138μmとした。負極にて、負極極板上の負極活物質層の量を25mg/cm2に変更し、負極の厚みを両面で164μmとした。これら以外は、実施例1と同様の方法で実施例4に係るリチウムイオン二次電池を作製した。実施例4に係るリチウムイオン二次電池の設計容量は、521mAhである。
【0077】
なお、実施例4に係るリチウムイオン二次電池は、25℃の環境下において、リチウムイオン二次電池を52mAの定電流で4.3Vになるまで充電し、さらに4.3Vの定電圧で電流値が26mAになるまで充電した後、52mAの定電流で2.8Vになるまで放電を行った。このときの放電容量を初期容量Q1とした。
【0078】
次に、実施例4に係るリチウムイオン二次電池は、25℃の環境下において、261mAの定電流で4.3Vになるまで充電し、さらに4.3Vの定電圧で電流値が26mAになるまで充電した。その後、782mAの電流で2.8Vになるまで放電を行った。このときの放電容量を1.5C放電容量とした。
【0079】
さらに、実施例4に係るリチウムイオン二次電池は、25℃の環境下において、1042mAの定電流で4.3Vになるまで充電した後、4.3Vの定電圧で電流値が26mAになるまで充電し、さらに261mAの電流で2.8Vになるまで放電を行った。これを1サイクルとして、100サイクルの充放電を繰り返し行った。その後、初期容量Q1及び100サイクル目の放電容量Q[2.0C]から、以下の式を用いて、2.0Cサイクルにおける容量維持率を求めた。
2.0Cサイクルにおける容量維持率(%)=(Q[2.0C]/Q1)×100
【0080】
[実施例5]
正極にて、正極極板上の正極活物質層の量を37mg/cm2に変更し、正極の厚みを両面で113μmとした。負極にて、負極極板上の負極活物質層の量を20.2mg/cm2に変更し、負極の厚みを両面で134μmとした。これら以外は、実施例1と同様の方法で実施例5に係るリチウムイオン二次電池を作製した。実施例5に係るリチウムイオン二次電池の設計容量は、423mAhである。
【0081】
なお、実施例5に係るリチウムイオン二次電池は、25℃の環境下において、リチウムイオン二次電池を42mAの定電流で4.3Vになるまで充電し、さらに4.3Vの定電圧で電流値が21mAになるまで充電した後、42mAの定電流で2.8Vになるまで放電を行った。このときの放電容量を初期容量Q1とした。
【0082】
次に、実施例5に係るリチウムイオン二次電池は、25℃の環境下において、212mAの定電流で4.3Vになるまで充電し、さらに4.3Vの定電圧で電流値が21mAになるまで充電した。その後、634mAの電流で2.8Vになるまで放電を行った。このときの放電容量を1.5C放電容量とした。
【0083】
さらに、実施例5に係るリチウムイオン二次電池は、25℃の環境下において、846mAの定電流で4.3Vになるまで充電した後、4.3Vの定電圧で電流値が21mAになるまで充電し、さらに212mAの電流で2.8Vになるまで放電を行った。これを1サイクルとして、100サイクルの充放電を繰り返し行った。その後、初期容量Q1及び100サイクル目の放電容量Q[2.0C]から、以下の式を用いて、2.0Cサイクルにおける容量維持率を求めた。
2.0Cサイクルにおける容量維持率(%)=(Q[2.0C]/Q1)×100
【0084】
[比較例4]
正極にて、正極極板上の正極活物質層の量を34.8mg/cm2に変更し、正極の厚みを両面で107μmとした。負極にて、負極極板上の負極活物質層の量を18.6mg/cm2に変更し、負極の厚みを両面で124μmとした。これら以外は、実施例1と同様の方法で比較例4に係るリチウムイオン二次電池を作製した。比較例4に係るリチウムイオン二次電池の設計容量は、397mAhである。
【0085】
なお、比較例4に係るリチウムイオン二次電池は、25℃の環境下において、リチウムイオン二次電池を40mAの定電流で4.3Vになるまで充電し、さらに4.3Vの定電圧で電流値が20mAになるまで充電した後、40mAの定電流で2.8Vになるまで放電を行った。このときの放電容量を初期容量Q1とした。
【0086】
次に、比較例4に係るリチウムイオン二次電池は、25℃の環境下において、199mAの定電流で4.3Vになるまで充電し、さらに4.3Vの定電圧で電流値が20mAになるまで充電した。その後、634mAの電流で2.8Vになるまで放電を行った。このときの放電容量を1.5C放電容量とした。
【0087】
さらに、比較例4に係るリチウムイオン二次電池は、25℃の環境下において、794mAの定電流で4.3Vになるまで充電した後、4.3Vの定電圧で電流値が20mAになるまで充電し、さらに199mAの電流で2.8Vになるまで放電を行った。これを1サイクルとして、100サイクルの充放電を繰り返し行った。その後、初期容量Q1及び100サイクル目の放電容量Q[2.0C]から、以下の式を用いて、2.0Cサイクルにおける容量維持率を求めた。
2.0Cサイクルにおける容量維持率(%)=(Q[2.0C]/Q1)×100
【0088】
[実施例6]
電解液に外添する1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド(DTD)の量を電解液の総質量に対して0.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例6に係るリチウムイオン二次電池を作製した。
【0089】
[実施例7]
電解液に外添する1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド(DTD)の量を電解液の総質量に対して2.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例7に係るリチウムイオン二次電池を作製した。
【0090】
[比較例5]
電解液に外添する1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシド(DTD)の量を電解液の総質量に対して4.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様の方法で比較例5に係るリチウムイオン二次電池を作製した。
【0091】
実施例及び比較例の各々の評価結果を下記の表1に示す。なお、表1において、「DMC」の列は、電解液におけるジメチルカーボネートの体積割合を示し、「DTD」の列は、電解液に対する1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシドの外添量を示す。
【0092】
【0093】
表1を参照すると、実施例1~7は、比較例1~5に対して、1.5C放電容量及び2.0Cサイクルにおける容量維持率の双方が高い値となっていることがわかる。
【0094】
例えば、比較例1は、導電率が本実施形態に係る範囲を外れているため、1.5C放電容量が低下していることがわかる。比較例2は、ジメチルカーボネートの体積割合が本実施形態に係る範囲を外れているため、2.0Cサイクルにおける容量維持率が低下していることがわかる。比較例3は、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシドが外添されていないため、2.0Cサイクルにおける容量維持率が低下していることがわかる。比較例4は、電流密度が本実施形態に係る範囲を外れているため、1.5C放電容量が低下していることがわかる。比較例5は、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシドの外添量が本実施形態に係る範囲を外れているため、2.0Cサイクルにおける容量維持率が低下していることがわかる。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0096】
10 リチウムイオン二次電池
20 正極
21 正極極板
22 正極活物質層
30 負極
31 負極極板
32 負極活物質層
40 セパレータ