(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】化合物、当該化合物を含む感光性樹脂組成物、感光性樹脂膜、およびカラーフィルタ、ならびに当該化合物を含む粘着剤組成物、粘着フィルムおよび偏光板
(51)【国際特許分類】
C09B 47/00 20060101AFI20220510BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220510BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220510BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20220510BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220510BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220510BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220510BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
C09B47/00 CSP
G03F7/004 505
G02B5/20 101
G02B5/22
G02B5/30
C09B67/20 F
C09J7/38
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2019224839
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2019-12-12
(31)【優先権主張番号】10-2018-0161143
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】金 善 大
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-251583(JP,A)
【文献】特表2016-536449(JP,A)
【文献】特開2005-292535(JP,A)
【文献】国際公開第2016/135180(WO,A1)
【文献】特開2011-175260(JP,A)
【文献】特開2012-185352(JP,A)
【文献】特開2012-247501(JP,A)
【文献】特開2020-086458(JP,A)
【文献】Liu, Wei; Shi, Tong-shun; Liu, Guo-fa,5,10,15,20-Tetrakis(p-4-fluorobenzoyloxyphenyl)porphyrin and its transition metal complexes,Chemical Research in Chinese Universities,2006年,22(4),,419-422
【文献】Smith, V. C.; Batty, S. V.; Richardson, T.; Foster, K. A.; Johnstone, R. A. W.; Sobral, A. J. F. N.; Gonsalves, A. M. d'A. Rocha,Chlorine sensing properties of porphyrin thin films,Thin Solid Films,1996年,284-285,,911-914
【文献】Wong, Suk-Yu; Sun, Raymond Wai-Yin; Chung, Nancy P.-Y.; Lin, Chen-Lung; Che, Chi-Ming,Physiologically stable vanadium(IV) porphyrins as a new class of anti-HIV agents,Chemical Communications (Cambridge, United Kingdom) ,2005年,(28),,3544-3546
【文献】Wang, Rongmin; Lei, Ziqiang; Wang, Yunpu; Feng, Hanyu; Zhao, Mingzhong,Synthesis and properties of meso-tetra(4-benzoyloxylphenyl)porphyrin and its complexes,Xibei Shifan Daxue Xuebao, Ziran Kexueban ,1994年,30(4),,98-100
【文献】Oviedo, Olycen; Zoltan, Tamara; Vargas, Franklin; Inojosa, Marcel; Vivas, Julio C.,Antibacterial photoactivity and photosensitized oxidation of phenols with meso-tetra-(4-benzoate, 9-phenanthryl)-porphyrin and its metal complexes (Zn and Cu),Journal of Coordination Chemistry ,2014年,67(10),,1715-1730
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 47/00
G03F 7/004
G02B 5/20
G02B 5/22
G02B 5/30
C09B 67/20
C09J 7/38
C09J 201/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される化合物:
【化1】
前記化学式1において、
Mは、Cu、Co、VO、Zn、Pt、またはInであり、
L
1~L
4は、それぞれ独立して、*-C(=O)O-*であり、
R
5~R
12は、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子であり、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、下記の化学式2-1~化学式2-3のうちのいずれか1つで表される:
【化2】
前記化学式2-1~化学式2-3において、
R
14は、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基であり、
R
15およびR
16は、それぞれ独立して、トリフルオロメチル基であり、
R
17およびR
18は、それぞれ独立して、ハロゲン原子である。
【請求項2】
下記の化学式1で表される化合物:
【化3】
前記化学式1において、
Mは、Cu、Co、VO、Zn、Pt、またはInであり、
L
1~L
4は、それぞれ独立して、*-S(=O)
2NH-*であり、
R
1~R
4は、それぞれ独立して、C3~C8の分岐アルキル基である、化合物。
【請求項3】
下記の化学式3-1~化学式3-13のうちのいずれか1つで表される、化合物:
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【化4-4】
【化4-5】
前記化学式3-1~化学式3-13において、
Mは、Cu、Co、VO、Zn、Pt、またはInである。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物(ただし、Mは、Co、Zn、Pt、またはInである)、アクリル系バインダー樹脂を含むバインダー樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、および溶媒を含む感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の感光性樹脂組成物を用いて製造される感光性樹脂膜。
【請求項6】
請求項5に記載の感光性樹脂膜を含むカラーフィルタ。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物、バインダー樹脂、硬化剤、および溶媒を含む粘着剤組成物。
【請求項8】
前記粘着剤組成物は、シランカップリング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、陽イオン開始剤、離型剤、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項
7に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
請求項7
または8に記載の粘着剤組成物を用いて製造される粘着フィルム。
【請求項10】
請求項
9に記載の粘着フィルムを含む偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、400nm~435nm近辺の非常に狭い領域を強く吸光できる化合物、当該化合物を含む感光性樹脂組成物、感光性樹脂組成物を用いて製造される感光性樹脂膜、および感光性樹脂膜を含むカラーフィルタ、ならびに当該化合物を含む粘着剤組成物、粘着剤組成物を用いて製造される粘着フィルム、および粘着フィルムを含む偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置の一つである液晶ディスプレイ装置は、軽量化、薄型化、低価格、低消費電力の駆動化および優れた集積回路との接合性などの利点があり、ノートパソコン、モニタおよびTV画像用へとその使用範囲が拡大している。このような液晶ディスプレイ装置は、ブラックマトリックス(遮光層)、カラーフィルタ、およびITO画素電極が形成された下部基板と、液晶層、薄膜トランジスタ、蓄電キャパシタ層から構成された能動回路部とITO画素電極とが形成された上部基板とを含んで構成される。
【0003】
カラーフィルタは、画素間の境界部を遮光するために透明基板上に定められたパターンに形成されたブラックマトリックス(遮光層)と、それぞれの画素を形成するために複数の色(通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の三原色)を定められた順序で配列した画素部とが順次に積層された構造を取っている。
【0004】
カラーフィルタを実現する方法の一つである顔料分散法は、ブラックマトリックスが提供された透明な基材上に顔料(着色剤)を含有する光重合性組成物(以下、感光性樹脂組成物)をコーティングし、形成しようとする形態のパターンを露光した後、非露光部位を溶剤で除去して熱硬化させる一連の過程を繰り返すことによって、着色薄膜が形成される方法である。顔料分散法によるカラーフィルタの製造に使用される感光性樹脂組成物は、一般に、アルカリ可溶性樹脂、光重合単量体、光重合開始剤、エポキシ樹脂、溶剤とその他添加剤などからなる(例えば、特許文献1)。上記の特徴を有する顔料分散法は、携帯電話、ノートパソコン、モニタ、TVなどのLCDを製造するのに活発に応用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国特許出願公開第2007-0094784号明細書 しかしながら、近年は、様々な利点を有する顔料分散法を利用したカラーフィルタ用感光性樹脂組成物においては、顔料粉末の微細化工程が難しく、組成物中の顔料の分散状態を安定化するために多様な添加剤が必要となり、これにより工程が非常に煩雑となるという問題がある。また、顔料分散法による感光性樹脂組成物(分散液)は最適な品質状態を維持するために保管および運送条件が難しいという欠点がある。
【0006】
また、顔料型感光性樹脂組成物で製造されたカラーフィルタでは、顔料粒子の大きさに始まる輝度と明暗比の限界が存在する。そして、イメージセンサ用カラー撮像素子の場合には、微細なパターン形成のためにより小さい分散粒度を要求する。このような要求に応えるべく、顔料の代わりに、または顔料と共に、粒子をなさない染料を導入した感光性樹脂組成物を製造して輝度と明暗比などの色特性とが改善されたカラーフィルタを実現しようとする試みが続いているが、染料型感光性樹脂組成物は、顔料型感光性樹脂組成物に比べて耐久性が低下する問題がある。
【0007】
一方、液晶表示装置(Liquid crystal display device、LCD)は、液晶を含んでいる液晶セルと偏光板が必要であり、これを接合するための適切な接着層または粘着層が用いられなければならない。
【0008】
また、偏光板は、一定の方向に延伸され、ヨード系化合物または二色性偏光物質が吸着配向されたポリビニルアルコール系(polyvinyl alcohol、PVA)偏光子(または「偏光フィルム」という)と、その偏光子の両面を保護するために積層された偏光子保護フィルムとを含む。具体的には、偏光子の一面には、トリアセチルセルロース系(Triacetyl cellulose、TAC)などの偏光子保護フィルムと、その保護フィルム上に液晶セルと接合する粘着剤層と離型フィルムとが備えられ、偏光子の他の一面には、偏光子保護フィルムと基材フィルムに接着剤層の積層された表面保護フィルムとが備えられた多層から構成される。
【0009】
このような構造の偏光板を液晶セルに付着させる工程において、粘着剤層から離型フィルムは剥離され、後工程で表面保護フィルムの役割が終わるとこれも剥離して除去される。離型フィルムおよび表面保護フィルムは、プラスチック材料から構成されているため、電気絶縁性が高く、剥離時に静電気を発生させる。
【0010】
このように発生した静電気は、光学部材に異物が吸着して表面を汚染させる問題、液晶配向のねずれによるムラの問題などを誘発させ、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、TFT)回線の破損誘発の恐れがある。特に、最近は、液晶表示装置パネルの大型化に伴い、液晶表示装置の製造時に用いられる偏光板の大きさも拡大し、工程の高速化が進むにつれて静電気の発生量がさらに増加していて、これに対する問題の解決がさらに急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて、分光特性に優れた化合物を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の他の目的は、分光特性に優れた化合物を含む感光性樹脂組成物を提供することである。さらに他の目的は、感光性樹脂組成物を用いて製造される感光性樹脂膜および感光性樹脂膜を含むカラーフィルタを提供することである。
【0013】
また、本発明の他の目的は、分光特性に優れた化合物を含む粘着剤組成物を提供することである。さらに他の目的は、粘着剤組成物を用いて製造される粘着フィルムおよび粘着フィルムを含む偏光板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一実施形態は、下記の化学式1で表される化合物を提供する。
【0015】
【0016】
化学式1において、
Mは、Cu、Co、VO、Zn、Pt、またはInであり、
L1~L4は、それぞれ独立して、*-C(=O)O-*または*-S(=O)2NH-*であり、
R1~R4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基、置換もしくは非置換のC3~C20シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、または置換もしくは非置換のC2~C20ヘテロアリール基であり、
R5~R12は、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子である。
【0017】
L1~L4は、それぞれ独立して、*-C(=O)O-*であり、R1~R4は、それぞれ独立して、下記の化学式2で表される。
【0018】
【0019】
化学式2において、
R13は、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基であり、
nは、1または2の整数である。
【0020】
化学式2は、下記の化学式2-1~化学式2-3のうちのいずれか1つで表される。
【0021】
【0022】
化学式2-1~化学式2-3において、
R14は、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基であり、
R15およびR16は、それぞれ独立して、トリフルオロメチル基であり、
R17およびR18は、それぞれ独立して、ハロゲン原子である。
【0023】
L1~L4は、それぞれ独立して、*-S(=O)2NH-*であり、R1~R4は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基であってもよい。
【0024】
化合物は、下記の化学式3-1~化学式3-13のうちのいずれか1つで表される。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
化学式3-1~化学式3-13において、
Mは、Cu、Co、VO、Zn、Pt、またはInである。
【0031】
他の実施形態は、前記化合物、バインダー樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、および溶媒を含む感光性樹脂組成物を提供する。
【0032】
さらに他の実施形態は、前記感光性樹脂組成物を用いて製造される感光性樹脂膜を提供する。
【0033】
さらに他の実施形態は、前記感光性樹脂膜を含むカラーフィルタを提供する。
【0034】
さらに他の実施形態は、前記化合物、バインダー樹脂、硬化剤、および溶媒を含む粘着剤組成物を提供する。
【0035】
前記粘着剤組成物は、シランカップリング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、陽イオン開始剤、離型剤、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0036】
さらに他の実施形態は、前記粘着剤組成物を用いて製造される粘着フィルムを提供する。
【0037】
さらに他の実施形態は、前記粘着フィルムを含む偏光板を提供する。
【0038】
その他本発明の態様の具体的な事項は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、分光特性に優れた化合物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例として提示されるものであり、これによって本発明が限定されず、本発明は後述する請求範囲の範疇によってのみ定義される。
【0041】
本明細書において、特別な言及がない限り、「置換」あるいは「置換された」とは、本発明の官能基のうちの1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子(F、Br、Cl、またはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基(NH2、NH(R200)、またはN(R201)(R202)であり、ここで、R200、R201、およびR202は、同一または互いに異なり、それぞれ独立して、C1~C10アルキル基である)、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアルキニル基、置換もしくは非置換の脂環族有機基、置換もしくは非置換のアリール基、および置換もしくは非置換のヘテロ環基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されていることを意味する。なお、本明細書中、Cとは炭素原子を表し、例えば、C1は炭素原子数(炭素数)が1であることを意味する。したがって、「C1~C10アルキル基」とは、「炭素数1~20のアルキル基」を意味する。
【0042】
本明細書において、特別な言及がない限り、「アルキル基」とは、C1~C20アルキル基を意味し、好ましくはC1~C15アルキル基を意味し、「シクロアルキル基」とは、C3~C20シクロアルキル基を意味し、好ましくはC3~C18シクロアルキル基を意味し、「アルコキシ基」とは、C1~C20アルコキシ基を意味し、好ましくはC1~C18アルコキシ基を意味し、「アリール基」とは、C6~C20アリール基を意味し、好ましくはC6~C18アリール基を意味し、「アルケニル基」とは、C2~C20アルケニル基を意味し、好ましくはC2~C18アルケニル基を意味し、「アルキレン基」とは、C1~C20アルキレン基を意味し、好ましくはC1~C18アルキレン基を意味し、「アリーレン基」とは、C6~C20アリーレン基を意味し、好ましくはC6~C16アリーレン基を意味する。
【0043】
本明細書において、特別な言及がない限り、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」の両方とも可能であることを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の両方とも可能であることを意味する。
【0044】
本明細書において、別途の定義がない限り、「組み合わせ」とは、混合または共重合を意味する。また、「共重合」とは、ブロック共重合あるいはランダム共重合を意味し、「共重合体」とは、ブロック共重合体あるいはランダム共重合体を意味する。
【0045】
本明細書内の化学式において、別途の定義がない限り、化学結合が描かれるべき位置に化学結合が描かれていない場合は、前記位置に水素原子が結合していることを意味する。
【0046】
また、本明細書において、別途の定義がない限り、「*」は、同一または異なる原子または化学式と連結される部分を意味する。
【0047】
さらに、本明細書において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合のみならず、2つの部材の間にさらに他の部材が存在する場合も含む。
【0048】
また、本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0049】
本発明の一実施形態は、下記の化学式1で表される化合物である。
【0050】
【0051】
化学式1において、
Mは、Cu、Co、VO、Zn、Pt、またはInであり、
L1~L4は、それぞれ独立して、*-C(=O)O-*または*-S(=O)2NH-*であり、
R1~R4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基、置換もしくは非置換のC3~C20シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、または置換もしくは非置換のC2~C20ヘテロアリール基であり、
R5~R12は、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子である。
【0052】
ここで、ハロゲン原子としては、F、Cl、BrまたはIであり、本実施形態において、好ましくはF、ClまたはBrであり、より好ましくはFまたはClである。
【0053】
C1~C20アルキル基としては、炭素数1~20の直鎖または分岐のアルキル基であればよく、本実施形態においては、好ましくは炭素数1~15の直鎖または分岐のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数3~8の分岐のアルキル基である。C1~C20アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基などが挙げられる。
【0054】
C3~C20シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などが挙げられる。
【0055】
C6~C20アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
【0056】
C2~C20ヘテロアリールとは、当該ヘテロアリール基の炭素数が2~20であることを意味する。本実施形態においては、好ましくは炭素数3~20のヘテロアリールであり、より好ましくは炭素数3~14のヘテロアリールである。このようなヘテロアリール基の例としては、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、ピリミジニル基、イミダゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、キノリル基、チアゾリル基、オキサジアゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基などが挙げられる。
【0057】
既存のカラーフィルタレジストのうち、ブルーレジストの場合、普遍的にブルー顔料(ほとんどpigment blue15:6;B15:6)に色座標調整および輝度増大のために一部のバイオレット色材を添加することが一般的である。しかし最近、色再現率増大のためのブルー領域の色座標は、Bxがより小さくなる傾向にある。このような色再現率の高いブルーカラーフィルタを実現するためには、光源のblue LEDの波長である450nm近辺に狭い透過スペクトルを作らなければならず、このために、従来普遍的に使用されていたB15:6(epsilon blue)の代わりに、beta blueのB15:3またはB15:4顔料を用い、かつPWC(Pigment Weight Content/顔料含有重量)を高くして透過スペクトルの幅を低減したレジストを作製する方向が提示されている。しかし、この場合、レジスト内の色材の含有量が高くなるに伴い、既存のsRGB級ブルーに対比して輝度が非常に低下して、実際適用時の欠点として作用している。
【0058】
一方、一実施形態による化合物は、400nm~435nmの非常に狭い領域を強く吸光する分光特性を有する。これにより、この一実施形態による化合物を着色剤として含む感光性樹脂組成物を用いて製造されたカラーフィルタは、色再現率に優れる。さらに、一実施形態による化合物を色素として含む粘着剤組成物を用いて製造された粘着フィルムは、高い色再現率および低い反射率を有する。
【0059】
また、一実施形態による化合物は、400nm~435nmの非常に狭い領域を強く吸光する分光特性を有しつつ、かつ有機溶媒に対する溶解度が高い。これにより、この一実施形態による化合物は、感光性樹脂組成物の着色剤および粘着剤組成物の色素として用いる際に、有機溶剤へ溶解しやすいため取り扱いやすく、好適である。
【0060】
化学式1において、置換基(*-L1-R1、*-L2-R2、*-L3-R3、および*-L4-R4)の置換位置は、オルト(ortho)、メタ(meta)、パラ(para)のいずれの位置にきても構わない。置換基の置換位置がオルトの場合、吸光波長が短波長側に移動して、有機溶媒に対する溶解度は向上するのに対して、置換基の置換位置がパラの場合、吸光波長が長波長側に移動して、有機溶媒に対する溶解度はやや低くなる。例えば、一実施形態による化合物は、400nm~435nmで非常に強い吸光度を示し、好ましくは420nm~435nmで非常に強い吸光度を示す。よって、この一実施形態による化合物を着色剤(色素)として含む組成物の色再現率、色安定性、耐光性等を考慮して、一実施形態において、置換基の位置はパラであるのが好ましい。
【0061】
例えば、化学式1は、下記の化学式1-1で表される。
【0062】
【0063】
化学式1-1において、
Mは、Cu、Co、VO、Zn、Pt、またはInであり、
L1~L4は、それぞれ独立して、*-C(=O)O-*または*-S(=O)2NH-*であり、
R1~R4は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基、置換もしくは非置換のC3~C20シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基、または置換もしくは非置換のC2~C20ヘテロアリール基であり、
R5~R12は、それぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子である。
【0064】
好ましい実施形態によれば、化学式1において、L1~L4は、それぞれ独立して、*-C(=O)O-*であり、R1~R4は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6~C20アリール基である。L1~L4は、それぞれ独立して、*-C(=O)O-*の場合、一実施形態による化合物の吸光波長がさらに長波長側に移動できる。
【0065】
例えば、化学式1において、L1~L4は、それぞれ独立して、*-C(=O)O-*であり、R1~R4は、それぞれ独立して、下記の化学式2で表される。
【0066】
【0067】
化学式2において、
R13は、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基であり、
nは、1または2の整数である。
【0068】
R1~R4がそれぞれ独立して化学式2で表される場合、一実施形態による化合物は、有機溶媒に対する溶解度が高くなり得る。
【0069】
例えば、化学式2は、下記の化学式2-1~化学式2-3のうちのいずれか1つで表される。
【0070】
【0071】
化学式2-1~化学式2-3において、
R14は、ハロゲン原子またはトリフルオロメチル基であり、
R15およびR16は、それぞれ独立して、トリフルオロメチル基であり、
R17およびR18は、それぞれ独立して、ハロゲン原子である。
【0072】
例えば、化学式1において、L1~L4は、それぞれ独立して、*-C(=O)O-*であり、R5~R12は、それぞれ独立して、水素原子であってもよい。
【0073】
化学式1において、L1~L4は、それぞれ独立して、*-C(=O)O-*でかつ、R5~R12のうちの少なくとも1つ以上、例えば、少なくとも2以上がハロゲン原子の場合、一実施形態による化合物の吸光波長がさらに長波長側に移動できる。
【0074】
例えば、化学式1において、L1~L4は、それぞれ独立して、*-C(=O)O-*であり、R5およびR9は、それぞれ独立して、ハロゲン原子であり、R6~R8およびR10~R12は、それぞれ独立して、水素原子であってもよい。
【0075】
例えば、化学式1において、L1~L4は、それぞれ独立して、*-C(=O)O-*であり、R5、R6、R9およびR10は、それぞれ独立して、ハロゲン原子であり、R7、R8、R11およびR12は、それぞれ独立して、水素原子であってもよい。
【0076】
他の好ましい実施形態によれば、化学式1において、L1~L4は、それぞれ独立して、*-S(=O)2NH-*であり、R1~R4は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基であってもよい。L1~L4は、それぞれ独立して、*-S(=O)2NH-*の場合、一実施形態による化合物の有機溶媒に対する溶解度がさらに向上できる。
【0077】
例えば、化学式1において、L1~L4は、それぞれ独立して、*-S(=O)2NH-*であり、R5~R12は、それぞれ独立して、水素原子であってもよい。
【0078】
例えば、一実施形態による化合物は、下記の化学式3-1~化学式3-13のうちのいずれか1つで表されるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
化学式3-1~化学式3-13において、
Mは、Cu、Co、VO(V=O)、Zn、Pt、またはInである。
【0085】
好ましい実施形態によれば、Mは、Zn、VO(V=O)、またはCuである。
【0086】
他の実施形態によれば、本発明は、化学式1で表される化合物、バインダー樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤、および溶媒を含む感光性樹脂組成物を提供する。例えば、感光性樹脂組成物は、化学式1で表される化合物を着色剤として含むことができる。
【0087】
化学式1で表される化合物は、感光性樹脂組成物の重量に対して、好ましくは0.01重量%~7重量%、より好ましくは0.1重量%~5重量%、さらに好ましくは0.5重量%~3重量%含まれる。感光性樹脂組成物中に化学式1で表される化合物がかような範囲で含有されることで、非常に高い色再現が可能であり、優れたプロセスマージンを有することができる。
【0088】
例えば、着色剤は、化学式1で表される化合物のほか、青色染料、青色顔料、赤色染料、赤色顔料、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0089】
青色染料は、下記の化学式4で表される。
【0090】
【0091】
化学式4において、
R29およびR30は、それぞれ独立して、置換されたC1~C20アルキル基、または置換もしくは非置換のC3~C20シクロアルキル基であり、
R31は、水素原子またはハロゲン基であり、
R32は、水素原子、または置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基であり、
R33は、アクリレート基で置換もしくは非置換のC1~C20アルキル基であり、
X-は、下記の化学式A~化学式Cのうちのいずれか1つで表される。
【0092】
【0093】
(化学式Bにおいて、n3は、0~10の整数である)
例えば、青色染料は、下記の化学式4-1または化学式4-2で表される。
【0094】
【0095】
化学式4-1および化学式4-2において、
X-は、下記の化学式A~化学式Cのうちのいずれか1つで表される。
【0096】
【0097】
(化学式Bにおいて、n3は、0~10の整数である)
具体的には、青色染料は、化学式4-1で表される。
【0098】
化学式4-1で表される化合物は、シクロヘキシル基を含むことによって、耐熱性が改善され、窒素原子に置換されたフェニル基がメチル基を含むことによって、耐光性が改善される。よって、高色実現が可能であり、かつ、高輝度特性を達成することができるだけでなく、耐熱性、耐光性などの耐久性にも優れたカラーフィルタを提供することができる。なお、本明細書中、CIE色座標(Bx, By)において(同一のBy値を基準として)Bx値が低いほど、高色実現がより高いということを意味する。
【0099】
例えば、青色顔料は、エプシロン青色(epsilon blue)顔料であってもよい。一実施形態による青色着色剤として青色顔料を用いる場合、ベータ青色(beta blue)顔料よりエプシロン青色(epsilon blue)顔料を使用する方が、輝度の向上に役立つ。
【0100】
例えば、青色顔料は、C.I.Pigment Blue15:6であってもよい。
【0101】
例えば、赤色顔料は、C.I.赤色顔料254、C.I.赤色顔料255、C.I.赤色顔料264、C.I.赤色顔料270、C.I.赤色顔料272、C.I.赤色顔料177、C.I.赤色顔料179、C.I.赤色顔料89などであってもよいが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0102】
着色剤は、感光性樹脂組成物の重量に対して、好ましくは3重量%~20重量%含まれる。着色剤がかような範囲で感光性樹脂組成物に含まれる場合、高色座標での高輝度(広色域かつ高輝度)を達成することができる。
【0103】
バインダー樹脂としては、好ましくはアクリル系バインダー樹脂を含む。アクリル系バインダー樹脂は、第1エチレン性不飽和単量体およびこれと共重合可能な第2エチレン性不飽和単量体の共重合体で、1つ以上のアクリル系繰り返し単位を含む樹脂である。
【0104】
第1エチレン性不飽和単量体は、1つ以上のカルボキシ基および/またはヒドロキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体であり、その具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0105】
第1エチレン性不飽和単量体はアクリル系バインダー樹脂の重量に対して、好ましくは5重量%~50重量%、より好ましくは10重量%~40重量%含まれる。
【0106】
第2エチレン性不飽和単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルベンジルメチルエーテルなどの芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸エステル化合物;2-アミノエチル(メタ)アクリレート、2-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル化合物;酢酸ビニル、安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル化合物;グリシジル(メタ)アクリレートなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;(メタ)アクリルアミドなどの不飽和アミド化合物;などが挙げられ、これらを単独でまたは2以上混合して使用することができる。
【0107】
アクリル系バインダー樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル酸/ベンジルメタクリレート/スチレン/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらを単独または2種以上を配合して使用してもよい。例えば、アクリル系バインダー樹脂としては、Showadenko社のRY-25などが挙げられる。
【0108】
アクリル系バインダー樹脂の重量平均分子量は、好ましくは3,000g/mol~150,000g/molであり、より好ましくは5,000g/mol~50,000g/molであり、さらに好ましくは20,000g/mol~30,000g/molである。アクリル系バインダー樹脂の重量平均分子量がかような範囲内の場合、物理的および化学的物性に優れた感光性樹脂組成物を得ることができ、よって、かような感光性樹脂組成物は、適切な粘度を有し、カラーフィルタの製造時においては基板との密着性に優れている。
【0109】
アクリル系バインダー樹脂の酸価は、好ましくは15mgKOH/g~60mgKOH/g、より好ましくは20mgKOH/g~50mgKOH/gである。アクリル系バインダー樹脂の酸価がかような範囲内の場合、ピクセルパターンの解像度に優れている。
【0110】
バインダー樹脂は、感光性樹脂組成物の重量に対して、好ましくは0.5重量%~20重量%、より好ましくは1重量%~15重量%、さらに好ましくは2重量%~10重量%含まれる。バインダー樹脂がかような範囲内に含まれる場合、カラーフィルタの製造時において現像性に優れ、架橋性が改善されて優れた表面平滑度を得ることができる。
【0111】
光重合性化合物は、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を有する(メタ)アクリル酸の一官能または多官能エステルが使用できる。
【0112】
光重合性化合物は、エチレン性不飽和二重結合を有することによって、パターン形成工程で露光時に十分な重合を起こすことによって、耐熱性、耐光性および耐薬品性に優れたパターンを形成することができる。
【0113】
光重合性化合物の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエポキシ(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、ノボラックエポキシ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0114】
光重合性化合物の市販の製品を例に挙げると次の通りである。(メタ)アクリル酸の一官能エステルの例としては、東亜合成化学工業(株)社のアロニックスM-101(登録商標、以下略)、同M-111、同M-114など;日本化薬(株)社のKAYARAD TC-110S(登録商標、以下略)、同TC-120Sなど;大阪有機化学工業(株)社のV-158(登録商標、以下略)、V-2311などが挙げられる。(メタ)アクリル酸の二官能エステルの例としては、東亜合成化学工業(株)社のアロニックスM-210(登録商標、以下略)、同M-240、同M-6200など;日本化薬(株)社のKAYARAD HDDA(登録商標、以下略)、同HX-220、同R-604など;大阪有機化学工業(株)社のV-260(登録商標、以下略)、V-312、V-335などが挙げられる。(メタ)アクリル酸の三官能エステルの例としては、東亜合成化学工業(株)社のアロニックスM-309(登録商標、以下略)、同M-400、同M-405、同M-450、同M-710、同M-8030、同M-8060など;日本化薬(株)社のKAYARAD TMPTA(登録商標、以下略)、同DPCA-20、同-30、同-60、同-120など;大阪有機化薬工業(株)社のV-295(登録商標、以下略)、同-300、同-360、同-GPT、同-3PA、同-400などが挙げられる。これらの製品を単独使用または2種以上共に使用することができる。
【0115】
光重合性化合物は、より優れた現像性を付与するために、酸無水物で処理して使用してもよい。
【0116】
光重合性化合物は、感光性樹脂組成物の重量に対して、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは5重量%~10重量%含まれる。感光性樹脂組成物中に光重合性化合物がかような範囲内で含まれる場合、パターン形成工程において露光時に感光性樹脂組成物の硬化を十分に行うことができるため優れた信頼性を得ることができ、アルカリ現像液への現像性にも優れる。
【0117】
光重合開始剤は、感光性樹脂組成物に一般に使用される開始剤であって、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、ベンゾイン系化合物、トリアジン系化合物、オキシム系化合物、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0118】
アセトフェノン系化合物の例としては、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2,2’-ジブトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、p-t-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-t-ブチルジクロロアセトフェノン、4-クロロアセトフェノン、2,2’-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オンなどが挙げられる。
【0119】
ベンゾフェノン系化合物の例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-2-メトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0120】
チオキサントン系化合物の例としては、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0121】
ベンゾイン系化合物の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0122】
トリアジン系化合物の例としては、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(3’,4’-ジメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4’-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ビフェニル4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-s-トリアジン、2-4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-s-トリアジンなどが挙げられる。
【0123】
オキシム系化合物の例としては、O-アシルオキシム系化合物、2-(o-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン、1-(o-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン、O-エトキシカルボニル-α-オキシアミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどを使用することができる。O-アシルオキシム系化合物の具体例としては、1,2-オクタンジオン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1,2-ジオン2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1,2-ジオン2-オキシム-O-ベンゾエート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-オクタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-ブタン-1-オンオキシム-O-アセテートなどが挙げられる。
【0124】
光重合開始剤は、オキシム系開始剤およびアセトフェノン系開始剤を同時に含むことができる。この場合、1種の光重合開始剤のみを使用する場合より硬化効率を高めて優れたプロセスマージンを確保することができる。また、この場合、オキシム系開始剤は、アセトフェノン系開始剤より多い含有量で含まれる。オキシム系開始剤がアセトフェノン系開始剤と等しいか、より小さい含有量で含まれる場合、感度が低い(感度に優れる)、所望のCD(Critical Dimension/臨界値数)の実現が可能になる。
【0125】
光重合開始剤は、上記した化合物以外にも、カルバゾール系化合物、ジケトン類化合物、スルホニウムボレート系化合物、ジアゾ系化合物、イミダゾール系化合物、ビイミダゾール系化合物、フルオレン系化合物などを使用することができる。
【0126】
光重合開始剤は、光を吸収して励起状態になった後、そのエネルギーを伝達することによって化学反応を起こす光増感剤と共に使用されてもよい。
【0127】
光増感剤の例としては、テトラエチレングリコールビス-3-メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトールテトラキス-3-メルカプトプロピオネートなどが挙げられる。
【0128】
光重合開始剤は、感光性樹脂組成物の重量に対して、0.01重量%~5重量%、好ましくは0.1重量%~1重量%含まれる。感光性樹脂組成物中に光重合開始剤がかような範囲内で含まれる場合、パターン形成工程で露光時に感光性樹脂組成物の硬化が十分に行われて優れた信頼性を得ることができ、パターンの耐熱性、耐光性および耐薬品性に優れ、解像度および密着性にも優れており、未反応開始剤による透過率の低下を防止することができる。
【0129】
溶媒は、化学式1で表される化合物を含む着色剤、バインダー樹脂、光重合性化合物、および光重合開始剤との相溶性を有しかつ、反応しない物質が使用できる。
【0130】
溶媒の例としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジクロロエチルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルフェニルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類;メチルエチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、2-ヘプタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;乳酸メチル、乳酸エチルなどの乳酸エステル類;オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチルなどのオキシ酢酸アルキルエステル類;メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチルなどのアルコキシ酢酸アルキルエステル類;3-オキシプロピオン酸メチル、3-オキシプロピオン酸エチルなどの3-オキシプロピオン酸アルキルエステル類;3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチルなどの3-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピルなどの2-オキシプロピオン酸アルキルエステル類;2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸メチルなどの2-アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類;2-オキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エチルなどの2-オキシ-2-メチルプロピオン酸エステル類、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチルなどの2-アルコキシ-2-メチルプロピオン酸アルキル類のモノオキシモノカルボン酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチルなどのエステル類;ピルビン酸エチルなどのケトン酸エステル類などがあり、また、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニラド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセチルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1-オクタノール、1-ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどの高沸点溶媒が挙げられる。
【0131】
これらのうち、好適には、相溶性および反応性を考慮して、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;2-ヒドロキシプロピオン酸エチルなどのエステル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのカルビトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類が使用できる。
【0132】
溶媒は、感光性樹脂組成物の重量に対して、残部量、好ましくは40重量%~80重量%、より好ましくは50重量%~75重量%含まれる。感光性樹脂組成物中に溶媒がかような範囲内で含まれる場合、感光性樹脂組成物が適切な粘度を有することによって、カラーフィルタの製造時において工程性に優れる。
【0133】
感光性樹脂組成物は、基板との密着性などを改善するために、エポキシ化合物をさらに含んでもよい。
【0134】
エポキシ化合物の例としては、フェノールノボラックエポキシ化合物、テトラメチルビフェニルエポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、脂環族エポキシ化合物、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0135】
エポキシ化合物は、感光性樹脂組成物の重量に対して、好ましくは0.01重量%~20重量%、より好ましくは0.1重量%~10重量%含まれる。感光性樹脂組成物中にエポキシ化合物がかような範囲内で含まれる場合、密着性、保存性などに優れる。
【0136】
また、感光性樹脂組成物は、基板との接着性を向上させるために、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基などの反応性置換基を有するシランカップリング剤をさらに含んでもよい。
【0137】
シランカップリング剤の例としては、トリメトキシシリル安息香酸、γメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γイソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、βエポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、ビニルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられ、これらを単独または2種以上混合して使用することができる。
【0138】
シランカップリング剤は、感光性樹脂組成物の重量に対して、好ましくは0.01重量%~10重量%、より好ましくは0.05重量%~5重量%含まれる。感光性樹脂組成物中にシランカップリング剤がかような範囲内で含まれる場合、密着性、保存性などに優れている。
【0139】
また、感光性樹脂組成物は、必要に応じて、コーティング性の向上および欠点生成防止効果のために界面活性剤をさらに含んでもよい。
【0140】
界面活性剤の例としては、BM Chemie社のBM-1000(登録商標、以下略)、BM-1100など;大日本インキ化学工業(株)社のメガファックF142D(登録商標、以下略)、同F172、同F173、同F183、同F554など;住友スリーエム(株)社のフロラードFC-135(登録商標、以下略)、同FC-170C、同FC-430、同FC-431など;旭硝子(株)社のサーフロンS-112(登録商標、以下略)、同S-113、同S-131、同S-141、同S-145など;東レシリコーン(株)社のSH-28PA(登録商標、以下略)、同-190、同-193、SZ-6032、SF-8428などの名称で市販のフッ素系界面活性剤を使用することができる。
【0141】
界面活性剤は、感光性樹脂組成物の重量に対して、0.001重量%~5重量%使用できる。感光性樹脂組成物中に界面活性剤がかような範囲内で含まれる場合、コーティング均一性が確保され、ムラが発生せず、ガラス基板に対する湿潤性(wetting)に優れている。
【0142】
また、感光性樹脂組成物は、物性を阻害しない範囲内で、酸化防止剤、安定剤などのその他添加剤が一定量添加されてもよい。
【0143】
他の実施形態によれば、一実施形態による感光性樹脂組成物を用いて製造された感光性樹脂膜を提供する。
【0144】
感光性樹脂膜内のパターン形成工程は次の通りである。
【0145】
感光性樹脂組成物を、支持基板上にスピンコーティング、スリットコーティング、インクジェットプリンティングなどで塗布する工程;前記塗布された感光性樹脂組成物を乾燥して感光性樹脂組成物膜を形成する工程;前記感光性樹脂組成物膜を露光する工程;前記露光した感光性樹脂組成物膜をアルカリ水溶液で現像して感光性樹脂膜を製造する工程;および前記感光性樹脂膜を加熱処理する工程を含む。前記工程上の条件などについては当該分野で広く知られた事項であるので、本明細書で詳細な説明は省略する。
【0146】
さらに他の実施形態によれば、感光性樹脂膜を含むカラーフィルタを提供する。
【0147】
さらに他の実施形態によれば、化学式1で表される化合物、バインダー樹脂、硬化剤、および溶媒を含む粘着剤組成物を提供する。
【0148】
さらに他の実施形態によれば、粘着剤組成物を用いて製造される粘着フィルムを提供する。
【0149】
以下、本発明の一実施形態による粘着剤組成物および粘着フィルムについて説明する。
【0150】
一実施形態による粘着剤組成物は、最大吸収波長が400nm~435nmである、化学式1で表される化合物を(着色剤として)含むことによって、外部から入る光によってパネル内で発生する乱反射、つまり、反射による視認性低下の問題を改善することができる。視認性改善のための反射率の測定は、分光測色計により測定可能である。つまり、外部からパネルに入った光がパネル内部の粒子によって発生する乱反射によって視認性を低下させる水準を、反射率により表示することができる。
【0151】
化学式1で表される化合物は、粘着剤組成物の重量に対して、好ましくは0.001重量%~0.01重量%含まれる(粘着剤組成物の固形分基準では0.01重量%~0.03重量%含まれる)。
【0152】
バインダー樹脂は、アクリル系バインダー樹脂であってもよく、アクリル系バインダー樹脂は、粘着剤組成物の重量に対して、好ましくは65重量%~85重量%、より好ましくは70重量%~80重量%含まれる(粘着剤組成物の固形分基準では90重量%~98重量%含まれる)。
【0153】
粘着剤組成物を構成するアクリル系バインダー樹脂は、第1(メタ)アクリレート共重合体および/または第2(メタ)アクリレート共重合体を含むことができる。
【0154】
第1(メタ)アクリレート共重合体と第2(メタ)アクリレート共重合体とは、官能基が互いに異なっていてもよい。
【0155】
第1(メタ)アクリレート共重合体は、粘着フィルムのマトリックスを形成し、水酸基、カルボン酸基のうちの1つ以上を提供して、粘着剤組成物を自己硬化させることができる。
【0156】
第1(メタ)アクリレート共重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体、カルボン酸基を有する(メタ)アクリル系単量体のうちの1つ以上;およびこれらと共重合可能な単量体(以下、「第1共重合単量体」)を含む単量体混合物の共重合体であってもよい。単量体混合物のうち、水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体、カルボン酸基を有する(メタ)アクリレート単量体のうちの1つ以上は、単量体混合物の全mol数に対して、好ましくは10mol%以下、より好ましくは0.01mol%~5mol%含まれる。かような範囲で第2(メタ)アクリレート共重合体と共に含まれる場合、屈曲性、ベンディング性が良好な、フレキシブル装置に使用可能な粘着フィルムを実現することができる。
【0157】
水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体は、自己硬化可能にし、および/または粘着フィルムの粘着力を高め、粘着フィルムの耐久性を高めることができる。水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体は、単量体混合物の全mol数に対して、好ましくは5mol%以下、より好ましくは0.01mol%~5mol%含まれる。かような範囲で含まれることにより、粘着フィルムの粘着力と耐久性が良くなり、粘着剤組成物の熟成が速くなる効果があり得る。
【0158】
水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体は、1つ以上の水酸基を有するC1~C20アルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体、1つ以上の水酸基を有するC3~C20シクロアルキル基を有する(メタ)アクリル系単量体、1つ以上の水酸基を有するC6~C20芳香族基を有する(メタ)アクリレート単量体のうちの1つ以上を含むことができる。具体的には、水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、1-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロペンチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートのうちの1つ以上を含むことができる。これらは、単独または2種以上混合して含まれる。
【0159】
カルボン酸基を有する(メタ)アクリレート単量体は、自己硬化可能にすることができる。カルボン酸基を有する(メタ)アクリレート単量体は、単量体混合物の全mol数に対して、好ましくは5mol%以下、より好ましくは0.01mol%~5mol%含まれる。かような範囲で含まれることにより、粘着フィルムの酸度が高くなくて被着体に対する腐食の危険がなく、抵抗を低下させることができ、粘着フィルムの信頼性が高まる効果があり得る。カルボン酸基を有する(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリル酸などを含むことができるが、これに限定されない。
【0160】
第1共重合単量体は、水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体、カルボン酸基を有する(メタ)アクリレート単量体のうちの1つ以上と共重合して、第1(メタ)アクリレート共重合体を形成し、粘着フィルムのマトリックスを形成したり、追加的な機能を提供することができる。
【0161】
第1共重合単量体は、アルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体を含むことができる。アルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリレート共重合体に含まれて、粘着フィルムのマトリックスを形成し、粘着フィルムの機械的強度を高めることができる。アルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体は、単量体混合物の全mol数に対して、好ましくは50mol%~99.99mol%、より好ましくは50mol%~95mol%、さらに好ましくは55mol%~99.9mol%、特に好ましくは55mol%~90mol%、もっとも好ましくは60mol%~85mol%含まれる。かような範囲で含まれることにより、粘着フィルムの機械的強度が高くなり得る。アルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体は、非置換のC4~C12アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むことができる。具体的には、アルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体は、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、iso-オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートのうちの1つ以上を含むことができるが、これに限定されない。これらは、単独または2種以上混合して含まれる。
【0162】
第1共重合単量体は、脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体、ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体のうちの1つ以上をさらに含むことによって、粘着フィルムを含む偏光板の鉛筆硬度をより高めることもできる。
【0163】
脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体は、第1(メタ)アクリレート共重合体に含まれて、第2(メタ)アクリレート共重合体と共に、偏光板用粘着フィルムが粘着された偏光板の粘着フィルム上の偏光板の鉛筆硬度を高めることができる。具体的には、偏光板用粘着フィルムが粘着された偏光板は、粘着フィルム上での偏光板の鉛筆硬度が2H以上、さらに具体的には2H~3Hになってもよい。かような範囲で、偏光板を偏光板用粘着フィルムでガラス素材などの液晶パネルに粘着しても、偏光板を粘着フィルムなしに液晶パネルに粘着する場合に対比して鉛筆硬度が大きく減少せず、偏光板を光学表示装置に使用することができる。また、脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体は、下記のヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体と共に(メタ)アクリレート共重合体に含まれて、偏光板用粘着フィルムの25℃におけるクリープは低下させ、85℃におけるクリープは高めることができる。特に、脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体とヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体が、それぞれホモポリマーのガラス転移温度が好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃~180℃になることによって、粘着フィルムの25℃におけるクリープは低下させ、85℃におけるクリープは高めることができる。単量体混合物中、脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体:ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリル系単量体は、1:0.25~1:2のモル数の比で含まれる。かような範囲で含まれることにより、常温で凝集力または強度が高まる効果があり得る。あるいは、高温でstress relaxation効果および偏光フィルムのたわみ改善効果があり得る。
【0164】
脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体は、単量体混合物の全mol数に対して、好ましくは1mol%~30mol%、より好ましくは5mol%~20mol%含まれる。かような範囲で含まれることにより、粘着フィルム上の偏光板の鉛筆硬度を高め、凝集力が高まる効果があり得る。
【0165】
脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体は、置換もしくは非置換のC5~C20単一環または複素環の脂環族基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むことができる。
【0166】
「脂環族基」は、窒素、酸素、または硫黄のヘテロ原子を含有しない非-ヘテロ脂環族基を意味する。「複素環」は、2以上の脂環族基が1個以上の炭素原子を共有して連結されたものを意味する。
【0167】
具体的には、置換もしくは非置換のC5~C20単一環または複素環の脂環族基を有する(メタ)アクリル酸エステルは、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートのうちの1つ以上を含むことができる。これらは、単独または2種以上混合して含まれる。
【0168】
ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体は、脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体と共に、25℃におけるクリープは低下させ、85℃におけるクリープは高めることができる。
【0169】
ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体は、単量体混合物の全mol数に対して、好ましくは1mol%~30mol%、より好ましくは5mol%~20mol%含まれる。かような範囲で含まれることにより、粘着フィルムの30℃におけるモジュラスが高くなり、凝集力が高まる効果があり得る。
【0170】
ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体は、窒素、酸素、または硫黄のうちの1つ以上を含有するC4~C9ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリル酸エステルを含むことができる。具体的には、前記ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体は、(メタ)アクリロイルモルホリンを含むことができるが、これに限定されない。
【0171】
第1共重合単量体は、C1~C3アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、アミド基を有する単量体、芳香族基を有する単量体のうちの1つ以上の単量体をさらに含んでもよい。具体的には、前記単量体は、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、スチレンなどを含むことができるが、これらに限定されない。
【0172】
一実施例において、第1(メタ)アクリレート共重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体およびカルボン酸基を有する(メタ)アクリレート単量体のうちの1つ以上0.01mol%~5mol%、およびアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体95mol%~99.99mol%の共重合体であってもよい。他の実施例において、第1(メタ)アクリレート共重合体は、水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体およびカルボン酸基を有する(メタ)アクリレート単量体のうちの1つ以上0.01mol%~5mol%、アルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体50mol%~95mol%、脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体1mol%~30mol%、ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体1mol%~30mol%の共重合体であってもよい。かような範囲で、高凝集力および高強度効果があり得る。
【0173】
第2(メタ)アクリレート共重合体は、粘着フィルムのマトリックスを形成し、エポキシ基、オキセタン基のうちの1つ以上を提供して、粘着剤組成物を架橋剤なしに自己硬化させることができる。
【0174】
第2(メタ)アクリレート共重合体は、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体、オキセタン基を有する(メタ)アクリル系単量体のうちの1つ以上;およびこれらと共重合可能な単量体(以下、「第2共重合単量体」)を含む単量体混合物の共重合体であってもよい。単量体混合物のうち、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート単量体、オキセタン基を有する(メタ)アクリレート単量体のうちの1つ以上は、10mol%以下、具体的には0.01mol%~5mol%含まれる。かような範囲で、第1(メタ)アクリレート共重合体と共に含む時、屈曲性、ベンディング性、硬度、工程性、信頼性が良くて、フレキシブル装置に使用可能な粘着フィルムを実現することができる。
【0175】
エポキシ基を有する(メタ)アクリレート単量体は、自己硬化可能にし、および/または凝集力および信頼性が良くなる効果を実現することができる。エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物中の5mol%以下、具体的には0.01mol%~5mol%含まれる。かような範囲で、速い硬化および信頼性が良くなる効果があり得る。エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体は、グリシジル(メタ)アクリレートなどになってもよい。
【0176】
オキセタン基を有する(メタ)アクリレート単量体は、自己硬化可能にし、および/または凝集力および信頼性が良くなる効果を実現することができる。オキセタン基を有する(メタ)アクリレート単量体は、単量体混合物中の5mol%以下、具体的には0.01mol%~5mol%含まれる。かような範囲で、速い硬化および信頼性が良くなる効果があり得る。オキセタン基を有する(メタ)アクリレート単量体は、オキセタニル(メタ)アクリレート、オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートなどになってもよい。
【0177】
第2共重合単量体は、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート単量体、オキセタン基を有する(メタ)アクリレート単量体のうちの1つ以上と共重合して、粘着フィルムのマトリックスを形成したり、追加的な機能を提供することができる。
【0178】
第2共重合単量体は、アルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体を含むことができる。第2共重合単量体は、脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体、ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体のうちの1つ以上をさらに含むことによって、粘着フィルムを含む偏光板の鉛筆硬度をより高めることもできる。アルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体、脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体、ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体それぞれの具体的な種類は、第1共重合単量体で述べた通りである。
【0179】
一実施例において、第2(メタ)アクリレート共重合体は、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート単量体およびオキセタン基を有する(メタ)アクリレート単量体のうちの1つ以上0.01mol%~5mol%と、アルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体95mol%~99.9mol%との共重合体であってもよい。他の実施例において、第2(メタ)アクリレート共重合体は、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート単量体およびオキセタン基を有する(メタ)アクリレート単量体のうちの1つ以上0.01mol%~5mol%と、アルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体50mol%~95mol%と、脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体1mol%~30mol%と、ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリレート単量体1mol%~30mol%との共重合体であってもよい。かような範囲で、速い硬化および信頼性が良くなる効果があり得る。
【0180】
第1(メタ)アクリレート共重合体および第2(メタ)アクリレート共重合体のガラス転移温度は、それぞれ-55℃~-5℃であるのが好ましく、より好ましくは-50℃~-30℃である。第1(メタ)アクリレート共重合体および第2(メタ)アクリレート共重合体の重量平均分子量は、それぞれ200,000g/mol~1,500,000g/molであるのが好ましく、より好ましくは500,000g/mol~1,000,000g/molである。第1(メタ)アクリレート共重合体と第2(メタ)アクリレート共重合体とは、それぞれ酸価が5mgKOH/g以下であるのが好ましく、より好ましくは0.01mgKOH/g~3mgKOH/gである。かような範囲内で、被着体に対して直接的または間接的に腐食防止抑制効果を実現することができる。
【0181】
第1(メタ)アクリレート共重合体および第2(メタ)アクリレート共重合体は、それぞれ単量体混合物を通常の重合方法で重合させて製造できる。重合方法は、当業者に知られた通常の方法を含むことができる。例えば、(メタ)アクリレート共重合体は、単量体混合物に開始剤を添加した後、通常の共重合体重合、例えば、懸濁重合、乳化重合、溶液重合などで製造できる。重合温度は65℃~70℃、重合時間は6時間~8時間になってもよい。開始剤は、アゾ系重合開始剤;および/または過酸化ベンゾイルまたは過酸化アセチルのような過酸化物などを含む通常のものを使用することができる。
【0182】
硬化剤は、熱硬化剤であってもよいし、アクリル系バインダー樹脂を適切に架橋することによって、粘着剤の凝集力を強化するために使用されるもので、その種類は特に限定されない。例えば、イソシアネート系化合物、アジリジン系化合物などが挙げられ、これらは、単独または2種以上混合して使用することができる。
【0183】
イソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;トリメチロールプロパンなどの多価アルコール系化合物1モルにジイソシアネート化合物3モルを反応させた付加体、ジイソシアネート化合物3モルを自己縮合させたイソシアヌレート体、ジイソシアネート化合物3モル中2モルから得られるジイソシアネートウレアに残る1モルのジイソシアネートが縮合されたビュレット体、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビストリイソシアネートなどの3個の官能基を含有する多官能イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0184】
アジリジン系化合物としては、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、およびトリ-1-アジリジニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0185】
また、前記イソシアネート系化合物、前記アジリジン系化合物と共に、メラミン系化合物を単独または2種以上混合して追加的に使用してもよい。
【0186】
前記メラミン系化合物としては、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミンなどが挙げられる。
【0187】
硬化剤は、前記粘着剤組成物の総量に対して、好ましくは0.1重量%~1重量%、より好ましくは0.1重量%~0.5重量%含まれ(粘着剤組成物の固形分基準では0.3重量%~1.0重量%含まれ)る方が、粘着力または凝集性の面で好ましい。硬化剤が粘着剤組成物の総量に対して0.1重量%未満の場合、不足した架橋度によって粘着剤の粘着力または凝集力がやや低下(不完全な硬化)して浮き上がりのような耐久性の低下が誘発され、切断性を害することがあり、硬化剤が粘着剤組成物の総量に対して1重量%を超える場合、相溶性がやや低下して表面移行が起こることがあり、架橋反応が過度に進行して粘着力がやや低下することがあり、残留応力緩和に問題が生じかねない。
【0188】
溶媒は、粘着剤組成物のコーティング性を良くし、粘着剤組成物の自己硬化反応を阻止することができる。溶剤は、当業者に知られた通常の溶剤を使用することができる。例えば、溶剤は、メチルエチルケトン、エチルアセテート、トルエンのうちのいずれか1つ以上を含むことができ、粘着剤組成物に対して、残部量、例えば、粘着剤組成物の総量に対して、好ましくは10重量%~40重量%、より好ましくは10重量%~30重量%含まれる。
【0189】
粘着剤組成物は、シランカップリング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、陽イオン開始剤、離型剤、またはこれらの組み合わせをさらに含んでもよい。
【0190】
シランカップリング剤に関する説明は上述した通りであり、シランカップリング剤は、粘着剤組成物の総量に対して、好ましくは0.01重量%~0.1重量%、より好ましくは0.01重量%~0.05重量%含まれ(粘着剤組成物の固形分基準では0.1重量%~0.3重量%含まれ)る。
【0191】
帯電防止剤は、粘着フィルムの再加工時に静電気の発生を抑制するもので、通常の帯電防止剤を含むことができる。帯電防止剤は、前記粘着剤組成物の総量に対して、1重量%~5重量%、例えば1重量%~3重量%含まれ(粘着剤組成物の固形分基準では1.0重量%~5.0重量%含まれ)る。帯電防止剤が範囲内に含まれる場合、帯電性の面から好ましい。帯電防止剤が粘着剤組成物の総量に対して1重量%未満で含まれる場合、帯電防止性の効果がやや低下することがあり、粘着剤組成物の総量に対して5重量%超過で含まれる場合、粘着剤組成物の物性を低下させて製造費用を増加させる。
【0192】
例えば、帯電防止剤は、イオン性帯電防止剤であってもよい。イオン性帯電防止剤は、アルカリ金属塩、イオン性液体、またはイオン性固体であってもよい。ただし、アルカリ金属塩は、粘着剤との相溶性がやや低くて耐久性が不足することがあり、イオン性液体は、粘着剤組成物内で流動性が大きくて経時変化によって帯電防止性能がやや低下することがある。要するに、耐久性および帯電防止性の経時変化安定性を考慮すれば、常温(25℃)で固体状のイオン性固体を含むことが好ましい。
【0193】
例えば、帯電防止剤は、トデシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(KOEI)、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(3M)、トリ-n-ブチルメチルアンモニウムビス-(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(3M)などであってもよいが、これに限定されず、2種以上を混合して使用してもよい。
【0194】
紫外線吸収剤は、吸収波長380~420nmの吸収波長を有するものであってもよい。ここで、「吸収波長」とは、「最大吸収波長」を称することができる。
【0195】
粘着剤組成物は、吸収波長範囲を有する紫外線吸収剤を含む時、400nmの波長以下の領域で5%以下の透過率を示すことができ、これによって、後述する偏光板およびこれを含むディスプレイ素子が外部紫外線によって損傷を受ける現象を防止できるという利点がある。
【0196】
紫外線吸収剤は、前述した吸収波長の範囲を満足すれば、これに限定されず、当業界で通常用いる紫外線吸収剤を適用することができる。例えば、紫外線吸収剤は、2-ヒドロキシ-3((4-メトキシフェニル)ジアゼニル)-5-メチルベンジルメタクリレート、または2-ヒドロキシ-5-メトキシ-3-(5-トリフルオロメチル)-2H-ベンゾ[d][1,2,3]トリアゾール-2-イル)ベンジルメタクリレートであってもよいが、よって、吸収波長を満足しさえすれば、これに限定されない。
【0197】
陽イオン開始剤は、陽イオン光重合開始剤であってもよいが、これに限定されるものではなく、当業界で一般に用いる陽イオン光開始剤を使用することができる。例えば、光照射によってルイス酸を放出するオニウム塩またはその誘導体が挙げられる。このような化合物は、一般式[X]x+[Y]x-で表す、陽イオンと陰イオンとからなる塩形態であり、陽イオンの具体例としては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩などが挙げられ、陰イオンの具体例としては、テトラフルオロボレート(BF4)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6)などが挙げられる。これらの陽イオン光重合開始剤は、1種または2種以上混合して使用することができる。
【0198】
陽イオン開始剤の含有量は特に限定されないが、例えば、固形分含有量を基準として、粘着剤組成物の総量に対して0.01重量部~10重量部、例えば0.1重量部~5重量部含まれる。陽イオン開始剤が粘着剤組成物の総量に対して0.01重量部未満の場合、着色接着剤組成物の硬化が不十分で十分な接着力および密着力を得にくいことがあり、陽イオン開始剤が粘着剤組成物の総量に対して10重量部を超える場合、接着剤層のイオン性物質の含有量過剰によって吸湿性が増加して耐久性がやや低下することがある。
【0199】
離型剤は、アルキド系離型剤、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、不飽和エステル系離型剤、ポリオレフィン系離型剤、またはワックス系離型剤などであってもよい。例えば、離型剤としてアルキド系離型剤、シリコーン系離型剤、またはフッ素系離型剤を使用する方が、耐熱性の面から好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。離型剤は、粘着剤組成物の総量に対して、0.01重量%~0.1重量%含まれる。
【0200】
このような成分のほか、粘着剤組成物は、用途に応じて要求される接着力、凝集力、粘性、弾性率、ガラス転移温度などを調節するために、再加工剤(reworking agent)、接着性付与樹脂、酸化防止剤、レベリング剤、表面潤滑剤、消泡剤、充填剤、光安定剤などの添加剤をさらに含有してもよい。
【0201】
添加剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内で適切に含有量を調節して添加可能である。
【0202】
一実施形態による粘着剤組成物は、25℃で、粘度が1,000cPs~4,000cPsになってもよい。かような範囲で、粘着フィルムの厚さ調節が容易であり、粘着フィルムにムラがなく、コーティング面が均一な効果があり得る。
【0203】
さらに他の実施形態は、粘着フィルムを含む偏光板を提供する。
【0204】
粘着フィルムの製造方法は特に限定されず、通常の方法によって製造できる。例えば、粘着剤組成物を用いて粘着フィルムの製造に適用可能である。
【0205】
例えば、偏光子保護フィルム上に、前述した粘着剤組成物を流動鋳造法、バーコーター(bar coater)、エアナイフ(air knife)、グラビア(gravure)、リバースロール(reverse roll)、キスロール(kiss roll)、スプレー(spray)、またはブレード(blade)方法などの塗布方法を利用して適当な展開方式で直接塗布した後、乾燥(熱硬化)して粘着剤層を形成した後、偏光板と積層することによって製造することができる。
【0206】
また、シリコーンコーティングされた離型フィルム上に、前記と同様の塗布方法で粘着フィルムを形成した後、これをロール圧着装置を用いて剥離力の異なるシリコーンコーティングされた離型フィルムを積層して粘着剤転写テープを製造した後、偏光板に粘着することによって使用することができる。
【0207】
粘着フィルムは、熱硬化により形成することもできるが、架橋剤として紫外線硬化型化合物および光重合開始剤(前述した陽イオン光重合開始剤など)が使用される場合には、偏光板を積層した後に、離型フィルム側から紫外線を照射したり、またはロール圧着装置を用いて剥離力の異なるシリコーンコーティングされた離型フィルムを積層した後に、紫外線を照射(光硬化)して製造することもできる。
【0208】
粘着フィルムの厚さは特に限定されないが、5μm~30μm、例えば7μm~20μm、例えば10μm~15μmであってもよい。粘着フィルムの厚さがかような範囲内の場合、粘着性および耐久性の面で好ましく、薄型の素子への適用が可能であるという利点がある。
【0209】
少なくとも一面に粘着フィルムが備えられた偏光板において、偏光板は、400nm以下の波長の透過率が5%以下であり、455nm以上の波長の透過率が40%以上であってもよい。
【0210】
偏光板は、400nm以下の波長の透過率が5%以下であるため、偏光板または偏光板を接合した素子に発生する損傷を防止し、455nm以上の波長の透過率が40%以上であるため、青色輝度が減少する現象を防止することができるという利点がある。
【0211】
さらに他の実施形態は、感光性樹脂膜を含むカラーフィルタおよび/または偏光板を含む光学表示装置を提供する。
【0212】
光学表示装置は、画像表示装置であって、液晶表示装置、OLED、フレキシブルディスプレイなどがあり得るが、これに限定されるものではなく、適用可能な当分野で知られたすべての画像表示装置を例示することができる。
【0213】
例えば、光学表示装置は、液晶表示装置であってもよい。一般に、液晶表示装置は、バックライト(BLU)、偏光板、薄膜トランジスタ(TFT)、液晶セル、カラーフィルタ、および偏光板から構成され、偏光板は、一実施形態による偏光板であってもよく、カラーフィルタは、一実施形態によるカラーフィルタであってもよい。例えば、光学表示装置は、一実施形態によるカラーフィルタの少なくとも一面に、一実施形態による粘着剤層が積層された偏光板が備えられたものであってもよい。
【実施例】
【0214】
以下、実施例を挙げて本発明についてより詳細に説明するが、下記の実施例は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0215】
<化学式1で表される化合物の合成>
下記の合成例1~合成例13で合成された化合物の中心金属Mは、すべてZnである。また、以下の実施例において、Acはアセチル基(CH3(C=O)-)を意味する。
【0216】
以下の合成例1~14、比較合成例1および比較合成例2で得られた各化合物は、質量分析法(MALDI-TOF)により分子量を測定した。分子量の測定結果は各合成例に示した。
【0217】
[合成例1:化学式3-1で表される化合物の合成]
丸底フラスコに、テレフタルアルデヒド酸30g(0.2mol)とプロピオン酸600gとを順に添加して撹拌した。この丸底フラスコ内の反応物にピロール13.5g(0.2mol)を添加した後、反応物の温度を80℃に上げて1時間撹拌した。その後、反応物を130℃に加熱し、90分間撹拌した後、反応を終結させた。得られた反応生成物を室温(23℃)まで冷ました後、反応生成物にアセトン300gを添加して、室温で1時間撹拌し、生じた沈殿物をフィルタを用いてろ過した。その後、フィルタ上の固体化合物を回収してアセトンで洗浄した後、乾燥することにより中間体(A)8.3gを得た。
【0218】
窒素雰囲気下、丸底フラスコに、上記で得られた中間体(A)3g(3.8mmol)とSOCl2 30gとを添加した後、80℃で12時間撹拌した後、過剰のSOCl2を蒸留により除去した。その後、丸底フラスコにクロロホルム45gを添加し、さらに2-ヒドロキシベンゾトリフルオライド2.96g(18.24mmol)とトリエチルアミン1.85g(18.24mmol)とを添加した後、室温で24時間撹拌した。反応の終結後、反応生成物を10%NaCl溶液と脱イオン水とで洗浄し、クロロホルムで抽出した。その後、蒸留により抽出液から溶媒を除去した後、得られた反応生成物に対してカラムクロマトグラフィーを行うことにより中間体(B)0.99gを得た。
【0219】
丸底フラスコに、上記で得られた中間体(B)0.9g(0.66mmol)とクロロホルム45gとを順に添加して、60℃で撹拌した。他の1つの丸底フラスコに、Zn(OAc)2(363mg、1.98mmol)とメタノール7gとを順に添加し、室温で撹拌してZn(OAc)2を溶解させた。その後、Zn(OAc)2溶液を中間体(B)の入っている丸底フラスコに添加した後、2時間撹拌した。反応の終結後、反応生成物を室温まで放冷した後、反応生成物を塩化メチレンで抽出し、その抽出液を10%NaClおよび脱イオン水を用いて洗浄した。蒸留により抽出液から溶媒を除去し、得られた反応生成物を最小量の塩化メチレンに溶解し、その塩化メチレン溶液をアセトニトリル100g中に徐々に滴下して沈殿物を生じさせた。得られた沈殿物をろ過し、アセトニトリルで洗浄した後、乾燥することにより下記の化学式3-1で表されるポルフィリン系化合物0.81g(収率:86%)を得た。
【0220】
【0221】
(M=Zn、MALDI-TOF:1428m/z)
[合成例2:化学式3-2で表される化合物の合成]
丸底フラスコに、上記で得られた中間体(B)1g(0.73mmol)とクロロホルム300gとを順に添加して撹拌した。この丸底フラスコに、N-クロロスクシンイミド214mg(1.61mmol)を添加した後、60℃に加熱した。反応の終結後、反応生成物を室温まで放冷した後、クロロホルムで抽出し、抽出液を10%NaClおよび脱イオン水を用いて洗浄した。その後、蒸留により抽出液から溶媒を除去した後、得られた反応生成物に対してカラムクロマトグラフィーを行うことにより中間体(C)0.47gを得た。
【0222】
丸底フラスコに、上記で製造した中間体(C)0.9g(0.66mmol)とクロロホルム45gとを順に添加して60℃で撹拌した。他の1つの丸底フラスコに、Zn(OAc)2(363mg、1.98mmol)とメタノール7gとを順に添加した後、室温で撹拌して、Zn(OAc)2を溶解させた。その後、Zn(OAc)2溶液を中間体(B)の入っている丸底フラスコに添加した後、2時間撹拌した。反応の終結後、反応生成物を室温まで放冷した後、塩化メチレンで抽出し、その抽出液を10%NaClおよび脱イオン水を用いて洗浄した。蒸留により抽出液から溶媒を除去し、得られた反応生成物を最小量の塩化メチレンに溶かした後、アセトニトリル100g中に徐々に滴下して沈殿物を生じさせた。沈殿物をろ過し、アセトニトリルで洗浄した後、乾燥することにより下記の化学式3-2で表されるポルフィリン系化合物0.39g(収率:79%)を得た。
【0223】
【0224】
(M=Zn、MALDI-TOF:1496m/z)
[合成例3:化学式3-3で表される化合物の合成]
丸底フラスコに、上記で得られた中間体(B)1g(0.73mmol)と1,1,2,2-テトラクロロエタン100gとを順に添加して撹拌した。この丸底フラスコにN-クロロスクシンイミド(526mg、3.94mmol)を添加した後、100℃に加熱した。反応の終結後、反応生成物を室温まで放冷し、蒸留により溶媒を除去した後、得られた反応生成物をクロロホルムで抽出し、その抽出液を10%NaClおよび脱イオン水を用いて洗浄した。その後、蒸留により抽出液から溶媒を除去した後、得られた反応生成物に対してカラムクロマトグラフィーを行うことにより中間体(D)0.69gを得た。
【0225】
この後、丸底フラスコに、上記で製造した中間体(D)0.9g(0.66mmol)とクロロホルム45gとを順に添加して、60℃に撹拌した。他の1つの丸底フラスコに、Zn(OAc)2(363mg、1.98mmol)とメタノール7gとを順に添加した後、室温で撹拌して、Zn(OAc)2を溶解させた。その後、Zn(OAc)2溶液を中間体(B)の入っている丸底フラスコに添加した後、2時間撹拌した。反応の終結後、反応生成物を室温まで放冷し、塩化メチレンで抽出し、その抽出液を10%NaClおよび脱イオン水を用いて洗浄した。蒸留により抽出液から溶媒を除去した後、得られた反応生成物を最小量の塩化メチレンに溶かし、その塩化メチレン溶液をアセトニトリル100g中に徐々に滴下して沈殿物を生じさせた。得られた沈殿物をろ過し、アセトニトリルで洗浄した後、乾燥することにより下記の化学式3-3で表されるポルフィリン系化合物0.57g(収率:79%)を得た。
【0226】
【0227】
(M=Zn、MALDI-TOF:1564m/z)
[合成例4:化学式3-4で表される化合物の合成]
2-ヒドロキシベンゾトリフルオライドの代わりに3,5-ビス(トリフロオロメチル)フェノールを用いたこと以外は合成例1と同様の方法で行い、下記の化学式3-4で表されるポルフィリン系化合物0.78g(収率:79%)を得た。
【0228】
【0229】
(M=Zn、MALDI-TOF:1700m/z)
[合成例5:化学式3-5で表される化合物の合成]
2-ヒドロキシベンゾトリフルオライドの代わりに3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノールを用いたこと以外は合成例2と同様の方法で行い、下記の化学式3-5で表されるポルフィリン系化合物0.69g(収率:74%)を得た。
【0230】
【0231】
(M=Zn、MALDI-TOF:1768m/z)
[合成例6:化学式3-6で表される化合物の合成]
2-ヒドロキシベンゾトリフルオライドの代わりに3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェノールを用いたこと以外は合成例3と同様の方法で行い、下記の化学式3-6で表されるポルフィリン系化合物0.59g(収率:69%)を得た。
【0232】
【0233】
(M=Zn、MALDI-TOF:1836m/z)
[合成例7:化学式3-7で表される化合物の合成]
2-ヒドロキシベンゾトリフルオライドの代わりに2-フルオロフェノールを用いたこと以外は合成例1と同様の方法で行い、下記の化学式3-7で表されるポルフィリン系化合物1.5g(収率:88%)を得た。
【0234】
【0235】
(M=Zn、MALDI-TOF:1228m/z)
[合成例8:化学式3-8で表される化合物の合成]
2-ヒドロキシベンゾトリフルオライドの代わりに2-フルオロフェノールを用いたこと以外は合成例2と同様の方法で行い、下記の化学式3-8で表されるポルフィリン系化合物0.92g(収率:75%)を得た。
【0236】
【0237】
(M=Zn、MALDI-TOF:1296m/z)
[合成例9:化学式3-9で表される化合物の合成]
2-ヒドロキシベンゾトリフルオライドの代わりに2-フルオロフェノールを用いたこと以外は合成例3と同様の方法で行い、下記の化学式3-9で表されるポルフィリン系化合物0.71g(収率:79%)を得た。
【0238】
【0239】
(M=Zn、MALDI-TOF:1364m/z)
[合成例10:化学式3-10で表される化合物の合成]
2-ヒドロキシベンゾトリフルオライドの代わりに2,6-ジフルオロフェノールを用いたこと以外は合成例1と同様の方法で行い、下記の化学式3-10で表されるポルフィリン系化合物1.3g(収率:84%)を得た。
【0240】
【0241】
(M=Zn、MALDI-TOF:1300m/z)
[合成例11:化学式3-11で表される化合物の合成]
2-ヒドロキシベンゾトリフルオライドの代わりに2,6-ジフルオロフェノールを用いたこと以外は合成例2と同様の方法で行い、下記の化学式3-11で表されるポルフィリン系化合物1.05g(収率:75%)を得た。
【0242】
【0243】
(M=Zn、MALDI-TOF:1368m/z)
[合成例12:化学式3-12で表される化合物の合成]
2-ヒドロキシベンゾトリフルオライドの代わりに2,6-ジフルオロフェノールを用いたこと以外は合成例3と同様の方法で行い、下記の化学式3-12で表されるポルフィリン系化合物0.55g(収率:72%)を得た。
【0244】
【0245】
(M=Zn、MALDI-TOF:1436m/z)
[合成例13:化学式3-13で表される化合物の合成]
丸底フラスコに、ベンズアルデヒド30g(0.283mol)とプロピオン酸600gとを順に添加して撹拌した。その撹拌した反応物にピロール18.9g(0.283mol)を添加した後、反応物の温度を80℃に上げて1時間撹拌した。その後、反応物を130℃に加熱し、90分間撹拌した後、反応を終結させた。得られた反応生成物を室温まで放冷した後、アセトン300gを添加して、室温で1時間撹拌し、生じた沈殿物をフィルタを用いてろ過した。その後、フィルタ上の固体化合物を回収してアセトンで洗浄した後、乾燥することにより中間体(E)11.3gを得た。
【0246】
丸底フラスコに、上記で得られた中間体(E)11.3g(18.4mmol)を添加し、次にクロロスルホン酸50gと塩化メチレン200gとを順に添加した後、室温で5時間撹拌した。反応の終結後、蒸留により反応物から溶媒およびクロロスルホン酸を除去した後、この反応物100gに2-エチルヘキシルアミン(14.3g、110.4mmol)を添加して、室温で24時間撹拌した。反応の終結後、得られた反応生成物を10%NaCl溶液と脱イオン水とで洗浄し、塩化メチレンで抽出した。その後、蒸留により抽出液から溶媒を除去した後、得られた反応生成物に対してカラムクロマトグラフィーを行うことにより中間体(F)5.1gを得た。
【0247】
その後、丸底フラスコに、上記で製造した中間体(F)0.9g(0.66mmol)とクロロホルム45gとを順に添加して、60℃で撹拌した。他の1つの丸底フラスコにZn(OAc)2(363mg、1.98mmol)とメタノール7gとを順に添加し、室温で撹拌して、Zn(OAc)2を溶解させた。その後、Zn(OAc)2溶液を中間体(F)の入っている丸底フラスコに添加した後、2時間撹拌した。反応の終結後、反応生成物を室温まで放冷した後、塩化メチレンで抽出し、抽出液を10%NaClおよび脱イオン水を用いて洗浄した。蒸留により抽出液から溶媒を除去した後、得られた反応生成物を最小量の塩化メチレンに溶かした後、その塩化メチレン溶液をアセトニトリル100g中に徐々に滴下して沈殿物を生じさせた。沈殿物をろ過し、アセトニトリルで洗浄した後、乾燥することにより下記の化学式3-13で表されるポルフィリン系化合物2.5g(収率:90%)を得た。
【0248】
【0249】
(M=Zn、MALDI-TOF:1378m/z)
[合成例14:化学式3-14で表される化合物の合成]
丸底フラスコに、上記で得られた中間体(F)3.2g(2.58mmol)とクロロホルム160gとを順に添加して、60℃で撹拌した。他の丸底フラスコにZn(OAc)2 1.42g(7.74mmol)とメタノール30gとを順に添加して、室温で撹拌して、Zn(OAc)2を溶解させた。その後、Zn(OAc)2溶液を中間体(B)の入っている丸底フラスコに添加した後、2時間撹拌して反応させた。反応の終結後、反応生成物を室温(23℃)まで放冷した後、塩化メチレンで抽出し、抽出液を10%NaClおよび脱イオン水を用いて洗浄した。蒸留により抽出液から溶媒を除去した後、得られた反応生成物を最小量の塩化メチレンに溶かした後、その塩化メチレン溶液をアセトニトリル100g中に徐々に滴下して沈殿物を生じさせた。沈殿物をろ過し、アセトニトリルで洗浄した後、乾燥することにより下記の化学式3-14で表される化合物3.1g(収率:92%)を得た。
【0250】
【0251】
(M=Zn、MALDI-TOF:1200m/z)
[比較合成例1:化学式C-1で表される化合物の合成]
2-ヒドロキシベンゾトリフルオライドの代わりに4-(トリフロオロメチル)ベンズアルデヒドを用いたこと以外は合成例1と同様の方法で行い、下記の化学式C-1で表されるポルフィリン系化合物3.5g(収率:91%)を得た。
【0252】
【0253】
(MALDI-TOF:948m/z)
[比較合成例2:化学式C-2で表される化合物の合成]
2-ヒドロキシベンゾトリフルオライドの代わりに2-エチルヘキシルアミンを用いたこと以外は合成例1と同様の方法で行い、下記の化学式C-2で表されるポルフィリン系化合物1.6g(収率:90%)を得た。
【0254】
【0255】
<評価1:最大吸収波長および溶解度>
合成例1~合成例14、比較合成例1および比較合成例2で得られた各化合物のシクロヘキサノン中での最大吸収波長(λmax)およびプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタート(PGMEA)に対する溶解度を下記表1に示した。溶解度は、下記溶解度評価基準に基づき、室温(20℃)で溶媒(PGMEA)1000cm3に対してそれぞれの化合物10gが溶解可能か否かを評価した。
【0256】
溶解度評価基準
○:PGMEA1000cm3に対して化合物10gが溶解する。
【0257】
×:PGMEA1000cm3に対して化合物10gが溶解しない。
【0258】
【0259】
表1から、本実施形態による化合物は、420nm~435nmの狭い波長領域帯において最も高い吸光度を有すること、有機溶媒に対する溶解度が優れていることが分かった。
【0260】
<感光性樹脂組成物の合成>
[実施例1~実施例14、比較例1および比較例2]
下記に示した構成成分を、表2および表3に示す組成で混合して、実施例1~実施例14、比較例1および比較例2による感光性樹脂組成物を製造した。
【0261】
具体的には、溶媒に光重合開始剤を溶かした後、2時間常温で撹拌した後、これにバインダー樹脂および光重合性化合物を添加して、2時間常温で撹拌した。次に、得られた反応物に着色剤およびその他添加剤を入れて、1時間常温で撹拌した。次に、得られた生成物を3回ろ過して不純物を除去することによって、感光性樹脂組成物を製造した。
【0262】
【0263】
【0264】
[(A)着色剤]
(A-1)合成例1の化合物(化学式3-1で表される化合物)
(A-2)合成例2の化合物(化学式3-2で表される化合物)
(A-3)合成例3の化合物(化学式3-3で表される化合物)
(A-4)合成例4の化合物(化学式3-4で表される化合物)
(A-5)合成例5の化合物(化学式3-5で表される化合物)
(A-6)合成例6の化合物(化学式3-6で表される化合物)
(A-7)合成例7の化合物(化学式3-7で表される化合物)
(A-8)合成例8の化合物(化学式3-8で表される化合物)
(A-9)合成例9の化合物(化学式3-9で表される化合物)
(A-10)合成例10の化合物(化学式3-10で表される化合物)
(A-11)合成例11の化合物(化学式3-11で表される化合物)
(A-12)合成例12の化合物(化学式3-12で表される化合物)
(A-13)合成例13の化合物(化学式3-13で表される化合物)
(A-14)合成例14の化合物(化学式3-14で表される化合物)
(A-15)比較合成例1の化合物(化学式C-1で表される化合物)
(A-16)比較合成例2の化合物(化学式C-2で表される化合物)
(A-17)C.I.Pigment Blue15:6顔料分散液(SANYO社;顔料固形分20%)
[(B)バインダー樹脂]
アクリル系バインダー樹脂(RY-25、Showadenko社)
[(C)光重合性化合物]
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)(日本化薬社)
[(D)光重合開始剤]
(D-1)オキシム系化合物(NCI831、adeka社)
(D-2)アセトフェノン系化合物(IRG369、Basf社)
[(E)溶媒]
(E-1)プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)(協和社)
(E-2)エチレングリコールジメチルエーテル(EDM)(協和社)
[(F)添加剤]
γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(S-510、Chisso社)。
【0265】
<評価2:感光性樹脂膜の輝度>
脱脂洗浄した厚さ1mmのガラス基板上に、実施例1~実施例14、比較例1および比較例2で製造した感光性樹脂組成物を250rpm~350rpmの条件で塗布し、90℃のホットプレート上で2分間乾燥させて、2μmの厚さの塗膜を得た。続いて、塗膜に対して50mJ/cm2の条件で365nmの主波長を有する高圧水銀ランプを用いて全面露光を行った後、現像機でKOH現像液(111倍希釈液)を用いて水洗液/現像液=1/0.8の条件で60秒間現像し、再び60秒間水洗を行い、現像履歴を与えた。この後、230℃の熱風循環式乾燥炉内で20分間乾燥させて、色試験片(Color Chip)を得た。
【0266】
作製した色試験片を分光光度計(MCPD3000、Otsuka electronic社)を用いてC光源基準の色特性を評価し、色座標値(Bx/By=0.148/0.048)を基準として輝度(Y)(%)を計算して、その結果を下記表4に示した。
【0267】
【0268】
表4から、本実施形態による化合物を用いる場合、少量でも十分に優れた輝度および高色実現が可能であることが分かった。
【0269】
<粘着剤組成物の合成>
[実施例15]
アクリル系バインダー樹脂(PL-8540;SAIDEN化学)78.583重量%、イソシアネート系硬化剤(H-AL;ジルカーセラミックス)0.236重量%、アジリジン系硬化剤(HDU-P25)0.145重量%、離型剤(MAC-2101;Soken)0.028重量%、帯電防止剤(FC-4400L;3M)1.336重量%、シランカップリング剤(KBM-403;shinetsu)0.024重量%、合成例1の化合物0.004重量%、および溶剤(MEK)残部量(19.644重量%)を混合して、実施例15の偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0270】
[実施例16]
合成例1の化合物の代わりに合成例2の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0271】
[実施例17]
合成例1の化合物の代わりに合成例3の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0272】
[実施例18]
合成例1の化合物の代わりに合成例4の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0273】
[実施例19]
合成例1の化合物の代わりに合成例5の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0274】
[実施例20]
合成例1の化合物の代わりに合成例6の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0275】
[実施例21]
合成例1の化合物の代わりに合成例7の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0276】
[実施例22]
合成例1の化合物の代わりに合成例8の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0277】
[実施例23]
合成例1の化合物の代わりに合成例9の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0278】
[実施例24]
合成例1の化合物の代わりに合成例10の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0279】
[実施例25]
合成例1の化合物の代わりに合成例11の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0280】
[実施例26]
合成例1の化合物の代わりに合成例12の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0281】
[実施例27]
合成例1の化合物の代わりに合成例13の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0282】
[実施例28]
合成例1の化合物の代わりに合成例14の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0283】
[比較例3]
合成例1の化合物の代わりに比較合成例1の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0284】
[比較例4]
合成例1の化合物の代わりに比較合成例2の化合物を用いたこと以外は実施例15と同様にして偏光板用粘着剤組成物を製造した。
【0285】
<評価3:粘着フィルムの色再現率および反射率>
[1.色再現率の測定]
実施例15~28、比較例3、4による粘着剤組成物を、1mmのガラス基板に厚さ2μmとなるように塗布した後、90℃で4分間乾燥させ、23℃および相対湿度55%で24時間熟成させて粘着フィルムを製造した。この粘着フィルムをパネルの一面(バックライトの反対側)に付着させた後、分光光度計(SR-3、トプコン(Topcon)社)を用いて色再現率を測定して、その結果を下記表5に示した。なお、色再現率は、上記合成例で製造された化合物を含む粘着剤組成物を用いて製造された粘着フィルムにおける上記化合物の色度を測定し、算出した値である。
【0286】
[2.反射率の測定]
実施例15~28、比較例3、4による粘着剤組成物を、1mmのガラス基板に厚さ2μmとなるように塗布した後、90℃で4分間乾燥させ、23℃および相対湿度55%で24時間熟成させて粘着フィルムを製造した。この粘着フィルムをQD(量子ドット)パネルに接合し、分光測色計(CM-2600D、コニカミノルタ株式会社)を用いてC光源(C-Light spectrum)を適用して、波長550nmにおける反射率を測定し、その結果を下記表5に示した。
【0287】
【0288】
表5から明らかなように、本実施形態による化合物を適用した実施例が、本実施形態による化合物が適用されない比較例に比べて、色再現率も高く、かつ反射率も低減される効果が高いことが分かった。
【0289】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。